アブランクページ(ablankpage)の2024年春夏コレクションが2023年9月2日(土)に渋谷ヒカリエで発表された。日常の疑問から探る新たな可能性今季のテーマは“expired(=賞味期限切れ)“。ヒントを得たのは、世の中の便利の象徴であり、日本をはじめ、アジア圏などで広く親しまれているコンビニエンスストアだ。コレクションには、コンビニエンスストアで見られる日常の光景から、賞味期限などを理由に日々行われる食品廃棄など、デザイナーのラロパイブン・プワデトが疑問に感じたことを落とし込んだ。カラフルなテキスタイルまず目を引くのは、コンビニに陳列されているカラフルなテキスタイル。ドロップショルダーのリラクシングなトップスは、鮮やかなイエローをベースに、手書きのようなラフなブルーのグラフィグをプリント。真っ白なシャツコートには、「半額」のシールをランダムにプリントし、プレイフルなムードを演出した。フォーマルウェアの探究フォーマルウェアの探求もしたという今季。ビッグシルエットで仕上げたジャケットやパンツなどが登場した。中でも一際目を引いたのは、ジャケットの下に白シャツを合わせているように見えるアイテム。通常のサイズよりも数倍大きく設定することで、ロングコートのような丈感に仕上げている。エドウインと再タッグ先シーズンに続き、今季もエドウイン(EDWIN)のB品素材を使用したコラボレーションアイテムがお目見えボトムスのディテールを生かしたベアトップワンピースや、ポイントにデニムを配したノースリーブジャケットなどが登場した。西川毛織ともコラボさらに今季はウールの産地・尾州最大のテキスタイルメーカー「西川毛織」とのコラボレーションアイテムも披露。検査時に微細な欠点が判明した規格外品などを用いて、新たなアイテムへと昇華させた。
2023年09月05日セブン バイ セブン(SEVEN BY SEVEN)は、2024年春夏コレクションを2023年9月1日(金)に、国立競技場 大型車駐車場にて発表した。ブランドのルーツ、サンフランシスコのスタイルに着目着想源となっているのは、セブン バイ セブンのルーツであるサンフランシスコ。セブン バイ セブンをスタートさせてからもうすぐ10年を迎えようとするタイミングにふれ、初心を見つめ直したというデザイナーの川上淳也は、サンフランシスコならではの、ユーモアがあり個の際立つスタイルに改めてフォーカスした。"アメカジ"や"ヴィンテージ"など、既存のファッションの中で洗練を目指すのではなく、むしろ既存の枠組みの外から、まだ誰も気が付いていない新たな価値を拾い上げること。そういった形で新しさの追求を続け、一貫して自由に個性を楽しめる装いを提案してきた、セブン バイ セブンのアイデンティティが今季のコレクションには色濃く反映されている。“自由さ”を表現する独特の素材デザイナーの川上が表現する“自由さ”は、自ら産地をまわり、技術や加工を見てセレクトするという素材選びに顕著に表れていた。例えばアイキャッチなのは、様々な形を象る“折り紙”を貼り付けたスカジャンだ。折り紙の装飾は、アメリカのエアメールや梱包に使われる、水に強くタフな紙素材を採用。紙という素材感を生かしたい、と考えたことから折り紙を装飾に使うことを思いついたという。また、インドで見つけたマクラメ編みに着想を得た、レザーのメッシュアイテムも目を引く。メッシュ状に仕上げたレザーはオーバーシルエットの5分袖トップスやコートなどに用いられており、人の手で紐を編み上げていく様子が思い浮かぶような、繊細な透け感と手仕事の温かみを感じる質感が印象的だ。また、様々な色・形のレザーをつなぎ合わせたパッチワークレザーのミニスカートや、ステッチ、フリンジによりデコラティブに仕上げたレザーバッグなど、クラフト感あふれるレザーアイテムが散見された。リラックスしながらエレガントに肩の力を抜いたリラクシングなムードをまといつつ、優雅さを感じる佇まいも魅力。しなやかなマドラスチェックのシャツやパンツは、穏やかな光沢と優しい色味によって気負わない上品さを描き出している。シースルーのブラックシャツは生地をたっぷりと用いてふんわりとしたドレープを描き、細かなシワ感のあるチェック柄のセットアップは落ち着いた色味と、程よく体になじむシルエットによって、自然体ながらも凛とした装いを見せた。スタイリングにおいても、カラフルなレトロプリントのTシャツにブラックのパンツを合わせたルックや、膝上丈のショートパンツにさらりと白シャツを合わせたコーディネート、パジャマのように緩やかなシャツとパンツのセットアップなど、気取らないシンプルさを感じる装いが目立った。軽快で飾らない佇まいであっても、プリントのタッチや生地の表情、手の込んだディテールなど、さりげない“ひねり”が仕掛けられており、つい目を留めてしまうような遊び心が随所に散りばめられている。
2023年09月04日チノ(CINOH)の2024年春夏コレクションが発表された。機能とデザインが孕む“曖昧さ”チノの2024年春夏コレクションは、機能とデザインの境界に潜む“曖昧さ”にフォーカス。機能性を意図的に取り入れたことがデザインとなり、ディテールやシェイプをデザインすることで機能性が追加される――そんな、本来の目的と結果が異なる衣服を提案する。たとえば本来“機能させるもの”であるボタンは、数を多く配列することで、“装飾”としての役割を強調している。ダブルブレストのベストは、フロントに16個ものボタンをオン。下の6つはあえて外し、裾が風になびくようなシルエットを演出している。煌めく星のような輝きまた今季目を引いたのが、キラキラと光沢感のある素材使い。煌めく星のようなラメを配したカーディガンやブラ、上品な光沢感のスカート、メタリックな輝きのメッシュトップスなどが、アクセントとして随所に差し込まれ、コレクションにゴージャスなムードを付与していた。攻めと守りのバランス感覚全体を通してコレクションは、シャツやジャケット、スラックスといった、チノらしいエレガントかつベーシックなアイテムを中心に展開。そこに、肌を見せるセンシュアルなカッティングやシルエットの遊びを加えることで、攻めと守りの絶妙なバランス感覚を保っているのが印象的だ。たとえば、カフスを配したグレーのトップスは、極短の丈と、極長の袖のコントラストがユニーク。ボトムスには同じくグレーのハイウエストパンツを合わせ、クリーンなセットアップスタイルに仕上げながら、足元はオニツカタイガーとのコラボレーションスニーカーでカジュアルダウンさせている。エネルギッシュな夕焼けカラーを差し込んでカラーは、ホワイト、ブラック、グレーを中心としたシックなモノトーンパレットが中心。そこへ時折、夕焼けを思わせる鮮やかなオレンジやブルーを織り交ぜて、エネルギッシュなムードを差し込んでいたのが印象的だ。
2023年09月04日サポートサーフェス(support surface)の2024年春夏コレクションが2023年9月1日(金)、東京・大手町三井ホールで発表された。"ものづくりの原点"に立ち返ってデザイナー・研壁宣男が、ものづくりの原点である"無いものを作る"ことに改めて奮起した、今季のサポートサーフェス。衣服を作る経験が増えていくごとに、"無いもの""無かったもの"は減っていく。そんな中で日々湧き上がるアイディアを、「大胆さと洗練」というテーマに昇華させたコレクションを展開する。大胆な生地使い象徴的なのは、大胆な生地使いから生まれる、エレガントなシルエットだ。裾幅を広く取ったパンツをはじめ、胸元が深くカットされたノースリーブジャケット、ゆったりとしたヘムラインのスカートなど、“風通しの良さ”とエレガントさのバランスにこだわったルックが登場。余裕のある袖口のブラウスから風が入るような、過去にはない挑戦的なデザインを創出した。いきいきとしたテクスチャー立体的なテクスチャーも今季ならでは。コットンとナイロンを組み合わせたブラウスや、凹凸のある半袖ニットが散見された。さらに、毎シーズン登場する毛羽立ったシャギーには、水洗い後も“ふわふわ”感が残るイタリア産素材を新たに採用している。カラーパレットも大胆にカラーパレットは、ベーシックなホワイトをはじめ、グレーやブラウン、春夏シーズンとしては新鮮なブラックを多く取り入れているのが印象的。ポイントとして“まるでデニム”のようなブルーのコートや、ライトブルーのストライブ柄シャツ、鮮やかなグリーンのドレスなど寒色系を使用。鮮烈なレッドのパンツがランウェイにアクセントを加えていた。
