妊娠・出産を機に退職する女性はまだまだ多いですが、産休・育休を経て仕事復帰という方も増えてきましたね。仕事に復帰するにしても、まだまだ手のかかる小さなわが子の面倒を見ながらフルタイムで働くのは厳しいし、子どもとの時間も大切にしたい。そんな人たちが利用できるのが、「時短勤務」「育児時間」といった制度です。これら2つの制度について、アディーレ法律事務所の島田さくら弁護士に解説してもらいました。時短勤務は男女問わず利用できる制度使用者(会社や経営者)は、働きながら育児をする労働者について、1日の労働時間を6時間とする制度を含む時短勤務制度を設けなければならないとされています(育児休業法23条)。子どもが3歳未満で労働時間が1日6時間を超える場合、労働者は時短勤務を申請して、時短勤務にしてもらうことができます。有期契約やパートタイムで働く人も原則として時短勤務が可能ですし、男性も時短勤務を利用することができます(※雇用条件によっては労使協定で除外されることもあるが、代替措置が必要)。働くママが取得できる「育児時間」とは?時短勤務のほか、子育てをしながら働くママをサポートする制度として、「育児時間」というものがあります。育児時間は、1歳未満の子どもを育てる女性が請求できるもので、通常の休憩時間(1日6時間超で45分、8時間超で1時間)以外に、1日2回、それぞれ少なくとも30分以上の時間をもらって、子育てをするための時間とすることができます(労働基準法67条)。育児時間は、もともと授乳時間など子どもと接触する時間を確保するために作られたものなので、男性は利用できません。この育児時間をどのような形で子育てに利用するかは、労働者の自由です。勤務時間の始めと終わりにそれぞれ育児時間をとって、子どもの保育園の送り迎えの時間に利用することもできます。育児時間と時短勤務を併用することはできる?時短勤務と育児時間は併用して利用することができます。・時短勤務=3歳未満の子どもを育てながら働き続けることを容易にするための制度・育児時間=1歳未満の子どもと母親が接触する機会を設けるための制度となっており、異なる目的を持つ制度なので、併用して使うことが可能です。時短勤務や育児時間を利用した際のお給料は?時短勤務や育児時間を利用した場合、働いていない時間部分のお給料については、育児休業法や労働基準法に定められておらず、使用者(=会社)ごとの判断ということになります。時短勤務や育児時間を取った際に、働いていない時間部分のお給料も払いますと定めている会社は多くはないので、基本的に無給ということになります。短勤務を利用して額面でのお給料が減ったとしても、住民税や社会保険料がすぐに下がるわけではないので、「思っていた以上に手取りが少ない!」ということもあります。そうなったときに慌てないで済むよう、時短勤務や育児時間は、お給料とのバランスも考えて計画的に利用しましょう。まとめ子育てと仕事のバランスがとれるよう、時短勤務や育児時間を利用した際にも満額のお給料を払ってくれる使用者が増えてくれればよいのですが、個々の企業努力に任せるには限界もあります。政府が一億総活躍をうたうのであれば、企業への補助などを期待したいところですね。あとがき休日、子どもと遊んであげようかと思うのですが、イマイチ何をして遊べばよいのかわかりません。近所の公園に行っても、正直こっちは飽きてしまい。子ども向けの遊べる施設に行くにしても、毎度毎度じゃお金が続かないし。結局、子どもが2才半になった頃から、駅から駅までひたすら電車の沿線を歩いて休日を過ごしています。半年ほどかけて山手線を一周し、今は中央線を立川からスタートして、もうすぐ東京駅につきそうです。道沿いにある神社や博物館に寄ったり、見知らぬ公園で遊んだり、これがけっこう楽しくて。次は何線にしようか子どもに相談したところ、「けいひんとうほくちぇん!」とのこと…(京浜東北線、大宮~横浜59.1km)。長い旅が始まりそうです。・協力: アディーレ法律事務所 (島田さくら<アディーレ法律事務所>)
2016年02月24日連載コラム『知らないと損をする「お金と法律」の話』では、アディーレ法律事務所の法律専門家が、具体的な相談事例をもとに、「お金」が絡む法的問題について解説します。【相談内容】最近、軽減税率導入に関して少し気になったので、色々とニュースを見てみると、マイナンバーカードを活用する還付金案は撤回され、軽減対象の商品に印をつけ、税率ごとに計算をするという話を見つけました。軽減税率を導入する場合、2017年4月の消費税増税までに間に合うようにするための立法スケジュールというものはどのようになるのでしょうか。「税制大綱」という名前を聞きますが、そもそも税に関する法律はどのように決まっていくのでしょうか?【プロからの回答です】○軽減税率って何? 国民のメリットは?最近、ニュースで耳にする「軽減税率」という言葉ですが、「イメージはなんとなく湧くけれど、いまひとつ制度の詳細は不明」という方も多いのではないでしょうか。「軽減税率」とは、一般的に課される税率とは別枠として特定の物についてのみ低率で課される税率のことです。2017年4月に、消費税が現在の8%から10%に引き上げられる予定ですが、特に、低所得者層の生活費関連の負担が増大することが懸念されています。そのため、低所得者層の負担を軽減化するため、生活必需品等の特定の物品について軽減税率を適用し、税負担のバランスを図っていこうというのがその目的です。そもそも消費税は、「消費」にかかる税となります。高所得者層は、所得を投資等の消費以外の出費に充てることが多く、所得に占める消費の割合が少ないとされていますので、消費税アップの影響がさほど大きくないと考えられています。低所得者層はその逆で、所得に占める消費の割合が多く、その分、消費税率アップの影響が直接的に及んでしまうと考えられているのです。消費税率の与える影響がそのような性質のものである以上、軽減税率は、低所得者層の生活が圧迫されるのを未然に防ごうとする趣旨のものといえます。消費税率が一律に10%に増税されるよりは、一部の商品が8%に据え置かれるだけでも負担減といえますし、特に、「購入せねば生活できないような品目」について税率8%に据え置かれれば、消費者に効果的な減税効果が望まれます。しかし、高所得層が購入する必需品の額はそもそも高いのでは? 軽減される税金の額でいえば高所得層のほうが多額になるのでは? など一概には割り切れない疑問点もあり、はたして真に低所得者層に優しい政策になるのか否か、議論が分かれるところです。○2017年4月までの立法スケジュールはどうなる?現在においてもいまだ制度設計について混迷し続けている軽減税率ですが、先月、自民党の宮沢洋一税制調査会長が、軽減税率を導入する以上は、2017年4月の消費税と同時に導入を目指すというよりも、導入すると明言をしていました。それでは、軽減税率導入を消費税増税に間に合うようにするためにはどのような立法スケジュールになるのでしょうか。軽減税率導入には、対象品目をどこまで広げるか、どの品目を対象とするかについて、自民党と公明党でもいまだ議論が続いており、波紋を呼んでいます。大きな論点として、自民党は対象品目を「生鮮食品」のみに限定したいのに対して、「加工食品」まで加えるべきというのが公明党の立場であり、与党の間でも議論が交わされています。商品ごとに異なる税率と税額を記した請求書(インボイス)の導入についても、当然、経済界からの強い反発があり、この点も何らかの手立てが必要になるかもしれません。軽減税率導入とひとことでいっても、解決すべき課題は山積みです。これらの話し合いが平行線をたどれば、本来慎重な検討の上で細目まで決定すべき法案が、中身が熟さないまま外枠だけ定めた法案として通ってしまい、制度開始の時点で社会が混乱してしまう懸念もあります。当初は、平成27年11月20日頃までに、軽減税率の制度設計に関する大筋合意を成立させる予定でしたが、現在、目標は12月中旬に先送りされた模様です。平成28年度税制改正大綱の取りまとめも12月中旬~下旬頃には決定し、平成28年1月の通常国会に関連法案を提出する流れになります。平成28年中に関連法を成立させなければ、平成29年の消費税率10%引き上げと同時に軽減税率を導入することは困難となります。非常にタイトなスケジュールといえます。一分一秒を争い、真剣な議論と決断が要求されているということになります。○そもそも、税に関する法律ってどのように決まるの?先ほど出てきた税制大綱という言葉ですが、税制大綱とは、翌年度の税制改正法案を決定するのに先立ち、与党や政府が発表する税制改正の原案です。これは政府が国会に提出する税制改正法案の元になるもので、税法改正のたたき台のようなものです。税制改正については、4月頃に「政府税制調査会(政府税調)総会」が開催されることとなります。内閣総理大臣が示した次年度の税制改正に対する基本的な考え方に基づいて審議が進められ、この審議は、秋まで継続されます。9月・10月・11月には自民党税制調査会(自民税調)から検討案が提示され、政府税調において具体的な検討がされるという段取りを踏みます。そして、12月中旬に政府税調の答申の発表と、与党税調の税制大綱の発表がなされます。12月下旬には税制大綱と予算原案の発表がされ、12月末に政府が予算案を国会へ提出し、翌年の1月から税制改正案・予算案が審議修正され、可決成立します。このように、税に関する法律は1年かけて作られるわけです。2017年4月から制度運用開始とするためには、ぎりぎりのスケジュールではないでしょうか。○まとめ軽減税率がどのような制度になるかについては、国民にとっても、経済界にとっても、多数の事業者にとっても、死活問題といえるほど重要な問題です。しかしながらそのスケジュールの厳しさから、本来議論されるべき事項が議論を尽くさないままに決まっていく懸念が払しょくできません。政府内でも税収減の問題から軽減税率に慎重な自民党と生活者目線から対象品目の拡大に積極的な公明党との間で意見の食い違いがあり難航しています。さらに、消費者にとっても、結局、軽減税率の対象品目が分かりづらく不透明なまま意見も言えないといった問題があります。今回の消費税増税についてももちろんですが、さらなる消費税増税があれば、再度軽減税率に関する重要な議論は繰り返されることが予想されます。このトピックに関する知識をしっかりと備えておくこと、さらには、国民の意見を反映する選挙という場面においても政策をしっかり見定めることが、われわれにとっても重要課題といえそうです。(※写真画像は本文とは関係ありません)<著者プロフィール>篠田 恵里香(しのだ えりか)東京弁護士会所属。東京を拠点に活動。債務整理をはじめ、男女トラブル、交通事故問題などを得意分野として多く扱う。また、離婚等に関する豊富な知識を持つことを証明する夫婦カウンセラー(JADP認定)の資格も保有している。外資系ホテル勤務を経て、新司法試験に合格した経験から、独自に考案した勉強法をまとめた『ふつうのOLだった私が2年で弁護士になれた夢がかなう勉強法』(あさ出版)が発売中。『Kis-My-Ft2 presentsOLくらぶ』(テレビ朝日)や『ロンドンブーツ1号2号田村淳のNewsCLUB』(文化放送)ほか、多数のメディア番組に出演中。 ブログ「弁護士篠田恵里香の弁護道」
2015年11月19日連載コラム『知らないと損をする「お金と法律」の話』では、アディーレ法律事務所の法律専門家が、具体的な相談事例をもとに、「お金」が絡む法的問題について解説します。【相談内容】私は従業員があまり多くない中小規模の会社で、人事・総務・経理と一手に担当している部署にいます。そこでご質問をしたいのですが、マイナンバーに関する、個人ではなく会社として気を付けなければならない注意点などあるのでしょうか。個人の番号を管理することになり、もしマイナンバーを開示したくないと言い出す人がいたら…とか、もし会社のパソコンがウイルス感染して情報がもれたら…などと不安は尽きません。また、法人番号も送られてくるといい、その利用方法などもわかりません。導入する前に是非教えてください。【プロからの回答です】○会社の法人番号とは? マイナンバー(個人番号)との違いとは?法人番号とは、株式会社などの法人等に指定される13桁の番号をいいます。法人番号は、国の機関、地方公共団体、設立登記法人などが番号付けされることになっています。ここで注意をしていただきたいのが、個人事業主については、法人番号は番号付けされないということです。また、マイナンバーとの違いとしては、法人番号は原則として公表されるもので、誰もが利用できるものとなっていることがあります。法人番号が必要とされる場面としては、例えば、取引先との関係では、報酬、料金、契約金及び賞金などの支払調書に記載するために必要となります。法人番号を導入するメリットとして、政府は、(1)手続きの簡素化が図れること、の他に、(2)法人番号を使い企業等法人の名称や所在地を簡単に確認することが可能となること、(3)複数部署又はグループ各社において異なるコードで管理されている取引先情報に法人番号を追加することで、取引情報の集約や名寄せ作業が効率化するといったこと、が期待されるとしています。○会社が社員のマイナンバーを管理する理由は?マイナンバー法の施行により、会社は、社会保険関係の届出書や税務署への提出書類に従業員のマイナンバーを記載する必要がでてきます。例えば、会社は毎年、従業員の源泉徴収票を作成していると思うのですが、その源泉徴収票にも、従業員のマイナンバーを記載することが求められることになります。そのため、会社としては、従業員からマイナンバーを取得・管理する必要が出てくることになるのです。従業員には、正社員、パート、アルバイトなどと様々な雇用形態がありますが、会社としては、どのような雇用形態であっても、基本的には、従業員全員からマイナンバーを取得する必要があります。また源泉徴収票を例にとると、マイナンバー法施行後は、源泉徴収票には、控除対象配偶者、控除対象扶養親族のマイナンバーの記載が求められることになります。このため、会社としては、扶養家族のマイナンバーの取得・管理などが必要となります。しかし、会社は、従業員よりマイナンバーを取得する必要があるとしても、従業員から強制的に取得することはできません。では、従業員より提出を拒まれた場合には、どうすればいいのでしょうか。会社の対応としては、まずは利用目的をしっかりと説明したうえで、提出するよう従業員を説得してみましょう。それでも提出しないということであれば、提出先の機関に相談や問い合わせをするようにしましょう。提出先の機関に問い合わせをする際には、会社としてしっかりと説得していることを示せるように、提出拒否した従業員の方に対してマイナンバーの提供を求める際には、書面等で求めた証明をとっておくと良いかと思われます。○個人のマイナンバーを会社が管理する上で何に気を付けるべきか?会社は、特定個人情報の流出を防ぐために、安全管理措置が義務付けられています。具体的には、組織的な体制の整備や、従業員に対して監督・教育することで、適正な取扱いを周知することなどがあります。万が一、大規模な情報流出事件が起きた場合、漏洩させた従業員のみならず、会社までもが罰せられる可能性があることも注意が必要です。また、従業員が退職した場合、マイナンバーを利用して行う事務処理をする必要がなくなりますので、所管法令において定められている保存期間を経過した場合には、マイナンバーをできるだけ速やかに廃棄または削除しなければならないとされています(特定個人情報の適正な取扱いに関するガイドライン(事業者編))。例えば、扶養控除等申告書の法定保存期間は7年ですが、この法定保存期間の7年を経過した場合には、マイナンバーを復元できない手段でできるだけ速やかに廃棄又は削除しなければなりません。あるいは、マイナンバー部分を復元できないようにマスキングまたは削除した上で、当該書類の保管を続けるという方法もあります。マイナンバー制度が始まると、会社は、マイナンバーを管理する担当者や規定を定めなくてはならないほか、鍵付きのキャビネットに番号を記載した書類を保管するなど、従業員のマイナンバーを厳格に管理しなければなりません。また、万が一マイナンバーの漏洩などがあると、場合によっては漏洩させた従業員だけではなく、会社までも罰金刑となる場合もあります。このようなリスクを避ける為にも、今後はますますコーポレート・ガバナンスが問われてくることになります。コーポレート・ガバナンスとして、どのようなことをすればいいのかご不安があるのであれば、弊所のような企業法務(企業内であらゆる法律問題)に対応している法律事務所もありますので、そういった事務所の弁護士にご相談いただき、不安を解消していただければと思います。(※写真画像は本文とは関係ありません)<著者プロフィール>千葉 輝顕東京弁護士会所属。大学卒業後、大手銀行の銀行員として融資を担当。企業法務(会社経営に関する様々な法律問題)を得意分野として多く扱う。企業法務のセミナー講師としても活躍中。2級ファイナンシャル・プランニング技能士の資格を持つ。アディーレの企業法務サービス(アディーレ プラス)では契約書の確認や取引先・従業員とのトラブルへの対応をはじめとした幅広いリーガルサービスを、最低限の負担で最大限受けることができ、安心してビジネスを進めることができる。
2015年10月26日連載コラム『知らないと損をする「お金と法律」の話』では、アディーレ法律事務所の法律専門家が、具体的な相談事例をもとに、「お金」が絡む法的問題について解説します。【相談内容】10月から動き出すというマイナンバー制度が不安でたまりません。そもそも制度の概要がいまいちわかりづらいですし、運用開始となると、自分の情報が漏えいされるのではないか、自分のマイナンバーが悪用されて成りすまし被害に遭わないか、など、不安でいっぱいです。企業がマイナンバーを管理するということですが、勤務先がしっかり対策をしてくれるのかいまいち信用できません。マイナンバーは変えられないと聞きますし、トラブルなどが生じた場合には、どうしたらいいのでしょうか。【プロからの回答です】マイナンバー制度の運用開始にしたがい、トラブルへの懸念の声も聞かれます。行政機関による情報漏洩のリスクというよりは、各企業(事業者)の情報管理の不備等による情報漏洩等の危惧が懸念されるところです。これは、各企業の準備と対策をしっかりしていただくことが最も大切ですが、実際に情報漏洩等の被害に遭った場合には、慰謝料や損害賠償請求も考えられますので弁護士にご相談いただくことをお勧めします。○そもそも「マイナンバー」ってなに?マイナンバーとは、住民票を有する全ての人に、住所地の市町村長から指定される12桁の番号のことです。原則として一度指定されたマイナンバーは一生涯変更されないことが予定されているので、見方によっては、自分の番号がどんな番号になるかもひとつの楽しみといえるかもしれません。このマイナンバーは、今のところ社会保障、税、災害対策の分野で、国や地方公共団体などが効率的に情報を管理し、複数の機関に存在する個人の情報を迅速かつ正確にやりとり(情報連携)できることを狙ったものです。個人や法人に付与された番号については、平成27年10月以降、12桁の個人番号(法人には13桁の法人番号)が通知されることになります。その後、平成28年1月には実際に運用開始となりますが、その際に希望者には「個人番号カード」が交付される流れとなっています。個人番号カードには、氏名・住所・生年月日、性別、マイナンバーが記載され、写真も表示される予定です。この個人番号カードは、本人確認のための身分証明書として利用したり、ICチップに搭載された電子証明書によりe-Tax等の各種電子申請を行ったり、自治体の図書館利用証や印鑑登録証などのサービスに利用したりできるようになる予定です。○マイナンバー制度のメリットマイナンバー制度を導入する大きなメリットは次のようなものです。行政としては「個人番号」を利用して各行政機関が連携することにより、業務効率化・各機関の間のゆがみや運用のずれなどを解消することが期待されます。特に、これまで必要とされていた情報の照合・転記・入力に要する時間労力が相当削減されることが期待されます。さらに、所得や行政サービスの受給状況等を把握しやすくなることにより、義務や負担を不当に免脱する行為や不正受給を防止することが望め、これにより、本当にサービスを必要としている方への適切なサービス提供が可能となるというメリットも期待されます。また、国民としては、これまで各情報や資料を行政機関から取得したり、サービスを受けたりするのに必要だった様々な煩雑な手続きが簡略化され、行政サービスの円滑利用が望めるというメリットがあります。特に、住民票の添付など、添付書類が必要とされていた手続きの一部が、添付書類不要となることで、国民の負担が軽減されるといえるでしょう。また、運転免許証等の身分証がなかった方はこれが身分証代わりになりますし、コンビニなどで住民票等の公的な書類を受け取ることも想定されています。現在の日本では、「年金」や「健康保険・雇用保険」、「パスポート」、「税金」、「運転免許証」、「住民票」など、それぞれに付された番号はそれぞれの管理機関において全く共有されることなくバラバラに管理されています。それを一本化することで国民にとってもマイナンバーさえあれば行政手続きが全てできることになるわけです。このように、以前よりも行政のサービスが使いやすくなるということで、国民の利便性が向上することが期待できます。○マイナンバー制度で危惧されること一方、マイナンバー制度には次のような危惧の声が聞こえてきます。