ロシア映画としては『戦争と平和』以来、実に半世紀ぶりにゴールデングローブ賞「外国語映画賞」を受賞、さらにアカデミー賞にもノミネートされ、カンヌ国際映画祭では「脚本賞」を受賞した『裁かれるは善人のみ』(原題:Leviathan)が、いよいよ10月31日(土)より公開となる。本作で監督を務めたのは、本国で最も優れた監督の一人として知られ、熱狂的なファンも多いアンドレイ・ズビャギンツェフだ。今年は、巨匠アレクセイ・ゲルマン監督の遺作『神々のたそがれ』のロングランヒットも記憶に新しいロシア映画だが、まだまだ足を踏み入れにくいイメージが多少なりともある。だが、その歴史を紐解くと、実は日本文化と深い関わりがあることが分かってきた。■プーチン大統領も賞賛するロシアが誇る鬼才入り江のある小さな町で、自動車修理工場を営むコーリャは、若い妻リリア、そして先妻との間に生まれた息子・ロマと共に、住み慣れた家で暮らしている。一方、1年後に選挙を控えた市長のヴァディムは、権力に物を言わせ、彼らの土地を買収しようと画策。自分の人生の全てともいえる場所を失うことが耐えられないコーリャは、強行策に抗うべく、旧知の弁護士のディーマをモスクワから呼び寄せ、市長の悪事の一端を掴み、明るみに出そうとするのだが…。ロシア北部の町を舞台に、自分の大切なものを守るべく誠実に生きる人々と、権力を振りかざす市長との対立を描く、普遍の人間ドラマとなる本作。CMやテレビ業界で活躍していたズビャギンツェフ監督が、2003年に発表した『父、帰る』は、長編デビュー作にしていきなりヴェネチア国際映画祭「金獅子賞」&「新人監督賞」をW受賞、世界にその名を知らしめた。長編デビュー作にして「金獅子賞」受賞は、ロシア映画としては巨匠アンドレイ・タルコフスキー監督『僕の村は戦場だった』(’62)以来、41年ぶりの快挙。まるで油絵の絵画のような美しい自然描写と、緊張をはらんだ緻密な展開、そして宗教的隠喩などの作風は、デビュー作とは思えないほど完成度が高く、世界中の評論家や映画ファンを驚かせ、「タルコフスキーの再来」とも言われた。『父、帰る』の劇場公開当時には、プーチン大統領も「ロシア映画の多大な創造性とその精力的な展開の可能性の証拠を示した」と絶賛のコメントを出したほどだ。その後、発表した『ヴェラの祈り』『エレナの惑い』では、連続してカンヌ国際映画祭をはじめ世界中の主要映画祭で受賞を果たし、昨年、日本でも連続公開された。最新作の『裁かれるは善人のみ』は、ロシア映画では『戦争と平和』(‘68)以来、半世紀ぶりとなるゴールデングローブ賞を受賞し、彼は再びロシアの映画史にその名を刻むことになった。■ロシアの映画監督は日本文化から影響を受けている「戦争と平和」「アンナ・カレーニナ」などを記したトルストイ、「罪と罰」「カラマーゾフの兄弟」のドフトエフスキー、「桜の園」「かもめ」の劇作家チェーホフ。ロシア文学って難しそう、ロシア映画ってよく分からない…など、ちょっと敷居の高いイメージがあるロシア。とはいえ、重厚で荒涼とした美しいロケーションとその静ひつな作風は、どこか往年の日本映画を感じさせる。●アンドレイ・ズビャギンツェフ<芭蕉と北野武から影響受けた!>翻訳された松尾芭蕉を愛読していたというズビャギンツェフ監督。芭蕉の「優れた俳句は、読む者が想像する余地のある句である」という言葉に胸を打たれ、必要以上の説明を排し、観客に想像の余地を残す自身の作風にも反映させている。黒澤明や溝口健二からの影響はもちろん、「北野武の存在が大きい」とも明かしており、青を基調とする重めの色味の画は、その影響を感じさせる。ちなみに、『父、帰る』は、ヴェネチアで北野監督の『座頭市』を抑えての受賞となった。また、そんな日本びいきのズビャギンツェフ監督が、映画監督になる前に作ったTVドラマのタイトルが「ブシドー」というのは、ほとんど知られていないエピソードだ。●アンドレイ・タルコフスキー<俳句・クロサワ・ミゾグチ大好き!撮影は日本で!