一方で、ベートーヴェンの大フーガなどでは、それぞれの個性が激しくぶつかり合いながらひとつになるという、室内楽の醍醐味が聴けるのも、卓越した4人のソリストたちの演奏ならでは。
演奏曲目も本気度が高い。1楽章ずつ〝いいとこ取り〟した名曲の数々を一気に楽しめるプログラム。けれども選んだのは上述のモーツァルト、ベートーヴェンに加えて、シューマンのピアノ五重奏、チャイコフスキーの《アンダンテ・カンタービレ》とショスタコーヴィチの弦楽四重奏第8番と、まったくありがちではない。
フィナーレは一転、井上陽水《少年時代》。ピアノの前奏の「夏の思い出」から〝晩夏つながり〟の「♪夏が過ぎ 風あざみ」。うまい!(編曲:松岡あさひ)
インターネット配信は、緊急事態宣言による入場制限を受けてのフォロー策。コロナ禍の一日も早い終息は全世界の願いだが、こういう便利でうれしい副産物は大歓迎だ。
きちんと凝ったカメラワークで音質も十分。映像だと演奏中の表情まで細かくはっきり見えるのもうれしい。会場で配布されたプログラムもPDFをダウンロードでちゃんと手に入る。かなり満足。アーカイブ配信は9月6日(月)23:59まで。なお、次回のららら♪クラシックコンサート Vol.12は12月1日(水)にサントリーホールにて上演。
(宮本明)