目覚めよ本能。「自意識過剰」を手放せば、心の重荷がちょっと減る
すると、たとえば照明を一切つけないとなると、帰ってきて鍵を開けたとき部屋が真っ暗なので、目が慣れるまでしばらく玄関にたたずんでいなければなりません。でも逆にいうと、しばらくたたずんでいれば暗闇でも目が慣れてくるので、お風呂に入るとか着替えるとかの日常的なことは、照明がなくても普通にできるらしいのです。
このエピソードで私が思い出したのは、昨年バリ島を旅したとき、ウブドで田んぼのど真ん中にある宿に泊まったときのこと。
田んぼのど真ん中なので、電灯も周囲の店の明かりも一切なく、夜は暗い畦道の中を一人で歩いて戻らなくてはならなかったんです。iPhoneの懐中電灯で道を照らしていたとはいえ、ねばり付くような暗闇は本当に怖くて、周囲で動物や虫の鳴き声がするたびにビビっていました。でもそのときの、自分の五感がフルで動く感じや、危機意識のあまり動物の本能が少し戻ってくる感じは、ちょっと楽しかったんですよね。
なぜ生活の中で様々なものを手放すと「自分が」という意識が薄まるのか、その原理の詳しいところはよくわかりません。でも、「パートナーがいない」「友達が少ない」というだけで「私は孤独だ……」と思うのはもしかしたら早合点で、私たちは実は、本当にいろいろな命に囲まれて生きています。