>映像の詩人と呼ばれていたタルコフスキーは、若いころから俳句に親しみ、自身の映画論でも「短詩の表現こそ映画の目指すべきもの」と語っている。また、黒澤明と溝口健二を敬愛しており、新作の撮影前には必ず『七人の侍』『雨月物語』を観ていたという逸話も残る。代表作『惑星ソラリス』では東京の首都高速道路の光景を撮影、遺作となった『サクリファイス』でも尺八の音色が使用されていたり、主人公が着物をガウンのように羽織ったりと日本から受けた影響が色濃く出ている。●セルゲイ・エイゼンシュテイン<歌舞伎・漢字・日本カルチャー大好き!>『戦艦ポチョムキン』をはじめ、数々の名作を生み出してきたロシアを代表する映画監督エイゼンシュテイン。若いころに日本語を学習しており、日本文化にも興味があったエイゼンシュテインは、モスクワ公演があった際に歌舞伎を鑑賞。そこで観た、歌舞伎独特の役者の仕草やスローモーション的な演技に衝撃を受け、『イワン雷帝』では、登場人物たちが“見得”を切り、表情が際立つ照明が工夫され、歌舞伎の影響が色濃く出ている。また、漢字が抽象的な概念を組み合わせて文字としてデザインされていることに興味を示し、それを基にモンタージュ理論を開発。『戦艦ポチョムキン』でも、一見関係のないものを交互に映して意味を持たせるなど、自身の映画に反映させた。●アレクサンドル・ソクーロフ<日本でドキュメンタリー3本撮影、旭日双光章を受賞>ヴェネチア「金獅子賞」受賞作『ファウスト』など、ロシアを代表する映画監督のひとりアレクサンドル・ソクーロフ。歴史上の重要人物を扱った「権力者4部作」の第3部作『太陽』では、主演にイッセー尾形を起用して大日本帝国時代の昭和天皇を描いた。さらに、もともと日本に関心のあったソクーロフは、『オリエンタル・エレジー』『穏やかな生活』と日本についてのドキュメンタリーを相次いで製作。作家・島尾敏雄の妻、島尾ミホの生き様を描いた『ドルチェ 優しく』など、現代の日本に寄り添った作品も数多く、こうした日露両国間の相互理解を深めることに貢献したとして、2011年には旭日双光章を受賞している。辿れば辿るほど、日本とゆかりの深いロシア映画。『裁かれるは善人のみ』にも、その影響は色濃く映し出されているはずだ。『裁かれるは善人のみ』は10月31日(土)より新宿武蔵野館ほか全国にて順次公開。(text:cinemacafe.net)
2015年09月17日アミ アレクサンドル マトゥッシ(AMI ALEXANDRE MATTIUSSI)が9月12日、日本初となる旗艦店AMI OMOTESANDOを東京・表参道のジャイル(GYRE)1階(東京都渋谷区神宮前5-10-1)にオープンする。日本初の直営店となる同店のデザインを手掛けたのは、パリにあるブランドの3店舗と同じく、建築家のSTUDIO KO。STUDIO KOは、ロサンゼルスのホテル、シャトー・マーモントの改装や実業家のピエール・ベルジェ(Pierre Berge)のレジデンスなども手がける。表参道のブティックは、今年6月にパリのサントノーレにオープンした直営店をベースに、東京ならではの建築環境を落とし込んだデザインになっているという。店内のマテリアルとしては、大理石や籐、コルク、グリーンの植物、天井から吊るされた真鍮のレールなど異なる質感を持つ、様々な要素が取り入れられる。また、パリらしい感覚とムードを演出するヴィンテージの家具がフロアを飾るり、光、空間、質感の存在感を存分に生かすことで、アミ アレクサンドル マトゥッシらしいモダンで居心地良い空間に仕上げられるそう。また、オープンを記念して限定アイテムの発売も行われる。ラインアップは、プリントシャツ、ラップトップポーチ、ニットを予定している。