2023年09月04日タクター(tactor)の2024年春夏コレクションが、楽天ファッションウィーク期間中の2023年9月1日(金)に発表された。テーマは「Days」。日々、共に歩む強くて溌剌とした服「Days」と題した今季のタクターは、眩しい日常の中で、淀みない一歩を踏み出せるよう、改めて思い出す強さと溌剌さを衣服で表現。ブランドコンセプト“日常の一歩先”を再解釈したコレクションを提案する。光と影のコントラスト今季、タクターはテキスタイルだけでなく、透け感や艶など多くの質感を駆使し、陰影のあるシルエットをより立体的に見せるよう試みた。たとえば、有松絞りの技法により無数の陰影を生じさせたトップスやパンツに注目。有松絞りの中でも、雁木竜巻絞りの技法を用いており、あえて無地の生地に形状記憶のみを施すという職人技が光るウェアとなっている。オリジナルで編み上げたラッセル素材もうひとつ、テキスタイルにこだわるタクターらしさを表す素材を紹介したい。それは、オリジナルで編み上げたラッセル素材だ。シャツとスカートのセットアップとして登場し、適度な透け感と奥行きにより涼し気な印象を受ける。同時に、今季最も注力した立体的なシルエットの構築にも貢献。マットな綿の質感とリリヤーンの薄い光沢が、陰影のあるシルエットを生み出している。幾何学模様×オーガニックなラインのプリントまた、雄弁なカラー使いによるストライプ柄のようなプリントを施したピースは、単色のウェアが多い今季の中でも目を惹く1着だ。ライトグリーンやブルーのストライプ柄は、トップスやワイドパンツに採用。単なるストライプではなく、一つ一つの線の中に幾何学模様やオーガニックなラインを混在させ、今季のテーマ「Days」を表現する印象的なプリントを完成させた。陽ざしが差し込むかのようなカラーカラーパレットは、ブラックやグレーの中に、鮮やかなライトグリーンやブルーを差し込んで。緑豊かな自然の中、温かな日差しが葉っぱや木々を照らすかのようだ。
2023年09月04日メゾンオルタナティブ(MAISON ALTERNATIVE)の2024年春夏コレクションが発表された。テーマは「KIDS FROM HAMELIN」。「ハーメルンの笛吹き男」の“消えた子供たち”「メンズワードローブに新しい改革を」というコンセプトのもと、ワンピーススタイルを中心とした新しいメンズファッションを提案しているメゾンオルタナティブ。2024年春夏シーズンは、「ハーメルンの笛吹き男」の伝説に登場する、街から消えた子供たちから着想した。デザイナー・新谷紘孝は、「笛吹き男から連れ去られ突如街から姿を消した子供たちは、実は新たな土地を求めて開拓者となり旅立ったのでは…?」と物語を再解釈。ダークな印象の作品をより肯定的な印象に昇華し、ルックにもそのポジティブなムードを落とし込んだ。湾曲したパッチワークコレクションは、湾曲したパッチワークのエプロンやシャツ、プルオーバーといった、大胆なグラフィックのアイテムからスタート。錯覚を引き起こしそうな幾何学模様が、今季の奇妙でメルヘンな世界観を形作るのに一役買っている。大胆なグラフィックでリズムをその後も、遊び心たっぷりのグラフィックアイテムがずらり。マルチボーダーにジグザグのパッチワークをのせたパワフルなビッグTシャツや、行進する子どもたちを俯瞰したようなプリントのTシャツ、原作に登場するネズミのシルエットをポップに表現したスウェットなどが、コレクションをリズミカルに彩った。2WAY仕様のワンピースブランドを象徴するワンピースにも注目したい。今季は、フロントはプルオーバー、バッグはフルオープンで、前後どちらでも着用可能な2WAY仕様のワンピースを提案。いずれもカラーはグリーンや淡いオレンジベージュでまとめ、気の抜けたファニーな着こなしに。レイヤードで魅せるワンピーススタイル定番として展開しているシャツ型のワンピースは、ミニ・レギュラー・マキシの3丈で展開。ルックでは、それぞれをレイヤードすることで、まるでティアードスカートを履いているかのような立体的な表情を演出しているのがユニークだ。裾のスナップボタンを開閉すれば、オーバーオールとしても着用できるという。ヴィヴィッド&ノスタルジックなパレット全体を通して、カラーは明るく力強い印象。オレンジやライトイエロー、ピンクといったヴィヴィッドなカラーに、生成りやミントグリーンなどアンティーク感のある色を織り交ぜ、遊び心を感じさせながらもどこかノスタルジックな印象に仕上げた。
2023年09月04日ア ベイシング エイプ(A BATHING APE)の2024年春夏コレクションが、2023年8月31日(木)に東京・代々木第二体育館にて発表された。東京では初となるショー1993年のブランドデビュー以来、日本のストリートファッションを牽引してきたア ベイシング エイプ。2023年でブランド30周年を迎え、今回東京でのショーは初となる。ショーは全4部で構成され、代々木第二体育館の円形の会場にてランウェイショーが披露された。なお、本ショーは楽天主催の日本のファッションブランドを支援する「by R(バイアール)」プロジェクトの一環として開催されたものだ。「ベイプカモ」のスウェットなどブランドを象徴するアイテムモデルたちは、瓦屋根に提灯を下げた日本古来の門構えから暖簾をくぐるようにして、観客の前へと姿を現す。第1部では、ブランドのアイコニックなカモフラージュ柄「ベイプカモ」をあしらったスウェット、ブルーのチェック柄のジャケットやパンツ全体にビジューなど煌めく装飾をあしらったセットアップなどを展開。ブランドならではのモチーフや、設立当初から変わらぬストリートテイストが随所に落とし込まれている。バスケモチーフ満載で第2部の冒頭は、複数のバスケットボールを入れたバッグを担いだモデルが登場。1993年のブランド立ち上げ当初から熱狂的な人気を獲得したア ベイシング エイプは、NBA選手やNBL選手からも愛用されるように。その歴史を示すように、バスケットボールシーンを想起させるルックが続く。たとえば、バスケットボールのユニフォームに白Tシャツとゆったりとしたパンツを合わせたスタイルや、スタジャンとハーフパンツを合わせたスタイルなど。中にはバスケットボールを抱えたモデルもおり、さながらバスケ選手がランウェイを歩いているかのようであった。ストリート×ガーリーのウィメンズウェア暗転し曲調が変わり、暖簾の間から姿を現したのはガーリーなウェアに身を包んだモデルたち。先程までとは一転、デニムのミニワンピースやクロップド丈のTシャツにプリーツスカートなど、ストリートとフェミニンをミックスさせたスタイルが会場を一気に華やいだ空間へと変化させた。翼の生えたシャークショーを締めくくる第4部、会場は一瞬ざわめき異様な雰囲気に包まれる。登場したのは、シグネチャーのひとつである「シャークフーディー」のフード部分であるシャークが着ぐるみのように巨大化し、翼を生やしたルック。シャークたちは1体に留まらず、大量に現れる。会場をぐるりと一周すると、暖簾近くに整列。直後、第1幕から第3幕まで登場したモデルが続々と現れ、ショーは幕を閉じた。
2023年09月03日ハイク(HYKE)の2024年春夏コレクションが発表された。ミリタリーウェアから着想毎シーズン、テーマを設けずに、服飾史や古着などから着想したコレクションを披露しているハイク。今シーズンは、アメリカ海軍のセーラーパンツやシャンブレーシャツ、G-8 WEP ジャケット、アメリカ陸軍のパンツ、イギリス軍のグルカパンツなどからインスピレーションを得てコレクションを展開していく。コルセットベルトまず最初に目を引いたのは、エレガントなムードを醸し出すコルセットベルト。メリハリと立体感をプラスするように、白シャツにタイトなロングスカートを合わせたルックや、ベアトップとワイドパンツを合わせたルックなどに重ねている。透け感のある素材春夏らしい透け感のある素材が散見されたのも今季の特徴。地形図を思わせるエネルギッシュなパターンを落とし込んだシースルー素材のシャツワンピースや、インナーが透けて見えるほど薄いノースリーブワンピースなどが登場した。奥行きのあるレイヤードスタイルを叶えるネットドレスもまた、コレクションに軽やかな風を吹き込んでいく。爽やかなブルーカラーは、ブラック、グレー、ホワイト、ベージュといったベーシックカラーに、爽やかなブルーでアクセントをプラス。ノーカラーシャツにハイウエストパンツを合わせたルックは、その鮮やかな色味を強調するように、大ぶりのネックレスまで鮮やかなブルーで統一されていた。ザ・ノース・フェイスと再コラボそして今季は、2019年秋冬シーズン以来となるザ・ノース・フェイス(THE NORTH FACE)とのコラボレーションが復活。トレイルランニングに特化したコラボレーションプロジェクト「TNFH ザ ノース フェイス ハイク」がスタートし、フロントやスリーブに両者のロゴをあしらったトップスや、クロップド丈のジャケットのほか、さりげなくロゴがプリントされたキャップやシューズなどが登場する。チャコリ、ビューティフル・シューズともタッグまた、前シーズンに引き続き、チャコリ(CHACOLI)とビューティフル・シューズ(BEAUTIFUL SHOES)によるコラボレーションアイテムもお目見え。チャコリとのコラボレーションでは、イギリス軍のヘルメットバッグから着想を得たレザーのドローストリングバッグをリリース。ビューティフル・シューズとのコラボレーションでは、ビューティフル・シューズのオープントゥサンダルから着想を得たレザーサンダルと、ベアフットサンダルをアップデートした新作が展開される予定だ。
