トイレトレーニングをして日中はおむつが外れるようになっても、小さな子どもは「おねしょ」をしてしまうことがあります。成長とともになおるものですが、あまりにも長く続くと「小学校入学までになおるの?」と心配になるのではないでしょうか。昔は「親の育て方の問題」などといわれたものですが、これは誤っているのだとか。今回は、おねしょの原因について紹介します。■おねしょと夜尿症の違いまずは、おねしょと夜尿症の違いについて。どちらも寝ている間に尿をしてしまうことですが、年齢によって言い方が異なるようです。未就学児の場合は「おねしょ」、小学生以上は「夜尿症」というのだとか。おねしょをしなくなる年齢には個人差があり、年の近いきょうだいの場合は、上の子がおねしょをしていても、下の子はしないこともあります。「妹はおねしょを卒業したのに!」とママが感情的になると子どもがストレスを感じ、おねしょがなおらなくなることも。年齢にこだわりすぎず、その子に合わせたケアをしてあげましょう。ただし、「夜尿症」といわれる年齢になってもなおらないときには、原因をつきとめて改善へ導いてあげたほうが子どものためにもなります。■おねしょの原因が「ママ」にある場合もおねしょの原因は1つではなく、複数の要素から起きると考えられています。1.夜に抗利尿ホルモンの分泌が少ない尿は通常、昼に多く、夜は抗利尿ホルモンの分泌によって少なくなります。おねしょをしてしまう子は、このホルモンのリズムがまだ整っていないのかもしれません。2.膀胱の容量が小さく、尿をためることができない膀胱の成長の遅れがおねしょを引き起こすことも。年齢とともに成長しますが、おねしょを予防しようと昼間からこまめにトイレへ行くように促していると、膀胱が育たなくなることがあるようです。3.夜に水分や塩分を摂りすぎている寝る前にお茶などの利尿効果の高い飲みものをたくさん飲めば、おねしょをしやすくなるのは当然です。果物やゼリーなどの水分が多い食品にも要注意。また、塩分をとりすぎると体に水分を蓄積しやすくなるので、夕食の献立を見直しましょう。4.季節的な影響水分をたくさんとる夏や、汗をかきにくい冬にはおねしょをしやすくなります。また、体が冷えることでおねしょを誘発することもあるようです。5.ストレスの影響ストレスによって自律神経が乱れてしまうこともおねしょの原因に。いじめなどの悩みを抱えている可能性もあるので、心のケアもお忘れなく。6.膀胱や腎臓機能の異常尿に関する器官に問題がある場合も、おねしょをしやすくなります。小学校入学前になおらなければ、医師に相談してみましょう。食生活やトイレなどの習慣を見直すことで、改善できるケースは少なくないようです。とはいえ、きょうだいがいる場合は、おねしょをする子だけデザートにフルーツを与えないと不公平になります。その子に合わせた献立を考えてあげるといいかもしれませんね。■お泊り対策はどうすればいい?家族旅行のときには親がケアできますが、「お泊り保育」の場合は悩むところですよね。一時的に抑えるには、スプレー状の点鼻薬などもありますので、小児科医で相談してみましょう。ただし、子どもが薬を扱うには危険も伴います。家で練習することもできますが、保育士などにお任せするのが安心です。このとき、ほかの子はもちろん、ママたちにも聞かれないように相談したほうがいいでしょう。周囲の子がおねしょを卒業したと聞くと、焦ってしまうかもしれません。でも、手をかけて育児をできるのは今のうちだけ。「ママにお世話をさせてくれている」と思うだけでも、気が楽になりますよ。
2016年06月05日昔はキラキラしていたはずなのに、時が経ち、気づくとまるで輝きを失っている。そんなものってありますよね。ドレス、バッグ、靴などなど。ファッションアイテムは、“流行”という時代のムードや人の気分によって、色褪せてしまうものの代表格。必ずしもそれそのものが古びたり、汚れたり、使えなくなったりしているわけではなくても。華々しさが強ければ強いほど、そういう運命にあるのでしょう。もっと大きな話をするならば、団地もそんな存在のひとつかもしれません。高度経済成長期に最新設備を伴って建設された団地は、近代集合住宅の象徴として庶民の憧れでした。ところが、現在はかつての華々しさや、誇らしげな様子はすっかり消え去り、漂うのは侘しさばかり。もちろん住宅の場合は、老朽化、住民の高齢化という問題もあるわけですが、それよりも何よりも、“団地”が持つイメージや言葉の響き自体が古びてしまって、とてつもないレトロ感、昭和感を醸し出していて、当初発していたイメージとは全く違うものになってしまっています(それはそれで、ひとつの魅力と感じる人もいるようですが)。映画『海よりもまだ深く』の舞台となった東京都清瀬市にある旭が丘団地もまさにそんな団地。是枝裕和監督が9歳から28歳まで実際に住んでいたところで、映画撮影のきっかけを、「自分の記憶の中にある団地の表情をちゃんと残しておきたかった」と話しています。思うに、この団地が象徴しているのは、子どもの頃、きらきらした未来への可能性を抱えていたのに、自分が思い描いていた輝かしい大人になれなかった者たち。監督曰く「なりたいものになれなかったのは団地も同じなんですよね」。もしかすると、監督は28歳でそこを出て、世界的に評価される映画監督として華々しい功績を手にしているけれど、団地に沁み込んだ自分の、そして人々の、さらには時代の記憶を敏感に感じ取れるからこそ、人々の感情に寄り添った素晴らしい表現が可能なのかもしれません。誰だって若き日には、本作の主人公である良多のように、希望に満ち溢れていたはず。良多は、一度文学賞を受賞してしまったがために作家であり続けることにしがみついています。そして、そのこだわりが自分も周囲も息苦しくしているのです。未来が想像していたものと違うからと言って、不幸なわけではないはずなのに。ならば、やるせない思いを抱き続ける人と、今手にできるものの中からちゃんと幸せを見つけられる人とでは、いったいどこが違うのでしょう。それは、自分の意志に反し、または不満を持ちながらもいつか輝きが戻ってくると信じながら団地に住み続けることと、そこに未来はないと感じたり、時代の空気を感じたりした時点で団地を出て、外からそこを見つめられることとの違いに、どこか似ているのかもしれません。主人公は、台風のせいで、今も母が暮らす実家の団地で別れた妻と子とともに一夜を過ごすことになりますが、この台風というモチーフがまた人生を語るうえでいいモチーフになっています。暴風雨はさまざまな被害をもたらしますが、そのパワーでいろいろなものを吹き飛ばし、洗い流します。ある場所からどうしても動けないときには、こんなパワーが背中を押してくれることになるのかも。そして、居座り続けていた何かを破壊することで、潔い諦めをもたらし、新たな一歩を踏み出す覚悟をきめさせてくれることもあるでしょう。「幸せって、何かを諦めなきゃ手に入らないのよ」母が良多に言うこのひとことが、とても印象深く心に残ります。これは、決して後ろ向きな発言ではありません。もしそれが「違う」と感じたなら、手放す勇気も持たなければ。人生は選択の連続。ありたい自分でいるために、最も大切なものを選びとることの大切さを教えてくれる映画です。(text:June Makiguchi)
2016年06月04日今では珍しくなくなりましたが、それでもまだ「キラキラネーム」については賛否両論。子どもの友だちに多いからと安心していても、小学校受験などで不利になることもあるといわれています。このキラキラネームについて、教育の現場ではどのように思われているのでしょうか。小学校の先生たちに話を聞きました。■名前を覚えるのが大変!小学1~2年生を受け持つことが多い女性教諭は、新学期を迎える前に「正しい漢字と読み方を覚えるのが大変」といいます。「とくに低学年の子どもは、名前を間違えられることをとても嫌がります。まだ漢字を覚えていないので、名簿にもひらがなで名前が書いてあると思っている子も多いんですよ。間違えてしまったときに『先生なのにひらがなが読めないの?』と指摘されてしまったこともありました」また、読み間違いからいじめやからかいに発展することもあるので、春休み中に漢字の書き取りのごとく覚えるようにしているのだとか。彼女はキラキラネームをつけることに否定的ではないものの、「覚えやすい、書きやすい名前のほうが助かる」というのが本音だそうです。 ■偏見はよくないキラキラネームの子は悪ガキといわれることもありますが、「それは偏見だ」と語るのは、教師歴20年のベテラン男性教諭。周囲の大人がこうした先入観を持つことのほうが、子どもに悪影響を及ぼすといいます。「友だちとも仲良くしている子が多いですよ。たしかに想像できないような当て字もありますが、その名前には意味があります。これを知れば自分の名前に誇りをもてるし、親の愛情を感じられていいのではないでしょうか」最近では、「●●子」といった古風な名前が「シワシワネーム」といわれることもあるほどキラキラネームは一般的になり、名前だけでその子を判断することはできないそうです。■親に問題アリ!?30代の女性教諭は、キラキラネームの子どもに対して問題を感じたことはないものの、その親に対して警戒してしまうそうです。「言い方は悪いけれど、ちょっと変わった、こだわりが強い方が多いかもしれません。学芸会での配役や、運動会の種目に対してクレームをよこす、いわゆるモンスターペアレントが目立ちます。子どもは素直でいい子でも、親に対して注意するようにしています」もちろん、キラキラネームを名づけた親すべてがこのタイプではないけれど、先輩からも注意するようにいわれることがあるのだとか。世論だけでなく、教育現場でもキラキラネームは賛否両論。しかし、名づけられた子どもに対して批判的な意見はほとんどありませんでした。子どもが大きくなるまでに状況は変わるかもしれませんが、こうした現状も把握したうえで名前を考えていきたいですね。
2016年06月04日ハーイ、みなさん!ここアメリカでは、メモリアルデイ(戦没将兵追悼記念日)の週末を迎えました。ということは、公式に夏が来たという意味です!みなさんご存じのとおり、夏といえば映画が一番盛り上がる季節ですよね!楽しみに待っていた期待作がたくさん公開します!一番の話題作はやっぱり『アリス・イン・ワンダーランド/時間の旅』。今のところ映画の評判は上々なので、製作を務めたティム・バートンの新たなヒット作になりそうな気がします。この続編でも、前作に引き続きおかしなキャラクターが登場します。キャストは、ジョニー・デップ、ミア・ワシコウスカ、アン・ハサウェイ、ヘレナ・ボナム=カーター、サシャ・バロン・コーエンなどです。ジョニーは、世界中を飛びまわって映画のプロモーション活動で大忙し!そんな中での、妻アンバー・ハードとの離婚のニュースはびっくりでしたね!ジョニーの愛するお母さんが他界した直後(3日後)に、こんなニュースが舞い込むなんて誰も想像しなかったはず。2人が結婚するまでの経緯はみなさんも知ってると思いますが、念のためおさらいすると、ジョニーは長い間連れ添ったパートナーのヴァネッサ・パラディと破局後に、撮影現場でアンバーと出会いました。もう離れられないって感じでラブラブでしたよね!でもアンバーの友達にとっては、2人の結婚は意外だったみたい。だってアンバーは、それまで女性と交際していたんですもの。だから2人の関係は、最初から普通の恋人同士とは言えなかったの。年齢も、アンバーがジョニーより22歳も下です。でもすごく幸せそうなカップルだったわ。お互いの映画のプレミアにも、仲良く2人で出席してたしね。でもそんな時に、あの“ワンコ密輸入”事件が起こりました。ジョニーが撮影で滞在していたオーストラリアに、正式な書類も提出せずに無断で、愛犬を入国させてしまったのです。そして2人は謝罪の映像を公開しました。そして、この離婚のニュース。さらには、2人の関係がハッピーではなかったという話がたくさん聞こえてきます。アンバーがジョニーをコントロールしていたとか、ジョニーの子供たちと彼のお母さんは、アンバーのジョニーへの接し方が嫌いだった、とかね。そしてアンバーは、たった1年半しか結婚していなかったのに、配偶者サポートを要求しています。もちろんジョニーは拒否してるけど、婚前契約を交わしてなかったというので、これはきっと泥沼離婚劇になるかも…。とにかく、ハリウッドのスター同士のロマンスが、また1つ終わってしまいました。でもきっとジョニーは、すぐに新しい恋をすると思うわ!ジョニーが次の恋人を見つける前に、皆さんは『アリス・イン・ワンダーランド/時間の旅』を見てね!(text:Lisle Wilkerson)
2016年06月03日映画『素敵なサプライズブリュッセルの奇妙な代理店』は、オランダ人作家ベルカンポの短編小説「De Surprise」に惚れ込んだオランダのマイク・ファン・ディム監督が、ベルギーの首都ブリュッセルを舞台に描くダークコメディ。とある理由から生きる意味を見出せずにいた主人公のヤーコブは、“あの世行き”旅行代理店エリュシオンで、解約不可・成功率100%の自殺代理プランのサプライズコースを申し込みますが、契約した矢先、同じプランを選んだという素敵な女性アンネと出会います。死を望んでいた男が死を選択したことで見えてくるモノ――それこそが監督が描きたかった題材。また、死にたがる主人公と相反するかのようにブリュッセルの美しい街並、オランダの美しい風景は生命力に満ち輝いている。そんな対比も見どころです。映画を観た後、ベルギーの旅を調べながらふと思ったのは「ベルギーと言えばチョコレート!」です(笑)。映画のなかでチョコレートは何か意味のあるものとして登場はしていませんが、執筆のお供にチョコレートが欠かせない身としては、ベルギーチョコレートを巡る旅もいいなぁと思ったわけです。日本で手に入るベルギーチョコレートの代表格は――ゴディバ、ノイハウス、ヴィタメール、ピエール・マルコリーニ、ピエール・ルドン、レオニダス…などなど。その多くがブリュッセルで創業しています。2014年にはブリュッセルにベルギー国内最大のチョコレート博物館「ベルギー・チョコレート・ビレッジ」もできましたし、これはもう訪れないと!もちろん『素敵なサプライズ~』のロケ地、ブリュッセルにある世界遺産グランプラス(大広場)や北ヨーロッパのヴェネチアと呼ばれる水の古都ブルージュは外せません。あ、ブルージュにも「チョコ・ストーリー」というチョコレート博物館がありました!いざ、ベルギーへ!(text:Rie Shintani)
