シェアしたくなる法律相談所がお届けする新着記事一覧 (15/28)
*画像はイメージです:満員電車での痴漢は毎日のように起こっていて、いまだに容疑者がレール上を走って逃げる事件が後を経ちません。ほかにも色々な場所で痴漢犯罪は行われており、中には酔いつぶれて駅のホームで寝ている女性を介抱するフリして痴漢行為を働く者もいるほどです。一方で、最近は痴漢も他人が疑われるよう、巧みに手を伸ばして痴漢行為を働き他人に罪をなすりつけたり、中には女性が男と組んで痴漢をでっちあげて恐喝する事件も報道されています。 ■冤罪の汚名を苦に自殺を図った場合、遺族の損害賠償請求は認められる?痴漢犯罪は、通常「迷惑防止条例」が適用され罰金刑となりますが、悪質な場合は刑法の強制わいせつ罪が適用され、最悪の場合は懲役です。仮に冤罪で逮捕され、精神的に追い詰められた人が「冤罪だ」という遺書を残して自殺した場合、家族は無罪を信じて損害賠償を起こすことができるのでしょうか?自身でも痴漢事件の弁護を担当された経験のある水田法律事務所・河野 晃弁護士に伺ってみました。「一概に可能とは言い難いです。痴漢の被疑者となって逮捕勾留されたとしても、被害者がその被疑者を真犯人であると信じて被害申告したのであれば、『虚偽の被害申告をした』という意味で故意はなく、また、過失を問うための材料にも乏しいケースがほとんどであると思われるからです」そうなのです。たとえ冤罪だと言い張っても、被害者が痴漢に遭った、そしてその人が真犯人だと確信するそれなりの理由があるわけです。そして、有罪が確定されている場合、損害賠償を起こすとしても、冤罪だという遺言だけで請求が認められるわけではないそうです。河野弁護士によると、「請求が認められるとしたら、被害者とされていた女性が、虚偽の被害申告をしたことが後に明らかになったケースでしょうね。例えば示談金目的で、されてもいない痴漢をでっち上げたことが判明したケースであれば損害賠償が認められるでしょうね」とのことです。 ■物理的に痴漢行為に無理がある、証言があやふやな場合は取り調べ段階から冤罪を主張ちなみに、河野弁護士が担当されたケースではどうだったのでしょうか?「私は、残念ながら、痴漢事件で無罪を争ったことはありません。ただ、痴漢事件が特別なわけではありません。他の事件同様、無罪を争うケースを担当することがあるかもしれませんね。もし、痴漢冤罪被害に巻き込まれた場合は、弁護士のアドバイスを受けるまでは迂闊にしゃべらないということを心掛けると良いと思います。独自の判断で事実に反する自白をするなど、もってのほかです」痴漢犯罪で逮捕されると、悪質でなければ先に述べたように迷惑防止条例違反で略式裁判となり罰金を科されるケースが多いそうですが、絶対にやっていないと本人が主張する場合は法廷での裁判となります。冤罪被害にあった場合は、最終的には法廷で白黒つけるよりほかありません。卑劣な痴漢犯罪は残念ながら多くの女性が体験しており、犯人の逮捕には痴漢犯罪が多い満員電車などで鉄道警察をはじめ多くの関係者が地道な努力をしています。しかし、中には先に述べたケースのように、巧妙に嵌められてしまう場合もあるのです。その場合、自分がやっていないのが確かであれば、それを主張するしかありません。それと力になってくれる信頼のある弁護士に弁護を依頼して、最初から冤罪を主張していくこと。そして女性の近くでは怪しまれる行動を控えること。痴漢行為はもちろん男として最低のことですので、絶対にしないことです。 *取材協力弁護士:河野晃 (水田法律事務所。兵庫県姫路市にて活動をしており、弁護士生活7年目を迎える。敷居の低い気軽に相談できる弁護士を目指している。)*取材・文:梅田勝司(千葉県出身。10年以上に渡った業界新聞、男性誌の編集を経て独立。以後、フリーのライター・編集者として活躍中。コンテンツ全般、IT系、社会情勢など、興味の赴く対象ならなんでも本の作成、ライティングを行う。Twitterアカウントはこちら)【画像】イメージです*Andrey_Popov / Shutterstock
2017年08月20日7月31日、Twitterに「安倍総理逮捕」と書かれたデマ新聞記事画像が『産経新聞社』の「PDF号外」を装いアップロードされる事案が発生。産経新聞社は「極めて悪質」と遺憾の意を表明しており、法的措置も検討しているようです。事案は今のところ進展を見せていませんが、今後、投稿主はどのような罪に問われることが予想されるのでしょうか?法律事務所アルシエンの清水陽平弁護士にご意見を伺いました。Q.安倍総理の「ニセ新聞記事」事件、投稿主はどのような罪に問われる?*画像はイメージです:名誉毀損罪、威力業務妨害罪が成立する可能性があります。「記事の内容が“安倍総理逮捕”といったものであるため、単純に考えると安倍首相が刑法に抵触する違法行為をした疑いがあるということで逮捕されたと認識されることになるため、安倍首相との関係でその社会的評価を低下させることになります。そのため、安倍首相に対する名誉毀損罪となる可能性があります。ただし、名誉毀損罪は親告罪であるため、安倍首相が告訴しなければ、実際上は捜査もされないと思われます。偽の号外を出された産経新聞としては、それが偽なのかどうかは一見して明らかとまではいえないと思われることから、デマを報じていると認識されることになります。そうすると、産経新聞に対しては抗議や確認の連絡が多数された可能性もあります。このような問い合わせに対する対応が必要になったという点で、業務が妨害されているということができます。したがって、偽計業務妨害罪が成立する余地があります。また、報道機関としての存在意義を否定されるなど、報道機関としての正当性に疑問を持たれてしまう可能性がある点で、産経新聞の社会的評価も低下していると言い得ます。したがって、名誉毀損罪が成立すると見ることができます」(清水弁護士) 今回の事案は名誉毀損罪、威力業務妨害罪などが成立する可能性があるとのこと。公人・私人問わず人の名誉を傷つけるような投稿は、止めるようにしましょう。また、仮に自分がデマ被害に遭っているという場合は、名誉毀損罪や威力業務妨害罪で訴えることができるかもしれません。弁護士に相談をしてみましょう。 *取材協力弁護士:弁護士 清水陽平(法律事務所アルシエン。インターネット上でされる誹謗中傷への対策、炎上対策のほか、名誉・プライバシー関連訴訟などに対応。)*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)【画像】イメージです*Graphs / PIXTA(ピクスタ)
2017年08月19日*画像はイメージです:美人局(つつもたせ)はかなり古くから存在するトラブルですが、現在でも基本的な構造は変わらぬまま存在し、相談件数は増加しているように思います。その原因は、出会い系サイトなど、異性に容易に出会う場が増えたことによるものと思われます。今回は美人局被害に遭わないためにするべきことや、被害に遭ってしまったらするべきことをご紹介いたします。 ■美人局とは?まず、美人局についてお話します。美人局とは、一般的には異性と性的な関係を持った後に、当該異性の恋人や配偶者と名乗る人物から慰謝料などの名目のお金を騙し、または、脅し取られることをいいます。実際に、出会い系サイトで出会った異性とホテルへ行ったら、ホテルを出たタイミングで恋人や配偶者を名乗る人物から声を掛けられ、その場で身分証明書を取られたり、ATMまで同行されてお金を支払わされたりというご相談が後を絶ちません。出会い系サイトで出会った相手であることから、相手の情報も分からず、金銭を要求してきた人物が本当に恋人や配偶者なのかも分らぬまま、逃げたい一心でお金を払ってしまう、そういった被害の相談を多くお受けします。 ■被害に遭わないためにはどうすればいい?被害に遭わないようにするためには出会い系サイトを使わないのが一番でしょうが、そうは言っても現代において、異性と出会う場の1つとして受け入れられ始めていますし、便利なサイトであることは否定できません。どうしても出会い系サイトを使いたい、ということであれば、せめて「割り切り」といった援助交際やすぐに性的関係に持ち込めそうないわゆる「おいしい」相手を避けるということが挙げられるかと思います。そもそも援助交際は売春防止法に抵触する違法行為ですし、相手の年齢によっては各都道府県の条例や児童福祉法などに抵触する可能性すらあります。また、出会い系サイトで知り合った相手と会う場合には、人が多くいる場所で会う、まずはお茶だけにして話をする、連絡先をしっかり交換するといった、相手の素性を可能な限り把握するという方法が挙げられます。リスクは分かるが、どうしても好奇心に負けてしまう……という人は、ご自分の氏名や住所、勤務先などが分かるものは一切携帯しないで行くという方法になるでしょうか。実際に、恋人や配偶者を名乗る人物がアクセスしてきた時には、すぐに警察を呼ぶ、スマホで調べた法律事務所にとにかく電話をかけるなどして助けを求める、という方法のほか、そのような暇のない時には、意地でもその場では合意書を書かない、身分証明書を渡さない、お金を渡さないという方法になるかと思います。 ■被害に遭ってしまったらどうすれば被害を最小限にできる?相手の素性が分かれば、支払ってしまったお金の取り戻しやこれ以上の支払を拒絶する方法により、被害の回復又は被害を最小限に食い止めることも可能かと思います。もっとも、既に書いた通り、出会い系サイトで知り合った相手となると、当該サイト内でのIDやアカウント名しか分からないといったことも珍しくなく、この場合には、相手方を特定することすら出来ずに終わってしまいます(大抵、相手方はお金を取った後には、アカウントを削除しています。)。そのため、いかに相手の素性に繋がる情報を確保するかが、対策としては重要になります。最悪、電話番号が分かれば、弁護士会を通じた調査によって契約者の情報(氏名や契約当時の住所など)を取得し、どこの誰であるか特定することが可能です。また、戸籍を調べれば、当該相手方に配偶者がいるのか否かを判断することも可能であり、お金の返還請求をする時に必要な理屈及び証拠として利用することもできます。以上からすると、最低でも相手の「電話番号」くらいは把握しておくほうが無難かもしれません。当職が経験したケースでは、相手方がホテルでの様子をビデオカメラで撮影した上で、依頼者の自宅まで尾行し、当該動画を用いて恐喝行為に及んできたケースもありました(当該相手方らは逮捕されました)。レアなケースではありますが、刑事事件に巻き込まれる可能性もあるわけです。十分ご注意願いたいと思います。 *著者 弁護士:若井 亮(不動法律事務所。「迅速対応」「分かりやすい説明」「徹底した報告」をモットーとしている。不当要求への対応、詐欺被害への対応を多く経験している)【画像】イメージです*MJTH / Shutterstock
2017年08月18日*画像はイメージです:お盆が終わりに近づき、夏のレジャーも一段落といったところでしょうか。今年も楽しく安全に夏のレジャーを満喫された方が大半だとは思いますが、今年の夏はレジャー施設のアトラクションに関する事故のニュースが多かったように感じます。そこで、今回は、もしアトラクションの利用者等が事故に遭ったときは誰がどのような責任を負うかについて解説します。また、「事故により負傷・死亡した場合でも施設運営者は一切の責任を負いません」等の(免責を伴う)同意書にサインした場合は責任追及が不可能となってしまうのかという問題についても併せて述べたいと思います。 ■事故が発生したら過失のある人に責任追及を行うことができるアトラクションの事故原因には整備不良や点検不足、耐用年数を超えた部品の使用等様々なものがありますが、何らかの人為的ミスの場合には、そのミスをした人に過失(事故の結果を回避する義務違反)があると考えられます。また、整備や点検作業には問題がないが、使われている部品に不備があった場合にはメーカーに過失が認められることもあります。今年の夏、バンジージャンプの命綱が切れて男性が負傷するという事故がありましたのでこれを例にすると、この事故の場合、報道によれば約3ヶ月前に専門業者がワイヤを点検した際には異常がなく、また、施設職員も開園前後に命綱の強度を確かめており、確実な原因は不明とのことです。各点検作業がマニュアル等に沿った確実なものであったかや、ワイヤや金具の耐用年数等に問題はなかったかなどがポイントとなり、各点検作業に問題がなかった場合には部品製造業者の過失を考えることになるでしょう。なお、このような事故の場合、過失の有無で判断するという点は、民事責任も刑事責任も違いはありません。また、過失の特定は非常に困難な場合も少なくないのですが、ほとんどの場合レジャー施設は施設管理者賠償責任保険などの保険に入っていますので、一定の調査が終わり次第、訴訟提起をしなくとも保険金によって治療費等の損害が賠償されることがあります。ただし、利用者が係員の指導に従わずに危険な遊び方をしていたり、身長・年齢制限等に反して利用していたりした場合には、利用者にも過失があるとして過失相殺がされることがあります。 ■免責同意書にサインしていても損害賠償を求めることは可能アトラクションの中でもバンジージャンプ等のとくに危険なものについては、「事故により負傷・死亡した場合でも施設運営者は一切の責任を負いません」旨の条項が入った(免責を伴う)同意書に署名を求められることがあります。しかし、利用者が死傷した場合に事業者側の責任をすべて免責する条項は消費者契約法や公序良俗に反するものですので、施設運営者は過失がある限り損害賠償義務を負います。ただし、過失相殺があり得ることは上記のとおりですし、たとえば「施設運営者の判断によって利用を中止した場合には料金を返金しません」などの同意書記載の他の条項については有効ですので、免責部分が無効であるからといって同意書の全体が無効になるわけではないことには注意してください。危険なアトラクションであってもレジャーである以上は安全が保障されなければなりませんので、危険なものであればあるほど施設運営者側は高度の注意を払って安全に務める必要があるといえるでしょう。他方、そのようなことはないとは思いますが、利用者の皆様はスリルを求めるあまり危険な利用方法をすることなく、係員の方の指示に従ってくださいね。 *著者:弁護士 木川雅博 (星野・長塚・木川法律事務所(旧星野法律事務所)。通信会社法務・安全衛生部門勤務を経て、星野法律事務所に所属。破産・再生・債務整理を得意とする。趣味は料理、ランニング)【画像】イメージです*じゃぁきぃ / PIXTA(ピクスタ)