やはり危惧されるのは、「マイナンバーの流出」や「なりすまし被害のおそれ」ですね。マイナンバーに関する個人情報が漏えいされたり、悪用されたりするのではないかという不安は、みなさん共通にお持ちではないかと思います。法律的には、マイナンバーは必要性がある場合を除いては利用・収集が禁止されるほか、本人確認義務、第三者機関による監視監督、法律に違反した場合の罰則の強化等の規定により、なるべくこのような事態を防止するよう制度化されています。また、システムの上でも、個人情報の分散的管理(特定の機関が一括管理することはない)や、情報へのアクセス権限の制限、通信の暗号化等により、安全な制度運用を図っています。ですので、行政機関における情報漏洩については、漏洩等のリスクは、これまでとあまり変わらないように思います。ただ、実際にマイナンバー利用の促進により、個人情報へのアクセスが容易になることは否定しがたいので、何らかのかたちでマイナンバーや特定個人情報の漏えい、不正利用が起こってしまう可能性は、これまでに比して高まる可能性はあるとはいえるでしょう。また、今回のマイナンバー制度により、事業者(民間企業など)が労働者のマイナンバーを管理することとなります。事業者は、マイナンバー及び特定個人情報の漏えい、滅失又は毀損の防止その他の適切な管理のために、必要かつ適切な安全管理措置を講じなければならないという義務を負うこととなります。また、マイナンバーの管理利用については、従業者に対する必要かつ適切な監督を行うという義務も負うこととなります。そして、事業者は、マイナンバーにつき、「利用する場面をしっかり把握」するとともに、「取得の際の規制」、「目的外の利用・提供の禁止」、「必要がなくなった場合の廃棄義務」「安全管理措置」など、事業者として確認注意しておくべき事項をしっかりと見据え、対策を講じることが必要となります。これらの義務違反行為については、厳しい罰則が用意されているので、事業者側は相当な費用・時間・労力を投じなければなりません。さらには、実際に漏洩等の問題が生じてしまった場合には、損害賠償責任や事業者としての評価が下がる等の社会的責任を負うこととなるでしょう。また、従業員が勝手に顧客のマイナンバーを漏洩すると、企業自体はそれに加担していなくても責任を負うことがあります(両罰規定といいます)。このような事態を予想して、各種損保会社では、マイナンバー漏洩の補償を想定した保険商品を売り出しているようです。マイナンバー制度運用開始にしたがい、全ての事業者が万全な準備や対策を講じることができるのかは相当危惧されるところです。これまで個人情報の管理がずさんだった企業はなおさらですが、これまでしっかり管理していた企業についても、さらに厳格な保護措置が要求されていますので、あらためて対策を見直し、管理担当の従業員も含め研修、制度の問題点がないかの確認、システム再構築といった更新作業を対策し続ける必要があります。企業のずさんな対応により、個人情報が漏えい・不正利用されないためにも、企業側の事前の準備は少なくともこの時点から始めておくというべきでしょう。マイナンバー制度に向けた企業のコンプライアンスは、何よりも重要と言えますので、この点も弁護士にご相談いただくことをお勧めします。○マイナンバー制度が開始される場合の影響は?マイナンバーは、年金、健康保険、介護保険、雇用保険、労災保険、生活保護、公営住宅の入居申請その他社会保障制度、税務当局に提出する確定申告書、届出書、調書等、日本学生支援機構への奨学金の申請等に関する手続きに利用されます。また、勤務先、口座を開設している証券会社や契約している生命保険会社等にもマイナンバーを通知することになります。今後の運用次第にもよりますが、税務署が納税内容をチェックするための調査が容易になることにより、税金の適切な納付が可能になる等のメリットも考えられます。また、相続や贈与に関する適切な納税を実現することも可能となるかもしれません。ちまたでは、「払うべき税金が上がるの?」などの声も聞かれるようですが、何ら理由なく税金の金額が上がることはありません。仮に税金が上がるとすれば、適切な納税が行われていない現状から、「納税額が本来支払うべき金額となった」に過ぎないため、むしろそれがあるべき姿だったということでしょう。その他、銀行口座のお金の動きが管理されるような危惧を感じている方も多いようですが、例えば、税金滞納者の税務署による銀行口座の調査等はこれまでも法律に基づいて実施できたことですし、何ら理由なく銀行口座を調査することにはなりませんので、過大な心配は不要といえるでしょう。その他、「貯蓄税・富裕税」が導入される等の声も聞かれますが、今後政府の検討課題ということで、あくまで経済政策の問題なので、今後の行方を見守りましょう。○マイナンバーの漏洩被害に遭ったら?マイナンバーの漏洩トラブルとしては、「マイナンバー自体の漏洩」と「マイナンバーにより管理される個人情報の漏えい」とおよそ2つの側面が想定できると思います。マイナンバー自体の漏洩により実際に被害が出ていない段階であれば、「不正利用のおそれがある」ということで、手続きを踏んでマイナンバーを変更することが視野に入るでしょう。一方で、個々の個人情報の漏洩となれば、その漏洩された内容により、場合によっては多額の損害が生じる可能性はあります。法的な対応や請求内容は、過去に起きた情報漏洩事件と基本的に同一ですが、マイナンバー制度により幅広い分野の情報が容易にリンクできるシステムに変わりますので、抽象的には、「これまでの個別の情報漏洩事件に比して多岐にわたる情報が漏えいする可能性」は高まるといえそうです。仮に情報漏洩被害に遭った場合には、これによって被った経済的な損害の賠償や慰謝料などを請求することになりますので、その際は弁護士にご相談いただくことをお勧めします。まず何よりも、マイナンバー制度の運用開始に向けて、今まさに企業の意識改革が必要となっています。今までの個人情報保護法よりもさらに重い責任が発生し、企業への罰則も強化されていますので「企業のリスクが拡大」したことを今一度各企業が認識することが大切です。すでに今年10月にはマイナンバーの取得が開始され、その3カ月後である翌年1月にはマイナンバー制度の運用が開始しますので、まだ準備が万全ではない企業においては、「今すぐ準備が必要」といえます。また、個人の方々も、マイナンバー制度の仕組みをしっかり理解するとともに、自身のマイナンバー管理も慎重に行わないとトラブルに巻き込まれるおそれがあります。個人の方は実際にトラブルに遭った場合やトラブルに遭いそうな場合、企業の方はどのような準備や対策が必要かをしっかりと考え、不安がある場合は、弁護士にご相談いただき、不安を解消していただくのが良いと思います。<著者プロフィール>篠田 恵里香(しのだ えりか)東京弁護士会所属。東京を拠点に活動。債務整理をはじめ、男女トラブル、交通事故問題などを得意分野として多く扱う。また、離婚等に関する豊富な知識を持つことを証明する夫婦カウンセラー(JADP認定)の資格も保有している。外資系ホテル勤務を経て、新司法試験に合格した経験から、独自に考案した勉強法をまとめた『ふつうのOLだった私が2年で弁護士になれた夢がかなう勉強法』(あさ出版)が発売中。『Kis-My-Ft2 presentsOLくらぶ』(テレビ朝日)や『ロンドンブーツ1号2号田村淳のNewsCLUB』(文化放送)ほか、多数のメディア番組に出演中。 ブログ「弁護士篠田恵里香の弁護道」
2015年10月01日日本テレビ放送網と日本テレビサービスは、「行列のできる法律相談所サービスエリア in EXPASA 足利」(静岡県御殿場市)でダントツ1番人気のグルメであるたこ焼き「みや蛸」が2カ月足らずで1万食を突破したことを記念し、9月14日より新メニューなどのキャンペーンを実施する。「行列のできる法律相談所サービスエリア in EXPASA 足利」は中日本高速道路とコラボレーションし、日本テレビの番組「行列のできる法律相談所」がEXPASA 足利(上り)を期間限定でジャックする限定企画。その中でダントツの1番人気のグルメである、宮迫博之氏のお母さんのレシピを忠実に再現した「みや蛸」が2カ月足らずで1万食を突破したことを記念し、新メニューなどのキャンペーンを実施することとなった。キャンペーンとして9月14日より新メニュー「明太マヨ味」(6個/税込600円)が登場する。濃厚さの中にピリッととした刺激を加え、通常のソースの味とはまた違う味わいに仕上がっている。また、9月20日~22日の3日間、「みや蛸」購入者にオリジナルBOXをくじ引きで1日10人・合計30人にプレゼントする。このBOXは同イベント期間中に持参すると毎回「みや蛸」が無料になるという特典も付いている。1万食を突破に対し宮迫氏は、「我が母の味をこんなにたくさんの人に受け入れていただき、本当にうれしく思います。今後とも皆さまから愛されるよう、精進させていただきます」とコメント。お母さんも、「1万食突破、ありがとうございます。こんなにたくさのお客さまに食べてもらえるとは思っていませんでした。さらに2万食を目指してがんばっていきます。今後も『みや蛸』をよろしくお願い申し上げます」とコメントしている。2016年1月11日まで開催する同企画では、番組でおなじみの弁護士席をあしらった撮影コーナーや限定グッズが多数そろう「行列のできる法律相談所」ショップなど、休憩だけではない遊べる観光スポットとして、新しいサービスエリアのイメージをかたちづくっている。さらに、出演メンバーにちなんだフードコーナーも設置。「みや蛸」(6個/税込600円)のほか、東野幸治氏の髪型が由来の「東のりオムそば」(税込650円)、 "世界の渡部"が認めた「渡ベーコン大串」(税込700円)なども販売している。
2015年09月14日連載コラム『知らないと損をする「お金と法律」の話』では、アディーレ法律事務所の法律専門家が、具体的な相談事例をもとに、「お金」が絡む法的問題について解説します。【相談内容】私の友人の話なのですが、勤めている会社が昨年度から業績が悪化し、先日急にリストラにあったようです。前々からリストラが伝えられていた訳ではなく、本当に突然明日から来なくてよいと言われたそうです。そこで、友人の変わりに聞きたいのですが、リストラとはいえ急に解雇を言い渡されることがあるのでしょうか。また、退職を迫られたら断る事はできるのでしょうか。友人は退職の際に業績悪化を理由に退職金も出なかったそうなのですが、それって違法にならないのでしょうか。【プロからの回答です】リストラが不当解雇にあたるのであれば当然断ることができます。今回は十分な説明もなく急に「解雇」と言われているようなので、少なくとも「解雇のための適正な手続きがなされていない」として不当解雇にあたる可能性が高いでしょう。仮に、正当な解雇と判断された場合であっても、予告のない解雇については手当が支給されるべきことになっていますし、既に、会社の退職金規定により退職金を受給する権利を得ていたのであれば、退職金も請求することができます。○そもそも「リストラ」ってなに?リストラとは、会社側が、経営上の理由により人員整理のために労働者を解雇することをいいます。リストラは、労働者側に原因があって解雇を言い渡されるケースと異なり、あくまで労働者側の事情によって一方的に労働者を職場から退かせることになるので、相当に合理的な理由が必要とされます。最近の裁判例に従えば、(1)業績悪化等、人員を削減せざるを得ない必要性があるかどうか、またその程度(2)一時休業や希望退職など、解雇以外の方法を講じる努力をしたかどうか(3)労働者を解雇する必要性があるとしても、誰を解雇するかについて基準を設定して公正な選定をしたかどうか(4)解雇にあたり、労働者側にその必要性と解雇時期や人員削減の規模、方法等について以上4点をふまえ、十分な説明を行い、労働者にとっても適正な手続きが与えられたと言えるかどうかなどを考慮して、正当な解雇かどうか厳しく判断されることになります。いくら業績が悪化したとはいえ、企業として何ら努力せず、安易な選択肢として「リストラ・解雇」となったのであれば、このようなリストラは不当解雇として許されないことになります。○解雇とリストラ、希望退職との違いは解雇とは、会社側が労働者との雇用契約を一方的に解除することです。要は、会社が労働者をクビにするということです。リストラも解雇のうちの1つといえますが、人員整理の必要がない場合に、特定の個人を解雇する場合は、何らかの解雇理由があるのが通常です。例えば、会社の規律に関して重大違反があった場合や、無断欠勤が続く、といった場合は正当な解雇理由に当たる可能性があります。ただ、「解雇」というのは、労働者にとって職を失うという重大な結果を伴うため、使用者が労働者を解雇する場合には、就業規則に規定された解雇事由がなければならないほか、(1)30日以上前に予告するか、30日分以上の手当を支払う必要がある(労働者に相当の落ち度があった場合は別)、(2)解雇には相当な合理的理由が必要、など、相当厳しい制限がかけられています。これらの要件を満たさない限り、解雇は不当解雇として無効になります。希望退職募集制度とは、業績悪化などで人員削減が必要となる場合に、退職金の上乗せ支給を行うなどの動機付けを図ることで退職希望者を募り、自発的な退職を促す制度のことをいいます。労働者にとっても、「今後会社の将来が期待できないのであれば、再就職のためにむしろ資金調達をしよう」と考えて自発的に退職をするといった選択肢が生まれることになります。希望退職募集制度は、自発的に退職の意思表明をしているものの、あくまでその根底の理由は、「会社側の都合で人員削減をする必要がある」ということにあることから、あくまで「自身の都合によって自発的に会社を辞める」という自主退職とは、趣旨が異なります。○失業手当への影響について(自己都合になるのか、会社都合になるのか)失業手当は、自己都合退職の場合と会社都合退職の場合で、受給できる給付日数・金額や時期が大きく異なってきます。したがって、「会社を退職する」にあたり、「自己都合」となるか「会社都合」となるかどうかは、失業手当を受けるうえで大きな影響があるということになります。「会社都合」の離職者としての地位を得た方は「特定受給資格者」といって、雇用期間等に応じて、離職後まもなくして失業手当を受けることができます。一方、自己都合の離職者は、受給できる給付日数や金額が少なく、離職後3カ月間は受給できないという制限もついてしまいます。リストラの一環として「自発的な退職を促した場合(希望退職)」が自主都合となるのか会社都合となるのか、問題となります。ただ、通常は、希望退職の場合に、「会社都合による退職」という処理はしてくれていないはずです。離職票の離職理由欄が「労働者の個人的な事情による退職」にチェックが入ったまま、失業手当の手続きを踏めば、当然そのまま「自己都合退職」として処理されてしまうことになります。ここで知っておいていただきたいのが、特定理由離職者という制度です。例えば、「会社の人員整理などで、希望退職の募集に応じた」という場合などには、自己都合退職のかたちをとっていても、実質は会社都合と同視できる、ということから、「特定理由離職者」=「正当な理由のある自己都合退職」として、会社都合退職と同じ扱いとしてもらえる可能性があります。希望退職をした場合には、失業手当の手続きの際に、必ず、この特定理由離職者にあたる旨の説明を行うようにしましょう。○今検討されている金銭解雇制度って労働者にとってメリット? デメリット?現在検討されている「金銭解雇制度」とは、裁判で、会社による解雇が「不当解雇」と認められた場合に、会社から補償金を受けとることによって職場を離れることができる制度のことをいいます。現在の裁判では、「不当解雇」が認められた場合には、「解雇は無効なのだからいまだ会社との雇用契約が継続している」という地位が確認されることになるため、慰謝料のほか、これまでの賃金相当分と、「職場に戻れる地位」を獲得することができることになります。ただし、実際には「解雇騒動」で揉めた労働者は、職場に戻っても働きづらい環境におかれる可能性が高いです。ですので、実際には職場に戻らず、結局お金で解決して会社を辞めるという選択肢を選ぶ方も少なくありません。こういった経緯と照らし合わせ、解雇された人の選択によって、「職場に戻る代わりに会社から補償金を受け取ることで、会社を退職できるようにする」という制度が金銭解雇制度として検討されているということです。現在検討されている金銭解雇制度は、あくまで、「不当解雇」が認定された場合の事後的な制度であって、いわゆる「労働者に金銭を払えば正当に解雇することができる」という事前型の制度ではないようです。事前型の金銭解雇制度を導入してしまうと、不当解雇を誘発するおそれがあるため、現実的に見ても導入の可能性はほぼないといえるでしょう。実際に事後型の金銭解雇制度であれば、アメリカ、フランス等の主要国で利用されているようです。○制度が仮に制定されたらどうなる?金銭解雇制度が実際に導入された場合、同制度が労働者にとって優しい制度になるか否かは、その中身によるといわざるを得ません。実際に支払われる「補償金」が、あまりに低いということであれば、裁判をして現実に回収するという現在の制度にのっかっていたほうが経済的メリットは高いということになるでしょう。たとえば、厚生労働省発表による不当解雇の場合の2012年~2013年の会社の支払額の平均を見てみましょう。労働局のあっせんによる解決は、申し立て~合意成立まで1.4カ月(中央値)で、会社から支払われる額(中央値)は15.6万円となっています。労働審判は申立日から審判の終了まで2.1カ月かかり、支払額は110万円となっています。さらに、民事裁判の場合は、民事裁判の和解で終結した事案では、解決まで平均9.3カ月かかり、和解の場合に支払われる額は230万円となっています。そうであれば、あえて簡潔に表現するのであれば、裁判をした場合には、少なくとも230万円程度の補償金を受け取ることができるような制度でなければ納得できない、ということになります。実際には、「不当解雇されてから解決までの期間」も基準とせざるを得ないように思います。今回金銭解雇制度が検討されるのが「裁判」のみか「審判」も含むか、労働局のあっせんにも何らかの変更が加わるのかを含め、「労働者に正当な補償をしたうえで労働者の納得のもと職を離れることができる」制度になることが期待されます。ただ、実際には、さほど高額の補償金を払う制度にはならないのではという懸念の声も聞こえます。「裁判」や「審判」後、会社から金銭を回収する労力や金額との関係で、金銭解雇制度を利用した方が簡便でかつ経済的メリットが高いということであれば金銭解雇制度を利用した方がいいですし、逆に労力をかけてでもしっかり交渉した方がメリットは大きいということであれば、この制度を利用せず、金銭の回収を図るほうがよいともいえます。金銭解雇制度が労働者に優しい適正な内容になることを、今は見守るばかりというところでしょう。○まとめ(メッセージ)金銭解雇制度は、いまだ制度の構築中であり、その内容がどのようなものになるかは不明です。ただ、仮に同制度の運用が始まったとしても、リストラや希望退職に応じるべきか否か、また、裁判所に訴えるかどうか、同制度を利用するか否かは、裁判の見込みやこれによって得られるメリットデメリット等複雑な問題をはらんでいると言わざるを得ません。当然、職場に復帰すべきか離職すべきかの判断もケースバイケースと言わざるを得ません。「退職」というのは、人生の上でも極めて大きな問題といえます。「退職」問題に直面した場合は、今後の見通しやメリットデメリットを総合的に検討する必要がありますので、やはり、専門家である弁護士にご相談いただくことをお勧めします。<著者プロフィール>篠田 恵里香(しのだ えりか)東京弁護士会所属。東京を拠点に活動。債務整理をはじめ、男女トラブル、交通事故問題などを得意分野として多く扱う。また、離婚等に関する豊富な知識を持つことを証明する夫婦カウンセラー(JADP認定)の資格も保有している。外資系ホテル勤務を経て、新司法試験に合格した経験から、独自に考案した勉強法をまとめた『ふつうのOLだった私が2年で弁護士になれた夢がかなう勉強法』(あさ出版)が発売中。『Kis-My-Ft2 presentsOLくらぶ』(テレビ朝日)や『ロンドンブーツ1号2号田村淳のNewsCLUB』(文化放送)ほか、多数のメディア番組に出演中。 ブログ「弁護士篠田恵里香の弁護道」