2023年09月03日シュープ(SHOOP)の2024年春夏コレクションが、2023年8月31日(木)、東京の国立競技場で発表された。新たな拠点となる“東京”をテーマに2023年、スペインのマドリードから東京へと拠点を移したシュープ。そんな転換点となる今季は、デザイナーの大木葉平とミリアン・サンス(Miriam Sanz)が感じ取る“東京”のイメージをコレクションに反映。テーラリングやストリート、スポーティ、ワークなどのウェアを、シュープならではのミニマルな佇まいにまとめた。ミニマルなムード今季のコレクションを特徴付けるのは、ミニマルでありつつもリラクシングな佇まい。たとえばテーラリングでは、ピンストライプのノッチドラペルジャケットとスラックスというクラシカルなセットアップでありながらも、ジャケットは身幅にゆとりを持たせたボクシーなシルエット。スラックスもワイドに設定し、テーラリングというクラシカルなアイテムに、抜け感のある佇まいをもたらしている。自然な軽やかさをプラスミニマルなルックのなかに、軽やかな印象をプラスしているもひとつのポイント。セットアップばかりでなく、ジャケットやコートなど、ともすれば窮屈な印象を与えてしまうウェアも、ランウェイ上で自然に揺れ動くようなリラックスした仕上がりとなっているのは、軽快な素材感のゆえだ。また、プルオーバーなどにも、スリーブに適度なボリュームを持たせている。ブラックやグレーをメインにカラーパレットも、デザイナーが東京のイメージとして挙げるブラック、グレーやベージュを中心に構成されている。これは、リラクシングでありつつもミニマルな表情にまとめるというコレクション全体の発想と通底している。そして、そうしたなかで、セットアップに用いたネオングリーンなどが、鮮やかな印象をもたらしている。ミニマルな佇まいに凝らしたディテールしかし、ただミニマルにまとめるだけではない。テーラリングやコートには、ボタンの代わりにアイレットを採用。ヨークを施したワークブルゾンやベストなどには、過剰なまでにメタルホックをプラス。デニムパンツのポケットは、破れてポケットとして用をなさない。エルボーパッチも、肝心な肘の部分のファブリックは丸くくり抜かれる。機能的であるはずのディテールは、このように執拗に手を加えられ、誇張されることで、その機能性が逆説的に「空虚」として示されているように思われる。デザイン性のインパクトミニマルななかに特徴的なディテールを忍ばせることにはとどまらず、デザイン性の強いアイテムも見受けられる。花柄を大きくあしらったプルオーバーやパンツ、袖口や裾の編みが断続的に粗くなったニットなど、インパクトの強いデザインも随所に取り入れた。
2023年09月03日セイヴソン(Seivson)の2024年春夏コレクションが、2023年8月31日(木)に渋谷ヒカリエにて発表された。オフィスで働く凛とした女性空間に響き渡る人々の話し声と、秘密を抱えた書類を細かく切り裂くシュレッダーの音。ざわめきの中から、今季のセイヴソンが提案する女性像を体現するモデルたちが、凛とした足取りで歩いてくる。シーズンごとにあらゆる形で女性の魅力と強さを訴えかけてきたセイヴソンだが、2024年春夏コレクションでは“オフィスで働く女性”にフォーカスを当てる。それは決して単純に働く女性のコーディネートを提案するのではなく、セイヴソンのフィルターを通してプロフェッショナルな女性の魅力を紐解き、可視化するということ。その方法として、肌を魅せるカットワークや脱構築型、レイヤードといったブランドが得意とするデザインをベースに、オフィスシーンから着想したディテールを落とし込んだ。シュレッダー着想のストライププリーツオフィスでは、社外秘の秘密文書を扱うもの。誰も知らない秘密がシュレッダーにかけられているかもしれない。軽やかな生地で表現されたストライププリーツは、そんな“シュレッダー”から着想したという。ブラウスのセンターやドレスのスカート部分、ジレなどに配されたマテリアルが、ランウェイにミステリアスな余韻を残す。衣服が引き立てる“秘密”の官能性また、会社だけでなく個人個人も秘密を抱えている。それは自分でも気づかない心の奥底にあるかもしれず、秘密が知らず知らずのうちに外側から見た個人の魅力を引き立てていることもある。そんな“個人的な秘密”を覗かせるように、トレンチコートを再解釈したショートドレスやハーネス風のトップス、タイトスカートなどは、しっかりとした生地がボディラインを浮き彫りにするタイトなシルエットへと構築。コントラストによって肌の存在感が際立ち、内側にある官能性を思い起こさせる。さらに、最も個人的な衣服であるランジェリーが、パワーショルダーのジャケットスタイルで提案された。
2023年09月03日ハイドサイン(HIDESIGN)の2024年春夏コレクションが、2023年8月31日(木)にプレゼンテーション形式で発表された。多様なライフワークに寄り添って様々なワークユニフォームをファッションとして展開するハイドサインが今季掲げるテーマは、「グレー カラー(Gray Collar)」。知的労働者を表すホワイトカラー、肉体労働者を示すブルーカラー、それらとは異なる「グレー カラー」を打ち出し、多種多様な環境で働く労働者それぞれに寄り添ったユニフォームを提案する。どんな体型でも着用できるようにまず初めに登場したのは、様々な体型にフィットするユニフォームを着用したルックだ。最も高い身長の人や最も背の低い人、最も長い脚を持つ人、最高体重の人など多様な体型の寸法を分析した結果、彼ら全員に対応する最適解はジャケットとパンツが一体となったオールインワンのようなシルエット。それに加えて、指穴デザインやフーディーなどのディテールを組み合わせることで、独自のオーバーサイズデザインに落とし込んでいる。収納性を追求収納性を追い求めたコートも目を惹く。大きく広がる後ろ身頃には、バッグが丸ごと隠れるほどのスペースを用意している。このほかにも、スーパーマーケットでの使用を想定し、割れ物などを収納することに特化したコートも展開する。変形可能なパターンまたチャックとボタンを駆使することで、急な雨から荷物を保護できるポンチョ型に“変形”するブルゾンも登場。パーツごとで濃淡の異なるグレーを使い分けることで、立体的で奥行きのある構造に仕立てているのが魅力だ。多機能ポケットが今季も最後には、ハイドサインがこれまで継続して発表している多機能ポケット付きウェアも。今季は、前身頃に大中小のポケットを配したベストや、側面にのみポケットをあしらったオールインワンなど、個人に寄り添った機能性を実現させつつ、スタイリッシュな雰囲気を併せ持つビジュアルに仕上げた。