2017年08月17日*画像はイメージです:年7月30日、福岡県警察南署に勤務する警部補が、セカンドバッグ内に乾燥大麻を所持していたとして、逮捕されていたことが判明しました。警察官は国家権力を持っているだけに、品行方正であることが求められます。ほとんどの警察官は真面目に日々善良な市民の安全を守るため、その職務を全うしてくれていることでしょう。その一方で今回のような不祥事も発生していますが、警察官による大麻所持事件が起きた場合、一般人より罪は重くなるのでしょうか?法律事務所あすかの冨本和男弁護士にお伺いしました。 ■警察官の大麻所持は一般人より罪が重くなる?「重くなる場合があります。警察官は、個人の生命・身体・財産の保護、犯罪の予防、公安の維持等を忠実に遂行することを任務としています(警察官職務執行法第1条)。犯罪の予防を職務とする警察官が犯罪を行った場合、警察の信用は失墜し社会に与える影響は深刻重大です。そこで、社会に与えた悪影響を払拭し、警察官が犯罪に手を染めないようにという意味で重く処罰される可能性があります。社会に与える影響は深刻・重大ですし、薬物犯罪の問題点について熟知している警察官による犯行は一般人が行った場合よりもより非難されるべきと考えられ責任が重いからです」(冨本弁護士)やはり一般と比較すると薬物犯罪に熟知している警察官が大麻を所持していた場合は、罪が重くなるのですね。 ■大麻は「使用のみ」では犯罪にならない?大麻取締法については、「使用しても罪にはならず、所持が違法になる」という不思議な法律という認識があります。仮にそのようなことがあった場合、罪に問われないのでしょうか?再度法律事務所あすかの冨本和男弁護士に、お伺いしてみると……。「大麻取締法は、第3条1項で“大麻取扱者でなければ大麻を所持し、栽培し、譲り受け、譲り渡し、または研究のため使用してはならない。”と規定し、第24条の3の第1項で“大麻を使用した者”を5年以下の懲役で処罰すると規定しています。“使用”が無罪というわけではりません。大麻の吸食行為を直接処罰する規定がないだけです。吸食には通常所持を伴いますので大麻の所持罪で処罰されることになります」(冨本弁護士)やはり吸食行為を直接する処罰規定がないだけ、ということなのですね。実際問題吸うためには所持せねばなりませんから、「吸引したけれど所持していない」という主張は成り立ちません。薬物は身を滅ぼします。絶対に使用しないようにしましょう。 *取材協力弁護士:冨本和男(法律事務所あすか。企業法務、債務整理、刑事弁護を主に扱っている。親身かつ熱意にあふれた刑事弁護活動がモットー。)*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)【画像】イメージです*Scanrail / PIXTA(ピクスタ)
2017年08月16日*画像はイメージです:月11日、京セラドーム大阪で練習中のオリックス・バファローズ中島宏之選手に鉄パイプが落下。右腰から背中に当たるという事故が発生しました。幸い、中島選手は命に別状なく軽症でしたが、一歩間違えれば大事故だっただけに、衝撃が広がりました。ちなみに、原因は広告を取り付ける作業をしていた作業員が誤って落としてしまったためだったそうです。このようなケースでは死亡事故も発生しており、社会問題化しつつあります。仮に作業員の過失で人を死傷させてしまった場合、「誰が、どのように」責任を取ることになるのでしょうか?ともえ法律事務所の寺林智栄弁護士に見解をお伺いしました。 ■責任は誰がとる?「最近増えている工事現場の落下事故。落ちてくるのは鉄パイプや工具など、当たれば命に関わるものばかりです。落下させたことについて、誰がどのような責任を問うのか考えてみたいと思います。落下によりけがをした人、被害者が亡くなった場合にはその遺族は、もちろん実際に落下させた人に過失があれば、損害賠償を請求できます。治療費や慰謝料等々が含まれます。ただ、落下させた本人は莫大な賠償金を支払えるだけのお金を持っていないことも少なくありません。そこで、法律上は使用者責任、代理監督者責任というものが認められており、建設会社の社長や現場監督などにも責任を追及することができます」(寺林弁護士) ■犯罪は成立する?「業務上の注意を怠った結果このような事故が起こったということであれば、業務上過失致死傷罪が成立する可能性があります。これも、事故を起こした本人だけでなく、社長や現場監督にも成立する可能性があります。成立すると5年以下の懲役刑もしくは禁固刑、又は100万円以下の罰金に処されることとなります。東京オリンピックも近くなり、首都圏では大規模な工事が増えています。一度事故が起きれば重い責任が課されることとなります。工事関係者の皆様には、十分な注意をお願いしたいものです」(寺林弁護士)厳しい環境での作業は非常に大変だと思いますが、事故が起きないよう十分に注意してもらいたいものですね。 *取材協力弁護士:寺林智栄(ともえ法律事務所。法テラス、琥珀法律事務所を経て、2014年10月22日、ともえ法律事務所を開業。安心できる日常生活を守るお手伝いをすべく、頑張ります。)*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)【画像】イメージです*TATSU / PIXTA(ピクスタ)
2017年08月16日*画像はイメージです:夏ですね!毎日暑いです。暑いと厚着なんかしてられません。当然露出も多くなります。この時期、「痩せたい」「少しでも細く見せたい」、そう考える人も多いと思います。今年も8月に入り、そろそろ夏も後半戦ですので、あと少し我慢して夏を乗り切り「来年の夏こそは!」と考えるのもひとつですが、「この夏のうちに結果を出したい!」と思う場合につい惹かれてしまうのが、ダイエットサプリやダイエット食品ではないでしょうか。今回はダイエットサプリやダイエット商品の広告における法的問題点を解説したいと思います。 ■健康食品などの広告には法規制がある「飲むだけで、理想のスタイルに!」「気づけば1週間で-5kg!」「置き換えるだけでラクラクダイエット!」などなど、魅力的な文字が商品の宣伝サイト上に踊っています。「これさえあれば、すぐに理想のボディになれる?」などと思ってしまいますが、もしそうであれば誰も苦労していないのではないでしょうか。飲むだけで理想のスタイルになれるのは魔法の国のお話ですし、標準体重の人が1週間で5kgも痩せたら病気を疑うべきです。人が健康的に痩せるには、適切な食事制限と運動、そしてある程度の期間が不可欠です。しかしながら、そんなことは分かっていても、速攻ラクに痩せたいと、魔法のようなダイエット食品に頼りたくなる気持ちも分かります。そんな心の弱い私たちが、甘い売り文句に惑わされて、不適切な買い物をしてしまわないように、ダイエット食品のようないわゆる健康食品の広告は、法律で規制されています。 ■景品表示法では広告全般を規制しているまず、広告一般を規制する法律として、不当景品類及び不当表示法(景品表示法)があります。この法律では、一般の消費者に対して商品の品質等の内容が実際よりも著しく優良であると誤解させる表示や、取引条件が実際よりも取引の相手方に著しく有利であると誤認させる表示など、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれのある広告が禁止されています。 ■食品の広告については健康増進法で規制されている食品の販売に関する広告については、健康増進法が、健康の保持増進の効果等について、著しく事実に相違する表示と著しく人を誤認させるような表示を禁止しています。例えば「飲むだけで誰でも必ず10kg痩せます!」といった表示は、事実と相違することが明らかですし、痩せたくて切羽詰まっている消費者の合理的な選択を阻害するおそれがありますから、これらの法律に違反していることになります。このように、それさえ摂取すれば簡単にラクして痩せられるかのような広告は法律で規制されているのですが、それでも実際には魅力的すぎる売り文句が溢れています。どうしても誘惑に駆られて商品に手が伸びてしまいますが、ダイエットには適切な食事制限と運動が欠かせないということを忘れずに、ダイエット食品はあくまで栄養補給のためのものであると理解した上で、上手に利用したいですね。 *著者:弁護士 伊東有理子(丸の内ソレイユ法律事務所の弁護士。国税審判官としての勤務経験あり。離婚から企業法務まで幅広く精通し、依頼者に最良の結果をお届けできるよう日々努める。)【画像】イメージです*Kazuhiro Konta / PIXTA(ピクスタ)
2017年08月14日*画像はイメージです:「隣の住民が深夜に音楽を鳴らしていてうるさい!」住民のかたから、大家さんや賃貸物件管理会社のもとへはこんな苦情が届きます。こんなとき、あなたが大家さんだったら、どのように対処しますか?多くの場合は、苦情元となっている住民からヒアリングを行い、必要に応じて注意喚起をすることになるでしょう。でも、注意しても一向に改善されない、むしろ、対抗するかのようにひどくなっていくような場合には、法的な手段を考えていく必要があります。そこで、迷惑行為に対抗する一手段としての賃貸借契約の解除(追い出し)が可能かについて考察してみます。 ■そもそも迷惑行為をしている賃借人を追い出せるの?部屋を借りている人は、契約又は目的物の性質によって定まった用法に従い、その部屋の使用をしなければならないという用法遵守義務を負っています(民法616条で準用される民法594条第1項)。例えば、賃貸借契約の中で、ピアノなどの楽器の使用を禁止するという用法が定められていれば、賃借人は部屋で楽器を使用してはいけません。また、このような特約による用法が定められていなくても、深夜にピアノを大音量で弾くようなことがあれば、あまりにも常識はずれな行動として、用法遵守義務違反となる可能性が高いといえます。用法遵守義務違反が認められる場合、大家さんは、部屋を貸している人との賃貸借契約を解除することができます(民法541条)。契約違反しているから出て行ってくれという具合です。ただし、部屋の貸し借りの契約については、「信頼関係破壊の法理」と呼ばれる考え方があり、義務違反行為があっただけではなく、義務違反の結果として信頼関係が破壊されていると評価できて初めて解除できるという扱いになっているので、この点は注意が必要です。 ■騒音、ゴミ屋敷、ペット飼育といったケースでは?用法違反行為にもいろいろなケースがありますが、代表的な用法違反行為といえば、冒頭で挙げたように騒音の問題でしょう。騒音の場合、その頻度や時間帯、音量等を考慮して、近隣住民において受忍すべき限度を超えていると認められれば、義務違反行為として契約を解除できるでしょう。裁判例の中には、徹夜マージャンやカラオケ、歌声、喧嘩、床を叩く音などの事案で解除が認められたケースがあります。次にゴミ屋敷の問題ですが、ゴミの放置による多少の不潔状態が継続した程度では解除できないと考えられますが、これも、社会常識の範囲を超えるようなゴミの量になれば別でしょう。裁判例においても、2年以上にわたってゴミ屋敷の状態が継続した事案において、衛生上の問題だけではなく、火災の危険性も加味した上で、契約の解除を認めた事案があります。ペット飼育については、建物の損傷や臭い、鳴き声による騒音、安全面などが判断材料とされているようです。もちろん動物の種類も検討対象となり、犬でいえば、小型犬か否かに言及する裁判例もあります。ペット飼育が判明した時点では安全性などの問題が認められないとしても、将来における安全性等の問題までが解決されているわけではありませんから、大家さんとしては、用法遵守義務違反を理由として、契約の解除を検討していくことになるでしょう。 ■喫煙行為による損害賠償請求が認められたケースも数年前に、階下に住む住民によるベランダでの喫煙行為によって、健康被害を受けたとして損害賠償請求訴訟が提起され、不法行為が認められた事案がありました。マンションである以上、近隣からのタバコによる煙の流入について、一定程度受忍する必要があるものの、受忍限度を超えていれば不法行為が成立すると判断されています。したがって、受忍限度を超えるようなベランダ喫煙に対しては、健康被害を受けた近隣住民からの損害賠償請求とは別に、大家さんからの契約解除の言い渡しもあり得るかもしれませんのでご注意を。 *著者:弁護士 河原﨑友太(浦和法律事務所。2017年2月にマンション管理士に登録。ご相談に際しては、ご相談に見える方が、弁護士に何を期待しているのかを見定め、丁寧な事情聴取、解決方法の提案を心がけています)【画像】イメージです*kiko / PIXTA(ピクスタ)
