指揮者マリオッティが奏でるモーツァルトとシューベルトの世界
長年音楽監督を務めてきたボローニャ歌劇場、ローマ歌劇場のコンサート・シーズンに加え、RAI国立交響楽団やサンタ・チェチーリア国立アカデミー管弦楽団などで幅広いレパートリーを指揮してきた。
中でもマリオッティが大切にしているのがシューベルトの音楽だ。シューベルトはロッシーニのほぼ同世代の作曲家であり、シューベルトが生涯を過ごしたウィーンはロッシーニが席巻していた時代にあった。それに加え、古典派からロマン主義への発展に大きく寄与したシューベルトの先進的な音楽性と、内気で詩的なところがある世界観は、マリオッティの個性と親和性があるように感じられる。そういう意味でマリオッティは、クラウディオ・アバドにも共通する点があるかもしれない。
アバドと共通するといえば、共演者からの信頼がある。マリオッティの、オペラ歌手やソリストへの全力での献身は、彼らから最良のものを引き出して魔法の時間を生み出す力がある。今回の演目では萩原麻未とのモーツァルト ピアノ協奏曲に注目したい。
そしてマリオッティのシューベルト「ザ・グレイト」の解釈は、高い実力のある東京交響楽団との演奏で聴衆に新鮮な喜びをもたらすに違いない。