LITALICO発達ナビがお届けする新着記事一覧 (2/137)
小学校入学を機に、発達支援施設の利用を開始しのくんは発達障害グレーゾーンの6歳の男の子です。現在小学1年生で、通常学級に籍をおいています。小学校へ進学するにあたり、一番不安だったのが、放課後のしのくんの居場所でした。私は仕事をしているので、仕事の日に合わせて放課後等デイサービスを利用することにしました。しのくんが利用している施設は、児童発達支援と放課後等デイサービスの両方を運営していたため、未就学期から児童発達支援の利用を開始したことで、放課後等デイサービスの枠を優先的に案内してもらうことができました。小学校入学という環境が激変する時に、慣れた環境でスムーズに利用を開始できたのは、しのくんにとってもよかったのではないかと思っています。しのくんの通う小学校は集団登校をする決まりになっています。小学校に通い始めてもうすぐ1年になりますが、朝はまだ登校に不安のあるしのくんと一緒に手をつないで学校へ行っています。下校時は自力で帰ってきていますが、心配ないとは言い切れないのが正直なところです……。しかし、放課後等デイサービスに行く日は、家まで送ってもらえるので非常に助かっています(送迎があるかは放課後等デイサービスによって異なります)。Upload By keikoまた、しのくんは発語が遅かったので、2歳から「ことばの教室」がある病院に通い、月に1回のペースで言語聴覚士の指導を受けていました。この「ことばの教室」は小学校入学のタイミングで卒業となり、相談先が減ってしまい心細く思っていましたが、放課後等デイサービスでは宿題もみてくれて、療育的な支援もしていただいているのでとても心強いです!利用した日には、その日の様子について写真と共に詳細を教えてもらえます。Upload By keikoしのくんの通っている放課後等デイサービスは、夏休みや冬休みなどの長期休暇中も利用することが可能です。長期休暇の時は普段より預かり時間が長く、朝から夕方までみてくださるので、とても助かっています。活動の一環で工場見学や室内遊園地に連れて行ってくれたり、夏は流しそうめんなどのイベントもあったりと、放課後等デイサービスの先生方には感謝しかありません(預かり時間や支援内容は放課後等デイサービスによって異なります)。2学期から通級指導教室を利用。どんなことをしている?しのくんは小学校の通常学級に在籍していますが、一斉指示が入っていきにくい傾向があるため、2学期から通級指導教室を利用することになりました。週に1回、学校内の別教室に移動して個別で支援を受けています。通級指導教室に通う前は、苦手な科目を個別で指導してもらうのかな?と思っていましたが、そうではなく、しのくんが苦手な短期記憶(特に聴覚的な記憶)を強化するトレーニングや、体の動かし方のトレーニングなどを行ってもらっています。通級の先生から授業のフィードバックやアドバイスをいただけるので非常に助かっています。通級の時間になると、通常学級の教室まで先生が迎えに来てくれるのですが、本人は特に友だちの目を気にすることもなく、「行ってきまーす!」と元気いっぱいで通級に行くらしいです。Upload By keikoまた、つい最近まで、国語が苦手なしのくんに対して、国語の時間は補助で先生がついてくださっていたようです。2月から先生の補助がなくなってしまったので、しのくんに不安はないか聞いたところ「やるしかないわと思って、頑張ってる」と言っていました。成長を感じます。Upload By keiko進級に向けて現在しのくんは、放課後等デイサービスと学校の通級指導教室で支援を受けつつ、苦手な部分をサポートしてもらうことで、通常学級でも大きな困りはなく過ごすことができています。また、月に1回のペースで担任の先生とも面談していただけるので、学校での様子もよく分かりますし、こちらが不安に思っていることも伝えやすいと感じています。たくさんの新たな相談先ができたことで、親としても安心感につながっています。これから学年が上がるにしたがって、さらに困りごとが出てくるかもしれないですが、その都度相談に乗ってもらえる環境があるので過剰に不安を感じることはないと思います。周りのサポートには感謝しかありません。家庭と学校、放課後等デイサービスと連携しながら、これからもしのくんを見守っていきたいと思います。執筆/keiko(監修:井上先生より)しのくんのように担任の先生が月に1回面談してくれるのはとてもいいですね。お母さん、担任の先生、通級の先生、放課後等デイサービスの4者が、互いに相談しやすい雰囲気を感じられました。家庭と教育と福祉の連携「トライアングル」プロジェクトを政府も進めているところですが、しのくんのケースは理想的な形だと言えるのではないでしょうか。これからしのくんが2年生になると学習内容の抽象度が上がったり、担任の先生が変わったりという不安要素もありますが、個別の教育支援計画なども見直しながら、このネットワークを存分に活用して「チームしのくん」が続いていくといいと思います。前の記事はこちら(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
2025年03月13日読めるけれど書けない漢字。問いから外れた答えを書く文章読解。ASD(自閉スペクトラム症)の息子は国語に困難さがありました6歳でASD(自閉スペクトラム症)の診断を受けた現在14歳の息子は、漢字を読むのは得意でしたが、書くことや文章の読解に困りがありました。幼児期からルビ付きの図鑑を一人で読んでいましたし、小学校入学後もテストはいつも満点。「漢字が苦手」と感じることは全くありませんでした。ところが、小学校2年生頃から、宿題の漢字ノートを1ページ書くのに1時間以上かかるようになりました。様子を見ていると、何度も手が止まり、書けなくなってフリーズする場面が。理由を聞いても「疲れた」と一言だけ。たくさん練習しても翌日には全部忘れてしまい、「思い出そうとしてもはっきり思い出せない!書けない!」と大泣きしたこともありました。Upload By ユーザー体験談また、文章読解でも、問いとまったく違う答えを書くことが増えました。どうやら、長文の前半は理解できているものの、後半になると頭が情報でいっぱいになり、話の要点がつかめなくなっているようでした。このような漢字と文章読解への困難さですが、小学校高学年になった頃にはずいぶん改善されました。この記事では、息子の漢字、文章読解への取り組みの工夫と、学校に求めた合理的配慮についてお話しします。国語に苦手さを感じている方にとって少しでも参考になるとうれしいです。覚えられない理由は「認知の偏り」?学び方の変更と板書対策、学校へ求めた「折り紙とお絵描き」という合理的配慮最初はLD・SLD(限局性学習症)を疑いましたが、かかりつけ医からは「認知の偏りの影響が大きい」との指摘がありました。「苦手な分野は繰り返し学習することで定着させていくのがいい」とアドバイスを受け、息子に合う学び方を模索しました。いろいろ調べていると、漢字の覚え方には「音と組み合わせる」「全体の形でとらえる」「部分的な形の組み合わせで覚える」などがあると知りました。息子の場合、音よりも視覚的に部分ごと形を覚え、それを組み合わせる方法が向いていたので、書き順ではなく、ブロックごとに分けて漢字を覚えることを意識しました。無料ダウンロードできる認知傾向に応じた漢字プリントを見つけ、それに取り組むようになりました。すると、50問テストで5問正解できたら大喜びするほどの状況から、45問以上取れるようになりました。また、漢字が苦手なこととつながっていると思うのですが、息子は板書がまったくできませんでした。また、当時は授業中の多動も多くあることも課題でした。息子に板書ができない理由、多動になる時の気持ちを確認したところ、はっきり教えてくれました。「何を書いて良いのか分かんなくなって、途中で書けなくなるんだよ」「じっと座っているとだんだん不安になるんだよ。息苦しくなるから、動き回ることで気持ちを落ち着かせようとしているんだ」私はさっそく医師に相談をし、板書については「絶対に覚えるべき単語のみをノートへ書き込み、ほかに写す必要のあった内容は、学校から帰宅後、家で記憶を手繰り寄せてノートに書きこむ」と方針を決め、学校の許可を頂きました。また、多動は不安からくる行動であることから、授業中、本人が望んだら折り紙やお絵描きといった座ってできる行動をすることで、不安を解消をさせてほしいと配慮を求めました。学校は始めこそ渋ったものの、医師の診断書を用意したことで何とか受け入れてくださりました。結果的に、折り紙やお絵描きをしながら学ぶことで、先生方が思う以上に勉強に集中し、積極的に挙手をして発言もするようになったという息子。先生方は苦笑いしていました。Upload By ユーザー体験談宿題は、漢字ドリルと漢字ノートへの書き込み2回が毎日の宿題でしたが、苦手が分かってからは漢字ドリルの書き込みと無料ダウンロードできる認知傾向に応じた漢字プリントに取り組み、それを宿題として提出しました。それからは、日々の勉強にも余裕が生まれ、息子も楽になったようでした。やがて3年生から理科や社会が始まると、特に社会で「漢字で答える問題」が書けず苦労していました。ですが、解答が漢字指定がない場合はひらがなで書いていいんだよ伝えると、いくぶん心の負担は軽減したようです。文章読解は、サクッと終わる負担の少ないドリルでコツコツ積み上げ文章読解については、小学3年生から市販の一般的なドリルを使って学習しました。特別支援の教材も試しましたが、問題量が多く、息子が「見るだけでつらい」と言うため、見た目の負担が少なくサクッと終わるドリルを選びました。2年生の頃からすでに長文読解が苦手だったので、2年生向けのドリルからスタート。毎日1枚ずつ解くことで、少しずつ正しく答えられるようになり、長文の最後までしっかり読めるようになりました。そして、中学生になってからは通信教材を活用して予習をするようにしました。そのおかげで学校の授業もしっかり聞けるようになり、小学校の頃のようなつまずきはなくなりました。また、今は読解のコツが書かれた高校受験向けドリルも活用中です。数学の公式のように「答えがどこにあるか見つけるコツ」が書かれているので、息子には分かりやすかったようです。ただ、例題だけは私も一緒にやっています。一緒に取り組みながら気を付ける点をさらにアドバイスすることで、息子は「一人でやるより、内容が印象に残る」と言っています。中学校では予習主義に。塾での取り組み方には成長が見えて感動!中学生から始めた「予習型」ですが、家で一度確認していることから心の余裕が生まれるようで、学校ではしっかり先生の話を聞き取り学べるようになりました。「予習型」は息子にあっているようです。Upload By ユーザー体験談また、通っている中学校では5教科すべてに先生方が作成した専用プリントがあり、生徒はそのプリントに黒板の内容や先生の話を書くようになっています。どこに何を書けば良いのかが一目瞭然でもあることから集中して学習できるようです。また、塾選びでは、高校受験を見据えて応用力をつけられるところを選択。先生の話が楽しいという理由で最終的に決めました。塾では自主的に問題に取り組むようになり、授業時間外に先生へ採点をお願いすることもありました。その姿に感動していたのですが、実はテキストを終わらせると先生から「検印」がもらえるそうで、その検印付きのテキストに憧れていたという単純な理由。それでも勉強する姿勢がついたことは大きな成長でした。Upload By ユーザー体験談息子は「勉強には終わりがないね」と嘆きつつも、目標の大学を目指しあきらめることなく毎日勉強を頑張っています。また、自分の特性も受け止められるようになり、今のうちに得意をさらに伸ばそうと英語に力をいれ、昨年無事英検3級も合格し、大喜びしておりました。目に見えにくい特性や学習の困難さにおいては、今も苦労が多くあり、その度に悔しいと落ち込むこともありますが、どうかこれまでの自身の積み重ねを否定することなく、これからも日々精進してほしいなと願っています。イラスト/志士ノまるエピソード提供/なの(監修:森先生より)勉強のつまずきについての体験談をありがとうございます。 お子さんに寄り添いながら、試行錯誤をして工夫を重ねられてきたのですね。 今ではしっかりとお子さんに合った勉強習慣が身について、英検合格まで達成されたとのこと、本当に頑張られましたね。さて、ASD(自閉スペクトラム症)の特性のひとつとして「認知の偏り」があります。 視覚的・聴覚的情報や記憶の定着に独自のパターンを持つことがあるのです。 そのため、漢字の「書き取り」が苦手でも「読む」ことは得意、といったケースがあり、勉強の方法に悩まれることも多いでしょう。 視覚的に全体を認識する能力が高い一方で、細部の記憶や短期記憶が難しいといったことが考えられます。「ブロックごとに分けて漢字を覚える」という方法は、この認知特性に合わせた素晴らしいアプローチですね。 全体像を分解して理解するのが得意なお子さんにはとっても効果的なのではないでしょうか。また、お子さんが「じっと座っていられない」という場合、感覚調整の難しさや不安が身体的なストレスとしてあらわれていると考えられます。そんな時には、今回のケースのように、折り紙やお絵描きなど、座ったままできる方法で気持ちを落ち着かせることが効果的です。 えんぴつ回しやハンドスピナーのような手遊び、感覚遊びで落ち着くこともありますね。 どのような方法が合っているか、試しながら探していくのがいいでしょう。発達障害は目に見えにくい特性ですので、時に周囲から誤解されてしまうこともあります。 医療機関などの専門家のサポートを受けながら、学校とよく相談して環境を整えることが大切です。 これからもお子さんが自分のペースで進んでいけるよう、応援しています。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。SLD(限局性学習症)LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。
2025年03月12日授業中トイレから戻ると、教室に鍵がかかってはいれない……Upload By かなしろにゃんこ。ある日、授業中にトイレに行きたくなったリュウ太は、先生に許可をもらい教室を出ました。トイレを済ませて教室に戻ると、ドアが開きません。いつの間にか鍵がかかっていたのです。先生が廊下に締め出すはずがないと思ったリュウ太は「誰かが中から鍵をかけたな!」と考え、頭にきて思いっきりドアを蹴りました。Upload By かなしろにゃんこ。Upload By かなしろにゃんこ。ドアを蹴った音で先生が気づき、鍵を開けてくれました。しかし、リュウ太は蹴ったことを注意されてしまいました。それでも、リュウ太には本人なりの理由があり、みんなの前で説明しました。「誰かがいたずらで、先生に気づかれないように鍵をかけたんだと思う。もしそんなことをされなければ、僕はドアを蹴らなかった!僕にこんなことをさせたのは、鍵をかけた人だから、僕は悪くない!」Upload By かなしろにゃんこ。「自分を守るため」リュウ太の考えUpload By かなしろにゃんこ。私は「ドアは蹴らずにノックで済ませればいいのに……」と思いましたが、リュウ太はこう言いました。「いつもからかってくる子がいて、先生以外の人は誰が悪いか分かったと思う。このみんなの前ではっきり言えば2度とこんなイタズラをしなくなると思ったからそうした!」リュウ太は、自分へのいたずらが繰り返されないように防ぎたかったようです。とはいえ、ドアを蹴るというやりすぎとも言えるリュウ太の行動に先生も頭を抱えたことでしょう。それでも、リュウ太の説明を聞き、先生は彼なりの理由を理解してくれました。この頃、リュウ太はクラスの男子によくからかわれていて、それがストレスになっていました。Upload By かなしろにゃんこ。リュウ太は「少しでもイヤなことが起きるのを防ぐには、“オレは弱くない!かかってこい!”という姿勢でいないとダメだった」と話してくれました。不条理と戦うためのトラブルならば……学童期、リュウ太はあちこちでトラブルを起こし、私はその尻拭いに謝ってばかりでした。「問題を起こさずに学校生活を送ってほしい」と願っていましたが、このときばかりは、不条理と戦うためのトラブルならば目をつぶろうと思いました。「自分を守るためなら、そういう方法でも仕方ないかな」そう思い、私はリュウ太を叱るのではなく、彼の考えを尊重することにしました。Upload By かなしろにゃんこ。最初にドアを蹴ったのはよくない行動でしたが、怒りにまかせて乱暴なふるまいを続けるのではなく、そのあと冷静に自分の意見をみんなの前でしっかり伝えられたことに、成長を感じました。これ以降、リュウ太が教室のドアを蹴ることはありませんでした。はい、二度とやらないでほしいと思ってハラハラ過ごしていた母でした。執筆/かなしろにゃんこ。(監修:初川先生より)リュウ太くんのドアを蹴ったこと、その理由についてのエピソードをありがとうございます。リュウ太くんがそれまでクラスのからかってくる子たちにとてもイライラさせられていて困っていたこと、そしてそれをいつか先生にもみんなにも伝えねばと思っていたことがよく分かる一件でした。たしかにドアを蹴ることはよくはないですし、ノックでも済むかもしれません。ただ、リュウ太くんにとって、「今、先生に、みんなに伝えなければ」と思ったことで、そしてある意味苦肉の策だったのでしょう。自分が弱くないということを伝えるというよりも、嫌なことをされて困っているんだ、そんなことはもうされたくないと強く訴えることは大事なことです。ただ、それを当該の子たちと対峙した場面でのみ伝えてもなかなか取り合ってくれないことも(残念ながら)あるかもしれず、学校の中では先生という大人のいる場面でそれを伝えられたのはよかったと思いますし、先生も頭ごなしに怒るのではなく、理由を聞いて、みんなに説明する機会も設けてくださり、よかったですね。学童期にさまざまトラブルを起こしたり、手や足が出たりするお子さんだと、周りの人たちも「またか……」や「粗暴な子だな……」とか、そのお子さんが悪いという前提で物事を見てしまうことが多いと思います。そして保護者の方も、とにかくもめごとを起こさずに過ごしてくれという願いを持つことでしょう。ただ、今回もそうですが、そのお子さんにはそのお子さんなりの強い思いがある場合があります。それが誤解や早合点によるものな場合もあり、話し合いながら修正する必要があることもありますが、「そう捉えたなら、そう思ってしまうよね」とお子さんの気持ち自体には理解ができる場面もあるでしょう。そのうえで、「しかし、○○したのはよくなかったかもね」と行動の話をしていただきたいなと感じます(いきなり問答無用で、「○○するのはダメでしょ!なんでそんなことしたの!」から入ると、本人の気持ちまで行きつくことなく、本人らもつらい胸の内を話そうとも思わなくなってしまうことが気がかりです)。前の記事はこちら(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
2025年03月11日当時1歳、おとの障害に気づくUpload By ほかかほ1歳頃のおとは、目が合わず、模倣せず、一緒に遊びたがらず、こだわりが強く、指差しせず、クレーン現象で要求を伝え、親への愛着が見られないなど、ASD(自閉スペクトラム症)によく見られる特徴を網羅していました。1歳3か月で歩き出すようになると、多動と衝動性も目立つようになってきました。道で手を繋いでいても、私の手を振りほどいて気になる物のほうへ突っ走って行くので、当時外を歩くのは命がけ。家の中でも家具や家電に登ったり倒したり、破壊行動や危険行動が止まりませんでした。私は当時、転勤帯同で周りに頼れる人もいなかったことから、おとを連れて近所の児童館や子育て支援センターによく行っていました。そこでもおとはドアを開閉し続けたり、フラフラになりながら階段昇降をし続けたりと、不思議なこだわり行動を繰り返していました。また読み聞かせ・体操・リトミック・キャラクターショーなど、参加したあらゆるイベントでその場から脱走。まともに参加できたことが一度もありませんでした。当時のおとは、とにかくその場に短時間でも留まっていることができなかった思い出です。このようなおとの特性が強く表れた行動に、転勤帯同の孤独も重なり、私は心身ともに追い詰められていきました。転機となった1歳半健診Upload By ほかかほ私の父はアスペルガー症候群(※)の診断を受けており、また私は大学生の時に心理学を専攻していたことから、元々発達障害について何も知らないという状態ではありませんでした。そのためおとが1歳前半の頃は、日ごろの様子から「おとは発達障害だろう」と認識しており、1歳半健診で発達の相談をしようと心に決めていました。当日1歳半健診の会場で暴れ、泣きわめき、嘔吐したおとを保健師さんが心配し、自宅での健診を提案して下さいましたが、私は「発達相談を受けたい」と強く希望しました。すると保健師さんがすぐに発達相談会場に通してくださり、その相談会場にいた医師から「息子さんは早く医療につながったほうがいいと思います」と言われました。この1歳半健診を契機に、発達外来のある病院への受診に繋がります。※以前は、言葉や知的の発達に遅れがない場合「アスペルガー症候群」という名称が用いられていましたが、アメリカ精神医学会発刊の『DSM-5』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第5版)において自閉的特徴を持つ疾患が統合され、2022年(日本版は2023年)発刊の『DSM-5-TR』では「自閉スペクトラム症」という診断名になりました。適切な支援につながるUpload By ほかかほ1歳半健診で紹介された病院での診察と発達検査を経て、療育やOT(作業療法)、発達障害者支援センターなど各機関にスムーズに繋げていただき、適切な支援を受けられるようになりました。後にさらに転勤帯同して気づくのですが、当時これほどスムーズに適切な支援につながったことはとてもラッキーな出来事だったと思っています。その後も夫の転勤帯同の度に、各地で福祉・医療現場の皆さまに支援をしていただきました。小学校に入学してからは学校の先生方にも支えていただき、今に至ります。適切な支援を受けたおかげでおとはとても成長し、私も相談先や休息の時間を確保でき、追い詰められていた気持ちは消失していきました。おとの現在の様子Upload By ほかかほ現在のおとは小学3年生。昨年の秋に転勤に伴う転校をし、転校前と同様、公立小学校の特別支援学級に通っています。おとは未就学児時代と比べて格段に成長しました。長年私を悩ませた多動はほぼなくなり、破壊行動は一切せず、親への愛着が生まれ、愛情表現を毎日してくれるようになりました。おとは学校の先生を信頼しており、授業を楽しみにし、苦手なことも素直に頑張っています。そして、いつもニコニコ楽しそうにしています。しかしおとは知的障害(知的発達症)を伴うASD(自閉スペクトラム症)。脳の機能障害であり、治ることはありません。現在おとが抱える問題は「言語」と「他者との関わり」の2点が主だと思っています。「言語」は知的障害(知的発達症)もあるため、複雑な会話、自分の心情・出来事・状況を詳細に語ること、また複雑なストーリーを理解・表現することが難しいです。本人もうまく伝えることができず、もどかしく、しくしく泣く時があります。「他者との関わり」は、おとは大人にはよく話しかけるのですが、同年代の子どもに対する関心がほとんどなく、自分からはほぼ話しかけません。お友だちから話しかけられても無視してしまうことが多く、転校前はそれが原因でお友だちとのトラブルに発展したことも何度かありました。この主な2つの問題以外にもおとは、完璧主義・こだわりの強さ・偏食などさまざまな問題を抱えています。しかしおとは毎日ニコニコして課題に素直に挑戦し、頑張っています。今私にできることは、毎日おとと向き合い、おとが適切な支援を受けられるようにし、自立に向けてスモールステップで一緒にコツコツ課題に取り組んでいくことだと思っています。そしておとを見習い、毎日笑顔で素直な気持ちでいること。そんな私たちのこれまでの、これからの経験がもしも誰かのお役に立てたならとてもうれしいです。今後もコラムをお読みいただけましたら幸いです。執筆/かほ(監修:室伏先生より)かほさん、おとさんのお困りに気づかれてから、医療に繋がり、支援を受けられるようになるまでの経緯を、かほさんのお気持ちを交えながら詳しくお伝えいただき、ありがとうございました。医療や福祉に繋がって、さまざまな情報や支援を得ることはとても大切なことですよね。地域にもよりますが、医療機関の受診がなくても療育を受けられる場合もあり、療育を受けていらっしゃるお子さんの中でも、医療に繋がっている方、発達の相談については医療機関を受診をしたことがない方がいらっしゃると思います。療育手帳の取得にも必ずしも医療機関の受診は必要はなく(療育手帳の発行でも児童相談所での検査や面談等は必要。精神障害者保健福祉手帳の発行には受診が必要です)、発達検査については発達支援施設でも受けられる場合があります。医療機関を受診された場合のメリットの一つとして、診断を受けることがあります。発達支援施設では、そのお子さんの得意なことや苦手なこと、特性についてお伝えすることはできても、診断することができるのは医師のみです。診断を受けることで、お子さんの困りごとや気になる行動について、親御さんの理解が進み関わりやすくなることもありますし、園・学校の先生、発達支援施設の支援者などとお子さんの特性や支援の仕方を共有しやすくなります。ほかには、睡眠や癇癪、多動などのお困りについて、薬物治療を受けることで、お子さんが過ごしやすくなり、発達、生活能力が伸びることもあります。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2025年03月10日新年度はいつも調子を崩す…私立の中高一貫の女子校に通っていた私。公立の小学校に通っていた頃に比べ、おっとりとしたクラスメートに囲まれて、学校での人間関係ではずっと楽に過ごせていました。しかしいま思えば、決まってなんだか心身がザワザワして調子が悪くなるな、という時期がありました。それが新年度の時期です。登校時間が早くなる私の通っていた学校では夏時間と冬時間がありました。夏時間は冬時間に比べ、タイムテーブルが前倒しになります。新年度になったら夏時間が適用され、冬時間の時期よりも少し早く起きて早く登校しなければならなくなる仕組みでした。2時間かけて登校していた私は、冬至前後の時期は起きるとまだ真っ暗。それが年度末に向かって徐々に夜明けが早くなり、起きるのが楽になっていく。でも4月になって夏時間が適用されると、せっかく楽になったぶんが登校時間の前倒しで相殺されてしまうのです。そうして、また真っ暗な時間に起きなければならなくなるのでした。まだ自分に発達障害があり、人よりも疲れやすい傾向があることを自覚していなかった私。