2016年06月01日いよいよ夏本番、ビアガーデンシーズンが到来!都内の商業施設の屋上やテラスではビアガーデンが続々とスタート。開放的な空間でわいわいと盛り上がれるビアガーデンは、二人の距離を縮めたい時のデートにもぴったり。今月の映画は、「ごくせん」「デカワンコ」など数々の映像化ヒット作品の原作者として知られる森本梢子の原作漫画を実写映画化した『高台家の人々』。綾瀬はるか、斎藤工が恋人役で共演し、水原希子や間宮祥太朗、大地真央、市村正親と豪華実力派俳優たちがキャスティングされた話題作だ。口下手で不器用な女子・平野木絵(綾瀬さん)は、得意の“妄想”で何かと自分の世界に入り込みがち。ある日、木絵の勤めるオフィスに名門「高台家」のイケメンエリート・高台光正(斎藤さん)が転勤してくる。 決して交わるはずのない二人。しかし、不思議なことに光正は木絵に惹かれていく。それにはある理由が…。光正は人の心を読める“テレパス”だったのだ。妄想癖のある地味で冴えないOLと人の心が読める名家のイケメンエリートが繰り広げるコミカルなラブストーリーをカップルで楽しんでみて。デートにもぴったりの映画×ビアガーデンのおすすめスポットには、ラグジュアリーホテルのテラスでビアガーデンが楽しめるちょっとリッチな六本木コースと、ショッピングモール内の映画館とビアガーデンがセットで楽しめるカジュアルな二子玉川コース、アメリカンBBQのビアガーデンとフード&アパレルショップがマルシェ感覚で展開するトレンディな池袋コースの3つをピックアップした。1つ目の六本木コースは、「グランド ハイアット 東京」のステーキハウス「オーク ドア」で開催中の、ちょっとリッチなビアガーデンを楽しむプラン。カクテルをはじめ、ドラフトビール、ワイン、ソフトドリンクのフリーフローとともに、カリビアン風のハムとチーズを挟んだサンドイッチなど、キューバやカリビアンの人気フードを好きなだけ楽しめるビアガーデンは満足度高し。食べ放題・飲み放題込みで、料金は一人6,800円(レギュラープラン)~。映画館は、ホテルに隣接する六本木ヒルズのTOHOシネマズ六本木で。2つ目の二子玉川コースは、二子玉川ライズの中央広場で開催となる開放感あふれるビアテラス「FUTAKO TAMAGAWA RISE Premium BEER FARM」で、カジュアルにビアガーデンを楽しむプラン。「ザ・プレミアムモルツ」4種類の生ビールと個性あふれる“クラフトセレクト”シリーズを、スペイン王室御用達グルメストア「マヨルカ」のタパス5種盛り合わせや特製ホットドッグなど、グルメなバルメニューと楽しんで。映画は、同施設内の109シネマズ二子玉川へ。3つ目の池袋コースでは、4月末にルミネ池袋9Fにオープンした「THE ROOFTOP BBQ BEER GARDEN」に注目。5月27日(金)より、フードスタンドやアパレルショップが並ぶ8Fのコミュニティフロア「THE ROOFTOP FLEA」が新たに加わり、2フロアからなるマルシェ感覚のBBQビアガーデンがスタート。“FARM to GRILL”をコンセプトに、契約農家から仕入れる素材を使用し、スモーク料理やケイジャンチキン、ホットソースなど、アメリカのフードカルチャーを散りばめたBBQは、6月30日(木)までコース料金が割引に!フードメニュー8品のスタンダードコースが4,000円、デザート付き10品のプレミアムコースで4,500円(飲み放題も込み)とお得だ。また、コミュニティフロアでは「GOOD MEAL SHOP」の先行販売アイスクリームなど、話題店の限定スイーツなども登場するので併せてチェックを。映画は、サンシャイン60通り東急ハンズ手前にある池袋HUMAXシネマズで観られる。デートにもおすすめのビアガーデン。映画の感想を語り合いながら、飲んで食べて楽しい時間を過ごせば、二人の夏もヒートアップしそう!『高台家の人々』は6月4日(土)より全国にて公開。(text:Miwa Ogata)
2016年05月31日ケン・ローチ監督の『I, Daniel Blake』を最高賞パルムドールに選び、無事に幕を閉じた第69回カンヌ国際映画祭。”無事”というのが今年はとても重要だった。昨年のパリ、今年のブリュッセルと大きなテロが相次いだため、カンヌ周辺は厳重な警戒態勢で、コート・ダジュール空港は軍隊が巡回、豪華客船やクルーザーが浮かぶカンヌの海にもフランス海軍の巡視艇が停泊し、上映会場に入る際にはバッグの中身を隅々までチェック。その結果、特に大きなトラブルは起きず、平穏に終わった。もっとも、授賞結果は大荒れ。批評家や観客の間で人気だったドイツの女性監督マーレン・アーデの斬新なコメディ『Toni Erdemann』や、ジム・ジャームッシュの『Patterson』(永瀬正敏がおいしい役を演じている)が無冠に終わる一方で、不評と思われたオリヴィエ・アサイヤス(フランス)がクリテン・スチュワート主演で撮った心霊スリラー『Personal Shopper』が監督賞を受賞。審査員は映画の作り手のため、着眼点が違うのか。審査員団は毎年世界中の映画人から選ばれるが、今年は委員長に『マッドマックス 怒りのデス・ロード』のジョージ・ミラー(オーストラリア)、審査員にマッツ・ミケルセン(デンマーク)、ヴァネッサ・パラディ(フランス)、キルステン・ダンスト(アメリカ)ら総勢9名。中でも目立っていたのが、御年80歳になるドナルド・サザーランドだった。審査員会見でサザーランドは、いつもアメリカの影に隠れがちな祖国カナダの自虐ジョークを連発。カナダ人記者から自国の映画界についての意見を求められると、「戦争中、フランス、イギリス、カナダの兵士が敵に捕まり、処刑前に最後の望みを聞かれた。イギリス兵士は紅茶を望み、カナダの兵士は15分だけ自国のアイデンティティーについて語らせてほしいと頼んだ。フランス兵士は、カナダ人のスピーチを聞く前に殺してくれ、と頼んだ」と語り、会場は爆笑に包まれた。その飄々とした様子は、ドナルドの出世作『M★A★S★H マッシュ』(1970年のパルムドール受賞作)のまんま。さらに授賞式後には「寒いなあ」とブランケットを被って会見場に現れるなど、もう独壇場だ。そんなマイペースなドナルドになついていたのが、マッツ・ミケルセン。どこに行くにもドナルドの後を追いかけていて、映画で見せるクールな顔と違い、かわいい末っ子キャラだった。ジョージ・クルーニー&アマル夫妻、オーランド・ブルーム&ケイティ・ペリーら華やかなカップルの姿も注目を集めたが、逆の意味で話題だったのがシャーリーズ・セロンとショーン・ペン。2人は昨年はラブラブでカンヌのレッドカーペットを沸かせたのだがその直後に破局。しかし今年はショーンが監督、シャーリーズが主演した『The Last Face』がコンペティションに選ばれたため、2人は再びカンヌに登場したが、会見中もレッドカーペットでも必ず間に共演のハビエル・バルテムやショーンの長男ホッパー・ペンを挟むなど、微妙な距離を保っていた。さらにレッドカーペットを一度昇りきったショーンが、ある若い女性が到着すると階段を駆け下りて迎えに行ったときは一瞬びっくり。若い金髪女性が大好きなショーンの新しい恋人かと思われたが、ショーンの長女ディランだった。上映中も少し離れた席に座っていた2人だったが、上映後にスタンディング・オベーションを受けると、シャーリーズがショーンの頬にキス。映画監督としてのショーンへの敬意のしるしだったのだろう。映画はアフリカの紛争地で活動する”世界の医療団”をモデルにした社会派ドラマだが、題材に対してメロドラマの要素が強すぎたのは、ショーンがシャーリーズへの未練があるせいなのだろうか。ちなみにレッドカーペットでは黒いタキシード風スーツでマニッシュに決めたシャーリーズには、今年のベスト・ドレッサー賞をあげたい。ある視点部門で深田晃司監督の『淵に立つ』が審査員賞を受賞するなど日本勢の活躍もあり、今年のカンヌの12日間も盛りだくさんだった。来年は70回記念大会。どんな趣向が凝らされるか、今から楽しみだ。(text:Ayako Ishizu)
2016年05月30日こんばんは、古山エリーです。少し前に念願のお引っ越し、しましたー。で、「住所が変わりました」連絡をしていると数回に1度の頻度で聞かれるのが「いよいよ、です…か?」と。結婚とか同棲とか、そういうことを指しての問いかけのようですが、残念ながら相変わらず“ひ・と・り”です。こんなとき彼氏がいたらこれもあれも手伝ってくれるんだろうなぁと、ありもしない妄想をしながら、電球も家具の配置もテレビやパソコンの配線も、ええ、もちろん自分でやっちゃいましたとも。できなきゃ生きていけないですものー(誰かに頼る可愛げもないのでお手上げ状態です)。そしてまたひとつ強くなった気がします。そんな今宵もたわごと綴ってまいります。40代になってからは、ちょっとやそっとでへこまなくなりましたが――“40代・独身・恋人なし”の3点セットに関する周りからのコメント(時に悪意のない誹謗中傷)は、さらりと流す技を身につけているので、大抵のことは「また言われちゃったなぁ、 あはっ」と、明るくかわせるのですが、ごくたまに「なんかひっかかるなぁ」「なんかイヤな感じだなぁ」と悶々とすることがあります。最近言われてひっかかっていたのは「けっこう年いってたんだね。じゃ、もう少しちゃんとしないとね」です。恋愛においては「ちゃんとしろ」と散々言われてきましたし、ダメだと自覚もありますから、何か言われても「そうですよねー」と切り返しは得意中の得意。「けっこう年いってたんだね」も全然平気。なのですが、恋愛がダメだからって、結婚できていないからって、それを仕事や人生に結びつけて「ちゃんとしないとね」は、さすがにカッチーン!ですわよ。一生懸命に誇りをもって仕事をして生きているのに…。悲しかった、すごく悲しかった。でも、そこでへこんでいたら負けなので「そんなふうにしか解釈できないって、ちっちゃな器ですことー。おほほほほー(白鳥麗子風に)」と“心の中”で高らかに叫び、悔しさはゴクリとのみ込みました(まぁ、今ここで吐き出しちゃってますけどね…)。で、落ち込み気味の四十路に元気をくれたのはキラッキラの青春ラブストーリー『オオカミ少女と黒王子』でした。少女コミックの映画化が続いているので「また?」という声も聞こえてきそうですし、私自身も「また?」と思ったひとりですが、これがですねー面白かった!気に入ったのは、うそから始まった恋はホンモノになるのか?単純明快なラブストーリーを余計なことを描かずに一本勝負しているところです(ごちゃごちゃしているのは私生活だけで十分だから?)。「彼氏がいる」とついうそをついてしまったエリカ(二階堂ふみ)は、縁あって(?)、学校イチのイケメン、恭也(山崎賢人)に彼氏のフリをしてもらうんですが、実は恭也は腹黒ドS!エリカは彼からいろんな暴言を浴びせられるわけです。でも、暴言ではあっても――字面的には、私がくらった「ちゃんとしないとね」よりも恭也の命令調セリフの方が破壊力はありますが、どれも愛情の裏返しのような気がして、恭也が可愛く見えたんですよね(私の年齢のせい?M気質だから?)。要は、エリカも恭也も無器用ながらも一生懸命で、そんな2人の恋愛ごっこから恋愛に移っていく変化は観ていて心地良く、「ああ、一生懸命恋をするっていいなぁ」と思ったわけです(遠い目…)。で、最近うんと年下の彼氏ができた友人に触発されて、別の独身四十路とお見合いパーティーに再チャレンジしようと意気込んでいたのに、いざ調べてみると年齢制限がけっこうイタイ事実が発覚…。な、なぜだ…。へこたれるものかー!というわけで、今宵のたわごとはこの辺で。また次回。(Elie Furuyama)
2016年05月30日2016年4月クールは「どの作品も面白い!」と大好評。中でも、平均視聴率2ケタ代をマークしている“弁護士ドラマ”対決に多くの注目が集まっています。そこで今日は、話題の対決を徹底検証。「99.9」VS「グッドパートナー」それぞれの見どころはどのようなところにあるのでしょうか。■松潤演じる主人公は100%異端児!?“隠された真実”を痛快に暴き出す「99.9」まず最初に、今クール最も掴みどころのない主人公・深山大翔(松本潤)についてご紹介しておきましょう。通常刑事事件で被疑者が逮捕されると、検察がその真偽を調査。起訴された者は99.9%の割合で有罪判決がくだされるというのがタイトルの由来だということをご存知でしょうか。残る0.1%に潜む真実に焦点を当てるという意味では、法廷ドラマの王道「HERO」に真っ向勝負を挑んでいるといえるかも!?主人公はいずれも“とことん空気が読めない”という共通項を持っていますが、深山の場合、飄々としていてどこにも人間味というものが見当たらないのが面白いところ。日々上司のデスクに悪戯を仕掛け、同僚女性にタクシー代を借りまくるザ・異端児。刑事事件専門の弁護士としては超一流なのに、その全ては「真実を明らかにしたい…ただそれだけ」と決して余計な詮索はしない。でもだからこそ、視聴者は「この主人公が感情をむき出しにする瞬間を見てみたい」と、物語から目が離せなくなってしまうのでしょうね。また「99.9」では、深山のクッキングコーナーも人気。事件に煮詰まる度に調理場へ立ち、頭の中を整理しながらこだわりの一品を作る。その「出で立ちがカッコイイ」「料理が美味しそう」ということで、データ放送でレシピ公開まで行われています(笑)。絶対音感ならぬ絶対味覚を持つ深山は、いつ何時でも調味料セットを持ち歩いているので、是非注目して視聴してみては?■クールさの中に潜む“人間味”が魅力竹野内のパパぶりも光る「グッドパートナー」一方「グッドパートナー」が扱うのは、企業法務です。法廷ではなく、会議室を舞台に展開する珍しいスタイルの本作。ビジネス再建から著作権侵害、セクハラ案件まで企業に関する全ての弁護を行う最先端弁護士事務所で、主人公・咲坂健人(竹野内豊)がその実力を見せつけてくれています。彼の魅力は第一に、スマートでクールな外見とは裏腹、依頼人に対し「弁護士としてではなく、ひとりの人間として語りかける」秘められた熱さにあるでしょう。弁護士バッジを外し、プライベートボタンをオンにした竹野内さんの見上げるような眼差しに敵う者無し!?それを機に事件が大きく動くのが定番となっており、「水戸黄門」でいう印籠シーンのような痛快なオチまで一直線!見終えた後、スカッと心地よい眠りにつかせてくれますよ。加えて第2に、視聴者が期待する咲坂の意外な素顔…それは恋愛で見せるダメダメな一面です。彼と同じ事務所で働くライバル弁護士・夏目佳恵(松雪泰子)はなんと元妻!会議の際、白熱のあまり互いのことを「パパ」「ママ」と呼び合って痴話喧嘩を始めてしまう“ダメ男”感が「ギャップ萌え」「逆にカワイイ」と世の女性たちのハートを鷲掴みにしているんです。一度は結婚した仲ですから、心の距離が近くて当たり前。だからこそ浮き彫りになるもどかしさが、見る者にリアリティ溢れる“恋心あるある”を届けてくれるのかもしれませんね。2人の行く末を温かく見守っていきましょう。■ドジっこからは目が離せない!2つのドラマでは是非、このキャラに注目をそして最後に、それぞれの作品で注目のサブキャラクターをピックアップ!「99.9」からはまず、片桐仁さんのお名前を挙げておきましょう。独特のセンスを放つコントユニット「ラーメンズ」としての活動を軸に、俳優業でも活躍する片桐さん。代表作として印象強いのは、2008年の夏に放送された深夜ドラマ「ザ・クイズショウ」でしょうか。心の奥底に闇を抱えた主人公を見事熱演していました。懐かしいですね。そんな片桐さんが今回演じているのが、深山を支えるパラリーガル・明石達也。手拍子が聞こえればどんな場所でも踊り出し、事件の実証を課せられる度に怪我をしているお笑い担当キャラですが、深山の右腕として絶対に欠かせない存在というのもまた然り。文句を言いながらも深山のことを一番深く理解しているキャラクターなので、目に見えない糸で結ばれた2人の熱き友情をとくとお楽しみください。さらに「グッドパートナー」では、咲坂のもとで新人弁護士として修業する熱海優作役の賀来賢人さんに注目!熱海の発言、そして行動…その全てがとにかくウザったいんです(笑)。基本的には若々しくて可愛いらしい後輩くんなのですが、屈託ない性格が災いし、空気を読まないシーンもしばしば。1話の中で一体何度、咲坂から「黙れ!」と言われているか数えてみるのも面白いかも!?そんな彼が少しずつ大人になっていく様は必見です。成長物語という意味でも、物語を追ってみることをおすすめいたします。今クールも残すところ、あと1か月となりました。いずれの作品も安定した視聴率を保っているため、続編への期待も高まりますね!ドラマの根幹となる、主人公自身が抱える問題の解決までもう少し。最後の最後までしっかり見届けていただければと思います。(text:Yuki Watanabe)
