くらし情報『中村隼人、市川團子らで『新・水滸伝』が歌舞伎座に初登場』

中村隼人、市川團子らで『新・水滸伝』が歌舞伎座に初登場

(天に替わって道を行う志を抱け、の意)を思い出し立ち上がる後半まで、堂々のヒーローぶり。中国風の衣裳やマントもピタリとハマり、高きゅうらとのスピード感ある立廻りや、“飛龍”に乗っての宙乗りで魅せる。そんな彼の教え子で、今は朝廷軍の兵士となっている彭き(市川團子)は、まっすぐな瞳で師を慕う姿が印象的。ある行動を起こす彭きと、その想いを受け止める林冲のシーンでは、客席からすすり泣きが漏れていた。

他にも、梁山泊の盗賊仲間であるお夜叉(中村壱太郎)や、李逵(中村福之助)の、粗暴だが温かさがにじむ佇まい。王英(市川猿弥)と女戦士の青華(市川笑也)の微笑ましい恋の行方や、朝廷側ながら葛藤を垣間見せる高きゅうの側近・張進(中村歌之助)など、演者たちの見逃せないシーンが満載。最後までその世界観に引き込まれた。

第一部の『裸道中』では、博徒・勝五郎(中村獅童)と女房みき(中村七之助)の、貧しくも仲の良い夫婦ぶりに笑い、清水の次郎長(坂東彌十郎)と女房お蝶(市川高麗蔵)の情け深さに胸が迫る。
第二部『新門辰五郎』での辰五郎(松本幸四郎)と会津の小鉄(中村勘九郎)の矜持と男同士の絆など、歌舞伎ならではの人情をじっくり味わえる八月となった。

取材・文:藤野さくら
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