StudyHackerこどもまなび☆ラボがお届けする新着記事一覧 (4/27)
思い込みや経験則を離れ、科学的なデータを重視する「エビデンス・ベースド」の考え方に立って、理数系教育を見つめ直してきた本連載。子どもたちの「ニガテ」の原因から、効果的な学習法、未来の学びの姿まで、算数にまつわるさまざまな知見をお伝えしてきました。第14回目は視野を大きく広げ、「算数を学ぶことが、子どもたちの将来にどのように役立つのか」ということをお話ししたいと思います。算数が「論理的思考力」の土壌を育む「算数って、なんのために勉強するの?」お子さまにこんな質問を投げかけられて、戸惑った経験のある方は多いのではないでしょうか。たしかに、算数で学ぶ単元のなかには、日常生活と直接結びつかないものも多いですから、お子さまが「こんな公式覚えても、テストでしか使わないじゃん!」「こんな複雑な計算、なんの意味があるの?」と言うのも、無理はありません。算数は一見、ただ面倒な問題を解くだけの教科に思えますよね。でもじつは、算数を学ぶことによって身につけられる力は、今後どれだけ科学技術が進歩しても必要になってくる能力です。その能力とは「論理的思考力」。論理的思考とは、物事をひとつひとつ筋道立てて、わかりやすく説明できるような考え方のこと。これは、直感や感情とは対立する考え方です。たとえば、志望校を決めるとき、「この学校が気に入った!」「なんとなく好き!」と直感で決める人もいれば、「偏差値や家からの距離、学費などを考えると、この学校がいい」「将来〇〇になりたいから、そこにつながる学校にしよう」と論理的に考えて決める人もいます。もちろん、お子さまが自分の将来を考えるうえで、直感と論理的思考のどちらが正しいか、ということは一概には言えません。ただ、周囲を説得したいときには、論理的思考を経ているかどうかが大きな意味をもってきます。理由がしっかりしているほうが、多くの人を納得させられるからです。たとえば、文章題を解くときのことを考えてみましょう。式を立てるには、問題文の要素をひとつひとつ分析し、検討して、適切に組み合わせることが必要です。「なんとなく」で立てた式では、正しい答えは導かれませんね。算数・数学では、「文章を式にして落とし込む」トレーニングが繰り返し行なわれます。これはまさに、論理的思考の訓練です。分析的に物事を考え、それを適切に使って式を立てることによって、のちの論理的思考の土台がつくられていくのです。論理的思考を身につけると、算数に限らず、学校の成績はよくなっていきます。もしテストで不正解があったとしても、論理的思考ができれば「どうして間違えたのか」「自分に足りなかった知識は何か」「どんな勉強が必要か」というようにミスを振り返り、的確に対応することができるからです。2030年、79万人のIT人材が不足する!?算数を学ぶことは、お子さまの将来にもダイレクトに関わってきます。そのことを裏づける事実のひとつが、日本が直面する大幅なIT人材不足です。経済産業省の予測によると、2015年時点で約17万人のIT人材不足が起きているといいます。現在の中学生の子どもたちが働き出す2030年には、甘く見積もって41万人、厳しく見積もると79万人のIT人材不足が見込まれているのです。つまり、裏を返せば、「ITの知識を身につけておけば、将来は職に困らない」とも言えるでしょう。少子高齢化や人口減少など、日本の課題を支える技術としてのIT産業への期待は高まるばかりです。たとえば、成長産業のひとつである介護分野においても、今後のIT化に注目が集まっています。介護士の人材不足はよく知られていますが、関連する事務作業の多さも人材不足に拍車をかけています。被介護者の状態共有など、ITによって削減されるべき時間工数は多いと言われています。あるいは、最近身近になりつつある無人レジ化がさらに進めば、将来的には無人コンビニも登場するでしょう。そうなると、無人店舗を守るための技術が求められることになります。また、決済も現金から電子マネーが主流になれば、それに関連する専門知識が今後の役に立つはずです。このようなIT産業の裏には、設計・管理・整備を行なうエンジニアの存在が必要不可欠。IT人材へのニーズがさらに高まっていくことは間違いないでしょう。未来を生きていく子どもたちは、もしかするとITと関わらずに仕事をするほうが難しくなるかもしれません。幸福な未来のために「算数」は必要である「そう言われても、うちの子は算数が本当に苦手で……。エンジニアにも理系職にも、とても就けそうにありません」というおうちの方も、もちろんいらっしゃるでしょう。しかし、なにもみんながエンジニアになる必要はありません。高度なプログラミングやデータ解析が自分でできなくても、「エンジニアにどんな仕事を依頼し、どんな成果を挙げるか」ということを管理するマネージャーとしての人材も同時に必要になります。消費者のニーズを分析して今後の課題を適切に洗い出し、解決するために必要な指示を考える。この問題解決のステップは、先に述べた、文章題を解くステップと重なります。マネージャー業務もまた、論理的思考あってのものです。文系・理系にかかわらず、算数で育まれる「論理的思考力」によって、エンジニアやサイエンティストと対等に会話ができる能力こそ、これからの人材に求められる力なのです。また、数字に強いこと、論理的思考ができることは、仕事をするうえで大いに役立ちます。したがって、社内でプロジェクトを任されたり、望むポストに就くことができるなど、理数系の職場以外でも、自分の力を多く発揮する機会をもてるようになるでしょう。算数・数学を学ぶことで得られる基礎的な力は、お子さまのこれからの人生が、充実した幸福なものであるために、欠かすことのできない財産なのです。以上をふまえて、冒頭の「算数ってなんのために勉強するの?」というお子さまの問いに答えるなら、こう教えてあげてください。「算数を勉強すると、自分で考える力が身につくんだ。それは、一生役に立つ財産になるんだよ」(※上の問題の答えは【3】)次回はいよいよ最終回。これまでの連載を振り返りながら、未来の教育のあり方を見つめます。お楽しみに!子どもの成績アップ 効果で選ぶなら 【RISU算数】『10億件の学習データが教える 理系が得意な子の育て方』今木智隆 著/文響社(2019)■ 算数塾「RISU」代表・今木智隆先生 インタビュー記事一覧第1回:子どもを「算数嫌い」にしない大原則。幼児期からできる“算数好きの基礎”の築き方第2回:子どもが勉強で成果を出せないのは、親の「勘違い」が原因かもしれない第3回:10億件のデータを調べてわかった、小学生が「ずば抜けて苦手」な算数の単元と例題第4回:「算数の文章題が苦手」な子どもが、ひねった応用問題でも解けるようになる教育法
2021年03月30日「遊んでばかりいないで少しは勉強しなさい!」「いま勉強しておかないと、将来困ることになるわよ」、そんな声かけをしていませんか。でもこれからの時代は、「いま遊んでおかないと、将来困ることになる」かもしれませんよ?今回は、幼少期に遊ぶことの必要性について考えてみましょう。「10歳までに思いきり遊べた子ども」は強い!「子どもの頃に遊べていない人間は将来的に伸びない」「“10歳までに思いきり遊ぶ” という経験は過剰な受験勉強よりも大切」――こう言いきるのは、東京都で義務教育初の民間校長として注目を集めた教育改革実践家・藤原和博氏。いままでは「正解に速くたどり着ける力(基礎学力)」があれば社会で活躍できました。しかしこれからの時代、「基礎学力」だけでは社会の変化に太刀打ちできないようです。では、どんな力が必要となってくるのでしょう。藤原氏は、「直面する問題に対して自分や他者がもつ知識、経験、技術を組み合わせて多くの仮説を立てる力(情報編集力)」を鍛えるべきだとしています。なぜならば、今後さらに多様化していく社会の問題に「決まった正解はない」からです。2021年1月に行なわれた大学入学共通テストでも、思考力・判断力・表現力など「実社会で通用する力」が重視されました。そこで今回は、子どもたちの「情報編集力」や「実社会で通用する力」を確実に伸ばす方法をお伝えします。その方法とは「子どもの頃に思いきり遊ぶこと」。それだけ!?そう感じた親御さんも多いかもしれません。しかし、幼少期の「遊び」は子どもの人生を左右するほどに重要なのです。問題解決を得意としない、エリートの若者たちなぜ、子どもの頃に遊ぶと社会に出てから活躍できるのか――NASA・ジェット推進研究所の採用基準にヒントがありそうです。以前は、国で最高の学校を最高の成績で卒業したいわゆるエリートを採用することに重点が置かれていたが、近年、そういう若者の多くが必ずしも問題解決を得意としていないことがわかってきた。(中略)そこでこれらの機関は、採用の過程で、小児期と思春期に手を使ってユニークな遊びや作業をした経歴を持つ卒業生の獲得を優先し始めた。子どものときにものを作り、遊んだ経歴に特徴のある人が、問題解決をいちばん得意とする人たちだった。(引用元:東洋経済オンライン|「遊びの時間が足りない子」の結構残念な行く末)これは驚くべきことではないでしょうか。「最高の学校を最高の成績で卒業したエリート」よりも、「子どもの頃に手を使ってユニークな遊びをしていた若者」のほうが評価される時代になってきたのです。UCLA医科大学教授のダニエル・J・シーゲル氏と、児童青年心理療法士のティナ・ペイン・ブライソン氏の共著『「自己肯定感」を高める子育て』によると、「遊び」には数えきれないほどの利点があるとのこと。遊びは子どもの「仕事」だ。遊びは認知のスキルを育て、言語能力と問題解決能力、さらには計画づくりや予測、結果の予期、予想外の出来事への順応など、高度な実行機能を高める。(引用元:東洋経済オンライン|「遊ぶ子」と「忙しい子」自己肯定感に出る大差)なるほど、「遊び」は学力などの認知スキル(IQ)も上げてくれるのですね。また、「予想外の出来事への順応」も親としては嬉しい限り。たしかに、「外で遊んでいたら急に雨が降ってきた」「ブランコの順番を守らない友だちがいる」など、遊んでいれば大なり小なりトラブルはあるものです。予想外の出来事に対処することで、生きるためのさまざまな力がつくのでしょう。「遊び」によって鍛えられる力では、どんな「遊び」がどんな力を育むのか。いくつかの遊びを掘り下げて見てみましょう。【外遊び】→問題解決力・判断力・思考力などNASA・ジェット推進研究所の採用方針にもあるように、これからの時代、問題解決力は必須です。この問題解決力が「外遊び」で身につくと主張するのは、『すこしの努力で「できる子」をつくる』著者で生物学者の池田清彦氏。特に虫採りや魚釣り、山登りやキャンプといった、自然のなかでの遊びをすすめています。遊んでいて困難に直面したときこそがチャンス。「危機や困難を回避する方法」を探す経験が問題解決力を押し上げます。また、外遊びの定番とも言える鬼ごっこでは、「どうやったら捕まらずに逃げきれる?」と頭をひねることにより、思考力や判断力が鍛えられます。【折り紙遊び】→思考力・空間認識力・集中力など先の読めない時代、思考力は強力な武器となるでしょう。折り紙は、思考力を鍛える遊びです。たとえば、折り紙の上手な折り方を考えるのは「論理的思考力」。その折り紙に顔を描いたり、部屋をつくってあげたりするのは「創造的思考力」。寂しそうだからと “友だち” をたくさん折るのは、「ケア的思考力(他者への気遣いや共感など)」です。また、折る向きや折る間隔を考えながら作業すると空間認識力が鍛えられるということも、脳科学の観点から認められています。脳医学者の瀧靖之氏は、集中力も強化されると話していますよ。【ごっこ遊び】→創造力・想像力など東北大学加齢医学研究所の川島隆太教授によると、「ごっこ遊び」は、場面やストーリーを自分のなかでつくり出す必要があるため、創造力が育まれるのだそう。四角い積み木を電話に見立てたり、砂場の砂を「小麦粉」だと言ってみたり、子どもの創造力・想像力に驚いた経験はありませんか?教育学者で東京大学名誉教授の汐見稔幸氏も、「なにもない場所から遊びをつくり出す経験は、AI技術が発達していくこれからの時代に特に必要である」と話しています。これからは、ゼロからイチをつくることのできる人材が求められるはず。ごっこ遊びで創造力をぐんぐん伸ばしてあげましょう!【友だちとの遊び】→レジリエンス・コミュニケーション能力など「一緒に遊ぼうと誘ったら断られた」「遊びのルールについて友だちとケンカになった」など子ども同士でのトラブルに悩む親御さんも多いかもしれません。ですが、子どもはそのトラブルから多くを学び、レジリエンス(回復力・復元力)やコミュニケーション能力を育みます。レジリエンスがあれば、「〇〇ちゃんは積み木遊びが好きじゃなかったのかな?ほかの遊びに誘ってみよう」と、必要以上に落ち込むことなく、次の行動を考えることができますし、コミュニケーション能力があれば、自分の考えをうまく相手に伝えることが可能です。ケンカになりそうな場面でも、必要以上に親が介入することはやめましょう。「習い事」と「遊ぶ時間」、どちらが大切?上記で挙げた4つは、子どもの遊びのほんの一例です。子どもたちは、もっとたくさんの遊びをつくり出すことができるでしょう。しかし残念なことに、いまの子どもたちは習い事や勉強に割く時間が増え、自由に遊ぶ時間が減ってしまっています。NPO法人 子育て学協会会長の山本直美氏によると、「毎日習い事」「土日は習い事のかけもち」といった子どもも少なくないのだとか。そこで、前出のダニエル・J・シーゲル氏とティナ・ペイン・ブライソン氏は、スケジュールを詰め込みすぎていないかどうかを定期的にチェックすべきと提案しています。以下1~5は子どもの様子、6~7は親の行動です。イエス・ノーで答えてみてください。疲れていたり不機嫌だったりと、ストレスがたまっている様子だ。忙しすぎて自由な時間がないようだ。十分な睡眠がとれていない。友だちやきょうだいと気ままに過ごす時間がないようだ。家族みんなが忙しすぎて、決まった時間に一緒に夕食がとれない。(※親の行動)子どもに「急いで!」とよく言う。(※親の行動)忙しくてストレスがたまっているので子どもに対してもイライラしがち。 いかがでしたか。もし1つでもイエスがあったならば、子どものスケジュールについて少し考えたほうがよさそうです。そして2つ以上のイエスがあった方は、スケジュールの見直しを真剣に考えてみてください。そして、子どもが自由に遊ぶ時間をつくってあげましょう。前出の藤原氏は、「人生100年時代」と言われているいま、大学入学や有名企業への就職を目標とするのは危険だと警鐘を鳴らしています。どんな社会になったとしても、何歳になったときでも、自分の生きる道を自身で切り開いていけるのは、「10歳までに思いきり遊んだ、発想力の豊かな人」なのです。***幼児期は、親子での遊びも重要です。「こうしたほうがいいんじゃない?」「それはやったらダメよ」なんて言わず、ただ子どもと一緒に目一杯楽しんでください。遊び込んだ子どもの未来は明るいですよ!(参考)STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|10年後に必要となる力――正解がない問題に多くの仮説を立てる「情報編集力」STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|過剰な受験勉強よりも大切な、「10歳までに思い切り遊ぶ」という経験STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|やりたいことを目いっぱいやって失敗した。その経験が「折れない心」を育てるSTUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|「外遊び」は有能感や自己肯定感を伸ばす――でも、効果のほどは「親次第」アスコム監修(2011),『10歳までの子育ての教科書』, アスコム.汐見稔幸(2008),『子どもの身体力の基本は遊びです』, 旬報社.東洋経済オンライン|「遊びの時間が足りない子」の結構残念な行く末東洋経済オンライン|「遊ぶ子」と「忙しい子」自己肯定感に出る大差日経デュアル|幼児期の「遊び込む」経験が、思考力ある子を育てるベネッセ教育情報サイト|乳幼児期から育む、折れない心【前編】困難に負けない、レジリエンスとはるるぶ Kids|おりがみ遊びがすごい!脳科学者に聞く子どもへの効果 [ハシビロコウの折り方付き]株式会社エポック社|ー報道用資料ー「シルバニアファミリー」は、子どもが人の関係性を学べる「情操玩具」の役割を果たしていることが示唆されました。たまひよ|【専門家監修】【月齢別遊び・1才6カ月~2才ごろ】「見立て遊び」「ごっこ遊び」で想像力&創造力をはぐくもう月刊トイジャーナル|子どもは遊びで創造力を育み、我慢する力とコミュニケーション能力を学ぶ日経デュアル|もしかして親のエゴ?子どもの「習い事」落とし穴プレジデントオンライン|「教育熱心な親の子」が4年生で潰れる根本原因日経デュアル|藤原和博 中学受験すると「稼ぐ人」になれるのか?
2021年03月24日前回の連載では、おうち時間の気分転換になるような算数の発展問題をご紹介しました。お子さまと一緒に、楽しみながら取り組んでいただけたでしょうか?普段、「勉強しなさい!」と急かしてもなかなか机に向かってくれないお子さまも多いと思います。でも、「この問題、難しいんだけど一緒に考えてみない?」と、ゲーム感覚で誘ってみると、意外と食いついてくれたのではないでしょうか。きっと、急かされてしぶしぶ勉強するよりも、おうちの方と楽しみながら勉強したほうが、お子さまの記憶にも残りやすいはずです。今回も引き続き、思考力が身につく算数の発展問題をご紹介したいと思います。今回は、お子さまが苦手意識をもちやすい「いろいろな単位」を扱う問題です。1. 多くの子どもたちが苦手とする「水のかさ」の問題<第1問>いまの時刻を推理しよう次の文章を読んで、いまの時刻を答えましょう。夜の7時から1秒に10mLずつのお湯を湯ぶねにため続けました。ちょうどいま、湯ぶねに30Lのお湯がたまっています。いまの時刻は夜の何時何分でしょうか。1秒で10mLのお湯がたまるということは、60秒(=1分)で600mL、600秒(=10分)で6,000mLのお湯をためられることになります。ここで、6,000mLをLに換算すると、6Lですね。10分で6Lのお湯がたまるということは、30Lのお湯をためるのには何分かかるでしょうか。それを導くために必要なのが、この式です。30÷6=5すると、30Lのお湯をためるには、6Lを5回繰り返せばよいことがわかります。ここで、お湯を6Lためるのにかかる時間は10分ですから、お湯をため始めた7時から、10分を5回繰り返せば、30Lのお湯をためることができますね。よって、答えは7時+(10×5)分で、7時50分です。「水のかさ」と「時間」という2つの単位を同時に扱う、少し難しい問題でしたが、正解できたでしょうか?多くの子どもたちが苦手とする単位の単元でも、特につまずきやすいのが、このような「水のかさ」についての問題です。「水のかさ」の単元では、3つの単位が出てきます。L(リットル)dL(デシリットル)mL(ミリリットル)特に、dLは普段の生活ではあまり使いませんから、お子さまが混乱してしまうのはもちろん、おうちの方でも少し迷ってしまうかもしれません。しかし、「水のかさ」の問題を解くためには、これらの単位を正しく変換することが求められます。じつは、液体の量を表すこれらの単位は、基本となる単位「リットル」に、「デシ」と「ミリ」がついてバリエーションを増やしたもの。「d(デシ)」は、そもそもが「10個に分ける」を意味する言葉です。つまり、「1L=10dL」が意味するのは、「1Lを10個に分けると1dLになる」ということ。同じように、「m(ミリ)」は「1000個に分ける」という意味なので、「1L=1000mL」は「1Lを1000個に分けると1mLになる」ということなのです。単位の苦手を克服するには、ただ暗記するのではなく、このように「そもそもの意味」に返ってしっかり理解することが大切。言葉の意味と結びつけることで、記憶にも残りやすくなるはずです。2. 日常生活との関わりが深い「お金の計算」に関する問題<第2問>代金を計算しよう次の文章を読んで、アメ1コとクッキー1コを組み合わせた代金を答えましょう。アイスとアメとクッキーが1コずつあります。これらを組み合わせた代金は、下のようになっています。【1】アイス、アメ、クッキー:230円【2】アイス、クッキー:190円【3】アイス、アメ:160円2問目は、日常生活との関わりが深い「お金の計算」に関する問題です。この問題を解くにはまず、それぞれの文章を式にして並べてみましょう。【1】アイス+アメ+クッキー=230円【2】アイス+クッキー=190円【3】アイス+アメ=160円【1】と【2】を比べるとアメの値段が、【1】と【3】を比べるとクッキーの値段がわかりそうですね。【1】の230円と【2】の190円の差がアメの値段ですから、アメの値段は、230円−190円=40円同じように、【1】の230円と【3】の160円の差が、クッキーの値段ですから、クッキーの値段は、230円−160円=70円よって、アメ1コとクッキー1コを組み合わせた代金は、40円+70円=110円 になります。3. 状況を整理しながら解く「時間」に関する問題<第3問>起きた時間が早い人から順にならべよう次の文章を読んで、起きた時間が早い人から順にならべましょう。朝起きた時間について、はなさん、こうきさん、たおさん、めぐみさんは下のように話しています。はなさん:たおさんが起きる15分前に起きました。こうきさん:めぐみさんが起きた15分後に起きました。たおさん:こうきさんが起きる10分前に起きました。めぐみさん:はなさんが起きた10分後に起きました。この問題を解くには、自分で具体的な時刻をあてはめて、ひとりずつ状況を整理していくのがよいでしょう。たとえば、はなさんが起きた時間を仮に7時とすると、はなさんの話から、たおさんは7時15分に起きたことがわかります。また、めぐみさんの話から、めぐみさんは7時10分に起きたことがわかります。こうきさんが起きたのは、めぐみさんが起きた15分後ですから、7時25分ですね。4人の起きた時間を整理すると、以下になります。はなさん:7時こうきさん:7時25分たおさん:7時15分めぐみさん:7時10分よって答えは、はなさん→めぐみさん→たおさん→こうきさん です。「文章題」に苦手意識をもたないために今回は、お子様がつまずきやすい「水のかさ」「お金の計算」「時間」を扱う文章題をご紹介しました。単純な計算問題とは異なり、問題文を読んで自分で状況を整理し、イチから式を立てなければならない文章題は、「速く解くためには邪魔」「ひっかけ問題ばかりでイヤ」と、多くの子どもたちから敬遠されているのが現実です。しかし、前回の連載でもお伝えしたように、受験の場面では、算数に限らず、問題文の長いものが多く出題されています。文章題に苦手意識をもつことは、ほかの科目の成績にも悪い影響を与えかねないのです。子どもの文章題への苦手意識を取り除くために、おうちの方にぜひ覚えておいていただきたいことがひとつあります。それは、「速く解くことに価値を置きすぎない」ということ。文章題を解く上で大切なのは、「速く答えを出すこと」ではありません。むしろ、答えを出すまでの、「文章を読み、必要な要素を抜き出し、考えて式を立てる」というプロセスのほうが大切なのです。このプロセスはあらゆる問題解決の基本で、文章題に取り組むことで得られる問題解決能力は、将来にわたってお子様の役に立つ財産となるはずです。今回ご紹介した問題が、「自分の頭でじっくり考えること」の大切さや楽しさに気づき、文章題への意識を変えるきっかけになれば幸いです。子どもの成績アップ 効果で選ぶなら 【RISU算数】『10億件の学習データが教える 理系が得意な子の育て方』今木智隆 著/文響社(2019)■ 算数塾「RISU」代表・今木智隆先生 インタビュー記事一覧第1回:子どもを「算数嫌い」にしない大原則。幼児期からできる“算数好きの基礎”の築き方第2回:子どもが勉強で成果を出せないのは、親の「勘違い」が原因かもしれない第3回:10億件のデータを調べてわかった、小学生が「ずば抜けて苦手」な算数の単元と例題第4回:「算数の文章題が苦手」な子どもが、ひねった応用問題でも解けるようになる教育法
2021年03月17日「危ないから気をつけなさいって言ったでしょう」「(泣きながら)だって……」「言い訳しないの!ほら、ごめんなさいは?」よくある光景ですよね。お母さんやお父さんに怒られて、「だって」と口にする子ども。みなさんは、この子どものことを「きちんと謝ることができない子だ」と思いますか?じつは、子どもの発言は間違っていません。そして、子どもが素直に謝れなかった理由は、このなにげない会話のなかに隠されています。どうやら、素直に「ごめんなさい」が言えない子どもは、「お父さん(お母さん)は私のことを信じてくれていない」という親に対する不信感をもっているようなのです。今回は、わが子が「ごめんなさい」と心から言えるように、親がとるべき対応について考えてみましょう。「イヤイヤ期」は子どもが健全に発達している証拠「子どもはいつから謝ることができるのか」を知るためには、まず、子どもの心理面での発達を把握する必要があります。有名な心理学者エリクソンの「発達段階説」を参考に、子どもの心の変化を押さえておきましょう。【乳児期】0歳~1歳半頃人間への基本的信頼感を築く時期。お腹が空いた、オムツが気持ち悪い、寂しいなどの感情を親がしっかり受け止めて、その不快や不安を取り除いてあげることで、人に対する基本的信頼感が育まれます。【幼児前期】1歳半~3歳頃意志が芽生え、自分で行動したがる時期。「イヤイヤ期」と呼ばれる子どもの困った行動も、じつは健全な発達段階の一部なのです。そしてこの頃、親によるしつけも始まります。また「恥ずかしい」という気持ちをもち始める時期です。【遊戯期】3歳~5歳頃自分でできることが増える、成長著しい時期。想像力と創造性を発揮する自由な遊びを通して、自発性や積極性を身につけていきます。善悪の判断、安全・危険の判断、社会のルールなどを覚えていく時期です。【学童期】5歳~12歳頃幼稚園や小学校生活のなかで、勤勉性や協調性を学ぶ時期。自分と他人を比較して劣等感を抱き始めるときでもあります。頑張って苦労を乗り越える経験をすれば、「自分はやれば出来るんだ」という自己効力感が向上するでしょう。次に、この発達段階に「謝る」という行動を照らし合わせてみます。子どもは何歳から「ごめんなさい」を理解できるの?発達段階を知ると、子どもに「ごめんなさい」を教えるべき適齢期が見えてきます。【乳児期~幼児前期】0歳~3歳頃3歳くらいまでは、自我を育み、自己主張できるようになることのほうが大事な時期。「仲間に入りたい」といった積極的な行動も見られます。しかし、感情のコントロールが難しくお友だちとケンカすることも多いので、まだ “謝罪適齢期” ではありません。とはいえ、この時期に「他者を傷つけてはいけない」などのしつけは始めましょう。【遊戯期】3歳~5歳頃東京大学大学院教授の教育心理学者・遠藤利彦氏によると、いろいろな経験を経て、社会性が身についてくるのは4歳頃からなのだそう。社会にはルールがあることを理解し、周りの人たちと仲良くしたいと思うようになるので、この頃から「謝る」ことができるように。 “謝罪適齢期初期” と言えるでしょう。【学童期】5歳~12歳頃「謝罪には『誠実な謝罪』と『道具的謝罪』がある」と言うのは、京都大学こころの未来研究センター研究員である田村綾菜氏。前者は「心から謝ること」で、後者は気持ちとは関係なく「円滑な関係を保つためや、場を納めるための謝罪」とのこと。6歳以前は後者の傾向が強いそうですが、協調性が身につき、罪悪感の感情をもち始める6歳頃からは、心から謝ることができるように。その後は成長とともに、人間関係も複雑になっていくため、「誠実な謝罪」と「道具的謝罪」を使い分けながら、コミュニケーション力を高めていくことになります。このように、子どもが「ごめんなさい」と言えるようになるのは4歳頃から、心から謝ることができるようになるのは6歳頃からなのですね。当然、発育には個人差があるので、個々の発達ペースに合わせて、「謝る」という行為を促していく必要があると言えるでしょう。すぐに謝らせようとする親が招く深刻な問題日本社会では、礼儀やルールを守ることをとても大切にしています。その影響で、しつけのベースには「人に迷惑をかけないこと」という意識が強く根づいているのです。そのため、「ほら、ごめんなさいは?」と言ってしまう親御さんが多いのかもしれません。たとえば、「おもちゃの取り合い」で子どもがお友だちを強く押してしまいました。お友だちが泣き始めたあたりで、親は状況に気づきます。親「〇〇ちゃん泣いてるじゃない。どうしてそんな乱暴するの。謝りなさい!」子「でもね……」親「言い訳しないの。ほら、早く謝りなさい」子「ごめんなさい……」この会話を、どう思いますか?親は、子どもふたりのあいだで何が起こったのか、最初から見ていませんでした。泣いている原因は小競り合いですが、小競り合いになった原因は知りません。それなのに、問題の一部だけを見て、子どもに謝罪を求めているのです。大人に置き換えて考えてみましょう。会社で上司に呼ばれ、「あなたの対応が悪いと取引先からクレームが来ている」と叱責されたとします。そして、何があったかなどの事情も聞かれずに、ただひたすら責められ続ける――あなたならどうしますか?「ちょっと待ってください!事情を説明させてください」と言いますよね。それと同じです。子どもにも言い分はあります。ですから、子どもが「でもね……」と言うのは、とても正当なことなのです。小田原短期大学保育学科准教授で教育心理学を研究している風間みどり氏は、日本のしつけは「気持ち主義」だと述べています。しかし、ここでの気持ちは「他者の気持ち」であり、「子ども本人の気持ち」ではありません。親が「お友だちの気持ち」を優先するほど、子どもは言い訳すらできない状況に追いやられてしまうのです。さらに、臨床心理士の福田由紀子氏は、「『ごめんなさい』を言いすぎる子」に警鐘を鳴らしています。「とりあえず謝る」クセがついてしまうと、「自分は悪くない」と思っていても謝ります。そうやって自分の気持ちを押し殺し続けると、人の顔色ばかり伺うようになり、自己肯定感もどんどん下がってしまうでしょう。頭ごなしに子どもを怒ることのデメリットを改めて認識する必要がありそうです。親に話を聞いてもらった子は、心から謝ることができる子どもには、心から「ごめんなさい」を言えるような人間になってほしい……親であればそう思うもの。そのためには「子どもの話をきちんと聞くこと」が一番大切なのだそう。子どもの気持ちをしっかりと受け止めたうえで、冷静に状況判断し、何が悪くて謝る必要があるのかを、子どもに説明します。前出の福田氏は、その際に「責任」について教えるべきだと言います。自分が100パーセント悪いとか、相手が全部悪いといったことは、あまり起こりません。「自分にも悪いところはあったけれど、自分だけが悪いわけではない」ということがほとんどではないでしょうか。自分の非を認めることは、勇気も要りますし、大切なことでもありますが、だからといって30しかない責任を100負う必要はないのです。交通事故の過失割合のように、自分の責任はどこにあり、どの程度のものなのかということを、判断する習慣をつけましょう。そして、子どもにも考えさせましょう。(引用元:All About|謝り癖がある子供の心理「ごめんなさい」を言い過ぎる子への対応法)「自分だけが悪いわけではないことを親がわかってくれた」というだけで、子どもの心は軽くなります。そのうえで「自分もちょっとは悪かったな」と考えることができれば、相手に素直に謝ることができるでしょう。「0か100か」と白黒つけるのではなく、そのときの状況次第で、「どのくらい悪かったかな?」と考えられるようになってほしいものですね。きっとコミュニケーション能力も向上するはず。何より、「親は自分をわかってくれているという安心感」は子どもの自己肯定感を高めます。そして自己肯定感の高い子どもは、自分を信頼しているので、「自分が悪いと思ったら謝る」ことができるようになるでしょう。子どもが「ごめんね」と言えるようになる会話例最後に、具体的なシチュエーションでの対応例をご紹介しますので、参考にしてみてください。会話例1:おもちゃの取り合いが原因でお友だちを叩いてしまった!【NG】親「どうしてそんな乱暴するの。謝りなさい!」子「だって……」親「言い訳しないの!〇〇ちゃんに早く謝りなさい!」【OK】親「どうしたの?〇〇ちゃんはなぜ泣いてるの?」子「だって、私のおもちゃを取ろうとしたから……」親「そうなんだね。気持ちはわかるなあ。でも叩いたら〇〇ちゃんは痛いよね」「叩いたらダメ!」と言いたくなる気持ち、わかります。ですが、まずは子どもの言い分を聞いてあげましょう。子どもの気持ちを認めてから、悪かった点を教えるのです。「お母さん(お父さん)は、私の言い分を聞いてくれた」と思えるので、親に対する信頼感も高まります。会話例2:子どもがコップを落として割ってしまった!【NG】親「危ないから気をつけなさいって言ったでしょう!」子「(泣きながら)だって……」親「言われたことを守れない子はもう知らない!罰として、おやつは抜きよ」【OK】親「大変!怪我しなかった?割れちゃったね。悲しいね」子「(泣き出してしまう)」親「びっくりしたよね。なぜお母さんが気をつけてねって言ったのかわかったかな。次は気をつけて飲もうね」コップを倒したり割ってしまったりした瞬間、子どもはびっくりしてショックを受けています。「大丈夫?」と、まずはその心をいたわってあげましょう。「次は~~しようね」という提案は、子どもが平常心に戻ってからわかりやすく冷静に伝えてください。そうすることによって、「よし、次は気をつけるぞ」と失敗を学びにつなげることができますよ。会話例3:「ジュースをこぼしたのは妹」子どもがウソをついた!【NG】親「なんでウソをつくの!?本当はあなたがこぼしたんでしょ!」子「違うよ!妹がこぼしたの……ウソじゃないもん」親「なぜあなたはいつもウソばかりつくの。もう知りません!」【OK】親「こぼしたのは妹なのね。だったら妹を注意しなきゃいけないわ」子「……」親「もしジュースをこぼしたのがあなたなら、正直に言ってほしいな。失敗したことは仕方ないよ。次から気をつければいいんだから。でも、ウソをつくのはよくないな。自分のせいにされた妹はどんな気持ちだと思う?」子「イヤな気持ちだと思う……ごめんなさい……」親「本当のことを言ってくれてありがとう。じゃあ、妹に何て謝ろうか?」白梅学園大学子ども学部教授の増田修治氏は、「子どものウソにわざと騙されてみて、そのあと、子どもが本当のことを言ったときにほめること」も有効だと言います。ウソは「自分を認めてほしい」気持ちの裏返し。ですから、肯定的な言葉が子どもの心に響くのです。「お母さん(お父さん)は、あなたのことを信じているよ。認めているよ」という対応で、子どもの素直な気持ちを育ててあげましょう。 教育評論家の親野智可等氏は、イソップ寓話の「北風と太陽」のような対応が効果的だと語っています。つまり、頭ごなしに謝らせようとするのではなく、まず共感を示し、子ども自ら心を開く環境をつくることが大事だということ。どんな場面に遭遇しても、子どもの気持ちに寄り添う心構えを、常にもっていたいものですね。***子どもが素直に「ごめんなさい」を言えるようになるために重要なことはふたつ。「発達段階に合わせた対応」と「子どもの言い分を聞いて、一緒に責任について考えること」であることがわかりました。大人でもうまく謝れないことはありますよね。まして、感情コントロールがまだうまくできない子どもにとって、なかなか素直になれないことはあるはずです。そんなときは、「ごめんなさい」と言わせることだけに執着せず、丁寧に子どもの気持ちを引き出してあげましょう。そしてときには親も一緒に謝るなどして、子どもが「謝ったらスッキリした!」という体験を重ねられるといいですね。(参考)武蔵浦和 メンタルクリニック|ライフサイクルについて伸芽’sクラブ|子どもの発達段階と、年齢に応じた課題を理解しておこうベネッセ教育情報サイト|素直に謝らない子[教えて!親野先生]AllAbout|謝り癖がある子供の心理「ごめんなさ」を言い過ぎる子への対応法AllAbout|謝らない子供……「ごめんなさい」が言えない子どもの処方箋NHK for School|知りたい!心の育ちCODER 公益財団法人 発達科学研究教育センター|児童の日常場面における謝罪―小学校低学年を対象としたインタビュー調査から―あんふぁんWeb|ケンカが激しく、ウソをつくわが子への対応東京女子大学 学術情報リポジトリ|「見守る」しつけ方略と子どもの他者理解
