サカイクがお届けする新着記事一覧 (15/34)
お子さんたちが夏休み中、親子でサッカーの会話をすることや一緒に試合観戦、動画視聴などをする機会も増えたのでは?本日は、ジュニアサッカー(少年サッカー)の保護者向け情報サイト「サカイク」で2022年1月から7月に配信した記事の中でみなさんの注目度が高かったトレーニング記事をランキングでご紹介します。親子で遊びながらサッカーの動きが身につくメニューです。記事配信当時に見逃した方も、いま一度ご覧ください。第3位相手にボールを奪われないボールキープ術を身につける初心者が苦手とする「ボールキープ」。試合でわが子がボールを奪われピンチを招いたとき、親の方が焦ったり、いたたまれなくなってしまった経験を持つ方もいるのでは。ボールを奪われないようキープするためには、ボールの置き所を理解するだけでなく、身体の使い方も大事です。親子のコミュニケーションの中でボールキープの原理原則を理解し、苦手意識を払しょくしてあげるのにお勧めのトレーニングです。記事を読む>>サカイクの最新イベントやお得な情報をLINEで配信中!第2位ドリブルで相手を交わせるようになる第2位は、サッカーの基本スキル、ドリブルで相手を交わせるようになる方法を紹介したトレーニングです。試合中、ボールを奪いに来た相手を交わすためには、相手との距離感が大事です。初心者はその距離感が上手くつかめず、簡単にボールを奪われたり、離れた位置から1対1を仕掛けてしまい全く抜けないことも多々あるもの。相手にとられないボールの置き所と、相手を交わすタイミングが理解できるようになるトレーニングです。記事を読む>>第1位「最初はどんな練習をすればいいの?」を解決!サッカー練習法第1位は、最初はどんな練習をすればいいのかわからない、という方々におすすめの基本動作が身につくトレーニング。親心として「最初から正しい手順、方法で身につけてほしい」「間違ったやり方が身についてしまうと、後から矯正が大変」といった意識もあり、サッカーの基本的な動きを理解しながらスキルを身につけるトレーニングに関心が高まったようです。「この練習から始めなければいけない」という決まりはないですし、まずはボールを蹴る楽しさを知っていただくことが何よりも大事です。まずは子どもの「サッカーって楽しい」を大事に、親子で遊びながらサッカーにつながる動きの習得をサポートしてあげるのが良いのではないでしょうか。記事を読む>>いかがでしたでしょうか。これからも親子でコミュニケーションをとりながらサッカーの動きを理解して身につけるトレーニングを配信していきますので、ご愛顧のほどよろしくお願いいたします。サッカー少年の親が知っておくべき「サカイク10か条」とは
2022年08月18日指導者が「リフティングが100回できた者からレギュラー」と言ったから一生懸命練習してチームで一番できるようになった。試合でも、一人でドリブルして相手を交わしてゴールを決めた。チームミーティングでも「別次元」と褒めたらしいのに、出場機会がどんどん減ってる。リフティングでレギュラーの話はどうなった?わが子が出場できない理由を聞いてもいいの?というご相談をいただきました。今回もスポーツと教育のジャーナリストであり、先輩サッカーママでもある島沢優子さんが、これまでの子育てと取材で得た知見をもとに、アドバイスを送ります。(文:島沢優子)(写真はご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)<<指導者が息子を劣等生扱いするのがツラいのでチームを辞めさせたい問題<サッカーママからのご相談>小学校5年生男子の母親です。地区のスポーツ少年団のチームに所属しています。3年時に指導者が変わり、4年生から試合に出る時間が少なくなり、現在公式戦はもちろんのこと、練習試合での出場時間もほとんどなくなりました。指導者は、常々「実力勝負」「勝ちにこだわる」ということを口にして、練習試合であっても下級生を連れてきてスタメンで使っています。少しでも試合に出れるよう、指導者に次の2点を尋ねて良いものか、逆恨みされないか、悩んでおります。1点目は、指導者の過去の発言について。指導者がリフティングに凝った時、「リフティングが100回できた者からレギュラーだ」と言ったことがあります。息子は一生懸命練習し、チームで唯一常時100回左右でできるようになりました。最高は250回です。チームには息子ほどできる子はいません。「レギュラーの話はどうなったのか」と聞くのは嫌味に聞こえるでしょうか。2点目は、選手起用の考え方についてです。我が子のみを見ていて目が曇っているのかもしれませんが、どうも指導者に好かれていないように思えてなりません。先日の試合で、息子は5年生で唯一公式戦に出してもらえませんでした。その後のフレンドリーマッチでも、公式戦で足を痛めた子が続けて出て、息子はその子と代わる形で後半から出場しました。息子は、得意のドリブルで相手をかわして前まで持っていきゴールを決めました。素直に上手でした。その後の全体ミーティングで、指導者は「凄かった。別次元の動きだった」と皆の前で褒めました。息子は「じゃあ、最初から出せ」と思ったそうです。「別次元の動き」と褒める割には、お情け程度(フレンドリーマッチの半分)にしか試合に出さない理由を尋ねて良いものでしょうか。不毛なことでしょうか。<島沢さんからの回答>ご相談いただき、ありがとうございます。試合に出られないわが子を見守るのは、親としても辛いものがありますね。私も親として同じ思いをしたので、お気持ち察します。■自分の当番日に出場できなかったから辞めさせた親もあるサッカークラブで、小学5年生からサッカーを始めたA君が入団して半年も満たずに辞めてしまいました。A君自身は続けたかったのですが、お母さんの一存で辞めさせたのです。ご自分が当番だった日にA君が公式戦に出られなかった。それが理由でした。ひとつ下の4年生の上手な子が数人出場していました。「みんな試合に出られると聞いていたのに、息子は出られなかった。言っていることとやっていることが違う。信用できません」お母さんは、周囲にそう漏らしていました。コーチらは試合後、プレー時間がなかったことをA君に謝り、次の練習試合でたくさん出られるようにするからと話していました。本人も納得して帰って行ったのですが、お母さんは納得していませんでした。コーチの方は「子どもとともに、母親にも話をするべきだった」と後悔していました。「まだサッカーを始めたばかりだから、出られなくても仕方がないと思ってくれると期待してしまった。5年生は高学年だしプライドもある。お母さんにもあったでしょう。そこを僕らが汲めなかった」これは10年ほど前。試合に全員出場させようといった機運はほぼなかった時代のお話です。サカイクで連載をされている池上正さんを始めとして「全員に出場機会を」の機運は少しずつ広がりつつありますが、10年経っても状況は劇的には変わりません。8,9割のチームが勝利するためにレギュラーメンバーをずっとプレーさせている。それが、さまざまな指導者や親たちに取材してきた私の実感です。サカイクの最新イベントやお得な情報をLINEで配信中!■わが子への「かわいそう」という感情は、くせ者。共感は良いが同化はダメとはいえ、A君のお母さんの行動は正しかったと思われますか?A君のお母さんは、息子さんが試合に出られずベンチでポツンと座っている姿を見るのが辛かったのだと思います。辛いだろう、悲しいだろうと思うと、かわいそうになりますね。しかし、親のわが子への「かわいそう」という感情は、実はくせ者です。得てして良い子育てに繋がりません。この連載で何度か申し上げているように、子どものつらさに共感するのは必要なことですが、子どもの気持ちと同化してはいけません。同化するとは、子どものつらさを、親がわがことのように受け止めてしまうこと。お母さんが「そんな子どもを見守っている私って、かわいそう」となりがちです。■コーチに質問したいのは、親御さんが自分の気持ちを鎮めたいからでは?かわいそうなままでは不安です。不安な親は、自分の不安を払拭したくて子どもに干渉したくなります。第三者がみれば過度な干渉でも、親御さん自身は「子どもに良かれと思って」世話を焼いてしまいます。「リフティングができたら試合に出すと言ったじゃないか!」「異次元の動きと褒めたのに、なぜレギュラーじゃないのか?」そのようにコーチに質問したくなるのは、息子さんに良かれと思ってでしょうか?もしかしたら、ご自分の気持ちを鎮めたいのではありませんか?実はストレスがたまった「自分に良かれと思って」考えたことかもしれません。子を想う親の気持ちは非常に複雑です。子どもに笑顔でいてほしい。努力が無駄にならずに済むようにしてあげたい。すべて親心です。■親が先回りしてしまうと、子どもは自分で思考することや課題解決の経験が積めないところが「良かれと思って」やったことはほとんどの場合、子どものためになりません。なぜならば、親が先回りすることで、子どもは何も考えず、何もやらなくて済みます。要するに、自分の課題解決をする経験を積めません。親心は時として暴走することがあります。そこに気をつけなくてはなりません。暴走しないためには、まず子育てをしている意味を考えましょう。お母さんが息子さんを育てるなかで、最も大事なのは何ですか?私は、まず子どもを死なせないことだと思います。私の子ども二人は兄妹ともサッカーをしていましたが、兄は割と鈍感なので心配しませんでしたが、生真面目で繊細な妹のほうはサッカーで気に病んでいそうなとき、命を絶ったりしないか彼女の表情を盗み見ていました。気になって寝室に見に行ったこともあります。■もう5年生、監督やコーチには自分で質問させよう次に大事なのは子どもの人としての成長を支えること。息子さんはもう5年生、高学年です。成長してほしいのならば、上述したように何事も自分で解決をする経験をさせてあげてください。「リフティングが100回できた者からレギュラーだ」と言ったコーチに対し、「僕は努力したのに。レギュラーの話はどうなったのか」と尋ねるのは、息子さんがやるべきです。少なくとも、お母さんではない。「聞いてみたら?」と話し、息子さんが「え~、聞けないよ」と拒むなら、まだその時期ではないということ。ほっとけばいいのです。選手起用についても、「別次元の動きだった」と皆の前で褒めたのなら、「じゃあ、最初から出してください」と自分で言えばいい。親としては「悔しいなら言ってみたらいいじゃん」くらいの態度で十分ではないでしょうか。なぜ試合に出られないのか。そこを自分で考えて策を講じる経験をさせてあげてください。それをせずに、親のほうが「なぜ出られないんだ?」と詰問するのは、子どもが成長する機会を奪うことになりかねません。■子どもに自信を持たせたいなら、親がいつまでも不安を抱えていないこと(写真はご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)そして最後に。お母さんがいつまでも不安に思っていては、息子さんは自分に自信を持てません。大好きなお母さんを「いつまでも不安がらせるダメな僕」であり続けるからです。子育ては、子どもへの「不安」を「信頼」に転換する旅なのです。島沢優子(しまざわ・ゆうこ)スポーツ・教育ジャーナリスト。日本文藝家協会会員(理事推薦)1男1女の母。筑波大学卒業後、英国留学など経て日刊スポーツ新聞社東京本社勤務。1998年よりフリー。『AERA』や『東洋経済オンライン』などで、スポーツ、教育関係等をフィールドに執筆。主に、サッカーを始めスポーツの育成に詳しい。『桜宮高校バスケット部体罰事件の真実そして少年は死ぬことに決めた』(朝日新聞出版)『左手一本のシュート夢あればこそ!脳出血、右半身麻痺からの復活』『王者の食ノート~スポーツ栄養士虎石真弥、勝利への挑戦』『世界を獲るノートアスリートのインテリジェンス』(カンゼン)など著書多数。『サッカーで子どもをぐんぐん伸ばす11の魔法』(池上正著/いずれも小学館)ブラック部活の問題を提起した『部活があぶない』(講談社現代新書)、錦織圭を育てたコーチの育成術を記した『戦略脳を育てるテニス・グランドスラムへの翼』(柏井正樹著/大修館書店)など企画構成も担当。指導者や保護者向けの講演も多い。最新刊は『スポーツ毒親 暴力・性虐待になぜわが子を差し出すのか』(文藝春秋)。
2022年08月17日サカイクがお届けする『親子で遊びながらうまくなる!サッカー3分間トレーニング』。今回はサッカー初心者の悩み「ボールに合わせた動きがうまくできない」を克服するトレーニングをご紹介します。試合中は、ボールに合わせて身体を動かすことが多いもの。ボールに合わせてステップを変えたり、臨機応変に対応しなければなりません。しかし、初心者は動きがぎこちなかったり、運動経験があまりないと、ボールに合わせて自在に身体を動かすことが難しいもの。今回は、広いスペースがなくても親子で遊びながら、ボールに合わせて身体を動かすことができるようになるトレーニングを紹介します。親は難しい動きはありません。【やり方】1.親子で対面して立ち、子どもは手でボールをバウンドさせる。右手だけ、左手だけ、両手でバウンドをする2.子どもはボールを上に投げて両手でキャッチ。動きに慣れてきたら、頭や肩、お腹を触ってからキャッチするように難易度を上げる3.足でドリブル。両足を使ってちょこちょこボールを触りながらドリブルする。その後、右足だけ、左足だけでドリブルをする4.親の動きを見て、動作をマネする(※動きだけでなく、「見る」トレーニングにもなる)【トレーニングのポイント】・ボールを投げる動きの時は、ボールをよく見て落下地点を見定め、どこに手を出せばいいか理解する・親の動きを見て、マネをして同じ動きをする・力まずリラックスして行う・慌てずゆっくり、慣れてきたらリズム良く行う・失敗しても気にせず、親子で楽しみながら行う次回もサッカー初心者のお悩みに応えるトレーニングをお届けしますのでお楽しみに!お父さんコーチに役立つ練習メニューを公開中>>
2022年08月16日子どもたちが毎日たくさん練習することを「サッカーが好きすぎて」「上手くなるために頑張ってる」と目を細める親や指導者もいますが、それって正しいのでしょうか。オーバートレーニングになっているのでは?たくさん練習する=上達じゃないのでは?成長期に運動しすぎることの弊害は?など、今回はサカイク編集部が気になっている疑問を池上さんにぶつけてみました。ジェフユナイテッド市原・千葉の育成コーチや、京都サンガF.C.ホームタウンアカデミーダイレクターなどを歴任し、のべ60万人以上の子どもたちを指導してきた池上正さんが、練習しすぎによる心身への影響などを教えてくれました。(取材・文島沢優子)池上正さんの指導を動画で見る>>(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)<<仲間との協力プレーは大事だけど、ドリブルなど個のスキルも不可欠だと思う。U-8年代の指導は何に注力すべきか教えて<編集部からの質問>今回は、コーチからの質問でなく編集部から質問させていただきます。「運動しすぎること」について教えてください。いっぱい練習すること、長時間練習することが上達につながる、と思っている指導者はいまだに多くいるように思います。また、保護者側も同じように思っている方も多く、「毎日練習があるチームの方が上達する」と入団のポイントに挙げていたり、練習以外でもずっとボールを触っていることを「上達するために頑張っている」と目を細める方も少なくないようですが、これってサッカーの「しすぎ」ではないでしょうか。(オーバートレーニング症候群?)疲労回復の面や、成長期に運動しすぎるのは、摂取した栄養より消費カロリーが多そうで、身体を大きくする面でも気になります。先日の弊社イベント、親子サッカーでトレーニング後もずっとサッカーしている子たちがいて、池上さんが「練習しすぎを止めるのも大人の役目」と言ったと聞きました。指導者や親は、子どもの運動量について、どの位を目安にすればいいですか。<池上さんの回答>サカイク編集部から興味深い相談がありました。ありがとうございます。さて、みなさんは「超回復」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?アスリートだった方や、大学などでスポーツを学んだ方はよくご存じかともいます。超回復とは、トレーニングの間にきちん休むことで運動が定着することです。科学的にも証明されています。■筋力アップやスキル習得のためにも休息して「超回復」させることが大事例えば、練習や試合の後に一日、二日と休んだ翌日、トレーニングしたことが定着している、つまり上手くなったような感覚を持つことがあります。その感覚はその後少し薄れるのですが、そうやって運動しては、休みをきちんととることでうまくなっていきます。休息は、大人だけでなく子どものアスリートにとっても非常に重要です。また、超回復というと、筋力アップのためには休みが必要であるという説が有名です。しかし上述したように、スキル習得にも超回復は立証されています。サカイクの最新イベントやお得な情報をLINEで配信中!■サッカーが上手くなるためには、心身の余裕が大事そもそもインプットしたスキルは試合で使えるようにしないと意味がありません。要するにアウトプット、試合で発揮する機会が必要です。ところが、毎日ずっと練習しているとインプットばかりになってしまいます。いや、週末には試合をしていますよ、とおっしゃるかもしれません。が、少年サッカーの試合でコーチがこうしなさい、こう動きなさいと指示ばかりしていれば、それは練習になります。アウトプットし、それをまた自分で振り返る。サッカーが上手くなるには、そのようなこころの余裕が大切になってきます。きちんとお休みをとればリフレッシュできるのです。加えて、小学生年代に来る日も来る日もスポーツ漬けでは、人間形成ができません。もちろんサッカーによって人として成長するのですが、大人になるための学びの機会が必要です。サッカーだけじゃない。長い人生を考えると、友達と遊んだり、家族でどこかに出かけたり、野外活動などサッカー以外の豊かな経験を積んでほしいと思います。■日本の子はオーバートレーニングのリスクにさらされている欧州では、サッカーの間に、他の遊びをします。さまざまなスポーツも体験させます。例えば水泳やバスケットボールなど、他のスポーツの経験が後々サッカーの役に立つこともあります。ことサッカーという競技は、さまざまな運動技能が合わさったものです。ボールを足で扱うわけなので、多くの場面で片足で立っています。つまりバランスの競技です。そのことから、他のスポーツが大いに役に立ちます。日本でも、いくつかの競技を並行して行なう「マルチスポーツ」が注目されるようになりました。一方で、日本の小学生はオーバートレーニングのリスクにさらされています。小学校に紐づけられた少年団などでは朝練を行っているところもあります。そうなると、例えば放課後にサッカースクールに通う子の場合、寝るのは夜11時過ぎなのに翌日は早起きして学校に行かなくてはなりません。しかも、朝練はコーチや親から「やりなさい」言われてやっています。自発的な練習ではありません。■練習を「やればやるほどうまくなる」という根拠はない夏休みも、チームからの「リフティング〇回できるようになろう」という宿題に取り組まなくてはなりません。夏休みはもっと自由に他のことができるはずなのに、人としての成長に必要なことができなくなります。すでに申し上げたように、サッカーでも学べるけれど、他のことに集中することも大事です。そういったことがよくわかる本に『アスレチックスキルモデル才能を適切に発揮させる運動教育』(レネ・ウォンホートほか/金子書房)があります。良かったら手にとってみてください。たくさん練習をすれば上達する、やればやるほどうまくなると皆さん思われていますが、まったく根拠がないことがよくわかるでしょう。■運動しすぎるリスクは身体だけでなく精神面にも。楽しむはずのスポーツに「抑圧」されている運動をし過ぎるリスクは明白です。ジュニア期でオーバートレーニングになると、サッカーであればかかと、足の甲、足首、膝、腰と、下半身を中心にスポーツ障害のリスクが高まります。休まず長時間練習すると、睡眠が足らなくなります。そうすると身長が伸びません。100%、良いことはありません。加えて、精神的にもバーンアウトする恐れがあります。それなのに、大人も子どもも「練習しないと不安だ」という気持ちになっています。楽しくて、子どもの生活を豊かにするはずのスポーツによって、抑圧されています。このことは「毎日真面目に練習しなさい」と子どもに言ってしまう日本人の教育観も関係しています。練習するのは、チームの中で一番になるためです。大人がチームの中で競い合わせています。なぜなら学校の教育が同じ様式だからです。「クラスで一番になりなさい」と言われて育ちます。言われなかったとしても、そのような競争の価値観は刷り込まれています。どんなことにおいても競争、競争なので、運動会で全員手をつないでゴールしようといったことをしても、根本的な策にはなりませんでした。■チームで協力しあうのがサッカーなのに、個人プレーによる自己完結になっている(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)「競わせることが子どもの大きな動機づけになる」という意見もありますが、それではエゴイストが育ちます。チームで協力し合って勝利を目指すのがサッカーなのに、個人が活躍することで自己完結します。チームでどう勝つかといった重要なことが学べません。特に今のような暑い時期に無理にサッカーをする必要はありません。子どもをしっかり休ませましょう。その間、大人も休めます。その時間のなかで新たな学びをぜひ身に付けてください。池上正さんの指導を動画で見る>>池上正(いけがみ・ただし)「NPO法人I.K.O市原アカデミー」代表。大阪体育大学卒業後、大阪YMCAでサッカーを中心に幼児や小学生を指導。2002年、ジェフユナイテッド市原・千葉に育成普及部コーチとして加入。幼稚園、小学校などを巡回指導する「サッカーおとどけ隊」隊長として、千葉市・市原市を中心に年間190か所で延べ40万人の子どもたちを指導した。12年より16年シーズンまで、京都サンガF.C.で育成・普及部部長などを歴任。京都府内でも出前授業「つながり隊」を行い10万人を指導。ベストセラー『サッカーで子どもがぐんぐん伸びる11の魔法』(小学館)、『サッカーで子どもの力をひきだす池上さんのことば辞典』(監修/カンゼン)、『伸ばしたいなら離れなさいサッカーで考える子どもに育てる11の魔法』など多くの著書がある。
