100人に0.9人前後で発症する「自閉症」の生き方を問う言葉
■3:「自分らしさとは、手を伸ばせば届く心地いい芝生のようなもの」
「自分らしく」という言葉は、ヒットソングなどでもよく聞かれる、悪くいえば手垢のついた言葉ですが、そもそもなぜ、人は自分らしく生きたいと願うのか、東田さんは問いかけます。
「自分らしさに条件や基準はいらない」と東田さんはいいます。「こんな自分ではだめだと思うのであれば、その人が追い求めているものは、自分らしさではなく目標ではないでしょうか」
なるほど。外へ、外へと自分らしさを求めていっても、もしそれが手に入らなければ、つらくなってしまいそうです。
「僕が考える自分らしさとは、はるかかなたの山の頂上に咲いている珍しい花ではなく、手を伸せばすぐ届く、心地いい芝生みたいなもの」という言葉に、安らぎを覚えるのは筆者だけではないはずです。
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本書は10回ごとに先攻後攻が入れ替わるかたちで、東田さんと山登さんのやりとりが進みます。もともと東田さんの本のファンだったという山登さんの名キャッチャーぶりもさすがです。
自閉症のイメージにとらわれることなく、生き方を模索していて砂漠でオアシスにたどりつくような東田さんの言葉に、ぜひ触れてみてください。