2017年08月12日*画像はイメージです:夫婦で子どもを育てていたらふと「子どもが自分に全く似てない……?」などと疑問を持ち、DNA鑑定をしてみたら、自分の子どもではなかったというケースが意外にも結構な割合であるようです。育てていた子どもが自分と血がつながっていなければ受けるショックは相当なものでしょうし、離婚を考えたくなっても当然かもしれません。離婚する場合、基本的には収入に応じて養育費を払うことになりますが、この場合も養育費を払う必要があるのでしょうか?解説していきたいと思います。 ■子どもが自分の血を引いていなかった…離婚はできる?自分の血を継いでいると思っていた子が、実は自分と血がつながっていなかったと夫が知った場合、妻に対する信用を失い、離婚を希望することもあると思います。では、その場合に離婚できるかどうかですが、妻が離婚に応じれば、当然、離婚できます。しかし、妻が離婚に応じない場合に、裁判所が離婚を認めるかどうかについては、確実に離婚が認められるとまではいいきれませんが、妻が婚姻期間中に不貞行為をしたことが明らかであれば、離婚が認められる可能性が大きいと考えられます。また、妻が、他の男性の子どもであることを隠して「あなたの子どもよ」と虚偽の説明をしていたような場合は、そのこと自体が「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当すると判断され、離婚が認められる可能性もあります。一方で、婚姻前に妻が他の男性と関係をもったことにより生まれた子であったが、妻も夫も、自分たちの子どもだと信じていたような場合等、妻に大きな非が認められないような場合は、離婚が認められない可能性もあると考えられます。 ■こんなケースで離婚したら養育費は払う必要がある?夫婦が離婚しても、親子関係に変わりはありません。そして、親子関係がある以上は養育費を支払う義務があります。したがって、養育費の支払い義務を免れるためには、親子関係がないということを確定させる必要がある、ということになります。親子関係がないことを確定するための手段としては、(1)嫡出否認の訴えと(2)親子関係不存在確認の訴えの2つがあり、主に子どもが生まれた時期によって使い分ける必要があります。 (1)嫡出否認の訴え子どもが“婚姻の成立の日から200日を経過した後あるいは婚姻の解消若しくは取消しの日から300日以内”に出生した場合には、嫡出否認の訴えによらない限り、親子関係を否定できません。婚姻期間中の性行為で生まれた子どもは、通常この場合に該当することが多いでしょう。この訴えは、訴えを提起できるのは夫だけという制限の他に、「子の出生を知った時から1年以内に提起しなければならない」という非常に厳しい制限があります。したがって、1年を過ぎてしまって嫡出否認の訴えが提起できなくなると、理屈としては、もはや裁判で「その子は自分の子ではない」と認めてもらうことはできなくなります。ただし、上記の期間(“婚姻の成立の日から200日を経過した後あるいは婚姻の解消若しくは取消しの日から300日以内”)に出生した子どもであっても、妻が妊娠した時に夫は海外赴任していた、服役していたといったように、夫の子どもではありえない外形的・客観的な事情がある場合は、夫は親子関係不存在確認の訴え(後述)を提起することが認められています。これに勝訴すれば子どもとの親子関係を否定でき、制限の厳しい嫡出否認の訴えを使う必要はありません。 (2)親子関係不存在確認の訴え“婚姻の成立の日から200日を経過した後あるいは婚姻の解消若しくは取消しの日から300日以内”に当てはまらない時期に出生した子ども(ex.離婚日から350日後に生まれた子ども)については、親子関係不存在確認の訴えで父子関係を争うことになります。親子関係不存在確認の訴えは、“夫と子どもに親子関係がない”という点について、法律上利害関係を有する者なら誰でも訴えを提起できますし、出生を知ってから1年以内というような期間の制限もありません。すなわち、嫡出否認の訴えに比べると、訴えを提起するための制限は緩やかです。 ■判例のご紹介嫡出否認の訴えを提起できなくなった後に夫の子ではないというDNA鑑定結果が出たという場合に、夫が親子関係不存在確認の訴えを提起したケースがあります。※1最高裁は、結論としては、親子関係不存在確認の訴えを認めませんでした。「法律上の父子関係が生物学上の父子関係と一致しない場合が生ずることになるが」、民法は「このような不一致が生ずることをも容認している」とも述べています(夫としては、そんな風に開き直られても困ると言いたくなるでしょうが……)。結局、夫は、DNA鑑定で自分の子ではないと判明しているにもかかわらず、法律上の親子関係を否定することができなかったのです。 婚姻成立日から200日経過後あるいは婚姻解消日から300日以内というのはかなり広いため、子どもが生まれたのはこの期間中という場合がほとんどです。子どもが自分の血を引いていなかったからということで妻と離婚できるとしても、1年の期間制限を過ぎてしまい嫡出否認の訴えを提起できず、したがって養育費だけは支払わなければならないということになってしまう可能性も高いです。離婚についてはともかく、親子関係を否定したいなら悠長なことは言っていられませんので、注意しておく必要があります。 ※1:最高裁平成26年7月17日判決*著者:弁護士 近藤美香(秋葉原よすが法律事務所。家事事件を専門的に取り扱い、500件以上の家事事件を取り扱った経験を持つ。JADP認定の夫婦カウンセラーの資格を保持している。)【画像】イメージです*cba / PIXTA(ピクスタ)
2017年08月11日昨今は「完全紹介制」「会員制」の飲食店が増加しています。情報化社会の中で敢えて住所などを公開せず、ひっそりと営業することで、「存在価値を上げたい」「来てくれるお客様を大切にしたい」などの狙いがあるようです。当然そのような店舗はお客様に対しネットに住所や評価を書きこまないよう求めるわけですが、中にはそれを無視する形で飲食店の評価サイトに投稿する人もいるようです。店側としては情報の削除を求めるのは当然のことでしょう。書き込んだ人間が断り続けるのなら、損害賠償などの法的措置に出ざるを得ません。しかし、仮に提訴したとしても、訴えが認められない可能性が高いというのです。本当でしょうか?桜丘法律事務所の大窪和久弁護士に真相を聞いてみました。Q.完全紹介制の情報を勝手にサイトに投稿されたうえ、削除要求にも応じない…損害賠償は可能ですか?*画像はイメージです:名誉毀損や営業に支障がでた場合でない限り、損害賠償は認められないものと思われます。「飲食店の情報についてサイトに掲載されたことについて損害賠償を求める裁判はいくつかなされておりますが、公開されている裁判例を見る限りでは名誉棄損等が伴う場合でなければ基本的には損害賠償を認めていません。紹介制の店舗がサイトに掲載されたことについて損害賠償を求めた裁判(ニュースなどでも取り上げられました)についても、店舗側の訴えが否定されています。同判例で裁判所は、店舗情報について公開するかしないかについては営業権の一つとして認められているものの、店舗情報がそのサイト以外では公開されていることや、店舗情報の掲載が名誉棄損等を伴うものではないことを理由として、店舗情報の公開を違法とは認めませんでした。裁判所が上記判断を行ったのは、サイト運営者の表現の自由や受け手の知る権利を重視しているという理由からだと考えられます。もっとも、店舗情報が完全非公開であり、かつ情報開示により実際に営業に支障が生じたという場合であれば、損害賠償が認められる余地はあるでしょう」(大窪弁護士) 過去の裁判事例を見る限り、名誉毀損や情報開示によって営業に支障が生じたというケースでない場合、損害賠償請求などを行ったとしても、認められる可能性は低いようです。 *取材協力弁護士:大窪和久(桜丘法律事務所所属。2003年に弁護士登録を行い、桜丘法律事務所で研鑽をした後、11年間、いわゆる弁護士過疎地域とよばれる場所で仕事を継続。地方では特に離婚、婚約破棄、不倫等の案件を多く取り扱ってきた。これまでの経験を活かし、スムーズで有利な解決を目指す。*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)【画像】イメージです*amadank / PIXTA(ピクスタ)
2017年08月10日*画像はイメージです:わいせつな行為をしたとして逮捕された教師が、実は5回目の逮捕だったというニュースがありました。当該教師は2013年に児童買春・児童ポルノ禁止法違反の罪で、罰金の略式命令を受けたあと、改名をすることにより2015年に臨時講師として採用され、教壇に立ち続けていたそうです。改名がなされていないのであれば、採用の段階で過去の犯罪歴に気がつき採用とはならなかったのではないかと思われますが、どういった場合に名前を変更することが出来るのかについて、今回は解説したいと思います。 ■どんな場合に名前の変更はできるのか人の名前のことを法律上「名」といいますが、その人の呼び名のことをいいます。「名」は、「氏」(=一定の家族についての呼び名)と一体(「氏名」)となって、その人であることがわかるようにするためのものです。要するに、「名」には、個人を特定・識別する機能があるわけです。親は子どもが生まれた後、「名」を決めて出生届をすることによって決まります。「名」は、個人を特定・識別するという重要な機能があるわけですから、「名」を変更するためには、「正当な事由」が必要であり、「正当な事由」を主張して家庭裁判所の許可をもらい、その上で役所に届け出ることが必要です。「正当な事由」のある場合とは、(1)営業上の目的から襲名する必要がある(2)同姓同名の者がいて社会生活上著しい支障がある(3)神官や僧侶となったとか、神官や僧侶を辞めるのに改名する必要がある(4)珍名な名、外国人に紛らわしい名、甚だしく難解・難読の文字を用いた名等で社会生活上甚だしい支障がある(5)帰化した者で日本風の名に改める必要があるといった場合です。 ■今回のケースでは通常、「名」の変更をする際は上記で解説した5例に当てはまるケースが多いですが、中には過去の犯罪歴を隠すために改名するケースもあるようです。しかしながら、犯罪者が犯罪歴を隠すためだけの場合「正当な事由」があるとは認められないでしょう。「名」の変更が認められるかどうかは、「正当な事由」があるかどうかによりますので、詳しくは知りようがないですが、今回のケースでは家庭裁判所によって「正当な事由」が認められたのだと思います(公判を傍聴すれば分かるかもしれません)。一方で、犯罪者でない者が同姓同名の犯罪者がいるという理由で「名」を変更する場合には「正当な事由」があると認められるでしょう((2)の同姓同名の者がいて社会生活上著しい支障がある場合です)。 ■偽名で履歴書を作成し採用面接に臨んでいた場合は…?一方で、「名」を変更するのではなく、履歴書に記載する名前が偽名だった場合はどうでしょうか。この場合、有印私文書偽造・同行使の罪になると考えます。有印私文書偽造は、「行使の目的で、他人の印章または署名を使用して…事実証明に関する文書…を偽造」(刑法159条1項)した場合に成立します。有印私文書偽造の保護法益は、私文書に対する社会の信用です。履歴書は、求職者が自身の氏名・経歴等の事実を証明するために用いられるわけですから事実証明に関する文書といえます。偽造とは、名義人でない者が名義を冒用して文書を作成する行為ですが、他人の名義を勝手に使った場合はもちろん、架空人の名義を使った場合も偽造です。有印私文書偽造の罪を犯した場合、「3月以上5年以下の懲役」で処罰される可能性があります。 *著者:弁護士 冨本和男(法律事務所あすか。企業法務、債務整理、刑事弁護を主に扱っている。親身かつ熱意にあふれた刑事弁護活動がモットー。)【画像】イメージです*turgaygundogdu / Shutterstock
