LITALICO発達ナビがお届けする新着記事一覧 (2/132)
夏休み明けの次女の様子夏休みに、しっかりダラダラして休むことができた次女。2学期が始まってからも、夏休み前と同じく週1回程度学校をお休みするようなペースで登校していました。相変わらず、毎朝付き添い登校が必要で、だるくなってしまうこともありましたが、家での次女の様子を見ていると、夏休み前とは少し変わってきたなと感じる部分もありました。「だるいからお風呂で髪を洗うのを手伝って」など、自分でやっていたことまで母である私に頼んだり、体調不良を訴えたりする頻度が減ってきて、夏休み前より明らかにラクに過ごせているように見えました。Upload By まりまりそろそろ対応変えてみても良いのかも……?と、以前の失敗そんな次女を見て、そろそろ勉強面に手をつけてみても良いのかも……と思いました。それまでの次女は、学校に行っているだけで精一杯で、勉強に手をつけられるような状態ではありませんでした。それにもかかわらず、私自身の焦りや不安から、次女に半ば無理やり勉強をさせてしまった時期がありました。その時は、さらに次女を疲れさせる結果となり、学校を休むことも増えて、とても反省したという経緯があるので、今回は次女と相談して慎重に進めていくことにしました。次女の気持ち次女と話してみると、次女自身、以前と比較してだるさが減ってきていることに気がついたようでした。Upload By まりまりそして、次女としても「勉強しなくちゃ……」という思いを強くもっていました。勉強のことはずっと頭にあるものの、どうしてもだるくて取り組めず……という感じで、やらなきゃいけないことは、次女が一番よく分かっているのに、できないことをつらく感じているようでした。相談しながら、試しにルールをつくってみた次女と相談して、「学校はいつ休んでもいいけど、宿題だけはやる」というルールを決めて、取り組んでみることにしました。だるくて学校に行けなくても、宿題だけはやってみて、このくらいの負担なら大丈夫そう……というラインを探っていく感じです。この頃、私が学校に休みの連絡を入れることを負担に感じていたように、次女も私に「休みたい」と言うことを負担に感じていました。次女としては、だるくて無理だから休みたいと言っているのに、つい私が「体調悪いの?」「ほんとに無理そう?」「午前中だけ行ったら?」などいろいろ言ってしまっていたので……。とにかく試行錯誤しながらベストを探る感じだったので、次女が「休む」と言う時は、私もいろいろしつこく聞いたり言ったりしないようにして休ませることにしました。Upload By まりまりルールを決めて変わったことこのルールを決めてから、まず、私自身の気持ちが軽くなりました。朝に「休む」と次女から言われても、「いろいろ試している時期だから……」とそれまでほどの負担を感じなくなりました。次女のほうも、私の朝の対応が変わったことと、「宿題さえやれば、いつ休んでもいい」というルールで、それほど負担なく私に「休む」と言いやすくなったようです。そして、イヤイヤながらも宿題に自ら取り組むようになりました。この、「気楽にいつ休んでも良い」というのが、次女の安心感につながった気がしています。Upload By まりまり今回はタイミングが良かった結果、気楽に休みやすくなったからといって、次女のお休みが増えることはありませんでした。むしろ以前より、学校に行く様子が少しラクそうになった感じがありました。Upload By まりまり週1回程度休みつつ学校に行くのは夏休み前と変わりませんでしたが、休む時のルールを決めてからは、宿題については少しずつ自分で取り組めるようになっていきました。以前、私の不安をぶつけて勝手に進めてしまった時と違って、この時は、夏休みの間にしっかり休めたことと、親子で話し合って良いタイミングで試行錯誤したことで、小さな一歩を踏み出すことができたのではないかと思っています。執筆/まりまり(監修:新美先生より)場面緘黙のお子さんの、学校で疲れてしまうことに寄り添って対応されていることについて、詳しく聞かせていただきありがとうございます。お子さんの様子の変化をしっかり見極めて、ご本人と話し合って対応されている様子がとても丁寧で素晴らしいと思いました。ご本人と話し合って、ルールを決めたのがよかったですね。基本的には学校に行こうと思っているけど、どうしても無理な日に「休みたい」と言っているのに、いろいろ気にかけるのが負担という気持ちを娘さんが言ってくれてよかったです。そして宿題だけはやることで、休んでも「やることをやっている」という気持ちになれるのもちょうどよいのかもしれません。こういう、本人が大事にしたいポイントは、お子さんによってまた時期や環境によって変わってくるので、その都度気持ちを聞いたり、選択肢を出したりしながらちょうどよいルールを決めていくと、お互いに楽になっていいですね。また状況が変わってきたらルールも柔軟に変えていったらいいと思います。前の記事はこちら(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
2024年11月30日東京都児童発達支援Upload By 発達ナビ施設情報白金高輪駅より徒歩5分のリィスポーツスタジオ白金高輪では、運動や福祉の専門知識を持つスタッフが多数在籍。「子どもの発達には環境が大きな影響を与える」という考えのもと、自社開発のデジタルツールを用いて、お子さんが自ら動き出すような環境を設定し、ゲーム感覚で運動を楽しめるように支援しています。「運動で幸せな人を増やす」ことを目指し、日々お子さんの支援に取り組んでいるリィスポーツスタジオへぜひ一度見学に行かれてみてはいかがでしょうか。東京都の児童発達支援をもっとみる埼玉県放課後等デイサービスUpload By 発達ナビ施設情報ウィズ・ユー南浦和は、2024年6月1日にオープンした事業所です。「子どもたちの自己肯定力を育てる」を最大のテーマに、一人ひとりに合わせてサポートする継続的な発達支援プログラム・余暇活動を体験することにより、成功体験をもとにした「生きる力」を、そしてその結果として「自己肯定力」の向上を一緒に目指します。また、保護者の方には、ウィズ・ユー南浦和を利用していただくことで「ほっと一息」つける時間を確保するレスパイトケア機能や、保護者同士の交流を持つことのできる保護者会の開催もしているそうです。埼玉県の放課後等デイサービスをもっとみる埼玉県児童発達支援Upload By 発達ナビ施設情報てらぴぁぽけっと三郷駅前教室では、ABA(応用行動分析)を元に一人ひとりに合わせたセラピーを実施し、小さなステップを一緒に進んでいくことを大切にしています。そのためにすべての職員がABA(応用行動分析)専門トレーナーによる指導を受けており、「発語を促す」「困った行動を減らし望ましい行動を増やす」「集団の中での指示理解」など、お子さんが日々を充実させられる行動の獲得をお手伝いしています。見学や教室体験等、随時受付中とのこと。ぜひお気軽に相談されてみてはいかがでしょうか。埼玉県の児童発達支援をもっとみる大阪府放課後等デイサービスUpload By 発達ナビ施設情報MIKKE HOUSEでは、“子どもの自立と成長”を目的としています。そのために、毎日のカリキュラムや環境、保護者の方へのサポート体制を充実させるよう取り組んでいます。MIKKE HOUSEを見学した方々から「探していた場所がやっと見つかった」という言葉をもらうことや、お子さんが「ここがいい」と決めてくれることもあるそうです。気になる方はぜひ、お問合せしてみてはいかがでしょうか。大阪府の放課後等デイサービスをもっとみる大阪府児童発達支援Upload By 発達ナビ施設情報MIKKE HOUSEでは、さまざまなカリキュラムにおいて専門分野に特化したスタッフを配置しています。SST(ソーシャルスキルトレーニング)/制作/感覚/英語/そろばん/運動など、子どもの「できた!」を増やすカリキュラムも充実しています。週末は【体験型プログラム】として課外活動へ出かけ、本物の体験や実践的な体験を通して子どもたちに豊かな学びの機会を提供しています。大阪府の児童発達支援をもっとみる兵庫県児童発達支援Upload By 発達ナビ施設情報お子さん一人ひとりと向き合うをコンセプトに「やってみる!」「できた!」の気持ちを育み、自己肯定感を高めることを目指しています。また、集団生活に適応できるように幼稚園・保育所・小学校へのスムーズな移行を支援しています。落ち着いて学習ができる個室、小集団プログラムができるプレイルーム、通うのが楽しくなる設備も充実しています。保育士や児童指導員などの専門スタッフが、一人ひとりに寄り添いながら「楽しい!」を大切にした個別指導を行っています。兵庫県の児童発達支援をもっとみる「もっと施設の情報を詳しく知りたい!」「見学をしてみたい!」と思ったら、Webからもお問い合わせが可能です。施設情報ページでは、掲載されている施設の情報を地域ごとに検索して見ることができますよ。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。SLD(限局性学習症)LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。
2024年11月29日きっとまたいなくなる…あきらめた末に提案された居宅介護ホームヘルパーさんに来てもらうことになったのは今から3年前、息子が中学2年生の頃でした。特別支援学校に進学したものの、登校は数日しかできず、やっとのことで見つけた放課後等デイサービスにもフリースクールにも行けず、八方塞がりだった時に知り合った福祉施設の方から「計画相談支援を入れましょう!計画相談支援とは一生の付き合いになりますから!」と言われ、計画相談支援を受けることになりました。計画相談支援とは、ものすごく簡単に説明するとケアマネージャーさんのようなもので、障害福祉サービスの利用に関する相談や利用施設との調整をしてくださいます。サービスを受けるには、まず役所の福祉課に行き、「計画相談支援を受けたい」とお伝えします。そして、どの計画相談事業所を選ぶかを決めるのですが、それには役所で紹介してもらう方法と、自分で探す方法の2つの方法がありました。役所の方には「個人の特性や事情等に配慮はなく、リストにある事業所に順番に連絡していくので、息子くんのケースだとご自身で探されたほうが良いのでは」と言われてしまいました。困り果てた私は再び福祉施設の方に相談したところ、お知り合いの方を当たってくださり、息子のことを担当していただけることになりました。そしてその相談支援員さんから、「居宅介護(ホームヘルプ)」を提案されました。1.障害福祉サービス等の利用計画の作成(計画相談支援・障害児相談支援)サービス等利用計画についての相談及び作成などの支援が必要と認められる場合に、障害者(児)の自立した生活を支え、障害者(児)の抱える課題の解決や適切なサービス利用に向けて、ケアマネジメントによりきめ細かく支援するものです。引用:障害のある人に対する相談支援について|厚生労働省居宅介護居宅において、入浴、排せつ及び食事等の介護、調理、洗濯及び掃除等の家事並びに生活等に関する相談及び助言その他の生活全般にわたる援助を行います。引用:障害福祉サービスについて|厚生労働省その頃の私は、かなり頑なであきらめてしまっている状況でした。学校の先生は定期的に家庭訪問に来てくださるものの、一度「学校の先生」に対する信頼を底の底までなくしてしまった息子にとっては、現状の打開には難しく、また学校のシステム上、年度を超えて関わることは困難で、担当者が変わるたびに全てを1から説明しなければならない段取りに疲れてもいました。誰かを頼ってもどうせまたすぐにいなくなるのだという思いは、息子だけでなく私の中にもあり、それならば、誰にも頼らずに自分たちだけで生きていくしかないのだという決意すら固めていました。ホームヘルパーさんが来ても、きっと何も変わらないのではないか、むしろ来たことでさらに荒れるかもしれないという懸念はありましたが、息子は意外にも了承してくれました。「今の生活を変えたい」という思いは確実に息子にもあったのです。私は居宅介護のために必要な受給者証を取得するために、役所の福祉課へ向かいました。障害福祉サービス受給者証障害福祉サービス受給者証は、障害者総合支援法に基づく障害福祉サービスを利用する際に必要となる受給者証です。障害福祉サービスには大きく分けて、介護に関する「介護給付」と自立や就職に関する「訓練等給付」があります。介護給付には子どもが対象のサービスとして、居宅介護や行動援護、短期入所などがあります。居宅介護は利用者の自宅にスタッフが訪問し、入浴、排せつ、食事などの介護を提供するサービスです。行動援護は、行動上著しい困難があり、常時介護が必要な障害のある方に外出中のサポートを行います。短期入所は普段自宅で介護を担当している方が、病気などの理由で介護が困難な場合に、短期間施設に入所してスタッフが介護や見守りを行うサービスです。利用者が子どもの場合は児童福祉施設などで行われます。 By 花森はなホームヘルパーさんとの出会い受給者証を無事に取得したことを相談支援員さんに報告し、同時進行で探してくださっていたホームヘルパーさんも見つかったので、いよいよ初訪問の日がやってきました。当日は相談支援員さん、担当していただくホームヘルパーさん、そしてその事業所の施設長さんの3名でお越しくださいました。息子は警戒心が特に強すぎるタイプで、相談支援員さんが家にモニタリングに来られてもいつも塩対応。果たして大丈夫なのかな……と思っていましたら、意外にもホームヘルパーさんとは好相性!始まって30分もしないうちに意気投合。偶然にも好きなゲームと好きなシリーズが完全に一致し、残り時間もずーーーっとゲームの話をしていました。相談支援員さんが紹介してくださったのは「年が近くて息子くんの好きなゲームの話ができる男性」でした。実際来られたホームヘルパーさんはとても若くて、私も第一印象は「大丈夫かな……」とつい心配してしまったのですが、とても優しく対応もきちんとされた方で、息子のケアもしっかりとしてくださいました。その頃の息子の重要課題として、一番大きなものが「入浴と歯磨き」。入浴はできて2週間に1度、歯磨きもできそうな時に促して……という感じでした。私が声を掛けてもなかなか聞き入れてくれなかったのですが、ホームヘルパーさんの声掛けだと素直に行ってくれました。思春期の息子にとって、親からの言葉には反抗してしまうのかもしれませんが、他人からの言葉には素直に従えるのでしょう。歯磨きの声掛けは来るたびにやっていただいていると、ほんの少しずつですが息子が自主的に歯磨きをする日も出てきました。そして、入浴のほうも「明日はホームヘルパーさんの日だよ!」と声掛けすることで、入ってくれることが多くなりました。「家に定期的に他人が来る」というのは、こんなに良い変化をもたらすんだなと思いました。Upload By 花森はなやっと踏み出せた!移動支援で広がる世界ホームヘルパーさんがいらして半年が経った頃。息子の希望ではありましたが、利用時間がほとんど息子の話し相手で終わってしまうため、ほかの利用者さんたちがどのような利用の仕方をしているのか伺いました。そこで移動支援の話をお聞きしました。移動支援とは、移動が困難な人に対してガイドヘルパーが行う外出の支援サービスです。これは障害者総合支援法にもとづく地域生活支援事業サービスの一つであり、障害のある人の地域での自立した生活と社会参加を促すことが目的です。屋外での移動に困難さがある場合、外出を控えがちになるかもしれません。そのために、社会生活上の必要な活動が制限されてしまうこともしばしばあります。移動支援では、移動が困難な人に対して社会生活上必要不可欠な外出や、社会参加のための外出支援がガイドヘルパーによって行われます。息子は、学校へ行くことが難しかったため、本当は登校の付き添いを一番お願いしたかったのですが、私たちの住む自治体では通勤や通学に移動支援を利用することはできず、あくまで「余暇」のみでした。「ゲームセンターや映画館、回転寿司などの外出も付き添うことがありますよ」と教えていただきましたが、その頃の息子は外出自体が困難でずっと自宅に引きこもり状態でした。それでも「いいなぁ……僕も行ってみたいなぁ」と息子が言ってくれたので、ひとまず受給者証を取得することにしました。移動支援の受給者証は、居宅介護の受給者証と異なるのです。移動支援では通学時にも付き添ってもらえるの?子どもの通学の場合には、原則として保護者や介護者が移動の支援を行うことになっています。しかし、保護者や介護者が毎日の子どもの通学に付き添うことは現実的に困難です。以下のような場合には、例外的に通学における移動支援のサービスの利用が認められることがあります。2020年度の調査によると、43.8%の事業所で、一定の要件を満たす場合に通学の利用が可能、という報告もあります。出典:地域生活支援事業における移動支援事業の実態調査|厚生労働省ホームページ移動支援には、ガイドヘルパーという資格を持った方などのサポートが必要になります。ガイドヘルパーとは、一人で外出するのが困難な障害者の外出同行や移動を支援する専門職です。わが家に来ていただいてるホームヘルパーさんは、幸いガイドヘルパーの資格をお持ちとのことでした。受給者証が届いたあと、改めて「ヘルパーさんとどこか行ってみたいところはある?」と聞いてみると、すぐに答えは出ませんでしたが、数日後「コンビニに行ってみたい……」と言ってくれたので、次の利用日にヘルパーさんと私と息子の3人で行ってみることにしました。久しぶりのコンビニで、大好きなチキンとおにぎりを自分で選んだ息子の表情は満足げでした。ガイドヘルパーという「プロ」が付き添うことで、外出の不安が軽減されたのです。ガイドヘルパーは、移動支援従業者とも呼ばれ、障害の種別に応じた養成研修を受講し修了することで、資格を取得できます。ただし移動支援事業に従事できる要件は、ガイドヘルパー資格に限定しているわけではなく、市町村によって定められています。移動支援でできること移動支援では、社会生活を送る上で欠かすことのできない外出や、余暇活動等の社会参加のための外出支援を受けることができます。◇社会生活上、必要不可欠な外出の例・金融機関における手続き ・市役所、区役所、警察署 ・日用品の買い物 ・家族の学校行事など◇社会参加のための外出の例・美術館、映画館、コンサート ・体育館、トレーニングジム、プール ・動物園 ・ボランティア活動など By 花森はな「困っています」と親が叫ぶことは子どもたちの未来のためホームヘルパーさんが来てくれるまで、息子と私の世界は閉じたままでした。ですが、思い切って利用してみたことで「もう少し福祉を頼ってみてもいいのでは?」という気持ちが生まれました。これまで同情を毛嫌いし、「息子は不登校で精神障害がありますけど、全然大丈夫!私元気ですよ!」という顔をしていたのを止め、素直に「だから大変なんです!困ってるんですよ〜!」ということを他人に伝えることができるようになりました。これは長い将来、支援を受けて生きていくであろう息子にも重要なことで、私が「困っている」と伝えることで息子の生きやすさに繋がると思いました。また、息子と同じくASD(自閉スペクトラム症)の娘がいるのですが、娘の支援を考える時、迷わず放課後等デイサービスの利用やスクールカウンセリングを活用することができました。今も最大限使える支援を利用させていただいています。相談支援員さん曰く「子どものホームヘルパー利用で一番重要なのはマッチングなんです」とのことで、私も実際このマッチングがうまくいかなかったら、再び支援と繋がろうという気持ちは起こらなかったと思います。ですが、実際うまくいくかいかないかはやってみなければ分かりません。ホームヘルパーさんの支援によって 、息子の表情は明らかに明るくなり、今はひとりで外に出ることもできるようになりました。もしわが家と同じような環境で、現状に行き詰まりを感じておられる方がいらっしゃいましたら、利用を検討してみてもいいかと思います。Upload By 花森はな助けを求める勇気を持ちたいあんなに支援を拒絶していた私が、「居宅介護(ホームヘルプ)」の利用を決意したのは、もう一つ理由がありました。私が、服薬治療中だった病気で手術をする可能性があったからです。相談支援員さんが役所の福祉課の方に相談してくれましたが、本来そういった場合はグループホームでのショートステイが推奨されるようでした。しかし、当時の息子は、家から連れ出すことは不可能な状態でした。息子が入所を拒否して大暴れした場合、無理に入所させることはできず、置いていくことになってしまうかもしれないと説明を受けました。そこで、役所の方とも相談しながらホームヘルパーを通しての見守りはどうかと提案され、ほかに方法はなく受け入れた形でした。幸いにも手術は免れ、現在は経過観察となっていますが、もしまた私に何かあった時、息子が外の人を頼れるようにしておかなければなりません。居宅介護の利用はその第一歩でした。家に他人を入れることに抵抗のある方もいると思います。私も最初のうちは部屋を完璧に片付けたりしていましたが、今はもう洗濯物を端に寄せたり、多少散らかっていても普通にお招きしています。ホームヘルパーさんも「全然お気になさらないでください!」とのことなので、気にしないようにしました!これも大切なことです。他人に弱さを見せること、助けてもらうことは恥ずかしいことではないと言いたいです。こうして不登校サポートや障害児育児をしていると、どうしても謝る場面が人より多く、自らを恥じ入り、消えたくなってしまう日々ですが、全てを一人で抱え込むには無理がありますし、助けを求めてもいいんだと思います。最近は、不登校や発達障害に特化した居宅介護や訪問看護も増えているそうです。どうしても困ってしまったら、どうか「助けて」と言ってほしいです。私も「助けて」と伝え続けます。執筆/花森はな(監修:渡部先生より)計画相談支援事業者は、必要な福祉サービスについて情報を提供し、アドバイスを行って、実際のサービス利用の道筋を作ってくれる、障害児・者にとってのキーパーソンです。息子さんの状況や特性を理解して、「プロ」のヘルパーさんをマッチングしてくれたとのことで、とても素晴らしい事業者さんと出会えましたね。こうやって一歩を踏み出せたのは、「助けて」と伝えることができたからです。成人期以後も、日中活動や暮らしの場面などで、さまざまな支援が必要になってくるかと思います。これからも、困ったときには躊躇せず相談をして、息子さんやご家族の安心につなげていってください。前の記事はこちら(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2024年11月28日特別支援学校で不登校になった息子特別支援学校高等部3年生の息子は、アンジェルマン症候群という指定難病です。アンジェルマン症候群は重度の発達の遅れや知的発達症(知的障害)、動きがぎこちないなどの症状がある先天性の疾患です。息子は発語はありませんが、人が好きでニコニコと笑顔を振りまき、電車やバスといった乗り物が大好きです。そんな息子は2年生の11月から、特別支援学校で不登校になりました。11月のある朝のことです。息子が「以前骨折した腕が痛い」というアピールをしました。腕は完治しているはずなのですが、ちょうど寒くなってきた時期だったため、(寒さで古傷が痛むのかな?)と思い、私は病院へ連れて行きました。診てもらったところ特に腕に問題はなく、学校へは遅刻して行ったのですが、それから毎日のように病院へ行くというサイン、アピールが始まりました。Upload By ユーザー体験談参考:201 アンジェルマン症候群|厚生労働省不登校のきっかけは?体調不良アピールは続き……そして毎朝のように「病院へ行く」というサインは続きました。「学校へ行くよ」と言っても家から出てくれないので、その頃から私は「病院へ行って、その帰りに学校行くよ」と声がけをして息子を家から連れ出すようになりました。やがてはじめは腕だった痛みのサインも、鼻やら耳やら喉を指差すように変化。でも、いくら痛いアピールがあっても、病院へ毎日は行けません。すぐ近所の耳鼻科はほぼ行きつくすぐらいになってしまい、受付で事情を説明して何とか診てもらっていました。幸い病院のほうも「何かあるのかもしれないね~。先生に診察してもらうことで納得できるなら!」と言ってもらえたのでよかったです。そして病院へ行ったあとに学校へ連れていくも、だんだんと車から降りられなくなった息子。学校へは完全に行けなくなってしまったので、放課後等デイサービスに連れて行くようになりました。ですが、12月中旬になると放デイに送って行っても車から降りられず……。とうとう外へも出られない状態になりました。Upload By ユーザー体験談なぜ急に学校へ行きたがらなくなったのか……。あとから思ったことは、体調不良アピールが始まる1週間前にあった宿泊学習のこと。そこでなにか嫌な思いをしたのかも?ということが頭によぎりました。ただ学校に聞いても特に何かあったわけでないそうです。きっかけが分からないまま、息子の不登校は続きました。配布物、提出物のために学校へ通う日々いつか学校へ行ける日がくるはずと思った私は、学校へ配布物を取りに行ったり、提出物を持っていったりしていました。基本は私一人でやっていたのですが、病院に行った日などは息子も連れていくようにしました。