贅沢な配合成分に注目!2016年3月25日、株式会社スキナスジャパンは「スキナスカラーエッセンスファンデーション」を発売した。このカラーファンデーションにはなんと、ヒト幹細胞培養液由来成分を配合している。ヒト幹細胞順化培養液エキスには肌に必要な成分とされているヒアルロン酸やグロスファクター、コラーゲンエラスチン、アミノ酸などがたっぷりと含まれている。また、ミネラルやアミノ酸が豊富なプラセンタエキス、高保水成分であるプラセンタエキス、ハリとツヤのある肌へと導くアテロコラーゲンも高配合。密着するのに軽い!このファンデーションのすごいところは配合成分だけではない。ぴたっと密着するのに、つけていることを忘れるほどの軽やかさには驚きだ。肌にのせた瞬間に毛穴やニキビ跡をカバーし、素早く馴染む。カバー力があるのに、仕上がりはツヤのある素肌のよう。しかも美容液成分がたっぷり配合されているため、肌に潤いを与えて乾燥から守ってくれる。化粧下地やコンシーラー効果も備えているため、これ1本で美しい肌を再現することが可能。「スキナスカラーエッセンスファンデーション」のカバー力や密着力、つけたときの軽やかさは実際に体験してみなければどれだけすごいのかはわからないだろう。今や美しいすっぴんはメイクで作る時代である。このファンデーションでとびきり美しいすっぴんを作ってみてはいかがだろうか。(画像はプレスリリースより)【参考】・株式会社スキナスジャパンプレスリリース(ValuePress!)
2016年03月29日産業技術総合研究所(産総研)は3月28日、ヒト胎児脳の神経細胞の発生に脱メチル化酵素「LSD1」が重要な役割を果たすことを発見したと発表した。同成果は、産総研 バイオメディカル研究部門 脳機能調節因子研究グループ 平野和己研究員、波平昌一研究グループ長らの研究グループによるもので、3月28日付けの米科学誌「STEM CELLS」オンライン版に掲載された。DNAは細胞の核内で、「ヒストン」と呼ばれるタンパク質に巻き付いて存在している。ヒストンタンパク質は、細胞外の環境変化に応じて特殊な酵素により化学的な修飾を受けると、DNAとの結合力が変化し、DNAからの情報の読み取りが調整され、細胞の分化や増殖が制御される。同研究グループは、今回この「エピジェネティクス制御機構」に着目。ヒト胎児由来の神経幹細胞を利用し、神経細胞への分化に関わるヒストンタンパク質修飾酵素の探索を行ったところ、LSD1の働きを妨げる薬剤(LSD1阻害剤)をヒト神経幹細胞に添加すると、神経細胞への分化が抑制されることを発見した。さらに、LSD1の働きを阻害すると、「HEYL」と呼ばれるタンパク質の発現が増加。また、胎児の脳内ではHEYLが神経幹細胞だけで発現していることや、その発現量が増加すると、神経細胞の産生が抑制されることがわかった。これらのことから、LSD1は、HEYLの発現を抑制することで、神経幹細胞から神経細胞への分化を促していることがわかる。なお、マウスの神経細胞を用いて同様の実験を行ったところ、ヒト神経幹細胞で見られたようなLSD1阻害剤による神経細胞への分化抑制作用やHEYL発現量の増加は見られなかったという。同研究グループは今後、神経幹細胞でのLSD1の機能をさらに調べることで、複雑に進化してきたヒトの脳の発達についての理解が深まるとともに、脳梗塞やパーキンソン病などの神経疾患治療のための、高効率な神経細胞供給の実現が期待されると説明している。
2016年03月28日国立遺伝学研究所(遺伝研)は3月25日、ヒト培養細胞で特定のタンパク質を素早く分解除去する方法を開発したと発表した。同成果は、同研究所 新分野創造センター 分子機能研究室 鐘巻将人准教授らの研究グループによるもので、3月24日付けの米科学誌「Cell Reports」オンライン版に掲載された。タンパク質の機能を理解するためには、特定のタンパク質が消失した際の影響を観察することが有効であり、従来は短鎖干渉RNA(siRNA)を利用しタンパク質の発現を抑制することが多かった。しかし同手法では、タンパク質の消失に数日の時間を要するという問題がある。また、近年開発されたCRISPR/Casを利用した遺伝子ノックアウト細胞も使われるようになってきたが、細胞の中には約10%ほどノックアウトできない「必須遺伝子」が存在するため、現在の技術では機能の解明が難しいタンパク質が数多くあるといえる。そこで同研究グループは2009年に、植物細胞が持つオーキシン依存的タンパク質分解の仕組みをヒト培養細胞に移して、任意のタンパク質をオーキシン添加時に消失させる「オーキシンデグロン(AID)法」を開発している。AID法は、目的とするタンパク質を1時間程度で消失できることに加え、可逆的にタンパク質の「ある」「なし」を制御できることが特徴だが、同方法を行うためには、標的タンパク質の情報を持つ遺伝子を人為的に改変し、目印となる"分解タグ"の情報を持つDNA配列を導入する必要があった。そこで今回、同研究グループは、ゲノム編集技術であるCRISPR/Cas法を応用して分解タグを簡便に導入する技術の開発に成功し、これらの技術を組み合わせることにより、任意のタンパク質の「ある」「なし」を自在に制御できる技術「AID変異細胞の作成法」を完成させた。またこのタグを導入する技術を利用して、蛍光タンパクタグなども任意の遺伝子に導入することが可能になった。これにより、マウスなどのモデル生物でしかできなかった精緻な遺伝学研究が、ヒト細胞でも行うことができるようになる。同研究グループは、同技術により今後、がん細胞を含めたヒト細胞におけるさまざまな仕組みが解明されることが期待できるとしており、またマウスES細胞への技術応用も進めているという。
2016年03月25日キュリオシティは24日、東京大学 竹内研究室の研究内容である「細胞組織の人工的構築」と、研究がもたらす未来像について楽しく学べるiOS向け無料ゲームアプリ「Cell Dolls」をリリースした。「Cell Dolls」は、ERATO竹内バイオ融合プロジェクトの成果を元に、東京大学竹内昌治教授とキュリオシティが共同開発したiOS向けゲームだ。「遠い宇宙のとある星」の体を持たない魂のみの存在である住民たちに、「細胞を点・線・面に加工する竹内研の技術」で細胞人形の体を与え、様々な問題を克服していく…というストーリー。「細胞組織をつくる」で住人の身体を作るところから物語は始まり、さらに「培養肉」や「サイボーグの開発」などのシーンも登場する。それぞれの研究に必要な細胞の種類や、考えられる問題について学んでいく。操作自体はタップで細胞を集めるというシンプルなものだ。キャラクターのコレクション機能や、オンラインで得点を競うランキングも用意されている。なお、同ゲームは、日本科学未来館にて開催された「サイエンスアゴラ2015 竹内研究室ブース」にて公開したインタラクティブゲームを、機能追加した上でアプリ化したものとなっている。