2015年08月10日映画『日本のいちばん長い日』が8月3日(月)、外国人特派員協会にて上映され、原田眞人監督と主演の役所広司が集まった記者たちの質問に答えた。半藤一利のノンフィクション小説を原作に、昭和天皇のご聖断から鈴木貫太郎首相、阿南惟幾陸相らの終戦に向けた奔走、徹底抗戦を主張する一部の将校たちのクーデターなど、終戦間際の様々なドラマをサスペンスタッチで描き出す。映画では、敗色濃厚の中で内閣が降伏すべきか否かを会議で話し合い、さらに昭和天皇のご聖断を受けて降伏と決まった後も、降伏の文書の文面について長々と会議が続くさまが描かれる。原田監督はこの点について「いまの安倍政権を見ていても、新国立競技場の問題でも、同じことが起きてていて、会議をやってもなかなか決まらない。ただ、この(映画の)時代は戦争に関して日本人はそれまでに『負けた』という記憶がない。だから決して降伏が目に見えていたわけではなく、本土決戦をやるまでわからないという気持ちがあったのも確かだと思います。多数決で決めていたら、間違いなくクーデターが起こることもわかっていた。開戦時にはできなかったご聖断でしたが、鈴木首相、阿南陸相、昭和天皇の3人が揃ったから終戦時に初めてできた。時間がかかったのはしょうがなかったのではないかとも思います」と語った。役所さんは阿南陸相を演じるにあたっての役作りについて「原田監督と仕事をするときは毎回、膨大な資料が送られてくるので(苦笑)、そこに目を通すことから始める」と説明。阿南の人物像については「いろんな説がありますが、この映画ではご聖断以降、本土決戦ではなく、(抗戦を主張する)中堅の陸軍将校たちを抑えつつ終戦に向かいます。昭和天皇の聖断と若い将校たちとの板挟みになって苦悩するのが僕の役目でした」と語る。原田監督も「阿南が抱えていたアンビバレントを描きたかった」と強調。もし、阿南が降伏に同意せず、大臣を辞任していたら内閣は崩壊し、本土決戦に向かっていたとし「彼自身は武人として沖縄戦で死にたいという思いがあった。でも大臣になってからは『大本営直属の軍人ではなく、天皇直属の軍人だ』と言っているように天皇陛下の意思を第一に進むようになっていた。そこのジレンマにドラマがあると思った」と語った。また、昭和天皇を本木雅弘が演じ、これまでの日本映画にはない昭和天皇の苦悩やその内面を正面から描いている点も大きな話題となっているが、原田監督はアレクサンドル・ソクーロフ監督の『太陽』で昭和天皇が描かれたことが大きな転機になったと述懐。この映画に対して右翼の抗議などがなかったことから「いまこそ『日本のいちばん長い日』を描ける」と感じたという。一方で同作でイッセー尾形が演じた昭和天皇像について「カリカチュアライズされていて、年を取ってからの口をモゴモゴする癖や『あ、そう』という言葉を連発していて僕にとっては不愉快な昭和天皇像でした」とも。本作を海外映画祭に出品することも考えているという原田監督だが、まさにこの海外での昭和天皇についてのイメージというのも、海外出品を考える大きなの理由であるよう。米の歴史学者ハーバート・ビックスによる「昭和天皇」などの著書を挙げ「海外での昭和天皇のイメージは事実をゆがめられている部分がある」と批判。「私はウルトラ右翼ではありませんが、真実よりもイデオロギーを優先するという姿勢には右であれ、左であれ怒りを覚えます。事実と違う部分を是正したいと感じています」と外国人記者を前に語った。役所さんは海外での本作の受け止められ方に関して「日本の戦争の話ですが、戦争は始めるのは簡単だけど終わらせるのは本当に難しい。シンプルなメッセージとして海外の方も受け止めてくださるのでは」と期待を寄せた。政治的な部分を描いた作品とあって、海外の記者からも歴史問題や政治的な質問も飛んだが、原田監督はひとつひとつ丁寧に答えていく。日本が戦争の被害者と加害者という両面を持っているという指摘には「日本を被害者の立場として描くことに徹するのは間違っていると思います。この映画でも天皇陛下が草むしりをしながら『もう15年も続いている。応仁の乱だね』という場面がありますが、15年というのは満州事変からのこと。満州事変から侵略が続いて、それを終わらせなければという意識があったのではないかと思っています」と語った。この日は、10か国以上・150名ほどの記者が上映会・会見に足を運んだ。『日本のいちばん長い日』は8月8日(土)より公開)。(text:cinemacafe.net)■関連作品:日本のいちばん長い夏 2010年8月7日より新宿バルト9、丸の内TOEI2ほかにて公開(C) 2010 NHK アマゾンラテルナ日本のいちばん長い日 2015年8月8日より全国にて公開(C) 2015「日本のいちばん長い日」製作委員会