2015年09月11日連載コラム『知らないと損をする「お金と法律」の話』では、アディーレ法律事務所の法律専門家が、具体的な相談事例をもとに、「お金」が絡む法的問題について解説します。【相談内容】インターネットバンキングを利用していますが、先日、預金が勝手に引き落としをされていることに気づきました。インターネットバンキングで不正に預金が取られてしまった場合、銀行は補償してくれるのでしょうか?【プロからの回答です】あなたに過失がない限り、銀行により全額補償されるのが原則です。ただし、あなたに「パスワードを他人に知られてしまった」等の過失があった場合には、補償額が減額される可能性があります。「契約カードを他人に渡してしまった」など、重大な過失があると判断された場合には、全額補償されない可能性もあります。○ネットバンキングでの不正送金の実情銀行取引が、ネット上で24時間手軽に行えることから、インターネットバンキングの利用者は急増しているようです。しかし一方で、このインターネットバンキングを狙った犯罪被害も後を絶ちません。警察庁の発表によれば、インターネットバンキング利用者の情報を盗み取り、利用者の口座から不正送金する事案の被害は、平成24年には64件合計約4,800万円だった被害額が、平成25年には1,315件合計約14億600万円、さらに平成26年には1,876件合計約29億1000万円の被害額に達しており、平成26年は、前年比の2倍以上になっているとのことです。また最新のデータとして、全国銀行協会が発表した「インターネットバンキングによる預金等の不正払い戻しの件数・金額」に関するアンケート結果によると、平成26年10月~12月における被害件数・金額は、個人が210件合計2億6100万円(法人5件:合計1000万円)平成27年1月~3月における被害件数・金額は、個人が170件合計3億1100万円(法人1件:合計100万円)となっています。そして、最新の統計では、平成27年4月~6月の被害件数・金額は、個人が290件合計4億円(法人9件:合計7000万円)の被害となっています。このようにインターネットバンキングの被害件数・金額はいまだ減少するどころか増加の傾向を示しています。○ネットバンキングにおける預金者保護法従前より、偽造・盗難カードによる不正払い戻しの被害については、平成18年2月施行の「偽造カード等及び盗難カード等を用いて行われる不正な機械式預貯金払戻し等からの預貯金者の保護等に関する法律(預金者保護法)」に基づいて、被害者に補償が行われてきました。ただ、この法律による補償の対象は、「偽造・盗難カードによる払い戻し」のケースであったため、インターネット上の情報操作によって払い戻しがされてしまう被害のケースは補償対象外でした。したがって、インターネットバンキングによる不正送金のケースは、法律上の過失責任の原則に立ち戻り、「銀行側に過失があった場合のみ被害者に賠償責任を負う」のが原則となっていました。銀行側に過失がないのが通常なので、仮に預金者に過失がなかったとしても不正送金の補償はなされないのが当然だったわけです。その後、平成20年2月、全国銀行協会が「預金等の不正な払戻しへの対応」の申し合わせを公表し、「インターネットバンキングによる預金等の不正払戻しについては、銀行に過失がない場合でも、預金者自身の責任によらずに遭った被害については、補償を行う」ものとしました。それと同時に、インターネットバンキングによる預金等の不正払戻しは、銀行の管理が及びにくいことや、インターネット技術の進展と相まって複雑高度化することから、各銀行に対しセキュリティ向上、捜査当局との相互の協力体制の整備等を求める他、顧客に対しても捜査への全面的協力や被害状況の迅速な報告説明を義務付ける等の要件を整備しました。これにより、銀行側に過失がなくとも、預金者に過失がなければ、不正払戻しによる被害金額が補償されることになりました。○今回のケースでは?インターネットバンキングの不正送金の補償要件としては、預金者による(1)金融機関への速やかな通知、(2)金融機関への十分な説明、(3)捜査当局への真摯な協力、がなされることが前提です。そして、預金者に重大な過失ありと判断される場合は、補償を全額受けられない可能性がありますし、預金者に単純な過失ありと判断される場合でも、その補償額が減額される可能性があります。今回も、被害者が上記手続きを遵守し、かつ過失がないということであれば、被害額は全額補償されることになります。ここで、「預金者に重大な過失あり・単純な過失あり」と判断されるのはいかなる場合かが問題となります。全国銀行協会によれば、「インターネットの技術やその世界における犯罪手口は日々高度化しており、そうした中で、各行が提供するサービスは、そのセキュリティ対策を含め一様ではないことから、重過失・過失の類型や、それに応じた補償割合を定型的に策定することは困難である。したがって、補償を行う際には、被害に遭った顧客の態様やその状況等を加味して判断する」ものとしています。要は、個別判断ということになりますが、ここでは、「偽造・盗難カードによる不正払戻し」の過失の判断基準が参考になります。例えば、カードによる払い戻しのケースでは、他人に暗証番号を知らせた場合や暗証番号をキャッシュカード上に書き記していた場合、他人にキャッシュカードを渡した場合、その他これらと同程度の著しい注意義務違反があると認められる場合には「重大な過失あり」として補償が受けられないことになっています。また、「暗証番号の管理がいい加減だった場合」(生年月日などの類推されやすい暗証番号から別の番号に変更するよう個別的、具体的、複数回にわたるお願いをしたにもかかわらず、生年月日、自宅の住所・地番・電話番号、勤務先の電話番号、自動車などのナンバーを暗証番号にしていた場合や暗証番号をロッカー、貴重品ボックス、携帯電話など金融機関の取引以外で使用する暗証としても使用していた場合)や、「キャッシュカードの管理がいい加減だった場合」(キャッシュカードを入れた財布などを自動車内などの他人の目につきやすい場所に放置するなど、第三者に容易に奪われる状態においた場合や酩ていなどにより通常の注意義務を果たせなくなるなどキャッシュカードを容易に他人に奪われる状況においた場合)、その他これらと同程度の注意義務違反があると認められる場合には、「過失あり」として補償額を減額できることになっています。インターネットバンキングのケースも、これに準じて考えることになりますが、たとえば、(1)パスワードやインターネットバンキングの契約カードの内容を他人に知らせた場合や契約カードを他人に渡した場合、(2)パスワードを生年月日・住所の番地・電話番号・自動車のナンバー・同じ数字等他人に類推されやすい番号にしていた場合や同じパスワードを他の取引に使用していた場合、(3)契約カードを他人の目につきやすい場所に放置する、パスワードや契約カードの内容をメモなどに書き記す・パソコン等に保存する等、第三者に容易に奪われる状態に置いた場合などは重大な過失ありと認められる可能性が高いでしょう。同様の過失の例を参考として掲げる銀行も多いようです。重大な過失ありと判断される場合には補償しない、単純な過失ありと認められた場合の補償額は本来の額の4分の3と設定しているのが通常です。その他、被害の報告が被害発生日の30日後までに行われなかった場合、親族などによる払い戻しの場合、虚偽説明を行った場合、戦争暴動等社会秩序の混乱に乗じた被害の場合には補償しないとされているのが通常です。○不正送金を防止するためにしておくべきこと以上のように、不正送金の被害に遭われた場合でも、「全く過失なし」と判断されるのであれば、被害額が補償されることになります。ただ、実際には、「管理がいい加減だったからこそ情報を盗まれる」と言える場合も多く、過失が認められてしまうケースも少なくないと思われます。また、そもそも不正送金被害に遭わないための対策を講じておけるのであれば、これに越したことはありません。パソコン等のインターネット環境を最善の状況にしておくことがまず重要です。総務省のHPでは、(1)ウイルス対策ソフトを利用するとともに、更新を怠らないこと、(2)不審なホームページやメールは開かないこと、(3)制作者が不確かなソフトウェアは利用しないこと、(4)OSやソフトウェアを最新の状態にすること、(5)インターネット利用においては、パーソナルファイアウォールの利用も有効であること、などの対策が挙げられています。また、スマートフォンやタブレットなどの媒体でも、(1)アプリのこまめなアップデート、(2)セキュリティソフトの利用、(3)基本ソフトのアップデート、(4)正規アプリマーケットからの購入、等の対策が挙げられます。また、インターネットバンキングに必要となるパスワードや契約カード等の設定管理を今一度見直し、他人に絶対知られないようにしておくことも大切です。「忘れたら困るから」と思ってパスワードを手帳にメモしたり、スマホのメモに入力していたりしてもいけません。管理に過失ありと認められないように細心の注意が必要と言えそうです。○まとめ(メッセージ)こういったインターネットバンキングの不正送金被害については、「まさか自分が被害には遭わないだろう」と考えている方がまだまだ多いようです。しかし、実際に被害に遭ってしまった場合には、「預金が全てゼロになる」というような大きな被害に結びつきます。「他の取引で利用しているパスワード」をインターネットバンキングのパスワードとして利用している方は多いと予想されますが、この事情をもってしても過失ありと判断されてしまいます。また、インターネットバンキングの契約カードをうっかり紛失してしまっていた、車の中に放置してしまった等の事情では全額補償されない可能性も出てきます。日頃から「いつ被害に遭うか分からない」という認識で、契約カードやパスワードの管理等を心がけておくことが重要ですね。(※写真画像は本文とは関係ありません)<著者プロフィール>篠田 恵里香(しのだ えりか)東京弁護士会所属。東京を拠点に活動。債務整理をはじめ、男女トラブル、交通事故問題などを得意分野として多く扱う。また、離婚等に関する豊富な知識を持つことを証明する夫婦カウンセラー(JADP認定)の資格も保有している。外資系ホテル勤務を経て、新司法試験に合格した経験から、独自に考案した勉強法をまとめた『ふつうのOLだった私が2年で弁護士になれた夢がかなう勉強法』(あさ出版)が発売中。『Kis-My-Ft2 presentsOLくらぶ』(テレビ朝日)や『ロンドンブーツ1号2号田村淳のNewsCLUB』(文化放送)ほか、多数のメディア番組に出演中。 ブログ「弁護士篠田恵里香の弁護道」
2015年08月20日連載コラム『知らないと損をする「お金と法律」の話』では、アディーレ法律事務所の法律専門家が、具体的な相談事例をもとに、「お金」が絡む法的問題について解説します。【相談内容】先日、友人から精神疾患になってしまって悩んでいるという相談を受けました。話を聞いてみたところ、会社の上司による、セクハラとパワハラが原因のようでした。毎日のように下着の色を聞かれたり、食事に誘われたり、さらに、食事を断ると、突然みんなの前で、「仕事ができない!もっとちゃんとしてくれ!」というような怒鳴り声をあげられていたとのことでした。ここまでひどい仕打ちを受けているのですから、損害賠償請求はできますよね?【プロからの回答です】損害賠償を請求できる可能性は高いです。上司の行為はセクハラ・パワハラに該当し、これによって被った精神的苦痛を補う趣旨で慰謝料が認められることになります。会社を退職せざるを得ない状況に至った場合は、退社しなければ得られたであろう給与相当額を請求できる場合もあります。○「ハラスメント」とは?ハラスメントは、直訳すると「嫌がらせ」です。セクシャルハラスメントは「性的な嫌がらせ」、パワーハラスメントは「力(優位性)による嫌がらせ」と直訳することができます。広い意味では社会一般に「ハラスメント」は存在しますが、狭義で言えば、やはり、「職場」におけるセクハラやパワハラのことを指すことが多いです。厚生労働省の定義では、職場におけるセクハラについて「労働者の意に反する性的な言動(これに対する労働者の対応により労働条件について不利益を受けたり、これにより職場環境が害されたりすること)」と表現されています。そして、事業主、上司、同僚に限らず、取引先、顧客、患者、学校における生徒などもセクハラの加害者になりえますし、女性同士や男性同士の間でもセクハラは成り立つとされています。「性的な内容の発言」としては、性的な事実関係を尋ねること、性的な内容の情報(噂)を流布すること、性的な冗談やからかい、食事やデートへの執拗な誘い、個人的な性的体験談を話すことなどが挙げられます。「性的な行動」としては、性的な関係を強要すること、必要なく身体へ接触すること、わいせつ図画を配布・掲示すること、強制わいせつ行為、強姦行為などが挙げられます。これ以外でも性的なニュアンスを有する言動であって、不快な思いをさせるようなものであれば、セクハラにあたることになります。パワハラに関する厚生労働省の定義は、「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内での優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為」とされています。これは、上司部下の関係に限らず、同僚、後輩によるパワハラも含むとされます。パワハラの具体例としては、(1)殴る・蹴るなどの身体的な攻撃、(2)侮辱的な発言や人格否定発言・暴言・脅迫等の精神的な攻撃、(3)仲間外れ・無視・隔離といった人間関係からの切り離し行為、(4)業務上明らかに不要なことや不可能なことを強制するなどの過大な要求行為、(5)合理的理由なく能力・経験とかけ離れた低レベルの仕事を命じたり仕事を与えないといった過少要求行為、(6)私的な事項に過度に介入する個の侵害行為などが典型例として挙げられています。最近は、ハラスメントの中身によって、多くの「○ハラ」という言葉が生まれてきています。セクハラ、パワハラ以外にも、言葉の暴力や精神的な虐待である「モラルハラスメント(道徳的嫌がらせ)=モラハラ」、女性の妊娠や出産にまつわる「マタニティハラスメント=マタハラ」、SNSで「いいね!」を強要するなどの「ソーシャルメディアハラスメント=ソーハラ」、身体のにおいなどに関する「スメルハラスメント=スメハラ」、年齢にまつわる偏見や差別等を行う「エイジハラスメント=エイハラ」、教育する側と学ぶ側の関係における嫌がらせ等の「アカデミックハラスメント=アカハラ」など、これ以外にも多数の「ハラスメント」が生まれているといわれています。最近では、若者がすぐに、「それってパワハラですよね」等と上司などを加害者扱いしてくるために、50代以上の管理職がなかなか叱ることもできなくてモヤモヤするという「モヤハラ」なんていう言葉も聞くようになりました。○どこまでがセクハラ? どこまでがパワハラ?どこまでがセクハラ? どこまでがパワハラ? というのは非常に難しい問題です。受け取る人間が「いやだ」と思ったらそれで全て「ハラスメント」にあたるというのも行きすぎですが、一方で「受け取る人が嫌だと思ったか」も重要な要素となってきます。厚生労働省の考え方は、セクハラにあたるかの判断につき、ハラスメントの状況は多様であることから、個別の状況をくみ取って判断すべきとしています。「労働者の意に反する性的な言動」か「就業環境を害される」かの判断に当たっては、その労働者が嫌だと思ったか否かという労働者の主観を重視しつつも、一定の客観性も必要としています。「性的ニュアンスを有する」かどうかの判断も相当複雑となっていますので、「明らかに性的ニュアンスを有する」、「とらえ方によっては性的ニュアンスを有する」というその判断も相当複雑で、いわばケースバイケースとなるため、客観的な言動のほかその他周辺事情を総合的に考慮して判断せざるを得ません。一般的には意に反する身体的接触によって強い精神的苦痛を被る場合や強制わいせつ以上の行為に至っているような場合には、一回でもセクハラに当たりえます。また、一回一回の行為がさほど大きなダメージではなくとも、これが継続的に繰り返された場合にセクハラになる、ということもありえます。少なからず、「明確に抗議しているにもかかわらず放置された状態」または「心身に重大な影響を受けていることが明らかな場合」には、これによりセクハラが認定される可能性が相当高まるということができます。ただし、「いやだ」と告げたら全てセクハラ…というのは行きすぎなので、被害を受けた労働者が女性である場合には「普通女性であればこれは嫌でしょう」という「平均的な女性労働者の感じ方」を基準とし、被害を受けた労働者が男性である場合には同じように「平均的な男性労働者の感じ方」を基準とするべきとされています。その行為のみで一発アウトと考えられるのは、「胸を触る」とか、「キスをする」とか、「無理やりホテルに誘う」などのケースです。明らかに「性的に、通常は極めて嫌悪を感じる言動」といえるでしょう。一発アウトに至らずとも、「食事に誘う」など、その行為が反復継続されることによってセクハラになる言動もあります。少なくとも、「本人が明確に抗議しているのにもかかわらず、その行動を継続した場合」や、「本人がストレスから心身に支障をきたしたような場合」には、これらもセクハラになると考えられます。厚生労働省が、セクハラの例として挙げる行為としては、「~~ちゃん」と下の名前で呼ぶ、「うちの女の子」という言い方をする、女性社員にだけお茶くみをさせる、など、「女性であることを理由とする差別的扱い」一般についてセクハラに当たりうる旨として示唆しています。意外かも知れませんが、「女性社員のみ残業を免除する」という行為もセクハラに当たりうるとされています。仕事の延長ともいえそうですが、「取引先との接待に女性社員を呼ぶ」という行為もセクハラに当たる可能性があります。その他の事情にもよりますが、「仕事の上では当然」と考えていたり、「その女性社員のため」と思ってしたことが、気づかぬうちにセクハラになっていたりするということもあり得るわけです。パワハラに関しても、基本的な考えは同様です。労働者が不満に感じることすべてがパワハラに当たるわけではなく、業務上の必要に応じ、適正な範囲で行われる指示や注意・指導については、たとえ「叱る」という側面があってもパワハラには当たりません。上司等の職位・職能に応じた適切な指揮監督・教育指導の範囲を超えて、不合理な嫌がらせ・攻撃行為に至っている場合は、パワハラに該当することになります。パワハラは、セクハラに比べて「男女間における認識の差異」という概念に乏しいので、わかりやすいかもしれませんが、「仕事上の必要があるから」という建前をとっていてもパワハラと認定されることがあります。過去には、「配置転換・降格命令」を行った処分について、「業務上の必要性が乏しいにもかかわらず嫌がらせ目的で行われたもの」として、賃金差額等の支払いや慰謝料の支払を命じた裁判例があります。また、「タバコ臭い」などと言って、扇風機を部下に対し向けて送風したという事例でもパワハラ認定がなされています。○「会社が適切な対応をしてくれない」などの場合は損害賠償請求も視野このようにどのような行為がセクハラ・パワハラになるのかのボーダーラインはなかなか難しいかもしれませんが、少なくとも「本人が嫌だと思うか」が重大なファクターである以上、「いい人間関係を構築しておく」ことが一番大事なことかと思われます。セクハラ、パワハラ被害に遭っているということであれば、まずは、職場の相談窓口や頼りになる上司などに相談することが大事でしょう。上層部からの指導によって、セクハラ、パワハラが改善されることが期待できます。それでもなお、会社が適切な対応をしてくれない、上司のセクハラ・パワハラが直らない、ということであれば、損害賠償請求をすることも視野に入ります。この場合、会社が適切な対応をしてくれなかったということであれば、セクハラ・パワハラを行った人物本人のほか、会社に対しても損害賠償請求をすることが視野に入ります。ただ、会社での立場というものもありますし、今後会社に居づらくなるのが気がかりで、なかなか損害賠償請求をするというのも難しいかもしれません。その場合は、会社の体質なども考慮して今後どういうアクションを取るべきなのか、専門家である弁護士に相談してみましょう。セクハラ・パワハラの対策もしてくれないような会社であれば、思い切って退職することも考えてもいいかもしれませんね。会社を辞めるタイミングで損害賠償請求をすれば、その後の気まずさもないですし、場合によっては、会社を辞めなければ得られたであろう給与相当額の数か月分を請求することもできるかもしれません。ただ、損害賠償請求を行うにも、「そんなことしていない」と開き直られてしまうと厄介なので、証拠を集めるに越したことはありません。特に、セクハラ・パワハラは、言動によって行われることが多く、電子メールや手紙といった物的証拠としては残らないことがほとんどなので、積極的に証拠を残すようにしましょう。例えば、レコーダーで録音をしたり、動画が撮れたりしていれば、相当に強い証拠になります。ただし、通常はなかなか難しいと思いますので、「こんなことを言われた・された」という事実を日記に書きとめておくことや、周囲の方々の目撃証言も立派な証拠となりますので仲間を集めておいたりするとよいでしょう。また、同僚に「今日こんなことされた」と愚痴のメールを送った記録等、セクハラ・パワハラを推認させるような証拠はすべて証拠とすることができます。特に、日々の出来事を書き留める、その時の自分の気持ちを書き留める、ということが大事になってきますので、面倒でも証拠化しておいてください。証拠がある程度そろったら、弁護士に相談のうえ、その張本人と会社あてに内容証明を送ります。交渉の末、納得のいく金額を支払ってもらえればよいですが、セクハラ・パワハラを認めなかったり、金額も低額だったり、ということであれば最終的には裁判を起こして慰謝料等を請求することになります。法廷で、再度セクハラ・パワハラの内容を証言したりするのはなかなかに気持ち的にも辛いと思いますし、セクハラ・パワハラに関する裁判所の慰謝料の相場はいまだそう高くはありませんので、納得のいく条件で、裁判までいく前に解決できるのが望ましいとはいえますね。○今回のケースでは?今回は、セクハラ・パワハラが原因で精神疾患にまで至ってしまったという非常に痛ましいケースですね。結論としては、セクハラ・パワハラを理由に損害賠償請求をすることは可能です。仮に証拠がない場合であっても、相手方がその事実を認めるのであれば請求は可能ですし、少なくとも、自身の証言や日記の記載、周囲の証言などがあれば、十分に請求は可能だと思われます。精神疾患に至ったことも、慰謝料認定の重要な要素となりますので、病院でしっかりと診断書もとっておくことが重要です。毎日のように下着の色を聞かれたり、食事に誘われたり、という行為は厚生労働省が「セクハラ」の典型として見ている行為といえますし、食事を断るとみんなの前で、「仕事ができない! もっとちゃんとしてくれ!」と怒鳴り声をあげる、というのはセクハラの延長であるとともに、パワハラとなります。ここまでつらい思いをさせられているわけですから、ここは泣き寝入りをしないで、しっかりと非を認めてもらい、正当な賠償も受け取りたいところですね。セクハラやパワハラ、その他あらゆるハラスメントにおいては、「している側がハラスメントの意識がない」ケースも多いものです。ただし、されている側にとっては、会社に行くのも嫌になるほど苦痛に感じていることも少なくありません。もちろん、過度な警戒をすると、むしろ職場がぎこちなくなるので、適度なコミュニケーションは必要ですが、「ハラスメント」と判断されないためには、やはり「セクハラ」「パワハラ」に関する基本的知識は身に着けておくことが大事でしょう。当然、会社側も「セクハラが起こらないような会社」にするために「セクハラ防止指針」を周知徹底する必要があります。また、セクハラ・パワハラ被害に遭っている方は、じぶんひとりで抱え込んでしまうと、気づかぬうちに心身をむしばんで、精神疾患に陥ってしまうことも少なくありません。早いうちに、会社内や会社外で悩みを聞いてもらう、場合によっては弁護士などのアドバイスをもらう、というのが、早期に心の重荷を取り払うために必要だと思います。(※写真画像は本文とは関係ありません)<著者プロフィール>篠田 恵里香(しのだ えりか)東京弁護士会所属。東京を拠点に活動。債務整理をはじめ、男女トラブル、交通事故問題などを得意分野として多く扱う。また、離婚等に関する豊富な知識を持つことを証明する夫婦カウンセラー(JADP認定)の資格も保有している。外資系ホテル勤務を経て、新司法試験に合格した経験から、独自に考案した勉強法をまとめた『ふつうのOLだった私が2年で弁護士になれた夢がかなう勉強法』(あさ出版)が発売中。『Kis-My-Ft2 presentsOLくらぶ』(テレビ朝日)や『ロンドンブーツ1号2号田村淳のNewsCLUB』(文化放送)ほか、多数のメディア番組に出演中。 ブログ「弁護士篠田恵里香の弁護道」