二人で行く時は大体下校時間ぐらいに行くようにしました。下校中のお友だちがいると息子に声かけしてくれるので、そのほうが息子も動けるような気がしていたのです。ですが、息子はお友だちには笑顔で反応するのですが、車を降りることはできませんでした。下校が落ち着いて人がいなくなったあと、「書類を取りに行く、取ってきたら帰るよ」と声をかけると降りることもありましたが、それは稀。先生たちが付き合ってくださる時間も限られているので、先生が昇降口に置いてくれた書類を私が息子を誘導する形で取りに行き、車へ戻りました。また息子の不登校は私たち夫婦の仕事にも当然影響しました。私は上司と相談して在宅勤務に切り替えました。どうしても出社しないといけない時は、夫に半休を取ってもらいなんとか乗り切る日々でした。バスが好きな息子なら行けるかも?校外学習に参加そして年が明けて2月、校外学習がありました。バスに乗って出かけ電車で帰ってくる行事です。先生が「息子さんはバスと電車が好きだから、参加しませんか?」と声をかけてくれました。当日、私は出発時間ピッタリに登校させ、教室へ行かなくても息子がそのままバスに乗れるようにしました。無事バスに乗っていってくれた時は「よかった……!」とほっとしました。校外学習では、昼食(ファミレス)も、トイレもできて楽しんでいたそうです。これがきっかけで、2月中旬から3月初旬は学校に通うことができました。ですが、中旬からまた家から出られなくなり、毎日病院のサイン……。「病院に行ってから学校に行くよ!」の声かけで家から出れましたが、学校に行くと車から降りられずという状態が続きました。そのまま4月は不登校。でも校外学習の時うまくいった経験があったので、5月の修学旅行も行ければ良いなと思った私。修学旅行の事前学習のある日は登校するようにチャレンジしましたが、結局学校には行けませんでした。そこで、先生にお願いして修学旅行の資料をもらい、家で事前学習をすることにしました。宿泊するホテル、行き先、食事場所などの動画をタブレットで見せ、「ここに行くんだよ!楽しそうだね」と声かけをしました。Upload By ユーザー体験談新幹線に乗り、2泊3日の修学旅行へ。母も影から見守り……修学旅行先は大阪、2泊3日です。幸い、ホテルも行き先も以前いったことのある場所で、新幹線も乗り慣れていたことが功を奏し、修学旅行にはなんとか参加することができました。帯同こそしませんでしたが、実は私も大阪へ行きました。何かあった時にすぐに駆け付けられるようにと思ってのことです。ほかの保護者の方が帯同していたので、息子の様子を撮った写真や動画を送ってくれていたのですが、それを見ると楽しんでいる様子でほっとしました。あとから先生に聞いたところ、睡眠時間はいつもの半分ぐらいだったようで、最終日の昼食はほぼ食べられませんでしたが、ほかは普通に食べられた様子。かなりの疲労はあったようですが、「参加することに意味がある!」と。お友だちと一緒に行動できて、少しでも楽しい気持ちになれたのではと思いました。最終日、見つからないないように尾行(?)して様子をみましたが、先生が息子にマンツーマンで付いている感じはなく、エスカレーターに一人で乗っているところを見た時はびっくりしました。息子は疾患のため姿勢を保つことが難しく、倒れてしまうことがあるのですが、体勢を崩した時にすぐに対処できる様子ではないことに驚いたのです。先生たちは、「息子は割と何でもできる」と判断しているところがあって、学校生活でもこのような状況があったのでは?と、感じました。特に大きな問題を起こさず、比較的穏やかに過ごせている息子。ただ手をかけなくても、安全のためにも目はかけてもらいたい……。もしかしたら本人は孤独を感じていたのかもしれないと想像しました。学校からの提案で、学校へ通えるようにこの修学旅行のあと、学校から「息子さんが車から降りられない時は、私たちが降ろして連れて行ってもいいでしょうか」と提案いただき、そのように対応していただくことにしました。これで、息子は登校できるようになりました。先生からの提案で始まったことですが、車から連れていく際パニックになることはあっても教室では落ち着いているようで、先生も私もびっくりしてます。車を降りられた時、周りが拍手喝采してくれるのですが、その時の息子はすごくいい笑顔!周りから関心を持ってもらえていると実感することが、いい方向に働いているのかもしれません。現在、木曜~週末は自ら降りることもあるのですが、月曜日や長期休み明けは先生に連れていってもらっているようです。Upload By ユーザー体験談息子が学校に行ってくれることで、私も以前のように仕事ができるようになり、とてもありがたいです。ただ今後、卒業後にこのようなことがあったら……と思うと不安です。生活介護の事業所では、ここまでの対応は難しいと思うからです。特別支援学校の卒業が迫ってきました。残りの学校生活を楽しく過ごせることが願いです。イラスト/keikoエピソード参考/こうちゃんママ(監修:鈴木先生より)「少しでもできたら褒めること」が大切です。アンジェルマン症候群は重度の知的発達症を伴います。何ができないかよりも何ができたかに注目することが重要です。注目されることを好むお子さんも多いので、今回のようにバスから降りた時に拍手喝采があれば喜びます。定型発達の子どもが普通にできることでもアンジェルマンの子はそれを行うために努力をしているからです。修学旅行の睡眠時間が半分だったことからも、息子さんにはアンジェルマン症候群に多い睡眠障害が併存しているものと思われます。6歳から15歳までであればメラトニンの補充療法などで入眠を早めることも可能なので、一度主治医に相談をしてみましょう。参考:アンジェルマン症候群の特徴|NIPT Japan(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。
2024年11月28日「お子さまの困りごとはどうして起きる?」解決の鍵は「背景」を紐解くことUpload By LITALICO発達特性検査 編集部「一度癇癪が起きると収めるのが大変」「本人がどうして苦手なのか分からない」「どうサポートしたらいいか分からない」など、子育てについての悩みについて、解決法が見つからず悩む保護者の方は多いのではないでしょうか?そのような声に応え、2024年7月に、LITALICOでサービス開発などにも携わる作業療法士の野田遥さんのオンラインセミナーが開催されました。「癇癪やこだわり等、お子さまの困りはどうして起きる?サポート方法をまるっと解説!」と題した今回のセミナーでは、困りごとをどう捉え、サポートしていくかについての解説のほか、当日参加した保護者の方からのお悩みや具体的な事例の相談の機会もあり、時間いっぱいまで質疑応答を行ないました。今回は、イベントの内容を再構成してご紹介します。「どうして困りごとが起きるの?」困りごとを読み解くための考え方とはセミナー前半のテーマは、「お子さまの困りごとについての考え方」でした。まずは、困りごとや生きづらさ、困難さがどのように起きているのか、本人の「特性」との関係や、またそれが障害となるのはどのような時なのかについて、野田さんから分かりやすく解説がありました。(野田さん)「LITALICOでは、個と環境の相互作用の中に生きづらさや困難さがあると考えています。今回はこの基本に沿って、困りごとがなぜ起きているかを考え、何に着目すると解決する方法が見つかりやすいのか、ということをお伝えできればと思います。個人の特性の高低・強弱だけで診断が決まるのではなく、実際に過ごしている環境の中で困りが生じているかが重要なポイントになってきます。ただ、ここで誤解していただきたくないのは、「環境が悪いから障害が起きる」というわけではないということです。決して、保護者の方の接し方や育て方、周りの環境がよくないから困りごとが起きたり、解決できなかったりするという意味ではありません。今の社会の仕組み、家庭以外の環境も含めて考えていくと、環境を整えてもなお、困りを感じやすい特性や、困りごとが強く出てくるケースもあります。それを踏まえた上で、社会全体の仕組みをどのように整えるか、お子さまやご家族を取り囲む状況のなかで、どのようにして困りを減らしていけるかということを考えることが、ポイントになってくると思います」(野田さん)「ある環境の中で、特性が困りとなって現れているのかどうか、ということが、重要になってくると考えています。困りごとの解決方法について考える時も、例えば、「ASD(自閉スペクトラム症)の診断があるからこの対応をする」というような考え方ではなく、お子さまの発達特性や状況、環境を個別に把握し、それに合った対応方法やサポートを考える必要があります。また、診断がなくても困っていることがあったら当然サポートが必要になってきますよね」野田さんからは、特性が強いが診断されていないというパターンもあること、また、一つの診断がある方にさまざまな併存症・併存的な特性が存在するケースも多く見られることもあるという最新の研究や、「発達特性」とはそもそもどういうものなのかの定義などの解説がありました。Upload By LITALICO発達特性検査 編集部紹介された公認心理師である井上雅彦先生の定義からは、特性の強さも人によって異なり、診断の有無や診断名だけを見て判断するのではなく、個人についてのアセスメントが重要だということが分かります。この考え方については、発達ナビのコラムでも詳しくお読みいただけます。お子さまの困り、「なぜ」を飛ばして解決策を考えていませんか?続いて、具体的に困りごとを解決するため、まずお子さまの状態や特性を調べ、どうして困りごとが起きるのかを把握する方法が紹介されました。(野田さん)「困りごとを解決したいと考えたときに、『なぜその行動が起きるのか?なぜ適応的ではない行動をとるのか?』といった疑問を飛ばして解決方法を考えていませんか?」Upload By LITALICO発達特性検査 編集部(野田さん)「例えば『授業中に立ち歩く』という課題があったとします。立ち歩かないように注意すると、その場ではやめられるかもしれません。しかし、そのお子さまが立ち歩いている根本的な原因に対応できていないので、また別の場面や時間が立ったら同じことが起きるかもしれません。また、この行動を引き起こしている原因が、別の形で別の困りや行動につながっていく可能性もあります」野田さんは、困りごとから一直線に解決策を考えるのではなく、そもそもどうして困りごとが起きているのか、「なぜ?」を考えるということを挟んで、困りごとの背景からアプローチしていくことが根本的な解決のために大切だと言います。「困り→背景要因→サポート」で、なぜ困りが起きているかにアプローチ(野田さん)「『この困りにはコレ!』という一直線の考え方ではなく、『背景を知る』ということを間にはさむと、根本的な原因に即した適切なサポートを選びやすくなります。では、実際にどのように考えていけばよいのでしょうか?以下のフレームワークで見ていきましょう」Upload By LITALICO発達特性検査 編集部まず、どのような場面で起きるか? ということを観察し、仮説を立てていきます。(野田さん)「小学校1年生の男児で「学校で耳をふさいでパニックになることがある」というお子さまの例を取り上げてみましょう。どのような場面で困りごとが出るのか?困りごとの現れ方が異なる場面はないか?など、複数の場面を比較して背景を深掘りしていくと、より『なぜ?』が見つけやすくなるかもしれません」野田さんからは、具体的な仮説の例として・大きい音は大丈夫だけど、反響する音が苦手なのかな?・いつもと違う状況が苦手なのかな?などが挙げられました。ただ「音が苦手」と捉えるだけでなく、背景は何かという仮説を立て、さらに深掘りして考えていくことで、具体的な方法や取る手段が変わっていくのが印象的でした。野田さんの解説から、こうした小さな違いが、サポート方法が合うか合わないかということにつながっているのではないかという気づきが得られました。とはいえ、実際に試してみないと分からないということもあるといいます。(野田さん)「例えば、聴覚過敏のある方がノイズキャンセリングを使うことで、全体的に音量が下がることで逆に苦手な音が気になることもあります。こういったことは、実際に試してみないと分からない場合もあります」野田さんの方法を試す際には、仮説を立てて、実際に試して検証していくという試行錯誤のサイクルを繰り返していくことが必要で重要だということです。だからこそ、できるだけ確度の高そうな仮説を立て、合いそうな方法を選び、試していくことがうまくいく方法が見つかりやすくなるポイントになってくるのではないでしょうか?背景に合った個別的なサポート方法を考えていく上で、もう一つのポイントとなるのが、「困り→背景→サポート」は一対一でつながっているというよりは、「多 対 多」の構造になっているということだと言います。(野田さん)「一つの困りにもいろいろな背景があるし、背景はいくつかの困りに関係している、そしてそのサポートもいくつか考えられる。すごく複雑なんですよね。困りだけみて決め打ちしないのがとても大事なんだな、というのが分かっていただけるといいなと思います」複数が関係している可能性があることを前提に、困りだけを見るのではなく、また背景やサポートも一つだけに絞らず、さまざまな角度からアセスメントをし、サポート方法も複数試すことが重要であるそうです。また、以下もアセスメントのポイントとして挙げられました。・複数の困りに共通して存在する背景もある・複数の背景に共通のサポートが適切な場合もある・一つの背景に複数のサポートが考えられるなどとはいえ、実際にはこのような複雑な要因や方法を家庭でアセスメントをしてサポートしていくのは、かなりハードルが高いのではないでしょうか?(野田さん)「ご家庭で取り組むのが難しい場合は、アセスメントに役立つツールや専門家への相談なども活用していただくことをおすすめします。例えば、私が開発に携わったLITALICO発達特性検査は、『困り→背景→サポート』という今日使った考え方に沿って作られています。お子さまの困りや背景要因の分析をし、お子さまにあったサポートを考えるのはすごく大変だと思うのですが、オンラインの検査を受けるだけで結構な情報量のレポートが出るサービスです。受検することで思考の整理ができるので、専門家に相談する際の材料としても使っていただけると思います」Upload By LITALICO発達特性検査 編集部質疑応答と参加者の方の感想オンラインセミナーでは、「逆上がりが苦手」、「靴紐が結べない」、「癇癪」、「きょうだいに対して手が出てしまう」など、保護者の方から具体的な困りごとについてさまざまな質問が寄せられました。野田さんからはそれぞれのケースについて、時間いっぱいまで解決方法の提案がありました。イベント後、参加者の方からは分析や実際の対応方法についての感想が多く寄せられました。「行動の前後をみて、どうして困り感があるのかを考えることが大切だと分かりました」「1つの行動に対するアプローチは1つではなく、多くの選択肢を挙げられると、本人の思考や行動の幅も広がっていくのではないかと思いました。できることからやってみようと思います」「癇癪やパニックの行動のみに着目するのではなく、その前後の関わりや言動をよく観察し、柔軟に支援していくことが大切だと感じました。パニックになったときに注意などはせずにクールダウンする場所をつくるなど、具体的な関わりについて学ぶ方ができてよかったです」「なぜ」に注目して、困りごと解決への道を見つけよう野田さんのレクチャーを聞いて、一見同じような困りごとも、背景が違えば対応方法も変わる場合があることが分かりました。だからこそ、今回の野田さんによるレクチャーのように、背景に着目し、よりお子さまの困りごととその根本に向き合えるサポート方法を探すことがポイントになって来るのではないでしょうか。「困り→背景要因→サポート」は、LITALICO発達特性検査でも用いているフレームワークです。この方法は、「今、困っている」という保護者の方にとっては、一見遠回りに見えるかもしれませんが、困りごとを軽減していくために必要なステップだともいえます。課題ができたとき、「では、なぜ困っているのか?」と振り返る機会を持つことが、困りの解決に向かう糸口につながるかもしれません。その際、背景やサポート方法を適切に判断・選択するには、より詳しい知識や観察の手法が必要になるかもしれません。一方で、参加者の中には、実践は難しいと感じる方もいらっしゃるようです。参加者アンケートでも「実践が難しい、保護者だけでは解決しきれない」と回答された方もいらっしゃいました。そのような場合には、セミナーでも紹介があったように、ツールや周りの方の力を借りることも、保護者の方が実践される際にはポイントになってきます。・支援者や周りの人に相談する・発達ナビのコラムで同じような特性・ケースの事例を読む・発達ナビPLUSなどのオンライン相談ツールを活用する・LITALICO発達特性検査で背景要因とサポートの方向性を知るなどぜひ、さまざまなツールや機会を活用し、困りごと解決に向けて、取り組んでいただければ幸いです。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
2024年11月27日小学校1年生の冬、発達障害と診断されましたUpload By もっつんタクが発達障害だと診断されたのは、小学校1年生の冬のことでした。授業中に静かに座っていられないなどの多動性と、道路に飛び出したりする衝動性が酷くて困っていました。病院に行って診察してもらうのは、私にとってとてもハードルの高いことでしたが、突発的な他害などが問題となったことが、病院で診察を受ける後押しになりました。スクールカウンセラーの先生に小学校で知能検査「WISC」を行っていただき、紹介状を書いていただいて診察へ向かいました。最初に行った病院では「親の躾の問題」とも言われ、タクの問題行動は私の接し方が悪いから?と、とても悩み落ち込みました。ですが、すごく親身になってくれたスクールカウンセラーの先生のおかげで別の病院で再度診察を受けることになりました。そして次に行った病院の小児神経科で、タクは正式にADHD(注意欠如多動症)だと診断されました。また、ASD(自閉スペクトラム症)の特性も強く持っているとのことでした。診断された時は「あぁ、やっぱり」と強く納得したのを覚えています。ついに服薬開始。先生の説明を聞く息子の反応は…Upload By もっつんこの頃のタクは道路で急に走り出したり、お友だちに対しての危険行為があったので早急に対策が必要でした。先生から提案されたのは薬の服用。ひとまず他害行為を落ち着かせるために、気持ちが落ち着く作用があるというお薬として、「インチュニブ」を処方されました。処方にあたって担当の先生はとても丁寧に、タクに向かって説明してくれました。「教室で急に走りたくなったり友だちを叩いてしまったりで、怒られてつらいよね。本当はやっちゃダメだって分かってるんでしょう?」「これは君の中の『ガマンしたい』という気持ちを手伝ってくれるお薬。これを飲んでも良い子になれるわけじゃないよ、ちゃんと自分でもガマンの心を応援してあげないといけないよ」と話す先生に、タクは「分かった!」と返事をしていました。子ども目線で話してくれる先生に感動しつつ、帰宅後も改めて薬を飲む意味を説明しました。少しでも他害や問題行動が減って、落ち着いた学校生活をおくれますようにと願いを込めて服薬開始したのを覚えています。服薬は本人の気持ちを応援してくれるサポーターUpload By もっつん幸いなことにタクの場合は副作用も現れずにスムーズに服用できていました。しかし効果もあまり感じられず、突発的なトラブルは発生していました。定期診察時に相談すると「神経系の薬は人によって合う合わないがある」と改めて説明を受けて、ほかの薬も試してみることにしました。そしてほかの薬を経て、タクがたどり着いたのは「コンサータ」という薬でした。1度の診察で処方できる量が限られているので、1か月に1回以上は通院する必要があり、薬局でも毎回登録カードと身分証明書が必要です。ほかの薬に比べて取り扱いが大変な印象があるコンサータでしたが、これはタクに合っていたようでした。本人も体感で分かるほどに「今やらなきゃいけない事に集中できる」と周りの雑音や誘惑に振り回されることが減りました。ちなみに母親である私自身もADHDがあり、コンサータを服薬しています。注意散漫になりがちな場面で、もう少し頑張れそうという気持ちが湧いて1つの事に集中できるようになったかなと思います。ただ、服薬はメリットばかりではないので、体調変化など気になることがあれば主治医の先生にご相談するようにしています。服薬しないと学校にも行けないの?と不安になる日々もあったけどUpload By もっつん合う薬に出合えてからは、タクは学校での問題行動が減ってきたようでした。特別支援学級の先生や補助の先生が手厚くサポートしてくださったおかげで友だち関係も改善されていきました。しかし平穏な時間はずっとは続かず、また少しずつ荒れていきました。仕事中の私に小学校から電話があり「タクくんが帰りたいと言っています、落ち着かない様子です」「今日はお薬飲み忘れでしょうか?持ってきてもらえますか?」という内容でした。何度もそんな事が続き、仕事を早退して迎えに行くこともありました。タクが学校で落ち着かないのにはいくつか理由がありましたが、原因の一つに薬の飲み忘れがありました。飲み忘れた日はやはり多動の特性が強く出ていて、友だちと衝突してしまうこともあったようです。忙しい日々で服薬について毎回確認できていなかったことに責任を感じつつ、「周りの子は落ち着いて登校できているのに、わが子は服薬しないと学校生活がままならない……」と必要以上に落ち込むことがありました。なんでこんなにトラブル起こすの?お願いだからトラブル起こさないで!とやり場のない感情で悩みは深まっていきました。タクの薬の飲み忘れについて改めて話すと、「最近調子が良いから、飲まなくても大丈夫だと思った」と言われたことがありました。しかし飲み忘れた日は結局気持ちも行動も落ち着かずに、失敗して怒られるという悪循環を断ち切らなければいけません。そこで、飲み忘れ防止のために工夫をしていきました。日付入りのピルケースに薬を準備したり、服薬チェック用のマグネットをつくったり。その甲斐もあってか飲み忘れることは減っていきました。薬は一生飲み続ける?Upload By もっつんこうして服薬を続けてきたタクですが、現在は中学3年生(特別支援学級に在籍)になりました。今の薬との付き合い方はとてもうまくいっていると思います。時々飲み忘れて登校してしまうこともありますが、明らかに授業中の集中力に差があるので補助の先生がすぐに気づいてくださり、自分で予備に持ち歩いている分で対応するなどしています。そしてタク本人の希望もあり、週末などは休薬日を設けています。特に放課後等デイサービスの友だちと遊ぶ日は「今日は飲まない」と言っています。気が合う友だちと思いっきり遊びたいという気持ちもよく分かるので、学校や放課後等デイサービスの先生と連携をとりながら対応しています。今まで服薬させながらの子育てを長くやってきて、この先も飲み続けるんだろうなぁ……と漠然と考えていた私でしたが、先日の定期診察の時に驚く事がありました。「来年は高校生になるから、受験が終わったら薬を減らしていこうね」と主治医の先生に言われたのです。びっくりして思わず「ええっ?」と聞き返してしまいました。この年頃になると内面もちゃんと成長していることが多く、最初から中学3年くらいで服薬は終わりにするつもりで処方してきたとのことでした。そして、注意欠如は残っていますが、多動性の部分がかなりなくなっていることが決め手だそうです。長い間、服薬してきたので不安な気持ちもありますが、信頼している先生とご相談しながら見守っていきたいと考えています。これから高校進学という大きなイベントを控えたわが家ですが、タクのことを信じて乗り越えていきたいと思っています。執筆/もっつん(監修:藤井先生より)ADHD(注意欠如多動症)の薬には、コンサータ、ビバンセ、アトモキセチン、インチュニブの4種類があります。お薬の形状、効果が出るまでの時間など薬によって違います。今回処方された、インチュニブは食欲不振やチックなどの副作用もないため使いやすいですが、効果が出るまで数週間要します。コンサータは飲んだら12時間効果が持続するため、集団生活での多動・衝動性には効果を認めます。服薬終了のタイミングは、お子さんの様子を見ながら検討していきます。もっつんさんが、大人になってからコンサータを飲まれているように、高校進学前に薬を服用終了しなくてはならないというわけでもありません。薬を飲むメリット、デメリット(副作用)などを主治医の先生と相談しましょう。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。