2017年08月09日*画像はイメージです:「この間うちの子が、勝手に私の財布からお金をとったのよ」「どうもウチの旦那、私の財布からお金を抜いてる気がするのよね」こんな話、したり聞いたりしたことはありませんか?子どもや夫が、母や妻のお金を盗むケースでは、家族間のトラブルのため、中々明るみに出ないことでもあります。果たして家族間のこの行為は犯罪になるのでしょうか。 ■窃盗罪が成立する?先ほどの話を聞いて、皆さんは窃盗罪に該当するのではないかと考えるのではないでしょうか。窃盗罪について、刑法は次のように規定しています。 第235条「他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。」 さきほどの話の場合、自分の財産以外の財産を盗るのですから、「他人の財物」という要件は満たしますよね。次に、「窃取」とは、当該財物を占有する者の意思に反して、当該財物の占有を移転させること、と説明されます。つまり、財物を掌握している人の許可を得ずに財物を移転してしまう行為、ということです。上記事例の場合、母や妻の許可を得ず、母や妻の知らないうちにお金を盗るのですから、「窃取」という要件も満たしそうです。 ■親族間の窃盗には規定があるしかし、刑法は、親族間の窃盗行為について、次のように規定しています。 第244条「配偶者、直系血族又は同居の親族との間で第二百三十五条の罪、第二百三十五の二の罪又はこれらの罪の未遂罪を犯したものは、その刑を免除する。」 つまり、配偶者や直系血族の行った窃盗行為については、犯罪には該当するけども、その刑を免除するということです。この規定の趣旨は、「法は家庭に入らず」との思想の下に、親族間の窃盗事例について、国家は刑罰権による干渉を差し控え、親族間の規律・ルールに委ねるのが望ましいという政策的価値観にあります。先ほどの話の場合、夫は配偶者であり、子どもは直系血族ですから、本条に該当し、刑が免除されることになります。夫や子どもが行った行為は、刑法が規定する犯罪行為に該当する。そのため、起訴して判決を出すとすれば「有罪判決」となります。しかし、親族という特別の身分関係を重視して、刑は科さないということです。上記の結論がみえていることから、実務上、検察官は上記事例のような場合には不起訴処分にすることが多いようです。 ■別居中の親族が盗みを働いたら?それでは、息子が既に家を出て家庭をもっているにも関わらず、実家に帰ってきた際に母親の財布からお金を盗った場合はどうでしょうか?あるいは、離婚紛争中で別居している夫が、妻の留守中に家にやってきて、テレビやパソコンを盗った場合は?ここでもう1度、刑法244条を確認してみましょう。同上が免除する対象は、①配偶者、②直系血族、③同居の親族の3つです。③の「親族」は、①②に該当しない親族(例えば、いとこや、義理の父母など)を意味し、③にだけ「同居の」という要件が加わっています。この条文を反対に解釈すると、①②の場合は同居要件は不要という解釈になります。つまり、別居中の配偶者や、既に独立して家庭をもった子どもが、家族の財物を盗ったとしても刑法244条が適用されて刑は免除されます。そのため、例えば、別居中の夫が妻の留守中にやってきて、通帳を持ち出して預金を引き出してしまったとしても警察は相手にしてくれないと考えたほうが良いということです(なお、住居侵入罪や、金融機関への詐欺(罪)は別途考慮が必要です)。実際にこのような事件が起きています。自分の身は自分で守るしかないということですね。身のまわりには十分ご注意下さい。 *著者:池田佳謙(丸の内ソレイユ法律事務所の弁護士。離婚・相続・交通事故を中心に、民事事件・刑事事件を問わず幅広い案件を扱う。依頼者との強固な信頼関係の下、一心同体で事件と向き合う。)【画像】イメージです*Kittisak Jirasittichai / Shutterstock
2017年08月07日7月、夏の高校野球甲子園大会の地方予選が各地で行われ、各地の代表校が決定しました。高い人気を持つだけに、観戦に行かれた人も多いのではないでしょうか。球場に足を運ぶと分かることですが、選手たちは猛烈な暑さのなかで試合をしています。人工芝を採用している場合、太陽熱が照り返すことで、体感気温が40度以上にもなるといわれています。そうなると心配なのが熱中症。最近は昔のように「水を飲むな!」という指導は無くなり、熱中症対策としてこまめな水分補給をするよう指導しているため、危険性は低くなっているようですが、選手が熱中症にならないとはいい切れません。もし、選手が熱中症で倒れ、危険な状態になった場合、主催者に責任は発生しないのでしょうか?Q.高校野球で選手が熱中症で倒れた場合誰が責任をとる?*画像はイメージです:熱中症を予防する十分な対策が取られていたといえない場合、主催者及び指導者に責任が生じると考えられます。「主催者は選手が安全に野球をすることができるように安全管理をする義務を負っています。たとえば悪天候で台風が迫っているにも関わらず試合を中止しなかったり、怪我が発生してしまうような設備故障を放置していたりするのと同様に、熱中症が発生しそうな天候の場合には、少なくとも熱中症が生じたときに機敏に対応できるよう、給水や病院へ搬送することの準備等ができるような体制を整えておく必要があるといえるでしょう。その義務を怠ったために熱中症などの事故が発生したといえるような場合には、民事上の損害賠償責任(民法415条、同709条など)、あるいは刑事上の責任(刑法211条「業務上過失致傷罪」)を負う可能性がありますし、実際にマラソン大会の事例では、主催者である地方公共団体などの側に損害賠償を求めて提訴された事例もあります。また、高校野球は、学校教育の一環として行われているので、当然学校側の責任も問われることになりえます。それが国公立の高校であれば、当該自治体や国家賠償も問題となり得ます。高校教育は義務教育ではありませんが、学校側は、生徒を入学させた以上、教育を受けさせるに当たって生徒の身の安全が害されないように配慮する義務を負うからです。具体的な義務としては、こまめに休憩をとらせる、水分補給を徹底する、体調の変化に注視する、それでも危険な場合には選手を試合から抜けさせ、場合によっては試合を辞退する、などの措置を取る必要があるでしょう。高校3年間の短い青春を謳歌すべく、野球に打ち込み、まさに熱中する姿は私たちに忘れかけた何かを思い起こさせるような気もしますが、熱中が熱中症にまで至ってはいけません。昔とは違う夏の暑さの中では自身の体調管理も含めて高校野球だということを実感し、細心の注意を払ったうえで、高校球児たちには全力プレーをしてもらいたいものです」(大達弁護士) おそらく主催者側はしっかりとした対策を取っていることだろうとは思います。しかし、年々暑さが厳しくなっているのも事実。主催者にはもう一度熱中症対策が十分であるか否かを検証してもらいたいものです *取材対応弁護士: 大達 一賢(エジソン法律事務所。第一東京弁護士会所属。「強い、やさしさ。」、「守る≒攻める」、「戦略&リーガル」の3つの思いを胸に、依頼者のために全力を尽くします)*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)【画像】イメージです*m.Taira / PIXTA(ピクスタ)
2017年08月06日風俗店では、それぞれに「禁止行為」というものが定められています。勤務する女性の嫌がる行為はもちろんですが、業態によってサービスの範囲が決められており、それを逸脱することは、店舗側が禁じていることがほとんどです。一般的に店外でのデートを迫るケースや、いわゆる本番行為が禁止されている業態にもかかわらず、行為をしてしまうなどのケースが実際に発生しているといわれています。そのような場合、あとで店舗側の従業員に呼び出され、100万円単位の高額な迷惑料を請求されることがあります。禁止行為をしなければいい話ではあるのですが、ハメを外しすることもあるようで、被害にあっている人が少なくないのだとか。いくらなんでも100万円は高すぎますし、支払いたくはないでしょう。仮に請求を受けた場合、支払い義務発生するのでしょうか?不動法律事務所の若井亮弁護士にお伺いしました。 Q.風俗店などで禁止行為をしてしまい、100万円を請求された。言うとおりに支払う必要がありますか?*画像はイメージです:ケース・バイ・ケースです。すぐに支払わず、まずは弁護士に相談しましょう。「まず“罰金”という名目の金銭については、支払いに応じる必要はありません。罰金とは刑事罰ですから、国家が私人に対して科すもので、個人が個人に請求することはできないのです。お店や女の子との間で皆さんが支払い義務を負うとすれば、損害賠償義務になります。賠償の範囲については理論上、治療費やアフターピル代、通院交通費といった実費のほか、女の子がお店を休んだのであればその分の休業補償、精神的苦痛を被ったときの慰謝料、お店の営業上の損害など多岐にわたり得ます。このように損害の範囲は無限に拡大する可能性があるため、相手側の請求金額が妥当なものかどうかはきちんと見極める必要があります。なお、禁止行為をやっていないのにやったと決めつけられたり、相手側から禁止行為を持ちかけられ応じただけであるにもかかわらず高額な請求をされたりするなどのケースもありますが、このような相手側の行為は恐喝罪に該当する可能性があります。お店がトラブル発生時に身分証明書の提示を求める(場合によってはコピーを取る)ことはよくあることなのですが、家族や職場に発覚することを恐れる心理をうまく利用して、不当な要求を通そうとするのです。このようなときは、速やかに弁護士に相談することをおすすめします。風俗店でのトラブルは人に知られたくない部分であるだけに思い悩み、“お金で解決できるなら”と支払ってしまう人も多いようですが、一度払うとその後何かと理由をつけて請求されることが多いようです。たとえば、お店との問題は解決したが女の子個人との間の問題はまだ終わっていない(逆もあり得ます)とか、話し合いの後に女の子が精神的に病んでしまったまたはお店を辞めてしまったので、さらに賠償して欲しいなどという要求が考えられます」(若井弁護士) 仮に被害にあってしまった場合は弁護士なしに自分の力だけで解決するのは難しいようです。こういったトラブルが起きてしまった場合は、弁護士に相談し対応を協議するのが良いでしょう。また、そのようなトラブルに巻き込まれないような遊び方をすることも重要といえます。 *取材協力弁護士:若井 亮(不動法律事務所。「迅速対応」「分かりやすい説明」「徹底した報告」をモットーとしている。不当要求への対応、詐欺被害への対応を多く経験している)*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)【画像】イメージです*antoniodiaz / Shutterstock
2017年08月04日*画像はイメージです:賃貸物件などで初期費用を抑えるため、敷金・礼金が一切かからない物件を「ゼロゼロ物件」と呼びます。敷金は退去の際にかかる費用や、不測の事態で家賃の支払い能力がなくなった際に使われる、いわば保証金のようなものですが、それを排除することで安さをアピールし、入居を促すという物件です。少々怖い気もするのですが、大抵の場合は家賃支払いの滞りもありません。退去時も常識的な金額の請求が一般的で、初期費用がかからないほうが「魅力的」に映る人もいるようです。 ■ゼロゼロ物件の問題点とは?お得に見えるゼロゼロ物件ですが、その陰で問題も発生する場合もあります。敷金がないだけに、退去時にそのしわ寄せがくるようで、経年劣化であるにもかかわらず難癖にも思えるような指摘で高額な修繕費を要求されることがあるそうです。また、家賃の支払いが1日でも遅れると、鍵を交換されるなどして、即日退去を促されるケースがあるそうです。このような行為は非常に悪質で、許されざるべき行為のように思えます。しかし、不動産会社側は「カギを貸しただけで部屋は貸していない」「契約書に家賃が遅れた場合鍵を交換する」などと明記していることから、違法ではないと主張しています。このようなゼロゼロ物件での家賃支払い遅れによる鍵交換や強制退去は、違法ではないのでしょうか? ■違法である可能性が高い借地借家法では仮に家賃の滞納があったとしても一方的に貸主が直ちに借主を追い出すことは認められていません。したがって、ゼロゼロ物件での強引な退去強要は、ほぼすべてのケースにおいて、違法と判断されると思われます。また、鍵を交換してしまうという行為も、ほぼすべてのケースにおいて(契約書に記載がある場合を含む)、借り主の権利を侵害する違法行為として、見られる可能性が高いと思われます。ただし家賃の滞納をしても追い出されないというわけではありません。大抵の場合2ヶ月から3ヶ月以上滞納している場合は、裁判所の判断を仰いだうえで退去手続きが取られ、文書などで退去期限を予告したうえ、それを過ぎた場合は強制退去の措置が取られます。これは、ゼロゼロ物件以外でも同様です。最近はゼロゼロ物件のトラブルも減っているようですが、初期費用が低い分、様々なリスクもひそんでいるのが現状。借りる際は、そのあたりを考慮する必要がありそうですね。 *記事監修弁護士:弁護士 河原﨑友太(浦和法律事務所。2017年2月にマンション管理士に登録。ご相談に際しては、ご相談に見える方が、弁護士に何を期待しているのかを見定め、丁寧な事情聴取、解決方法の提案を心がけています)*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)【画像】イメージです*kotoru / PIXTA(ピクスタ)