2022年08月12日世間はお盆休みですが、皆さんいかがお過ごしでしょうか。本日は、ジュニアサッカー(少年サッカー)の保護者向け情報サイト「サカイク」で2022年1月から7月に配信した記事の中でみなさんの注目度が高かった記事をランキングでご紹介します。サッカーを通して子どもを自立させる方法など参考になることがたくさんありますので、記事配信当時に見逃した方も、いま一度ご覧ください。第3位「日本にいた頃はピッチサイドで圧を......」ドイツ在住サッカーママが現地に行って気づいた子どもを伸ばす大人のスタンス「明らさまなダメ出しの言葉こそ言っていませんでしたが、かつての私はダメ親でした」と語る、現在ドイツ在住のサッカーママNさんが変われたお話が第3位でした。過去の映像を整理していたらお子さんに「お父さんもお母さんも(声かけが)ひどいね」と言われたエピソードなどを通じて、今は子どもを自立させるためのサポートに徹するようになったという経験談は、現在サッカー少年を育てている保護者の皆さんにとって大変身近に感じられたのかと思います。Nさんは、ドイツでも最初の頃は周りが日本語がわからないこともあってピッチサイドから大声を出していたら、「あなたは親として頑張っている。プレーをするのは子どもなのだから、落ち着いて」と言われた経験などを通じて、お子さんを一人の人間として成長させることが大事なのだと気付いて変わっていったそう。子どもには子どもの人権がある、という考えが当たり前にある環境で、子どもの成長をサポートするためにどう接すればいいか、のヒントがあります。ぜひご覧ください。記事を読む>>サカイクの最新イベントやお得な情報をLINEで配信中!第2位夏場に休むことで子どもが伸びる! あるサッカークラブが「夏休みは練習しない」を決めた理由「夏休みは休みます」と指導者が決断し、それを受け入れたチームのお話が第2位でした。年々暑くなる夏。炎天下で連日サッカーをさせることが、果たしていいことなのか。熱中症などのリスクや身体の成長に影響はないのか、など、内心気になっている保護者やチーム関係者の方も少なくないと思います。暑い中での練習は心配だけど周囲のチームもやっているし、とか、自分たちだけ休んだら周りに差をつけられるのが心配......、など様々な理由で「休む」ことを躊躇する気持ちもあるのでは。そんな中で、夏休みをとることを決断し、受け入れたチームのお話は、保護者・指導者両方の興味を引いたようです。子どもも大人も、サッカー活動だけでなく家族や友達と過ごす時間も大切です。ぜひ今後のことをチームで話すきっかけにも、いま一度記事をご覧ください。記事を読む>>第1位元日本代表・久保竜彦さんが2年連続監督 試合中「声を出さない」理由とは1月に開催された「ワールドチャレンジ2021」で監督を務めた久保竜彦さんのインタビューが、上半期一番読まれた記事となりました。少年サッカーの悩みの一つとして、「何やってるんだ!」というような監督・コーチが怒鳴る指導があり、近年はニュースで目にすることも増えたので、保護者の関心も高いですよね。厳しい指導を受けて来た年代の指導者は、自分が受けた指導を現場でも行いがちです。そんな中で、元日本代表として活躍された久保竜彦さんが、どうして声を出さないのか、その理由を知りたいと思う方が多かったようですね。久保竜彦さんが、子どもたちの良さを引き出すためにどんなことを意識したこととは。記事を読む>>いかがでしたでしょうか。これからも親御さんご自身が考えるきっかけになったり、チームがよくなるきっかけになる記事を配信していきますので、ご愛顧のほどよろしくお願いいたします。サッカー少年の親が知っておくべき「サカイク10か条」とは
2022年08月11日人数が足りないわけじゃないのに、下の学年と練習させられる。息子と女子だけユニフォームがもらえなかった。チームから共有される試合の写真もうちの子だけ写ってない。同じ金額を払っているのに、試合経験を積める子と見限られた子。劣等生扱いされているのは公開処刑みたいで私がツラくてサッカー辞めさせたい。どうすればいい?というご相談。出場機会の悩みを持つ親御さんも多いのでは?今回もスポーツと教育のジャーナリストであり、先輩サッカーママでもある島沢優子さんが、これまでの知見をもとに、お母さんへのアドバイスを送ります。(文:島沢優子)(写真はご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)<<試合に出られない息子。上達しないのに時間の無駄と思う自分がイヤです問題<サッカーママからのご相談>はじめまして。小4の息子は年中からサッカーを始め、本格的に今のチームに入団したのは年長からです。悩みはだいぶ以前からで、ずっとモヤモヤしたまま続けてきました。所属しているのは、地元のスポ少です。勝負の世界なので上手な子が試合にたくさん出るのは仕方のないことなのは分かっています。とはいえ、なかなか上達の遅い我が子に対しての指導者の劣等生扱いがすごいのがツラいです。たとえば・4年生が呼ばれている練習試合に息子と女子は呼ばれず、下学年の練習へ行かされた・息子と女子だけユニフォームを与えられなかった・フィールドから→キーパーになったが最近では別な子にキーパーを教え始め、その子ばかりを起用・始まったばかりの4年生大会にほとんど試合に出してもらえないと、こんな感じで指導者が息子に対してあからさまな劣等生扱いをするので保護者、チームメイトもうちの息子を「1番下手」と認識しているんだろうなと思います。大会には息子以外の4年全員と、3年や2年の子が出ていました。4年生は9人なので人数が多くて試合に出られない子がいるわけではないです。最近はキーパー以外で出ることはほぼなく、ごくたまにフィールド出されたところで、動きが悪いのか叱られていることばかりです。「試合の写真です」と、たくさん写真が送られてくる中に、出場機会の少ない息子の写真だけ1枚もないこともしょっちゅうです。そういうのも、全体の前で公開処刑されているようでツラいです。ちなみに親の色眼鏡かもしれませんが息子そこまで際立って下手なわけじゃないと思います。リフティングも少しずつではありますが回数ものびてきているし、自主練もしています。全く努力していないわけではなく、サッカーは好きなんです。だからこそ惨めな思いばかりさせられるのは悲しく......。みんな同じ団費を支払っているのに、たくさん試合経験を積んでどんどん上手になっていく子、反対に4年生でもうもう見切られたのかほとんど試合に出してもらえず、下学年との練習に混ぜられてばかりで試合経験も積めない子。サッカーが好きで、サッカーがやりたくて、チームに入ったのに...。これでは上手な子達との差はどんどん開く一方ではないでしょうか?地元のスポ少であっても、上手な子にしかサッカーの試合に出る資格はないというのでしょうか。この年代において、いつも惨めな思いをしたり、ここまでの差別を受けないといけないものなのかと思い悲しくなってしまいます。息子は辞めたくないと言っていますが、親としては今このチームに息子の居場所はなくなってしまったように思い、見ていてツラいので正直もう辞めさせたいです。もしかしたら、チーム側から辞めてくれと言うわけにいかないいのでこちらから辞めていくように仕向けている?などと、考えたくもないことまで考えてしまいます。こういうチーム、こういうことって、普通なことなのでしょうか...?アドバイスいただけましたら、嬉しいです。<島沢さんからの回答>ご相談いただき、ありがとうございます。お母さんとしては、息子さんが「劣等生のように扱われている」と感じているのですね。かわいいわが子が貶(おとし)められていると思えば、それはとても辛いことでしょう。ご相談の文章だけではわかりかねますが、あくまでも私の印象でお話しします。文章全体に悲壮感があふれていて、お母さん自身が今とても感傷的になっていることが伝わってきます。そのような状態で、私の言葉が届くかどうか不安ではありますが、ひとつだけアドバイスを送ります。良かったら参考にしてください。■お母さんはある意味勝利至上主義を認めているまずは、ご自分の価値観が矛盾していないか。そこを考えてみましょう。所属されている少年団について「こういうチームは普通のことなのか?」という質問ですが、普通という表現を「一般的なのか?」と言われれば、今現在の少年サッカーはまだまだこのようなチームは少なくありません。息子さんのチームが軸にしているのは「勝利」です。つまり勝利至上主義です。これは、子ども全員が楽しくサッカーをする、サッカーをすることで成長するといった指導哲学とは対岸にあります。だから、チームが女子と息子さんにだけユニフォームを与えなかったり、息子さんら一部の子の写真が少なくても平気で送ってしまうわけです。クラブが「勝てばいい」という価値観を軸に走っているので、そこに関わらない子どもは置き去りにされがちです。ということは、お母さんと息子さんはチーム選びを間違えた、とも考えられます。子どもたちをできるだけみんな同じだけ試合を経験させたり、一人一人の成長を見守るクラブは増えています。そのあたりをもう少し見定めて選べば良かったかもしれません。とはいえ、お母さんは「勝負の世界なので上手な子が試合にたくさん出るのは仕方のないことなのは分かっています」と、勝利至上主義をある意味認められています。もちろん、それを責めているわけではありません。人それぞれ考え方が異なるのは当然です。サカイクの最新イベントやお得な情報をLINEで配信中!■わが子がレギュラーだったら、同じことを思ったかそこで少し耳の痛いことを申し上げると、もし、息子さんがレギュラーで出ていればどうだったでしょう?もしかしたら、写真やユニフォームのない子どもたちのことに思いが及ばなかったかもしれません。(私自身も、もう十数年前に遡りますが、途中まで息子が試合に出るだけで満足する親だったと猛省しています)それを踏まえたうえで、クラブのことについて息子さんとどんなふうに話をしているか振り返ってみましょう。コーチはひどいねと息子さんに同情していますよね。その一方で「勝負の世界だから上手な子が試合にたくさん出るのは仕方がない」とお母さんは考えている。これは矛盾しています。この矛盾に、まだ9歳の息子さんは気づかないと思いますか?確実に言えることがひとつあります。彼は「お母さんは矛盾している」と言えないけれど、みんなより自分がサッカーが上手くない、試合に出られないことで、お母さんが傷ついていることを感じ取っています。しかしながら、一番傷ついているのは息子さんです。大事なお母さんにツラい思いをさせている「ダメな僕」。そう感じ自己肯定感を下げているかもしれません。■「私がツラい」は理解するが、本人が望んでないのに辞める提案はNGそこで、お母さんの考え方を「息子を主体」にすることをおすすめします。今現在、お母さんは「自分が主体」になっています。上達の遅い我が子に対しての指導者の劣等生扱いがすごいのがツラいです。全体の前で公開処刑されているようでツラいです。惨めな思いばかりさせられるのは悲しく......。親としては今このチームに息子の居場所はなくなってしまったように思い、見ていてツラいので正直もう辞めさせたいです。すべて息子さんの問題なのに、「私がツラい」と自分が主語になっていますね。上記のような愚痴を言いたいのはわかりますし、それは全く構いません。配偶者がいればその方に、ママ友に話してストレスを解消してもいいでしょう。しかし、最後に私が挙げた「見ていてツラいので正直もう辞めさせたい」はいけません。「息子は辞めたくないと言ってます」と書かれている。ということは、辞めたら?と提案したのでしょうか。であれば、そのことは息子さんに謝罪しましょう。「あなたの問題なのに、お母さんの思いだけで辞めたらとか言ってしまってごめんね。自分で決めてね」ぜひそう言って謝ってください。息子さんがどうしたいのか。息子さんが今のチームでサッカーを続けたいのか。息子さんを主語にして考えてください。■本人がチームを替えたいと言ったら、移籍先を探せばいい息子を主語にするってどういうこと?って思いますよね。例えば、こんなことです。「全く努力していないわけではなく、サッカーは好きなんです」と書かれているように、お母さんは息子さんの努力やサッカーが好きな気持ちを理解しています。ここで、次に続く「だからこそ惨めな思いばかりさせられるのは悲しく......」という負の感情をご自分で整理してください。息子はサッカーが好き。今のチームでやると言っている。だったら、まあいいか。まだ小学4年生。彼の好きにさせよう、成長を見守ろう。彼が「試合に出られるチームに替えたい」と言ったら移籍先を一緒に探せばいいや――そんなふうに考えましょう。また、息子さんを主体にすれば、あの人が悪い、チームがダメとお母さん自身が他罰的にならずに済みます。■過干渉が子どもに与えるリスクを軽く見ないで(写真はご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)私はスポーツの育成に注目して取材活動をして20年ほどになります。並行して、脳科学や心理学、新しい教育学に基づいた専門家も取材してきました。出会った親子は2000人以上になります。そのなかで、親御さんがご自分のつらさや喜びを優先した子育てで上手くいった例を、私は知りません。なかには過度に世話を焼いても順調にいく例もあるでしょう。しかし、親が道を作って歩ませて、上手くいかなかったときに子どもは「お母さんの言うとおりにクラブを変えたのに、今度はいじめに遭った。お母さんのせいだ」となりかねません。過干渉リスクを軽くみて痛い思いをした例は枚挙に暇はありません。逆に、自分で考えて決めた場所であれば、上手くいかないことがあってもそこで戦えます。島沢優子(しまざわ・ゆうこ)スポーツ・教育ジャーナリスト。日本文藝家協会会員(理事推薦)1男1女の母。筑波大学卒業後、英国留学など経て日刊スポーツ新聞社東京本社勤務。1998年よりフリー。『AERA』や『東洋経済オンライン』などで、スポーツ、教育関係等をフィールドに執筆。主に、サッカーを始めスポーツの育成に詳しい。『桜宮高校バスケット部体罰事件の真実そして少年は死ぬことに決めた』(朝日新聞出版)『左手一本のシュート夢あればこそ!脳出血、右半身麻痺からの復活』『王者の食ノート~スポーツ栄養士虎石真弥、勝利への挑戦』『世界を獲るノートアスリートのインテリジェンス』(カンゼン)など著書多数。『サッカーで子どもをぐんぐん伸ばす11の魔法』(池上正著/いずれも小学館)ブラック部活の問題を提起した『部活があぶない』(講談社現代新書)、錦織圭を育てたコーチの育成術を記した『戦略脳を育てるテニス・グランドスラムへの翼』(柏井正樹著/大修館書店)など企画構成も担当。指導者や保護者向けの講演も多い。最新刊は『スポーツ毒親 暴力・性虐待になぜわが子を差し出すのか』(文藝春秋)。
2022年08月10日現在、日本サッカーミュージアム内で、夏休みの自由研究制作ができるイベントを開催中です。(8月15日までテーマは「日本代表歴代ワールドカップを学ぶ!ワークブック」「10分工作で遊ぼう!グループE紙コップけん玉」)8月1日から3日にかけては、サッカーについて学ぶスペシャルトークイベントが開催されました。その中の一つ、アディダスフットボールフットウェアマイスターの箕形寛之さんを招いて行われた「シューズの履き方・選び方」では、知っているようで意外と知らない、足に合ったシューズの正しい選び方と履き方を紹介しました。参加した子どもたちと記念撮影■正しいシューズの選び方・履き方でキック力も高まるサッカーシューズをなぜ正しく履かなければいけないのか。みなさん分かりますか。箕形さんが「間違えた履き方をすると、速く走れなかったり、転びやすかったり、強いボールが蹴れないから」とその理由を説明すると、子どもたちだけでなく保護者のみなさんも真剣に耳を傾けていました。シューズを正しく履くことによって、速く走れるようになる、相手選手とぶつかっても倒れなくなる、強いボールが蹴れるようになる、など子どもたちが持っている本来の力を十分に発揮できるようになるのだそうです。サカイクの最新イベントやお得な情報をLINEで配信中!■大き目サイズを買うのはNG、ケガの原因にもまた、成長期の子どもは、洋服も靴もどんどんサイズアウトしてしまうので、サッカーのスパイクにおいても「すぐ大きくなるから」と少し大きめのものを買いがちではありませんか?ですがそれは、ケガにつながるので止めてほしいと箕形さんは言います。正しいサイズは、つま先に1cm程度の余裕があること。ちょっと大きめの靴を買って長く履かせようとする方も多いと思いますが、大きすぎる靴は痛みやケガの元なのだそう。子どものころは自分でどの位が適切なサイズか分からないので、シューフィッターがいる店舗などでサイズを見てもらい、感覚を覚えることが大事だと教えてくれました。ほかにも、グラウンドに合わせてスパイクを選ばないと、ケガのリスクが高まるというお話も。スタッドの長さ、形状は天然芝向け、人工芝向け、土のグラウンド向けで異なるので、グラウンドに合ったものを履かないと、グリップが効かず、すべってケガをするなどのリスクがあるという話には、保護者の方々も大きくうなずきながら納得の表情を見せていました。■スパイク、トレシューの正しい履き方靴の正しい履き方は、大人でも意外に知らないものです。今回箕形さんが教えてくれた、正しい履き方は以下の通り。大事なのは履く時だけでなく、脱ぐ時も一緒です。スパイクやトレーニングシューズのフィット感を高めるだけでなく、靴を傷めにくくし、長持ちさせるためにも大事なことだそうです。<正しい履き方>1.一番前まで靴ひもを緩める2.座ってかかとをトントンして足とシューズを合わせる3.座って、もしくは片膝をついて靴紐を締める4.脱ぐときも一番前まで靴ひもを緩める5.脱いだ靴は直射日光が当たらない、風通しのいいところで乾かす教えてもらった履き方を実践。いつもよりフィット感が高まったことを実感していましたこの時、持ち込んだスパイクやシューズを実際に履いてみる時間が設けられ、子どもたちは、早速教えてもらった通りの履き方を実践しフィット感の高まりを実感していました。履く時は、まずはかかとを合わせてから紐を締めるのが重要なのだと箕形さんは言います。この履き方の特長は、かかとの衝撃吸収効果が高まること。かかとには骨の周りにクッション材の機能として脂肪がついているのですが、かかとの部分で足と靴がぴったり合うことで、かかとの脂肪の衝撃吸収機能が活かされるのだそう。成長期の足は柔らかく不安定な状態であるため、かかとを正しく成長させることが、かかとの上についている身体全体を支えるために重要なのだそうです。そのために、かかとをしっかり保持する靴の芯材の効果を活かすためにも、かかとを合わせる履き方が大事なのだと教えてくれました。小学生年代の子どもたちが抱えるケガ、痛みの箇所でよく挙がるのが「かかとの痛み」ですが、靴の選び方と履き方で予防できるそうなので、ぜひ今後の靴選びの参考にしてみてください。サッカー少年の親が知っておくべき「サカイク10か条」とは■子どもたちが一番「教えて!」となったのは、ほどけない靴ひもの結び方イベント終了後に行われた「ほどけない靴ひもの結び方」レクチャーイベント終了後には、質疑応答で声が上がった「ほどけない靴ひもの結び方」をレクチャー。箕形さんに結び方を間近で見せてもらえることになり、イベントに参加したすべての子どもたちが「教えて、教えて!」と集まり、夢中でその手元を見て学んでいました。小学生年代だと靴ひもを結ぶ作業に慣れていないこともあるため、試合中に紐がほどけても上手く結べなかったりするようで、レクチャーを受けた後は会場に敷かれた人工芝のカーペットの上で何度も練習するなど、「紐の結び方」はこの日一番の盛り上がりを見せていました。日本サッカーミュージアムでは、こういったスペシャルイベントのほかに夏休みの自由研究にもおすすめの、制作イベントを、8月15日までに開催しています。日本代表が出場した過去6大会と今年のワールドカップを調べてまとめることができるワークブックを制作できる「日本代表歴代ワールドカップを学ぶ!ワークブック」と、日本代表が今年開催のワールドカップカタール2022のグループリーグで対戦する国の国旗やカラーで飾り付けできる「10分工作で遊ぼう!グループE紙コップけん玉」制作ができるイベントを用意しています。ぜひ夏休みの思い出作りや自由研究制作に、日本サッカーミュージアムへ足を運んでみてはいかがでしょうか。サッカー少年の親が知っておくべき「サカイク10か条」とは