2016年05月30日動物たちの楽園を描いた『ズートピア』がここ日本でも爆発的なヒットを記録するディズニー映画だが、その勢いは衰えを知らず、この夏も『アリス・イン・ワンダーランド/時間の旅』(7月1日公開)、『ファインディング・ドリー』(7月16日公開)と注目作が目白押しだ。そんな強力ラインナップに加えてもう1本、すでに全米で一大旋風を巻き起こしている話題作が日本上陸を果たす。1966年に他界したウォルト・ディズニーが生前最後に手がけたアニメーション作品を、50年の時を経て実写化した『ジャングル・ブック』である。公開は8月11日(木・祝)と少し先だが、興奮と感動が覚めやらぬうちに、その魅力を紹介したい。密林を駆け抜け、映画は新たな次元へ。そう宣言したくなる極上のエンタメ大作だ。物語は至ってシンプル。ジャングルに取り残された人間の赤ん坊モーグリが、親代わりの動物たちと冒険を繰り広げるクラシカルな成長物語だが、そこに輝く命を吹き込む最先端の映像技術がすさまじ過ぎる。すでに予告編が解禁され、大きな話題を集めているが、主人公の少年モーグリ以外、動物も自然もすべてがCGで表現されているのだから、「すさまじい」を超えて「ちょっと引く…」ほどである。まさに実写の概念を覆す映像体験なのだ。かつて『アバター』がそうであったように、本作もまた「鑑賞する」というよりは「体感する」というイメージが近い作品だ。同じ動物たちの楽園を舞台にした『ズートピア』に、現代社会における多様性という明確なメッセージ性があったのに比べると、「食い足りない」と感じる目の肥えた映画ファンもいるかもしれない。ただし『ジャングル・ブック』は決して浅い作品ではなく、むしろジャングルのような奥深さを秘めた人間ドラマである。重要なのは、たとえCGによって動物たちや大自然に生命力が吹き込まれたとしても、スクリーンの中で最も笑い、泣き、悩み、戦い、躍動しているのが唯一の人間キャラクターであるモーグリだという点。人間であるがゆえに、自分がジャングルの微妙なバランスを壊しかねないと少年の葛藤を通して、漠然と、しかし誰もが一度は考える「生きるとは?」という問いを投げかけており、67年版のアニメとは一味違う結末も深い余韻を残している。現在、ディズニーは『王さまの剣』『美女と野獣』『ムーラン』『ダンボ』『クマのプーさん』『ティンカー・ベル』『ファンタジア』と数々の実写化プロジェクトを控えている。その試金石として、『ジャングル・ブック』の成功は大きな意味をもつと同時に、後に続く作品への大いなるプレッシャーにもなるはず。さらに力強い演出力を発揮したジョン・ファブロー監督が続投し、本作の続編も検討されているというから期待は膨らむばかりである。(text:Ryo Uchida)
2016年05月29日不治の病に侵され、遠くない未来に身体の自由がきかなくなる日がやってくるとしたら。自分なら、家族がそうなったら、どんな選択をするだろう。観ている間中、そう自問せずにはいられない『君がくれたグッドライフ』。ALS(筋萎縮性側索硬化症)だと宣告されたハンネスは、現在暮らしているドイツから、尊厳死が認められている隣国ベルギーへと自転車の旅に出ます。共に旅出る親友たちには、旅の目的は知らせることなく――。親しい人々に、自分の選択をどう受け止めてもらうのか。そんな切ない課題も含め、この作品は観る者の死生観を揺さぶってくるのです。それでも感傷的になりすぎず、いかに死ぬかはいかに生きるかにも繋がっている、そう感じさせてくれるのが本作の素晴らしいところ。誰にでも訪れる「死」というものに向き合うことの大切さ、愛する者がいることの喜びを描き切りました。重いテーマを持ちながらも、限りある命の尊さを通して人生を賛美する、とても心に響く本作への出演を通し、主役のハンネスを演じたフロリアン・ダーヴィト・フィッツは、何を感じ、何に気づいたのでしょう。「死が私たちの人生に変化をもたらすということを強く感じたんだ。死は私たちの人生そのものに鋭い光を当てる。それは生きる、笑う、泣く、食べる、セックスをする、愛し合う、争う、仲直りするなどといった私たちがすること全てに対してだ。大切なのは何かにしがみつかないことだと思うんだ」。本作では、主人公の想いだけでなく、周囲の人々の想いも見事に描写しています。人と人との繋がりあっての人生。それは、映画作りとも繋がるもの。このような作品を撮影していると、共演者やスタッフとの間に特別なつながりが芽生えるものなのでしょうか。「たしかに“特別”なものがあったよ。特に映画の中で妻を演じたユリア・コーシッツと私との繋がりにはね。普段の生活ではお互い知ることができないことを、深く知ることができた。ただそれはユリアだけでなく、すべての人に感じたと言えるけれど」。では、ハンネスが望んだ安楽死という選択についてはどう考えたのでしょう。きっと、自分だったら、もし自分の愛する家族だったら、と幾度も考えたはず。「ハンネスは身体の自由が奪われる前に尊厳死を遂げたいと考えるけれど、もしハンネスの体の自由が完全に奪われてしまった状態であれば、彼がとった選択を私はより理解できたと思う。でも、理解できるかどうかが重要なのではない。劇中でハンネスは、『旅行の半年前に病状が悪化した』、妻とは『何度も話し合った』と言う。また、死ぬのはまだ早いという言葉に対して『誰にとって早いんだ?』と返したり、同じALSで亡くなった父が『発症後1年以上も生きたじゃない』と涙ながらに言う母に対し、『1年延ばした甲斐があったかい?』と訴えたりする。こういう言葉から、私はハンネスの決断を理解することができた。ただ、実際に私がハンネスと同じ立場だったとしたら、同様の決断をするかどうかはわからないけれどね」。最後に、この作品をきっかけに自身の死生観で、変化したことがあるのか聞いてみた。「実はこの次の作品では死をテーマにしたコメディ作品に出演したんだ。それもあって、死については最近たくさん考えた。そして感じたのは、死には2つの側面があるということ。ひとつは、誰にも訪れるという恐るべき側面。もうひとつは、死は心を楽にもさせるという側面だ。しっかりと気持ちの整理ができる、という意味だ。私たちは日々、たくさんのささいなことに悩まされているけれど、死が身近であることを常に自覚していれば、人生を終える際の助けになると思うんだ。ハンネスはそれを理解できたからこそ、グッドライフ=より良き人生を送れたんだと思うよ。人生のことを考えると、さまざまな選択に対して、かなり慎重にはなるけれど、私たちはどんな理由があれども、今ここにいて、さまざまな経験をしながら生きている。小さなことをかもしれないけれど、人生はその小さな変化を日々感じていくことだと思っているよ」。(text:June Makiguchi)
2016年05月26日五月病も心配される時期、わが子が突然「学校に行きたくない」と言い始めるかも?そのときあなたならどうしますか?あんふぁんママに聞きました。いつ?どうして?今回のアンケートは156人の読者が回答。そのうち「学校に行きたくない」と言われたことがあるママ89名に聞いたところ、子どもが言い始めたタイミングは「新入学」が38%、「学期が変わるタイミング」18%、「クラス替え」13%、「その他」28%。理由に「座学が苦痛」「母子分離が難しい」。幼児教育から小学校への転換期「新入学」は、乗り越えなければならない壁が多くあるよう。その他「連休や長期休み明け」に行きたくなくなることも。子どもも大人と同じように休み明けはストレスを抱えやすいようです。さまざまな形で出てくる子どものサイン「学校に行きたがらなくなる前に、どのような兆候や行動がありましたか?」と聞いてみたところ、「笑顔がなくなり暗くなる」「朝、起きてこなくなる」「泣くことが多くなる」という回答が多くみられました。この他には腹痛や吐き気、微熱や発疹などの身体的症状が現れたり、「朝の準備に時間がかかる」「ワガママを言いはじめる」といったさまざまな形でサインが出ているよう。逆に「兆候はなかった、気づかなかった」が30%、子どもの様子に気づかず、突然の子どもの発言に親が戸惑うことも少なくありません。実は著者自身も、新入学のタイミングで同様の悩みを抱えた一人です。前日の朝まできちんと起床し準備をしていた子が、その日の朝は布団から出てこなかった・・・「うそ!?どうして?」と、一瞬動揺したのを覚えています。理由は?どうやって聞き出す?「学校に行きたくないという理由は?」の回答で多かったのが「友だちとのトラブル」37%。「先生の言葉に傷ついた」7%も見逃せない理由のひとつ。先生には傷つける意図がなかったとしても、受け取る子どもによっては大きく響くことも。子どもといえどもプライドがあり、大人の言葉が許せないこともあります。そんなときは子どもの話をしっかり聞いて気持ちを受け止め、「嫌な気持ちになったのね。でも先生も人間だから間違うこともあるよ」(れんこんさん)とやり過ごすのも一つの方法かも。8割以上のママが“行きたくない理由”を知ることができているようですが、ではどうやってその理由を聞き出したのでしょう?「『ママに聞いてほしいことある?相談にのるよ』とやさしく聞いた」(ららぶーさん)、「就寝前のリラックスした状態で何があったのか聞いてみた」(こきんさん)、「理由を想定した質問をした」(匿名さん)、「その場では答えなかったが、日頃の会話やコミュニケーションを通してなんとなく理由がわかった」(スマイルさん)など。日常の他愛のない会話も、子どもの変化を読み取る手段として大切なようです。実際に学校を休ませた?では『行きたくない』と言われたときに、どうしましたか?その日学校を休ませたのはわずか16%。「無理やり行かせた」41%、「数時間様子を見て、落ち着いてから行かせた」43%。一度休むと休み癖がついてしまうかも?という親の心配や、ママが急に仕事を休めないという現実もあるのか、8割以上がその日のうちに登校。「落ち着いてから学校に行かせたら、普通に過ごしていた」(PANさん)、「休ませて自宅で好きなことをして過ごしたら、翌日にはケロッとしていた」(ひろこはしもとさん)のように、深刻に考えなくてもいい場合もありそう。学校・担任に相談=親の心の安定と余裕にも対策としては「学校や担任に相談した」は半数以上。一方「スクールカウンセラーに相談した」はわずか10%。存在を知らないのか、知ってはいても直接連絡を取るにはハードルが高いのかも。私の場合は、まず電話で先生に相談。学校側の気遣いで、スクールカウンセラー直通の電話番号も教えてもらったのですが、利用する機会はなく、気がついたときには普通に学校に通えるようになっていました。「学校の先生やスクールカウンセラーに相談してよかったですか?」の問いには、84%が「よかった」と答えました。「アドバイスが的確で納得できた」「気にかけてくれている感じがした」「親身になって考えてもらえた」などの声が多く、先生の姿勢や指導によっては、“信頼感”や“親近感”が生まれるきっかけとなることも。その他「一緒に考えてくれる人がいると安心する」(そうさん)「心に余裕ができた」(マチャマチャさん)と、親の心の安定と余裕にもつながるようです。また前半で、学校に行きたくない理由に「先生」が挙がりましたが、すぐに先生を敵対視するのではなく、こちらの声を伝え話し合うことも大切です。うちの子の場合も先生の何気ない言葉が原因だったのですが、感情的になることなく先生に相談できたこと、連絡を取り合えたことで良い方向に向かったのだと思います。先生と良好な関係を築くことも、解決の糸口になるのかもしれません。いずれにせよ親も一人で抱え込まないこと。8割以上のママが相談してよかったと答えているように、困った時はまず先生・学校側に相談してみましょう。そしていざというときには先生が心強い味方になってくれるよう、私たち親も日頃からコミュニケーションスキルを磨いておきたいものです。<文・写真:フリーランス記者林未香>
2016年05月26日【ママからのご相談】年長の男の子がいます。家から遠い保育園に通っているためか、息子と同じ小学校に通う知り合いがいません。このままでは小学校まで1人で登校するのか、行けるのかとかなり心配です。新1年生の登下校の様子はどんなものでしょうか。何かアドバイスをお願いします。●A. 皆さん同じ心配をしている仲間です! 積極的に自分から地域とかかわっていきましょう。ご相談ありがとうございます。男ばかりの三兄弟の母をしています、ライターりょんぺいです。子どもの小学校入学で、親が一番最初に心配するのが登下校かもしれませんね。男の子ということで、なおさら心配なお気持ち、大変よくわかります。1年生になったばかりのお子さんがいらっしゃる保護者の方に、最新の1年生登下校事情についてお話をお聞きしました。●新小学校1年生の「登下校」エピソード7選(1)『集団下校は入学式後3日間だけでした。4日目からは子どもたちがバラバラに帰宅となり、半数近い保護者の方々が自主的に下校を少し離れたところで見守っていました。子どもたちも浮ついているので保護者の目は大いに越したことはないと思いました』(40代女の子ママ)(2)『同じマンションに同じ幼稚園だった仲良しの女の子がいたので安心していたのですが、入学した途端に男子・女子という意識が強くなった ようでした。入学後一週間もたたずに一緒に登下校をしなくなってしまい、一緒に登下校できる男の子のご近所の友達を私と息子で情報共有しながら急いで探しました』(30代男の子ママ)(3)『登校は地域の子がほぼ同時間帯に重なり、高学年の子もいるので心配はすぐになくなりましたが、問題が下校……。1年生の4月は給食が始まっても午後の授業がなく下校時に高学年の子の姿はありませんでした。疲れた体に重いランドセルを背負ってヨタヨタ歩いてる姿を見て、可能な限りは下校を目の届くギリギリの距離で見守りたいと思いました』(40代女の子ママ)(4)『息子の入学と合わせて半年間、休職することにしました。時間もあるので下校時は息子にバレないように遠くから見守り 、家の近くになったら近道で急いで先回りし、インターホンを息子が押したとき対応できるようにしました。私にとっても新鮮でキラキラした小学1年生たちを見ていると元気をもらえます』(40代男の子ママ)(5)『女の子と男の子がまるで違うことに驚きました。女の子は信号待ちの間も微動だにせず落ち着いて待っていましたが男の子の集団ときたら、横断歩道の手前でふざけあったり、回りながらジャンプして待っていたり、後ろを向いていたり……誰一人として落ち着いて信号を待っていませんでした。あまりに見過ごせない状況だったので過保護と周りに思われても自分の子やその友達の安全を可能な限り見ておきたいと思いました』(30代男の子ママ)(6)『小規模の保育園を卒園したので、近所の同学年の子を知りませんでした。このままではまずいと思い、年明けくらいから町内の掲示板や区のホームページを見て子育てイベントがないかチェックしました。また、近所の公園やスーパーマーケットなどで同学年くらいの子どもを連れた家族がいたら自分から積極的に声を掛ける ようにしました。親より子どもの方が仲良くなるのがはやいものです。勇気を出して声を掛けたことがきっかけでその子と登下校を一緒にするようになったので、あのとき声を掛けて本当に良かったです』(40代女の子ママ)(7)『幼稚園からの仲良し3人組がいるので登下校も一緒で安心と思っていたら見事にバラバラのクラスになりました。登校はいいのですが、下校はクラスによって時間にバラつきがあり、他のクラスの子は待てない雰囲気があるとのことでした。結局同じクラスの同じ方向の子と帰ってくるようになりました。ただ、名前を覚えてきてねとお願いしても「忘れた!」の連続。お互い名前も薄ぼんやり ながら、仲良く帰ってくる子どもの力に脱帽です』(40代男の子ママ)いかがでしょうか。やはり新1年生の子の登下校について、保護者の皆さん誰もが心配していたということがよくわかりました。また、予期せぬ出来事も起こります。筆者の長男が小学1年生になった直後、帰宅途中におなかが痛くなったものの、トイレの場所がわからずパニック状態 で泣きながら帰ってくるということがありました。翌日、学校から家までの距離で立ち寄ることができるトイレを一緒に歩いて見て回りました。10か所近くあることがわかり、「次またおなかが痛くなっても大丈夫!」と安心した様子でした。●小学校入学前に子どもの「登下校の不安」を解消するための心得3つ先輩ママの経験を踏まえ、登下校での不安を解消する、入学前の心得として知っておくとよいと感じることは以下の通りです。●(a)心配をため込まず、ご近所との関わりを自分から積極的に持ってみる新入学時の登下校に不安を抱えているのは皆さん共通なので仲間です。子どもをフックに声を掛けてみる と悩める者同士の解決策が見えてきます。ご近所の公園、スーパーマーケット以外にも、入学前に近所の文房具店や学用品売り場では新1年生の親子に会う機会も増えますので足繁く通うと良い出会いがあります。●(b)入学してみてわかることが多いもの。考えすぎないことも大事!クラス分けや男女の意識が芽生えるなど、事前の想定と異なる関係性が子どもの間に生まれてきます。状況に応じて、臨機応変な対応 が親に求められます。子どもから毎日情報収集することが大事です。●(c)自分の子どもだけを見るのではなく、地域の子どもたちを大人の目で守るという意識が重要!大人の目線による子どもの見守り活動が大事。できる限り行動すると、子どもの安全、自分の住んでいる地域の安全につながります。新1年生の登下校姿は、自分の子どもでなくても輝いて見える良いものです。知らない子であっても積極的な目配りをする と元気いっぱいの子どもたちの姿に大人も活力をもらえます。大人の足で10分の通学路でも、入学したばかりの子どもにとってはまさに大冒険とばかりに登下校を楽しんでいるようです。新小学1年生には自分の子でなくても特別な愛情を持てる不思議な力があります。心配で仕方ないという共通認識を味方にして、自分からお住まいの地域に積極的に関わってみてください。みんなで子どもを守ろうという地域の共通認識が受け皿となり、予想以上の歓迎が待っていることと思います。●ライター/りょんぺい(ママライター)