睡眠不足で疲れ切り、過緊張で睡眠の質も悪い状態で、まだ真っ暗なうちに起きて支度しなければならないのは、身体にも心にもとてもしんどいことでした。4月の電車は混んでいる登校時間帯は通勤ラッシュの時間帯でもありました。新年度の時期は新入生だけでなく、新社会人や転職した人などが新しく入ってくるので、「いつもの時間のいつもの車両」でも、違う環境になってしまうわけです。新しく入ってきた人たちはなんとなく電車の中での身のこなしに慣れていなかったりして、ただでさえぎゅうぎゅうの電車がさらに混んでいるように感じられます。「ここの車両のここの椅子の前の、端から何番目のつり革」とだいたい立ち位置を決めていたり、毎日顔を合わせるうちになんとなく互いに気を遣い合って無言の中で立ち位置を融通しあっていたような人との関係性も変わってしまったりします。私は小柄でつり革に手が届きづらいですし、DCD(発達性協調運動症)の影響かバランスをとるのが苦手で、電車が揺れるとすぐにフラついてしまうので、この時期はとりわけ、電車を降りた時点でぐったりしてしまったのでした。学年が上がると「暗黙のルール」が変わるのが気持ち悪い新年度になると1つ学年が上がり、私は生徒たちの中で1年先輩になります。そして、「学年が1つ上がるごとにスカートの丈を3センチずつ短くしてもいい」「3年になったら第1ボタンを外してリボンを少し緩めていい、高校になったらリボンなしでいい」みたいなルールが適用されていきます。しかも、それらのことははっきりと「今日からこれをしていいよ」と明言されるのではなく、そのルールに違反したときに上級生からシメられる、同級生から白い目で見られる、ということから徐々に明らかになるのです。こういう、「歳が1つ上というだけで扱いが1つ緩くなる」「私は私なのに3月31日を境に社会的な扱われ方が変わる」みたいなことが、暗黙のルールとか社会的な相対的関係性の感覚が発達していなかった私には気持ち悪くてしかたありませんでした。こうした気持ち悪さはストレスの量としてはそれほど大きなものではありませんでしたが、すでにいろいろなストレスの累積している私にとっては「コップの水を溢れさせる最後の1滴」のようなものでした。当時言語化はできなかったのですが、胸がモヤモヤザワザワしてつらかったのを覚えています。中高当時恵まれていたこと私の通っていた学校は保守的なお嬢様校だったため、校則はとても厳しかったです。また、大学以降の生活と違い、学校側がギチギチにタイムテーブルを組んでいました。これは息苦しくもありましたが、学校側の用意するルールやルーティンに従順に従っていれば日々が回っていくということでもありました。その点は、変化の苦手な私にとっては楽だったかもしれないと思います。今はぼちぼち新年度を乗りこなせている今はフリーランスとして働いている私。取引させていただいている企業や行政手続きの関係で、やはり年末年始や年度の変わり目といった節目には私も間接的な影響を受けます。それでも、そもそも無理のない範囲の仕事しかしないようにしていますし、変化が苦手な自分の特性もよく理解しています。調子を崩しそうな兆候に早めに気づいて対処でき、ぼちぼちの状態で乗り切れるようになりました。自分の特性の理解と、特性に合わせた環境の調整は本当に大事だなと、つくづく実感しています。宇樹義子/文(監修:鈴木先生より)誰でも環境が変わる時には不安がつきものです。ASDの特性の一つとして環境の変化に弱いことがあります。同じ環境が続けば楽なのです。私立の学校の場合は公立と違い、教師の異動がないのでその分、多少環境の変化は少ない状況にあったと思われます。ただ、4月はクラス替えもあり、周りの環境は多少なりとも変化する時期です。卒業後も大学や会社の異動などで今後も環境の変化は避けられないことがあります。できるだけ早く仲間をつくって緊張を和らげる工夫をしてみてください。暗黙のルールも行間の汲み取りが苦手なASDの方にとっては苦痛です。ただ、郷に入っては郷に従えで、社会人になってからも仲間づくりが解決の一歩になりえます。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2025年03月09日育児と仕事、服薬メリデメ、進路と働き方、合理的配慮など……発達障害のお子さんを育てる保護者の方にとって気になる問題は?発達障害のお子さんを育てる保護者の方にとって気になる問題を読者体験談コラムでチェック!2月は、子ども2人が発達障害・仕事復帰への道は?「育児と仕事の両立」についてのコラムや、小1でのADHD(注意欠如多動症)診断時から高1までの服薬生活を振り返った「服薬のメリットデメリット」について、通信制高校に通う場面緘黙の娘さんの卒業後の進路問題「高校卒業後の進路・働き方」、もしかしたら娘はLD・SLD(限局性学習症)なのでは?と感じてから診断・合理的配慮を受けるまでを綴った「学校で受けている5つの合理的配慮」についてなど、さまざまなエピソードをコミックエッセイ仕立てで紹介しています。子どもが小学生になったら「仕事復帰」、願いは叶わずーー。現在高校3年生の娘さん、高校1年生の息子さんは、二人とも小学校1年生でADHD(注意欠如多動症)、ASD(自閉スペクトラム症)の診断を受けました。行き渋りや早退、学校トラブルなどがある子どもたちへの対応を優先すると、平日仕事をすることはどうしても難しいと感じ、仕事復帰を断念しました。しかし、放課後等デイサービスがきっかけで生活に変化が……!?仕事と育児の両立で悩んでいる保護者の方にぜひ読んで頂きたいコラムです。コンサータ、ストラテラ、インチュニブ、ビバンセ……これらのお薬の名前を聞いたことのある方も多いのではないでしょうか?小学1年生でADHD(注意欠如多動症)、ASD(自閉スペクトラム症)と診断を受けた息子さん。服薬も同様に小学1年生から始めました。さまざまな薬を試す中で副作用に悩んだ日々や得られた効果、その後高校生になった息子さんの服薬についての課題や飲み忘れ対策など、服薬について知りたい方にとって参考になりそうな情報が満載です。※服薬については個人差が大きいので、使用の際は必ず医師に相談し、医師の判断に従ってください場面緘黙の娘、高校卒業後の進路はどうする!?現在24歳の娘さん、4歳の時にASD(自閉スペクトラム症)と診断されています。こだわりが強く、場面緘黙があり、怒りの感情を抑えることが苦手です。小・中学校は学区の学校の通常学級に所属し、週1で情緒障害等通級指導学級(現在の通級指導教室)に通いました。高校は特別支援をしてくれ、通学もできる通信制高校に入学。その後迷ったのは、高校卒業後の進路のことでした。のちのち支援に繋がりやすいことを優先しようと考え、就労移行支援事業所に通うことを選びましたが……気になっている方も多い、将来の就労についてのコラムです。おしゃべりは上手なのに「あ」が読めない……!娘さんが小学校に入学して間もない5月末、国語の音読の宿題に取り組んでいたとき、「あいうえお」の「あ」を読めないことに気づいたハツネさん。「もしかしたらLD・SLD(限局性学習症)なのでは?」と感じ診断・支援のために奮闘をします。LD・SLD(限局性学習症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、DCD(発達性協調運動症)と4種の確定診断が出たことで合理的配慮を受けることに。一体どんな配慮を受けているのでしょうか?ご自身のエピソードを投稿してみませんか?『発達ナビ 読者体験談』は皆さんのご経験を基に制作されています。ご投稿いただいたエピソードは、連載ライターさんのイラスト、専門家の先生からのコメントをつけた上で掲載させていただきます。「あの時は悩んでいたけれど、今はこうなった……」など、発達障害のあるお子さんを育児している皆さんへ、ご自身の経験をお届けいただけないでしょうか。ご応募は以下の応募フォームから受け付けております。皆さんのご投稿を、お待ちしております。【現在の募集テーマ】・障害告知・パートナー(夫婦) 関係・両親(義両親)、親族関係・進学・受験関係・冠婚葬祭関連・反抗期、思春期・自傷・学習関係・不登校、行き渋り・ゲームとの関わり・不器用さについて・ママ友や、ほかの保護者の方とのエピソード・ご近所関係(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。SLD(限局性学習症)LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。
2025年03月08日多くの保護者、専門家の協力で開発できたLITALICO発達特性検査Upload By LITALICO発達特性検査 編集部LITALICO発達特性検査は、発達が気になるお子さまと保護者のための、オンライン完結の検査サービスです。尺度開発における品質担保に関するコンサルティングを担当した佐藤秀樹先生と、実際に尺度開発を担当した野田遥さん。前編では、今回はLITALICO発達特性検査がどのように作られたのかのプロセスや、品質を担保する方法について伺いました。※尺度:心理測定尺度。質問紙への回答を数値として定量的に扱い、測定したい概念を適切に測るための物差しの役割を果たす。LITALICO発達特性検査を使いやすく信頼できる検査ツールとするため、多くの保護者の声や専門家の協力があったとのこと。後編では、保護者、専門家、開発チーム、それぞれの役割や大事にした考え方について、より詳しく伺います。認知的インタビューでの保護者の役割野田さん:LITALICO発達特性検査では、専門家による検査の質問項目の素案ができた段階から、保護者の方に質問項目についてどう思ったか、違和感がないか、どう理解したかなどを「認知的インタビュー」という方法でヒアリングし、質問項目の改善を繰り返し行ないました。複数の保護者の方に個別とグループそれぞれでインタビューをして、その内容を反映したものを繰り返し見ていただく形で質問項目の内容をブラッシュアップしていきました。認知的インタビューというのは、検査を受ける保護者の立場の方に、どのように理解したか、どのように感じたかということを主観で答えてもらうインタビューです。答えにくい質問がないか、質問の文章の意味が分かりにくいところや誤解しそうなところがないかということを洗い出し、改善するためのものです。前回もお話ししましたが、この検査では多くの保護者の方にご協力いただきこのプロセスを踏んだことが、質問紙※の妥当性の担保につながっています。ーー質問の文章や内容で、検査の妥当性は変わるのでしょうか?佐藤先生:変わります。質問の内容で回答にばらつきが出たり、回答しやすさに違いが出るということがあると思います。例えば、質問が受検者の経験や困りごとにきちんと対応していて、回答もしやすい質問と比べて、「よく分からないな」と思うような質問では回答がばらつきやすくなるので、結果の精度も下がってしまいます。ーーたしかに、何を聞かれているか分からない質問やイメージしにくい抽象的な質問は、どう答えていいか迷うかもしれません。ただ、あまり詳しくピンポイントで聞かれても、当てはまらないと感じることもありそうです。佐藤先生:そうですね。質問が具体的すぎると、受検者によっては自身の経験とは関係がない場合や、判断できずに回答できないということもあり得るので難しいところです。質問の分かりやすさや具体性の程度は、保護者の方への認知的インタビューを通じて担保された部分だと思います。野田さん:家庭やそのお子さまによって状況はさまざまです。例えば、未就学でも、通園されているお子さまもいれば、自宅で養育されているお子さまもいます。お子さまを観察できる時間や場面も保護者の方によって違うと思います。それでも、保護者の方への認知的インタビューを行なうことで、ご意見を伺い、修正することができ、それによって回答しやすくなった質問項目がたくさんあります。「この聞き方だと具体的に限定されて当てはまらない」「抽象的すぎて答えにくい」というような質問内容の改善について、意思決定に非常に役立ちました。使う方の声を直接聞くことが大事なんだなということが、当たり前ではあるのですが、プロセスの中での学びになりました。※質問紙…質問項目の文章と、回答の選択肢で構成された調査票。質問紙形式の検査では、対象となる受検者は、自ら質問文を読んで回答する。野田さん:認知的インタビューについてはすべて文字起こしをして目を通して、実際にいただいた意見を踏まえて質問項目を改善しています。保護者の方にはサービスに関するユーザーインタビューもしています。その中で「保護者の方が本当に困っている」というのをすごく実感しました。発達や子育てに関する本はたくさんある、インターネットでも検索すれば情報はたくさん出てくる。でも、何が正しく、どれが自分の子どもに合う情報か分からないという声がたくさんありました。こうした情報の中にはあまり信憑性のないものが混じっている可能性もあるので、なるべく適切で、専門家の合意が取れているような情報に最初に触れていただけるということが非常に重要だと感じました。できるだけ早い段階でこの検査が届けられるようにしたいと強く思うようになりました。佐藤先生:保護者の方の中でも悩みや感じ方は多様ですので、かなり幅広い意見があったと思います。そういった意見を集約して議論をしながらどう改訂するのかを、専門家や開発チームで合意を取るというのは、かなり難しかったのではないでしょうか。野田さん:いただいた意見は、保護者も専門家もそれぞれの立場によってかなりばらつきがありました。今回の検査対象が3歳から18歳とかなり広くて、未就学用と学齢用、例えば算数に関する質問項目は学年に応じてバラエティをつけるということもしているので、より難しかったです。意見もさまざまで、どうしてもすべての意見や懸念を100%反映して解消するのは難しいこともあるな、と。ある方はこうしてほしい、別の方はその反対の意見を出されていて、その場合にどう合意をとって意思決定するか、項目選定や表現の修正がたくさん出てきました。最終的なプロセスで合意をとれたのでよかったです。専門家の協力と開発チームの思い野田さん:専門家も多くの方にご協力いただきました。質問項目については、保護者の方にお見せする前のプロセスで、お子さまの発達に関する専門家のチームがデルファイ法という方法で改善を行なっています。デルファイ法は、複数の専門家にそれぞれチェックと意見をいただき、その内容を専門家チームで合議し、すり合わせて修正、再度チェックと修正を繰り返すことで、質問項目を磨いていく方法です。今回はデルファイ法だけでも医師、公認心理師・臨床心理士、作業療法士などさまざまな専門家の方にご協力いただきました。佐藤先生:専門家の方も、保護者の方も、同じ方に繰り返しインタビューができたのは、検査の品質を担保するうえでとても大きな強みだと思います。バージョン1、2、3とアップデートしていくのですが、そのアップデートした内容をもとに再度意見をもらうという手続きを取ったことがすごいですね。一般的な予備的調査だと、どうしても1回だけ意見を聞いて、それを質問紙に反映するのが多い印象があります。今回は繰り返し質問紙の改定案を見ていただき、意見をふまえて修正して、というのを繰り返すことができたということですね。野田さん:アップデート版を見ていただいて合意をとったり、さらに気になったことを意見していただく、というプロセスを数回繰り返します。それを複数のプロセスで行なう、ということをしました。このような方法はあまり多くの開発で取られておらず、方法論もまだ確立されていない部分でもあり、COSMINチェックリストを参考にし、佐藤先生にアドバイスをいただきながら実施しています。佐藤先生:専門家同士でも意見が違うこともよくあります。専門家の専門分野やこれまでの経験が異なれば、それだけ多様な意見が出てきますので、合意を取る難易度は高くなります。専門家だからこその意見があって、ここは譲れないという部分もあったりするので、合意を得るのはとても大変だったんだろうなと想像しますね。野田さん:今回の検査では、いわゆるDSM-5の神経発達症群に含まれる部分のほとんどをカバーしています。そのために質問項目数も多くなっています。それぞれの浅さ・深さもなるべくおさえて取れるようにバランスをとっていくと、専門性のある方にとってはもっと細かく聞きたい部分や、逆に質問数が多すぎるという意見が出てくることがありました。デルファイ法のプロセスでも、専門家への認知的インタビューでも、意見が割れることもあり、本当に難しかったですね。佐藤先生:全員が同じ意見で合意できないからと言って、それだけで検査の質が低いということにはならない場合もあると思います。意見が割れた部分を議論して、それが例えば出力レポートのアドバイスなど、このプロダクトに反映されているなと感じます。専門家にとっても、こうした議論をすることはスキルアップにつながります。どういったところに問題意識をもつべきかが明確になったり、どう優先順位をつけるか、支援をする時の視点としても役に立ちますよね。プロダクトの開発が支援にも還元されればとてもうれしいです。レポートで目指したのは「前に進めるための情報」Upload By LITALICO発達特性検査 編集部佐藤先生:今回のプロダクトは質問項目やアンケート形式という点も強みですが、結果の出力、レポートが出てくるというのがいいですよね。そこは具体的にどういった内容・情報をお伝えしようと心がけられたのですか?野田さん:まず大事にしたのは、「検査をしたら終わり」ではなくて、「次に何をしたらいいかが分かる」ことです。「サポートの方向性」という機能で担保しているのですが、お子さまの状況や特性に合わせて、具体的な対応方法の候補がリストの形で示されます。それも、家庭と、園・学校といった外部でのやり方がそれぞれ出力される仕組みになっています。もう一つ、「なぜそれがいいのか」「どういう理由でお子さまが困っているのか」をしっかりお伝えするということです。支援方法などの意思決定をする際にも、お子さまに合うようにカスタマイズするためにも、それを把握していることがとても重要になるからです。「困りや特性の背景の要因」というパートがあるのですが、その部分を丁寧に説明しているというのが、この検査のレポートならではの強みになっていると思います。ーーLITALICO発達特性検査の編集部でも、保護者の方が一人でどうしていいか分からずに抱え込まれて袋小路に入って立ちどまらないように、ということを大事にしています。編集部内や監修者の方々と話し合いながら、レポートの内容にもこだわって制作しました。例えば、保護者の方が読んで理解しやすく、取り組んでみたいと思えるような具体的な方法を紹介するなどです。できるだけ負担なく受け止められるような内容や伝え方を心がけています。お子さまにとってもうまくいきやすい方法で、親子の成功体験が積めるようにしたいという思いもありました。野田さん:不安やネガティブな気持ちを感じる方もいらっしゃると思うのですが、検査はレッテルを貼るものではなくて、「そうだったんだ」と気づいたり、「ちょっと試してみようか」「相談してみようかな」と思っていただけることが一番大事だと思っています。目指しているのは「前に進んでいただくためのプロダクト」です。佐藤先生:それは素晴らしいですね。回答される保護者の方は、お子さまの状態を知りたいという気持ちがある一方で、知ってしまうことへの不安もあると思います。そうした気持ちに寄り添って、不安な部分をできるだけ小さくしたり、サポートできるような工夫がされています。その先の支援や見通しにつなげられるようにするのはとても大事ですね。野田さん:テキスト監修も、それぞれの分野で7人の専門家の方に入っていただいて、企画構想の段階から丁寧に見ていただきました。受検されたユーザーさんがお子さまの検査結果として目にされるのはPDFにして40ページから100ページほどの分量なのですが、実は未就学から高校生、それぞれの年齢群ごと、それから知的障害(知的発達症)のあるお子さまの場合には適切なサポート方法が提示されるなど、テキストはお子さまに合うように出し分けられる仕組みになっています。ですので、システム側で準備したテキストは170万字を超える量になりました。お子さまの成長や状況に合うよう、できる限りの個別最適な情報にしたいという思いでこの形式を取りました。佐藤先生:検査結果を出力できるのは、利便性の面でも大事ですよね。年齢群ごとにアドバイスや提示する視点が変わるというのも素晴らしいです。こうしたシステムを構築するのもかなりの苦労があったように思います。ーー特性は同じでも、年齢によってライフステージや求められるスキルが変わり、新たな困りごとが出てくることもあるという考え方からの配慮で、重要な観点だったと思っています。佐藤先生:それも踏まえて、発達に関する検査では質問紙の内容的妥当性が非常に重要ですよね。発達過程、年齢によって悩みが出てくるということもありますし、それに加えてお子さまごとの特性に関することも入ってくるので、内容的妥当性の合意を取るのは本当に大変です。一方で、受検される保護者の方にとっては、そこが一番大事な点ですので、今回の開発プロセスで合意を取ったことには本当に頭が下がります。野田さん:いただいた意見はなるべく反映しました。どうしても質問紙という形の限界もあって、個人個人の状況によっては回答が難しいという場合もあるかもしれないですが、なるべくスムーズに答えていただけるといいなと思っています。データの蓄積が今後の可能性を広げるUpload By LITALICO発達特性検査 編集部野田さん:少し話は変わりますが、今回デジタルのオンラインでの検査という形式だと、データが積みあがることもメリットの一つだと考えています。研究などでのデータの活用や、この検査自体を改善する、あるいは同じプロダクト形態の別の領域に展開するということも今後の展開として考えられるのではないかということです。例えば、蓄積されたデータを研究することで、検査自体の品質をさらに改善したり、経時的な変化のパターンを見出したりできます。それにより、適切な情報提供やフォローアップがしやすくなる可能性があります。佐藤先生:さまざまな可能性があると思います。たくさんの方に回答いただいて知見が蓄積されれば、質問紙自体の精度を上げることができます。検査結果としてフィードバックする時の内容、得点をもとにどれくらい困りを感じているか、支援を必要としているかといった判断がより正確になってくると思います。それと合わせて、今回の検査項目の中で、精度がいいものとそこまでではないものが分かってくることもあると思います。より精度がいいものだけに絞って短縮版の検査をつくることもできますね。質問項目の数が少ないと、受検者の負担が減りますし、より多くの方に受検していただきやすくなるというメリットがあります。また、検査結果をもとにどのような支援が必要かという部分が明確になってくると思います。「こういう検査結果のパターンが出た方には、こういう支援だとうまくいきやすい」だとか、お子さまの状態像が具体的に理解できるようになることで、より適切な支援をピンポイントで提供し、その後の見通しがクリアになってくると思います。短縮版の話とも関連しますが、そういった適切な支援につながりやすくなるよう、より詳しく調べたい部分の質問項目を細分化したり、対象や領域を絞っていくということを考える材料にもなるはずです。野田さん:たしかにそうですね。ぎゅっとフィルタリングできるような項目を先に回答していただいて、そのうえで、困りの強いものをより厚めに回答していただくなど、簡便にしつつ必要な場所で情報を厚めにとるような仕組みにできるかもしれません。どうしても質問項目が多いと、ご家庭で保護者の方が回答するのは大変だと思うので、そういった形で改善していけるとすごくいいなと思いました。佐藤先生:基本的には項目数が多いと、検査としての妥当性や信頼性の質は上がります。その一方で、項目を減らすと精度が下がってしまうリスクが出てきます。回答データを蓄積させることで、本当に精度のいい項目だけを使うなどして、検査の質自体は下げずに、回答者の負担を減らせるといいですよね。野田さん:今回のプロダクトはWebアプリで提供されていることが強みだと思っています。従来の質問紙と違って、アプリの変更という形で柔軟に改善していきやすいという点です。もちろん研究が伴っての話にはなりますが、先ほどおっしゃっていただいた短縮版や切り出して詳しく調べるといった改善が可能になります。そういった柔軟性はユーザーにとってもメリットが大きいと感じました。佐藤先生:まずはLITALICO発達特性検査を広くたくさんの方に使っていただいて、その中でいろいろな声を汲み取れると次につながっていくのかな、と思いますね。開発でも検査受検でも、保護者が一番の立役者ーー今日お話しを伺っていて、保護者・専門家・開発チームそれぞれの立場から意見を出し合ってLITALICO発達特性検査ができていったことが分かりました。違う意見であったり、同意できないという部分でも、出しあって話し合うこと自体でブラッシュアップできるんだなと感じました。佐藤先生:そうですね。何より、インタビューに協力してくださった保護者の方々が何よりこの検査の開発の功労者だと思います。ご協力いただいた方には、私からも感謝の気持ちでいっぱいです。野田さん:延べ人数ですが、質問紙の開発で2,000人を超える方、プロダクトを磨くためのユーザーインタビューでも50人以上は参加していただいていると思います。たくさんの方のお話しを聞けたことで、開発チームとしても認識が深まりましたし、いいものを作らなきゃというやりがいも感じましたね。ーー保護者の方も開発者ですね。佐藤先生:今回、品質担保のために用いたCOSMINでは、そういった方の意見がないと質の担保ができないプロセスになっているんです。プロダクトの開発にご協力いただけたこと、また研究としてLITALICOの開発チームが開発まで着実に進めてこられたことが素晴らしいと思いますね。みんなが同じ方向を向くために、保護者の検査への回答が第一歩になるUpload By LITALICO発達特性検査 編集部ーー今回の検査は保護者の方がお子さまの状態や困りごとについて、主観的に回答していく検査です。そもそも今回COSMINを用いた質の担保や保護者の方への認知的インタビューもそういった側面から行なっていると思います。主観として保護者の方がどう捉えているかということを可視化する検査にもなっていると思いますが、その点はいかがでしょうか?佐藤先生:検査のフォーマットだけに着目すると、どうしても主観と客観という対立軸になりがちなのですが、主観だからといって精度が低いかというと、私はまったく違うと思います。むしろ、質問紙というのは、回答者、つまり今回の検査で言うと保護者の方のフィルターを通した困りごとを反映するツールだと思うんです。客観的な検査では把握するのが難しい、「その方が見た世界」をもとに結果が反映されるからこそ、回答者やお子さまの状態像がより明確になってくる部分があるはずです。この検査はたくさんの保護者の方や専門家の方の声を反映させて作られたものですので、安心してご利用いただけると思いますね。野田さん:おっしゃる通りです。検査をしても絶対的なただ一つの正解が出てくるわけではないので、保護者の方自身も、実際の回答結果と自分の認識を振り返って確認したり、周りの支援者や関係者の方の見立てと検査結果を合わせてみたりすると、お子さまの多面的な理解につながると思っています。その意味でも、保護者の方の主観的な回答がしっかり反映されるというのは一つの強みだと、佐藤先生のお話で理解できました。ーーおそらく保護者の方は一番近くでお子さまのことを見ていらっしゃると思います。その見立ては周りの方も大事にしていただけるといいのかなと、と思いました。佐藤先生:本当にそうですよね。この結果がいろいろと考えるきっかけになったり、話し合うステップにしていただけたりするといいですよね。お子さまの支援を考えるうえで、私は「子どもに関わる多くの人が同じ方向を向いている」ことがすごく大事だと思っています。当事者の方、保護者の方、支援する側、周囲の方々が同じ問題意識を持って、同じ方向に向かい支えあって工夫の仕方を考える。その同じ方向を向くためのツールとして、LITALICO発達特性検査はとても優れたツールだと思います。開発過程の中でいろいろな方が関わって、できる限り皆さまの声を採り入れながらできたものですので、今後に活かしていけるといいですね。受検された皆さまも、検査を受けてみての感想を教えて頂けるとうれしいです。ぜひ、開発者の一人に加わっていただく感覚で、一緒に育てていただけるといいなと思います。取材・編集:発達特性検査編集部撮影:タムラケンジ