2022年08月09日今年の夏も暑い日々が続いています。そこで気をつけたいのが熱中症。どれだけ対策をしていても、危険がつきまとうのが夏場のサッカー活動です。ときには指導者の判断で、練習や試合を中止、中断する必要があります。そこで今回は日本スポーツ協会スポーツ医・科学委員会「スポーツ活動中の熱中症事故予防プロジェクト」班員で、立教大学コミュニティ福祉学部の安松幹展教授に「熱中症リスクを踏まえた、練習・試合中止の判断基準」について話をうかがいました。子どもたちの健康を守るため「どのようなときは練習・試合を中止にした方がいいのか?」の基準を知りたい方は、ぜひ参考にしてみてください。(取材・文鈴木智之)写真は少年サッカーのイメージ■暑さ指数=WBGTが31度以上になったらサッカーは中止して中田さんは東京都の技術委員長に就任するまでの12年間、日本サッカーを先頭に立って引っ張っていくエリートの育成を目標にするJFAアカデミーに所属していました。所属するのは、3次まである選考を進んだ10数名の選手のみ。合格した親御さんの中には、「将来はプロになれる」と期待を抱かれる方もいましたが、中学、高校年代で伸びていくかは本人と指導者をはじめ周囲のサポート次第です。「優秀な選手が多かったですが、誰が順調に伸び続けるか、いつ伸びるのかは指導者も分からない。私たち指導者含め、お父さん、お母さん皆さんでサポートし続けましょう!と伝えていました」と中田さんは振り返ります。「保護者が期待するのは当然ですが、親御さんは見守ったり、励ましたりするのが大事。年齢が下がれば下がるほど、みんながプロになれるチャンスがある。だからと言って、そのまま順調にいくかは全く分からない。指導者と保護者と我々がタッグと組んで子どもたちの成長を見守ることが大切です」。WBGT31度以上:運動は原則中止28度以上:厳重警戒(激しい運動は中止)25度以上:警戒(積極的に休憩)21度以上:注意(積極的に水分補給)20度以下:ほぼ安全スポーツ活動中の熱中症予防ガイドブックより「WBGTは湿度と気温、日差しの強さをもとに導き出す数値です。WBGTは専門の機器で計測できるほか、環境省のHP(熱中症予防情報サイト)や天気予報サイトにも掲載されているので、サッカー活動がある日は、前日からチェックして、練習をする・しないの判断の参考にしていただけたらと思います」WBGT計測機は5千円程度で購入可能なので、コーチは各自持っておくと良さそうです。ほかにも、アスリート向け気象ウェブサービス「MiCATA」を使うと、グラウンドが登録できて、そこのWBGT値がわかるようになっています。「責任ある立場の指導者として、練習を中止するための基準を知っておくことは、非常に大切です。機器やWebサービスなどのテクノロジーを活用すると、判断材料になると思います」サカイクの最新イベントやお得な情報をLINEで配信中!■日本サッカー協会の熱中症ガイドラインの内容安松先生は「昼間の暑い時間の活動は避けて、WBGTが31度以上のときは中止にすることが大前提です」と話し、次のように続けます。「それ以下のWBGTが30度~28度、『厳重警戒』のときは、指導者が十分に気をつけながら、練習時間を普段より短縮し、10分~20分おきに休憩をとり、水分と塩分を補給しましょう。『JFA熱中症対策ガイドライン(PDF)』の内容を、練習にも当てはめてほしいと思います」JFA熱中症対策① ベンチを含む十分なスペースにテント等を設置し、日射を遮る。② ベンチ内でスポーツドリンクが飲める環境を整える。③ 各会場に WBGT 計を備える。④ 審判員や運営スタッフ用、緊急対応用に、氷・スポーツドリンク・経口補水液を十分に準備する。⑤ 観戦者のために、飲料を購入できる環境(売店や自販機)を整える。⑥ 熱中症対応が可能な救急病院を準備する。特に夜間は宿直医による対応の可否を確認する。⑦ [Cooling Break]または飲水タイムの準備をする。JFA熱中症対策ガイドラインより上記は試合開催時のガイドラインですが、練習にも当てはめたいところです。安松先生は「公式戦では飲水タイムを設けていても、練習試合やトレーニング中はおろそかになるケースがあるので、積極的に水分摂取の時間を設けましょう」と呼びかけます。■15分ごとに水分補給をするとスプリントの回数が落ちないというデータもまた、安松先生は「暑熱環境下における運動中の体温の調節機能とパフォーマンスの関係」の研究もしており、「高い気温のもとでは、プレーの質が低下する」ことが明らかになっているそうです。「気温が高いところと低いところを比較すると、暑いときはダッシュの距離が短くなり、ジョギングが多くなります。夏のインターハイと冬の選手権を比べると、炎天下で行われるインターハイの方が、オフェンスラインとディフェンスラインの距離が間延びしているというデータも出ています」サッカーの上達のためには、高強度でプレーすることが望ましいですが、夏はそれがしづらい環境とも言えます。「15分ごとに水分を補給すると、スプリントの回数が落ちない、ハーフタイムに冷却すると、後半はリフレッシュされるといったデータがあります。熱中症予防を子どもたちに伝えるときに『気持ち悪くなるから』『頭が痛くなるから』と言っても、積極的に聞き入れにくいので、『水を飲んだら、足が速くなるんだよ』『しっかり休むと、この後のパフォーマンスが上がって、点が取れるようになるかもよ』という言い方をしています」サッカー少年の親が知っておくべき「サカイク10か条」とは■子どもは体内に熱がこもりやすく、熱中症リスクが大人より高いサカイクではビニールプールを使って熱中症対策をしています。安松先生も水で身体表面を冷やすことは熱中症対策に効果的だと教えてくれました。かつては、「水を飲まないことで、メンタルを鍛える」などと言われていましたが、暑い夏に水分を補給しないとことは、百害あって一利なしです。「とくに子どもは、体重あたりの体表面積が大人よりも大きいので、体温に近い環境温度下での運動時は、深部体温が上がりやすくなります。また発汗能力が未発達なので、体の外に熱を逃がすことが苦手です。暑さで顔を真っ赤にしている子がいますが、それは体内に熱がこもっているサインとなります。また、子どもの方が大人よりも身長が低く、地面に近い分、暑さの影響を受けやすくなるので、熱中症には大人以上に気をつけてほしいと思います」暑さを理由に練習を中止にすると、子どもや保護者から「練習させてください」という意見が出るかもしれませんが、熱中症は最悪、死に至ることもあるので、最大限の注意が必要です。正しい知識のもと、適切な判断をくだすための情報を得ること、準備をすることが、万が一を防ぐために必要なことと言えるでしょう。次回の記事では、「夏に気をつけたい雷の対処法」について、安松先生に話をうかがいます。安松幹展(やすまつ・みきのぶ)立教大学コミュニティ福祉学部 スポーツウエルネス学科教授環境生理学および運動生理学的アプローチから、サッカーを中心に競技力向上に関する研究を行っている。現在は「暑熱環境下における運動中の体温調節機能とパフォーマンスの関係」「サッカー選手に対する適切なトレーニング負荷量の検討」「サッカーのゲーム中のフィジカルパフォーマンス分析」を、日本サッカー協会および国立スポーツ科学センターなどと連携しながら進めている。サッカー少年の親が知っておくべき「サカイク10か条」とは
2022年08月08日夏のサッカー活動で気をつけたいのが『雷』です。過去には、サッカー中に雷が体に直撃し、重い後遺症が残ったり、命を落としてしまうケースもありました。そこで今回は日本スポーツ協会スポーツ医・科学委員会「スポーツ活動中の熱中症事故予防プロジェクト」班員で、立教大学コミュニティ福祉学部安松幹展教授に「雷による、練習・試合中断または中止の判断基準」について話をうかがいました。落雷から子どもの命を守るために「どのようなときは練習・試合を中断または中止した方がいいのか?」の基準を知りたい方は、ぜひ参考にしてみてください。(取材・文鈴木智之)夏場のサッカーでよくある雷。どのタイミングで練習中断すればいいのか伺いました<<関連記事:熱中症リスクが高いときはサッカー中止を!子どもたちの安全を守るため知っておきたい練習中止の判断基準■雷の音が聞こえたらプレーを中断し、避難すること雷の対応については、JFA(日本サッカー協会)とJリーグから対策のガイドラインが出ています。それが『JFAサッカー活動中の落雷事故の防止対策についての指針(PDF)』と『Jリーグ 雷対応マニュアル(PDF)』です。安松先生は「雷対応の基準はJFAもJリーグも同じで、雷の音が聞こえたらもしくは雷の光を認識したらプレーを中断して、屋内や車の中、5m以上の高さがある木から4m以上木の高さ未満の離れた場所に姿勢を低くして避難することが大切です」と話します。「木の根元に避難するときに覚えておいてほしいのが、5m以上の高さの木に避難することと、必ず4m以上離れて姿勢を低くすることです。4m以下ですと、雷に木が落ちたときに、人体に電流が届いてしまいます。ですので、必ず5m以上の高い木を目指しましょう」また5m以上30m以下の高さの木や建物の場合は、対象物から半径4~30m離れた位置が保護範囲になるので、この範囲内で姿勢を低く保って避難するのが良いそうです。「地面と木や建物を結んだ角度が45度以内で、4m以上離れた場所が安全だとされています。その距離で、腹這いではなく、頭をなるべく低くして両足裏だけを地面につけて低くしゃがみ込む姿勢で避難することを覚えておいてください」<参考資料>JFAサッカー活動中の落雷事故の防止対策についての指針Jリーグ 「雷対応マニュアル」サカイクの最新イベントやお得な情報をLINEで配信中!■天気予報アプリなどで、雷情報もチェックしておく理想は雷が落ち始めてからではなく、雷の予兆を察知して練習・試合を中断し、選手を避難させることです。「ただ、試合中はプレーに集中していて、音が聞こえないことがあるので、雷の多い夏はとくに天気予報を見て、事前に知っておくと良いでしょう。天気予報アプリを使うと雷の予報もわかるので、ITを使うことをおすすめします」ほかにも「ストライクアラート」という携帯型の雷探知機があるので、チームに一台は用意しておきたいところです。安松先生は「私が指導しているチームは最近買いました。幸い、まだ出番はありませんが、あると安心です」と言います。「雷が鳴ったときに『あと5分で試合が終わるから』『いま、練習の良いところだから』など、中断したくない気持ちもよくわかりますが、雷は早めに適切な対応をすれば、被害を受けることはないので、最悪のケースを想定して、素早く行動に移すことを心がけましょう」■プレー再開は、雷が止んで30分以上経ってから雷に遭遇し、避難した後の行動もイメージしておきたいところです。安松先生は「サッカー活動を再開するときは、雷鳴・雷光が止まって、30分以上経ってからが望ましいとされています」とアドバイスを送ります。「過去に、雷が止まったからOKだろうと判断して、すぐに再開したところ、また落雷があって事故になったケースがありました。安全を期すためには、雷が止んでから30分は見ておいたほうがいいと考えられています」ほかにも、万が一のときに備えて、会場の近くにAEDはあるのか。避難場所はどこにするのかなど、あらかじめリサーチしておきたいところです。「熱中症もそうですが、落雷も事前に情報を知っておくと、リスクを限りなくゼロに近づけることができます。ITや機器などのテクノロジーを使って、情報を仕入れること。もしリスクが高くなったときに、どのような行動をすればいいかを事前に準備しておくこと。この2つを意識して、チームや保護者の間で共有していただけると、子どもたちも安心・安全にサッカー活動ができるのかなと思います」温度と雷に関しては「危険が迫っている」などの予測が可能です。ITを始めとするツールを駆使して、子どもたちが安全にプレーできるよう、大人たちが心を配ることが、夏にサッカー活動をする上で重要なことと言えそうです。今年の夏も暑さと雷に注意して、楽しいサッカー活動の時間を満喫しましょう!安松幹展(やすまつ・みきのぶ)立教大学コミュニティ福祉学部 スポーツウエルネス学科教授環境生理学および運動生理学的アプローチから、サッカーを中心に競技力向上に関する研究を行っている。現在は「暑熱環境下における運動中の体温調節機能とパフォーマンスの関係」「サッカー選手に対する適切なトレーニング負荷量の検討」「サッカーのゲーム中のフィジカルパフォーマンス分析」を、日本サッカー協会および国立スポーツ科学センターなどと連携しながら進めている。サッカー少年の親が知っておくべき「サカイク10か条」とは
2022年08月08日イングランドでタレントを生み出す育成システムの基盤を作ったリチャード・アレン氏が、今シーズン横浜FCのシニアフットボールエグゼクティブ・テクニカルアドバイザーに就任。前編では、リチャード氏が考える日本の課題、日本サッカー発展のために必要な要素を伺いました。後編では、日本で「良い選手が生まれる仕組み」をどう作ればいいのかをお送りします。(取材・文:KEI IMAI)リチャードさんが語る、良い選手を育てるシステムとは<<前編:「日本で最高のアカデミーをつくる」横浜FCアカデミーアドバイザーのリチャード・アレン氏に聞いた日本サッカー発展のヒント■プレミアリーグでは自国人が試合に出られてない、という課題――イングランドは選手育成において、どんな課題があったのでしょうか、その課題をどのように解決してきたのでしょうか。プレミアリーグは世界各国のトップ選手が集まるため、非常にレベルが高いリーグです。イングランド人が試合に出られる割合は28~32%、チャンピオンズリーグになると22%ほどになるというデータがあります。つまり3割以下のイングランドの選手は、よりレベルの低いリーグでプレーしているということになります。この状況を変えるために、まずイングランドDNAというプロジェクトを立ち上げました。ホームグロウンプレイヤー(イングランド出身のトッププレイヤー)を増やすための取り組みです。そのフィロソフィーとして、1.WHO WE ARE 私たちは誰で2.HOW WE PLAY どのようにプレーして3.HOW WE COACH どのようにコーチをして4.将来的なイングランドの選手を5.スポーツ科学を取り入れて、DNAを育むという5つの柱で取り組んでいます。サカイクの最新イベントやお得な情報をLINEで配信中!■自国出身のトッププレイヤーを育てるシステムエリートプレイヤーズパフォーマンスプラン(EPPP)というプレミアリーグと共同で運営しているものがありますが、これもホームグロウンプレイヤー(イングランド出身のトッププレイヤー)を量と質の両面で増やすことが目的です。そしてアカデミーシステムへの投資も行っており、プレミアリーグから評価されアカデミーにはその評価によって異なる助成金が分配されます。分配されたお金は、ホームグロウンプレイヤーの質と量を上げるために、施設や指導者の確保など育成のために使われます。この育成システムを客観的に評価する必要がありますが、これを外部の専門機関に委託しています。育成資料の検証とヒアリング、トレーニング内容や試合の分析を通じて育成組織を評価するシステムが欧州にはあります。チームの「フィロソフィー」や「カリキュラム」「メソッド」「選手評価」などのシステムが幅広く評価、査定されます。これらのシステムが機能しはじめてから、ジェームズ・サンチョ、フィル・フォーデンなどのホームグロウンプレイヤーが出てくるようになりました。マンチェスターシティ、ユナイテッド、チェルシーなど世界のトッププレイヤーが集まる中でプレーできる選手を育成するためにはシステムを変える必要があったのです。■選手育成においては、コーチが子どもたちにオーナーシップを持たせることが重要――育成システムの構築と同時に、指導者のレベルアップも必要になると仰いました。日本の育成年代のコーチへアドバイスをいただけないでしょうか。コーチはとても重要な存在です。デモンストレーションできるスキルがないといけませんし、コーチングの知識も必要です。子どもたちのことを知ることも重要で、学習プロセスもそうですが、何を感じ、何をしようとしているのかもしっかりと把握しなければなりません。そしてなにより、子どもたちが自分達で問題を解決する力を養うことがとても大切なことです。そのために子どもたちにオーナーシップ、権限を持たせてあげてほしいと思います。育成システムが機能する上でコーチが担う役割はとても重要なのです。■横浜FCでのビジョンとエリートプログラムについて――横浜FCでのビジョン、エリートプログラムについてお聞かせください。ビジョンとしてはまず、日本で最高のアカデミーにすることです。質の高いサッカーを体系的に学べる環境をつくりたいと思っています。しかしながら、すべての選手がプロになれるわけではないので、サッカーをコーチングすると同時に、それ以外に一人ひとりの適正を踏まえて最適な道を提案できるようなアカデミーにしたいと思います。エリートプログラム開設の狙いについてですが、世界で活躍するために必要な5つの要素を落とし込んでいきます。・効果的な仕事ができる・高い技術をもっている・理解度に優れている・運動能力に優れている・人間性に優れているこれらを養うために、エリートプログラムでは選手をスカウト、セレクトします。そして世界で戦うために必要なレベルの高いトレーニングを行います。海外遠征にも行きます。国外のチームとの試合経験を重ねながら育成することが非常に重要だからです。選手個々の成長プロセスを定期的に評価し、適切なレベルでのプレー機会を提供することで選手の成長機会を担保していきます。横浜FC「エリートプログラム」開校のご案内>>リチャード・アレン氏プロフィール2005年~2012年トッテナム・ホットスパーFCアカデミー部門採用最高責任者2012年~2014年QPR FC アカデミー統括最高責任者2014年~2017年FA(イングランドサッカー協会)タレントID(才能発掘及び育成)最高責任者2018年~2021年ラフバラ大学フットボール統括ダイレクター2022年~横浜FCシニアフットボールエグゼクティブ テクニカルアドバイザーサッカー少年の親が知っておくべき「サカイク10か条」とは
2022年08月05日自分で考える力やコミュニケーション力など、人間性を高めることがサッカーの上達にもつながる、とする「ライフスキルプログラム」をサカイクキャンプで導入しています。慶應義塾大学准教授の東海林祐子先生の監修によるプログラムは、参加した子どもたち自身、「考える力がついた」「声が出せるようになった」など、サッカー面でも成長を感じています。その内容に賛同してくれるプロチームも増えつつあり、これまでに野球の西武ライオンズとのコラボキャンプを開催。この夏もセレッソ大阪のアカデミーコーチたちとサカイクキャンプコーチによるコラボキャンプを開催します。今回は、どうして人間性を高めることがサッカー面での成長につながるのか、改めてご紹介します。■「ライフスキル」を身につけることでスポーツの結果が変わる今回のセレッソ大阪×サカイクのコラボキャンプ開催に当たり、担当コーチたちにライフスキル指導をしてくれた慶応義塾大学准教授の東海林先生は、かつてサカイクのインタビューにこう答えてくれました。「私が過去やってきた研究では、ライフスキルのレベルが高い選手の方がより高いレベルで活躍している選手が多いという結果が出ています。たとえば陸上競技の選手たちですが、インカレなど全国大会に出場するAグループと都道府県大会の出場にとどまるBグループでは、Aグループの選手たちの方がライフスキルのレベルが高いことがデータとして現れています」最近ではサッカー上達のために「人間力」が必要であるとして、自主性やマナーなど心を育てる指導を行っているチームも増えていますが、それを裏付ける結果があることを教えてくれました。どんなスポーツにおいても「上達するために課題を見つけ、どう解決すべきか」を自分で積極的にできる選手と指導者に頼りっぱなしの選手とでは成長に違いが出るのは共通のようです。ただ、育成年代の子どもたちは「何をどうすれば上達ができるのか」という経験が少ないため、解決策を見つける材料をあまり持っていません。だからこそ、指導者の存在が重要なのです。サカイクでは東海林先生のアドバイスを受け、2017年のキャンプからライフスキルプログラムを導入。初日と3日目にアンケートを取った結果、5つのライフスキル(考える力、リーダーシップ、感謝の心、チャレンジ、コミュニケーション)に変化が現れました。出典:上達のために必要なのは「こうしなさい」ではない!課題に気づき、考える力をつける指導とは【2022夏休み通い開催】セレッソ大阪×サカイクSummer Camp>>■3日間の体験で「プレーの流れを読む力」がつく今回開催するセレッソ大阪とのコラボキャンプでは、元日本代表で「ドーハの悲劇」を経験した勝矢寿延コーチをはじめとするセレッソ大阪のスクールコーチたちと、サカイクキャンプのヘッドコーチである菊池健太コーチが「サッカーの技術向上」と「人としての土台作り」を指導します。キャンプでは、風間八宏さんが提唱する止める・蹴る・運ぶなどの基本技術を軸とした、セレッソアカデミーとしてのトレーニングメソッドを取り入れたサッカーの技術向上と、自分の現在地を知り、サッカーへの思考を深める「サカイクサッカーノート(※)」を使ってのライフスキル講習で「人としての土台作り」を行います。実際にノートを書いてもらい、初日と3日目でどんなふうに変わったか可視化できるので、参加した子どもたち自身が成長を実感することができるのが特長です。セレッソ大阪のスカウトとして活動していた勝矢コーチは、ライフスキルプログラムがサッカーの上達にも繋がると語ります。「サッカーは常に状況を判断して、プレーを選択していくスポーツです。ボールの展開であったり、プレーの流れを読む力は、すごく大切です。先を読んでプレーすることも、考える力につながりますよね」また、「試合に向けた気持ちの準備や用具の準備ができる子は、将来的に伸びていく子が多かった」という経験を通じて、今回の参加者に「5つのライフスキルのように、人間として成長する上での気づきも与えられたらと思っています」と意気込みを語ってくれました。開催場所は、普段はセレッソ大阪のホーム、ヨドコウ桜スタジアムです。憧れの選手たちが試合をするピッチで、この夏サッカーと人間力を高める体験をしてみませんか。<スクール・アカデミー割引あり>セレッソ大阪とのコラボキャンプの詳細・お申込みはこちら>>※E-3ショップで販売しているサッカーノートとは異なる、ライフスキルプログラムを導入したサカイクキャンプ参加者のみに渡されるサッカーノート【2022夏休み通い開催】セレッソ大阪×サカイクSummer Camp>>window.dataLayer = window.dataLayer || []; function gtag(){dataLayer.push(arguments);} gtag(’js’, new Date()); gtag(’config’, ’AW-966008133’);gtag(’event’, ’conversion’, { ’send_to’: ’AW-966008133/ztHsCNzBn8cDEMW60MwD’, ’value’: 1.0, ’currency’: ’JPY’, ’aw_remarketing_only’: true });