2021年03月15日子供の習い事はどう選んだらいいのでしょう。開成中学・高校の前校長で、現在は北鎌倉女子学園学園長を務める柳沢幸雄氏は、子供がなにかの習い事を「やってみたい!」と言ったならば、体験レッスンなどで一度やらせてみたほうがいいと話します。「やってみたけどあまりおもしろくなかった」ということもあるかもしれません。そんなときは、また別の「やってみたい」を探してあげればいいのです。子供自身の「やってみたい」を尊重することで、子どもの自己肯定感は育まれる――柳沢氏は、そう言っています。ですから、「子供の習い事に迷ったら、子供自身に選んでもらえばいい」のです。それでは、子供におすすめの習い事をご紹介しましょう。子供の習い事ランキングからわかること子供におすすめの習い事【英語】子供におすすめの習い事【プログラミング】子供におすすめの習い事【算数】子供におすすめの習い事【音楽】子供におすすめの習い事【アート】子供におすすめの習い事【運動】子供の習い事ランキングからわかること2020年12月に実施した「2020年子どもの年末年始に関する調査アンケート」(イー・ラーニング研究所調べ)によると、「2020年、保護者間で話題になった子どもの習い事」は、第1位が「英語・英会話スクール」、第2位は僅差で「プログラミング教室」でした。そして、「2021年にさせたい習い事・させる習い事」も同じ結果に。2020年はテレワークが推進されたこともあり、世界中どこにいても活躍できるスキルが必要だと考える親御さんが増えたのかもしれません。以下は「2021年にさせたい習い事・させる習い事」のランキングです。第1位英語・英会話スクール第2位プログラミング教室第3位スポーツ系第4位音楽系第5位通信教育お子さまが興味をもちそうな習い事はランクインしていたでしょうか。今回は、このランキングを参考におすすめの習い事を紹介していきます。非認知能力・自己肯定感・創造力・想像力・思考力・音感・運動センスがアップする、 “こどもまなび☆ラボ編集部厳選” の「子供におすすめの習い事」です。子供におすすめの習い事【英語】子供の習い事のなかで一番人気とも言える英語教室。2020年度より、小学5・6年生の「外国語活動」が「外国語科」に変わり成績対象になったことで、習い事として英語を選ぶご家庭も増えたようです。中学受験でも、英語1教科入試が増えているとのこと。そこで今回、こどもまなび☆ラボ編集部は、「歌、ダンスなどを通して、ゆっくり英語に慣れ親しむことを目的にした教室」ではなく、「短時間で効率的に英語を学ぶことができる教室」を2つピックアップしました。■小学生で英検2級合格も夢じゃない! 「ESL club」の科学的アプローチ「世界で活躍できる英語力」を最終ビジョンとしている「ESL club」。HPには「〇年生で英検2級に合格!」など、子どもたちの成功体験がいくつも載っています。まず特筆すべきなのは、講師全員が英検1級・TOEFL iBT 90点・TOEIC 900点レベル以上のバイリンガルだということ。そしてトレーニングもほかの英語スクールとは一線を画しています。なんと、通訳養成の訓練にも使われる「シャドーイング」を取り入れているのです。ほかにも、「スクリプトライティング」「エッセイライティング」など、英語4技能を効率よく高めるトレーニングばかり。トレーニングの内容については、『英語教育の専門家が大絶賛「ESL club」は何がすごいのか? 子どもの英語力がめきめき伸びるヒミツ。』で詳しく説明しています。本気で英語を学ぶなら「ESL club」がおすすめです。料金:月4回(45分) 27,500円(税込)/体験レッスン 無料/小学1年生~/オンライン可■30分で800語をインプット!英単語タイピングの「アクティメソッド」タイピング学習 × 英語トレーニングという画期的な指導が評判の子ども英語教室「アクティメソッド」。英単語タイピングは、英語習得のスピードを飛躍的にアップさせてくれます。タイピングなら、鉛筆で1語書くあいだに同じ英単語を5~10回書くことが可能なのです。また、「アクティメソッド」のトレーニングは1回30分ですが、その30分間に英単語を徹底的にインプットさせるのだそう。その数なんと800語! 「4歳で英検5級合格」「英単語タイピング小中学生の部における全国優勝」など、すばらしい実績をあげる子が出てくるのも納得です。代表の小林京美氏は『これなら両立できる! タイピング全国優勝を導いた英語学習法がすごかった』のなかで、「タイピング × 英語」は「EFL環境(日常的に英語を使わず、外国語として学ぶ環境)にいる日本の子どもたちにとって、最も効率的・効果的な英語学習法」だと話しています。ぜひ、体験レッスンで「タイピング × 英語」に挑戦してみてくださいね。料金:月4回(30分) 10,000円(税別)/体験レッスン 無料/5歳~/オンライン可子供におすすめの習い事【プログラミング】子供の習い事の定番となりつつあるプログラミング。2020年度からは、ついに小学校でプログラミング教育が必修化となりました。なぜいま、プログラミング教育なのでしょう?プログラミング教育の必要性について、『全米No.1バンカーが教える 世界最新メソッドでお金に強い子どもを育てる方法』著者でPYD JAPAN代表の酒井レオ氏は、以下のように話しています。プログラミングを学ぶ必要があるのは、エンジニアを目指す子どもだけではありません。これからは、あらゆる分野の仕事にAIやIT技術が取り込まれます。弁護士も医師も会計士も銀行員も、どんな職業に就く人間でも、一流になろうと思うのなら、プログラミングのスキルを身につける必要があるでしょう。それはもはや時代の潮流であり、避けられない道といえます。(引用元:STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|子どもの教育に「いまはまだ必要ない」は禁句。「いますぐはじめる」のが成功への道!)とはいえ、これからはプログラミングが必要だからといって無理にやらせるのはよくありません。前述したように、子供が「やってみたい!」と思えることが一番大切です。そこで、お子さまの「やってみたい!」の選択肢を増やすべく、「プログラミング+〇〇」が学べる習い事をピックアップしました。■新時代スキルが学べる「SOZOW」は、きょうだい全員参加でも同一料金!「想像力」と「創造力」を育むオンラインスクール「SOZOW」(ソーゾウ)。プログラミング・YouTube・マインクラフトといったデジタルテーマのほか、「政治家になって国のお金を考えよう」「インターネットの闇を解決しよう」など、新時代に必要な多様な学びのテーマがずらり。また、知識の習得だけではなく、手を動かして実際にプログラミングをしたり、商品アイデアを出したり映像を作ったりと、実践・アウトプットにも力を入れているとのこと。「みんなのアイデアがすべて正解となる時代です!」と、代表の小助川将氏。その小助川氏のご長男は、なんと現在、「『高い志』と『異能』をもつ若手人材支援を行なう孫正義育英財団」の3期生。その子育てのエッセンスを詰め込んだ「SOZOW」でお子さまの可能性を広げてみませんか。きょうだい全員で参加しても同一料金というのも嬉しいポイント。料金:月4回(60~90分) 6,980円(税込)/体験レッスン 無料/小学1年生~/オンライン可(特別キャンペーン中!最初の1ヶ月は6,980円→1,980円)■未就学児・低学年に特化した「アーテック自考力キッズ」パズル×ロボット×プログラミングという独自カリキュラムの「アーテック自考力キッズ」。未就学児・低学年のみを対象としたレッスン内容は、子供のやる気をぐいぐい引き出し、飽きさせることがありません。形合わせパズルや立体パズルなど、ルールは簡単だけどなかなか解けない問題で「図形・空間認識力」「集中力」を、ロボットの動きや仕組みを学ぶことで「創造力」と「表現力」をアップさせます。そして、プログラミングを基礎から学習することで、「倫理的思考力」「問題解決力」が身につきます。料金:月3回(60分) 9,700円(税込)※料金は教室によって異なります/体験レッスン 無料/5歳~■子どもの感性や思考力が育まれる「ワンダーボックス」プログラミング、サイエンス、アートなど、STEAM教育(*)をすべてカバーする学びの教材「ワンダーボックス」。毎月届く3種類のキットと、毎週・毎月、新しい変化が起こる10種類のアプリで、子どもの感性や思考力が育まれます。海外で行なわれた1,600名の実証実験で6.0ポイントの偏差値アップが確認された、思考力センス育成アプリ「シンクシンク」も完全収録。あの花まる学習会代表・高濱正伸氏も「子どもが遊びとして没頭するのに、どんどん頭がよくなる。ワンダーボックスはそういう教材です」と、その効果を認めています。2021年3月スタートの申し込みは好評につき、すでに終了とのこと。4月スタートを考えているのであれば、早めのお申し込みが◎ですよ。*…Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(ものづくり)、Art(芸術)、Mathematics(数学)の5領域を重視する教育方針料金:月3,700円(税込)~/小学1年生~/オンライン可■習い事が続かない子、ウェルカム!「LITALICOワンダー」元Google Japan 代表取締役社長・村上憲郎氏が「この度、LITALICOワンダーが提供を開始した『tech innovation by children』と称する子ども向けのプログラミング教育に期待したい」とコメントを寄せるほど、業界注目度が高い【LITALICOワンダー】。スタッフの質もかなり高く、お子さまの習熟度や興味関心に合わせて、300以上の独自コンテンツからその子にぴったりな学びをオーダーメイドしてくれます。「ほかの習い事が続かない……」というお子さまも、楽しく長く続けられると評判です。まずは60分、最高のオンラインレッスンを体験してみてください。料金:1回(60分) 4,000円(税別)~/体験レッスン 無料/5歳~/オンライン可子供におすすめの習い事【算数】さあ、次にご紹介する子供の習い事は算数です。みなさんは子どもの頃、算数が好きでしたか?『10億件の学習データが教える 理系が得意な子の育て方』著者で、RISU Japan代表・今木智隆先生は、「学年が上がるにつれて『算数が嫌い』『算数が苦手』という子が増えてくる」と話しています。お子さまが算数に苦手意識をもつ前に、「算数の楽しさ」を教えてあげましょう。■100点が当たり前になる!「RISU算数」算数が得意な子も不得意な子もどんどん算数が好きになるタブレット教材【RISU算数】。気がついたら「100点が当たり前」になっている子供が多いのだとか。この「100点が当たり前」の秘密は、生徒ひとりひとりの学習データの分析。「どこにつまづいているか?」「どのくらいの学習ペースか?」をすべて細かく分析しているので、学習状況に沿った的確なフォローができるのです。もちろん問題は、思考力を鍛える良問ばかり!ちなみに、今木氏いわく「速さ優先で毎日計算ばかりしているのは、頭を使わず、問題をこなしているだけ。小学校3~4年生になって急に算数が苦手になる可能性大」とのこと。体験した子供の90%が継続を選択するという「お試し体験(無料)」、申し込まないなんてもったいないですよ!料金:月2,480円(税別)~/お試し体験 無料/4歳~/オンライン可子供におすすめの習い事【音楽】「音楽の習い事は、子供によい影響を与えてくれそう」と考える親御さんは多いでしょう。まさにそのとおりで、「音楽教育を受けた子どもは、情緒や知能が発達し、決断力や集中力が向上した」と、南カリフォルニア大学の研究で明らかにされています。また、絶対音感は1歳~5歳のあいだにレッスンを始めると習得しやすいようです。ゆくゆくピアノやヴァイオリンを習うのであれば、音感を鍛えておいたほうがいいかもしれません。■0歳~OK!小林音楽教室の「幼児リトミック=ソルフェージュクラス」小さい子供でも、楽しく音楽の素養を身につけることができる、小林音楽教室の「幼児リトミック=ソルフェージュクラス」。レッスン可能な年齢は、0歳~5歳(幼稚園年中)まで。なぜならば、集中力・創造力・思考力・美しいものに素直に感動できる心など「情操感覚」のほとんどは幼児期に形成されてしまうから。リトミックは、お子さまの「音楽のリズム・拍子感・豊かな表現力」を自然に育んでくれます。このレッスンでは、動作や遊びを通して鍵盤や音符などへの興味を深めていくので、ピアノなどの楽器レッスンへスムーズに進むことができるはずです。料金:月3回 8,502円(税別)~/体験レッスン 15分コース 2,000円(税別)、30分コース 4,000円(税別)/0歳~/オンライン可■2歳になったら始めよう!小林音楽教室の「絶対音感クラス」お子さまに「絶対音感を身につけてほしい」と思いませんか?絶対音感とは、聞いた音を即座に「ドレミ」の高さで判別できる感覚。音楽を学ぶうえで、かなり強力なスキルと言えるでしょう。小林音楽教室の「絶対音感クラス」は2歳からのレッスンが可能です。絶対音感は幼児期に習得することが理想的とされています。そして、できるだけ年齢が低いうちにレッスンを開始したほうが、習得確率が上がるそうです。お子さまの習得状況を確認しながらきめ細かい指導をしていくため、「絶対音感クラス」は個人レッスンのみ。お子さまが2歳になったら始めたいレッスンです。料金:月3回 6,000円~/体験レッスン 15分コース 2,000円(税別)、30分コース 4,000円(税別)/2歳~/オンライン可子供におすすめの習い事【アート】子供の習い事でアートが注目されているのをご存じでしょうか。「アトリエ・ピウ 知育こどもアート教室」主宰の今泉真樹氏は、「『0から1を生み出すこと』への価値が高まっているいま、アートを学ぶ意義は大きい」と述べています。「正解が見つかっていないものに対して探求する」というスキルが重要になってきているのです。ビジネスにおいても、すでに創造力豊かな人材が求められていますよね。AI時代を生きていく子どもたちにとって「創造力」は必須スキルと言えるでしょう。アートを通して「0から1を生み出すこと」を学んでいれば、どんな世界になっても活躍できるはず。ですから、「上手な絵が描けるようになる」「描き方のテクニックを教えてくれる」といったアート教室ではあまり意味がないのです。創造力を育むことができるアート教室のみをご紹介します。■創造力と自己肯定感がぐんぐんアップする!「どこでもアートきっず」子供の創造力と好奇心を育てる、オンラインアートレッスン「どこでもアートきっず」。「子供の絵の発達段階」(*)をもとにレッスンカリキュラムを組んでいるので、親がびっくりするような作品ができあがることも多いのだとか。また、作品を仕上げて終わりではありません。「どうしてこの色にしたの?」「頑張ってたくさん切ったね!」など、先生と話し合う時間もあります。この時間が、子供の自己表現力や自己肯定感をアップさせるのです。どのレッスンも、創造力が存分に発揮される内容となっているので、続けるうちにレッスン以外の場でもアイデアが出やすくなりますよ。料金:1ヶ月 3,980円(税別)~/体験レッスン 500円(税込)/3歳~/オンライン可*…擦画期(1才~2才)、錯画期(1才6ケ月~3才)、象徴期(3才~4才)、カタログ期(3才~5才)、図式前期(5才~6才)、図式後期(7才以上)■世界中の受講生と一緒にアートレッスン!「ATAM ACADEMY」「好きなお絵かき」を「得意なお絵かき」に大変身させる、オンライン型クリエイティブスクール「ATAM ACADEMY」。講師1名につき生徒は3人までという、丁寧な指導が好評です。海外からの参加者も増えているので、アメリカに住む小学5年生と静岡に住む小学2年生が作品について話し合うということも。「絵が好き」という共通点はありつつも、考え方や価値観がまったく違う友だちとレッスンを受ける――「ATAM ACADEMY」はアート教室なのに、創造力や多様性、コミュニケーション能力まで磨くことができるのです。それだけではありません。なんと、制作した作品は実際にオンライン上で販売されるので、自分でお金を稼ぐ楽しさまでも学べます。また、プログラムでキャラクターを動かすレッスンもあり、プログラミングスキルまで手に入るのです。料金:1ヶ月 11,000円(税別)~/体験レッスン 無料/3歳~/オンライン可子供におすすめの習い事【運動】最後は子供向けの運動の習い事です。近年、子どもたちの運動能力の低下が問題視されていますが、みなさんのお子さまは運動が好きですか?『子どもの身体能力が育つ魔法のレッスン帖』著者・高橋宏文氏によると、運動は「体力」だけでなく「脳」や「心の状態」にもよい効果があるそうです。まず、運動することで脳が活性化され、物事に対する考え方や受け止め方がポジティブになるとのこと。また運動にはストレスを軽減させる効果があるので、運動をすれば感情の起伏をコントロールできるようになり、自制心が育つのだそう。ちなみに、親が「子どもの頃、運動が苦手だった」としても、子どもが運動嫌いになるとは限りません。高橋氏いわく、「遺伝的要素以上に生まれたあとの環境が大切」とのこと。さあ、お子さまに最高の運動環境をプレゼントしてあげましょう。■コーディネーション運動を取り入れた「ティップネス・キッズ」運動の基礎能力を伸ばす「コーディネーション運動」と、学校の授業につながる「体育運動」の2つを組み合わせたレッスンを行なう「ティップネス・キッズ(体育のミカタ)」。マット・とび箱・鉄棒など、学校で実施する種目も取り入れているので、体育の授業に対する自信がつきますよ!そして3ヵ月に一度、運動基礎能力測定を実施。お子さまの成長をデータで確認することが可能です。また、4ヶ月~始められる「スイミングレッスン」も人気。水に対する恐怖心が芽生える前に、泳ぐ楽しさと正しい泳力をマスターできますよ。料金:月4回 7,480円(税込)~/体験レッスン 500円(税込)/3歳~■運動が苦手な子が主役の運動教室「スポーツひろば」「両足ジャンプができない」「縄跳びが1回も跳べない」――そんなお子さんが「運動って楽しい!」と感じるレッスンを提供する「スポーツひろば」。スモールステップで、お子さまの「できた」を増やしていくので、お子さまの運動に対する苦手意識がみるみるうちに消えていきますよ。通常クラスのほかに「発達障がい児クラス」もあり、専門知識をもったインストラクターが独自のレッスンメソッドで指導にあたります。また、 “月4回で結果が必ず出る!” 「水泳25m完泳クラス」や、個別指導のパーソナルレッスンも人気です。メール無料相談だけでもOKとのことなので、運動についてのお悩みを相談してみてくださいね。料金:月4回 8,800円(税別)~/体験レッスン 無料/2歳~/オンライン可***精神科医の樺沢紫苑氏は子供の習い事について、「嫌々やらせるのではなく楽しんでできるように巻き込んでいくことが大切」と話します。楽しいときはドーパミンという物質が出て、モチベーションや幸福感が高まり、記憶力も向上します。反対に、嫌々やっているとストレスホルモンが分泌され、モチベーションも記憶力も低下します。子どもは楽しいことは自発的にどんどんやりますから、いかに楽しい場をつくってあげるかが重要だと思います。(引用元:STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|目指すは『ONE PIECE』のルフィ!?AI時代に大活躍できる子どもの育て方)子供たちそれぞれが、「楽しい!」と夢中になるような習い事を見つけられますように――。(参考)PR TIMES|子どもがいる親世代に聞いた「2020年子どもの年末年始に関する調査アンケート」子どもにさせたい習い事は「英語・英会話スクール」「プログラミング教室」が人気!STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|生きる力をつくる「10歳までの幅広い経験」。子どもに勉強は教えるな!?朝日新聞デジタル|中学受験「英語1教科」広がる英検準1級レベルも船津徹(2017),『世界で活躍する子の<英語力>の育て方』, 大和書房.STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|子どもを「算数嫌い」にしない大原則。幼児期からできる“算数好きの基礎”の築き方USC News|Music training can change 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2021年03月09日子どもにとって、親から向けられる言葉の影響力は計り知れません。わが子にはできるだけ、傷つけるような言葉をぶつけないようにしよう、と心がけてはいても、思い通りにいかずにイライラしたりカッとなったり……。今回は、「子どもに絶対言ってはいけない言葉」について解説し、子どもの自己肯定感を育むだけではなく、親のストレスも軽減される「効果的な声かけとほめ方」を紹介していきます。親の言葉が「子どもの人生の土台」をつくる「いつも穏やかな気持ちで子どもに接したいのに、カッとなるとつい厳しい言葉をぶつけてしまう」「自分の言葉が子どもの人生に悪影響を与えているのではないかと不安になる……」このような悩みを抱えている親御さんも多いのではないでしょうか。真剣にわが子と向き合っているからこそ、親はいつも悩み、不安を感じてしまうもの。「いまの親は思い込みに縛られていて、せっかく愛情があるのに空回りしていることが多い」と述べるのは、教育評論家の親野智可等先生です。みなさんも、ネットの情報やSNSなどを見ては、他人と比較して落ち込むこともあるはず。自分の育児法に自信がもてなくなると、子どもとの向き合い方までもわからなくなってしまいます。親もひとりの人間なので、思い通りにいかない子どもにイライラしたり、感情的になって怒鳴ったりすることもあるでしょう。しかし、親から言われ続けた言葉は、知らず知らずのうちに子どもの心に深く刻み込まれることも事実です。一般社団法人日本キッズコーチング協会理事長の竹内エリカさんによると「親の言葉は子どもにとって一種の暗示のようなもの」であり、「『あなたはできる』と言われて育った子は恐れずに挑戦する子になるなど、親の言葉が価値観の基礎になる」と指摘しています。逆に、親から「あなたって本当にダメな子ね」と言われ続けると、子どもの自己肯定感は育まれません。それどころか、チャレンジ精神が失われ、ちょっとした壁にぶつかるとすぐに諦めるような無気力さばかりが目立つようになるでしょう。このように、親からかけられた言葉が子どもの人格形成や、生きていくうえで身につけておきたい「自己肯定感」に強い影響を及ぼすことはよく知られています。親が子どもに “絶対に言ってはいけない” 言葉続いて、親が子どもに言ってはいけない言葉について、具体的に解説していきます。■子どもの存在そのものを否定する言葉「あんたなんて産まれてこなければよかったのに」「お前なんていないほうがいい」「捨ててしまいたい」これらの言葉は、どんな場合であっても決して言ってはいけません。もちろんほとんどの親は、このような言葉を発したことはないでしょう。しかし、ときに冗談や過剰な謙遜、周囲への照れなどから軽い気持ちで言ってしまうケースも。たとえ冗談でも、言われた子どもは心に深い傷を負うかもしれません。大人になって何かにチャレンジしようとしたとき、幼いころに親から存在を否定されたことを思い出し、「どうせ自分なんか」と一歩も踏み出せなくなってしまうこともあるので注意が必要です。■子どもの人格を否定する言葉「あなたって意地悪な子ね」「どうしていつも迷惑ばかりかけるの!」たとえばお友だちを叩いてしまったとき、「お友だちを叩くなんて乱暴な子ね!」と子どもの人格を責めるか、「お友だちを叩くのは悪いことだよ」と行動そのものに対して注意をするかで、受け取り方は大きく変わります。『子どもが一週間で変わる親の「この一言」』(三笠書房)の著者の波多野ミキさんは、「人格を否定されるようなことを言われ続けると、だんだんとネガティブになり、『自分はダメな子なんだ』と思うようになります」と警鐘を鳴らしています。あくまでも「子どもの行動そのもの」に目を向けて、人格を否定しないように気をつけて。■子どもの能力を否定する言葉「何度やってもできないなんてダメな子ね」「お前には無理だ」自分の能力を否定される言葉で叱られ続ける弊害について、前出の親野先生は次のように述べています。よく見られるのは、「ダメな自分は親から愛されないのではないか」という不安から、わざと心配させるような行動をとり、「こんなに心配してくれているから自分は愛されているんだ」という確認作業を行なうこと。また、子どもは自分が叱られながらも、親の口調や態度をよく観察しています。その結果、親の叱り方をまねするようになることも。弟や妹、友だちに対して、できないことをとがめるような口調で責めるようになる前に、親自身の叱り方を見直す必要があるでしょう。■兄弟・姉妹や他の子と比べる言葉「お兄ちゃんはできるのに……」「お友だちに負けないように頑張りなさい!」『叱りゼロ!「自分で動ける子」が育つ魔法の言いかえ』(青春出版社)の著者でプロコーチの田嶋英子さんは、「わが子とほかの子どもを比べてしまうのは、ちゃんと成長しているかどうか確かめて安心したいから」と説明しています。しかしたいていは “できている子” と比べてしまうため、結果的に不安が増してしまうことが多いそう。比べられて育った子は、劣等感が強くなり、自分に対してマイナスのイメージを抱くようになります。比べるなら過去のその子自身、つまり半年前や一年前の姿を思い出して、「ずいぶん成長したね」と前向きに考えるようにしましょう。伝えたいことは間違っていなくても、選ぶ言葉によって子どもの心を深く傷つけることがあります。親が発する言葉の重みや責任について、一度立ち止まって考えてみる必要がありそうですね。カッとなる前に押さえておきたい!叱り方のポイント2つ子どもの性格や家庭の方針によって叱り方はさまざまですが、状況に応じて即座に正しい声かけをするのは容易ではありません。カッとなってとっさに人格を否定するような言葉が出てしまうこともあるはずです。自分の言葉に後悔して落ち込まないように、「これだけは押さえておきたい叱り方のポイント」を覚えておきましょう。■子どもが自分から動けるような「具体的な提案」をするNG:「こんなに散らかして!なんで片づけないの!?」OK:「まだ遊びたいのかな?遊び終わったならおもちゃを箱にしまって、おやつにしようか」毎日毎日同じことを注意しているのに、いつまでたっても自分から動こうとしない、と悩んでいませんか?だからといって、ついイライラして感情のままに叱っても、状況は改善されません。前出の田嶋さんは、「子どものよい部分に目を向け、自己肯定感を高めながら、できていないところも直すことを心がけて」とアドバイスしています。「小さいおもちゃはこの箱に、大きいものはこの箱に入れようか」など、具体的に指示を出しながら促すとスムーズに行動できるようになるでしょう。■「私」を主語にすれば、子どもを責める口調になりにくいNG:「(あなたは)何回言ったらわかるの!」OK:「(私は)○○してくれると嬉しいな」子どもを叱るとき、無意識のうちに相手を責めるような口調になっていたら要注意。親業訓練協会の瀬川文子さんは、「子どもを叱るのは、たいてい子どもの行動に対して親が気に入らないとき。だから『どうしてそんなことをするの!』という表現になってしまう」と説明しています。これは「あなた」を主語にした叱り方であり、相手を責めるニュアンスが強く、責められたほうは言い訳や反発をしてしまうという悪循環を生むことも。子どもに注意するときは、「(私は)こうしてほしい」「(私は)こんな気持ちになった」と、「私」を主語にするようにするといいでしょう。「叱る回数」よりも「ほめる回数」を増やしてみませんか?子どもを叱りつけるたびに後悔し、自分を責めてしまいがちな親御さんは、「子どもをほめること」を意識して過ごすように心がけましょう。親御さんのストレスが軽減されるのはもちろん、お子さんの自己肯定感もぐんぐん上がりますよ。■子どもが失敗したときこそ、ほめるチャンスです!たとえば、お片づけを「していない」ことばかりに目が向いてしまうケースでは、お片づけを「してくれた」ときにしっかりとほめるようにします。その際には「きれいになって気持ちがいいね」「片づけてくれて助かるよ」と、感謝の気持ちもプラスしましょう。また、お子さんが何かに挑戦して失敗してしまったときも、ほめ言葉を伝えるチャンスです。結果だけに着目するのではなく、そのプロセスやがんばった姿を認めてあげることで、子どもの自信につながります。「親は子どもの『できる』『できない』に目を向けがちです」と苦言を呈するのは、東京都市大学人間科学部教授の井戸ゆかり先生。がんばってもできなかったときは、「つらかったね」「次はきっとできるよ」「一緒にやってみようか」と励ましながらも、がんばったことをしっかりとほめてあげるといいでしょう。■ニコニコして子どもを見守るだけでも効果ありなかには「ほめるのが苦手」「どうやってほめればいいの?」と悩んでいる親御さんもいるのではないでしょうか。発達心理学が専門で恵泉女学園大学学長の大日向雅美先生は、「ほめることにテクニックはない」ときっぱり。ただし、「『何かができるから、いい子』というほめ方はしない方がいい」とアドバイスしています。「これができたからいい子だね」と条件つきでほめてしまうと、子どもは「次も親の期待に応えなければならない」とプレッシャーを感じてしまうそう。また、乳幼児教育学が専門で玉川大学大学院教授の大豆生田啓友先生は、「ほめ方には、『見守る』ことも含まれる」と述べています。子どもの様子を見て、「がんばっているんだな」とニコニコしながら見守ってあげることも、子ども自身が「自分は認められている」と感じることにつながるので、十分効果的だといえるでしょう。もっと具体的に「子どもをほめる基準」や「子どものほめ方」を知りたい方は、ヒューマンアカデミーの通信講座「ほめ育子どもコーチング講座」をおすすめします。子どもの長所を伸ばすだけでなく、親自身の成長も感じることができると注目されている「ほめ育」。しっかりと基礎から学ぶことで親子の絆が深まり、子どもの自己肯定感アップにもつながりますよ。***普段あまり意識していなくても、子どもにとって親の言葉は強い影響を及ぼします。今回ご紹介した「叱るときに注意したいこと」と「ほめるときのポイント」を覚えておけば、親子のコミュニケーションはより豊かになるでしょう。(参考)PHPファミリー|子どもの「性格の土台」は親の言葉がつくる東洋経済オンライン|親が子どもにうっかり授ける「裏の教育」PHPのびのび子育て 2021年3月特別増刊号,PHP研究所.STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|「私メッセージ」の叱り方で子どもが変わる!親は怒りではなく“第一次感情”に注目してNHK すくすく子育て情報|“ほめて育てる”とはいうけれど…ヒューマンアカデミーの通信講座 たのまな|ほめ育子どもコーチング講座(Basic)
2021年03月04日子どもの幸せ感度に影響を与える要素のひとつが、「親の過干渉」ということをご存じですか。『世界標準の子育て』著者・船津徹氏は、「親の過干渉が子どもの幸福度を下げる」と警鐘を鳴らしています。2020年9月にユニセフが発表した『レポートカード16-子どもたちに影響する世界:先進国の子どもの幸福度を形作るものは何か』。この先進・新興国38ヶ国に住む子どもたちへの調査では、日本の子どもの「精神的幸福度」はワースト2位でした。恵まれた環境にありながら、幸せを感じられないというのは深刻な問題です。もちろん、幸福度を下げる要因は過干渉だけではないでしょう。しかし、子どもに「自分らしい人生を切り開く力」を授けるためにも、過干渉はやめたほうがよさそうです。過干渉育児にならないように「親が本当はやらなくていいこと」を、いま一度見直してみましょう。親が “本当はやらなくていい” 7つのこと1. 子どもに早くから読み書きを教えなくていい多数の著書がある教育学者・齋藤孝氏(明治大学文学部教授)によると、「7歳までは神のうちなので、それまでに生きる力をしっかりと育むことが重要」なのだそう。「親子で共有する時間」を何よりも大切にするべきで、心が十分に育たないうちに詰め込む早期教育はよくないとのこと。読み書きを教えるよりも、絵本の読み聞かせによる情操教育のほうがより大切だと話しています。また、「塾ソムリエ」として35年以上子どもを指導している中学受験情報局主任相談員・西村則康氏も、「子どもの準備ができていない時期の早期英才教育は、ほとんど役にたたない」と述べています。その理由は、早期教育が人間の脳の成長過程に沿っていないから。早く〇〇できたほうがいいだろうと親は考えがちですが、その考えこそが過干渉になっています。2. 親は子どもに何でも教えなくてもいい子どもは「これは何?」「どうして?」など、知らないことは何でも聞いてくるものです。そのとき大人は、その質問に正しく答えなければいけないと思いがち。でも、大人だって知らないことはありますよね。そんなときは、「お父さん(お母さん)もそれは知らないなあ。一緒に調べてみよう」と、子どもの好奇心に寄り添い、一緒に学ぶ時間を共有しましょう。親が調べたことを教えるよりも、何倍も子どもの成長の糧となるのですから。アメリカの生物学者で、子どもの感性について綴られた名著『センス・オブ・ワンダー』の著者・レイチェル・カーソン氏も、「『知る』ことは『感じる』ことの半分も重要ではない」と語っています。大人も心を開いて、子どもとともに感じ、学ぶ姿勢をとることこそ正しい行動と言えるでしょう。3. しつけ期が過ぎたら、親はしつけを手放していい心理学者でスクールカウンセラーでもある諸富祥彦氏(明治大学文学部教授)は、小学3年生くらいまでの「しつけ期」が過ぎたら、できるだけ子どもの行動に口出しをしないようにするべきだと話しています。なぜなら、それ以降は子どもの個性を育てる時期に入るから。「こうしなさい」「これはやめなさい」と言われたら、子どもはどうしても親の指示に引っ張られてしまいます。人間の土台がある程度固まったあとの成長期には、親の干渉は邪魔にさえなるのです。よほどのことがない限りは、口出しはしないようにしましょう。必要なときのみサポート役に徹するという、子育ての方向転換をする時期は10歳頃なのです。4. 「家庭内ルール」は親が決めなくていい家庭での過ごし方について、親があれやこれや指示したり、小言を言ったりして、親主導で進めてしまいがちではありませんか?「全米最優秀女子高生」の母として有名になり、現在はライフコーチとして活躍中のボーク重子氏は、子どもの自己肯定感や自主性の大切さを力説しています。そして、それらを育むためのひとつの方法として、家庭内ルールは親の指示ではなく、「子ども自身で決めさせる」ことをすすめているのです。ルールの目的は「家族の幸せ」。年齢に応じて、お手伝いや勉強のことなど、子どもが自分ができると思うことは責任をもってやってもらいましょう。しかし、実際にやってみたら、何か違うと思うことや、問題が生じることもあるはず。そんなときは、子ども自身がルールを変更してもOK。物事の改善を重ねて、思考のしなやかさを鍛える絶好のチャンスですよ。5. 親は「子どもファースト」でなくていい子どもの学校、習い事など、親の生活は子ども中心になりがち。予定が詰まっているときなどは、子どもの一挙手一投足に口を出したり、次の行動を指示したりしている親御さんは多いのではないでしょうか。ときには、子どもから離れることも必要です。もし、子どもが学校や習い事に遅刻して恥ずかしい思いをしても、それは子どもの責任です。教育評論家の尾木直樹氏は、「過干渉をやめる手段」として、子どもから意識をほかに向けることをすすめています。「なかなか宿題をしない子どもを目の端に入れながらも、自分の仕事をする」「ときどきは自分の趣味で出かける」など、親が子どもと少し距離をとることで、子どもの自主性は育まれ、親のストレスは減るという、双方によい効果が生まれるとのこと。子どもから目を離す勇気が、子どもを成長させるのです。6. 夫婦の意見はそろえなくていい子育て中は、子どもの教育方針や学校の選択など、夫婦で意見がぶつかることもあるでしょう。そんなときでも、「無理して教育方針を一致させなくてもよい」と言うのは、教育ジャーナリストのおおたとしまさ氏です。その理由は、夫婦の意見に幅があったほうが、その幅のぶんだけ子どもの個性が育つから。たとえば、「今回はお母さんの意見に賛成。英検受けるよ」「英検よりもサッカーを頑張りたいから、今回はお父さんの意見に賛成だな」といった具合に、子どもは自由に未来を選択することができます。広い視野で子どもの将来を考えてあげることが、過干渉を防ぐひとつの手段ともなりそうです。7. 「過保護」はやめなくてもいい児童精神科医として40年以上も多くの親御さんの子育てを見てきた故・佐々木正美氏は、「過保護」と「過干渉」は違うと言いきります。一番大きな違いは、行動に子どもの意思や希望が反映されているかどうか。「過干渉」は、子どもの気持ちにかかわらず、親がなんでも「やりなさい」とお膳立てしてしまい、子どもの自主性を置き去りにしてしまうこと。一方の「過保護」は、子どもがやりたいことがあれば、背中を押したり、サポートしたりすることです。これは、子どもの意思を尊重し、意欲を応援することですので、悪い影響はないと言います。「子どものために」と思う気持ちは同じでも、そこに子どもの心や意欲が介在しているかどうかを、常に意識することがとても大切です。子どもとの接し方に迷ったら読みたいおすすめの本「過干渉かもしれない……でもどうすればいいの?」と、子どもへの接し方で迷ったとき、心をシンプルにしたり、大切なことを再確認させてくれたり、視野を広げてくれたりする、おすすめの本3冊をご紹介します。それぞれ、違った視点から「果たすべき親の役割」について書かれています。過干渉で子どもを縛りつけてしまわないように、ぜひ読んでみてください。■『センス・オブ・ワンダー』作者である、海洋生物学者のレイチェル・カーソン氏が、甥のロジャーとの自然を探求した体験を通して、感受性の大切さを語った本です。タイトルの「センス・オブ・ワンダー」とは、「美しいもの、未知なもの、神秘的なものに目を見はる感性」。幼児期には、親子一緒に自然を体験し、体感することが何よりも尊く、大切だと、静かに、しかし毅然と語りかけます。自然といっても、田舎でなければいけないというわけではありません。都会にも “生命” は溢れています。子ども時代に感受性を磨くことは、将来の好奇心や意欲につながり、学びを深め、将来を切り開く力となるでしょう。50年以上も前の本ですが、「子育てにおいて本当に大切なものはなんなのか」、ときどき手にとって再確認したくなるバイブル的名著です。■『この子はこの子のままでいいと思える本』親と子ども、双方の心に寄り添う多くの温かい名言を残した児童精神科医の故佐々木正美氏。その佐々木氏に寄せられた子育て相談をまとめた1冊です。「また叱りすぎてしまった……」など、親ならば誰でも抱く悩みそれぞれに、丁寧に対応しています。語りかけるようにつづられた具体的なアドバイスは、親のがんじがらめになっている気持ちを優しく解いてくれます。佐々木先生は、「 “期待” という親の愛情は、子どもにとっては自分を否定されたに等しい」と指摘。 “期待” は過干渉を生む元凶ともなります。子育ては迷いと悩みの連続ですよね。自分の子育てに自信がもてないとき、佐々木氏の言葉が染み入ります。子どもを幸せにするのなんてとても簡単なことですよ。親が笑顔なら子どもはそれだけで幸せなのです。自分が親を幸せにしたと思って自信たっぷりに育っていくのです。(引用元:佐々木正美(2020), 『この子はこの子のままでいいと思える本』, 主婦の友社.)■『世界基準の子育て』世界の教育を紹介し、日本の教育を見つめ直す1冊。日米両国で長年教育に携わってきた著者ならではの視点で、日本の子育ての問題点を指摘します。著者・船津氏が挙げる「世界標準の子育ての条件」は以下の3つ。困難に負けない「自信」人生を自分で決めていくための「考える力」人に愛される「コミュニケーション力」日本の親がやりがちな過干渉は、このなかでも特に重要な「自信」を子どもから奪うとのこと。勉強ができるだけではなく、自分らしい人生を逞しく生き抜く力をわが子が得るために、親は何をしてあげたらよいのか……。子どもの年齢ごとに、わかりやすく、具体的に語られています。 “子育ての軸” がぶれているなと感じるときこそ、本書を手に取ってみてください。***親が必要以上に指図しなくても、子どもは自ら育つ生命力をもっています。その「生きる力」を信じてあげることからスタートして、目指すべきは、目先の小さな目標ではなく、「幸せな人生」という大きな場所であることを忘れずにいたいものですね。(参考)Newsweek|親の過干渉が子供の幸福感を下げるMind 子どもの心を育てるために|過保護と過干渉 佐々木正美NHK|過保護やめたいけれど…unicef|ユニセフ報告書「レポートカード16」先進国の子どもの幸福度をランキング 日本の子どもに関する結果FQ JAPAN男の育児バイブル|子供の才能を伸ばせる親、潰してしまう親日経DUAL|子育て・教育|頭のいい子の育て方|早期英才教育のほとんどは間違っているSTUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|いちばんのしつけとは、子どもに〇〇をみせること。親はそんなに頑張らなくていい!STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|「ルールを守れる子ども」はこうして育つ。親が子に与えるべき大事な“時間”STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|「過干渉」育児が招く悲しい結果。“見守るだけでは物足りない”親が危険なワケ船津徹(2017),『世界標準の子育て』, ダイヤモンド社.佐々木正美(2020),『この子はこの子のままでいいと思える本』, 主婦の友社.レイチェル・カーソン 著, 上遠恵子 訳(1996),『センス・オブ・ワンダー』, 新潮社.齋藤孝(2020),『1日15分の読み聞かせが本当に頭のいい子を育てる』, マガジンハウス.