2016年05月21日山奥の湖に浮かぶ水上学校を舞台に、教師として働き始めた青年が前任の女性教師の日記を見つけ、やがて会ったことのない彼女に思いを募らせる恋模様を描いたタイ映画『すれ違いのダイアリーズ』が現在公開中。SNSでどこでもすぐに“繋がれる”現代において、「日記」という古典的なアイテムが、どうしてこんなにも素敵な恋の架け橋となったのか。プロモーションで来日していたニティワット・タラトーン監督に撮影現場の裏話や、タイの女性の現状などをお聞きしました。――この作品は水上学校で実際に教師をしているサーマート先生の実話がベースになっているそうですね。監督:サーマート先生はすごく優しくて真面目で、教育機会の少ない水上で生活している子供たちに熱心に勉強を教えようと取り組んでいる方なんです。でもサーマート先生ももともとは自分自身を水上学校に捧げるつもりはなかったみたいなんです。実際に子供たちに会い、彼らに知識を与えてくれる人間がいないという事実を知った時に、もっと真剣に向き合ってみようと思ったんですね。その部分が映画を作る時のインスピレーションになっています。――劇中のソーン先生とサーマート先生は似ている部分があるのですか?監督:やる気や真剣さに関してはソックリだと思います。ただソーン先生を作る段階で滑稽な部分や面白い部分を入れてキャラクターとしての色彩を出しています。――ソーン先生役のビー(スクリット・ウィセートケーオ)さんがとても純朴で、笑顔がすごく印象的です。彼はタイでは大スター。日本でいう松本潤さん、木村拓哉さんのような存在だそうですね。この作品の中ではスターというよりすごい純朴青年ですよね。監督:ビーさんはスーパースターですけど、実際は地方出身の方なんです。結構普通の方なんです(笑)。だけど彼には「何かを成し遂げるためのやる気や真剣さ」がすごくある。そういう意味ではサーマート先生とビーさんが似ている部分があるんじゃないかなと思います。そういう部分を彼の瞳の中に感じたので、彼にこの映画で演じてもらえないかと誘ったんです。――実際、一緒に仕事をしてみていかがでしたか?監督:スーパースターめいて振る舞うことが全然なくて、すごい純朴で、友達と喋っているような感じの人ですね。ビーさんってすごい明るい方だから子供たちともすぐ上手くやれるんです。実際のサーマート先生は滑稽な人ではないんですけど、ビーさん自身のキャラクターがソーン先生のキャラクターに合わさって、ああいう映画の中のソーン先生が生まれたんじゃないかなと思います。――水上学校のロケーションがとても素晴らしかったですが、撮影そのものはとても苦労されたんじゃないでしょうか。監督:水上学校はサーマート先生が教えていた学校をモデルにしてかなりいろんな部分を似せて作りました。実際に水もなければ電気もないし、携帯の電波も入らないようなところ(笑)。撮影チームがトイレに行きたい、となると、一回船に乗って岸まで戻らなくちゃいけないというレベルです(笑)。実際の映画の中で描かれているような生活を、撮影隊も経験していたと思ってくれればいいです(笑)。――撮影中の食事などはどうされていたのですか?監督:学校のセット以外に湖に浮かぶ建物をもう一つ作って、そこに全部物を置いて、そっちでご飯を食べたりしていました。そもそもなんでわざわざそんなに遠いところに行かなきゃいけなかったのかというと、やっぱり何も周りに無いところにどうしても行きたかったんです。そのことによって自然の生々しさや寂しさ、孤独というのをきちんと表して、お客さんに伝わるようにしたかったんです。だからわざわざ遠いところに行ったのです。――物がない、という状況の中で一番の苦労はどんなところでしたか?監督:現代人である私たちにとって一番問題があったのは携帯の電波が届かないというところです(笑)。これは映画の話とも繋がっていて、今の時代って携帯がちゃんと通っていると、自分の知りたいことがその場ですぐアクセスできるし、誰かと喋りたいと思ったらその場ですぐ喋ることができますよね。でも撮影中は携帯の電波が通っていなかったので、一度撮影場所に行ってしまったら朝から晩までチームだけでずっといなきゃいけなくなるんです。嫌でも自分と向き合う時間になりました。そういう意味ではサーマート先生や、映画の中のソーン先生やエーン先生と同じような状態になっていたと思います。ある種、映画のテーマにも近いんですが、自分の「誰かを思う気持ち」というものを精一杯使うことができた期間だったかなと思っています。――水上学校というのも日本にはあまり馴染みがありませんが、先生が子どもに料理を振る舞ったり、一緒に寝泊まりとかもしているんですか。監督:水上学校って私が知っている限りでもタイでは一校しかないんですけど、結構特殊なんです。町中の学校に行くのにすごく時間がかかる漁師の子どもたちなどが月曜日の朝にお父さんとお母さんに学校に送り届けられると次に迎えに来るのが金曜日の午後なんです。だから5日間は先生と一緒、付きっきりなんですね。だから先生が親代わり、すべての面倒を見てあげる。ご飯を作ってあげたり、一緒に寝るとかそういったことをしてあげるんです。――教師である前に、母親や父親だなという印象を作品を見てすごく受けました。エーン先生は肝っ玉母ちゃんみたいな感じで、ソーン先生は新米パパみたいで(笑)。タイの女性の社会での立ち位置というのはどうなのでしょうか。監督:タイでは昔は女性は家を守るべきという考え方がありましたが、今は関係なくなってきています。優秀な女性は認められるようになってきていますね。ジェンダー差、性差は実際の社会においてあまりないと感じます。そういう意味でエーン先生は自分に自信がある女性の代表みたいなところがありますよね。自分の信じたことをやる、自分が正しいと思ったことをやってみる。自分の正しさを証明するところがある。戦っていくわけです。――ラストシーンについて、監督はエーン先生とソーン先生のその後をどう予想されますか?監督:実はあんまり答えたくはないんですけど(笑)。できれば観た人に考えてほしい。この映画のメッセージとしてそもそも、「考え方の似ている人たち同士が恋に落ちる」というのがあるんです。会ったことがないのにお互いを励まし合って、お互いの考えが繋がっていく。このふたりが恋に落ちた時に実際にどうなっていくのかというのを観た人に考えてほしいなと思います。出会ったことのないふたりが恋に落ちるってファンタジーなんですよ。ファンタジー過ぎるんです。だけど実際にお互いに愛することができるのか、あるいはそれが駄目だったならどうして駄目なのかということを、観客のみなさんが考えてもらうよう余白を作っているんです。そういうふうに余白の部分をお客さんに考えてもらえたら、と思います。(text:Tomomi Kimura)
2016年05月18日アメリカには非常にダークな側面がある。『キャプテン・アメリカ』にあった“古き良き正義の味方アメリカ”というイメージの一方で、『それでも夜は明ける』にあったような人種差別が合法だったという醜い過去も持つ。そして恐ろしいことに、現在のアメリカでは人種差別の矛先がLGBTの人々に向いてきており大変な懸念材料となっている。アメリカでは自分の性に正直に生きようとした人々を扱ったさまざまな映画が公開され、多数の映画賞候補となったりアカデミー賞を受賞した作品もある。例えば、女性ふたりの切ない同性愛を描き今年のアカデミー賞6部門にノミネートされたケイト・ブランチェット主演作『キャロル』。そして1930年に世界初の性別適合手術を受けた人物リリー・エルベを題材としたエディ・レッドメイン主演作『リリーのすべて』では、アリシア・ヴィキャンデルが助演女優賞を受賞して話題を呼んだ。これを見た限りでは、「米国というところはさぞやLGBTの人たちに寛大で思いやりの心があるに違いない」と思う方々も多いだろう。ところがこれは大きな勘違いである。アメリカという国はとにかく広い。ハワイも入れると4つのタイムゾーンからなる巨大な国である。日本の人々が描くアメリカの印象は、殆どがロサンゼルスとニューヨークのイメージであり、実のところこの2つの都市は、むしろ別の国といってもよいほど他のアメリカの地域とは暮らし方や考え方が大きく異なる。また、法律にしても連邦レベルで決められた国の法律と州レベルで決められた州法があり、州法は各州によって大きく異なる。良い例は、去年に国レベルの米最高裁で可決された「同性婚は合法である」という法律である。これも各州によって受け止め方が異なり、超保守派ならびにキリスト教信者が多い南部の州は、米国憲法第1条にある宗教の自由を振りかざし「ゲイやトランスジェンダーはキリスト教で認められず、そのような人間に関わることすら神への冒涜である」という考え方がまかり通っている。それだけではない。保守派が非常に多い南部の州ジョージア、ノースカロライナ、ミシシッピー、テネシー、テキサス、フロリダでは「信仰の自由」という憲法を逆手にとり、「ゲイやトランスジェンダーとのビジネスは、信仰上の理由であれば拒否してもよい」というあり得ないような反LGBT法案が提案され、物議を醸した。ジョージア州に関していえば、新作『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』や、人気TVドラマ「ウォーキング・デッド」など、映画やTV番組のロケ場所を提供することで財を潤しているため、この法案に対するセレブや映画スタジオの猛反発が財政に悪影響を及ぼすと見た州議会が、この法案を否決した。だが、隣州のノースカロライナ、ミシシッピー、テネシー州では、この法案が可決されてしまったのである。なかでもテネシー州では、「信仰上の理由であれば心理カウンセラーは、 ゲイやトランスジェンダーへのサービスを拒否してもよい」という恐るべき法律が付け足され、こうなると南部にある病院では医師や看護婦によってはLGBTの患者を拒否する可能性が生じ、あるまじき生死の問題となる。話しが少々逸れるが、『アベンジャーズ』では、アベンジャーズに拘束された悪者ロキが、スーパーヒーローたちの傲慢さを利用して内部分裂を生むことで、内側からアベンジャーズを崩していった。アメリカもみんなが力を会わせれば世界一の良い国になれるだろうに、政界でも人種間でもいつも仲間割れをしている。アベンジャーズは仲間同士のいがみ合いが地球を半壊滅状態にまで追い込んだ。お互いにいたわり合い尊重することを学ばなければアメリカも自滅の道を歩むことになり、周囲に居る者をも巻き込むことになりかねない。(text:Akemi Tosto)
2016年05月14日初めてプリンスの音楽に出会った時のことを、今でも覚えています。ラジオ「アメリカン・トップ40」で、DJのケイシー・ケーサムが、ワーナー・ブラザーズ・レコードに所属するこの若きシンガー・ソングライターを紹介したんです。彼はプリンスについて、18種類以上もの楽器を演奏し、自分で作詞とプロデュースをすると話していました。そしてその週にチャートに初登場したシングル曲「I wanna Be Your Lover」を聴いた瞬間、恋に落ちたんです。その時からプリンスは、私のとても大切な“人生のサウンドトラック”になりました。ウォークマンでアルバム「1999」を聴きながら、バレーボールやバスケットボールの試合にバスで向かったことを思い出します。映画『パープル・レイン』を見た後、高校の女子友と一緒にピアスを開けました。だって…私も彼みたいに大胆になりたかったの。そしてその後、私は音楽業界やラジオの世界で働くようになり、常に素晴らしくて斬新な音楽を生み出すプリンスを目撃してきました。“なぜエンタメ業界で働くことを決めたの?”と聞かれると、私はいつも即答するんです。“12歳の時にプリンスに出会って、人生が変わったの。運命的な出会いだった”ってね。あんな才能高きミュージシャンと仕事をする機会を得られた私は、本当に恵まれてると思います。私のキャリアにおいて、とても大きな出来事です。プリンスは音楽業界に大きな足跡を残しただけでなく、映画のサウンドトラックもいくつか手がけました。もちろん『パープル・レイン』の音楽もそうです。この映画は、映画史に残るような最高傑作ではないかもしれませんが、今でも根強い人気のある作品であることは事実です。それに、彼はこの映画でアカデミー音楽(編曲・歌曲)賞を受賞しました。こんな私にとって、プリンスが自宅で亡くなったというニュースは、とてもとても悲しくて、本当にショックでした。私の人生の一部だった人がいなくなってしまうなんて!夢にも思いませんでした。不思議なことに、彼が旅立った翌日、彼のホームタウンのミネアポリスに行くことになっていたんです。信じられないタイミングでしょう!でもその時の私は、まだショックから立ち直れず、彼の死を信じられなかったので、ペイズリー・パーク・スタジオの自宅に行って、最後のお別れをするなんてできないと思いました。でもできたんです!彼の訃報から2日後の、土曜日の午後にペイズリー・パーク・スタジオを訪れると、そこは一面が紫の海のようでした。たくさんのファンが、プリンスの大好きな色の紫の洋服を着て、集まっていたんです。アメリカ中から集まっただけでなく、東海岸に観光で来ていたヨーロッパの人もいました。彼らはニューヨークに到着して、プリンスの訃報を聞き、すぐに予定を変更して、ミネアポリス行きのチケットを買い、伝説のミュージシャンの歩んできた軌跡を祝うために、ミネアポリスに来たそうです。プリンスの音楽を大音量で流す人や、彼の絵を描いてきて、ペイズリー・パークのフェンスに飾る人もたくさんいました。私が到着した時は、ちょうど親しい人たちだけで葬儀を行っている最中でした。プリンスの妹は2度出てきて、フェンスの近くにいるファンに向かって手を振ってくれたし、義弟も車でフェンスの近くまでやって来て、ドアを開けて、プリンスの音楽を大音量で流してくれました。それから私がファンの絵を写真に撮っていると、門が開き、関係者が葬儀のお花を持って出てきたんです。そしてそこにいるファンに渡し始めたの。ラッキーなことに、私ももらいました!たくさんの人が彼の話をするその場所は、アーティストとしても、人としても、多くの人を魅了していた彼への愛にあふれた素敵な空間でした。現代を代表する天才ミュージシャンの一人が、もうこの地球にいなくて、新しい音楽を聴かせてくれないんだと私が理解するには、まだ長い時間が必要のようです。でも天国で穏やかな時間を過ごしていることを願っています。きっとプリンス、マイケル・ジャクソン、ホイットニー・ヒューストンで、盛大なパーティをやっているんでしょうね!安らかに眠ってね、私の大好きな紫の王子様。寂しくなるわ。(text:Lisle Wilkerson)
