中絶、突然死、母性神話……『透明なゆりかご』が描く妊娠・出産の現実
望まれない妊娠・出産があることを、普段私たちは意識しません。少子化、少子化というけれど、人工中絶の数が少しでも減ればいいんじゃないか、という気になります。
“望まれない”妊娠の背景にあるもの少女漫画で必ず“愛”が語られるのは、それが一番女にとって大きな保障になるからです。セックスをして万が一自分が孕んだとしても、男の“真実の愛”があれば大丈夫。きっと自分を守ってくれるはずだから。だけど、現実はそんな上手くいく話ばかりじゃないようです。
子どもさえ産めば自分のものになってくれると信じて出産した女性、不妊治療の末にようやく妊娠した女性を待っていた予想外の不幸、流産してしまったことへの罪悪感、出産がいまだに命がけであること……。
この作品を読むと、妊娠が“望まれない”ことになった理由は、たいていの場合男性にあるんです。
女は体と心を傷つけることだから、環境が整っていればやっぱりできれば産みたいと思うはず。ああ、現実は辛い。自分が男にとって便器でしかなかったとは思いたくない。でも、妊娠を相手と分かち合えないのなら、便器だったのと同じこと……。そういう話も、残念ながらいくつも描かれています。
フワフワとした柔らかい絵柄の作品だけど、言ってることはけっこう辛い。