2025年03月07日突然の進路変更で未知の土地、北海道へ……(大汗)。息子が選んだ道なら母も頑張ってみるしかない……か??中学受験を経て、学びの多様化学校である私立中学に通っていたコチ丸。ほぼ不登校だった小学校時代と比較すると、大きく成長を感じてはいたものの、勉強の遅れはなかなか取り戻すことができませんでした。私は、コチ丸の適性や成績などを熟慮した結果、本人の好きなゲーム制作を学べる専門学校と通信制高校が一緒になったA学校を進学先として考えていました。中2の頃から親子で入学説明会などにも参加して、A学校に進学すると疑いもしなかった私。いよいよ中3になって、A学校の入試の申し込みをしようかという矢先、コチ丸は突然、住んでいる愛知県から北海道の公立高校に進学すると言い出したのです。まったく予想もしていなかった進路変更でしたが、コチ丸に詳しく聞いてみると、それには意外な理由がありました。コチ丸が小学校を休んでいた時期、仕事がある私に代わって家で面倒をみてくれていたのは私の祖父(コチ丸にとっての曽祖父)でした。コチ丸は、祖父が好きだった競馬番組を一緒に見ているうちに、「馬を育てたい」という気持ちを抱くようになったと言うのです。そして、馬について学べる公立高校が北海道にあると知り、そこへ行きたいという思いを持つようになった……と話してくれました。とはいえ、北海道という場所に距離を感じていたのはコチ丸も同じで、どこかで夢物語みたいな思いがあり、言い出せなかったようです。しかし、中3になり、いよいよこれが最後の進路希望調査……という時になって、思い余って私にその気持ちを話してくれたのでした。しかし、公立高校なんてそもそも視野に入れていなかった上に、学校があるのはまさかの北海道。一体どうやって受験をすれば良いのか……?右も左も全く分からず、志望する学校や北海道の教育委員会のWebサイトを見ても小難しい言葉が並んでいて、しっかり理解できないままでした。Upload By あきでもまぁ、とにかくやりたいと思ったんなら気が済むまでやる!という、いつものわが家のモットーで、コチ丸が「北海道」という言葉を出した2週間後には飛行機に乗り、見学に向かった志望校。私はどこかでコチ丸が「実際行ってみたら遠いし、公立高校は規則が厳しいからやっぱりあきらめる」とか言い出すのではないかな……とも思ってもいたのです。……が、現地に向かって教頭先生に学校を案内されると、行きたい思いはコチ丸の中でさらに強くなり(笑)、進路は結局、北海道の公立高校に変更になったのでした。Upload By あき勉強は全くできなくても、大丈夫!?馬への熱い想いで勝ち取った学校推薦枠。当然、親子の心配は学力試験でした。立ちはだかるのは偏差値の高い壁……。保険だけはかけておこうと、秋頃にはもともと予定していたA学校を受験。そちらは無事に合格しました。面接のみの試験でしたが、第一志望校の前に受験がイメージできたということと、とりあえずこれで行き場がないということはなくなるなと安心しました(一部戻ってはきたものの、入学金と1年分の授業料も泣く泣く振込みました……)。そして1月、コチ丸は第一志望校の道外からの推薦選抜枠を受験しました。通っている中学校からの推薦があれば、受験内容は内申点と面接のみで良いということだったので、心配していた学力試験は回避することができました。しかし、通っている中学校から推薦してもらうために、コチ丸は中3の1年間はほぼ休まず学校に通い、生徒会長も務めました。小学校ではほぼ不登校、中学入学後も1・2年のうちは週3ほどしか学校に行っていなかったコチ丸にとっては、学校からの信頼を勝ち取るために頑張った努力の1年でした。学校に行けなかった彼にしてみたら、休みたい時も体がだるい時もやりたくないことがある時も……何度も葛藤があった1年だったと思います。親の私は側にいてあげられても、代わってあげることはできない、本人がやるしかない試練でもあり、目標のために本当に頑張ったと思います。当時はコロナの影響もまだ残っており、道外の受験者はオンライン受験もできたのですが、わが家は現地に乗り込んで受験。雪道の中、千歳空港から60駅停まるバスに乗って現地入りしたのは今でも笑える経験です。冬の北海道、半端ない……(笑)。後にコチ丸にわざわざ道外から受験に来たのはうちくらいだったと聞かされました。バスでたどり着いた市内から学校まではさらにタクシーで30分程度かかり、試験が終わる時間も読めないため、コチ丸は1人で学校へ向かい、受験をしてホテルまで戻ってきました。母はホテルで待機している間、不安で落ち着かない時間を過ごしていましたが、当の本人は面談待ちの間に道内の受験生と友だちになり、連絡先の交換までして楽しそうに戻ってきました。北海道へは入学式までなかなか来られないこともあり、まだ合格も分からない入試の日のうちに制服の採寸など一通りのことも街で済ませて帰宅しました。県内だったら私もある程度流れも分かっていたのでしょうが、ルールも全く違う県外の、それも北海道での受験。息子以上に私のほうが戸惑いっぱなしでした……。落ち着いて座ることもままならなかった小学校時代を経て、高校生になるまでに大きく変わったこと。Upload By あき結果は無事に合格。4月、私は会社から1週間ほど休暇をもらい、入学式の数日前から北海道に乗り込みました。これからしばらく会えないコチ丸と3日ほど北海道を旅しながら親子水入らずで過ごしました。入学式の前々日には学校のある市内に入り、寮生活に必要なものをひとしきり買い揃え、その翌日からはコチ丸の寮生活が始まりました。先輩方の視線もあったからか、「もう帰っていいよ」と15年繋いできた手がスルリとあっけなく離れ……そして今、コチ丸は学業成績も上位に入り、学校活動も寮生活でも充実した日々を送っています。授業の受け方1つとっても、小学校の時は落ち着きがなく、座っていることすら困難なコチ丸でしたが、中学では(たまに眠りながらも)席に座ることができるようになり、授業が聞けるようになり、高校では丸1日しっかり勉強に取り組めるようになりました。小学校では自分のことしか見えず、学校の中を縦横無尽に歩き回っていましたが、中学では他者の視点を意識することができるようになってきたコチ丸。席に座って授業をちゃんと受けてみたら、持ち前の興味があることへの集中力と探求心を発揮し、成績はぐんと伸びました。マイペースさはそのままに、穏やかな性格と評されるようになり、今では周りを引っ張っていける存在になってきたようです。気がついたら、短所だと思っていた部分は長所になっていた、そんな気がします。Upload By あき小学校の不登校から学びの多様化学校を経て公立高校へ。順調に聞こえますが、そのなかには常に迷い、悩んで決断してきたコチ丸の姿がありました。発達障害と診断された時は、将来はどうなるのかと母は案じていましたが、自分なりの道をしっかりと模索して、そこへ向けてちゃんと進んでいました。親の私がやれたことといえば、自分も勉強をしてコチ丸に選択肢を示すこと、決断した先に何があっても一緒に受け止めようという覚悟くらいで、結局は見守ることしかしてこなかった気もしますが……。ただ、私もコチ丸が落ち着いていくにつれ、この変わった子育てが面白いと楽しむ余裕が出てきて、今はお互いの相乗効果になっている気がします。ハラハラさせられながらも楽しい進路選択をしてくれたコチ丸に感謝です。執筆/あき(監修:藤井先生より)コラムの続きを楽しみにしておりました。コチ丸さんの悩みながらも、ご自身で決断し、成長した姿をうかがうことができとてもうれしく思います。医師としてまだ20年程度ですが、多くのお子さんと出会ってきました。発達障害と診断され、これからの子どもの将来が心配だと、話される親御さんがいらっしゃいます。しかし、子どもたちは、その子のペースで、親や周囲の大人、学校の友だちなどとの生活を通して、育っていくものだと多くの子どもたちの成長する姿を通じて教えられています。見守るというのは時に難しいですが、必要な支援は整えつつ、お子さんの成長を信じて支えていきたいですね。前の記事はこちら(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。
2025年03月07日LITALICO発達特性検査はどうやって作った?LITALICO発達特性検査は、発達が気になるお子さまと保護者のための、オンライン完結の検査サービスです。保護者の方がスマートフォンやパソコンから、お子さまに関する150問程度の質問に回答することで、発達特性や困りごと、よく見られる姿やその背景要因、お子さまに合ったサポートの方向性などを知ることができます。受検される保護者の方にとって、「LITALICO発達特性検査は信頼できる検査なのか」は大きな関心事の一つだと思います。そもそも検査がどのように作られているのか、信頼性をどう判断したらいいか、よく分からないという方も多いと思います。そこで今回は、LITALICO発達特性検査の開発プロセスや、品質をどうやって高めていったのかなどについてお話を伺います。※LITALICO発達特性検査は 医学的診断を行なうものではなく、お子さまの発達特性やその背景、適切なサポートの方向性などの情報を提供するためのものです佐藤先生:公認心理師、臨床心理士の立場から関わらせていただいた佐藤秀樹です。今回のプロジェクトでは、検査での質問項目や、質問の仕方、選択肢が適切かどうかなど、検査の妥当性や信頼性の質を担保する観点からアドバイスをしています。Upload By LITALICO発達特性検査 編集部野田さん:作業療法士としてのお子さまの支援経験を活かし、LITALICOで研究開発をしています。LITALICO発達特性検査では、プロダクトマネジメントや尺度の研究開発、コンテンツのディレクションなどに関わりました。今回は、実際にどのような手順を踏んで開発していったか、開発するうえで大事にしたことなども、佐藤先生と一緒に分かりやすくお話しできればと思います。Upload By LITALICO発達特性検査 編集部野田さん:LITALICO発達特性検査は「質問紙法の尺度を用いた検査サービス」です。そもそも、尺度や質問紙といった用語も馴染みがないかもしれませんが、質問紙法は、分かりやすく言うと質問項目の文章と、回答の選択肢で構成されたアンケート形式のことで、対象となる方、つまり受検者は、自ら質問文を読んでそれに回答します。その回答を判断するための基準も含めて「尺度」と呼んでいます。今回、質問紙の開発を進める中で、2つの点で品質の担保がより重要であると感じるようになりました。検査を製品として販売する以上、誤解を与えるような品質なものであってはならないということ。そして、このLITALICO発達特性検査がオンラインのソフトウェアという形であり、人の解釈を介さない検査であるため、尺度自体の品質がより重要になってくるという点です。そこで、実際にどのように尺度を開発し、品質を担保するかというところで、佐藤先生にご相談し、コンサルテーションをお願いしたという経緯です。尺度や質問項目をつくるのは一見簡単そうに見えますが、高い専門性がある方のアドバイスがないと、どうしても内容が偏ってしまったり、間違った方向に進んでしまうという危険性があると感じています。LITALICO発達特性検査は、COSMINという国際的な基準に基づいて開発しています。それは、COSMINに関して日本語版の翻訳に携わるなど、心理尺度の品質保証についての知見がある佐藤先生のお力を借りることができたからです。佐藤先生:LITALICOについては以前から、「発達障害のある方の支援や就労支援を、幅広い年代に画一的なサービスを提供するのではなく、ニーズに応じて関わっている企業」として知っていました。しかも「質問紙の妥当性を評価し、検査の質をどう高めて担保するか」という、私としても関心が高い分野だったので、関われてとても光栄でした。サービス自体は簡便に。内容や結果は妥当で信頼できるものを野田さん:検査をどうやって作っていったのか、一般の方には開発フローがイメージしにくいかなと思います。佐藤先生:一般的な尺度開発として広く行われている方法は、研究者のチームが中心となって、質問項目をたくさん準備するところから始まります。まず、検査でどんなことを知りたいのか(つまり測りたいのか)を検討したうえで質問項目を多めに集めて、質問紙の案を作ります。次にチーム内での話し合いや予備調査を行ないます。その結果をふまえて問題のある項目を見つけて修正するといった工程を経て、項目数を絞った素案を作ります。その後に、検査対象の方に実際に回答していただき、その数量的な結果をもとに、妥当性と信頼性を検討し、優れた項目だけをピックアップして質問紙を完成させるというプロセスです。野田さん:今回の開発で特徴的なのが、こうした一般的なプロセスよりも踏み込んで丁寧に行なった「内容的妥当性」の担保だったと思います。佐藤先生:内容的妥当性は、「質問紙の内容が妥当かどうか」ということです。「質問の仕方が適切であるか」「検査で測定したい状態がきちんと測定できているか」といった観点が必要になるため、専門家でも判断するのはとても難しい部分です。また、内容的妥当性は専門家だけでなくユーザーの方の立場からも判断しなければいけないので、これまでの質問紙開発では内容的妥当性が十分に担保できていないものもあったと思います。LITALICO発達特性検査の開発では、たくさんの保護者の方や専門家の方にご協力いただき、質問項目、質問の仕方、回答の選択肢が的を射ているのかなどについて繰り返し評価をして、尺度を開発できたというのが大きな強みだと思います。野田さん:LITALICO発達特性検査は、保護者の方がオンラインで回答する検査サービスということもあって、サービス自体は簡便に受けられるけれども、その内容や結果については妥当で信頼できるものであるべき、という点から、品質の担保に関してはできる限りのプロセスを踏んでいます。COSMINを基準に尺度開発を行ったこと、特に専門家だけではなく検査対象となる保護者の方への認知的インタビュー(※)を繰り返し行なうことで内容的妥当性を担保することができたことは、今回の開発の大きな特徴だと思います。LITALICOの尺度開発チームによる質問項目の素案を作成後、妥当な質問項目になっているか、その質問項目で検査で調べたい内容がきちんと測れるか、質問の文章が適切かなどについて、専門家と保護者の視点でそれぞれ改善を繰り返しています。専門家はデルファイ法(※)、保護者の方には認知的インタビュー※という手法で実施しています。時間も手間もかかる方法で、なかなか採り入れるのが難しいのですが、検査の品質を保つための重要なステップだと考えました。そのため、内容的妥当性を担保するために、保護者と専門家それぞれの認知的インタビューを1年以上かけて行なっています。※認知的インタビュー:「質問がきちんと理解できて意図された通りに解釈されているかどうか」を評価するために、参加者に尺度の内容について自身の考えや解釈を聞くインタビュー方法※デルファイ法:複数の専門家が質問項目をチェックし、意見に基づいて修正するプロセスを繰り返すことで、質問項目を精査していく方法Upload By LITALICO発達特性検査 編集部佐藤先生:内容的妥当性や信頼性が重要であるということ、このようなプロセスを踏むことが望ましいということは専門家も理解していて、これらを完全に無視した尺度開発というのはないと思います。ただ、認知的インタビューやデルファイ法は繰り返し実施する必要があるため、コストも時間もかかります。そのため、開発者としてはやりたいけれども、実際にはなかなか難しいというのが本音だと思います。調査にご協力いただける専門家や対象者を募集し、場所を確保するだけでも大変なことです。LITALICO発達特性検査の開発では、何より、ユーザーの方から直接話を聞き、一緒にプロダクトを作っています。同意が得られるまできちんと説明し、調査を繰り返し行なったということに頭が下がります。ーー佐藤先生がご存じの中でも、しっかりプロセスを踏んだ開発だったということでしょうか?佐藤先生:私の知っている中ではベストですね!野田さん:たくさんの保護者、専門家のみなさまにご協力いただいてなんとか実現できたところです。佐藤先生:一般的な予備的調査だと、1回だけ意見を聞いて、それを質問紙に反映するということも多いと思いますが、今回の開発では、同じ方にも質問紙の改定案をその都度見ていただいて、意見をもとに修正する、というのを繰り返し行ったというのが大きな(品質担保上の)強みだと思います。野田さん:インタビューして「ここは〇〇だった」という前回の意見をもとに改善して、そのアップデートしたものを見ていただいて合意を取って、そのうえで気になった点について意見をいただき、さらに直すというプロセスを数回繰り返しています。このような形で品質を重視する開発は、前例として多くなかったということもあって、方法論もあまり確立されていない部分もありました。その点は、佐藤先生に具体的なアドバイスをいただきながら進めていったところです。その中で、COSMINの基準についても、佐藤先生に教えていただいて採り入れることができました。佐藤先生:これまで、こういった尺度開発の手続きは、研究者独自のやり方で進めていることが多かったと思うんですよね。妥当性や信頼性の質に関しても、専門家がそれぞれ自分の判断で質を高めようとしていた部分が多いのですが、COSMINはそれらの手続きや質の評価を可視化するためにチェックリストを作成しています。COSMINチェックリストは検査の項目、尺度の質を評価する際の国際的な基準です。基準はさまざまな専門家や当事者の声も採り入れて設定され、妥当性や信頼性などの特性ごとにたくさんの項目があります。今回の検査は、COSMINの基準を満たすように開発されているので、国際的な基準に沿った開発になっていると言えます。その点で、内容的妥当性の質の担保がよくできているのがこの検査の強みだと思いますね。ーーこうした質の担保ができないと、どうなってしまうのでしょうか?佐藤先生:回答はしたけれども理解しにくい質問だったり、自身の経験や考えとは的外れな質問などが含まれている可能性があるので、回答者にとって負担になってしまうリスクがあります。また、受検するたびにばらついた結果が出てしまい、検査結果が安定しない恐れもあります。こうした問題は、検査の妥当性や信頼性を損ねる要因となります。野田さん:そういったことがないように、COSMINの基準をクリアできているか、というのをチェックしていくということです。どのようなプロセスを経たらいいか、どの程度のユーザー数でテストすればいいか、といったさまざまな論点について、基準をもとに開発で満たすように進めていったということですね。もし、クリアできていない場合、佐藤先生にアドバイスいただいてプロセス自体を改善し、なるべく高い基準を満たすように開発できたというのは大きかったです。佐藤先生:お子さまの状態像は一人ひとり異なりますし、支援者の専門分野が多様になると、その分さまざまな意見が出てきます。そのため、実際には認知的インタビューでの意見を完全に集約させて尺度に反映するのは難しいこともあります。こうした研究上の限界点はどうしても出てきますので、COSMINの基準を完全には満たせない項目が含まれてしまうことも少なくありません。その中でも、今回のプロダクトは厳しい基準をできるだけいい評価でクリアできるように開発されていると思います。野田さん:内容的妥当性の担保方法に関する知見があまり広まっていなかったこともあり、COSMINを基準に作成しようと決めるまでは、今回のようなインタビュー研究をこの規模で行なうことは計画されていませんでした。佐藤先生のCOSMINに基づいたコンサルテーションがなければ、このレベルで内容的妥当性を担保することは難しかったと思います。心理尺度や質問紙という形式の検査自体の強みと限界Upload By LITALICO発達特性検査 編集部佐藤先生:広くたくさんの方に簡便に回答していただきやすいのが質問紙法という検査形式の強みだと思います。例えば、発達検査の中には対面式の検査もありますが、お子さまや保護者の方と支援者が対面で検査をして所見をまとめるとなると時間もかかりますし、検査を実施できる専門機関や専門家の数も必要になってきます。特に地方にお住まいの方にとってはシビアな問題です。質問紙の場合、受検者に配布した質問紙の説明文を読んで回答していただくので、より気軽に受検できますよね。ただし、回答者の主観的な判断に基づいての回答になることについては、少し注意が必要です。回答だけをもとに、原因を確定したり診断したりすることはできません。それが限界点になりますね。野田さん:おっしゃる通りで、ユーザーとしては「検査」というと「診断」が出るということを期待される方も多いと思うのですが、LITALICO発達特性検査は医学的診断を行なうものではありません。しかし、診断がなくとも特性や困りとそれらの背景という観点で測定して、すぐにデジタルである程度個別化された情報を届けられるということが、このプロダクトの特徴だと佐藤先生のお話を伺って改めて感じました。検査結果レポートでは、診断の有無にかかわらず理解や支援の助けになる情報を、監修者の先生方と厳選しています。実際に自分のお子さまについて、なぜお子さまが困っているのか分からない、どうサポートしたらいいか分からないという場合に、お子さまの状況を把握するため受検していただくといいのかな、と思っています。そして状況に変化があるかを追っていくための確認としても使っていただけるようになるといいな、と。佐藤先生:そうですね。アンケート形式はとても回答しやすいと思いますし、いつでもどこでも回答できるというのはメリットです。この検査を糸口にして、より専門的な支援サービスを受けることを検討するなど、最初の一歩になりやすいツールだというのが強みだと思いますね。野田さん:逆に言うと、お子さまを支援したり、環境を作ったりするときに、検査だけで完結することはもちろん無理で、専門家を始め、周囲の関わる人たちが一緒に協業していかないと難しい部分は確実にありますね。また、ほかの検査の代わりに受検するというよりは、この検査のメリットを活かすことで、早期かつ簡便に、ある程度適切な情報や個別化された情報を得ていただいて、適切な支援や相談できる場所とつながる、より詳しい情報を調べるという形で使っていただけるといいなと思います。今回、認知的インタビューで保護者の方の意見を聞く中で、困りが一元的ではなくて、本当に多面的なんだなということが印象的でした。それは「質問紙で必要十分なのだろうか」「この形で本当にいいのだろうか」と制作の過程で問いなおすきっかけになりました。その意味でもインタビュー研究という形で尺度の質を確認していく、実際にユーザーの方にお話を聞くことが重要なんだなということを痛感しました。これが質問紙開発以外のプロダクト作りにおいても、ユーザーインタビューを積極的に行なうことにもつながったと思います。やはり、多様な困りに対して一つの形で答えていくしかないというのが質問紙という形式の限界でもあります。強みと限界があるうえで、既存の検査や人を介した直接的な支援と相反するものではなく、両立して使っていただけるものになったかな、というのが個人的に感じているところです。配慮や工夫を重ね、品質を高めた検査。多くの方に使ってほしいーー佐藤先生は、具体的にどのような方に使っていただきたいとお考えでしょうか?佐藤先生:お子さまの状態を知りたいという保護者の方はもちろんですが、私としては、この検査の結果をコミュニケーションのツールに使ってほしいという想いがあります。今回のプロダクトは、家庭の中でお話しする材料になりますし、あるいは学校だったり、支援機関の方と話し合う際の材料になるものだと思います。検査結果レポートの内容も大変充実しているので、そこがこの検査のすごくいいところですね。自分だけで抱え込まないで、いろいろな方とシェアをしてよりよい方向を検討するための第一段階のステップとして、すごく優れたツールだと思います。不安な気持ちと知りたい気持ち、いろいろな悩みを持たれて受検される方が多いと思うのですが、得るものもたくさんある検査だと思います。多くの方に安心してご利用いただけると、私としてもすごくうれしいですね。取材・編集:発達特性検査編集部撮影:タムラケンジ(記事の後編では、開発の過程で保護者や研究者の方の意見がどのように反映され、LITALICO発達特性検査がブラッシュアップされたのか、より詳しく伺いました。合わせてお読みください)