2023年09月03日ミューラル(MURRAL)の2024年春夏コレクションが、2023年8月30日(水)、東京の国立競技場にて発表された。テーマは「ユーフォリア(EUPHORIA)」。夢、ひとひらの幸福な空間夢──それは、此処にいながらにして彼処を目にし、あるいは彼処に赴いているはずがないのに此処にいる心地もしない、極めつきの両儀性の空間、現実と幻想の〈あわい〉である。だからここでは、此処と彼処とが相互に行き交う。いま生きているわたしが、夢という〈あわい〉の空間では、この世ならぬ人とも出会えるように──そこにひとひらの希望を、零れ落ちそうなほどにささやかな幸福を見てとってもいいのかもしれない。今季のミューラルが表現した夢の空間は、だから、現実の確かさと幻想の自在さとの双方を架橋する。夢の空間が持つ、曖昧な、捉えどころのない幻想性は、まずもってファブリックで表現される。ドレスやロングシャツなどに用いた光沢素材には、豊かな色彩が溶けでて、交わるように広がる。氷に染料を落とし、水へと溶けゆくにしたがって色彩が広がる、という過程を経て作られたファブリックは、こうして偶然的な表情を織りなしてゆく。素材は、このようなモチーフの曖昧さ、肌を透かす透明感、此処と彼処のあわいに震える軽やかさ、翻っては表情を変えてやまない光の遊戯を示す。ドレスやスカートなどに用いた、凹凸感が光沢の多彩な表情を豊かに引き出すファブリック。スリーブに量感を持たせたブルゾンの、玉虫色に光を帯びたスポーティな素材。あるいは洗練されたシルエットのジャケットやサロペットなどには、裾や袖口に繊細なスカラップ刺繍を施し、抒情が行き交う。ミューラルを象徴する素材のひとつ、オリジナルの刺繍レースも、そこに浮かぶ花々は花綱の上を縺れに縺れ、決して現実に花弁を開く特定の花を指し示すようではない。ただ、色とりどりの花々がレースの上を揺れ動き、ささやかなフリンジを残像のごとく残す。その幻想的な表情は、しかし、涼しげなキャミソールドレスやノースリーブドレス、切り替えを施したスカートのすっきりとしたシルエットにのせられるのだ。ここで幻想は、ふと現実に引き戻される。ウェアのシルエットは、この刺繍レースのドレスなどに見られるように、縦のラインを強調するものだ。もちろん、スポーティな素材のブルゾンがボリューミーなシルエットを描いたり、ギャザーを寄せたドレスがアシンメトリックな表情を示したりはするものの、凛とした佇まいとそこに交わる素肌の官能は、夢という〈あわい〉に思いを馳せる人たちに、確かな拠りどころを与えているように思われる。コレクションを彩るカラーもまた、此処と彼処の通い路たる〈あわい〉の空間を反映するかのようにして、明確さと曖昧さとを揃えている。ホワイトとブラックという階調の両端に枠付けられて、ヴィヴィッドなレッドやイエロー、グリーンがその存在感を示す一方、霞んだようなパープルやグリーン、ライトブルーなど、淡い色彩がもっともよく〈あわい〉の世界を表現しているように思われる。
2023年09月02日へオース(HEōS)の2024年春夏コレクションが2023年8月30日(水)、楽天ファッションウィーク期間中に渋谷・ヒカリエホールBにて発表された。虚無な若者たちが、希望を見出すまで今季のヘオースは、村上龍の小説『限りなく透明に近いブルー』にインスパイア。"何者かになりたい”と願いながらも自堕落な生活を送る若者たちが、苦しさや空虚の先に"真に大切なものと希望”を見出すストーリーだ。挫折により、かつては辛い時期を過ごしたというデザイナー・暁川翔真が自らのルーツを振り返り、ファッションとして再定義するコレクションを展開する。アメカジ要素を取り入れて特徴的なのは、全体を通してリラクシングなシルエットに、物語の主人公・リュウが住む米軍基地に着想したアメカジ要素が盛り込まれている点。迷彩服を思わせるユニークなカモフラージュ柄のコートやセットアップをはじめ、パイソン柄の透けたトップスや麻のアクセサリー、足元のカウボーイブーツが存在感を放っていた。作中のキャラクター「黒い鳥」もまた、作中に登場するキャラクターやモノもデザインソースに。例えば、羽根付きのヘッドアクセサリーと全身ブラックのワントーンでまとめたルックは、“黒い鳥”を表現。さらに、中毒性のある薬物“ニブロール”のタグが一面にあしらわれたシャツなども披露された。不規則に大胆な穴を開けたニットは、リュウの退廃した日々と傷ついた心を暗に示しているようだ。荒れ果てた心を表すカラーパレットカラーパレットは、荒廃するリュウの心を映し出すようなグレーやブラウンベージュ、ブラックを基調に、アクセントとしてライトブルーのベロア生地で作られたパンツ、バーガンディのシアーシャツ、マスタードイエローのタイダイ柄スカートなどが差し込まれている。そしてランウェイは、天井から花火を降らせるという儚くも美しい、“希望の光を表す”演出で幕を閉じた。
2023年09月02日セヴシグ(SEVESKIG)の2024年春夏コレクションが、東京・台東区の東京キネマ俱楽部にて、2023年8月30日(水)にアンディサイデッド((un)decided)と合同で発表された。もし壁がなかったら「もし人と人、国と国の間に壁がなければ」。この思いが込められた“IF WE BREAK DOWN THE WALL”という言葉をタイトルとして掲げた今季のセヴシグ。デザイナーのノリは、人々との間に壁がなくなれば、争いや分断もなくなりその先に光も見えてくるのではないかと考え、自身が創作の着想源としてきた予言や神話、都市伝説といった土着信仰からスラヴ民族の伝承や神話に辿り着き、コレクションに落とし込んだ。スラヴの民族衣装モチーフまず注目したいのは、スラヴの伝統的な民族衣装に見られるディテールと、ノリのオリジンであるアメカジを結びつけたルック。ギャザーやシャーリングをたっぷりと配したワンピースや、華やかな花の刺繍やクロスステッチを施したトップスやパンツがその好例だ。デニムやレザーで表す傷ついた人々の心象風景争いによって傷ついた人々の心象風景を表すように、レーザーカットでボロボロに穴のあけられたデニムも登場。空いた穴を塞ぎ、癒しを与えるかのように散りばめられた花の刺繍もポイントだ。そのほか、表面の顔料が薬品によってはがされたレザーやクラシックレザーのライダースジャケットからも、傷ついた内心を感じる取ることができる。一方で、ウェアの随所に見られるキラキラとした素材は、障壁を取り除いた先に見える希望の光を象徴している。AIが生む意外性AIが生み出す現実と虚構の境界線を探求することもセヴシグのコレクションを語るうえで欠かせない。今回は、MidjourneyやChatGPTを用いて、人の想像の斜め上を行く“発想”をウェアに取り入れた。たとえば、AIの誤訳によって生まれた「トラの頭を持った神」は、最先端のプリント技術を用いた服作りを行うトルク(TOLQ)とのコラボレーションによる赤や黒のスカジャン、もしくはハーフパンツに採用。AIによってもっともらしく語られる架空の神々の姿は、アルフォンス・ミュシャの代表作である《スラヴ叙事詩》からも着想を得ているそう。壁や境界線としてのボーダー&ストライプ柄壁や境界線のメタファーともとれるボーダー柄やストライプ柄使いにも注目。赤・青・白から成る“汎スラヴ色”のボーダー柄を解いてフリンジ状に編み上げたニットは、壁や境界線を取り除き、分断された世界からの解放を意味している。『新世紀エヴァンゲリオン』とのコラボ最後に、アニメ『新世紀エヴァンゲリオン』とのコラボレーションによるTシャツにも触れておきたい。また、作中に登場する架空のバリア「A.T.フィールド(Absolute Terror Field)」をイメージして開発した、ナイロン扁平糸を編み上げたシアーな素材をトレンチコートやロングスリーブシャツ、スカーフに採用した。
2023年09月02日10月号は通常版とSpecial Edition版を発売8月22日、女性向け月刊美容誌『VOCE(ヴォーチェ)』10月号が講談社から発売された。『夏終わりのスキンケアと最新ベーステクの二刀流で叶える ノーフィルターでこんなに美肌!』が特集されている。『VOCE』最新号は通常版とSpecial Edition版を発売。通常版の表紙は女優の戸田恵梨香さんで、LDHの次世代スターたち、川口蒼真さん(KID PHENOMENON)、GHEEさん(WOLF HOWL HARMONY)、古嶋滝さん(THE JET BOY BANGERZ)がSpecial Edition版の表紙を飾る。通常版の特別付録はルナソル3点セットで、SUQQU、ドクターシーラボなどの貼り込み付録も付属する。また、Special Edition版では、「SK-II スキンパワー アドバンスト クリーム(ミニジャー2個)」が特別付録。通常版の価格は870円、Special Edition版の価格は920円となっている。乾燥枯れとくすみ枯れの集中ケアなど季節が秋から冬に向かうと、肌の乾燥が気になる。ルナソルの新作は、ファンデーションなのに美容液のようにうるおい、カサカサの乾燥肌をうるツヤ肌にする。通常版では、「オイル美容液ファンデーション」「オイルクレンジング」「ジェル洗顔」を試すことができる。Special Edition版の付録はハリとツヤ、うるおいを実現するSK-IIのエイジングケアクリームが付属。ベタつくことなく肌になじみ、高い浸透力による保湿効果を発揮する。特集では、終わりに向かう夏、やって来る秋に備えるスキンケアとベースメイクを紹介。乾燥枯れとくすみ枯れの集中ケア、「秋新作スキンケア」ダイジェストなどが掲載されている。(画像はAmazon.co.jpより)【参考】※【8/22発売、VOCE10月号を立ち読み】表紙は戸田恵梨香さん。LDH次世代スターが表紙のSpecial Edition版も!【速報!VOCE最新号】 ‐ 美容メディアVOCE(ヴォーチェ)