2017年08月04日*画像はイメージです:月27日、車掌が寝坊し乗務する新幹線に乗り遅れ、約10分の遅れが出たという報道がありました。在来線と異なり、あまり遅延をすることがない新幹線ですが、遅延した場合は乗客に補償等はあるのでしょうか?解説してみたいと思います。 ■新幹線が遅延した場合は乗客に補償はあるのか商法第590条を根拠にすれば、JR東日本は乗客に対し、乗客を新幹線で運送する債務を負っており、使用人である車掌のミスについても責任を負います。したがって、車掌の寝坊等によって新幹線が著しく遅れたような場合、乗客としては、JR東日本の債務不履行(約束違反)を理由として、生じた損害について賠償請求することが一応は考えられます。しかし、JR東日本の場合、約款(旅客営業規則)が存在しており、列車が運航時刻より遅延した場合についての規定(旅客営業規則第282条(2))も設けられておりますので、こちらが適用されることになります。これによると、乗客としては、「列車が運行時刻より遅延し、そのため接続駅で接続予定の列車の出発時刻から1時間以上にわたって目的地に出発する列車の接続を欠いたとき又は着駅到着時刻に2時間以上遅延したとき」、旅客運賃・料金の払い戻し、有効期間の延長、無賃送還といった補償を求めることができるだけということになります。ですので、10分の遅れでは補償を求めることはできません。 ■電車が遅延した場合も新幹線と同様電車が遅延した場合も、新幹線が遅延した場合と同じです。様々な事情によって時刻表どおりいかないことは仕方がないことですし、乗客を運送する債務といっても時刻表どおりの到着まで保証しているわけではないと考えられます。電車が多少遅れただけでは損害の賠償を請求することができませんし、約款があるのであれば、約款がよほど不当な内容でない以上、約款が適用されるわけです。 ■電車や新幹線の遅延を故意に引き起こした人がいたら……?新幹線・電車の遅延を故意に引き起こした人がいたような場合、その人は不法行為を行ったといえますので、鉄道会社はもちろん、損害を被った乗客も、被った損害についてその人に対して賠償請求することができます。 *著者:弁護士 冨本和男(法律事務所あすか。企業法務、債務整理、刑事弁護を主に扱っている。親身かつ熱意にあふれた刑事弁護活動がモットー。)【画像】イメージです*yoshi / PIXTA(ピクスタ)
2017年08月03日*画像はイメージです:年7月12日に略式起訴されていた電通の違法残業事件に関して、略式起訴不相当として、正式に裁判が開かれるとの報道がありました。「略式起訴不相当」とされるケースは比較的珍しいため、あまり耳にしない言葉かもしれません。そこで今回は、今回は電通事件と併せて、「略式起訴」「略式起訴不相当」など刑事事件でよく使用される言葉について解説してみたいと思います。 ■略式起訴とは刑事事件として捜査されると、最終的に検察官が起訴か不起訴を決めます。起訴されると、通常は公開の法廷で公判が開かれ、起訴状の朗読や証拠調べといった審理が実施されます。しかしながら、全ての刑事事件で公判が開かれると時間も人手も必要になってしまうため、略式起訴(刑事訴訟法461条)という制度により、実際には裁判を行わず刑事事件の手続を進行する略式命令を求めるケースがあります。略式命令では、100万円以下の罰金を科すことができます。それより重い刑罰を課す場合には略式命令制度は使えません。実務上は、罰金刑が定められている犯罪について、被疑者が認めており、反省の態度も示されている場合などに利用されます。勾留されている被疑者の場合は、略式命令であれば勾留満期に略式起訴され、即日略式命令が出て事件が終わり、釈放されるというメリットがあります。これが略式命令ではなく、通常の裁判だと、公判が終わるまで起訴後も勾留による身体拘束期間がさらに続くことになってしまいます。略式命令の手続では公開の法廷での公判は開かれません。 ■どんな場合に略式起訴不相当とされるのか上記のように、罰金刑が定められている犯罪について、被疑者が認めており、反省の態度も示されている場合に略式起訴はよく利用されます。他方で、裁判所が略式命令によることが不相当と判断した事件については、検察官からの略式起訴であっても、通常の公判を開くことになります。どのような場合に略式命令が不相当であるかは刑事訴訟法上具体的には明示されていません。書面の証拠だけでは犯罪事実を認定できない場合や罰金刑しかなく法定刑が軽くても犯罪行為の内容が重大で、社会的影響が強い事件など、公開の公判による審理を開くべきであると考えられる事案で、通常裁判に移行されることが想定されます。 ■今回の電通事件に関して思うこと違法残業事件の罰金刑は低額であり、大企業にとっては制裁の効力があまりありません。今回の電通事件は社会的な影響が大きかったこともあり、裁判所が書面審理だけではなく、公開の法廷で、代表者社長の話も聞くべきであると判断したものと推測されます。通常の公判が開かれることになりましたので、法人の代表者社長の公判出頭が必要となりましたが、違法残業の事実関係自体に争いはないので、公判は1回、1時間程度で結審することが予想されます。実際には、民事も刑事の公判も、裁判は公開ですが、口頭審理はかなり形骸化しており、実体的には書面が中心です。公開の裁判であっても、事件に関する事前情報、予備知識なしに無関係の第三者が傍聴しただけでは、事案の概要や当事者の主張すら正確に把握できないことも珍しくありません。通常の審理手続となった今回の電通事件の裁判も、公開の法廷で傍聴はできますが、検察官の証拠調べも概要告知だけですから、代表者の尋問くらいしか、裁判で電通側から直接口頭で説明する機会はありません。また、基本的には公訴事実の立証と情状立証に必要な限度での審理となりますから、略式命令ではなく通常の公判になったからいって、必ずしも詳細に事件の背景事情や原因まで全て明らかになるということまでは期待できません。裁判は事実関係の調査自体が目的ではなく、事実の解明は、あくまで付随的なものでしかありません。 *著者:弁護士 星野宏明(星野法律事務所。不貞による慰謝料請求、外国人の離婚事件、国際案件、中国法務、中小企業の法律相談、ペット訴訟等が専門。)【画像】イメージです*JanPietruszka / PIXTA(ピクスタ)
2017年08月02日*画像はイメージです:アイドルグループの『AKB48 』の写真会に他人名義のチケットで参加しようとした少年のために偽の学生証を作成した疑いで48歳の男性が逮捕されました。現在はプリンターやスキャナー、加工ソフト等の技術が進歩したことにより、誰でも比較的容易に身分証明書等を加工・複製することができるようになりました。このような、いわゆる偽造行為を行い、特定の人しかサービスを受けることができないにもかかわらず、身分証明書を偽造し、書類上その者になりすまして、サービスを受けることがときどき見受けられますが、こういった行為がどのような法的問題をはらんでいるのか解説したいと思います。 ■文書偽造についてまず、今回の偽造学生証についての解説をする前に、関わりの深い“文書偽造”について触れてみたいと思います。そもそも偽造とは、その書類を作る権限がないにもかかわらず書類を作成することをいいます。厳密には、書類の作成権限がない者が他人名義の書類を作成することを指します。偽造は有形偽造と無形偽造に分かれますが、一般的に前者は偽造、後者は虚偽文書の作成と呼ばれます。 ■文書の種類についてそして、文書には公文書と私文書の2種類があります。公文書とは、国や地方公共団体、公務員などによって作成する文書の事をいいます。公的機関が発行した住民票などの書類や公証役場で作成する公証人認証書などがこれにあたります。一方で、私文書とは、国や地方公共団体・公務員以外の私人が作成した文書の事をいいます。私人が作った契約書や、入学試験の答案などがこれにあたります。なお、文書に氏名や印影などが表示されていれば、有印公文書、有印私文書と呼ばれます。 ■学生証を偽造したことによりどんな罪に問われるのかさて、本題の今回の件について、まず文書の種類から見てみます。問題となった学生証を発行している主体が国公立の高校の場合、学生証は公文書にあたります。一方で主体が私立高校の場合、私文書にあたります。そして発行した学校の印影等があるでしょうから、有印公文書または有印私文書となります。次に、行われた行為は学生証の作成です。そして学生証の作成権限はその学校にしかなく、学校以外の者が作成すると、偽造にあたります。生徒Aが在籍していることを示す学校名義の書類(学生証)を、学校でないのに作成した、というのが今回の犯罪行為です。そして、これらの犯罪は、偽造した文書を「行使の目的」があることが必要なのですが、少年をサイン会に参加させようという目的があるので、「行使の目的」も認められます。 以上のとおり、行為者について、有印公文書偽造(刑法155条1項)又は有印私文書偽造(刑法159条1項)が成立します。なお、有印公文書偽造は1年以上10年以下の懲役が、有印私文書偽造は3月以上5年以下の懲役に処せられます。 ■他人名義のチケットを使用したり学生割引を受けたりする行為についてなお、偽造した学生証を利用して、他人名義のチケットを使用したり学生割引を受けたりする行為については、偽造行為とは別に犯罪が成立し得ます。例えば、本来であればサイン会には参加することができなかったところ、偽造した学生証により主催者を欺き、サイン会への参加という利益を得たとして、詐欺罪(刑法246条)が成立することが考えられます。今回の件で、偽造学生証を使用した少年に関しては、未成年であり少年法の適用がありますので、通常の刑事事件とは異なり、保護観察処分を受けたり、少年院送致という処分となります。悪質な場合は検察官送致が行われる場合もあるでしょう。 *著者:弁護士 渡部孝至(弁護士法人はるかぜ法律事務所代表弁護士。『身近な弁護士』をモットーに、ご依頼者様の目線で親切・丁寧・迅速な対応を行い、リーズナブルなご費用で良質なサービスを提供することを使命としている。)【画像】イメージです*Graphs / PIXTA(ピクスタ)
2017年08月01日*画像はイメージです:自分の交際相手に限って……なんて思っていたら実は相手が既婚者だったなんて話、今ではよく耳にする話かもしれません。実際にそういったシチュエーションに巻き込まれたことがある人もいるのではないでしょうか。相手が既婚者だと知ったら即座に別れるかと思いますし、既婚者だと知っていたらそもそも交際していなかったという声も聞こえてきそうですが、不倫に付き物なのが“慰謝料”の問題です。そこで今回は以下に記載する関係者間で慰謝料が発生するのかどうかについてみていきたいと思います。 Aさん:交際相手が既婚者であると知らずに関係をもった人Bさん:既婚であることを隠してAさんと関係をもった人Cさん:Bさんの配偶者 ■ 既婚者と知らずに不倫したら交際相手の配偶者に対する慰謝料は?(Cさん→Aさん)AさんがBさんを既婚者であると知らなかったことに過失がなければ、慰謝料支払い義務はありません。慰謝料支払義務が発生するのは、Aさんに“故意・過失”がある場合に限られます。では、どういうときに過失があるのかというと、“肉体関係を持った時に、Bさんが既婚であることを知ることができたはずなのに、Aさん落ち度があったために気づかなかった”という場合です。つまり、Bさんが既婚者であると気づかなかったことに落ち度がないのであれば、慰謝料を支払う義務はありません。なお、交際当初はBさんが既婚していることを知らなかったが、途中で知ったという場合には、その時点で関係を断てば慰謝料支払義務はありません。しかしながら、知った上で関係を続けた場合には、それ以後については慰謝料支払義務があることになります。 ・どういう場合に落ち度がないといえるの?交際相手と知り合った当時から「自分には妻子がいたが、今は離婚して独身だ」と告げられており、しかも職場でもこれを疑う人がいなかったという場合に、落ち度がないとされたケースがあります。(※1)同僚と交際していたにもかかわらず落ち度がないとされたこのケースは、比較的珍しいものです。一般論としては、交際が長く続けば続くほど、その人が既婚者であることを知る機会はあったはずだ(=既婚の事実を知らなかったことに落ち度がある)ということになる可能性は高いでしょう。 ■ 既婚の事実を隠して不倫をした配偶者に対する慰謝料請求は?(Cさん→Bさん)夫婦間には、第三者と性的関係を持ってはならないという貞操義務と呼ばれる義務があります。もしもBさんがその義務に違反してAさんと不貞した場合、BさんがCさんに対して慰謝料支払義務を負うのは当然のことです。BさんがAさんとの不倫をしていることを理由としてCさんと離婚を希望する場合なら、この慰謝料を実際に請求していくことになるでしょう。しかし、Cさんが婚姻継続を希望する場合は、Bさんには慰謝料を請求しないで、Aさんにだけ請求してくる可能性が高いです。離婚をしないのに夫婦間で慰謝料を請求するとなるとそのこと自体が夫婦関係を冷却化させかねないからです。 ■既婚を隠していた交際相手に対する慰謝料請求はできないの?(Aさん→Bさん)Bさんが既婚者だと知っていれば肉体関係を持つつもりはなかった、というのはAさんのごく当然の言い分です。Bさんは、既婚の事実を隠すことで、Aさんの“誰と交際して肉体関係を持つかを決める権利”を侵害したことになります(貞操権の侵害)。したがって、AさんのBさんに対する慰謝料請求が認められる可能性はあります。ただし、「既婚であると言ったはずだ」「本当は知っていたはずだ、知っていると思っていた」という反論が交際相手からなされることが予想され、ハードルが高いことは否定できません。ちなみに、相手方が既婚者だと知っていた場合にも慰謝料が認められたケースがあります。妻と別れて結婚するつもりだと言われた未成年の女性が、男性の子を出産したにもかかわらず約束を反故にされたという事例で、女性から男性に対する慰謝料請求が認められています。(※2) ※1:東京地裁平成25年7月10日判決より※2:最高裁昭和44年9月26日判決より*著者:弁護士 近藤美香(秋葉原よすが法律事務所。家事事件を専門的に取り扱い、500件以上の家事事件を取り扱った経験を持つ。JADP認定の夫婦カウンセラーの資格を保持している。)【画像】イメージです*Antonio Guillem / Shutterstock