2016年05月11日昨今、何かと芸能界を賑わせている不倫問題。4月クールは、ドラマ界にもその余波が押し寄せてきています。そこで今回は、思わず身の毛立つリアルな描写が話題の恋愛ドロ沼ドラマ3作品をピックアップ。男女の激しい心理戦…、行く末は如何に!?■その人、本当に信じられますか?恐るべき“愛執の連鎖”から目が離せない「僕のヤバイ妻」背筋が凍るとは、まさにこのこと。「女って怖い!」見ていて率直にそう思わせてくれる「僕のヤバイ妻」、皆さんご覧になりましたか?伊藤英明演じる主人公・望月幸平は、相武紗季演じる不倫相手と共謀し、妻・真理亜の持つ莫大な遺産を狙った殺害計画の実行を決意。しかしながら、ひと足先にその計画に気がついた真理亜に先手を取られ、事態は思いもよらぬ方向へとシフトすることに…。家族や隣人、さらには警察、マスコミまでをも巻き込んで展開していく“愛執の連鎖”。息つく間のないジェットコースター的展開から目が離せない一作と言えるでしょう。そこでまず注目したいのが、木村佳乃演じる“ウザイくらいに完璧な妻”真理亜が行っていた恐怖行動の数々です。もちろん大前提として、不倫に手を染めてしまった幸平に非があることは明白なのですが…それにしても、溢れんばかりの愛情がスゴイ(笑)。彼が朝目覚めてリビングに出てくるであろうタイミングでパンを焼き上げ、スープを温める。そしてそのひと口ひと口への感想を求める真理亜。食後は洗面所へと連れ添って、歯磨きをサポート。ベストなタイミングで水入りのコップを差し出す完璧ぶりに、普通の女性なら「ココまでしないでしょう!?」とツッコミを入れたくなるはず。…がしかし、実際このように尽くされると男性は、気づかぬうちに“彼女無しでは生きられない”ダメ男へと育ってしまうというのがこの物語の面白いところ。明らかに重過ぎるのに、後々ふり返ってその重さを「彼女ほど僕を愛してくれる人はいない」と思わせる上等テクニック!真理亜の地道な活動が実を結んだ瞬間は、まさにホラーとしか言いようがありません。そうして最後、事件の全容が暴かれた後でも、彼女はしれっと「あなたは私に逆らえない」と微笑みます。3歩下がっているようで、実は3歩先を歩んでいるまさに“完璧な妻”。その行く末を、最後までじっくりと観察していきましょう。■傷つくリスクは“二股”で解消すべし恋に臆病な女性必見「毒島ゆり子のせきらら日記」続いての作品は、放送前からエロティックなPR映像が話題となっていたコチラ!「毒島ゆり子のせきらら日記」です。主人公・毒島ゆり子の「艶っぽさ、小悪魔ぶりがヤバイ」と男女問わず高評価を得ており、前田敦子の新たな一面を知る貴重な機会と言える本作。ドラマの最初にテロップで浮かび上がる“恋愛体質のすべての女性へ”というキャッチコピーが非常にリアルですよね~!仕事には全力投球できるのに、恋愛だけはどうしても足がすくんでしまうという女性…実は結構多いのではないでしょうか。そんな世の悩みを代弁すべく主人公・ゆり子が編み出したのが、「傷つきたくないならば二股をしよう」大作戦です(笑)。愛が一生続くということはない。一人の男性に没頭してしまったら、最後には必ず傷つく結末が待っているという持論。彼女は二股をすることで、平和に生きていくためのバランスを必死に保ってきました。しかしながら、恋愛体質を甘く見てはいけません。幼少期、母親に裏切られたトラウマから、「不倫だけは絶対にしない」と決めていたゆり子でしたが、同じ政治記者の小津(新井浩文)に対する直感的恋愛感情から逃れることができず…誘惑に負けてしまいます。クロワッサンの食べ方で“女性の愛し方”を見極めてきた彼女が初めて出会った、自分と同じ食べ方の男。クルクルとパン生地を剥がしながら食べる小津の指先を見つめながら、「この人となら堕ちていく覚悟がある」と心決める姿は、何とも言えない歯がゆさが――。理由なんて本当は後付けで、二股も不倫も「独りが淋しい」言い訳でしかないのだと、ゆり子自身が痛いほど理解している現実の虚しさこそが、このドラマ最大の見どころなのかもしれませんね。そんな彼女が、物語のラストに一体どのような幸せを選択するのか。予想しながら視聴していきたいと思います。■決して他人事とは思えない!「不機嫌な果実」が生み出す“愛”の裏側とは…?最後に、ザ・ドロ沼恋愛といえば、この作品も忘れてはいけません。林真理子さんの人気小説が20年ぶりに連続ドラになって帰ってきた「不機嫌な果実」。以前1997年に、石田ゆり子主演でドラマ化された同作をご覧になった方も中にはいらっしゃるかも?物語にスマートフォンが登場することで、不倫のテイストにも若干の変化が。古き良きドロドロ感と程よく絡み合っているので、見比べてみるのも面白いかもしれませんよ。結婚して5年、夫から女性として求めてもらえなくなった主人公・麻也子(栗山千明)は、昔の恋人である野村(成宮寛貴)とカラダの関係を持つことで、自分の存在価値を見出そうともがいていました。「自分が不倫をするのは、夫が興味を示してくれないからだ」何度も自分にそう言い聞かせる麻也子。稲垣吾郎演じる夫の、適度に嫌味ったらしい物言いがまたとーってもリアルなんですよね!日常会話をしたいだけなのに、「そんなことより、シャンプーの位置が違うんだけど」と話題をすり替えられちゃう辺りとか…。視聴していて、つい一緒に拳を握ってしまう女性も多いはず(笑)。ですが結果として、一線を越えてしまった麻也子には明らかな非ができてしまいました。不倫の決定的証拠となるSNSの履歴を見てしまった夫がどう出るのか。また加えて、麻也子の親友役として登場している高梨臨さん&橋本マナミさんのお二人も、表面上は友達として理解を示していますが…心の奥底に垣間見える麻也子への憎悪が物語にどう影響していくのか。私たちのすぐ隣で起こっているかもしれないリアルなドロ沼恋愛の裏側を覗くことのできる貴重な機会と言えそうです。本作を決して自分事にしない教訓として、結末までしっかり見届けていきましょう。以上、いかがでしたか?いずれの作品も、初回から主人公たちがドロ沼街道をまっしぐらに突き進んでいる…ある意味問題のある作品ばかり。ひと言では説明できない複雑な感情の交錯を、とくとお楽しみくださいませ。(text:Yuki Watanabe)
2016年05月04日映画業界が最初に言い始めた、ゴールデンウィーク。すでに超大作の続編や大人気アニメなど、話題作が次々と封切られているが、今年は最大10連休になる人もいるという、まさに“大型連休”の年。でも、新しい生活とストレスに(?)ようやく馴染んだころにやってくる、この長い休みの後には、いわゆる“五月病”が気になってしまうが…。そこで今回は、鬱屈した気持ちを解き放つ、とびきりのエンターテイメントでありながら、“夢”や “自分の原点”についても考えさせてくれる映画に迫ってみた。■夢を叶えた“その先”に待つもの…『ズートピア』vs『ボーダーライン』あらゆる動物が快適に暮らす、超ハイテク社会を舞台にした『ズートピア』(公開中)。「誰でも夢を叶えられる」と信じる主人公のジュディは、ズートピア初のウサギの警察官だ。サイやゾウ、カバのような大きくてタフな動物だけが警察官になれるといわれていた中、ジュディは努力の末、トップの成績で警察学校を卒業し、念願の警察官になった。しかし、いざ勤務が始まっても、見た目で判断される彼女はいつでも半人前扱い。アフリカ水牛の署長に自身の優秀さをアピールするも、「だからなんだ!?」と言われてしまう。そんなある日、ズートピアを揺るがす連続失踪事件を担当することになったジュディ。“夢を信じない”キツネのニックを相棒に、タイムリミットの48時間以内に事件を解決しなければならず…。多様性と自分らしさ、固定観念に縛られることの危うさなど、実はとても深いテーマを描いていると早くも話題の『ズートピア』。肉食動物も草食動物も分け隔てなく暮らすその世界は、人間にとっても理想郷のように見えるが、では、ジュディをはじめ動物たちは“自分らしさ”“あなたらしさ”とどう向き合っているのか。夢を叶えたはずのジュディに待つ、新たな試練に注目してみてほしい。また、もう1本は全く違った世界観のエミリー・ブラント主演のサスペンスアクション『ボーダーライン』(公開中)。FBIのエージェント、ケイト(エミリー)はある日、特別捜査官グレイヴァー(ジョシュ・ブローリン)に現場経験の豊富さを買われ、国防総省の特別部隊にスカウトされる。彼らが行う極秘の任務は、アメリカとメキシコの国境付近を拠点とする麻薬組織を壊滅させるミッション。だが、麻薬戦争のただ中、文字どおりの法なき秩序なき無法地帯は、ケイトがこれまでの経験から得てきたセオリーがまるで通用しない場所だった。グレイヴァーも、捜査に協力するコロンビア人アレハンドロ(ベニチオ・デル・トロ)も、常軌を逸したかのような手荒なやり方で組織に迫る上、警察も買収されており、ケイトは誰も信用できない状況に陥っていく。現場最前線の“現実”に、圧倒されてしまうケイト。凄惨で残忍なシーンや息詰まる緊迫の銃撃戦などもあれど、一刻一秒、自分自身が試される状況で彼女はどんな選択をするのか。最後まで心を折られずに自身の正義を貫けるのか。戦うヒロインの姿は必見だ。■“なりたかったもの”になれた?…『アイアムアヒーロー』vs『海よりもまだ深く』夢といえば、この2作に登場する中年にさしかかった主人公たちも、かつて一度は、夢を叶えたことがある。『アイアムアヒーロー』(公開中)では、35歳の冴えない漫画家アシスタント・鈴木英雄(大泉洋)は、15年前に新人賞を受賞した。だが、当時の受賞仲間が人気漫画家として大成している一方で、彼は苦心の新作を編集部に持ち込むも、「英雄と書いて、ひでお」という名前さえ覚えてもらえない。また、職場でも何だか腫れ物扱い、同棲している彼女にも愛想を尽かされてしまう。そんななか発生した、原因不明の感染で凶暴化した生命体“ZQN(ゾキュン)”による大パニック。英雄は逃げる途中で、赤ん坊のZQNに噛まれ“半ZQN・半人間”状態になった比呂美(有村架純)と出会い、ともにアウトレットモールにたどり着く。そこでは元看護師の藪(長澤まさみ)たちが、ZQNと戦いながらコミュニティを築いていた。英雄たちも当初は歓迎されるのだが…。本格“ゾンビ”・パニックムービーとして、世界的にも評価され、好調を博しているこの作品。趣味の猟銃を常に抱えて逃げながら、一度も発砲することのなかった英雄が、あるとき決意の引き金を引く。たとえ、それが本意ではなかったとしても、彼はようやくなりたかったものになれたのかもしれない。また、『海よりもまだ深く』(公開:5月21日)では、主人公・良多(阿部寛)も15年前にデビュー作が文学賞を受賞したきり、あとは鳴かず飛ばずの自称・作家だ。生活のため探偵事務所で働いているが、周囲にも自分にも「小説のための取材」と言い訳している。別れた妻・響子(真木よう子)にも、団地でひとり暮らす母(樹木希林)にも、いつも言い訳ばかり。そしてある台風の日、団地の母の家に集まった“元家族”は、本音で語り合うことに…。とはいえ、たった1日で「こんなはずじゃなかった」人生はそうそう変わらない。良多の人生もいきなり台風一過の快晴、というわけはいかないのだ。では、「パパはなりたいものになれた?」そう真っすぐに尋ねてくる息子(吉澤太陽)に対して、阿部さん演じる良多はどんな答えを見つけたのだろうか。ぜひ見守ってみて。■自分の原点を実感する瞬間…『殿、利息でござる!』vs『ヘイル、シーザー!』年貢の取り立てや労役で困窮する地元の宿場町を復興するため、立ち上がった庶民たちの実話を映画化した『殿、利息でござる!』(公開:5月14日)。阿部サダヲを主演に、瑛太、妻夫木聡、さらには竹内結子、千葉雄大、寺脇康文、きたろう、西村雅彦ら豪華キャストが勢ぞろいし、藩に大金を貸して、その利息で宿場町を救おうとする彼らと、そうはさせない“お上”との銭バトルが描かれる。殿を演じるのは、映画初出演のフィギュアスケーター・羽生結弦だ。絶対絶命の町のピンチを救うのは、おのおのが私欲を忘れ、私財を投げ打つチームワーク。そして、知恵と勇気と、ほんの少しの我慢!?目標・千両(=3億円相当)を工面できるかどうかは、それぞれの意志と郷土愛にかかっている。愛といえば、仕事への愛と情熱とプライドがたっぷりと詰まっているのが、コーエン兄弟の最新作にして集大成、超豪華キャスト共演の『ヘイル、シーザー!』(公開:5月13日)。主人公は、映画スタジオで巻き起こる、あらゆる“ちょっとした”問題に対処する“何でも屋”マニックス(ジョシュ・ブローリン)。ハリウッド黄金期と呼ばれた1950年代を舞台に、大スター(ジョージ・クルーニー)の誘拐事件を解決していくサスペンスでもある物語は、映画愛のみならず、夢の世界で働く者たちへの愛も込められている。秘密裏に誘拐事件の調査に乗り出すマニックスは、それぞれ主演作を撮影中のスターたち(スカーレット・ヨハンソン、チャニング・テイタム、アルデン・エーレンライク)との関わりから解決の糸口をつかんでいく。実はどの映画も、マニックスがいなければ回らない。自分の仕事について不安と疑問を抱えていた彼に、今回の騒動はひと筋の光明を与えてくれるのだ。(text:cinemacafe.net)
2016年05月03日人気漫画の映画化『セトウツミ』、そして10年ぶりの完全新作続編『デスノート Light up the NEW world』で競演する若手実力派の筆頭株、菅田将暉(23)と池松壮亮(25)。菅田さんは、auの人気CMで“鬼ちゃん”としても知られ、月9ドラマ「ラヴソング」にも出演中。上記2作ほか『暗殺教室-卒業編-』『ディストラクション・ベイビーズ』『二重生活』『溺れるナイフ』など、今年9作もの映画出演を果たす。一方の池松さんも、『ディストラクション・ベイビーズ』『無伴奏』『海よりもまだ深く』『だれかの木琴』など計8作に参加、dTVオリジナルのリアル不倫ドラマ「裏切りの街」にも出演した。2人とも早くから頭角を現していたものの、一気に注目を集めたのは、ここ2~3年。それぞれ『共喰い』(2014年)、『紙の月』など(2015年)で日本アカデミー賞新人賞を獲得。新進気鋭の真利子哲也や、大森立嗣、佐藤信介、三浦大輔、青山真治、呉美保、吉田大八、さらに是枝裕和などまで、名立たる監督たちに“撮りたい”と思わせる抜群の演技力と独特の色気を有し、いまや“超売れっ子”状態だ。そこでシネマカフェでは、今後いずれ、彼らに勝るとも劣らない存在感を発揮していくであろう、次なる若手実力派を探ってみた。■山田裕貴&林遣都…今年、注目度上昇中の25歳『闇金ドッグス3』『オオカミ少女と黒王子』『HiGH&LOW THE MOVIE』など、今年6本の話題作に出演し、さらなる新作も控えているという山田裕貴は、いま最注目の1人。劇団「五反田団」主宰の異才の舞台人・前田司郎のワークショップに参加し、「面白い」とすっかり気に入られた彼は、前田さんが監督を務める映画『ふきげんな過去』で二階堂ふみの相手役に抜擢。また、8月から前田さんが作・演出を手掛ける「宮本武蔵(完全版)」では念願の舞台初主演を務め、なんと“脱力系”の武蔵に扮するという。『オオカミ少女と黒王子』では“あの”菜々緒をナンパするチャラ男、『HiGH&LOW』では「鬼邪高校」トップ・村山役でかなり激しいバトルアクションにも挑んでいる山田さん。色気ダダ漏れのイケメンの表情以外にも、熱いハートや“三枚目”な一面を持ち合わせている、多彩な引き出しの持ち主だ。また、林遣都といえば、又吉直樹による芥川賞小説を原作にしたNetflixオリジナルドラマ「火花」で、主人公の漫才師・徳永役に決定したことも記憶に新しい。『HiGH&LOW』では、山田さん演じる“村山”も一目置く「達磨一家」のトップを凄みたっぷりに演じていた。現在は、自身も大ファンだという劇場版『遊☆戯☆王 THE DARK SIDE OF DIMENSIONS』で、風間俊介ら初期レギュラーと共に声優初出演を果たしており、「遊☆戯☆王」ファンからも好評を得ている様子。25歳になった今年は、川口春奈共演『にがくてあまい』ではゲイ、村川絵梨共演『花芯』では妻に不倫される夫役に挑み、9月には意外にも初舞台となる「家族の基礎~大道寺家の人々~」と、また1つ壁を打ち破る林さん。