2016年03月24日理化学研究所(理研)は3月18日、マウスES細胞(胚性幹細胞)の老化回避機構を解明したと発表した。同成果は、理研 多細胞システム形成研究センター 多能性幹細胞研究チーム 丹羽仁史チームリーダー、二木陽子 研究員らの研究チームによるもので、3月17日付けの米科学誌「Stem Cell Reports」オンライン版に掲載された。一般に、細胞は分裂を繰り返すことで染色体DNAの末端にあるテロメアと呼ばれる部分が短くなり老化するが、ES細胞は老化することなく半永久的に培養できる。2010年に、マウスES細胞で「Zscan4」というタンパク質がテロメアを伸長し、遺伝子を保護することが発見されたが、Zscan4はすべてのES細胞にいつも発現しているわけではなく、どのようなときに発現するのかはわかっていなかった。同研究チームは今回、Zscan4の発現様式を経時的に解析するために、Zscan4が発現すると緑色に光るマウスES細胞を作り、顕微鏡下で120時間観察した。その結果、Zscan4は一部の細胞においてのみ発現していることを確認。また、赤色の核マーカー(H2B)を指標に細胞を1時間おきに追跡し、緑色の輝度を測定することでZscan4の発現を定量化した。このZscan4の発現様式を細胞の家系図となる細胞系統図に沿って記述することにより、これまで平均12時間でほぼ均一と思われていたES細胞の細胞周期が、実際には10~30時間と大きくばらついていたことがわかった。さらに、Zscan4の発現量を経時的に詳しく解析したところ、細胞周期が長いほどZscan4の発現量が多く、Zscan4の発現量が一旦増えた後は、次の細胞周期の長さが短くなる傾向にあることがわかった。また、培養系においてES細胞内に色素を注入し、その希釈率で細胞周期の長さを同定する手法を用いて、細胞周期の長さとテロメアの長さの関係を解析した結果、細胞周期が長い状態のES細胞は、テロメアが短くなっていることがわかった。一般にテロメアの著しい短縮やDNAの損傷が起こると、その修復機構が働いて細胞周期が一時的に停止し、細胞周期が長くなる傾向にあるが、今回の結果でも、テロメアが短いES細胞は細胞周期が長くなることが示され、またそのような状態においてはZscan4の発現量が増えることが新たにわかった。このことから、Zscan4はテロメアが短くなったことに応じて発現が誘導され、テロメアの長さを元に戻すことでES細胞の老化を回避していることが示されたといえる。同研究チームは今回の成果について、再生医療分野での応用が期待されるES細胞およびiPS細胞の培養にも応用できることが期待されると説明している。
2016年03月18日東京大学(東大)は3月18日、神経細胞のコンピュータシミュレーションと動物実験を組み合わせることで、睡眠・覚醒の制御にカルシウムイオンが重要な役割を果たしていることを明らかにしたと発表した。同成果は、東京大学大学院 医学系研究科 機能生物学専攻 薬理学講座 システムズ薬理学分野 上田泰己教授、東京大学 医学部6年生 多月文哉氏 、理化学研究所(理研) 生命システム研究センター 砂川玄志郎 研究員(研究当時、現:理研 多細胞システム形成研究センター 網膜再生医療研究開発プロジェクト研究員)、東京大学大学院 医学系研究科 博士課程3年生 史蕭逸氏、洲崎悦生 助教、理研 生命システム研究センター 幸長弘子 基礎科学特別研究員、ディミトリ・ペリン研究員(研究当時、現:理研 客員研究員)らの研究グループによるもので、3月17日付けの米科学誌「Neuron」オンライン版に掲載された。ヒトをはじめとする哺乳類の睡眠時間・覚醒時間は一定に保たれているといわれている。たとえば徹夜をすると、翌日に「眠気」を感じ、寝てしまったり活動度が落ちてしまったりする。この眠気の正体について上田教授は、「"睡眠物質"のようなものがあるだろうと考えられ研究されてきたが、それらしきものに関連する遺伝子を壊しても、睡眠にはあまり変化がないという結果が続いており、その実態については明確な答えがないままだった。ここに何とか切り込みたいと考えた」と説明している。同研究グループはまず、睡眠時に観察される特殊な脳波の形成に必要な遺伝子を特定するために、神経細胞のコンピュータモデルを作製した。数千個から数万個の神経細胞をモデル化してコンピュータで再現するという研究はこれまでにも行われてきたが、計算負荷が大きいという課題があった。この課題を解決するため今回、数万個の神経細胞を平均化したモデルを採用し解析。睡眠時の脳波の形成には、細胞内にカルシウムイオンを取り込む「電位依存性カルシウムチャネル」と「NMDA型グルタミン酸受容体」、カルシウムイオン濃度によって働きが変わる「カルシウム依存性カリウムチャネル」、およびカルシウムイオンを細胞外へ放出する「カルシウムポンプ」といったカルシウムイオンの流入に関わる4つの遺伝子群が重要であると予測することに成功した。この予測を実証するため同研究グループは、カルシウムイオン流入に関わるこれらの遺伝子をマウスのゲノム情報をもとにすべて同定し、1世代目で大量の遺伝子ノックアウトマウスを作製できる「トリプルCRISPR法」によりそれぞれのノックアウトマウス21種を作製。これらに対し、呼吸のパターンから睡眠を解析できるSSS(Snappy Sleep Stager)法を用いて睡眠の測定を行った。その結果、電位依存性カルシウムチャネルのCacna1g、Cacna1h遺伝子、およびカルシウム依存性カリウムチャネルのKcnn2、Kcnn3遺伝子ノックアウトマウスが顕著な睡眠時間の減少を示す一方で、カルシウムポンプのAtp2b3遺伝子ノックアウトマウスは顕著な睡眠時間の増加を示した。またNMDA型グルタミン酸受容体については、薬理学的に働きを阻害し解析を行い、同受容体の阻害でマウスの睡眠時間が減少することを確認した。さらに全脳イメージング技術「CUBIC」用いて、睡眠が減少したマウスの脳を透明化し高解像度で観察したところ、同受容体の阻害、すなわちカルシウムイオンの流入を阻害することによって、大脳皮質の神経細胞の興奮性が上昇することが示された。また、同研究グループは、睡眠と覚醒のスイッチのような働きをするものがあると考えていたが、カルシウム濃度に依存して活性化するリン酸化酵素「カルシウムイオン・カルモジュリン依存性プロテインキナーゼII」のCamk2a、Camk2b遺伝子ノックアウトマウスで睡眠時間の減少が見られたことから、同酵素が睡眠のスイッチのような役割のひとつを担っているのではと考察している。従来、カルシウムイオン濃度が細胞内で上昇すると神経細胞が興奮すると考えられていたというが、以上の結果から、カルシウムイオンが脳を眠らせているということが今回明らかになったといえる。上田教授は今回の成果について、「統合失調症や、うつ病、アルツハイマー病やパーキンソン病といった疾患では、睡眠に異常があるといわれている。眠りを通してこれらの神経変性疾患や精神疾患を診断したり治療したりできる可能性もある」とコメントしている。
2016年03月18日富士フイルムは3月17日、再生医療のための細胞培養に必要な同社開発の細胞外マトリックス「cellnest ヒトI型コラーゲン様リコンビナントペプチド(セルネスト)」を利用し、ラットの骨再生能力を大幅に高めることに成功したと発表した。同成果は、3月18日に大阪国際会議場で開催される「第15回日本再生医療学会総会」にて発表される予定。骨の欠損治療には、他の組織に浸食されないように骨欠損部に新たな骨が形成されるためのスペースを確保することと、骨形成を行う骨芽細胞を集積させ新たな骨の再生を促すことが必要となる。同治療には、骨補填剤が利用されるが、既存の骨補填剤ではこれら2つの課題を同時に解決することができなかった。セルネストは、遺伝子工学を用いて同社が開発した人工タンパク質で、細胞の表面に存在するインテグリンとの高い接着性を持つ。同社は今回、セルネストの凍結乾燥体を架橋することで、生体内での分解速度を最適化したものを作製。同セルネストを顆粒状にしたものと、既存の骨補填剤A、Bをそれぞれラットの頭蓋骨欠損部に移植して、4週間後の移植部位の骨の再生状況を比較した。この結果、骨補填剤Aでは骨は再生するものの周辺部と比べ骨が薄い、骨補填剤Bではスペースは確保できるが骨の再生が見られないといった問題があったが、架橋したセルネストを移植した場合、欠損部全体に良好な骨形成が見られ、周辺部と同等以上の厚みの骨が再生した。今回の成果について同社は、今後特に医療ニーズの高い歯槽骨の再生などへの活用が期待できると説明している。