2021年02月26日新型コロナウイルスの再流行にともない、全国で外出自粛の動きが続いています。せっかくの休日も家族や友達と出かけられず、おうちで過ごす時間が増えているのではないでしょうか。みなさんのお子さまは、おうち時間をどう過ごしていますか?ずっと家にいると、ついゲームをしたりマンガを読んだりして、ダラダラと一日を過ごしてしまいがちです。でも、できることならば、長引く自粛期間も有意義に活用したいですよね。そこで今回は、おうち時間の気分転換になり、お子さまの思考力とやる気がアップするような、算数の発展問題をご紹介したいと思います。ゲームやマンガをいったん置いて、紙とペンを用意してみましょう。ぜひ、おうちの方もお子さまと一緒に取り組んでみてくださいね。<第1問>工夫して足し算をしようまずは、簡単な足し算の問題から。簡単に計算できるよう、工夫して下の足し算を解いてみましょう。【1】1+2+3+4+5+6+7+8+9=【2】2+4+6+8+10+12+14+16+18= 左からひとつひとつ数字を足していくこともできますが、手間がかかりますし、そのぶんミスもしやすくなります。じつはこの2問、式の順番を入れ替えるだけで簡単に解くことができるのです。たとえば、【1】の式をこのように書き替えてみると……?【1】(1+9)+(2+8)+(3+7)+(4+6)+5=1+9=102+8=103+7=104+6=10【1】の式は「10が4つ」と「5が1つ」でできていることがわかりますね。よって、10+10+10+10+5となり、【1】の答えは45です。【2】も同様に、このように順番を入れ替えて計算します。【2】(2+18)+(4+16)+(6+14)+(8+12)+10=2+18=204+16=206+14=208+12=20【2】の式は「20が4つ」と「10が1つ」でできていることがわかります。よって、20+20+20+20+10で、【2】の答えは90です。このように、キリがよく計算しやすいまとまりをつくることで、一見複雑な足し算も簡単に解くことができるのです。<第2問>私は何歳でしょう?下の3つのヒントを読んで、私の年齢を当ててください。【ヒント1】私は50歳よりも若いです。【ヒント2】私の年齢は5で割ると2あまる数です。【ヒント3】私の年齢の一の位の数は、十の位の数の2倍より1少ない数です。 まずは、【ヒント3】から位の表をつくってみましょう。次に、【ヒント1】から私の年齢の十の位は5以下になることをふまえ、それぞれの場合の年齢を考えていきます。以上の5つから、【ヒント2】の条件に当てはまる数を探すと、47÷5=9あまり2 で47歳が正解となります。いかがですか?頭がほぐれてきたところで、最後はもっと複雑な文章題にチャレンジしてみましょう!<第3問>じゃんけんに勝ったのは誰でしょう?次の文章を読んで、じゃんけん勝負に勝ったのは誰か答えましょう。のぞみさんとかなたさんがじゃんけんで10回勝負をしました。のぞみさんは、グーを1回、チョキを6回、パーを3回だしました。かなたさんは、グーを4回、チョキを4回、パーを2回だしました。一度もあいこにはなりませんでした。さて、10回勝負に勝ったのはどちらでしょう? 3問目は少し手ごわい問題ですが、文章をしっかり読んで状況を整理すれば、答えは見えてきます。この問題を解くカギは、まず、のぞみさんがチョキを出した回数に注目すること。一度もあいこになっていないということは、のぞみさんがチョキを出したときには、かなたさんはグーかパーを出していることになります。のぞみさんはチョキを6回、かなたさんはグーを4回、パーを2回出していることから、のぞみさんは、2回勝って4回負けているとわかります。次に、残りの4回の勝負について考えます。のぞみさんはグーを1回、パーを3回、かなたさんはチョキを4回出しています。つまり、のぞみさんは1回勝って3回負けていることになります。これらを合わせると、のぞみさんは3勝7敗。よって、10回勝負に勝ったのはかなたさんです。算数が得意な子でも難しい「少しひねった文章題」この連載でもたびたび触れてきましたが、文章題は多くの子どもが苦手としている単元です。RISU算数で学習する子どものデータを見ても明らかで、特に、このような少しひねった文章題になると、算数が得意な子でも苦手意識をもってしまうようです。しかし、解説を見ていただくとわかるように、このような一見複雑な文章題も、問題文をじっくり読み、順を追って状況を整理すれば、答えを出すのに難しいことは何もありません。「なんだか難しそう……」と決めつけて諦めてしまっては、もったいないのです。また、文章題に取り組むことで得られる力は、算数のみならずほかの科目の学習にも役立ちますし、社会に出てからも強く求められます。なぜなら、文章題を解くときの「必要な情報を読み解き、考える」という行為が、あらゆる問題解決のプロセスの基本だからです。実際に、最近の中学入試では、算数に限らず、問題文の長いものが多く出題されています。受験の場面で長い問題文に面食らって、解けたはずの問題を落としてしまわないためにも、普段からこのようなひねった問題に慣れておくことが大切なのです。次回も引き続き、思考力が身につく発展問題をご紹介します。お楽しみに!子どもの成績アップ 効果で選ぶなら 【RISU算数】『10億件の学習データが教える 理系が得意な子の育て方』今木智隆 著/文響社(2019)■ 算数塾「RISU」代表・今木智隆先生 インタビュー記事一覧第1回:子どもを「算数嫌い」にしない大原則。幼児期からできる“算数好きの基礎”の築き方第2回:子どもが勉強で成果を出せないのは、親の「勘違い」が原因かもしれない第3回:10億件のデータを調べてわかった、小学生が「ずば抜けて苦手」な算数の単元と例題第4回:「算数の文章題が苦手」な子どもが、ひねった応用問題でも解けるようになる教育法
2021年02月24日水泳、ピアノ、英語は、子どもの習い事の定番と言えるでしょう。最近では、プログラミング教室が人気沸騰中なのだとか。そして、習い事のジャンルが増えたことで、複数の習い事をかけもちするお子さまも増えています。送り迎えをするお父さん、お母さん、本当にごくろうさまです。そんな忙しい日々のなか、子どもから「もうやりたくない。やめたい!」と言われたことはありませんか?子どもが「習い事をやめたい」と言ったとき、親はどう答えるのが正解なのでしょう。今回は専門家の意見を参考にしながら、その答えを探っていきます。子どもの「習い事やめたい」、どこまで本気!?子どもの年齢や性格、習い事の種類によって、やめたい理由はさまざま。親は、そのやめたい理由によって、「やめるのか」「続けるのか」を考えていかなければいけません。やめたい理由としては、以下のようなことが挙げられるでしょう。飽きた、楽しいと思わなくなったからお友だちとけんかしたからお友だちにいじめられたから先生が怖い、嫌いだからレベルが上がってついていけなくなったからスケジュールが詰まりすぎていて体力的に限界だからほかにやりたいことができたから とはいえ、やめたい理由が「ほかにやりたいことができたから」ということであっても、「習い事を始めて1ヶ月の子ども」と、「3年以上続けている子ども」では、親の対応も変わってくるはず。また、「本当にもうやめたい」のか「なんだか面倒だからやめたくなった」のか、本人の気持ちによっても対応は異なります。では、専門家の意見に耳を傾けてみましょう。■習い事の継続期間によって対応を変える(家庭教育専門家・田宮由美氏)『子どもの能力を決める0歳から9歳までの育て方』の著者で家庭教育専門家の田宮由美氏によると、習い事の継続期間に応じて、以下のように対応の仕方を変えるのがよいのだそう。【始めたばかりの習い事】→できるだけ続けられる工夫と努力をすぐにやめさせるのはちょっと待ったほうがよさそうです。やめたい理由を聞いたうえで、親がその原因を解消する努力をします。たとえば、「いじわるなお友だちがいるから」という理由ならば曜日やクラスを変える、体力の問題や「思っていた内容と違ったから」という理由なら、子どもの気持ちを優先し、いったん休ませるといった対応がよいでしょう。そして、頃合いを見てもう一度チャレンジさせてみるなど、臨機応変な対応で子どもを見守ります。【長く続けている習い事】→やめることも選択肢に入れて子どもが長く続けている習い事をやめたいと言い出したときは、よりしっかり理由を聞くことが大切です。なぜならば、深刻な問題が隠れていることが多いから。人間関係が原因で行きたくないのかもしれませんし、周りのレベルについていけなくなり習い事の時間が苦痛なのかもしれません。ですから、問題が解決しない場合は、やめることも選択肢に入れるべきです。もしやめる選択をしたのであれば、次の目標について親子で話し合ってみましょう。■「やめたいレベル」を見極めて対処すべき(臨床心理士・福田由紀子氏)臨床心理士の福田由紀子氏は、子どもの「やめたいレベル」を見極めて、それによって対処を考えるべきと言います。レベルは次の3段階です。【やめたいレベル1:習い事が面倒くさい】やめる決断を急がず、習い事を始めたときの楽しさを思い出させるような会話をしたり、ときには休ませたりしてもいいでしょう。「もっと試合で活躍したいのに地味な練習ばかりでつまらない」「難しくなってきたから行きたくない」などのスランプかもしれません。子ども自身が積極的にやめたいと思っているわけではない状態ですので、様子を見つつ、子どもの「やりたい」気持ちを引き出すようなサポートができるといですね。【やめたいレベル2:習い事がイヤだ】“黄色信号” の「積極的拒否」の段階です。子どもの気持ちをじっくりと聞いてみてください。「やりたいけど、うまくいかない」「頑張ったのに評価されない」など、気持ちが揺れているのかもしれません。気持ちが不安定なときなので、「すぐにやめたいと言うなんて、あなたはダメな子ね」など、人格を否定するような言葉は絶対にNG。子どもの気持ちに共感することがなによりも大切です。担当の先生に相談してみるのもいいでしょう。【やめたいレベル3:習い事がつらい】「習い事に行くのがイヤ」なのか「習い事に行くのがつらい」のかを子どもに聞いて、 “赤信号” の状態かどうかを確認しましょう。つらいのであれば、すぐにやめることも考えるべき。ここまで状況が進行してしまうと、子どもの自尊心は低下し、意欲が大幅に落ちてしまっているからです。親はとにかく子どもの気持ちを受け止めてあげましょう。完全にやめるのではなく、「一時休会」という決断もありですよ。さまざまな角度からのアプローチがありますね。すべてに共通するのは、「状況次第ではやめてもいい」という考えでしょうか。しかしそうはいっても、実際には、「やめグセがついたら困るから、もう少し続けなさい!」と言う親御さんも多いかもしれません。そこで、次項では「やめグセって本当につくの?」という疑問について考えてみます。「やめグセ」がつくなんて嘘!子どもから「習い事をやめたい」と言われても、「『飽きっぽい』『忍耐力が足りないから』と、無理やり続けさせるのは要注意」だと、教育評論家の親野智可等氏は警鐘を鳴らします。では、どう対応すればいいのでしょうか。■「やめグセ」がつくなんて嘘!我慢はしないで(教育評論家・親野智可等氏)親野氏は、「やめグセがつくというのは嘘」と断言。「やりたくないことを我慢してやり続ける」のは、メリットよりもデメリットのほうが大きいと言います。「脳が急激に発達中の子どもの1年は、大人の5年に相当する」ので、子どもにとって我慢している時間は、大人が想像する以上に長く、苦痛なのだそう。その状態が定期的に続くことで、子どもが鬱になることも。また性格形成にも悪影響が及ぶ危険性があります。親野氏の「ダメならさっさとやめて、ピッタリハマるものに出会うまで、どんどん新しいことを試したらいい」という言葉は、親にとって安心できる助言ですね。■「やめたい」は好奇心旺盛な証拠。やめさせてあげて!(心理学者・植木理恵氏)テレビでも活躍中の心理学者・植木理恵氏は、「やめさせるのは悪いことではない。むしろ子どもがやめたいと言うのなら、親の感情で無理に続けさせるよりも、やめさせてあげたほうがいい」と述べています。好奇心旺盛な子どもがいろいろなものに目移りしてしまうのは、健全な証拠。たとえ習い事をやめてしまっても、子どもはその体験から、技術以外にもいろいろな学びを得て、ちゃんと成長しています。「根性が足りない」「モノになるまでやめるのはもったいない」などと思わずに、「興味が増えた」とプラスにとらえて、子どもの背中を押してあげるくらいの気持ちで対応しましょう。その習い事、合わなければやめてもいい!「こどもちゃれんじ」「進研ゼミ小学講座」を提供するベネッセの「やめた習い事はどのくらいの期間続けたか」という調査(2009年)では、全体の47%が2年未満で習い事をやめていることがわかりました。しかも、なんと全体の25%は1年未満でやめています。やめた理由のトップは、「習い事との相性」。継続1~2年未満でも32%とその割合は高いですが、継続半年未満を見てみるとなんと「習い事との相性」が問題でやめた子どもの割合は44%です。「習ってみたら、あまり夢中になれなかった」というところでしょうか。しかし、習い事を2年以上続けると、相性の問題は解消されるようです。そして今度は「習い事のレベル」や「レッスン時間」の問題に問題が移っていきます。子ども時代は興味を探るとき。いろいろ試して合うものが見つかれば、続けられる。それが自然なことなのですね。では最後に、10歳までの「自己肯定感×非認知能力」に重点を置いた『究極の子育て』著者で教育ジャーナリストのおおたとしまさ氏からのアドバイスを紹介します。■エンディングを決めてから習い事を始める(教育ジャーナリスト・おおたとしまさ氏)おおたとしまさ氏は、「習い事を始めるときに、『どういう状態になったらやめるか』ということまで決めておくといい」と言います。「何年生までやる」「〇月の試合(発表会)までやる」など、目標となる節目を意識して始めることで、子どものモチベーションが保たれるからです。さらに、節目のタイミングごとに、「やめるか、続けるか」を考えるようにすると、一時の感情だけで「やめたい」と思うことが減り、「やめる」と言い出したときも、親は子どもの気持ちを理解しやすくなるでしょう。「我慢は美徳」「継続は力なり」という概念にとらわれすぎずに、臨機応変に対応したいもの。子どもたちが、心身ともに健やかに、習い事を楽しみながら、成長できるように、「合わなければ、やめていい!」――そう確信してよさそうですね。最近は、送迎不要のオンラインレッスンが人気です。以下の記事では、人気のプログラミングやピアノ教室以外にも、ミュージカル・マインドフルネス・アート(制作、鑑賞)など、編集部が厳選した「未来につながる習い事」を紹介しています。↓↓↓『【2021年版】子供の能力を上げるオンラインの習い事|プログラミング・ピアノ・アート・作文など』***習い事について、親が気をつけるべき点がもうひとつあります。それは「下心をもたないこと」。おおたとしまさ氏は「成果を求めて、期待しすぎても、子どもは親の下心を見抜いて逆効果になる」と実体験を交えて語っています。あくまでも子どもの興味が最優先。すべてはそこから始まり、そこに終わるのです――お子さまは、いま、どんなことに興味をもっていますか?(参考)Hapimama「習い事を辞めたい」は止めるべき?心理学者が教える子どもの心理と対処法」日経DUAL|「習い事をやめたい」と言われたら、やめさせるべき東洋経済ONLINE|多くの親が「子どもの習い事」でしくじる理由東洋経済ONLINE|子どもの習い事は、「やめ時」が肝心!ベネッセ教育情報サイト|2年未満で習い事をやめる理由は「お子さまと習い事の相性」All About|子供の習い事は無理にでも続けさせた方がいい?All About|子どもが「習い事をやめたい」と言い出したら
2021年02月22日2021年もコロナウイルスの感染はまだまだ終息しそうになく、自宅学習をするご家庭は増えていくかもしれません。でも、おうちでの学習は学校に比べるとなかなか集中しにくいもの。そんなときにおすすめなのが、「目標をしっかりともつこと」です。目標がしっかりと定まっているだけで、これから何をやればいいのかがすぐにわかり、子どもは学習への意欲が増すのです。「算数のテストで満点をとる!」や「1日〇分ドリルに取り組む!」、あるいは「算数検定〇級をとる!」など、目標の立て方は人それぞれ。そして、目標を決めたら、次は「自分に合った学習スタイル」を確立させていきましょう。今回は、「自分のタイプに合った学習スタイル」と、学習を習慣化させるための「勉強が楽しいと思える経験」について考えていきましょう。算数検定合格者たちの “効率のいい” 勉強習慣とは?私が代表を務めるRISU算数では、算数・数学の検定試験である「実用算数技能検定」とタイアップした事業を展開しています。その関係から、RISU算数の利用者のなかには、算数検定を受検される方がたくさんいるのです。そうした方々の多くは、学年を先取りした級に合格しており、その合格体験記をRISU Japanのホームページにまとめています。そして、この合格体験記には、先取りを可能にするような勉強習慣の秘訣が詰まっていることがわかってきました。2020年は新型コロナウイルスによる休校などの影響で、家庭で勉強を行なわなければならない場面が増えました。じつはRISU算数は、家庭での勉強に非常に適している教材で、生活のなかのちょっとしたスキマ時間を使って算数の問題に取り組むことができます。そして、算数検定などですばらしい成績を収めている学習者ほど、このようなスキマ時間の使い方がうまいことがわかっています。算数検定の合格体験記には、毎日、生活のなかの5分・10分ほどの空き時間を利用して意欲的にRISU算数に取り組んでいる例が見られます。たとえば、ある家庭では毎朝ご飯を食べる前の20分にRISU算数に取り組んだり、あるいは習い事に向かう車のなかで取り組んだり……。もちろん、このような毎日取り組むスタイルでなくとも、1週間のなかで数日、しっかりと時間をとって落ち着いて勉強に取り組むのもいいでしょう。重要なのは、自分のタイプにあった勉強法を考えること。短い時間だと気が散ってしまうタイプにもかかわらず、こまめな学習方法をとってしまったり、あるいは、長時間は集中が続かないタイプなのに、机の前で無意味に時間を過ごしてしまったりなど、自分に合わない勉強スタイルでは、勉強の効率も下がってしまいます。では自分に合う勉強スタイルはなんなのか?それは、お子さんひとりひとりによって異なり、年齢とともに変化もします。常にそのことを意識し、お子さんのいまの様子をしっかりと把握することが大事です。「勉強が楽しい」という経験が大切もうひとつ、算数検定の合格者体験記を読んでいて気がつくことがあります。それは、「勉強を楽しんでいる」ということ。たとえば、RISU算数には「スペシャル問題」と呼ばれる問題があります。これは、普通の算数の問題とは異なり、思考力や推理力が問われる問題で、じっくり考えなければ解くことができません。じつは、このスペシャル問題を解くことを楽しみにしてRISU算数に取り組む子どもも多いのです。スペシャル問題はパズルのようなもので、解くのが大変なぶん、解けたときに「できた!」という達成感を味わうことができます。スペシャル問題は、普段の勉強とは異なり、「楽しい」という体験を子どもたちに与えているようなのです。私が重要だと思うのは、この「楽しい」という経験です。普通、子どもは勉強を「やらなければならないもの」だと認識しています。もちろん、勉強を耐え続けて取り組み続けることも成績を伸ばすひとつの手ではあるのですが、やはりそれではどこかで限界が来てしまいます。ここで、勉強を「楽しい」と思う経験があれば、無理なく勉強を進めることができるわけです。実際に、算数検定合格者の多くの方が、勉強を「楽しんで」やっている様子が見受けられます。そのために重要なのは、どのように勉強を「楽しい」と思ってもらうのか。そのためには、RISU算数のスペシャル問題のように、難しい問題を解く楽しさを味わわせてあげるのでもいいでしょう。あるいは、「30分勉強したらゲームを10分やってもいい」などとご褒美を活用するのもひとつの手。ご褒美をあげることに対しては、さまざまな異論もあるでしょうが、ご褒美も使い方によっては効力を発揮します。大事なのは、勉強をどう「楽しんでもらう」のか――。いろいろな工夫を試してみましょう。子どもの成績アップのために親ができることさて、ここまで算数検定合格体験記から見えてきた伸びる子どもの特徴をお伝えしてきました。そこからわかるのは、算数学習の近道に決まった方法はない、ということです。自分にあった勉強スタイルで、勉強を楽しむこと。それに、正解はひとつではありません。それぞれのお子さんがそれぞれのお子さんにあった適切な方法を選んでいることが、子どもの成績アップにつながるようです。したがって、勉強の目標もそれぞれのお子さんが「自分にあった勉強を、楽しく」続けられるようにしてあげたいところです。お子さんとよく相談して、勉強の目標を立ててみてはいかがでしょうか?『10億件の学習データが教える 理系が得意な子の育て方』今木智隆 著/文響社(2019)■ 算数塾「RISU」代表・今木智隆先生 インタビュー記事一覧第1回:子どもを「算数嫌い」にしない大原則。幼児期からできる“算数好きの基礎”の築き方第2回:子どもが勉強で成果を出せないのは、親の「勘違い」が原因かもしれない第3回:10億件のデータを調べてわかった、小学生が「ずば抜けて苦手」な算数の単元と例題第4回:「算数の文章題が苦手」な子どもが、ひねった応用問題でも解けるようになる教育法
2021年02月09日抱っこにおんぶ、頭をなでたり、ぎゅっと抱きしめたり、手をつないでお散歩したりと、子どもが小さいうちは親子で四六時中触れ合っているものです。しかし、子どもが成長するにつれて、直接肌に触れる機会はどんどん減っていきますよね。今回は、親子のスキンシップがもたらす「子どもの心と脳への影響力」について解説していきます。皮膚は「露出した脳」!?みなさんは、子どものころに親から抱きしめられたり、頭をなでられたりしたことを覚えていますか?あまり覚えていないという人も多いかもしれません。ですが、肌に触れられた記憶というものは、私たちが思っている以上にしっかりと脳や心に刻み込まれているようです。桜美林大学リベラルアーツ学群教授で臨床発達心理士の山口創先生は、著書『子供の「脳」は肌にある』(光文社新書)のなかで、「幼いころの肌の接触は、単に見たり読んだりした経験に比べると、その後の人生にとってははるかに大きな意味をもつ。そして、知らず知らずのうちに、私たちの生き方や人間関係に大きな影響を与えているのである」と述べています。山口先生は「皮膚は『露出した脳』であり、皮膚に直接刺激を与えることで脳が育つ」と言います。なぜ「露出した脳」なのかというと、皮膚と脳は同じ「外胚葉(がいはいよう)」という細胞からつくられているそう。そのため皮膚からの情報は、視覚情報や聴覚情報とは違い、ダイレクトに脳へと伝わり、脳を大いに刺激することがわかっているのです。そして重要なのが、一見「脳」からかけ離れている「肌」という身体の末端部への快い刺激こそが、子どもたちの心を豊かに育むことにつながっているということ。山口先生は、親との触れ合い経験が不足している子どもは、愛情の形成が不十分になり、のちに人間関係にさまざまな問題が出てくると指摘します。例えば、幼児期に母親から添い寝などを通じて肌にたくさん触れられて育った子どもは、成長してからも情緒が安定しており、社交性が高く、他人を攻撃する傾向も低い。反対に母親とのスキンシップが少なかった子どもは、人間不信や自閉的傾向が高く、自尊感情も低いことなどがわかりました。(引用元:致知出版社|「スキンシップ」が子どもの脳と心を育てるーー山口創が語る最新科学が明らかにした子育てのヒント)このように、子どもたちにとって肌の触れ合いは、その後の人生に大きな影響を与えるのです。愛情ホルモン「オキシトシン」のすごい効果なぜ肌に触れることで子どもの心が満たされるのでしょうか?それには、「愛情ホルモン」と呼ばれる「オキシトシン」が大きく関わっています。先ほどもお伝えしたように、実は密接につながっている皮膚と脳。人間の脳はスキンシップにより、いわゆる「愛情ホルモン」と呼ばれる神経伝達物質・オキシトシンを分泌する働きがあります。このオキシトシンこそが、ストレスへの反応を和らげたり、他人への信頼を高めたり、安心感を得て幸せを感じたりする効果を生み出すのです。では、親子のスキンシップによってオキシトシンが分泌されると、具体的にどのようなよい効果が表れるのでしょうか。■オキシトシン効果1:挑戦する力が育つ普段からスキンシップをしているということは、親子関係が安定している証拠。それゆえに子どもの心は常に落ち着いており、新しいことに挑戦しようという気持ちの余裕がもてるようになります。また、オキシトシン効果で不安な気持ちを抱え込みにくくなり、何にでも臆することなくチャレンジできるように。■オキシトシン効果2:集中力が高まる不安や心配事に心がとらわれていると、集中力が下がるのは周知のとおり。日常的に触れ合うことによってオキシトシンが出やすくなると、心身のリラックス効果をもたらします。目の前のことに集中し、結果を出したいと思っているのなら、まずはスキンシップを!■オキシトシン効果3:コミュニケーション能力がアップするオキシトシンは人を信頼し、人との絆を強めるはたらきをしてくれるホルモンでもあります。「友だちとうまく遊べない」「衝動的になることが多くトラブルを起こしやすい」という悩みを抱えている子の多くは、家で親に甘えられなかったり、スキンシップが極端に少なかったりする傾向があるといいます。東京慈恵会医科大学名誉教授の前川喜平先生は、「身体的接触は、安心感と親密さを増し、信頼関係を築きやすくなる」と述べています。実際に、スウェーデンの保育園や学校で子どもたちにマッサージを受けてもらったところ、落ち着きが出て、他者とのかかわり方が穏やかになっていったそう。なかでも、乱暴な言動で困らせていた男の子は、タッチケアによって攻撃的な振る舞いが減少したと言います。また、乳幼児期に母親とスキンシップが不足していた子どもは、高校生になったときに衝動的に他者を攻撃する、すなわち「キレやすい」傾向があることもわかっています。それは「皮膚レベルの欲求が満たされていない」ことが原因であり、「皮膚の欲求不満が、生まれてからずっと続いていたに違いない」と山口先生は指摘しています。スキンシップを増やして不満を解消することで、問題行動が軽減された実例もたくさんあることから、子どもの心の問題は親とのスキンシップと密接に関わっていることがうかがえるでしょう。子どもの肌に触れるときに気をつけたいことここまで読んで、「子どもと積極的にスキンシップをとらなくちゃ!」と意気込む人もいるかもしれません。しかし、親子のスキンシップは、日常的かつ自然に取り入れないと意味がないのです。それどころか、逆効果になってしまうこともあるので要注意。ここでは、オキシトシンを増やす触れ合い方のポイントを紹介していきます。○親の気持ちよりも子ども気持ち優先で自分の機嫌がいいときや手があいて暇なときなど、親の都合で無理に子どもを抱きしめたり、スキンシップをとったりしていませんか?残念ながら、子どもが求めていないのに触れ合っても、オキシトシンは増えません。子どもから「だっこして」と求めてきたり、体をくっつけてきたりしたら、「ちょっと待って」「あとでね」などと言わずにすぐに受け入れてあげましょう。○日常のコミュニケーションにさりげなく取り入れる本を読んであげるときに膝の上に座らせる、お手伝いをしてくれたときに「いいこいいこ」と頭をなでてあげる、添い寝しながらトントンするなど、普段の生活のなかでスキンシップをとれる瞬間はたくさんあります。毎日の習慣にすることで、子どもだけでなく親もオキシトシンが分泌されやすくなります。その結果、ストレスが軽減して気持ちが安定するという相互効果も期待できますよ。○子どもの肌を優しくマッサージする習慣を子どもは手のひらで優しくマッサージしてもらったり、トントンとリズミカルに皮膚を刺激されたりすると喜びます。小児看護を専門とする原田眞澄教授(中国学園大学)によると、「肌に触れることは、する側・される側のどちらにとっても情緒が安定する効果がある。また親子の絆も深まる」のだそう。お風呂上がりに保湿クリームやローションを手のひら全体で伸ばして塗ってあげると、親子の楽しいひとときにもなるのでおすすめです。○抵抗感があるなら遊びの延長からそうは言っても、さまざまな理由から「どうしてもスキンシップが苦手」と感じている人もいますよね。そのようなタイプの人は、無理に触ろうとすればするほど体がこわばって、不自然な触れ方になってしまいます。そこで、親子で体を使った遊びを取り入れてみましょう。こちょこちょくすぐり合う、抱き上げて飛行機ごっこなど、自然なかたちでスキンシップがとれる遊びがおすすめです。保育の現場でも、子どもの情緒を安定させる目的として、手遊び歌やわらべ歌、触れ合い遊びを推奨しています。以下は『保育ハンドブック』(大修館書店)で紹介されている例です。一本橋でこやまでこちゃんえんやら桃の木ちぎりばっちりいちりにりラララぞうきんおすわりやすちょちちょちあわわ YouTubeなどの動画サイトでも、プロの保育士による子どもが喜ぶ手遊び歌がたくさん紹介されているので、親子で楽しめる触れ合い遊びを見つけてみてくださいね。スキンシップの効用をもっと詳しく知りたい人におすすめの本肌と心の関係の奥深さについて、知れば知るほど興味がわいてきた人も多いのではないでしょうか?そんな方にぜひおすすめしたいのが、次に紹介する4冊です。◆『触れることの科学:なぜ感じるのか どう感じるのか』ジョンズ・ホプキンス大学医学部教授で神経科学者の著者による、触れることと感じることの関係性を科学的に解き明かす衝撃の一冊。少し専門的な内容ですが、より深く、詳しく知りたいという人にはぴったりです。◆『幸せになる脳はだっこで育つ。-強いやさしい賢い子にするスキンシップの魔法-』前出の山口創先生による、育児に悩む保護者の方に向けた「スキンシップ育児のコツ」が満載の本著。0歳から思春期まで幅広い年代に対応しているので、子どもの成長にずっと寄り添ってくれる一冊です。◆『皮膚感覚の不思議ー「皮膚」と「心」の身体心理学』普段あまり意識することがない「皮膚の不思議」について詳しく解説している一冊。ツボ押しの「痛気持ちいい」感覚や、どうしても我慢できない「かゆみ」の正体、触られる相手によって正反対の感情が湧き上がる謎など、皮膚と心の密接な関係が解き明かされます。◆『第三の脳ーー皮膚から考える命、こころ、世界』著者は資生堂ライフサイエンス研究センター主任研究員であり、皮膚研究のスペシャリスト。「皮膚は脳にも匹敵する、いまだ知られざる思考回路」というように、皮膚の潜在的可能性についてたっぷり語られています。***「幸福学」の第一人者である慶應義塾大学大学院教授の前野隆司先生は、「文化的にスキンシップが少ない日本人、とくに子育て中の親は、意識的に子どもとのスキンシップを増やす必要がある」と述べています。照れや気恥ずかしさもあるかもしれませんが、スキンシップによって子どもへの愛情がさらに伝わりやすくなります。ぜひ試してみてください。(参考)山口 創(2004),『子供の「脳」は肌にある』,光文社新書.PHPのびのび子育て 2020年8月特別増刊号,PHP研究所.致知出版社|「スキンシップ」が子どもの脳と心を育てるーー山口創が語る最新科学が明らかにした子育てのヒント公益財団法人 母子健康協会|「タッチケアで絆を育む」…安らぎの物質オキシトシン中国学園リポジトリ|子どもへのタッチングに関する考察大修館書店|保育ハンドップックSTUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|「子どもは宝物だ」という思考が危うい訳。子を思うなら親は“自らの幸せ”を追求すべき