2022年08月04日2022年3月、横浜FCのシニアフットボールエグゼクティブ・テクニカルアドバイザーに就任したリチャード・アレン氏。イングランドでフィル・フォーデン(マンチェスター・シティ)やジェイドン・サンチョ(マンチェスター・ユナイテッド)といったタレントを生み出す育成システムの基盤を作った人物です。日本という国で育成年代を育むために必要なことはなにか、フットボールに必要な要素を育成年代で見出すために必要なことを、詳しく伺いました。(取材・文:KEI IMAI)横浜FCのアドバイザーに就任したリチャード・アレンさんイングランドではタレントを生み出す育成基盤を作った■日本サッカーの課題、日本らしいサッカーとは――日本人の特性を踏まえて、どのようなアプローチが必要と考えていますか?また、日本サッカーの課題についてご意見を伺いたいです。サッカーには原理原則というものがあります。それは国や社会に関係なく存在します。もちろん日本人とイングランド人の特性はそれぞれあります。それらを踏まえて最適なプレースタイルを模索していかなければなりません。イングランドの場合は、育成年代では個の技術力を重点的に高めることを重要視しています。そのための育成プログラムが確立されています。日本はまだこれからですね。そこを構築していく段階だと思います。――個人の能力は日本も上がってきていると思います。東京五輪の時に、田中碧選手が「2対2だったり3対3だったりになったときに相手はパワーアップするけれど、自分たちは何も変わらない」というコメントをしました。つまり、個人では戦えるようになってきたけれど、グループになるとまだ勝てないという趣旨だと思います。個人よりもグループでのプレーに課題があるかと思うのですがいかがでしょうか?(出典:2021年8月7日配信GOAL.com「世界では「自分たちのサッカーが選べない」。U-24日本代表MF田中碧が東京オリンピックで実感した"11人対11人"で勝つという意味」)もちろん、日本の選手たちの個人技術は上がってきています。しかしながら、チームのルールに縛られて、その能力を発揮できないことが多いように思います。育成年代で何のための個人技術なのかが整理しきれていないこと、適切な状況で個人技術が表現できるような指導ができていないように思います。例えばボールポゼッションのための技術は上がったかもしれません、でも個人がリスクを追ってチャレンジし、状況を打開するための技術はまだまだ高められます。リスクを負ってチャレンジできるようにしないと、自由を与えられてもチャレンジするべき時に判断できません。サカイクの最新イベントやお得な情報をLINEで配信中!■どんなに才能があっても、試合に出ないと成長しない――日本の育成年代をどのように見ていますか?育成システムは改善されてきていると思いますが、ファシリティ、コーチングの部分はまだまだ発展させていかなければならないと思います。つまり指導者のレベル向上です。また、日本は島国ということもあって、海外での経験が足りていません。異国のチームとの試合経験だけではなく、異文化を知る経験です。選手だけでなく指導者もそういった意味でも経験が足りていない。自分達のサッカーを知るためには、海外のサッカーを知る必要があります。世界で戦っていくには、そのような経験を通じて成長していく必要があるということです。また、日本ではサッカーがNo. 1スポーツではではありません。イングランドやドイツではサッカーはNo. 1スポーツです。なぜかというとサッカーに親しみやすい環境があるからです。お金を払わないとサッカーができなかったり、サッカーをプレーするハードルが高いのはとてももったいないことです。ここから変えていかなければならないと思います。そして18歳からトップチームに上がるまでの期間をどうするかということも考える必要があります。日本の場合は大学サッカーもありますが、高いレベルでプレーできる環境は限られます。ユース以降の環境を整備していくことが重要です。若くポテンシャルのある選手が適切なレベルでプレーする機会があれば、もっと若いタレントが出てきます。Jリーグを見ていると、年齢が高い選手が多いですよね。もっと若くていい選手が出てこなければいけませんし、伸び代のある選手をもっと起用する機会をつくる必要があると思います。どんなに才能がある若手も試合に出ないと成長しません。イングランドでもマーカス・ラシュフォードなどは、マンチェスターユナイテッドで若くしてデビューしてから数試合後にはすぐに代表に呼ばれてプレーしました。その他、若い将来有望な選手たちは、所属チームが強すぎて出場機会が得られなければ、欧州5大リーグの中堅クラブで試合に出る機会を模索します。日本だと久保建英選手のように、レアル・マドリードで試合に出ることは難しいけれど、スペインリーグの中堅クラブで試合に出て成長を求めるなど、クラブとして積極的に行っています。レベルの高いリーグで、試合に出ることがとても重要なのです。――どうすれば、若い選手が出場機会を得られるようになったのですか?当然、若手を起用しても結果を出さないといけません。3連敗もすれば監督も立場が危うくなる世界です。そんな厳しい環境の中でも結果を出せる若い選手の育成が重要になります。だからこそ育成システムに投資が必要なんです。若手の育成には、ハード面の環境、仕組み以外にも優秀な指導者の育成も重要になります。フランク・ランパードなどは選手引退後に指導者としてすぐにトップレベルで指導する一人ですが、良い選手が生まれるためには、良い指導者が必要です。そのための指導者育成の仕組みも非常に重要なのです。日本も同様にこのようなサイクルが生まれるための仕組みが必要でしょう。後編は、その仕組みについて伺います。リチャード・アレン氏プロフィール2005年~2012年トッテナム・ホットスパーFCアカデミー部門採用最高責任者2012年~2014年QPR FC アカデミー統括最高責任者2014年~2017年FA(イングランドサッカー協会)タレントID(才能発掘及び育成)最高責任者2018年~2021年ラフバラ大学フットボール統括ダイレクター2022年~横浜FCシニアフットボールエグゼクティブ テクニカルアドバイザーサッカー少年の親が知っておくべき「サカイク10か条」とは
2022年08月04日サカイクがお届けする『親子で遊びながらうまくなる!サッカー3分間トレーニング』。今回はサッカー初心者の悩み「顔を上げてドリブルできない」を克服するトレーニングをご紹介します。試合中ドリブルをしている時は、常に次のプレーを考えながら顔を上げて視野を広く保つことが大事です。しかし、初心者はボールに気を取られて顔が下がってしまうことが多いもの。今回は、広いスペースがなくても親子で遊びながら、顔を上げてドリブルできるようになるトレーニングを紹介します。親は難しい動きはありません。【やり方】1.親子で対面して立ち、子どもはゆっくりドリブルしながら動く2.対面する親が手に持ったボールを上に挙げたらドリブルをストップ3.親がボールを投げ、子どもはドリブルしながらキャッチして親に返す。このとき2バウンドまでOK4.動きに慣れたら、ドリブルのスピードを上げ、ボールもワンバウンド以内でキャッチするなどレベルアップ【トレーニングのポイント】・足元のボールだけでなく、親が持つボールも見ることを意識・親の動きを視野に入れつつも、ドリブルを止めない・親の動きを常に見て、ボールを投げてくるタイミングに合わせてドリブルする・力まずリラックスして行う・慌てずゆっくり、慣れてきたらリズム良く行う・失敗しても気にせず、親子で楽しみながら行う次回もサッカー初心者のお悩みに応えるトレーニングをお届けしますのでお楽しみに!お父さんコーチに役立つ練習メニューを公開中>>
2022年08月02日日本代表の久保建英選手を直接指導するなど、世界で活躍するトップ選手にコンサルティングや指導を行い、パリ・サンジェルマンの育成部門でダイレクターを務めたダビッド・エルナンデス氏。10年以上にわたるキャンプやクリニックを通じて日本人選手についても熟知している指導者です。前編では、ダビッド氏が考えるスペインと日本で育成年代の選手において11の違いをお伝えしました。後編では、日本人選手が世界で成功するために必要なトレーニングなどを伺いました。パリサンジェルマンの育成部門でダイレクターを務め、かつては久保建英選手を直接指導していたダビッド・エルナンデスさん<<前編:パリ・サンジェルマンでダイレクターを務めた指導者が語る、スペインと日本で育成年代の選手における11の違いとは?■日本がW杯で優勝するために分析すべきこと――なぜ日本人選手は成功するのが難しいのでしょうか?まずサッカー選手にとって「成功する」とは何を意味するかを定義しなければいけません。もしそれがサッカーをプレーすることを楽しみ、その後の人生において大切な能力や価値を身につけるということを意味するなら、日本人選手は既に成功していると言えると私は考えます。一方で、もし日本代表が世界ランキング上位のチームに勝つことや、ワールドカップで優勝することとするなら、改善すべき点について分析するべきかもしれません。――改善すべき点とはどのようなことでしょうか?前編でもお話したように「率先力」「理解力」「柔軟性」「量」「質」「規律」「努力」「積極性」「順序」「コーディネーション」「評価」これら11の要素があげられます。■日本では正しいとされる会話の「順序」が、スペインやイタリアでは通じないことも――11の要素に含まれている「順序」とはどのようなことでしょうか?どんな国でもトレーニング形式はその国の伝統や文化に影響を受けるものです。日本の場合も同様で、いくつかの場面では日本の伝統や文化がとても良い影響を与えていると考えています。日本のチームが試合後にロッカールームを使用前と同じかむしろ使用前よりも綺麗にしている画像が欧州ではたびたび話題になります。また、日本チームが試合に負けた後、ファンに敬意を払い負けたことを謝ったり、応援してくれたことに感謝したりする写真もよく目にします。しかしこうした影響はいつもポジティブに働くわけではありません。日本人にとっては会話において「順序」を尊重することが大切です。他人の時間や空間を邪魔しないことが正しい振る舞いとされています。こういったことはスペインやイタリアの文化とは大きく異なっています。私たちスペイン人にとっては、ジェスチャーをしたり、話すときに腕を動かし、相手を触ったりするのは普通のことです。相手が話し終える前に遮るように話すことも普通なのです。この「順序」という概念は人生の多くの場面でメリットをもたらしますが、サッカーのトレーニングや試合ではデメリットになると私は考えます。「順序」の概念も、サッカーのトレーニングや試合ではデメリットになるとダビッド氏は語りますサカイクの最新イベントやお得な情報をLINEで配信中!■日本人は腕や身体を使ってボールを奪う回数が少ない――それでは日本人がサッカーで成功するためには文化を変えなければいけないのでしょうか?いいえ、そうではありません。選手のプレーの戦術的な面を分析する時、トレーニングのプランニングを考える時、そしてトレーニングや試合中に、この点を考慮しなくてはいけません。正しくあることやルールを守ることは大切です。しかし、個人やチームのプレーにネガティブに働いてしまう慣習は修正しなければいけないということです。――例をあげていただけますか?例としては、ウイングの選手がボールを持ち、クロスを上げようとしています。多くの場合、日本のサイドバックの選手は強くプレスをかけずに相手に自由にプレーさせてしまいます。相手に介入しないのです。相手のプレーを遮るのに時間がかかってしまい、相手に有利な状態でプレーされてしまいます。もうひとつの例はボールを奪う場面で、相手のパスをインターセプトするか、五分五分のボールを奪うことがほとんどです。私の見解では、相手のスペースに入っていき腕や体を使ってボールを奪う回数が日本人選手は極端に少ないように思います。日本人選手は相手のスペースに入って腕や身体を使ってボールを奪うことが極端に少ない印象がある、と語るダビッド氏■日本人が世界で活躍するためにはどのようにトレーニングすべきか――ではどのようにトレーニングすべきなのでしょうか?ここではひとつの例しかあげていませんが、私が思うにこの「順序」という概念がプレーにネガティブな影響を及ぼしている場面はたくさんあります。まずやらなければいけないことは、普遍的な個人戦術(プレー原則)やポジションごとの個人戦術のひとつひとつをパフォーマンスとして発揮できているか分析することです。次に文化的な影響を受けている問題点を補完するための具体的なキーファクターを考えることです。そして最後に、その問題点に選手が直面し、解決方法を見つけるためのトレーニングを準備することです。――ではどのようにトレーニングすべきなのでしょうか?前編の「スペインと日本で育成年代の選手における11の違いとは?」では、それぞれの育成年代の選手の違いを「率先力」という観点から分析しています。近いうちに「日本サッカーと欧州のサッカー 11の違い」というタイトルで本を出版し、これらの要素を(定義、比較分析、事例、メリットとデメリット、指導法など)深掘りしていく予定です。また、エコノメソッドキャンプでは、先程述べた日本人選手の課題を改善するトレーニングを行っていますので皆様の学びになるはずです。<エコノメソッドサマーキャンプ2022 概要>【開催日時・場所】【中学生キャンプ】中学1年生~3年生京都クール8/12(金)-8/13(土)@大谷中学高等学校【小学生キャンプ】小学2年生~6年生奈良クール8/9(火)-8/10(水)@ヤナギフィールド愛知クール8/15(月)-8/16(火)@瀬戸SOLAN小学校千葉クール8/18(木)-8/19(金)@ZOZOPARK HONDA FOOTBALL AREA川崎クール8/22(月)-8/23(火)@富士通スタジアム川崎高知クール8/27(土)-8/28(日)@野市ふれあい広場サッカー場対象小学生キャンプ:小学2年生~小学6年生中学生キャンプ:中学1年生~中学3年生基礎技術をしっかり持った中級・上級レベルの方※男女不問その他各種割引あり(友達紹介割引、兄弟割引など)宿泊・通いプランありエコノメソッドキャンプの詳細・お申込みはこちら>>エコノメソッドスクール公式HP>>ダビッドさんのトレーニングも紹介賢いサッカー選手を育てるDVD
2022年08月01日小1の指導で注力することは何?2年生からは8人制になるから仲間と協力して崩すサッカーに移行しなければと思っているけど、ドリブルなどの個人技の基礎も小さいうちに身につけさせた方が良いと思っている。この年代でどんな指導をすればいい?というご相談をいただきました。今回も、ジェフユナイテッド市原・千葉の育成コーチや、京都サンガF.C.ホームタウンアカデミーダイレクターなどを歴任し、のべ60万人以上の子どもたちを指導してきた池上正さんが、日本と海外の「指導の順番」も例に挙げ、「サッカーを理解させる」ための指導をアドバイスします。(取材・文島沢優子)池上正さんの指導を動画で見る>>(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)<<練習中なのに砂遊びに行ってしまう。トレーニングに集中できない未就学児を一緒にサッカーさせるにはどうしたらいい?<お父さんコーチからのご質問>こんにちは。早速の質問ですが、U-8年代では何に力を入れていけばいいのか教えてください。息子が年中からサッカーをしており、現在小1です。子どものチーム所属が縁で息子の年代を指導することになりました。今までは6人制でしたが、2年生からは8人制になります。個人の技術だけではなかなか通用しなくなり、仲間と協力して崩していくサッカーに移行しなければと考えています。一方で、小さいうちにしっかりドリブルで相手を抜く個のスキルを身につけることも大切だと思っています。どれか一つの技術だけを磨けばいいわけではないことはわかっているのですが、この年代の指導で注力すべきことを教えていただけませんか。おすすめの練習メニューがあればご教示いただけると幸いです。<池上さんのアドバイス>ご相談ありがとうございます。ご質問に関連したちょうどよいトピックがありますので、お伝えしましょう。■サッカーはいかにして味方と協力するかを楽しむスポーツ。勝手なプレーはダメ週末、千葉県の方で「親子サッカーキャンプ」を開催しました。親子でキャンプをするのですが、昼間は子どもとサッカーをし、夜は保護者に向けセミナーを行いました。そこでは、サッカーをどうとらえるか?といったお話もしました。「サッカーというスポーツは得点を競うゲームですが、チームゲームでもあります。ひとりで勝手にプレーしては、サッカーではなくなってしまいます。いかにして味方と協力するか、そんなことを楽しむスポーツです。私は子どもたちがサッカーをするのに、そこから入らないとおかしいと考えます。ところが、日本は、足元の技術が上手くならないと試合にならないと、大人たちが信じ込んでいます」そんな話から始まります。■子どもたちがパスを出そうとし始めたことに親が驚く参加されている親御さんのなかには、ご自分もサッカーを教えられている方もいらっしゃいます。お父さんコーチと呼ばれる、日本のサッカーを支えている人たちです。彼らの前で、一日目の午後2時間と二日目の午前2時間の指導で子どもたちの姿が変わっていくのがわかります。つまり、ひとり一人がドリブルをするのではなく、味方と協力するサッカーになっていくわけです。見ておられた親御さんたちの一番の驚きは、子どもたちがパスを出す味方を探そうとし始めたことでした。そうなると、パスを受けられる最適なポジションを探します。ボールに集まるのではなく、広がり始める。そうすると非常にサッカーらしくなります。参加者の中心は3、4年生でしたが「1年生からこんな指導を受けられたら、3年生になったらどんなふうになるのか楽しみ」という声もありました。■日本の子どもはドリブルばかり使うでは、私がどんな指導をしたのか。まず初めに、子どもたちにこう話します。「サッカー楽しむために、何が一番大事かな?」子どもたちは「シュートが入る!」と言います。「そうやな。パスをして前に進んでいくことが大事だね」そこから、いいポジションにいる味方を探してパスすることを勧めます。そうやってシュートが入ると、子どもたちはとても喜びます。誰かひとりがドリブルをして相手を抜いてゴールしたときよりも、明らかに嬉しそうです。キャンプ2日目。2対1でワンツーをするトレーニングをしました。ワンツーが成功すると、自分で抜く必要がなくなります。誰かを使って、自分がフリーになれる。そうすると、難しくないサッカーになります。世界のトップリーグの試合は、すべてそうなっています。どうして日本の子どもだけドリブルばかり使うのでしょうか。サカイクの最新イベントやお得な情報をLINEで配信中!■「止める・蹴る」ができてから「判断」を教える日本の指導は欧州と真逆この連載でもすでに何度かお伝えしているように、小学生に対する日本の育成は、指導の順番が「行動→判断→認知」です。足元の技術をしっかりやって「止める・蹴る」といったスキルやドリブル、つまり「行動」にあたる基礎技術が上手くなってから、視野をとって判断することを教えます。そうやって、ようやくサッカーというスポーツを認知します。一方、欧州などのサッカー先進国は、日本と真逆の「認知→判断→行動」という順番です。上述したように、サッカーがどういうスポーツなのかをまず学びます。認知します。次に、場面場面でどれだけたくさんの情報を持てるか。そして、その情報を瞬時に整理して選べるかをトレーニングします。判断です。この認知、判断の次に、ようやく「行動」がきます。正確に出てきたパスをコントロールし、次にその場面で最適と思われるパスやドリブルを選び遂行する技術を磨くのです。以上のことからわかるように、私たちは、情報を入れるトレーニングを早くからやったほうがいいのです。■今の日本は「サッカーを知らない」子どもたちを育ててしまっている(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)対面パスやジグザグドリブルのようなクローズドスキルだけでは、子どもは考えなくて済みます。日本のジュニアは足元の技術が素晴らしいと言われますが、それだけをやってしまうと頭で考える力がついてきません。現実に、チームでどこに動けばよいかを考える姿が、日本のジュニアにあまり見られません。指導が後回しになっているからです。後回しにしてよいのは、足元の技術練習のほうです。そのあたりの順番が逆なので、子どもたちは賢く育っていません。技術はしっかりしているけれど、サッカーを知らない――そんな子どもたちを育ててしまっています。思えば2年生から8人制というのも、私から見れば違和感があります。ドイツでは今、10歳以下は3対3の「フニーニョ」(※)です。サッカーを始めた入り口に近い2年生から、いきなり8人制で試合をしてしまえば、子どもたちはどう動くのか、どう見るのかを一切学べないまま試合をしなくてはなりません。※フニーニョとは?ドイツが育成年代に導入しているフニーニョとはこんなルール>>池上正さんの指導を動画で見る>>池上正(いけがみ・ただし)「NPO法人I.K.O市原アカデミー」代表。大阪体育大学卒業後、大阪YMCAでサッカーを中心に幼児や小学生を指導。2002年、ジェフユナイテッド市原・千葉に育成普及部コーチとして加入。幼稚園、小学校などを巡回指導する「サッカーおとどけ隊」隊長として、千葉市・市原市を中心に年間190か所で延べ40万人の子どもたちを指導した。12年より16年シーズンまで、京都サンガF.C.で育成・普及部部長などを歴任。京都府内でも出前授業「つながり隊」を行い10万人を指導。ベストセラー『サッカーで子どもがぐんぐん伸びる11の魔法』(小学館)、『サッカーで子どもの力をひきだす池上さんのことば辞典』(監修/カンゼン)、『伸ばしたいなら離れなさいサッカーで考える子どもに育てる11の魔法』など多くの著書がある。