2024年11月27日おむつ交換の日々と不安なスタート小学校の特別支援学級に通うハジュは、現在4年生になり、中学年となりました。入学したばかりの頃、私は毎日、給食の後と帰りの会の前にせっせとハジュのおむつ交換のために学校へ通い、最後は一緒に下校するという日々を送っていました。特別支援学級に通っていたものの、まるで赤ちゃんのような姿に、あの頃は「この先どうなるのか……」という不安が頭をぐるぐる回っていました。Upload By スパ山お兄ちゃんになった⁉ハジュの成長ハジュには当時、大好きなお人形があって、いつも一緒に登校して肌身離さず持ち歩いていました。ですが、3年生になったある日突然「ハジュは3年生のお兄ちゃんなので」と言ってお人形をベッドに寝かせて登校したのです!家に戻ると、「ただいま!」とお人形をぎゅっと抱っこしている姿は変わりませんが、あんなに離れたくなかったお人形という安心できる存在を、少しずつ手放していく姿に驚きと成長を感じました。同じ頃、長く続けてきたトイレトレーニングも、ついに卒業を迎えることができました。トイレトレーニングは2歳から始めていたものの、なかなか進まず。ハジュにとっておむつもまた、安心できる存在だったのだと思います。入学後も焦らず少しずつ進めてきました。最初は新しい環境に慣れることを優先して、焦らず自然なペースで「行けたらラッキー♪」くらいの気持ちで取り組みました。休み時間や給食前などタイミングを見計らい、トイレに行けたら盛大に褒め、行けなかったり、失敗しても気にしない!と、とにかくポジティブ作戦で練習していました。そして「自分でズボンをはいてみる」など、小さな目標を立てることで達成感を積み重ね、ハジュの自信を少しずつ育てていきました。それでも心が何度も折れそうになりましたが、とにかくあきらめずに、同じ事を数年積み重ねた結果、ハジュは自分の力で卒業にたどり着きました。自信を持って一歩を踏み出した姿に、成長を感じてとても感慨深かったです。Upload By スパ山「動きたい」気持ちと向き合うそれから、ハジュには「じっとしているのが難しい」という特性があります。動きたい衝動を抑えられないのです。入学当初は授業中でもふらっと立ち上がってしまうことが多く、床に寝そべったり、日によっては教室を飛び出してしまうこともありました。そこで、先生と相談し、リトミックや「だるまさんがころんだ」のような体を使って集中力を高める活動を取り入れたり、座学の前に身体を動かす時間をつくってメリハリをつける工夫をしていただきました。さらに、授業中は「プリントができたら」「〇分経ったら」といった目安で短い休憩を挟み、教室後ろのパーテーションで囲まれたカームダウンスペースでリラックスできる時間を設けていただきました。こうして少しずつ「座る」ことに慣れていく工夫をしていき、最初はほんの数分だった授業中の着席も、年を追うごとに増え、今では45分の授業をほとんど座って受けられるようになったのです。もちろん、すべてが順調に進んだわけではなく、「どうしてこの子はじっとできないのだろう」「もしかして周りと同じようにできないのでは……」と感じて悩んだ時期もあります。それでも、ちょっとした進歩があれば「やったね!すごい!」と一緒に喜び、失敗した時にはその理由を一緒に考えました。そんな日々を過ごしているうちに、ハジュが自分なりに少しずつ自信をつけていく姿を見て私もとても励まされてきました。Upload By スパ山周りの大人たちに感謝ハジュがここまで成長できたのは、学校の先生や周りの大人たちのあたたかいサポートがあったからこそです。私一人ではどうしようもないことも多く、入学当初から彼の特性を理解して何かと気にかけていただき、根気強く見守ってくださったおかげで、ハジュにとっての安心材料になったと思いますし、自分のペースで成長することができたのだと思います。幼稚園の先生をはじめ、主治医の先生、学校の先生、そして家族……多くの方がハジュを支えてくれています。親の私でさえ心折れそうになることもあるのに、初めて関わるハジュに対しても、一つひとつのささいな困りごとに丁寧に寄り添い、あきらめずに向き合ってくれました。例えば、主治医は投薬治療を提案してくれて、細かく様子を見ながら薬の調整を続けてくれました。幼稚園では、ハジュの特性に配慮し、イベントや制作活動への参加方法を何度も話し合い工夫してくれました。祖父母も、どんな小さなことでも喜んで褒め、ハジュの成長を一緒に喜んでくれています。いつも「この子にできることは何か?してあげられることは何か?」という姿勢で接してくれる方々のおかげで、ハジュへの理解が広がり、私自身も心が折れずに頑張る力をもらっています。このあたたかい支援の輪が、ハジュの成長の原動力になっていると感じています。Upload By スパ山これからも成長を楽しみにもちろん、まだまだ課題はありますし、これからも周りに頼ることも多いですが、親ばか心全開で「次はどんな新しい一面を見せてくれるのかな?」とワクワクしています(笑)。この先も、ハジュが自分らしく成長し、楽しい学校生活を送れることを願いながら、温かく見守っていきたいと思います。支えてくださる周りの方々に感謝しつつ、これからもハジュの成長を楽しみにしています。執筆/スパ山(監修:藤井先生より)スパ山さんが、ハジュさんに寄り添いながら、さまざまな人と連携されて、ハジュさんの成長があるのだなと思いました。お子さんを見守る時に、親御さん一人では心が折れそうになることがあるかもしれません。学校や園の先生、祖父母などのご家族、療育先のスタッフの方々など、周囲に相談するのはとても大切ですね。スパ山さんの周囲への感謝の気持ちが伝わる素敵なコラムを、ありがとうございます。前の記事はこちら(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。
2024年11月26日言葉遣いが悪い……反抗期のせい?きょうだいのことを「お前」と呼んだり、「は?」と聞き返したり、「知らねぇよ」と語尾がキツくなったり……。年齢が上がるにつれて、子どもの言葉遣いが気になり始める保護者も多いのではないでしょうか。特に小学生以降は、だんだんと友だち関係を大事にする発達段階に入ることもあり、周りからの影響が心配になることもあるでしょう。発達ナビのQ&Aコーナーでも、以下のような声が寄せられています。言葉遣いについてです。小二の息子です。小学校入学後から、言葉遣いがひどいなと感じ入学して一週間くらいで、クソババアと言われました。同じクラスの子が言っていたから、悪いとは思わずに言ったようでした。今回はそのような小学生の言葉遣いについて、鳥取大学大学院教授で発達障害を専門とする井上雅彦先生にお伺いしました。反抗期の息子。小学生の乱暴な言葉遣いは直せるの?A:大人しかったわが子が急に乱暴な言葉遣いをし始めたとすると、保護者としては少し驚いてしまいますよね。「お友だちの影響もあるのかな?」と思われるかもしれませんが、きっかけはテレビや動画サイト、漫画など、ほかにもあるのかもしれません。実際にお友だちと同じような口調になってきたという場合には、お子さんは年齢相応の友だち関係を築けているという捉え方もあります。小学校高学年くらいで、同じ表現を使ったりノリが合ったりすることで、仲間意識が高まることもあるでしょう。家庭での対応のポイントとしては、「使い分けのルール」を教えることもひとつです。例えば、「仲間内ではいいけれど、そうでない相手(先輩・先生など)には言わないよ」というような簡単なルールがあるといいかもしれません。保護者としては、お子さんの少し荒々しい言動は気になるかもしれませんが、実は「使い分け」が既にできているお子さんも少なくありません。例えば、テレビの悪役の真似をして、家では一人称が「俺様」だったり、お母さんに対して「〇〇様と呼べ」と言ったりするお子さんが、外では言っていないという場合もあります。使い分けができていて、一時的なブームのような場合には、家での許容範囲を広げるという対応もあるでしょう。ゲームに負けてしまった場面など、テンションが上がったときにだけ暴言が出るようであれば、落ち着いたときに“そうしたことは言わない”ということを伝えます。興奮している状態だとそうした言葉が出やすいという本人の傾向も同時に伝えていくようにしましょう。一度伝えるだけでは難しいかもしれませんが、少し長めのスパンで繰り返し伝えていきます。また相手を傷つけるような言動や、相手を不快にさせてしまう言動がある場合にも、対応が必要となります。一律に「このワードはOK/NG」という線引きがあるわけではないのでお子さんに教えていくことはなかなか難しいかもしれません。特に相手の気持ちを想像することが苦手な場合などには、「相手が嫌がることはしない」などよりも「仲の良い〇〇さんや〇〇さんだけと使おう」「〇〇さんには××とは言わない」など明確なルールのほうが分かりやすいと思います。例えば、お子さんを中心とした円を紙に描いて、お子さんと仲の良い友だちの名前を円の中に書き入れて、「(相手を下の名前で呼ぶのは)この中のお友だちにはいいけれど、円の外の人には使わない」など、視覚的に教える方法もあります。相手との関係性を図式化しながら伝えるとより分かりやすいかもしれませんね。Upload By 発達障害のキホンまとめ:反抗期の対処法って?子どもの乱暴な言葉遣いや反抗的な態度に、保護者としてもイライラしてしまうことがあるかもしれません。一方で、全面的に禁止したり、厳しく言い過ぎたりすると逆効果のこともあるでしょう。子どもの言動が、相手を傷つけてしまっているのか、あるいは「やりたくねえよ」など荒い言葉遣いになっているだけなのかという点から対応を検討していってもいいと思います。小学校入学以降から思春期くらいまで、一時的に荒っぽい言葉遣いが出てくるお子さんは決して少なくありません。相手を傷つけているわけではない場合には、少し許容範囲を広げるのもひとつです。そして「これだけは変えてほしい」という言葉については、「〇〇という言い方をしてほしい」と端的に具体的に伝えるのもいいでしょう。Upload By 発達障害のキホン(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
2024年11月25日マイペースなコウの「友だちつきあい」のこれまでUpload By 丸山さとこ現在では驚くほどおしゃべりな息子のコウですが、保育園では年長になるまであまり話しませんでした。その上、指示や集団の行動に合わせて動くことが苦手だったため、「保育園ではどう過ごしているのかな?」と気になることもありました。ところが、保育園では周囲の子どもも幼いためか、意外にも『何となくその辺りにいる』ことにより大きな問題はなく園生活を過ごしていたようです。運動会など行事の際も1人だけ輪や列を外れてフラフラ歩いていることがありましたが、先生や園児に誘導されて、これまた大きな問題になってはいないようでした。無口だったコウも5歳頃から少しずつ話すようになり、6歳になる頃には気の合う子どもも現れたようで、園に迎えに行くと「修行だー!」と言いながら友人と園庭でタイヤを押したり図鑑を読んだりしている姿を見かけるようになりました。Upload By 丸山さとこ「何だかんだ気の合う子どもと楽しく過ごしているようでよかったな」と思っていたのですが、コウが小学校に入ってからは友人関係のトラブルが目立つようになってきました。保育園のようにはいかなかった小学校時代小学校入学後、子どもたちが遊んでいる時の様子が保育園の頃とは変わってきたのを感じるようになりました。園児の頃は、たまたまその時に同じ遊びをしたくなった子どもたちが『何となく一緒に遊んでいるような雰囲気』で過ごしていることが多くありました。場合によっては「(遊びに)いれて」「いいよ」のやりとりすらなく、友人の輪は流動的でした。ですが、小学生になってからは『声かけをして遊ぶための集団を作る』ことや、『同じ遊びをしていた集団がそのまま次の遊びに移行する』ことが増えてきました。Upload By 丸山さとこクラスメイトから「校庭で遊ぼう!」と誘われても、コウは今したいことがあれば断ります。「今は本読むから」などと断るのであれば良いほうで、場合によっては声をかけられたことにも気づかず無視をしてしまいます。そんなコウであっても、1年生の半ばまでは何となく遊びの集団に入れてもらうこともありましたが、2年生になる頃には明確に『友だちと行動を共にすること』や『ルールを擦り合わせて共有すること』が必要になってきました。そうして遊びのスタイルや集団のあり方が変わっていく中で浮き始めたコウは、小学校高学年にかけてたくさんのトラブルを起こしました。小学生のコウは、悩んだことや困ったことをときどき親に話してくれたので、コウと一緒に振り返ったり考えたりする時間を持つようにしていました。例えば、先に書いた『友だちと行動を共にすること』についてコウが戸惑ったり困ったりした時は、以下のような会話をよくしていました。私:コウとしては、自分がやりたいことをしたいよね。順番とかのルールは守っているしね。あとは自由にしたいよって思うかな?コウ:思う。なのに自分勝手って言われることある。私:そうか。それは困ったね。コウの都合に対して、その友だちにはどんな都合があるのかな?コウ:その友だちの都合?私:お母さん考えてみたんだけど、遊んでいた友だちが移動する時にコウがついていかないのであれば、その子はまた新しく遊ぶ相手を確保しなくちゃいけなくなるんじゃないかな。コウ:それはそうだね。私:そんなことが何回もあったら、その子は次からどうするかな?コウ:うーん……『最初から違う子に声をかけたらずっと遊べる』ってなるか……。Upload By 丸山さとここのように状況を推測して共有したあとは、コウに「どうしたい?」と聞くようにしていました。コウが「それなら僕も1人で遊んでいたほうが自分のペースで遊べていいな」と思うのであれば、それに対するメリットとデメリットを並べて一緒に考えます。・友だちの繋がりを持っておかないとサッカーやキャッチボールなどの1人ではできない遊びの時に困るかもしれません。自分にとって都合の良い時だけ仲良くしよう!とはいかないからです。・一方、あまりに無理をして友だちのペースに合わせていると、「ちっとも楽しくないし疲れる!」となってしまうかもしれません。・ノリが合って楽しいけれどヒートアップしやすい友だちとは、トラブルも起きやすくなります。そのため、「自分の今のコンディションはどうかな?」「自分たちは楽しいけれど、周りはどうかな?」と広く考える必要が出てきます。そうしてクラスメイトとの関わりを体験し考えていく中で、コウは「ここはもう少し周りに合わせたほうが良さそうだな」とか「これは譲りたくないな。どう言ったらいいのかな?」というように、少しずつ試行錯誤していくようになったそうです。成長にともない解決する悩みもあれば、新たに増えた悩みもありますもちろん、現実はそこまでシンプルではありません。特に中学年以降になると、“相手も本当は嫌だけど我慢をしている”とか“力関係でNOを言いにくい状況である”などの複雑な場面も増えてきました。それでも、高学年になり周囲の子どもたちも成長して落ち着いていくことで、揉めている時のコウとは距離を置いたり言い合いを避けたりするようになりました。その結果、コウも周囲からの刺激にパニックになることなく冷静に自分を振り返ることが増えてきたようです。Upload By 丸山さとこ小学校高学年に入り、ふと周りを見た時に、『あれ?僕だったら怒るような関わりでも、みんな怒ってないな?』『怒ってる時や嫌な時の僕の表現は、みんなよりも激し過ぎる?』と気づいた時があったのだとコウは言います。その甲斐あってか、6年生の担任の先生との面談では「彼はすごく成長しましたね!周りとのトラブルも減りました」とホッとするお話をうかがいました。これで「コウも成長しました!めでたしめでたし~‼」……となるわけではなく、・趣味のプログラミングや音楽で友だちができたけれど、休み時間や部活中も学校貸与のタブレットを手放せなくなり大問題に発展・趣味の合う女友だち数人と過ごすことが増えて『男子のノリが荒っぽくて苦手』と言うようになる・女友だちと2人で出かけて「デート?」「彼女じゃん」と言われるなどなど、大小さまざまなトラブルや悩みは相変わらず続いています。成長や変化があればあったで、そこにはまた違った形のトラブルや悩みがあるのだなと思います。トラブルや悩みは少ないほうが私としては安心ですが、「トラブルや悩みが変わっていくのは成長も含めた変化があるからなのだろう」と心の端にとどめて、コウのこれからを見守っていきたいなと思います。Upload By 丸山さとこ執筆/丸山さとこ(監修:室伏先生より)保育園から中学生までのお友だち付き合いについて、詳しくお話しいただきありがとうございました。コウくんとさとこさんが一緒に、友だち関係の悩みやトラブルを振り返り、考える時間を持てたことはとても素敵ですね。神経発達症のお子さんの中には、他者の複雑な感情を想像したり、微妙な表情の変化を感じ取ることが難しい子もいます。そのため、思いやりの気持ちや優しい気持ちを持っていても、相手の気持ちがうまく理解できず、トラブルになることもあります。こうした場合、相手の気持ちを代弁したり、状況を整理して「もし自分だったらどう感じるかな?」と考えてもらうことは有効な手段です。説明や指示を与えるのではなく、ヒントを伝えてコウくんに自分で考えてもらい、コウくんの気持ちや意見を尊重するという関わりがとても素敵だなと感じました。前の記事はこちら(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
2024年11月25日いざ就学相談へ!家族の希望は通る?知的障害(知的発達症)を伴うASD(自閉スペクトラム症)と診断されている長男りー。年長になってすぐ、就学先をどうするかについて検討することになりました。夫婦で話し合い、実際に学校を見学した結果、公立の特別支援学校を希望することにしたわが家。家族の希望が決定したあと、いよいよ地域の就学相談に臨みました。就学相談とは、地域を担当する相談員さんが子どもの状態や成育歴を確認した結果をもとに、教育支援委員会が就学先の判断を行うというもの。私たちが相談員さんと話をしている間、りーは別室に通され、できることなどを確認するテストを受けたようです。私たちは、りーの状態を5段階(できる・補助があるとできる・できるときとできないときがある・ほとんどできない・できない)に分けて、相談員さんの聞き取りに答えていきました。Upload By かし りりあ後日就学相談の結果が届き、私たちが希望した通り、公立特別支援学校への就学が適当とのことで、りーの就学先が決定しました。就学準備はまだまだ終わらない!理想の「放課後等デイサービス」を探してこうしてめでたく就学先は決定したのですが……次はりーが小学生になってから通うための放課後等デイサービス探しが始まりました。役所からもらった一覧表にはたくさんの事業所の名前がずらり……。りーに合っていそうなところや私たち夫婦の希望を話し合い、こういうところがいい!という私たちなりの理想ができました。Upload By かし りりあ・遊びを通して体力づくりができるところ・季節の行事があるところ・りーが楽しく過ごせるところこの3点のポイントをもとに何か所かの事業所を探し出しました。早速連絡を入れて見学の予約をしたのですが、ここからがなかなか大変でした……。理想通りの施設にはなかなか出合えない…でも求める条件は譲れない!まずは運動療育を中心に行っている施設に見学に行きました。中に入ると、ダンススタジオのような鏡が一面に広がっていました。自分の姿を見ることが大好きなりー、楽しくすごせるかな?と思ったのですが、りーは体験を拒否。活動は時折見るのですが、参加は嫌だったようです。続いて見学したのは遊びが充実しているという施設。1か所目と比べると施設内はあまり広くありませんでしたが、りーは見学中も嫌がることなく、本を読んで過ごしていました。その日は発語のない子が通所していたので、見学の間、そちらの様子をそれとなく伺っていた私。その子と一緒に過ごしている先生がいましたが、子どもへの声掛けが少ないことが気になりました。たまたまだったのかもしれませんが、「もしかして、発語のないりーにも、あまり声をかけてもらえないのかな」と感じてしまい、こちらの施設に通っても、りーが楽しく過ごせないかもしれない……という印象を受けました。Upload By かし りりあこのように、2つの施設を見学させてもらいましたが、いずれもピンとこなかった私たち。しかも、私の中で新たな条件ができてしまいました。Upload By かし りりあそれはりーが個別にすごせるスペースがほしいというものでした。というのも、りーは見る力が強く(パズルなど数回見るとすぐに完成させることができます)、それが長所でもある反面、いろいろなものが見えるがゆえに注意力が散漫になりがちです。当時りーが通っていた療育園では、課題を行う際には一人ひとりの間に仕切りがあり、個別の環境で集中して取り組めるようにしていただいていました。それまで見学した施設には個別のスペースがない、もしくは少ない印象を受けたので、りーが集中して活動に参加できないのでは、と考えたのです。そして3か所目、行事が充実しているという施設を見学しました。こちらは勉強や課題を行う際には机に向かって行い、公園遊びなどの戸外での活動もさかんとのことでした。見学した日は室内遊びをする日だったので、みんなで賑やかにドッヂボールを行っていました。声が大きいところは苦手なりーですが、すっかりなじみ表情も楽しそう。私たち夫婦の理想にも合っているこちらの施設に通うことに決めました。Upload By かし りりあそして後々、以前りーが通っていた児童発達支援から放課後等デイサービス新設のお知らせが来ました。誘ってくれたのはりーを幼い頃見てくれた先生。そちらも見学したところ、個別スペース、行事や体力づくりなど私たちの理想もかなっていました。そして何より「りーの成長を今後も見させてほしい」という先生の言葉にうれしくなり、こちらの施設にも通うことになりました。こうして2つの施設を併用することに決めた私たちですが、放課後等デイサービスの先生からあるおすすめを受けました。相談支援員の方についてもらったほうが良い、と……。そちらの話はまた別の機会に書いていきたいと思います。執筆/かしりりあ(監修:室伏先生より)りりあさん、就学相談や放課後等デイサービス探しについて詳しく教えていただき、ありがとうございました。就学相談に関しては、見学がとても大切ですが、教育委員会が方針を示してくれるので、進む方向が見えやすいかもしれませんね。一方、放課後等デイサービスの情報収集はご家族のご負担が大きく、活動内容も多岐にわたるため、大変だと感じられているかと思います。実際の体験を通じたこうした情報は、とても参考になりますね。また、通っている発達支援施設や医療機関のスタッフ、地域の窓口(保健センターや子育て支援センター、発達障害者支援センターなど)に相談してみるのも、一つの方法かもしれません。お子さんの特性やご家庭の希望に合った支援や環境が見つかりますよう、お祈りしています。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2024年11月24日次男の宿題が気になる、視覚優位の長男…3歳の時にASD(自閉スペクトラム症)と診断された長男けんとは、現在小学3年生。特別支援学級の情緒クラスに在籍しています。そして、発達障害グレーゾーンの次男ゆうきは小学1年生。通常学級に在籍しています。きょうだい2人とも、宿題は基本的に毎日3種類。算数の計算問題、国語の漢字(次男ゆうきは平仮名など)、そして国語の音読です。2人、それぞれが通っている放課後等デイサービスには、宿題タイムがあります。算数が好きなけんとは、算数の宿題のみ終わらせて帰ってくることが多く、残りの宿題は家でやります。次男ゆうきは宿題を全部終わらせて帰ってきます。放課後等デイサービスに行かない日は、2人とも家で宿題をします。Upload By ゆきみ家庭学習を含め宿題などの勉強をする際、視覚優位な長男けんとは、次男ゆうきがやっている勉強がどうしても気になってしまうので、勉強するのはそれぞれ違う机。長男けんとはリビングダイニングにあるダイニングテーブルで、次男ゆうきはリビングにある机でやっています。宿題をやる気になったポイント…わが子の場合Upload By ゆきみ学校や放課後等デイサービスから疲れて帰ってくる子どもたち。宿題をどのタイミングでやれば、つらさなく「やるぞ!」と思ってもらえるのか……、子どもたちの様子を見ながら試してきました。帰宅後すぐに宿題の時間にすると、疲れがあるのか次男ゆうきの機嫌がとても悪くなり、少しでも上手くいかないと怒り出します。宿題が終わるまでにとても時間がかかってしまうのです。逆に帰宅後、遊び時間を長く過ごしたあとに宿題をすると、「もう寝たい」「お腹空いた。ご飯食べたい」となり、宿題にとりかかるのがしんどそうでした。わが家の場合、2人が安定して宿題にとりくめたのは、「帰宅」→「お菓子」→「宿題」→「動画タイム(1人5分)」にすることでした。この流れにすることを帰宅前に伝え、お菓子を食べて気分を上げたあと、「宿題をやってから動画タイムにしよう!」と伝えると、早く動画タイムにしたくてやる気満々に宿題を始めるのです。ここでのわが家のポイントは2つ。「うれしいことで宿題を挟むこと」と「家に着く前に、帰宅後の流れを伝えておくこと」。見通しをつけることにより、気持ちが安定しているように感じます。気合を入れた音読の宿題で疲弊…現在はUpload By ゆきみ長男けんとの1番苦手な宿題は、音読です。