2021年01月26日逆境に強く、ポジティブ思考の人になるためのキーワードがあります。それが「レジリエンス」。 “心の筋肉” とも言われ、鍛えれば人生がパワーアップするそうです。また、レジリエンスは、近年注目されている「やり抜く力(GRIT)」を構成する4つの要素、根性(GUTS)・回復力(RESILIENCE)・自発性(INITIATIVE)・執念(TENANCY)の1つでもあります。レジリエンスを鍛えることで、やり抜く力もアップするはず。今回は、親子で身につけたい能力であるこのレジリエンスについて、詳しく見ていきましょう。レジリエンスとは「折れない心」であり「回復力」いま話題のレジリエンスとは、「折れない心」であり、逆境から立ち直る「回復力」のこと。一般社団法人 日本ポジティブ心理学協会では、次のように説明されています。レジリエンスとは、心理学においては、「逆境やトラウマ、惨事、脅威、さらには重大なストレス源に直面したときにうまく適応するプロセス」であり、総じて「困難な経験から『再起する』こと」と定義されます(アメリカ心理学会の定義より)。(引用元:一般社団法人 日本ポジティブ心理学協会|JPPA認定 第3期レジリエンス・トレーニング・コースのご案内)※太字は編集部が施したストレスマネジメントの専門家である小関俊佑氏(桜美林大学准教授)は、「レジリエンスとは、ストレスに負けずに自分がやりたいことをやるためにあるもの」と言います。人生にストレスはつきものです。ストレスを上手にかわすためにも、レジリエンスを育みたいところ。レジリエンス育成はできるだけ早い時期がいいとされています。なぜならば、いろいろな経験の積み重ねこそがレジリエンス育成につながるから。では、レジリエンスとは具体的にどういう力なのか。次に見ていきましょう。レジリエンスが高い子と低い子の違い臨床心理士で医学博士の小玉正博氏は、レジリエンスには次の7つの要素が含まれていると言います。気持ちや感情をコントロールする力変化する状況に順応できる柔軟性「自分は大切な人間だ」という感覚人に助けを求められる力楽観的であることネガティブな気持ちを引きずらない力 「成績が悪かった」「友だちとケンカした」など、子どもにとって困難なことが起こり、落ち込んだり挫折したりしたとき、これらの要素をもつ子(レジリエンスが高い子)ともたない子(レジリエンスが低い子)では次のような反応の違いが出てきます。【レジリエンスが高い子】・・・楽観的、人に頼ることができる「なんとかなる」「この状況は長くは続かない」「いままでのようにきっと大丈夫」「お父さんかお母さんに相談してみよう」【レジリエンスが低い子】・・・悲観的、自分の殻に閉じこもる、ひとりで耐える「どうしたらいいのかわからない」「きっともうダメだ」「もうどうでもいい」「恥ずかしいから、誰にも話したくない」「怒られるかもしれないから、親には話せない」「自分でなんとかしなきゃ」このような反応の違いには、ふたつのポイントがあります。まずひとつめは、子どもに自己肯定感があるかどうか。自己肯定感とは、自分のよい面だけでなく欠点も含めて「私は私」と認められる感覚のこと。自己肯定感を高める活動をしている日本セルフエスティーム普及協会は、「自己肯定感を高めることでレジリエンスも高くなる」と説明しています。レジリエンスの土台は自己肯定感なので、レジリエンスを高めたいのであれば、まずは自己肯定感を高めるべきなのだそう。そして、ふたつめのポイントは、周りにSOSを出せるかどうか。これにはまず周りとの信頼関係が必要です。普段から親や友だちとの人間関係において、人との関わり方を学び、人から助けられる経験をすることがとても大切になります。問題を抱えてひとりではどうしようもなくなったとき、助けを求められるかどうかは、そのようなコミュニケーション体験の有無によるのです。これらをふまえたうえで、レジリエンスを育むコツをご紹介します。親子でやってみよう!レジリエンスを育む方法“折れない心” には、「自己肯定感」と「信頼関係」が必要だということがわかりました。次はいよいよ、レジリエンスを育むための方法をご紹介します。「自己肯定感を上げてレジリエンスを鍛えるトレーニング」と、「親子で信頼関係を築き、レジリエンスを強化する方法」です。ぜひ今日から親子一緒に実践してみてくださいね。方法1:劣等感に負けない、自己肯定感を育むトレーニング法政大学文学部心理学科教授の渡辺弥生氏は、「人がネガティブな感情をもつのはあたりまえで、むしろ必要」と言います。なぜならば、嫉妬や劣等感がモチベーションになり、よりよい自分であろうとするための成長ステップになるから。しかし、その過程でネガティブ感情に負けてしまっては意味がありません。そうならないために、渡辺教授が提唱する「レジリエンスを鍛える4つのトレーニング」で “心の筋肉” を鍛えてみてください。「I am」マッスル私は〇〇(自分を肯定する言葉)例:私は優しい「I can」マッスル私は〇〇ができる(自分ができること)例:私は泳げる「I like」マッスル私は〇〇が好き(自分が好きだと思うこと)例:私はサッカーが好き「I have」マッスル私には〇〇がいる、私は〇〇をもっている(自分が大事にしている人や宝物)例:私には頼りになるお父さんがいる、私は電車のおもちゃをもっているこのトレーニングは、子どもがもつ「いいところ」「いいもの」を「見える化」し、自分自身の劣等感に打ち勝つことを目的としています。子どもは、ポジティブな気持ちで眠りにつくことができるでしょう。そして、毎日続けることで自己肯定感もアップします。方法2:親子の絆を深め、レジリエンスを強化する方法子育てコーチング専門家でNPO法人ハートフルコミュニケーション代表理事の菅原裕子氏は、「レジリエンスがもともと低い子はいない」と言います。親との関係や、周りの人との関わりによって、子どものレジリエンスの高低は変化するのだそう。東京学芸大学名誉教授で臨床心理学者の深谷和子氏も、子どものレジリエンス育成の重要な鍵となるのは、親や家族との信頼関係だと指摘しています。家庭を「居心地のよい場所・心の拠り所」にすることで、子どもは外の世界で嫌なことがあったとしても、安全基地であるお父さん・お母さんのもとで充電し、気持ちを回復させることができるのです。それでは、深谷氏をはじめとした専門家の意見を取り入れた、親子コミュニケーションのポイントをお伝えしましょう。【親子の会話】子どもとの信頼関係を深めるのは、なんといっても “毎日の会話” です。しかし、親だけが一方的に話してしまうのはNG。もし子どもが失敗してしまったときでも、「だから〇〇しなさいって言ったのに」なんて言わず、「悲しいね」とネガティブな感情を受け止めてあげましょう。子どもの話をじっと聞き、どんなネガティブな感情を受け止めることで、親子の信頼関係のベースが築かれます。実際に、この方法で不登校が解消した例も報告されているようですよ。もしテストで思ったような点数がとれなくて子どもが落ち込んでいるときなどは、「勉強頑張っていたよね!」と努力の過程をほめてください。すると、ストレスを感じていたとしても、再度、挑戦する力が湧いてくるものなのです。また、親自身の「失敗談」や「立ち直りストーリー」を話すのも◎。「完璧な人はいない」というメッセージは子どもを安心させます。【子どものお手伝い】親を助ける、親の役に立つお手伝い経験は、子どもを無力感から開放し、「自分は家族のなかで大切な存在だ」と再確認できる機会です。洗濯物をたたむ、冷蔵庫からドレッシングを出す、買い物をお願いする、旅行の計画を立てるなど、簡単なお手伝いから少し難しいお手伝いまで、とりあえずどんなことでもお願いしてみませんか?「できた!」という達成感から自己肯定感も育まれますし、「失敗しちゃった……」という場面でも「頑張ってお水を運んでくれたよね。ありがとう!」と、親ができたことを認めてあげることで、子どもは、心を回復させる力を手に入れることができますよ。レジリエンスを学べる本そして家庭外では、ゲームなどのバーチャルではない、リアルな遊びを通して、できるだけ多くのお友だちと遊ばせましょう。また、スポーツに励むこともレジリエンス強化に効果があると、深谷氏は推奨しています。どうやら、レジリエンスを鍛えるには、まだまだたくさんの方法があるようです。おすすめの書籍をいくつかご紹介しますので、ぜひ読んでみてくださいね。『親子で育てる折れない心 レジリエンスを鍛える20のレッスン』うまくいかなくてもへこたれずに頑張ることができる、失敗しても立ち直れる――そんな「レジリエンス・キッズ」を育てる技術を紹介した1冊。どんなタイプの子どもにも有効なトレーニングばかりです。毎日3分、親子で取り組んでみませんか?『子どもの「逆境に負けない心」を育てる本』「挫折しやすい子」「キレやすい子」「すぐあきらめる子」が変わる!レジリエンス教育の第一人者による実践ワークブックです。日本の学校でも効果が実証済みの教育プログラムをイラストとともに説明しています。『イラスト版 子どものレジリエンス』著者は、子どものレジリエンス研究会代表の上島博氏。「気持ちを言葉にしよう」や「ストレスをパワーに変える」など、落ち込んでいる気持ちを回復させる方法がたくさん書かれています。子どもと一緒に読みたい1冊。『ヘコんでも折れない レジリエンス思考』健康心理学が専門の医学博士・小玉正博氏が「レジリエンス」について詳しく解説。また、ストレスから心を回復させるための思考法も事例とともに紹介しています。鋼のような強い心ではなく、復元力に富む「しなやかな心」をつくりましょう。***変化の激しい時代を力強く生き抜くために、「レジリエンス」はこれまで以上に必要不可欠な能力と言えるでしょう。レジリエンスを育むためには、子どもに大きな影響をもたらす大人(親)のレジリエンスを高めることも重要です。親子一緒にレジリエンスを鍛えていきましょう。(参考)一般社団法人 日本ポジティブ心理学協会|JPPA認定 第3期レジリエンス・トレーニング・コースのご案内SHINGA FARM|子どもの「心理的レジリエンス」を高める3つのコツとは?AllAbout|子どものレジリエンスを鍛える10のコツ!逆境を跳ね返す力とはベネッセ教育情報サイト|乳幼児から育む、折れない心【前編】困難に負けない、レジリエンスとはベネッセ教育情報サイト|乳幼児から育む、折れない心【後編】レジリエンスを伸ばす保護者の働きかけとは朝日新聞 EduA|逆境に負けない心、「レジリエンス」を育てるには他人に助けを求める能力も身につけて一般法人日本セルフエスティーム普及協会|レジリエンス(折れない心)は自己肯定感でつくる日経DUAL|レジリエンス、しなやかさ、負けないメンタル…「心が強い子」の育て方|レジリエンスを育むにはこの気質を理解することから個別指導塾スタンダード|どんな困難にもくじけない!我が子のレジリエンスを鍛えるには?STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|劣等感を自尊心に!寝る前に親子で実践、「レジリエンス」の簡単トレーニング法STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|子どもの「レジリエンス」を高めるのは、親子の会話。結果ではなく“挑戦”を褒める!
2021年01月20日新年が明けて二週間が経ちました。小中学校では冬休みが終わり、3学期が始まった頃でしょう。約2ヶ月半と、ほかの学期に比べてとても短い3学期。うかうかしていると、あっという間に新年度がやってきます。よい新年度のスタートを切るには、これから始まる3学期をどう過ごすかが重要です。以前、算数はRPGと同じ「積み上げ型」の科目だとお話ししましたね。前に習った単元の積み重ねがあって初めて、新しい単元を理解することができる。それは言い換えれば、前の単元でのつまずきが、あとあとまで響いてくるということでもあります。わからない単元を持ち越したまま新年度を迎えたら、進級して早々、学習につまずいてしまうかもしれません。そこで今回は、これまでのポイントを振り返りつつ、3学期を有意義に過ごし、子どもの成績アップにつなげるためのヒントを探っていきたいと思います。朝学習×短時間型=効果的な学習法思い込みや経験則を離れ、データに基づいた科学的な知見を重視する「エビデンス・ベースド」の考え方――本連載では、そんな「エビデンス・ベースド」の視点に立ち、算数のニガテが生まれる原因から効果的な学習法まで、データが示すさまざまな事実を見てきました。3学期になると、学校や塾では子どもに「総復習」をさせます。でもじつは、「総復習」は効率が悪く、おすすめできない方法。第6回連載でお話ししたように、この時期本当に取り組むべきは、算数の理解を支える「2~3桁の位の理解」「図形の組み立て、立体の基礎」「目盛りの読み方」「円と直径・半径の理解」の4つの土台の見直しです。そして、新年度までの限られた時間で効果的に見直しを行なうには、効率よく学習することが欠かせません。第4回、第7回の連載でも触れましたが、効率的な学習の鍵を握るキーワードは、「朝学習」と「短時間型」。朝の10分は、夜の20分にも相当します。集中力が切れにくい朝に、毎日少しずつ復習を進められたら理想的ですね。子どもの「苦手」より「得意」に目を向けてここからは、おうちの方が子どもにできること、そして理想的なおうちの方の「あり方」についてお話ししたいと思います。RISUでの教育事業を通して多くのご家庭と接するなかで、私は日々、「最近の親御さんには本当に熱心な方が多い」と感じています。しかし、なかにはその熱心さが逆効果になってしまっているケースもありました。ひとつめのケースが、「苦手つぶし」です。子どもの苦手を見つけると、それをつぶそうと必死になるおうちの方は多いもの。しかし多くの場合、おうちの方が必死になるほど子どもの成績は下がっていきます。たとえば先日、あるおうちの方から、こんなメールが届きました。「時計の範囲はやっと100点がとれましたが、時間がかかりすぎました。もっと復習を頻繁に出していただきたいです。」教育熱心な方ほど、成功のなかにもマイナス面を探し出してしまうようです。苦手な範囲で100点をとれたのに、きっとこの子はほめられてはいないでしょう。これでは、子どものモチベーションは下がる一方です。「時間はかかったけど、100点をとれたね。やったね!」こんなふうに、「できた」部分をほめてあげることが大切です。子どものために親ができる最大のことは、モチベーションをアップさせること。子どもの「得意」に注目して、自信をもたせることのほうが、「苦手」に注目するよりもずっと効果的なのです。教えるべきは、「解き方」ではなく「考え方」もうひとつ、熱心なおうちの方が陥りがちなケースがあります。それは、「教える」のではなく「自分で解いてしまう」というもの。私たちはよく、ショッピングモールなどで教材の紹介イベントをしています。そこでときどき目にするのが、子どもの代わりに自分が問題を解いてしまうおうちの方です。子どもが問題を解こうと一生懸命考えていますが、なかなか手が動きません。すると、30秒もした頃、おうちの方が後ろから問題をのぞき込み、パパッと解いてしまう。そして、「ほら、こうやって解くのよ」と言うのです。このように、自分自身で解答を出して、それを示すことが「教えること」だと勘違いしているおうちの方は少なくないよううです。しかしこのやり方は、子どもが試行錯誤し、自分で考えるチャンスを取り上げてしまっています。子どもの目の前で解いてみせるのでは、教えたことにはなりません。もし教え方に悩んだ際は、お子さまに合った学習教材や専門家の力を頼っていただければと思います。周りの大人にできることは、ほんのわずかここまで読んでくださったおうちの方は、きっと「子どもの能力を伸ばしたい」「子どもの学力を底上げしたい」など、お子さんのことを本当によく考えていらっしゃる方のはず。子どものためを思うからこそ、つい気になってあれこれ手を焼いてしまう気持ちはよくわかります。でも、ここでひとつ、忘れてはいけないことがあります。それは、「周りの大人にできることはほんのわずか」だということ。これまで見てきたように、おうちの方の熱心さが間違ったほうに向くと、逆に子どものモチベーションを下げてしまうケースもあるのです。だからこそ、おうちの方には、子どもが伸び伸びと興味をもって勉強に取り組めるよう、全力のサポートに回ってほしいと考えています。また、本連載で紹介してきた「科学的に正しい学習」は、正しいからといって子どもに押しつけるものでも、それができない子どもを責めるためのものでもありません。それらはあくまで、子どもとおうちの方の選択肢のひとつです。3学期が本格的にスタートする前に、まずは子どもとよく話し合って、子どもが「おもしろそう!」「やってみたい!」と、興味をもって取り組めるものを選んでみてください。おうちの方は、その習慣が無理なく続くよう、応援とアシストをしてあげましょう。3学期のうちに、自分に合った学習習慣を身につけ、新年度を迎えること。それが、成績アップの一番の近道になるはずです。『10億件の学習データが教える 理系が得意な子の育て方』今木智隆 著/文響社(2019)■ 算数塾「RISU」代表・今木智隆先生 インタビュー記事一覧第1回:子どもを「算数嫌い」にしない大原則。幼児期からできる“算数好きの基礎”の築き方第2回:子どもが勉強で成果を出せないのは、親の「勘違い」が原因かもしれない第3回:10億件のデータを調べてわかった、小学生が「ずば抜けて苦手」な算数の単元と例題第4回:「算数の文章題が苦手」な子どもが、ひねった応用問題でも解けるようになる教育法
2021年01月19日2020年に発表された「レポートカード16-子どもたちに影響する世界:先進国の子どもの幸福度を形作るものは何か」(ユニセフ・イノチェンティ研究所調査)で、日本の「子どもの幸福度」は先進国38ヵ国中、20位でした。2013年に行なわれた前回調査の6位からかなり順位を落としています。特に「精神的幸福度」については、生活満足度の低さや自殺率の高さが影響し、ワースト2位という結果に。健康や学力、経済面はトップクラスなのに、子どもが幸せを感じられないという事実。どうしたら、子どもたちは「自分は幸せ」と思えるようになるのでしょうか。今回は、「子どもの幸せ」と「子どもを幸せ体質にする親の特徴」について考えてみます。「幸福の4因子」があれば人は幸せになれる!人はどうすれば「幸せ」を感じられるのでしょうか?心理学・統計学をベースとし、「人はいかにすれば幸せになれるのか?」を追求する学問「幸福学」の第一人者である前野隆司氏(慶應義塾大学大学院教授)は、幸せを感じるための要素として、「幸福の4因子」を挙げています。やってみよう因子幸せを感じるためには、やりがいを見つけること。小さなことでもいいので、何かトライすることがとても有効です。新しい学びを得て、成長することに、人は幸せを感じるのです。 ありがとう因子「感謝の気持ち」をもっている人は、周囲といい人間関係を築けるため、幸せを感じやすいそう。また、人を喜ばせたいという気持ちがある人も、相手から感謝されることが多く、幸せを感じることができます。 なんとかなる因子リスクテイクできることは大きな強みになります。「なんとかなる!」と失敗を恐れずチャレンジできる人は、自分の世界が広がり、幸せへの道筋を見いだすことができるでしょう。 ありのまま因子人との比較で勝って得た幸せは、長続きしないことがわかっています。「人は人、自分は自分」と、ありのままの自分を受け入れることが、幸せにつながります。つまり、「幸せな人」というのは、「自己肯定感が高く、利他的で、人への感謝を常にもち、楽観的である人」と言えるでしょう。前野氏によると、不幸せな人は視野が狭くなりがちなのだそう。抱えている問題に対し、その一点しか見ていないため、袋小路に入り込んで出られなくなってしまうのです。反対に、幸せな人は、物事を俯瞰して見ることができるため、視野が広くなり、さまざまな解決策を出すことができます。解決策が出せれば、「なんとかなる」と考えられるため、楽観的にもなれるというわけです。そして驚くべきことに、「幸せな人」は「不幸せな人」よりも、寿命が7~10年長く、仕事の創造性は3倍、生産性は1.3倍になるという研究結果も出ています。幸福学についてもっと詳しく知りたいという方は、前野氏の著書『幸せのメカニズム 実践・幸福学入門』を読んでみてはいかがでしょう。「幸せは自分でコントロールできる!」と断言している前野氏が、幸せの仕組みをロジカルに解き明かしています。子どもの幸せの鍵を握っているのは、親ところで、いま、あなた自身は幸せですか?なぜこんな質問をしたのかというと、親の幸せが子どもの幸せに大きく関わっているからです。『世界に通用する子どもの育て方』の著者で、臨床心理学医学博士の松村亜里氏は、「子どもの幸せの鍵を握っているのは、親である」と言っています。どんな親でも子どもの幸せを願って、いろいろしてあげたいもの。しかし、まじめな人ほど、子どもを差し置いて自分の幸せを追求することに後ろめたさを感じてしまうようです。実際に、この後ろめたさを感じたことのある方は多いのではないでしょうか。ですが、「自分の欲求を我慢して子どもにばかり尽くしてはいけない」と前野氏は言います。尽くした先に生まれる、「ずっとそばにいてほしい」という束縛する気持ちは、子どもの自由を奪います。それに、子どものためにどんなに頑張っても、イライラして子どもにあたってしまっては本末転倒です。また松村氏は、もっと個人の強みにフォーカスするべきだと言います。日本人はつい弱みに注目してしまいがちですが、研究によると「自分の強みを知っている人は幸せになる」と証明されているのだそう。「人前で話すのは苦手でも、自分の考えをまとめることは得意」「飽きっぽいけど、新しいことにチャレンジするのは好き」というように、誰にでも「その人なりの強み」があるはず。これからAI化が進む未来に生きる子どもたちには、強みを生かし、価値を自分でつくり出していく力が絶対に必要なのです。まずは親自身がそのお手本になるべく、自分の強みを見つけ、幸せを積み重ねていく姿を子どもに見せましょう。親が毎日楽しそうに生きていれば、子どもは「自分もそうなりたい!」と思うもの。まさに「子は親を写す鏡」。ですから、「親自身が幸せになることはわがままでも勝手なことでもなく、むしろ子どものため」なのです。子どもを幸せ体質にする親の特徴6つ前述した「子どもの幸福度」の調査で、1位に輝いた国はオランダでした。オランダの子どもたちには、いわゆる「反抗期」もないのだとか。日本とオランダ、何が違うのでしょうか。どちらも、安全で物質的にも恵まれて、十分な教育を受けられることは、共通しています。違いは「その幸せを感じることができるかどうか」にある模様。そこには親の影響も少なからずあることは先に述べました。子どもを幸せ体質にしているオランダの親たちの特徴に、改善の糸口を探してみましょう。特徴1:子どもを「できる子」に育てようと思っていないオランダの親は、「頭がいい子」に育てる教育法などにあまり関心がありません。ですから、知育DVDを子どもに見せたり、幼児向けの習い事をさせたりする親はほとんどいないようです。親たちは、自分の子どもが「頭がいい子」に育つよりも「明朗でのびのびとした子」に育つことを願っています。特徴2:子どもの外遊びに付き添わない親の付き添いなしで外で遊ぶ子どもの姿は、オランダでは珍しくありません。よちよち歩きの子どもふたりが公園の滑り台で遊んでいても、親たちはベンチに座っておしゃべり。危ないからと横で見守ったり、「そこは触ったらダメよ」なんて言ったりはしません。オランダの子どもたちは外遊びで自由を満喫できるのです。特徴3:「ダメ」「~しなさい」と言わないオランダの親は、子どもに意見を押しつけることを嫌がります。しつけとして “指示する” ことも良しとしません。その代わりに、「~してほしい」という親の意思を、その理由とともにきちんと伝えるのです。そして、それをやるかどうかは子ども次第。考えさせて、行動は子どもに委ねます。特徴4:とにかく忍耐強い子どもと同等に向き合うことを常としていて、子どもの意向を確認しながら物事を進めるので、何事にも時間がかかります。そのため忍耐力は不可欠。子どもは大人のように、効率的に動くことができません。それでも、オランダの親たちは子どもの判断を待ちます。子どもを信じているからこそ、意志を尊重できるのです。特徴5:完璧主義ではない以前、ニューヨークタイムズで「オランダ人女性はなぜうつにならないのか?」と取り上げられたことがあります。その理由のひとつは、オランダの人は「完璧主義」でない人が多いから。「理想の自分」をつくりあげたり、人と自分を比較して落ち込んだりということが少ないのだそうですよ。特徴6:自分時間を大切にしているオランダは「パートタイムワーキング大国」。ワークシェアも進んでおり、自分に合ったライフスタイルを選ぶことができます。また、オランダの親たちは自分の時間を必ずもつようにしています。そのちょうどいいライフワークバランスこそが幸福感につながることを、オランダの親たちは知っているのです。オランダで、幸せのベースになると考えられているのは「平等主義」です。みなが平等であることで、比較、嫉妬、葛藤などの精神的ストレスがかなり減ります。それは親子関係でも同じ。親は子どもと対等でありながらも、人生の先輩として、「よいお手本」となることが推奨されています。親がよい行動と幸せな様子を見せることで、子どもの「幸せ感度」も自然と高まっていくのでしょう。***「幸福度研究」の第一人者であるオランダ・ロッテルダム エラスムス大学のルート・フェーンホーフェン教授は、「幸せは、生活満足度」だと述べています。経済的な豊かさではなく、「どれだけ生活を楽しんでいるか」ということが幸せにつながるのです。オランダの親たちはその点に価値を見出して、実践しています。もちろん、それぞれの国の文化、慣習、社会システムがあり、それぞれの家庭事情もあるので、すべて同じというわけにはいかないでしょう。それでも、オランダの事例に学ぶことは多いですね。(参考)Rese Mom|「親が幸せになることが大切」幸せな子どもを育むポジティブ心理学 松村亜里さんunicef|ユニセフ報告書「レポートカード16」発表 先進国の子どもの幸福度をランキングSTUDY HACKER|幸福学が証明「幸せな人はいろいろお得」――今日から始められる“幸せ習慣”教えますSTUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|「子どもは宝物だ」という思考が危うい訳。子を思うなら親は“自らの幸せ”を追求すべきYouTube|Well Being~幸福の4因子〜リナ・マエ・アコスタ 著, ミッシェル・ハッチソン 著, 吉見・ホフストラ・真紀子 訳(2018),『世界一幸せな子どもに親がしていること』, 日経BPマーケティング.親力|あなたは待てる親?待てない親?待てる親だけが子どもを伸ばせる
2021年01月08日前回の連載『「教室での集団授業」ばかりが正解ではない。未来の子どもの学習スタイル予測』では、RISU Japanのオンライン授業サービス「RISU小学生オンラインスクール」を取り上げ、アフターコロナ時代の子どもの学びを見つめました。学校での集団ベースの一斉授業から、個人に最適化された自由度の高い学びへと、教育の主流は変わりつつあります。そんな変化の時代にあって、オンライン教育への注目度はますます高まっています。人々の関心の高まりを反映して、外国でのオンライン教育の取り組みが紹介されるケースも増えました。しかしその論旨は、「外国ではこんなにオンライン教育が進んでいるのに、日本はこんなに遅れている!」というものがほとんど。はたして、本当にそうでしょうか?RISUでは、RISU USAというアメリカ向けのサービスを展開しています。今回は、RISU USAスタッフが見た、アメリカのオンライン教育の現状をお伝えしたいと思います。それらの知見はきっと、日本でも活きてくるはずです。RISU USAのオンライン授業は1クラス7~8人RISU Japanのアメリカ支社であるRISU USAは、英語圏にもRISUの教育サービスを展開するため 、アメリカ・カリフォルニア州シリコンバレーに設立されました。アメリカにおける教育の知見を取り入れるのも目的のひとつでした。RISU USAでは地元のニーズに合わせて、日本のRISU教材と同じようなプログラムに加え、論理思考(Critical Thinking)のプログラムも取り入れた授業を展開していました。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大にともない、シリコンバレーでは3月18日から6月末までのロックダウン措置が決定。RISU USAのアフタースクールも、オンライン化を余儀なくされました。RISU USAのオンライン講座では、小学生向けの「Scratch Game Coding」(プログラミング)や中学生向けの「Python coding」(プログラミング)、「Financial Literacy」(金融リテラシー)、それに加えてクリティカル・シンキングの授業など、理数系を軸にした幅広いコースを開講しました。授業では、画面を共有し、機器の使い方のレクチャーを交えながら課題を解いてもらいます。そして、子どもたちの課題への取り組み方を確認しながら、教師がフィードバックを行ないました。対面形式では、1クラス20人近くの子を見ることができましたが、オンラインでは、1クラス7~8人が精一杯。オンライン上でひとりひとりと双方向的なコミュニケーションをとる難しさを実感させられました。Wifi環境がない!?アメリカのオンライン教育の現状手探りで始まった、RISU USAのオンライン講座。試行錯誤のなかで見えてきたのは、アメリカにおけるオンライン教育の難しさでした。一番多かったのは、機材に関連するトラブルです。いくら現代の子どもがデジタル機器に親しんでいるといっても、実際にそれを使ってコミュニケーションをとるには、いろいろな問題があります。Wifi接続や機材のセッティングといった準備は子どもには難しく、通信不良もたびたび起きます。また、子どもが自分のタブレットやPCをもっていない家庭では、親の仕事用PCを使っているため学習時間が限られてしまう、という問題もありました。RISU USAは、もともと学校に出向いて授業を行なうというスタイルをとっていたので、子どもたちは学校のWifiを利用することができました。しかし、オンラインへ移行すると、家庭にWifiがないという理由でRISU USAを辞めてしまう子も出てきました。日本でも、Wifiがない家庭への対処が問題になっていますが、アメリカでも、Wifi環境の整備は大きな課題です。「経済格差が学力差を生んでいる」という事実突然のロックダウン措置によるオンライン教育への移行から半年以上が経ったいま、アメリカの教育事情はどのように変化したのでしょうか。RISU USAのスタッフに話を聞いてみたところ、アメリカの教育現場が直面する厳しい現実が見えてきました。どうやらアメリカのオンライン教育の現状は、あまり変わっていないようです。地域間の格差、あるいは同一地域内でも家庭間の格差が、そのまま子どもの学習機会の差を生んでしまっています。裕福な家庭では、「パンデミック・ポッド」と呼ばれる、固定した生徒数人に対して、教員免許をもった先生1人の組み合わせで対面学習をさせる取り組みをしています。学校が提供するオンライン教育を受けながら、その補填をパンデミック・ポッドで行なうのです。一方で、低所得者層を中心に失業率が上がっており、学年始めからオンライン教育にすら参加できていない生徒も一部いるのが現実。こうした経済格差の問題は、これから先、ますます顕在化してくることが予測されます。アメリカ社会が抱える問題。いずれ日本でも……また、アメリカ社会全体に目を向けると、9月末で立ち退き請求保留の暫定法が失効し、家を追われた家庭も増えています。日本では、生活保護を受ければ最低限の衣食住を保証されています。しかし、アメリカでは住居に関するサポートは非常に限定的です。そのため、親にお金が入ったときは深夜運航のバスで寝て、それ以外は路上かホームレスのシェルターで寝る生活を余儀なくされる子どもたちもいます。アメリカでは、最も裕福と言われるシリコンバレーでも、約1割の家庭は学校給食なしでは3食食べられないのが現実です。学習機能だけでなく、生活サポートの場としての学校、という側面も考えていく必要があるでしょう。これまで見てきたように、最先端のIT企業がひしめくシリコンバレーでさえ、オンライン教育をめぐるさまざまな問題に直面し、その対応に追われています。アメリカで明らかになったこれらの問題は、いずれ日本でも十分に起こりうるものです。しかし、コロナ禍がもたらした「変化の時代」は、従来のやり方を見直し、教育をよりよい方向に変えるチャンスでもあります。コロナウイルス第三波の到来が叫ばれるいま、状況を冷静に分析し、関係者どうしが協力し合って、よりよい学習環境をつくっていくことが大切だと、強く感じています。『10億件の学習データが教える 理系が得意な子の育て方』今木智隆 著/文響社(2019)■ 算数塾「RISU」代表・今木智隆先生 インタビュー記事一覧第1回:子どもを「算数嫌い」にしない大原則。幼児期からできる“算数好きの基礎”の築き方第2回:子どもが勉強で成果を出せないのは、親の「勘違い」が原因かもしれない第3回:10億件のデータを調べてわかった、小学生が「ずば抜けて苦手」な算数の単元と例題第4回:「算数の文章題が苦手」な子どもが、ひねった応用問題でも解けるようになる教育法
