科学者として生きたひとりの女性マリー・キュリーの、ひたむきな姿を描き出す
演じる屋良朝幸も「遠い世界へ」など自身の振付によるダンスナンバーを含め、多面的な存在感を放つ。
一方アンヌはマリーの親友として彼女に寄り添い、“光”の部分を担っているかのよう。パリに向かう列車での出会いでマリーの志を示す「すべてのものの地図」、追い詰められた状況下で心を通わせる「あなたは私の星」と、印象的なデュエットも多い。清水くるみの明るさと健気さ、時には凛々しさもある佇まいが魅力的だ。
ピエール役の上山竜治も好演。自身もこれまで演じてきたなかで「一番優しい役どころ」だと語る、懐の深い夫で研究者としてもかけがえのないパートナーだ。マリーとピエールの「予測不能で未知なるもの」は、清水が「稽古場でも泣いちゃうぐらい好き」と語ったのも納得がいく、素敵なナンバー。
そして何より、愛希の輝きが素晴らしい。
安定した歌唱はもちろん、時には悩み苦しみながらもひたむきに生きるマリーとして、観る者を惹きつける。まさに“はまり役”で、ぜひ公演を重ねてマリーをさらに深化させていってほしいと願わずにはいられない。
取材・文:金井まゆみ