2022年07月29日サカイクがお届けする『親子で遊びながらうまくなる!サッカー3分間トレーニング』。今回はサッカー初心者の悩み「状況を見て素早く反応できない」を克服するトレーニングをご紹介します。試合中は、様々に変わる状況の中で素早く身体を反応させることが大事です。相手に反応する、ボールに反応する、味方の動きに反応する、などいろんな場面があります。しかし、運動経験が少ない子やサッカー歴は長くても自分の身体を思い通りに動かせない子は、素早く反応して動くことができないもの。今回は、広いスペースがなくても親子で遊びながら、状況に合わせて素早く身体を反応させることができるようになるトレーニングを紹介します。親は難しい動きはありません。【やり方】1.2つの目印を置いて親子で対面して立ち、じゃんけんをする2.勝った方は目印を手でタッチしに行き、負けた方はタッチされる前に捕まえに行く3.動きに慣れたら、ボールを使ってドリブルしながらやってみる【トレーニングのポイント】・親子の運動経験に合わせて、目印の位置を調整(例:親が運動苦手な場合は目印を親の方に寄せ、子どもが走る距離を多くする)・じゃんけんの結果を見て迷っていると相手に詰められるので、素早く目印を目指す・相手の動きをよく見て、逆方向の目印に方向転換するなど素早く判断して動く・ドリブルをするときは相手をよく見る・力まずリラックスして行う・慌てずゆっくり、慣れてきたらリズム良く行う・失敗しても気にせず、親子で楽しみながら行う次回もサッカー初心者のお悩みに応えるトレーニングをお届けしますのでお楽しみに!お父さんコーチに役立つ練習メニューを公開中>>
2022年07月28日兵庫県神戸市の強豪街クラブ、センアーノ神戸は、選手と監督・コーチとの間でサッカーノートをやりとりすることで、サッカー・生活両面でのコミュニケーションを図っています。これまでは市販のノートを使用していましたが、この春からサカイクサッカーノートを3年生以上の年代で導入。使用して約2か月の時点でどんな変化や成長を感じるか、クラブの代表を務める大木宏之監督と学年の担当コーチ、選手たちに聞いてみました。選手たちも実感しているサッカー面での成長などをお伝えします。(取材・文:貞永晃二)チームの代表を務める大木監督は、これまでのノートに比べ圧倒的に書く量が増えたことを実感していると教えてくれました子どもたちも成長を実感!サッカーが上達するサッカーノート>>【関連記事】子どもたちが証言!「自分の現在地」がわかるから課題が明確になるサッカーノート■サッカーノートを上手く使ってサッカーIQを上げてほしいまずはU-12の大木宏之監督にお話を伺いました。――選手は土日に使ってもらっているそうですね。大木監督(以下、大木)土日に試合をするので、試合前に目標を立てて、試合後にそれを振り返るというやり方です。提出してもらって僕らがコメントを書く形で使用しています。以前は普通のノートを使用していました。内容は、半分はサッカー以外のこと。たとえば家での様子や、学校で何かあったとか、何でもいいから普段の生活の事を、あと半分はサッカーの試合のことを書いてもらっていました。特に「今日やってよかったこと」3つくらいと、ここはこうしたら改善できるというような「もっと良くなるところ」を3つくらい書いてください、といったやり方で運用していました。――選手は試合映像を見てノートを書くのですね?大木高学年は選手がその日の試合の映像を見られるように、Googleドライブを使っています。保護者が撮影したビデオをアップしてもらってみんなで共有して、僕であれば担当している4年生の試合を見て、その振り返りを行うわけです。選手たちにも映像はちゃんと見るように言っています。海外では小学生年代でも自分たちの映像を見て振り返るのは普通のことだと聞きます。今、教え子がサウサンプトン(イングランド)のアカデミー(U-15)にいるんですが、その子の話では、チームから送られてきた映像を自分で分析して、トリミングなど編集をしてコメントを書き、コーチに送り返すということをやっているそうです。うちは街クラブなのでそこまでの運用は難しいですが、少なくとも映像を見てサッカーノートをうまく使って、自分たちのプレーを分析することで、サッカーIQを少しでも上げていってほしいと思っています。■子どもたちが書く量が圧倒的に増えた――サカイクサッカーノートを使用して変わった点を感じられますか?大木サカイクのノートは試合の前に目標を書く項目があるので、前回の振り返りと、今日の目標、どんなことを工夫するかというのがあるので、子どもたちにとってはすごくいいと思います。僕ら指導者たちも「今日はこんなことを目標にプレーしていたんやな」っていうのが見えるのでそれはすごくありがたいです。今日どんなことをしたいか、どんなことを学べたかとか、ちゃんと項目ごとにあるので、子どもらはすごく書きやすいと思います。しつもんに沿って書いていく形式なので、子どもたちが書く量が圧倒的に増えてますね。書きやすいんだと思いますよ。■自分の気持ちを口に出すのが苦手な子も、ノートで本音を伝えてくれる――保護者の反応はどんな感じですか?大木監督、コーチと子どもたちとのコミュニケーションツールとして、すごくいいですねと言われました。小学生だと本当に喋れない子たちがいますからね。でもサッカーノートにはちゃんと書けたりするんです。もちろん、声に出して表現できない本音を伝えてくれるのは良い事ですが、将来的には、それをちゃんと口に出して言語化する訓練もしないといけないなとは思っています。そういった、自分の気持ちを口に出すのが難しい子もいますから、コミュニケーションツールとしてはすごくいいですよ。子どもたちとのコミュニケーションが取りやすくなったので、「今日はシュートを意識していたんやろ。すごくよかったやん」などと声かけしたら、言われた子は目を輝かせて、どんどん自信を持って能動的にプレーが発揮できるようになったような感じはしますね。■選手たちと「サッカーの会話」が増えた――選その他気づかれた点はありますか?大木いいなと思ったのは体重を記入する欄です。体重の増減が分かるので、あまり体重が増えていないのに身長ばかり伸びている子はトレーニングのやりすぎじゃないか、と考えるきっかけになります。選手たちの健康のためにもトレーニング負荷、試合の頻度、そういうのをスタッフが知り得る目安になりますから。あと、朝起きた時の体調を3つの顔から選ぶ欄もすごくいいと思います。例えば、一番左(悲しい表情)にチェックが付いていたら、どうした?とやっぱり声をかけますよね。子どもらの変化で言えば、サッカーの知識のところですごく探究心が出てきて、発言の内容がサッカーっぽくなりましたね。代表戦とか、Jリーグ、プレミアリーグとかを見て、「あの選手のあそこはすごくいいよね」とか、そういう"サッカーの会話"が増えているような気はしますね。子どもたちも成長を実感!サッカーが上達するサッカーノート>>■「振り返りができるようになった」3、4年生代表の声選手代表として動画でコメントを言ってくれた4人と担当コーチに感想をお聞きしました。選手たちもそれぞれが自分の課題を振り返ることで成長につながっていることを実感しているそう――サカイクサッカーノートを使ってどうですか?●安田蒼くん(やすだあお・4年生)振り返りができるようになりました。練習の前にこのサッカーノートを見て、できたことはもっと伸ばそうと、できなかったことは修正してもっと頑張ろうと思うので、サッカーの面でも伸びたと思います。●石川克人くん(いしかわかつひと・4年生)このサッカーノートを使って、パスのスピードや、オフザボールの動きをもっと多くすることを意識してできるようになりました。●山田真平くん(やまだしんぺい・3年生)味方を生かすプレーとか、自分で思いきり突っ込まずにパスを出せるようになりました。サッカーノートは良くなかったことも詳しく書けるから、改善点を次の試合で意識できるようになりました。●杉本悠陽くん(すぎもとゆうひ・3年生)前は「止める・蹴る」の精度が低かったけど、このサッカーノートで何回も振り返ることで、「止める・蹴る」のパススピードや置く位置が良くなりました。サッカーノートは質問されるのではなく、自分で考えて書くものと思っていましたが、サカイクのノートを使ってみて質問されるサッカーノートもあって、自分だけじゃなくてサッカーノートと一緒に書けるんだなあということが分かりました。子どもたちも成長を実感!サッカーが上達するサッカーノート>>■4年生担当コーチも「思考が分かりやすくなった」ことを実感●前泊璃音コーチ(まえどまりりお・4年生担当)――サカイクサッカーノートを使ってから選手の変化とか日常で気づいたことはありますか?前泊子どもたちがいつもの練習では口にしていないことをノートに書いて、表現してくれるので、本心というか普段は言葉にできていない本音や思考が分かりやすくなったのは、変化だと思います。――以前のノートとサカイクサッカーノートの違いはどうでしょうか?前泊以前使用していた市販のノートだと、良いことを3つと改善点3つ、そしてサッカー以外の生活について数行といった割と自由な感じなので、書くのが苦手な子もいましたが、サカイクのノートだと質問が書いてあって、それに答える形で書くので、以前に比べて書く量も増えました。――サッカーの面で意識が変わったとか、以前はできなかったことができるようになってきたなどの変化はありますか?前泊まだ使い始めて2か月程度なので、そこまで明確には感じられないですが、ちょっとずつ感じられればいいと思っています。■3、4年生たち自身が感じた成長動画でコメントしてくれた上記4人以外の意見も紹介します。子どもたちの本音を参考にしてください。――選サカイクのノートを書くようになって、サッカーで変化がありましたか?「声を出すことを監督に言われて、それをノートに書きました。ノートで振り返って(チームを)まとめるために声を出そうと意識して練習や試合に臨んだので、出せるようになってきました」「ビルドアップが苦手だったけど、ノートを見て、できなかったことを次の時に練習して、できたことは継続してやっていたら、意識してうまくビルドアップできるようになりました」「タテにパスを入れることしか考えてやっていなかったけど、繋ぐことをノートに書いて、意識して練習をしていたら、強いパスを繋ぐことができて横から縦にボールを動かすことができるようになった」「目標を高く持てる。できなかった時はノートを見て前のことを振り返ってから、また目標を書けるから。目標を立てるのにはいいと思います」「普通のノートの時は、目標を立てても忘れることが多かった。だけどサカイクのノートは前のページの目標の欄を見れば書いてあるから忘れにくいです」■サッカーを始めたころの自分を思い出した――最初の方のページに、「どうしてサッカーをはじめましたか」、「10年後どんな自分になっていたいですか?」を書くスペースがありますが、それを書いてどういうことを考えましたか?「自分がどうやってサッカーを始めたのか、とかそういう自分の(幼稚園の)小さかった昔のことを思い出した。今とだいぶ違うな、大きくなったなと思った」「書いたのは2018年Wカップの時の乾貴士選手のゴールを見て、本気でサッカー選手になろうと思ったこと。今でもあのゴールを覚えていて、憧れていてあんなゴールを決めたいなと思っています」■「今の自分」を知ることで、工夫を重ね成長につながっているこれまでもサッカーノートは書いていた選手が多かったですが、割と自由な書式だったのであまり深く考えずに書いていたけど、サカイクサッカーノートはしつもんがあるので考えながら書くようになったという声も。そのぶん、以前のノートより時間がかかっているそうですがほとんどの子から「書きやすい」「目標が立てやすい」「振り返りができる」などポジティブな意見が聞かれました。「今の自分」を知ることで、サッカーを考え、工夫するようになったので成長につながっている実感を持っている子が多いようです。後編では、5、6年生の声をお届けします。子どもたちも成長を実感!サッカーが上達するサッカーノート>>
2022年07月27日子どもが高学年になると気になりだす「トレセン」。同じチームでも「あの子は選ばれたけど、うちは......」、「小さいから無理かな」、「選ばないってことは才能ないからサッカー以外に転向した方いい?」など親御さんを悩ますこともあります。サカイクの読者であるジュニア年代のお父さん、お母さんが気になりがちなトレセン活動について、前回は東京都サッカー協会で技術委員長を務める中田康人さんに、選考基準について話を聞きました。後編では、トレセンに選ばれなかった選手や親御さんへのメッセージを貰いました。(取材・文:森田将義)写真は少年サッカーのイメージ<<前編:小さい子は不利って本当?気になるトレセン事情。東京都サッカー協会がトレセンで重視する「12歳までに必要なテクニック」とは■中学、高校で順調に伸び続けるかはわからないもの中田さんは東京都の技術委員長に就任するまでの12年間、日本サッカーを先頭に立って引っ張っていくエリートの育成を目標にするJFAアカデミーに所属していました。所属するのは、3次まである選考を進んだ10数名の選手のみ。合格した親御さんの中には、「将来はプロになれる」と期待を抱かれる方もいましたが、中学、高校年代で伸びていくかは本人と指導者をはじめ周囲のサポート次第です。「優秀な選手が多かったですが、誰が順調に伸び続けるか、いつ伸びるのかは指導者も分からない。私たち指導者含め、お父さん、お母さん皆さんでサポートし続けましょう!と伝えていました」と中田さんは振り返ります。「保護者が期待するのは当然ですが、親御さんは見守ったり、励ましたりするのが大事。年齢が下がれば下がるほど、みんながプロになれるチャンスがある。だからと言って、そのまま順調にいくかは全く分からない。指導者と保護者と我々がタッグと組んで子どもたちの成長を見守ることが大切です」。サカイクの最新イベントやお得な情報をLINEで配信中!■トレセンは将来が約束されるものではない。いずれ立場が逆転することもトレセン活動も同じで、U-12年代で選ばれたからと言っても、将来が約束されるわけではありません。JFAアカデミー福島では、U-12年代に県トレセンに入っていない選手もいました。反対にU-12年代で輝かしい経歴を持ち、中学からJリーグのアカデミーに入ったとしても、プロになれるのはほんの一握り。高卒でプロになったとしても、大学経由でプロに進んだ選手と立場が逆転する可能性もあります。「12歳での評価が13歳の立ち位置を決めているだけで、答えはありません。答えがないから諦めるのではなく、いろんな道を探れる。それが日本の仕組みであり、強み」と中田さんは口にします。■内田篤人さん、伊藤純也選手もトレセンに縁がなかったがプロになった20年以上前に日本でトレセン制度が整備されてからも、拾い切れなかった才能が数多くいます。過去の代表的な選手は、元日本代表の内田篤人さん。小中学生の頃は静岡の県トレセンにも選ばれない選手でしたが、日本サッカー協会が遅咲きの選手を発掘するために行った、早生まれの高校1年生が対象のU-16日本代表候補の選考会を機に、飛躍を遂げました。近年では、小学校時代に横浜F・マリノスアカデミーのセレクションに落ち、街クラブ、公立高校、大学経由でプロとなり、日本代表にまでなった伊東純也選手が代表例。中田さんはこう話します。「色んなトレセンの仕組みがしっかりしだした今でも、取りこぼしがある。同時に、見てはいたけど、突然伸びてきた子たちがいる。入れなかったからダメではないし、入ったから安心でもないので、親御さんは選考結果に一喜一憂しない方が良い。選手自身も選考結果にとらわれる事なく"まだまだ"、"もっともっと"と思い続けるのが大事」。サッカー少年の親が知っておくべき「サカイク10か条」とは■月一回のトレセンは「きっかけ」に過ぎない。大事なのはチームに帰ったあと育成年代で大事なのはトレセンで選ばれる事ではなく、将来活躍できるかどうか。月に1回のトレセン活動は選手が変わるきっかけに過ぎず、自チームに帰り、日々のトレーニングで成長できる選手でなければいけません。また、出た課題に気付けない選手は、選ばれただけ、少し活動しただけで満足して終わります。プレーだけでなく、パーソナリティーも大事な要素と言えるでしょう。「JFAアカデミー時代は代表に選ばれてもシュンとして帰ってくる子がいれば、『どれだけ良い経験してきたんだろう?』と思うぐらい伸びてきた子もいた。人は本当にきっかけが大事。思春期の難しい時期には、色んな事を感じると思う。ダメだ俺はと思ってしまう子もいれば、上手い選手を追い越したいと思う子もいる。そうした所が分岐点になる。選ばれた事を良いきっかけに出来る選手であって欲しい」(中田さん)。■チャンスはみんな平等にある中田さんが選手によく伝えるのは、「チャンスはみんな平等にある」という言葉です。「チャンスが来ている事さえ分かっていない子がいれば、来たチャンスを掴み取ってしまう子もいる。代表監督が目当ての選手を見に来たら、別の選手が目に留まり、次の代表キャンプに呼ばれた事もにありました。自チームと地域の指導者では見る目が違うかもしれませんが、今の日本サッカーの仕組みでは良い選手なら、上に推薦されていきます。推薦されるには、何か理由があるはず。されない選手は推薦されない理由もきっとあるはずです」。■トレセン以上に日々の取り組みが重要チャンスはどこに転がっているか分からないからこそ、トレセン以上に日々の取り組みが重要と言えるでしょう。「昔の人が言っていた、『毎日を全力で生きよう、全力で取り組もう』という言葉は正しい。テスト勉強のような一夜漬けではなく、毎日少しずつ積み重ねることでハイレベルな選手になって欲しい」と中田さんは話します。自チームで攻撃のトレーニングをやっていても、良い守備が出来る選手がいれば、指導者の自然と目に留まります。技術では目立てなくても、誰よりもチームのために走れば、「この子はテクニックがまだ足りないけど、これだけ走るとボールをプレーする回数も増えるから、テクニックが上がるかもしれない」と考える人も出てきます。そうした人たちの中に"今度、トレセンに推薦してみよう"と思う人がいるかもしれません。トレセンを意識するのも大事ですが、それ以上にそうした日常のトレーニングに目を向けることが大事と言えるでしょう。多くの国では、プロのクラブチームのアカデミーに所属していないとプロになることが難しいですが、日本ではJクラブのアカデミーだけでなく、高校部活や大学からもプロになる道が用意されており、他の国々よりもプロになるルートが多いともいえます。小学生年代でトレセンに選ばれなくても、サッカーが好きで打ち込んでいれば大きく成長するタイミングが訪れることもあります。親御さんもどうか、そういった事を踏まえて「選ばれた」「選ばれなかった」と一喜一憂せず、毎日の練習に楽しんで参加できるようなサポートを意識してください。サッカー少年の親が知っておくべき「サカイク10か条」とは
2022年07月26日サカイクがお届けする『親子で遊びながらうまくなる!サッカー3分間トレーニング』。今回はサッカー初心者の悩み「ボールを素早く奪うことができない」を克服するトレーニングをご紹介します。試合中、相手が持っているボールを奪いに行くとき、素早く反応して取りに行かなければなりません。また、すぐに相手に取り返されないようしっかりボールをキープする必要があります。しかし、運動経験が少ない子やサッカー歴は長くても自分の身体を思い通りに動かせない子は、素早くボールを奪いに行くことができないもの。今回は、広いスペースがなくても親子で遊びながら、素早く反応してボールを奪いに行き、しっかりキープする動きが身につくトレーニングを紹介します。親は難しい動きはありません。【やり方】1.親子で対面して立ち同時に身体の部位を触りながら言い、同じだった時にボールを奪いに行く。先にボールを取った方が勝ち。最初は手で行う。2.同じことを足を使って行う。3.足で奪う動きに慣れたら、ボールを奪った後、身体を使ってキープ【トレーニングのポイント】・身体を動かしながら素早く反応する・腕と身体を使ってボールを奪われないよう足元でキープ・ボールをいつでも触れる所に置きながらキープ・力まずリラックスして行う・慌てずゆっくり、慣れてきたらリズム良く行う・失敗しても気にせず、親子で楽しみながら行う次回もサッカー初心者のお悩みに応えるトレーニングをお届けしますのでお楽しみに!お父さんコーチに役立つ練習メニューを公開中>>