嫌がるわけではありませんが、好きではない様子。特に繰り返し、何回も同じ作品を読むことや、長い文章の時にそう感じます。好きな作品は楽しそうに読みますが、最初は声に出して読んでいても、すぐに心の中で読みだしてしまい、ただの読書になっていることも。長男けんとは構音障害があるため、発音がとても不明瞭です。しかし、いくら聞き取りづらいからといって、注意しっぱなしになってしまうと、本人も音読がつらくなってしまうだろうなと思い、最近は好きなように読んでいいことにしています(構音練習は、別で時間を取って毎日少しずつやっています)。以前は、私が付き添って気合を入れて読ませようとしていましたが、2人して疲弊してしまうのでやめました。音読なので、さすがに無言で読んでいて「読書」になってしまっている時は「聞こえないよ。ママに聞こえるように、3の声の大きさで読んでほしいなー」と声をかけています(わが家では、こども園に通っていた頃から、声の大きさを5段階の目安に分けています)。また、その日読むことになっている作品の内容によって、やる気レベルが変わってしまうことも。そんな時は私が判断して、読むページを少なくしたり、本人が読みたいところや、図書館で借りてきた本に変更したりして読んでいます。「先生からご指摘があったらやめようかな」くらい気楽にやってるので、許してくださっている先生に感謝です。書字が苦手な息子たちと、大雑把な母の宿題チェックUpload By ゆきみ私が子どもたちの宿題で一番驚いたのは、地域や学校、担任の先生によっても変わってくると思いますが、平仮名や漢字など「とめ・はね・はらい」をキレイに書くことが、重視されやすい点です。書字が苦手なわが子たちなので、私としては「結構キレイに頑張って書いたんだな」と思っていた文字が、次の日に添削されて返ってくると、直されていることも。私自身が、「宿題をやっただけですごいな」と思っているので、字のキレイさまで細かく子どもたちに言わないのですが、汚すぎて読めない文字は「これは読めないから、書き直そうか」と伝えています。そして、視覚優位で見通し不安が強い長男けんとのために、手づくりの視覚支援ツールを作成中です(半年近く作成が滞っていますが……)。「帰宅後にやること」を視覚を使って示していくためのもので、もちろん「宿題」という項目もあります。これが完成次第、活用していきたいなと思っています。執筆/ゆきみ(監修:室伏先生より)宿題にまつわるさまざまな工夫を共有くださり、ありがとうございます。お子さんが分かりやすい工夫(スケジュールを視覚的に示す、声の大きさを数字で示す)やモチベーションを維持する工夫(宿題を行うタイミングとその心の準備、音読の量や内容の調整)がたくさん散りばめられていました。お子さんが何に困っているのか、何が苦手なのか、きっとたくさん観察されて行き着いた方法なのだろうと思います。神経発達症の有無にかかわらず、お子さんの苦手なこと、負担を感じることを知ってそれに対する工夫ができると、親御さんとお子さんいずれのストレスも減らすことができて、楽しく学習を続けられますね。前の記事はこちら(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2024年11月23日小学生、中学生にスマホ(スマートフォン)は必要?まだ早い?何歳から持たせた?アンケート結果や所持率データなども今や大人においては1人に1台はほぼ持っているスマホ(スマートフォン)。ですが、いざ子どもに持たせるとなると「小学生や中学生にスマホはまだ早いのではないか、本当に必要なのか」「何歳から持たせるべきなのか」「どんな風にスマホ使用のルールを決めたらいいのか」など不安に感じることもあるのではないでしょうか。このコラムでは・「スマホの不安やトラブル」アンケート結果・何歳からスマホを持たせた?・小学生、中学生、高校生のスマホの所持率・スマホの悪影響やトラブル体験・専門家解説のスマホルールのつくり方やスマホのメリットなどをご紹介します。Upload By 発達障害のキホン今回発達ナビでは「スマホの不安やトラブル」についてのアンケートを実施しました。「スマホを持たせているが心配なことがある」が約47%、「まだスマホを持たせていないが心配なことはある」が約36%とお子さんにスマホを持たせている方、まだ持たせていない方、共に多くの方が不安を感じている結果となりました。※2024年11月22日までの結果です参考:みんなのアンケート子ども家庭庁の「令和5年度 青少年のインターネット利用環境実態調査 調査結果(速報)」では小学生の42.9%、中学生の78.7%、高校生の97.4%がスマホを利用しているという結果がでています。Upload By 発達障害のキホン参考:令和5年度 青少年のインターネット利用環境実態調査調査結果(速報)|こども家庭庁やっと所有する気になってくれたのは中3になる春休みでした。(ヒヨコさん)自宅に電話がない為、連絡手段が無く、災害等が起こった時に連絡が取れないことを考えて、中学からスマホを持たせています。(しのっぺさん)高校入学とともに家を出なければならなかったので、それを機に購入。(アールグレイさん)始まりが小5〜ガラケー。支援校高等部卒業後、スマホデビュー。(める。さん)中学入学とともに購入。(にゃこさん)発達障害や発達に特性のある子どもの課金、ゲーム・SNS依存…発達ナビ読者の方が感じたスマホの悪影響やトラブル体験。専門家からのコメントもここからはアンケートの中からいくつか回答を抜粋し、鳥取大学大学院教授で発達障害を専門とする井上雅彦先生に対応方法やコメントなどをいただきました。始まりが小5〜ガラケー。支援校高等部卒業後、スマホデビュー。(略)心配されるゲーム依存、プリカでのゲーム課金、スマホ依存、破壊と心配ごとは全てやりました。しかし全て自分の稼ぎからなので失敗重ねながら本人も学び中。知りたいことを検索したり、乗換案内やマップを使って目的地まで出かけたり買い物での電卓計算、バーコード決済、友達とのラインと便利な機能も理解して使えるようになったので持たせて良かったです。(める。さん)(井上先生コメント)理想的に活用をされていると思います。知的障害(知的発達症)がある子どもにとってスマホを活用することでスケジュールや時間管理、交通機関の利用、お金の支払いや金銭管理、コミュニケーションなどさまざまな適応スキルを補うことができると思います。一方、詐欺やフィッシングメール、悪質なアダルトサイトなどの危険性もあります。ときどき使用状況を管理したり、日ごろから相談に乗るようにし、定期的に相談をしていくと良いでしょう。中学入学とともに購入。朝起きたとたんからSNSに夢中。家族との食事よりもSNSを見ながらの食事のほうが落ち着くようです。家族の食事というものはなくなりました。また、学校のお友達とのLINEなどでは悪口を書かれたりしてもめることも。このもめたことがきっかけで登校しぶりとなってしまい、現状を把握することに苦労しました…(にゃこさん)(井上先生コメント)SNSに夢中になるというのは親としては想定外だったかもしれません。しかし、今の子どもたちは友人関係をつくっていく際に、スマホのSNSのグループは大きな影響を持ちます。その中で関係性を築くこともできれば、傷つけたり傷つけられたりといったこともおこります。傷ついてしまった場合は子どもと相談し一旦グループから離れ、SNSを見ないようにすることも一つの方法です。SNSにはさまざまな種類や機能があります。そのすべてを使うのではなく、例えばインスタグラムなどであればストーリー機能を使わない、見るだけにするなど自分にあった使い方やルールをつくっていくのも良いと思います。いま小5の息子がいます(ADHDとSLDの診断あり)。中学生になったらスマホデビューかな…とは思ってますが、正直いえば持たせたくない気持ちでいっぱいです。スマホ依存(特にゲーム依存)、紛失や破損(ほぼ確実にやらかす)、ネット虐めの当事者(被害も加害も)になったら嫌だなとも思ったり。でも短期記憶が激弱な息子にとって、上手く使いこなせれば強力な味方になることも分かるんです。自分もADHDですが、スマホの音声メモとリマインダーとアラームにどれだけ助けられてるか分からない。それだけに悩みますね…。(sacchanさん)(井上先生コメント)ゲームやSNSにハマりやすいタイプの子どももいます。その場合は最初に具体的なルールを親子でつくること、機器についているペアレンタルコントロール(親のための監視管理機能)を活用し、時間制限やアクセス制限、ダウンロード制限を行ったり、クレジット機能などが自由に使えない設定にしておく必要があります。使ってほしい機能については、具体的に操作方法を教え、生活の中で活用させることが重要だと思います。一緒に調べものをしたり、祖父母やいとことコミュニケーションをしたりしていくのもよいと思います。発達障害や発達に特性のある子どものスマホ使用のルールづくり、ネット依存問題、スマホのメリットなど専門家が回答!Q:特性のある小学生や中学生にスマホを持たせることのメリットなどが知りたいです。A:(井上先生回答)チャットGPTやAIアプリを活用することでいろいろな情報を手に入れることができます。一つのアプリからの情報だけでなく、さまざまな情報ソースを手掛かりにしてその違いに気づき、自分の考えをつくっていくことがこれからの世界で重要になってきます。チャットGPTやAIアプリの結果を鵜呑みにするわけではなく、家庭や学校でそれらを活用しながらどうやって情報を整理し、自己決定していくのかの教育が必要になってくると思います。Upload By 発達障害のキホンQ:子どもがネット依存のようになってしまい、家にいる間ほぼ1日スマホをいじっています。とりあげると暴れたり暴力に繋がってしまいます。どう対応したらいいでしょうか。A:(井上先生回答)スマホをいじると言ってもその内容によって対応方法は異なります。まず何をしているのかを親が知ることが大事です。仮にここではスマホのゲームだとします。スマホゲームだけが本人の楽しみになってしまうとそれが奪われることは本人にとって人生を奪われることに等しいと感じてしまうこともあります。また、禁止されることは本人自身を否定されることのように受け止められる場合もあります。一旦好きなように使える状況に慣れてしまった場合、強制的に取り上げたり禁止するだけでは暴力になってしまう場合もあります。また、たとえ成功しても勉強するようになるとは限りません。さらにこのことで親子の信頼関係を悪化させてしまいかねません。スマホゲームに入りびたること自体を問題にするのではなく、食事や入浴、睡眠といった生活習慣を守ること、学校を含めた外出や社会参加ができることが大切です。集団で行うスマホゲームの中には夜中でないと難しかったり、自分だけが抜けることができない場合もあります。そういったことを話し合いながら一緒にルールを考えたりスマホゲーム以外の余暇を探したりしていくことが考えられます。Upload By 発達障害のキホンQ:小学生、中学生のスマホのルールづくりに悩んでいます。一日何時間、どんな制限を付けるかなどルールが知りたいです。A:(井上先生回答)1日何時間が良いかということに対してはそれぞれの年齢や使用内容、目的などによって異なると思います。親の立場から言うと宿題のあとのちょっとした息抜きとして30分や1時間といった声がよく聞かれますが、子どもに聞くと3時間とか5時間と言ってくることが多いです。親と子どもで互いに感情的にならず、なぜその時間でなければならないのかを納得しながら目標時間を決めていくことが大切です。スマホのルールづくりには正解はありません。子どもの特性やスマホの使い方を加味した時間設定、最初からルールを決める、子ども自身がトラブルを体感してからルールを決めるなどそのご家庭に合ったルールづくりがあると思いますが、どの場合でも「子どもと親とがルールの必要性や目的を共有し、話し合ってルールをつくるということ」が非常に重要です。Upload By 発達障害のキホンスマホやゲーム、SNSなどの関連コラムはこちらから(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。SLD(限局性学習症)LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。
2024年11月23日どんな対応が最適解?私から見たスバルのチック最初にスバルにチックが現れたのは小学校に上がる年の春休みでした。いつもと変わらぬ環境でルーティンをこなすことで安心するスバルにとって、服装も持ち物も朝のルーティンも幼稚園時代と一変する小学校への入学は不安を感じる出来事でした。それに加えてコロナの流行1年目だったので入学式が延期となり日程は未定に……これは先の見通しが立たないことが苦手なスバルにとって大きなストレスとなりました。そんなある日、スバルが首を激しく左右に振っていました。常同行動の仲間か感覚を楽しむ遊びなのかと思いました。「クセになるからやめときな」と注意したものの、1日に何度も首を振っていました。その後も首を振る日々が続きました。その時はその症状とチックが結びついておらず、食事中に首を振りはじめた時にはキツめに注意したりもしました。しかし、その後も続く首振りに「これはわざと首を振っているわけではない」と気づき、ようやくチックの存在に辿り着きました。チックだと気づいたあとは、インターネットや本に書いてあった「本人に指摘せずに見守る」を実践しました。激しく首を振るスバルが視界に入ると私も不安になり、つい声をかけたくなりますがグッとこらえて過ごしました。そうこうしているうちに入学式の日程が決まり、慌ただしく入学式を迎え、汗ばむ季節に新学期が始まり、通学が日常になった頃いつの間にかチックはおさまっていました。その後もスバルの心の動きに合わせてチックは顔を出しました。スバルはチックが出ていても何も言わないので、自分が首を振っていることに気づいていないのだと思いました。チックが出ていることについては本人に指摘せず、チックの原因となる不安やトラブルを解消することで対応しました。不安がなくなるとチックはいつの間にかおさまりました。こうした経験を重ね、私は「スバルにチックが出ていることを悟られず、なんてことない顔をしながら迅速に不安を解消するのが最適解」だと思いました。実は気づいていた!?スバルから見たチックスバルは自分が「気づくと首をブンブン振っている」と気づいていました。ブンブンしていると私が心配そうに「最近学校はどう?変わったことはない?」と聞き取り調査をしに来るので「ブンブンは良くないことなのかもしれない」と思っていました。しかし私が明らかに首をブンブンしていることについて触れないようにしているので、スバルは「これは話してはいけないことだ」と感じ、このことについて話さないようにしていました。それに以前は「クセになるからやめな」と注意されていたので、指摘されないならそのほうが良かったのです。Upload By 星あかり3年生になったある日、いつもは時々出るだけのブンブンが1日中おさまらなくなりました。クラスでのトラブルがきっかけでブンブンが出て、トラブルが長期化したため悪化したのです。スルーを決め込んでいた私が思わず両手で顔を支えてしまったほど、激しい動きで首を振っていました。Upload By 星あかりその時はじめて「チック」という言葉を使って今のスバルの状況を説明しました。そして「専門家へ相談に行こう」と病院へ行く提案をしました。スバルは「専門家」に対して絶対的な信頼があるので「専門家に相談すればチックが良くなるかもしれない」とホッとしていました。スバルの中でチックの悩みは終わっていなかった!チックの相談をしようと思い立ち小児神経科や児童精神科へ予約の電話をしたものの、最短で半年後の予約しか取れませんでした。そして初診までの半年の間にチックの原因となったクラスでのトラブルが収束に向かって行き、それに伴いスバルのチックもおさまりかけていました。初診の日、私の中ではチックは終わったようなものだったので、その時抱えていた別の困りごとをメインに相談していました。しかしスバルの中ではチックの悩みは終わっていなかったのです。スバルは少し緊張した顔で「あの!チックをなくす手術ってできますか?」と聞きました。先生は「チックをなくす手術はないけど……」と断わったあと、スバルに分かりやすくチックについての説明をしてくれました。ほかにもスバルが質問した「チックとトゥレット症候群の違い」なども説明してくれました。最後に「チックを治す手術はないが、チックの原因となる気持ちを落ち着かせる薬や漢方はある。今はその時ではないけど、またひどくなったら相談してほしい」と話してくれました。スバルは漢方が何か知りませんでしたが「漢方」という強そうで頼もしい響きに食いついていました。「チックを気にしなくて良いんだよ」「そのうちおさまるよ」という言葉より「いざとなったらぼくのバックには専門家と漢方がついている」ことがスバルにとっては大きなお守りになりました。私はスバルがチックについてそこまで思い悩み、下調べをし質問を用意し、今日という日に挑んでいたとは知りませんでした。(私がチックについて尋ねにくい環境をつくってしまっていた)と思い、自分の不甲斐なさに涙が出ました。病院からの帰り道、スバルに謝ると「お母さんより専門家に聞いたほうが確実だと思って」と返ってきました。たぶんそれも本心ですが、どちらにせよ不甲斐ない……。スバルが相談しやすい環境づくりを心がけるようにその後、徐々に首を振るチックは見かけなくなり今では稀に顔を出す程度になりました。それと入れ替わるように「ティントン」と声が出るチックが出現しました。前回の反省を踏まえて、あえて日常でチックの話をすることでさりげなく相談しやすい環境をつくりつつ、かと言って指摘しすぎず……を心がけています。私的にはかなりさりげなくできているつもりですが、スバル目線で見て見ないと本当のところは分かりません。前の記事はこちら執筆/星あかり(監修:新美先生より)スバル君のチックにまつわるエピソードを聞かせていただきありがとうございます。チック症は、チックが起きやすい脳の体質的なものが基盤にあり、就学前後頃に発症し、多く出たりほとんど出なかったりの調子の波があり経過していきます。ストレスや不安があったり、疲れがたまったりすると悪化することが多いので、ストレスのバロメーターになっていたりもします。またチックが多い時期に、学校よりも家でテレビを見ているような場面でより強く出るお子さんも少なくありませんが、これは家でストレスがあるのではなく、軽く緊張しているような場面より、ほっと一息したリラックスしている場面で出やすいお子さんが多いです。チック自体は止めようとして、ほんのわずかな間なら我慢することができないわけではないのですが、ずっと我慢していることは困難です。このため一般的な対応として、「やたら指摘せず、そのまま見守る」と言われています。そして、背景にあるストレスや不安、疲れがあるようならそれらにアプローチするということも大事で、これらについて星さんの対応は適切だったと言えます。ただ、幼い時期は本人がチックに気づいていないこともあるかもしれませんが、たいていの場合はチックがあること自体には気づいていることが多く、そのことを全く話題にしないことで、「話してはいけないこと」とお子さんがとらえてしまうということもあるかもしれません。一定の時期が来たときに、専門家からチックについての考え方や対策などについて説明してもらい、調子が悪い時に相談できるようにしておけたのは、スバル君にとってもとても良かったのではないかと思います。また、ある程度の年齢であれば、チックが悪化した時に、何がストレスになっているかな?ということ自体を、保護者の方や学校の先生などと一緒に考えたりすることで、ストレスに対処する力をつけることにもなるかもしれません。チックが悪化して、日常生活に支障がある場合は、一時的に薬物療法をすることもありだと思います。そういう点でも、医療につながっておき、いざというときに相談できる体制がつくれたのは安心ですね。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2024年11月22日子育ての悩み、何から手をつけたらいいか分からないときLITALICO発達特性検査を受検される方は、おそらくなんらかの課題や悩みがあって利用されると思います。以前、検査結果にはその具体的な解決のヒントが紹介されているとお話ししました。今回は、実際にレポートを読んだ際に、何から取り組むかをテーマにお話しできればと思います。お子さまの課題や困りごとがいくつかある場合、どれから取り組んでいいのか迷いますよね。あるいは頑張ってあれこれ試してみたけれども、なかなか効果が見えにくく、疲弊するという方もいるのではないでしょうか。取り組むべき課題の優先順位のつけ方や、どのような対応方法を選び何から試すのか、家庭で考えて選択していくのはなかなか難しいことだと思います。Upload By LITALICO発達特性検査 編集部検査結果レポートを、お子さまについての「辞書」だと考えて家庭で取り組む際にLITALICO発達特性検査をヒントにしていただけるといいなと思っているのですが、その理由の一つが検査結果のレポートにあります。LITALICO発達特性検査のレポートの量は、検査対象のお子さまによって変わります。困りや特性が強い傾向のある場合や、複数の分類の特性があるお子さまの場合には、それだけ検査結果も多く出力されることになります。PDFにした場合、40ページくらいの方から、多い方で100ページを超える方もいらっしゃると思います。これは、一般の心理検査に比べると、検査結果のレポートの量としてはかなり多いでしょう。LITALICO発達特性検査のレポートは詳しい内容が広い分類にわたって出力されますし、解決法もできるだけ多くの選択肢が持てるように複数提示されるようになっています。この量を受け取るとびっくりするかもしれないですね。ちょっと多いな、読むのが大変だな、と思われる方もいるかもしれません。せっかく検査を受けたのだから、しっかり読みこんで、対応方法を試さないといけないと考える方にとっては、量が多いとプレッシャーに感じるかもしれないですね。検査結果レポートの量が多いと感じる場合は、辞書のように気になるところを調べ、いくつか載っている選択肢から必要そうなところを選ぶというイメージで使うといいと思います。「お子さまのサポート辞典」、あるいは「優先順位をつけるためのヒント集」というイメージです。私は、結果が出ても、すぐにすべてを読まなくてもいいのではないかと思います。逆に、検査を受けたときにさっと目を通して終わりではなくて、手元に置いてずっと使ってほしいとも思っています。対応方法もいっぺんに取りかからなくても大丈夫です。そう考えていただくと、ボリュームが多かったとしても、そんなにプレッシャーにならないのではないでしょうか。何から始めればいいか分からない場合の優先順位量が多くて何から始めればいいのか迷う場合の具体的なアドバイスもお伝えします。課題が多い際には、取捨選択をして優先順位をつけていくことが大事なのですが、どうしても「一番苦手なことや、一番目立っている課題から」と考えがちですね。でも私は、どちらかというと、ちょっと困っていて、ちょっとやり方を変えられそうなことが、まず試してみるにはちょうどいいと思います。一番困っていることや苦手なことって、なかなかすぐには変えられなかったり、お子さまにとっても負担が大きいことでもありますよね。苦手なものよりは比較的得意なものから取り組むと、うまくいきやすいですし、成功体験になります。また周りの人もどうしたらできるようになるか、共通理解をしていけるといいですね。そのためにも、手をつけやすい課題がおすすめです。大きな目標に取り組む場合、課題を分解して小さな目標にしていくといいと思います。うまくいかなかったとしても、それは失敗ではなくて、どうしてうまくいかなかったか、より適切な方法はないか改善点を考えるための材料になります。周りの方と話し合ったり、相談して別の方法を試すための出発点として使っていただくのもいいですね。どれが試しやすいか悩むなというときや、やはり今一番困っていることから取り組みたいという場合には、ぜひ、専門家に相談して一緒に取り組むといいと思います。年齢や発達段階によっても変わる優先順位の考え方もう一つのポイントとして、その子の発達段階や環境などによって、取り組む優先順位や手段を選んでいくといいなと思っています。特に、スキルの獲得と環境調整について、この観点が大事になってきます。詳しく説明しましょう。サポートの方法として、大きく挙げられるのがは本人がスキルを獲得できるように促していくという考え方と、周りを本人に合わせていく環境調整です。両方大事な考え方なのですが、「どちらをより重視すべきか」とよく聞かれます。時々誤解をされることもあるので、あえてお話しすると、これは特性のあるお子さまにとって、苦手とどう向き合うかという話にもつながると思うのです。苦手を克服するために訓練する・我慢する、あるいは苦手なところはすべて環境調整で補うというふうに両極端に捉えて考えると、なかなかうまくいきません。スキルトレーニングだけでは解決できず、無理や疲弊につながる可能性があったり、環境調整だけではお子さま本人にとって本来獲得すべきスキルが身につかなかったりするからです。