2023年09月02日シンヤコヅカ(SHINYAKOZUKA) 2024年春夏コレクションが、2023年8月29日(火)に千駄ヶ谷・東京体育館にて発表された。月夜の会場を舞台に8月2度目となる満月が、間近に迫る東京の夜。ランウェイの舞台となるのは、(ほぼ)まん丸の月が煌々と輝く東京体育館の屋外の会場だ。コレクションノートには、まるで今夜の美しい月夜を予期していたかのように、「月が綺麗ですね。」の一言が添えられている。すっかりと秋の香りが漂う、心地良い夜風が吹き抜ける観客席。エレファントカシマシの楽曲を合図に、どこかエモーショナルな空気を醸すショーが幕を開けた。「WONDERFUL WANDER」をテーマに「WONDERFUL WANDER」と名付けた今季のコレクション。デザイナーの小塚信哉が20代の頃から好んでいた“夜の散歩”を着想源に、そこで偶発的に出会った情景を、コレクションのストーリーとして膨らませていったのだという。まずは“一枚の絵”を描くことから始めたという今シーズンは、小塚のドローイングを起点に、様々なプリントで溢れているのも特徴。街並みや、自分だけのお気に入りの場所、可愛い動物たち…そんな散歩の途中で目に留まった風景を描き出したようなプリントは、コレクションのメインモチーフとなり、ジャケットやパンツ、ジップアップコートに彩りを添えている。夜の町中のネオンを映し出したようなジャケットには、路地裏で見かける、意味をなさない乱雑なドローイングを重ねて。また全面に手描きのメッセージを羅列したオーバーサイズのジャケットは、小塚が散歩中にふと思いついた言葉を、ランダムに記したものだという。レギンスで引き立てるビッグシルエットさらに今季は、ぴたっとしたレギンスをコレクション全体で取り入れているのも印象的。ブランドらしいビッグシルエットを引き立てる名脇役として、オーバーサイズのジャケットやトップスに差し込まれていた。ブルー×金をキーカラーにコレクションのキーカラーは、ブルーとゴールド。画家 イヴ・クラインを連想させるカラーコンビネーションかと思いきや、実は小塚が散歩中に片手に持っていた“某プレミアムなビール”の配色から着想を得たのだという。ラストにかけては、金のラメ糸で編み込んだカーディガンやパンツといったピースが会場を席巻。月夜の中でキラキラと反射する煌めきが、会場にちょっぴりエモーショナルな余韻をもたらしていた。
2023年09月01日ホロマーケット(Holo Market)の2024年春夏コレクションが発表された。ブランドの“ベーシック”に立ち返る「BACK TO THE CLASSIC」をテーマに掲げる今季のホロマーケットは、ブランドのアイデンティティーにフォーカス。自然との共存や、家具や建築との出会い、旅での未知の探求…これらをブランドのクラシックとして定義し、洋服にそのムードを落とし込んだ。日本各地のファブリックを組み合わせてコレクションを彩るのは、デザイナー・吉田力が日本各地の職人とタッグを組んで作り上げた表情豊かなテキスタイルだ。ルックには、シアーで軽やかな質感のシャツや、メッシュ素材のアノラック、あたたかみのあるフリンジを配したチェックパンツなど、全く異なる風合いのアイテムが勢ぞろい。色々な重量感や透け感の素材をマッチさせることで、新鮮味のあるスタイリングを叶えている。メタリックな光沢でアクセントを中でも目を引くのは、“光”を纏ったアイテムだ。キラキラと上品な光沢を纏ったブルゾンやハーフパンツは、そのメタリックな輝きが、リラクシングなムードのコレクションに大胆なアクセントをプラス。暗闇の中で“光線”のような柄が浮かび上がるメッシュ素材のアノラックもまた、独特の存在感を放つ。カラー&柄で遊びをプラス素材はもちろん、異なる柄やカラーを自由に組み合わせているのも印象的。たとえば、淡いピンクのタイダイ染めを施した開襟シャツには、透け感のある総柄アノラックをレイヤード。ボトムスには、ライトペインティングのような柄を配したブラウンのパンツを組み合わせ、遊び心たっぷりのコーディネートに仕上げた。プレイフルな表情のフラワー刺繍フラワー刺繍を配したパーカーやブルゾンは、コレクション全体のプレイフルな雰囲気をさらに加速させるアイテム。本来あたたかみを醸し出す刺繍に、光沢感のあるシルバーの糸を使用することで、ひんやりとした温度感を演出しているのもユニークだ。
2023年09月01日クイーン アンド ジャック(Queen&Jack)の2024年春夏コレクションが、2023年8月29日(火)に発表された。モードな雰囲気を纏わせて日本・イタリアの共同制作を実現したウィメンズの高級制服ブランド・クイーン アンド ジャックは、前回に続き2度目となるラインウェイショーを実施。セーラーカラー、チェック柄といったスクールウェアの要素をキーワードに、モードな雰囲気を纏うポジティブでエレガントなスクール・ガールを表現する。ブレザーのシルエットを再構築コレクションの中核となるのは、先シーズンより継続するブレザーをベースに、シルエットを再構築したアウター類。大胆にカットアウトしたジャケットは、複雑なパターンメイキングを施し、胸上にギャザーやタックを入れた立体的なシルエットに。セットアップやアウター類は、ナポリのスーツファクトリーとのコラボレーションによるものだ。メンズライクなチェックやストライプ×甘さのあるデザインメンズライクなチェックやストライプのアイテムには、セーラーカラーやプリーツのディテール、断ち切りのフリルなどを配して少し甘さのあるデザインをプラス。たとえば、チェックのブレザーの裾には大きめのフリルを、チェックのベストと合わせたブルーの袖には、袖全体にギャザーを配しており、ボーイッシュな中にフェミニンなエッセンスを落とし込んでいる。エレガントなレース使いコレクションを一気に華やいだ雰囲気にさせるレースを用いたルックにも注目。レースのセーラーワンピースはその好例で、セーラーの片側にコサージュを、袖にはビジューを配したエレガントな一着に仕上げている。このほか、ブラウスの襟元やジャケットから覗く袖口、ボトムス、ジレ型ワンピースには、ペイズリー柄のレースを贅沢に使用した。プリーツスカートとスラックスの組み合わせ制服の定番であるスカートに配したプリーツは、キュロットやジャンパースカート、ワンピースなど様々なスカートに応用。その中でも目を惹くのは、プリーツスカートとスラックスを組み合わせたスタイリングだ。通常、スカートとスラックスの両方が用意されている制服だが、そのどちらも同時に着用することで新たなスタイルを提案した。