来年には俳優生活10周年を迎える彼の、ついに来た飛躍に期待が高まる。■須賀健太…子役から見事な脱皮、危険な色気漂う!?ドラマ「人にやさしく」や「喰いタン」、『ALWAYS 三丁目の夕日』シリーズ3作、日本アカデミー賞新人賞を受賞した『花田少年史幽霊と秘密のトンネル』などで注目を集めた須賀健太は、現在21歳。身長が伸び、顔つきもすっかり大人びてイケメンになってきた。現在は、バレーボールに燃える高校生役で主演を務める、大ヒット漫画の舞台化「ハイキュー!!」“頂の景色”に出演中。プロジェクションマッピングなどを駆使したハイパープロジェクション演劇として話題の舞台は今回が再演、“進化”を口にし、熱く頼もしい姿を見せている。さらに5月21日(土)からは、“絶対に読んではいけない漫画”の実写化にして、R15指定の超問題作『シマウマ』が公開される。“ジョーカー”のようなメイクを施した快楽殺人者・アカを演じている須賀さんは、かつてないヤバい役どころ。先日も「載せるか迷った…」とコメントを添えた衝撃的な劇中写真を、自身のインスタグラムにアップ、ファンを騒然とさせたばかりだ。また、松田翔太主演、熊切和嘉監督『ディアスポリス -DIRTY YELLOW BOYS-』では、全編中国語でアジア人犯罪組織のメンバーを演じることも発表されており、かつてのイメージはまちがいなく払拭されるはず。演技力は誰もが認めるだけに、その“振り幅”は引く手あまたとなりそうだ。■村上虹郎&北村匠海&横浜流星…伸びしろ絶大の同世代柳楽優弥に菅田さん、小松菜奈、村上虹郎(19)、さらに北村匠海(18)、池松さんら、注目のキャストが勢ぞろいし、全編にわたり狂気と破壊が暴走する『ディストラクション・ベイビーズ』もまた、今年の超問題作の1つだ。柳楽さん、菅田さんを筆頭にそれぞれチャレンジングな演技を見せているが、最近ではNTTドコモのCMでも話題の村上さんは、姿を消した兄(柳楽さん)を必死に探す弟・将太役に。暴力沙汰を起こしてばかりの兄を心配する気持ちと、ひとり取り残された孤独や怒りという、複雑な感情を抱えた少年を好演、抜群の存在感を見せつける。加えて、『あやしい彼女』では主人公(多部未華子/倍賞美津子)の孫役がハマリ役だった北村匠海は、村上さんの友人役として驚異の変貌ぶりを見せており、爽やかキャラのイメージを覆す。北村さんは、名言続出中のドラマ「ゆとりですがなにか」にも第3話から登場しており、脚本の宮藤官九郎と『あやかの』水田伸生監督の演出のもとで、さらなる成長が見られるかもしれない。ちなみに村上さん、北村さんは“若手の登竜門”「JR SKISKI」CMに出演済みという共通項がある。最後の注目株は、二階堂さんに山崎賢人、山田さん、菜々緒さん、鈴木伸之、門脇麦、池田エライザ、玉城ティナ、吉沢亮と、キャストがとにかく豪華な『オオカミ少女と黒王子』で、山崎さん演じるドSな“黒王子”が心を許す数少ない存在、日比谷健役を演じる横浜流星(19)。「烈車戦隊トッキュウジャー」トッキュウ4号/ヒカリ役で一躍注目を集めた横浜さんは、そのクールなルックスに加え、極真空手初段の腕前やTBS系「最強スポーツ男子頂上決戦」でも披露した鍛え抜かれた細マッチョボディも話題に。5月13日(金)からは親友・高杉真宙とともに深作健太演出の舞台「闇狩人」に出演する。7月2日(土)公開の『全員、片想い』の1編『イブの贈り物』では、かなり年上の女性に片想いする介護士役を演じることになるが、数々の舞台経験で培った表現力と抜群の運動神経は、本格アクション大作でも見てみたい“伸びしろ”を感じさせている。(text:cinemacafe.net)
2016年05月01日それにしても、マシュー・マコノヒーはいつからこんなカメレオン俳優になったのかなと思う今日この頃。第86回アカデミー賞で主演男優賞を受賞した『ダラス・バイヤーズクラブ』での痩せ細った姿が記憶に新しいですが、そもそも彼は二枚目スターで売ってきた人。ところが最近は、『ダラス・バイヤーズクラブ』で見せた、捨て鉢な男が権力への怒りを力に変えていく様子や、ちょい役ながら『ウルフ・オブ・ウォールストリート』で大きなインパクトを残した倫理なき金の亡者ぶり、『インターステラー』で見せた元宇宙飛行士らしい哀愁ただようインテリっぷり、『マジック・マイク』で女性たちを魅了した色気むんむんの男っぷりなど、ひとつとして似たような役を演じていないのが凄いところです。二枚目俳優は短命というのが定説ですが、上手く個性派にシフトしていけば、良質な作品で長く活躍し続けられるという良い例なのでしょう。日本の青木ヶ原樹海を舞台にした新作『追憶の森』では、ちょっとだらしない大学非常勤講師アーサーを演じています。とはいえ、本作の中でも、妻との関係に行き詰まり苛立つ男、絶望から死を選ぼうとする無気力な男、サバイバルのため必死になる男、愛を失い引き裂かれそうになる男、出会ったばかりの男に友情を覗かせる男と、同一人物ながらさまざまな側面を演じ分けているマシュー。ひとりの男の変化、内面にある複雑な想いを見事に表出させる彼の姿に、持って生まれた才能はもちろん、それを花開かせた彼の情熱、充実した俳優人生を感じずにはいられません。さらに彼は外見にも恵まれたといえるでしょう。それは単にカッコイイというだけではなく、チンピラ(!)から、ストリップクラブのオーナー、宇宙飛行士に至るまで、説得力を持って演じられる外見と言う意味。もちろん、メイクアップアーティスト、衣装デザイナー、スタイリストらプロの協力を得て役に合った外見を作っていくわけですが、彼の場合、表情ひとつで、品性のようなものを劇的に出し入れできているように感じるのです。それが上手く活かされているのが本作。学者らしく、オックスフォードシャツにチノパン、ステンカラーコートを愛用するアーサーですが、佇まいは同じでも、ときに優しい、ときに卑屈な表情を見せる様子が実にリアル。同じ人間だって、常にかっこいいわけでも、常にいい人なわけでもないですからね。ナオミ・ワッツ演じる妻ジョーンに対しても、そのときどきで違った気持ちをぶつけるシーンが登場しますが、彼女を見つめる表情にもご注目を。彼が見せる変化には、かなりゾクゾクさせられることでしょう。話は変わりますが、『追憶の森』劇場用パンフレットに、別視点でコラムを寄稿させていただきました。劇場にお越しの際は、ぜひお手に取ってみてください。(text:June Makiguchi)
2016年05月01日少し前の作品だけれど、今観ても面白い、むしろ今こそ観るべきドラマたちをピックアップ。今回ご紹介する作品でも、“スターのあの頃”を見ることができてしまいます!注目したいのは、1998年から米FOXで8シーズンにわたって放送されたコメディ「ザット ’70s ショー」。前回取り上げた日本初上陸作「スキンズ」とは違い、「ザット ’70s ショー」は日本のFOXチャンネルでも放送されていましたが、一挙視聴できるようになった今、改めて目を向けたいのにはわけがあります。タイトルからも分かるように、物語の舞台は70年代。ウィスコンシン州の田舎町に暮らす若者たち、エリック、ドナ、ケルソー、ジャッキー、ハイド、フェズの6人が時代の空気を漂わせつつ、ゆるい青春模様を繰り広げていくのですが、何と言っても6人のキャラが魅力的で、演じるキャストも今思えばかなり豪華。気弱でちょっとヘタレなエリックを『スパイダーマン3』のヴェノムことトファー・グレイス、エリックの隣に住む赤毛女子ドナを「オレンジ・イズ・ニュー・ブラック」の美人受刑囚アレックスことローラ・プリポン、おバカなイケメン、ケルソーをアシュトン・カッチャー、気の強いお嬢様ジャッキーをミラ・クニス、陰謀マニアのハイドを「メン・アット・ワーク」のダニー・マスターソン、女子力の高い交換留学生フェズをデミ・ロバートの恋人としても知られるウィルマー・バルデラマが演じています。なかでも、ミラ・クニスとアシュトン・カッチャーのスターパワーは、今や当時より格段にアップ。2人が実生活で交際を始め、子どもを授かり、結婚して家族となった時、「ケルソーとジャッキーが!」と歓喜した「ザット ’70s ショー」ファンは多いはずです。ワガママなお嬢様ぶりを発揮してケルソーをグイグイ引っ張るジャッキーと、打っても響かない残念さとのほほんとした態度でジャッキーに向き合うケルソーは、くっついたり離れたりのすったもんだな展開も含め、「ザット ’70s ショー」的ベストカップルの1つ。ミラもアシュトンもさほど外見に変化がないのはさすがですが、初々しい2人のなれそめを見た気分にもなれるのがこのドラマ。ちなみに、放送開始当時は15歳だったミラですが、ドラマ内で交わしたアシュトンとのキスが、人生におけるファーストキスだったそうです。また、「ザット ’70s ショー」と合わせ、こちらもチェックしてほしいのがNetflixの新ドラマ「ザ・ランチ」。コロラド州で牧場(ランチ)を経営する一家を主人公にしたこのコメディでは、アメフト選手としての夢に破れ、実家を手伝い始める弟コルトをアシュトンが、その兄ルースターをダニー・マスターソンが演じています。ケルソーとハイドだった2人が、今度は兄弟になっているのが面白いところ!友達同士としてキャッキャする2人と、兄弟としてキャッキャする2人。見比べてみるのも、楽しいのではないでしょうか。(text:Hikaru Watanabe)
2016年04月29日女優の前田敦子が主演ドラマ「毒島ゆり子のせきらら日記」(TBS系)で“一皮むけた”姿をみせている。“深夜の昼ドラ”なんて触れ込みで、奔放な恋愛を満喫する主人公・毒島ゆり子演じる前田さんが濃厚なラブシーンに体当たりで挑む、ということで放送前から注目を集めていた話題作の第1話。そういう“お色気”を期待して観た視聴者はやや肩透かしを食らう内容だったかも。もちろん、シャワーシーンをはじめ、セクシーな下着を太ももをあらわに身につけるシーンなんかはあわや見えてしまうのでは?とヒヤヒヤしたし、さらには二股男との逢瀬を待ち焦がれ、会った途端に“肉食”むき出しで唇にむさぼりつく姿などは、「AKB48」時代からのファンなら十分に度肝を抜かれただろうけれど。とはいえ、やはりそれだけが目当てだったとしたら、まあ元アイドルの新進女優ならこれが限界だろうなあ、といった感想に落ち着いただろう。でも、そんな“表向き”のエロティックなシーンだけで、今作を評価してしまうのはまだちょっと早すぎる。今作の前田さんは、たとえばヌードでベッドシーンを演じるなんてこと以上に、とにかくエロティックな「表情」をみせていることに注目したい。これまでの女優としての前田さんをざっくりふり返ってみると、とにかく“AKBのあっちゃん”というイメージからの脱却にもがいた道のりだったように思う。女優としての本格的なスタートはAKB卒業後の2013年5月に公開された映画『クロユリ団地』で狂った形相で病んでいく姿をさらけだし、同年11月公開の『もらとりあむタマ子』では「ニートのダメ女」に。食事をする姿もだらしなく、かつてのアイドルだった姿からはかけ離れた役柄を演じた。そういった“体当たり”が功を奏してか、演技では監督や共演者からは毎回一定の評価を得て、女優賞も数々受賞した。なのにそれらに反して世間ではあまり正当な評価を得られてはいない印象が強いのは、やはり評価云々の前に「前田敦子でしょ」といったレッテルが邪魔をしてしまうのだろうか。しかし、前田さんが持ち前の負けん気で女優業に真剣に取り組んでいることは業界内ではよく知られていて、染谷将太とセックスシーンを演じた映画『さよなら歌舞伎町』への挑戦は、“元アイドル”や“清純”といったイメージを払拭しようとあがいているのだなあという印象も受けた。そんな流れで、今回の「毒島」である。私生活では二股交際を楽しみ、仕事では新入り政治記者として大物政治家の番記者を務めることになり、これから一人前になることを目指す、というところまでが第1話では描かれた。前述にもあるように、「毒島」は前田さんのセクシーなシーンが注目を浴びていたが、「毒島」におけるエロティックさは二股男との情事後に裸でピロートークする、なんてシーンではなく、“表情”だ。「毒島」での前田さんは、その表情に尽きる。2015年5月公開の映画『イニシエーション・ラブ』では、“清純な”お嬢様を演じた前田さん。恋人と甘い恋愛を育みながらも、やがて男から疎まれ暴力を振られ、顔を歪めて泣きながら「止めて」と懇願するその姿は、どことなく“M(マゾ)”的で、筆者も「これは!」と、彼女の新たな境地を見た気がした。元トップアイドルグループの「不動のセンター」なんて華々しい経歴を持つ人気者を叩きたい人たちなんていくらでもいるだろうから、そうした人たちの満たされない欲望と、溜まり溜まった日頃の鬱憤のささやかなはけ口となる「ドM女優」こそ前田さんの適役だ!なんてことを勝手に。一方の「毒島」の役どころとしては「男を信じない」「男をとっかえひっかえ」と、奔放な女。ここで垣間見えるのが、“次の男”を見つけたときのなんとも“メス”的な顔であった。それは恋する少女のそれとは明らかに違う物欲しげな表情で、「わたし、おかしい…。なんか、おかしい」なんてため息混じりにつぶやく。そして、その毒島を無表情ながら獣の目で見つめるのが、新井浩文演じるライバル紙のエース記者だ。こちらはこちらで、変態的に、猟奇的なまなざしで毒島を見つめる。エロス対エロスがねっとりと絡みつく様がスローで描かれていく。相手が既婚者と分かっていながら、欲望にブレーキが効かないように惹かれてしまう…毒島のそんな表情はまさしく“昼ドラ”的で、これまでの作品で見せてきたエロスよりも官能的そのものだった。もちろん同ドラマがエロスな要素だけをフィーチャーしているわけではないが、今後この昼ドラ的なドロドロの愛憎劇が繰り広げられる中、前田さんがどこまで“脱皮”してみせるのか。第1話はまだまだ“前フリ”段階とのことで、これからさらにドロドロさが増してくるようだ。“AKBのあっちゃん”ファンは気が気じゃないかもしれないけれど、このドラマが終わった頃には“元AKB”という肩書を完全に払拭した前田さんが見られるかもしれない。そんな期待を込めて、やましい気持ちなど毛頭なく、次回を録画予約しました。「毒島ゆり子のせきらら日記」は毎週水曜深夜0時10分より放送中。(花)