スキルトレーニングと環境調整、どちらか一方だけではなく、そのときの発達段階や環境に応じた方法を選択したり、両方をミックスしていくことがポイントになります。もしかしたら、保護者の方だけで、まずどちらからやってみるか決めたり、ちょうどいい落としどころを見つけるのは意外と難しいかもしれませんね。やってみてうまくいかない場合や、対応方法の選択に葛藤した場合、LITALICO発達特性検査のレポートを支援者や専門家に見せることで相談もしやすくなります。年齢が低いお子さまの場合、発達段階の途中としてスキルを獲得するということがまだまだ必要な場合もあります。また、発達段階を飛ばしていきなり難しいことに取り組むのも、無理があるということもあります。そのときにちょうどいい、「ちょっと頑張ればできそう」に取り組んで、スキルを獲得していくということが重要になってきます。逆に、年齢が上がってくると、頑張って苦手なスキルを獲得することよりも、周りや本人が自分の特性を理解して、うまく付き合っていく方法を身につけるというほうが大切な場面も出てきます。例えば、うまくいかない場合に別の方法に切り替えたり、周りに助けを求めることができるスキルをつけていくという方法です。LITALICO発達特性検査で紹介されるサポートの方法や、困りごとの事例は、3歳から高校生の年代まで、それぞれの年齢に応じた内容で出し分けられます。なので、同じ特性であってもお子さまの年齢によってレポートの文章や内容が変わるのです。その理由の一つが、発達段階や環境などに応じた対応方法を選んでいくという、先ほどお伝えした観点にこだわっているからです。幼稚園で現れる困りと高校での困りは当然違うし、その解決法やサポートも変わりますよね。ですので、同じ特性や困りごとであっても、年齢に応じた適当な例示やサポートの内容を提示できる仕組みにしています。例えば、不注意の特性があるお子さまに向けての「分かりやすい手がかりを活用する」というサポートについてを例に挙げてご紹介します。分かりやすい手がかりを用いることで、指示や課題を理解しやすくなるという方法なのですが、その年齢に応じて、よく挙げられる悩みや課題を例示として提示し、その対応方法を紹介しています。未就学のお子さまの場合は、口頭でのコミュニケーションでの困りごとに対し、「話し始めるときは名前を呼び、注意を引きつけてから話す」という方法が示されます。中学生の場合は、授業での場面を想定した事例で、「『黄色の文字は重要単語だよ』『下線部は間違いやすいから要確認だよ』など強調して注意を促す」という方法が紹介されています。ほかにも未就学のお子さまの場合、具体的にボタンをとめる練習方法を挙げていたり、その年齢でのスキル獲得でよくある課題を多く取り上げています。また、サポートの方法も、手助けの量が多めだったり、発達段階に応じて無理のないようなやり方を提示しています。年齢が上がってくると、本人が自力でできることを目指した対応方法も多くなります。あるいはどうしても難しい場合は人に助けを求めたり、道具を変えてみたり、合理的配慮を求めたりといったスキルや方法を多めに紹介したりといった工夫がされています。受検されたときのお子さまの年齢で検査結果が出るので、1回の受検ではおそらく保護者の方は気づかないとは思うのですが、もし今後、成長につれて再受検されると、同じ困りごとや特性であっても、レポートで提示される内容が変わる場合があるかもしれませんね。このように、お子さまの発達段階やライフステージに合わせて、スキルやサポート方法を変えていくという視点もヒントにしていただけるといいと思います。「これならできそう」を見つけて試すUpload By LITALICO発達特性検査 編集部今回は優先順位についてお話ししましたが、LITALICO発達特性検査のいいところは、レポートの段階ですでに優先順位がつけやすくなっていると言うことが挙げられます。質問に回答することで情報がお子さまに合うように絞られること、その中から選択肢が選べるということです。複数の選択肢が記載されている意味としては、実際には、お子さまにとってどれが合うか、どれが取り組みやすいかは試してみないと分からないということがあります。また、それぞれのご家庭でその子や状況に合うように、さらにチューニングしていく必要はあると思います。それでも、家庭でまずやってみる場合、十分ヒントになるのではないでしょうか?受検された方には、検査結果を手元に置いていただいて、時間のあるときにパラパラ見ていただければと思います。きっと「これならできそうかも」「ちょっと試してみようかな」「支援者の方に共有すると役に立ちそう」というところが見つかるのではないかと思います。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
2024年11月21日直前まで就学先に悩み……。知的障害特別支援学級に通う小学1年生の息子DQが82で境界域の小学1年生の息子は、現在知的障害特別支援学級に在籍しています。問題もなく、毎日楽しく通学しています。交流級と特別支援学級、だいたい半々くらいで過ごしているようですが、やはり息子は特別支援学級を自分の居場所と感じているようです。ですので、就学先選びはうまくいったのではないかと非常に満足しています。このように結果からみれば正解だった選択ですが、息子の就学先をどうするかについては直前までかなり悩みました。比較的早くから「息子には特別支援学級が合っているだろう」と思っていたのですが、それでも周りの意見を聞いたり、学校見学、就学相談する度に「本当にいいのかな」と揺らぐ気持ちはなかなか消えなかったのです。そんな就学にあたってのわが家の体験談です。少しでも皆さんの参考になれば幸いです。先生からの「通常学級でもいけるかも?」、知人からの「楽なほうに行くと、どんどんそっちに流れる」。さまざまな意見を聞いて私は、息子が年中の時点から、特別支援学級を視野に入れていました。ですが、周りの方の意見はさまざまで、「本当に特別支援学級がいいの?」という思いは浮かんだり消えたりと、最後までかなり悩みました。まず先生方の意見もさまざまでした。息子のこども園で発達支援センターとの窓口役をしてくれていた先生からは、「●●くんはできることが増えてきたので、通常学級でも問題なく過ごせるのでは?」と言われていました。一方、息子の発達検査をしてくれていた発達支援センターの担当者の方は「正直、迷うところです」とのこと。プロの方の意見が合わず、いったいなにを基準にしたらいいかとても悩みました。Upload By ユーザー体験談また、知人の発言も私を揺さぶりました。息子の就学先で悩んでいる頃、よく行くお店のなじみの店員さんに、ついポロッとその話をしました。すると、偶然にもその店員さんの娘さんが特別支援学級に通っているとのことで、熱心に話を聞いてくれました。「で、あなた的には、どっちがいいと思ってる?」と聞かれたので、「息子の特性を考えると、知的障害特別支援学級が合うのではないかという気がしている」と答えたのですが、それに対して、その人から「でも、最初から特別支援学級を考えてるのって、子どもに楽をさせていることになりませんか?」と言われたのです。その方は、娘さんが小学校高学年のとき、担任の先生から特別支援学級への転籍を進められ、それを機に受けた知能検査の結果も踏まえて転籍したのだそうです。ですが、そのことに今も納得していないようで、「中学校でも特別支援学級に進むと、進学の幅が狭くなる可能性もあるから、中学校では通常学級に戻したい」という思いがあるようでした。なので、息子の子ども園の先生が「通常学級でもいけるのでは?」と言ってくれているのに、私が特別支援学級という選択肢も視野に入れているのが受け入れられなかったのだと思います。私はその人の考えに影響されることはなかったのですが、特別支援学級を選択することが「子どもに楽をさせること」だという言葉は嫌な感じに引っかかりました。多分、そういった考えは、子どもをとりまく社会に少なからずあるだろうと実感したこともあり、余計に引きずってしまったのだと思います。その後、夫にその話をしたら、「仮に楽させていたとしても、別に良いのでは?今の息子がどこならより良く学べて、学校生活を楽しめるかで決めれば良いと思うよ」と言われ、その通りだなと思いました。また、公立中学校で教員をしている友人にもその話をしたら、「通常学級に入っても、その環境が子どもに合わない場合、二次障害で不登校になり苦しむこともある」とも言われました。私が信頼する二人もそう言っているんだし……と、改めて特別支援学級という選択を前向きに捉えることができました。Upload By ユーザー体験談学校見学、聞けばよかったと後悔していることと、息子の残念な反応見学は通常学級と特別支援学級の見学に行くことになったのですが、今も後悔していることがあります。小学校の見学を申請する際、見学したい学級を選択する必要があり、私は「通常学級」「知的障害特別支援学級」「自閉症・情緒障害特別支援学級」のすべてを選択していたのですが、こども園の先生から「自閉症・情緒障害特別支援学級の見学は必要ないと思います」と言われ、「あ、そうなんだ……」と思って素直に従い、その後、息子の就学先を「通常学級」か「知的障害特別支援学級」かの二択に絞りました。結果的に、うちの子には知的障害支援学級が合っていたと思うので良かったのですが、なぜ「自閉症・情緒障害特別支援学級の見学は必要ない」という判断だったのかは、確認すべきだったと思いました(こども園の先生がいい方だったので、面倒な親だと思われたくないという思いが働いてしまいました)。今でも後悔はあるので、みなさんは気になること、なぜ?と思うことはしっかりと聞き返すことをお勧めします!また見学で息子の反応を参考にしたいと考えていましたが、息子がかなり場所見知りをしてしまいました。通常学級、特別支援学級両方とも見学を嫌がって、ものの数分で帰りたいと言いだしたため、結局見学は私だけですることになってしまいました(その間、教頭先生が教室の外で息子の相手をしてくださいました)。このような場合は、2度目、3度目の見学を希望すれば良かったと思っています。「私の言ったことで息子の進路が決められてしまう?」緊張の就学相談そしてついにやってきた就学相談。私の住んでいる市の就学相談では、息子が担当の方と遊んでいる間、保護者とこども園の先生が相談担当の先生方(公立小学校の特別支援学級の先生、公立中学校の特別支援学級の先生、特別支援学校の先生の3人でした)と話をするシステムでした。細かな質問項目は特になく、割と自由に喋る感じだったので、「私の言ったこと(言わなかったこと)で息子の進路が決められてしまうのでは」と不安でした。あとで振り返って、「息子のできることよりもできないことのことばかり言い過ぎてしまったのでは……」とも感じました。そして待ちに待った自治体からの答申結果。緊張しながら見てみると、「知的障害特別支援学級が望ましい」というものでした。自分でもこれが息子にとって最善の選択肢だと分かっていたのにもかかわらず、答申結果を見て少し落ち込んでしまったのが、われながらめんどくさい奴だと思いました。でも、夫と「今の息子にとってベストと思える選択を前向きに考えよう」と話し合い、知的障害特別支援学級の在籍を決めました。Upload By ユーザー体験談「あれだけ悩んで出した結果だから!」と納得できた進路選択息子は楽しく通ってくれるだろうかとドキドキしていましたが、実際に小学生になり楽しそうに登校する姿に心から安堵しています。当時はあんなに悩んだのに、あるいは、あれだけ悩んだからか、今は息子に合った選択ができたことにとても納得できています。これからもきっと悩んだり迷ったりする場面はあるでしょうが、悩みつくし気になることは遠慮をせず聞いて、息子の幸せな毎日を守る選択をしていけたらと思います。Upload By ユーザー体験談イラスト/ネコ山エピソード参考/苗(監修:井上先生より)知能指数や発達指数が境界域にある場合、通常学級か特別支援学級かは悩ましい選択です。特別支援学級を考えられる場合、自閉症・情緒特別支援学級と知的障害特別支援学級の二つの違いを理解し、実際に両方の学級を見学させてもらうのがお勧めです。これらの在籍は変更することも可能ですが、中学校の特別支援学級選びの中で、自閉症・情緒の特別支援学級を選ぶのか、知的障害の特別支援学級を選ぶかは、そのカリキュラムの違いから高校進学にも影響してきます。発達レベルや学習の意欲、本人に合わせた柔軟な教育が可能か、将来の進路なども含めて総合的に考えていくのがよいと思います。地域によって違いがあるので、先輩の親御さんたちの情報も参考になるかもしれません。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。
2024年11月21日志望校けってーい!でも母は不安…小さい頃から「生きものハカセ」を目指していたタケル(ASD・現在24歳)、高校2年生の夏にはオープンキャンパスなどにも参加して、早々に志望校を絞り込んでいました。タケルが選んだのは大阪にある小規模な大学で、希望する学科の合格予定者は6名です。たった6人……!?上位6人に入らないといけないの!?母は震えましたが、タケルは涼しい顔。「生物で100点とればいいんだよ!」と言います。そりゃそうだけどさあ……。Upload By 寺島ヒロ理学部全体では50人位採用しているらしいのですが、学部学科ごととなるとそれぐらいなんだそうです。ちなみに商学部は区分けがなく200人採用とのことでした。「お試し一人旅」で慣れよう受験でもう一つ私が不安だったのが、慣れない受験旅でタケルがパニックになって、テストがまともに受けられなかったらどうしようということでした。そこで、「3年生のゴールデンウィークに一人旅をしたい!」とかねてより言っていたタケルに、大阪の受験校を下見に行ってもらうことにしました。当時のタケルは一人で電車やバスに乗る練習はしていたものの、外泊や長距離移動は初めてでした。不安で嫌がるかな?とは思いつつ、私が「旅行計画を自分で組んで、時間がかかってもいいから自力で回っておいで」と伝えると、タケルは「大阪、一人で行ってみたかったんだ」と喜び、あっさり出発してしまいました。ちなみに宿だけは駅近に私が手配しました。好きな事には頑張れる!タケルが行きたかったところとは?さて、タケルのスマートフォンにはGPSがついています。心配で心配でたまらない夫は、ずっと片手にスマートフォンを持ってうろうろしていましたが、2日目になって「タケルのスマホが壊れている」と言いだしました。夫曰く「大阪に到着した日は、学校まで行って、近くの公園で半日過ごしてからホテルに帰ったみたい。でも今日は気がついた時にはもうホテルにいなくて、天王寺近くの公園からずっとマーカーが動かない。スマホがおかしくなったか落としたに違いない!」「どれどれ」と夫のスマートフォンを見てみると、マーカーはかすかに動いているのでした。場所は……んん?オオカミ舎?「これ、ホントにずっといるんじゃないの?動物園の中みたいだし」と、私が言うと、夫は「こんなに動かないわけはない!大体動物園に何時間もいられないでしょう?」と言います。はからずもASDとADHDの争いが勃発!?実は、わが家は私とタケル、妹のいっちゃんにはASD傾向があり、夫にはADHDがあるのです。自分自身じっとしていられない性分の夫は、たいして広くもない動物園でタケルが半日ほとんど動かないでいるなんて信じられない!何かあったに違いない!と言うのです。Upload By 寺島ヒロその後、「放っておけ」という女性陣の声を振り切り、夫が電話をかけたのですが、案の定「はい、無事です。いま動物園。昨日は自然史博物館にいた。写真撮るから充電もったいない」とそっけなく切られてしまい、いっちゃんには「な?」って言われていました。タケルは自分のペースで動物園を満喫していたのです。一人で行ってみたかったのは、このためだったんだなあ……と思いました。3日目の昼、タケルは自力で無事に帰宅しました。一人旅は楽しい!自信をつけたタケルの進化こうして大阪で一人旅を経験したタケルは、冬休みには別の大学を受験するために一人で東京にも行きました。こちらの大学は試験と面接で2日間の日程。タケルは試験前後の空き時間に、いくつかの動物園、植物園、博物館、大学の資料室、ふくろうカフェなど……予定をぎっちり詰め込み、ろくにごはんも食べずに飛び回ったそうです。親の想定外の行動範囲でびっくりしました。Upload By 寺島ヒロ今では一人でどこへでも行けるようになったタケル。しっかり下調べと準備をして、あまり人が行かないようなところへもフィールドワークに出かけます。息子の「どこでも一人で行ける」という自信の根底には、あの大阪と東京の旅がしっかり刻まれているのだと思います。執筆/寺島ヒロ(監修:鈴木先生より)「かわいい子には旅させよ」ですね。子どもに初めての経験をさせる時はどんな親でも心配ですね。しかし、失敗は成功のもと。どんどん失敗させて学んでいけばいいのです。いわゆるヘリコプターペアレント(最近ではバイシクルペアレントになってきている)と言われるように、子どもに何かあるとすぐに親が出てきて対処してしまうことは子どもの成長を邪魔することになりかねません。大阪が遠くて心配なら初めは近隣へ行かせて試すことも一つのアイデアかと思います。極端な話、コンビニでもいいのです。スモールステップで少しずつ成功体験を増やしていけば段々と慣れていくはずです。ただ、一度成功しても次に何があるかは分かりません。いざという時のためにメールなどで適宜連絡を取りながら進めていけばいいのではないでしょうか。前の記事はこちら(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2024年11月19日"なぜか伝わらない"を"伝わる!!"に『発達障害の子どもに伝わることば』Upload By 発達ナビBOOKガイド「言葉は理解できているはずなのに、どうして通じないんだろう?」と不思議に思ったり、子育ての中でイライラを感じたことのある保護者も多いのではないでしょうか?本書「発達障害の子どもに伝わることば」は、発達障害のある子どもとのコミュニケーションのポイントについて書かれた本です。著者の川﨑総大先生(立命館大学教授)は、言語聴覚士・発達心理士として、発達障害のある子どもたちと深く関わってきました。その豊富なご経験から、私たちが誤解しているかもしれない発達障害についての知識、そもそもコミュニケーションとは何か?という根本的な考え方を紐解きながら、発達障害のある子どもたちとのコミュニケーションについて、分かりやすい言葉で具体的に解説しています。1~4章の最後には、4人の専門家が寄稿したコラムも掲載されており、発達障害に関する知識をより深めることができます。コミュニケーションとは一方的なものではなく、伝える側、受け取る側が相互に思いやりをもって楽しむもの。発達障害のある子どもの保護者はもちろん、障害の有無にかかわらず、コミュニケーションに悩むすべての人に読んでいただきたい一冊です。遊びながら認知能力を強化!『学習の土台をつくる 1さいからのコグトレ おなじのど~れ?』Upload By 発達ナビBOOKガイド『学習の土台をつくる1さいからのコグトレ おなじのど~れ?』は、繰り返し遊びながら、認知能力を鍛えていくアクティブ絵本です。本書のタイトルにもある「コグトレ」とは、児童精神科医の宮口幸治先生が、認知能力を鍛えることを目的に開発したトレーニング教材です。認知能力を鍛えることで、学習に必要な「数える」「覚える」「写す」「見つける」「想像する」力を育むことができると言われています。本書では、簡単な図形や身近な自然・乗り物などのイラストカードを使って、「かたち」を認識する力、「どうさ」を理解する力、「なまえ」を覚える力を高めます。字が読めなくても遊ぶことができるので、1歳頃のお子さんから楽しく取り組める内容となっています。その教育は本当に「こどものため」?『エデュケーショナル・マルトリートメントの理解と対応 教師と支援者が「教育虐待」を防ぐためにできること』Upload By 発達ナビBOOKガイド「エデュケーショナル・マルトリートメント」とは、教育場面において行われる子どもへの不適切な行為を表す概念です。本書では、「教育虐待」と共に社会的課題となっているエデュケーショナル・マルトリートメントについて、日本の教育環境の問題点や子どもへの影響、そして多様な事例を踏まえた具体的な対応方法を紹介しています。子どもへの身体的・心理的暴力といった従来の「児童虐待」のイメージとは異なる、「熱心な教育」「親心」といった考えに潜むエデュケーショナル・マルトリートメントの実態をとらえ、子どものSOSを見逃さないためにはどうすればいいのか丁寧に解説されています。子どもにとって本当に大切なものとは何か、そして子供の健やかな成長のために大人ができる行動とは何かを考え直すきっかけとなる一冊です。最新の知識が分かりやすくまとまった一冊!『ADHDがわかる本 正しく理解するための入門書』Upload By 発達ナビBOOKガイドわが子の困った行動の理由が知りたい。どこに、だれに相談すべき?治療を受ければ落ち着くの?将来は大丈夫……?子どもがADHD(注意欠如多動症)と診断された、あるいはその傾向が強いと感じている保護者の中には、不安や疑問がたくさんある……という方もいらっしゃることと思います。本書は、発達障害のある子どもの医療に長年携わってきた榊原洋一先生の監修による、ADHD(注意欠如多動症)の基礎から理解できる入門書です。幼児期から成人期までのADHD(注意欠如多動症)の特性、相談先や治療法、家庭でのかかわり方、支援についてなど、保護者が知っておきたい情報が網羅されています。豊富なイラストや図解で、専門知識も一目で理解しやすいように工夫されている本書。ADHD(注意欠如多動症)どう向き合い、対処していけば子どもの幸せにつながるのか?初めてADHD(注意欠如多動症)について学びたい方だけでなく、改めて最新の知識を得たいという方にとっても、役に立つのではないでしょうか。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。
2024年11月18日2年生に進級して様子が変わった息子。イライラすることが増えてきて…小学2年生に進級した頃から、トールは家でも学校でもイライラすることが増えました。手が汚れているということに敏感になって、洗いすぎて手がガサガサになり、血が出てしまうこともありました。外から聞こえる車やバイクの音、冷蔵庫のモーター音などにも非常に敏感になって、怖がったりうるさいとイライラしたりするようになりました。常に何か不安な気持ちを抱えていて、些細なことに怯えているような状態でした。Upload By メイまた、それまでできていた量の宿題も、全くできなくなってしまいました。本人はやらなければいけないという気持ちがあるのに、どうしても宿題に取り組めずにイライラしていました。私もそばで見ていて、どうしたらいいのか分からないと感じていました。学校では通常学級に通っていたので、たくさんのクラスメイトと一緒に授業を受けていました。でも、授業中の物音や周りの子たちの視線が気になって急に怒ったり、授業中に立ち上がって歩きまわったり、廊下に出たりすることが増えていきました。特に音楽の授業がつらかったようです。鍵盤ハーモニカの音がとてもつらくて、うるさいと泣いていました。Upload By メイ学校へ配慮をお願いすべき?でも言い出すことができず…私は担任の先生とも何度か面談をして、学校や家での息子の様子を共有するようにはしていました。しかし、宿題や学校での過ごし方など、配慮してもらったほうがいいかもしれないと思うことはあっても、私はそれを先生にお願いしてもいいのかどうか分からずにいました。先生は30人の児童を1人で見ているのに、自分の子だけに特別に時間を使うことをお願いしてもいいのかどうか。そこまで先生にお願いしてしまうのは頼りすぎなのではないか。もしお願いして先生がそれを実践してくれたとしても、うまくいくかどうか分からないのに……。そんな不確定のものに手間をかけさせてしまうのが申し訳ないと思ってしまったのです。もしかしたら先生は、そんなこと考えずに言ってくれたらいいと思ってくださっていたかもしれません。でも私は、どうしても先生にお願いすることができずにいました。Upload By メイそんな思いもあって、「もしトールが特別支援学級に在籍していたら、もっと気軽に個別な対応をお願いしやすいのかもしれない……」と、考えるようになりました。思い切って特別支援学級への転籍について担任の先生に相談してみたところ、特別支援学級を体験させてもらえることになったのでした。特別支援学級の体験で、少しずつ落ち着きを取り戻してきた息子特別支援学級の体験は2年生の秋頃から始まりました。まだ正式に在籍していたわけではなかったので、1日のうち特別支援学級の先生の都合の良い1、2時間だけ、特別支援学級で過ごしてみることになったのです。特別支援学級では、トールが1番気になっていた教室内の物音やざわめき、周りの視線などから解放され、トールにとってリラックスできる時間になったようです。1日中気を張って過ごしていた毎日が少しずつ変わっていって、気持ちも少しずつ落ち着いていきました。一日のうちのほんの数時間を特別支援学級で過ごすようになっただけで、通常学級でのトラブルもだんだん減っていきました。Upload By メイそんなトールの様子を見て、私は3年生から正式に特別支援学級に転籍したほうが良いのではないかと考えるようになっていきました。しかし、実際に転籍するにあたっては、トール本人も私も不安がたくさんあり、とても頭を悩ませることになりました。そのことについてはまた別の機会に書かせていただきます。執筆/メイ(監修:鈴木先生より)ASD(自閉スペクトラム症)の併存症の一つに強迫症があります。一般的には潔癖症と言われるような「手が汚れるとすぐ洗う」「家に帰ると靴下や服を着替える」など、よく言えばきれい好きな面が出てくることがあります。家の鍵を閉めたかどうか、ガスの元栓を閉めたかどうかなど何回も確認しないと気が済まない確認行為も見られることがあります。症状がひどい場合にはSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)というお薬でこれらの調整は可能です。また、感覚過敏がある人の困りごとの中で、多くを占めているのが音(聴覚)過敏の問題です。クラス替えで以前より賑やかな環境下になると、登校渋りや耳を押さえる所作が増えてくることがあります。そういう場合は今回のように特別支援学級で過ごせるように検討するのも一つの案でしょう。通常学級にいても綿球などで軽く耳栓をしたり、イヤーマフのようなものを付けたりして音を減らす工夫をされている場合もあります。ASD(自閉スペクトラム症)のさまざまな併存症をあらかじめ知っておき、お子さんのサポートに役立てていくことが重要です。前の記事はこちら(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。