2016年03月17日東京大学は3月16日、東京大学分子細胞生物学研究所の中村勉講師らの研究グループが、ヤコブセン症候群患者が発症する自閉症の原因は、脳の神経細胞の活動を抑えるGABA受容体の運搬に関与するたんぱく質「PX-RICS」だと特定したと発表した。今後、自閉症の新薬の開発につながる期待が持てるという。自閉症は発達障害の一つ。厚生労働省によると、発達障害にはアスペルガー症候群や注意欠如・多動性障害(ADHD)などもあり、自閉症は80~100人に1人の割合で発症すると言われている。「対人関係の障害」「コミュニケーションの障害」「限定的な興味や強いこだわり」などの症状を特徴とする。「社会認知機能」と呼ばれる他者の心情を推し量ったり、他者に共感したりする脳の機能の障害が自閉症の原因であると考えられているが、発症の詳しい仕組みはこれまでにわかっていなかった。研究グループは大脳皮質や海馬など、脳の認知機能に関連する領域の神経細胞に豊富に発現しているたんぱく質・PX-RICSを同定し、その遺伝子を欠損するマウスを作製した。そのマウスは外見的には正常だったが、他のマウスに対する興味が少ないことを確認。具体的には、「他のマウスに対する反応や超音波域の鳴き声を使った母子コミュニケーションが少ない」「反復行動が正常なマウスよりも多い」「習慣への強いこだわりを持つ」など、自閉症の症状に特徴的な行動異常を示していたという。さらに解析を進めたところ、PX-RICS遺伝子が「ヤコブセン症候群」(11番染色体長腕末端部の欠失に起因する先天異常疾患)患者の半数以上が発症する自閉症の原因となる遺伝子であると特定できたとのこと。中村講師はこの結果を受け、「今回、私たちはGABA受容体の輸送が自閉症の発症に関係することを明らかにしました。この輸送メカニズムを標的とした薬剤を開発するなど、今回の成果は自閉症の新たな治療戦略へ貢献できる可能性があります」とコメントしている。
2016年03月17日アークレイは3月9日、京都大学との共同研究によりヒトiPS細胞から膵島細胞の高効率作製に成功したと発表した。同成果は「第15回日本再生医療学会総会」の付設展示会で紹介される予定。血糖値を下げるインスリンは、膵臓内の膵島で産生・分泌される。膵島が障害を受けてインスリン分泌が枯渇すると、慢性的な高血糖となり、その状態が続くと腎不全や網膜症などの合併症を引き起こす可能性がある。障害を受けた膵島は再生できないため移植治療が必要となるが、ドナー不足により治療が思うように進んでいない現状がある。そのためヒトiPS細胞やヒトES細胞を用いて人工的に膵島を作製・利用する再生医療に期待が寄せられているが、移植治療に十分な量の膵島細胞を作製する方法や品質のバラツキが少ない作製方法の開発が課題となっている。こうした課題に対し、アークレイは2014年にヒトiPS細胞を1個から培養可能な流路型の超小型培養装置の開発に成功するなどしている。今回の研究では、新たにヒトiPS細胞の流路型培養システムを開発し、ヒトiPS細胞から膵島細胞を作製することに成功した。同システムは培養環境を物理的に制御することができ、同一構造を多数作成することで容易に培養規模を拡大することができる。現在、培地交換や温度管理、CO2濃度管理を全自動化した培養システムを開発中とのことで、大型化・自動化に加えて膵島以外の細胞腫への応用も検討していくとしている。
2016年03月09日順天堂大学(順天堂大)と慶應義塾大学(慶大)は2月19日、ヒト末梢血から作製したiPS細胞を効率的に神経幹細胞に誘導する技術を開発したと発表した。同成果は順天堂大医学部脳神経内科の服部信孝 教授、ゲノム・再生医療センターの赤松和土 特任教授と、慶大医学部生理学教室の岡野栄之 教授によるもの。2月18日(現地時間)の米国科学誌「Stem Cell Reports」オンライン版に掲載された。同研究グループはこれまで、パーキンソン病患者からiPS細胞を作製し病態メカニズムを再現することに成功しているが、皮膚を採取する必要があるため患者の負担が大きく、研究の大規模化を妨げていた。一方、より採取の負担が少ない血液からもiPS細胞を作ることはできるが、血液由来のiPS細胞は神経系に分化しにくいことが課題となっていた。今回の研究では培養中の酸素濃度を低くすることで未分化iPS細胞を強制的に神経系に分化する環境を作り出し、末梢血由来iPS細胞を効率よく神経系の細胞に分化させることができた。同手法を用いることで患者に負担の大きい皮膚生検をせずに、通常の血液検査程度の量の血液から樹立したiPS細胞でも、神経難病研究を効率よく進められるようになる。同研究グループは今後、この方法を用いて順天堂医院に通院する数千人のパーキンソン病の患者からパーキンソン病iPS細胞バンクを構築し、パーキンソン病の病態研究・再生医療を促進していくとしている。
2016年02月19日細胞を用いたアート作品が展示される「ELEGANT CELL -細胞とバイオマテリアルの小さな実験室」が、2月17日から23日まで東京大学駒場リサーチキャンパス内の東京大学生産技術研究所S棟1階のギャラリーで開催される。ビーズ状に加工した細胞を型に入れて固めたり、糸状に並べて編み物をしたりと、細胞を高度な機能部品として生きたまま配置して立体的に造形する研究を行う東京大学竹内研究室。これまで、東京大学山中研究室とともに細胞を用いた新しいものづくりを行ってきた。今回開催される展覧会では、細胞の彫刻や新しいデザインの実験器具などを展示する。ラインアップは、パナソニック ヘルスケアとインダストリアルデザイナーの山中俊治によるバイオメディカ機器(生物医療に関わる機器のこと)や、アーティストの鈴木康広が細胞や生体材料を用いて製作した「細胞を生ける器」など。また、2月17日の18時から19時30分まではアーティストの福原志保と山中が、19日の同時刻には女優の池澤あやかと東京大学教授の竹内昌治が、21日の14時から15時30分までは、鈴木と竹内と山中がトークセッションを行う。【イベント情報】「ELEGANT CELL -細胞とバイオマテリアルの小さな実験室」会場:東京大学生産技術研究所S棟1階ギャラリー住所:東京都目黒区駒場4-6-1 東京大学駒場リサーチキャンパス内会期:2月17日~23日時間:11:00~19:00会期中無休
