くらし情報『名匠・山田洋次の演出が光る、獅童と寺島の“文七元結”』

名匠・山田洋次の演出が光る、獅童と寺島の“文七元結”

あかぎれの手を震わせながら話すお久と、吉原の女将らしく貫禄を漂わせながらも、少女の訴えに真剣に耳を傾けるお駒の表情が胸を打つ。

場面が変わって長兵衛の家では、今日も博打で負けて着物まで取られた長兵衛が。そこへ、お久が帰らないのを心配して探しに出ていたお兼が戻ってくる。長屋の女房たちとしゃべりながら登場した寺島は、いかにも貧乏長屋の女房らしいこしらえ。お久のことを心から想いつつ長兵衛をなじる姿は、歌舞伎の舞台に溶け込みながらも、芯の強さを感じさせる佇まい。人はいいのだが甲斐性なしの長兵衛に扮した獅童も絶品で、寺島とのあうんの呼吸が楽しい。演出に加え舞台セットや照明にも山田監督の手腕が光り、人情の機微を描く名作『文七元結』の魅力を改めて感じた。

その他、尾上松緑が躍動する『天竺徳兵衛韓噺』や、人気力士に扮する獅童と坂東巳之助の対比が面白い『角力場』、秋にピッタリなモチーフの舞踊『菊』など、多彩なラインナップ。
坂東彌十郎が水戸光圀公に、中村福之助と中村歌之助が“助さん格さん”に扮する『水戸黄門』は、48年ぶりの上演。どれも見逃せない十月となった。

取材・文:藤野さくら
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