2015年08月06日連載コラム『知らないと損をする「お金と法律」の話』では、アディーレ法律事務所の法律専門家が、具体的な相談事例をもとに、「お金」が絡む法的問題について解説します。【相談内容】最近、クレジットカードを作ろうとしたのですが、審査に引っかかり作ることができませんでした。これまで、カード類を作ったこともなかったので不思議に思っています。思い当たることと言えば、水道や電気などの公共料金の支払いとスマホ(本体の)代金の支払いが滞っていることくらいです。公共料金の支払いやスマホ代金の支払いが遅れて、ブラックリストに載るなんてことはあるのでしょうか?【プロからの回答です】公共料金の支払いが遅れること自体で、ブラックリストに載ることはありません。しかし、公共料金の支払いをクレジットカード払い等にしている場合、カード代金の滞納ということでブラックリストに載る可能性があります。また、スマホの端末を分割払いで購入し、その分割代金を滞納したことによりブラックリストに載る、という可能性は十分にあります。最近は、スマホ代金滞納によるブラックリスト入りのケースが急増しているようです。○ブラックリストについて誤解されている方も多いのですが、ブラックリストという名簿があるわけではありません。個人の経済的な信用を登録している「信用情報機関」に、「この人は返済が滞っているよ」というような事故情報が登録されることを、俗に「ブラックリストに載る」、と表現しているのです。「信用情報機関」とは、金融機関が、ローンを組ませたり、貸し付けを行ったりする際に、「この人物は信用できるのかな?」という与信審査を行うために設置された情報機関です。信用情報機関に登録される情報のうち、個人の経済的な信用力(返済能力)が低いと思わせるような情報を事故情報と呼びます。具体的には「延滞情報」や破産等の「債務整理を行った事実」等が該当します。信用情報機関のシステムは、次のとおりです。クレジットカードを作ったり、ローンを組んだりという場合、まず、「信用情報機関」に顧客情報が登録されます。ある一定期間返済が滞ったり、破産等の事情が生じたりした場合、これらの事情は「事故情報(異動情報や延滞情報、ネガティブ情報ともいいます)」として登録がなされます。これを通称「ブラック情報」、「ブラックリスト」などと呼んでいます。「カードを作りたい」、「借り入れをしたい」等の申請があった場合、金融機関はこの信用情報機関の情報を参照し、他社での利用状況や事故情報を確認するわけです。事故情報が記録されている、ということになれば、当然金融機関としては、「この人物は危ないな」と思い、貸付等を控えるわけです。主に、金融機関は、「銀行」・「消費者金融」・「信販会社」に分類されます。この業態により加盟する信用情報機関は異なります。現在下記3機関があります。全国銀行個人信用情報センター…銀行系の信用情報機関株式会社 シー・アイ・シー(CIC)…信販会社の信用情報機関株式会社 日本信用情報機構…銀行・消費者金融系・信販会社系の信用情報機関○ブラックリストが及ぼす影響ブラックリストに載ってしまった場合、これが登録されている期間の目安は、「支払予定日より3カ月間支払いが遅れた場合は5年間」「自己破産した場合は7年~10年間」「任意整理をした場合は5年間」などとなっています。ブラックリストに載っている期間中は、金融機関が「この人は信用が低いので貸付ができない、ローンを組むのは難しい」と判断する可能性が高いことになります。ですので、この期間中は、新たにカードを作ったり、新たな借入をしたり、自動車や住宅のローンを組んだりすることが難しくなります。また、携帯電話の分割払いによる購入ができない、等の影響も考えられます。引っ越しの際、家賃等の保証人として保証会社が指定されている場合、保証会社が信用情報機関に問い合わせをし、保証会社に拒否されるということも考えられます。また、家賃の支払い方法として、クレジット会社による引き落としが指定される場合がありますが、その際も信用情報機関への問い合わせがなされ、審査が通らないという可能性があります。そのため、事実上、引っ越したい物件に引っ越せないというリスクもあり得るかもしれません。ただ、上記のようなケースでない限り、大家さんが信用情報機関に問い合わせたりはしないので、保証人等の要件を満たせば引っ越しに支障が出ることはないでしょう。実際に、任意整理中や破産中に引っ越しをする方はたくさんいらっしゃいます。また、ブラックリストは一生ものではなく、「一定期間」を過ぎれば登録は削除されます。なので、その期間を過ぎれば、新規にクレジットカードを作ることも、ローンも組むことも可能となります。「ブラックリスト」と聞くと、犯罪者になったかのようなイメージを持つ方もいるようですが、あくまで新規の借入等ができなくなるだけです。逆に、それ以外の影響はほぼありません。選挙権がなくなるなどと誤解をしている方もいらっしゃるようですが、ブラックリストでの影響はあくまでも「金融機関が参照する個人の経済的な信用」の側面です。したがって、ブラックリストに載ったからといって、就職に不利になる、勤務先に調査される、資格の制限が出る等の影響は基本的にないと考えていただいて大丈夫です。また、信用情報はあくまでその個人のものである以上、家族、親族等に不利な影響が出ることも原則としてありません。ただ、勤務先が、銀行や金融機関、カード会社ということになると、信用情報と密接にかかわっているため、事実上の影響が出る可能性は否定できないかもしれません。○ブラックリストに登録されているかどうか確認の仕方ブラックリストに登録されているかどうか確認するためには、各信用情報機関に対し、個人の信用情報を開示するよう請求することになります。これにより、自身のローンやクレジットなどの契約内容や支払状況等に関する情報を確認することができます。手続きは、電話、窓口での申し込み、郵送等の方法により行うことができますので、各機関のHPなどを参照してみてください。信用情報の開示請求によって、「氏名、生年月日、電話番号などの個人を特定する情報」、「クレジットやローンなどの個人の取引に関する情報(利用金額、残高など)」、「取引から発生する情報(支払遅延、法的手続きの有無など)」の内容を確認することができます。一般には、約定返済日より一定期間返済が遅れたり、3回以上滞ったりすると、「延滞」の事故情報となります。また、民事再生、自己破産、任意整理などの借金整理の手続をした場合は「債務整理」として事故情報の扱いとなります。また、契約者が返済不能となり連帯保証人等から代わりに弁済することになった場合などの「代位弁済」も事故情報として扱われます。これらの情報が登録されている場合、ブラックリスト入りしていると考えた方がよさそうです。また、「事故情報」として登録がなくとも審査が通らない場合がありますので気をつけてください。新たな貸付の申込をすると、貸金業者等が与信審査のために、個人信用情報を閲覧することになりますね。その際の閲覧情報も信用情報として記録されています。これを「申込情報」と言います。この情報は6カ月間登録されることになります。例えば、1カ月に3つ以上の会社に申し込みをしたなど、短期間に複数のクレジットカードの申請があった場合には、いわゆる「借り回し」と判断され、審査が通らない可能性があります。要は、「お金に困っていて首が回らないのではないか」という判断につながる可能性がある、ということです。通称「申込みブラック」などといわれますが、「事故情報」ではなくとも、事故情報が載ったと同様の効果となりえるので、このような呼び名となっています。実際にはそのような事実がないのに、信用情報に間違った事故情報が載っている、ブラックリスト入りしてしまっている、といった場合には、その信用情報の記録を削除・訂正するよう申し立てることができます。○今回のケースでは?今回のケースは、「カードを作ったことがない」とのことですから、公共料金の滞納によりブラックリスト入りをしたとは考え難いです。ですので、やはり、「スマホの分割代金の滞納」がブラックリスト入りの原因となったと考えるのが自然でしょう。もし、気になった場合は、信用情報の開示請求をするべきですが、滞納分を一括で返済したとしても事故情報が消えるわけではないので注意が必要です。また、最近多く聞かれるのが「奨学金の滞納」によるブラックリスト入りのケースです。これまでは、奨学金の滞納でブラックリストに載ったという話をあまり聞いたことがなかったかもしれません。実は2010年4月から、奨学金の滞納についても、「返済を3カ月以上滞納した場合には信用情報機関に登録する」という運用が開始されています。奨学金というと、勉学のためのお金、というイメージで、ブラックリストとは程遠いイメージかもしれませんが、返済を滞納してしまうと、いわゆる「サラ金の滞納」と同じような扱いでブラックリスト入りをしてしまいます。また、最近は、「軽い気持ちでお金をつぎ込んだことによりブラックリスト入りする」ケースが増えています。例えば、スマホゲームの課金や、芸能人のCDの大量購入、フィギュアなどの趣味での消費、夜の店への入りびたり、等の原因です。軽い気持ちで出費や借金を重ねているのかもしれませんが、予想以上に借金が膨らんでしまい返済が困難になった、というケースも多いので注意が必要です。○ブラックリスト入りしないために気を付けること最近は、ブラックリストに載る原因として、「え? そんなことが原因で?」と思わず言ってしまいたくなるようなケースが増えています。例えば、携帯電話やスマホの購入代金滞納の事例では、月々の分割払いは、安ければ月額1,000円程度という金額のこともありますよね。ですので、うっかり滞納を続けてしまっても、本人はさほど大きいこととは思っていない、ということなのでしょう。しかし、金額の大小は関係ありません。極めて少額であっても、滞納すればブラックリストに載ってしまうというのが、信用情報のカラクリなので、気をつけねばなりません。いったんブラックリストに載ってしまうと、ローンが組めない、カードが作れないといういわば経済的信用にレッテルを貼られるわけです。このレッテルが少なくとも5年間は貼られ続けるかもしれない、必要な時にローンが組めないかもしれない、この影響は決して小さいものではありませんね。「今月は予想外の出費が多かったから」「月々数千円であれば余裕」などと言って、安易に少額の借入れや、ローンに手を出してしまうと、その後は通常借金が膨らむだけです。その時点で一括払いが無理である以上、大幅な給与増額等の事情がない限り、その後の返済は困難に陥るということを肝に銘じていただく必要があります。借り入れやローンには「利息」が乗っかってくるのでむしろ当然です。また、一般的には、一度借入れをしてしまうと、「借入れできる限度額が自分の預金のように思えてきてしまう」傾向にあり、「ショッピングローンなども借金という意識が薄れてしまう」というのが顕著です。これにより新たな借り入れやローンにさらに手を出すというサイクルに陥ってしまいます。月々の返済額がその余剰を超えてしまえば返済できなくなり返済のためにまた借りる、返済額が増えたのでますます返済できなくなる、という悪循環に陥ってしまうのです。○まとめ(メッセージ)「今月だけ借入をしよう」「一括払いで購入できないけどローンで購入しよう」と思った瞬間は危険信号です。その一歩が、「借りたものを返済できないサイクル」への一歩です。借金、ローンのはじめの一歩を踏み出してしまう前に、ご自身の収入と支出を紙に書き出すなどして改めて認識し、家計を見直すことをお勧めします。(※写真画像は本文とは関係ありません)<著者プロフィール>篠田 恵里香(しのだ えりか)東京弁護士会所属。東京を拠点に活動。債務整理をはじめ、男女トラブル、交通事故問題などを得意分野として多く扱う。また、離婚等に関する豊富な知識を持つことを証明する夫婦カウンセラー(JADP認定)の資格も保有している。外資系ホテル勤務を経て、新司法試験に合格した経験から、独自に考案した勉強法をまとめた『ふつうのOLだった私が2年で弁護士になれた夢がかなう勉強法』(あさ出版)が発売中。『Kis-My-Ft2 presentsOLくらぶ』(テレビ朝日)や『ロンドンブーツ1号2号田村淳のNewsCLUB』(文化放送)ほか、多数のメディア番組に出演中。 ブログ「弁護士篠田恵里香の弁護道」
2015年07月27日連載コラム『知らないと損をする「お金と法律」の話』では、アディーレ法律事務所の法律専門家が、具体的な相談事例をもとに、「お金」が絡む法的問題について解説します。【相談内容】母親が数年前に亡くなって、父親も先日95歳で亡くなりました。親が住んでいた家と土地、銀行口座内の貯金などは兄弟3人で相続するつもりで、誰が何を相続するか話し合っていた矢先、父親に莫大な借金がある事が分かりました。相続する場合は、借金も払わなければならないのでしょうか? 遺産を分けるのであれば、借金も分けて支払えるのでしょうか。【プロからの回答です】相続する場合は、家や土地、貯金などをもらうことができますが、一方で残された借金も支払わねばなりません。相続人同士の話し合いで、借金の負担を決めた場合はこれにしたがいます。話合いでなく法律の定めどおりに相続する場合は、原則として、財産も借金も相続分に応じて相続することになりますので、今回のケースでは、3人のお子さんでそれぞれ3等分することになります。「相続」と聞くと、親の遺産がもらえる、というイメージがあるかもしれません。しかし、相続というのは亡くなられた方が所有していたプラスの財産のほか、借金のようなマイナスの財産も全て引き継ぐ制度です。ですので、残したプラスの財産よりも、マイナスの借金の方が大きい場合は、財産をもらえるどころか、借金を背負うハメになることもあるわけです。遺産相続の方法は、遺言や遺産分割協議で決めることができます。これらの方式をとらない場合は、法律の定めた相続分にしたがって、故人の財産や負債を分けることになります。相続人がお子さんしかいない場合には、お子さんの頭数で割ることになるので、今回のケースでは、3分の1ずつとなります。○相続をする場合には、プラスの財産だけ引き継ぐという都合のよい制度はない相続をする場合には、プラスの財産だけ引き継ぐという都合のよい制度はありません。相続人がとりうる方法は以下の3つとなります。(1)単純承認=家・土地・貯金等の権利や借金等の義務をすべて受け継ぐ方法(2)相続放棄=権利や義務を一切受け継がない方法(3)限定承認=残されたプラスの財産の限度で借金等の負担を受け継ぐ方法プラスの財産>マイナスの財産の場合には「単純承認」、プラスの財産<マイナスの財産の場合には「相続放棄」をするのが一般的です。遺産相続で親族同士がもめる…というトラブルは誰にでも起こりうることです。どんなに仲の良かった兄弟であっても、親の遺産をめぐる争いとなると「骨肉の争い」となります。泥沼の争いの結果、生涯仲違いしてしまうという話は後を絶ちません。○「泥沼の争い」を防ぐためには、「遺言をどう残すか」が大きなポイントこのような「泥沼の争い」を防ぐためには、「遺言をどう残すか」が大きなポイントとなります。遺産相続でよくもめるケースは、自分に不利な遺言が残っていた場合に、「親父がそんな遺言書くわけがない。無理やりお前が書かせたんだろ」となじり合うケースです。故人はすでに亡くなっているので、その真意を明らかにすることはできません。こういった争いを未然に防ぐには、やはり「生前の話し合い」が一番大切です。生前に死後の話をするのは気が引ける…というのも当然ですが、他界した後に、大切な家族がもめることは故人にとっても哀しいことでしょう。ですので、あえて「皆の相続分をどうするか」を生前に決めておき、これを遺言として残しておくことが、相続トラブルを防ぐ最もよい方法といえそうです。あとは、遺言とは別に、遺言の理由を記載した手紙を残しておくことも有益です。残された相続人としては、「なぜ次女だけがいい思いを!」などと感じたりするものですが、手紙に「あのとき次女がこんな風に助けてくれた」等の記載があれば、「そうだったのか」と他の相続人の理解に役立つことが期待できます。○「権利も相続しないけれど義務も相続しない」という相続放棄という制度「故人に莫大な借金があった」等の場合に、相続人がいきなり借金を背負わされるのはやはり酷ですね。債権者の方には申し訳ないのですが、このような場合に、「相続人が急な借金で苦しまない」ように、法律上は、「権利も相続しないけれど義務も相続しない」という相続放棄という制度が認められています。気をつけねばならないのは、相続放棄ができる期間は、「相続開始を知ってから3カ月」であるということです。故人のご葬儀や四十九日法要などで忙しくしているうちに、3カ月などあっという間に過ぎてしまうものです。ですので、可能であれば生前から故人の負債状況は把握しておき、これが無理だった場合でも、少なくとも個人の逝去後1カ月以内には、個人の財産状況を確認調査すべきです。ただ、いかなる場合でも3カ月以降は放棄が認められないか…というとそうとも言い切れません。例えば、故人が連帯保証人だったような場合は、主債務者の返済が滞って初めて請求が来ますので、どんなに調査しても判明しなかったということもありえます。○相続によって得た財産の限度で個人の借金等の債務の負担を受け継ぐ「限定承認」したがって、裁判所としては、「調査しても判明困難だった借金が後から判明した場合」には3カ月経過後の放棄も認める運用をしています。ただ、後から判明した借金が全て放棄できるということではなく、あくまで、しっかり調査したということが前提となりますので、故人の逝去後なるべく早くに負債を把握することはとても重要です。故人の財産や借金などの債務がどの程度あるか不明であり、財産が残る可能性もあるような場合、「財産が残るのであれば相続したいけれど、借金が残るのであれば引き継ぎたくない」と思うのは当然ですね。このような場合、相続によって得た財産の限度で個人の借金等の債務の負担を受け継ぐ方法があります。これが、限定承認という方法です。この方法をとると、例えば、「調査の結果800万円の資産があったけれど、1,000万円の借金があった」というような場合、相続人は相続した資産の範囲内で借金を返済すればよいとされるので、資産の800万円を返済にあて、残りの200万円は支払わなくてもよいことになります。逆に、「調査の結果1,000万円の資産があり800万円の借金もあった」というケースであれば上回った資産200万円を相続することができることになります。ただ、限定承認については、相続人のうちの一人が「限定承認したい」というだけではだめで、共同相続人全員で行う必要があります。なお、相続放棄をした相続人ははじめから相続人ではなかったという扱いになりますので、共同相続人に含まれません。限定承認をすると、法律の手続きに従い、返済や換価などの清算手続を行い、財産が残るようであればこれを相続することになります。この限定承認も「相続開始を知ってから3カ月」と期間が短いので注意が必要です。○借金が膨大で、払える余地がないということであれば相続放棄するほかない今回も、家や土地、貯金等の資産がある一方で、莫大な借金もあったというケースです。