2015年08月04日映画『日本のいちばん長い日』の完成報告会見が5月20日(水)に開催され、主演の役所広司に本木雅弘、松坂桃李、堤真一、原田眞人監督が出席。戦後70年を記念して製作された本作への思いを口にした。昭和史研究の第一人者・半藤一利の同名ノンフィクションを映画化。1945年、敗戦が濃厚となりつつも陸軍が本土決戦による徹底抗戦を唱える中で、昭和天皇、総理大臣に就任した鈴木貫太郎、陸相をつとめる阿南惟幾の3名を中心に、国の行く末を案じ、戦争を終わらせるべく戦った者たちのドラマを描き出す。「日本のいちばん長い日」はすでに岡本喜八監督の手で1967年に映画化されており、その時は阿南陸相を三船敏郎が演じている。役所さんは以前、半藤さんが原作と監修を務めた『聯合艦隊司令長官 山本五十六 -太平洋戦争70年目の真実-』で山本五十六を演じているが、1968年の『連合艦隊司令長官 山本五十六』でも三船さんが同じく山本五十六を演じているという“奇縁”も!役所さんはこの巡り合わせについて「嫌だなと思いました(苦笑)。『またか…』と思いましたしプレッシャーもあったけど、原田さんに言われると断れない(笑)」とオファーを引き受けた経緯を明かす。同じくプレッシャーを背負いつつ、本作に挑んだのが昭和天皇を演じた本木さん。原田監督は昭和天皇を映画で描くということについて「これまで阿南陸相を主人公にした映画は『日本敗れず』(1954年)と岡本喜八監督の『日本のいちばん長い日』の2本だけ」と語り、さらにそこでの天皇陛下の描写が、前者ではカメラ目線のみで、後者では先代の松本幸四郎が演じたが、引きの構図ばかりだったと説明。昭和天皇をきちんと描きたいという思いをずっと抱いていたと明かし、さらに2006年のアレクサンドル・ソクーロフ監督の『太陽』でイッセー尾形が昭和天皇を演じ、何事もなく公開を迎えたことで「これで全てが変わった」と本作の製作したいという思いを強くしたと語る。本木さんはオファーを受けた時の心境と決断について「逃げ出したい気持ちと逃したくない気持ちで揺れました。躊躇している時に義母の樹木希林さんが『私なりにあなたにこの役が来たことの意味が分かる気がする。原田監督は力のある監督だし天皇陛下を演じる機会はめったにないから受けるべき』と背中を押してくださいました」と明かす。撮影中も「畏れ多くもこんな未熟な自分が背負えるのかと不安だった」と漏らすも「監督に全てを任せる気持ちでカメラの前に立っていました」と振り返った。松坂さんは、徹底抗戦を訴える若き陸軍将校を演じたが役柄に関して「純粋で勝つことを信じて疑わずに生き抜いた男」と語る。原田監督は「坊主になるかがポイントだった」と語ったが、本人は全く抵抗がなかったようで「問題ないです。なんて楽なんだろうという感じ。坊主、いいですね」とあっけらかんと笑みを浮かべて語っていた。堤さんは山崎勉演じる鈴木総理を支える内閣書記官長を演じたが「51になりますが、僕が常に一番年下の状態はなかなかない(笑)」と重厚なベテラン俳優陣との緊迫したシーンを楽しんだよう…と思いきや「こんな緊迫感ある現場、もう嫌です!戻しそうになるくらい緊張した」と苦笑交じりに振り返った。改めて原田監督は戦後70年となるいま、本作を送り出すことの意味について「時代がどんどん、キナ臭くなっている。特定秘密保護法など、表現者を圧迫する、当時と似ている姿勢が政治家によって生み出されている。いまこういう作品を送り出す意義を感じています。キーワードは阿南が言う『軍をなくして国を残す』。この精神を継承していかなくてはいけないと思っています」と力強く語った。なお、この日の会見の場で、本作に戸田恵梨香、松山ケンイチが特別出演という形で参加していることが発表された。『日本のいちばん長い日』は8月8日(土)より公開。(text:cinemacafe.net)■関連作品:日本のいちばん長い夏 2010年8月7日より新宿バルト9、丸の内TOEI2ほかにて公開(C) 2010 NHK アマゾンラテルナ