2024年11月18日3ヶ月で保育園を転園することになった次女次女のあずさは、2歳になりたての頃に「①癇癪の強さ」「②物怖じしなさ」について長女(知的な遅れを伴うASD/自閉スペクトラム症)の療育先から指摘を受け、療育に通ってきました。その後、成長とともに①②の点は解消していき、よくしゃべるおしゃまな子に成長し……2歳クラスの一年間を小集団の療育にみっちり通う間、先生からは「コミュニケーション能力が高い」「最年少なのに年長児と同じことができる」と、あずさについては良い報告ばかり。なんなら「スーパー2歳さん」と呼ばれていました。親目線では「ん?まゆみのこともあるし、指摘があったから心配で通所させているけど……診断が出るほどの症状ではないあずさは療育を受けさせてもらっていていい子なんだろうか?」と思ってしまうほど順調に見えていました。それが入園後、保育士さん達から「しっかりした子ですね」と言われていたのも束の間、集団の中で浮きまくって先生方を困らせるようになり、その他の理由もあってわずか3ヶ月で転園となってしまったのは前回記事のとおりです。Upload By にれあずさの抱える困りごとまず、あずさはとても空気を読みます。「ふざけていい場か?」「甘えてもいい人か?」を本人なりに判断していて、家庭・保育園・療育先で見せている顔がそれぞれ違います。あずさはよく創作クイズを出してくれるのですが、振る舞いを使い分けていることがよく分かるのが以下の例です。Upload By にれ一方で、集団の中に入るとハミ出てしまう側面もあります。先生方が口を揃えて言うのは、「話を理解した上で、聞かない」という点……。たとえば、「動かずジッとしていてね」とクラスで一列に並んでいる時、目の前にかわいい着ぐるみが出てきたとします。それを見て一歩出てきて話しかけてしまうのがあずさです。大人が一声かけると自分から列に戻ることはできますが、衝動性の高さでつい動いてしまうのか、「このくらいええやろ」と自己判断でそうしてしまうのかは分かりません。見ていると両方あるような気がします。また、不適切な行動をした際にやんわり注意すると、今度はこちらの目を見ながら同じ行動を繰り返してこちらの出方を探るようなこともよくあります。さらに、人の制止よりも自分の好奇心を優先させることも多いのに、日頃のお調子者ぶりからは意外なほど失敗を恐れる傾向もあって、いろいろな側面があると感じています。大人からすると期待値の高さに反して望ましい結果にならないことが多く、「どうして言うことが聞けないの!?」と受け取られがちになるといった困りごとがあります。本人も、「ずっと家でママといたい」と言うくらいなので生きづらさを感じ始めているかもしれません……。困りごとの根幹は何なのか?発達検査で明らかになったことあずさに対し、「集団に上手く馴染めないのは、きっと発達の凸凹が大きいのだろう」と思っていたものの、一対一や小集団でのコミュニケーションなら大人顔負けのやりとりを見せ、運動もまぁまぁ得意、『にんぎょひめ』の絵本で号泣するほどの豊かな情緒……と、『何がこの子の困りごとなのか?』を把握できずにいました。転園を機に、ずっと問題を絞り切れていなかったあずさの発達について詳しく知りたくなり、市に申し込んで正式な発達検査を受けたのですが……検査後に心理士さんがうなりながら答えたのは、私の予想とはまったく違う「発達が全体的に早い」というものでした。具体的な数値は伏せますが、新版K式発達検査の「姿勢・運動」「認知・適応」「言語・社会」すべてが年齢以上である結果、年少クラスの活動が本人には退屈に感じられ、刺激を求める性格から自由行動に走ってしまうのだろうということでした。元から知的には問題ないと思っていましたが、驚くよりも思わず天を仰ぎました。Upload By にれ「発達が早い」「数値が高い」というと良いことのように聞こえますが、実際に困りごとが起きてこの場にいるわけです。また、仮にあずさが年齢以上の水準を保ちながら成長していったとしても、早いか遅いかだけでお友だちも大人になれば発達は追いついてくるはず……。年齢以上にいろいろできることよりも、先々の学校生活で周囲に馴染めず相当な苦労をするのでは?それがあずさの人間形成に影響するのでは?という心配のほうが先に立ちました。私の予想と今後心理士さんによると「お母さんの心配するような凸凹は見られない」ということでしたが……あずさを観察していると、たしかに知能や言語発達には実年齢以上のものが感じられても、自制心や協調性は実年齢よりも下なんじゃ?と思うことがよくあります。なので、やはり何かしらの発達面の凸凹はあるのだろうと予想しています。これは決して次女をおとしめたいわけではなくて、すでに困りごとが発生している以上は早めに特性への対応を学び、少しでも生きやすくしてあげたいのです。素人考えですが、5歳になれば知能検査のWISCが受けられるので、より詳細な領域ごとの発達度合いが分かるのではないかと期待を持っています。特性はそれぞれ違っても共通する方針長女のまゆみに「精神遅滞」と「ASD/自閉スペクトラム症」の診断が出た時は、通信制の大学に入り直して発達心理を学ぶなど、「自閉症児」に対する理解を深めようと一生懸命でした。今、まゆみの育児で学んだことはあずさには全く通用せず、高知能児の浮きこぼれの問題など新たに知ることばかりで、バラエティに富んだ育児をしているなぁと我ながら思います。けれど、まゆみに対してもあずさに対しても根っこのところは同じで、①親自身がわが子の安全基地になる②気軽にトライさせてみる③ルールとマナーの範囲内で好きなことをさせてあげるというのがわが家の方針となっています。どんな性質の人であれ人生で上手くいかないことがあるのは当然ですし、そんな時に乗り越えられる力を日々の中で少しずつ養うことができればと思っています(まゆみは自力では難しいこともあるでしょうから、人に助けを乞える「受援力の向上」も課題の一つです)。それぞれの子に対して自分自身まだまだ勉強しないとと思うことが多く、育児は修行の連続だなぁと感じる毎日です。Upload By にれ執筆/にれ(監修:井上先生より)にれさんのおっしゃるように、通常の知能検査や発達検査では協調性や衝動性は測ることができません。また、知能指数や発達指数も幼児期は年齢によって大きく変動します。お姉さんとの違いだけではなく、子育ての共通点を見出されたのはすばらしいと思います。姉妹がお互いにどのような役割や関係性をつくりながら発達していくのか成長を見守っていけるといいですね。前の記事はこちらUpload By にれ(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2024年11月17日特別支援学級に通う娘、転校でどうなる?わが家の体験ASD(自閉スペクトラム症)の診断を受けている娘(現在小学4年生)は、特別支援学級に通っていた小学2年生の3学期に、夫の転勤で他県へ引っ越ししました。転校が決定してすぐに、私は引っ越す予定の自治体の市役所に電話をしました。転校先の小学校でも特別支援学級に在籍できるのか、受給者証などの手続きはどうしたらいいのかなど、分からないことだらけだったからです。すると特別支援学級に転入を希望する場合、事前に教育センターで面談しなくてはならないということが分かりました。その際に、学校での通知表など成績が分かるもの、診断書が必要とのことでした(手続きや必要書類は自治体によって異なる場合があります)。私は早速、教育センターに連絡して面談の予約をしました。引っ越し先は当時住んでいた県から遠く、気軽に行き来できるような距離ではありません。そのため、面談した次の日に、転校先の小学校へ見学に行けないかと聞いてみました。教育センターの方がとても親切で、希望の日程で学校見学ができるように小学校と調整してくださいました。こうして、家族3人で1泊2日の「教育センター面談と小学校見学ツアー」が実現しました。登校渋りのある娘……転校先での配慮はどこまで可能?Upload By マミヤ教育センターの面談では、用意していた資料を渡し、転校先でも特別支援学級に通いたいことを伝えました。娘は、当時通っている小学校を4時間目で早退したり、苦手な給食ではなくお弁当を持参したりしている状況だったため、私はこの現状をしっかり伝え、転校先の小学校でも配慮をお願いしないといけないと考えていました。教育センターでの面談の結果、特に問題なければ希望通りに特別支援学級に入れそうということで、ほっとしました。面談の翌日、私は娘を連れて転校先の小学校の見学に行きました。見学したのは特別支援学級の5時間目の授業で、娘が参加しやすいようにと生活の授業にしてくれていました。あまり人見知りしない性格の娘は、クラスの子どもたちが楽しそうにしてる様子を見て、すんなりと輪に入っていきました。娘が授業に参加している間、私は隣の教室で先生と面談をすることになりました。私が娘の現状と配慮をお願いしたいことを伝えると、先生は「2年生のあいだは無理せず、交流学級へはほぼ行かなくていい」「お弁当でいい。給食がはじまったら牛乳は申し込まなくていい」とおっしゃってくださいました。これは本当にありがたかったです。これで娘の登校へのハードルが下がりました。授業も楽しく参加できたようで、クラスの子どもたちともすっかり打ち解けて、娘は転校を少し楽しみにするようになっていました。Upload By マミヤ理解ある環境の重要性を実感。転校先での順調な滑り出しも、母には不安が……娘は希望した通り、転校先の小学校でも特別支援学級に通えることになりました。転校後はじまった学校生活は驚くほど順調でした。特に担任の先生は特別支援学級を何年も受け持っていらっしゃる方で、給食なども、娘が食べられる物から少しずつ挑戦させてくれ、1か月後にはお弁当ではなく、みんなと同じように給食を食べられるまでになりました。さらに、転校前の学校に通っている時は、4時間目で早退しても疲れ果てていた娘が、帰宅後も元気なことが増えました。気づけば転校前の早退生活から一転、最後まで授業をしっかり受けられるようになっていたのです。Upload By マミヤ転校後感じたことは、指導をされる先生や過ごす環境によって、娘が学校で感じる疲労感に違いがあるのではないかということでした。娘の場合は、担任の先生との相性が特に重要なようで、転校前の学校ではそのことで疲れがたまり、結果的に行き渋りにつながっていたのではないかと思います。転校を通じて、理解のある環境にいることの重要さに気づくことができました。それと同時に、3年生に進級したら、きっとまた先生が変わってしまうのだろうな……と一抹の不安がよぎったのでした。Upload By マミヤ執筆/マミヤ(監修:室伏先生より)マミヤさん、転校の準備から、転校後のしぇーちゃんのご様子まで共有くださり、ありがとうございます。特にASD(自閉スペクトラム症)のお子さんは見通しを立てにくかったり、新しい環境に身を置くことが苦手であったり、転校に対する不安やストレスを感じやすいため、転校前からの準備、サポートが特に重要になりますよね。しぇーちゃんは事前に学校見学をされたことで、これから自分が過ごしていく環境を想像でき、不安が軽減されたのではないでしょうか。面談の際には、マミヤさんがされていたように、現状の共有や配慮をお願いしたいことを準備していかれると、転校後の生活がスムーズになりますね。ご本人が気になることをあらかじめ話し合い、質問を準備していくのもよいかもしれませんね。3年生になっても安心できる環境で楽しく過ごせること、私も応援していますね!(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2024年11月16日早期療育を受けたいけれど断られ……療育迷子に!さて、前回のコラムでは、きいちゃんが生まれて間もなくの頃、ダウン症の子は早期療育が大事だと言われながらも、市役所に行っても「療育はお座りできるようになってから」と断られてしまい、いわゆる「療育迷子」になってしまったお話を書きました。ダウン症の子は、発達に定型発達の子の2倍時間がかかり、首の座りは平均半年、お座りは1年以上かかると言われています。その間、ずっと療育できないの?もしずっとお座りができなかったらどうするの?どうしたらいいの……!?!?と、途方に暮れてしまったものの、ここで負けてはいけない!きいちゃんのために何かしないと……!と奮起した私。Upload By 星きのこお国(市役所)がダメなら、民間じゃーーーい!!と、少しでもきいちゃんに発達にプラスになりそうなものは、お家療育から民間の赤ちゃんマッサージからカイロプラクティックなど、できる限りですがやりました。今思えば、正直、効いたかどうか怪しいなと思うものもありますが(汗)、その時は必死でした。市役所がダメなら、療育センターへ電話してみよう!そして、それでも不安な私はやっぱりちゃんと療育センターで療育を受けたいと思い、市役所がダメなら療育センターに電話してみよう!と、思い切って直接電話してみるという行動に出てしまいました……!市役所と同じように断られるかな……?と、ドキドキして電話をしましたが、なんとあっさり、「3か月後から始めましょう!」とお返事が……!よかった、本当によかった……!!Upload By 星きのこきいちゃん、生後6か月でようやく正式に療育センターで療育を受けられることになりました……!わりと私は「押してダメなら引いてみろ」の突撃タイプなのですが、とにもかくにも電話をしてみたという行動が功を奏したといえばそうなのかもしれません……。てゆーか、市役所のおじさんーーー!!お座りできなくても療育始められるんじゃないか!!と、心の中でつい毒づいてしまったのはここだけの話……(笑)。先輩ママからも聞いた話ですが、使える制度や補助があったとしても、その情報を役所のほうから教えてくれることはほぼないそうです……。自分から情報を取りにいったり、調べたりして初めてそんな制度があったのか……!と知るパターンも多いとか。私の場合は、親の会に入っていたおかげで、先輩ママさんたちから色んな情報を教えてもらってかなり助かりました。横の繋がりはかなり大事でありがたいなあと思ったことの一つです。無事療育開始!PT、OTは始まるも、STはNGに……結果、きいちゃんはPT(理学療法士。主に運動面を見てもらえる)は生後6か月から、OT(作業療法士。主に咀嚼や着替え、トイレなど生活全般を見てもらえる)は1才くらいから市の療育センターで始めることができました。ただ、ST(言語聴覚士。言語、音声機能を見てもらえる)を始めるにあたって、療育センターの医師から許可がおりなかったのです。「カタコトが話せないのでまだ早い」と言われました。そして、最後まで療育センターで訓練することはできませんでした……。「カタコトが出ないって、一生喋れなかったらどうするの……⁉」と不安にかられた私は、またも民間のSTさんを探し、民間で習うことに。Upload By 星きのこ早期療育の結果は?療育はきいちゃんだけでなく私のためでもあった!結果としては、きいちゃんは半年で首が座り、1歳くらいでお座り、2歳でようやくヨチヨチ歩けるようになりました。咀嚼は今も怪しい感はあるものの、お箸やスプーン、フォークで自分で食べることができています。言葉は5歳くらいから単語が出てくるようになり、小学生になってから劇的に言葉は増えました(と、いっても発音が悪いのでまだまだ宇宙語に聞こえたりしますが……汗)。療育をしなくても、きぃちゃんと同じダウン症でも1歳で歩けるようになる子もいますし、おしゃべりがすごく達者な子もいます。もちろんその逆パターンもありますし、ダウン症に限らずですが、発達は本当にその子その子で違います。きいちゃんは、周りのダウン症の子よりも少し発達が遅いほうだったのでつい比べてしまい、小学生になる前は私が勝手に落ち込んだり焦った日々もありますが、きいちゃんなりに成長を感じてくると、自然と周りと比べることも減ってきました(とはいえ、今でもとっても発達の早い子を見るといいなあ、お母さんはきっと楽だろうなあと羨ましくなってしまうのも本音です(笑))。Upload By 星きのこ今は市の療育センターは卒業し、療育に通う日はほぼなくなってしまったのですが、今振り返るときいちゃんと頑張った療育の日々はきいちゃんのためでもありましたが、私の精神的な支えや安定が大きかったと思います。障害を持って生まれてきたわが子のために、なんとか少しでも生きやすくしてあげたいーー療育を頑張るお母さんは、きっとそういう気持ちが心の根底にあると思います。時には頑張りすぎて親自身が疲れてしまう時もありますが、そんな時は少しくらいサボっても大丈夫。適度に息抜きしながら、無理なく頑張っていければいいですね。執筆/星きのこ(監修:鈴木先生より)療育の予算や人手の不足も影響があるのではないかと感じています。療育としてはOT/PT/ST以外に、MT(音楽療法)というのもあります。日本ではまだまだ馴染みが薄いようですが、私のクリニックでは月2回やっており、人気があります。私のクリニックのMTでは、感覚統合訓練も取り入れているのでバランス感覚も養えます。特別支援学校に通うお子さんたちは就学後もMTに通われており、一方的に卒業させられることはありません。就学すると事務的な問題などで療育を中止されてしまうケースも多いのですが、私のクリニックでは、MTを卒業するかどうかは本人と親と主治医との間で相談して決めています。一旦やめたとしても希望があればいつでも再開することができます。前の記事はこちらUpload By 星きのこ(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。
2024年11月15日息子の推しチームを探す旅に!?映画のモデルとなった父子へのインタビューをお届け!ドイツ本国で100万人動員の大ヒットを記録し、ハリウッドでのリメイク版制作も決定するなど、大きな反響を呼んでいる映画『ぼくとパパ、約束の週末(原題:Wochenendrebellen<週末の反逆者>)』が、11月15日(金)より公開されます。ASD(自閉スペクトラム症)と診断されている10歳のジェイソンは、ある日クラスメイトと喧嘩騒ぎを起こします。原因となったのは、好きなサッカーチームはどこか?ということ。サッカーに興味を持ったジェイソンは、父親のミルコと共に、自分の「推しチーム」を探すことを決意しますが、なんとそれは「毎週末、ドイツにある56チームすべてのスタジアムで現地観戦する」という方法で……!?今回は、本作のモデルで、今でもスタジアム巡りを続けているというジェイソン&ミルコ・ユターツェンカ親子へのインタビューをご紹介します。私たちにとって些細なことでも、ジェイソンにとってはすごく大事なことなんです(ミルコ)――映画『ぼくとパパ、約束の週末』は、お父さんのミルコさん、ASD(自閉スペクトラム症)の息子さんのジェイソンさんの実話がもとになっているそうですが、推しのサッカーチームを探すためにさまざまな場所に行くことで、どんな心境の変化がありましたか?ジェイソン・フォン・ユターツェンカ(以下ジェイソン):最初は、ただサッカースタジアムに行き、サッカーを観戦するということが楽しみで仕方がなかったんです。でも、実際に行ってみて、混雑のなかで警備の人やほかのサッカーファンの人に身体に触れられたり、急に大きな音を聞いたりするリスクを冒さなくてはいけないことを学んだんです。僕にとって、これは非常に嫌なことなんですが、回を重ねることでそれらのことに対してどうすればいいかが分かりましたし、どんなことが起きても驚くことが少なくなったんです。そう考えると、以前よりも自分の中で問題だと思っていたこと、大変だと思うことが少なくなったように思います。Upload By 発達ナビ編集部ミルコ・フォン・ユターツェンカ(以下ミルコ):私たちにとって些細なことでも、ジェイソンにとってはすごく大事なことなんです。そこの対立は数えきれないくらいあるので、それを映画にしようと思ったらものすごい年月がかかるくらいなんですよね。対決するたびに2人ともひどく傷つきますし、心が痛むんです。でも、そこから学ぶことも多いですし、ひとつの対立から立ち直り、それをいい経験にしようと考えるきっかけにもなるんです。私にその力を与えてくれたのはジェイソンでもありますし、ジェイソンの妹である娘、妻でもあるんですよね。家族から力をもらい、どんな対立があったとしても、その都度、元気をもらってきました。そう言えるのは、つらい体験だけでなく、素晴らしい体験もいっぱいしているからなんです。大変な電車での旅もしましたし、いまこうやってジェイソンが個人的に社会に貢献しようとしている姿を見ると、ものすごく心が潤いますし、あらためて、ジェイソンから力をもらっています。ーー映画化する際に、ミルコさんが一番大事にしたことを教えて下さい。ミルコ:映画化のお話を頂いたときに、重要だと思ったことは3つありました。1つ目は、内容が歪んで伝えられないこと。2つ目はジェイソンのキャラクターが正確に再現されること。そして3つ目は苦しむことを見せる映画ではなく、観てくれた方が楽しいと思える作品にするということでした。とくに2つ目のジェイソンのキャラクターでは、彼がどのような才能を持っているか、そして彼がこだわる“持続可能性”や環境に対する情熱、我慢できることとできないことなどを、しっかり正確に伝えることを大事にしてほしいと制作サイドに伝えました。――実際にスクリーンでジェイソンを見て、どう感じましたか?ジェイソン:僕が最初に見たシーンは、電車の中で食事をするシーンでした。劇中でジェイソンはパスタとソースがくっついてしまい、パニックになってしまうんです。そのシーンがあまりにも現実と同じで、僕自身、恥ずかしくなってしまうくらいで(苦笑)。でも、それくらい迫真の演技だったんです。ほかのシーンにはポジティブなシーンもありましたし、全体的に素晴らしいと思いました。なによりも、自分のキャラクターを、客観的にみることができたのも、すごく良い経験になりました。Upload By 発達ナビ編集部――映画では息子さんがパニックを起こした時に周りの人から理解を得られず、お父さんが葛藤しているシーンも描かれました。ミルコさんは、ジェイソンさんの障害をどのように受容してきたのでしょうか。ミルコ:僕がミルコの障害を受容できるようになったのは、ふたりで旅をし始めてからだと思います。僕も、妻もASD(自閉スペクトラム症)と向き合うのは初めてだったからこそ、最初は、間違った対応をたくさんしてしまいました。それこそ、パスタとソースが触れて、パニックになり、何も知らない周りの人達からいろいろ言われた時は、どうしていいか分からなかったんですよね。でも、今の私たちは、周りの言うことなどどうでもよく、ジェイソンがやりたいようにやらせてあげられるようになりました。というのも、ASD(自閉スペクトラム症)の人が、社会において、きちんとした立ち位置、居場所を得なければいけないと思っているので、その第一段階として、親である私たち夫婦が、ジェイソンそのものをまるっきり受容しなければいけないと思ったんです。その決意は確固たるものなので、その気持ちが揺らぐことはないですね。現在、大人になったジェイソンは自立し、遠い地域に離れて暮らしていますが、もし私たちの助けを求めているのなら、すぐに飛んで行って助けてあげたいと思っています。ジェイソン:こうやって助けてくれた両親がいることに、僕はすごく感謝しています。でも、ASD(自閉スペクトラム症)の人も1人の人間として、まっとうな権利をもっているからこそ、要求が満たされて生きる価値、自分が生きやすいように生きる権利があるんです。