2025年03月06日ASD(自閉スペクトラム症)娘、学校では基本的に1人行動で……広汎性発達障害(ASD/自閉スペクトラム症)の娘は、現在中学2年生。マイペースで、静かに過ごすことが好きなので、1人でいることを好みます。学校では、基本的に1人行動で……Upload By SAKURAUpload By SAKURA中学生女子ともなれば、友達同士グループで過ごす子が多くなります。自分の時代を思い出してみても、もし自分がグループに入っていなかったら……、想像するだけで登校したくなくなるぐらいの大問題でした。娘のクラスも、女子はすっかりグループができていて、常に同じメンバーで行動しているそうなのですが、娘は望んで1人になり、そしてすごく楽しんでいました。これが娘のスタイルなのだと分かっていても、どうしても心配な私。Upload By SAKURAやはり娘はまったく寂しくなく、1人を満喫していました。Upload By SAKURA娘の1人行動は、クラスの子から見たら当たり前のようで、話すときは話すけど、それ以外は距離をとってくれているようでした。優しい友だちに恵まれ、ありがたいことで、私も嬉しくなりました。Upload By SAKURA意地悪なクラスメイトがいる!?娘の話を聞くと……クラスの子への感謝を言うとしたら、娘が何か言いたげな顔をしました。まさか意地悪してくる子がいる!?と聞いてみると……Upload By SAKURAUpload By SAKURA私の中学時代の記憶、うちの長男の男子すぎる行動との一致、そして旦那への確認をしてみても、私にはその男子に悪意があるように思いませんでした。しかし、娘は本当に嫌なようで……Upload By SAKURA先生との面談で事実確認をしてみると娘が、先生に相談を考えるほど、嫌なことであれば、私たちが頭ごなしに「仕方ないから我慢して」と言うわけにはいかない。タイミングよく翌週に面談があったので、私はまず先生に事実確認をしてみることにしました。Upload By SAKURAUpload By SAKURA先生は娘のことを気にかけてくれ、見えないところで助けてくれていました。しかし、先生ができるのはここまででしょう。それ以上はできないということは、私は理解できました。しかし、娘は「言ってもらえないのか……」という感情が残ったようでした。帰ってから、私は娘と話をしました。Upload By SAKURA1人で静かな状況を好む娘にとって、それを邪魔する人、テンションが高い人、関わってくる人は苦手という認識になるでしょう。気持ちは分かります。しかし、そのすべてから、私たちが守ってあげることはできません。大人になるにつれ、自分で気持ちをコントロールしていかなければなりません。今、私ができるのは、自分ならどうするかを話すことでした。Upload By SAKURAUpload By SAKURA小学校に入学してから、男子とのもめごとが、多かった娘。そのときの年齢に合わせて、いろんな対応や話をしてきました。そのうちに、娘も少しずつ成長していきました。今まではそれでよかったのですが、中学生になると、これから先のことも踏まえて、社会での常識的なふるまいを教えつつ、話していく必要があります。しかし、親としては1人が好きなら、1人で楽しく過ごしてほしい、苦痛で仕方ないという我慢はしてほしくないという気持ちです。まだよく分からない子どもでいてほしいような……たくましい大人になってほしいような……複雑な心境です。親として、常識は教えていかなければなりませんが、ずっと常識の範囲内で動かせていては、娘が疲れてしまいます。時には愚痴を言ったり、息抜きをしたり、ということを教えながら、娘が成長していけるようサポートしていきたいと思います。執筆/SAKURA(監修:新美先生より)中2の娘さんの学校での人付き合いについて詳しく教えていただきありがとうございます。中学生時期は、同質性を好む同世代の付き合いの難易度がとても難しくなる時期とも言えます。ASD(自閉症スペクトラム症/広汎性発達障害)の方の対人面のタイプとして分かりやすく整理すると次の3つのタイプがあります。1.他人への興味が薄いタイプ2.他人の気持ちや考えに疎く自分ペースで付き合うタイプ3.他人とどうかかわったらいいのか分からず合わせすぎてしまうタイプこの3タイプは固定的なものでなく、時期や場面で変化します。エピソードを聞かせていただくと、あーさんはとりあえず1のタイプのようです。他人に興味が薄いというと心配されることもありますが、実はマイペースを貫いて他者の言動にそれほど左右されないのである意味、心の健康度は下がりにくいという面もあります。中学生時期の特に女子同士の付き合いはとても複雑で面倒くさいもので、1タイプの方にとっては、かかわりを最小限にしておいたほうがむしろ楽かもしれません。周囲に大きな迷惑をかけておらず、必要時にはふつうに話せるようなクラスメイトもいるなら、過度な友だち付き合いを強要しなくてもいいのかと思います。最低限の関わり方のポイントについては、記事で紹介していただいたように、具体的に整理して説明してもらうのはとてもいいですね。こういう時はこう言おうというセリフを作ってマニュアルにするなどのSST的なレクチャーも有効です。前の記事はこちら(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2025年03月05日通常学級を勧められたけれど……特別支援学級を選んだわが家Upload By プクティ4歳の時に軽度の知的障害(知的発達症)と診断されたわが家の長男。就学相談を機に再度受けた知能検査ではIQが上がり、知的障害(知的発達症)の診断基準からは外れたものの、医師からはASD(自閉スペクトラム症)の傾向があると言われています。就学相談員の方からは通常学級を勧められていた長男でしたが、普段の保育園での集団生活の中では、指示を聞けなかったり、活動に参加できなかったりすることがほとんどだったため、まだまだ長男には集団での生活は厳しいと思い、自閉症・情緒障害特別支援学級を選ぶことにしました。入学後に感じた特別支援学級のメリットUpload By プクティ入学してから1か月後にあった個人面談では、毎日楽しそうに学校で過ごしていること、一方で交流学級(通常学級で行う授業)にはなかなか参加できないことなど、学校生活の様子を教えてもらいました。担任の先生からも、通常学級に在籍していたら長男の負担になっていたかもしれない、やはり特別支援学級の環境が長男には合っていると思うと言っていただき、とても安心しました。特別支援学級での授業は、通常学級とは異なり長男のペースに合わせて進められるため、集中力がなくなってきたときは息抜きをさせてくれたり、理解できるまで教えてくれたりと、柔軟に対応してくださっているようです。また、見通し不安やこだわりも強い長男。特別支援学級の担任の先生は、どうしても取り組むことが難しい課題は無理にしなくてもよいという方針なので、長男もストレスなく学校生活を楽しめているようでした。Upload By プクティこのような特別支援学級での配慮のおかげで、勉強面で通常学級からの遅れはなく、宿題を家でやっていてもきちんと理解しており、一人で宿題に取り組む姿が見られています。小学校入学前の一番の不安要素は勉強だったので、嫌がる様子もなく取り組めていることには本当に安心しました。もし、これが通常学級だった場合、やはり集団への一斉指示が聞けず、集中することができないまま勉強が置いてきぼりになってしまっていたと思います。いいことばかりではない!?特別支援学級のデメリットUpload By プクティ特別支援学級に入ってよかった面はたくさんあるのですが、親として少し困っていることもあります。それは毎日の学校への送り迎えです。それぞれの学校によって決まりは異なると思いますが、長男の通う小学校では、特別支援学級に在籍している児童のみ、6年間親が付き添って送り迎えをしないといけないことになっています(通常学級に在籍している児童に関してはそのような決まりはありません)。特に1年生は帰宅時間が早く、次男の幼稚園のお迎えの時間と被ってしまったり、仕事をする時間もなかなか取れなかったりすることが大変だと感じています。Upload By プクティまた、特別支援学級では1年生が長男だけだったので、集団行動を学んだり、友だちをつくったりという経験がしにくいのもデメリットと感じました。入学して1年経ちますが、不安の強い長男はいまだに通常学級の教室に入ることも難しい状態で、ほかの1年生と一緒に授業を受けることは1回もできていません。放課後は小学校内に併設されている学童に預けているのですが、やはり集団での遊びには参加することがなかなかできず、一人で過ごす時間が多くなっているようです。今は長男に合う習いごとを模索中なので、良さそうな場所が見つかったらそういうところで集団生活や友だちづくりをしていってくれたらいいなと思っています。執筆/プクティ(監修:初川先生より)就学相談で通常学級を勧められたものの自閉症・情緒障害特別支援学級を選んで入学し、1年が経とうとしているところで感じることのシェアをありがとうございます。就学相談の提案や、自閉症・情緒障害特別支援学級に入るための条件など、自治体によってさまざまです。プクティさんの長男くんは、不安が高く集団活動や一斉指示に合わせて動くことが苦手なことから、自閉症・情緒障害特別支援学級を選択されました。この1年、長男くんの状態に合わせた教育が提供されたことで学習面で成長が見られ、また学校生活を楽しんでいるようで何よりです。特別支援学級ですと、学級のサイズが小さく、同学年のお子さんがいない・少ないこともよくあります。友だちをつくること、そして交流学級での活動に参加するといったあたりが今年度の課題として残ったようですね。逆に言うと、少人数の安心できる環境だからこそ、学校という集団生活や学習を嫌になることなく、そして楽しく過ごせたのかもしれません。今後は集団での活動という目標に向かって、長男くんのペースで臨んでいければよいと感じます。放課後の学童に関しては、1日の学校での活動後に行くところなのでどの子もみなそれぞれ疲れていること、自由な時間でもあるため、好きなことをして過ごしたほうがよいのかもしれません。朝から夕方まで自分の苦手なことや挑戦したいことに挑み続けるのは大変ともいえます。ただ、ひょんなことから一緒に遊べたりするかもしれないし、今日はみんなと一緒に遊んでみたいと思うかもしれません。そういう意味で、学童にしても習いごとにしても、本人が無理なくその場にいることができ、集団活動にも参加しようと思えば参加できるセッティングをしておくというのは中長期的にはいいように感じます。お子さんによっては、学童が苦手であったり、習いごとで疲れてしまったりする場合もあります。お子さんの様子をよく見ながらご検討いただければと思います。前の記事はこちら(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2025年03月05日1歳半健診で発達の遅れを指摘され……。息子の発達障害が分かるまで現在10歳の息子は、2歳でASD(自閉スペクトラム症)、3歳で知的障害(知的発達症)、10歳でADHD(注意欠如多動症)の診断を受けています。こだわりが強い性格です。息子は生後10か月で伝い歩きを始め、1歳4か月で立てるようになりました。ですが、なかなか一人で歩くことができず、言葉もでなかったのです。「発達が遅れているのでは?」と不安を感じていた中で迎えた1歳半健診。そこで「専門の先生に診てもらってください」と指摘を受けました。ショックというよりも、「そうか、一度診てもらおう」と素直に思った記憶があります。Upload By ユーザー体験談小児神経科を受診すると、言葉の遅れがあるため、月1回の言語聴覚療法(ST)をすすめられました。さらに、発達が気になる子どもたちが集まる「地域の遊びの広場」にも月1回参加することになりました。STは、発語につながるなら……と思いながら通いましたが、病院は車で1時間近くかかる場所。運転が苦手な私にとってはなかなか大変でした。それでも、小学1年生の秋頃まで通い続けました。言語聴覚療法(ST)と遊びの広場での学び。初めて見た自傷・パニック息子はSTに喜んで通いました。家にはないおもちゃがたくさんあり、楽しかったようです。「早くやりたい!」という気持ちが強すぎて待つのが苦手で、途中で席を立つことも多かったですが、毎回笑顔でした。「地域の遊びの広場」も息子にとってお気に入りの場所でした。私自身も専門家と話せる機会が増え、その時々の悩みを相談できたのはとても助かりました。ただ、今でも鮮明に覚えていることが2つあります。ひとつは、STの先生に「このまま一生話せないこともあるんですか?」と聞いたときのこと。「……あるかもしれません」と言われて、現実を突きつけられました。私は「いつか話せるもの」と思っていたので、とてもショックでした。Upload By ユーザー体験談もうひとつは、1歳10か月の時のこと。大好きなクレヨン遊びをしていた息子に「お片付けしようね」と声をかけると、大泣きしながら自分の額を床に何度もぶつけ、足をバタバタさせパニックになったのです。初めて見る姿に私は青ざめました。先生は「お帰りしましょう」と一言。クールダウンのためとは分かっていても、「みんなと一緒にいることができない」という現実を突きつけられ、切なかったのを覚えています。Upload By ユーザー体験談不安そうな表情が明るい笑顔に!児童発達支援事業所が成長のきっかけにそんな日々の中、「地域の遊びの広場」の保健師さんから「児童発達支援に通ってみてはどうですか」と紹介され、児童発達支援事業所とつながることになりました。最初に紹介されたのは、車で1時間かかる施設。見学に行き「いいところだね」と夫と話しましたが、遠さがネックに……。施設長さんに相談すると、住んでいる地域にも児童発達支援事業所があると教えてもらい、そちらも見学へ。しかし、残念ながら満員……。悩んだ末、4〜5か月空きを待って、近くの事業所のほうに通うことを決めました。そこでは給食が提供されており、このおかげで息子は偏食が改善されました。さらに「できた!」という成功体験をたくさん積むことができ、自信につながったようです。通い始めた頃の写真を見ると、不安そうな表情。でも、時間が経つにつれ、明るい笑顔にな変わっていきました。Upload By ユーザー体験談「言葉が出なくても焦らない」そんな気持ちを支えてくれた支援息子はなかなか言葉が出なくて、日々とても心配していました。そんな時、支援の方から「今、息子くんはたくさんのことを吸収しています。それが積み重なった時に言葉としてあらわれますよ」と言われ、おかげで「今は吸収の時期なんだ」と自分に言い聞かせ、焦る気持ちを抑えることができました。もし支援に繋がることができなかったら、親子ともにつらい日々を過ごしていたと思います。本当に感謝しています。結局、発語があったのは3歳0か月のとき。現在4年生の息子はおしゃべりもできるようになり、元気に成長しています。今感じている課題はコミュニケーションです。友だちが遊びに来ているのに学校の宿題を始めたり、会話が一方的だったり……。少しずつでも人の気持ちを察することを学んでいってほしいなと思っています。子どもたちはみなそれぞれのペースで成長していくのだなと実感しています。これからも息子のそばでその成長を見守っていきたいです。エピソード提供/ゆきこイラスト/よしだ(監修:藤井先生より)1歳半健診で発達の遅れを指摘され、言語聴覚士さんや児童発達支援施設に通い、息子さんに必要な支援につながってきた貴重なご経験を読ませていただきありがとうございました。お子さんの言葉が出なくて心配されている方の励みになりますね。療育先に悩まれる場合があるかと思いますが、言葉だけでなく、認知面、運動面も含め包括的にみてもらえる児童発達支援施設で療育を受けることは良い選択ですね。地域によっては施設が遠方だったり、空きがなかったりすることがあります。かかりつけの小児科の先生に受給者証用の意見書ないし診断書を書いてもらい、保健センターなどで情報収集を行なって地域での療育先を探されるのが良いです。焦ってもお子さんの成長のペースは一人ひとり違うものです。成長をこれからも見守っていきたいですね。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。
2025年03月04日宿題が終わらない・取り掛かれない……保護者はどうサポートする?毎日の宿題に親子でヘトヘト……。宿題に取り掛かるまでに時間がかかる、やっと始めても途中で気がそれてなかなか終わらないなど、日々の宿題にお悩みのご家庭も多いのではないでしょうか。発達ナビのQ&Aコーナーでも、以下のような声が寄せられています。みなさんのお子さんは宿題を家で出来ていますか?小学校3年生のADHDの男の子、特別支援学級(国語、算数のみ)在籍です。家でなかなか宿題ができず1、2年生の頃は授業の中で宿題をやってもらっていました。診断はされていませんが、LDの傾向があり書く事が苦手です。小1の息子がいます。宿題をいつさせるのかが分かりません。(略)16時にすんなりと宿題ができたらいいのですが、フリータイムが長引きなかなか着手できません。小1の娘ですが集中力がなく、学校の準備や宿題などがなかなか終わりません。◯時になったら宿題やろうね、など声かけをしたり、学校の準備も一緒に確認しながらひとつずつやっていますが、すぐに飽きて遊ぼうとしてしまいます。たとえば、鉛筆削りに行くはずが途中でおもちゃに興味が移ってしまい、何をするか忘れてしまいます…まだ1年生なので仕方ない部分もあると思いますが、毎日のことなのになかなか進まないのでどうしたものか…今回はそのような宿題のお悩みについて、鳥取大学大学院教授で発達障害を専門とする井上雅彦先生にお伺いしました。漢字の宿題が大の苦手!?宿題を嫌がる息子にどう対応したらいい?A:宿題の取り組みは、学校から帰宅後のスケジュールを、お子さん本人と一緒に考えることが大切です。宿題の時間だけでなく、お子さんが帰宅後にやりたいことも書き出して、どの順番にするとスムーズに動けそうかを一緒に考えていきます。実践してみて、うまくいったことや難しかったことを一緒に振り返るのもポイントになるでしょう。ただし宿題を嫌がる理由は、お子さん一人ひとりによって異なると思います。その理由を探っていくことも大切です。例えば、手先の不器用さがあって漢字の書き取りに特に苦労している場合もあるでしょう。本人なりに一生懸命書いても、「とめ・はね・はらい」や字の形を指摘されたり、やり直しになったりすることもあると思います。そうすると、お子さんの視点では「せっかく頑張ったのに、認められないし嫌なことがある」という体験になっているかもしれません。頑張ったことがなかなか報われないとなると、宿題が嫌になってしまうのは自然なことかもしれません。ほかにも、放課後やりたいことがたくさんあったり、お子さんなりのルーティンが決まっていたりすることもあるかと思います。例えば、帰宅後ひとまず動画を見ながら一息ついたら、外に友だちと遊びに行って、帰ってくるとお腹が空いているのですぐ夜ご飯を食べる、という流れがルーティンになっている場合などです。ご飯のあとは、一日の疲れがたまっている時間帯なのでなかなか勉強に取り掛かれない、ということもあるでしょう。保護者としては「帰ったらすぐに宿題してほしい」という思いもあるかもしれませんが、帰宅後すぐは休息が必要というお子さんも少なくありません。前提として、子どもたちは学校で頑張ってきているので、お家では自分のしたいことをしたり、ゆっくり過ごして休息をとったりすることは、とても大切です。その時間があるからこそ、また次の日を頑張れるのだと思います。そのため、遊びや休息の時間も確保しつつ、どのタイミングだと宿題に取り組みやすいかをお子さん本人と一緒に考えていくことが大切です。例えば、単に時間で決めるのではなく、子どもが必ず行う活動で楽しみなルーティン(例えばおやつなど)の前に入れるのが良いと思います。一度決めたスケジュールが初めから全てうまくいくわけではないと思うので、やってみた結果を一緒に振り返って調整していくといいでしょう。うまくいった部分はたくさん褒めて、難しかった部分についてどうすれば良いか一緒に考えていきます。手先の不器用さなど「書くこと」の負担が大きい場合には、宿題の内容や量、採点基準などを先生に相談することも大事になるでしょう。Upload By 発達障害のキホン小学5年生の自主学習、ネタが思いつかない?自分で進められるようになるには?A:自主学習や調べ学習のサポートは、お子さんが興味あるテーマを取り掛かりにすることがポイントです。まずはお子さんの興味あるテーマで、調べ学習の進め方自体を学ぶ機会や、取り組めた成功体験にできると良いでしょう。お子さんによっては、宿題がドリルやプリントのほうが取り組みやすく、自分でテーマを決めて進めていくことが苦手な場合もあるでしょう。どう進めたら良いか分からない場合には、進め方自体を教える必要がありますが、すでに拒否感が強いという場合は、テーマ選びが大事になると思います。例えば、スポーツをやっていて、野球が好き・サッカーが好きという場合には、それらをテーマにできると思いますし、ゲームの紹介や攻略法なども取り掛かりやすいかもしれません。こういったテーマで問題ないかどうかは、事前に先生に確認できるとお子さんも安心だと思います。本人が関心のあるテーマで、まずは一緒に調べ学習をして、調べ方やまとめ方などをお子さんが知っていけるといいですね。何度か経験してパターンが分かったり、まとめ方の見本があったりすると、自分でできる範囲も広がってくると思います。また調べ学習について「1.テーマを決める、2.情報を集める、3.まとめる」などステップ化することで、お子さんがどこを苦手としているかがより明確になり、解決の糸口になるかもしれません。「2.情報を集める」については資料やインターネットでの調べ方を教える、「3.まとめ」については最後に端的にまとめる方法を練習するなどのサポートもできるでしょう。分からないことを調べるスキルは、これからの情報リテラシーとしても大切です。Upload By 発達障害のキホンまとめ:宿題のメリット・デメリットや、目的を整理してみよう!お子さんが宿題を嫌がるとき、ご家庭で保護者がサポートするのはとても大変だと思います。全て完璧にやろうとすると親子でより大変になってしまい叱ることも増え、お子さんがますます勉強を嫌がってしまうことにもなりかねません。そのため、宿題は何のために取り組むか?という目的を整理したり、今のやり方のメリット・デメリットを考えてみることも良いと思います。宿題の出来栄えよりも、まずは出すことを目的にする場合と、学校で習ったことの定着を目的にする場合では、重視する部分が変わってくると思います。後者であれば、宿題自体をお子さんに合う難易度や量、取り組み方に調整することも選択肢になってくるかもしれませんね。宿題の取り組みについてご家庭での負担が大きい場合には、学校の先生にも相談していくと良いでしょう。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。SLD(限局性学習症)LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。
2025年03月03日親子で楽しく通えていたはずの支援センター。しかし1歳頃から足が遠のくように……たーちゃんが赤ちゃんの頃は自宅保育をしており、地域の支援センターによく通っていました。同じくらいの月齢のお友だちと遊んで刺激を受けたり、人見知りや場所見知りがよくなったりしたら良いなと思ったからです。また、私にとってもほかの保護者の方と話すことで、情報交換や気分転換ができました。Upload By みかみかんたーちゃんは、人見知りや場所見知りで泣くことはありましたが、歩き始めるまでは問題なく通えていたと思います。しかし、1歳頃から徐々に支援センターへ行きづらくなりました。たーちゃんの困った行動が目立つようになり、周りからの視線が気になってきたからです。支援センターでの困った行動。まだ小さいからしょうがない?でも周りからの目が気になって……まず気になったのは、ほかのお子さんが遊んでいるオモチャを取ってしまうことでした。「ほかの子が遊んでいるから、違うオモチャで遊ぼう」と誘導しても、一度気になると執着心が強く、なかなか気持ちを切り替えられませんでした。今考えると、ASD(自閉スペクトラム症)の特性で、人への興味より、物への興味が強かったのかもしれません。Upload By みかみかんそれに関連して、オモチャや絵本を次々出してしまうことも気になっていました。その頃のたーちゃんは、支援センターでも自宅でも、ひとつのオモチャでじっくり遊ぶことはほとんどありませんでした。ほんの少し遊んだあと、別のオモチャを出して遊んでいました。「遊ぶ」というより、「出す」ことのほうを楽しんでいるようにも見えました。飽きっぽいのか、集中力がないのか……。私はたーちゃんがひっきりなしに出すオモチャや絵本を片づけ続けなくてはなりませんでした。Upload By みかみかんほかには、落ち着きがないことも気になりました。職員さんが絵本の読み聞かせをしてくれてもウロウロしたり、前に出て絵本をめくろうとしたりしていました。もっと月齢の低いほかのお子さんでもじっとしているのに……。どうしてたーちゃんはできないのだろう、と疑問に思っていました。そして一番困っていたことは、あまりにも周りを見ずに部屋の中を走り回ってしまうことでした。私や職員さんが何度注意しても、やめられなかったです。歩けない赤ちゃんもいる中で、けがや事故につながったらと不安になり、だんだんと足が遠のいてしまいました。Upload By みかみかん支援センターや児童館に行かなくなり、次は公園に。しかし、そこでも問題が。赤ちゃんの頃から、エネルギーがいっぱいあるたーちゃん。支援センターで動き回っているのを見て、たくさん体を動かせるように外で遊ぼうと思い付きました。まず、一番家から近い公園に行ってみました。しかし、ここでも問題が……。たーちゃんは公園でも遊びに集中することなく、すぐに公園の外に出ていってしまうのです。あまり広くない公園で、すぐそばに交通量の多い道路もあり、飛び出してしまわないかいつもヒヤヒヤしていました。Upload By みかみかんまた、感覚過敏もあり手を繋ぐことも難しく、自宅から公園への行き帰りも大変でした。大人の足なら3分かからない距離なのに、片道30分近くかかることもありました。さらに、公園から帰りたくなくて癇癪を起こすことも何度もあり、たーちゃんと外に出るのがどんどん億劫になっていきました。迷惑をかけない、のびのび遊べる大きい公園に。夫の協力にも感謝。どこにも居場所がないような気がして、たーちゃんと家で過ごすことが増えていった1歳半頃。塞ぎこんでいた私を気遣ってか、夫が平日休みや午前休を取り、夫とたーちゃんだけでよく車で出かけてくれました。少し遠いところにある広い公園をいろいろ探して、2~3時間ほど遊んでくれたのです。その間は私のリフレッシュの時間にしてくれたことを、今でも感謝しています。午前中は夫とたくさん遊んで、午後は自宅で過ごす。そんな日が増えました。私も気力がある時にはたーちゃんと近所の公園に行ったり、自転車を購入して広い公園に行ってみたりしました。Upload By みかみかん徐々に、危な気なく公園で遊べるように。大変なこともあるけど、成長を感じる。そんな生活を続けていると、2歳あたりから公園から抜け出すことが減ってきました。言葉が通じるようになったことが、理由のひとつかなと思います。近所の公園で平行遊びをする友だちもでき、たーちゃんの成長を感じました。しかし、お友だちとのコミュニケーションはまだまだ難しく、私はいつもたーちゃんとつきっきりで遊んでいました。そのため、ママ友とのおしゃべりに花を咲かせることはあまりなく……。よく子どもたちのお世話係になりがちでした。でも、それも今となっては良い思い出です。その頃に仲良くなった近所のお友だちやママ友のおかげで、今通っている幼稚園も楽しく過ごせています。トラブルを避けることも大事ですが、居場所がないと諦めずに家族全員で頑張ってこれて良かったです。