2016年04月29日【ママからのご相談】中学1年生と小学4年生の娘がいます。長女は塾や宿題があって、そのあとスマホで少し遊んでから、いつも1時過ぎに寝ています。睡眠は個人差があると聞いたのですが、今のところ元気ですし遅刻もしていません。子どもの成長に影響があるものなのでしょうか。●A. 就寝時間が遅い子どもほどイライラしやすいという調査結果が!ご相談ありがとうございます。こんにちは、ライターの川中利恵です。最近、子どもの睡眠不足や睡眠障害が増加しているというニュースをよく見ます。実際に睡眠に関する調査は多数行われていて、社会現象と呼べるほど、子どもの睡眠不足にスポットが当てられつつあり、その重要性が注目されているところです。わが家も子どもたちが高校生になり、夜更かしが増えてきたので気になっているところでした。もし、今は大丈夫だとしても、睡眠不足状態が続いた子どもたちはどうなってしまうのでしょうか。●子どもに必要だと言われる睡眠時間は?文部科学省『不登校に関する実態調査』(平成26年度)によると、子どもに必要と考えられている睡眠時間の目安は以下のとおりです。・0~3か月……14~17時間・4~11か月……12~15時間・1~2歳……11~14時間・3~5歳……10~13時間・6~13歳……9~11時間・14~17歳……8~10時間小学生は10時間前後の、中高生でも8時間以上の睡眠 が必要だとされているわけです。しかも睡眠で重要なのは時間だけではありません。規則正しいリズムで睡眠と起床を繰り返さなければ、睡眠の質が悪くなり、寝ても疲れがとれないという状態が引き起こされてしまいます。同じく文部科学省で平成26年11月に実施された『睡眠を中心とした生活習慣と子どもの自立等との関係性に関する調査』によると、多くの子どもたちは6時半〜7時より前には起きているようです。そこから逆算すると、本来は「小学生ならば21時ごろ、中高生でも22時には就寝した方がいい」 ということになります。実態はといえば、同データによると、22時までに就寝している小学生は49.2%、そして0時以降に就寝するという子どもは、中学生になると22%となり、高校生になると47%にまで増えています。その原因として、塾、スマホなどの普及、親世代の夜更かしなどが挙げられています。●睡眠不足が続くとどうなるの?睡眠中は、体内時計に従って深い睡眠と浅い睡眠を繰り返すものですが、深い睡眠をできるだけ長くとることで、成長ホルモンが分泌され、コルチゾールと呼ばれる副腎皮質ホルモンの一種の分泌が抑制されます。成長ホルモン は、体そのものの成長や肌細胞の修復、疲労回復、脂肪の燃焼を促進する作用があります。寝る子は育つとよく言いますが、この成長ホルモンの作用です。そして、最近の研究では、睡眠不足は生活習慣病にかかってしまうリスクが上げてしまうだけでなく、症状を悪化させる一因であることがわかっています。そして、コルチゾール はストレスを感じたときに分泌されるホルモンで、大量に分泌され続けると脳内の記憶をつかさどる海馬を傷つける作用があります。しかし、深い睡眠中は、コルチゾールの分泌を抑えることができる のです。勉強をしたことをしっかり身につけるためには、睡眠が必要だと言われるのはこのためです。逆に深い睡眠ができていない場合は脳の機能が落ち、うつ病などにかかりやすくなると言われています。つまり、深い睡眠を逃し続けると、成長を妨げ体調不良を起こす上に太りやすくなり、かつストレスにずっとさらされている状態が続いてしまうというわけです。●不登校のきっかけ、2位が「生活習慣の乱れ」小中学生で不登校に陥っている生徒は、全国でおよそ12万人以上もいると言われています。当初はいじめなどが原因とされていましたが、文部科学省『不登校に関する実態調査』(平成26年度)によると、2位が「生活リズムの乱れ」となっています。「朝起きられない」「夜に眠れない」などが原因で睡眠不足・睡眠リズムの乱れに陥り、学校に行けなくなる日が増えていった結果、学校へ行きづらくなり、不登校に陥ってしまう子どもが多くなっているのです。寝る時間は遅くなっても、朝起きなければならない時間は変わりません。それに伴い、脳の疲労回復を担う睡眠時間が短くなり、脳が疲れ切ってしまいます。それにより、自律神経の乱れが起こり、体内時計が狂ってしまうのです。場合によってはうつ病になるケース もあるようです。不登校になっているわけではないから大丈夫、と思っていても、睡眠不足はじわじわと子どもたちをむしばんでいきます。実際に前述の『睡眠を中心とした生活習慣と子どもの自立等との関係性に関する調査』でも、就寝時間が遅い子どもほど、「自分のことが好きだ」という質問に対して「そう思わない」と答えた割合が高く、「何でもないのにイライラする」という質問に対しても「よくある」「ときどきある」と答えた割合が高くなる傾向があったことがわかっているのです。●大人も一緒に早寝&朝活しませんか?早寝早起きをして、朝食をしっかり毎日食べている子どもは、成績が良く、運動能力が高いというデータがすでに存在します。子どもの将来を思うのであれば、勉強をさせることも大切ですが、それ以上にしっかり睡眠をとることの方が重要なのでしょう。日本の子どもたちは世界的にも就寝時間が遅く、睡眠時間が短い傾向があることがわかっています。そのせいか、「子どものためにも添い寝はNG」という説もあるぐらいです。そうはいっても住環境的に、独立した子ども部屋を作れないというご家庭も多いのではないでしょうか。その場合、乳幼児のころは添い寝が一番家族にとって寝やすいのですが、大人の生活時間に子どもが合わせてしまいやすい というウィークポイントがあります。これは小学生や中学生になっても同じで、親がテレビを見たり、スマホをいじったりしたまま「早く寝なさい」と言っても説得力がまるでなく、思春期との合わせ技によって、睡眠時間がどんどん遅くなるばかりでしょう。わが家でも心当たりがあります……。私もかつて、子どもたちが低学年のころまでは、20時に部屋中の電気を消して一緒に寝てしまっていました。それからこっそり1時か2時ごろ起きだして仕事をする生活をしていたのです。しかし、今はすっかり夜更かし型になってしまっていて、それに伴い、子どもたちも夜更かしする日が増えていることに思い当たりました。今思えば、早寝早起きをしていたときの方が、かなり仕事がはかどっていたように思います。せっかくですから、相談者さんのご家庭でも、子どもたちの就寝時間にはパパやママもテレビやスマホを消して一緒に寝てしまい、早起きする生活 をしてみてはいかがでしょうか。そして万が一お子さんに、どうしても眠れない、体調が悪いなどの症状がある場合は、速やかに睡眠外来の門をたたくことを強くおススメします。【参考リンク】・睡眠を中心とした生活習慣と子どもの自立等との関係性に関する調査の結果()●ライター/川中利恵(在宅ワーカー)
2016年04月28日そうか、故郷に帰ることもひとつの旅なんだ――と、『モヒカン故郷に帰る』を観て自分の故郷を思い出しました。東京に出てきて一人暮らしをする前は、当然ですが実家が自分の家でしたし、祖父母や親戚もわりと近くに住んでいたこともあり、ゴールデンウィークや年末年始に家族揃っておじいちゃんおばあちゃんの家に行く周りの友だちが羨ましかったものです。そして時は流れ、故郷を離れ、かつて「羨ましい」と思っていたことを大人になって経験しているわけですが、やっぱり故郷に帰る旅っていいものです。海外旅行と比べるとかなり地味で小さな旅ですが、実家が近づくにつれて見なれた景色が広がり、懐かしい気持ちでいっぱいになる。目的地(実家)に着いたときの言葉は、もちろん「ただいま!」であって、「ただいま」と言える旅ってあったかいなぁと思うわけです。この映画のなかでは、モヒカン頭がトレードマークの売れないバンドマン永吉(松田龍平)が、妊娠した恋人を連れて結婚報告をするために故郷の戸鼻島へ帰ります。戸鼻島は広島・瀬戸内海に浮かぶ架空の島ですが、描かれる風景は、おじいちゃんおばあちゃんのいる町ってこんな感じだよなぁと、自分の記憶と自然とリンクするようなザ・故郷です。息子が親に会いに行く、とてもシンプルな話ですが、永吉の両親は――矢沢永吉をこよなく愛す頑固おやじの治(柄本明)、筋金入りのカープ狂の母の春子(もたいまさこ)。さらに、そんな恋人の両親に初対面ながらもあっさりとけ込む、ズバ抜けた適応力の由佳(前田敦子)…というように、永吉をとりまく人たちの性格は“モヒカン”の見た目以上に個性があって、おまけに「あっ、帰ってきたのね」と、おもてなしとはほど遠い(笑)、ぜんぜん特別じゃない対応がこれまた良くて。そして父親の病気をきっかけに、親との時間について自分たちの将来について永吉は考えます。コミカルで笑わせてくれる映画ですが、そのベースにあるのは「家族って、面倒くさいこともあるけど、やっぱり有難い存在だなぁ」という家族を想う気持ちと気づき。実家に帰ることは特別でも何でもないことだと思っていましたが、帰る場所があるってこんなにもしあわせなことなんだと再確認させてくれる、『モヒカン故郷に帰る』はそういう映画です。もうすぐゴールデンウィーク。小さな旅を計画しようと思います。(text:Rie Shintani)
2016年04月24日いま、教育の現場で注目度が高まっている“中1ギャップ”。昨今ニュースで見聞きする子どもの自殺やいじめによる傷害、殺人といった深刻な事態も、この中1ギャップが根本の原因のひとつと見る向きも少なくありません。しかし、Benesse教育情報サイトが中学生の子どもを持つ親に行った調査では、「中1ギャップ」という言葉の意味まで知っているという回答は7%。知らないとの回答が47%と、ほぼ半数を占めました。教育学博士の著者による『中1ギャップを乗り越える方法わが子をいじめ・不登校から守る育て方』(渡辺弥生著、宝島社)から、この中1ギャップを引き起こしている子どもの3つの環境の変化を追ってみましょう。■中1ギャップとは「中学校生活にとけ込めない状態」そもそも、中1ギャップとはなんなのでしょう?これは、「子どもの心身の発達時期が現代の小学校や中学校の義務教育の学校区分や学校制度と必ずしも適合していないことから生じる心身のギャップ」のこと。もう少しやわらかいいい方をすれば、「小学校から中学校に入学した1年生が、大きな段差や壁を感じとり、中学校生活にとけ込めない状態」です。実際、たとえば不登校は小学生から中学生に進学した段階で減ることはなく、むしろ統計上は増えています。さらにいじめの認知件数データでも、小学校6年生から中学校1年生で件数が増え、中学校2年生になると若干減少する傾向があるのです。データ上でも、ギャップの存在がはっきりと見て取れます。では、小学校から中学校に上がる段階で、子どもたちのなかではどのような変化が起こっているのでしょうか。■中1ギャップを引き起こしている子どもの3つの変化(1)内面の変化=第二次性徴この年ごろの子どもたちが避けて通れないのが、自分自身の心身の変化です。とくに小学校5年生から中学校1年生ぐらいまでの時期、子どもの身体は人生で初めての大きな変化を経験します。第二次性徴です。男子は声変わりや筋肉質な体格になるなど。女子は乳房が発達したり、初潮を迎えたりします。体つきも丸みを帯び、男子とは違いがはっきりしてきます。こうした変化に戸惑ったり、友だちとの違いに劣等感を感じたりするなど、この時期に感じる不安や緊張が、子どもたちのストレスの一因となり、ギャップの根元になっていることが考えられます。(2)関係性の変化=友だちグループの変容子どもたちにとって大切な人間関係、友だちづきあいにもこの時期には大きな変化が現れると著者は指摘します。“ギャンググループ”から“チャムグループ”への変化がそれ。ギャンググループとは、リーダー格、いわゆるガキ大将を中心とした一体性の高いグループで、つねに遊びを一緒にする「仲間」という意識が強いもの。いっぽうのチャムグループとは、お互いの好みや共通点を確認しあう関係性。中学生に入るころ、こうした関係性に変わっていきます。チャムグループに移行するとき、「共通点を失いたくない」「グループから外れたくない」といった焦りにも似た気持ちを感じたり、本音と建前のある関係性になじめかったりして、戸惑う子どもも少なくないのです。(3)環境の変化=進学小学校から中学校へと進学すること自体も劇的な変化です。ほとんどの教科を担任が教えていた小学校と、教科ごとに担当教師が変わる中学校。中学校では部活動に比重が置かれるようになるなど放課後の過ごし方も変わり、先輩後輩関係も小学校時代よりもはっきりしたものになりますよね。なかでも著者が指摘するのが、小学校と中学校の教師には溝があるのではないか、という点。著者によると、子どもたちができるだけ同じ条件のもとで中学校にとけ込んでいけるよう、小学校側は進んで子どもたちの情報を中学校に渡さない傾向があるといいます。一方で中学校側は、子ども本人や学校生活のことなどの情報をもっと伝えてほしいと考えているというのです。著者は、その“バトンの受け渡し”にギャップが潜んでいるのは、といいます。*本書では、中1ギャップに側面した子どものケアとして、円滑なコミュニケーションを学ぶ「ソーシャル・スキル教育」を提案しています。そして同時に訴えているのが、親にもできることがたくさんあるということ。中1ギャップのメカニズムを理解したうえで、親がまずできることは「わが子をよく見ること」。子どもの心を理解するように務め、子どもの心に寄り添おうとすること。頭ごなしに決めつけたりすぐに誤りを正そうとするのではなく、いったん受け止めてあげること。そして、愛情を伝えて心を安定させてあげること。何気ないことのようですが、それが子どもがギャップを乗り越えるのに大きな後押しになるのです。わが子が壁にぶつからないように、ぶつかった壁を自分の力で乗り越えられるようにするためには、はたしてなにができるのか?そんなことを改めて考えさせられる1冊です。(文/よりみちこ) 【参考】※渡辺弥生(2016)『中1ギャップを乗り越える方法わが子をいじめ・不登校から守る育て方』宝島社
2016年04月20日オンラインストリーミングサービスの充実により、日本で観られる海外ドラマはいまや増加の一途。そんな状況を受け、人気ドラマなのに「いままでは日本で観られなかった!」というシリーズが、いつの間にか気軽に観られるようになっていたりもします。今回からは、ちょっと前の作品だけれど、いま観ても面白い、むしろいまこそ観るべきドラマたちをご紹介。“あの人気スターのあの頃”も見ることができてしまいます!Netflixの日本上陸で私が個人的に最も歓喜したのは、オリジナル作品でも新作ドラマでもなく、実は「スキンズ」が配信ラインナップに入っていたこと!「スキンズ」は2007~2013年まで、計7シーズンにわたって放送された英国ドラマです。物語を一言で言うなら、ティーンエイジャーの青春ストーリー。家族から恋愛まで様々な問題を抱える高校生たちが、セックスやドラッグと背中合わせの青春の中で、傷つき、もがき、成長していきます。2シーズンごとに主要登場人物が入れ替わるのが「スキンズ」の特徴であり、1~2シーズンの登場人物たちを第1世代、3~4を第2世代、5~6を第3世代と呼びます。シーズン7では、それら登場人物の中の3人が、それぞれ大人になった姿を描いていきます。ブリストルに生きる高校生たちの等身大の青春をヒリヒリと赤裸々に、けれども確かな共感を呼ぶタッチで描いた「スキンズ」ですが、実は登場人物たちも個性的なら、演じる役者たちもいまとなっては超豪華。まず、第1世代には、『マッドマックス怒りのデス・ロード』のニコラス・ホルトが優等生のトニー役で登場。容姿端麗で、女の子にモテモテで、だからこそ残酷で、孤独なトニーはまさに彼のハマリ役です。そんなトニーの仲間たちも目を見張るキャスティングで、お調子者のアンワールを『スラムドッグ$ミリオネア』のデーヴ・パテル、不思議ちゃんのキャシーを『ゴッド・ヘルプ・ザ・ガール』のハンナ・マリー、はっちゃけキャラのクリスを「ゲーム・オブ・スローンズ」のジェンドリーことジョー・デンプシーが好演。“好演”と軽々しく言いましたが、そのほかのキャストも含め、彼らの好演が登場人物たちを魅力的に見せていることは間違いありません。続く第2世代はトニーの妹・エフィの物語へと移っていきますが、そのエフィを演じるのが『メイズ・ランナー』のカヤ・スコデラリオ。小悪魔だけれど傷つきやすいエフィを巡り、心優しくスウィートなフレディとセクシーな悪ガキ、クックの親友同士が三角関係を繰り広げます。そして、フレディを演じるのが「マスケティアーズ パリの四銃士」のルーク・パスカリーノ、クックを演じるのが『不屈の男 アンブロークン』のジャック・オコンネル!メロドラマティックなダークさを増したシーズン3~4も、リアルなみずみずしさを湛えていたシーズン1~2に負けず劣らず見応えたっぷりです。白塗りですら女子にモテるニコラス・ホルトの絶対的なキュートさも、ジャック・オコンネルのそこはかとない色気も、すべてはここから始まった!とも言える「スキンズ」。気軽に観られるようになったいまこそ、観てほしいタイトルです。(text:Hikaru Watanabe)