2022年07月25日パリ・サンジェルマンの育成部門でダイレクターを務めたダビッド・エルナンデス氏は、かつて日本代表の久保建英選手を直接指導するなど、世界で活躍するトップ選手にコンサルティングや指導を行ってきました。また、10年以上にわたりサッカーキャンプやクリニックなどで来日し指導をしてきた経験があり日本人選手についても熟知しています。ダビッド氏はスペインと日本で育成年代の選手において11の違いがあると考えています。ダビッドさんの指示に真剣に耳を傾ける選手たち<<関連記事:スペイン人指導者が語る日本人選手の良さは「技術」と「練習態度」、一方で世界と比べて欠けているスキルとは?■川崎フロンターレ、鹿島アントラーズ、JFAアカデミーなどで指導したことも――日本とスペインで育成年代の選手への指導経験はどのようなものがありますか?私はスペイン(ヨーロッパ)と日本の育成年代の選手のことをよく知っています。これまでスペイン(RCDエスパニョール、カタルーニャサッカー協会)に加えフランス(パリ・サンジェルマン)とイタリア(サッカー連盟)で指導してきました。この3つの国を挙げたのはこれらの国がこれまでに世界一になったことがあるからです。さらにここ12年間は日本でもエコノメソッドのスクールやキャンプ、川崎フロンターレ、鹿島アントラーズ、奈良クラブ、JFAアカデミーなどで指導する機会に恵まれました。しばらくの間コロナウイルスの影響で海外へ行くことが出来ませんでしたが、ここ最近また日本に帰ってくる機会があり、その時何度も聞かれたのが、「日本とスペインの育成年代の選手は何が違うのか?」ということでした。ダビッドさんの指示に真剣に耳を傾ける選手たち■スペインと日本の育成年代における「11の違い」とは――その違いをいくつか挙げていただけますか?私自身もこの問いについて長い時間考えて、スペインと日本の育成年代について11個の要素において違いがあるという結論に至りました。それが、「率先力」「理解力」「柔軟性」「量」「質」「規律」「努力」「積極性」「順序」「コーディネーション」「評価」です。――これら11個の要素はどのように分類されるのでしょうか?私はこれらの要素は次のように分けられると考えています。「率先力」「柔軟性」「理解力」「積極性」は戦術的な特徴に関するものです。次に「コーディネーション」は身体的な特徴に関するもの、他には「質」「量」「評価」「順序」はトレーニング環境に関するもの、最後に「努力」「規律」はメンタルに関する要素です。11の要素TURNO(順序)、COORDINACIÓN’(コーディネーション)、EVALUACIÓN(評価)、ESFUERZO(努力)、AGRESIVIDAD(積極性)、INICIATIVA(率先力)、COMPRENSIÓN(理解力)、FLEXIBILIDAD(柔軟性)、CANTIDAD(量)、CALIDAD(質)、DISCIPLINA(規律)サカイクの最新イベントやお得な情報をLINEで配信中!■ドリル形式のトレーニングに慣れると自分でプレーの判断ができない選手になる――どれかひとつを簡単に説明していただけますか?「率先力」は選手たちのプレーの戦術的な面で違いを生む重要な特徴のひとつです。サッカーの試合では、練習した通りでない状況や、様々な理由で個人やチームとしてのゲームプランを実行できない場面に遭遇します。しかしそのような時でもできるだけ早く適切な判断をしなくてはいけません。例えば、自チームのセンターバックがフリーでボールを持っていて、ディフェンスラインの他の選手は相手にマークされているとします。そのときに中盤の選手はうまく連携を取れておらず、全員がボールに近づいてしまいました。その一方でセンターフォワードの選手は疲れているせいか状況を正しく把握していないせいか、前線に残り高い位置でボールを要求しています。そうなるとチームのシステムの真ん中に大きなスペースができており、そこには誰もいない状況になります。通常この中央のスペースはウイングの選手が埋めるべきではありませんが、この場合ウイングのどちらかがこのスペースにサポートに入り、空いたスペースを活かすことが大切です。これが試合の中で選手の「率先力」が重要になるところであり、選手が日頃からトレーニングの中で問題を解決することに慣れていなければいけない理由です。もし判断の必要がなく同じ動きを繰り返すドリル形式のトレーニングに慣れてしまうと、自分自身でプレーの判断ができない選手になってしまいます。逆に、問題のある状況に置かれるようデザインされたトレーニングをメインに行えば、選手は継続的に自分自身で判断せざるを得ず、主体性が養われ、実際の試合でプレーする時に「率先力」を発揮できるようになります。選手の育成段階やクラブのプレーモデルに応じてトレーニングをするため、指導者は選手のプレーを評価できる客観的な指標、トレーニングメニュー、指導法について学ばなくてはいけません。■11の要素を実践するための場がある――この11個の要素についてもっと知るためにはどうすれば良いでしょうか?また、どのように育成年代のトレーニングを改善すれば良いのでしょうか?ここでは「率先力」という1つの要素についてお話ししましたが、読者の方は後編の「日本人選手が成功するために足りないこととは?」(※近日配信)をお読みください。その中では「順序」の要素についてお話しします。また近いうちに「日本サッカーと欧州のサッカー 11の違い」というタイトルで本を出版し、これらの要素を(定義、比較分析、事例、メリットとデメリット、指導法など)深掘りしていく予定です。また、ここで話した考え方を実践する場として、育成年代の選手たちにはエコノメソッドキャンプへ参加することをお勧めします。<エコノメソッドサマーキャンプ2022 概要>【開催日時・場所】【中学生キャンプ】中学1年生~3年生京都クール8/12(金)-8/13(土)@大谷中学高等学校【小学生キャンプ】小学2年生~6年生奈良クール8/9(火)-8/10(水)@ヤナギフィールド愛知クール8/15(月)-8/16(火)@瀬戸SOLAN小学校千葉クール8/18(木)-8/19(金)@ZOZOPARK HONDA FOOTBALL AREA川崎クール8/22(月)-8/23(火)@富士通スタジアム川崎高知クール8/27(土)-8/28(日)@野市ふれあい広場サッカー場対象小学生キャンプ:小学2年生~小学6年生中学生キャンプ:中学1年生~中学3年生基礎技術をしっかり持った中級・上級レベルの方※男女不問その他各種割引あり(友達紹介割引、兄弟割引など)宿泊・通いプランありエコノメソッドキャンプの詳細・お申込みはこちら>>エコノメソッドスクール公式HP>>ダビッドさんのトレーニングも紹介賢いサッカー選手を育てるDVD
2022年07月25日サカイクがお届けする『親子で遊びながらうまくなる!サッカー3分間トレーニング』。今回はサッカー初心者の悩み「ボールをキープできない」を克服するトレーニングをご紹介します。試合中は相手にボールを取られないよう、腕や身体を使ってボールを守らなければなりません。しかし、運動経験が少ない子やサッカー歴は長くても自分の身体を思い通りに動かせない子は、相手との距離を図ってボールをキープすることができないもの。今回は、広いスペースがなくても親子で遊びながら、全身を使ってボールをキープできる動きが身につくトレーニングを紹介します。親は難しい動きはありません。【やり方】1.子どもはボールを抱えて亀のように丸まり、全身に力を入れてボールを守る。親は横から手でボールを奪おうとする2.ボールを上に投げ、バウンドが止まったらボールをキャッチする。バウンドが止まるまでの間、身体を使って、親からボールを守る3.バウンドしたボールを足でキープ。相手とボールの間に体を入れて距離を作る【トレーニングのポイント】・腕を使って相手を遠ざける・ボールと相手との間に体を入れ、ボールに届かないよう距離を作る・ボールをいつでも触れる所に置きながらキープ・力まずリラックスして行う・慌てずゆっくり、慣れてきたらリズム良く行う・失敗しても気にせず、親子で楽しみながら行う次回もサッカー初心者のお悩みに応えるトレーニングをお届けしますのでお楽しみに!お父さんコーチに役立つ練習メニューを公開中>>
2022年07月22日猛暑・酷暑の夏。炎天下でサッカーをする子どもの熱中症の心配もつきません。体温を超えるような気温の中で練習して「熱中症かも?」と思われるぐったりした様子で帰ってきたら、どんなことをしてあげるといいのでしょうか。そもそも熱中症になりかけの状態なのか、練習疲れなのか判断するのも難しいですよね。前編に続き、「熱中症予防声かけプロジェクト」実行委員長の帝京大学医学部附属病院高度救命救急センター長・三宅康史先生にお話を伺いましたので、食事や休息のとらせ方など参考にしてください。(取材・文:小林博子)写真は少年サッカーのイメージ<<前編:サッカーの練習後にぐったりして食欲がない子ども。これって熱中症?自宅でできる熱中症対策の基本■いつもと様子が違ったら、少なくとも暑さダメージのケアは必要前編では、子どもが熱中症になってしまったかどうかを判断する方法について三宅先生からのアドバイスをご紹介しました。熱中症はさまざまな症状がありますが、「こうだから熱中症、こうだったら"熱中症になりかけている"」といった明確な線引きはなく、暑い日に子どもがぐったりとしていたら、暑さのダメージを受けている状態だそう。熱中症の可能性もあるので、対処が必要とのことです。サカイクの最新イベントやお得な情報をLINEで配信中!■「熱中症に効く薬」はない前編で「熱中症にも早期発見・早期治療を」と解説しましたが、治療という言葉から連想するような「薬」は、熱中症に効くというものは存在しないそうです。熱中症になりそうな体の不調を感じたら、家庭でできることは・栄養をしっかり摂る・涼しい部屋で体を休ませるの2つだと三宅先生は言います。■家庭でできる熱中症対策:食事編「糖分・水分・塩分」を。そしてできればタンパク質を摂取して「基本的には、おいしいものを食べさせてあげてください」と、三宅先生。食欲が落ちがちな夏に、しかも熱中症かもしれない体調の子どもには、食べたいもの(食べられるもの)を食べさせてあげることを先決しましょう。必要な栄養は、まずは糖分。ごはんやうどんなどの炭水化物や、スポーツドリンクなど、体を動かすエネルギー源となるものたちです。続いて水分と塩分も必要です。糖分・水分・塩分は、スポーツドリンクですべて補えます。何も食べられないときには、スポーツドリンクだけでも飲むようにしましょう。そして、可能であればタンパク質を。タンパク質は、疲労回復を促進し血の巡りをよくする栄養素でもあるからです。なお、スポーツドリンクを飲む際は、一気飲みは避けて少しずつ飲むようにした方が良いと三宅先生はアドバイスをくれました。一気に飲むと、腎臓が水分を排出するように働いて尿が増えたり、お腹を下してゆるい便と共にせっかく摂った水分を排出してしまったりと、逆効果になりかねないからだそうです。ですので、例えば500mlのペットボトルなら、100mlずつ5回に分ける程度にしてみてください。サッカー少年の親が知っておくべき「サカイク10か条」とは■家庭でできる熱中症対策:入浴編必ずしも湯船につかる必要なし!ぬるめのシャワーだけでも十分熱中症の可能性があるとき、体はほてった状態になっています。そのため、入浴は体を温めすぎないことを意識しましょう。「湯船には無理に入らず、シャワーだけで十分です。湯船に入りたいと子どもが言うようであれば、体をあたためるためというより、リラックスするためというスタンスで入りましょう」(三宅先生)シャワーもお風呂も、いつもよりぬるめのお湯で良いそうです。ほてった体をクールダウンすることにもつながります。なお、体調によってはシャワーすら難しい場合もありますよね。その際は、そけい部や頭、首、わきの下などを氷嚢や冷たいタオルで冷やしてみると良いそう。大きな血管がある部分を冷やすことで体内を流れる血液の温度も下がるので、この方法でも短い時間で体を冷やす効果が望めるのだと教えてくれました。■家庭でできる熱中症対策:休息編涼しい部屋でゆっくり休ませて食事と体のクールダウンが済んだらあとは休息です。クーラーを効かせた涼しい部屋で過ごし、早めに就寝できるとベターだそうです。サッカー以外にも学校や塾、習い事など最近の子どもたちは忙しい毎日を過ごしていますが、しっかり休息をとることは体調を整える上でも大事なことです。■翌朝元気に朝食が食べられれば安心栄養、クールダウン、休息で対処し一晩休めば、翌朝には回復していることも多々あります。いつも通り朝食を食べられれば、熱中症への対処がうまくいったと思ってOKだと三宅先生は言います。前夜にあまり食べられなかった分、しっかり食べさせてあげてください。もし、体調が回復せず朝食も普段通り食べられない場合は、学校や練習を休ませて引き続き休息を十分とり、水分をはじめとする栄養摂取を心がけてください。■熱中症予防に、日頃の朝食は和食がおすすめ食事は3食バランス良く摂ることは、熱中症対策にも有効ですが、特に朝食に課題が多い子どもが多いようです。「朝はパンとジュースだけ」という子どもは、どうしても朝食の栄養バランスが偏りがちかもしれません。前述した栄養素の「糖分・水分・塩分」の3つをしっかり摂るなら、朝ご飯は和食がおすすめだそう。ご飯はパンに比べて水分を多く含んでおり、味噌汁でも水分、そして塩分をしっかり摂れるから、というのが理由とのこと。毎日和食はちょっと......というお子さんは、夏場だけ数日に1回は和食にしたり、熱中症を疑う体調不良を感じた翌朝は和食にチャレンジしてみるのも手です。■熱中症予防の知識もアップデートを三宅先生が10年以上にわたり携わっている「熱中症予防声かけプロジェクト」は、熱中症を予防することにつながる夏の過ごし方を働きかける官民共同プロジェクトです。公式WEBサイトには、熱中症を予防するための正しい知識がわかりやすく紹介されていますので、予防法の復習もぜひしてみてください。三宅康史(みやけやすふみ)帝京大学医学部救急医学講座教授/帝京大学医学部附属病院高度救命救急センター長、熱中症予防声かけプロジェクト実行委員長東京医科歯科大学卒業後、公立昭和病院脳神経外科・救急科(ICU)・外科医長、さいたま赤十字病院救命救急センター長・集中治療部長、昭和大学医学部救命救急センター長など歴任し、2016年帝京大学医学部救急医学教授・同附属病院救命救急センター長に着任。2017年からは同高度救命救急センター長を務める。熱中症予防声かけプロジェクトサッカー少年少女の親の心得「サカイク10か条」
2022年07月21日サッカーの審判にどんな印象を持っていますか?なんだか怖いという印象を持っている方もいるかもしれません。「気持ちは分るけど、ファウルはアカン」「ごめん、今のはアドバンテージとるべきだった」これらは、実際にピッチでかわされた会話です。プロの試合中、監督や選手とレフェリーがどんなコミュニケーションをとっているのか。「審判」から「レフェリー」への進化についてお届けします。(構成・文:石井紘人)サッカーの試合にレフェリーは欠かせません■同じラフプレーに対しても判定の差が大きいことに不満この春発売されたDVD『レフェリー』は、サッカーに関わる全ての人にアップデートが必要なことを物語っていると感じています。Jリーグ開幕直後の審判員について、FIFAワールドカップやEUROを担当したレスリー・モットラム氏は、ジーコ氏との対談で下記のように語っていました。モットラム氏:日本人レフェリーは、例えばビスマルクの前では、萎縮していた...(中略)ジーコ:私が更に最近感じていることは、代表選手と、外国人又は他の日本人選手が犯した同じラフプレーに対しての判定の差が大きいことです。外国人は罰せられ、代表選手はお咎めなし...。モットラム:そう...、もしかしたらね。更にその問題も存在します。それを変えようとしており、日本人レフェリーに基準を持たせるように試みています。どんな選手がファールを犯したかには関係なく、普通、警告又は退場に値するプレーなのかの判断基準です。世界中でレフェリーが批判を浴びているのは一貫性の無さに対してであり、中には個人基準を持っている者も存在します。インタビュー全文はこちら※ジーコオフィシャルサイト■昔の審判は高圧的でコミュニケーションをとれなかったモットラム氏は1996年からJリーグ担当レフェリーとなり、1998年から4年連続で優秀主審賞を受賞し、引退後は2002年から2005年までJFAチーフ審判インストラクターを務めていました。そして、上記の対談で出た課題である『強さ』と『判定力』を日本の審判員に求めていたようです。その試みに対して、賛否両論あるようですが、ジーコ氏は対談で「レフェリーは進化を遂げた」と語っていました。私もそう思います。ですが、「レフェリー」というよりは、順番もあるのでしょうが、まずは「審判・主審」という方向に進んでいたように思います。「昔は審判側にも問題があったと思います。審判は教育大系の方が多かったからか、どうしても先生から生徒への上から目線で『こうだ!』と仕切るようなレフェリングばかりでした。悪くいうと高圧的で、コミュニケーションをとれない印象を持っていました」と原博実氏は過去を振り返っています。出典:Jリーグ公式サイト内ニュース■レフェリーは裁判官ではない。サッカーを知らなければいけないでは、「審判・主審」から「レフェリー」になるにはどうすれば良いのでしょうか?そのヒントが『サカイク』内の記事にありましたので、抜粋します。「私は、レフェリーは裁判官ではないと思っています。選手に高圧的な物言いをするべきではありません。どちらかというと、ディレクター、演出家の要素があるのではないでしょうか。子どもたちがエキサイトしてしまった時に、ガス抜きをするような、ゆとりがあればよいと思います。そのためには、サッカーも知らなければいけません」記事全文:お父さんレフェリーは裁判官じゃない!高圧的ではなく"毅然"と笛を吹こうこちらは大阪体育大学名誉監督であり、現在は関西国際大学で総監督を務める坂本康博氏の言葉です。DVD『レフェリー』では、裁判官ではなく、ディレクター的なJリーグ担当レフェリーたちが登場し、坂本氏が指摘した点の解説を行っています。そういった意味で、DVD『レフェリー』は「審判・主審」から「レフェリー」に変わる一つのきっかけになるはずです。サッカー少年の親が知っておくべき「サカイク10か条」とは■ピッチ上では見られない、人間味ある表情も前作の『審判』はデジタルカメラ一台でフィットネステストや研修会、試合の舞台裏を追いました。今回は試合に特化し、パートを二つに分けております。Chapter.1は2020~2021シーズン中の試合をいくつかピックアップし、プロフェッショナルレフェリー(JFAと契約するプロレフェリー)に「この試合で何があったのか?」を解説して貰いました。Chapter.2では2021JリーグYBCルヴァンカップ決勝にカメラを潜入させ、試合中の監督や選手とのコミュニケーションをボケイロ(レフェリーチームが付けているコミュニケーションシステム)音声とテロップフォローで追い、さらにレフェリーを務めた家本政明氏に映像を止めて解説をして貰っています。試合全体の映像とレフェリーを追った初の二画面映像で、レフェリーの動きの難解さを紐解きます。「レフェリーと選手が試合中にどのようなコミュニケーションをとっているのか?」を前作以上に追求しました。また試合中だけではなく、スタジアムの到着からピッチインスペクション、さらにはウォーミングアップ、表彰式まで、余すことなくレフェリーチームを追っています。エンディングは、前作で好評だった「レフェリーの人となり」を御覧頂けるように、2021ルヴァンカップの舞台裏にもカメラを潜入させました。ピッチ上では見ることのない、レフェリーの緊張した人間味ある柔和な表情を御覧頂ければと思います。試合展開とレフェリーを追った初の二画面映像と音声を公開。すべてのサッカーファンにとって永久保存版となる本作品、ぜひお求めください。【商品概要】販売サイト:【作品内容】CHAPTER.1 2020年-2021年 Jリーグ審判員シーズンレビュー解説:今村義朗、飯田淳平、西橋勲サッカー少年の親が知っておくべき「サカイク10か条」とは