2017年07月30日*画像はイメージです:マンションを購入する際、できればトラブルなく生活を迎えたいものですが、購入時に知らなかったことが原因で、楽しく迎えるはずの新居での生活が一変してしまうこともあります。そこで、今回は、マンションの購入時には知らなかった近隣工事による騒音の問題に絞って、損害賠償請求の可否を検討してみます。 ■騒音と損害賠償請求損害賠償請求の相手として、まずは騒音を出している当事者、つまり、工事施工業者(あるいは依頼した施主)が考えられます。この場面においては、工事による騒音が、一般人を基準として受任の限度を超えるか否かで判断します。そして、受忍限度については、侵害行為の態様、侵害の程度、騒音との位置関係、防音措置が取られているか、あるいは、関係法令に違反しているかなどの事情を総合考慮して判断することになります。例えば、建設工事に関しては、騒音規正法という法律が存在していて、騒音を伴う一定の『特定建設作業』(例えば、くい打ち作業など)についての騒音規制をしています。騒音規制の内容は、「特定建設作業の場所の敷地の境界線において、85デジベルを超える大きさのものではないこと」などと定められています。工事施工業者に対する損害賠償請求(主として慰謝料請求)が認められるか否かの判断に際しては、この騒音規正法に反しているかなどの視点で総合的に検討されることになるでしょう。 ■マンションの売主に対する損害賠償請求の可否その他の損害賠償請求の相手としては、マンションの売主を想定することもできます。近隣工事による騒音被害が『瑕疵かし』(=欠陥)に該当するという主張(瑕疵担保責任)や、これを隠して売られたために損害を被ったという主張(不法行為責任)などが考えられますが、ここでは、瑕疵担保責任の追及に限定して検討してみます。 ■瑕疵担保責任の追及これまでに蓄積されてきた『瑕疵』に関する裁判例によれば、瑕疵とは、物理的な欠陥に限らず、近隣環境の瑕疵や心理的な瑕疵も含まれるとされています。つまり、マンションそのもの(防音設備も含めて)には生活上何らの支障もないけれども、例えば、近隣に暴力団事務所が存在しているような場合(環境瑕疵)や過去にその物件で殺人事件があった場合(心理的瑕疵)などにも瑕疵に該当する場合があります。近隣での建設工事による騒音についても、環境瑕疵に該当する可能性があります。ただし、騒音があるからといって直ちに瑕疵とはなりませんので、前出の受忍限度の考え方はここでも妥当すると思われます。なお、近隣における建設工事は、半年や1年程度のものが大半だと思いますが、その長短は瑕疵かどうかの判断にも影響するとともに、損害の大小にも影響すると考えられます。 ■何が賠償の対象となるかさて、瑕疵担保責任が認められるとして、賠償の対象となる損害は二つ考えられます。一つは、騒音の存在によりマンションの交換価値が下がっているとして、本来の交換価値との差額を賠償の対象(損害)とすることが考えられます。この場合には、交換価値の低下を客観的に証明しなければなりません。ただし、近隣工事が半年ないし1年で終了し、その後は騒音が無くなるとすると、賠償の対象となる損害がどの範囲になるのかは非常に難しい問題を含みます。もう一つは、騒音の存在により精神的な損害を被ったとして慰謝料請求をすることが考えられます。近隣工事による騒音が瑕疵と評価される場合には、通常生じる損害として賠償の対象となると考えられます。 ■夜勤の人が昼間に眠れない損害は?先に出てきた騒音規制は、睡眠を想定して夜間の騒音を規制しています。そのため、夜勤を日常としている方は、睡眠時間となるはずの昼間に工事が実施されるという非常に辛い立場に置かれます。さすがに、昼間も工事ができないとなると、何も建設できなくなりますから、上記規制時間帯はやむを得ないと思われますが、夜勤の方が昼間の工事により睡眠障害等の影響を受ける場合には、損害の大小、つまり、賠償額の問題に集約されることになると考えられます。 ■最後に瑕疵担保責任を追及する場合には、善意・無過失であることが要求されます。つまり、瑕疵を認識し、あるいは、認識することが容易であった場合には瑕疵担保責任を追及することができません。そのため、購入前には、散歩がてら近隣の様子をチェックしておくべきといえそうです。 *著者:弁護士 河原﨑友太(浦和法律事務所。2017年2月にマンション管理士に登録。ご相談に際しては、ご相談に見える方が、弁護士に何を期待しているのかを見定め、丁寧な事情聴取、解決方法の提案を心がけています)【画像】イメージです*kurosuke / PIXTA(ピクスタ)
2017年07月29日*画像はイメージです:「脱サラして自分のお店を持ちたい!」でも、自分には飲食店経営のノウハウはないし、初期費用もどれくらいかかるかわからないから不安でなかなか踏み出せない。実は、そんな不安を軽くして夢を実現できる可能性があるのが、近年再注目されているフランチャイズです。今回は、そんなフランチャイズのメリットやデメリットを解説します。 ■脱サラするとういことの意味まず、「脱サラ」をした場合、働く環境等はどのように変化するのでしょうか。(1)指揮監督会社員(=給与所得者)は、雇用主の指揮監督を受けて雇用主のために経済活動を行いますが、「脱サラ」をすると、雇用主の指揮監督を受けずに、自分のために経済活動を行うことができるようになります。(2)給与の有無会社員は、雇用主から、労働の対価として一定の給与の支払を受けますが、「脱サラ」をすると、自分のために行う経済活動によって収入を得ることができるようになります。(3)社会保険の種類会社員は、原則として、協会けんぽや各社会保険組合に加入し、社会保険料は給与から控除される形で支払いますが、「脱サラ」をして、個人事業主として経済活動を行う場合には、国民健康保険に加入し、自分で国民健康保険料を支払うようになります。(4)年金の種類会社員は、その多くは、国民年金と厚生年金に加入しますが、「脱サラ」をして、個人事業主として経済活動を行う場合には、国民年金に加入します。(5)税金関係会社員の所得税は、雇用主が行う源泉徴収によって支払いますが、「脱サラ」をして、個人事業主として経済活動を行う場合には、確定申告をして、自分で支払います。 ■FC店にはどんなメリットがある?FC店には次のようなメリットがあるといわれています。(1)独立性FC店は、直営店や従業員とは異なり、あくまで独立した事業体としてお店を経営できます。経営上のリスクもありますが、反面、自分で働いて得た収益を自分で得ることができます。(2)本部のグッドウィルと経営ノウハウの利用FC店は、本部がそれまでに確立してきた商標や営業の象徴となるもの(≒グッドウィル)の付与を受け、優れたシステムやノウハウを利用することができます。また、FC店は、経営方法についても、本部から指導や援助を受けることができます。(3)リスク回避と時間の節約FC店は、既に本部が開発して成功したお店の商標や経営のノウハウを利用できるため、事業の成功可能性は独自に事業を起こすよりも高く、経営リスクが低い上、独自に事業を起こすことに比べて時間を短縮することもできます。(4)資金の節約開業資金も、独自に店舗を設計し建設する場合よりも、一般的に少ないといわれています。 ■FC店にはどんなデメリットがある?FC店の最大のデメリットは、フランチャイズに縛られるということです。FC店は本部とは独立の事業体ではありますが、FC店は、本部の商標等や経営のノウハウを用いて、同一のイメージのものとに事業を行う権利が与えられるものですので、これに反するお店の経営をすることはできません。また、本部によって、これら権利が付与されるフランチャイズ契約が一方的に解約されたり、契約の更新を拒絶をされてしまうなど、FC店を継続できなくなる問題が生じてしまう可能性があります。不測の問題に巻き込まれないためにも、FC店を始めたいという方は、本部とのフランチャイズ契約をする前に、その内容につき、弁護士等の専門家に相談することが重要です。 あなたも「脱サラ」して自分のお店を持つ、その形の一つとしてのFC店を経営するという選択肢を検討してみてはいかがですか。 *著者:弁護士 牧野孝二郎(交通事故、労働災害、企業法務分野を扱う。この弁護士とであれば一緒に戦っていける・安心できるという印象を持てるような弁護士でありたいと思っています。)【画像】イメージです*Rawpixel / PIXTA(ピクスタ)
2017年07月28日*画像はイメージです:先日、平成3年から4年かけてスナック店主を4人殺害した男ら2人の死刑囚に対し、刑が執行されたことが発表されました。スナック店主を殺害した死刑囚については、再審請求も出ていただけに、一部には批判もあったようです。一方で、死刑が確定している場合は速やかに執行するべきだと言う声もあります。現状、死刑執行までかなりの時間を要していますが、一体なぜなのでしょうか?6ヶ月以内に執行しなければならないという法律もあったような気がしますが……。真相を確かめるため、星野法律事務所の星野宏明弁護士に見解をお伺いしました。 ■なぜ死刑執行に時間がかかる?「刑事訴訟法475条は、1.死刑の執行は、法務大臣の命令による。2.前項の命令は、判決確定の日から六箇月以内にこれをしなければならない。但し、上訴権回復若しくは再審の請求、非常上告又は恩赦の出願若しくは申出がされその手続が終了するまでの期間及び共同被告人であつた者に対する判決が確定するまでの期間は、これをその期間に算入しない。と規定しています。したがって、6ヶ月以内に死刑施行しないことは、形式的には明らかに刑事訴訟法475条に抵触しています。もっとも、同条1項が死刑執行を法務大臣の命令によるとした趣旨は、通常の刑罰執行は検察官の指揮によるところ、生命を奪う最大の人権侵害である死刑施行を慎重ならしめることにあります。下級審裁判例(東京地裁平成10年3月20日判決)の判示ですが、同条2項の6ヶ月以内の規定は、法的拘束力のない訓示規定であって、法務大臣が6ヶ月以内に死刑執行しなかったとしても、違法の問題が生じないと判断されたことがあります。したがって、同条2項は訓示規定であるため、違反していても具体的な違法の問題は生じないということになります」(星野弁護士)やはり人命がかかっているだけに、慎重な判断が求められるため、時間をかけているのですね。 ■再審請求中の死刑執行に問題は?次に、再審請求中の死刑囚に対して死刑を執行することについてお伺いしました。「再審請求中の死刑囚につき死刑執行が中断されるとの規定はどこにもありません。よって、再審請求中であっても、死刑執行は可能です。これまでは、再審請求中の死刑囚については、死刑執行を慎重ならしめるために、ある程度順番を後回しにしてきた事情があります。しかし、再審請求していれば死刑執行されないとの誤ったメッセージを死刑囚に与えかねないこともあり、今回のように実質的には同じ内容の再審請求を繰り返している場合には、再審請求中であっても、死刑執行したものと考えられます」(星野弁護士)再審請求が出た場合ある程度順番を後ろ回しにすることはあるようですが、法律に「中断される」という規定はなく、たとえ執行されても問題はないようです。 *取材協力弁護士:星野宏明(星野法律事務所。不貞による慰謝料請求、外国人の離婚事件、国際案件、中国法務、中小企業の法律相談、ペット訴訟等が専門。)*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)【画像】イメージです*Branislav Cerven / Shutterstock
2017年07月27日*画像はイメージです:上司に連れられて夫が風俗へ……なんて話、よく聞くかと思います。「上司に言われたら仕方がないね……」と許せるかたもいらっしゃれば、「断ることが出来たでしょ!」と怒りを覚えるかたもいらっしゃるかと思います。そこで今回は、夫の風俗通いが原因で離婚が可能かどうか解説していきたいと思います。 ■ そもそも離婚はどう法律で定められている?まず、離婚について整理しますが、相手方が合意してくれるのであれば、どんな場合であれ、離婚が出来ることになりますので、離婚できるかどうかを争う場合は、相手方が合意してくれない場合となります。相手方が話し合いに合意してくれない場合、「次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる」として1号から5号までが民法770条1項に規定されており、これが離婚原因にあたります。「配偶者に不貞な行為があったとき」(1号)や、「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」(5号)というものが、一般的には問題になることが多いです。なお、ここでいう離婚原因というのは、“相手方が話し合いによる離婚に応じない場合に、裁判所に離婚を認める判決を書いてもらえるための条件”という意味なので、“離婚話が持ち上がった理由や経緯”というような意味ではありません。離婚の訴えでは、“離婚原因があるとはいえ、夫婦間の修復可能性は本当になくなったといえるのか?”ということを諸般の事情から裁判官が修復可能性がなくなったかどうかを判断し、離婚を認める・認めない判決を下すことになります。 ■ 「不貞な行為」とは?それでは、民法770条1項にある「配偶者に不貞な行為があったとき」というのは、具体的にはどういうことなのでしょうか。この点について、最高裁は、「配偶者のある者が、自由な意思に基づいて、配偶者以外の者と性的関係を結ぶこと」だと述べています(最高裁昭和48年11月15日判決)。性交渉を行ったときはもちろんのこと、性交渉自体はなくてもそれに類似する行為を行ったのであれば、性的関係を結んだということになります。