2016年02月15日東京都・駒場の東京大学生産技術研究所は、東京大学駒場リサーチキャンパス内S棟1階ギャラリーにて、細胞を生きたまま配置し、立体をデザインする「ものづくり」の展覧会「Research Portrait02:Elegant Cell ー細胞とバイオマテリアルの小さな実験室」を開催する。会期は2月17日~2月23日。開場時間は11:00~19:00。入場無料。同展は、東京大学山中研究室と竹内研究室が共同で、細胞を用いた「ものづくり」への新しい挑戦を発表するもの。モーターやネジなどを組み合わせて作られるロボットなどとは異なり、生き物は受精卵から細胞分裂を繰り返し、徐々に成長してかたちづくられる。しかし、竹内研究室では、細胞を高度な機能部品として生きたまま配置し、ビーズ状に加工した細胞を型に入れて固めたり、糸状に並べて編み物をしたりと、立体を造形することを研究しているという。これらの研究は、将来的に人工臓器や実験動物の代替など、医療分野への応用が期待されているが、同展ではこの細胞を使った「ものづくり」に、これまで関わることの少なかったデザイナーたちが挑戦する。また、将来再生医療への応用が期待されるバイオエンジニアリング分野だが、細胞を点・線・面という規格に沿ったパーツに加工することで、三次元構造を作り出すことができるという。今回の展示では、その一つ一つの「点」として使用されるビーズ状に加工した細胞や、「線」として使用されるアルギン酸のファイバー、「面」として利用される「細胞折り紙」などが展示されるということだ。そのほか、同展では、パナソニック ヘルスケアと共同で制作している、山中俊治教授デザインのバイオメディカ機器「CO2 Incubator TypeY」と「Biological Safety Cabinet TypeY」が初公開される。なお、山中氏は、デザイナーとして腕時計から鉄道車両に至る幅広い工業製品をデザインする一方、技術者としてロボティクスや通信技術に関わる。大学では義足や感覚に訴えるロボットなど、人とものの新しい関係を研究している。さらに、アーティストの鈴木康広(東京大学先端科学技術研究センター中邑研究室客員研究員・武蔵野美術大学空間演出デザイン学科准教授)による細胞や生体材料を使用した作品「細胞を生ける器」も展示されるということだ。また、関連企画として、福原志保(アーティスト)・山中俊治(東京大学教授)によるトークセッション「バイオアートとバイオデザイン」が2月17日18:00~19:30、池澤あやか(女優)・竹内昌治(東京大学教授)によるトークセッション「池澤あやかの研究体験― 竹内教授のバイオの授業」が2月19日18:00~19:30、鈴木康広(アーティスト)・竹内昌治(東京大学教授)・山中俊治(東京大学教授)によるトークセッション「細胞のかたち」が2月21日14:00~15:30に開催される。詳細は同展Webサイトにて。
2016年02月15日ヒト幹細胞培養液を導入東京都渋谷区の高級エステティックサロン「シャンテリー」の最先端エイジングケア「ヒト幹細胞培養液導入コース」が人気だ。ソウル大学で研究がおこなわれた「ヒト幹細胞培養液」を導入するもので、日本では唯一。世界的にも注目されるエイジングケアだ。定価は43,200円(税込み)だが、現在キャンペーン中につき、10,800円(税込み)となっている。肌再生医療けがや病気で失った体の機能や組織を元通りにするためにうまれた再生医療。この再生医療を美容分野に応用したところ、飛躍的に効果が出ている。ヒト幹細胞培養液は、成長ホルモンがピークの脂肪細胞を培養したもので、失われた細胞を修復したり再生させたりする働きをもっているため、肌の再生を促進する。「ヒト幹細胞培養液導入コース」は、この培養液を導入することによって、シミやほうれい線が薄くなったり、傷跡が小さくなったりする効果が期待できるものだ。シャンテリー「シャンテリー」は、創業53年の完全個室形式の高級エステティックサロン。ヒト幹細胞を日本に初めて導入させた。現在までの施術は1,000人以上となっており、しわやシミ、たるみ、ニキビ跡や、傷跡などに対しての効果が出ている。(画像はプレスリリースより)【参考】・日本初!ヒト幹細胞培養液を導入したフェイシャルエステが人気急増中! 最先端アンチエイジングを提供する広尾のエステサロン『シャンテリー』
2016年02月13日東京大学は2月11日、骨髄を透明化することで造血幹細胞の局在を可視化することに成功したと発表した。同成果は同大学医科学研究所の山崎聡 助教、中内啓 光教授(スタンフォード大学兼任)と米スタンフォード大学のJames Y. Chen、宮西正憲研究員、Irving Weissman 教授らの共同研究チームによるもの。2月11日付けの「Nature」オンライン版に掲載された。造血幹細胞は生体内の全血液細胞を供給する組織幹細胞の1つで、骨髄移植という形で臨床応用されている。骨髄中で造血幹細胞がどこに存在するかは、造血幹細胞を生体外で増やす研究において重要だと考えられているが、場所を特定する方法はこれまで開発されていなかった。同研究グループは、Hoxb5という造血幹細胞で特異的に発現する遺伝子を同定。また、ゲノム編集技術によって赤く光る蛍光タンパク質を造血幹細胞特異的に発現させたマウスを作製、そのマウスの骨髄から細胞を分散し、蛍光強度に分けて放射線照射したマウスに移植を行った結果、強い蛍光を示す細胞のみが全ての血液細胞を長期間供給する造血幹細胞であることがわかった。同研究ではさらに、日本の研究チームが開発した透明化技術によって骨髄の透明化に成功し、シートレーザー顕微鏡3次元イメージング技術を用いて骨髄内の血管周囲に長期骨髄再構築を可能とする造血幹細胞が局在していることがわかった。今回の成果について研究グループは「造血幹細胞の動態理解が進み、骨髄移植などの造血幹細胞を用いる新規治療方法の開発を加速させたり、より安全で新しい血液疾患の治療法開発につながることが期待される。また、多能性幹細胞からの血液細胞の分化誘導に関する研究にも重要な知見になると考えられる。」とコメントしている。
2016年02月12日京都大学iPS細胞研究所(京大CiRA)は2月9日、ヒトのiPS細胞から免疫細胞の一種であるiNKT細胞を作製することに成功したと発表した。同成果は京大CiRAの喜多山秀一 研究員、同 金子新 准教授、愛知県がんセンター研究所のRong Zhang 研究員(当時、現・国立がん研究センター)、同 植村靖史 主任研究員(当時、現・国立がん研究センター)らの研究グループによるもので、2月9日(現地時間)に米国科学誌「Stem Cell Reports」オンライン版に公開された。iKNT細胞は免疫反応を誘導し、がんへの免疫反応を高める上で重要な役割を果たしている。がん患者の多くでは体内のiNKT細胞の数や機能が低下していることが知られており、体内のiNKT細胞の数を増やすことで免疫機能を高め、がん治療につなげられると考えられている。今回の研究では、iNKT細胞からiPS細胞を作製し、再びiNKT細胞(re-iNKT細胞)へ分化させることを目指した。その結果、元のiNKT細胞よりも元気で他の免疫細胞の機能を高めてがん細胞への攻撃を促すre-iNKT細胞を作製することに成功。さらに、re-iNKT細胞自身もがん細胞を直接攻撃することが観察された。これにより、iPS細胞への初期化を介して機能が改善した大量のre-iNKT細胞を作製できることが示されたほか、iNKT細胞はがんだけではなく感染症や自己免疫疾患など幅広い疾患に関連する免疫応答を制御していると考えられており、今後細胞治療への応用が期待される。