2022年07月21日子どもが試合に出られないのに、チームに協力したくない。新しいメンバーが入ってきて、前からいる子では息子だけ出れなくなった。周りのママたちは慰めてくれるけど、出られる子の親に私の気持ちなんてわからない。サッカー辞めさせると言っても子どもは嫌だと言うし、何もかもが嫌になった。というお悩みをいただきました。みなさんもこんな苦しい思いをしたとき、どうしますか?今回もスポーツと教育のジャーナリストであり、先輩サッカーママでもある島沢優子さんが、これまでの知見をもとに、悩めるお母さんに寄り添いアドバイスを送ります。(文:島沢優子)(写真はご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)<<強豪クラブで試合に出られなくなった息子にどう接すればいいのか問題<サッカーママからのご相談>はじめまして。以前配信された記事を見て、自分と全く同じ問題だと感じました。タイトル:試合に出られないのに自主練提案しても手応えなし...。競争心の無い息子にイラつく自己嫌悪ママの問題似たような相談になってしまうかもしれませんが、アドバイスいただけませんでしょうか。配信された記事では「試合を見なければいい」とありましたが、やっぱり気になってしまいます。子どもはサッカーが楽しいと言っていますが、試合に出られないのに何も協力したくなくて......。うちの子は10歳です。今までは人数ギリギリだったため、出られないと悩む事はなかったのですが、最近一気に3人も入ってきて、前から居たメンバーでうちだけ出られなくなりました。出してもらえないイライラもそうですが、がっかりで居たたまれない気持ちになりました。チームのママたちは慰めてくれて、「ランチいこう」と誘ってくれたり気を遣ってくれたのですが、それすら「どうせ出られる子のママに、私の気持ちなんてわからない」と、何もかもが嫌になってしまって、サッカー以外でも子どもや夫にあたる日々です。正直どうしたら良いのかわかりません。サッカーやめさせると言っても、嫌だと言って子どもは1人で練習に行くようになりました。上達しないのに、時間の無駄だと思ってしまいます。こんな自分が本当に嫌です。どうしたらよいのでしょうか。<島沢さんからの回答>ご相談ありがとうございます。匿名だからできることかもしれませんが、とても正直な気持ちがお母さんのメールから伝わってきます。きっと実直で素直な方なのだろうと勝手に予想しました。加えて、お母さんのメールにとても感心してしまいました。なぜなら、お母さんは「自分と全く同じ問題だと感じた」と、5年近くも前に配信された過去記事を読んだうえでご相談されているからです。前の記事を読んでからメールしてくださるともっと深い話ができるのになあと少々残念な気持ちになることのほうが多いので、今回はとても助かります。■自覚している分、問題の半分は解決している愛するわが子を試合に出してもらえないイライラ。がっかりしてしまう気持ち。家族に当たってしまう自分。試合に出られないからでしょうか。「サッカーをやめさせる」とまでお子さんに迫っています。しかしながら、「上達しないのに、時間の無駄だと思ってしまう」ご自分を強く嫌悪しています。そうです。お母さんはもう気づいています。「今の自分のままではダメだ」と。お母さん、大丈夫です。この問題の半分はすでに解決しています。何も不安に思うことはありません。一緒に、イライラやモヤモヤを鎮めましょう。サカイクの最新イベントやお得な情報をLINEで配信中!■期待の両隣には「悦び」と「嫌悪感」が存在するまず最初に、私の経験も伝えつつ、お母さんの気持ちを整理したいと思います。私が仲間と毎月開催している「スポハグカフェ」で、6月19日にスポーツをテーマにした講座を開きました。サッカースペイン1部リーグのビジャレアルのスタッフを務める佐伯夕利子さんがゲストのひとりでした。彼女が心理学の専門家らと指導改革をされた話をまとめた『教えないスキルビジャレアルに学ぶ7つの人材育成術』(小学館新書)を作った縁で、お付き合いが続いています。佐伯さんによると、「期待する」という感情の両隣りには、「悦び」と「嫌悪感」が存在するそうです。■期待通りにならないとき、期待は嫌悪感に代わる私たち親という人間は、自分の子どもが自分たちの期待通りに物事を成し遂げてくれたり、期待した通り、もしくはそれ以上の成果をあげてくれたら喜びます。漢字はさまざまありますが悦びの感情に包まれます。私もサッカー親でしたから、息子や娘が試合に出たり、活躍すれば嬉しかったです。ところが、期待した通りにならなかったり、大きく期待を裏切る結果を見せられた途端、期待した感情は「嫌悪感」に変化すると言います。子どもに対し「ダメな結果しか出せないヤツだ」と嫌悪する、というのです。これを聞いたとき、私は深く納得しました。ああ、あの時に感じた「がっかりした」とか「情けない」といった負の感情は、そういうことだったのかと。怒りとか憎しみとは違う、強いイライラ感。そして、子どもに対しイライラする自分を認識したときに必ず押し寄せる自己嫌悪。恥ずかしい気持ち。私自身「あのとき子どもを嫌悪していたのだ」と改めて気づかされました。当時はこうやって言葉にして自己分析できませんでしたが、私は悦びと嫌悪感を行ったり来たりしていたわけです。いいときは一緒に悦ぶ一方で、そうでないときは子どもにひどい態度を見せていたかもしれません。■悪い結果を呪い、イライラする自分を呪っていたしかし、私にそれはおかしいことだと気づかせてくれたのは夫でした。夫は息子をなじったり目の前で嫌な態度を見せたりしませんでしたが、私の前では息子をダメなやつだと否定しました。すると、それを聞いた私は怒り出します。「試合に出られなくて一番つらいのはあの子じゃないのか」「本人は一生懸命やっているのかもしれないのに、そんな言い方はひどい」と夫を責めました。すると、夫は「はあ?」と怒って反撃に出ます。「よく言うよ。ママなんかさっきまであいつを怒ってたじゃないか。やる気が感じられないとか、一生懸命やってないとか」そうなのです。自分も夫と同じことをしていたことに気づかない。嫌悪感という感情の渦の中でぐるぐる回っているので、冷静でいられなかったのでしょう。しかし、同様に感情的になって息子への嫌悪感を丸出しにする夫の姿を見て、気付くわけです。それは恐らく夫も同じことだったと思います。その後、さまざまな学びを得て、少しずつ自省できるようになりました。子どもたちが度々運んでくる悪い結果を呪う一方で、「そんなことでイライラしたり落ち込む自分は親失格だ」と自分を呪う。まさに異なる呪いパンチの撃ち合いです。■良い結果でなかったとき、一番つらいのは本人(写真はご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)そんな葛藤を繰り返していたある日。九州から上京した祖父母と食事に行こうとしたら、息子がゲームを途中で辞めたくないから行かないと言い出し夫と揉めました。せっかく遠方から来た祖父母に対する気持ちを夫は問いましたが、なかなか折れない息子を叩いてしまいました。その夜、夫がとても真剣な顔で「俺たちは結局子どもに試されているんだよ」と言ったのです。もともと多くを語る人ではないのでその一言だけでしたが、私は「子どもと一緒に成長しなきゃいけないんだ」ととらえました。以来、呪いパンチ合戦は減ってきました。良い結果でなかったときは「一番辛いのは本人」と受け止め、前向きでなくても「大人だって、やさぐれたりふてくされたりする。いつか自分で気づくまで待とう」と思えるようになりました。「期待のお隣りさんは、悦びと嫌悪感」この道理を知って、自分の子育てを振り返ってください。振り返りができた時点で、息子さんにやさしくなれる自分を発見するはずです。島沢優子(しまざわ・ゆうこ)スポーツ・教育ジャーナリスト。日本文藝家協会会員(理事推薦)1男1女の母。筑波大学卒業後、英国留学など経て日刊スポーツ新聞社東京本社勤務。1998年よりフリー。『AERA』や『東洋経済オンライン』などで、スポーツ、教育関係等をフィールドに執筆。主に、サッカーを始めスポーツの育成に詳しい。『桜宮高校バスケット部体罰事件の真実そして少年は死ぬことに決めた』(朝日新聞出版)『左手一本のシュート夢あればこそ!脳出血、右半身麻痺からの復活』『王者の食ノート~スポーツ栄養士虎石真弥、勝利への挑戦』『世界を獲るノートアスリートのインテリジェンス』(カンゼン)など著書多数。『サッカーで子どもをぐんぐん伸ばす11の魔法』(池上正著/いずれも小学館)ブラック部活の問題を提起した『部活があぶない』(講談社現代新書)、錦織圭を育てたコーチの育成術を記した『戦略脳を育てるテニス・グランドスラムへの翼』(柏井正樹著/大修館書店)など企画構成も担当。指導者や保護者向けの講演も多い。最新刊は『スポーツ毒親 暴力・性虐待になぜわが子を差し出すのか』(文藝春秋)。
2022年07月20日サカイクがお届けする『親子で遊びながらうまくなる!サッカー3分間トレーニング』。今回は初心者に多い「身体を思い通りに動かせない」「ボールを自在に扱えない」という悩みを解決する、狭い場所でもできるトレーニングをご紹介します。試合中、思い通りに身体を動かすこと、思った通りにボールを自在に動かすことは大事なことです。常にいい位置でボールを持てる訳ではないので、ボールに合わせて身体を調整しなければなりません。しかし、運動経験が少ない子や幼い頃から一つの競技だけをやっていて様々な動き方を身につけていないと、動きがぎこちなかったりしてイメージした通りに自分の身体を動かせません。今回は、広いスペースがなくても親子で遊びながら、思うように体を動かしてボールを扱えるようになる方法を紹介。親は難しい動きはありません。【やり方】1.親子で対面して立ち、親が投げたボールを子どもがキャッチ。投げるのが難しければ、ワンバウンドさせてもOK2.キャッチに慣れたら「頭を触ってからキャッチ」などボールを受ける前に動作を1つ入れる。動きに慣れたら、親がボールを投げてから頭を触る動きにレベルアップ3.「頭」→「肩」の順に触ってからキャッチ。2か所触るのに慣れたら、くるっと回ってからキャッチ4.両手を地面について、立ち上がってキャッチ5.手でやった動作を足で行う。頭→肩を触ってから親が蹴ったボールをダイレクトで返す6.足でもできるようになったら、くるっと回ってから返す7.両手を地面についてから、立ち上がって足でボールを返す親子で「駆け引き」を入れながらやってみるなどアレンジしても良い【トレーニングのポイント】・動作を入れる前にボールをしっかり見る・身体を思い通りに素早く動かす意識を持つ・ボールの動きに合わせて身体の動きを調整する・力まずリラックスして行う・慌てずゆっくり、慣れてきたらリズム良く行う・失敗しても気にせず、親子で楽しみながら行う次回もサッカー初心者のお悩みに応えるトレーニングをお届けしますのでお楽しみに!お父さんコーチに役立つ練習メニューを公開中>>
2022年07月19日まだ集中力がない未就学児。サッカーは好きみたいだけど、練習中にふらっと砂場に行っちゃう子をどうすればいい?というご相談をいただきました。未就学児の指導は、話を聞けるようになる年代より自由な子が多く大変なことも多いもの。同じような経験を持つコーチもいるのでは?今回も、ジェフユナイテッド市原・千葉の育成コーチや、京都サンガF.C.ホームタウンアカデミーダイレクターなどを歴任し、のべ60万人以上の子どもたちを指導してきた池上正さんが、6歳以下の指導で大事なことをアドバイスします。(取材・文島沢優子)池上正さんの指導を動画で見る>>(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)<<手詰まりになるとサイドにパスする子どもたち。サイド=スペースがあって安全、ではなく「安全な場所」は状況によって違うと教える方法は?<お父さんコーチからのご質問>池上さんに相談していいことなのか悩んだのですが、投稿します。現在U-6以下のクラスに関わっているのですが、どうしても、練習中に砂遊びをしてしまう子がいるのです。サッカーが嫌いというわけではないようで、毎回楽しそうにクラスに通っていますし、周りのお友達とも仲良くやっているのですが、練習中にフッと砂場の方に向かってしまいます。まだまだ集中力のない年代なのは理解しているのですが、他の子たちはちゃんと練習に取り組んでいます。どうすればその子も一緒に楽しくサッカーできるでしょうか。池上さんはこんな時どうしていましたか?また、この年代の指導で大事にしていることは何か教えていただけませんでしょうか。<池上さんのアドバイス>ご相談ありがとうございます。6歳以下という年代は、指導者が「サッカーを教えなくては」と力む必要はまったくありません。すべてにわたって「どうしたら楽しくなるか?」を大人が考えてほしいと考えます。■砂遊びでなく、バッタなどに興味を持つ子どもたちも拙書『叱らず、問いかける』に書かせていただいた話をしましょう。幼児にサッカーを教えているコーチの方が、ほとほと困った様子でこんなことを相談してきました。「幼稚園の子は夏になると、バッタばかり追いかけているんですよ。わざと、ピッチの外側の草むらにボールを蹴り込むんです」草むらにボールがころころと転がると、バッタがいっせいに跳びはねます。それを見て、4~5歳の子どもたちはみんなで笑い転げる。そして、それが楽しくてたまらないので、みんな草むらにボールを蹴りに行ってしまうそうです。困り果てるコーチには申し訳ないのですが、子どもは確かにボールを蹴っていることに気づいてほしいと思いました。場所がサッカーコートではなく草むらなだけです。私が「私ならわざと草むらにボールを蹴り込みますよ」と話すと、コーチの方は驚いたような顔でした。ボールが転がってバッタが跳ねれば、子どもは楽しくて何度も何度も蹴ります。楽しくて練習になっているのです。バッタを捕まえ、ボールを蹴って、子どもたちはすごく楽しい。何の問題もありません。■砂遊びしたくなるのは当然の年代サッカーボールを使わない遊びで、身体を動かす楽しさを伝えるのも良い砂遊びがしたくなるのは当然の年代です。子どもたちがそちらに心を奪われているのならば、「よし、今日は砂遊びにするか!」とみんなでやってもいいでしょう。なぜなら、サッカーだけでなく様々な形で体を動かしたほうがいいし、いろんな経験を積んだほうがいい年代なのです。サッカー遊びだけでなく、砂遊びをしたり、バッタを捕まえたり。バルシューレと呼ばれるボールを使った遊びでもいいでしょう。サッカーボールを使わない遊びはたくさんあります。それらを通して、体を動かしている楽しさを伝えてください。その際に、すべて競争がある、勝ち負けを楽しめるゲーム形式にするとよいでしょう。幼児や低学年を教えるコーチの皆さんにはそういうことも勉強してほしいです。■「今日は何をしたい?」と子どもたちに選ばせようもうひとつ、私が大事にしていることは、子どもたちに問いかけることです。「じゃあ、みんな今日は何をしたい?」と尋ねてみましょう。コーチから一方的に「今日はこれをやるよ」ではなく、彼らに選ばせるのです。例えば、砂遊びを少しだけやったら、「今度はボールを使って何かやってみようか。何がいいかな?」と聞いてあげます。先日、親子サッカーキャンプをしました。子どもはサッカーを織り込んで、親御さんたちには私から座学で子どもが楽しく学ぶための環境とはどういうものかを伝えます。サッカーの練習は最初にシュートゲームというメニューを行いました。最初は地面に置いたボールを蹴るのですが、次の段階で「試合中は止まった状態では蹴らないよね?」と子どもたちに問いかけます。ドリブルしながらシュートなど、動きながら蹴ることを「みんなで考えてください」と言って考えてもらいます。最新ニュースをLINEで配信中!■一例を見せるとそれしかやらない、思考しない子どもたちところが、日本の子どもたちは「ドリブルしながらシュートとか」と一例を見せると、今度はそれしかやりません。パスを出してもらってシュートするといったほかのことをなかなか考えようとしない傾向があります。したがって、手を変え品を変え質問していきます。例えば、フットサルコートに置かれているゴールの前に、同じサイズのゴールを置き、間にはサッカーボールが入るくらいの隙間をつけて2台を前後に並べます。その状態で「さあ、後ろのゴールに入れてごらん」と言って始めます。そうすると、2台のゴールの前から、ボールをふわりと浮かして入れようとする子、斜めから隙間を通して狙う子などいろいろ出てきます。カーブをかける子もいます。そのように、考えたり、選べたりできる環境を整えてあげると、子どもたちは楽しそうにチャレンジします。なかには「こんなの簡単!できたよ」と意気揚々と報告してくる子がいます。「おお、どんなふうに入れた?」と言えば、やって見せてくれます。そこで、また注文を出します。「じゃあ、次は違うやりかたでやってみてくれる?」すると、子どもはまた考え始めるのです。このように、大人は次々と問いかけ続けることが大切です。■サッカーも遊びの一つ。6歳以下の子どもたちは「遊ぶ意欲」を削がないことが重要遊びのメニューも、サッカーの練習メニューも、ネットで調べたり本を読めば、そこらじゅうに転がっています。そして、説明通りにやる必要はありません。広さや距離、ボールやゴールの数など、コーチの皆さんが自分で考えて、その都度変えていくことです。正解はないので、変えることを怖がらずトライしてみましょう。一回やって、子どもたちが乗ってこなければ、やめればいいのです。大事なのは、練習を楽しくするためにはどうするか?を大人が考え続けること。子どもにそれを問いかけ続けること。この二つの視点を、この年代では大切にしてください。なぜならば、6歳以下の子どもたちの育成は、「子どもの遊ぶ意欲」を削がないことが重要だからです。サッカーも遊びです。「真面目に練習しろ」とか「きちんとやれ」といった規律のようなものはこの年代ではそこまで重要視することではありません。■選手主体は大事だが、世界はすでに「選手とコーチ両方が学びあう」のフェーズに入っている(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)これはダメ、あれはするなとやめさせるのではなく、大人は工夫し子どもの遊びをより広げてあげましょう。常日頃からおおらかに構え、コーチが工夫する姿を見せていれば、子どもも「こんなふうに考えたらいいのかな」と自分で気づく力をつけていくことでしょう。これまで、スポーツ指導は「プレーヤーズセンタード」といって、選手が主体ですよということが提唱されていました。しかしながら、専門家の方がおっしゃるには、世界はすでに「プレーヤー&コーチセンタード」になっているそうです。つまり、選手とコーチが中心。両方が学び合わなくてはいけないのです。池上正さんの指導を動画で見る>>池上正(いけがみ・ただし)「NPO法人I.K.O市原アカデミー」代表。大阪体育大学卒業後、大阪YMCAでサッカーを中心に幼児や小学生を指導。2002年、ジェフユナイテッド市原・千葉に育成普及部コーチとして加入。幼稚園、小学校などを巡回指導する「サッカーおとどけ隊」隊長として、千葉市・市原市を中心に年間190か所で延べ40万人の子どもたちを指導した。12年より16年シーズンまで、京都サンガF.C.で育成・普及部部長などを歴任。京都府内でも出前授業「つながり隊」を行い10万人を指導。ベストセラー『サッカーで子どもがぐんぐん伸びる11の魔法』(小学館)、『サッカーで子どもの力をひきだす池上さんのことば辞典』(監修/カンゼン)、『伸ばしたいなら離れなさいサッカーで考える子どもに育てる11の魔法』など多くの著書がある。
2022年07月17日先日、エコノメソッドの創始者であるダビッド・エルナンデス氏が来日し、奈良県内でサッカークリニックを開きました。ダビッド氏はパリ・サンジェルマンの育成部門でダイレクターを務めた経験を持ち、日本代表の久保建英選手を直接指導するなど、世界で活躍するトップ選手のプレー改善やコンサルティング、指導でサポートを行ってきた人物です。クリニック後に日本の選手の優れているところや、世界と比べて足りないと感じるものは何かを聞いたので、参考にしてみてください。(取材・文貞永晃二)ダビッドさんの指示に真剣に耳を傾ける選手たち<<前編:スペイン人指導者が語る、日本サッカーの良さと海外に比べて足りない力■日本人に足りないのは、「判断」と「サッカーをしっかり考える」部分――エコノメソッドでは、欧州トップレベルの選手が13歳までに身につけている個人戦術(プレー判断)を徹底指導するという考えを唱っておられますが、日本の選手にはこの個人戦術が不足しているとお考えですか?ダビッドまず、日本の選手の優れているところとしては、フィジカルと運動能力つまりコーディネーションの部分、そして技術面だと思いますし、さらに練習に対する姿勢も素晴らしいと思います。ただやはりサッカーをしっかり考えるという点、その判断の部分や考えるという部分でいうと、まだ少し欠けているのかなと思います。自分たちがこのメソッドで大切にしているものを伝えながら、また新しいことも引き続き伝えていければと思っています。■考えさせるためには、ただ問いかけをすれば良いわけではない――エコノメソッドでは選手にいろいろ考えさせる、問いかけるという方法をとりますが、それに対する選手の反応は日本とスペインで違いがありますか?ダビッドただ問いかけをすれば良いわけではなくて、問いかけ、質問するのと同時にコーチは、(プレー面で)"問題を起こさせるように"しないといけないのです。例えば練習のルールに手をつけた上で、自分たちでどうやってそのルールを守った上で良いプレーをしないといけないかという解決策を持たないといけません。ただ問いかけるのではなく、例えば練習のルールを計画的に立てた上で、選手がその問題に直面するようにもっていったのちに、コーチが問いかけをする必要があるのです。世界中で例えばいろんな10歳の子どもたちとトレーニングしてきましたが、プレーの面では本当にどの国もあまり違わないと思います。本当に積極的にトレーニングする年代だと思いますし、将来が楽しみな年代だと思います。例えば、日本だと選手たちがすごく教育を重んじられているからか、しっかりこちらの話を聞いて答えることができます。エコノメソッドでトレーニングをしている中で、今どういった状況が起きているか、どういった状況でプレーしているかというのを理解する。それぞれのシチュエーションでどういう解決策が一番いいかを知る、考える。この考える能力というのが大事なわけです。最新ニュースをLINEで配信中!■サッカーに対する情熱を持っていることは大事――サッカーを理解するという点で、日本の子どもたちとスペインの子どもたちを比べると、トップレベルの試合を見ている"量"に大きな差があるんじゃないかと感じるのですが?ダビッドサッカーの文化というところがそうさせているのだと思うのですが、子どもたちもサッカーのことを自然に考えていると思います。今回の来日で大阪のスクール、山梨のアメージングアカデミーに行ったり、今回は奈良でいろんな子どもたちを見ましたが、日本の子どもたちもサッカーに対するパッションはすごく持っていると思います。そういう情熱を持っていることは日本サッカーにはとても大事だと思います。毎回毎回日本に来ると、日本の選手たちは本当にサッカーが好きだなと感じますからね。ダビッドさんが感じる、日本人に足りない力「プレー中の判断力」を高めるエコノメソッドキャンプがこの夏開催されます。ゲーム中心の実戦形式のメニューで、オフザボール、ディフェンスなどテーマごとに正しいプレー判断を徹底指導、トレーニングを撮影し、参加選手のプレーを解説する分析型座学"スマートフィールダー"を実施するなど、サッカーへの理解が深まるキャンプですので、ご興味のある方は詳細をご覧ください。エコノメソッドキャンプの詳細・お申込みはこちら>>サッカー少年少女の親の心得「サカイク10か条」