執筆/みかみかん(監修:室伏先生より)みかみかんさん、たーちゃんが安心して遊べる場所が少なかった頃のたーちゃんの様子や過ごし方、その時のお気持ちなどについて詳しく共有してくださりありがとうございます。共感されるご家族は少なくないのではないかと思います。お子さん・ご家族が安心して過ごせたり、ご家族が安心して預けられる場所というのはとても重要ですよね。療育はそういった場所の一つと思いますが、療育が必要なお子さんでも、1歳頃ですとまだ受け入れが難しい場合も多いですし、施設には限りがあるので十分な時間過ごせるとも限りませんよね。お父様が広い公園に連れて行ってくださったとのこと、移動手段や生活環境などによって難しいご家庭もあるかと思いますが、たーちゃんにとっては安全に思い切り遊べる場所になり、みかみかんさんにとっては一息つく時間になって、とてもよかったですね。このようなお子さんが安心して過ごせる場所が増えること、療育をもっと低年齢から幅広く利用できるようになることを願います。前の記事はこちら(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2025年03月02日心休まらなかったイベントも、徐々に楽しめるようになってきた小学校入学前幼稚園の頃のあーは、慣れない環境、知らない場所、特別な場面などで過度に緊張し、興奮することが多くありました。しくしく泣いたり、じっと固まって動けなくなったりするのではなく、大きな声で歌ったり叫んだり走り回ったりと「動」に表出するタイプだったために、親は気が休まることがありませんでした。それが、幼稚園の発表会や運動会を数多くこなすうちに、本人も先生方も親である私たちも段々慣れてきて、練習を積み重ねれば諸々イベントごとを楽しめるようになってきたんです!そしていよいよ迎えた卒園式では本当に立派な姿を見せてくれて……!今思い出しても目頭が熱くなるほどに、あーは幼稚園の3年間で見違えるほど成長してくれたのです。入学式まで入念に重ねた準備。しかし本番前日、息子の言葉に大反省だから安心……というか油断していたんですよね。小学校でもきっとそつなくやってくれるだろう、と。あーの通うことになる小学校は、特別支援学級に進学する子どもを入学式の予行演習に参加させてくれたんです。入学式の前日に、それはありました。あーは、幼稚園のイベントにも大張り切りで参加するようになっていたので、きっと予行練習も喜び勇んで参加してくれると思ったら……。行く前から超不穏……。道路で砂いじり(もっと小さな頃、機嫌が悪いと無心でやってた行動)、着いてからも体育館に寝そべる、先生に話しかけられても「あーあー」と意味不明な奇声……。え、なんなの?どうしたの?がその時の母の本音。この間(卒園式)はできてたじゃん。みんな君のために心を砕いてくれてるんだけど。特別支援学級に通う予定のほかの子たちはみんな「ちゃんと」してるよ?普段私の中には天使母と悪魔母が同居していて、「普通の子なんかいない!私はこの子の個性を大事にしたい!」の天使モードと、「なんでちゃんとできないの、恥ずかしい……みんな頑張ってるのに!」の悪魔モードが常に拮抗しながらもバランスを保っているんですが、この時ばかりは悪魔母モードに転落しましたね……。あるがままの姿を受け止めようという気持ちになることができませんでした。どうしても。Upload By よいこそれでも明日は来る。最後まで手は抜いちゃダメだ、これは親としての責務!とお風呂で入学式の練習(名前を呼んだら答える、など)をしていたら、急にあーが 「もう嫌だ」 とそっぽをむいてしまったんです。聞けば、「お母さん、お母さんなのに先生みたい。おうちなのに」って……。これには大反省しました。苦手なことを克服して、小学校生活を少しでも楽しく過ごさせてあげたい一心で、いろいろ準備していたけれど、あーの負担になってたなんて……!Upload By よいこわが子だけどうして……準備が報われなかった入学式そんなこんなで迎えた入学式は……散々でした。教室に入っても最初から椅子に座ることすらできず、床に寝転がるあー。入学式が始まると、逃げ出すことはしなかったものの、静寂の中で時たま聞こえる歌や声……。私はもう、下を向いて脂汗を流しながらひたすらに耐えるしかありませんでした……。もうほんとごめんなさい周りの全ての人……!!先生は「よく頑張ってくれましたよ!」と笑顔でしたが、笑顔すらつくれない私の頭の中に浮かぶのは「絶望」の二文字でしかなかった……。入学式の翌日、通常の登校が始まると意外にも……!そして入学式の翌日。「きっと小学校生活にも適応できないだろう……」という私のネガティブな予想に反し、あーはテキパキ……というわけでもないけれど、しれーっと学校に行きました。明くる日も、その次の日も、特にぐずることなく日々を淡々とこなしている……。そして私は思い出したのです。冒頭のことを。そうだ、あーは元々そういう子だった。特別な場面や新しい環境は実はすごく苦手で、騒いだり不機嫌になるのはあーの不安や緊張の表れで、確かに幼稚園の後半戦はそんな姿は見せなくなっていたけれど、それは本人と先生方の努力の賜物だったんだ。今またあーは静かに自分を新しい環境に適応させようと頑張っているんだ……!と。そんなあーの心理に気づけず、寄り添うこともできなかった情けない私……。母歴何年なのか……。落ち込むと共に大きな後悔が押し寄せましたが、ここは切り替えてあーのサポートを頑張ろう!と気持ちを新たにした小学校生活の幕開けとなりましたとさ!ちなみに……。月日は流れ、6年後。中学校の入学式は問題なかったです。バッチリこなせてました!人は成長する!Upload By よいこ執筆/よいこ(監修:藤井先生より)入園、入学の季節になると、新しい環境や場面で情緒が不安定になったお子さんの様子に心配になったという相談が増えます。ほかの子はできているのに、なぜわが子はできないのだろうと、悲しくなりましたと涙ながらに話される方もいます。でも、大丈夫です。よいこさんの息子さんのあーさんが、中学生になる頃には入学式は問題なく過ごせるようになったように、時間は要するかもしれませんが、特別な場面や環境の変化があっても、落ち着いて過ごせるようになっていきます。そのためには、不安や緊張がありながらも、さまざまな環境に身を置いて、できたね、という経験の積み重ねが大切になります。前の記事はこちら(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2025年03月01日神奈川県放課後等デイサービスUpload By 発達ナビ施設情報フィーカでは、お子さんの将来を見据えて日常生活が少しでも良くなるよう支援したいと考えています。毎日の情報共有に時間をかけ、一人ひとりのお子さんに最適なサポートができるよう準備を怠らず、研修にも積極的に取り組まれているそうです。2025年2月オープンのため綺麗な環境で落ち着いて過ごすことができ、宮前区・高津区を中心に送迎も実施しています。今なら最大週4日まで受け入れ可能とのことですので、ぜひ問い合わせてみてはいかがでしょうか。Upload By 発達ナビ施設情報Kanoaでは、広い事業所内を活用してお子さんが楽しく参加できる活動を行っています。また、「対人コミュニケーション」「指示理解」を中心に、各プログラムにねらいを設定しています。祝日や長期休み期間は、車に乗ってお出かけ(外出支援)やクッキングなど、学校終了後にはできないような社会性を身につける活動や、楽しく挑戦する機会をたくさん作っているそうです。ヨガや運動、ピアノなど、スタッフ一人ひとりの得意なことを活かし、研修などを通じて障害分野の知識を習得しています。神奈川県の放課後等デイサービスをもっとみる神奈川県児童発達支援Upload By 発達ナビ施設情報フィーカは、忙しい毎日を送っているお子さんたちや保護者の方が「ここに来ると気持ちが安らぐ」、まずはそのように思える場所にしたいという思いから名付けられました。フィーカには、さまざまな分野において経験豊富なスタッフがおり、日々向上心を持って発達支援に取り組んでいるそうです。そして、子どもが意欲的に取り組めるプログラムを提供し、発達段階に合わせた動作や生活習慣を身につけられるよう、適宜プログラムの見直し・修正を行っています。最寄駅は宮前平・宮崎台で、送迎も実施中です。Upload By 発達ナビ施設情報運動発達支援えすぴーでは、鉄棒や跳び箱などの小学校体育で行われる器具を使って発達支援を行っています。それぞれのやりたい気持ちを第一に、休憩しながら約100分間活動しています。活動を通して、体幹強化、できる事の増加、何より心理的な成長が見込まれ、その中で誰かと比較ではなくそれぞれの個性、特性に沿った成長を支援していきます。また、お子さん自身で選択できるように、さまざまな経験を積み、それぞれの発想を大切にしていきたいと考えているそうです。神奈川県の児童発達支援をもっとみる千葉県放課後等デイサービスUpload By 発達ナビ施設情報Gripキッズ柏西校は、1.タイムスケジュールに沿った自己管理力、2.各種ルールを守れる規律性、3.状況や相手に合わせた的確なコミュニケーション能力、を身につけてもらいたいと願っています。個別指導では学習、日々のメインとなる集団指導では、多彩なアクティビティシートを使い「認知能力」「主体性」「課題解決力」「コミュニケーション能力」など、将来の受験や社会生活に必要な力を身につけます。また、特別プログラムでは理科実験など、お子さんが喜ぶプログラムを行い、楽しみながら活動しているそうです。千葉県の放課後等デイサービスをもっとみる大阪府放課後等デイサービスUpload By 発達ナビ施設情報放課後等デイサービス ファンファーレプラスでは、学校でなじめない、友人関係の構築が苦手、生活の中で困りを感じているお子さんに社会生活するうえで必要なスキルの習得を支援をしています。小集団での活動と合わせて、心理担当職員による「自己理解」「他者理解」を深めるSST(ソーシャルスキルトレーニング)プログラムも実施予定とのこと。新規オープンですが、グループ店で勤務経験のある多種多様な職種経歴を持つスタッフを配属し、長所を活かして日々の活動やイベントの企画を行い、お子さんの興味の幅を広げていきます。Upload By 発達ナビ施設情報運動と学習を通じた発達支援を行い、仲間を大切にするをモットーにしている放課後等デイサービス・コレカラは、2025年4月オープン予定です。代表は元サッカー選手で、心の健康と体の健康を第一に考えているそうです。運動を通じた発達支援では、リズム体操・柔軟性・コアトレーニング・ステップトレーニングなどを通して、心身の成長に繋げていきます。SST(ソーシャルスキルトレーニング)では、基本的な生活習慣のスキルや、集団での遊びを通して自分で考えて、答えを出せる力を養います。訓練室は約50㎡と広く、お子さんがのびのびと安心して通える場になっています。大阪府の放課後等デイサービスをもっとみる大阪府児童発達支援Upload By 発達ナビ施設情報2025年4月1日オープンの児童発達支援ファンファーレは、株式会社グッドフレンズが運営する8つ目の教室です。お子さんたち一人ひとりが大人になるまで、そしてこれからの人生(=冒険)を明るく前向きにファンファーレの音で送り出して、明るい未来を祝福できるように……そんな願いが込められているそうです。集団指導を通して、社会生活するうえで必要なスキルを獲得できるように支援をしていきます。オープンに伴い、3月1日~3月25日(予定)でご見学会を実施するそうです。この機会にぜひお問い合わせください。大阪府の児童発達支援をもっとみる兵庫県放課後等デイサービスUpload By 発達ナビ施設情報特性によって、お子さん一人ひとりの得意分野なこと・苦手なことは変わってきます。みらい教室 長洲教室では、お子さんの特性を理解し、必要なスキルの獲得や環境調整を行い、安心できる環境のもとで適切な関わりを行っています。日常生活動作やコミュニケーションの方法、マナーの学習など、お子さんの生活の困りに合わせて応用行動分析、SST(ソーシャルスキルトレーニング)などを通して発達支援を行います。放課後等デイサービスでの勤務経験が豊富な児童指導員、保育園での勤務経験のある保育士や福祉現場で経験を積んだスタッフが多数在籍しているそうです。兵庫県の放課後等デイサービスをもっとみる「もっと施設の情報を詳しく知りたい!」「見学をしてみたい!」と思ったら、Webからもお問い合わせが可能です。施設情報ページでは、掲載されている施設の情報を地域ごとに検索して見ることができますよ。
2025年02月28日こんなに違う!ASD(自閉スペクトラム症)きょうだいの幼少期幼い頃の娘は、私にとって「子どもらしい子ども」のようでした。たとえば息子は道端で癇癪を起こしている小さな子どもを見ると「嫌だな、恥ずかしいな」と感じるタイプで、同年代と比べてもかなりおとなしい子どもでした。しかし、障害の特性が少しずつ目立ってくるにつれて、息子自身も同じように癇癪を起こすようになり、そのことをとても嫌がり、かと言ってしんどい気持ちは止めることはできずに、さらにパニック状態に陥るようになりました。一方、娘はスーパーで「お菓子買って!」と床にひっくり返ったり、公園にいくと「帰りたくない!まだ遊びたい!」と泣いたりしました。私から離れるのを極端に嫌がったり、節分の鬼が怖いからとその日だけ登園拒否をしたりする繊細さはありましたが、集団行動にも適応できていたし、すぐに仲のいい友だちもでき、楽しく幼稚園生活を送っていました。息子がパニックを起こした際は、冷たい飲み物を飲むと落ち着くことがあったので、対応している私の代わりにお茶を取りに走ってくれたりなどしっかりとした一面もあり、娘の成長は私にとって大きな慰めでもありました。Upload By 花森はな結果はグレーゾーン、特別支援学級へそんな娘の様子が少しずつ変わってきたのは、小学3年生の頃でした。かつての息子と同じように、漢字ノートに書いた字を「汚い。これじゃダメだ」と何度も消しては書き直すようになりました。連絡帳も書けていないことが多くなり、クラスメイトのお母さんに内容を聞いたりと、学校生活の困りごとがどんどん増えてきました。私はすぐに息子の通う児童精神科に予約を取りました。心理検査の結果、娘は「グレーゾーン」と診断されました。担任の先生も娘の異変に気づいていたようで、書く負担が少ない指導に切り替えてくださり、3学期から特別支援学級へと転籍することにしました。その躊躇も迷いもない決断に、学校の先生方は「もう少し様子を見てもいいのでは……?」と驚いていましたが、私が迅速に決断できたのは息子の時の経験があったからです。Q:発達障害グレーゾーンとはなんでしょうか?A:発達障害のいくつかの症状はあるけれども診断基準に満たないものをグレーゾーンといっています。母集団的には、発達障害に診断がある人よりも発達障害未診断の人のほうが多いと言われています。診断基準には満たないものの、困難な部分のいくつかは発達障害のある子どもと共通の原因で起こっている可能性があるため、環境的な工夫や、問題行動を解決するスキルの学習など、発達障害の特性に合わせた同様の支援が有効です。息子のように常時支援が必要な状態ではありませんでしたが、それでも私たち親子は困り果てることになりました。学童保育も集団がつらいということで行けなくなり、預け先も相談先も何もないのです。時短勤務で入った職場も残業が多く、特別支援学級在籍が決まった際には辞めざるを得ませんでした。できるだけ近所で理解のある職場を探しました。習い事先にも事情をお伝えしました。本来は4〜5人での授業をする学習塾だったのですが、先生がたまたま特別支援学校教諭の資格をお持ちだったため、空いている時間に個別授業という形を取ってくださることになりました。感謝しかありませんでした。息子の時には受けられなかった支援を、娘にはできる限り受けてもらいたいと、私は必死でした。Upload By 花森はな揺れる気持ちと体調と…学校がどんどんキライな場所にこうして特別支援学級在籍となった娘ですが、「学校に行けば文字を無理やり書かされる」とのことで、学校への足はだんだん重くなっていきました。門に入った途端、「もうイヤだ!やっぱり行かない!」となることもしばしば。そうした時、助け舟を出してくださったのは保健室にいる養護の先生でした。校門から近いところにある保健室から、娘の声を聞いて出てきてくださり、保健室で一旦気持ちを落ち着かせてくれました。この養護の先生には、息子の時も大変お世話になった方で、私も信頼できる先生でした。また、気持ちの揺れが体調にも現れるようになってきました。「お腹が痛い」「先生の声が聞こえない」「黒板の字が見えづらい時がある」などの症状が現れるたびに病院で検査を受けましたが、いずれも心理面からくるものでした。娘があまりに気が進まないようなら学校を休むようにしました。以前は、体調不良以外の理由で学校を休ませることに抵抗を感じていた学校側も、コロナ禍で状況が変わり、心の問題で学校を休む児童が増えたこともあり、娘の状況を理解してくれました。そうやってなんとか綱渡りの学校生活を送っていたのですが、変化の時が訪れました。次年度から通級指導学級が設置されることなり、特別支援学級には精神障害者保健福祉手帳もしくは療育手帳を所持している児童しか在籍できなくなってしまった(※)のです。(※)自治体によって条件・状況は異なりますUpload By 花森はなASD(自閉スペクトラム症)と診断、精神障害者保健福祉手帳を取得当時、娘は障害者手帳を持っていませんでした。教頭先生から「適応障害だとしても理由が弱すぎます。障害者手帳がない以上は通常学級に戻ってもらうしかないんです」と言われたため、私はもう一度児童精神科の受診を決意し、すぐに病院を探し始めました。息子の通う児童精神科は大きな病院でしたがかなり遠い上に予約が取りづらく、娘を定期的に連れていくのは厳しそうでした。そこで「自転車で通える」「思春期を迎えるし、女性の医師のほうが気持ちを話しやすいのでは」という条件で病院を探し続け、なんとか児童精神科の予約を取りました。以前よりも障害特性が強くなっていたためか、今度は「ASD(自閉スペクトラム症)」と診断されました。精神障害者保健福祉手帳を取得するため、その病院に通院を続けることに決め、学校にも報告しました。そして、障害等級2級と判断され、娘は次年度も特別支援学級に無事に残れることになりました。こうして現在は、特別支援学級で適切な支援を受け、先生方に見守られながら、特別支援学級のお友だちと自分のペースで過ごしています。Upload By 花森はな厚生労働省|障害者手帳精神障害者保健福祉手帳は、一定程度の精神障害の状態にあることを認定するものです。精神障害者の自立と社会参加の促進を図るため、手帳を持っている方々には、様々な支援策が講じられています。精神障害者保健福祉手帳の等級は、精神疾患の状態と能力障害の状態の両面から総合的に判断され、1級から3級まであります。申請は、市町村の担当窓口を経由して、都道府県知事又は指定都市市長に行います。変わりゆく特別支援教室と、子どもたちの今息子と娘は、4歳の年齢差があります。この4年の間に、二人の在籍する特別支援学級の環境は大きく変わりました。息子が在籍していた頃は、たった一人で特別支援学級に残されることが多かったり、特別支援に詳しくない先生に適切ではない対応をされることもあり、学校に行けなくなってしまいました。しかし、娘が在籍する頃には当時の先生方は誰もおらず、代わりに特別支援学校教諭の資格を持った先生が来てくださり、特別支援学級の教員の数も増え、乱雑だった教室も綺麗に整頓されて、まるで違う学校に生まれ変わったようでした。娘が現在学校で受けている支援は、あの頃の息子にあればよかったなというものばかりです。そのことに歯痒さや悔しさを感じることもありますが、今の娘が少しでも心穏やかに学校で過ごしてくれることで、救われている気がします。特別支援学級の先生も、時折娘のお迎えに同行してくれる息子に対して「息子くんもいつでも来てくれていいよ。ここは息子くんの場所でもあるんやで」と言ってくれます。娘の支援を通して、また私たち家族もサポートしていただいていると感じています。執筆/花森はな(監修:初川先生より)娘さんの小学校生活やその中での困難、支援につながっていく経緯などについてのシェアをありがとうございます。息子くんに比べると“子どもらしい子”だった娘さんが小学校生活の中でこだわりやパニックを呈するようになったり、学校が苦手になったりという経緯を経て、特別支援学級へと移られたのですね。そして、特別支援学級の条件が途中で変わり、手帳取得を急がれたとのこと。このあたりはお住まいの自治体によってさまざまなので、気になる方はお住まいの自治体にご確認ください。お子さんが学校を苦手に感じ、そのつらさが身体症状にも表れるほどであると、保護者としてはとてもご心配されたことと思います。また、ご自身のお仕事のことや生活のことなど気がかりなことがたくさんあられたのだろうと想像します。特別支援学級が娘さんにとって居場所となっていること、よかったと感じます。また、受診によって診断を受けたことも、支援やサポートを受けるにあたってはよかったですね。診断を受けたことで衝撃を感じたり、悲しまれたりする方もいらっしゃいますが、そのお気持ちはその通りだと思いますが、しかし、お子さんへのサポートを充実させたり福祉的なサービスを活用するという意味ではメリットがあります。お子さんにとって、困っている状況・つらい状態がある場合には受診するのは1つの手立てです。特別支援学級に行けば絶対にうまくいく、というほどシンプルな話ではなく、お子さんにとってその環境が成長促進的であるかどうかはさまざまな要素の掛け合わせでもたらされるものだと感じます。花森さんや保護者の方がお子さんのためにさまざま奔走されたときに、よき支援者とつながっていけたこと、また、環境が整っていくことが適ったことは何よりだと感じます。前の記事はこちら(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2025年02月28日『集中できる デスクパーテーション』商品開発モニターレポートUpload By 丸山さとこ発達ナビとフェリシモC.C.Pがコラボし、暮らしの中の困りごとをサポートする商品づくり第6弾。私は、コラボ第2弾で発売した「おうちで集中できる デスクパーテーション」のリニューアル商品「集中できる デスクパーテーション」の商品開発モニターを担当しました。リビングなど気が散りやすい場所でも、集中できるデスクパーテーション。テレビや周囲の様子が視界に入りにくく、折りたたんで持ち運びもできるので、自分だけの空間が好きな場所に簡単につくれます。使わない時はコンパクトに収納できます。Upload By 丸山さとこ※詳細ボタンをクリックすると発達ナビのWebサイトから株式会社フェリシモのWebサイトに遷移します子どもの集中と家族のくつろぎのせめぎ合い!?ダイニング学習が基本のコウです現在中学生の息子のコウは、自宅学習のほとんどをダイニングで行っています。自分の部屋にも学習机はあるものの、「部屋ではあんまりやる気出ないんだよね~」と言いほとんど使うことはありません。小学校入学以来、宿題をするのしないのと揉め続けて早9年。昨年受験生となってからも宿題と受験勉強で揉めていることを思えば、気が散りながらもダイニングで勉強をしているのはいいことだと思います。ですが……ダイニングで勉強されると、こちらは全然くつろげません!対策としてリビングの一角に小さな学習スペースを用意したものの、手元を見ると落書きをしていたり電子辞書で遊んでいたりします。通りすがりを装ってのぞき込むなどのさり気ないチェックが必要で、やはりこちらはこちらで気が抜けずくつろげません。そんなわが家にピッタリな『集中できる デスクパーテーション』を、さっそく使ってみました。『集中できる デスクパーテーション』を試してみたら…!ダイニングテーブルにパーテーションを広げてコウに座ってもらったところ「あぁ、この空間いいね!」とかなりの好感触。中学生男子にありがちな「ふーん、いいんじゃない?」くらいのクールな反応を想像していたので意外でした。「ほどよい囲まれ感があっていいね。勉強以外のものが何もない空間になるから、勉強をするしかなくなる」そう言うコウに席を変わってもらうと、確かにいい感じのこもり感です。外から見ると高い壁の存在感が凄かったのに、内側に座ると不思議と圧迫感がありません。コウにそう伝えると「でしょう?」と得意げにしていました。すっかりパーテーションを気に入ったようです。Upload By 丸山さとこサイドの収納は『パーテーション内で行う作業に必要な物』の一時置き場にすると便利でした。右のA4サイズ収納に問題集の解答書、左の引き出し収納に赤ペンや付箋を入れておくと、作業中に少しずつ机の端に押しやられて落ちることもなくてよい感じでした。また、勉強をする息子の手元がパーテーションで適度に遮られることにより、『同じ部屋にいる受験生に気を使わなければいけない雰囲気』が和らぐのを感じました。パーテーションがあることで視線が適度に遮られるため、外側にいる私も落ち着けると感じました。Upload By 丸山さとこパーテーションの外からの視線をほどよく遮りながらも『コウが今何をしているか』は何となくうかがえるため、コウの気が散ったり脱線したりするとさり気なく声をかけることもできます。この手元はゆるく隠されているけれど外から様子はうかがえる具合が絶妙で、親子のバトル緩和にもパーテーションは役に立っていると感じました!『集中できる デスクパーテーション』は、サッと広げるだけでゆるやかに視線や空間を区切ってくれる便利なアイテムでした。パーテーションが広がっていることで視覚的に「今作業中なんだよ」と伝わるところも、衝動的に話しかけがちな私やコウにとってはとても助かるポイントでした。・作業に関係がない物や空間が広がっていると気が散りやすい方・同じ部屋で過ごす人の様子が気になってしまう方・作業中の人にも衝動的に話しかけてしまいがちな方このような方々には特に、一度お試しいただきたいアイテムだと思いました。Upload By 丸山さとこ就労支援継続B型事業所「ハッピーエリア」で組み立ててお届けします。※詳細ボタンをクリックすると発達ナビのWebサイトから株式会社フェリシモのWebサイトに遷移します