なので、3つの手続きのうちいずれを選択するか悩ましいところです。仮に単純承認をするのであれば、法定どおりであれば、資産も借金も3等分することになります。家や土地も3分の1ずつの持ち分、借金も3分の1ずつ返すということです。ただ、今回は、家や土地があるので、家や土地は誰か一人が引き継ぐ、というのが現実的でしょう。ですので、遺産分割協議によって「誰がどの遺産を引き継ぎ、借金の返済を誰がどれだけ負担するか」を話し合いで決定するのが好ましいでしょう。仮に借金が相当膨大で、払える余地がないということであれば、やはり相続放棄をするほかないと思われます。家や土地・貯金なども引き継ぐことはできなくなってしまいますが、借金が残っている以上は、やむを得ないところです。○事例どんなに仲の良かった兄弟姉妹でも、故人が逝去した後に相当な遺産があるような場合、泥沼の争いになることも多いです。(1)遺言を無理やり書かせたと争った事例87歳の女性が、「全ての財産を妹に相続させる」と遺言を遺した事例です。女性の養子であった子供2人が、「お母さんは当時、痴ほう症で、遺言を書く能力などなかった。叔母さんが無理に作成させたものだ」といって、遺言の効力を争いました。養子の2人は長年女性と同居し、女性の介護にあたっており、また、女性は当時痴ほう症の症状があったことから、「遺言は無効」と判断されました。(2)介護をしていたのは自分だから多くの相続分をもらえるべきだと争った事例よくあるトラブルですが、「介護に尽くしていたのは自分だ」と主張し、より多くの相続分を自分が受け取るべきだと争うケースです。法律上は、故人の遺産の形成維持に相応の貢献をしたという場合には、「寄与分」といって、相続分を多くもらうことができます。しかし、「介護をしていた」という事情のみを持って遺産の形成維持に尽くしたと評価するのはなかなか難しいところです。過去の裁判例では、故人を自宅で介護し続けた相続人につき、遺産建物の補修費関係の支出や、農業を手伝って農作収入増加に寄与したことを挙げて、遺産総額の15パーセントを寄与分として認めたものがあります。こういった事情があれば、遺産の形成維持に寄与したことになりますが、実際には、寄与分の判断や割合を主張するのはなかなかに難しいことが多いです。こういった事情から、「介護をした者」とそれ以外の相続人との間で、「寄与分」をめぐって、なじりあいの争いになることが多いです。○「将来のもめごとを防ぐ」意味で、生前に相続問題を話し合っておくことが大切遺産相続のトラブルは、誰にでも起こりうることです。生前に、亡くなった後のお金の話をするのは、なかなかやりづらいことかもしれません。しかし、遺産相続トラブルは、往々にして熾烈な争いとなり、場合によっては「一生縁を切る」という関係に至ってしまうことも少なくありません。話しづらいことであっても、やはり「将来のもめごとを防ぐ」という意味で、生前に相続問題を話し合っておくことは大切です。借金についても、判明しづらい借金が残っていると、相続人に思わぬ不幸を与えかねません。可能であれば、借金の内容もしっかりと生前に伝えておくことが望ましいですね。相続放棄や限定承認の期間は、思った以上に短い期間ですので、相続の方針も前もって共同相続人間で共有しておくと、慌てずに済みそうですね。(※写真画像は本文とは関係ありません)<著者プロフィール>篠田 恵里香(しのだ えりか)東京弁護士会所属。東京を拠点に活動。債務整理をはじめ、男女トラブル、交通事故問題などを得意分野として多く扱う。また、離婚等に関する豊富な知識を持つことを証明する夫婦カウンセラー(JADP認定)の資格も保有している。外資系ホテル勤務を経て、新司法試験に合格した経験から、独自に考案した勉強法をまとめた『ふつうのOLだった私が2年で弁護士になれた夢がかなう勉強法』(あさ出版)が発売中。『Kis-My-Ft2 presentsOLくらぶ』(テレビ朝日)や『ロンドンブーツ1号2号田村淳のNewsCLUB』(文化放送)ほか、多数のメディア番組に出演中。 ブログ「弁護士篠田恵里香の弁護道」
2015年07月09日○データ差押えに関する法律の現状東京ビッグサイトで5月13日~15日まで、日本最大級のIT専門展「Japan IT Week 春」が開催された。今回は12の専門展を併催しており、「クラウド コンピューティング EXPO 春」にはパブリッククラウドサービス「ニフティクラウド」で3,500件以上の導入実績を持つニフティが出展。パートナー企業を招き、1日あたり10回以上ものブース内セミナーを開催していた。その中から、虎ノ門南法律事務所 弁護士 上沼紫野氏が登壇したセッション「クラウドに関する法的諸問題」を紹介しよう。上沼氏は本セッションにおいて、クラウドの進展で特に重要となった問題として、国境をまたぐ商取引であるが故の「クロスボーダー」という視点、そして準拠法や裁判管轄のあり方についてなど、様々な問題を提起した。今回はその中から、クラウド利用におけるデータの差押えの問題について詳しくみていきたい。データの差押えについては、日本を含む欧米などの主要国30カ国が署名・採択している欧州評議会発案の「サイバー犯罪に関する条約(Convention on Cybercrime)」に批准するべく、2011年6月17日に「情報処理の高度化等に対処するための刑法等の一部を改正する法律」が成立し、日本国内で対応可能となったものである 。従来、日本の刑事訴訟法では有体物に関する規定しかなかったが、データの差押えに関する規定が新たに加わったのである。データに関する事項で、刑事訴訟法の改正のポイントは「接続サーバ保管の自己作成データ等の差押えの導入」「記録命令付差押えの新設」「データに関する記録媒体の差押えの執行方法の整備」「データの没収に関する規定の整備」の4点である。ただし、刑事訴訟法の改正時に「これはクラウドサービスに対応するものであるが、この法律が通った時にはすでに、現在の利用環境に対応するのは十分ではない」といわれていたのも事実。そこには、差押える側からはデータの所在地が不明なこと、警察権は日本国内にしか適用できないため国外サーバの場合は差押えができるか不明、といった理由があるという。○クラウド上のデータはどのように差押えられるのかクラウド利用者にとって、データの差押えは気になる事項だろう。差押えの方法についてはいくつかの種類があると、上沼氏は話す。まずは、ファイルサーバやクラウド系のWebメールなど、インターネット経由でデータを物理的に離れたサーバへ保管しているケースを見てみたい。ここで差押え対象がPCの場合、そのPCで作成などが行われたデータがサーバへ記録されている状況では、そのデータは差押え対象となるPCにコピーされたうえで、差押えられることがあるという。次に上沼氏は、新設された「記録命令付差押え」について解説した。こちらは、プロバイダ等のデータを保管する者や、その他データを利用する権限を有する者に、必要なデータを記録媒体に記録等させた上、この記録媒体を差し押える手続きとなる。記録命令付差押えでは、捜査対象たる犯罪の被疑者本人ではない、プロバイダやクラウドサービス事業者も処置の対象となるという。従来、クラウド上のどこかに捜索対象のデータが入っている場合、警察はサーバを丸ごと差し押えるような荒技に出ざるを得ない可能性もあった。しかし、クラウドには当然他のユーザーのデータも記録されているため、その行為は極めて非現実的だ。そこで必要なデータだけ記録媒体に写して差押えることが必要となり、「記録命令付差押え」が新設された。上沼氏は続いて、データに関する記録媒体の差押えの執行方法についても解説した。これは、PCや記録媒体から別の記録媒体へデータを複写・印刷・移転して差押えるというもの。これにより、プロバイダなどの協力なしに、データを移転させることが可能になった。この方法だと、たとえばウイルス作成罪のような事例では、ウイルス自体がサーバに残らないよう、複写ではなく移転を行えるとのことだ。このように、クラウド利用が日本の社会に浸透していくにつれて、各規制もより時勢にあったものに変化していると言えるだろう。しかし、規制が整備されてきていると言っても、企業にとってクラウド利用にはまだ様々な懸念事項が残っているのが実情だ。最後に上沼氏は、総務省が2011年5月に発表した「平成22年通信利用動向調査の結果」をベースに、セキュリティ関連の解説を行った。この調査結果では、企業におけるICT利用の現状として、クラウドサービスを利用しない理由についての問いに37.9%が「セキュリティに不安がある」と回答している。こうした事態に対応すべく、経済産業省では「クラウドサービス利用のための情報セキュリティマネジメントガイドライン」を作成し、安心してクラウドサービスを使える基盤作りについて検討しているという。「このガイドラインは昨年改定されたばかりで、内容は細かいのですが大変参考になるので、ぜひ皆さんも一度ご覧になってみてください」と呼びかけ、講演を締めくくった上沼氏。経済産業省では「クラウドセキュリティガイドライン活用ガイドブック」も用意しているので、気になる方はこちらもチェックしてはいかがだろうか。
2015年06月30日連載コラム『知らないと損をする「お金と法律」の話』では、アディーレ法律事務所の法律専門家が、具体的な相談事例をもとに、「お金」が絡む法的問題について解説します。【相談内容】先日、友人が登録している大型フィットネスクラブで、個人情報を20万件流出させてしまったという事件が起きました。フィットネスクラブの方からは、謝罪の手紙と共に1,000円が送られてきたとのことでした。ただ、私は思ったのですが、個人情報流出って、流出させられた側としては、すごく怖い思いをしているのに、こんな金額で収められるのは納得がいきません。この場合、更なる損害賠償請求ができるものでしょうか?【プロからの回答です】法的には、更なる損害賠償は可能です。ただ、実際に支払ってもらうためには、裁判が必要となる可能性が高いです。裁判を考える際には、これに費やす労力や費用対効果もしっかり検討したうえで、なるべく多数の集団訴訟にするなど、請求方法をしっかり吟味することが大事ですね。○はじめに個人情報の価値が再認識され、個人情報保護の必要性が強く叫ばれる現代ですが、個人情報流出のニュースは絶え間なく世間を騒がせています。最近も、「日本年金機構が基礎年金番号や氏名等を含む個人情報約101万4653件を流出させた事件」や、「某芸能人がりそな銀行に来店した事実を従業員の子供がツイッターに書き込みをした事件」などが波紋を呼びました。一般に、個人情報流出と聞くと、会社等の企業を思い浮かべる方が多いかもしれませんが、企業に限らず、教育機関や省庁、民間・公的団体など、様々な組織による個人情報流出事件が後を絶たない状況となっています。○個人情報を流出させてしまったら企業や組織などが個人情報を流出した場合、「個人情報を適正に管理していなかった」として、刑事上の責任、民事上の賠償責任を負う可能性があります。(1)刑事上の責任【企業の場合】企業が情報流出をしてしまった場合には、「個人情報保護法」によって罰則が科される可能性があります。企業も個人情報を扱う以上、同法が定める「個人情報取扱事業者」にあたります。同法に違反した場合にはまず、主務大臣から勧告・命令が出されますが、これにも違反した場合には、「6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金」が科せられることになっています。【行政機関の場合】行政機関の職員が個人情報を流出させた場合、「行政機関の保有する電子計算機処理に係る個人情報の保護に関する法律」によって、一般企業よりもより重い刑罰が科せられることになります。行政機関の職員等が個人情報の不正な取扱いをした場合の罰則は次のとおりとなっています。(1)行政機関の職員(元職員・受託業務従事者等を含む)が、個人の秘密に属する事項が記録された電算処理ファイルを正当な理由なく提供した場合=2年以下の懲役又は100万円以下の罰金(2)行政機関の職員(元職員・受託業務従事者等を含む)が、業務に関して知り得た保有個人情報を不正な利益を図る目的で提供又は盗用した場合=1年以下の懲役又は50万円以下の罰金(3)行政機関の職員が、個人の秘密に属する事項が記録された文書、図画又は電磁的記録職権を濫用して専らその職務の用以外の用に供する目的で収集した場合=1年以下の懲役又は50万円以下の罰金(2)民事上の賠償責任【企業の場合】ある企業の従業員が情報流出させてしまったケースを考えてみましょう。この従業員が情報流出につき、故意・過失があった場合(通常はあると判断されます)、情報流出によって被害を受けた対象者に対して損害賠償責任を負います。これは民法の不法行為(民法709条)に基づく賠償責任です。会社もその従業員の管理監督責任を怠ったという側面がありますので、責任を負うのは当然です。法律上、「従業員が他人に損害を与えた場合、会社が責任を負いなさい」という使用者責任(民法715条)という規定があります。したがって、従業員が行った行為について、企業自体もこの「使用者責任」に基づき、対象者に対して賠償責任を負うことになります。【行政機関の場合】行政機関や公務員等による情報流出の場合、国家賠償法という法律により賠償責任を判断することになります。公務員が故意・過失によって、個人情報を流出してしまった場合には、「国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によって違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる(国家賠償法1条1項)。」という規定により、国や公共団体が賠償責任を負うことになります。ただし、その情報流出において、公務員側に故意や重大な過失があった場合には、国や公共団体は公務員に対し、「あなたも一部負担しなさい」と請求することができることになっています。(3)その他これ以外にも、企業が被るダメージはあります。「情報流出させた企業だ」ということになれば、企業の信頼は失墜し、商談が破談になったり、取引先を失ったりというリスクを負います。大規模な情報流出となれば、ニュース等で報道されることにもなり、事件やデータの調査・検証にも相応の時間・人手がとられます。さらに、問い合わせに対する回答・謝罪対応などにもせわしく追われることとなり、通常の業務が回らなくなることは容易に予想されます。企業自体としても、人件費や業務停滞による逸失利益など、多大な損害を被ることになります。○個人情報流出したときの損害賠償はどうなるの?個人情報が流出した場合の損害賠償の内容は、通常は「慰謝料=精神的苦痛を与えられたことに対する補償」とされます。要は、「自分のプライバシーが暴露された。悪用されないか不安だ」という精神的な負担を、金銭に換算して賠償してもらうということになります。過去の裁判例を検討する限り、氏名・住所等の個人情報が流出した事件については、約5,000円程度~1万円程度の慰謝料額にとどまることが多いです。ただ、情報の内容によっては高額化する可能性があります。例えば、エステの見込み客情報が流出した事件や、中学生の成績を含む情報が流出した事件などでは、極めて公開を欲しない情報であるため1件あたり3万円の慰謝料が認定されています。ただ、情報流出事件については、個人情報の不正利用による二次被害、三次被害のおそれもあることを考えると、裁判所の認める金額は極めて低いと感じる方が多いのではないでしょうか。この点については、個人情報流出事件の対象者が、通常は数十万~数百万人と極めて多数に上る(たとえば5,000円×100万人=50億円の賠償となります)ことにも理由がありそうです。当然、慰謝料の支払いには、企業の支払能力を視野に入れざるを得ず、この点に配慮した判決ともいえるように思います。いずれにせよ、この判例の流れを受ける限り、今後も「高額の慰謝料」が認定される可能性は低いものと思われます。なお、情報流出によって迷惑メールや電話がかかってくるようになった、詐欺師に騙された、という場合、その分も損害賠償請求ができるか…が問題となります。裁判になった場合には、それらの被害が今回の情報流出による被害といえるのか=情報流出と新たな損害との間に因果関係があるか、といった点で、相当に立証が難しいと思われます。したがって、こういった追加損害の賠償請求は極めて困難といえるでしょう。○今回のケースについて今回のケースは、1,000円が自主的に支払われたということですね。しかし、これまでの判例の相場からいえば、慰謝料は5,000円程度までは上がる可能性が高いです。フィットネスクラブの会員情報ということで、どこまでの情報が開示されたかにもよりますが、身長・体重、その他健康状態に関する情報等、ナイーブな情報まで流出したということであれば、10,000円を超える賠償もありえるかもしれません。いずれにせよ、追加で損害賠償請求をすることは可能と思われます。ただ、実際に裁判を起こすとなると相応の費用や労力、時間がかかりますので、相当大人数で集団訴訟をする方が現実的でありますし、それらの負担と費用対効果を検討し、結果が見合うということであれば、裁判を起こして追加の請求をするべきといえるでしょう。○まとめ(メッセージ)現代においては、個人情報は、それ自体価値のあるものとなっています。逆に、個人情報を手に入れたいと考えている人間もそれだけ増えているということです。企業としては、外部からの不正アクセスによる個人情報流出であっても、突然の億単位の賠償責任に応じねばならない事態が生じうることになりますので、しっかりとコンプライアンスを確立しておくことがありそうです。また、私たち個人も、いつ個人情報流出の被害者・加害者になるか分からない時代です。常に個人情報に対する慎重な配慮を心がけたいものですね。<著者プロフィール>篠田 恵里香(しのだ えりか)東京弁護士会所属。東京を拠点に活動。債務整理をはじめ、男女トラブル、交通事故問題などを得意分野として多く扱う。また、離婚等に関する豊富な知識を持つことを証明する夫婦カウンセラー(JADP認定)の資格も保有している。外資系ホテル勤務を経て、新司法試験に合格した経験から、独自に考案した勉強法をまとめた『ふつうのOLだった私が2年で弁護士になれた夢がかなう勉強法』(あさ出版)が発売中。『Kis-My-Ft2 presentsOLくらぶ』(テレビ朝日)や『ロンドンブーツ1号2号田村淳のNewsCLUB』(文化放送)ほか、多数のメディア番組に出演中。 ブログ「弁護士篠田恵里香の弁護道」