民法上は不貞行為の回数は問題とされていません。 ■ 上司に連れられて、風俗に継続的に通っていた場合は?上司から誘われたとはいえ継続的に通っていたわけですから、夫は、自分の自由な意思で、風俗嬢と性的関係を結んだということになるでしょう。特に夫が自腹で風俗代を支払っていたのであれば、なおさらです。したがって、「不貞な行為があったとき」に該当し、夫には離婚原因があるということになるでしょう。もっとも、その場合でも、諸般の事情から裁判官が“まだ夫婦関係は修復可能だ”と考えた場合には裁判離婚が認められない可能性があります。 ■1回だけ行った場合は?民法上は、1回だけであろうが継続的であろうが「不貞な行為」にあたることに変わりはありません。しかし、先ほど述べたように、離婚裁判の裁判官は、諸般の事情から修復可能性を検討することになります。そして、風俗に連れていかれたのが1回だったということも、この諸般の事情の中で考慮されます。継続的であった場合と比べると、1回だけの場合には、離婚を認める判決が下される可能性は低くなるでしょう。 ■ 上司の強制に逆らえなかった場合は?風俗についてこなければ降格を仄めかされたなど上司から事実上の強制があり、夫はそれに逆らえず渋々ついていったということも、ありえなくはないでしょう。この場合、夫が自由な意思に基づいて風俗嬢と性的関係を結んだとまでは言い切れず、したがってそもそも離婚原因にならないとも考えられます。また、仮に離婚原因にあたるとしても、最終的に離婚を認める判決を下すかどうかにあたっては裁判官の裁量が働きます。その中で、上司の強制があったという点が考慮される可能性は十分あると思われます。 ■ 遊んだ相手が男性だったら?ちなみに、先ほど述べた最高裁判決では「配偶者以外の者」と表現されているだけですが、不貞行為の相手方は異性であることが前提です。夫が風俗で性的関係を結んだ相手が男性であった場合には、「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」(5号)の問題となります(見た目が女性のニューハーフであっても、です)。この5号の離婚原因がある場合であっても、最終的には裁判官が“修復可能性”を判断するのは同様です。 *著者:弁護士 近藤美香(秋葉原よすが法律事務所。家事事件を専門的に取り扱い、500件以上の家事事件を取り扱った経験を持つ。JADP認定の夫婦カウンセラーの資格を保持している。)【画像】イメージです*LTim / Shutterstock
2017年07月23日*画像はイメージです:北海道の飲食店で、「客に早く帰ってほしかった」と噴射したスプレーにライターで引火させ、利用客にやけどを負わせるという事件がありました。お店のルールを守らない人を退店させる権利はお店側にもありますが、実力行使は基本的にNGです。退店させる際、強い口調により退店してもらう、あるいは、警察の介入をお願いするなどの方法が考えられますが、上記の件は、違法であることは読者の皆さまもお分かりかと思います。今回は、どういった場合にお店側は強制退店させられるのか、見ていきたいと思います。 ■お店が閉店時間を迎えた場合閉店時間を迎えた場合、いきなり強い口調による退店を強制するのは難しいと思います。徐々に退店を促すコールを強くしていき、30分経っても依然として帰らないというような場合には、威力業務妨害罪にもなりかねませんので、「これ以上居続けると、警察を呼びますよ」と言う警告を発して帰ってもらうというのがよろしいかと思います。 ■入店時に2時間制などと時間が決められていた場合後の予約のお客様を案内する都合もあるでしょうし、予め入店時間についてアナウンスしていたのであれば、時間になる少し前から時間のコールをし、退店が少しでも遅れた場合には、ある程度強く退店を強制しても問題ないかと思います。 ■何も注文しないで居座り続ける場合どの程度の時間、何も注文しないのかによりますが、30分以上何も注文しないまま居座り続ける場合には、退店の要請をしてもよろしいかと思います。「注文します」と言いつつ、その後もしないまま居続ける場合には、威力業務妨害そのものですので、警察を呼ぶなどの対処をしてもよろしいかと思います。 ■禁煙席で喫煙した場合現在は、分煙が常識化していますので、禁煙席で喫煙した場合には、お店のルール違反だということで、即退店を命じてもよろしかと思います。拒否するようであれば、威力業務妨害ということで警察を呼ぶなどの対処をしてもよろしいかと思います。 ■そのほかに一般的には、お店の業務を適正に行える範囲内かどうか、周りのお客様が我慢できる限界を超える程度かどうかが一つの基準になるかと思います。それを越えれば、刑事では威力業務妨害ということになりますし、民事では営業権侵害ということで損害賠償請求の対象となるものと思います。 *著者:弁護士 小野智彦(銀座ウィザード法律事務所。浜松市出身。エンターテイメント法、離婚、相続、交通事故、少年事件を得意とする。)【画像】イメージです*wavebreakmedia / Shutterstock
2017年07月21日*画像はイメージです:先日、あるプロ格闘家が交際相手の職場に勤める男性に暴行を働き、逮捕される事件が発生。男性は顔面を蹴られたうえ、手で壁に突き飛ばされてしまい、重篤な状態が続いているそうです。このようなプロの格闘家や空手・柔道の有段者など武術に優れた人間が一般人に対して暴れることは、非常に由々しき事態。当然、罪も重くすべきであると思われます。実際のところ、法律はどうなっているのか。エジソン法律事務所の大達一賢弁護士に見解をお伺いしました。 ■プロの格闘家が傷害事件を起こした場合罪が重くなるのか?「まず、暴行を加えた場合には暴行罪(刑法208条)が、暴行にとどまらず傷害まで負わせた場合には、傷害罪(刑法204条)が成立し成立する罪は、一般人であろうとプロの格闘家であろうと変わりません。暴行罪は「2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料」が、傷害罪が成立した場合には「15年以下の懲役又は50万円以下の罰金」が科されるとされています。具体的な刑は、刑事裁判にてその暴行・傷害に至った経緯や態様、傷害の程度など、諸般の事情を考慮した上で決められるので、「プロの格闘家である」という事実は、1つの事情として考慮され、その暴行態様が、一般人が同じことを行った場合よりも危険性が高いとして認定される可能性はあると思います。ただし、そのことは暴行に至った経緯やその格闘家が置かれた客観的状況などから決められ、たとえば多数人に囲まれた状況で急迫した身の危険が迫っていたような場合には、正当防衛が成立する余地も当然あり得ます。罪が成立する場合であっても、他の全ての事情をさて置いて、「プロの格闘家である」という事実のみをもって刑が重くなることはなく、あくまで総合的に判断されることになるでしょう。その意味では、昔より「プロボクサーは拳が凶器とみなされるから、たとえ絡まれたとしても抵抗できない」などと語られることがありますが、誤った解釈といえると思います。なお、かのガッツ石松さんは、世界チャンピオンになる前に喧嘩騒ぎを起こして逮捕されたことがあるそうですが、それは8人もの酔漢に囲まれてのやむを得ない正当防衛だったとして、送検される前に釈放となったそうです。プロ格闘家と比べるべくもありませんが、筆者も憲法の勉強をする前に拳法をかじったことがあります。格闘技はあくまで己の心身を磨くためのものですから、自分より力が弱い相手に対し、ことさらにプロ格闘家としての力を発揮するなんてことは、格闘家の風上にも置けないだろうという思いがありますし、実際の裁判で罪を重くする情状として斟酌されてしまうリスクは低くありません。かのハリウッド映画「スパイダーマン」でも「大いなる力には大いなる責任が伴う」と語られておりますが、与えられた力を世のため人のために活用していてもらいたいものですね」(大達弁護士) 基本的に加害者がプロ格闘家であるということだけで罪が重くなるということはないようですが、危険性が高いと認定される可能性あるようです。格闘家や武道に優れた皆さんは、自分が特殊能力を持っているということを自覚し、正当防衛が許されるような条件でないかぎりは、一般人に暴力を振るわないようにしてください。 *取材対応弁護士: 大達 一賢(エジソン法律事務所。第一東京弁護士会所属。「強い、やさしさ。」、「守る≒攻める」、「戦略&リーガル」の3つの思いを胸に、依頼者のために全力を尽くします)*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)【画像】イメージです*wavebreakmedia / PIXTA(ピクスタ)
2017年07月17日*画像はイメージです:豊田議員が、自動車内で日常的に秘書を罵倒していたと思われる問題は、連日ワイドショーなどで音源が公開され、有権者に驚きを与えています。問題は現在罵倒を受けた秘書が暴力行為を受けていたとして、警察に被害届を提出。今後、捜査が進められる模様です。暴行罪はもちろんですが、車内で身体的特徴を揶揄する、「家族に危害を加える」などと、脅しているとも思える音源が公開されており、名誉教授や侮辱罪に問われるのではないかとの指摘もあるようです。今後どのような展開になっていくのか。法律事務所アルシエンの清水陽平弁護士にご意見を伺いました。 ■どのような罪になる?「本件では、恫喝しているということですが、あくまで罵倒を繰り返しているだけということになり、かつ、車内という閉鎖空間におけるものであるため、名誉毀損や侮辱には当たりません。なお、現時点では音声が公開されているため、形式的には名誉毀損などに当たる可能性はあるといえますが、被害者が自ら公開しているといえるため、違法性がないということになります。また、何か危害を加えることを言っているというわけでも必ずしもないため(子どもを轢き殺す云々といったことも言っていたように思いますが、比喩的なものとして使っているように思われるため)、脅迫に当たるかという点についても疑義があります。したがって、刑事上問題にすることができるとすれば、被害届が出されている暴行罪か、実際に怪我をしていれば傷害罪によるしかないと思います」(清水弁護士)現在公開されている情報をみるかぎり、名誉毀損や侮辱には当たらず、脅迫についても罪に問える可能性は低く、暴行罪や傷害罪が有力であるようです。 ■密室でのハラスメントを受けたらどうするべき?今回の件に限らず、密室でのパワハラやセクハラなどのハラスメントを受けることは、稀にあります。そんなとき、どのように対処し、その有無を立証していくべきなのでしょうか?同じく法律事務所アルシエンの清水陽平弁護士に聞いてみると……。「本件のようなパワハラは、密室で行われることが多いため、ICレコーダーなどでその様子を録音する、隠しカメラなどを設置して録画するなどして立証するしかないと思われます。また、当該被害を受けている状況を第三者が見ている場合は、その人に証言をしてもらう、ということも考えられます。ただし、証言よりも、より客観的な証拠である録音・録画の方が証拠としての価値が高いと判断されるでしょう。」(清水弁護士) やはり録音や録画をして「動かぬ証拠」をとっておくしか、密室でのハラスメントを立証する手段はないようです。ただし危険が伴いますので、「密室でのハラスメント」に悩んでいる方は、弁護士に相談し、対策を協議したうえで、行動に出ることをおすすめします。 *取材協力弁護士:弁護士 清水陽平(法律事務所アルシエン。インターネット上でされる誹謗中傷への対策、炎上対策のほか、名誉・プライバシー関連訴訟などに対応。)*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)【画像】イメージです*EKAKI / PIXTA(ピクスタ)