2020年12月25日子どもを「ほめること」と「叱ること」については、そのメリット・デメリットを理解している親御さんは多いでしょう。一方、「ありがとう」と感謝の気持ちを伝えることについては、あまり意識することはないかもしれません。しかし、親が子どもへの感謝の気持ちを言葉にすることで、子どもは自信をもってその先の人生を歩むことができるようになるのです。さらに「ありがとう」は、言われたほうはもちろん言ったほうにもよい影響を与え、ポジティブな人生を送るキーワードにもなります。今回は、「ありがとう」がもつ大きなパワーと、親が子に感謝の気持ちを伝えるメリットについて考えていきましょう。毎日何回「ありがとう」と言っていますか?子どもに対して、「ありがとう」と感謝の気持ちを伝えるよりも、叱ったり注意したりすることのほうが圧倒的に多いご家庭は少なくないはず。考えてみれば、お手伝いをしてくれたときやプレゼントを渡してくれたときくらいしか、はっきりと子どもに「ありがとう」を伝える機会はないかもしれません。「親子なんだから」「夫婦なんだから」と、家族であることを理由に、改まって「ありがとう」と言うのが照れくさい人もいるでしょう。しかし、どんなに感謝の気持ちをもっていても、それを言葉にして伝えないことには意味がありません。夫婦間では、「ありがとう」の一言が円滑な関係を構築するのに一役買うことがよくあります。東京大学名誉教授で教育学者の汐見稔幸先生は、著書の中で「とくに男性は感謝の気持ちを表したり、人をほめたりするのが苦手であるからこそ、『ありがとう』は超えなくてはならないハードルなのです」と、「ありがとう」がいかに重要な言葉であるかを説いています。汐見先生によると、「妻が自分のためにしてくれたことに対して『ありがとう』と伝えることで、相手は『またがんばろう』と思えたり、お互いのことに興味や関心を向けるようになったりする。そして好循環が生まれ、コミュニケーションが深まる」とのこと。もちろん親子関係においても同様です。むしろ、日常的に親から子どもに感謝の気持ちを伝えるように心がけると、想像以上の「いい効果」が期待できることもわかっています。次に詳しく説明していきましょう。子どもの自己肯定感を上げる「ありがとう!」親の「ありがとう」の言葉は、子どもにどのようなよい影響を与えるのでしょうか。具体例を交えながら解説していきます。■「生まれてきてくれてありがとう」アドラー心理学カウンセリング指導者で上級教育カウンセラーの岩井俊憲さんは、「あなたがうちに生まれてきてくれて、お母さんは幸せだわ」「うちの子になってくれて、ありがとう」など、「かけがえのない存在」「必要とされている存在」というメッセージを伝えることで、子どもは自分自身を信頼できるようになると言います。自分の子どもに対して、親ならば「生まれてきてくれてありがとう」と思うのは当然です。ただし、口に出すのは気恥ずかしく、きちんと伝えたことがないという親御さんも多いはず。しかし、言葉にすることで、子どもは自分の存在を肯定し、自信を育むことができるのです。■「(お手伝いや片づけを)してくれてありがとう」お手伝いや片づけなど、子どもの行動に対して「ありがとう」「助かったよ」と声をかけると、子どもは自分が役に立てたことに喜びを感じます。東邦大学医学部名誉教授であり生物学者の有田秀穂先生によると、感謝されることで感じる温かい気持ちは、オキシトシンの分泌によって生まれるそう。オキシトシンは、ポジティブな気持ちになる効果があることもわかっています。発達臨床心理学を専門とする、東京都市大学教授の井戸ゆかり先生もまた、子どもの好意に対して親が「ありがとう」と表現することで、子ども自身の感謝の気持ちを育み、自己表現を豊かにし、人間関係を円滑にしていく強さを培うことにもつながると話しています。■「えらいね」のほめ言葉を「ありがとう」に変える日本キッズコーチング協会理事長で幼児教育家の竹内エリカさんは、「行動を評価する『えらいね』という言葉をかけられ続けた子どもは、評価ばかりを気にするようになり、その言葉を得るために行動を起こすようになる」と指摘します。子どもをほめるとき、つい「えらいね」と言ってしまいますが、それよりも「ありがとう」を伝えるように意識しましょう。すると子どもは、「誰かの役に立ちたい」という本能的欲求が満たされて、思いやりや貢献心のある人間へと成長するそうです。■「○○くんのおかげで助かったよ。ありがとう」『子育てハッピーアドバイス』シリーズの著者である精神科医の明橋大二先生は、「子どもの自己肯定感を育むのに、いちばん簡単で有効な言葉は『ありがとう』」だと話します。「ありがとう」はただのお礼の言葉ではなく、同時にその人の存在価値を認め、自己肯定感を高めてくれる言葉でもあります。「自分でも人の役に立てる」「自分は必要とされている」という実感こそが、生きる力にもつながるのです。■「早く準備をしてくれてありがとう。助かるよ」出かける前にモタモタして準備が進まない子どもがいれば、「早くして!」と注意したくなりますよね。しかし、前出の岩井俊憲さんによると、その気持ちを抑えて、まずは「○時までに出発したいから協力してね」と促すといいそう。そして、ちゃんと準備ができたら「○○ちゃんが早く準備をしてくれて助かったよ。ありがとうね」とお礼をしましょう。すると子どもは、「自分が協力したらお母さんはこんなに喜んでくれるんだ」と学び、自分から進んで準備するようになります。■「お母さんが忙しいのをわかって手伝ってくれたんだね。気づいてくれてありがとう」また岩井さんは、「優しく思いやりのある子に育ってほしいなら、子どもの『共感に基づく行動』に注目して感謝するといい」と述べています。たとえば、こちらからは頼んではいないのに、大変そうにしている親や困っている兄弟を見て、自分から手を差し伸べてくれたとき。「気づいてくれてありがとう」「弟が困っているの、お母さんも気づかなかったよ。助けてくれてありがとう」など、その行動を受け止めて、感謝の気持ちを言葉にするといいでしょう。「感謝の心」はポジティブな状態を生み出す誰に対しても感謝の気持ちをもち、素直に相手に伝えることは、簡単なようで意外と難しいですよね。なにより自分に余裕がないと、なかなか「ありがとう」の言葉も出てきません。しかし、「ありがとうの言葉」や「感謝の気持ち」が、いかに人生の充実度や幸福度を左右するのかを知れば、できるだけその気持ちを保ち続けていたいと思うはずです。「感謝の心をもっていると、妬み、憤り、後悔や落ち込みといった、私たちを幸福から遠ざける有害な感情を抱かなくなる」と述べるのは、カリフォルニア大学デービス校のポジティブ心理学者、ロバート・エモンズ教授。つまり、人生をより前向きに生きていくには、感謝の心をもち続けることが大切なのです。ペンシルベニア大学心理学部教授マーティン・セリグマン氏がうつ病患者に行なった実験では、「感謝の気持ちによって通常よりも幸福感が高まり、抑うつ状態が減った」という結果が導き出されました。また、心理学者のロバート・エモンズ氏とマイケル・マッカロー氏の調査では、不眠症の症状がある人たちに感謝の気持ちを書いた日記を書いてもらったところ、症状の改善や睡眠の質が向上するといった変化がみられたそう。さらには、ノースイースタン大学が中心となって行なった研究によると、感謝の気持ちは自制心を高める効果があるということがわかっています。これらの研究結果からも、感謝の気持ちは人間の幸福感を高め、人生の質向上に良い影響を与えることは明白だと言えるでしょう。感謝の気持ちをもつことが幸福感につながるというのは、大人の場合に限ったことではありません。筑波大学人間系教授の相川充先生が小学生を対象に行なった調査(2013年実施)では、子どもたちの感謝の気持ちが友人関係における好循環を作り出すことがわかりました。感謝の心をもち続けると、幸福感が得られる感謝の心は、ネガティブな感情を取り除き、人生をより豊かにし、幸福へと導いてくれる大きな力になります。さらに幸福感を得た人は、あらゆる面でよりよい結果が手に入りやすい状態になることから、感謝の心がもたらす好循環の連鎖は想像以上だと言えるでしょう。人間の幸せのメカニズムを科学的に明らかにする “幸福学” の第一人者であり、慶應義塾大学大学院教授の前野隆司先生は、次のように述べています。たとえば幸せな人は、自己肯定感が高い、仕事のパフォーマンスが高い、目標が明確、利他的、楽観的、多様な友達がいるなど、どんな人でも生かせる知見が蓄積されています。すでにある程度幸せな人も、ポジティブ心理学を学ぶことで、さらに幸せになれる時代がやってきたのです。(引用元:前野隆司(2017),『実践 ポジティブ心理学 幸せのサイエンス』, PHP新書.)前野先生によると、ポジティブ心理学とは「心が普通の状態にある人が、いまよりももっといい状態になって幸せになることのできる学問」だそう。従来の心理学が、病気や悩みなどネガティブな心理状態にフォーカスしていたのに対し、ポジティブ心理学は「普通の生活をさらに生き生きとしたよい状態にすること」を目指しているのです。深刻な悩みや不安を抱えているわけではなく、むしろ毎日を問題なく過ごしているーー。そのうえで、さらに心身の状態をレベルアップしたり、子どもとの関係をもっとよい方向へと深めていったりしたいと望む人にとってはうってつけの心理学が、このポジティブ心理学です。もっと深くポジティブ心理学について知りたい、親子のコミュニケーションにも役立てたい、という人は、ヒューマンアカデミーの「ポジティブ心理学資格取得講座」を受講してみるのもいいでしょう。オンラインで月々3,000円から始められるので、気軽にチャレンジできるのも嬉しいですね。親子で「ありがとう」を学べる絵本4冊最後に、お子さまと一緒に感謝の心を育める絵本を紹介します。どれも名作と呼ばれるものばかりです。親子で「ありがとう」の大切さを実感してくださいね。◆『ありがとう』いなかから遊びに来てくれたおばあちゃんから、手づくりのクッキーをもらったにゃんた。「本当はおもちゃが欲しかったのに……」という気持ちから、素直に「ありがとう」が言えません。子どもが「ありがとう」の本当の意味を考えるきっかけになる一冊です。◆『ありがとう』山へ出かけたりすの親子は、大好きなどんぐりをたくさん集めます。そのどんぐりは世代を超えて、おじいちゃんやおばあちゃんからつなげられたものでした。まさに、出版社からのコメントにあるように「自分ひとりでは生きてはいけない。自分を支えてくれる人たちの大切さを学べる絵本」です。◆『うまれてきてくれてありがとう』「生まれてきてくれてありがとう」と、子どもに直接言うのが照れくさいのなら、絵本を通して伝えてみましょう。優しく、心温まる世界を描いた本作に、「子どもに読み聞かせをしながら泣いてしまった」というお母さんが多いのもうなずけます。◆『どうぞのいす』30年以上愛され続けているロングセラー絵本であり、いまもなお小さな子どもたちの「思いやり」の心を育み続けている一冊。うさぎさんがつくった「どうぞのいす」をめぐって、次々と動物たちの優しさが連鎖していく様子は、子どもに「他者への思いやりと感謝」を教えるのにぴったりです。***そういえば最近、子どもに「ありがとう」って言えてないな……と感じているのなら、さっそく「ありがとう」と伝えてみませんか?あれこれ理由など考えずに、お片づけやお手伝いをしてくれた、約束を守ってくれた、今日も元気に過ごしてくれた、など小さなことに感謝して言葉にしてみましょう。(参考)汐見稔幸(2008),『夫婦力ー夫の「話し方」で夫婦はこんなに変わる』,岩崎書店.PHPのびのび子育て 2019年10月特別増刊号,PHP研究所.加藤紀子(2020),『子育てベスト100』,ダイヤモンド社.mamagirl|「ありがとう」は、人の役に立つ子どもを育てる魔法の言葉!マンガで楽しく、手軽に読める『子育てハッピーアドバイス』シリーズ|自己肯定感を育むのに、いちばん簡単で、有効な言葉は?ダイヤモンド・オンライン|「人に感謝できる子」の親がしている5大習慣HUFFPOST|The Surprising Benefit Of Writing A Gratitude Letter To My FatherPsychology Today|How Gratitude helps You Sleep at NightNortheasternUnivercity college of science|CAN GRATITUDE REDUCE COSTLY IMPATIENCE?モチベーション研究所|研究所第6回フォーラム「感謝するとwell-beingは高まるのか?」前野隆司(2017),『実践 ポジティブ心理学 幸せのサイエンス』,PHP新書.ヒューマンアカデミー|ポジティブ心理学取得講座
2020年12月23日いまもなお、世界で猛威を振るう新型コロナウイルスは、医療の現場のみならず、教育の現場にも大きな影響を与えています。いまでこそ、ほとんどの学校で通常授業が再開し、子どもたちは学校で授業を受けることができるようになりましたが、緊急事態宣言が発令された2020年4月から5月にかけては、多くの子どもが各家庭で学習を進めなければなりませんでした。長引く休校期間中、「子どもに勉強をさせる難しさ」に直面し、頭を悩ませたおうちの方も多かったのではないでしょうか。そんななか、私が経営しているRISU Japan株式会社では、4月27日から5月27日までの約1ヶ月間、Youtube上で無料の「RISU小学生オンラインスクール」を開講しました。これは、新型コロナウイルスの影響で自宅学習を余儀なくされた子どもたち、とりわけ小学校1・2年生を対象に、無償でオンライン授業を提供するサービスです。ありがたいことに、チャンネル登録者数5,000人以上、合計視聴回数は約13.9万回と、大変なご好評をいただきました。社会が落ち着きを取り戻すまでの期間限定サービスであるオンラインスクールは、5月末に配信を停止しました。その際には、「今年いっぱいは開講してほしい」「長期休みに期間限定で復活してほしい」など、閉校を惜しむ声もたくさんいただきました。今回は、そんなオンラインスクールの経験から見えてきた、「未来の子どもの学び」の姿についてお話ししたいと思います。オンライン授業の実施率、アメリカは83%。日本はたったの5%!まずは、RISU Japanがオンラインスクールを開講した背景からお話ししましょう。2020年2月28日より始まった新型コロナウイルスによる休校期間。感染の恐怖と隣り合わせながら、いつ休校が明けるのか先も見えない状況のなか、多くのおうちの方から、子どもの学習機会の減少や学習の遅れ、学習内容の定着を心配する声をうかがいました。「新型コロナウイルスによる学習機会の減少で、子どもたちの貴重な才能を失いたくない」そう強く思った私たちは、この状況下で、私たちができることはなにか、必死に考えました。RISU Japanの強みを最大限活かしながら、子どもたちの才能を伸ばす方法ーー。ベストアイデアを求めて社内での検討は続きました。そこで考え出されたのが、「RISU 小学生オンラインスクール」でした。私たちは、デジタル教材に専門で携わってきたこともあり、動画制作や配信などのノウハウがあります。また、それだけではなく、10億を超える学習データを分析しながら自社サービス「RISU算数」のカリキュラムを作成したことから、子どもの学習に効果的なカリキュラムを作成することも得意分野でした。加えて、少し視点を広げ、コロナ禍での世界の学習状況にも目を向けてみました。たとえば、中国は国家単位で、無償の教育ツール(教材等)を提供しています。あるいはアメリカでは、「学校が提供するオンライン遠隔教育で子どもが学習している」と答えた親が2020年4月初旬ですでに83%おり(ギャラップ社調べ)、小学校から高校生まで、教師と生徒はオンラインで授業や課題のやりとりをするようになっていました。一方日本はというと、2020年4月16日時点で、休校中または休校予定の1,213自治体のうち、双方向型のオンライン授業を行なっていたのはわずか5%(文部科学省調べ)。諸外国と比較すると、日本の学習状況は明らかに遅れをとっていました。こうした状況を少しでも打破したい、という思いが社内での意見としてまとまってきたのです。そのようにしてやっと、「RISU小学生オンラインスクール」の構想が生まれました。どんな時代でも生き残る人材になるための「基礎力」とは?急ピッチでオンラインスクールの準備を進めるなか、私たちは、オンラインスクールの構想に興味を示してくれるひとりの人物と出会うことになります。それが、RISU小学生オンラインスクールで校長を務めることになる佐藤雅巳さんです。東京大学在学中から、長年にわたって大学受験の予備校講師を務めていたという、佐藤校長。担当した受験生のなかには、算数レベルの計算でつまずく生徒や、簡単な漢字が書けない生徒も少なくなかったと言います。そして彼らを見ているうちに、「本当に必要な『基礎力』を、早いうちから子どもたちに提供したい」という思いが芽生えたのだそう。佐藤校長のそのような思いと、RISUオンラインスクールの構想が結びつき、RISU Japanは佐藤さんをオンラインスクールの校長として迎え入れることとなりました。「コロナ禍で変容しつつある社会において、『どんな時代にあっても生き残れる人材』を育成するには、ひとりひとりに寄り添った低学年教育こそが必要だ」以前、佐藤さんがおっしゃったこの言葉が、私の頭を離れません。小学校1・2年生の子どもたちを対象に、算数と国語の授業を提供したRISU小学生オンラインスクールでは、そんな佐藤さんの「学習における『基礎力』を」という考えも大きく反映されています。たとえば、授業を見ながら自分で問題を書き取るような活動を入れたり、自分で問題や文章をつくったりする活動も授業では行ないました。「オンラインスクール」は受動的になりやすい授業形態です。だからこそ、自分で考え、アウトプットするという「学習にとってもっとも基礎になること」を勉強する時間を設けたのです。しかし、オンラインスクールというかたちでアウトプット主体の授業をつくるのはなかなか難しい作業でした。配信を開始してからも、受講者の声を聞きながら難易度やカリキュラムを調整し、一方的な配信にならないよう、注力し続けました。オンラインスクールで最も力を入れたのは、こうした「アウトプット主体」型の授業とオンラインという形態にどのように折り合いをつけるのか、ということでした。こうした苦労が功を奏したのか、RISUオンラインスクールは開校当初から、多くの好意的な反応をいただきました。TwitterなどのSNSでは、「休校中にもかかわらず、学び続けることができた」「動画での授業なのに、子どもが熱心に取り組んでいた」などの反応をいただきました。「教室での集団授業」ばかりが正解ではない最後に、コロナ禍での教育を見つめたひとりの人間として、withコロナ/アフターコロナ時代の教育について、私がいま考えていることをお話ししましょう。コロナウイルスの影響で、私たちの生活スタイルは以前とは異なるものになりました。それにともない、子どもたちの教育のあり方も大きく変わるに違いありません。西洋で近代教育が始まってからの200年間、「学校」は社会で役立つ人材を効率よく育てる組織として機能してきました。しかし、時代は複雑化し、個人が選択しうる職業やライフスタイルの幅は格段に広がりました。そうした社会状況のなかで、子どもたちの幸せ、あるいは将来を考えたときに、「教室での集団授業」ばかりが正解ではないと私は考えています。以前の連載でもお話ししましたが、これからの時代は、集団ベースの一斉指導ではなく、個人の個性に最適化された学習が教育の主流になっていくでしょう。私たちが提供するタブレットサービス「RISU算数」の学びは、そうしたものに近いと思います。タブレット学習の利点を活かして、それぞれの子どもが各自のペースで学習を進められ、自分の苦手をしっかりとカバーしてもらえる。そしてその過程で、社会で生きるために必要な論理的思考力なども、個人に最適化された形で身についていく。それこそが、私たちが目指す教育の姿なのです。また、現状では教育サービスに最も適したデバイスとして、タブレットが導入されていますが、私は今後、デジタルペーパーなどの紙の代替品が、教育と関わっていくのではないかと注目しています。未来の子どもの学習スタイルは、きっと、いまとはずいぶん異なるものになるでしょう。たとえば、リビングの机に座ると、机そのものがデジタルになっていて、声で呼び出すと机にRISUの画面が現れる。あるいは、自分の勉強部屋に行ったときも、同じように机の上にRISUの画面を呼び出し、勉強することができる。そんな世界が来る日も、そう遠くはないかもしれません。そしてそんな世界では、子どもたちの学びは各自のペースで、それぞれが好きなやり方で進めるものになっているかもしれません。もちろん、これはとても先の、未来のお話です。しかし私たちRISUJapanは、「才能あふれる社会を創り出す」をモットーに、教育でこんな未来を実現するひとつの手助けになれれば、と思っています。『10億件の学習データが教える 理系が得意な子の育て方』今木智隆 著/文響社(2019)■ 算数塾「RISU」代表・今木智隆先生 インタビュー記事一覧第1回:子どもを「算数嫌い」にしない大原則。幼児期からできる“算数好きの基礎”の築き方第2回:子どもが勉強で成果を出せないのは、親の「勘違い」が原因かもしれない第3回:10億件のデータを調べてわかった、小学生が「ずば抜けて苦手」な算数の単元と例題第4回:「算数の文章題が苦手」な子どもが、ひねった応用問題でも解けるようになる教育法
2020年12月11日これからの時代に求められる力として、いま最も注目されているのが「思考力」、そして「発想力」です。これらの力を伸ばすために、たくさんの習い事やさまざまな体験をさせたい、と考えている保護者の方も多いのではないでしょうか。もちろん、特別な体験を通じて得られるものはたくさんあるでしょう。しかし、子どもの思考力や発想力を鍛えるヒントは、日常のなかにあふれているのです。今回は、すぐに実践できる「子どもの思考力・発想力を鍛える方法」について解説していきます。将来のためにいま「思考力」「発想力」の土台を築こう子育てをしていると、いまの子どもたちを取り巻く環境は、昔に比べてガラリと変わったと感じさせられます。私たち親世代が子どもであったほんの数十年前には想像もできなかったほど、社会全体がものすごいスピードで変化していることは、誰の目から見ても明らかでしょう。特に幼児期~学童期にかけての教育においては、昔といまでは「常識」とされていることがまったく違っているケースも多く、保護者のなかには戸惑う人もいるはずです。社会の仕組みが大きく変われば、教育のあり方や進むべき方向性も一変します。これまではペーパーテストで高得点をとることを目標にして、よい学校へ進学して安定した職業につくことが、一般的に「理想のコース」とされてきました。しかし、これからの時代に求められる能力やスキルは、テストの点数だけでは判断できないようなものばかり。そのなかでも、子どもたちが将来のために身につけておきたい能力として、重視されているのが「思考力」と「発想力」です。「考える力」と「ひらめき力」が伸びるとき思考力と発想力について、具体的に説明していきます。■思考力とは「思考力」いわゆる「考える力」は、当然誰にでも備わっているものであり、特別な訓練などしなくても “ただ考える” ことはできるでしょう。しかし、幼児期において育むべき「思考力」は、「物事を自分で判断し、自分で学んでいく力」だと東北大学加齢医学研究所教授の瀧靖之先生は述べています。情報があふれる現代社会では、正しい情報や自分にとって有益な情報を選び抜き、そこからさらに学びを深めていくことが求められます。そのために必要なのが、嘘やうわさに惑わされずに自分で考えて判断する力。そして、正しい判断力のベースとなるのは「考える力」です。子どもの「考える力」を育てるためのカギとなるのは「好奇心」にほかなりません。「知ることが楽しくてしょうがない!」という状態になった子は、親に「勉強しなさい」と言われなくても、勝手に知識をどんどん吸収していきます。まずは、子どもが好きなことに没頭できる環境づくりと、見守ってあげる心の余裕が必要かもしれませんね。■発想力とは「発想力」とはつまり「ひらめき力」。これからの時代は、常識にとらわれない柔軟な考え方ができたり、新しい感性で独創的なものをつくり出したりと、その人なりの個性を発揮することが求められます。子ども教育アドバイザーの岩田かおりさんは、「子どもは、周りの大人やお友だちとの『おもしろいね』『楽しいね』という会話や経験を通じ、自分とは異なる発想があることに気づき、学び、取り込み、新しいイメージをつくり出していきます」と説明しています。幼児期はこのような “楽しい体験” を重ねやすいため、自然と「ひらめき力」が育まれていくそう。子どもの発想力を伸ばそうとして、大人が無理に「考えなさい」と強要してしまうと、子どもは考えること自体が嫌いになってしまいます。大事なのは、自由な環境のなかで、のびのびと「ひらめき力」を伸ばしてあげること。そのためにも、どんどん楽しい体験をさせてあげましょう。思考力・発想力がアップする声かけの工夫続いて、子どもの思考力と発想力をアップさせる声かけ例を紹介します。■思考力アップの声かけー「なぜそう思ったの?」「どうしてこれを選んだの?」教育評論家の石田勝紀さんによると、「人間は『なぜそうなの?』『なぜだと思う?』と問われると考えるようになる」のだそう。子どもが興味をもっているものや好きなものに対して、「なぜ?」と問いかけてあげることで、考えるきっかけが生まれます。ー(子どもが自分で調べたあとに)「どういうことがわかった?」子どもの知的欲求が高まっているときは、質問をされてもすぐに答えを教えてあげるのではなく、調べる方法を伝えましょう。心理カウンセラーの浮世満里子さんによると、「調べたことに対して『どういうことがわかった?』と聞き、子どもに発表してもらうと効果的です」とのこと。それにより、ますます理解力が深まるというわけです。■発想力アップの声かけー「ゆっくりでいいよ」「待ってるから大丈夫」せっかく子どもが考えているのに、「まだ?」「早く早く」と急かしていませんか?親としてはパッとひらめいてほしいと考えてしまいますが、岩田さんいわく「『楽しい経験』や『周りの人の好反応』がなければ、子どもの発想力は育まれません」とのこと。ひらめきが生まれるまでじっくり考えさせてあげましょう。ー「○○ちゃんらしい絵だね」「世界にひとつの絵だね」浮世さんは、「お絵かきや工作などで、お友だちとは違う独創的な表現力を発揮している場合、ほかの子と比べたり評価したりするのではなく、ありのままの表現を認めてあげましょう」とアドバイスしています。それが自信につながり、さらに創意工夫を重ねることにつながるのです。ドリルを活用して、さらに思考力・発想力アップにつなげよう!声かけのほかにも、思考力・発想力を鍛える効果的な方法があります。書店やインターネットですぐに手に入るドリルなどは、まさにうってつけのアイテムだといえるでしょう。■『脳みそぜんりょくドリル』のここがスゴイ!○遊びのジャンルは13種類(おえかき、クイズ、こうさく、かいぶん、いたずら、など)。その日の気分に合わせて選べる!○300以上の遊びを詰め込んだ全600ページという大ボリュームで、飽きずに続けられる!○どこから始めてもOK、どこでやめてもOK!○1ページだけでもOK、10ページ進めてもOK。自由な遊び方で思考力・発想力がぐんぐんアップする!また、ページの途中でも切り離せるようなつくりになっているのも嬉しいポイント。「おえかき」ジャンルから数枚選んで切り離し、色鉛筆と一緒に荷物に入れておけば、車での移動中や食事の待ち時間にも遊ぶことができますね。このように『脳みそぜんりょくドリル』には、子どもたちの脳をフル回転させて、思考力・発想力を伸ばす工夫がたくさんつまっています。集中してよ〜く考えれば小さな子どもにも簡単に解ける問題ばかり。「どっちが早く見つけられるかな?」と親子で競争しても◎めがねやイヤリングを描き込んだり、お化粧をしてあげたりしてもいいですね。楽しみ方は無限大!少し難易度が高い問題もあるので、年齢に応じて長く楽しめます☆こちらもおすすめ!『しりとりあそび』遊びながら言葉を覚えるのに最適な「しりとり」は、小さな子どもが言葉を使いこなせるようになる訓練にも。たったの32ページなので、「最後までやりきった!」という達成感を得やすい構成になっています。『ちえあそび6』折る、切る、貼る、描き足す、といった動作によって手先を器用に使いながら、子どもの自由な発想力を育みます。迷路や仲間さがしなど、子どもが楽しみながら学べるしかけがたくさん!『めいろ1』子どもの能力が飛躍的に伸びる2~3歳は、脳に刺激を与えてあげることで思考力や直感力がぐんぐん発達していきます。カードを切り抜いて迷路をたどったり、ページを折ったりと、手を動かしながら進めていくことでさらに効果アップ!***特別なことをしなくても、日常生活のなかで子どもの思考力や発想力は確実に鍛えられます。声かけを工夫したり、ドリルを活用したりしながら、お子さまの能力を伸ばすサポートをしてあげましょう。(参考)PHPのびのび子育て 2020年12月号 ,PHP研究所.東洋経済オンライン|「考える力がない子」を変える3つの問いかけ新井洋行(2020),『脳みそぜんりょくドリル』, ポプラ社.宮西達也 著, みやしたはんな 絵(2015),『しりとりあそび』, ポプラ社.宮西達也 著, 下間文恵 絵(2014),『ちえあそび6』, ポプラ社.たかいよしかず 著, 吉田朋子 絵(2014),『めいろ1』, ポプラ社.