2025年02月27日道路に飛び出す、物を壊す…強く叱ることで命を守ろうとしていた幼少期Upload By もっつんタクが発達障害の診断を受けたのは小学校1年生の終わり頃のことで、それまでは落ち着きがなくてトラブルが多いのはしつけの至らなさが原因だと思っていました。物心がつく頃から、考えるよりも体が先に動いてしまうタクは、周りの同世代のお子さんよりも手がかかることが多くて、発達に違和感をおぼえていました。ですが、3歳児健診の際に相談しても保健師さんに「考えすぎですよ」と言われ、発達障害の可能性を消してしまいました。幼稚園では集団行動に参加できずに先生に負担をかけることが心苦しくて、常に申し訳ない気持ちでいました。公園に遊びに行った時には、知らない子のおもちゃや三輪車を勝手に使おうとするのでタクを連れて歩くことに負担を感じていた時期もありました。何度も何度も目を見ながら注意したり語りかけたり、遊びに行く前にお約束をしたりと接し方を試していたけれど、毎回のようにトラブルを起こしてしまう……。そのうち私は、親としての無力感やイライラが募っていきだんだん叱り方がきつくなっていきました。特に急に走り出す癖には困らせられました。気になるものがあると周りが見えなくなって走り出してしまうので、道路を歩く際は気が抜けませんでした。何度言葉で説明してもなかなか変わらないので、命に関わるような危険な行動をした際は強く叱るようになりました。義母に言われた「ママは怒らないもんね」にショックUpload By もっつんそれでも、なかなかタクの行動は変わりませんでした。周りに迷惑をかけているのが親としてとても腹立たしかったです。このままだとタクは皆から嫌われてしまうかもしれない……!という心配がどんどん大きくなっていきました。根気強く注意していた私でしたが、周りから見たらタクは「問題がある」と思われるようになっていました。パパも積極的にタクの育児に関わってくれていましたが、どうしてもパパが叱ると「私が」ストレスを感じてしまっていました。私の連れ子であるタクをパパが叱ることに、何故か嫌悪感が湧いてくるのです。叱ってくれてありがたい気持ちと同時に、私の子を叱らないで!という理不尽な怒りが湧いてきていました。とても身勝手な考えではありましたが、可愛いわが子を自分以外の人に叱られたくない!という気持ちから、私一人で背負う!という考えになっていきました。でも、現実には問題行動を減らすことができずに無力感を感じていました。そしてある日、同居していた義母に言われました。「タクには困っちゃうね、ママは全然怒らないもんね」と。義母の目の前で孫を強く叱るのを見ると気分も悪くするかもしれないと思い、気を遣ってきつく叱らなかった私でしたが、まさかそんな風に思われていただなんて……!とてもショックだったし、もっと叱らなきゃいけないのかと暗闇の崖に突き落とされたような気分になりました。児童相談所への通報から一時保護されることに…Upload By もっつんそれから学校や学童でトラブルを起こすたびに、以前よりも強く叱るようになりました。タクが発達障害があると診断されてからは、「タクの行動は特性から来るもの」と分かってはいましたが、少しでもタクに伝わればいいなと思っていたのです。それはパパも同じで、いつの間にかタクが問題行動を起こす度に夫婦そろって強く叱るようになっていきました。丁寧に話をすると、タクはこちらの意図をやっと理解してくれます。しかし、また翌日に同じ間違いを起こすこともしばしばありました。当時の私は「特性だから悪気はないと分かっている……叱りたくないけど、叱るしかない」と思い込み、その考えを抑えられずに苦しんでいました。パパは「特性だからすぐに変わることは難しいかもしれないけど、少しでも親の考えを伝えたい」と感じていたようです。しかし……タクが4年生になったある日。私たちの様子を見た方が児童相談所に通報し、タクが一時保護されるというつらい体験をしました。つらい出来事が私自身の転機にUpload By もっつんタクが将来困らないように、一般常識をしっかり教えたい、命に関わるような危険な行動を止めたい、さまざまな思いが交錯する中でいつしか「強く叱りすぎる」ようになっていたわが家。それは外部から指摘されなければ気付けないような状態になっていました。児童相談所が介入してからは、繰り返し保護者の面談が行われて、認知やコミュニケーションを見直すための援助を受けました。児童相談所に通報されて保護されてしまった時のことは、思い出しても胸が苦しくなる出来事でしたが大きな人生の転機になりました。私自身が病院やカウンセリングに通うきっかけになり、発達に関する勉強をして資格を取得して、タクのことをより理解しようという気持ちが強くなりました。今、わが家はすごく穏やかで、時には喧嘩する時もあるけど何でも話せる家族関係になっていると思います。一人で抱え込まずに、周りの人を頼ってほしいUpload By もっつん発達障害のある子を育てていると、負担がかかる場面も多くて親は常に悩み、疲労困憊な状態が続きやすいと思います。実際に、心身に不調をきたしてしまう人もいます。そして、問題行動の多さから、周りから「しつけがなってない」と思われることもあり、実際に面と向かって指摘されることもあります。そんな時、真面目な人はますます「私がしっかりしなくちゃ!」と自分を追い詰めてしまうのではないでしょうか。つらい時期を過ぎた今だから分かることは、子育ての悩みを自分だけで抱え込んではいけないということです。発達障害のある子の子育てをしていることは恥ずかしいことではないと、当時の私に伝えたいです。義母に指摘された時も、自分自身のできない面を隠さずにさらけ出して関わってもらえばよかった。実親や先生や市の職員さんにも弱音を吐いて、親がカバーしきれない部分をサポートしてもらえば、もっと精神的にも穏やかな子育てができていたのかもしれません。今、当時の私のように悩んでいる方がいたら、決して一人で抱え込まずに、周りの人に頼ってください。そして、自分自身の心も大切にしてほしいと思います。そうすることで、子どもへの関わり方においても気負いすぎることなく、適切に関われるようになっていくのではないかと思っています。執筆/もっつん(監修:初川先生より)ASD(自閉スペクトラム症)とADHD(注意欠如多動症)のあるタクくんを育てる中での母もっつんさんの葛藤、苦しみ、気負いなどつらい時期を経て今感じていることのシェアをありがとうございます。多動や衝動のあるタクくんを守るために、常識的な立派な子に育てるために頑張ってこられたがゆえに、強くりすぎてしまったこと。そして、ステップファミリーがゆえの難しさ、再婚されたパパが自分の連れ子であるタクくんを叱るときの複雑な思い。タクくんが成長とともに「問題がある」と周囲から思われる中で、もっと追いつめられる構図。児童相談所に一時保護されたという保護者からするととても衝撃的かつ大きな出来事。そこからの関係やコミュニケーションの修復やご自身の特性についても捉えなおす機会となったこと。どれもこれも本当に大変な局面だったと思います。もっつんさんが最後に書かれていましたが、1つには、大変な時に弱音を吐く(弱音とは限らずに、大変だと言う)ことがその後の支援を得やすくするきっかけになります。子育ては親が責任もって、他人様に迷惑かけずに頑張るものだという風潮があるために、まじめな方や一生懸命な方は困りごとを抱え込んでしまうかもしれませんね。支援職である私からすると、そもそも子育ては家庭でのみ行えるものではなく、園や学校、地域などさまざまな大人に支えられながら進むものだと感じます。どんなお子さんでも少なくとも園や学校の先生にはお世話になっているはずで、だからこそ、お子さんを真ん中に据えて、育てる上での困りごとや悩みをお子さんに関わる大人たちが一緒に考えていけたらいいなと思っています。また、タクくんの幼少期にもっつんさんは「発達に違和感」を感じられていたとのこと。この違和感も大事にしていただきたいと思います。健診などで相談しても「大丈夫」あるいは「様子を見ましょう」と言われてしまうこともあるかもしれませんが、それでもその後の折々に「違和感があります」と言い続けてほしいと感じます。それを聞いた側(支援者や先生方など)は、そのお子さんをよく見るようになるからです。一番お子さんのことをよく知っている保護者がそう感じるには何かがあるかもしれない。そう思いながら、お子さんのことを見てもらい、保護者のサポーターになっていただけたらと感じます。そして、「強く叱りすぎてしまう」。それほどまでにお子さんの行動を変えたり、言って聞かせたことを実行させたりするのに苦労される場合、あるいは保護者の側が叱らずにはいられないくらいに感情的になるのを抑えられない場合。ぜひとも相談機関や医療機関に相談していただきたいと感じました。地域の子育て支援センターや児童相談所、かかりつけの小児科、小学生以上ならスクールカウンセラーや教育相談室などさまざまな機関があると思います。どこでもいいので、強く叱らざるを得ない、強く叱りすぎてしまうその状況をお伝えいただいて、一緒に考えていけたらいいなと思いました。お子さんに発達障害の特性や症状がさまざまあり、行動面に危うさがあっても、強く叱られ続けていいことはありません。強く叱られることでお子さんが一時的によい行動を取ることができても、別の場面ではまた同じようなエラーや問題行動を起こしてしまうことが発達障害のある子の場合よくあります。それは叱ることが最適解ではないということです。お子さんにどのような対応をしたらよいのか、あるいはお子さんがエラーや問題行動を起こさないようにする事前の工夫はどんなものがあるのか。お子さんはコミュニケーションを学ぶ時期でもあります。強く叱るコミュニケーションをモデリングとして取り入れていくのではなく、よきコミュニケーションを見せていくためにはどんな工夫ができるか。そのあたりをぜひ支援者や先生方と保護者の方が一緒に考えていけるといいなと思います。前の記事はこちら(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。
2025年02月27日行事がある時期は、不安定になりやすい長男特別支援学級の情緒クラスに在籍している長男けんとは、現在小学3年生。ASD(自閉スペクトラム症)と3歳の時に診断を受けました。構音障害があり、言葉が不明瞭。上手に説明することが難しいので、年長の頃は家族以外は何を言っているのか分からないことが多い状況でした。Upload By ゆきみ年少の頃は、市の発達支援施設に通っていました。年中から対象外となったので、少人数でアットホームな、地域のこども園に通い始めました。マイペースで、興味がないことは全くやらないけんとは、不安が強く、感覚過敏があり、見通しがつきにくい活動が苦手です。なので、運動会、発表会などのイベントや、それに向けた練習の時期はとても不安定になります。今回は、こども園での卒園式に向けたエピソードを振り返ってみたいと思います。練習中、友だちを引っ張る行動をとるように…けんとの通っていた園は、年長が1クラス。担任の先生が1名、副担任の先生が1名(合計2名)でした。普段は担任の先生がクラスを率いて、副担任の先生がけんとをはじめ、ほかのお子さんのサポート。加配という形ではありません。行事などでは、副担任の先生や、ほかのクラスの先生がけんとの隣でサポートしてくださいました。Upload By ゆきみ卒園式の練習が始まってしばらく経った頃、先生から連絡がありました。式の練習中、けんとがお友だちを引っ張るというのです。家でけんとから話しを聞くと「イスを戻したかった」とのこと。なぜ、イスを戻したかったのか、理由はうまく説明できません。予想ではありますが、「教室から講堂に運んだイスを、もとに戻して卒園式の練習を終わりにしたい」という気持ちから、イスを運ぶためにお友だちを引っ張ってしまったのかなと思いました。どういう活動をするのか見通しを立て、練習の順番を視覚で示してもらったり、終了予定時間を、視覚で示してもらったりすることなどが、視覚優位なけんとには有効です。当時も先生が見通しを立ててくださる時がありましたが、うまくいかなかったことも多かったようです。「できたカード」で頑張った練習行事の練習が続く時期は特に不安定になりやすいので、先生に許可をいただき「できたカード」というのを作って持っていきました。その日の目標を掲げて、できたら先生からシールをもらって帰ってくると、あらかじめ私と一緒に決めたご褒美をゲットするというもの(その日に食べるお菓子がワンランクアップすることが多かったです)。「お友だちを引っ張らない」ということを目標にした次の日は、お友だちを「押して」しまったり、卒園式の自分の番の練習が終わったら1人で教室へ帰る、という方法で切り抜けようとしたり……、けんとなりに考えて行動したようです。しかし、その都度、できたカードの目標やご褒美を相談し、変更していくことで、お友だちに手を出すことなく、最初から最後まで練習に参加できるようになりました。卒園式の練習を繰り返していく度に、「こういう練習をするんだな」という見通しがけんとの中でも少しずつ立ち、自分の中で折り合いをつけられるようになっていった気がします。卒園式で母が長男の隣の席に座る!?Upload By ゆきみ子どもたちの卒園式の練習が進んだ3月の頭、先生から個別でお話がありました。卒園式で私がけんとの隣に座り(子どもたちの一番端っこの席にけんとが座るので、その隣の席)、けんとのサポートをしてもらっても大丈夫ですか?とのこと。私も先生方には、ほかのお子さんの卒園する姿を、しっかりと見ていただきたいと思ったので、快諾。子どもたちと一緒に並ぶのは恥ずかしいかも?とも思いましたが、逆に「なかなか自分の子どもの横に座って卒園式で過ごせる機会なんてないな」という気持ちでのぞみました。そして先生からのご提案で、卒園式の1週間前に行われた練習に私も1度だけ参加し、座る位置の確認や当日の流れを練習しました。イスをガタガタ…するも、感動した卒園式Upload By ゆきみついに、卒園式の当日。先生と手をつないで入場してきたけんとをバトンタッチする形で私が引き継ぎ、隣に座り、厳かに卒園式が進んでいきました。式の最中、1番大変だったのは、イスをガタガタ揺らしたり、私に大きな声で話しかけてきたり、大きなあくびをしながら体を伸ばしたりするけんとが発する「音」を静かにすること。私がイスを手で抑え、物理的に音が出ないようにしながら、やはり隣に座ってよかったなと思いました。声を出して話しかけてくることを予想しておき、「声は出さないイラストカード」のような物を準備して見せるなど、視覚的なサポートもすればよかったと、今となっては思ったりもします。しかし、私が想像していたよりもはるかに頑張っていたけんと。自分の席から1人で舞台まで歩き、壇上で卒園証書を受け取る姿は、とても凛々しく感動しました。予想外の行動をするシーンもほんの少しありましたが、式が苦手なけんとが最後まで出席できただけで、花丸のがんばった賞です!小学3年生になった現在も、行事やその練習は苦手なけんとですが、マイペースではあるけれど確実にできることは増えていると感じます。これからも、けんとなりの成長を見守っていけたらと思います。執筆/ゆきみ(監修:新美先生より)けんとくんの卒園式についてのエピソードを聞かせてくださりありがとうございます。未就学の年齢ではお子さんによってはまだ卒園式の意義などはピンと来なくて、じっと座っている時間も長くて、本番は人も多くて、本人にとっては苦痛なだけの行事になることもあります。そうはいっても、一生に1度、園生活のいろいろな思いの詰まった卒園式です。お子さんらしく参加できるといいですよね。記事にも書いていただいたように、まずは見通しをしっかりお子さんに伝わるように説明することが肝心です。スケジュールを示したり、待っている間の工夫をしたり、頑張ったらご褒美があるなど、問題行動を抑え込もうとするよりも、不安を減らしたり、頑張れるモチベーションを用意したりすることが大事です。ちょっとぐらい完璧じゃなかったとしても、お子さんも親御さんも、園生活頑張った充実感のあるよい卒園式になるといいなと思います。けんとくんもゆきみさんにとっても、とっても素敵な卒園式になりましたね。前の記事はこちら(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2025年02月26日どこに連絡が来ているか分からない問題ASD(自閉スペクトラム症)のタケルが大学生になって1番困った問題は、「大事な連絡を見落としてしまう」ことでした。メールやLINE、大学の電子掲示板など、現代の大学生活ではさまざまな連絡手段で連絡が入って来ます。時には先輩からの伝言という形で知らないアドレスから届いたりもするので、警戒心の強いタケルには、すべての連絡を受け取ることはなかなか難しかったです。Upload By 寺島ヒロおかしいな?と思いつつも知らない授業を受けるある日、先生から「今日の授業は〇〇キャンパスであります」といったお知らせが電子掲示板に出ていたのですが、タケルはそれに気づかず、いつも通りのキャンパスに向かいました。そして教室に入ると、そこには誰もいません。「おかしいな?」と思いながらもしばし待っていると、人がいっぱい入って来たので「今日は公開授業だったのかも?」と、思いながら普通に授業を受けて帰って来ました。それが自分の受けるべき授業ではなかったことに、タケルが気がついたのは、翌週の授業の発表の時でした。Upload By 寺島ヒロ新人なのに掃除をサボるまた4年生になって研究室に所属するようになってから、先輩からのLINEを見落としてしまったこともありました。「明日は何もない日だから」と夜通し自分の研究をまとめたりゲームをしたりして過ごし、朝になって寝たタケル。ですが、寝た直後ぐらいに「研究室の掃除をします。夕方授業が終わったら研究室に集合」と連絡が入っていたのです。タケルはそのメッセージに気づかず、いつも通りのんびり夕方からの授業に出て、夜は家でご飯を食べていました。すると、突然スマートフォンが鳴り、「まだ来られないの?」と先輩からのメッセージが……!その頃にはすでに掃除は終わりかけ。研究室では1番下っ端であるタケル、絶対に行かなければならない掃除だったのです。「最初からやらかしてしまった……!」と、見て分かるぐらいショックを受けていました。即レスが苦手大学に入ってしばらくは、タケルも連絡を見逃すのが怖くて、ずっと通知をつけっぱなしにしていたのです。しかし、そうすると緊急性の低いメーリングリストなどの通知音が鳴り続け、勉強や睡眠を妨げられてしまいます。聴覚にも過敏さのあるタケルは「うるさいんだが!」と切ってしまいました。とはいえ、本当に連絡を受けないわけには行かないので、朝の9時頃と夜の9時頃にリマインダを入れてメールや掲示板を確認することに決めました。また、周りの人にも、この時に見て対応できないような緊急の連絡は電話でもらえるように(できる限り)お願いしました。先生や先輩は自分が1番使いやすい連絡手段を常に使いたいですから、必ず常にこちらの都合に合わせてくれるというわけではないのですが、タケルが特性もあって、そういうことに対応することが大変苦手であると伝えたことで、連絡を返さなくても怒られるようなことはなくなり精神的に落ち着くことができました。欠席してしまった授業は…支援課へ!連絡を受け損ねて、授業を欠席してしまった場合は、支援課に連絡して救済措置をお願いしたこともあります。タケルは毎年、年度の初めに大学の支援課を通じて学生支援センターに障害学生の申請をしています。そのため、支援課を通じて個別の事例での支援を受けられるようになっているのです。さすがに受けていない授業を受けたことにはならないのですが、支援課のスタッフに間に入ってもらって交渉した結果、全部の科目ではないですが、欠席した授業の資料をもらってレポートを書くことが許され、単位を取ることができました。支援課に相談してみてよかったです。Upload By 寺島ヒロ連絡系統が1つだと助かるそんなタケルも大学院生になり、以前より連絡ミスが確実に減っていきました。しかし、実のところそれはタケルが成長したとか、工夫したからとかではありません。院生になると指導教官が付いたので、すべての授業と研究に関する連絡がその指導教官を通してメールと電話のみで来ることになったからなのです!連絡の絶対数が減ったわけではないのですが、見なければならないアプリが減ったので、タケルが連絡を見落とすことはほとんどなくなりました。執筆/寺島ヒロ(監修:新美先生より)大学生の連絡管理について、具体的に教えていただきありがとうございます。連絡事項、提出物の管理やスケジュール管理などが致命的に苦手な人がいます。保護者がサポートできるうちはなんとかなっていても、大学などで保護者のサポートが届かなくなり、非常に苦労するということはよくあります。特に大学の最初の1、2年生は、科目ごとに教官が異なるので指示される内容も多岐にわたり、授業場所も1コマごとに違い、提出物の管理なども分かりにくく、混乱してしまいやすいです。記事にもあったように、連絡が来る手段のチェック方法をルーティン化する、アラームやリマインダーを活用するなどのやり方は、初めにしっかり身につけておきたいですね。多くの大学は、発達特性のある学生のサポートする部門があるので、こういったことがとても苦手な場合、しっかり相談してみましょう。本人ができる管理の仕方をいっしょに考えてくれたり、単位に関わる連絡を確認してくれたりなどといった、学生支援が受けられることも多いです。また、学年が上がっていくと、授業も専門化して関わる教官が減ったり、また就職するときは職場によっては、伝達体型がシンプルな職場もあるので、意外となんとかなっていくということもあります。学生時代は必要なサポートを受けながら卒業まではどうにかこうにか頑張っていき、こうしたことで混乱しやすいと実感された場合は、職場選びの重要ポイントの一つとしてとらえて、自分に合った進路選択をしていくとよいと思います。前の記事はこちら(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2025年02月25日おしゃべりは上手なのに「あ」が読めない⁉小学校入学直後発覚した娘の困りごと私には小学1年生、7歳の娘がいます。娘が小学校に入学して間もない5月末、国語の音読の宿題に取り組んでいたとき、娘が「あいうえお」の「あ」を読めないことに気づきました。「どうしたの?これは『あ』だよ」と教えても、娘は「分からないよ!」と困ってパニックに。教科書に並ぶ「あ」「い」「う」の文字を前に、親子でただ戸惑うばかりでした。普段はおしゃべりがとても上手で、コミュニケーション能力も高いのに、なぜ読めないの?私は背筋が凍りました。娘の目には、文字がどんなふうに映っているのだろう、と。Upload By ユーザー体験談娘は1歳半健診の際に発達遅延を指摘されたので、週5日、療育センターに通わせていた時期があります。そのおかげで発達障害についての知識は多少ありましたが、未就学時には診断はつかず、小学校入学前の就学時健診でも、もともとある弱視以外に特に指摘されることはありませんでした。私はすぐにインターネットで検索、「もしかしたらLD・SLD(限局性学習症)なのでは?」と思いました。もしそうなら、診断を受けられる病院や地域の発達支援に早くつながらなければ、と考えたからです。しかし、ちょうど娘が小学校に入学するタイミングで引っ越したばかりだったため、新しい地域の発達支援についての知識がまったくなかった私。県が公開しているLD・SLD(限局性学習症)を診察してもらえる病院リストに掲載されていた病院をかたっぱしから調べました。ですが——。一日も早く診断をもらい、配慮が欲しい……のに地域の病院は全滅⁉まず、Webサイトがある病院は全てWebサイトを確認。その時点でクリニックは軒並み初診受付をしていないことを知りました。それなら総合病院だと電話をすると、クリニックからの紹介状がないと受診できないと断られました。引っ越ししてきた経緯とクリニックが初診受付をしてない旨を話しましたが、ダメでした。(どうすればいいの!)Upload By ユーザー体験談実は引っ越しする際、この地域の発達支援は遅れている……という嘘か誠か分かりませんが、そんな噂を聞いたことがあった私。こういうところが積み重なって噂になっているのかも……と困惑しました。もう越境するしかない!と、隣接県の病院の調査を開始しました。いちいち医療費還付請求などをするのは面倒ですが、娘の大事な時間には変えられません。そしてついに隣接県のクリニックで予約を取ることができました。幸いにも電車で一時間程度で行ける場所でした。初診で娘の様子や生育歴、簡単な親からの聞き取り調査、娘が書いた学校のプリントなど持っていった結果、すぐにLD・SLD(限局性学習症)の強い疑いあり、とお医者様が判断してくださいました。「発達検査がまだなので診断書は出せませんが、病院と医師の名前を出していいので、学校や住む地域の教育センターに支援・配慮を求めるようにしてください」とアドバイスをいただき、少しでも早く娘に合理的配慮を思った私は、教育センターに連絡し、面談をしました。やっとできた発達検査。LD・SLD(限局性学習症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、DCD(発達性協調運動症)と4種の確定診断が出た娘教育センターで発達検査は実施してないと言われたので、検査は隣接県のクリニックで行うことになりました。毎日毎時間、キャンセルで空く時間はないかと病院の予約アプリに張り付き、なんとか早めの日程で予約をを確保。実施した検査はWISC-VとSTRAW-Rです。検査の結果、ワーキングメモリが低めの総IQ107。知的障害(知的発達症)のないLD・SLD(限局性学習症)と診断がでました。また同時に、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、DCD(発達性協調運動症)も確定診断がつきました。言われてみれば確かにそれぞれの症状はあるのですが、そこまでと重複してると思ってなかったので、驚きました。診断も出たため、教育センターから学校に娘の支援について連絡が行き、夏休み前、特別支援コーディネーター、教頭先生、担任の先生、私の4人で面談が行われ、学校での合理的配慮の始まりとなりました。Upload By ユーザー体験談私がLD・SLD(限局性学習症)を疑い始めてから、わずか3ヶ月でここまで来ました。すごいスピード感です。もし受け身で待っていたら、もしかしたら3学期になっても具体的な支援方法にたどり着けず、勉強につまずきを感じてしまっていたかもしれません。頑張ってよかったと心から思いました。娘が受けている具体的な配慮は5つ!来年度も通常学級でと言われ学校で娘が受けている合理的配慮をご紹介します。・音読は一人でさせない・電子読み上げではない読書を強要しない・タブレットによる黒板の撮影許可・必要な場で担任の読み上げ補助・タブレット端末によるマルチメディアデイジー教科書の使用、それに付随してヘッドフォンの使用許可Upload By ユーザー体験談参考:マルチメディアデイジー教科書|(公財)日本障害者リハビリテーション協会文字で見ると多く感じるかもしれませんが、LD・SLD(限局性学習症)の特性が分かっていれば、思い至るような内容だと思います。実はこれらの配慮は私が調べ、考えました。当時、地域にはLD・SLD(限局性学習症)に対応してくれるところがなく、学びの支援を外部に求められませんでした。本当なら、専門の人に娘の学習支援方法を一緒に考えて欲しかったのですが……頼れる人もいなかったので、自分なりに調べて娘に必要な支援というものを探し続けました。家では毎日数時間、娘の宿題を手伝っています。夏休み中、LD・SLD(限局性学習症)用の触読トレーニング教材に取り組んだら、字そのものを判読する力は劇的に伸びました。文章の理解ではなく「あ」を「あ」と読む力です。文章の理解は読み上げがないと難しいため、私が代わりに読みました。娘はほかにASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、DCD(発達性協調運動症)もありますが、本来の運動能力自体が高く、勉強にも読めない関係以外で困りごともないため、特に配慮はありません。ただ、机の中が片付かない、多動性などがあるため医師に相談し、コンサータを服用して対応中です。「待つ」のではなく、積極的に動いてよかった!やっとLD・SLD(限局性学習症)を支援してくれる放課後等デイサービスも見つかりました地域の病院とつながることができず、相談できる先もなく、ここまでたどり着くのは本当に大変でした。運が良かった部分もあるかもしれませんが、何よりも「待つ」のではなく、自分から積極的に動いて正解だったと感じています。また、小児神経専門医の先生がいる病院に絞って探していたのもあってか、素晴らしい先生に診ていただき、私たち親子が困らないようアドバイスをいただけて本当に感謝しています。先日、学習支援個別計画を立てて支援してくれる放課後等デイサービスをついに見つけました。この放デイは訪問支援も行っているので、学校と保護者の間に入り支援方法を一緒に考えてくれるそうです。ようやく、私が娘に欲しかった学習の支援に繋がれる気がします。2年生への進級も迫ってきましたが、学校からは娘は通常学級でと言われています。娘には、特性を理由に学習したいことを諦めなくていいように、代替法をしっかり学びながら健やかに育ってほしいです。イラスト/SAKURAエピソード参考/ハツネ(監修:室伏先生より)娘さんが、診断に至るまでの経緯や、支援につながるまでのご家族の努力などについて、詳しく共有くださり、ありがとうございました。学習の困難さの原因は、LD・SLD(限局性学習症)以外にも、知的発達症、ADHD(注意欠如多動症)などさまざまであり、その判断には、問診、行動観察、発達・知能検査などを含めた適切な評価が必要となります。LD・SLD(限局性学習症)は、知的発達に比して、学習に必要な特定の機能(読む・書く・聞く・話す・計算する・推論する)に困難さがあることを言います。知的障害(知的発達症)では、全般的な知的発達の遅れがある(全体的にゆっくり)であり、発達・知能検査や読み書きの検査などで学習障害と区別しますが、平仮名を憶えられない、すらすら音読ができない、読み書きを嫌がるなどの症状は、知的障害(知的発達症)、LD・SLD(限局性学習症)のいずれでもみられることがあり、検査を行わないと判断が難しいこともあります。ADHD(注意欠如多動症)では、授業の話に集中できない、自分の興味のあることに興味が惹きつけられてしまうなどの症状が学習の困難さにつながることもあります。それぞれ、適切な支援の方法が異なるため、まずはそのお子さんの困難さの原因を正確に理解することがとても重要になります。LD・SLD(限局性学習症)への支援としては、語彙を増やし、文字と音の関連を理解する力(音韻認識)を高めるトレーニングに加え、合理的配慮を取り入れることも重要です。書いてくださっている通り、読みのサポート(ルビの付与、拡大表示、読み上げソフトやデジタル教科書の活用)や、視聴教材やプリントの活用、タブレットでの黒板の撮影、テスト時間の延長などが望まれます。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。SLD(限局性学習症)LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。