2017年07月16日*画像はイメージです:近年、自動車が高速道路を逆走するといったニュースが相次いでいます。道路を逆走しただけではなく、他の自動車と正面衝突し、結果自動車が大破し大怪我や時には人命が失われることも少なくありません。このような逆走事故が起こるケースとしては、運転者が降り口を間違え慌ててターンし元の車線に戻ろうとする場合や、SAから本線に戻る場合に誤って逆方向の車線に進入してしまった場合などが考えられます。また、運転者の高齢化により認識能力が衰え、高速道路の出入口を間違えてしまうといった場合もあります。以下では、もし高速道路を逆走してしまった場合、法律的にどのような罰則や処分が課せられるのかについて紹介します。 ■高速道路逆走で事故を起こすと重い罪にまず、故意に高速道路を逆走して事故を起こし、人を死亡または負傷させた場合、自動車運転死傷行為処罰法(自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律)の「危険運転致死傷罪」にあたります。同罪の刑は、逆走して人が死亡した場合は1年以上(20年以下)の懲役、負傷させた場合は15年以下の懲役と定められています。結果の重大性からすると、このように重い罪に問われることはやむを得ないでしょう。行政処分としては「減点62点(死亡)又は55点(負傷)」と定められています(道路交通法施行令)。なお、過失により道路を逆走し、人を死傷させた場合は、同法の「過失運転致死傷罪」にあたり、7年以下の懲役もしくは禁固又は100万円以下の罰金に処せられます。 ■逆走しても事故を起こさなければ処罰は軽くなる一方で、ただ逆走しただけで事故を起こさず、人が死傷しなかった場合、適用される処罰・処分は大きく変わってきます。まず、人が死傷していないということで、上記の危険運転致死傷罪には該当しません。道路交通法という交通の安全や危険防止を図るための法律により、処罰が科せられることになります。道路の逆走について、道路交通法では、自動車が本来の通行部分と異なる部分を通行した場合として、「通行区分違反」の行為と扱っており「3月以下の懲役または5万円以下の罰金」の刑事罰が定められています(道路交通法119条第1項2の2)。さらに、行政処分として「反則金9,000円(普通車の場合)」及び「減点2点」と定められています(道路交通法施行令)。ただし、反則金納付制度により、上記反則金を納付すれば刑事罰が科せられることはありません。また、通行区分違反の行為については過失犯の定めはなく、過失(うっかり)で逆走したとしても処罰を受けることはありません。 このように、逆走行為は大事故に繋がりかねない大変危険な行為である一方で、法律上定められている処罰は比較的軽微なものであるのが実情です。 ■逆走事故の過失割合は原則「100:0」逆走事故に伴い損害が発生した場合、損害賠償金の支払いについて、逆走車両と他の車両との間での過失割合が問題となります。逆走行為は、それ自体が罪となる行為ですので、事故を起こした場合の過失割合も、基本的には逆走車両に一方的に過失があるとされ、原則として「加害者側(逆走):被害者側=100:0」となります。ただし、被害者側も、逆走してくることを早い時点で遠方から認識し得たにも拘わらず、何も回避措置をとることなく漫然と車を進行していたような場合など、不注意があったとして過失が認められる場合がないわけではありません。相手方の違反行為により損害を被ったとしても、やはり運転者自身も自動車を運転する際には注意をすることが必要です。 ■逆走した人が認知症を患っていたら過失を免れる?まず、認知症を患っている者が高速道路を逆走し、事故を起こして人を死傷させた場合、運転行為に過失があると判断されると、自動車運転死傷行為処罰法の過失運転致死傷罪により処罰されます。この場合に科せられる刑は、7年以下の懲役もしくは禁固又は100万円以下の罰金です。ただ、負った怪我の程度が軽く、また量刑を定めるにあたって斟酌すべき事情(情状)がある場合には、任意的に刑を免除することができます。一方で、運転者が重度の認知症を患っており、そもそも責任能力がないというような場合、刑事責任が問われないケースもあります。この場合、民事上の損害賠償についても責任能力がないとして、賠償責任を負わないことになります(民法713条)。ただ、運転者を監督すべき者がいる場合には、監督義務を怠ったとしてその者が損害賠償義務を負うことはあり得ます(民法714条)。 なお、高齢者による交通事故の増加に伴い、道路交通法が平成29年の3月に改正されました。それによると、高齢者の免許更新時や一定の違反行為の際に、認知機能の検査が義務付けられ、認知症のおそれがあるとされた高齢者には、特別の高齢者講習が課されることになりました。運転手の高齢化に伴う交通事故の増加をいかに抑えるか、今後の大きな課題といえます。 *著者:弁護士 渡部孝至(弁護士法人はるかぜ法律事務所代表弁護士。『身近な弁護士』をモットーに、ご依頼者様の目線で親切・丁寧・迅速な対応を行い、リーズナブルなご費用で良質なサービスを提供することを使命としている。)【画像】イメージです*jamesteohart / Shutterstock
2017年07月16日*画像はイメージです:将来結婚しようと思っている相手と婚約をしても、同棲して過ごすうちに相手の嫌なところが見えてきて、結婚を取り消したいなどと思うようなケースもあるようです。実際に結婚をしていたら、自分の意志だけではなく相手の合意などが無いと離婚できない事を知っている人も多いかと思いますが、もしも婚約の段階で別れたいと思った場合、自由に婚約を破棄することが出来るのでしょうか。婚約とは何なのか、そして、婚約の解消は法律ではどのように定められているのかといった点について解説していきたいと思います。 ■そもそも婚約って何?婚約とは、将来に婚姻(=法律上正式な結婚)をしようという男女間の約束のことです。男女がお互いに誠心誠意、将来夫婦になろうと約束すると、婚約が成立します。婚約は、単なる口約束で契約書にしなかった場合や、同棲や結納、挙式などを行っていなかった場合でも“理屈上は”成立しえます。しかし、そのような場合ですと、婚約が本当に成立したかどうかを争われると、誠心誠意の約束があったという証明が難しくなってしまいます。なお、婚約と紛らわしい言葉で“内縁”というものがあります。内縁というのは、“事実上は夫婦だが婚姻届を出していない”という男女関係のことです。そのため、婚約とは全く意味が違います。 ■婚約の解消についていつでも、そして特に理由が無くても、一方的に婚約を破棄することは原則として自由です。婚約を破棄するために、例えば婚約後に相手方の好ましくない情報(結婚歴があった、犯罪歴があった等)が見つかったというような事情は、全く必要ではありません。「えっ!?」と思われるかもしれませんが、そもそも婚姻はあくまで純粋に自由な意思に基づいてなされるべきものですので、一旦婚約が成立したからといってそれを理由に婚姻を強制することはできないのです。この点が婚約と結婚の大きな違いとなっています。 ■慰謝料の請求はできる?婚約を破棄された側が婚約破棄の責任を追及することも、原則としてできません。しかし、破棄を申し出た側に落ち度がある場合には、破棄された側は損害賠償を請求することができる場合があります。この場合、婚約を信じたことによって被った損害や精神的損害について、婚約破棄した側は損害賠償を支払わなければなりません。例えば、婚約した後で相手方に子どもがいると分かったという場合、一般論として落ち度があるのは、子どもがいると告げなかった相手方であると考えられますので、告げられた側が婚約破棄するのは自由と考えられます。その場合は、告げられた側が婚約破棄しても、そのことについて慰謝料を支払う義務はないでしょう。また仮に、子どもがいると告げてくれていれば婚約しなかったし、相手方はそのことをよく分かっていたはずだというような場合を想定すれば、具体的な事情によれば、逆に相手方に損害賠償を請求できる可能性もありえるでしょう。もっとも、具体的な事情は下記のように様々なものが考えられます。 ・双方の年齢(若い年齢なのか、円熟した年齢なのか、年齢差があるのかなど)・婚約前に相手方に疑わしい事情はなかったのか・相手方に結婚歴や子どもの有無をはっきり確認したのか・結納や結婚式の予約などを既にしていたのか 損害賠償が実際に認められるかどうかは、このような事情を踏まえて検討する必要があり、非常に複雑です。お困りでしたら、お気軽にご相談ください。 *著者:弁護士 近藤美香(秋葉原よすが法律事務所。家事事件を専門的に取り扱い、500件以上の家事事件を取り扱った経験を持つ。JADP認定の夫婦カウンセラーの資格を保持している。)【画像】イメージです*マハロ / PIXTA(ピクスタ)
2017年07月11日*画像はイメージです:著作権の観点から、その存在がたびたび問題視される「まとめサイト」。2ちゃんねるの内容をまとめたものに加え、Twitterのツイート、さらには個人ブログも「まとめ」の名目で転載されるケースがあるようです。このようなサイトがいまだに生き残っているのはなぜなのか?「著作権侵害」にはならないのか?また、自分のツイートやブログなどを掲載されることを拒否できないのか?インターネット問題に詳しい法律事務所アルシエンの清水陽平弁護士にご意見を伺いました。 ■まとめサイトは著作権侵害ではない?掲載拒否は可能?「まとめサイトが著作権を侵害するものであるかどうかは、著作権法32条の「引用」の要件を満たしているかどうか次第です。「引用」の要件を満たせば、掲載を拒否したとしても、掲載を拒否することは不可能です(その意味で「無断転載禁止」のような表示には何の意味もありません)。その要件は、条文上、(1)公表された著作物であること(2)公正な慣行に合致すること(3)目的が正当な範囲にあることが必要とされます。ただ、具体的にどのようなものが「公正な慣行」なのか、というところが問題であり、裁判実務上では、一般的にA 引用された部分が明確であること(明瞭区別性)B 引用する側が「主」で、引用される側が「従」と いえる関係にあること(主従関係性)が重視されています。Aは、たとえば引用部分を「」とか“ ”で括るなどして、どこからどこまでが引用部分なのかを明確にする必要があります。当然、引用している内容を改変するなどすれば、それは引用には当たないため、そのままコピーする必要があります。Bは、読んで字の如くですが、自分で調べて書き上げた記事や、意見や主張を基礎付けるために、他の記事を持ってくるといったことが必要です。まとめサイトは、Bの要件を満たしていない場合もあると思われ、その場合には引用の要件を満たさないと判断される余地はあります。なお、仮に引用の要件を満たしていないと考えても、実際にそうなのかどうかは、最終的に裁判所が判断することになります。したがって、著作権侵害であることが明らかにされるには、引用の要件を満たさず著作権侵害があるとして訴えるか、告訴をして捜査をしてもらうことが必要になります」(清水弁護士) まとめサイトが著作権を侵害しているかどうかは、著作権法32条の「引用」の条件を満たしているか否かが判断基準になるそう。そして最終的にその要件を満たしているか否かは、裁判所が判断することになるようです。お悩みの方は、ネット問題に詳しい弁護士に相談し、告訴をするか否か話しあったうえで行動にでることをおすすめします。 *取材協力弁護士:弁護士 清水陽平(法律事務所アルシエン。インターネット上でされる誹謗中傷への対策、炎上対策のほか、名誉・プライバシー関連訴訟などに対応。)*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)【画像】イメージです*Graphs / PIXTA(ピクスタ)
2017年07月09日*画像はイメージです:子どものいる夫婦が離婚した際に支払いの必要性が発生する養育費。一般的に養育しないほうが、養育するほうに対して、自身の子どもが成人として自立できるまでに必要な費用を支払うものとされています。当然ながら支払いの義務が発生した場合、親の責任としてそれを遂行するのが基本です。しかし、なかには義務を果たさず、支払われていないケースもあるようです。このような場合、罰せられることはないのでしょうか?和田金法律事務所の渡邊寛弁護士にお聞きしました。 ■養育費不払いの罰則規定は?「履行命令違反の10万円以下の過料のほかに不払いの罰則はありません。相手方が調停や審判で定められた養育費の支払いを怠っていた場合、家庭裁判所に履行勧告や履行命令を申し立てることができます。履行勧告に法的な強制力はありませんが、履行命令に従わないときは、10万円以下の過料が課せられます。相手方が養育費の支払いをしない場合は、強制執行により口座預金や給料を差し押さえることも方法になります。養育費は長期間継続的に支払わなければならず、しばしば不払いの問題が起こります。もっとも、履行命令違反の過料を除けば、他の金銭債権の取立回収と同様、罰則をもって支払いを強制する制度はありません」(渡邊弁護士) ■収入に変化があった場合変更は可能?故意に払わないのは言語道断ですが、収入の減少や借金の増加で支払えなくなるケースや、離婚後成功し、収入が増加することもあります。このような場合、予め取り決めた養育費を増額することはできるのでしょうか?「合意当時に予測できなかった事情の変更があったときは、養育費の増減の変更をすることができます。養育費は離婚の際に協議や審判で金額が定められますが、合意や審判のときに予測できなかった事情の変更があったときは、金額を増減することができます。養育費の増減事由となる事情変更は、父母の収入の増減や就労状況の変化、再婚・養子縁組・新たな子の誕生等の家庭環境の変化、物価や貨幣価値の変動など、一切に事情を総合的に考慮して判断されます。また、養育費の決定に際して実務上用いられる算定表は、子どもの年齢区分によって金額が異なります。そのため、子どもの年齢が上がったとき(従来の算定表では15歳)も養育費増額の事情変更となります。新たな借金や借金の増大が事情変更となるかは借金の理由などによって異なります。例えばマイホーム購入のために住宅ローンを組んでも通常は事情変更にはならないでしょう。給料の大幅な増額は、事情変更となりやすいように思います」(渡邊弁護士)合意時に予測できなかった事情の変更がある場合は養育費の増減が可能だそう。こと給与の大幅な増額については、事情変更となる可能性が高いようです。養育費について悩んでいる人は、意外に多いと聞きます。知識豊富な弁護士に相談し、解決を図ってみてはいかがでしょうか。 *取材協力弁護士: 渡邊寛 (和田金法律事務所代表。2004年弁護士登録。東京築地を拠点に、M&A等の企業法務のほか、個人一般民事事件、刑事事件も扱う。)*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)【画像】イメージです*プラナ / PIXTA(ピクスタ)
2017年07月08日