2020年12月02日前回の連載では、データが示す復習の重要性と、復習効果をアップさせる正しい方法についてお話ししました。今回も引き続き、自宅学習にまつわるお話です。RISUで学習する子どものデータを比較・分析したところ、理想的な学習習慣のヒントが見えてきました。「個々人の経験則ではなく、統計データなどの科学的根拠に基づいた知見を入れて教育をとらえ直そう」という、エビデンス・ベースドの視点に立って、「学習の時間帯」「学習の頻度」というふたつの入り口から、いま一度お子さんの学習習慣を見直してみませんか?夜中まで頑張る子ほど、成績が下がる!?まずは、「学習の時間帯」についてお話しします。みなさんのお子さんは朝型ですか?それとも夜型ですか?子どもが夜遅くまで勉強しているのを見ると、つい「えらい!」とほめてあげたくなりますよね。私も夜型の子どもだったのですが、遅くまで机に向かっていると、よく母親が夜食を用意してくれたものです。 それが嬉しくて、当時は深夜まで勉強を頑張っていました。でもじつは、深夜学習は効率が悪いばかりか、お子さんの成績を下げる原因にもなる、おすすめできない習慣です。思い当たるおうちの方がいらっしゃったら、すぐにやめさせたほうがよいかもしれません。夜学習の効率の悪さを示す、こんなデータがあります。朝型と夜型の子どもの「学習スピード」と「継続力」をそれぞれ比べたあるデータによると、朝型の子どもを100としたとき、夜型の子どもの学習スピードは73、継続力は48まで落ちるという残念な結果が出ています。勉強に取り組む時間帯が遅くなるにつれて、学習理解のスピードも、継続期間も下がっていきます。つまり、夜遅い時間に勉強する子ほど、効率も悪く、続かないということなのです。これは、いったいなぜでしょう。「脳の疲れ」が勉強効率を下げる!夜型の子の勉強効率を下げる大きな要因は、「脳の疲れ」。子どもは日中、さまざまなことに夢中になっています。学校で勉強をしたり、友だちと遊んだり……。朝起きてから12時間以上もたてば、体はもちろん、脳も疲れきってしまいます。一日活動して疲れた脳に、新しい情報を詰め込もうとしても、思うように入らないのは当然のこと。効率よく学習するには、脳のコンディションを整えることが大切です。脳の疲れをとるには、充分な睡眠が欠かせません。これは科学的にも証明されていることですが、たしかに、しっかりと睡眠をとった翌朝は、心も体もすっきりしますよね。朝型のほうが夜型より学習効率がよいのは、朝は、学習内容を吸収するための脳のコンディションが整っているからなのです。また、夜学習の問題点は、効率の悪さだけではありません。夜遅くに学習する生活を続けていると、非効率な夜型の学習習慣がすっかり体に染みついてしまいます。たとえば、試験前の30日間、毎日2時間勉強したとします。朝型の子の習得度を60とすると、夜型の子の習得度は30〜45くらいまで落ちてしまうわけです。単純に考えると、夜型の子は、そのぶんの時間(15〜30時間)を無駄にしてしまっているとも言えます。まして一度身についた習慣を変えるのは、難しいものですから、小学校入学から大学卒業までの約16年間における、夜型の学習習慣が及ぼす悪影響たるや、恐ろしいものです。理想の学習時間は、やはり朝。まずは朝に10分でもいいので、勉強する時間をとれるとよいですね。「たった10分」と思わず、習慣化してみましょう。一度習慣化できれば、その時間を15分、20分と伸ばしていくのは難しくありません。朝学習で脳を目覚めさせれば、日中の活動もスムーズになり、一石二鳥です。ぜひ、朝型の学習スタイルを取り入れてみてください。週1回60分 VS 週3回20分次は、「学習の頻度」のお話です。RISUのデータによると、同じ期間に同じだけの時間学習している子どもでも、学力の向上にはバラツキがあることがわかりました。学習時間はきちんと確保しているのに、成績の伸びがいまひとつの子どもと、学習したぶんだけ成績アップにつながっている子どもの差は、いったいどこにあるのでしょうか。その答えの鍵を握るのは、「学習頻度の違い」です。子どもの学習傾向を「1回に長時間学習する、長時間型」と「短い時間で何度も学習する、短時間型」に分けて比べてみたところ、「短時間型」の子のほうが学習効率がよく、成績の伸びも明らかに大きかったのです。具体的には、短時間型の子の50時間での平均学習スピードは長時間型の1.1倍、という結果が出ました。たとえば、週3回20分学習する子と、週1回60分学習する子の、1週間でのトータルの学習時間は同じです。しかし、前者が2〜3日に一度は学習をしているのに対して、後者は7日に一度。学習と学習の間が、160〜170時間も空いてしまっています。これでは、一度理解した内容もうろ覚えになりがちです。せっかく覚えた公式も忘れてしまうかもしれません。そうすると、前に学習した内容を思い出すのに時間をとられて、結果的に学習効率が下がってしまいます。成績アップのためには、学習の間隔を空けないことが大切なのです。ここまで読んでいただいた方は、「じゃあ、まとまった勉強時間をとるより、スキマ時間で1日に何度も勉強した方が、成績が上がるの?」とお思いかもしれません。しかし、ここで注意してほしいのが、「1回の勉強が10分を切ると、学習効果が薄れてしまう」ということ。1回の勉強時間は、20分は確保できるとよいですね。学習習慣は、日々の積み重ねです。ほんの少しの違いが、のちのちの大きな差につながります。同じ時間勉強をしているはずなのに、ライバルとの差が埋まらない……。そんなときは、「学習の時間帯」と「学習の頻度」を振り返ってみてはいかがでしょうか。『10億件の学習データが教える 理系が得意な子の育て方』今木智隆 著/文響社(2019)■ 算数塾「RISU」代表・今木智隆先生 インタビュー記事一覧第1回:子どもを「算数嫌い」にしない大原則。幼児期からできる“算数好きの基礎”の築き方第2回:子どもが勉強で成果を出せないのは、親の「勘違い」が原因かもしれない第3回:10億件のデータを調べてわかった、小学生が「ずば抜けて苦手」な算数の単元と例題第4回:「算数の文章題が苦手」な子どもが、ひねった応用問題でも解けるようになる教育法
2020年11月27日「個々人の経験則ではなく、統計データなどの科学的根拠に基づいた知見を入れて教育をとらえ直そう」という「エビデンス・ベースド」の考え方を手がかりに、さまざまな視点から算数教育を見つめてきた本連載。今回からは2回にわたって、データから見えてきた正しい学習法のヒントをご紹介したいと思います。自宅での学習は、大きく分けて「予習」と「復習」のふたつに分類できます。みなさんは、どちらに力を入れていますか?勉強しているのに成績が伸びない……と悩む人は、じつは「復習」を軽視しているケースが多いことがデータからわかりました。逆に言えば、復習を上手に日々の勉強に取り入れれば、伸び悩んでいた成績をグッと成長させることができるかもしれません。今回は、データに基づいた「正しい復習方法」についてお話しします。学習内容をすべて記憶する「復習のタイミング」まずはこちらのグラフをご覧ください。※画像はRISU Japanにて作成これは、「エビングハウスの忘却曲線」と呼ばれるグラフ。いままでの経験と関係ないことを記憶したときに、人間がどれくらいの期間でそれを忘れてしまうかを表しています。このグラフからわかるのは、「人間は、物事を記憶した1日後にはその74%を忘れてしまう」という事実(本来はもっと複雑なデータなのですが、ここではこれくらいの理解で大丈夫です)。私と同じ40代で、「最近物忘れがひどくって……」と嘆いている人がいますが(笑)、もともと人間の記憶力は、私たちが想像している以上に頼りないものなのです。次に、こちらのグラフをご覧ください。※画像はRISU Japanにて作成グラフの青い線は通常の記憶の定着率、オレンジの線は復習をした場合の記憶の定着率を表しています。このグラフは、「学習から2日目に10分」・「学習から7日目に5分」・「学習から30日目に2〜4分」の復習を行なうことで、学習内容のほとんどを覚えておけることを示しています。適切なタイミングの復習が、記憶の定着率をアップさせるのです。逆に言えば、復習を適切に行なわなければ、せっかく学習した内容もどんどん忘れてしまうのです。これらのグラフから、正しい復習の重要性がおわかりいただけたと思います。やり方によっては「ほぼ無意味」の復習とは?たしかな算数の力を身につけるために欠かせない復習ですが、やり方によっては「ほぼ無意味」になってしまう危険もあります。そのやり方とはズバリ、「総復習」。よく、子どもの算数の実力に不安を感じるおうちの方から、「ちゃんと総復習をさせてください」とお言葉をいただきます。でも、じつは、総復習で得られる効果は微々たるもの。かかる時間の割に、効果が少ない復習方法だと言えます。総復習には、「いい点数がとれて安心してしまう」という落とし穴があるのです。たとえば、子どもが学期末の総復習テストで90点をとってきたら、おうちの方は「うちの子はちゃんと理解できているんだ」と安心しますよね。でもそこで注目すべきは、じつは落とした10点。そもそも、総復習テストの役割は、「わかっている単元」と「わかっていない単元」を明らかにすることだけです。間違えた問題をしっかり見直し、その単元に戻って勉強して初めて、総復習テストは意味を持ちます。本来復習とは、テストで間違えた問題だけではなく、つまずいた単元の土台となる単元を見直して初めて効果があるもの。総復習で理解できていない単元を洗い出し、一から復習するのも手ではありますが、それにはかなりの時間が必要になります。長期休みに総復習を始めたものの、時間がかかりすぎて中途半端なまま新学期を迎えてしまった……なんてことにもなりかねないのです。総復習をする前に、「4つの土台」を見直そうでは、総復習にあまり効果が望めないとしたら、どんな勉強をすればよいのでしょうか。お子さんの算数の実力に不安を感じたら、総復習ではなく、まず次の4つの大きな単元を見直すようにしてください。2〜3桁の位の理解図形の組み立て、立体の基礎目盛りの読み方円と直径・半径の理解第3回連載『10億件の学習データから判明。算数の苦手は「位」「単位」「図形」の3つに分類できる!』でも少し触れましたが、これらはほかの単元と多く関連している、いわば「算数の土台」となる単元。さらに、統計データを調べると、これらは多くの子どもが苦手だと感じている単元でした。つまり、これらの単元を十分に理解できていないために、その先の範囲でつまずいている子どもが多いのです。効率的にいままでの学習を見直したいのなら、この4つの大きな単元を復習させてみることをオススメします。モチベーションアップの魔法「レベル上げの可視化」とはいえ、一度やった範囲をもう一度勉強しなければならない復習は、なかなかモチベーションが上がらないもの。私も、子どもの頃は復習が大嫌いでした(笑)。最後に、復習のモチベーションアップの秘訣をお教えしましょう。算数はさまざまな単元を少しずつ積み上げて、より難しい範囲に進んでいく「RPGゲーム」のようなもの。そして、「復習はRPGのレベル上げ」です。私が提供しているRISU算数では、そのことを子どもにわかってもらうためにある仕組みを採用しています。RISUの問題のクリア条件は50点以上なのですが、50〜99点だと、評価として星3つ中2つがつきます。100点をとるまで、星3つの評価はつきません。100点をとると、星が1つ増える。この仕組みは、いわば「レベル上げの可視化」です。レベル上げを、子ども自身の目に見える形にすることで、成長を実感しながら復習することができるのです。こうしたRISU算数の仕組みは、ご家庭での心がけにも応用できます。たとえば、お子さんが復習で100点をとったら、それをめいっぱいほめてあげましょう。90点から100点への点数アップは些細なことに見えるかもしれません。しかし、その10点分をたっぷりほめてあげることが大切です。場合によっては、復習に対してご褒美をあげるのも効果的でしょう。復習の効果を、子どもに気づかせてあげること。それが、子どもを復習に向かわせるために最も有効な方法なのです。次回は、自宅学習のさまざまな方法について、統計データを比較しながらご紹介したいと思います。お楽しみに。『10億件の学習データが教える 理系が得意な子の育て方』今木智隆 著/文響社(2019)■ 算数塾「RISU」代表・今木智隆先生 インタビュー記事一覧第1回:子どもを「算数嫌い」にしない大原則。幼児期からできる“算数好きの基礎”の築き方第2回:子どもが勉強で成果を出せないのは、親の「勘違い」が原因かもしれない第3回:10億件のデータを調べてわかった、小学生が「ずば抜けて苦手」な算数の単元と例題第4回:「算数の文章題が苦手」な子どもが、ひねった応用問題でも解けるようになる教育法
2020年11月13日「うちの子は、ほかの子供より敏感かもしれない……」と親が感じるようであれば、お子さまはHSCかもしれません。「HSCとは?」「HSCは遺伝なのか」「HSCが必ずもっている4つの面(DOES)」「子供がHSCだったときの関わり方」などについて詳しく説明しましょう。HSCと呼ばれる子供とはHSCとは、Highly Sensitive Child(ハイリー・センシティブ・チャイルド)の略で、「ひといちばい敏感な子ども」という概念です。HSCは、生まれつき非常に敏感な感覚や感受性をもっているため、刺激を受けやすく、些細なことが気になってしまいます。また、ひといちばい敏感な大人は、Highly Sensitive Person(ハイリー・センシティブ・パーソン)、略してHSPと呼ばれます。このHSPという概念は、1996年に心理学者であるエレイン・アーロン博士によって明らかにされました。アーロン博士の研究によって、HSPでない人(非HSP)から「恥ずかしがり屋」「怖がり」「臆病」などと表現されやすいHSPの特徴は、HSP特有の「敏感すぎる気質」が原因であるということがわかったのです。そしてアーロン博士は、2002年に『The Highly Sensitive Child』という、ひといちばい敏感な子どもの特徴や育て方について詳しく書いた本を出版しました。自身もHSPであり、HSCを育てる親でもあるアーロン博士は自著のなかで、「HSCの敏感さは、病気でもない、障害でもない、単に生まれもった気質によるもの」と言っています。そう――、HSCである子どもたちの敏感さは、病気でも障害でもないのです。5人に1人の子供がHSCHSCである子どもは、人種に関係なく、どの社会にも15~20%の割合で存在します。たとえば、1クラス30人であれば、クラス内に5、6人はHSCがいるということ。5人に1人がHSC――意外と多いと感じた方も多いのではないでしょうか。しかし社会は、約80%のHSCでない子どもたち(非HSC)向けになっています。ですから、児童精神科医の長沼睦雄先生が『子どもの敏感さに困ったら読む本』のなかで言うように、HSCにとっての日常生活は疲れることが多いのです。ちなみに、HSC・HSPの70%は内向的ですが、30%は外向的なのだそう。この外向的なHSC・HSPは、HSS(High Sensation Seeking)と呼ばれ、「好奇心旺盛で新しいもの好き」「退屈さを嫌う」などの特徴をもつ、刺激を追い求めるタイプとされています。しかしHSC・HSP特有の敏感すぎる気質から、刺激を追求しつつも、その刺激に疲れてしまうとのこと。にぎやかな場所は好きだけど、楽しむ前にぐったりしてしまうような子供は、外向的なHSCであるHSSの可能性が高いかもしれません。子供がHSC、原因は遺伝?HSCの子供たちは、なぜひといちばい敏感なのでしょう。どうやらHSC・HSPは、非HSC・HSPの人と比べて、脳内の神経が高ぶりやすい傾向にあるようです。HSPについての発信が多い、渡邊真也先生が統括院長を務める新宿ストレスクリニックHPでは、HSPの敏感さについて次のように説明されています。ストレスを感じやすいHSPの人はもともとストレスを処理する「扁桃体」が活発で、不安や恐怖を感じ取りやすいのです。さらに、激しい感情などが起こったときに分泌される「ノルアドレナリン」や、俗にストレスホルモンとも呼ばれる「コルチゾール」も非HSPの人に比べて分泌されやすいため、さまざまなことを警戒し敏感に反応してしまいます。(引用元:新宿ストレスクリニック|HSP(ハイリー・センシティブ・パーソン)とは?~HSPはうつ病になりやすい!?~)HSC・HSPの脳は、不安や恐怖を感じ取りやすいのですね。そして前述したように、HSCの敏感さは生まれもった気質。ということは、HSCは遺伝なのでしょうか?HSC・HSPの原因が遺伝子なのか否かという研究はまだ続いているようで、結論は出ていません。ですが、アーロン博士が自著のなかで「ひといちばい敏感であるという性質は『主に』遺伝子で決まる」と書いているように、遺伝子要因は強いけれど、遺伝子以外の要因もあると考えられています。前出の長沼先生も同じ意見のようで、「HSCやHSPは遺伝的なもの」と肯定しつつも、「HSPではない親からHSCの子どもが生まれることについて、遺伝ですべてを説明することは難しい」と主張しています。HSCの子供が必ずもっている「4つの面(DOES)」次に、HSCの子供たちの特性を見てみましょう。アーロン博士は、2015年に発売された『ひといちばい敏感な子』の巻末「――日本語版の発刊に際して――」のなかで、HSCが必ずもつ「4つの面(DOES)」について説明しています。HSCであれば、以下に挙げる「4つの面(DOES)」すべてが当てはまるのだそう。逆に、ひとつでも当てはまらないならHSCではありませんとのこと。【D】(Depth of processing):深く処理する【O】(being easily Overstimulated):過剰に刺激を受けやすい【E】(being both Emotionally reactive generally and having high Empathy in particular):全体的に感情の反応が強く、特に共感力が高い【S】(being aware of Subtle Stimuli):ささいな刺激を察知するD:深く処理するHSCは、物事や情報を深く受け取って考えます。それゆえ、「行動を起こすのに時間がかかる」場合も多いかもしれません。お子さまに次のような傾向はありませんか。物事の本質をつくような深い質問をする聞きかじりの言葉を使って大人びたことを言うユーモアのセンスがあるいろいろな可能性を考えてしまうので、なかなか決断ができないじっくり観察してから考えるので、行動するのに時間が必要優柔不断などと言われがちなHSCですが、「HSC=優柔不断」ではありません。HSCが判断を迷っているときは、「この人は〇〇と言っているけど、あまり嬉しそうな顔をしていないから、もしかしたら△△なのではないか?」など、情報を「深く処理している最中」なのです。O:過剰に刺激を受けやすいHSCは、自分のまわりで起こっているすべてのことに気がつき、深く考えます。ですから、HSCは過剰に刺激を受けやすく、非HSCに比べて疲れやストレスを感じやすい。たとえば、以下のような反応・行動です。楽しいはずのイベントや旅行なのに、ぐずったり、ぐったりしたりする興奮することがあった日の夜は眠れない大きな音が苦手痛みに弱い暑さや寒さ、サイズの合わない靴、濡れている・チクチクする服に文句を言うサプライズが苦手人に見られる・実力を試される場面などで普段の力を発揮できないE:全体的に感情の反応が強く、特に共感力が高いHSCは、自分の感情にも敏感ですが、自分だけでなく他者の感情に対しても敏感です。たとえば、掃除機をかけながらキョロキョロしている母親の様子を見て、「はい、メガネだよ」と探しているものを持ってくるといった行動。HSCには、人の様子を観察し、その人がなにを求めているのかを察する力があるのです。しかし一方で、人の心を読むことに長けているがゆえ、他者の悲しみや不安などの感情にも強く共感してしまいます。そのため、家族や友だちだけでなく、初めて会った人や動物のストレスまでも感じ取ってしまうのです。以下のようなことはありませんか?親は妹を叱っているのに、なぜか隣にいる兄のほうが泣き出してしまうペットの死から数ヶ月たつのに、まだ落ち込んだ状態が続いている動物の気持ちに共感してしまい、「牛がステーキになる」などの事実にショックを受けるS:些細な刺激を察知するHSCは、小さな物音や、かすかなにおい、わずかな味の違いなど、些細な刺激や変化によく気がつきます。思考や感情のレベルが高いため、非HSS・HSPが気がつかないほどの刺激や変化に敏感に反応するのです。たとえば、次のようなことでしょうか。肌触りが違うからか、お気に入りのバスタオルしか使わない店内や乗り物のにおいにものすごく敏感夫婦喧嘩になるかならないかのときに、悲しそうな顔をしたり泣き出したりするいつも食べ慣れているおかずの味を少し変えただけで「おいしくない」と言う遠くの鳥の声や飛行機のエンジン音が聞こえる「前髪を切った」「小物を移動させた」など、人や場所の小さな変化によく気がつく他者の視線やあざ笑い、お世辞などにすぐ気がつくしかし、決して悪いことばかりではありません。アーロン博士によると、HSCである子供は、「深く考える」という特性から、芸術鑑賞の際などに大人が驚くような洞察力を発揮するそうですよ!HSC診断テストでチェックしてみようHSCである子供に見られる特性、「D:深く処理する」「O:過剰に刺激を受けやすい」「E:全体的に感情の反応が強く、特に共感力が高い」「S:ささいな刺激を察知する」の説明を読んでも、「ちょっとまだうちの子がHSCなのか判断がつかない……」という方は多いかもしれません。そんな方は、アーロン博士がつくったセルフテスト「Is Your Child Highly Sensitive?」(※チェックリスト・得点評価は日本語です)をやってみてください。「親から見た子ども」についての23の質問を読んで、「当てはまる(どちらかというと当てはまる)」項目のみにチェックを入れます。13個以上の質問に当てはまった場合、あなたのお子さまはHSCでしょう。また、当てはまった質問が1~2つしかなかったとしても、その度合いが極端に強いようであれば、お子さまはHSCの可能性があります。次項では、HSCの子供が成長する過程(0歳~12歳)で親が気をつけることについて見てみましょう。HSCの子育てアドバイス【乳児期・幼児期・学童期】お子さまがHSCの親御さん、もしくは、「HSCかどうか判断が難しいけれど、ほかの子供と比べて敏感すぎる……」と感じている方に向けて、HSCの年齢別アドバイスを紹介します。【乳児期(0歳~1歳)】アーロン博士によると、敏感な乳児は過剰な刺激が原因で泣き続けることがあるそうです。生後4ヶ月以上の乳児(*)で、「一度に2時間以上泣く」「1日に3時間以上泣く日が週に3日ある」ときは、赤ちゃんのまわりにある「刺激」を減らしてみましょう。たとえば、以下のようなことです。無理に喜ばせようとしたり、大きな声であやしたりしないおもちゃ、写真、スマートフォンなどをベッドまわりから排除する夜だけでなく、日中の音も抑えるお風呂や食事は、できるだけ毎日同じ時間に行なう知り合いの訪問はなるべく避ける綿100%の柔らかい服を選ぶ1歳になるまでは引っ越しや旅行を避ける親は子供の近くで興奮しないようにするまた、生後6ヶ月頃のHSCは、非HSCに比べて「眠りにくい」「すぐに目を覚ます」といったことが多いでしょう。その場合も、刺激を減らすことを意識してみてください。*…栄養状態も体格もよく、病気ではない乳児【幼児期(1歳~5歳)】HSCのストレスの原因は、過剰な刺激です。そして幼児期のHSCにとって最大の刺激は「変化」なのだそう。弟や妹ができたとき、食べたことのない料理を出されたとき、日々の習慣が変更されたとき、新しいことに挑戦するとき、突然の計画変更などです。HSCが変化に対応するときは、脳内で刺激を処理する必要があります。AがBに変わるならば、Aに合わせてつくり上げてきた脳の処理プロセスを、今度はBに合わせてつくり上げなければなりません。親が考える以上に、HSCにとって変化への適応は大変なのです。ですから、HSCである子供には、次のような「変化を負担に感じさせない工夫」をするとよいでしょう。「あと5分だよ」「あと1分だよ」と約束の時間を前もって知らせる。時間になったら、「ご飯の時間だよ」と声をかける初めての食べ物を出すときは、「これもお母さん(お父さん)がつくったご飯だよ」「このソースは、昨日食べたトマトからつくったよ」など、変わっていない点を伝える「朝ごはんを食べたら、歯磨きをして、幼稚園に行こうね」と、これからやることを伝え、子供に心の準備をさせる「お母さん(お父さん)に手伝ってもらいたい?それとも自分で着替えたい?」と、子供に選ばせて、次のステップへの不安を取り除く「パーティーではこんなことをするよ」など、子供がびっくりしないように、これから起こることについて話をしておくHSCの敏感さを理解していない親は、変化に戸惑う子供に対して「このくらい大丈夫でしょう!」と責めることが多いそうです。しかし長沼先生は、「HSCの子供を頭ごなしに叱ったり、イライラをぶつけたり、バカにしたり、あざ笑ったりしないで」と訴えます。親が子供の感じ方や考え方をできる限り尊重することで、「お母さん(お父さん)にわかってもらえた」と子供は安心するのです。【学童期(5歳~12歳)】アーロン博士は、HSCの学童期について「独特の才能を開花させる時期」だと言います。どうやら、HSCのなかには、音楽、絵画、数学、自然科学などのさまざまな分野で、すばらしい才能を発揮する子供がいるらしいのです。また、ベストセラーとなった『「繊細さん」の本』著者で、HSP専門カウンセラーの武田友紀さんも、テレビ番組『世界一受けたい授業』のなかで、HSPは想像力が豊かだと話しています。毎日の生活でクタクタにならないように、親が気を配ってあげてください。そうすれば、HSCの好奇心や創造性をめいっぱい伸ばすことができるでしょう。十分な睡眠時間をとらせるHSCにとって、睡眠時間はダウンタイムです。ダウンタイムがとれないと、気分が落ち込んでしまいます。睡眠の専門家である成田奈緒子先生(文教大学教育学部教授)の調査によると、23時以降に就寝する小学生は「イライラすることが多い」「自分なんていないほうがいいと思う」と答える子が多かったそう。非HSCの子供でさえ、心の不調を訴えるのです。子供が慢性的な睡眠不足にならないよう、毎日十分な睡眠時間を確保してあげてください。できれば21時にはベッドに入れるといいですね。もし子供が疲れているなと感じたら、学校を休ませてゆっくり寝かせてもよいでしょう。連休や長期休みは「いつも決まった場所」で過ごす連休や長期休みには、いつも決まった場所に行くなどの習慣的な過ごし方がおすすめです。HSCにとって刺激の強いイベントや遠出ですが、習慣にすることで刺激を抑えることができ、休日を楽しめるようになります。また、年末年始やお盆などにありがちな「突然の来客」や「多すぎるお客さん」は、HSCの負担になることが多いようです。挨拶ができればそれだけでOK。無理に大人の会話に引き込んだり、愛想よく話すことを求めたりしないように気をつけてください。子供が熱中できる習い事を探す長沼先生は、子供が「やりたい」と言った習い事はできるだけ挑戦させるべきだと話します。著書『子どもの敏感さに困ったら読む本』によると、音に敏感なHSCの子供がピアノレッスンを始めてみたら、どんどん上達したそう。また、運動系の習い事では、単純な動きを繰り返し練習することで「できた」という感覚を知り、自分の運動能力に自信をもてるようになります。HSCは熱中できるものを見つけると心が安定するので、必ず “子供が希望する習い事” をやらせてあげてください。HSCの子供の敏感さは長所になる!敏感すぎるという面だけ見ると、ネガティブなイメージが強いHSCの子供たちですが、最近の研究では、ポジティブな側面も多いことがわかっています。人間発達学が専門のジェイ・ベルスキー氏(カリフォルニア大学デービス校教授)は、HSCの敏感さについて、「良質の子育てを受けるなど、よい環境に置かれた場合には、ほかの子よりもプラスに作用します」と主張しています。HSCは非HSCよりも感受性が強いため、同じような幸せな環境にいた場合、非HSCよりも幸せを感じることができるのです。また、物事を深く考えるので、勉強に集中できる環境であれば、成績もよいのだそう。ほかにも以下のようなポジティブな面がありますよ。幸せを感じやすい病気や怪我が少ない成績がよいモラルのある行動ができる他者への気づかいができるでは、「良質な子育て」とはどのような子育てなのでしょう。アーロン博士は、HSCが幸せな人生を送るためには、自己肯定感を育むことが大切だと言っています。HSCの子供は、「叱られたときに自分はダメな人間だと感じる」「間違いをひどく後悔して自分を戒める」「友だちに言われたことを深く考える」といったことが多いでしょう。ですから、自己肯定感という心の土台がないと、悪いことがあったときに、その影響をまともに受けて傷ついてしまうのです。自己肯定感とは、「自分は自分であっていい」という揺るぎない気持ちであり、「ありのままの自分に価値がある」と考えられること。HSCである子供の自己肯定感を高めるには、次のようなアプローチがよいでしょう。敏感さは「すばらしいことだ!」と伝えるHSCの敏感さについて、「とてもすばらしいことなんだよ」と折に触れて教えてあげましょう。もちろん、親自身が本当に「わが子の資質はすばらしいのだ」と心の底から感じることが大切です。もしあなたが少しでも「うちの子は敏感すぎて将来が心配」などと思っていたら、その不安はHSCである子供に伝わってしまいます。ありのままのわが子を誇りに思うことが重要です。「優しい」「深く考える力がある」など、敏感さのメリットを伝えてもよいでしょう。HSCの感じ方や気持ちを受け止める子供の感じ方や気持ち、意見を尊重しましょう。たとえば、「このお店のなか、変なにおいがする」という感覚は、親には理解できないかもしれません。でも、頭ごなしの否定はしないようにしましょう。「そうなんだね。買い物を済ませたらすぐに帰ろうね」と、気持ちを肯定することで、子供は「この感覚は間違いではなかった」と安心することができます。この安心感が、「自分は自分でいいんだ!」という気持ちにつながるのです。親が受け止めてあげることで、HSCの子供の自己肯定感はアップしますよ。HSCの子供について書かれた本、おすすめ3冊「もっと、HSCの子供について情報が欲しい」という方におすすめの3冊をご紹介します。『ひといちばい敏感な子』「HSCとは?」という概念から、年齢別のアドバイスまで詳しく書かれているので、この1冊でHSCについての基本的なことが理解できます。「もしかしてうちの子ってHSC?」と感じたら、まずこの本を購入することをおすすめします。子供の敏感さをよい方向に導いていくためのアドバイスが満載です。『子どもの敏感さに困ったら読む本』著者は、日本では数少ないHSPの臨床医・長沼睦雄先生。「困ったときの子育てアドバイス」や「こじらせないために親がすべきこと」など、子どもの敏感さに困っている親に向けた助言にページが多く割かれています。神経発達症との違いなどについても詳しく書かれているので、さまざまな不安を抱えた親御さんにおすすめです。『HSCの子育てハッピーアドバイス』著者の明橋大二先生は、『ひといちばい敏感な子』の訳者でもあります。敏感すぎるHSCの子供をもつ親御さんがハッピーになるアドバイスばかりが詰まっているので、読み終えるころには、「私、この子の親でよかった!」と感じるはずですよ。子育てに息苦しさを感じている親御さんにこそ読んでほしい1冊。HSCの子供のSOSサインを見逃さないために……HSCは、非HSCの子供に比べて、とても生きづらい世界を生きています。親であれば、そのストレスを少しでも軽減してあげたいと思いますよね。そこで、子供のストレスケアについてもっと知りたいという方や、「子供のことを考えていたら、自分もストレスを感じるようになってしまった……」などの悩みを抱える親御さんに「青少年ケアストレスカウンセラー講座」をご紹介しましょう。以下のように、子供のストレスだけでなく、親のストレスについても学ぶことができます。青少年とストレスについてストレスとうまく付き合うための対処法ストレス解消法コミュニケーションや自己表現の仕方育児ノイローゼや虐待について引きこもりなどのメンタル疾患ほかにも、子供のSOSサインを見逃さないためのポイントや、困っている子供をサポートする技法などが身につきます。自宅学習できるので、時間に縛られることなく「ストレスケア」について学ぶことが可能です。ストレスケアを知ることで、HSCの子供だけでなく、親御さん自身の心も軽くなるはずですよ。また、子どもとのコミュニケーションについて以下のように考えている方であれば、ヒューマンアカデミーの「心理カウンセラー講座」をおすすめします。子どもの悩みを一緒に解決したい子どもともっと上手にコミュニケーションをとりたい自分の感情をコントロールしたいたとえば、「みんなが私のことを嫌いって言った」というお子さまの悩みを解決する場合。親が適切な質問をすることで、「じつは、ひとりの子の言葉が記憶に残っていただけ」と判明することもあるそうです。心理学者であるアーロン博士によると、親自身が感情をコントロールできないと、HSCの自己コントロール力は下がってしまうとのこと。心理学は、子どもの心だけでなく、自分自身の心までも知ることができる学問です。デジタルパンフレットで詳細を確認してみてくださいね。心理学を学ぶことで、HSCである子供とのコミュニケーションが、楽しい時間に変わるはずですよ。***「HSC」や「ひといちばい敏感な子ども」という言葉を知る前は、筆者自身、敏感すぎるわが子を少し面倒だと感じることが多々ありました。食器棚から出したコップに「食器棚の匂い」を感じたり、スーパーで売っているカット済み野菜を食べたときに「変な味がする」と言ったり――。しかし、執筆を通して、HSCの感じ方や考え方を理解することができました。アーロン博士は著書の最後に、「慎重に考え、深く感じ、些細なことに気がつき、最終的には対局を見ることができる人材」であるHSCは、いま、社会で必要とされていると言っています。HSCの子供たちが、敏感さを「強み」にすることができますように――。(参考)エレイン・N・アーロン著 明橋大二訳(2015),『ひといちばい敏感な子』, 1万年堂出版.長沼睦雄(2017),『子どもの敏感さに困ったら読む本』, 誠文堂新光社.The Highly Sensitive Person|Is Your Child Highly Sensitive?HSS型HSPの才能を生かす生き方を実現する「ブレーん塾」|好奇心旺盛なのに傷つきやすい。複雑な特性を持て余す才能豊かなHSS型HSPたちダイヤモンドオンライン|コロナで「生きにくい」が加速、「HSP」とはどんな人たちか新宿ストレスクリニック|HSP(ハイリー・センシティブ・パーソン)とは?~HSPはうつ病になりやすい!?~日本テレビ|5人に1人?「繊細」すぎて疲れてしまうHSPって何?King’s College London|Vantage Sensitivity: Individual Differences in Response to Positive Experiencesお茶の水女子大学|繊細な子どもの情緒的発達は良い学校環境から良い影響を受けやすい~発達における脆弱性を可塑性として捉え解析~STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|自己肯定感も勉強への姿勢も“熱中体験”の先で生まれる