それに、お父さんは全部のサッカーを見て、推しのチームを決めることを約束してくれたので、その約束は守らなくちゃいけないから、そこは感謝というよりも、当たり前のことですよね。ミルコ:おいおいおい(笑)!長距離の会場まで付き合っているんだからそこは感謝してほしいんだけど(笑)!ジェイソン:あはは。――ジェイソンさんは、ASD(自閉スペクトラム症)の子どもたちに、どんなメッセージを伝えたいですか?ジェイソン:「君は今のままでいいんだよ」と伝えたいです。この言葉は、映画の中で祖父がジェイソンに向かって言うセリフなんです。これは私が今作のなかで一番大事なメッセージだと思うんですよね。ASD(自閉スぺクトラム症)の人は、自分を社会に適応させたり、自分を社会に適応させるために変える必要はまったくないと思うんです。だって、ASD(自閉スペクトラム症)であることは間違いではないですし、本人にとって負担、重荷であることはないんですよね。そこに適応ができないところに身を置くと、そう思ってしまうだけなんです。なので、当事者の方はもちろん、その家族の方々も、そのメッセージを受け取ってもらえたらうれしいです。(取材・文/吉田可奈)『ぼくとパパ、約束の週末』上映情報11月15日(金)より新宿ピカデリー、角川シネマ有楽町ほか全国ロードショー監督:マルク・ローテムント(『5パーセントの奇跡噓から始まる素敵な人生』)出演:フロリアン・ダーヴィト・フィッツ(『100日間のシンプルライフ』)、セシリオ・アンドレセン、アイリン・テゼルほか(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2024年11月14日希望が通らなかった就学の判定。結果に納得できなかったわが家は……2歳の時、中度知的障害(知的発達症)を伴うASD(自閉スペクトラム)と診断を受けた息子がいます。現在10歳です。小学校入学前の息子は、ひらがなの読み書きができず、数字も3まで数えることが難しい状態でした。一方興味があるものにはとことんのめりこむタイプで、鉄棒と跳躍器具ばかりの毎日。興味がかなり限定されていました。学校見学をし、夫とも相談した結果、息子には特別支援学校が合っていると希望を出したのですが、結果は知的障害特別支援学級判定でした。納得がいかなかった私は、教育委員会との話し合いに臨みました。そんなわが家の就学の時の体験談をご紹介します。学校見学へ。授業が難しいと感じた特別支援学級、息子が笑顔で通うイメージが浮かんだ特別支援学校年長の1学期、まず地域の特別支援学級を見学しました。あくまで私の印象ですが、その時のクラスはどちらかというと息子のような特別支援学級か特別支援学校か迷っている人が選択する場所というよりは、『通常学級だと少し心配だから特別支援学級を選ぼうかという人が対象』なのかなと思うほど、授業が難しそうだったのです。また、その時の1年生が偶然にも幼い時から知っているお子さんばかり。みんな昔とは比べようもないほど言葉が増え、成長していました。今から7か月後、息子はこの教室でみんなと同じように授業を受けられるのだろうか……と考えると、どうしてもその教室にいる姿を想像できなかったのです。授業だけでなく、交流級の様子も見学しましたが、こちらも息子が参加するのは難しそうだと感じました。それに対して特別支援学校を見学した時は、すぐ息子が笑顔で教室に居られる姿を想像できました。息子は3歳から卒園まで児童発達支援に通っていたのですが、『いつもの児童発達支援の対象年齢が上がった場所』という印象だったのです。ここなら息子も嫌がらずに通える!と思い、わが家は特別支援学校を希望することにしました。ですがなんと結果は特別支援学級の判定だったのです。「どうして⁉」ととてもショックを受けました。Upload By ユーザー体験談判定は変わる?教育委員会の方との面談へ結果に納得がいかなかった私は教育委員会へ行き指導主事の方とお話をしました。しかし、「就学支援委員会が決めたことはどうにもなりません」というお返事でした。それでも何とかなりませんか?と相談したところ「判定をされた教育委員会の方と面談をセッティングします」と提案され、後日面談をすることになりました。※編集部注:基本的には就学先は市町村教育委員会が、本人・保護者に対し十分情報提供をしつつ、本人・保護者の意見を最大限尊重し決定しています。参考:2.就学相談・就学先決定の在り方について|文部科学省私は、(教育委員会の方と話すことで、もしかすると判定が変わるかもしれない)と希望を持って面談に行きました。ただ実際は私を安心させるための面談だったと思います。「(特別支援学級に通うことで)お母さんが不安に思っていることはどんなことですか?」という質問があり、不安なことをいくつか話しました。ひらがなが読めない、書けない、数を数えられない、興味があることが限定されている、興味がないことはやる気がないし、集中力も続かないなど……。あとは、言葉も2語文3語文程度しか話せないことも言いました。教育委員会の方は一つひとつの質問にきちんと答えてくれました。その後で「息子さんは教科書で勉強することは難しいと思います。でもこういうのもあるんですよ」とひらがなや数字が書いてある絵本を見せてくれました。文字より絵が多い特別支援学校向けの教科書があり、それを使うことができるということも教えてくれました。そして、「特別支援学級のほうが息子さんの成長に繋がるからこそこの判定だと思います。安心して地域の学校(特別支援学級)に通わせて下さい」と目を見てまっすぐ言われたのです。しっかり話を聞いてくれ、具体的な対応方法を聞けた私は(ここまで言われたのなら通わせるしかないのかもしれない。もし通えなくなったら転校も視野にいれてで特別支援学級に通わせてみようかな)と前向きな気持ちになれました。そして、息子は知的障害特別支援学級へ入級することになりました。Upload By ユーザー体験談知的障害特別支援学級に通って4年。良かった面と気になる面、そしてまだ尽きぬ悩み息子は、4年生になった現在も知的障害特別支援学級に通っています。この4年で息子には大きな変化がありました。なんといっても、入学前と比べて言葉がかなり増えました。学校で学んだことはもちろんですが、おしゃべりが上手なクラスのお友だちの影響が大きいと思います。先生が言っても言うことを聞かないのに、お友だちから言われると素直に聞けることがあるようです。入学前はほぼ大人とのやりとりで、大人が介入しないと子ども同士でやりとりはできなかったので、同じ年齢のお友だちと接することができるようになったというのも成長したなと思います。入学前は、(こんなに幼いと、クラスメイトから相手にされないんだろうな)と悪い方向に考えていたので、優しく接してくれるクラスのお友だちに感謝しています。息子もクラスのお友だちが大好きです。Upload By ユーザー体験談ただ、当初から懸念していた通り、学習面では特別支援学級のクラスのお友だちとはレベルが違います。学年が上がるにつれて、差はますます広がるばかりです。勉強だけでなく体育も個別授業になっているため、もしかしたら小学校在籍中に特別支援学校の判定が出るかもしれません。わが家は地域の中学校の特別支援学級、特別支援学校の中学校両方見学済みで、中学校では特別支援学校を考えているのですが、場合によっては中学生になる前に転校したほうが良いのかもしれないとも思っています。一方で、今の特別支援学級のお友だちはみんな息子によくしてくれ本人は喜んで通っているため、できれば小学校は今のクラスで卒業させたいとも思うのです。どちらが息子にとっていいのか、答えがでません。Upload By ユーザー体験談特別支援学級ではハードルが高く、希望していた特別支援学校では一日の勉強時間が30分と聞きました。特別支援学級よりはゆったりとしたペースで、特別支援学校よりはもう少し勉強時間が多い、着替えや排泄が自立していて言葉でコミュニケーションのとれる息子のような中度知的障害の子ども向けの教室(学校)があればいいなと、強く望んでいます。幸いなことに今は「楽しい」と言って学校に通ってくれている息子。これからも同じ気持ちで通ってもらいたい、そのためにどうすればいいのか考える日々です。イラスト/よしだエピソード提供/ゆきこ(監修:井上先生より)投稿者さんのお子さんのように知的障害が中程度の場合、知的障害特別支援学級か、特別支援学校か迷われている方は多いと思います。特別支援学校は複数担任制ですので、その面で安定感はあると思いますが、特別支援学級の場合は担任の先生の専門性や力量、クラスメイトの障害特性や相性、人数といった入級前には予測できない不確定要因もあるかもしれません。特別支援学級の場合、地域や学校による違いが大きいので、実際の授業を見たり、どの程度本人に合わせたカリキュラムを作ってもらえるかを事前に中学校と相談していくことが大切だと思います。一方、特別支援学校の場合は、中・軽度の知的障害のある生徒のためのクラスを作っている学校もありますので、こちらも実際に見学に行かれるといいと思います。ベストな選択を考えると悩ましいところですが、いずれの選択肢も合わなければ途中の進路変更も可能です。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2024年11月14日自閉症娘、中学でスマートフォン(スマホ)デビュー!どう使うか、親はしばらく様子見で…広汎性発達障害(ASD・自閉スペクトラム症)の娘は、中学2年生。中学に入ってから、スマートフォン(スマホ)デビューしました。スマートフォンを購入した時、使用ルールを決めたほうがいいか悩みましたが、娘がスマートフォンを、どう使うか分からなかったため、様子を見ることにしました。だんだんとスマートフォン(スマホ)を使う時間が増えていき、トラブルもスマートフォンを持ってすぐの頃の娘は、スマートフォンを持ち歩くことも、部屋に置くこともしないぐらい依存していませんでした。その様子を見て、私たちはとりあえずルールはつくらないことにしました。しかし、だんだんスマートフォンを使いこなせるようになると、スマートフォンで動画を見たり、ゲームで遊んだり、使う時間が増えていきました。それでも私たちは、宿題やお手伝いなどのやるべきことさえやれば、スマートフォンを使う時間を制限させたくないと思っていました。最初は、やるべきことをしっかりやっていたため、問題なかったのですが、そのうちに、宿題中にスマートフォンを見て、宿題がなかなか終わらず、泣き出したり……Upload By SAKURA私たちが呼んでいるのに気がつかなかったり……Upload By SAKURAお手伝いを頼むと、スマートフォンを見たいがため、嫌がるようになりました。Upload By SAKURA私たちは娘と話をすることにしました。Upload By SAKURAこの時、設けたルールは、①宿題が終わるまでスマートフォンは触らない。見ない。②スマートフォンは夜9時まで。②お手伝いを頼まれたら、すぐやる。でした。このルール決定後すぐ、中学校の試験期間に入りました。娘は中学校に入っても、勉強を頑張っていて、成績は悪くなかったので、私は娘の試験勉強のやり方に、うるさく言ったことはありませんでした。この時も、「頑張ってねー」と声をかける程度でした。試験終了後、返ってきたテストの点数を見て驚き!理由は…夜遅くまで机に向かう日もあったので、今回も頑張っているなーと思っていたのですが、試験終了後、返ってきたテストは、どの教科も今までで一番悪い点数でした。びっくりした気持ちもありましたが、「今回のテストは難しかったのかな?」と思い、夫に見せると……Upload By SAKURAなんと娘はルールをやぶり、夜の9時以降も、スマートフォンを触っていました。そして、それを見ていた夫。なぜ注意をしなかったか聞いてみると……Upload By SAKURA確かに今まで、私たちがいろんなことを注意しても、娘はすぐ言う通りにはしませんでした。いつも、実際に痛い目をみたり、自分でなぜそうしなければならないか、分かっていないとこちら側の助言を受け入れませんでした。私たちは娘を呼んで話をすることにしました。Upload By SAKURA最初は、スマートフォンを見ていたことを言わなかった娘でしたが、最終的には、ルールを破っていたことを認めました。Upload By SAKURA夫は、今回の成績を責めず、次につなげるように話しました。それから時間が経ち、やってきた次の試験。試験期間に入った時、私は娘に声をかけました。Upload By SAKURA娘はそれから、夜9時になったらリビングにスマートフォンを持ってきて、自分で箱に入れるようになりました。Upload By SAKURAスマートフォンが目に入らなくなってから、勉強がはかどるようになり、返ってきたテストの点数は前回より、上がっていました。Upload By SAKURA試験が終わってからも、娘は9時になったらリビングの箱にスマートフォンを入れに来ています。私たちは強制していませんが、自分で判断しています。スマートフォンを持ったことで、いろんなトラブルや心配も増えます。安全に使えるよう、ルールも必要ですが、そのルールを破ってしまうこともある。私が中学生の頃、スマートフォンはありませんでしたが、ルールをつい破ってしまうという経験はあるので、気持ちは分かります。あまりルールで縛りすぎると、自分で考えなくなってしまい、それも考えもの……。ある程度自由を与えつつ、失敗もさせ学んでもらい、本当に危ない時や困った時にその都度、様子を見て話し合いながら、見守りたいと思います。執筆/SAKURA(監修:井上先生より)スマートフォンを持たせたあとの使い方についての悩み相談は非常に多く、思春期の関わりにくさと合わさって時として深刻な問題になってしまうこともあります。あーさんのように自分の失敗体験から親の意見を受け入れ、どうしたらよいか自身で考えてうまくいくこともあれば、最初に与えたことが子どもにとっては既得権になりルールを作ることに対して大きな感情的な反発を招いてしまうこともあります。ルールの作り方は、体験させてから作るか最初から作るかが話題になりますが、正解がある訳ではありません。ただ、最も大切なことはルールを決める場合に子どもと親とがなぜルールが必要なのかその目的を共有し、話し合ってルールを作るということです。ここが最も難しいところです。親の立場からはついつい感情的になってしまいがちなことですが子どもの立場や視点も考えて話し合いができると良いと思います。前の記事はこちら(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2024年11月13日“いのち”の輝きを描く!『石村嘉成展 ~いのちの色たち~』兵庫県立美術館にて開催中(12月8日まで)Upload By 発達ナビニュース愛媛・岡山で約8万人を動員した話題の展覧会『石村嘉成展 ~いのちの色たち~』。現在、兵庫県立美術館にて12月8日(日)まで開催されています。石村嘉成さんは2歳でASD(自閉スペクトラム症)と診断されました。高校3年生の選択授業で版画に触れたことがきっかけで、2012年から作品制作に取り組むようになり、翌2013年には第2回新エコールドパリ浮世・絵展で優秀賞を受賞するなど、すぐに才能が開花。その独特な色彩とダイナミックな画風で、日本のみならず海外でも注目を集めています。今回の展覧会では、石村さんの代表作であり、全長26mの圧巻の大作「Animal History」をはじめ、新しいテーマに挑戦した意欲作など、約300点の作品が展示されています。10年間の制作活動の中で700点を超える作品を生み出し続けている石村さんですが、一番好きな作品は?と問われると、決まって「次に描く絵」と答えているそうです。石村さんご自身の持つ前向きなエネルギー、そして“いのち”への温かなまなざしが感じられる作品を、ぜひこの機会にご覧になってみてはいかがでしょうか。【詳細】石村嘉成展 ~いのちの色たち~会期:2024年12月8日(日)まで開館時間:10:00~18:00※最終入館は閉館の30分前休館日:月曜日※ただし祝休日の場合は開館、翌火曜日休館会場:兵庫県立美術館ギャラリー棟3階ギャラリー〒651-0073 兵庫県神戸市中央区脇浜海岸通1-1-1主催:読売テレビ、産経新聞社、キョードー関西共催:兵庫県立美術館後援:兵庫県、兵庫県教育委員会、神戸市、神戸市教育委員会、FM802、FM COCOLOお問合せ:キョードーインフォメーション0570-200-888(月~土11:00~18:00)※クリックすると、発達ナビのWebサイトから『石村嘉成展 ~いのちの色たち~』のWebサイトに遷移します。いざという時にあわてないために!『医療的ケア児・者の災害時支援について~日常の備えから災害時対応まで~』12月21日開催Upload By 発達ナビニュース医療的ケア児・者にとって、バギーや車椅子は日常的な移動手段であり、呼吸器などの医療機器も欠かすことのできないものです。そのため、大地震や台風などの災害が起きた場合、避難の際には多くの配慮を必要とします。12月21日(土)に、公益財団法人ひょうご子どもと家庭福祉財団が主催する講演『医療的ケア児・者の災害時支援について~日常の備えから災害時対応まで~』の講師を務めるのは、災害時支援をテーマに多くの講演を行っている医師の本田義信先生(いわき市医療センター)。東日本大震災で被災されたご経験などを踏まえて、被災した時のためにできる準備や、被災した際の対応について詳しくお話しくださいます。医療的ケア児・者に、どのような配慮が必要なのかを知り、いざという時に備えることができる機会です。オンラインでも見逃し配信の受講が可能とのことですので、ご興味のある方はぜひご参加ください。【詳細】日程:・現地参加:2024年12月21日(土)14:00〜16:00・見逃し配信:2024年12月23日(月)~2025年1月17日(金)※見逃し配信のみの受講も可能。見逃し配信の視聴方法については、現地開催後にメールにてURLを送付場所:兵庫県立のじぎく会館204号室住所:兵庫県神戸市中央区山本通4ー22ー15講師:本田義信 先生平成4年に福島県立医科大学小児科学講座大学院卒業後、いわき市立総合磐城共立病院(現いわき市医療センター)に就職。NICUにおいて、多くの新生児の治療に取り組む。また、外来フォローとして、障害のあるお子さんが地域で過ごしやすいように、学校等との連携を行っている。東日本大震災の際に病院で被災した経験等も踏まえて、災害時支援をテーマに講演を実施している。対象:医療的ケア児・者に関わる方定員:会場参加/35名見逃し配信/65名受講料:2,000円(税込)内容:・被災した時のためにできる準備について・被災した際の対応について・質疑応答ツール:Microsoft Teamsお申込方法:「こくちーずプロ」よりお申込みください。お申込締切:会場参加‐2024年12月12日(木)まで見逃し配信‐2025年1月15日(水)まで※クリックすると、発達ナビのWebサイトから「こくちーずプロ」のWebサイト(『医療的ケア児・者の災害時支援について~日常の備えから災害時対応まで~』申し込みページ)に遷移します。自閉症の少年と家族の成長を描いたドイツ映画『ぼくとパパ、約束の週末』11月15日より公開Upload By 発達ナビニュースASD(自閉スペクトラム症)の少年とその家族の物語をモデルにしたドイツ映画『僕とパパ、約束の週末(原題:Wochenendrebellen<週末の反逆者>)』が、11月15日(金)より公開されます。ASD(自閉スペクトラム症)と診断されている10歳のジェイソンは、宇宙に興味があり、知的好奇心が旺盛な男の子です。しかし、音や光についての過敏、こだわりが強く融通が効かない、他者の感情やまわりの空気を読めないなどの特性があり、学校や外出先では度々トラブルを起こしていました。ある日、クラスメイトから好きなサッカーチームを聞かれたジェイソンは、的外れな答えをしてからかわれ、喧嘩騒ぎを起こしてしまいます。しかし、そのことをきっかけに、ジェイソンは自分の「推しチーム」を探すことを決意。父親のミルコは、息子がサッカーに興味を持ったことを喜び、推しチーム探しに付き合うことを約束しますが、なんとジェイソンは「毎週末、ドイツにある56チームのスタジアムを巡り、全部の試合を見てから好きなチームを決める」と言い出して……!?周囲の無理解やジレンマに苦しみながらも、両親や祖父母はジェイソンの気持ちを尊重し、夢の実現を手助けしようと奮闘します。本作のモデルになった父子は、今でもスタジアム巡りを続けているそうです。ドイツでは100万人動員の大ヒットを記録し、『ワンダー君は太陽』の監督・脚本によるリメイク版制作も決定するなど、大きな反響を呼んでいる本作。発達障害のあるお子さんを育てている保護者にとって、共感するポイントがきっとあると思います。ぜひご家族でご覧になってはいかがでしょうか。【詳細】映画『ぼくとパパ、約束の週末』11月15日(金)より新宿ピカデリー、角川シネマ有楽町ほか全国ロードショー監督:マルク・ローテムント(『5パーセントの奇跡噓から始まる素敵な人生』)出演:フロリアン・ダーヴィト・フィッツ(『100日間のシンプルライフ』)、セシリオ・アンドレセン、アイリン・テゼルほか※クリックすると、発達ナビのWebサイトから映画『ぼくとパパ、約束の週末』のWebサイトに遷移します。LITALICO発達ナビ無料会員は発達障害コラムが読み放題!(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2024年11月13日本人が安心し楽しく過ごせる場所発達障害のある私の娘は現在25歳。私は、娘が安心して楽しく過ごせる“居場所”をずっと探してきました。娘が小学生の頃にはまだ放課後等デイサービスがなかったので、娘は放課後の居場所として隔週で2時間程、近所の造形教室に通っていました。そこはフリースクールが主宰していて、不登校のお子さんも通っており、年齢もさまざまでした。毎回、制作のテーマはありましたが自由度が高く、時間の半分ぐらいは個々が好きなことをして過ごしていました。最初の1、2回は私も同伴しましたが、慣れてくると娘はひとりで通うようになりました。講師の先生は、子どもたちの大胆な発想や伸び伸びとした感性をいつも褒めてくれました。幼稚園の頃から絵を描くことが好きだった娘は、そこでは水を得た魚のようにイキイキとしていました。そこは娘にとって居心地がよい場所で、小学校卒業までこの造形教室に通いました。中学生になると娘は、障害児専門の塾に通い始めました(この塾はのちに放課後等デイサービスになりました)。また、基幹相談支援センター(地域活動ホーム)主催の余暇支援活動にも通い、料理やフラワーアレンジメントのほか、ネイルや化粧やヘアメイクなどもプログラムにも参加しました。高校生になってからは、同センター施設内のショートステイなども利用しました。社会人になってからは医師が主宰する“インターネットを活用した余暇支援活動”に参加しました。これらはすべて私が探し、事前に下調べをして娘に合っているかなどを確認してから参加していました。子どもに必要な福祉や支援の情報を調べること、伝えることの限界娘は高等特別支援学校卒業後、特例子会社(※)に就職しました。そして、親元から離れ、グループホームに入居することを自ら選びました。※特例子会社とは、障害のある人の雇用促進と雇用の安定化を図るために設立された会社のこと娘が選んだグループホームは県外だったため別の自治体管轄になり、福祉支援の担当者も変わりました。グループホーム入居後に、娘から余暇を過ごす場所について相談されたことがありました。一緒に暮らしていた高校生までは、私が娘に合いそうな居場所やコミュニティについて調べていましたが、娘が入ったグループホームのある地域の支援情報を私はほとんど知らなかったので「支援者の人に聞いてみて」としか言えず、親の私から支援の情報を伝えることの限界を感じました。娘はその後、多くの支援者の方のお世話になり、私がサポートしなくても余暇を過ごす場所やコミュニティにも出合うことができました。6年勤務した特例子会社を退職し、就労継続支援A型事業所(※)に転職しますが、そのときも相談支援センター相談員やハローワーク、ジョブコーチなどの支援者の方々がサポートしてくださいました。※障害や難病のある人が、雇用契約を結び支援を受けながら働くことができる障害福祉サービス大学のセミナー、とな⁉娘が就労継続支援A型事業所に転職してしばらくしたころ、「高校時代の恩師から、大学のセミナーに誘われた」と連絡がきました。娘が通っていた高等特別支援学校でお世話になったG先生が定年退職後、カレッジ型福祉サービスなどに携わり、障害のある子どもたちの支援に尽力されていることは知っていましたが、大学のセミナーに娘が誘われるなんて、私はびっくり仰天です。Upload By 荒木まち子私は、まずセミナーにかかる金銭面が心配でした。以前娘が特例子会社で働いていた頃、そこの先輩に『自分が興味あることを学びなおしたい』という理由で退職し、それまで働いたお金で専門学校に入学した方がいました。でも、娘にはそのような貯蓄はありません(むしろマイナス)。私は娘に「先生に、自分は他の同級生とは違って実家暮らしじゃないからお金に余裕がないけど大丈夫かどうかを聞いてね」と伝えました。恩師G先生その後、そのセミナーは障害のある若者と大学生が共に大学で学ぶための行政と大学の連携・協働を通じたインクルーシブ・プログラムであること、セミナー受講が無料であることなどが分かりました。社会人向けの生涯学習に近いものと知り、私はほっとしました。インクルーシブ生涯学習プログラム【夢をかなえるセンター】生涯学習:「みんな集まれ!大学で学ぶ楽しみ発見セミナー」の紹介「みんな集まれ!大学で学ぶ楽しみ発見セミナー」の紹介チラシ娘は高等特別支援学校卒業後、就職をしましたが、「大学に進学したい」という思いがあったことは察していました。また、娘は中学2年生まで通常学級で過ごしていたこともあり、“定型発達の人たちのコミュニティへの参加”をどこかで求めていたことも私は知っていました。そんな娘がこのプログラムに強い関心を持つのは当然でした。娘の卒業から7年が経ちますが、その間もG先生はずっと子どもたちのことを想い、彼らが活き活きと過ごせるような居場所を創り続けてくださっていたと知り私は胸が熱くなりました。新しいインクルーシブ・プロジェクトこのような取り組みをしている自治体や大学があることを、私は全く知りませんでした。G先生は「当事者と大学生がフラットな関係性の中で学べるようになることを願っています。インクルーシブ・プログラムは大学生にとってもかけがいのないものだと思います」とおっしゃっています。私もこの取り組みが全国に広がってスタンダードなものになってくれたら良いな、と思います。そして日本の従来のインクルーシブ・プログラムとは違う『障害のある当事者自身が己の意志を発信し、大学生たちも能動的・自主的に関わっていく』そんな“青年期のインクルーシブ・プロジェクト”が今後、社会にどのような変化をもたらすのか、今から楽しみでなりません。親として思うこと親は“子どものため”と思ってさまざまな情報収集をし、居場所を探します。親なきあとのことを心配して、就労先や住むところを探します。でも、その行動は果たして子ども本人が望んでいることなのか、本人はそこに幸せを感じているのか。実は一連の行動は“親自身の安心のため”なのではないか?子どもが成長するにつれ、いろいろと考えさせられます。高校生までは私が娘にとって必要であろう福祉や支援の情報を探してきましたが、今回のように娘自身が積極的に情報を探すようになってきたことを私はとてもうれしく思っています。それらは、親のフィルターを通さず、娘自らが望み、選んだ情報だからです。そして、そんな場を創ってくださる方々、サポートしてくれる人々に、私は感謝の気持ちでいっぱいです。執筆/荒木まち子(監修:井上先生より)勉強だけでなく、余暇や居場所づくりは幼児期から成人期まで継続的に必要なことです。成人期になって、自分でそういった場が選択できるようになったベースには、幼児期からの親御さんのご努力があったのだと思います。働く場所以外の交流の場は、親にとって心配な部分もありますが、信頼できる支援者の方たちのサポートがあることによって、本人も親御さんも安心して参加できる場所になっていると思います。先輩や友人との交流によって、自分の価値観や生活スタイルに広がりがでてくるとよいですね。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