2025年02月25日言葉に頼らないから、だれでも楽しめる!舞台「フクローじいさんとベル子ちゃん」Upload By 発達ナビ編集部2025年2月16日(日)、高槻城公園芸術文化劇場にて、舞台『フクローじいさんとベル子ちゃん』大阪公演が行われました。2022年東京公演、2023年久留米公演に続く、第3回目の公演となる今回は、申込開始から2週間足らずで車いす席を除くチケットが定員に達するなど、注目度の高さがうかがえました。言葉に頼らず、動き、表情、仕草や音楽で表現される本作は、障害の有無、国籍や年齢などに関係なく、だれでも楽しめる「ノンバーバル(言葉に頼らない)」な演劇作品です。劇場で舞台を楽しんでいたのは、0歳の赤ちゃんからお年を召した方まで、実に幅広い年齢層の方々。ベビーカーに乗ったお子さんや、車いすで鑑賞している方もいらっしゃいました。Upload By 発達ナビ編集部また、客席の定員は通常より少なめで、パーソナルスペースを確保しやすいほか、場内の明るさや音量の調整、イヤーマフの貸出、手話通訳・日本語字幕の提供、希望者への台本貸出、ひと休みルームの設置など、細やかな配慮がなされていました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、DCD(発達性協調運動症)、精神障害、視覚障害、聴覚障害、その他さまざまな障害の方からのお申込みも多かったとのことで、このような配慮が舞台鑑賞時の安心につながっていたのではないかと思います。Upload By 発達ナビ編集部Upload By 発達ナビ編集部演出から公演の運営面まで、演劇の楽しさを一人でも多くの人に伝えたいという思いが随所にあふれている本作。どのようにして、このような劇場空間をつくり上げていったのでしょうか?本作の脚本・演出を担当したゴジゲンの目次立樹さん、国際障害者交流センタービッグ・アイ事業プロデューサー兼副館長の鈴木京子さんにお答えいただきました。「劇場に来られない人にも届けたい」、そんな想いからスタートした作品――はじめに、舞台『フクロ―じいさんとベル子ちゃん』について、上演のきっかけや想いについて教えてください。目次立樹さん:この作品は「いろんな理由でなかなか劇場に来られない人にも届けたい」、そんな想いからスタートしました。自分の町の劇場に、自分が観ることができない作品ばかり並んでいる……それは寂しいですよね。私自身も、小さい子どもを連れて入れないという理由で観劇をあきらめることが多いです。どうにかならないものかと、ぐぐぐ~っと劇場の入り口を広げてみました。そして生まれたのが、全世代が楽しめる、動きだけでストーリーが分かる、子どもに優しい上演時間、(お財布にも優しい!!)、本作です。心置きなく作品と、劇場という空間を楽しんでもらえたら幸いです。――舞台『フクロ―じいさんとベル子ちゃん』上演にあたり、演出面で大切にされたこと・工夫されたことはありましたか?目次立樹さん:情報の出し方ですね。できる限り分かりやすくしますが、全てが全て理解しやすいと、途端につまらなくなってしまいます。観る側の想像を丁寧に掻き立てつつ、その想像を安全に着地をさせる。そのプロセスを繰り返しながら、創作しています。――今回はノンバーバル(=言葉にたよらない)な演劇作品を上演していただきました。今後は、どのような作品をつくっていきたいと考えていらっしゃいますか?目次立樹さん:私個人が作りたい作品よりも、今の時代こんな作品が必要なのでは?という視点を大事にしたいです。舞台を観たい、舞台に立ってみたい、でも機会がない、そんな方々に寄り添えるような創作ができればと思っております。文化芸術を通して共生社会の実現へ。国際障害者交流センタービッグ・アイの取り組みとは?――今回の公演では、車いす席の設置、手話通訳の手配、日本語字幕の表示、イヤーマフの貸し出しなど、さまざまな鑑賞サポートが用意されています。劇場のアクセシビリティに関するお取り組みについて教えてください。鈴木京子さん:国際障害者交流センタービッグ・アイの事業は、すべての人が安心して参加できるよう、「情報保障」を提供しています。車いす利用者向けのアクセスサポート、聴覚障害のある方への手話通訳や日本語字幕・外国語字幕の提供、視覚障害のある方への日本語音声ガイドや解説など、多角的なサポート体制を整えています。さらに、心理的なバリアによって文化活動への参加が制限されがちな方々にも配慮しています。特に2014年から開始した劇場体験プログラム「劇場って楽しい!!」は、知的・発達障害のある子どもや大人を対象とした取り組みです。このプログラムでは、感覚過敏に対応する工夫や、分かりやすい情報提供を行い、障害特性を考慮した公演づくりを進めています。また、この取り組みをさらに広げるため、全国の公立文化施設等と連携し、障害のある人が参加できる事業を運営するための人材育成や施設づくりを推進しています。現在、日本において障害のある人が文化芸術に参加する機会は、物理的・情報的な障壁や心理的なバリアなど、さまざまな要因によって十分とは言えない状況です。そのため、参加したいと思っても情報が届かず、会場に行けない、または内容が理解しにくいといった課題があります。また、文化芸術に参加することで得られる人との交流や楽しみ、自己表現の機会がまだまだ少ないのが現状です。ビッグ・アイは、こうした課題を解決し、地域に根差したインクルーシブな文化芸術の発展をめざすとともに、障害のある人たちが文化芸術を通じて社会に参加する機会を広げ、生活に豊かさや潤いをもたらすことをめざしています。また、文化芸術を通じて、障害のある人もない人も互いに尊重し合い、共に生きる社会の実現に向けた取り組みを進めています。――最後に、ポータルサイト「LITALICO発達ナビ」は、発達障害のあるお子さんの育児をされている保護者の方や、支援者の方に多くご覧いただいています。皆さまへメッセージをお願いします。目次立樹さん:今、世界中の劇場で、そのスピードは遅いかもしれませんが、さまざまな特性を持つお子さんにも開かれた場所を目指す動きがあると思います。文化芸術に携わる多くの人々の意識が変わりつつあります。私もその変革の一端を担えたらと思っています。おわりに「フクローじいさんとベル子ちゃん」大阪公演の舞台裏、いかがでしたか?つくり手の方々の熱い思いを知ったうえで劇場に行くと、また違った視点で楽しむことができそうですね。今まで興味があっても劇場に行くことをあきらめていた人も、このような取り組みが広まることで、ハードルがぐっと低くなるのではないでしょうか。誰もが気軽に楽しめる劇場が、全国どこにでもあるのが当たり前……そんな未来も近いかもしれません。Upload By 発達ナビ編集部目次 立樹(めつぎ・りっき)俳優・脚本・演出家。1985年生まれ、島根県松江市出身・在住。松居大悟とともに旗揚げした劇団「ゴジゲン」の活動を中心に、数々の舞台、映像作品に出演。主な出演作に、映画『くれなずめ』、映画『アルプススタンドのはしの方』、パルコ・プロデュース「Birdland」、シアターコクーン・オンレパートリー「民衆の敵」など。ほかに、とりアート2021「オト・コト古事記」(演出)、とりアート2023「ゆたかの星」(脚本)など、地元山陰での活動も精力的に行っている。現在、NHK Eテレ『おかあさんといっしょ』内で放送している人形劇「ファンターネ!」の原案・脚本を担当。Upload By 発達ナビ編集部鈴木京子(すずき・きょうこ)1999年舞台・イベント制作会社有限会社リアライズを設立。2001年同年より国際障害者交流センタービッグ・アイの事業企画に関わる。2011年株式会社リアライズ退社、国際障害者交流センター ビッグ・アイ 事業プロデューサー2018年~国際障害者交流センタービッグ・アイ副館長(現在)ビッグ・アイの仕事をきっかけに障害のある人が舞台芸術に表現者や鑑賞者として参加できる舞台の企画、制作や全国の劇場・音楽堂等の研修会講師、企画・制作等のコーディネートをおこなう。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。SLD(限局性学習症)LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。
2025年02月24日「障害児育児と仕事の両立」発達ナビでのアンケート結果、発達ナビ利用者の皆さんから寄せられたコメントも紹介!Upload By 発達ナビ編集部フルタイムで働いている (21%)時短勤務で働いている (13%)パートやフリーランスなど時間の調整が可能な形態で働いている (39%)現在働いていない (21%)その他 (6%)発達ナビでは利用者の皆さんへアンケートにて「障害児育児と仕事の両立」についての体験を募集いたしました。「パートやフリーランスなど時間の調整が可能な形態で働いている」が39%と一番多く、そのあとに「フルタイムで働いている」、「現在働いていない」が21%と続く結果となりました。育児と仕事の両立でどのような葛藤、選択があったのか、アンケート内のコメントを抜粋してご紹介いたします。※本アンケートは発達ナビ内の「みんなのアンケート」を母体としています。このため、一般集団のアンケート結果とは異なります。・パートやフリーランスなど時間の調整が可能な形態で働いている私自身もADHD持ちです。独身時代にフルタイムではない仕事を3つ掛け持ちしてましたが、そのうちの1つを在宅ワークとして細々と続けてます。息子が小さい頃は小学生になったら働きに出ようと思ってましたが、手がかかる息子の対応と、もともと苦手な家事(特に片付けと掃除ができない)をこなすだけで正直いって精一杯です。・パートやフリーランスなど時間の調整が可能な形態で働いている平日週4日で、短時間のパートで働いています。今の職場は、時間や休みが基本固定で、自由に休みの変更ができるところで助かっています。用事はなるべく固定休に入れるようにして、そうでなければ休みを変更したり…。急な呼び出しとかがあっても、融通がきくところで、働きやすいです。・現在働いていないできればパートで働きたいのですが、子供の学校の送迎、宿題や授業のフォロー、行事の付き添いや学校トラブルのフォロー、準備や片付けのフォローで手一杯で、働く余裕がありません。ほっといても改善するとは思えず、今必要な手助けを、と思い、日々寄り添っています。「障害児育児と仕事」関連コラムはこちら苗さんはフルタイムで働いていましたが、息子さんがこども園の年中、発達特性が目立ってきて登園をぐずるようになったことに伴い、働き方をフリーランスに変えました。児童発達支援、宿題対応……お子さんと過ごす時間も増えフリーランスになって受けた恩恵もたくさんありましたが、それと同時に代償になったものも多かったとのことでした。あきさんのお子さん、コチ丸くんは生まれてすぐから敏感だったと言います。昼間は抱っこして寝かしつけても布団に置くとすぐに泣き出したり、ちょっとした物音にも敏感で起きてしまったり……。毎晩寝る前には1時間近く泣いていたこともあり、あきさんのメンタルはますます弱り産後うつ状態に。そんな現状を打破できたのは、生後8週から預かってくれる保育園を見つけたことでした。風邪から肺炎を繰り返し……保育園、辞めるしかない!?星きのこさんのお子さんのきいちゃんはダウン症の診断を受けています。0歳の時に保育園に入りましたが、度重なる体調不良のきいちゃんを見て、星さんは自分の仕事のことよりも「きいちゃんの母であることを優先しなければ」、「とにかくきいちゃんの健康を守らなければ」と思い、「保育園は辞めるしかない」と気持ちが固まってきていました。しかし、新たに担当になった保健師さんに言われた言葉にハッとして……。かなしろにゃんこ。さんは発達障害のある息子さん、リュウ太くんを育てる中で危険な遊びをする子どもを見張ること、宿題をなかなかやらない子を促すこと、特性から就寝前の本読みが1冊で終わらないことなど……何かと子育てに時間をとられてしまうことが悩みでした。それに加えて仕事もしていたので、急ぎの仕事に対応する日は深夜2時に寝るなんてことが続き、完全に寝不足で精神状態も不安定に……。そうなると親子での喧嘩も増えてしまい悪循環になっていき……このままではダメだ!と感じたかなしろさんの打開策とは?誰もが働きやすい世の中へ現在では共働きのご家庭が増加傾向にあり、2022年のデータでは1,200万世帯を超えているとも言われています。そんな中、お子さんの障害があることで働き方やキャリア形成、お子さんの将来への不安などを感じる方も多いことと思います。このような状況を変えていくために、「育児・介護休業法」の改正が2024年5月に成立しました。これにより育児と仕事の両立ができ働きやすい世の中になっていくことを願うばかりです。参考:育児・介護休業法について(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。
2025年02月23日「次からは気をつけてね」を言葉の通りに受け取るスバルある日私は、些細なことでスバルに注意していました。「もうしないでね」「もうしないように努力はするけど、うっかりしてしまうこともあるかもしれない」「それはそうかもしれないけど、『もうしない』って約束して欲しいの」「ぼくはうっかりしているから、約束はできないよ」さっきからこのやり取りをくりかえしています。スバルが言いたいことはよく分かります。人間ですからうっかりすることもあるでしょう。しかし約束はできないと宣言している人に「それじゃあ、そういうことで……」と話を終わらせるわけにはいきません。ここは「もうしないよ。ごめんなさい」くらいで締めてくれないと話を終わらせられないのです。そんな裏事情をほぼダイレクトに説明しても、スバルは建前でも「もうしません」と宣言することを躊躇してモゴモゴと言葉を濁すのです。普段からできるだけ冷静に話をしようと心がけていますが、この時は一瞬で終わるような些細な話をスッキリと終わらせることができないもどかしさから、私は「もういいよ!」と子どもじみた仕草でそっぽを向きました。その仕草や表情は漫画のように分かりやすく、明らかにプンプンです。次に待っているのはスバルからの「ごめんね」の言葉です。そして「次からは気をつけてね」と言ってベタな流れで仲直りして、この話をまとめようという魂胆です。しかしスバルは教科書にでも載っていそうな古典的なこの展開をスルーして「もういいの?良かった~」と安堵しゲームをはじめたのです。たしかに言葉では「もういい」と言ったけれど、こんなに分かりやすくプンプンしている母を放置しちゃうスバルに唖然としました。もともとスバルは言葉通りに受け取ってしまう特性があると感じていました。「もうしません」と建前でも約束できないのも、それに関係しているのかもしれません。しかし普段のスバルは、私が疲れてぼんやりしていたりイライラしているのを敏感に感じ取って「大丈夫?」と気遣ってくれます。それなのにそこに言葉が加わると言葉の意味の方を優先してしまうのだと気付きました。年の近いきょうだいがいれば……スバルには言葉で言えば伝わるという訳なのですが、私が心配したのは家の外での人間関係です。学校でも「もういいよ!(プンプン)」のようなやり取りに遭遇する可能性はあると思います。スバルは穏やかなタイプなので、万が一学校で人を怒らせてしまうことがあるならば、おそらく悪意のない失言だと思います。そしてそこから「もういいよ!(プンプン)」につながるかもしれないな……と思いました。もうすでにやらかしているかもしれませんが、このようなやり取りが苦手と知った以上、スバルのスクールライフのためにも放っておくわけにはいきません。年の近いきょうだいでもいれば、もう少し「こんな時はまだ怒っている」「こんな時はそっとしておく」のような読むべき空気のバリエーションが知識として増えたのかもしれませんがスバルは一人っ子。ならば私が年の近いきょうだいになるしかないと思いました。もし私が小学生だったらスバルのこの発言や態度に腹を立てるだろうな、という場面に出くわした時に私は今までのように言葉で注意するだけではなく、きょうだいになりきって感情を表現することにしました。ただ「もういいよ!(プンプン)」だけだと言葉のままに取られてしまい、話が終わってしまうので初級編として「……と言いつつ怒りがおさまらないよ!」と解説を付け加えました。Upload By 星あかり軽く説明を付け足すことで、スバルは言葉とは裏腹にまだ話は終わっていない可能性に気づきはじめました。その後説明を付け足さない「もういいよ!(プンプン)」のバージョンでも「これはもしやまだ怒っている……?」と気づいたので、この滑稽と思える方法にも効果があったように思います。その後も、学校でのやらかしが想像できる言動があった場合には時々きょうだいを登場させました。初登場時は私もきょうだいキャラを上手く操れず情緒不安定な母としてスバルを心配させてしまいましたが、試行錯誤を繰り返しきょうだいとして成長した私はここぞという時に登場し、スバルに気づきを与えられる存在になったと思います。おそらく。Upload By 星あかり試行錯誤のきょうだい作戦を経たその後は……その後スバルは家庭内では言葉の裏側にある感情の存在に気づけるようになってきました。しかしこれはあくまで私という「きょうだい」の不機嫌なパターンを学習したにすぎません。感情のパターンはその時の相手や状況によって違うので、きょうだいが作ったベースを基に学校という複雑な人間関係の中で学んでいくしかないのかなと思います。本当にきょうだいになって一緒に学校へ行って見守りたいと何度思ったことか。それは叶わぬ願いなので、せめて私はスバルが学校で失敗して落ち込んで帰ってきた時には、大きく抱きしめてあげたいと思います。執筆/星あかり(監修:新美先生より)テキストに載っているかのような冒頭のやり取りは、他人から見るとほほえましいように感じてしまいますが、お母さんとしては感情的にも、スバル君の将来を考えてもやきもきしてしまいますね。スバル君の「もうしないように努力はするけど、うっかりしてしまうこともあるかもしれない」「ぼくはうっかりしているから、約束はできないよ」という言葉は、スバル君の、本当に約束できることしか約束しない、努力目標だけでは、「約束する」という言葉は軽々しく言えないという、律義さを表していて、読んでいた私はスバル君のことがすっかり好きになってしまいました。でも、今回はそういうレベルの問題ではなかったわけですね。分かりやすくぷんぷんした態度をとりながら「もういいよ!」と怒って言い放ったのに、「もういいよ」を言葉通りとらえて「もういいのだ」と理解して安心してしまうというのは、これまたどこかのテキストにでてくるような、ASD(自閉スペクトラム症)の特性故の字義通りとらえるというエピソードです。星さんの解説で、ぷんぷんした態度だけなら「怒っているかも?」と察することができるようになっているのに、「もういいよ」という言葉が追加されることで、「もういいよ」という言葉に引っ張られて、「もういいのだ」と理解してしまっているというもよく分かりました。こんなことは、ASD(自閉スペクトラム症)の特性の子ではあるあるなのですが、あるあるだとスルーせず、このシチュエーションが理解できるように、きょうだい的にわざとふるまって、対応を練習させようとしたのは、星さん素晴らしいですね。実践的SSTですね。言葉に引っ張られるスバル君だからこそ「もういいよ。……と言いつつ、怒りがおさまらない」という言葉を追加することで、「『もういいよ』と言ったけど、本当はもういいよと思っていない、まだ怒っているのだ」ということを説明したというのは、ナイスです!こういうことを何回か繰り返すことで、口で言っていることと思っていることが違うという心理状態があるのだ、ということにだんだん気づいていけますね。前の記事はこちら(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2025年02月23日子どもの発達の遅れはいつ頃分かる?乳幼児期の発達などのアンケート結果、保護者のリアルな声は?子どもの発達の遅れとは、月齢・年齢相当の成長が見られない状態のことを指します。原因はさまざまですが、遺伝的な要因や環境的な要因などが考えられます。発達の遅れに気づく時期はお子さん一人ひとりで個人差があります。乳幼児健診、1歳半健診や3歳児健診などでは身体や心の発達を確認し、異常なし、要フォローなどと判断されます。ここで発達の遅れや専門機関などを紹介されることも多いです。Upload By 発達障害のキホンUpload By 発達障害のキホン参考:乳幼児健診について|子ども家庭庁Upload By 発達障害のキホン乳幼児期、発達に関して気になることがかなりあった (47%)乳幼児期、発達に関して気になることが少しあった (43%)乳幼児期、発達に関して気になることはなかった (10%)乳幼児期、育児に奮闘する中「わが子だけ発達が遅い気がする?」「こんなにも育てづらいのはわが家だけ?」とほかのお子さんとの違いを感じた、健診で経過観察になったなど、「もしかして発達が遅れているのかもしれない」と思ったことがある方も多くいらっしゃると思います。発達ナビでは『発達が遅れてる?健診で遅れを指摘され…「乳幼児期の発達」』についてのアンケートも行いました。「乳幼児期、発達に関して気になることがかなりあった」が47%、「乳幼児期、発達に関して気になることが少しあった」が43%と多くの方が大なり小なり発達に関して気になることがあるという結果になりました。※本アンケートは発達ナビ内の「みんなのアンケート」を母体としています。このため、一般集団のアンケート結果とは異なります。・乳幼児期、発達に関して気になることがかなりあった生まれてすぐから寝ない子だった。背中にセンサーがついていて降ろすと泣く。立ってだっこし、揺れていないとぐずる。毎日夜中の2時頃まで立って揺れていた。授乳中も目が合いにくく、母子手帳の「目が合いますか?」の質問にこんなもんなのかなぁ?と思っていた。・乳幼児期、発達に関して気になることが少しあった歩きはじめが早かった息子。好奇心旺盛で子供らしいイタズラもひと通り経験。一歳半健診で言葉が遅いと指摘を受けたけど、2歳までには話も出来るようになり意思疎通も取れていた。今思えば、呼んだ時の反応は鈍かった。 By 発達障害のキホン子どもと一緒の外出先で困ったことがかなりある (65%)子どもと一緒の外出先で困ったことがたまにある (26%)子どもと一緒の外出先で困ったことはあまりない (9%) By 発達障害のキホン行事でトラブルが起きたことがある (68%)行事でトラブルが起きたことがない (32%)発達特性があり、運動会やお遊戯会、遠足や各種式典など「普段と違う環境」が苦手なお子さんも多いのではないでしょうか。また、お子さんとのおでかけなどは予期せぬハプニングの連続ですよね。発達ナビでの『運動会、お遊戯会、遠足、入園(入学)式や卒園(卒業)式など行事でのトラブル』『パニック!固まって動かない!白黒思考で困った!「外出トラブル」』のアンケート結果は……。行事トラブルアンケートの結果は「行事でトラブルが起きたことがある 」が68%、「行事でトラブルが起きたことがない」が32%と半数以上の方が行事でなんらかのトラブルが起きていると回答しています。