2020年10月30日特許技術を活用し、そろばんの仕組みをiPadに応用した電子そろばん教材「そろタッチ」。「そろばん式暗算」が効率的に習得できるこの教材が現在注目を集めています。今回は、教育とテクノロジーが融合した教材「そろタッチ」を提供している株式会社Digika社長、橋本恭伸氏(以下、橋本)とRISUの今木(以下、今木)が、Edtech(教育×テクノロジー)が開く教育の新しい姿をめぐって繰り広げた対談の模様をお送りします。そろばんが手元になくても暗算ができる能力を!今木:こんにちは。今日は、こどもまなび☆ラボでの連載「学びノベーション」の特別対談企画として、株式会社Digikaの社長、橋本恭伸さんをお呼びしました。橋本さんは、この連載でたびたび触れてきた「エビデンス・ベースド」の考え方を、そろばん教室に応用なさっています。橋本さん、そろタッチを開発した経緯についてお聞かせ願えますか。橋本:私たちはそろタッチのサービスを始める前にそろばん教室を運営していましたが、そのときの経験がそろタッチの開発に関わっています。そこからお話ししましょう。私たちは、そろばん教室の目的が「そろばん式暗算能力」を身につけることにあると考えています。かつてそろばんは、計算に必要なツールでした。しかし、Excelのような表計算ソフトが普及したいま、もはやツールとしてのそろばんは社会に求められていない。そんな時代にそろばん教室に価値づけをするとしたら、やはり「そろばん式暗算能力」の育成だと思ったわけです。今木:「そろばん式暗算能力」は具体的にはどのような能力なのでしょうか?橋本:そろばんが手元になくても、頭のなかでそろばんの珠をイメージすることで、暗算ができる能力です。しかし、ひとつ課題がありました。当時、私たちのそろばん教室を辞めた子どもの9割は、いざそろばんが手元からなくなると、難しい暗算ができなかったのです。つまり、そろばん教室では、そろばんというツールの使い方は身についても、肝心の「そろばん式暗算能力」を身につけることにはとても苦労していました。では、「そろばん式暗算能力」を伸ばすにはどんな方法が効果的なのか。試行錯誤の末にたどり着いたのが「そろタッチ」です。計算を頭のなかで画像処理する「そろばん式暗算能力」橋本:先ほど、そろばん式暗算とは頭のなかでイメージしたそろばんの珠をはじくことだとお話ししました。そろタッチには、「珠のイメージ力」をサポートする特許技術が入っています。加えて、生徒からリアルタイムで送られる学習履歴データを分析し、カリキュラムに活かすことによって、効率的な能力開発を可能にしています。今木:生徒の学習データを分析するのは、RISUでも同様です。この連載のテーマのひとつに「エビデンス・ベースドの教育」があるのですが、まさに「そろタッチ」もエビデンス・ベースドな教材なわけですね。そろばん教室からそろタッチ教室へ転向したことで、どれくらいの効果が生まれたのですか?橋本:そろばん教室では、4年間で全体の10%の子どもがそろばん式暗算を習得していたところを、そろタッチ教室では、62%の子どもが平均20ヶ月で習得しています。今木:すごいですね……半分の時間で6倍の効果が出るとは。でも、そろばんもそろタッチも、「指を使う」という点は同じですよね。なぜそろタッチのほうが効果が上がったのでしょう?橋本:たとえば、そろばんで桁数の少ない計算をするときを考えてみてください。すると、盤上には計算に使わない珠がたくさんあります。これが、そろばん全体のイメージをするときに邪魔になってしまうのです。一方、そろタッチは、iPadの技術を活かして、計算に使う珠だけが真っ暗な背景に色つきで表示されるようになっているんです。今木:必要なものが必要なときに出てくる。橋本:そうです。両手で操作する「両手式」もひとつのポイントです。片手で操作するより計算スピードも速くなりますし、脳の数字を処理する部分とイメージを処理する部分を同時にバランスよく刺激できるので、脳が活性化して、イメージ力のアップにつながります。きわめつけは、珠をタッチしても色がつかないモードです。このモードでは、頭のなかで珠をイメージしながら計算しなくてはならないので、イメージ力をより効果的に鍛えることができます。今木:前にタッチした珠を覚えたまま、次の珠をタッチする――手前まで戻って考えるというのは将棋みたいですね。橋本:そうですね。囲碁も近いかもしれません。とにかく、タッチすると色がつく「見えるモード」と色がつかない「あんざんモード」、このふたつを反復して行なうことによってイメージ力を鍛え、計算を頭のなかで画像処理する「そろばん式暗算能力」を効率的に身につけることができるのです。今木:機械の特性をうまく活かして、子どもの暗算能力を伸ばせる教材をつくられたわけですね。そしてそれは実際、データとしても成功している。最高のパフォーマンスを出すための「Growth Mindset」今木:最近、スイミングスクールでもそろタッチ教室が導入されたと伺いました。スイミングなど運動系の習い事と塾をかけもちする子どもは多いですが、一方で、「習い事が忙しくて、勉強の時間がとれない」という声もよく聞きます。習い事と勉強の関係について、橋本さんはどのようにお考えですか?橋本:はい。今年の6月から、東京都内のカルチャースクールを併設しているスイミングスクールでそろタッチが導入されました。スポーツに限らず、さまざまな習い事を受けられるこの施設で、われわれがなぜそろタッチ教室を開講したか。その理由からお話ししましょう。じつは、僕らがそろタッチを使って達成したい目標は、いままでお話ししたような「計算力を上げる」というところに留まりません。計算力を上げることは、目標ではなく、手段に過ぎません。つまり、「計算力」というわかりやすい能力が開発される過程を経験することによって、数字に対する自信、ひいては「Growth Mindset(経験や努力によって将来をポジティブに変えられるという考え方)」を獲得すること、それが最終的な目標なんです。スポーツにおいて、Growth Mindsetは非常に重要です。Growth Mindsetをもてず、「僕(私)なんていくらやってもダメだ……」と思っていたのでは、どんなに練習を積んでもよいパフォーマンスは出せない。これは勉強も同じことだと思います。今木:スポーツと勉強は、土台の部分ではすごく近いわけですね。橋本:すごく近い。そろタッチは、90%以上の学習は家で行なわれるよう “仕組み化” しています。だから、スイミングスクール内で提供されているそろタッチコースは、学習の場というよりむしろ、家での勉強の成果を披露する場なんです。そして、それを見守るファシリテーターと呼ばれる大人の役割は、スイミングスクールでコーチをしている人たちの役割にすごく近い。今木:子どもに成功体験を与えることで、モチベーションアップを手助けしている。橋本:そうですね。子どもの能力開発において、やはりGrowth Mindsetの考え方が共通項になっていると感じます。幼少期からこの考え方を身につけることは、子どもにとって大きな価値となります。子どものGrowth Mindsetの獲得にいかに寄り添えるか。それがスポーツ・勉強問わず、すべての教育サービスに重要なことだと思います。今木:なるほど。RISUのタブレット教材でも、子どもひとりひとりに、大学生のチューターによるフォロー動画を送っています。子どもの能力を開発するうえで、周囲の見守りはとても重要なのだと改めて感じました。私が行なっているすべての教育サービスの根幹にあるのは、「子どもの才能を育て、開花させる」という理念です。子どもはそれぞれ伸びしろをもっています。私は、RISUでの算数教育を通じて、子どもひとりひとりの伸びしろを育てるきっかけを提供することができれば、と考えています。橋本さんのお話には、学習データに基づいたエビデンス・ベースドな教材づくりや、周囲の見守りが支える子どもの能力開発など、そうした私自身の教育理念に通ずる点も多かったように感じます。Edtechの明るい未来を予感させる、実りある対談でした。橋本さん、今日はありがとうございました。【プロフィール】橋本恭伸(はしもと・やすのぶ)マイクロソフトにグローバル新卒採用第一期生(MACH05)の一員として入社。The University of Sheffield MBAを経て楽天株式会社へ。PT. Rakuten Indonesia, PT. Rakuten Belanja OnlineのDirectorを歴任し、Rakuten Indonesia Country Headとして海外でのビジネスを現地の最前線で率いる。人々の可能性を最大限引き出す力になることを自身のテーマに掲げ、株式会社Digikaで世界最速の「暗算力」の短期効率的習得を通じて世界中の子供たちの夢の実現をサポート。『新! 暗算学習法そろたっち』の詳細はコチラ。『10億件の学習データが教える 理系が得意な子の育て方』今木智隆 著/文響社(2019)■ 算数塾「RISU」代表・今木智隆先生 インタビュー記事一覧第1回:子どもを「算数嫌い」にしない大原則。幼児期からできる“算数好きの基礎”の築き方第2回:子どもが勉強で成果を出せないのは、親の「勘違い」が原因かもしれない第3回:10億件のデータを調べてわかった、小学生が「ずば抜けて苦手」な算数の単元と例題第4回:「算数の文章題が苦手」な子どもが、ひねった応用問題でも解けるようになる教育法
2020年10月30日学生時代から現在に至るまで、人間関係でいっさい悩んだことがないという人はいないでしょう。ほとんどの人は、いくつかの失敗や後悔を繰り返しながら、良好な人間関係の築き方を学んできたはずです。一方、幼稚園児や小学校低学年くらいの幼い子どもの場合、友だちとの付き合い方をきちんと理解して実践するのは難しいですよね。親としては、わが子が友達関係で悩まないように手を差し伸べてあげたくなるでしょう。今回は、小さな子どもの「友だち力」の伸ばし方について考えていきます。「友だち力」があれば学校生活は問題ない!?幼稚園入園、小学校入学、そして毎年のクラス替えと、小さな子どもは新しい環境に飛び込む機会が多いもの。自分を取り巻く環境やそれまでの人間関係ががらりと変わるとき、仲がいい友だちと離れ離れになることを不安がって落ち込む子もいれば、新しい出会いを楽しみに胸を躍らせる子もいます。親としては、「いいお友だちができるかな」「まわりの子たちとうまくやっていけるかな」「トラブルを起こしたり、トラブルに巻き込まれたりせず、楽しく過ごせるかな」など、友だち関係の心配は尽きませんよね。教育評論家の親野智可等さんは、「友だちとの関係をうまく調節する力」を「友だち力」と呼んでいます。クラスの中心にいるようなリーダータイプというよりも、どんな子ともうまく付き合っていけて、友だち関係のトラブルを起こすようなことがない子をイメージするといいでしょう。ただしそれは、決して “まわりに合わせるだけのおとなしい子” というわけではありません。自分の素直な気持ちを友だちに伝えることができ、友だちの意見もしっかりと聞くことができる、「人間関係のバランス感覚が優れた子」こそが、友だち力のある子なのです。友だち力のある子は「ひとりでも平気」みなさんは、自分の子どもを見て「友だち力がある」と思いますか?「仲がいい友だちとはうまくやっているけど、自分から声をかけるのが苦手」「自分の話ばかりして、共感力が足りないみたい」「いつもお友だちのいいなりになってしまう」ほとんどの子が、大なり小なり友だちとの付き合い方について問題を抱えており、「なんの心配もない!」と言いきれるほうが珍しいのではないでしょうか。しかしなかには、日々起こる小さなトラブルを未然に防ぐなど、子どもどうしのいざこざを解決する能力が高い子どももいます。そんな「友だち力」が高い子どもには、ある共通点があるそう。それは、「 “友だちと仲よくできる力” と “ひとりでいる力” 、両方のバランスがうまくとれる」こと。親野さんは「ひとりでいる力がなければ、いつも友だちに頼ってばかりになってしまう」と指摘し、「自分の好きなことや熱中できることがある子は、友だちに頼りすぎることはなく、バランスのよい関係性を築いていける」と述べています。反対に、熱中できることがなく、ひとりでいることに強い不安を感じてしまう子は、友だち関係のトラブルに巻き込まれやすくなります。たとえば、クラスで特定の子をからかったりいじめたりするような雰囲気になったとき、流されてその輪に加わってしまうのは「ひとりでいる力」が弱い子だといえるでしょう。自分の意思よりも、「友だちと一緒にいるほうが安心」と群れることを選んでしまう子は、一見すると友だちとうまく付き合っているように見えるかもしれません。しかしそれは、ただ「ひとりでいるのが怖い」「ひとりぼっちに見られるのがいや」という理由から、本意ではない行動をとっている可能性もあるのです。親子の信頼関係があれば友だち力はぐんぐん伸びる!子どもが最初に築く人間関係は「親子関係」です。親から強い言葉で叱られることが多い子は、友だちに対して威圧的な態度をとることが多いなど、親子関係がそのまま友だち関係に反映される傾向があります。まわりの親子関係をよく観察してみると、子どもがどのように友だちと接しているかがなんとなく伝わってくるでしょう。友だち力の高い子をもつ親は、「子どもとの距離感」を大切にする傾向があります。親子といえども他人どうし。年齢を重ねるごとに少しずつ子どもの手を離し、近すぎず遠すぎない距離で黙って見守ってあげることができれば、子どもの友だち力は育まれます。一方で、友だち力が低い子、友だちに依存しやすい子は、親が過保護だったり過干渉だったりする傾向があるでしょう。親が自分の子どもを「ひとりの人間」として認めてあげられないので、子どもの自己肯定感が低下し、友だちに依存せざるを得なくなってしまうのです。親がわが子を心配し、近い距離感であれこれ世話を焼いてしまうと、子どもは「自分は信頼されていない」とみるみるうちに自信を失ってしまいます。わが子の友だち力を伸ばすためにも、まずは子どもを信じることから始めましょう。わが子の友だち力は親の○○力によって育つ最後に、親野さんのアドバイスをもとに「わが子の友だち力を育てるためにできること」をご紹介します。先ほども述べたように、友だち力は親子の信頼関係をベースにして育まれます。親野さんによると、「そのためには子どもへの共感的な気持ちが必要不可欠」なのだそう。どのような関係でも、相手を信頼できなければ心を開くことは難しいですよね。しかし、人に対する信頼が土台にあれば、心を開いて接することができ、良好な関係を築くことができます。もしみなさんが、お子さんに対して次のような対応をしていたら、共感的な気持ちが欠けているので注意が必要です。・子どもの要求をわがままと決めつける・子どもが失敗したとき、「あなたの頑張りが足りないからだ」と責める・友だちとけんかした子どもに、「あなたにもよくないところがあったんじゃない?」と言うこのように、親が子どもの気持ちに寄り添わずにいることで、子どもが「どうせ親に話してもわかってくれない」「一方的に責められるだけで味方してくれない」と感じてしまうのも無理はないでしょう。親子関係において信頼感が欠けてしまうと、今度は友だち関係にも悪影響を及ぼします。相手に不信感がある状態だと、友達がひそひそ話をしていると「自分の悪口を言っているんじゃないか」と被害妄想を抱いたり、少しでも仲よくなった相手に過度に執着したりと、相手との距離感を間違えてしまいがちに。甘やかさずに厳しく接することが正しいと思う親御さんも多いかもしれません。しかし、まずは親子の信頼関係をしっかりと築くことが大切です。そのためにも、子どもの話に共感し、受け入れてあげることを心がけましょう。***小学校入学のタイミングで、親が何よりも心配するのは「子どもの友だち関係」なのではないでしょうか。わが子の友だち力を鍛えるには、まずは親子の信頼関係を築くこと。お子さんの話に耳を傾け、しっかりと共感してあげることから始めましょう。(参考)日経DUAL|“友達力”をつけるためには「一人でいる力」も必要親力講座|友達力をつけるために、やってはいけないこと、やるべきこと東洋経済オンライン|友だちが作れない子には「秘密特訓」が有効だSTUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|将来成功するのは「なぜか人に好かれる子」。渋野日向子選手の自己肯定感は高い?
2020年10月26日思い込みや経験則を離れ、データに基づいた科学的な知見を重視する「エビデンス・ベースド」の考え方。前回連載、『10億件の学習データから判明。算数の苦手は「位」「単位」「図形」の3つに分類できる!』では、そんなエビデンス・ベースドの具体例として、RISU算数のデータから見えてきた算数のニガテにまつわる事実をご紹介しました。実際の学習データという「エビデンス」を通して、算数教育の現状が見えたのではないでしょうか。新型コロナウイルスの影響で、分散登校やオンライン授業を行なう学校が増えた昨今、子どもの自宅学習について悩む保護者の声をよく聞くようになりました。そこで今回は、エビデンス・ベースドに基づいた「効果的な自宅学習の方法」についてお話ししたいと思います。データで判明!効率的・効果的な自宅学習あなたのお子さんは、自宅で集中して勉強できていますか?テレビやゲームなど、勉強以外の誘惑が多い自宅での勉強は、子どもにとって難しいもの。しかし、学校で習った内容をしっかり定着させるためには、自宅での復習は欠かせません。自宅でどれだけ集中して効率よく勉強できるか。それが、学校の成績や、ひいては受験の結果をも左右すると言っても過言ではないのです。効率的・効果的な自宅学習のカギを握るのが、「時間」「体調」「目標」の3つの要素。それぞれについて、データとともに詳しく見ていきましょう。■「短時間×複数回」の学習で効率アップ!はじめに、自宅学習の「時間」についてお話しします。私が運営しているRISU算数は、子どもの学習を常に記録しています。学習内容の理解度はもちろん、学習習慣についても細かくデータをとることで、子どもひとりひとりに合ったきめ細やかな指導を可能にしているのです。このデータから、学習習慣に関するおもしろい傾向が明らかになりました。同じ期間に同じだけ学習している子どもでも、学力の向上にバラツキがあったのです。なぜ、このようなことが起こるのでしょうか。その答えは、「勉強時間の長さと回数」の違いにありました。1回に長時間学習する「長時間型」と、短い時間に何度も学習する「短時間型」の子どもの平均学習スピードを比べたところ、短時間型の子どもは、長時間型の子どもの1.1倍のスピードで学習を進められていることが分かりました。このデータは、「勉強は、ただ長い時間やればよいのではない」ということを私たちに教えてくれます。長時間だらだらと勉強するより、短時間の勉強をコツコツ積み重ねたほうが、効果が出やすいのです。子どもの集中力が続かない……とお悩みの方は、「今日は20分だけ勉強しようか」や、「この問題だけ頑張って解こうか」などと声かけをしてみるとよいかもしれません。■朝の10分=夜の20分!?朝学習の効果「体調」も、自宅学習の効率を左右する重要な要素です。そして、体調を整えるためには、生活リズムを整えることが大切。夜更かし続きで寝不足のまま勉強をしても、なかなか集中できませんよね。しかし、RISU会員の学習データによると、コロナ以降、学習時間が後ろ倒しになっているご家庭が多いようです。夜に勉強する「夜型」の子どもが増えているのです。じつは、夜に勉強するより、朝に勉強するほうが学習効率がよいことがデータからわかっています。具体的には、朝型の子どもの学習スピードと継続率を100%としたとき、夜型の子どもの学習スピードは73%、継続率は48%という結果が出ているのです。朝の10分は夜の20分にも相当します。子どもの生活リズムを整え、「朝に勉強する」という習慣を身につけさせてあげることが、自宅学習の効率アップの近道だと言えるでしょう。また、このような子どもの学習管理を行なうにあたっては、保護者の方自身の生活リズムの管理も欠かせません。リモートワークを導入する企業も増え、運動不足や夜更かしなど、大人でも生活リズムが乱れている人が多いようです。大人が率先して規則正しい生活を送ることで、子どもに健康的な生活リズムを身につけさせ、効率のよい自宅学習をサポートできるでしょう。■目標をもって勉強すると学習効率が上がる!もうひとつ、自宅学習を行なううえで重要なのが「目標」をもつこと。明確な目的意識がないまま、ただやみくもに量をこなすのは、効率的な勉強法とは言えません。それに、やるべき内容が決まっていない状態で机に向かうと、「今日は何をしようか」と考えるところから始めなくてはいけませんよね。何をするか考えているうちに時間だけが過ぎ、やる気がなくなってしまった。そんな経験はありませんか?目標があれば、それを達成するためにやるべきことが自然と見えてきて、毎日の学習計画も立てやすくなります。計画を立ててから机に向かうことで、何をするか考えていたぶんの時間を勉強に回すことができ、学習効率が上がるのです。まずは、お子さまと一緒に「目標」を考え、学習計画を立ててみてください。自宅は算数の学びにあふれている!前述した「時間」「体調」「目標」の3つを意識するほかに、自宅だからこそできることもたくさんあります。ここでは肩の力を抜いて、自宅にあるもので気軽にできる算数学習をご紹介したいと思います。たとえば、時計。当然、ほとんどのおうちに時計はあると思いますし、子どもも日常的に時計を読んでいるでしょう。普段の生活に大きく関わるこの単元は、ドリルを使って学習するより、自宅の時計を使って、実体験として学んだほうが身につきやすいと私は考えます。しかも、「時計の読み方」は、多くの子どもがつまずきやすい単元のひとつ。つまり、日常生活のなかで苦手な分野を得意にできるかもしれないのです。「おやつは3時からなんだけど、あと何分で3時になるかな?」こんな質問を子どもにしてみるのはどうでしょう。おやつの時間は、子どもにとって楽しみな時間。そんな楽しい時間に、子ども自身の生活とリンクさせて時計の読み方を学習してもらうのです。ほかにも、ホールケーキを等分するときに「角度」について考えたり、料理の調味料の配合で「比」について考えたりすることもできます。「このケーキを3人で分けるときって、1人分の角度は何度になるかな?」(角度)「30度ずつ、このケーキを分けたら、何人分のケーキができるかな?」(角度)「さとう、みりん、しょうゆを2:1:2で混ぜるとき、さとうが10グラムだったら他の調味料の量はどうなるかな?」(比)「レモンジュースとお酢を4:1で混ぜたソースを100グラム作りたいんだけど、それぞれ何グラムずつ入れればいいかな?」(比)そう、自宅は算数学習のきっかけにあふれているのです。このように、生活のなかで具体的に理解することで、抽象的でわかりにくかった数の世界が身近になり、算数という科目がもっと好きになるかもしれません。特別な教材がなくても簡単にできる算数の自宅学習、ぜひ取り入れてみてください。次回は、iPadを使った新しい暗算学習法「そろタッチ」を開発された株式会社Digikaの社長、橋本恭伸さんとの対談を掲載する予定です。お楽しみに。『10億件の学習データが教える 理系が得意な子の育て方』今木智隆 著/文響社(2019)■ 算数塾「RISU」代表・今木智隆先生 インタビュー記事一覧第1回:子どもを「算数嫌い」にしない大原則。幼児期からできる“算数好きの基礎”の築き方第2回:子どもが勉強で成果を出せないのは、親の「勘違い」が原因かもしれない第3回:10億件のデータを調べてわかった、小学生が「ずば抜けて苦手」な算数の単元と例題第4回:「算数の文章題が苦手」な子どもが、ひねった応用問題でも解けるようになる教育法
2020年10月16日ビジネスシーンではよく耳にする「ロジカルシンキング」。いわゆる「論理的思考」のことですが、この力が必要とされるのは、なにも働く大人だけではありません。むしろ子どもたちこそ、早い段階で身につけることができれば、近い将来必ず役に立つはずです。今回は、すぐに実践できる「論理力の鍛え方」について解説していきます。これからの時代に必要不可欠な「論理力」論理的思考力とは、簡単に言うと「筋道を立てて考えたり、説明したりできる力」です。会話をしていると、「話がまとまっていないから内容が理解できない」と感じたことや、逆に「難しい内容をわかりやすく説明してくれて助かった」などと感じた経験があるでしょう。このように、論理力は社会で求められる能力であり、身につけておくと人生において大きなメリットをもたらします。特にこれからの時代は、いまよりもっと論理力を問われる機会が増えてきます。2020年度から大学入試センター試験が「大学入学共通テスト」に変わることで、詰め込んだ知識よりも思考力・判断力・表現力が評価されるようになります。すでに新しい学習指導要領にも「主体的・対話的で深い学び」を重視することが明記され、授業では生徒たちが互いに課題を考えて発表し合ったり、活発な議論を交わしたりと、自分の考えを論理的に伝える必要性が増しているのです。また、受験や就職などの面接においても、自分の考えをよりわかりやすく論理立てて伝えることができれば武器になるでしょう。論理的思考力が身についていると、ビジネス面でも大きな強みになります。どんな仕事でも求められるのは、「問題解決能力」と「コミュニケーション能力」ですが、まさにこれらは論理的思考力を土台とすることで向上していくのです。問題解決能力を向上させるには、失敗の原因はなにか、現状改善のためにはどうすればいいか、などを論理的思考をもと追究する必要があります。また、一貫性のある論理的な主張ができれば、伝えたいことがより相手に伝わりやすくなり、説得力も高まるでしょう。その結果、スムーズなコミュニケーションを促すことができるのです。あとひとつ、今後社会人が絶対に身につけておかなければならないスキルとして「情報の取捨選択能力」があります。あらゆる情報があふれる現代社会では、根拠のない噂話やフェイクニュースに惑わされないためにも、物事の真偽を見抜く目を養わなければなりません。玉石混交の情報のなかから、信頼できるものを選び抜き、その情報に基づいて筋道を立てて思考するスキルは、まさしく「論理的思考力」であると言えるでしょう。子どもたちが将来困らないために、いまのうちから「論理的思考力」を身につけておきたいと思いませんか?論理的な会話で親子げんかが減る!?論理力を鍛えるために、特別な努力は必要ありません。「『論理力』はそんなに難しいスキルではない」と話すのは、『論理力は小学6年間の国語で強くなる』(かんき出版)の著者・小川大介さんです。小川さんによると、私たちは小学校6年間の国語で、「論理力を鍛えるために必要な3つの力」である「把握する力」「思考する力」「伝達する力」を学んでいるのだそう。物事を論理的に考えるためには、あらゆる面からの「情報」を集めることが重要です。それは自分の論理を明確にするための根拠となります。ほかに「客観的視点」も、論理的思考には欠かせません。「自分にとっては○○だけど、相手にとっては△△かもしれない」「○○だけど、別の角度から見たら△△ということもある。もしかしたら、●●ということもあるかも」小川さんは、このような論理的な思考を育むためには、学校の勉強よりも家庭での日常会話で鍛えるほうがずっと簡単だと話します。たとえば、母親が子どもに「ちゃんと掃除しなさい」とだけ伝えたとします。しばらくして見てみると、 “ちゃんと” 掃除したようには見えない……。そこでカッとなって「どうしてちゃんと掃除しないの!」と怒る母親に対して、子どもは「 “ちゃんと” 掃除したよ!」と反発する。この行き違いは、親子であっても “ちゃんと” の認識がずれていることから起こります。人は誰でも主観で物事を判断し、自分の考えや思い込みを相手に押しつけがちです。その結果、けんかや対人トラブルが発生するのです。日頃の親子のなにげない会話でも、論理的に話すことを心がければ、ぶつかり合うこともグンと減るはず。そして、そのような会話を繰り返すことで、自然と論理的思考力は身についていきます。子どもの論理力を鍛える会話術子どもの論理力を鍛えるには、次の方法がおすすめです。子どもへの質問は「5W1H」をひとつずつかつて開成中学・高校の校長を務めた柳沢幸雄先生によると、「言語能力を伸ばすために親ができるのは、子どもの話をきちんと聞くこと」だそう。「子どもがしゃべる時間を2、親がしゃべる時間を1」として、子どもにたくさん話をさせるといいそうです。そして、子どもの話が一段落したら、質問を “ひとつだけ” します。その際は「5W1H」の疑問詞を使いましょう。たとえば、次のような聞き方をすると子どもは答えやすくなります。子「今日は楽しかった!」親「なにがあったの?」子「いっぱい遊んだの」親「誰と?」子「お友だちの◯◯ちゃんと」親「どんなことをして遊んだの?」そして、このことを繰り返すうちに、子どもは自然に「5W1H」についてきちんと整理したうえで話をすることができるようになっていきます。この力は、論理的表現力そのものであり、読解力にもつながるものです。文章を読んで内容を理解することは、その文章のなかに「5W1H」の要素がどのように詰まっているかを理解することに他なりません。(引用元:STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|生きる力をつくる「10歳までの幅広い経験」。子どもに勉強は教えるな!?)日常会話に取り入れたいマジックワード教育評論家の石田勝紀さんは、親子の日常会話のなかに次の言葉を積極的に取り入れることをすすめています。これらの言葉を会話のなかに入れると、考える力と構成力が身につくそう。「要するにどういうこと?」子どもは、見たまま・経験したままを話す傾向があります。そのため話がまとまっておらず、相手が理解できないことも。「要するに?」とたずねて簡単に内容をまとめる練習を繰り返せば、国語の要約問題でも役立ちます。「たとえばどういうこと?」子どもの話は漠然としていてわかりにくいと感じますよね。相手にわかりやすく伝えるために、抽象的な内容を具体的に説明できるよう練習しましょう。「ほかにはどんなことがあるの?」「◯◯が△△した」のように単純な話し方ばかりだと、論理的思考力は身につきません。「ほかには?」と問いかけることで、話題を水平展開させて、語彙を増やしたり発想力を高めたりすることが期待できるでしょう。***「論理的思考力」「ロジカルシンキング」と聞くと、難しいことのように感じますが、親子の日常会話でも簡単に鍛えることができます。お子さんとの会話をもっと充実させるためにも、論理力を育む会話術を参考にしてみてくださいね。(参考)STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|「論理的思考」は家庭で身につけられる!これからの時代に必須の能力を手軽に伸ばす方法伸芽’Sクラブ|頭がいい子どもは論理的思考力が高い!?子どものうちから鍛えるロジカルシンキングMY FUTURE CAMPUS|論理的思考自分の思考を整理し、筋道立てて表現する力日経DUAL|読書好きなのに国語で高得点を取れない子の弱点東洋経済オンライン|効果的!子の論理力を育てる「5つの言葉」STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|生きる力をつくる「10歳までの幅広い経験」。子どもに勉強は教えるな!?