2023年09月01日コンダクター(el conductorH)の2024年春夏コレクションが、2023年8月29日(火)に発表された。抑圧からの解放、自由な世界へ「suppression(感情・活動・苦痛・力などを抑えること)」と題した今季のコンダクター。2023年6月ファッションウィーク期間中のパリを訪れたデザイナー長嶺信太郎は、日々市内で様々な主張を展開する人々を目にする。日本ではあまり見ないような光景を見たことから、当たり前だと思い込んでいる日常の中でも、実は“本来の感情や活動が抑圧されているような状態は自然ではないのではないか”。そう考えた長嶺は、抑圧からの解放、自由になるべくもがいている人々の姿にフォーカスしたコレクションを提示する。エレガンスとアンチテーゼの共存今季のポイントとなるのは、エレガンスとアンチテーゼの共存を目指したルックだ。たとえばセットアップは、グレンチェックウールの上から有刺鉄線を格子状に顔料プリント。クラシックさの中に、どこか殺伐とした雰囲気を落とし込んでいる。また、同様の意図が見られるルックとして、ズタズタに引き裂かれたスウェットパンツやデニムパンツ、ショルダーなどの継ぎ目が露わになり中綿が確認できるブルゾンなどが挙げられる。退廃的なアイテムとトラッドな要素を持つアイテムをコレクション内に混在させ、エレガンスと反骨精神の共存を図ったのである。スクールガール調×意外性のあるアイテム前回に引き続きウィメンズアイテムも展開。スクールガール調のスタイルをベースとしつつも、異色なアイテムを組み合わせることで、抑圧された環境下に置かれた内面的な葛藤を表現している。いわゆる制服によく見られるチェックのミニスカートに、パープルやイエローといった鮮やかで印象的なスカジャンを合わせたルックは、その意外性を表した好例だ。ブラックミーンズとのコラボ2シーズンで継続して展開するブラックミーンズ(blackmeans)のとのコラボレーションシリーズの新作にも注目。ネパールの職人技が光る複雑な編み地を施したハンドニットベストに加え、ブラックミーンズ定番のコインケースが登場した。ハルタとのコラボローファーにはメッキパーツ付タッセルを足元を品よくまとめあげるのは、老舗靴メーカーハルタ(HARUTA)とのコラボレーションシューズ。オリジナルのメッキパーツをつけたタッセルが印象的だ。ルーズソックスなど長めの靴下と合わせて披露された。
2023年09月01日ペイデフェ(pays des fées)2024年春夏コレクションが、2023年8月29日(火)に、東京・旧三河島汚水処分場喞筒場(ポンプ)施設にて発表された。現代の重圧から解き放たれて“泳ぐ”今季のテーマは、水中を意味する“underwater”と、文化における背景を指す“underground”を組み合わせた造語「Under Waterground」。古生代デボン紀に生きた海洋生物と安部公房の短編『水中都市』を手掛かりに、“社会や世相といった重圧から解き放たれて、遊泳魚のように自由に泳ぎきる”という想いを込めたルックが登場する。印象的なフリンジコレクション全体を通して、自由にヒラヒラと揺れるフリンジが特徴的。例えば、ファーストルックに登場した真っ白のウェアのように、肩に大きく広がるフリンジを取り付ければ、非日常的な新しいシルエットとなる。深海魚モチーフのジャカード深海魚の鱗を想起させるデザインのジャカードドレスは、透け感のあるフェミニンなデザインに。足元は、ふんわりとした起毛感のある真っ赤なパーツを配し、幻想的な古生代の世界観を現代に呼び起こした。パステルを中心としたカラーパレットまた、ペイデフェらしい神秘的なカラーパレットにも注目。ピンクからブルーに移り変わるグラデーションを施したトップスやパンツをはじめ、淡いブルーのワンピースなど、ファンタジックでカラフルなルックに仕上げている。角度によって艶が変化ショーを締めくくるフィナーレには、シルバープレートが大胆にあしらわれたドレスが登場。角度によって異なる艶を放つサテン生地は、本コレクションのテーマとなった深海に差し込む光と重なる。
2023年09月01日ウィザード(wizzard)の2024年春夏コレクションが、2023年8月29日(火)に発表された。「オーバーダブ」をテーマに「オーバーダブ(Over Dub)」と題された今季のウィザード。音を重ねてゆくオーバーダブ=多重録音と呼応するかのようにして、薄く軽快なファブリックを重ね、連ねてゆく構成が、そのコレクションには見てとれる。たとえば、異素材の組み合わせや細かく波打つようなギャザーのディテール。ミリタリーテイストのスカートには、サイドに波打つようなプリーツを組み入れて、テイストの対立を軽やかにまとめあげて。また、スタンドカラーのティアードシャツやシャツドレスには、波打つようにギャザーを寄せて、ふわりと立体的な表情を生み出した。レイヤードは、衣服の多重性をもっとも明確に見てとれる要素だろう。上品な佇まいながらもリラクシングなシルエットに仕上げたテーラードジャケットの下には、袖口や裾を切りっぱなしで仕上げたライニングを重ねて。ライニングがジャケットの下から覗くよう長さを設定するなど、重ねの妙を引き出す絶妙なバランス感覚が、コレクション全体に通底している。春夏のレイヤードを叶える素材は、薄く繊細、軽やかだ。ショートスリーブのシャツは、繊細な模様を織りなすレースが涼しげな透け感を生みだす。フロントジップブルゾンやミリタリーコートのディテールを取り入れたスカートも、ミリタリーのタフな印象を払拭し、あくまで軽快、空気が行き交うような抜け感を漂わせた。カラーは、重ねる、連ねるという多重性を繊細に引き立てるかのようにして、ホワイトやグレー、ベージュといったトーナルカラーがベース。ブルーやカーキで力強さをプラスしつつ、随所に抽象的で柔らかな総柄を取り入れている。
2023年09月01日フェティコ(FETICO)の2024年春夏コレクションが2023年8月28日(月)に東京・寺田倉庫で発表された。フェイ・ウォンをミューズに、ソフィ・カルの作品集にも思いを馳せて今季のミューズとして捉えたのは、香港のシンガーソングライターで俳優のフェイ・ウォン。ウォン・カーウァイが監督を務めた青春映画『恋する惑星』などに出演したフェイ・ウォンは、1990年代にアジアン・ポップスの女王として名を馳せた人物だ。また、ステージ上では前衛的な衣装を、プライベートでは90年代らしい洗練された衣服を身に纏い、当時のファッションアイコンとしても注目を集めた。そしてもう1つの着想源となったのは、フェティコのデザイナー・舟山瑛美が久しぶりに訪れたパリでふと手に取ったという、フランスの現代美術家ソフィ・カルの作品集『THE HOTEL』。イタリアのクラシカルなホテルでメイドとして働いていたソフィが、旅行客が過ごした空間をカメラで記録した非常にプライベートな作品集で、好奇心とスリルが混ざり合う刺激的な一冊となっている。今季は、そんなフェイ・ウォンと作品集『THE HOTEL』にヒントを得ながら、舟山が追求する女性の美しさを引き立てるコレクションを提案していく。ステージ衣装を思わせるドレスやジャケットまず最初に注目したいのは、フェイ・ウォンのステージ上の衣装を思わせる、90年代のシルエットを落とし込んだアイテム。レースのように繊細なサマーウールのミニドレスや、透け感のあるシルクコットンに艶のある素材を合わせたジャケットやパンツなど、センシュアルな肌見せを叶えるエレガントなピースが展開された。壁紙やベッドフレームをイメージパジャマ風のシャツとパンツのセットアップやベロアのボディスーツに落とし込まれた芍薬柄は、作品集『THE HOTEL』に登場する壁紙から着想を得たもの。また、ベッドフレームの装飾をパンチング加工によって表現した、ワイドなデニムパンツも提案された。ランジェリーディテールこれまでのコレクションでも繰り返し提案されてきたランジェリーディテールは、パープルとブラックでコントラストを効かせたキャミソールドレスや、コルセットのラインを取り入れたロングドレスなど随所に。また今季は、サイドのカットアウトが印象的なスイムウェアも展開される。ブランド初のバッグブランド初となるバッグとして、がま口のクロージャーがアクセントになったハンドバッグと、ボクシーなトートバッグもランウェイに。いずれも『THE HOTEL』のインテリアを思わせる薔薇柄がエンボス加工で表現された、エレガントなデザインが魅力的だ。さらにブラン(BLANC.)とのコラボレーションサングラスや、ラインストーンとスタッズが施されたクロッグシューズも発表された。