2024年11月12日不安だらけの小学校生活。発達グレー息子は集団登校できる?しのくんは発達障害グレーゾーン 、6歳の男の子です。現在小学1年生で、通常学級に籍を置いています。しのくんは2歳まで発語がなく、身辺自立や運動面の発達もゆっくり。保育園での集団生活も苦手で、教室から脱走したり、行事に参加できなかったりすることもありました。しかし、 年長の頃には加配の先生が付かなくても過ごせるようになり、 成長を感じることも増えてきました。それでも、保育園とはがらりと変わる小学校生活。心配事は数えきれないほどたくさんありましたが、そのうちの一つは「しのくんが一人で歩いて登校できるのか?」ということでした。しのくんは小さい頃から多動傾向があり、道路への飛び出しなどの心配が絶えませんでした。そのため6歳になっても、道を歩く時には必ず手をつなぐようにしていました。しのくんが通う小学校は、集団登校をする決まりです。一応しのくんには、集団登校というものを説明して、みんなと一緒に行けるかどうか聞いてみましたが……。「えー?しのくん無理よ。ママついてきてよー」という自信なさげな答えが返ってきました。でも正直なところ、しのくんと同じかそれ以上に、親の私も集団登校に緊張していたのです……!Upload By keikoそのため私は、1年生のはじめから登下校に付き添うと決めていました。もしかすると仕事に間に合わないことがあるかも?と、しのくんが小学校へ通い出す前に、 職場にも息子の現状を報告して相談。幸い上司に理解があったので、もし遅刻しても気にしなくて大丈夫と言ってもらえました。一緒に働いているスタッフにも理解を示してもらって、ホッとしたのを覚えています。Upload By keikoいよいよ始まった集団登校。「みんなと一緒に歩いている!」と喜んだけれど……!?そして小学校が始まり、初めての集団登校。私はドキドキしながらしのくん達の列の後ろについて歩きました。しのくんはちゃんとみんなと一緒に歩いていて、すごい!と思ったのも束の間……。しのくんは歩くのが遅く、ほかの班に追いつかれてしまい、「もー遅いなぁ」と言われてしまいました。そんなことには全く気づいていない様子のしのくん。なので、私がしのくんに「早く歩こうね」と声掛けが必要な状況になりました。Upload By keiko集団登校が始まったばかりの頃は、ほかにもついていっている保護者も見かけましたが、1週間もすると一緒に登校する保護者はほとんどいなくなって、 私をいれて3名ほどになりました。ほかの子たちに「何でしのくんのママだけいるの?いつ一人で行くようになるの?」と言われてどう返せばいいか悩む時もあります……。一度、旗当番で私が一緒に登校できず、夫が付き添っていった日があったのですが、その時しのくんはシクシク泣きながら集合場所に行き、学校へ行ったと夫から聞きました。Upload By keiko入学から半年たった現在の様子は?しのくんと登校しはじめて半年以上経ちますが、現在も一緒に登校しています。相変わらず歩くのが遅くマイペースなので、ほかの子たちに遅れないように、今は私と手を繋いで歩いています。ゆくゆくはしのくん一人で登校できるようになってほしいなと思っていますが、まだ先は長そうです……。それでも、楽しく学校へ通えているならよし!と考えて、無理のないようしのくんに合わせていきたいと思います。執筆/keiko(監修:井上先生より)大きな荷物を持ち、上級生の子どもたちとペースを合わせながら交通ルールを守って集団登校するのは、子どもにとって大変な作業です。また保護者にとっても心配なところです。keikoさんのように、最初はスムーズに登校できるように、親御さんと一緒に登校する期間を長めに取られるのは、安全の上でも、ほかの児童とのトラブルを防ぐ上でも、よいことではないかなと思います。一般的には、親御さんが大丈夫と思った時点から少しずつスモールステップで離れていくのが基本になりますが、場合によっては、下校時から同様にして少しずつ一人下校のアプローチをしていくのもよいかと思います。前の記事はこちら(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
2024年11月11日発達障害のある子どもに処方される漢方ってどのようなものがあるの?発達障害の特性があり、環境調整だけでは対応できない場合には、漢方薬を内服することもあります。漢方の特徴・基本的な考え方は以下のように記されています。古来に中国から伝わり、日本において発展してきた医学が漢方医学であり、後ほど西洋から日本に入ってきた蘭方(西洋医学)と区別するためにこの名前がつけられた。漢方薬は、漢方の考え方に沿うように、生薬が一定の規則によって組み合わせて構成されたものであり、処方全体としての適用性等、その性質からみて処方自体が一つの有効成分として独立したものという見方をすべきものである。漢方薬は、使用する人の体質や症状その他の状態に適した処方を既成の処方の中から選択して用いられる。引用:ⅩⅣ 漢方処方製剤・生薬製剤|厚生労働省今回は発達障害や特性のある子どもに処方されることの多い漢方薬と、発達障害に合併することもある起立性調節障害に使用される漢方薬をまとめて紹介します。「甘麦大棗湯(かんばくたいとうそう)」は心身の興奮を鎮める効果があり、自律神経の乱れ(いわゆる自律神経失調症)や癇癪に対しても用いられることがあります。不安からくる腹痛にも効果があり、強い不安が腹痛の要因となっている場合には甘麦大棗湯で症状が改善することがあります。・甘麦大棗湯の効果的な症状:癇癪、夜泣き、不眠、ひきつけ、不安からくる腹痛 など・甘麦大棗湯の副作用:手足のだるさ、しびれ、つっぱり感やこわばり、脱力感、筋肉痛 など柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)は、不眠や不安、ストレスによるイライラ、子どもの夜泣きなどがある際に用いられる漢方薬です。柴胡加竜骨牡蛎湯には身体の炎症を鎮める柴胡(さいこ)や気分を落ち着ける竜骨、牡蛎などが配合されています。・効果的な症状:不安、不眠、夜泣き、神経過敏、イライラ など・副作用:発疹、発赤・かゆみ、腹痛や下痢、胃の不快感 など抑肝散は神経の高ぶりを抑える効果があるといわれている漢方薬です。神経の高ぶりを抑えることで、不眠の改善にも効果があります。もともと子どもの夜泣きに使われていたことで知られていますが、現在では大人の精神的な症状に対しても使われています。・効果的な症状:不眠、夜泣き、神経過敏、イライラ、けいれん、手足の震え、ひきつけ など・副作用:発疹などの過敏症、食欲不振、胃部不快感、吐き気といった消化器の症状、倦怠感 など朝の起床困難、倦怠感、動悸、頭痛、立ちくらみ、失神などの症状が表れる疾患、「起立性調節障害」の治療にも漢方が処方される場合があります。起立時のめまいなどに漢方が効果があると言われています。・苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう): 立ちくらみやめまい、頭痛など・半夏白朮天麻湯(はんげびゃくじゅつてんまとう):胃弱、頭痛、ふらつき、めまいなど・補中益気湯(ほちゅうえっきとう):疲労倦怠など・小建中湯(しょうけんちゅうとう):腹痛、疲労倦怠など・真武湯(しんぶとう):冷え性、胃腸虚弱、神経衰弱などその他、発達障害に処方される薬などの関連コラムはこちら(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
2024年11月10日どのグループにもイマイチなじめなかった高校時代私は当時、イケイケのギャルで構成されたグループに憧れを抱きつつも、そちらにはどうしても属せませんでした。学校での成績は学年トップクラスの優等生キャラ、しかも家の生活上の縛りが厳しいというか……、私が「不良」になんかなったら、当時から不安定だった母がどれほどの大騒ぎをするかと思うと、「不良になれなかった」のです。そんなわけで、おとなしい優等生で構成されたグループに属していましたが、私はそこでもちょっと浮いていました。グループの皆は決して目立った言動はせず、いつもおっとりしていて静か。一方で私は極端な性格。先生に口論はふっかける、グループの中で唯一スカートを超ミニにしたりして制服を着崩す、ギャル風に肌を焼く、高いテンションでゲラゲラ笑ったりおどけたりする。自分はこのグループでも何か異質だ、でもかといってほかに行けるところもない、という不安が常に心のどこかにありました。優等生グループからハブにされてキレたある日、その優等生グループの皆が、休みの日にこっそり私だけ抜きにして遊びに出かけていたことが発覚。私はその一件で、自分が実はグループの皆からかなり敬遠されていたことに初めて気づき、大きなショックを受けました。私はそこでキレて「私に文句があるならはっきり言えばいいのに、こそこそ私抜きで約束して出かけるなんて! なんて不誠実なの!」みたいに怒ったと思います。いま思えばこれは一種の癇癪ですね……。当時は理解していませんでしたが、彼女らは普段の学校内で私に冷たくすることも、排除しようとすることもしなかったわけです。おそらく彼女らは、よくよく考えて相談した結果「宇樹に何か苦言を呈しても過剰反応して手に負えなくなるだけで事態の改善は見込めなさそうだ。普段の友だち関係が破綻するだろう。かといって一緒に遊びに行くのも疲れるよね……」ということになって、苦肉の策をとったのだと思います。あれは彼女らなりの最大限の優しさと視野の広い熟慮による、バランスのとれた行動だったはずなのですが、私はそれに対して激怒してしまった。今は本当に彼女らに申し訳なかったと思っていますし、その一件を経ても私をグループから追い出さずにつきあいつづけてくれた彼女らにはとても感謝しています。取り合いにも気づかない。人間関係の機微に疎かったグループからは敬遠される一方で、2人のクラスメートが宇樹の取り合いをしていた、という一件もありました。なんだか変だなと思っていたのです。普段あまり感情を荒立てることのない、冷静な理系の優等生の子2人が、私の前でなんだかムキになって言い合いをすることが多くて。何?? と思っていたある日、別の子から「なんで気づかないの? あの2人、宇樹のこと取り合いしてるんだよ」とイライラした口調で言われ、アゴが外れるかと思うほどびっくりしました。聞くに、私を取り合いしていた2人は、「優等生だけど、まじめで無難な枠から外れられないし、文系的なセンスも特にない」ことにフラストレーションを感じていたらしい。宇樹は、理系分野のことにも強い関心があり、彼女らと難しい話もできる。かつ型にはまらずエキセントリックで、校内誌に文章を投稿してファンがついたり、作文コンテストで賞を取ったりするなど、文芸のセンスもある……そういうわけで、私に憧れみたいなものを感じて、2人でどっちが私の関心を引けるか競っていたようなのです……。今となってはまあ、彼女らの立場になって考えればそんなこともあるかもなとも思うのですが、ともかくびっくりしました。なにせ、人間関係の機微に疎い。他者が相手に向ける感情に、良きにつけ悪きにつけ気づかない。優等生グループの皆から敬遠されていたのにも気づかなかったように、憧れを向けられて取り合いされていたのにも気づかなかったのですね。1対1の関係でも不器用さを発揮1対1の関係となると、やたらとどっぷり仲良くなる子がたまにいたのですが、いま思えばどの子も、多少なり生き方の不器用さみたいなものを抱えていて、共依存的な関係性になっていたと思います。一方で、ごくたまに、というか、小学校から大学まで考えて1人しかいないのですが、いわゆる陽キャで、笑いのセンスが素晴らしく、成績もよくてバランスのとれた子と、お互いに「大好き!」となることもありました。授業中に面白いボケを書いたメモを渡し合って、必死に震えながら笑いをこらえたりして、楽しかったなあ。いま思えば、この子は私の能力も性格も含め、私の良いところに惚れ込んでくれて、私のバランスの悪さも丸ごと許せるぐらいに好きになってくれたのだと思います。私は私で彼女に惚れ込んでいました。折り合いが悪いグループへの間違った接し方クラスに、いつも私には笑いどころのわからない内輪ノリでものすごく盛り上がり、大きな声でゲラゲラ笑ったり騒いだりしているグループがいました。私には当時自覚はなかったものの聴覚過敏があったので、頭にガンガン響いて不快で耐えられず、「何が面白いのかわかんない。うるさいんだけど。ちょっと静かにしてくれる?」と繰り返し言い放っていました。私にとっては事実を言っただけでしたが、こうした言い方が一般的には悪意のある攻撃ととられることがほとんどであることを、当時の私は知りませんでした。大学に進んである留学プログラムに参加したとき、本当にたまたまなのですが、上記のグループのサブボスだった子が別の学部から参加していました。そしてなんと彼女は、2週間の共同生活中ずっと、ほかの彼女のゼミ仲間(当然、私と彼女の間のことには無関係)を巻き込んで執拗な嫌がらせをしてきたのです。私にとってはまったく意味がわからず、理不尽きわまりないこと。お決まりの理詰めの大喧嘩で応酬したのですが、あまりの動揺と怒りに動悸がしてゼイゼイ息切れがしてきて、私の味方をしてくれたメンバーに背中をさすってもらったりしたのを覚えています。30歳を過ぎてASD(自閉スペクトラム症)の診断を受け、高校時代の自分の言動の何が間違っていたのかを知って理解しました。あの嫌がらせは、私が彼女にした「嫌がらせ」への「仕返し」だったのだと……。振り返って反省ばかり今の知識経験、自分や他者への理解度を持った状態で、高校時代をやり直したいと思うことがあります。当時の私にとっては、世界も他者もみんな敵で、世の中というのは自分の居場所のない冷たい場所でした。でも、30歳を過ぎてASD(自閉スペクトラム症)の診断を受け、ASD(自閉スペクトラム症)や定型発達について必死に学びつつ、トラウマ治療も受けてきた今になっては、当時の私の考え方はあまりに極端だったと思います。クラスメートにはたくさん嫌な思いをさせてしまったと思うし、自分も不必要な傷を負いました。でも、時代も時代だったし、仕方なかったかな。そう思うと少し気が楽ではありますが、ある意味、余計に悲しかったりします。今は友人に恵まれている今は、数は少ないものの、深く理解しあい、互いに高めあえる友人に恵まれています。やはりこの実現に最も大きく寄与したのはASD(自閉スペクトラム症)の診断で、次につらい環境からの脱出とトラウマ治療です。さらにここ1年ほどは言語学や発達心理学を学んだことで、定型発達の人のコミュニケーションのしかたについても深く網羅的に学ぶことができ、定型発達の人たちとも広く浅く、楽しくつきあえる場面も増えてきました。よい友人関係を作り、維持するには、何よりも自己理解、そして仕上げとして他者理解が不可欠だと感じます。長い道のりでしたが、これは歩むに値する道だったと、今は思っています。文/宇樹義子(監修・鈴木先生より)特に成績が優秀な高機能のASDの方は人間関係や感覚過敏で悩むことが多いようです。テストの成績が良いため、何か問題があっても見過ごされてしまうことも多く、周囲からは何ら病的には感じられていないのです。私のクリニックでは社会人になって初めて神経発達症を疑って相談してくるケースが増えています。SNSなどを見て自分でそうではないかと疑って来院してきます。親御さんも同じASD系統のこともあるため、今まで誰にも相談してこなかったり、その後精神科で相談しても成績が良くて大学を出ているから問題ないと言われたりといった「大人になってしまったASD」の患者さんたちなのです。その裏には実はADHDもあり、受診することでようやく治療にこぎつけられています。小児科に通っている時期に早期介入していればその後の人生が少しは良くなったのかもしれません。ただ、小児科も神経発達症専門でなければ気づかれないことも多いのです。高校生になるとどこに相談したらいいかもわからなくなります。日本では思春期外来という看板はほぼ見当たりません。人生のどこかで気づき、診断されることで初めて過去のさまざまな問題が自分の中で解決できればいいのではないでしょうか。前の記事はこちら(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。
2024年11月09日発語がない娘。私は1歳3か月の頃から「何か障害があるのではないか?」と思い……現在20歳の娘は、3歳8か月で軽度知的障害を伴うASD(自閉スペクトラム症/当時は広汎性発達障害)と診断されました。娘は注意力散漫な面があるとともに、なにかにつまずくとひどく落ち込んでしまうところがあります。でも素直で真面目な性格で、愛嬌があるかわいい子です。今は穏やかな日々を過ごすことができていますが、それは3歳後半から通い出した児童発達支援のおかげだと思っています。なかなか発語らしいものが出なかった娘。私は娘が1歳3か月の頃から「何か障害があるのではないか」と思っていました。ですが、健診で指摘を受けることなく、そのまま幼稚園へ入園。その後さまざまなトラブルが起こるようになったのです。Upload By ユーザー体験談入園後間もなく加配が。年少クラスと未就園児クラスへ半々に通うように娘は発語がないだけでなく、じっとしていることができませんでした。椅子に数分と座っていられませんでしたから、ほかのお子さんたちと同じように行動することはとても難しい状況だったようです。まだ診断はありませんでしたが、3歳から入園して間もなく娘に加配の先生がついてくださるようになりました。そして、園と保護者で相談をし、娘に園に早く慣れてもらうために、登園は午前中のみ、1週間のうち3日は在籍している年少クラスへ、残りの2日は未就園児クラスへ通うことになりました。障害や特性のある子どもに対して理解のある園だったので、柔軟に対応してくださったのだと思います。その後、娘はなんとか幼稚園に通っていたのですが、相変わらず話すことはありませんでした。ある日、加配の先生、担任の先生、副園長先生たちから「娘ちゃんはお話しをしません。保健センターへ相談してみませんか」と提案いただきました。ショックはありませんでした。ずっと一人で娘の障害を疑っていましたが、他人からの指摘に「やっぱり……!」と確信を持った瞬間でした。私は、市の保健センターへ相談へ向かいました。Upload By ユーザー体験談居住地に療育センターがない!往復2時間半かけて隣の市まで通う日々市の保健センターでは、臨床心理士さんと娘、私で何度か面談をし、検査が行われました。やはり娘はASD(自閉スペクトラム症)だと思われる面が多いと指摘され、児童発達支援へつながることになりました。ただ当時、私が住んでいる地域には療育センターがなかったのです。臨床心理士さんに探していただいたところ、ありがたいことに隣の市の療育センターが受け入れてくれることになりました。さっそく紹介状を書いていただき、娘は隣の市の施設へ月2回通うことになりました。保健センターへの相談からここまでは約1か月半という、かなりスピーディな展開でした。ただ、隣市の療育センターまでは往復で2時間半!月2回といえども、最初は私も娘も、精神的、体力的にきつく大変でした。※当時は療育センターという名称でしたが現在は「児童発達支援事業所」「児童発達支援センター」などに変更されています。参考:児童福祉法等の一部を改正する法律(令和4年法律第6 6号)の概要|こども家庭庁児童発達支援での刺激は、娘の成長の種に距離は遠かったですが、3歳後半から満6歳になる就学前ギリギリまで、2年6か月ほど療育センターに通って本当に良かったと感じています。児童発達支援を始めるようになってからも、教室から飛び出す場面はありましたが、娘をみて下さった心理士さんは丁寧に対応してくれ、落ち着いてみんなと同じ行動が取れる場面が少しずつ増えていきました。ずっと同じ心理士さんに見ていただけたのも、安心材料でした。それまで娘の世界は家庭と幼稚園のみでしたが、療育センターという居場所ができ、そこで適切な関わり方をしていただけると、ある瞬間ぐっと成長することに気づきました。適切な他者からの刺激はこんなにも子どもを伸ばしてくれるのかと驚きました。さまざまなことを教えてもらい、それを娘は自分のペースで吸収していったようです。Upload By ユーザー体験談幼稚園、療育センターの方と相談し、年中時は年少クラス、年長時はからは年中クラスのみに通いましたが、卒園については「大丈夫!」とお墨付きをもらい、娘と同級生の年長さんたちと一緒に卒園できました。そこには入園当時トラブル続きだったのが嘘のように成長した娘がいました。児童発達支援での時間があったからこそ、現在の穏やかな日々がある大人になった今、じっとしていられないということはありません。たまに噛み合わないこともありますが、会話も問題なく続けることができ、職場の人たちとの関係も良好です。児童発達支援での時間があったからこそ、現在の穏やかな日々があるんだなあと実感しています。ただ、働くようになりお金の管理もだいぶできるようになりましたが、料理や洗濯などはまだまだ……。でも、今のように明るく過ごしてくれれば、それでいいかなとも思います。親なきあとのことは心配ではありますが、これからもさまざまな刺激の中、娘のペースで成長して人生を楽しんでもらえればと思います。Upload By ユーザー体験談イラスト/星あかりエピソード参考/S.K(コメント:井上先生より)お子さんが成人期の今、幼児期を振り返るとその当時悩んでいたことや受けて良かった支援、反省点など、いろいろな思いがあるでしょう。発語の遅れなどに悩まれていた幼児期、療育センターに早期につながり、お子さんに合ったプログラムを受けることによって少しずつ成長を感じられるようになられたのですね。幼稚園と専門機関を並行して活用する並行通園は当時からありましたが、通われていた療育センターと在籍園との連携はとてもうまくいっていたのではないでしょうか。幼児期に親子を支えるさまざまな地域機関が互いに連携できることも大切だと思います。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2024年11月08日