2016年02月10日横浜市立大学(横市大)は1月20日、細胞質のタンパク質合成を制限することにより細胞老化を抑制するメカニズムを発見したと発表した。同成果は、横浜市立大学大学院 生命ナノシステム科学研究科 博士後期課程3年 高氏裕貴氏、藤井道彦 准教授、鮎澤大 名誉教授らの研究グループによるもので、1月5日付けの英科学誌「Scientific Reports」に掲載された。動物細胞においては、種々の老化ストレスにさらされると肥大化・扁平化をともないつつ細胞増殖を停止し、最終的に分裂能力を失う「細胞老化」と呼ばれる現象がある。近年、細胞老化は生物個体の老化の原因のひとつであることが明らかになりつつあり、たとえば、老化したマウスには老化した細胞が多く存在するが、老化細胞を選択的に除去することで、マウスの老化が遅くなることが報告されている。今回、同研究グループは、細胞老化の共通の特徴であるDNA複製の遅滞と細胞の肥大化・扁平化に着目し、「細胞老化の不均衡増殖モデル」を細胞老化の普遍的モデルとして提唱した。細胞はさまざまな障害を受けるとDNA複製を停止させるが、同モデルでは、この状態が長く続くと、タンパク質の過度な蓄積が起こり、細胞膨張と核膨張が起こる。次いで核膜とヘテロクロマチン複合体の崩壊が起こり、分裂能力の喪失や老化特異的遺伝子の発現が誘導される。同研究グループは、ヒト正常およびがん細胞を用いた解析から、細胞質タンパク質合成の制限が細胞の種類に関係なく不均衡増殖を解消し、細胞老化を抑制することを見出した。この制限はヒト正常細胞の分裂寿命を顕著に延長しただけではなく、細胞老化により分裂を停止した細胞の増殖を再開させることができたという。さらに、タンパク質合成の制限が個体の老化に及ぼす影響を、モデル生物である線虫C.elegansを用いて調べたところ、タンパク質合成の制限は、線虫の平均寿命および最大寿命を延長させ、個体レベルでの老化防止にも有効である可能性が示された。今後の課題は、細胞質タンパク質合成の制限により、ヒトなどの高等動物の老化防止を実現できるかどうかであり、そのためには細胞質タンパク質合成をターゲットとした老化抑制剤の探索や開発を進める必要があると同研究グループは説明している。
2016年01月21日国立がん研究センター(国がん)は1月20日、食道がんの前がん病変だと考えられているバレット食道での幹細胞の存在を明らかにしたと発表した。これまでがんの前がん病変において組織を維持する働きを持つ幹細胞の存在は明らかになっていなかった。同成果は国がん研究所分子細胞治療研究分野の山本雄介 主任研究員によるもので、1月19日に米科学誌「Nature Communications」に掲載された。バレット食道とは、食道と胃上部の接合部に発生する粘膜組織の変化で、主に逆流性食道炎などによる炎症が原因で発生する。これまで統計的な解析や病理学的な知見により、バレット食道が食道がんへ進行していくことは知られていたが、実際の細胞がどのように遺伝子異常を蓄積し、悪性度の高い細胞へ進展していくかはわかっていなかった。今回の研究では、さまざまな進行状態の12症例のバレット食道から内視鏡で生検組織を採取し、新しく開発した培養手法を用いて、幹細胞を単離・培養することに成功。培養したバレット食道由来の幹細胞と正常食道由来の幹細胞にがん遺伝子を導入し、強制的にがん化させたところ、バレット食道由来の幹細胞は食道腺がん様の腫瘍を形成したのに対し、正常食道由来の幹細胞は食道扁平上皮がんに類似した腫瘍を形成した。これにより、バレット食道は食道腺がんの前がん病変であることが確認され、前がん病変においても幹細胞が存在し、病変を維持している可能性が示された。また、ゲノム変異解析を行った結果、より進行したバレット食道においてより多くの変異が認められた一方で、25%の症例においてゲノム変異が認められなかったことから、バレット食道の発症に遺伝子変異は必須ではなく、その後進展していく過程でゲノム変異が蓄積し、より悪性度の高い腫瘍へとなっていくと考えられるという。今回の成果をベースに、さらに前がん病変の性状明らかにすることで、前がん病変の早期検出による早期診断や、前がん病変の幹細胞の除去など新たな治療の開発につながることが期待される。
2016年01月20日国立医薬品食品衛生研究所(NIHS)はこのほど、日本医療研究開発機構(AMED)および先端医療振興財団との共同研究により、再生医療用の移植細胞の製造中に混入または発生するがん化のリスクを持つ悪性形質転換細胞(がん細胞)を超高度に検出する「デジタル軟寒天コロニー形成試験法」を開発したと発表した。同成果は同研究所再生・細胞医療製品部の佐藤陽治 部長とAMEDリサーチ・レジデントの草川森士 博士を中心としたグループによるもので、2015年12月8日に英国科学誌「Scientific Reports」に掲載された。再生医療に用いられる移植細胞の製造工程管理では、がん細胞が混入してしまった場合にそれを高感度で検知し、移植細胞の品質を確保する必要がある。がん細胞の特性である足場非依存性増殖を利用する従来の「軟寒天コロニー形成試験」は、正常細胞への混入を比較的短期間かつ簡便に評価することができるが、従来のアッセイ法におる検出感度は低く、正常細胞中に微量に混入したがん細胞から形成されるコロニーを検出することは困難だった。これに対し、同研究では画像解析によるコロニー検出に挑戦し、細胞の核、ミトコンドリアをそれぞれ青、赤に染める生細胞染色試薬を用いてコロニーを染色し、コロニーの形状、大きさ、蛍光輝度などを指標とすることで1個のコロニーを高精度に認識することが可能となった。また、画像解析のハイスループット化にも成功した。さらに、同技術を応用して、細胞試料をマルチウェルプレートに分割、播種して軟寒天培養を行い、各ウェル内での細胞コロニー形成を解析し、足場非依存的に増殖するがん細胞の混入を評価する「デジタル軟寒天コロニー形成試験」を考案。同試験法は大量の細胞からなる試料であっても、複数に分割したウェル毎にコロニー形成の有無を解析するため、高シグナル/ノイズ比が確保され、試料中に微量に存在するがん細胞を高感度に検出することが可能となる。同試験法を同グループが評価したところ、HeLa細胞相当のがん細胞が混入する細胞試料であれば0.00001%の感度で検出可能であることが示唆されたという。また、細胞試料を分画、播種するウェル数および培養細胞数を調節することで、検出感度を適宜向上させることが可能であることに加え、細胞数にかかわらず、高検出感度を保持する同試験法の適用が可能だと考えられている。同研究グループは今後、再生医療用の移植細胞の製造工程における品質評価のための標準的な試験系にすることを目指し、試験系の自動化などもふまえ、試験方法の最適化に向けた研究を進めていくとしている。
2016年01月18日慶應義塾大学(慶大)は1月18日、ヒトiPS細胞から効率的にオリゴデンドロサイト前駆細胞へと分化誘導する方法を開発し、マウス損傷脊髄の再髄鞘化に成功したと発表した。同成果は同大医学部生理学教室(岡野栄之 教授)と同整形外科学教室(中村雅也 教授)によるもので、2015年12月24日に米科学誌「Stem Cell Reports」オンライン版に掲載された。オリゴデンドロサイトは中枢神経内に存在する細胞の1つで、細い神経の周囲を取り囲む髄鞘と呼ばれる脂質の層を形成し、神経の信号が伝わる速度を早める機能を持つ。脊髄損傷に対する神経幹細胞移植による機能回復メカニズムとして、移植細胞がオリゴデンドロサイトに分化して神経の再髄鞘化に寄与するという説が唱えられているが、ヒトiPS細胞由来神経幹細胞は主にニューロンに分化し、オリゴデンドロサイトにはあまり分化には分化しなかった。今回の研究では、同研究グループが2014年に開発したヒトiPS細胞から効率的にオリゴデンドロサイト前駆細胞を多く含む神経幹細胞(hiPS-OPC-enriched NS/PCs)へと分化誘導する方法を用いて、マウス脊髄損傷に対しhiPS-OPC-enriched NS/PCsを移植し、その有効性を検証した。その結果、hiPS-OPC-enriched NS/PCsが多くの神経栄養因子を分泌していることを確認。移植後12週のマウス脊髄内で、移植細胞はニューロン、アストロサイトに加え、成熟オリゴデンドロサイトに分化していた。さらに従来のヒトiPS細胞由来神経幹細胞の移植では見られなかった所見として、移植細胞由来オリゴデンドロサイトが残存軸索を再髄鞘化していた。また、移植細胞由来ニューロンは、ホストマウスのニューロンとシナプスを形成していた。その後、hiPS-OPC-enriched NS/PCsを移植したマウスの後肢運動機能評価を行った結果、明らかな運動機能の改善が認められた。また、電気生理学的評価として、運動誘発電位を計測したところ、明らかな改善が認められたことから、移植細胞由来のニューロンやオリゴデンドロサイトが、神経回路の再構築や神経伝達速度の回復に寄与していることが示唆された。脊髄損傷に対しては、従来の細胞移植でも有意な運動機能の回復が認められていたが、今回の成果によってさらなる機能回復を望める可能性が示されたことになる。