2023年08月31日ヴィルドホワイレン(WILDFRÄULEIN)の2024年春夏コレクションが、楽天ファッションウィーク期間中の2023年8月28日(月)に、渋谷ヒカリエにて発表された。テーマは「The Prayer」。アメリカでの日常や文化を取り入れてヴィルドホワイレンがショーを開催するのは、ニューヨークで開催して以来6年ぶり。アメリカと日本の2カ国を拠点とするデザイナー・ループ志村は、日曜の午前中に教会へ訪れるのが習慣だという。家族を大事にすること、仲間を思いやること、そんなことを頭に描きながら流れる教会での時間が好きだというループ志村は、教会での様子を表現すべく、「The Prayer」に沿ったコレクションを展開する。“祈る人”でショーは幕開けテーマよろしくショーは手を合わせて祈りを捧げるモデルからスタート。光を浴びて祈る姿を見ると、まるで会場が教会になったかのような錯覚を覚える。清廉な印象を受けるホワイトのシャツドレスに身を包み、バックには天使と口づけする人物が描かれたタペストリーを配した。ちなみに、コレクションアイテムの随所に見られる絵は、幼い頃から多ジャンルな芸術に囲まれて育ったループ志村のバックグラウンドを表すように、すべて彼が描いたものだ。世界を旅する中で描き続けてきたものを採用し、その試みは今後も続けていくという。ミリタリー要素を日常に落とし込んで身近な出来事、すなわち日常や文化をコレクションに落とし込むことも目指した今季。アメリカでは、メッセージ性などは一切なしにミリタリー要素を当たり前のようにファッションに取り入れる人が多いと感じたループ志村は、ミリタリーなディテールをウェアの中に取り入れた。大きなポケット4つをフロントで繋ぎ合わせたベストを、カーゴパンツやメッシュ素材のトップスと組み合わせている。荘厳なゴールドの刺繍繊細な輝きを放つのは、ロングTシャツなどに施されたゴールドの刺繍だ。ホワイトのトップスにはドラゴンの刺繍を、タイダイ柄のロングTシャツにはフロント全面に、中央で羽を広げる鳥や草花などの刺繍をあしらい、荘厳な雰囲気をプラスしている。レザーのキーケースなど小物類小物類にも注目したい。ボックス型ハンドバッグや、表面に生地の重なりが見える大きなショルダーバッグなどが登場する。また、レザーのキーケース兼ネックレスには、あるストーリーが込められている。デザイナーがやんちゃだった頃、全く家に帰らなかったことにちなみ、家に帰ることを促すかのようにコレクション内では鍵を首から下げることにしたそうだ。なお、セットしている鍵は、ブランドがスタートしてからの10年間の中で使用してきたアトリエや事務所の鍵を使用している。
2023年08月31日ハルノブムラタ(HARUNOBUMURATA)の2024年春夏コレクションが2023年8月28日(月)、上野・東京国立博物館の法隆寺宝物館にて発表された。儚く美しい夏の情景を切り取って「親密な日常のポートレート」をテーマに掲げる今季のハルノブムラタ。着想源となったのは、1960・70年代の華やかな社交界をフィルムに収めた写真家スリム・アーロンズと、青年2人の一夏の恋を描いた映画『君の名前で僕を呼んで』だ。いずれの作品も夏のバカンスを情景として美しく、儚く切り取り、観る者にエレガンスを感じさせる。カジュアル×エレガンスの出会いデザイナー・村田晴信は今季、そんな夏らしいカジュアルさが融合した、"軽やかなエレガンス"を纏った女性像を提案する。ブランド初となる春夏のランウェイショーは、法隆寺宝物館の風通しの良い水盤を囲んで開催。静寂かつミニマルな空間に、映画『君の名前で僕を呼んで』のサウンドが心地よく流れていた。軽やかな素材で、気分まで軽快にファーストルックには、“ふわりとした”ジャージー生地の純白ショートドレスが登場。足元にはオーエーオー(OAO)とのコラボレーションスニーカーを合わせ、素材から足取りまで軽快な様を表現している。また、シアーなブロックチェックが目を惹くロングワンピースや、濃いブルーのシルクコットンのセットアップなど、こだわり抜いた軽やかな素材のルックも散見された。鮮やかなカラーパレットさらに、鮮やかなカラーパレットも今季ならでは。モノトーンを基調に重厚なムードでまとめ上げた2023年秋冬コレクションから一転、夕焼けをイメージさせる赤く染まったシルクドレスや、ブルーの海のようなグラデーションを施したチュールトップスなど明るい色使いが印象的だ。ゆったりと過ごす時間の中でデザイナー・村田晴信が意識したのが、ゆったりと過ごすバカンスで生まれるエレガンス。描く女性像はそのままに、朝はフレッシュなコットンを使用したシャツ、昼はパイル生地のローブ、夜はドレッシーなブラックドレスといった、時間の移ろいとともに変化する空の色やオケージョンに合ったウェアを展開する。ラストルックは、華奢な3本の肩紐が女性らしさを引き立てるブラックのナイトドレスで締めくくった。
2023年08月31日ナノアット(NaNo Art)の2024年春夏コレクションが発表された。テーマは「Rest in peace」。「Rest in peace」――“終わる”ことの美しさ今季のコレクションの着想源となったのは、特定の堆肥に埋めると約1年で水と二酸化炭素に分解される「生分解ポリエステル素材」だ。リサイクルやリユースと違い、生分解はそこに一度終わりが存在している。廻り続けるのではなく、自らの役割を終えて美しく消えていく――その姿に、デザイナー・後藤と田中は自らの人生や死生観を重ね合わせたのだという。洋服を人体に見立てて散見されたのは、洋服を人体に見立て、命を吹き込んだかのようなデザイン。たとえば、心房や心室のモチーフを襟のデザインに投影したポリエステルのシャツは、今季のテーマを体現したアイコニックなアイテムのひとつだ。上品な光沢を湛えた優美なキャミソールドレスは、肩ひもの部分が三つ編みの髪の毛のように編み込まれているのがユニーク。そのほかにも、静脈に見立てたシャーリングなど、ルック全体に人体を思わせるディテールが散りばめられていた。パジャマやガウンなどの“寝具風”ウェアパジャマやガウンといった寝具風のウェアは、「Rest in peace(=安らかに眠れ)」というテーマをそのまま反映させた、ウィットに富んだアイテムだ。パジャマはエレガントなセットアップ、ガウンはシックなコートとして着こなすことで、“部屋着感”を払拭。中にロングシャツをレイヤードするなど、意外性のあるシルエットを組み合わせたスタイリングもまた、シティライクな雰囲気を加速させる。履き口の一部を切り取ったシューズコーディネートにアクセントを添えるシューズにも注目したい。2023-24年秋冬コレクションのルックにも登場した鹿革のシューズは、デザインをアップデートして今季もお目見え。“輪廻転生からの解脱”を示唆するかのように、本来環状であるはずの履き口の一部が切り取られている。ニュアンスカラーに鮮烈な青を差し込んでカラーパレットは、荘厳な雰囲気を演出するホワイトとブラックを中心に、くすんだグリーンやベージュ、ペールグレーなどのニュアンスカラーを織り交ぜているのが印象的。そんな中、ひときわ視線を奪ったのが鮮やかなブルーのパジャマジャケット。彩度の低い世界に差し込まれた強烈な青が、コレクション全体を引き締めるのに一役買っていた。
2023年08月31日カナコ サカイ(KANAKO SAKAI)の2024年春夏コレクションが、楽天ファッション・ウィーク東京1日目の2023年8月28日(月)、東京・渋谷のヒカリエホールにて発表された。カナコ サカイ、初のショーを開催ショーを通して、ルックブックでは伝えきれないカナコ サカイというブランドの精神性を、世界に向かう姿勢を表現したかった──2022年春夏シーズンにデビューしたカナコ サカイが、今季ブランド初のランウェイショーを行うに際して、デザイナーのサカイカナコはそう語る。では、その精神性とは何かというと、ひとつには自由が、肯定の身振りがあるのではなかろうか。サカイはなるほどウィメンズウェアを手がけているが、しかしそれは単に女性に向けた服であるというより、カナコ サカイというブランドと出会い、ふと魅了された人すべてに向けられている。そこにはだから、本当はウィメンズ/メンズという区分もない。サカイはこうした姿勢を、「自由を纏う」と言い表している。ランウェイを歩いたモデルのおよそ半数が男性モデルであるのも、サカイ自身のそうした姿勢の自然な表れなのだ。さて、コレクションにおいて自由は、たとえばカナコ サカイを代表するアイテム、洗練された佇まいのテーラリングに見て取れる。ハリのある素材で構築的なフォルムをかたち作るという、テーラリングのいわばソリッドな側面を、いかにして開くか──それは文字通りに衣服の面を開くことであり、具体的にはフロントの両側に施したスリットや、バックに深く入れたベンツなどによって、ジャケットやロングコートは歩みに合わせて律動的に揺らめき、生き生きとしたダイナミズムを示すことになる。硬さを開かれ、柔かな表情を獲得したジャケットは、そのスリットの下に繊細なレース、さらにはそれらを身に纏う身体の存在を、層に層を重ねて繊細に指し示す。きらめきを帯びたフリンジをティアード状に連ねたドレスは、刻一刻と波打つように光を反射し、定まった表情を見せることなく偶然が織りなす表情を引き出す。あるいは市松模様を編み目で表したワンピースは、身体のシルエットを心地よくなぞる。だから、ここでは衣服を着る人の身体そのものが肯定されているのだといえる。サカイが自らの製作においてもうひとつ強調するのが、出会いの偶然だ。今季、そこにたとえば、軽快なチェスターコートの市松模様に用いた「螺鈿織り」を挙げることができる。螺鈿織りとは、貝殻を使った伝統的な装飾技法「螺鈿(らでん)」を、織物に用いたものだ。七色にきらめく硬い貝殻が、自在に形をなす柔らかな織物になる──そんな新鮮な驚きが、今季、サカイと螺鈿織りの出会いにはあったという。螺鈿織りを手がけるのは、日本海を望む京都・丹後の織元「民谷螺鈿」。揺れうごく丹後の海のきらめきを、織物にできないか──そうした発想から生まれた螺鈿織りは、丹後の織物の歴史のなかで紡がれてきた伝統技法「引き箔」に、海が育んだ貝殻を交叉させるものだ。螺鈿織りでは、薄く削りだした貝殻の真珠層を、フィルムの上に貼り付ける。これを、細かな柵状に裁断する「引き箔」の技術で糸となし、織物の緯糸として織りこんでゆくのだ。丹後ならではの歴史と自然が交錯することで生まれる螺鈿織りは、素材との出会い、その魅惑にふと捉われては突き詰めてゆく、カナコ サカイの姿勢を象徴するものだといえるではなかろうか。