2015年05月20日メンズウェアブランド、アミ アレクサンドル マテュッシ(AMI ALEXANDRE MATTIUSSI)が、3月から4月にかけて国内に6店舗のポップアップショップをオープンする。アミ アレクサンドル マテュッシは13年にパリで「ANDAM Fashion Award」を受賞。シックでクールな既製服を中心としたリアルクローズを展開しており、15SSシーズンでは90年代のユースカルチャーをテーマとしたコレクションを発表している。今回はショーの会場となった学校のコートヤードをモチーフとした空間で、その雰囲気に溶け込むようなアイテムを展開する予定だ。3月1日から3月10日まで、阪急メンズ東京(東京都千代田区有楽町2-5-1)の4階「GRAGE D.EDIT」でのポップアップを皮切りに、都内では渋谷・原宿エリア、3店舗でオープン。「エディフィス トウキョウ(EDIFICE TOKYO)」(東京都渋谷区神宮前6-23-3/3月5日から3月15日まで)、「International Gallery BEAMS」(東京都渋谷区神宮前3-25-15/3月14日から3月31日まで)、「AMERICAN RAG CIE 渋谷店」(東京都渋谷区神南1-5-4/4月4日から4月12日)で開催する。続いて阪急メンズ大阪の2階「GRAGE D.EDIT」(大阪府大阪市北区角田町7-10)で4月8日から4月21日まで、「AMERICAN RAG CIE 神戸大丸店」(兵庫県神戸市中央区明石町40 旧居留地38番館3F)では3月20日から3月29日まで。
2015年03月01日世界中の映画祭で受賞の栄冠に輝いていながら、日本国内では未公開・未放送のままとなっている名作映画を毎週放送している映画番組「THE PRIZE~世界の映画祭から~」(BSスカパー!/BS 241ch)。このほど、これまでに放送された46作品の中から、視聴者がもう一度“観たい”と思う作品を選ぶアワード企画「THE GRAND PRIZE」を開催することが決定した。番組ナビゲーターに、映画監督の崔洋一を迎えて贈るこの「THE PRIZE」。昨今のミニシアター映画館の相次ぐ閉館を背景に、世界三大映画祭に数えられるカンヌ国際映画祭やヴェネチア国際映画祭の受賞作など、秀作でありながら日の目を見ることなく埋もれてしまった作品たちにスポットライトを当てる貴重な番組だ。今回の企画を受けて崔監督は、「いま、残念ながら日本は、観ることができる映画の幅が狭まってきています。アメリカやヨーロッパのみならず、私たちが訪れたことのない小さな国や交流が少ない諸外国の映画を観る機会が、圧倒的に失われてきたことは残念です。『THE PRIZE~世界の映画祭から~』は、我々が訪れたことのない外国のそれも世界各国の映画祭で評価された作品を観ることができる貴重な宝物のような番組です。愛あり、憎しみあり、父母やその前の人々が体験してきた大きな歴史のうねりの中の人の物語、様々な価値観が横たわる作品は、私たちの胸に響くことでしょう」とコメントを寄せている。今回、開催が決定した「THE GRAND PRIZE」では、2011年11月から2012年10月までに同番組内で放送された作品から、視聴者が最も“観たい”と思う作品を、特設サイト上にて投票形式で募集。その中には、ロシアが誇る巨匠アレクサンドル・ソクーロフや、アメリカの名監督ブライアン・デ・パルマら有名監督の作品も含まれているというから驚きだ。見事グランプリに輝いた作品は、2013年3月にBSスカパー!(BS 241ch)にて特別放送される予定だ。