アウティング、捕鯨…「夜明けの寄り鯨」が問いかける他者への理解
や「正義」で他者を傷つけてしまう――。本作では性的指向に関するアウティング(=本人の了解を得ずにセクシャリティを第三者に明かすこと)、捕鯨によって生活してきた港町に対する非難などを通じ、指向や立場の違いを超えて、他者を「理解する」というのはどういうことなのか? を問いかける。
稽古で印象的だったのが、演出の大澤と俳優陣のやりとり。劇中で三桑たちは、浅瀬に漂着した鯨に遭遇するが、若者たちは、遠目にそれを見つつ、近づこうとはしない。永嗣(阿岐之将一)は、恋人の景子(森川由樹)から「近くで見てきたら?」と言われると「やだよ」と即答する。
大澤の「永嗣は鯨が怖いの?」という問いかけに、阿岐之は「わからないものへの恐れかな? 得体のしれないものについて、離れた外側からワーワー言ってたいのかも…」と答える。
大澤曰く、25年前のシーンは「みんな、うまくいかないまま終わる。解決しちゃいけない。
みんな、抱えたままいなくなる」とのこと。鋭い言葉の刃と共に醸し出されるこの“モヤモヤ”がどこへ着地するのか? 完成を楽しみに待ちたい。「夜明けの寄り鯨」は新国立劇場小劇場にて12月1日より開幕。
取材・文:黒豆直樹
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