朗読劇『いつもポケットにショパン』、尾崎由香&高野洸ペアで開幕
再会の喜びに湧く麻子に対して、季晋はまるで別人のように彼女を憎んでいた。
幼少期の麻子は明るく純粋で、おしゃべりな少女だった。しかし成長するにつれ、母へのコンプレックスから感情表現が乏しくなり、演奏にも表れるように。朗読はモノローグを中心に進行するため気持ちを饒舌に語っているように聞こえるが、尾崎は高校生になった麻子の屈託を、幼少期のあどけない声音と比べてトーンを下げることで獲得していた。これに対して先輩や教師、そして季晋との交流を通じて次第にピアノに“覚醒”していく様子も鮮烈に造形する。
「あいつ(=麻子)よりすごいピアニストになるんだ」──。列車事故でこの世を去った母の無念を知り、麻子に対して異様な競争心をたぎらせる季晋。高野は時に台本から目を離しながら、親の仇を討つような険しい視線を麻子に向ける。
激しい苦悩や葛藤の描写がバラエティ豊かだったのはもちろん、麻子の先輩や教師など多様なキャラクターなどにも声色を変えて扮する巧みな演じ分けが光っていた。麻子との雪解けシーンでは“身長差”に萌えた観客も多いだろう。
上演時間は100分ほど(休憩なし)。公演は1月23日(日)まで。チケットぴあでは現在、当日引換券を販売中。
取材・文:岡山朋代