「THE GRAND PRIZE」は「スカパー!」特設サイトにて投票受付中!あなたの一票で放送作品が決定する「THE GRAND PRIZE」に、ぜひこの機会に参加してみて。「THE GRAND PRIZE」投票受付期間:2013年1月31日(木)までグランプリ作品発表:2013年2月予定グランプリ作品放送:2013年3月予定特設サイト:「THE PRIZE~世界の映画祭から~」放送日:毎週金曜夜10時~放送チャンネル:BSスカパー!(BS 241ch)視聴方法:2週間お試し体験のお申込みで、1年間無料でお楽しみいただけます。※スカパー!ご契約者様も無料でご覧いただけます。
2012年12月07日ロシアの巨匠アレクサンドル・ソクーロフ監督の最新作『ファウスト』が日本公開されている。これまで数々の作品で世界の映画ファンを唸らせてきたソクーロフ監督が新作の題材に選んだのは文豪ゲーテの不朽の名作だ。監督にインタビューを行い、新作について語ってもらった。その他の写真『ファウスト』は、ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテがその生涯をかけて書き上げた長編戯曲。悪魔メフィストに誘惑され、魂を差し出すかわりにこの世のあらゆる享楽を得るという契約を結んだファウスト博士の顛末を描いている。映画化に際し、舞台を19世紀のドイツに設定。ファウスト博士と、“悪魔” と噂される高利貸ミュラーの物語を綴っている。「ゲーテは文学者であるばかりか自然科学、化学、物理学、地理学などを含めた多彩で巨大な学者でした。ゲーテの作品を知るために私たちの知識は必ず不足するでしょう」と監督が語る通り、ゲーテはその著作が読み継がれている偉人だ。だからこそ、ソクーロフ監督は本作を“原作の移し替え”で映画化することは不可能だと考えたという。「ゲーテは自分の考えを言葉で表現するために非常に長期にわたり多くの時間をかけました。表現を的確にするためにどれほどの時間をかけ努力したでしょうか!それを映像創作にすべて受け取るというのは不可能です。映画制作は、ゲーテの偉業にくらべればまったくの短期間でなされますから」。そこでソクーロフ監督は「原作の移し替えではなく、その意味、考え方を基礎にした映像化」を行ったという。もちろん、『ファウスト』がもつ普遍性や魅力には最大限の敬意がはらわれている。「善と悪、生と死、愛と憎しみなどを含めたあらゆる問題が『ファウスト』という作品に反映されています。そこに提起された課題は未だに解決されていません。すべてが込められています」。観客はこの物語がもつ普遍性や壮大な物語に圧倒されるだろう。さらにスクリーンに広がる映像美にも驚嘆するはずだ。「前もって撮影監督ブリュノ・デルボネルとは主に叙事詩のリズムについて話し合いました。しかし映像美に係る上で私が大きな影響を受けたのはエル・グレコをはじめ19世紀の画家たちからです。映像技術には、絵画の水準に追いつけないという欠陥が未だにあります。ですから私が最も心がけたのは“光の絵”を作ることでした。照明と色彩の助けを借りて、生命、生活の雰囲気を伝えることでした」。文豪の傑作を、巨匠監督が映画化した『ファウスト』に“難解な映画”という印象を受ける人もいるかもしれない。しかし、本作は人間の変わらぬ欲望や悲しみを、映画でしか表現しえない手法で描き出し、これからも多くの映画ファンに愛され続けるであろう作品に仕上がっている。『ファウスト』公開中