2015年06月25日連載コラム『知らないと損をする「お金と法律」の話』では、アディーレ法律事務所の法律専門家が、具体的な相談事例をもとに、「お金」が絡む法的問題について解説します。【相談内容】わたしはよくインターネットショッピングを利用するのですが、先日ちょっと奮発して憧れのブランドバッグを注文しました。商品が届き、友人に自慢をしたら、「これは偽物だよ!」と言われてしまいました。ブランドに詳しい友人で「本物にはバッグの内側にブランドマークのタグが付いているはずだ」と言われ、調べたところ、実際、本物にはタグが付いていました。わたしのバッグには付いていません。確かに、本物の割には安かったのですが…騙されました。ネットショッピングでの購入ですが、返品できますか?【プロからの回答です】本物として購入したものが、実際は偽物だった場合、法律上、返品はできます。ただし、偽物を本物と偽って売るようなサイトであれば、なかなか返金に応じてくれないでしょうし、急に連絡がつかなくなったりして、結局、返品手続きができないおそれもあります。○"クーリングオフ"制度とは?今回のように、「商品を購入したけれどやっぱり取り消したい」という場合、まず思いつくのがクーリングオフでしょうか。クーリングオフというのは、「消費者が訪問販売などの不意打ち的な取引で契約したり、マルチ商法などの複雑でリスクが高い取引で契約したりした場合に、一定期間であれば無条件で、一方的に契約を解除できる」という制度です。訪問販売や電話勧誘などの契約においては、消費者側が冷静な判断ができないままに思わず購入してしまうケースも多く、「考え直して、やっぱり契約を取り消したい」という場合にこれを取り消せるようにしたものです。いわゆる消費者保護のための制度ですね。このような趣旨から、クーリングオフ対象の取引については、「消費者側の判断が難しい」取引に限定がされており、「騙された」など特段の理由がなくとも「やっぱりやめた」という理由のみで、売買契約を取り消すことができます。クーリングオフをするためには、「所定の書面の交付を受けてから8日(取引によっては20日)以内」に、「書面で取り消しの意思表示」をすることが必要です。この8日という期間は、「書面到達時」ではなく、「書面の発送時」を基準とします。したがって、はがきや手紙などでクーリングオフの意思表示をする場合には、「消印」が、所定の8日以内となっていればよいことになります。クーリングオフは時間との勝負ですし、対象取引にあたるかどうかも微妙なケースがありますので、不明な点があればすぐに弁護士に相談するようにしてください。ネット注文などの通信販売については、「クーリングオフの適用外」とされています。訪問販売や電話勧誘等は、「売り手側からの勧誘によって思わず契約に至るという側面を重視し、冷静な判断ができなくなる消費者を保護しよう」という理由でクーリングオフの対象となっています。一方、通信販売は、買い手側が自らの意思によって商品を選択し、購入の意思表示をしている以上、比較的冷静な判断が可能といえそうですね。ですので、通信販売の場合にまで、一方的な取り消しを認める必要性は低いと考えられており、クーリングオフの対象からは外されています。○通信販売やネット注文に"クーリングオフ"の類似の制度がある?クーリングオフそのものではありませんが、類似の制度があることは知っておいていただければと思います。通信販売については、クーリングオフ適用外となっています。ただ、通信販売においても、店舗での購入とは異なり、実物を確認できないという事情はありますし、「購入したらイメージが全然違った」等のトラブルを一定程度防ぐ必要はあるといえます。そういった事情から、2009年12月以降は法律が改正され、通信販売についても、「クーリングオフに類似した制度」が取り入れられています。具体的に、ネットショッピングなどの通販においては「返品特約(返品の可否・期間・送料負担に関する事項等の返品に関する条件)」を明示することが義務付けられ、これらの返品特約が記載されていない場合には、商品の受け取り後、8日以内に返品(契約の解除)ができるとされています(商品の返品に関する送料は、消費者側が負担します。)。この法改正を受けて、多くのネット通販サイトでは、返品特約をしっかり設けているところがほとんどです。返品特約として、「返品不可」としていたり、たとえば、返品期限を3日とするなど「返品に関する諸条件を独自に設けて」いたりします。そのため、通販に関しては、基本的にはこの返品に関する記載に従うこととなり、返品特約が一切記載されていなかった場合に限り、商品受け取り後8日以内であれば、契約解除可能=返品可能ということになります。○8日間以降でも解約できる場合がある!今回のショッピングについて、さらに検討を加えてみましょう。今回のケースであれば、クーリングオフの適用がなくとも、サイトに「返品不可」と記載されていても、返品可能な期間を過ぎてしまっていたとしても、「偽物を本物と偽って売った」ことを理由に返品が可能となる可能性があります。今回の取引では、サイト運営者が「本物」と偽って売却している行為が「詐欺」にあたります。法律上、「詐欺に基づいて申し込んだ契約」は取り消せることになっています(民法96条)。この詐欺取り消しができる期間は、原則として、「詐欺に気づいてから5年」とされていますので、返品期間を過ぎてしまっていたとしても、「詐欺による契約なので取り消します」という意思表示をし、契約を取り消すことができます。○マルチ商法や継続したサービスの解約って?その他、マルチ商法などと言われる連鎖販売取引については、契約書面交付後20日間はクーリングオフができること、さらに、20日経過後も一定の中途解約金(たとえば商品を手元に残さない形態であれば商品の販売価格の1/10に相当する額)を支払えば、解約することができるとされています。また、エステや英会話レッスンなど、継続してサービスの提供を受ける契約=特定継続的役務提供契約については、サービスの提供が始まった後でも、法律で定められた解約料の上限(たとえばエステであれば2万円かサービスの残額の10%のいずれか低い方)を支払うなど一定の要件を満たせば、中途解約が可能とされています。相手から、「契約の取り消しに応じない」と言われたり、法外な違約金を取られたりするトラブルも多発していますが、こういった「解約に関する知識」をしっかり備えておくことが大事ですね。○まとめ(メッセージ)ネットショッピングについては、利用者が急増していることもあり、これに伴うトラブルも後を絶ちません。これまで述べたように、クーリングオフや詐欺取り消し等の法的手段は用意されていますが、実際には、「偽物だと証明することが難しい」、「なかなか返金に応じてくれない」、「そうこうしているうちに連絡不通になってしまう」等の事情で、法的手段が功を奏しない場合も多く見られます。しかも、そのような悪質な業者に対し、住所・氏名・カード情報といった個人情報を取得されてしまうわけですから、カードの不正利用等の二次被害のおそれもあります。騙されてしまった場合の被害金回復は困難であるということ、怪しいサイトには危険が潜んでいるということを今一度認識していただき、まずは「騙されないこと」がとても重要ということになります。たとえば、「ブランド品なのに安すぎる」場合は、偽物である可能性も疑われますね。その場合は、ネット上の口コミでサイトの評価を確認したり、住所や連絡先がしっかり記載されているか等も確認したりすることが重要です。「安心できるサイトで、慎重に買い物をする」という心がけが一番大事といえるでしょう。(※写真画像は本文とは関係ありません)<著者プロフィール>篠田 恵里香(しのだ えりか)東京弁護士会所属。東京を拠点に活動。債務整理をはじめ、男女トラブル、交通事故問題などを得意分野として多く扱う。また、離婚等に関する豊富な知識を持つことを証明する夫婦カウンセラー(JADP認定)の資格も保有している。外資系ホテル勤務を経て、新司法試験に合格した経験から、独自に考案した勉強法をまとめた『ふつうのOLだった私が2年で弁護士になれた夢がかなう勉強法』(あさ出版)が発売中。『Kis-My-Ft2 presentsOLくらぶ』(テレビ朝日)や『ロンドンブーツ1号2号田村淳のNewsCLUB』(文化放送)ほか、多数のメディア番組に出演中。 ブログ「弁護士篠田恵里香の弁護道」
2015年06月17日「仕事中にノンアルコールビールを飲んでいる法律事務所がある」。どうやら福利厚生の一環らしいが、なぜノンアルコールビールを支給しているのだろうか。それを確かめるべく、同施策を行っている都内の“法律事務所テオリア“を訪ねた。話を伺ったのは、法律事務所テオリアの弁護士 松村龍一氏ほか3名。会議室に通されると、すでにテーブルの上に人数分のノンアルコールビールが。取材開始とともにカシュッとプルタブを開ける音が会議室に響く。一瞬、目を疑ってしまうような光景だが、この施策は今年のゴールデンウィークに始まったものだという。きっかけは、「暑くなってきたので温かい飲み物から冷たい飲み物に変えたい」というシンプルなもの。なぜ、麦茶やコーヒー、アイスティーではなかったのかだろうか。すると「我々が飲みたかったからです」、とノンアルコールビールの缶を片手に松村氏は笑顔で答えた。事務所内の半数がノンアルコールビールを飲んでいるとのことだが、あえてノンアルコールビールを選んだというわけではない。「スカッとのどごしのいいものが飲みたい時に、炭酸水以外の選択肢が加わっただけ」とのこと。お茶やコーヒー、麦茶だけでは飽きるので、いい気分転換にもなるのだそうだ。もちろん、ビジネス的にプラスな面もある。弁護士という職業は、仕事の時間が厳密に決まっているわけではないため、夕食を挟んで仕事をすることも。夕食時にビールが飲みたくなってもまだ仕事が残っている。そんなときにノンアルコールビールはありがたく、その後の仕事もはかどるとのこと。また、意外なことに弁護士の仕事の大半は裁判所や相談者の応対ではなく書類作成。デスクワークの多い仕事なので、家の中にいるかのような環境づくりをすることでストレスなく仕事ができるという。そして驚くのは、事務所内で楽しむだけではなく、事務所に相談に来たお客さんにも、ノンアルコールビールを提供していること。これには緊張をほぐすという狙いがあり、まずノンアルコールビールを勧める行為が会話のフックになる。相談者がリラックスできる環境を提供するのも弁護士の仕事のひとつだ。勧められた人は決まってきょとんとした反応を見せるというが、そのまま飲んだ人は100%男性だけとのこと。事務所の冷蔵庫にノンアルコールビールを置き始めてまだ1カ月弱だが、すでに消費量は3、40本。一日に飲む本数は決めていない、アルコールゼロだから気にする必要はない、と口々に言う。ノンアルコールビールを夏季限定にするか、通年メニューにするかどうかは、これから考えていくとのこと。今後、福利厚生としてノンアルコールビールを出す会社が増えれば「オフィスでノンアルコールビール」という光景が夏の風物詩のひとつになるかもしれない。
2015年06月08日アトム法律事務所(以下、アトム)は4日、日本年金機構の年金情報125万件流出問題をLINEで弁護士に無料相談できる特別窓口を開設したことを発表した。○年金流出問題もLINEで24時間365日相談できるアトムは4月に、LINEで弁護士に無料相談できるサービスの提供を開始した。同サービスは、開始からわずか1カ月半で友だち登録数が9,000人以上に上り、反響を呼んだ。そこでこの度は日本年金機構の年金情報125万件流出問題を受け、特別窓口を開設した。登録方法は、LINEの「友だち追加」で「@atombengo」と検索、またはQRコードを読み込むことで可能。利用方法としては、アトムにLINEでメッセージを送信するだけの簡単な操作だ。また、秘密厳守も徹底しており、1対1のトークで、登録自体も相談内容もアトムの所員以外は誰も見られない設定となっている。なお、年金情報流出問題の件を相談した後でも、引き続き無料で利用でき、法律問題・トラブルのほか、人生や恋愛まで、あらゆる悩みを相談することができる。
2015年06月05日連載コラム『知らないと損をする「お金と法律」の話』では、アディーレ法律事務所の法律専門家が、具体的な相談事例をもとに、「お金」が絡む法的問題について解説します。【相談内容】私は最寄駅まで自転車で通っており、毎日イヤホンをして音楽を聴きながら乗っているのですが、先日、友人にイヤホンをしながら自転車に乗ってると罰金を取られるよ! と言われました。本当にイヤホンをしているだけで罰金を取られてしまうのでしょうか?ちなみに私自身は、周囲の音が聞こえなくなると危険なので片耳だけに付けているのですが、それでも罰金を取られることになるのでしょうか?【プロからの回答です】罰金を取られる可能性があります。○6月1日から、自転車に関する法規制が強化今年の6月1日から、自転車に関する法規制が強化され、「信号無視など危険行為を3年以内に2回以上繰り返した者に対し、自転車運転者講習の受講を義務づけ、この受講命令にしたがわない場合は5万円以下の罰金を科する」こととなりました。自転車の交通ルールについては、近年改正が相次ぎ、少しずつ自転車利用者のマナー意識も変わってきたといわれてはいます。しかしながら、平成26年度においても、自転車が関連する交通事故件数(自転車関連事故)は109,269件にのぼり、交通事故全体に占める割合は約2割(構成率19.0%)となっています(警察庁調べ)。また、自転車関連事故による死者数も542人とまだまだ少なくなく、自転車関連事故は、いまだ見過ごせない問題となっています。自転車関連事故を類型別にみると、出合い頭衝突が半数以上を占めています。事故の原因としては、「(急な進路変更等の)安全不確認」が約半数を占め、その他、一時停止義務違反、信号無視、歩道上での歩行者との接触などが主要な原因となっています。これらのデータを見る限り、自転車死傷事故の大半は、「怠慢運転やルール違反により起こっていること」が分かります。逆に、自転車事故は、「ルールを守れば防げる」ものであることを、あらためて認識する必要がありそうです。○片耳にイヤホンをして音楽を聴いている場合でも、道路交通規則違反となる可能性今回のケースですが、片耳にイヤホンをして音楽を聴いている場合でも、場合によっては、各都道府県が定める道路交通規則違反となる可能性があります。たとえば、東京都の道路交通規則では、「高音でカーラジオ等を聞き、又はイヤホン等を使用してラジオを聞く等安全な運転に必要な交通に関する音又は声が聞こえないような状態で車両等を運転しないこと」と定められており、これに違反した場合には5万円以下の罰金が科せられることとなっています。なので、たとえ片耳のイヤホンであっても、周囲の音が聞こえないような大音量で音楽を聴くような場合は、罰金を取られる可能性があります。○「自転車運転者講習制度」が施行自転車については、意外と知らないルールが多くあるかもしれません。これまで、自転車の交通違反については、いわゆる赤切符(重い違反)しかなく、なかなか摘発できないとされてきました。しかし、冒頭でも触れましたが、平成27年6月1日より、「自転車運転者講習制度」が施行されました。自転車乗車中に信号無視などの危険な行為(14類型)で3年以内に違反切符による取締りまたは交通事故を2回以上繰り返して行った場合、自転車運転者講習を受講しなければならず、受講命令に従わなかった場合は5万円以下の罰金が科されます。(※『しかし』以降の部分については、『しかし、平成27年6月の法改正により、今後はいわば青切符(軽い違反)のような形で交通違反がカウントされますので、自転車に乗る前にこれらのルールをしっかり知っておく必要があります。』と誤解を招く記述をしておりました。修正前の記事を読まれた方には、深くお詫び申し上げます)。自転車による歩道走行の原則禁止(歩道通行要件を満たさないにも関わらず歩道を通行した場合)【根拠規定】道路交通法第63条の4【罰則】3ヶ月以下の懲役又は5万円以下の罰金等自転車による右側通行禁止【根拠規定】道路交通法第17条、第17条の2、第18条、第20条、第63条の3【罰則】3ヶ月以下の懲役又は5万円以下の罰金信号無視【根拠規定】道路交通法第7条・道路交通法施行令第2条【罰則】3ヶ月以下の懲役又は5万円以下の罰金等他の自転車との並進の禁止【根拠規定】道路交通法第19条、第63条の5【罰則】2万円以下の罰金又は科料一時停止違反【根拠規定】道路交通法第43条【罰則】3ヶ月以下の懲役又は5万円以下の罰金等夜間のライトの不点灯【根拠規定】道路交通法第52条、第63条の9、道路交通法施行令第18条、道路交通法施行規則第9条の4、都道府県公安委員会規則【罰則】5万円以下の罰金等酒気帯び運転等【根拠規定】道路交通法第65条【罰則】5年以下の懲役又は100万円以下の罰金(酒酔い運転を行った場合等)等片手運転の禁止【根拠規定】道路交通法第70条、第71条、都道府県公安委員会規則【罰則】3ヶ月以下の懲役又は5万円以下の罰金等2人乗りの禁止【根拠規定】道路交通法第55条、第57条、都道府県公安委員会規則【罰則】5万円以下の罰金等○実際の事例最近は、自転車による重大事故の発生が後を絶たず、事故による賠償金も高額化する傾向にあります。過去の事例としては、以下のようなものがあります。(1)進路変更した女性を負傷させ約60万円の賠償歩道上で、68歳の女性が急に横断歩道方向へ進路変更したため、後続して走行してきた自転車がこれに衝突し、女性を負傷させた。裁判所は、「歩行者が横断歩道の方向へ進路を変えることは予想される範囲の行動である反面、歩行者は後方から進行してくる自転車の動きを認識することは容易でない」として、約60万円の損害賠償責任を認め、歩行者の過失相殺も否定した(東京地裁平成26年9月30日)。(2)よそ見運転での事故で約256万円の賠償52歳の女性が道路を歩行中、11歳の女児が自転車で対向走行してきて衝突した。女児は、一緒に自転車走行していた友人の言動に気を取られて右後方を振り返りながら自転車走行し、進路前方を見ていなかったため,歩行者がこれを避けようとしたものの避けきれず、慌てて、ハンドルを切った女児の自転車前部が歩行者の左体側部に衝突してしまった。歩行者の女性は、路上に尻もちをつくと同時に両足首をくじいてしまい、左手を路面で切る等のけがをした。裁判所は、「監督義務者である親が賠償責任を負う」として、その女児の親に対し、約256万円の損害賠償責任を認めた(神戸地裁平成26年9月19日)。(3)スピード出し過ぎの事故で9,521万円の賠償11歳の男子小学生が夜間、帰宅途中に自転車で高スピード走行していたところ、歩行中の67歳の女性と正面衝突した。女性は頭蓋骨骨折等の傷害を負い、意識が戻らない状態となった。裁判所は、「監督義務者である親が賠償責任を負う」として、その男子小学生の親に対し、9,521万円の賠償命令が下った(神戸地裁平成25年7月4日)。いずれも、避けられた事故ではありますが、自転車を利用する以上は、いつなんどき加害者になるかわからないといえます。自転車事故については、自動車のような保険制度がいまだ浸透しておらず、一生かけて働いて賠償せねばならない事態にもなりかねません。自転車保険に加入しておくことももちろんですが、あらためて「事故を起こさない心がけ」も非常に大切です。○今回の改正を機に、今一度身を引き締める必要自転車の交通違反については、規制・取り締まりの強化によって、今後実際に検挙される数も急増すると見込まれます。少なくとも、これまで黙認されてきた交通違反はいわゆる青切符を切られる時代となりました。自転車の交通違反については、懲役刑の罰則も存在します。自転車の走行違反によって前科者になる可能性もあるということです。今回の改正を機に、今一度身を引き締める必要がありそうですね。また、自転車関連の事故は減少傾向にはあるもののいまだ多数発生しているのが現状です。うっかりミスによって重大な事故を引き起こせば、自分も相手の人生も大きく変えてしまうこととなります。多額の賠償責任はもちろんですが、自転車による事故については、重過失致死傷罪(刑法211条1項後段最高で5年の懲役)といった犯罪も成立します。自転車運転に際しては、「人の生命を奪う可能性のある乗り物」であることをしっかり認識し、交通ルールを守って、マナーを守って、走行するようにしましょう。(※写真画像は本文とは関係ありません)<著者プロフィール>篠田 恵里香(しのだ えりか)東京弁護士会所属。東京を拠点に活動。債務整理をはじめ、男女トラブル、交通事故問題などを得意分野として多く扱う。また、離婚等に関する豊富な知識を持つことを証明する夫婦カウンセラー(JADP認定)の資格も保有している。外資系ホテル勤務を経て、新司法試験に合格した経験から、独自に考案した勉強法をまとめた『ふつうのOLだった私が2年で弁護士になれた夢がかなう勉強法』(あさ出版)が発売中。『Kis-My-Ft2 presentsOLくらぶ』(テレビ朝日)や『ロンドンブーツ1号2号田村淳のNewsCLUB』(文化放送)ほか、多数のメディア番組に出演中。 ブログ「弁護士篠田恵里香の弁護道」
2015年05月28日連載コラム『知らないと損をする「お金と法律」の話』では、アディーレ法律事務所の法律専門家が、具体的な相談事例をもとに、「お金」が絡む法的問題について解説します。【相談内容】 友達が車を運転していた時、赤信号のため停車をしていると、後ろにいた車がブレーキとアクセルを間違えて踏んでしまったようで、いきなり突っ込んできました。病院で診断してもらったところ、手首の骨折と鞭打ちと診断され、1カ月間入院することになってしまったのですが、半年後、治療が完了して加害者側の保険会社から示談金額の提示がありました。友達は提示された金額が妥当なものか判断できず、このまま示談していいのかを悩んでいるのですが、このケースの場合、どれくらいの金額が妥当なのか教えてもらえないでしょうか?【プロからの回答です】○交通事故の発生から「示談」の流れは?交通事故でケガをした場合、必ず、「人身事故」として警察に届けましょう。仮に「物損事故」処理にしてしまうと、必要な治療費が支払われないなどのトラブルになりかねません。そして、事故後は速やかに病院に行ってください。忙しいからなどと、通院を先延ばしにすると、「事故による怪我ではない」などと判断されるおそれもあり、慰謝料はおろか治療費まで自費負担となる可能性が出てきます。また、適切な治療をうけ、事故による怪我の補償をしっかり受けるためには、必要な検査やそのタイミング、病院への通院状況等も重要な意義を持ってきます。ですので、なるべく早く、これらの点に関して、専門家に相談し法的アドバイスを受けることが大切です。通院が終了となるタイミングを「症状固定(これ以上通院を継続しても症状が変わらない状態)」といいます。症状固定時に治りきらなかった痛みや症状が残った場合には、後遺障害の等級認定を受けることが必要です。一番低い等級である14級の認定でも、裁判所基準の慰謝料が110万円です。後遺障害の等級認定が下りるかどうかは、示談金の額を大きく左右するといえますので、 後遺障害が残っている場合には、「後遺障害診断書」を医師に記載してもらいましょう。等級認定が下りれば、以下の基準に基づく後遺障害慰謝料が支払われるべきことになります。裁判所基準(赤い本ベースの場合)この基準はあくまでも裁判を起こした場合に認められるべき金額ですので、任意交渉で示談する場合には若干譲歩することが通常です。なるべく裁判所基準の金額に近づけるように増額の交渉をしていくことになります。等級認定の方法は、保険会社任せにする「事前認定」と、被害者側から手続きを踏む「被害者請求」があります。被害者請求の方が、等級認定のために必要な資料の精査や主張の吟味ができますので、等級認定のためにふさわしいといえます。被害者請求の申請内容や資料についても、相当な法的知識が必要になりますので、弁護士を頼っていただくことがベストでしょう。通院が完了した場合や、後遺障害の等級が確定した場合には、保険会社から「示談金額」が提示されます。ただ、この提示額は相当低い金額であることが多く、正当な金額に増額してもらうために交渉が必要となります。保険会社と交渉の結果、「正当な金額」に増額された場合、最終示談となります。交渉を重ねても保険会社が妥当な提案をしてくれない場合には、裁判を起こすことも視野に入ります。ただ、多くの場合は、任意交渉により示談成立に至れることとなり、裁判まで必要となるケースは非常に少ないです。○示談金とは?交通事故の被害にあった場合、補償されるべき損害項目は多数にのぼります。