2016年01月18日理化学研究所(理研)と熊本大学は1月18日、エイズ(後天性免疫不全症候群)の原因ウイルスである「HIV-1」が細胞から細胞へと感染拡大する際の新たなメカニズムを解明したと発表した。同成果は、理化学研究所 統合生命医科学研究センター 粘膜システム研究グループの大野博司 グループディレクター、環境資源科学研究センター ケミカルバイオロジー研究グループの長田裕之 グループディレクターと熊本大学 エイズ学研究センター・国際先端医学研究拠点施設(鈴プロジェクト研究室)の鈴伸也 教授らの研究グループによるもので、1月15日付けの米科学誌「Journal of Immunology」に掲載された。免疫系細胞は、細胞膜が細長く伸びた細胞膜ナノチューブ(TNT:Tunneling NanoTube)を作り、離れた2つの細胞を物理的に連結して、細胞間で物質交換を素早く確実にやりとりする機能を持っているが、この性質を逆手に取り、エイズウイルスなどのウイルスやウイルスの病原タンパク質が細胞から細胞へと移動することで、感染を拡大させたり、免疫機能を抑制して病態を悪化させたりすることが知られている。HIV-1は、CD4という表面分子を持つTリンパ球(CD4+Tリンパ球)とマクロファージという2種類の免疫細胞に感染し、これらの免疫細胞の中で増殖。未感染のCD4+T細胞やマクロファージへと感染することで、免疫細胞の機能不全や減少を引き起こす。このようにHIV-1が感染拡大していく経路には、一度HIV-1が感染細胞の外に出て周囲の未感染細胞に感染する経路のほかに、TNTを介してHIV-1が感染細胞から未感染細胞に移る経路が知られていたが、そのメカニズムは明らかにされていなかった。今回の研究では、ヒト血液由来のマクロファージにHIV-1を感染させ、TNTの形成促進を観察した。この結果、ウイルスタンパク質であるNefを欠損した変異HIV-1を感染させるとTNTの形成促進は観察されなかった。一方、HIV-1をCD4+Tリンパ球に感染させても、このHIV-1によるTNTの形成促進は見られなかった。そこで同研究グループは、マクロファージには発現しているが、CD4+Tリンパ球には発現していないTNT形成因子「M-Sec」に着目。マクロファージ細胞株にNefを強制的に発現させるとTNTの形成促進が見られたが、M-Secの発現を抑制したマクロファージ細胞株では、Nefを強制的に発現させてもTNTの形成促進が見られなかったことから、NefによるTNTの形成にはM-Secが必要であることを明らかにした。同研究グループはさらに、理研の化合物バンクを用いて、6800の化合物の中から、M-SecによるTNT形成の抑制活性を指標として、TNT形成を可逆的に阻害する「NPD3064」という化合物を見いだした。この化合物を用いたTNT形成の抑制により、HIV-1の産生は約2分の1に減少したという。このメカニズムが解明されると、HIV-1の感染やそれによる病態形成の詳細がわかり、エイズの治療や発症予防に貢献すると考えられる。さらにTNTの形成阻害薬が、これまでの抗エイズ薬と異なる作用メカニズムにもとづく、新たなエイズの治療薬の開発につながる可能性があると同研究グループは説明している。
2016年01月18日名古屋大学(名大)と理化学研究所(理研)は1月15日、ヒトES細胞から下垂体ホルモン産生細胞を分化誘導することに成功したと発表した。同成果は同大大学院医学系研究科糖尿病・内分泌内科の須賀英隆 助教および、理研多細胞システム形成研究センター器官誘導研究チームの辻孝 チームリーダー、大曽根親文 リサーチアソシエイト、同センター立体組織形成研究チームの永樂元次 チームリーダーらの研究グループによるもの。1月14日(米国東部時間)の英科学誌「Nature Communicaitons」に掲載された。下垂体はさまざまなホルモンを分泌する器官で、成人で1cm程度と小さいが、全身の恒常性を保つために大きな役割を果たしていることで知られる。下垂体が機能しなくなると血圧低下や電解質異常、基礎代謝の低下、不妊など、欠乏したホルモンに応じて重い症状が発生する。同研究グループは2011年にマウスのES細胞から下垂体組織を作ることに成功しており、今回の研究ではその時に用いられた培養技術を改良・発展させることでヒトES細胞から、下垂体のもととなる下垂体原基を試験管内で作ることに成功した。さらに、数週間に渡る長期培養方法を開発し、成熟した下垂体ホルモン産生細胞を誘導することができた。作製したホルモン産生細胞は、生体内の下垂体細胞と同様にホルモンを分泌し、下垂体の機能を失ったマウスに移植すると生存率が著しく向上するなど、治療効果も確認された。同成果は今後、下垂体機能不全に対する再生医療への応用が期待されるとともに、ヒトの下垂体発生のモデルとしての利用や、疾患特異的iPS細胞を用いた下垂体疾患モデルとしての応用も見込まれており、新規薬剤の開発にも役立つと考えられている。
2016年01月16日理化学研究所や科学技術振興機構は1月12日、がんや細胞内病原体に対する免疫に重要な「樹状細胞」の働きを、生体内で可視化するイメージング解析技術の開発に成功したと発表した。今回開発された技術を用いて、感染症やがんの種類に応じ、最適な樹状細胞を効率的に活性化するワクチンの設計・開発に役立つ可能性があるという。同研究は、理化学研究所 統合生命医科学研究センター 組織動態研究チームの岡田峰陽チームリーダーや和歌山県立医科大学 医学部 先端医学研究所 生体調節機構研究部の改正恒康教授らが共同で実施した。体内に侵入した病原体や接種されたワクチンは、免疫細胞の一種である樹状細胞によって認識される。その樹状細胞がリンパ球の一種である「T細胞」を活性化すると体を守る獲得免疫が働くが、樹状細胞には多くの種類があり、病原体やワクチンの種類に応じて異なった役割を果たす。ウイルスやある種の細菌は、体内のさまざまな細胞の中に寄生するが、このような細胞内病原体やがんに対する免疫には、「キラーT細胞」による攻撃が重要となる。がん細胞やウイルスに感染した細胞を攻撃するキラーT細胞は、そのほとんどが「CD8陽性T細胞」と呼ばれる細胞が、樹状細胞に活性化されることで形成される。「CD8陽性T細胞」を活性化する能力の高い樹状細胞は2種類ある。1つはリンパ節やパイエル板、ひ臓などのリンパ組織に常在しており、もう1つは皮膚や腸、肺などさまざまな組織に存在し、そこからリンパ組織へと移動していく。それぞれの役割やその連携は、病原体やワクチンの種類や感染部位、接種方法などによって異なると考えられているものの、その詳細はわかっていなかった。研究グループは今回、2種類の樹状細胞だけが特定の波長の光を当てることで蛍光色が変化する光変換蛍光タンパク質KikGRを発現するマウスを作成。このマウスの体内に存在する2種類の樹状細胞は、もともとすべて緑色の蛍光を発する。このマウスの皮膚に青紫色の光を照射すると、皮膚にいる交差提示(一部の樹状細胞が細胞外の異物を取り込んで、その抗原を主要組織適合性複合体クラスI上に提示できること)能を持つ樹状細胞だけが、赤色の蛍光を発するようになったという。そして、赤色蛍光を発するようになった皮膚の樹状細胞が、時間とともにリンパ節へと移動してくる様子が観察できたとのこと。この成果により、これらの樹状細胞がリンパ節に移動してきた後の動きなどが判明。マウスにおいては、約3日間のうちにリンパ節内の一番深い部分まで移動する点、リンパ節内で約1週間生存する点などが明らかになったという。理研などは、キラーT細胞の分化に重要な2種類の樹状細胞を、生体内で区別することおよびイメージング解析をする技術の確立に成功したことは、今回が初としている。今回開発された技術を用い、さまざまな種類のワクチンや感染に対する免疫応答を解析することで、効果の強いワクチンが、どの種類の樹状細胞とCD8陽性T細胞の相互作用を最も強く誘導しているかを知ることが可能となる。理研などは「得られた知見を蓄積することにより、感染症の種類に応じて、最適の種類の樹状細胞をターゲットとする新しいワクチン設計・開発の道が開かれることが期待されます。こうした戦略は、感染症に対するワクチンだけでなく、さまざまな腫瘍に対するがん免疫応答を誘導するワクチンの設計・開発にも応用できると考えられます」としている。