外出トラブルアンケートは「子どもと一緒の外出先で困ったことがかなりある 」が65%、「子どもと一緒の外出先で困ったことがたまにある 」が26%と9割以上の方が外出時にトラブルがあったと回答される結果になりました。※本アンケートは発達ナビ内の「みんなのアンケート」を母体としています。このため、一般集団のアンケート結果とは異なります。・行事でトラブルが起きたことがある入園式、運動会など行事のときは行き渋りから始まります。なんとか宥めて登園しても、中に入るのに30分以上かかります。行動が制限されることから、叫んだり、寝そべったり、補助の先生にしがみ付いていたりといつもと違う雰囲気に恐怖を感じているようでした。・子どもと一緒の外出先で困ったことがかなりある自閉スペクトラム症の息子が4歳の時、通っていた幼稚園の避難訓練で火災報知器の説明があったらしく、(「火事の時は先生がこのボタンを押して火事を知らせます」という内容だったそうです)それ以来、出先で火災報知器を見かけるとボタンを押したがるようになりました。半年近く、火災報知器の前でボタンを押したい息子と押させないように報知器の前に立ちはだかる私(母)の攻防が続きました…「息子だけ歩かない…赤ちゃんのまま?」と感じた1歳半健診。療育を紹介され…途方にくれた乳児期を振り返って今感じること【ユーザー体験談】Upload By 発達障害のキホン軽度知的障害(知的発達症)やASD(自閉スペクトラム症)の診断があり、特別支援学級に通っている現在小2の息子さん。そんな息子さんの障害が分かったのは年中の頃でした。出産後の子育ては首が座らない、寝返りしない、お座りしない……健診は気になることだらけ!同じように悩んでいる方にもこちらのコラムはたくさん読んでいただけたようです。専門家が解説!発達の遅れ対策や支援の方法などもQ:3歳グレーゾーンの子どもですが、言葉の遅れがあり、うまく意思疎通ができずに癇癪に繋がり困っています。家庭でできることはありますか?A:言葉の遅れにもいろいろな段階がありますのでこれだけで正確なアドバイスはできませんが、例えばまだ発声そのものが少ない場合、発音の多少の間違いは問わず発語されたことに対して褒める、認めるなど言葉で言えたこと自体に対して認めたり、注目や要求を叶えたり肯定的な対応をしていくことが大切です。また、やりたくない場合に癇癪ではなくて「やめとく」「おやすみ」など、分からない場合に「おしえて」「それなに」などその子の発語能力や文脈に応じて癇癪ではなく適切な言葉によるコミュニケーションができるようにモデリングやスモールステップを使って教えていきましょう。Upload By 発達障害のキホンQ:3歳児健診で積み木がうまくつまめず、「運動発達遅滞の可能性がある」と言われました。運動発達遅滞とは何でしょうか?周りの子に追いつくことはあるのでしょうか。A:運動発達遅滞とは、今の診断名では発達性協調運動症にあたるかもしれません。例えば、物をつかんだり、はさみや刃物などの道具を使うことが不正確である、書字に困難が生じるといったものが、日常生活に困難さを与えている状態です。運動のどこが苦手なのかということで実際の診断名や対処法が違ってくることがあります。個人差がありますので「追いつくか」ということに対して答えることはできませんが、個人の運動発達レベルに合わせて取り組みやすい課題や遊びを設定していくことで少しずつできることも増えていくと思います。Upload By 発達障害のキホンQ:発達遅滞と発達障害の違いってありますか?発達が遅いと発達障害ということなのでしょうか?A:発達遅滞とは発達が遅れているという概念です。・言語発達遅滞・運動発達遅滞・精神発達遅滞・全般発達遅滞などがあります。発達障害は広い意味で使われる場合と狭い意味で使われる場合がありますが、狭い場合ですとASD(自閉スペクトラム症)や ADHD(注意欠如多動症)などの診断基準を満たすことを指すことが多いです。広い意味では発達障害者支援法で指定されているような行政概念を指す用語となります。Upload By 発達障害のキホン(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2025年02月22日受験シーズンを迎えた今振り返る、志望校決定までのあれこれUpload By 丸山さとこ現在中学3年生のコウは先日私立高校の願書を提出しました。公立高校の願書提出期間は2月となり、現段階での志望校は決定しています。(※このコラムは1月に執筆しています)コウは定期試験や模試の結果にムラがあるため、担任の先生ともよく話し合い、たくさん迷いつつの志望校選びとなりました。とはいえ、迷っていたのは主に周囲の大人たちで、コウ本人の基準は1年生の頃からハッキリしていたと思います。コウにとっての譲れない条件は以下の2つでした。「僕は男友だちよりも女友だちのほうが多いから、共学がいいな。男子校はちょっと不安」「僕は周囲の環境に流されやすいところがあるから、僕が行きたいA大学を選ぶ人が多い高校がいいと思う」そんなコウでしたが、中学3年生の夏まで第一志望の学校は決めかねていました。第一志望の候補は二校ありました。1年生の頃から志望していた公立A高校と、3年生から気になり始めた公立B高校です。どちらも条件はコウの希望に当てはまり、通学可能な距離です。やがて夏休みに入り、A高校の学校説明会に行ったコウは、「やっぱりいい学校だったな~。雰囲気もいいし、先輩も気さくで高校生活が楽しそうだった。志望校、A高校がいいかも!」と満足気に帰ってきました。このまま第一志望が決まるのかな?と思うほどA高校に好印象を持っていたコウでしたが、その後B高校を見学したところ、「ここは……凄くいい!生徒たちがキラキラしてる。絶対ここに入りたい!」と熱く語るようになりました。Upload By 丸山さとこ学校見学に行くまでは「学校見学か~。もうほぼ志望校決まってるから、あとは3年2学期までの成績で決めるよ」と言って見学を渋っていたコウでしたが、実際に高校を見てみると、二校の違いを大きく感じたそうです。実際の空気を体感することは大切なのだなと改めて思いました。第一志望は決定。では併願校は?そうして公立B高校を第一志望に決めたため、私立高校は専願ではなく併願で受験することになりました。それにより、併願の私立高校は『偏差値に余裕のある安全校』を選ぶ必要が出てきました。コウが志望している公立B高校は、偏差値的には少しだけ余裕がありますが、内申的には全く余裕がありません。やはり、提出物が十分に出せていなかったことが大きく影響してしまいました。Upload By 丸山さとこ2年生の半ばからはコウなりによく頑張っていたとは思います。先生方もマメに声をかけてくださったおかげで、内申点は1年生の頃よりも10点近く上がっていました。それでも、合格者の平均よりも数点低い状態です。そのため、私立高校は偏差値を大幅に下げて選ぶ必要があるのですが、コウは私立高校も「やりたい部活がある」「設備がいい」などの理由で選びたがりました。そんなコウの志望に対し、担任の先生はかなり難色を示されました。Upload By 丸山さとこ先生は、希望を譲らないコウへの妥協案として「転コース受験でかなり安心して受けられる高校があります」と私立C高校を勧めてくださいました。自分が行きたい学校以外に全く興味のないコウでしたが、先生からの熱心なお勧めを受けて、「じゃぁ、受けておこうかな?」と言うようになりました。私としては安全校を受けてくれた方が安心なのでコウの発言にホッとしました。とはいえ、コウが『どの集団でもそれなりにやっていけるタイプ』ではないことを知っている私は、「念のため学校見学に行かなくてよいのかな?」と気になりました。それをコウに伝えてみると、「いや、第一志望の公立と第二志望の私立に落ちたら自動的にそこになるから、見学はしなくていいよ」とサラっとした返事が返って来るではありませんか。「いやいやいや!そうかもしれないけれど、第一志望の公立高校も見学したら意見が変わったじゃない?」と見学を強く推し続けて数日……コウは不承不承「それもそうか。じゃぁ見学行くよ」言ってくれました。Upload By 丸山さとここうしてC高校へ見学に行くと、コウからは予想外なくらい辛口の評価が出てきました。「校風が自分には合っていない気がする」「体験授業はよかったけど、この高校でなければ!という感じではなかった」「進学実績を誇る割に具体的な数字が曖昧だから、実際は言うほどではないんだと思う」コウとしては、安全校選びにおいて進学実績は諦めてもよい条件だそうで、それよりも「ごまかして勧誘してる感じが嫌」とのことでした。実際に、帰宅後高校の情報を調べてみたところ、進学実績は誇張して説明されているなと感じました。無理強いされて気乗りしないまま来た学校説明会だったにも関わらず、コウはしっかり説明を聞き、学校の雰囲気を見ていたのだと驚き感心しました。それと同時に、「やっぱり、コウの場合、学校見学なしの志望校選びは危険だな~!」と冷や汗もかきました。中学校の先生方とも何度も話し合い、ついに志望校決定!そうして私立C高校は受験しないと決めたものの、コウは「ほかの安全校にはやはり興味が持てない」と言います。「コウが望んでいない高校を無理強いすると、あとでとんでもない揉め方をする可能性が高いだろうな」と思う一方、担任の先生の心配もよく分かります。Upload By 丸山さとこそこから1ヶ月程、進路担当の先生や担任の先生との進路相談を経て改めてコウと話し合った結果、何とか方針が決まりました。それは以下のようなものでした。「私立は挑戦校と可能校の二校を受験して、どちらか受かれば公立は挑戦校の公立B高校を受験しよう」「もしも私立が二校とも受からなかった場合はB高校は諦めて、安全校の公立D高校を受験しよう」ここにきて選択肢として初登場した公立D高校は家から比較的近く、通うのが楽な学校です。コウの現在の偏差値よりも20程低いため、安全校と言うことができそうです。Upload By 丸山さとこ私たちが現在住んでいる県では、『私立が第一志望の場合は推薦で出願し、公立が第一志望の場合は私立を安全校にする』という選択が一般的です。自分よりも偏差値が高めの公立高校にチャレンジすることは珍しくありませんが、公立高校の偏差値を大幅に下げて志望するパターンは聞いたことがありません。そのため、コウの最終決定について中学校の先生方が首を縦に振ってくださるかドキドキでしたが、先生方はコウの選択を尊重してくださいました。Upload By 丸山さとこ進路希望調査票を提出する3学期の個人懇談にて、担任の先生は「お母さんのおっしゃる通り、コウ君は自分が希望した学校を受験しなかった場合『あの時受験していれば……』と引きずると思います」と苦笑いで頷いていらっしゃいました。『受験するのは本人だからね』という理由で、周りの大人たちが最終決定をコウにゆだねる形となった志望校選びでした。執筆/丸山さとこ(監修:新美先生より)コウ君の受験校選びについて詳しく教えていただきありがとうございます。受験制度や受験可能校の校数などは、地域差が大きいですが、とっても丁寧な受験校選びをされていることが伝わってきました。受験校は、最終的に本人が納得して受けないと、結局決まったところに進学しても、受験校選びの際の不満が残って、登校モチベーションが下がってしまうなんて言うこともよくあります。本人が納得して受験校を決めることが大事ですね。とはいえ、納得までのプロセスが重要です。丸山さんが書かれていたように、めんどうでも候補の学校はできるだけ本人が見学に行くことが必要ですね。受験に興味が持てないお子さんだと、見学もめんどくさがってなかなか行けないことも多いですが、ここはなんとか励まして行ってもらいましょう。コウ君の場合は、見学はいいと言っていたのにもかかわらず、行ってみたらきちんとご本人の基準でよく観察して、分析していらっしゃって素晴らしいです。受験の合格可能性についてシビアなところや、第一希望校と安全圏の学校も受けるのが一般的であるといった受験セオリーなどは、学校の先生からしっかり話してもらい、本人の希望とすり合わせて、折り合いをつけていくことが必要です。具体的に説明して、本人が「納得」して受験校を選べるようにするよう丁寧に段階を経ていきましょう。多少一般的じゃなかったとしても、本人が納得しないまま受験校を決めるよりは、最終決定を本人にゆだねたというのも、きっとあとで生きてくると思います。前の記事はこちら(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
2025年02月21日『手荷物まとめるゴムホルダー』とは?発達ナビとフェリシモC.C.Pがコラボし、暮らしの中の困りごとをサポートする商品づくり第6弾。今回は、『手荷物まとめるゴムホルダー』の特徴について、商品開発モニターにご協力いただいたよいこさんの感想やおすすめポイントと合わせてご紹介します。皆さんは、外出先で脱いだアウターや手袋、マフラーなどを、そのまま置き忘れてしまった経験はありませんか?『手荷物まとめるゴムホルダー』は、いつものバッグに取りつけて、荷物をひとまとめにできるゴムホルダーです。使い方はとっても簡単!まとめたいものをホルダーにかけてバックルを留めてから、ベルトを引っ張ってぎゅっとしばれば、完了です!Upload By 発達ナビ編集部Upload By 発達ナビ編集部※詳細ボタンをクリックすると発達ナビのWebサイトから株式会社フェリシモのWebサイトに遷移します置き忘れの常連さん!?『手荷物まとめるゴムホルダー』をつけておくと…?それでは、よいこさんのお声をご紹介します!――商品開発モニターにご協力いただきありがとうございました!もともと、よいこさんは、どんな時に置き忘れをしてしまいがちですか?よいこさん:例えば、私はママ友との楽しいランチ会ですね。お友だちとのおしゃべりに夢中になって、マフラーを置き忘れてしまうことがたびたびあります。息子と公園に遊びに行った際は、帽子をそのへんにポイっとして一目散に走り出す息子を追いかけて、そのまま置き忘れるということも。私たち親子は、外出先で手荷物に注意が向かずに、いろいろなものを失くしてしまいます……。Upload By 発達ナビ編集部――途中で気づけたとしても、取りに戻るのって大変ですよね。あとは、そもそもどこに置いたのか分からなくなってしまうことも……!今回、商品開発モニターとして『手荷物まとめるゴムホルダー』を試してみて、いかがでしたか?よいこさん:あらかじめホルダーは手持ちのカバンにつけてあるので、帽子や手袋、マフラーなどをその大きさに巻いてカチッとはめて、あとはゴムを伸ばして締めるだけなので、簡単で良いなと思いました。Upload By 発達ナビ編集部手先が不器用な息子も、難なく使えていました!Upload By 発達ナビ編集部――「簡単に使える」というのは、大事なポイントですよね!どんな方におすすめしたいですか?よいこさん:日々のタスクが多すぎて、ついついうっかり……が多くなってしまうすべての皆さんにおすすめしたいです。1年中、『手荷物まとめるゴムホルダー』をカバンにつけておけば、マフラー、手袋など身の回りの防寒具が増える秋冬はもちろん、春夏も帽子や薄手のカーディガンなども留めておけるので、簡単に失くし物を防ぐことができそうです!1個¥1,600(+10% ¥1,758)→うち20円は「C.C.Pチャレンジド応援基金」として運用されます。(基金部分は非課税)Upload By 発達ナビ編集部春休みのお出かけや、新生活にぴったりの『手荷物まとめるゴムホルダー』。ぜひ、チェックしてみてくださいね!※詳細ボタンをクリックすると発達ナビのWebサイトから株式会社フェリシモのWebサイトに遷移します
2025年02月20日1歳半でついに発語が!安心したのもつかの間……発語がないことを心配していた次男かーでしたが、1歳半で「ママ」という言葉が出たことで、私は「これからきっと言葉が増えていくはず!」と安心していました。言葉の発達に良いものをと思い、玩具や絵本などもたくさん用意して言葉の発達を促そうとしました。しかし、そこからかーの言葉は一向に増えませんでした。再びかーの言葉の発達に悩み始めたところ、それに加えて新たな困りごとが出てきました。それは母である私に対する執着の強さです。私がトイレに行くなど、少しでも姿が見えなくなると大泣きするようになったのです。このような行動は定型発達の子どもにもよく見られることかもしれませんが、かーの場合は、その程度が非常に激しいものでした。ある日、私に用事があって、かーを実家に預けたときのことです。かーに気づかれないように、そっと出かけようとしたのですが、ちょうど私が行くところをかーに見られてしまい、大泣き。以前であれば、遊んでいるうちに切り替えができていたのですが、その日は私が迎えに行くまで数時間泣き続けていました。Upload By かし りりあ児童発達支援を利用したい!保健所に連絡すると……このようなことが何度か続き、どのように対処したらいいのか困るようになってきました。そこで以前、長男のりー(知的障害/知的発達症、ASD/自閉スペクトラム症と診断)が利用していた児童発達支援施設を頼りたいと考えるようになりました。さっそく保健所へ連絡し、児童発達支援施設を利用したい旨を伝えました。しかし、かーの言葉が出たことで、以前から発達をみてくれていた保健師さんに「もう大丈夫です」と伝えたことに加え、地域の担当者も代わったことで、改めて相談をすることになってしまったのです……。一時の安心で余計なことを言って、再び支援につながるまでに時間がかかってしまったと後悔しました。悔やむ気持ちと焦りを抱えながらも、新しい保健師さんにかーの様子を見てもらったところ、発達支援が必要という判断になり、児童発達支援施設の利用ができることになりました。幸い、希望していた施設に空きがあり、すぐに通えることになったので、かーは3歳前から児童発達支援施設に通い始めました。通い始めた当初は泣いてばかりで、出されたおやつも食べないほどでしたが、先生方の丁寧な対応を受け、徐々に環境にも慣れていき、お気に入りの先生を見つけたあとは、気持ちも安定して発達支援を受けられるようになりました。人との関わりが好きな次男。しかし、幼稚園入園には壁が!?そして、私は同時に、満3歳児から通える幼稚園を検討し始めました。というのも、かーは人と接するのが好きで、同じ年頃の子から大人まで、あまり人見知りもせず、楽しそうな雰囲気を感じるとどこへでも入っていきます。動物にたとえるならば、次男かーは犬のような素直さと人懐っこさがありました(ちなみに長男は気まぐれで接してくる猫のようでした)。また何度か同い年のいとこと遊ぶ機会があったのですが、その子の後ろをくっついて歩き、手をつないだり、一緒にいたずらしたりととても楽しそう。「この子には集団の中で過ごしてほしい」とより強く感じました。Upload By かし りりあ以前から長男りーの通っていた幼稚園へは、かーも通わせたいと考えていることは伝えていました。その時は歓迎してくれていたので幼稚園へ連絡してみたのですが……りーの時のようにマンツーマンでつくことができないため、入園はできないという返事が。Upload By かし りりあかーが話せないということは伝えていました。しかしかーの様子を見てもいないのにそう言われてしまったことに納得がいかず、本当に難しいかどうか、本人の様子を実際に見てから判断してほしいと食い下がり、かーを連れて幼稚園へ行くことになりました。幼稚園に通っていた時の長男りーは、初めての集団生活ということに加え、周りを見て動くということがあまりない子どもだったので、何をするにも先生の手が必要でした。幼稚園の先生は、おそらくかーも長男と同じような状態の子どもだと思ったのでしょう。しかし、かーは、小集団ですが児童発達支援施設に通っていたことと、もともと人への興味もある子どもだったので、話を聞いて人と同じことをやろうとする姿が見られていました。Upload By かし りりあ幼稚園でそのことを伝え、また実際にかーが先生の話をよく聞いておもちゃを出したり片づけたりする様子を見ていただいたことで、これなら通っても大丈夫という判断を受け、無事に幼稚園に通うことができるようになりました。こうして満3歳から幼稚園と児童発達支援施設に通えるようになった次男かー。兄とは違う姿が見えてきました。その様子はまた別の機会に書いていこうと思います。執筆/かしりりあ(監修:鈴木先生より)一般的に2歳までに単語が、3歳までに二語文が出れば正常域と考えられています。かーさんは言葉が増えなかったり、入園を断られたりした時点で医療につなげることが必要だったのかもしれません。言葉の増えないお子さんはまず難聴を疑うことから始まります。聴性脳幹反応(ABR)と言う検査で客観的に評価できます。難聴には多少聞こえる軽度から全く聞こえない重度まであります。場合によっては言語聴覚士(ST)によるハビリテーションも必要になります。発達支援施設と医療と連携することが重要です。奥手なお子さんは集団に入ってから言葉が増えることもある(表出型言語遅滞)ので、かかりつけ医と相談しながら経過を見ることが重要です。前の記事はこちら(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2025年02月19日平均的な成長をしていた乳幼児期。しかし発語が遅く、1歳半健診で様子見にわが家の息子のトールは、小学1年生の時にASD(自閉スペクトラム症)とADHD(注意欠如多動症)の診断を受けています。生まれた時には特に異常はなく、おすわりや寝返り、身長・体重なども、ずっと平均的なスピードで成長していました。しかし、言葉に関しては通常の目安とされる時期になっても出てくる気配がなく、1歳半健診の頃にもまだ発語がありませんでした。1歳半健診の事前アンケートで、「わんわんなどの意味のある単語をしゃべりますか」という質問項目があったのですが、それだけ「いいえ」の回答になりました。1歳半健診で保健師さんと相談した結果、発語の遅れがあるので定期的に様子を見ましょうということになり、2〜3か月に1回のペースで自治体の保健師さんと面談を行うことになりました。Upload By メイ癇癪、多動、他害……言葉の発達以外にも気になる点がその頃のトールは、自分のやりたいことへの欲求が強く、止められるとひどく癇癪を起こしたり、外に出掛けると私から離れてすぐに自分の行きたいところに走って行ってしまったりしていました。私はそんなトールと1日中2人きりで過ごしていたので、対応の仕方など悩みも多く、保健師さんとの面談ではいろいろな話を聞いてもらっていました。Upload By メイ発語に関しては、目安の時期からは遅れたものの、だんだんと出てくるようになりました。平均的な発達の子どもが2語文を発するようになる頃には、トールも意味のある単語をしゃべるようになっていました。保健師さんも、平均的な発達の時期から遅れてはいるけれど、トールなりのスピードで少しずつ成長が見られるということで、現時点ではまだ療育は考えず、このまま様子を見ていくことを勧められました。わたし自身は、トールの発語が遅いことを、そんなに悩んでいませんでした。当時は、トールの他害や癇癪が激しかったこともあり、年齢の近い子どもとの交流がほとんどなかったので、周りの子どもとトールを比べることもありませんでした。ただ、トールがほかの子よりも癇癪などが激しいということは、わたしも自覚していたので、何かしなければいけないという気持ちはありました。本などで発達障害のことも知っていたので、もしかしたら発達障害か、そうでないとしても同じような特徴を持っているかもしれないと思っていました。Upload By メイ発達の遅れや特性に気づきながら、療育を受けなかった理由そこまで考えていてすぐに療育などにつながらなかった理由は、やっぱり保健師さんからの、まだそこまで考えなくてもいいんじゃないかという意見が大きかったです。しかし、それだけが理由ではなく、わたし自身も積極的に療育に連れて行こうという気持ちになれませんでした。療育のイメージが湧かなかったというのもありますが、療育に行くとどうしても年齢の近いほかの子どもたちとの交流があると思ったからです。癇癪が激しく、他害が出やすいトールを、同じ年代の子の輪の中に連れて行く気力が、その頃の私にはどうしても出てきませんでした。そんなわけで、トールの発達の遅れや特性の強さには気がついていたものの、当時は療育機関には通いませんでした。その代わり、本などで発達障害のことを自分なりに勉強し、声かけの仕方などを工夫し、対応を変えていくようにしました。当時の決断に後悔なし!小学6年生になった今感じることもっと早く支援に繋げてあげるべきだったという意見もあるかもしれませんが、わたしはそういう後悔はしていません。あの頃の自分にできることを、自分で選んでしていたと思うからです。今、トールは特別支援学級に在籍していて、放課後等デイサービスに通っています。私以外にも支援という点でトールに関わってくれる人がいることは、とてもありがたいことだと感じています。周りの人の力も借りながら、これからもトールの成長を見守っていけたらと思っています。Upload By メイ執筆/メイ(監修:新美先生より)1歳半健診のときに発語の遅れがあったものの、実際に診断を受けたのは1年生のときだった経緯について詳しく教えていただきありがとうございます。トールくんは1歳半で発語の遅れがあり、その時から保健師さんと面談をされてその都度の相談をされていたのですね。その後ことばは増えていったものの、メイさんとしては癇癪など発達特性の強さを感じて、本を読むなどして対応のしかたを工夫されていたのは素晴らしいですね。発達障害の診断時期については、一般的に早期のほうがよいと言われることもあるのですが、実際にはケースバイケースです。発達障害の診断はあいまいなところも多く、生来の特性の強さだけでなく、環境との兼ね合いで本人や周りが困っているかという要素に左右される面もあります。発達障害は「治す」という性質のものでもないので、がんなど治療可能な病気とは、早期発見の必要度は全く異なるものです。一般的に早期発見、早期療育がよいと言われるのは、ご本人の特性に合った対応が早く分かったほうが、ご本人や保護者・周囲の方たちにとって困ったり、不安に思ったりすることが減るという意味合いが大きいです。メイさんの場合、保健師さんに相談したり、ご自身で本を読んで工夫をしたりして十分対応できていた時期には、療育を求める必要性を感じていなかったのでしょう。その時期に、受診や検査を受けることを強く勧められても、かえって戸惑われたかもしれません。振り返っても、後悔なしと言い切れるのは、メイさんがトールくんの子育てをしっかり考えて必要なことをご自分で決めてきたからなのでしょう。素敵です。診断は一概に何歳ぐらいがいい、いつまでにと決められるものでもなく、それぞれにちょうど良い時期やタイミングがあるので、地域の体制としては、検査や診断が受けたいというニーズがあった際にはできるだけ速やかに、しかるべき機関につながれる体制をつくっておけることが理想だとは思っています。前の記事はこちら(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。
2025年02月18日