治療費や、通院のための交通費はもちろん、けがをしたことに対する慰謝料などは必須の項目といえるでしょう。会社を休んだ場合の休業損害、入院した場合の入院諸雑費や、付添費用、その他もろもろ事故によって生じた損害は原則全て支払われるべきというのが法的な考え方です。また、後遺障害が残った場合には、それ自体に対する「後遺症慰謝料」や、将来の仕事等に影響が出るであろうという意味での「後遺症逸失利益」も示談金として支払われます。後遺障害の内容によっては将来治療費や自宅改造費用等、将来必要になるべき費用等も計上する場合があります。不幸にも死亡事故となった場合には、死亡慰謝料や葬儀費用、将来稼げたはずの給与相当額なども示談金の内容になります。示談金が正当な金額かどうかについては、 下記2つの視点が必要です。(1)必要な損害項目が全て計上されているか(2)その各金額が妥当な金額かたとえば、専業主婦には「休業損害」が支払われないと思われがちですが、「家事従事者」として女性の平均賃金を基礎に支払われるべき場合があります。また、少なからず、慰謝料については本来の金額より相当低額の提示になっていることが多いです。示談金については、「請求すべき項目はしっかり請求する」「金額が低い場合は正当な金額を主張する」という増額のための交渉がいわば必須となっています。○慰謝料はどうなる?交通事故でけがをした場合の慰謝料は、「けがをして辛かった」「通院が大変だった」等の精神的苦痛に対する補償という意味合いを持ちます。個々の事例につき、「どれだけつらかったのか」を金額で算定することは困難です。なので、一般に「入通院慰謝料(別表I・別表II)」という表を用いて金額を算定します。裁判所基準(『赤い本』による場合)「けがの内容」により「別表I」と「別表II」を使い分けます。むち打ち症で他覚症状がない場合には別表IIを用い、それ以外の場合は原則別表Iを用います。入院と通院の長さ・通院状況により、交差する部分の額を算定します。傷害の部位・程度により、20~30%増額調整する場合もありますが、基本的には表の額が基準となります。たとえば、今回のケースでは、骨折までしていますので、別表Iを用います。1か月の入院と5か月の通院なので、入院1月と通院5月の交差する部分=141万円が慰謝料の基準ということになります。○【事例】家事への影響を正当に評価してもらい大幅な増額!歩行者対自動車の事故により、200日の入通院を続けた結果、膝に痛みが残ってしまいました。後遺障害12級の認定に至ったものの、保険会社からは「専業主婦」であることを理由に、休業損害や後遺症逸失利益をさほど認定してもらうことができず、当初合計630万円の示談金を提示されていました。しかし、弁護士を介して、「事故による怪我・後遺症が家事へ影響すること」を主張し、休業損害と後遺症逸失利益の増額交渉、また慰謝料の増額交渉を行った結果、示談金が1100万円以上という大幅な増額となりました。後遺症逸失利益0円と言われたのにもらえた!バイクで交差点の信号待ち中、後続車に衝突された事案で、医師には後遺障害14級9号が認定される可能性があると説明されていましたが、弁護士が資料や症状を精査した結果、医師の説明よりも上位の等級が認定される可能性が高いと判断しました。診断書には自覚症状欄を詳細かつ的確に書いてもらい、資料をそろえ申請したところ、12級13号が認定されました。当初保険会社は、事故後も仕事を継続していたことを理由に後遺症逸失利益は0円で、さらに後遺症慰謝料もわずかしか支払わないという主張でした。弁護士が過去の裁判例を駆使することにより、最終的には「身体の痛みが今後の仕事に影響が出ること」「後遺症は今後も甚大な精神的苦痛を残すこと」を認めてもらうことに成功し、約160万円の逸失利益、260万円超える後遺症慰謝料を認めてもらうことができました。示談金の総額も当初想定していた金額をはるかに超える710万円超となりました。○交通事故でケガをした場合、不利な条件で示談に応じてしまっているのが現状交通事故でケガをした場合に、極めて不利な条件で示談に応じてしまっているのが被害者の方々の現状です。交通事故はある日突然起こり、その人の人生さえも変えてしまうことがある一大事です。正当な対応及び補償を受けることは被害者の方の当然の権利といえます。にもかかわらず、けがの痛みに加え、保険会社との煩雑なやり取りを強いられるのは、いわば二次被害と言っても過言ではありません。弁護士費用特約(弁護士費用を原則300万円まで任意保険の特約でまかなえる制度)などを利用できるケースも多くありますので、交通事故の被害に遭われた場合は、弁護士に相談することが大切だということも、覚えておいてくださいね。(※写真画像は本文とは関係ありません)<著者プロフィール>篠田 恵里香(しのだ えりか)東京弁護士会所属。東京を拠点に活動。債務整理をはじめ、男女トラブル、交通事故問題などを得意分野として多く扱う。また、離婚等に関する豊富な知識を持つことを証明する夫婦カウンセラー(JADP認定)の資格も保有している。外資系ホテル勤務を経て、新司法試験に合格した経験から、独自に考案した勉強法をまとめた『ふつうのOLだった私が2年で弁護士になれた夢がかなう勉強法』(あさ出版)が発売中。『Kis-My-Ft2 presentsOLくらぶ』(テレビ朝日)や『ロンドンブーツ1号2号田村淳のNewsCLUB』(文化放送)ほか、多数のメディア番組に出演中。 ブログ「弁護士篠田恵里香の弁護道」
2015年05月13日デジタルハリウッド大学は、同校メディアライブラリーが主催するオープンセミナーの第3弾として、特別講義「クリエイター以外も知っておくべき権利や法律の話」を5月18日に開催する。開催時間は19:45~21:00。会場は東京都・千代田区の同校駿河台キャンパス 駿河台ホール。参加費は無料(要予約)。本セミナーでは、著作権などクリエイターにとって重要な権利や法律について、"知っておくべきことを整理する方法"を解説する。登壇者は、4月24日に発売された書籍『クリエイターが知っておくべき権利や法律を教わってきました。著作権のことをきちんと知りたい人のための本』の著者である鷹野凌氏と監修の福井健策氏。モデレーターは同校メディアライブラリー館長の橋本大也氏が務める。当日は本書の内容を踏まえつつ、クリエイティブな活動を続ける上で直面する「何が良くて何がダメなのか」「どうやって自分の身を守ればいいのか」「権利や法律って難しい」「著作権ってよくわからない」といった疑問に応える権利や法律の話を紹介。誰もが情報発信者になれる現代においては、クリエイター以外の人も必見の内容となっている。定員は150名。参加申込みは同校Webサイトから。
2015年04月29日連載コラム『知らないと損をする「お金と法律」の話』では、アディーレ法律事務所の法律専門家が、具体的な相談事例をもとに、「お金」が絡む法的問題について解説します。【相談内容】出版関係の仕事をしています。私の会社では2年前から裁量労働制が導入されました。私は取材先との関係で朝9時から出勤していますが、私の職務上、上司の取材に同席することも多く、取材先との打ち合わせを、突然上司が夜の9時以降に入れることも珍しくありません。そのため、自分の職務はすでに終わっているにも関わらず、上司の都合に合わせなければなりません。いくら裁量労働制といってもこれは残業になるのではないでしょうか?裁量労働制になると、どういった場合でも残業代はもらえないのでしょうか?【プロからの回答です】○裁量労働制のメリット、デメリットは?裁量労働制をとる会社は最近増えていますよね。裁量労働制を採用するには一定の条件をクリアする必要がありますが、この会社は条件を満たしていることを前提に解説いたします。そもそも、裁量労働制とは、一定の業務につく労働者について、実際の労働時間とは関係なく、労使(労働者と使用者)であらかじめ定めた時間働いたものとみなす制度で、基本的に時間外労働という概念がありません。また、裁量労働制には、専門的な職種の労働者に関する「専門業務型」と、経営の中枢部門で企画・立案・調査・分析業務に従事する労働者に関する「企画業務型」があります。裁量労働制のメリットは、勤務時間帯が固定されないので出勤・退勤の時間を自由に決められることがあげられますが、デメリットとして、実労働時間の管理がされないため長時間労働の温床になる可能性があります。フレックスタイムとの違いを簡単に言うと、裁量労働制は、実際に働いた時間にかかわらず一定時間働いたものとみなすのに対して、フレックスタイムは実際に働いた時間しか働いたことにはなりません。フレックスタイムは、一定期間の総労働時間は決まっていますが、日々の始業時刻・終業時刻を労働者に任せる制度だからです。○22時以降の深夜労働や休日出勤に関しても手当を支払う必要がある企業界では成果主義賃金に対する関心が高く、裁量労働制の利用例が増加しています。業種としては、研究者、デザイナー、新聞記者などが代表的です。裁量労働制ではなく、通常の労働形態の場合は、原則として残業代を請求できます。残業代請求をする際は、タイムカードなど出退勤時刻がわかる証拠、雇用契約書、就業規則、給料明細などを準備するとよいでしょう。タイムカードがなく全く勤怠管理されていない会社では、出退勤時刻に関する証拠を自分で作成しておく必要があります。出社時と退社時に会社のパソコンから自分のパソコンに毎日メールをして出退勤時刻の証拠にした例もありました。これに対して、裁量労働制の場合、基本的に残業代は支払われません。ただし、22時以降の深夜労働や休日出勤に関しても手当を支払う必要があります。○退勤時刻を日々証拠化して、深夜手当を請求できるようにしておくご相談者は、裁量労働制で勤務しているとのことですので、原則としては残業代を請求することは難しいと思われます。しかし、21時から打ち合わせが多々入ることがあるとのことですから、22時以降の深夜労働をしている可能性があります。ですので、深夜労働をしていることを証明するためにも、退勤時刻を日々証拠化して、深夜手当を請求できるようにしておくことが良いと思います。政府は、現在、裁量労働制に関して、対象業務を一部営業職に拡大することや、年収1075万円以上の高度な専門知識や技術、経験を持つ労働者の残業代を支給しなくてよいという、いわゆるホワイトカラーエグゼンプションの導入を検討しています。私としては、この法改正は労働者にとっては働きにくい環境になってしまうことは目に見えているような気がします。働く人々にとって本当に良いものであるか、ぜひとも導入する前に慎重に議論を重ねていただきたいところです。(※写真画像は本文とは関係ありません)<著者プロフィール>岩沙 好幸(いわさ よしゆき)弁護士(東京弁護士会所属)。慶應義塾大学経済学部卒業、首都大学東京法科大学院修了。弁護士法人アディーレ法律事務所。パワハラ・不当解雇・残業代未払いなどのいわゆる「労働問題」を主に扱う。動物好きでフクロウを飼育中。近著に『ブラック企業に倍返しだ! 弁護士が教える正しい闘い方』(ファミマドットコム)。『弁護士 岩沙好幸の白黒つける労働ブログ』も更新中。
2015年04月02日連載コラム『知らないと損をする「お金と法律」の話』では、アディーレ法律事務所の法律専門家が、具体的な相談事例をもとに、「お金」が絡む法的問題について解説します。【相談内容】今から15年程前に大好きなアイドルグル―プがいて、CDをまとめ買いしたり、全グッズを購入したり、コンサートに毎回行ったりしていました。働いてはいましたが、給料だけでは足らなくなり、消費者金融からお金を借りたのがきっかけで、1社から2社、3社と増えていき、気づけば最大5社から借入れ、金額は300万円にものぼっていました。無事に5年前に全額返済しているのですが、最近、平成18年12月以前に借りたお金に関しては、もしかするとお金が戻ってくるかもしれないと友人から聞き驚きました。よくこの仕組みが分からないのですが、どうしてお金が戻ってくる可能性があるのでしょうか。【プロからの回答です】○そもそも「過払い金」ってなに? なぜ発生するのか?「過払い金」とは、その名のとおり、払い過ぎたお金のことです。借金を返済する際に、法律上支払うべき金額を超えて、貸金業者に払い過ぎてしまったお金が「過払い金」ということです。払い過ぎたお金ですから、法律上これを返してもらえるのは当然です。お金を返してもらうためには、過払い金がいくらになるのか計算し、遅延損害金なども付与したうえで、貸金業者に返還請求を行うことになります。なぜこのような過払い金が発生するかというと、一言でいえば、「貸金業者が法律上受領できる利息の制限を超えて利息を受領していた」ことが理由です。お金を貸す際に守らなければならない金利の上限は、「利息制限法」という法律により、金額に応じて15~20%と定められています。ただし、これを超えた利息の受領については、29.2%までは罰則の適用がなかったため、消費者金融のみならず、クレジットカードなどの貸金業者(公的金融機関の融資や銀行の住宅ローンなどは除く)は、これら利息制限法の上限を超えた金利を事実上受け取ってきたわけです。これが、「過払い金」となり、払い過ぎた分を返還しなさいということになるわけです。この過払い金については、借金を完済された方が返してもらえるのはもちろんですが、「借金が100万円残っている」と思っていた方が、逆に、「100万円返ってきた」というケースも多くなっています。平成18年12月というお話がありましたが、実はこの月に、貸金業に関する法律が改正され、上限金利である20%を超える金利をとることが違法となりました。また、この改正法は、平成22年6月18日に完全施行となったため、それ以降の借入れ分については、法律の利息制限内の借入となり、基本的に過払い金は発生しません。しかし、改正法が完全施行される前(平成22年6月18日より前)に借入れた分については、改正前の金利のままなので、依然として過払い金が生じている可能性があります。そのため、今回のように15年前から10年間取引をし、5年前に完済したということであれば、ほぼ間違いなく過払い金が発生していると言えるでしょう。特に、取引金額が300万円ということですので、一般には過払い金額も相当高額になっていることが予想されます。是非、弁護士に相談していただき、過払い金の返還請求を行いましょう。○「過払い金請求」のしかた過払い金の返還請求の手続きは、(1)「これまでの取引履歴」を開示してもらう、(2)利息制限法に基づいて、過払い金がいくら出ているかを計算する(引き直し計算といいます。)、そのうえで、(3)貸金業者との間で返還の交渉を行う、それでも合意が成立しない場合には、(4)裁判で決着をつける、という流れになります。(1)の開示請求時点でそもそも壁にぶつかるケースがある他、(2)の過払い金の計算自体も、これまでの借入と返済に関する日時・金額を全て入力して計算せねばならず、これだけでも大変です。計算時には、取引が一定期間なかった場合(空白期間などといいます)等に、これを一連の取引とみるか別の取引とみるか等によって金額が変わってくるケースも多く、これらは過去の裁判例などを熟知していなければならないため、こういった法的判断を自身で行うのも相当大変ではないかと思います。(3)の交渉についても、ご自身で過払い金を請求した場合、貸金業者によっては「弁護士が介入しなければ返還はできない」などと理由をつけて、過払い金の返還を拒否してくることがあります。一番怖いのは、弁護士がついていないことをいいことに、本来受領すべき金額より極めて低額な和解に応じさせられてしまうことです。いったん和解に応じてしまうと後になって「やっぱり増額してほしい。」ということができなくなります。たとえ弁護士が介入しても和解の内容を覆すのは困難ですので、やはり過払い金の請求は、ご自身で行うより、弁護士にご依頼いただくのが安心だと思います。仮に、交渉が功を奏しない場合には、当然、(4)の裁判まで行う必要があります。裁判になった場合には、半年から一年間くらい時間がかかることも多いですし、裁判所に何度も出廷する煩わしさや書面作成にも時間がかかるため、相当な労力が必要です。弁護士にご依頼いただければ、これら全てについて専門知識をもって行いますので、金額の点でも、期間や労力の点でも、メリットが大きいと思います。弁護士費用はかかってしまいますが、その分のメリットは十分にあると言えるのではないでしょうか。○こんな事例がありました!事例(1) 毎月8万円の返済が、98万円の返金に!Aさんは、ご主人の勤務先が倒産したことをきっかけに、生活費の不足を借入で賄うようになり、消費者金融と10年以上前から借入と返済を繰り返してきました。ご相談時には、負債は250万、月の返済は8万円となっており、パート収入の大半を返済に充てている状況でした。パート収入がありましたが、収入が安定していないこともあり、これ以上の返済は困難ということで自己破産をしようと考えていましたが、その後、利息制限法に基づく引き直しの計算を行った結果、借金があると思っていた貸金業者は全て過払いになっていることが判明しました。最終的には、全社から過払い金を回収することができました。毎月8万円ほどの返済に苦しんでいたAさんでしたが、借金がゼロになり、逆に約98万円の過払い金が返ってきたということで夢のようだったと話されておりました。事例(2) 厳しい取り立てが一転! 430万円戻ってくることにBさんは、生活費の不足を補うために少額での借入をはじめ、お子様の学費の工面などで徐々に借入が膨らんでいってしまいました。ご相談時には、借入は4社280万円まで膨らみ、既に支払いが滞ってしまっている状態でした。支払いが滞ると、毎日のように、電話やはがき、封書などによって取立が来るため、精神的にも追い詰められているようでした。弁護士が介入したことにより、これらの取り立てがストップし、計算の結果、4社全てに過払い金が発生していました。一部の貸金業者は全部の取引履歴を開示してこなかったため、裁判まで提起して争いました。全社との間で和解が成立するまでに1年間ほど時間がかかりましたが、総額430万円もの過払い金を返還してもらうことができました。事例(3) 出産直前に借金を完済し、結婚後7年で過払い金返還へCさんは、結婚直後、出産直前の状態で夫の借金のことを知り、子供も生まれることから、Cさんの貯金で夫の借金を全額返済しました。だいぶ後になって、過払金が発生しているかもしれないことを知り、少しでも取り戻したいという思いから、当事務所にご相談され、ご依頼されました。それまでは、結婚直後に判明した借金のせいで、結婚後7年間そのことで喧嘩ばかりしていたとのことですが、過払い金が返ってくるということでその喧嘩も緩和されたようでした。過払い金を原資に、お子さんたちをディズニーランドに連れて行かれたそうです。ご家族に幸せが戻りました。事例(4) 保証人として支払ったお金が過払い金にDさんは親友の方から頼まれて仕方なくサラ金業者からの借金の保証人となりました。最初は親友の方も順調に返済していたようなのですが、その後連絡が取れなくなり、ついには本人の代わりにサラ金業者から借金の取り立てが来るようになり、その結果、10年~20年で350万円を返済したそうです。別のご友人から当事務所を紹介いただき、悩んだものの思い切ってご相談いただきました。その結果、相当な過払い金が発生し、お金が戻ってきたので、「悔しい」という思いも緩和されたようです。○まとめ(メッセージ)「過払い金」という言葉はよく聞くようになりましたが、過払い金が発生している方の大半が、いまだ、「過払い金の請求が出来る」ことにさえ気づいていない実態があります。払いすぎた利息分、いわゆる過払い金を取り戻す権利は、法律的には不当利得返還請求権といって、10年の期間で時効消滅してしまいます。なので、時効消滅する前に請求をしないと、せっかくの権利も失われてしまうのです。「いつから10年か」というと、それは、貸金業者との最終取引日です。今回でいえば5年前の完済時。ここから10年という期間が経過すると時効によって請求ができなくなります。また、取引のなかった空白期間があると、空白期間前の取引が時効にかかってしまう可能性もあります。その場合、過払い金の合計額が大きく減少することが多くなります。最後の返済日からまだ10年たっていないから大丈夫! と安心するのは危険です。過払い金のご相談は早ければ早いほどいいと言えるでしょう。過払い金返還請求権は、あくまでご本人の権利ですので、家族が代わって請求することはできませんが、ご本人が他界されたような場合は、相続によって配偶者や子といった相続人もその相続分に応じて請求することが可能です。過払い金返還請求には、ここでは伝えきれないほど多くの法的問題や裁判例などがあります。ご自身や故人が借金の返済を継続していた…という方は、なるべく早めに弁護士に相談してくださいね。<著者プロフィール>篠田 恵里香(しのだ えりか)東京弁護士会所属。東京を拠点に活動。債務整理をはじめ、男女トラブル、交通事故問題などを得意分野として多く扱う。また、離婚等に関する豊富な知識を持つことを証明する夫婦カウンセラー(JADP認定)の資格も保有している。外資系ホテル勤務を経て、新司法試験に合格した経験から、独自に考案した勉強法をまとめた『ふつうのOLだった私が2年で弁護士になれた夢がかなう勉強法』(あさ出版)が発売中。『Kis-My-Ft2 presentsOLくらぶ』(テレビ朝日)や『ロンドンブーツ1号2号田村淳のNewsCLUB』(文化放送)ほか、多数のメディア番組に出演中。 ブログ「弁護士篠田恵里香の弁護道」