2016年01月13日京都大学(京大)は1月6日、ヒト体細胞からiPS細胞へ再プログラム化される中間段階にあたる幹細胞株、ヒトiRS(intermediately Reprogrammed Stem)細胞を新たに樹立したと発表した。同成果は同大学 再生医科学研究所の多田高 准教授の研究グループによるもので、英科学誌「Development」の電子版で公開された。同研究グループが樹立に成功したヒトiRS細胞は、ヒト体細胞とiRS細胞の再プログラム化の中間段階にあり、培養条件を変えることでiPS細胞への再プログラム化を再開するほか、単一細胞からの増殖が可能で、ゲノム編集などの遺伝子操作技術の応用が容易であるなどの特性を持つ。研究ではさらに、ゲノム編集により、iPS細胞のマーカー遺伝子として知られるOCT4遺伝子の下流に蛍光照射によりグリーンに光るタンパク質を挿入することで、ヒトiRS細胞(OCT4発現オフ)がiPS細胞(OCT4発現オン)に変化する様子を生きた細胞で可視化する事に成功。また、OCT4の活性化はiPS細胞化に必要であるが十分ではない事も明らかにした。今回の研究成果によって、ゲノム編集を含む遺伝子改変されたiPS細胞の作製が簡易になり、遺伝性疾患の病因解明や創薬開発、iPS細胞の品質の安定化につながることが期待される。
2016年01月06日京都大学(京大)は12月25日、ヒトiPS細胞から気道上皮細胞を効率よく分化させる方法を確立したと発表した。同成果は、京都大学 医学研究科 三嶋理晃 教授、京都大学 医学部附属病院 呼吸器内科 後藤慎平 特定助教、大学院生 小西聡史氏らと、大阪大学生命機能研究科/医学系研究科 月田早智子 教授らの研究グループによるもので、12月24日付けの米科学誌「Stem Cell Reports」オンライン版に掲載された。肺の気管を覆う気道上皮細胞は粘液を分泌し繊毛の運動によって流れを作り出すことによって、異物や病原体を除去するのに重要な役割を果たしている。今回の研究では、ヒトiPS細胞を段階的に分化させ、表面蛋白質「Carboxypeptidase M(CPM)」を用いて肺のもととなる細胞を単離し、サイトカインや化合物などを加えながらさまざまな条件で三次元培養を試みた。この結果、繊毛上皮細胞、クラブ細胞、基底細胞、粘液産生細胞、神経内分泌細胞といったさまざまな気道上皮細胞の成分を含む嚢胞構造を作る方法が開発された。また、さまざまな発生のプロセスで分化に重要とされるNotchシグナルを抑制すると、気道繊毛上皮細胞や神経内分泌細胞が効率よく誘導されることがわかった。ヒトiPS細胞から作られた気道繊毛上皮細胞は、体の中と同じように規則正しく振動し粘液を動かす機能を持つことも確認されている。今回の成果により、COPD、気管支喘息、気管支拡張症、嚢胞性線維症、原発性繊毛機能不全症などといった呼吸器疾患の解明や創薬の研究が大きく前進することが期待されると同研究グループは説明している。
2015年12月25日理化学研究所(理研)は12月18日、呼吸器学者の間で40年近く謎とされていた、神経内分泌細胞(NE細胞)が気管支の分岐点に規則正しく配置され、塊を形成するメカニズムを解明したと発表した。同成果は、同研究所 多細胞システム形成研究センター呼吸器形成研究チーム 森本充 チームリーダー、野口雅史 研究員、同研究所 生命システム研究センター 細胞デザインコア 合成生物学研究グループ 高速ゲノム変異マウス作製支援ユニット 隅山健太 ユニットリーダーらの研究グループによるもので、12月17日付けの米科学誌「Cell Reports」オンライン版に掲載された。NE細胞は気管支の上皮細胞の一種で、気管から細気管支までの上皮組織に広く観察される。NE細胞は吸気の酸素濃度のセンサーであるとともに、組織の損傷時には組織修復に働く幹細胞のための幹細胞ニッチになることが知られている。また、気管支の分岐点に数個集まって小型のクラスター(塊)を形成する。この特徴的なNE細胞の分布パターンは40年近く前に報告されて以来、吸気の酸素濃度の感知に役立っていると考えられてきたが、NE細胞が気管支の分岐点に規則正しく配置されクラスターを形成するメカニズムは謎となっていた。また、NE細胞は肺がんの1種である小細胞肺がんの起源になることが知られており、同細胞種の制御メカニズムの解明が求められている。同研究グループはまず、肺の上皮細胞およびNE細胞が蛍光で光るマウス系統を作製。このマウス系統の胎児から光る肺を採取し、組織透明化試薬で透明化した後、共焦点顕微鏡と2光子励起顕微鏡で高解像度かつ広範に撮影した。この結果、気管支の立体構造を保ったまま、ひとつの肺葉のすべての上皮細胞とそのなかに存在するNE細胞の分布の観察に成功した。さらに、取得した3次元画像を用いてNE細胞の正確な位置とクラスターの大きさを定量的に解析し、気管支の分岐構造とNE細胞クラスターとの関係を幾何学的に理解することに成功した。画像解析の結果、NE細胞クラスターは気管支の分岐構造においてほぼ同じ位置に形成されること、および発生中に少しずつ大きくなることがわかった。また、より高解像度の画像を取得したところ、分岐点と関係なく単独で出現する「単独NE細胞」を多数発見したという。単独NE細胞は、Notch-Hes1シグナルによって出現数が制限されていることも明らかになった。さらに同研究グループは、NE細胞の分化とクラスター化をリアルタイムで撮影する技術を開発し、NE細胞の挙動の経時観察に成功。その結果、NE細胞は分化するときは単独NE細胞として出現し、その後、自ら歩いて分岐点に向かって移動し、クラスターを形成することがわかった。同細胞を起源とする小細胞肺がん細胞は転移能が高いことが知られているため、今後はNE細胞の移動を制御している因子の同定が課題となる。