2023年08月31日08サーカス(08sircus)の2024年春夏コレクションが、楽天ファッションウィーク期間中の2023年8月28日(月)に発表された。内なる強さとエレガントさを共存させて今季の08サーカスは、“レイヤードとバランス”に着目。とりわけ今季は、ウィメンズの素材感やバランスをメンズウェアに取り入れることで、従来よりもジェンダーレスの世界観をエクスパンド。静かに佇む強さと、ウェアの動きによって生まれるエレガントさを共存させたコレクションを展開する。レイヤードでシルエットを変化まず始めに注目したいのは、“レイヤードとバランス”にフォーカスし、レイヤードすることで形を変化させることが可能なルック。たとえば、メンズライクなパープルのジャケットの上にビスチェを合わせることで、ボリュームをシェイプさせフェミニンな印象を与えたり、透け感のある素材によって着る人の身体のラインをあえて見せたりと、シルエットに変化を生じさせている。前後で魅せる異なる表情“前と後”の関係性にフォーカスを当て、二面性のある洗練された空気を纏っているのも今季の特徴だ。それを象徴する、前後で異なる表情を魅せるアイテムの例となるのは、ファーストルックとして登場したトレンチコート。正面から見ると、縦にすっきりとしたロングトレンチコートだが、後ろから見ると、マントのディテールによってまるでポンチョのようにも見えるのがポイントだ。柔らかで透け感のあるファブリック素材は共通して、柔らかで透け感のあるものが多く見られる。エアリーで軽やかな着心地のシルク素材を用いたワンピース、ブランドが得意とする流動的な模様が美しい“墨流し染め”を施したヴィンテージサテンのパンツなどが例として挙げられる。黒を中心にベージュやアイスグレーを差し込んでカラーは、質感や透け感を通して様々な表情を魅せるブラックを中心に、美しさを際立たせるニュートラルなベージュ、落ち着いた色味のサックスやアイスグレーで、よりエレガントさをプラス。全体的にプリーツを施したトップスやスカートなどに、スタイリングに奥行きを与えるアイスグレーのカラーを採用した。
2023年08月31日KAMIYAは8月28日、国立競技場内の駐車場に設けられた特設会場で2024年春夏コレクションを発表しました。Courtesy of KAMIYA2015年にスタートしたMYneが、デザイナーである神谷康司の名を冠して「KAMIYA」とブランド名を変え、新たな歩みを始めたのが先シーズン。KAMIYAとして初の展示会を終えたばかりの神谷は、ビリー・プレストン(Billy Preston)の歌う「Nothing From Nothing」に出会い、彼の頭に去来したのは、ブランドとしての次のステージ、「ファッションショー」に挑戦してみたいという衝動でした。Courtesy of KAMIYAそして8月28日に開催された初のショーは、KAMIYAのロゴを施し、造作された壁を巨大なスピーカーを積んだトラックが破壊して登場するド派手な演出で幕を開けます。©FASHION HEADLINE©FASHION HEADLINE激しいダメージ加工やブリーチ加工を施したカットソーや、ダック地のワークジャケット、ペインターパンツやコットンニットなど、神谷が青春時代を過ごした大阪のアメリカ村にある古着屋をルーツと感じさせるアイテムが目立ちます。また、ショーの終盤には、バブルが舞う演出も。幻想的な雰囲気の中、「いかにリアリティをもってストリートで消化できる服であるか」という神谷の創作の根底を垣間見ることができたショーとなりました。Courtesy of KAMIYACourtesy of KAMIYACourtesy of KAMIYACourtesy of KAMIYA
2023年08月30日2024年春夏コレクションのウィメンズ・ショーサーキットの皮切りとなる「楽天 ファッション ウィーク東京(Rakuten Fashion Week TOKYO)」が8月28日にスタートした。初日トップを切ってブランドスタート2年目、5シーズン目となる「カナコ サカイ(KANAKO SAKAI)」が初のランウェイショーを行った。Courtesy of KANAKO SAKAI同ブランドは日本ファッション・ウィーク推進機構(JFWO)が昨年よりスタートした「JFW ネクスト ブランド アワード(JFW NEXT BRAND AWARD)」のグランプリアワードを受賞。デビューシーズンより評価の高い日本独自の伝統工芸技術を素材開発に活かすオリジナル性を、今シーズンは京丹後の織元「民谷螺鈿」の貝を素材とする螺鈿織りのコートドレスで表現。水面や光の動きをテーマにしたカラーテクニックや、西洋と日本のカルチャーギャップをミックスしてデザインに落とし込むコンセプトをさらに昇華させた。ブランドの精神性はRCサクセションのライブチューン「ようこそ」のバックグラウンドテーマに乗せて、軽やかなコレクションにまとめ上げた。Courtesy of KANAKO SAKAI初日はこの他に「ナノアット(NaNo Art)」「ハルノブムラタ(HARUNOBUMURATA)」「ヴィルドホワイレン(WILDFRÄULEIN)」「カミヤ(KAMIYA)」「フェティコ(FETICO)」がショー形式でコレクションを発表。9月2日の最終日までオンラインでの発表を含めて50ブランドが東京でのファッションウィークに参加する。Courtesy of KANAKO SAKAICourtesy of KANAKO SAKAICourtesy of KANAKO SAKAItext: tatsuya noda
2023年08月29日ティート トウキョウ(tiit tokyo)の2024年春夏コレクションが2023年8月24日(木)、新豊洲ブリリアランニングスタジアムにて発表された。アメリカ西部のフロンティア時代に立ち返って映画『ノマドランド』からインスパイアされたという今季のティート トウキョウ。"NOSTALGIA"をテーマに、アメリカ西部で過酷な労働をしながら旅をする遊牧民・ファーンの生き方を投影したコレクションを展開する。ランウェイは、アメリカの雄大な自然を感じさせる、落ち葉が一面に敷き詰められた会場で幕を開けた。ウエスタンファッション今季のムードを最も体現しているのが、ウエスタンファッションの要素を盛り込んだルック。ウエスタンホースを総柄でプリントしたジャンパースカートを、黒のひもで引き締めている。また。ジグザグ柄に刺繍されたジャケットやざっくり編みのメッシュニット、麻のベルトを合わせた水玉のオールインワンなど、開拓者時代を思わせるディテールも印象的だ。メリハリのあるディテールまた、光沢のあるシアーな肌見せシャツでウエスタンシャツを再解釈したり、温かみのあるコーデュロイ生地のシャツの胸元下とショートパンツに大胆なフリンジをあしらったり…とメリハリのあるルックも散見された。まるで遊牧民が厳しい環境の中でも強く生き抜いていく姿勢を表しているようだ。自然をイメージしたカラーパレットカラーパレットは、アメリカ西部の広大な大地を連想させるナチュラルなベージュのワントーンを中心に、カーキのスカートやグレーのジャケットを採用。さらに差し色として、空をイメージしたブルーのワンピースやキャミソールを取り入れることで、アクセントを加えている。
2023年08月27日