2012年06月27日『永遠の僕たち』のミア・ワシコウスカが、19世紀フランスの文豪、ギュスターヴ・フローベールの「ボヴァリー夫人」の映画化でヒロインのエマ・ボヴァリーを演じることが決定した。「Variety」誌によると、メガホンを取るのは2009年のコメディ作『Cold Souls』(原題)のソフィ・バーセス監督。年上の夫との平凡な結婚生活に幻滅したヒロインが不倫と借金を重ねた挙げ句、自殺するまでを描く物語で、時代設定は原作通りだが、より若さと現代性を強調した内容になるという。「ボヴァリー夫人」はこれまで、ジャン・ルノワール(’33)、ヴィンセント・ミネリ(’49)、クロード・シャブロル(’91)、アレクサンドル・ソクーロフ(’89=’09)によって映画化されている。ミアはマイケル・ファスベンダー(『SHAME−シェイム−』)と共演するキャリー・ジョージ・フクナガ監督の『ジェーン・エア』(6月2日公開)にも主演しており、文芸映画のヒロイン役が続く。『Cold Souls』で主演を務めたポール・ジアマッティが、自ら功名を得るためにエマの夫で医師のシャルルに患者を斡旋する薬剤師のオメー役に決まったが、シャルル、エマの不倫相手となるロドルフ、レオンのキャストはまだ発表されていない。(text:Yuki Tominaga)■関連作品:ジェーン・エア 2012年6月2日TOHOシネマズ シャンテほか全国にて順次公開© RUBY FILMS (JANE EYRE) LTD./THE BRITISH BROADCASTING CORPORATION 2011.■関連記事:ジュード・ロウに新恋人。お相手は舞台で共演した9歳年下の女優
2012年04月04日園子温監督『ヒミズ』に主演した染谷将太と二階堂ふみが最優秀新人俳優賞「マルチェロ・マストロヤンニ賞」をダブル受賞し、日本人俳優初の快挙を伝えるニュースで湧いた第68回ヴェネチア国際映画祭。10日(現地時間)に発表されたコンペティション部門の受賞結果は以下の通りだ。最高賞にあたる金獅子賞はロシアのアレクサンドル・ソクーロフ監督の『ファウスト』。ゲーテの代表作とも呼ばれる「ファウスト」をソクーロフ監督独自の視点で脚色し、権力の腐敗に取り組み続けた監督の4部作の最終作。公式上映後から本命視されていたロマン・ポランスキー監督、ジョディ・フォスター主演の『Carnage』(原題)は無冠に終わった。対して『ファウスト』は上映後に賛否両論に分かれたが、審査員長のダーレン・アロノフスキー監督は「夢を見させる映画、泣ける映画、笑える映画もあれば、一度観たら人生が変わってしまう映画もある。これはそういう作品だ」と授賞理由を語った。銀獅子賞(優秀監督賞)は中国・香港の『人山人海』(原題)の蔡尚君監督。映画祭開幕後にサプライズ上映された同作は、中国国内の検閲を受けずに製作したという経緯があり、上映日までタイトルも含めて詳細はベールに包まれていた。優秀男優賞はイギリスのスティーヴ・マックイーン監督の『Shame』(原題)のマイケル・ファスべンダー、優秀女優賞は中国・香港のベテラン女性監督、アン・ホイの新作『Simple Life』(原題)で年老いた病身のメイドを演じたディニー・イップに輝いた。審査員特別賞はイタリアのエマヌエレ・クリアレーゼ監督の『Terraferma』(原題)。優秀技術賞(撮影)は「嵐が丘」をアンドレア・アーノルド監督が映画化した『Wuthering Heights』(原題)のロビン・ライアン、金のオゼッラ賞(優秀脚本賞)はギリシャの『Alpes』(原題)のヨルゴス・ランティモス&エフティミス・フィリップーが受賞した。また、先鋭的な作品がそろうオリゾンティ部門では最高賞のオリゾンティ賞を塚本晋也監督、Cocco初主演作の『KOTOKO』が受賞した。(text:Yuki Tominaga)写真は『ファウスト』で金獅子賞を受賞したアレクサンドル・ソクーロフ監督。© AP/AFLO■関連作品:ヒミズ 2012年春、シネクイントほか全国にて順次公開© 『ヒミズ』フィルムパートナーズ■関連記事:ヴェネチア新人賞の染谷将太、被災地での撮影で「頭の中が真っ白になった」園子温監督、震災後に『ヒミズ』シナリオ変更し被災地で撮影していたことを明かす窪塚洋介、鈴木杏が『ヒミズ』で園子温作品初出演!西島隆弘&吉高由里子も再びヴェネチア、モントリオールにトロント…世界の映画祭での邦画の奮闘に期待!『冷たい熱帯魚』の衝撃再び?『ヒミズ』に吹越満、でんでんら“園組”が勢揃い
2011年09月12日