中絶、突然死、母性神話……『透明なゆりかご』が描く妊娠・出産の現実
日本の年間死亡原因第一位は?
『透明なゆりかご』(沖田×華/講談社 KC KISS)既刊2巻
評論家の斉藤美奈子さんが書いた『妊娠小説』という本があります。「望まない妊娠」を扱う小説を取り上げ、その仕組みを解明していく。その中で、産婦人科がどれだけ冷たく、暗く、そしてしめった場所として描かれているかが述べられています。
こうして植え付けられてきた産婦人科のダークなイメージは、女が気軽に自分の身体について相談できる機会を大きく失ってきたと感じます。産婦人科は内科を兼ねていることも多いので、女性は身体の不調を感じたら産婦人科に受診するといいと言っている医師もいます。女性ならではの病気がある以上、産婦人科にかかった方が効率がいいんです。
『透明なゆりかご』は、産婦人科でアルバイトをしていた女性が描いた作品です。女性たちが通う病院ならではの悲喜こもごもが描かれています。
幸せな出産の数よりも、胸の痛む堕胎や死産といったドラマの方が圧倒的に多い。いまだに出産は命をかけた大事業なのだとわかります。
作品中、「日本の三大死亡原因は、心疾患でも脳血管疾患でもガンでもない」と語られます。日本国内で年間30万もの人工中絶が行われているのだそうです。