2020年10月12日「3年生くらいまでは勉強面で心配することなんてなかったのに……」「高学年になった途端に授業についていけなくなったみたい……」このように、それまで優秀だと思っていたわが子が、学年が上がるにつれて成績が落ち込んでしまうケースはよくあるといいます。今回は、高学年で成績が伸びなくなる原因と改善策について解説していきましょう。優秀だった子が高学年で急に伸び悩むのはなぜ?小学校4年生くらいまでは成績が優秀で、家庭学習もしっかりできていたのに、高学年になって急に伸び悩んだり、勉強面での悩みが出てきたりするケースがよく見られます。『5歳から始める最高の中学受験』(青春出版社)の著者で教育専門家の小川大介さんも、長年の経験から「さまざまな家庭の教育相談を受けてきたが、『高学年になってから成績が伸びなくなった』という相談が非常に多い」と述べています。当然ですが、高学年になると学習内容自体が難しくなり、抽象的な概念を理解して読み解かなければならない問題も増えてくるでしょう。3年生くらいまでは「なんとなく」で解けていた問題が、4年生以降ではしっかりと理解できていなければ正解できないような学習内容へとシフトしていきます。だからといって、全員が伸び悩むわけではありません。むしろ、それまでは特に勉強面で目立っていなかったのに、学年が上がるにつれて、めきめき成績アップするような子もいます。「高学年から伸び悩む子」と「高学年から伸びる子」、その違いについてひもといていきましょう。高学年で成績が伸びなくなる子の共通点高学年で成績が伸びなくなる子には、いくつかの共通点があります。それには、親の関わり方が少なからず影響しているようです。■習い事でスケジュールがぎっしり!前出の小川さんは、「小さい頃からたくさんの習い事をさせている家庭では、小学4年生ごろから成績が伸び悩むケースが多い」と指摘します。月曜は学習塾、火曜は水泳教室、水曜はサッカー、木曜は……と休みなく習い事をさせていませんか?小川さんによると、「こういう子はみんな、低学年まではいい成績を取り続ける」のだそう。しかし4、5年生あたりから、一生懸命勉強しているのになぜか成績が伸びにくくなるといいます。■好奇心を育む経験が不足している小川さんは、高学年で伸び悩む子と学年が上がるにつれてぐんぐん伸びる子との違いについて、「小さいときにどれだけ夢中になれる体験をしてきたかどうか」であると述べています。学びの根っこにあるのは “好奇心” 。楽しくて夢中になれるものに対する「もっと知りたい」と学習意欲をかき立てられるような経験が、その後の勉強への向き合い方に深く通じるのです。■親に言われるから勉強していただけ学習習慣を身につけるには、自らの意志で勉強しているのだという意識が不可欠です。千葉大学教育学部附属小学校の松尾英明先生は、「誰かに命令されて嫌々やるのは習慣ではない」と話します。それまで親の言うことに従順だった子どもが、高学年になり自我を主張し始めると、「親に言われたから勉強するなんていや」と反抗するようになるケースも。■なんのために勉強するのかを理解していない上で述べたように、「親に命令されたから勉強する」という意識を持ち続けると、高学年になって物事を深く考えるようになり「そもそも、なんで勉強しなきゃいけないの?」「なんの役に立つの?」「これって意味あるの?」と自問自答するように。勉強の目的が「よい成績をとるため」でストップしていると、その先の未来を思い描けなくなります。その結果、勉強する意欲がみるみる低下していくのです。「高学年にぐんぐん伸びる子」になるために学年が上がるにつれてぐんぐん伸びる子は、幼いうちから “伸びる素地” を育んでいます。それは、親のちょっとした声かけや接し方、休日の過ごし方といった日常生活で育めるものばかり。ぜひ参考にしてみてください。■夢中で遊ばせる!小川さんは「子どもは楽しくて夢中になれるものに対しては、学びのセンサーが全開になる」と話します。好奇心が刺激されたものに興味をもち、それを知りたいと行動に移すことで、身をもって勉強への取り組み方を学べます。その際に親が心がけるのは、「夢中になっている子を否定したり邪魔したりせずに温かく見守る」こと。小川さんによると、「親の愛情を感じながら好きなことをして遊ぶというのは、なによりの安心感と幸福感をもたらす」そうです。さらに、幼少期に「たっぷり遊んだ」「納得がいくまでやり遂げた」という経験をした子は、ここぞというときにものすごい集中力を発揮するといいます。■振り返りの時間を大切に習い事でスケジュールを埋め尽くしてしまう弊害として、「振り返りの時間がなくなる」ことが挙げられます。なにかを学んだら、それを振り返り、反復することで吸収できます。つまり、習い事でもなんでも「やりっぱなし」は意味がないのです。毎日のように習い事に通い、家でのんびりする時間がなくなってしまうと、大事な振り返りの時間が失われてしまうでしょう。時間の使い方にもっと余裕をもたせれば、学んだことをより効率的に吸収できるというメリットもあります。■積極的にお手伝いをさせよう!高学年でも伸び続ける子にするために、小川さんは「日常のあらゆるシーンを学びの場にする」ことをすすめています。その代表的なものが “お手伝い” です。料理、洗濯、掃除、買い物……お手伝いには学べることがたくさんあるそう。特に買い物は計算力を高め、料理は段取り力を高めるので、ぜひ積極的に手伝わせましょう。小川さんは「勉強ができる子はたいてい段取り上手」と断言しています。高学年で重要となる “勉強のスケジュール管理” ができるようになるには、家事を手伝いながら段取り習慣を身につけるのがおすすめ。親子の絆も深まります。■勉強したくなる環境をつくる前出の松尾先生は、「『勉強しなさい』と親はひとことも言っていないのに、きちんと勉強する子は一定数いる」と述べており、その親の共通点として、「子どもが勉強するようにうまくリードしていること」を挙げています。具体的には、博物館や科学館に連れて行ったり、普段の親子の会話のなかに、うまく勉強の要素を取り入れたりしているそう。たとえば、子どもが学校で習ってきたことをクイズにするといいでしょう。「難しいけどできるかな?」と子どもの興味ややる気をくすぐり、日常会話のなかに自然に学びの要素を取り入れることで、日々の暮らしと勉強がより密接につながります。***高学年からも積極的に勉強に取り組めるように、幼いうちから「知らないことを知るのは楽しい!」という経験をたくさんさせましょう。どんな小さな子にも、知識欲や学習意欲は備わっています。親のちょっとした声かけや接し方で、子どもの「学びたい気持ち」はぐんぐん育まれますよ。(参考)プレジデントオンライン|「教育熱心な親の子」が4年生で潰れる根本原因東洋経済オンライン|中学受験「高学年で伸び悩む子」の典型パターンプレジデントオンライン|自ら机に向かう子の親が欠かさない習慣STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|「勉強しなさい」といい続けたら将来どうなる!?子どもの才能を摘まないためにーー
2020年10月09日ちょっとしたことですぐに機嫌が悪くなり、怒ったりすねたりするお子さんの対応にお悩みではないですか?もしかしたら、親の何気ない言動や対応の仕方が、お子さんの “困った行動” を引き起こしているかもしれません。今回は、アドラー心理学に基づいた「子どもの問題行動(不適切な行動)」について解説していきましょう。子どもの “困った行動” を解明するアドラー心理学たとえば次のようなケース、子育てをしていたらよくありますよね。下の子のお世話で忙しいときにかぎって、上の子が「見て見て!」「聞いて聞いて!」と話しかけてくる。大した内容ではなさそうなので、軽く聞き流していたらプイッとすねてしまったーー。バタバタしているときに「あれやって」「これやって」と甘えてくるわが子に、「自分でできるでしょ!」「いいかげんにして!」と叱ったら怒って大泣きしてしまったーー。こういった反抗的な態度や行動は、その瞬間の親御さんの言葉に反応しただけだと思っていませんか?しかし多くの場合、「親が叱ったから子どもの機嫌が悪くなった」という単純な話ではなく、叱らなくなったからといってすぐに解決する問題でもないのです。では、なぜ子どもたちは、ちょっとしたことですねたりいじけたりしてしまうのでしょう。そのヒントは、あの有名なアドラー心理学によって解き明かされています。アドラーによると、子どもの問題行動(不適切な行動)は、徐々に段階を踏んでエスカレートしていくそうです。子どもの問題行動がエスカレートする理由みなさんが問題だと感じる子どもの困った行動は、アドラー心理学では「不適切な行動」と表現しています。金沢学院大学人間健康学部スポーツ健康学科の高賢一教授は、「適切な行為をしていても認められない子どもは、なんとか別の方法で注目を集めるような行動を始める。それが、問題行動に代表される不適切な行動である」と説明しています。たとえば、お手伝いをしたり勉強を頑張ったりしても親があまりほめてくれず、不満を抱いている子がいるとします。おそらく親は、「うちの子は手がかからなくて助かるわ」と、わが子がいい子でいることを “当たり前” だと感じているのでしょう。しかし、しだいに子どもは「認められたい」「無視されるくらいなら注意されても叱られてもいい」と思うようになり、問題行動=不適切な行動をとるケースも少なくないというのです。アドラーの不適切な行動5段階■第1段階称賛の欲求まわりの人に称賛されるためによい行ないをする段階。ほめられるための行動なので、思うようにほめてもらえないなど気持ちが満たされずにいると、次の<第2段階>へと進む。■第2段階注目・関心を引くほめられなくてもいい、むしろ叱られてもいいから、自分に注目してほしいと強く願うようになる。親の気を引こうと、突然すねてみせたり、いじけてみせたりするのはこの段階。注目を集めることが目的なので、叱っても叱ってもやめない。■第3段階権力闘争をしかける反抗的な態度や行動によって、力を見せつけて特権的な地位を得ようとする段階。<第2段階>において親が無視したり、頭ごなしに叱りつけたりすることによって、子どもの不適切な行動はよりエスカレートし、権力を握ろうとしてくる。■第4段階復讐をする<第3段階>で権力を手に入れられないとわかると、次は復讐の段階に入る。学生であれば、親への復讐として非行に走ったり不登校になったりするケースも。相手の気を引きたいがための行動が攻撃性を帯びてしまうことで、復讐に発展する。相手から憎まれてでも注目を得ようとするのが特徴的。■第5段階失望させる第1段階~第4段階までの行動で相手が適切な援助を行なわないと、無気力になり自分からも逃げようとする。「すべてがダメならもう何もしない」と極端な思考に陥ってしまい、相手から無能だと思われるための証明をする。このように、子どもの不適切な行動は、第1段階から順番にエスカレートしていきます。段階が上がれば上がるほど修復が困難になるので、「いま子どもはどの段階にいるのか」をしっかりと見極めて対応するように心がけましょう。子どもの困った行動への対処法アドラーの「不適切な行動の5段階」の仕組みが理解できれば、いままで悩んでいた子どもの問題を解決するヒントが見えてくるのではないでしょうか。アドラー心理学では、人間の行動の一番の目的は “所属” だと考えます。つまり、いまいる集団に受け入れられたいと願い、その一員であることを求め、そのために行動するのが人間本来の姿であるということ。小さな子どもにとっては、まさに「家族」こそが自分が所属する唯一の集団であり、親から認められることで「自分は家族のなかで、なくてはならない存在だ」と実感できるのです。「不適切な行動をする子どもへの一番の対処法は、共感すること」。そう話すのは、日本アドラー心理学会/日本個人心理学会正会員の熊野英一さんです。親がしっかり子どもの話を聞いて共感してくれたら、「お父さん・お母さんは、自分のことを本当にわかろうとしてくれているんだ」と子どもは感じ、家庭のなかで居場所が確立していると安心するでしょう。ただし、ひとつ注意すべきなのは「共感=同意」だと勘違いしないこと。共感と同意はまったくの別物であり、子どもの発言すべてに同意することで親が子どもの言いなりになってしまう恐れがあるのです。また、不適切な行動をする子どもに対しては、「あなた」が主語になる「ユーメッセージ」を使って話しかけないことを心がけてください。「どうしてあなたはいつも片づけをしないの!」「なぜあなたはお友だちと仲良くできないの?」では、子どもは一方的に責められていると感じてしまいます。効果的なのは「わたし」が主語になる「アイメッセージ」。「お片づけをしてくれると、お母さんは嬉しいな」というように、 “自分は” こう思う、 “自分は” こうしてくれると嬉しいと伝えることで相手の心を動かします。子どもの不適切な行動は、「認められたい」という思いが根源になっています。まずはお子さんの気持ちに共感し、行動自体を責めるのではなく「こうしてくれると嬉しいな」とメッセージを伝えることで、エスカレートする前に不適切な行動を止められるでしょう。***子どもがすねたり機嫌が悪くなったりするのは、親に叱られた瞬間にスイッチが入るのではなく、その前の段階で「認めてもらえない」「自分に注目してくれない」と不満を感じているからです。日頃から子どもの様子をよく観察することが大事ですね。(参考)金沢星稜大学|アドラー心理学を活かした学校教育相談に関する考察HugKum|どんなときに子どもは困った行動をするの?【アドラー式子育て術「パセージ」に学ぶ対処法】弁護士法人山崎和代法律事務所|不適切な行動の5段階STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|「○○ファースト」がポイント!アドラー心理学で親子間のコミュニケーションがうまくいく
2020年10月05日前回の『生徒への質問までマニュアル化された教育法「ディレクト・インストラクション」の驚くべき効果』では、「エビデンス・ベースド」の考え方を紹介し、データに基づいた科学的な教育マニュアルであれば子どもの成績は上がるということをお伝えしました。なんとなくの思い込みや経験だけでなく、科学的なデータをもとにして教育への提案を行なうこと。それこそが、エビデンス・ベースドに基づいた教育観です。私が運営しているRISUのタブレット教材である「RISU算数」も、この考え方をもとに設計されています。今回は、エビデンス・ベースドの具体例をみなさんにご紹介することにしましょう。算数や勉強に関する驚きのデータで、エビデンス・ベースドの底力がわかるはずです。10億件の学習データから見えてきたことこれからお伝えするデータは、RISU算数を学習した子どもたちの、10億件を超える学習データを分析して導き出されたもの。「ある段階までは算数でいい成績をとっていたのに、あるとき突然、成績が悪くなった子」のデータ分析なども正確に行ない、「なぜ算数でつまずいてしまうのか」ということを定量的に突き詰めました。なぜ、子どもは算数でつまずいてしまうのか――。これを解く鍵は、「ある段階で突然成績が悪くなってしまう子」の成績データにありました。データを見るとそういう子は、何学年も前に学習していたところにつまずきのタネがあったという場合がほとんど。算数のつまずきは、本人さえ気づかないはるか昔に原因があったのです。この事実は、算数の特徴をよく考えれば簡単に理解できるものでした。算数がほかの教科と大きく異なるのは、「さまざまな単元の習得を積み上げなければ、次の単元に進めない」ということです。極端な話かもしれませんが、たし算やひき算が理解できていない子どもに、四則演算をさせようとしてもできないわけです。あるいは、かけ算が理解できていない子どもに、かけ算を用いる円周率の計算はできませんよね。算数はさまざまな単元を少しずつ積み上げて、より難しい範囲に進んでいく、いわば「RPGゲーム」のようなもの。子どもが、ある単元を理解できないときは、その単元を解くために必要な単元の理解ができていない、あるいは忘れてしまった場合がほとんどなのです。学校の算数と算数学習の「悲しい関係」この背景には、学校の算数の授業では普通のことである「とびとびの授業」もあると考えられます。最も顕著なのは、「図形」の範囲。例えば、立体図形を初めて学校で習うのは「箱の形」という単元で、これは2年生に学習します。でも、その後の授業に立体が登場するのは、なんと4年生! 2年もの歳月が経ったあとに、内容がつながっている単元を習うわけです。4年生で再度図形の学習をする前に、しっかりと学校で2年生の復習をしてくれればいいのですが、残念ながら忙しい学校カリキュラムでは、そううまくいきません。また、自宅学習で2年前の復習をしている子も珍しい。したがって多くの子が、2年前の授業の内容を忘れたまま、4年生でもう一度、図形の範囲に入るのです。これでは、4年生の内容がわからなくなるのも当然ですよね。このように、算数の苦手の原因が昔の学習にあることは考えてみれば当然です。 しかし、データ分析をすることで、あらためてはっと気づかされたのでした。算数の “苦手” は、たった3種類に分類できるさて、ここからが今日のメインテーマです。算数がRPGゲームのような積み上げ型の教科であることはよくわかっていただけたと思います。これは別の言い方をすれば、「算数は単元ごとのつながりが重要な教科」だということ。単元ごとのつながりを意識することが、算数を効率よく勉強するための近道なのです。そして、そのつながりが「たった3つ」に分類できることを、RISUは発見しました。10億件の学習データを分析した結果、そのつながりの姿がはっきりと見えたのです。その3種類とは、「位」「単位」「図形」の3つ。拍子抜けした人もいるでしょう。そうなのです。この3つ、算数を学習するにあたってはあまりに基本的な単元すぎて、多くの方がそこまで重要だと思わない単元。しかし、この3つの単元がメインストーリーとなって、算数というRPGは構成されています。つまり、3つの基本さえしっかり押さえておけば、算数でつまずくこともないですし、もしつまずいてしまっても、その3つをよく復習することでつまずきの原因を知ることができるのです。そして、算数の苦手もこの3種類に分類できる! 「その3つなら、正しく理解できて当然だろう」と思う大人は多いでしょう。しかし、データはそうは言いません。実際の教育現場や家庭学習の様子をのぞいてみると、この3分類が原因となって算数が苦手になるお子さんが非常に多いのです。ここがエビデンス・ベースドの強み。学習についての先入観を取り払ってくれるのです。具体的なデータとして、以下のランキングを見てください。多くの子どもがつまずきやすい単元や問題例を調べてみたところ、次のような順位が得られたのです。【子どもがつまずきやすい単元・範囲ランキング】ワースト12~3桁の位の理解:「位」ワースト2図形の組み立て・立体の基礎:「図形」ワースト3単位、メモリの読み方:「単位」ワースト4文章題ワースト5円と半径・直径の理解:「図形」子どもがつまずきやすい単元・問題例のワースト5位のうち、ワースト4位の「文章題」を除けば、すべて先ほど書いた「位」「単位」「図形」に関係するのがおわかりいただけるはずです。だんだんと、エビデンス・ベースドの考え方の特長が理解いただけているのではないでしょうか。詳しく知りたい方は、こどもまなび☆ラボのインタビュー記事をチェックしてみてくださいね。「ワースト2:図形の組み立て・立体の基礎」と「ワースト5:円と半径・直径の理解」については、『10億件のデータを調べてわかった、小学生が「ずば抜けて苦手」な算数の単元と例題』で実際の問題を使って説明しています。また「ワースト4:文章題」については『「算数の文章題が苦手」な子どもが、ひねった応用問題でも解けるようになる教育法』をご覧ください。拙著では、このワースト5位の範囲のそれぞれについて、かなり詳しく苦手の克服法を記載していますので、そちらもぜひ。もし、お子さんが算数のどこかの範囲でつまずいていたら、この3つのどこかにその原因が求められるはずです。逆に、算数の復習をするときは、この3つの範囲を重点的に見直せば効率よく復習ができるとも言えますよね。エビデンス・ベースドの考え方を用いれば、効果的・効率的に学習が進められるのです。次回も、エビデンス・ベースドに基づいた効果的な学習法について見ていきたいと思います。『10億件の学習データが教える 理系が得意な子の育て方』今木智隆 著/文響社(2019)■ 算数塾「RISU」代表・今木智隆先生 インタビュー記事一覧第1回:子どもを「算数嫌い」にしない大原則。幼児期からできる“算数好きの基礎”の築き方第2回:子どもが勉強で成果を出せないのは、親の「勘違い」が原因かもしれない第3回:10億件のデータを調べてわかった、小学生が「ずば抜けて苦手」な算数の単元と例題第4回:「算数の文章題が苦手」な子どもが、ひねった応用問題でも解けるようになる教育法
2020年10月02日毎日一緒にいると永遠のように感じる「子どもと過ごす時間」。しかし実際には、長い人生のなかで子どもと一緒に過ごせる時間はとても短く、多くの親たちが「子どもが小さいうちにもっといっぱい遊んであげればよかった」「もっといろいろな場所に連れて行ってあげればよかった」と後悔するといいます。今回は、「子どもと一緒に過ごせる時間」について考えていきましょう。わが子と一緒に過ごせる時間は驚くほど短い!子育てをしていると、「子どもはかわいいけど、一緒にいると疲れるときもある」「たまには、ひとりの時間が欲しい……」と考えることもありますよね。親子で過ごす時間はかけがえのない思い出になるとわかってはいても、同じように過ごす日々があと何年も残されていると思うと、 “いま、この瞬間” の大切さにはなかなか気づけないものです。「まだまだたくさんある」と思い込んでいる “子どもと一緒に過ごす時間” ですが、具体的にはあとどれくらい残されているのか、真剣に考えたことはありますか?生まれたばかりの赤ちゃんが大学進学のタイミングで実家を出て行くと仮定すると、約18年間、親子は一緒に過ごすことになるでしょう。しかし実際には、小学校、中学校、高校と成長するほどに家にいる時間は減り、休日も親と過ごすよりは友だちと遊びに出かける頻度が増えてきます。そう考えると、実質的に親子で一緒にいられる時間は、もっとずっと短いはず……。調べると、衝撃的な数字が出てきました。母親:約7年6ヶ月父親:約3年4ヶ月これは以前、バラエティー番組『チコちゃんに叱られる』(NHK総合テレビジョン)で紹介された「わが子と生涯で一緒に過ごす時間」です。みなさんの想像をはるかに超える短さなのではないでしょうか。父親にいたっては、母親の約半分という結果に。この数字について、さらに詳しく説明していきましょう。親子が一緒に過ごせる時間、小学校卒業時にはすでに半分経過「わが子と生涯で一緒に過ごす時間」について、番組では関西大学社会学部教授の保田時男先生が詳しく解説しています。先ほどお伝えしたように、母親が生涯わが子と一緒に過ごせる時間は約7年6ヶ月(約65,700時間)、父親は約3年4ヶ月(約29,200時間)。具体的には、どの時期に、どれくらいの時間を一緒に過ごすことができるのかも導き出しています。まず、わが子と一緒に過ごせる時間の全体を100%とします。子どもの成長に沿って見ていくと、幼稚園入園時には18%が過ぎ、幼稚園卒園時には32%、小学校卒業時は55%……と経過し、高校卒業で親元を離れるころには、なんと73%も過ぎ去ってしまうそう。小学校を卒業する時点で、一生のうちに子どもと一緒に過ごせる時間の半分以上も過ぎているなんて、と驚きを隠せません。この結果を目の当たりにすると、いま一緒にいるわが子との時間は、決して永遠ではないことがわかるのではないでしょうか。だからといって、無理にいろいろな場所へ連れて行ったり、特別な経験をさせてあげなきゃ、と考えたりする必要はありません。また、共働きで忙しく、なかなか時間がつくれなくても問題はないので安心してください。青山渋谷メディカルクリニック名誉院長の鍋田恭孝先生は、「一緒にいる時間が少なくなくても、子どもに『申し訳ない』という気持ちをもつ必要はない」と述べています。共働き家庭が増えているいま、子どもと接する時間が十分に持てていないのではないかと不安になり、子どもに対して「申し訳ない」という気持ちをもっている親が増えています。でも、たとえひとり親の家庭であっても、子どもとしっかり接する時間を1日に3時間も持てれば、母親が専業主婦だという家庭と比較してもなんら変わらず子どもはしっかり育っていくという研究報告もあります。(引用元:STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|子どもを見えなくさせる「期待と不安」というフィルター。親子は一心同体?)たとえば朝、少し早めに起きればバタバタせずに余裕をもって親子のコミュニケーションを図ることができます。ゆっくり朝食を食べながら学校の話やお友だちの話を聞くことも、親子のかけがえのない時間です。また夕食後も、家族がそれぞれの部屋にこもるのではなく、たまには一緒にテレビを観たりゲームをしたりすると、会話も弾んで楽しく過ごすことができるでしょう。「『申し訳ない』という気持ちをもって子に接するのではなく、限られた3時間を『大切な宝物』だと考えて、楽しい時間にしてあげてください」という鍋田先生のアドバイスを忘れないようにしたいですね。一緒に過ごす貴重な時間には積極的なスキンシップを「子どもと一緒に過ごす」と言っても、ただ同じ場所に “いるだけ” では、親の愛情が子どもに伝わりにくいこともあります。日本人は愛情をストレートに表現するのが苦手であると言われますが、親子間では積極的に愛情表現をしていきたいものです。親からの愛情をたっぷりと受け止めている子は、社会性や自立心が育まれます。「子どもにベタベタしすぎると、わがままになって親離れしなくなるのでは?」と心配する声も聞かれますが、実際には、親からの愛情を確信している子どもは、自己肯定感が高まり、何事にも自信をもって取り組むことができるようになるのです。また、親子のスキンシップから「オキシトシン」というホルモンが分泌されることにより、心が満たされて自尊心や人への信頼感が増す効果も期待できます。子どもを抱きしめることは、子どもの心の成長にも確実によい影響を及ぼすというわけです。でも慣れていないと、言葉で愛情を伝えたりハグしたりするのは気恥ずかしいものです。桜美林大学リベラルアーツ学群教授の山口創先生によると、「子どもとの遊びのなかに取り入れると楽しく触れ合うことができる」とのこと。こちょこちょくすぐり合う、「ずいずいずっころばし」のような手遊び歌で楽しむ、など自然にスキンシップできる遊びはたくさんあります。みなさんがやりやすい方法で、お子さまとの触れ合いの時間を楽しんでみましょう。では、自分の親と過ごせる残り時間は?番組では、「親と一緒に過ごせる残り時間」についても言及していました。つまり、自分の親と顔を合わせて過ごせる時間があとどれくらい残っているか、ということ。保田先生は、次のように解説しています。親と離れて暮らしている人の場合、1年のうちお盆に3日、お正月に3日など、親と会う平均日数を6日と設定します。しかし、実家に帰っても、丸一日一緒に過ごすケースはあまりありません。総務省統計局の社会生活基本調査によると、実家の親と顔を合わせるのは1日平均4時間程度とのこと。6日間×4時間=24時間。つまり、1年間で親と過ごす時間は24時間、1日分です。家族間の親密度や住んでいる場所の距離にもよりますが、大人になり日々の生活や仕事に追われていると、つい自分の親と過ごす時間を後回しにしてしまいがちです。しかし、自分の子どもと過ごす時間同様、自分の親と一緒に過ごす時間も無限にあるわけではありません。むしろ、親と過ごす時間のほうが、残りわずかでもあるのです。あとになって後悔しないように、会えるときには会って、会えないときには声だけでも聞かせてあげたいですね。きっと、私たちがわが子に対して抱いている愛情と同じくらい、親も私たちのことを思ってくれているはずです。***「自分と子ども」「自分と親」、どちらも一緒に過ごせる時間には限りがあります。「いつでも言えるし、まだいいや」と後回しにせずに愛情を伝えていきたいですね。(参考)あんふぁんWeb|「一生のうちに子どもと過ごせる時間」は?衝撃的な数字に驚きと決意!税理士法人 金森事務所|「あなたは自分の親や子どもと、あとどれくらい一緒に過ごせると思いますか?」STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|子どもを見えなくさせる「期待と不安」というフィルター。親子は一心同体?STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|「大好きだよ!」で子どもは育つ。“愛されている自覚”が自己肯定感を高め、勉強姿勢までも変えるSTUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|「ハグ」で学力が上がります。幸せホルモン「オキシトシン」の効果がスゴかったPHPのびのび子育て 2020年8月特別増刊号,PHP研究所.
2020年09月29日言われたことはきちんとやるのに、自分で考えて行動するのは苦手――。近年、このようなタイプの子が増えてきているといいます。その原因はどこにあるのでしょうか?今回は、これからの社会で最も重視される「考える力」の伸ばし方について解説していきます。マニュアル通りにしか動けない日本の若者たちみなさんはこれまで、お子さんの学習方法や勉強への取り組み方について「本当にこのままでいいのかな?」と疑問を抱いたことはありますか?もしみなさんが、「わが子が将来苦労しないように」とよい成績をとらせることを目標にしているのなら、少し立ち止まってみる必要がありそうです。精神科医の泉谷閑示先生は、「現代の若者の多くは、マニュアルはパーフェクトに覚えられるのに、マニュアルに書かれていないことはできない。いわゆる『自分で考える力』のない若者が増加している」と警鐘を鳴らしています。また同様に、「日本の学生は、言われたことをするのはうまいけれど自分で考えるのは苦手」と話すのは、子どもの考える力教育推進委員会代表を務める狩野みきさんです。20年以上にわたって大学などで考える力・伝える力を教えてきた狩野さんは、「長年日本では、子どもたちは “正しい” 答えを受け入れるだけで、それを疑う機会すらほとんど与えられていない」と指摘します。記憶力や計算力が高ければ、たしかにテストでは高得点を取ることは可能です。しかし、社会に出てから本当に役に立つのは、むしろマニュアルでは対処できない問題を解決する能力。そのためにも、「自分で考える力」を身につけることは必須なのです。「自分で考える力」が育たない要因は、日本の学校教育の在り方や現代の社会の仕組みなどが考えられます。詳しく見ていきましょう。「考える力」が弱い原因は教育にあり!?現代の若者の思考力が低下している要因として、泉谷先生は「記憶力やパターン思考に長けた者が高得点を得るような試験制度の存在」を挙げています。「自分で考える」ことのできるような自然な在り方の人間が、現代の社会において不当に低く評価されてしまったり、従順でないために厄介な人間と見なされて排除されてしまったりする風潮があることは、私たちの社会の大きな問題です。オリジナリティの点でどうしても日本が精彩を欠いてしまうのも、このような風潮によるところが大きいのではないかと思われてならないのです。(引用元:ダイヤモンドオンライン|マニュアルがないと何もできないーー「自分で考える」力のない人々)つまり、これまで長いあいだ私たちは「頭がいい」=「記憶力がいい」「パターン化された思考ができる」ことだと刷り込まれているため、「考える力」の重要性を軽視してきたわけです。「考える力」が育まれないまま成長すると、どのような大人になるのでしょうか。筑波大学附属小学校前副校長の田中博史先生は、「子どもたちは小さくても『自分で考えたい』生き物である」ことを前提としたうえで、「自分で考える前に先に決められてしまう生活を繰り返していると、自分で決めないですぐにほかの誰かを頼るようになる」と話します。考えることができないから、アイデアが浮かばず、決断することもできないーー。これでは「その人らしい」人生を歩むことは難しいでしょう。わが子には自分の力で人生を切り開いてほしいと願うのなら、たくさんの習い事をさせるよりも「考える力」が身につく訓練をしてあげるべきです。子どもが考えることをやめてしまう親のNG行為子どもの「考える力」を奪ってしまう親のNG行為として、次のような言動には注意しましょう。■正解を与える悩んでいるわが子を見ると、つい手を差し伸べたくなるもの。そこですんなりと答えを教えてしまうと、子どもは「わからない」と言えば大人が正解を教えてくれると思うようになり、考えることをやめてしまいます。■イライラして急かすなかなか答えにたどり着けない子どもに対して、「まだできないの?」と急かすのはやめましょう。急かされた子どもは焦ってしまい、じっくり考えられなくなります。狩野さんは、「イライラしそうになったら、『いまは、この子の考える力の熟成期間』と思うようにするといい」とアドバイスしています。■子どもの「どうして?」攻撃から逃げる知的好奇心が旺盛な子ほど、親に何度も「どうして?」とたずねてきます。きちんと向き合いたくても、頻繁に聞かれるとつい「いま忙しいの!」「あとでね」と適当に流してしまうことも。前出の田中先生は、「必ずしも大人がすべて説明しなければならないわけではない」と述べています。それよりも、「一緒に考えようか」と向き合うことが大事です。また、「そんなこと、お母さんも考えたことなかったよ!すごいね!」とほめてあげることで、子どもは自分の「考える力」に自信をもつようになります。子どもの「考える力」を伸ばすために親ができること子どもの「考える力」を伸ばすためには、どのようなことを心がければいいのでしょうか。いくつか提案するのでぜひ参考にしてください。■「なぜ?」とたずねて論理的思考を探求させる「なぜそう思ったの?」「どうしてこれを選んだの?」と聞くことで、考えるきっかけが生まれます。教育評論家の石田勝紀さんによると、「人間は『なぜそうなの?』『なぜだと思う?』『どうしてこうなんだろうね?』と問われると考えるようになる」のだそう。たとえば、「今日着ている服はどこで買ったの?」と聞かれれば「○○にある△△というお店です」と、ただ事実だけを述べればいいので “考える” 必要はありません。しかし、「どうしてこの服を選んだの?」と聞かれると、「どうしてだったかな?」と考え始めるでしょう。これが “考える” ということです。普段からこのように「なぜ?」「どうして?」と問いかけるようにすると、子どもの考える力はぐんぐん伸びていきます。■親が手本となって「考える姿」を見せる前出の狩野みきさんは、「わが子に『考える人』になってほしいのであれば、親が考えるという行為を “当たり前の習慣” として見せあげるべき」と話します。つまり、親がお手本となって「考える姿」を見せてあげるのです。狩野さんによると、「考えるという行為はクセのようなもの」であり、「普段から考えるクセをつけておくからこそ、いざという難関にぶつかったときにじっくりと考えて納得のいく答えが出せる」のだそう。子どもは親の普段の言動を見て、自然と「習慣」を身につけていきます。子どもが考える力を習得するためには、お母さん・お父さんが普段から「なんでかな?」とつぶやき、考えることが習慣化しているのが理想的なのです。■ドリルを活用して考える力を養う「自分で考える力」をつけさせたいけど、「考え方」を学ぶのになにかいい方法はないかな?とお悩みなら、『ハーバード・スタンフォード流 子どもの「自分で考える力」を引き出す練習帳』(PHP研究所)がおすすめです。この本は、小学生対象の「考える力+伝える力」クラスで狩野さんが長年やってきたことを【クイズ+解説】という形で一冊にまとめたもの。質問内容はとってもユニークなものばかりです。「ある朝、目が覚めたら、お母さんと体が入れかわっちゃった!何をする?」「子どもが学校でぜったいにやらないことを5つ、あげてみて」など、想像力を働かせて自由な発想で思考力を鍛える質問はもちろん、『3びきの子ブタ』を読んで、「オオカミはこのあとどうなった?」「本当にオオカミは悪いのかな?」と、違う視点で物語を読み解く方法も学べます。小学4年生がひとりでも解くことができるようにとつくられたこの練習帳。楽しみながら読み進めることができるので、読み終わる頃には「自分で考える力」がしっかりと身についているはずです。ふりがなは振ってありますが、まだひとりで読み進めることが難しいようであれば、親子で一緒に考えてみても◎。『ハーバード・スタンフォード流 子どもの「自分で考える力」を引き出す練習帳』狩野みき 著/PHP研究所(2020)***インターネットが発達した便利な世の中では、疑問は簡単に解決してしまいます。そのため、深く考えて試行錯誤する習慣がなかなか身につかないのかもしれません。しかし、普段の親子の会話から子どもの「考える力」を鍛えることは十分可能です。みなさんもぜひ試してみてください。(参考)ダイヤモンドオンライン|マニュアルがないと何もできないーー「自分で考える」力のない人々YouTube|狩野みき自分で考えようマネー現代|わが子の「考える力」を奪う親たち、その意外過ぎる共通点THINK-AID|「考える子ども」を育てるために、親ができること東洋経済オンライン|「考える力がない子」を変える3つの問いかけSTUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|“考える力”を伸ばす、子どもの「どうして?」と親の「どうして?」狩野みき(2020),『ハーバード・スタンフォード流 子どもの「自分で考える力」を引き出す練習帳』, PHP研究所.
2020年09月26日