2022年07月14日セレクションを受けて入った強豪チーム。幼稚園からサッカーをしていて技術はあるけど高学年になって体格やスピードなど、周りに圧倒され自信がないプレーが目立つ。前はスタメンだったけど今はベンチスタートかどうかの瀬戸際。もともと負けず嫌いだから這い上がってほしいけど、親としてどう接すればいい?というご相談をいただきました。今回もスポーツと教育のジャーナリストであり、先輩サッカーママでもある島沢優子さんが、これまでの知見をもとに、サッカーをするわが子をどうサポートすればいいのかアドバイスを送ります。(文:島沢優子)(写真はご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)<<週2回の練習じゃトップ選手になれない?高みを目指すにはスクールにも通わせるべきか問題<サッカーママからのご相談>はじめまして。5年生になったばかりの息子は3人兄弟の真ん中です。幼稚園からサッカーをやり始め、2年生の時にセレクションを受けて3年生からチーム活動をしています。街クラブの中でも強豪なので、練習試合などでも強い相手と試合したり、公式戦などでも優勝を争うようなチームです。幼い頃からサッカーが好きでボールを触っていたので技術はあると思いますが、高学年になり体格、スピードなど周りに圧倒されているのか、自信がないプレーが目立つようになりました。加えてメンタルも弱くなり親としてどう見守るべきか悩んでいます。スタメンとして起用していただく事ばかりでしたが今ではベンチスタートかどうかの瀬戸際で、それでも本人はここのチームでやっていきたいとの事でした。負けず嫌いだった子なのでここから這い上がってほしいと思うばかりですが、親の在り方として私自身がどう接すればいいか自信がないので助言してほしいです。よろしくお願いします。<島沢さんからの回答>ご相談ありがとうございます。とても強いクラブで先発でプレーしてきた息子さんを誇らしく思う気持ちが、お母さんのメールから伝わってきます。それなのに高学年になって、試合に出られなくなった。この変化に、親子ともども戸惑っているようです。助言してほしいとのことなので、私から2つアドバイスさせてください。■わが子が「這い上がる」ために親ができることはないひとつめ。何もしなくていい。何も考えなくていいのです。この段階で、お母さんのおっしゃるように「這い上がる」ためにやってあげられることは特にありません。ひとつあるとすれば、いつも通り淡々と接することです。万が一、いつも淡々と接することなく、世話を焼いたり、子どもに「うるさいな」と嫌がられるような言動があるのだとしたら、即刻やめたほうがいいでしょう。最新ニュースをLINEで配信中!■親の心配が子どもにとっては重荷になることも小学5年生は「前思春期」と呼ばれ、第二次性徴を迎える思春期の前段階です。自我が芽生え、自分が周りや親からどう思われているのか、どう評価されているのかに注目するようになります。そんな時期に、自分を心配しているお母さんの存在は、息子さんにとって重荷になりかねません。「自信のないプレーが目立つよ」「メンタルも弱くなってるよ」「ママは這い上がって欲しいんだよ」そういった言葉を出さずとも、お母さんのパッションを子どもはそばで痛いほど感じるものです。■試合に出られない、周りに抜かれるという焦燥感を覆せるのは「サッカーへの愛情」小さい時は他の子どもより秀でていたのが、高学年になり周囲が体格やスピードで追いついてきた。サッカーの理解度や視野や判断スピードなど、もうひとつ上のフェーズになってきたということでしょう。そのことを、時間をかけて理解していくのは息子さん自身です。いってしまえば、お子さんのピンチを救うのは親ではありません。彼を救うのは、いま目の前にいるお母さんではなく、これまでの子育てのありようです。試合に出られない、みんなに抜かれていく――そんな焦燥感や劣等感を彼が覆せるとしたら、それはサッカーへの愛情です。小さい時からやってきたサッカーがいかに好きかどうか。サッカーを好きな気持ちがあれば「今は試合に出られないけれど頑張ろう」とか「練習だけでも楽しいし、ま、いっか」と思えるはずです。そう思える子は、親御さんが「楽しくできればいいよ」という少年スポーツで最も大切な価値観を伝えています。■出られない→移籍を繰り返す親子もいるところが、そう思えない子どももいます。試合に出られなくなると、他の強豪チームへ移籍します。そこでも出られないと、また違うチームへ移ります。そのようなジプシー生活をするお子さんはどの地域にもいるようです。その場合、親御さんが試合に出ることでしか評価していなかったり、やらせたいと思うポジションで出場させてくれるクラブを求めて移籍し続けます。レギュラーじゃないとダメ。できれば背番号10。1試合1ゴール等々。さまざまな約束事が、親子の間にあったりします。大会で優勝すること、地域トレセンに選ばれることに軸足を置いている場合もあります。■今こそ、少年スポーツの原点に立ち戻ろうわが子がレギュラーから降ろされた、試合に出られなくなったという相談は多いです。その場合、皆さんがおっしゃるのは「何をすればいいか」「どうすれば子どもが乗り越えられるか?」ということを聞いてこられます。さあ何をやってあげようか?と意欲満々な親御さんたちを「まずは見守りましょう」と説得する第一段階こそが非常に骨が折れます。多くの方が、小さい時からお子さんの自主練習に付き合ったり、一緒にサッカーの試合を見るなどしてきたことで子どもさんが上手くなったと感じておられます。つまり成功体験があるので、今回も救ってあげたい、リードしてあげたいと躍起になるわけです。しかしながら、そんなふうにお母さんは考えていないようです。「親としてどう見守るべきか」と書かれているように、すでに見守りモードになっています。悩みの半分は解決しているではありませんか。今こそ、少年スポーツの原点に立ち戻りましょう。息子さんに「楽しくできればいいよ」と笑顔で言ってあげてください。試合や練習から戻ってきたら「楽しかった?」と聞けばいいのです。試合に出ない姿を見てストレスがたまるくらいなら行かなければいいのです。■子どもの人生を楽しく実りあるものにするために、親はどうするか(写真はご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)2つめ。子育てに悩んだときは、大局から物事を考えることです。例えば、「息子が試合に出られないことは、彼の人生においてそこまで重要なことか?」と考えてみてください。たった10歳とか11歳で、彼の道はサッカーしかないのでしょうか?スポーツ、音楽、アート、科学や文学など、さまざまな分野に触れていく。成年となる18歳までが子どもとするなら、彼の「子ども人生」はまだ半分ちょっとです。豊かで楽しく実りあるものにするために、親はどうするか?を考えてください。子どもが、何かを選びとる力を信じ、ひたすら見守ること。お母さんの子育ても次のフェーズに入ったのです。島沢優子(しまざわ・ゆうこ)スポーツ・教育ジャーナリスト。日本文藝家協会会員(理事推薦)1男1女の母。筑波大学卒業後、英国留学など経て日刊スポーツ新聞社東京本社勤務。1998年よりフリー。『AERA』や『東洋経済オンライン』などで、スポーツ、教育関係等をフィールドに執筆。主に、サッカーを始めスポーツの育成に詳しい。『桜宮高校バスケット部体罰事件の真実そして少年は死ぬことに決めた』(朝日新聞出版)『左手一本のシュート夢あればこそ!脳出血、右半身麻痺からの復活』『王者の食ノート~スポーツ栄養士虎石真弥、勝利への挑戦』『世界を獲るノートアスリートのインテリジェンス』(カンゼン)など著書多数。『サッカーで子どもをぐんぐん伸ばす11の魔法』(池上正著/いずれも小学館)ブラック部活の問題を提起した『部活があぶない』(講談社現代新書)、錦織圭を育てたコーチの育成術を記した『戦略脳を育てるテニス・グランドスラムへの翼』(柏井正樹著/大修館書店)など企画構成も担当。指導者や保護者向けの講演も多い。最新刊は『スポーツ毒親 暴力・性虐待になぜわが子を差し出すのか』(文藝春秋)。
2022年07月13日夏の暑い盛りにサッカーをすることが、子どもたちの成長に有効なのだろうか? という疑問を持ち、夏休み期間中に3週間ほどの「サマーブレイク」を導入している大東JFC(島根県雲南市大東町)。前回の記事では、コーチのみなさんにサマーブレイクについての考えをうかがいました。今回は保護者や子どもの反応をまとめました。夏休み期間中のサマーブレイク導入について、どんな声があがっているのでしょうか?(取材・構成鈴木智之)写真提供:大東JFC<<前編:夏場に休むことで子どもが伸びる!あるサッカークラブが「夏休みは練習しない」ことを決めた理由■サッカー以外の経験をさせることができるし、コーチたちも家族と過ごす時間が増える◆山崎真吾さん(保護者会長/6年生の保護者)サマーブレイクをとることで、子どもたちの熱中症のリスクが軽減されますし、家族で過ごす時間が増えると思います。サッカー以外にも、いろんな経験をさせることができると思います。一方で6年生の親としては、このチームで子どものサッカーが見られるのも、卒業まであと数ヶ月と考えると、少しでも多く見たい気持ちがあります。休みは3週間程度かもしれませんが、寂しい気持ちも出てきたりします。ただ、コーチのみなさんにも家庭があって、お子さんがいらっしゃるので、サマーブレイクがあることで、家族の時間が増えるのはいいことだと思います。今年のサマーブレイク中には、友達家族とキャンプに行く予定です。娘は小学校の友達とは違うクラブに入っていて、普段は遊ぶ時間がなかなか合いません。サマーブレイク中に、友達と遊ぶ時間が増えることを期待しています。最新ニュースをLINEで配信中!■海に行ったり、旅行やレジャーの時間に◆藤原睦美さん(U-11、12コーチ/5年生の保護者)サマーブレイクがあることで、普段できないことや、夏だからこそできることに時間があてられるのはいいことだと思います。子どもたちは夏休みなので、海に行って遊んだりしてほしいです。もしサッカーがしたくなったら、家の庭や近所の広場ですることができます。みなさんも、せっかくのサマーブレイクなので、旅行やレジャーなどの時間にあててもらえたらなと思っています。私は消防署に務めているのですが、消防士は6月頃から、体を暑さに慣らすトレーニングをします。熱中症にならないように、暑くなる前に防火服を着て走って、体を慣らせていきます。サマーブレイク期間中、家でゲームをして過ごしたりと、あまり外に出ない子もいると思うので、休みが明けて出てきたときに、熱中症に気をつけながらトレーニングをしたいです。■休みを取ることで他のチームとの差が出ても、成長のきっかけになる◆新田由香里さん(保護者役員/6年生の保護者)大東JFCには、長男のときから13年間、お世話になっています。長男が在籍していた頃は、暑さを避けるために夕方に練習をしていたこともありました。当時は、子どもが買い物に出かけていて「練習に間に合わせないと」と急いで帰ってきたこともありました。サマーブレイクのように休みがしっかりあると、家族で時間を気にせずに出かけたり、買い物ができる時間がとれるので、すごくいいと思います。休みをとることで、他のチームとの差が出るのではないかという意見もありますが、私は差が出てもいいと思っています。勝ち負けにこだわるのではなく、子どもたちが楽しく練習して、楽しく試合ができればいい。試合で負けたら悔しいけど、その悔しさもいい経験です。負けないために、どうすればいいかを子どもたちも考えるだろうし。とにかく、楽しくサッカーができればOK。そうしていると、内面も成長する気がするんです。彼らも気がつくはずです。「サッカーはみんなでやるから楽しいんだ!」って。◆キャプテン6年生山崎里桜さんサマーブレイクの間、サッカーの仲間と会えなくなるのは寂しいけど、休む時間があるのはいいことだと思います。その期間に自主練をする予定なので、サッカーの技術も落ちなくていいかなと思います。■好意的に受け止める保護者が多数◆横山武志代表僕は練習中、保護者さんとよく話をします。保護者さんが不安を抱えていたとしたら、それはコーチと話をすることで、ある程度、解決するんですよね。それが信頼関係にもつながります。チームで新たな取り組みを思いついたときには、コーチよりも先に、保護者さんに『こんなことを考えているんだけど、どう思いますか?』と意見を求めることもあります。そうすると、考えを理解し合えるので、コーチ、保護者ともにやりやすくなるんです。サマーブレイク導入も、好意的に受け止めてくれる人が多かったです。◆保護者の声「我が家は夫婦ともに働いていて、毎日が追われる日々。夏は、家族参加の地域の行事もあり、その部分も大切にしたいと思っています。団体活動をしなくても、サッカーがしたければ、子どもはボールを持って、ロケットのように出ていきます!」(3年生保護者)「JFCの予定日に地域の活動があるとします。人数が少ないので欠席だと悪い。でもJFCも、コーチがわざわざ家庭を置いて出て来てくださるので、一人でも多く出たほうがいいだろうと、どちらを選択するか悩みます。それもあって、サマーブレイクには感謝してます」(3年生保護者)「子どもは日曜日の練習が無くて残念がっていますが、その分、水曜日の夜練習に参加させて頂けるので喜んでいます」(2年生保護者)「サマーブレイク、とてもいいと思いました。子どもたちには長い休みになりますが、大人は普通に仕事ですし、最近の子どもは忙しいですよね。宿題や自由研究、イベントや夏の教室などあるので、少し余裕ができて子どもも休息できます」(4年生保護者)「うちの子は、毎週サッカーの練習を楽しみにしています。夏休みは毎日家の中で過ごし、テレビなどの時間が増えてしまって、体が鈍りそうです。練習する事で運動不足解消にもなりますね。息子に夏休みに練習がほとんどないことを伝えると、残念がっていました。週一でもいいのでやって貰えるとありがたいです」(3年生保護者)「うちの子はサッカーがしたくてウズウズしておりますが、これまで通りサマーブレイクを取り入れて頂きたいと思います。お互いに時間がとれるのでいいんじゃないでしょうか。普段は日曜日しか子どもと過ごせる日がないですが、日曜日などは半日サッカーでなくなります。たまにはゆっくりできる時間も必要な気がします。ただ、インドア派の息子には運動不足が心配ですが......笑」(4年生保護者)サッカー少年少女の親の心得「サカイク10か条」■「遊び」としてサッカーを楽しむことも大切、サマーブレイクはサッカーを楽しむ余白づくりにもなる保護者のみなさんからは、サマーブレイク導入に対して賛成の声が多く挙がりましたが、なかには「もっとサッカーがしたい!」という意見もありました。そのため、水曜日の夜に自由参加の練習を設けたりと、クラブ側も工夫しているようです。また「サッカーがしたければ、子どもたちは集まって勝手にする」という意見も多くありました。習い事ではなく、遊びとしてサッカーをするのも大切なこと。サマーブレイクは、サッカーを楽しむ余白づくりと捉えることもできます。成長期の子どもにとって、体作りの面からも休息は不可欠です。熱中症のリスクがあり、暑さゆえ集中力が切れやすく、トレーニング効果が高まらないのであれば、夏の間を休む期間にあててもいいのではないでしょうか。大東JFCの取り組みは、暑い夏を乗り切る上で大きなヒントになりそうです。サッカー少年少女の親の心得「サカイク10か条」
2022年07月13日高学年になると「トレセン」という言葉を聞く機会がありますよね。サカイクの読者であるジュニア年代のお父さん、お母さんがどうしても気になるのがトレセン活動。選ばれたことを子どもたちがサッカーを頑張ってきた成果の証だと喜ぶ親御さんがいる一方、選ばれなかった事を悲しむ親御さんもいるでしょう。中には「うちは早生まれで小さいから」など最初から無理だと諦めてしまうケースや、「トレセンに選ばれなかったから、うちの子にはサッカーが向いていない」と判断してしまう親御さんがいると耳にします。今回はそうしたトレセンに関する正しい情報を聞くため、東京都サッカー協会で技術委員長を務める中田康人さんに話を聞きました。(取材・文:森田将義)写真は少年サッカーのイメージ■12歳までの選手を見るときに重要な要素とは東京都の場合は7つの地域に分かれた地区トレセンから選ばれた選手が、東京都トレセンの選考会へと進みます。そこで選ばれた選手が、都のトレセンメンバーとして月1回活動するのが仕組みです。U-12年代では7地域の前に、16ブロックに分かれた活動を実施し、可能性がある選手の見落としがないよう励んでいます。以前は選考基準を地域ごとに共有するものの、トレセンコーチ全員に選考の考えの徹底がしきれていませんでしたが、今年に入ってからはトレセンに関わる全スタッフが集まり、トレセンの考え方、選手選考の基準を提示。同じ目線で全員が選手選考できるよう今後は、文章としても提示していきます。「100人のトレセンコーチがいて、100通りの基準があれば、誰が良い選手か分からなくなるので、目(=基準)を合わせたい。大人のサッカー=子どものサッカーではなく、年代によって基準や獲得すべき要素が違います。12歳まではテクニック(※定義を後述)が凄く重要で、それ以降はテクニックがなかなか身に付きにくい年代に入ってくる。逆にフィジカルが強いからと言って、14歳や15歳になっても通用するかは分からない。フィジカルにウエイトを置いてしまうと、選手のためにならない選考になってしまう」(中田さん)。最新ニュースをLINEで配信中!■身体能力だけを基準にすると、トレセン本来の目的とズレてしまう成長が早い小学生だと12歳で170cm近くある選手がいれば、140cmぐらいの選手もいます。2人が一斉に走り出せば、大きい子の方が速くゴールする確率が高く、サッカーでもジュニア年代ではそうした選手が活躍しがちです。テクニックがなくても、やっていける年代でもあると言えるでしょう。身体能力だけを基準に選考すると、トレセンの目的である将来、日本代表で活躍できる選手の発掘、育成が出来なくなるため、ジュニア年代の選考はテクニックの割合が高くなります。身体能力に頼ったプレーをしている選手に対して、将来活躍できるテクニックを身に付けるよう声を掛けるのも、大事な役目です。■「テクニック」とは単純な止める・蹴るを指すのではない選考の基準となるテクニックも、現在は人によって定義が変わるため、中田さんが東京都の技術委員長に就任してからは、定義の明確化を進めています。「リフティングや対面パスなど止まった状態での上手さではなく、相手がいる中で様々な認知をして判断と実行が出来てこそテクニックと言います。キーワードは『前』です。前を向けるのか、前にパスを出せるのかが大事。相手が守備をしてくる中で前にコントールしたり、パスを出せる技術こそがテクニック。横にドリブルする選手は相手にとって怖くないけど、相手を抜きにかかる仕掛けは怖い。前に前進できるテクニックを持っているかが大事です」。サッカー少年少女の親の心得「サカイク10か条」■ポジションに応じて必要な「テクニック」がある8人制から11人制へと変わる中学生年代では、より大人のサッカーに近づくため、ポジションに応じたテクニックも身につけなければいけません。「CBの吉田麻也選手が自陣ゴール前でに堂安律選手のようなドリブルプレーをしたらチームメイトは困ります。テクニックと言っても吉田選手や板倉滉選手に求めるテクニックは、中盤の選手とは違うのです。反対に堂安選手も自陣でプレーするなら、エリアに応じたテクニックを発揮しないといけません。一概にテクニックと言っても、ゾーンや状況に応じて発揮できるかが大事です」と中田さんは話します。■今は身体が小さくても、日々の積み重ねしだいで急成長するタイミングがある身体が小さく、ジュニア年代ではフィジカルの差で活躍するのが難しくても、テクニックを日々の練習で磨き続ければ、必ずどこかで急成長するタイミングが訪れます。中田さんが、代表例として挙げるのは、JFAアカデミー福島のチーフコーチ監督時代に携わったU-21日本代表のMF三戸舜介選手です。小学6年生でセレクションを受けた際は、163cmの今より小柄で「ずば抜けた選手ではなかった。現在の活躍は想像しづらい選手でした」中田さんは振り返ります。JFAアカデミー福島に入ってからも、身体が大きい選手に競り合いで負けるなどテクニックを生かしきれない時期もありましたが、中学3年生になったタイミングで急成長を遂げ、年代別代表でも欠かせない選手となっていきました。「舜介には身長を気にする必要がないぐらいテクニックがあった。15歳になってからは、そこにプラスして瞬間的なスピードが出せるようになった。それ程ハードワークをする選手ではなかったけど、代表から帰ってくる度に献身的なプレーが出来るようになっていった。こういう子がこうやって変わるんだと指導者ながら学ばせてもらった選手でした。大きく成長する瞬間を引き寄せるためにも日々の積み上げが大事。積み上げのベースとなったのは間違いなくテクニックでした」。■相手がいる中での認知と判断は、中高で成長するために欠かせない要素トレセンに選ばれるために上述した「テクニック」=相手がいる中での状況に応じた認知と判断の向上は重要です。もし、小学生年代で選ばれなかったとしても中学年代以降で大きく成長するために欠かせない要素です。三戸選手の急成長を間近で見てきた中田さんは東京都のトレセンコーチに、こんな言葉を伝えているそうです。「選手としての総合ランキングは、中学と高校の6年間で変わる。でも、テクニックが高い子がテクニックだけを見ると誰かに抜かれる事はなかった。もちろんテクニックを活かすためのスピードやハードワークも必要ですが、それぐらい幼少期から積み上げるテクニックが大事」。東京都トレセンの考えは、選手の育成に携わる人たちにとっての大事な指針と言えそうです。サッカー少年少女の親の心得「サカイク10か条」
2022年07月12日