2015年12月18日東京大学は12月10日、老齢ネコの脳にヒトのアルツハイマー病と同一の病変が形成され、神経細胞が減少することを明らかにしたと発表した。同成果は同大大学院農学生命科学研究科のチェンバーズ ジェームズ助教、内田和幸 准教授、中山裕之 教授、京都府立医科大学の徳田隆彦 教授、同大大学院医学研究科の石井亮太郎 助教、建部陽嗣 特任助教、麻布大学獣医学部の高橋映里佳氏、宇根有美 教授、大阪市立大学大学院医学研究科の富山貴美 准教授らの研究グループによるもの。「Acta Neuropathologica Communications」に掲載された。アルツハイマー病では、βアミロイドと高リン酸化タウと呼ばれるタンパク質が蓄積し、海馬の神経細胞が脱落することによって認知症を発症する。βアミロイドの沈着はヒト以外の哺乳類に脳でもみられるが、同研究グループがこれまでの研究でチーターとヤマネコの脳で発見した以外では高リン酸化タウの蓄積と海馬の神経細胞脱落は動物では見つかっていなかった。今回の研究では、ペットとして飼育されていたネコを死亡後に解剖して脳を詳しく調べたところ、8歳頃から脳にβアミロイドが沈着し、14歳頃から高リン酸化タウが蓄積することが判明。高リン酸化タウが蓄積した神経細胞では、神経原線維変化と呼ばれるアルツハイマー病に特有の病変が確認された。また、神経原線維変化を構成するタウ蛋白質のアイソフォームがヒトのアルツハイマー病と同じであり、神経原線維変化が形成されたネコでは、海馬の神経細胞が減少していることがわかった。これらの結果から、老齢のネコではβアミロイドと過剰リン酸化タウが脳に蓄積し、海馬の神経細胞が脱落することが明らかとなった。さらに、ネコの脳に蓄積したβアミロイドは他の動物種と比べて凝集性が弱く、海馬の神経細胞内にβアミロイド-オリゴマーと呼ばれる毒性が高いβアミロイドが蓄積していることが判明した。βアミロイドのアミノ酸配列を動物種間で比較したところ、ネコはほかの動物と異なる配列を有していることがわかった。神経原線維変化が発生するヤマネコやチーターなどのほかのネコ科動物も、このネコ型βアミロイドを共通して保有しており、ヒトのアルツハイマー病患者の脳においてもβアミロイド-オリゴマーが検出されていることから、この結果は神経原線維変化の形成においてβアミロイド-オリゴマーが重要であることを示していると考えられている。同研究グループは今後、ネコの脳を研究することで、βアミロイドとタウタンパク質の関係が明らかにされ、アルツハイマー病の病態解明と治療法開発につながることが期待されるとしている。
2015年12月10日再生医療分野でも注目の成分2015年12月4日、オビアス株式会社はヒト幹細胞培養液を配合した「obias(以下、オビアス)」シリーズの販売を開始したと発表。このシリーズは化粧水、美容液、クリームの3商品が展開されるのであるが、まずはクリームが先駆けて発売されることになった。これまでのスキンケアは不足している水分や栄養素を補給するものであり、根本を解決するものではなかった。例えるなら、風邪をひいたときにビタミンCを摂取するのと同じだ。ビタミンCは体内の免疫力アップを助けるのであるが、風邪菌を直接攻撃するわけではない。近年、神秘のベールに包まれていた遺伝子が解明されるとともに老化のメカニズムも解明されてきた。同社が注目している成分は「ヒト幹細胞培養液」。再生医療分野でも注目を集めている幹細胞が分泌するタンパク質成分だ。科学的根拠に基づいたスキンケア今回発売された「クリーム コンセントレーション」。幹細胞サイエンスの全てが詰め込まれたと言っても過言ではない高濃度クリームだ。幹細胞培養液をナノカプセルに閉じ込め角層まで届けることで、肌の内側から輝きがあふれ出す。また、乾燥の季節の強い味方となる成分が「ビタ-HA」。肌専用に開発された浸透型ビタミンC誘導体であり、肌の表面に薄いヒアルロン酸の膜を作ることで乾燥から肌を守ってくれる。(画像はプレスリリースより)【参考】・オビアス株式会社プレスリリース(PR TIMES)
2015年12月08日東京大学は12月2日、細胞の酸素代謝を、細胞を傷つけずに計測できる柔らかい光学式シート型センサを開発したと発表した。同成果は同大大学院工学系研究科の一木隆範 准教授らとニコンの共同研究グループによるもので、12月1日に米科学誌「PLOS ONE」に掲載された。iPS細胞などの細胞技術を産業化するには、研究に使う細胞を同じ品質で供給する方法や、細胞の状態を傷つけない「非侵襲・非破壊」で評価する技術が必要となる。細胞の品質を評価する指標の1つとして、細胞の呼吸による酸素消費量があるが、現在市販されている酸素センサでは、培養液中の酸素濃度を計ることはできても、個々の細胞の酸素消費量を計測することはできない。また、従来の方法では、細胞1つあたりの代謝活性を測定するには、細胞を培養シャーレから剥がして専用の装置の中に細胞を移す必要があり、細胞を傷つけてしまうという課題があった。同研究グループが開発したシート型センサは柔らかな透明ポリマーシートの表面に、マイクロチャンバーと呼ばれる直径90μmの小さなへこみが多数形成されており、その中に酸素濃度によって発光応答が変わるリン光発光性金属錯体のセンサを備えている。研究では、同シートを培養細胞や生体組織に載せ、自動光学計測システムと組み合わせて使うことで1分間に100カ所の自動計測を行い、がん細胞や脳組織中の神経細胞の酸素代謝を計測することに成功した。同センサは個々の細胞や細胞コロニー単位で代謝活性を計れるため、薬効の評価や治療に使用する細胞の品質管理に役立つと考えられているほか、これまで不可能だった生体組織の細かい部位ごとに挙動の変化を調べることができるため、医薬品の開発における新しいスクリーニングに道を拓く可能性があると考えられている。
2015年12月03日日立ハイテクノロジーズ(日立ハイテク)とカワダロボティクスは12月1日、カワダロボティクスのヒト型ロボット「NEXTAGE」事業での協業を開始したと発表した。NEXTAGEは人の目に相当する2つのカメラと、2本の腕を有するロボットで、自動車や電機業界、医薬品業界などで活用されている。同ロボットの事業はこれまでカワダロボティクスが本体を開発・製造し、THKインテックスがロボットハンドなどのエンジニアリングと販売を行ってきた。また、日立ハイテクは2015年にTHKインテックスと販売店契約を締結し、国内大手顧客への販売強化およびグローバル市場での販売に取り組んできた。今回の協業契約締結について日立ハイテクとカワダロボティクスは、マーケティング情報の共有によるロボット開発の促進、システムインテグレーターの拡充・育成によるエンジニアリング力の強化を推進するなど、これまでの3社間の連携をさらに強化することで、国内外でのさらなるマーケティング・販売活動強化に注力していくとしている。
2015年12月01日京都大学iPS細胞研究所(CiRA)は11月24日、細胞シートを簡便に多数積層化する手法を確立したと発表した。同成果は同大医学部附属病院心臓血管外科(当時)の松尾武彦氏(現同大学医学研究科 客員研究員、神戸市立医療センター中央市民病院医長)、CiRAの山下潤 教授、同大学医学部附属病院心臓血管外科(当時)の坂田隆造 元教授(現神戸市立医療センター中央市民病院院長)、同大学再生医科学研究所の田畑泰彦 教授らの研究グループによるもの。11月20日に英科学誌「Scientific Reports」で公開された。研究では、マウスES細胞から作製した心筋・血管などを含む心臓組織シートをゼラチンハイドロゲル粒子を挿み込みながら15枚積層化し、厚さ約1mmにすることに成功。また、ラット心筋梗塞モデルに心臓組織シートを5枚積層化したものを移植したところ、移植後12週間にわたり血管形成を伴った厚い心臓組織として生着すると同時に梗塞部の心機能を回復させていることが認められたという。今回の研究で確立された手法はほかの臓器や組織にも応用可能で、3次元の高次組織形成を容易にするものとなる。今後は、ヒトiPS細胞からも同様の積層化シートを形成すること、ブタなどヒトに近い動物モデルを含め有効性や安全性を確認することなどを行っていく。また、同研究グループは将来的には積層化したヒト心臓組織シートを製品化し、重症心不全治療に広く用いることを目指すとしている。
2015年11月25日