2016年04月17日子どもは学校へ行って当たり前と思っていませんか? でも、もし突然子どもが「学校へ行きたくない」と言い出したら、あなたはどうしますか? 不登校は誰もが直面し得るもの。そのとき、親はどうすればいいのでしょうか?実際にわが家で起こった体験をもとに、前兆から不登校、そして再び学校へ行くようになるまでを振り返り、その時々の子どもとの接し方や、親としての気の持ち方についてお伝えします。■前兆は「お腹が痛い」わが家は共働きです。息子が0歳の頃から保育園に預け、私はフルタイムで働いていました。今思えば、前兆は保育園の頃からありました。息子はもともと集団に馴染めない性格で、1人でいるのが好き。とは言え、誰とでも別け隔てなく遊ぶこともできました。しかし、その反面、神経質なところもあり、何かあるとお腹が痛くなったり、微熱が出たり。そのため、たびたび会社にお迎え要請の電話がかかってきました。私はその都度、息子を病院に連れていっていましたが、そのうちに、「これは本当に体調が悪いのではなく、かまってほしいのだな」と気づき、それからは、そういうことのあった日は半日休むようにしました。働くお母さんがたぶん、みんなそうであるように、子どもと一緒にいる時間が少ない分、密度の濃いコミュニケーションを心がけるようにしていたのです。「お腹が痛い」は小学生になってからも、時々ありました。小学校1年生の後半からたびたび起こる息子の朝の腹痛。痛みに歪んだ顔で私を見上げ「お母さん、お腹いたい…」。病院も何ヶ所も行きました。いろんな検査もして、レントゲンも取りました。しかし、どれも「異常なし」。イベントや行事などのいつもと違うスケジュールには特に弱く、楽しみな気持ちと同時に、不安も大きくなってしまい、ドキドキが体の症状=腹痛として出てしまっていたのです。そのため、遠足や運動会は、いつも途中参加かお休みでした。 ■体の症状はSOSのサイン進級し、小学3年生になってからは、今度は「頭痛がひどい」と言い出し、神経内科にも行きました。起立性障害と診断されたことも…。そして、ついに頻繁に学校を休むようになりました。でも、学校からは「なんとか登校させてください」と言われ、プレッシャーがかかります。私も「学校だけは行かせなければいけない」と思っていたので、なだめすかして、なんとか登校させようとする日々。学校とも連携を取り、息子をあの手この手で説得しようとしました。息子も理屈ではわかってくれますが、やっぱり腹痛が起きてしまいます。むしろ、親がムキになればなるほど、病状は悪化する一方です。そして、子どもは親の期待に応えられない自分を責め始めます。そのうち、頭痛以外に、別の症状も現れ始めました。病院もいくつも変えました。けれど、なかなか良くなりませんでした。息子も登校したい意志はあるのに、朝になるとひどくお腹を壊すという、体と心が分離しているような状態。もう息子本人もコントロールできない、心の底からのSOSのサインでした。 ■やっと待望の心療内科へ小学5年生になったとき、都立総合小児病院に初めて行き、体の異常がないことを入院検査で確認し、3ヶ月予約待ちをして、やっと待望の心療内科にかかることができました。その頃には、息子の口からついに「学校に行かなきゃダメ?」という言葉が出ました。私も「嫌な体験をずっと繰り返すより、一度じっくりまとめて休ませたほうがよいのでは?」と思っていたので、ひとまず1ヶ月間休ませることにしました。その後、心療内科の先生と相談し、学校に関しては無理強いせずに、家でゆっくり治療に専念することになりました。まずは、「家は安全、家は本当の自分を出せる場所」という体験をさせ、そのあと少しずつ外(学校や社会)へ出ていくという手順が必要だったのです。先生から「1年~2年かかることは覚悟して、じっくり治療しましょう」と言われました。私は会社に相談し、勤務時間を減らしてもらい、週に一度は息子と一緒にカウンセリングに通いました。親の私がすることは、無条件で子どもを受け入れること。甘えてきたら「もう大きいんだから」と突き放さず、幼児から育てなおすくらいの気持ちで接すること。それが治療方針でした。同時に、学校を思い出すようなことも一切排除することになりました。心療内科の先生から学校に電話してもらい、直接本人に接しないように徹底してもらいました。経験豊富な専門家がついているおかげで、私も落ち着きを取り戻し、ときには不安を聞いてもらうこともありました。子どもの心が不安定なとき、親が慌てたり不安がったりすると、それが子どもにも伝わってしまいます。自分だけで解決しようとせず、心の専門家に介入してもらい、親自身の心を安定させることも大切です。 ■長い目で見守る、そして信じる自宅療養を始めてから最初の数ヶ月間は外にも出たがらず、ゲームばかりしていた息子でしたが、ゆっくりゆっくり休んだ後、やがて自分から生活のリズムを管理しだし、遅れを取り戻すように本を読んだり勉強をしたりするようになりました。その後は誘うと徐々に外に出るようになり、休日は一緒にランチを食べに行ったり、サイクリングに出かけたりしました。しばらくすると学校の友だちとも休日になら一緒に遊べるようになり、6年生の3学期は放課後に学校へ勉強をしに行けるようにもなりました。そして、卒業前何日かは登校もできるようになったのです。卒業1週間前には毎日、卒業式の練習に参加するまでになり、無事、卒業式に出られたのです。息子を見守ってくれた友だちや、学校の存在は、とてもありがたいものでした。こればかりは親だけではどうすることもできません。現在では何事もなかったかのように、元気に中学校に登校しています。新しい友だちもでき、部活動も楽しんでいます。■子どものことをわかっているつもりで、わかっていなかった息子が学校へ行かなかった1年半、私が主にしたことは、ただご飯を作って一緒に食べること。そして、息子の話をとことん聴くことだけでした。子どもは親にわかって欲しいのです。私は、息子のことをわかっているつもりで、何年もわかっていなかったのでしょう。小学校くらいなら1年~2年の勉強の遅れは、すぐに取り戻せます。けれども、心の問題を取り戻すには、たくさんの時間がかかります。親が悲観的にならずにゆったりと構えると、子どもの情緒も次第に落ち着いてくるようです。 ■子どもが「学校に行きたくない」と言い出したら=私の体験から子どもが学校に行きたくないと言い出したら、原因探しをするよりも、まずは子どもの話をじっくり聴いてあげてください。問い詰めたり責めたりせずに、お母さんが子どもの心の逃げ場所になってあげてください。学校に行けなくなった息子のために私が意識してやったこと、それは「息子の気持ちに添う」ことです。学校に行きたくない原因は人それぞれ。単純なことではありません。逆にしないように注意していたのは、問い詰めたり、攻め立てたりすること。子どもが学校へ行かないと親も焦りますが、そこは我慢。子どもは家庭という絶対安心できる場から、ミリ単位で成長を始めるのです。親にできることは、子どもを信じて見守ること。何があっても親だけは味方だということを、心の底からわかってもらうこと。まずはそれが大切です。そしてもちろん、子どもを支える保護者にも支えが必要です。保護者の支えになるもの、それはプロの指導です。経験豊富なプロは、子どもだけではなく、保護者の心も支えてくれます。学校のスクールカウンセラーでもよいですし、信頼できる心療内科を探してもよいです。親が「この人は本当に信頼できる」というプロを探してください。「家庭の問題だから」と抱え込まず、適切にプロの助けを借りながら、子どもの成長を見守るのがベストだと、私は考えます。
2016年04月13日いよいよ入学・入園シーズン。わが子が新しい環境に溶け込めるか、不安でいっぱいのママも多いのでは。そこで、現役の小学校の先生による、子どもが新入学の迎える親へのアドバイスをまとめてみました。子どもの小学校入学で、ママが抱える悩みとは特に第1子が小学校入学を迎えるママにとって、子どもの学校生活は不安ばかりと言っても過言ではないでしょう。「こんなことを心配しているのは自分だけ?」と、さらに不安を覚える人もいるかもしれませんが、安心してください。不安なのは皆一緒です。4月に行われる初の懇談会では、実際に以下のようなことが話題になっています。友だち関係についてやはり一番気になるのは友だちのこと。わが子に友だちができるか、みんなと仲良くできるかが心配なママが多数いるようです。しかし、そうした大人の心配をよそに、子どもは案外なんとかうまくやっていくもの。さまざまな場面を通してクラスの友だちと関わりを持ちながら、ゆっくり人間関係を築いています。トラブルや行き違いはよくあることですので、ママは焦らず見守りましょう。たとえ子ども同士でトラブルが起きたとしても騒がず慌てず。まず担任教師に相談し、指示を待ってください。勝手に行動すると、かえって話がこじれることがあります。給食について小学校1年生の給食は、担任が時間をかけてゆっくり指導します。嫌いなものを無理に食べさせることはないので、あまり心配せずに、むしろ給食が楽しみになるような声かけをしてあげてください。なお、アレルギーがある場合は必ず担任に伝えましょう。そのほか、どうしても食べることができないものがある場合や、食の細い子どもの場合はそのことも伝えておくと安心です。PTA活動について「PTA活動は大変」というイメージが先行しているかもしれませんが、本当のところは実際に体験してみないとわかりません。フルタイムで働いている人は、そのためにお休みをとることが難しいかもしれませんが、すべての活動に参加しなくても大丈夫。自分のできる範囲で協力すればOKです。ちなみに、実際にPTA活動に参加したママによると「普段の子どもの様子を垣間見ることができる」「先生に気になることを聞くことができる」などのメリットもあるのだとか。教師の人柄や学校全体の様子を知ることで、より安心しますよね。さらにPTA活動をきっかけに、卒業しても子どもなしでママ同士の交流が続く友だちになることだってあります。できる範囲で関わるぐらいの気持ちで参加すると、肩の力を抜いて楽しめますよ。放課後の過ごし方について放課後は親の目がないところで友だちと遊ぶことが多くなります。幼稚園のときのように、ママが遊びの日にちや場所を決めることはほぼありません。友だちと待ち合わせするときのルールを子どもと話し合って決めておきましょう。特に「何時」に「どこ」で待ち合せるのかは大事です。そして、待ち合わせ場所は人気が少ないところは避けるようにします。行き違いになることもあるので最初のうちはママが確認やフォローをしてあげると安心です。もし会えなかった場合どうするかについても、事前に決めておいたほうがいいですね。入学して間もなくはわからないこともたくさんあり、大変な日々が続くでしょうが、そんなときだからこそ、ママはゆったりと構えて、子どもを温かく見守っていきましょう。<のりこ(フォークラス)>
2016年03月23日こんにちは、ママライターのみいゆです。新学期の季節になると増えてくる子どもの不校。最近は子どもだけではなく、20代や30代の大学生や社会人も出社拒否が増えているようです。これが長引けばやがては“ひきこもり”になってしまうこともしばしば。ひきこもりは長引けば長引くほど、復帰が困難になってしまいます。今回はひきこもってしまった、主に子どもに対して周りがどのように接してあげればよいのかをご紹介します。●ひきこもりは外出しない人のことではありません“ひきこもり”とは原則的に“6か月以上にわたって社会と関わりがないこと” を指します。家に閉じこもりっきりでゲームや好きなことばかりしているというイメージがありますが、実際は外出をしていても、他者と関わりを持たなければひきこもりの状態と言えるようです。特に多い世代は、思春期である中学生、特に入学してからの環境の変化から不登校になるケースもあります。●不登校やひきこもりの子どもにやってほしいこと3つ●(1)本人に元気になってもらうことを考える精神科医の斎藤環先生は『世界一やさしい精神科医の本』の中で、**********不登校の子に対して僕らはなにを考えるだろうか。とりあえず「なんとか早く再登校させたい」って考えるよね?でも僕に言わせると、それがもう間違いだ。むしろ再登校のこととかは、いったんわきに置いとかなくちゃいけない**********とおっしゃっています。本人は学校のことで悩み苦しんで不登校になったのに、その元凶 である学校へ行かせるためだけを親が考えていたら、子どもは誰も信じられなくなってしまいますよね。●(2)いろんなやり方でかまってあげる斎藤先生いわく、『子どもは大人から見放されることが一番恐ろしいと思っている』とのこと。子どもがどんなに言葉で拒否しても、常に話しかけたり買い物に誘ったりといろんな手でかまってあげることで子どもは元気を取り戻していきます。逆にほっとかれてしまうと、もう自分は必要ない人間だとかどうにでもなれと気持ちが後ろ向きになってしまい、ひきこもりが長期化 してしまう恐れがあります。●(3)学校は必ず休ませてあげる誰にでも嫌なことがあったり、つらいことがあると学校や職場に行きたくないと思いますよね。ひきこもる子どもも、はじめはそういうきっかけがあります。たまたまそれが長引いてしまったのです。それを責めることをせずにしばらく休ませて、ストレスの元 となっている学校のことを考えさせない時間が必要です。もちろん、その間も放っておくのではなく、常にかまってあげながらがベストです。しっかり休養できれば子どもは進んで再び登校することも少なくないようです。●人とつながることがひきこもり脱出の要ひきこもりを長期化させないためには、人とのつながりが一番の薬 です。誰しもが常に人と関わりながら生きています。つらいことも楽しいことも、他人がいるからこそその感情が芽生えます。自分にとって一緒にいて居心地のいい人であれば家族でもいいでしょう。もっといえば友達や好きな人との関わりがあれば、自分に自信を持つことができますから、外の世界に出ていけるきっかけにもなりえます。「うちの子ががこのままではひきこもりになっちゃう。早く何とかしないと!」と考えずに、不登校もひきこもりも悪いことではないこと。ちょっと充電期間が必要な時期なんだと割り切って、結果的にどんな道を選択しても人とのつながりを持ち続けられるように応援してあげたいですね。【参考文献】・『世界一やさしい精神科の本』斎藤環/山登敬之・著●ライター/みいゆ(ママライター)
2016年03月13日ディズニー・アニメーション・スタジオの最新作『ズートピア』が全米で公開され、公開3日間で興収7,370万ドルを記録。同スタジオの『アナと雪の女王』『ベイマックス』のオープニング記録を軽々と塗り替えた。批評面も絶賛の嵐で、いま旋風を巻き起こしている。動物たちが人間のように暮らすハイテク都市「ズートピア」を舞台に、ウサギの新米刑事・ジュディと、キツネの詐欺師・ニックがタッグを組んで、続発する動物失踪事件のナゾを追いかける。タイムリミットは2日間。行方不明者の共通点は?事件の真相が明らかになったその瞬間、真のピンチが動物たちの楽園に襲いかかる…。傑作『シュガー・ラッシュ』のリッチ・ムーアが共同監督を務めており、期待して鑑賞したが、これが素晴らしい!テーマはずばり“多様性”。主人公のジュディは「絶対ムリ」という周囲の声をはねのけ、警察学校を首席で卒業し、ウサギ初の警察官になるが、上司からは正当な評価を得られない。一方、ニックは幼少期のトラウマが原因で「周囲が期待するステレオタイプ」に徹しようと、ズル賢い詐欺師として生きている。動物たちの理想郷であるはずのズートピアでは、「ありのままに」が通用せず、男女格差、種族間の差別や偏見がはびこっているのだ。折しも、第88回アカデミー賞では人種差別が大きなトピックになったし、暴言を繰り返す不動産王が大統領選で大躍進してしまったりと、思わず「いまって本当に21世紀?」と首をかしげたくなる今日この頃。それだけに『ズートピア』は、現代人なら誰もが直面する多様性を考えるきっかけになるはず。ジュディ&ニックの見事なバディぶりはもちろん、個性豊かな登場人物(!?)、さまざまな気候、地形を持つズートピアの多様な姿も見どころだ。そんな深いテーマを問いかける本作だが、もちろん身構える必要はなし!主軸である動物失踪事件のサスペンスが、本当によく練り上げられており、純粋なエンタメ作品として満点な仕上がり。驚きのドンデン返しは『シュガー・ラッシュ』に通じる。「自分が輝ける場所が、どこかに必ずあるはず」と奮闘するジュディの姿には、誰もが共感するだろう。輝きを取り戻し“第3の黄金期”を迎えたディズニー長編アニメーションの過去10年で最高傑作だ。『ズートピア』は4月23日(土)より全国にて2D/3D公開。(text:Ryo Uchida)
2016年03月10日