くらし情報『朗読×日本舞踊×生演奏。お七の必死で切ない恋が劇場を満たす』

朗読×日本舞踊×生演奏。お七の必死で切ない恋が劇場を満たす

そのすぐ近くで朗読が始まり、声優が演じる奉行が、大空演じるお七に対し、火付け(放火)の罪を確かめている。舞台セットは、KOHKIと大河内が演奏するための台と、段がひとつだけあるシンプルなカタチで、演者はそこに立って朗読したり、段に座って朗読したりする。衣装もシンプルで、声で物語を届けることを際立たせていることがわかる。

冒頭の朗読で、お七の16歳という年齢を知り、大空の朗読をどこか大人っぽくも感じた。けれどそれが、この物語でこれからお七が体験する“最初で最後の恋”を経て辿り着いた姿であることは、そこからの朗読でじっくりと感じることになる。お七を表現する花柳の舞は実に表情豊か。朗読と舞が説明のしあいにならず、「掛け算」や「化学変化」とはまさにこれなのだと納得させるほどに、朗読が広げる世界に舞が色彩を乗せ、舞が表すカタチのないものを朗読が鮮やかにし、これまでに観たことのないコラボレーションが生まれていた。そして中島、福山、神尾は、吉三郎役をはじめ、お七の家に仕える下女・お杉、お七を裁く奉行と、演じ分けが見事。
それぞれの姿がありありと浮かんでくるような朗読は、一人ひとり違う温かさや慈しみを感じさせ、それがこの物語をより切なく繊細なものにしていた。

朗読と舞と音楽が三位一体となり、お七の恋が劇場を満たす作品となった。

取材・文:中川實穗
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