2015年03月20日恋愛や仕事のこと・・・忙しい毎日の中でプチトラブルはつきないもの。でも、わざわざ弁護士に相談するほどでもないけど、これって法律的にはどうなの!?なんて思うこともしばしば。そんなモヤモヤを美人&イケメン弁護士がズバッと解消!つい先日、夫との離婚が成立しました。特にこじれることもなく話し合いで離婚できましたが、離婚後すぐに妊娠が発覚しました。現在お付き合いしている彼の子です。ですが、ネットニュースなどで「300日問題」といわれるものを読み、離婚後300日以内に産まれた子どもは、前の夫の子ども扱いになると聞いたのですが、本当でしょうか?どうしたらいいのでしょうか。たしかに、「元夫と長いこと性交渉がない」ような場合、元夫の子どもとして扱われるのはおかしいですね。しかし、現在の法律では、裁判所における手続きを踏まない限り、元夫との子どもとして扱われてしまうのが現状です。詳しくお話しましょう。子は母体から生まれるので、子の「母親」は一目瞭然ですが、「父親が誰か」はわからないこともありえますよね。これにつき法律では、「妻が婚姻中に妊娠した子は、夫の子」「結婚から200日経過後または離婚から300日以内に生まれた子は、婚姻中の妊娠」と推定する旨の規定を置いています。つまり、法律上は「離婚の日から300日以内に生まれた子」は、「元夫の子」と推定されるわけです。2年間別居中で一度も会っていない夫だとしても、「離婚後300日以内に生まれると元夫の子」と扱われてしまうのです。通常このような場合は新恋人や再婚相手の子どもである可能性が高いはずなのですが。この場合、元夫の子でなく扱うためには、離婚後に懐胎した旨の医学的証明書を役所に提出するか、家庭裁判所における手続きを踏まねばなりません。具体的には、家庭裁判所に対し「親子関係不存在確認の調停」か「認知の調停」を申し立てます。これらの調停が不成立となった場合は、さらに、「親子関係不存在確認の訴え」や「認知の訴え」を提起する必要があります。なお、元夫からは嫡出否認の訴えができます。これらの調停や裁判によって、「元夫の子ではない」という判断をもらって、ようやく、元夫の子ではない扱いにすることができます。このように、300日問題は、「絶対に元夫の子どもではないはずなのに裁判所の手続きを踏まない限り原則これを覆す方法がない」という意味で、実情と合致しないと批判されています。離婚の泥沼裁判が終わってほっとしていたら、その後300日以内に女性に子どもが生まれ、また裁判騒ぎに…なんていうことも起こりうるのです。法律の改正が待たれますが、改正されるまでは、この制度に従わざるをえないのが現状です。 職場恋愛中の彼がいます。つい先日、彼に好意をもっていた女性が偶然を装って入社してきました。まるでドラマのような展開に私は不安でやきもき。職場恋愛を隠しているから何もできず…不安で体を壊してしまいました。しかも、その女性は、社内で彼の悪口をあることないこと言いふらしているので、彼の評価が下がるのではないのかと穏やかには過ごせません。この彼女を会社から辞めさせ慰謝料、私の休業損害などを請求することはできますか?その女性は、彼に対し恋愛感情を抱き、これが成就しなかったためにいわばストーカーまがいの行為に出ているようですね。ストーカー気質の方は、恋愛が絡むと、「つきまとい行為」をしたり、怨念の情から「悪口を言う。脅す。」といった行動に及ぶことも多いようです。ただ、残念ながら、彼女に対して、相談者の方から会社を辞めさせたり、慰謝料や休業損害を請求することは難しいです。彼女が彼につきまとう行為と、相談者さんが不安になる・会社を休むということとは、通常は、「因果関係(通常そういう行為からそういう損害が生じるという関係)」がないと評価されてしまいます。なので、彼の方からその女性に対し法的手段をとるのがよいでしょう。まず、彼女の行為ですが、「偶然を装って入社し、彼の周辺をうろうろする」のはストーカー規制法の「つきまとい行為」に該当する可能性がありますね。「悪口を言いふらす行為」については名誉棄損罪の他、これを繰り返すと同じくストーカー規制法に抵触する可能性があります。名誉を棄損され、ストーカー行為の被害者になっているということになれば、当然、慰謝料を請求することができます。また、警察に「警告」等の措置をとってもらうほか、場合によっては被害届などを出すことも考えられます。警察に動いてもらうためには、彼女が彼に対して「恋愛感情を持っていた」「名誉棄損行為をした」といえる証拠(メールや手紙・証言など)があるといいですね。また、解雇については、社内に犯罪行為を行っている従業員がいるとなれば、それは会社からしても「会社の規律に悪影響を与える」ものとして「解雇事由」になる可能性があります。彼から会社の上司に相談するなどして、適切な処分を求めるのがよいかと思います。相談者さんのお気持ちはわかりますが、そんな女性の陰湿な行為について、過度に不安になったり振り回されたりすること自体が勿体ないです。まずは、「そんな女性は無視!彼との関係は壊されない!」と強い意志をもって、愛を育んでいけるのが一番ですね。アディーレ法律事務所篠田恵里香弁護士(東京弁護士会所属)債務整理、交通事故被害、離婚問題、刑事事件など幅広い案件を扱うアディーレ法律事務所に所属する弁護士。男女トラブル、交通事故問題などを得意分野として多く扱う。また、離婚等に関する豊富な知識を持つことを証明する夫婦カウンセラー(JADP認定)の資格も保有している。外資系ホテル勤務を経て、新司法試験に合格した経験から、独自に考案した勉強法をまとめた「ふつうのOLだった私が2年で弁護士になれた夢がかなう勉強法」(あさ出版)が発売中。また、公式ブログ「弁護士篠田恵里香の弁護道」も更新中。●ブログ篠田恵里香の弁護道●弁護士が教えるパーフェクト離婚ガイド●アディーレ法律事務所HP●交通事故被害者救済サイト離婚後に妊娠発覚!どちらの子どもになる?職場にストーカーが入社!?居酒屋で迷惑なナンパ!家庭ごみをコンビニに捨てたら…別居中の恋愛は不倫になるの!?●●は嘘?慰謝料を取り返すには…ママ友とのトラブル!クレジットカードのスキミング詐欺「言葉」によるデートDV、その境界線は?浮気相手からの嫌がらせを止めたい!写真詐欺!? ネットと実物に差が…寝坊でバスを止めてしまった!年下の彼は財産目当て?“なりすまし”と“浮気心”、どちらが悪い?動画サイトに勝手にアップしたら違法?完売したランチメニュー「エリートと結婚できる」とだまされた!不倫のアリバイ作りの共犯マンションのオートロック占いの電話料金嫁姑問題!留守中、無断で自宅に入る姑婚約者のキャバクラ通いをやめさせたい利用規約が長すぎる!弁護士費用特約について教えて!恋人が「別れさせ屋」に依頼をしていた!交通事故の示談、弁護士に相談すべき?子どもがいじめを受けて不登校に…無言電話でノイローゼになってしまった!元恋人が会社に乗り込んできた!ケンカの果てに…ペットのトラブル!元婚約者に貸したお金を取り戻したい!残業を強制する上司!“大人のいじめ”を訴えることはできる?領収書は必ずもらった方がいい?家族が事故の加害者に!無料相談窓口はある?風邪を蔓延させる迷惑おじさん!自転車の運転中にタバコ!受信料金の立て替え払い、法律的に問題は?会社のコピー機の私的使用は罰せられる?パートでも産休・育休が欲しい!給与を多く振り込みすぎた!返してもらえばOK?通信サービスの契約取り消しはできる?電車内での危険養育費を減額することはできる?オフィスで子づくり調査…これってパワハラ?仕事中に私用で外出!これって許されるの?タイムカードを偽装したら、犯罪になる?お金を払ったのに…商品が届かない!家賃滞納による強制退去別れた彼から、旅行代金を請求された!私はストーカー!?マンガ喫茶での口論ホストクラブから高額な請求携帯での録音、盗聴になるの?探偵のつもり?ネット通販で、購入数を間違えたレンタルDVD延滞料として20万円請求された恋人をとられたコーヒーのクリーニング代メーリングリストで社内恋愛をばらされた高価なプレゼント目当てで結婚を匂わせる借金を返そうとしても受け取ってくれないお茶に雑巾のしぼり汁飛行機の移動時間は労働時間にあたる?敷金返金トラブル宝くじの購入友人同士のお金の貸し借り・時効たばこの受動喫煙恋人の携帯メールをチェック浮気をばらす合コンでの嘘友人から譲ってもらったものを、また返して欲しいといわれた上司が社内メールを盗み見飲食店のキャンセル35歳になったら結婚しよう10年付き合った彼氏と別れたが慰謝料はもらえる?尾行は犯罪になるのかタクシーが道を間違えて遠回りした。友人のブログで嘘がばれる花嫁さんかっさらい事件
2013年10月23日法律はそっけない文章で難しく書かれていますが、そのバックボーンは人間の生活を成立させるためにあります。調べてみると「えっこんな理由で成立してるの?」なんて話が結構あるものです。ほんの触りですがご紹介しましょう。■20年占有したら自分の土地に!自分に所有権のない土地でも、そこを(誰にも文句を言われることなく)20年連続して占有した場合、その土地の所有権は占有者の物になるという法律があるのをご存じでしょうか?これは民法162条にその規定があります。いわゆる「20年規定」というものです。例えば、あなたが誰のものかわからない空き地に家を建てたとします。で、誰からも文句の出ることなく住み続けて20年たったとします。するとその土地の所有権はあなたのものになるのです。聞くとなんだか不公平なように思うかもしれませんが、これはいつまでも訴訟が続くような事態を避けるためにあります。もしこういった規定がないと「100年前の3代前の曽祖父の時代にはここはうちの土地だった、出て行け!」みたいな訴訟がどんどん起こせることになってしまいます。■御成敗式目にも同じ規定がある!この現代の「20年規定」と全く同じ規定が、はるかな昔、鎌倉時代の『御成敗式目』にもあるのをご存じでしょうか。御成敗式目は1232年8月27日に成立していますので、780年も前の武士政権の法令ですが、その第八条に「土地占有之事」というのがあるのです。これによると「御家人が20年間占拠していた土地は、所有者が現れても返還しなくてもいい」と定められています。「一所懸命」の言葉通り、武士はそもそも自分の土地に命を賭ける存在です。土地の所有に関するトラブルを解決する機関として、鎌倉幕府は全国の武士から信望を集めたに違いありません。一定の期間が過ぎたら、その土地の所有権は実効支配の事実をもって決するという、一種の時効制度、これを「年紀法」と言います。年紀法の精神は約800年もの時間を超えて現代まで受け継がれているわけです。■源泉徴収っていつ始まった!?税法に目を向けて見ましょう。「源泉徴収」という方式があります。例えばサラリーマンの場合、給与支払者の会社のところで税金をとられており、その税金は会社から国に納付されるために個人としては関与しようがありません。サラリーマンにとってはイヤな制度ですが、国にとっては川上で一網打尽に集金できるいい仕組みなわけです。この源泉徴収が実は比較的新しいのをご存じでしょうか?実は源泉徴収制度は第二次大戦中の1940年4月1日から始められました。日本が源泉徴収を導入したのは、戦費確保に都合がいいと判断したからです。参考にしたのはナチスドイツです。ドイツが先に導入していて、その高い集金率から日本も導入を決めました。戦争は終わりましたが今でもその制度は続いています。日本が特異なのは「年末調整」というシステムです。源泉徴収を導入している国の多くは、その清算に「確定申告」という「自己申告制度」を用います。でも日本の場合には、清算においてもより川上に近いところでやるという仕組みを取っているのです。ほかにも法律にまつわる興味深い話は尽きません。ではまたの機会に!(高橋モータース@dcp)
2012年12月01日アメリカは日本人からすると不思議な国です。アメリカの国全体としての法律がありながら、地方の州がそれぞれに法律を制定する。中央集権的な統治と地方の統治という力がせめぎ合っています。まあ難しい話はともかく、各州で定めた法律が「州法」として機能しているのですが、その州法に「ウソ!」、「なんで?」というものがあるのです。アメリカのヘンな州法を紹介します。●テキサス州では、家の中でワニを飼うことを禁止。テキサスというとブッシュ元大統領のおひざ元で非常に保守的な土地柄ですが、この法律があるのは、まあ危ないからでしょうね(笑)。ちなみにテキサス州では、公職に就く者は「神を信じていること」という規定があります。さすがバイブル・ベルト(福音派プロテスタントの多い信仰心のあつい地域)の中にある州ですね。●テキサス州では、立ったままでビールを3杯以上飲むのは禁止。結構やってる人が多そうな気がするんですが……。信仰心のあつい地域なので、アルコールに対する目が厳しいのでしょう。●テキサス州では、はだしで歩くのに$5で発行される許可証が必要である。面倒くさいですねー(笑)。なぜこんなことに!●テキサス州では、ホテルの2Fの窓からバッファローを撃ってはならない。実にテキサスらしい気がしますが、開拓時代の法律が改正されずにそのまま残ってるのではないでしょうか。●テキサス州では、ペンチの所有は禁止。何でしょうかこれ(笑)。●カリフォルニア州では、プールの中で自転車を漕(こ)ぐことは禁止。ただし浴槽の中ではその限りではないそうです(笑)。ギャグで決めてるとしか思えない法律です。●カリフォルニア州では、上司とその秘書が2人きりで密室にこもるのは違法。まあ浮気防止には役立つと思いますが……。シュワルツェネッガー知事は大丈夫だったのでしょうか。●カリフォルニア州では、州内で核爆弾を爆発させた者は$500の罰金を科す。アメリカ人は核爆弾をナメてるとしか思えません。●コネチカット州では、日没後に後ろ歩きをしてはいけない。どういう経緯でこんな法律が可決されたのでしょうか?●コネチカット州では、犬に入れ墨をする時には警察へまず届けること。しないと思うんだけどなー。●コネチカット州では、犬に教育をすることは違法。「お手」とか「ちんちん」も駄目なのでしょうか。コネチカット州は犬に何か含むところがあるのでしょうか。●モンタナ州では、トラックの前座席に羊を置き去りにしてクルマを離れることは違法。乗せないし離れないし(笑)。●ミズーリ州では赤ちゃんを怖がらせることは違法。言いたいことは分かりますがどうなんですかこれ。●モンタナ州、モンタナでは「正上位」以外は違法である。どうするんだこれ(笑)! 密告するヤツはのぞき屋ですけども。●ネブラスカ州では、ドーナツの穴を販売することは禁止されている。これなんか完全にウケ狙いの法律なのではないでしょうか(笑)。いかがだったでしょうか?ここで紹介したのはほんの一部です。調べればまだまだあります。これらの州法はアメリカ人独特のユーモアなのでしょうか?(高橋モータース@dcp)
2012年10月25日FP(ファイナンシャルプランナー)への相談の普及を目指す一般社団法人全国ファイナンシャルプランナー相談協会は、相談のプロFPに気軽な料金で個人相談ができるショップ『住宅と保険のFP相談センター』を、横浜および東京・本郷に、11日オープンした。『住宅と保険のFP相談センター』は、独立系FPによる、金融・保険商品の販売を前提としない公正な有料相談ショップ。住宅資金計画・住宅ローン・生命保険・火災保険を中心に相談経験の豊富な実力派FPが個人相談を担当し、初回3,150円(100分)と気軽に利用できる料金となっている。金融・保険商品の販売を前提とせず、ライフプランを熟慮した長期的な視点によるアドバイスと他社の無料相談についてのセカンドオピニオンも実施すること、 相談員は所定の相談実務経験を有する独立系FPである、全国FP相談協会の会員のみとなっていることが特長である。住宅と保険のFP相談センター 横浜店所在地 :神奈川県横浜市神奈川区栄町10-35 ポートサイドダイヤビル1階(株式会社NEXT内)営業時間:10:00~21:00TEL :0120-918-486住宅と保険のFP相談センター 東京本郷店所在地 :東京都文京区本郷3-32-10BR本郷3ビル3F(株式会社エフピー研究所内)営業時間:10:00~21:00TEL:0120-918-486【拡大画像を含む完全版はこちら】
2012年04月12日ジャニーズ実写化のマンガが人気金融や法律にまつわる知識は、いざというときに知っていて損はありません。わざわざ勉強するヒマもないし、難しそう……と思っているなら、マンガが最高のテキストになるはず。そこで20代女性612名に、金融や法律に詳しくなれそうなお役立ちマンガを聞いてみました。>>男性編も見るQ.金融や法律に詳しくなれそうなお役立ちマンガは?(複数回答)1位『ナニワ金融道』27.8%2位『カバチタレ!』26.5%3位『クロサギ』26.3%4位『逆転裁判』14.2%5位『ミナミの帝王』12.8%■『ナニワ金融道』は役に立つ!!・「ホントに楽しくて、おふざけみたいだけど勉強になる」(24歳/医薬品・化粧品/事務系専門職)・「お金の仕組みや裏社会のことが分かりそうなので」(24歳/商社・卸/事務系専門職)・「これを読んでサラ金の怖さをあらためて実感したので」(25歳/金融・証券/専門職)・「特にいらない知識かもしれないが、裏の金融知識が学べそう」(25歳/機械・精密機器/技術職)・「上司にすすめられた」(22歳/商社・卸/秘書・アシスタント職)■『カバチタレ!』は役に立つ!!・「身近な出来事についての法律を分かりやすく知ることができるから」(28歳/ソフトウェア/秘書・アシスタント職)・「どうやったら人を救えるのかとか、ためになる法律が多そうだから」(27歳/商社・卸/事務系専門職)・「ドラマで見たら、すごく身近な問題を取り上げていて分かりやすかった」(27歳/食品・飲料/技術職)・「一つひとつの例を詳しく知ることができたので」(24歳/機械・精密機器/技術職)■『クロサギ』は役に立つ!!・「実際にこれで勉強しています。絶対に詐欺にはあいません」(26歳/商社・卸/事務系専門職)・「法律の抜け穴をついて詐欺師を詐欺にはめる高度なストーリーだから」(26歳/情報・IT/秘書・アシスタント職)・「どういう状況で法律が適用できるか、分かりやすく描かれているから」(27歳/金属・鉄鋼・化学/技術職)■『逆転裁判』は役に立つ!!・「現実とかなり違う部分もあるだろうけど、裁判関係の事柄を少しだけ学べたと思う」(24歳/団体・公益法人・官公庁/事務系専門職)・「裁判のシーンが多く描かれているので」(22歳/小売店/販売職・サービス系)・「友人が読んで法律などに詳しくなっていたから」(25歳/食品・飲料/営業職)■『ミナミの帝王』は役に立つ!!・「裏の世界を知ることができる」(25歳/医薬品・化粧品/技術職)・「ドラマが大好きだから。銀ちゃんの知識が豊富」(26歳/アパレル・繊維/事務系専門職)・「話の展開が面白い。難しい法律の話なども自然と覚えていたりするから」(29歳/金属・鉄鋼・化学/技術職)■番外編:このマンガは役に立つ!!・『闇金ウシジマくん』:「とにかく闇金業の怖さを思い知ります。借りたら返すのは当たり前だけど、ケタはずれの金利に暴力……本当に怖い世界です」(23歳/団体・公益法人・官公庁/事務系専門職)・『課長 島耕作』:「自己啓発本のジャンルに入れるべきではないだろうかと思う」(27歳/建設・土木/秘書・アシスタント職)・『裁判長!ここは懲役4年でどうすか』:「ドラマで見て、裁判員制度などの勉強になったので」(24歳/運輸・倉庫/販売職・サービス系)・『家栽の人』:「人情ものが好きなので」(29歳/医療・福祉/事務系専門職)・『弁護士のくず』:「難しい話も分かりやすい」(27歳/学校・教育関連/専門職)総評1位はSMAPの中居正広さん主演でドラマ化された『ナニワ金融道』。消費者金融を舞台に繰り広げられるさまざまな事件が、お金にまつわる法律の知識を与えてくれます。「上司にすすめられた」人もいるほど、読むとためになるマンガです。行政書士事務所が舞台になっている『カバチタレ!』は2位。交通事故や飲食店のツケなど、身近な問題を取り上げていることが多く、実生活でも使えそうと人気でした。続編となる『特上カバチ!!』は、嵐の櫻井翔さん主演でドラマ化されています。また、山下智久さん主演でドラマ化された『クロサギ』は3位にランクイン。詐欺師をターゲットに詐欺を働く"クロサギ”を主人公にした物語です。プロである詐欺師さえだませる方法が披露されているため、だまされないための知識が身につきそうです。4位はゲームソフトとして人気が高い『逆転裁判』でした。裁判を中心に描かれているので、「法律に詳しくなれそう」と支持されたようです。5位の『ミナミの帝王』は竹内力さん主演のVシネマの人気が高いようでした。今回は、ドラマ化されたことのあるマンガが多くランクインしました。まずはドラマを見てから、より深い知識を得るためにマンガを読むのもよさそうです。金融や法律の知識はいざというときに知っていると武器になるもの。自分の身は自分で守れるよう、ぜひマンガを読んでみてくださいね。(文・飯塚雪/C-side)調査時期:2011年7月13日~7月31日調査対象:COBS ONLINE会員調査数:女性612名調査方法:インターネットログイン式アンケート■関連リンク【ランキング女性編】「自分の先生になってほしい」と思う先生キャラ【ランキング女性編】野球のよさを知らない人にぜひ読んでほしい野球マンガランキング【ランキング女性編】アニメ・マンガの言ってみたい決めゼリフランキング完全版(画像などあり)を見る
2011年09月20日知っていて損はない知識が満載お金や法律について、知らないよりは知っているほうが得。でも、難しい本を読むのは面倒だし、なによりも忙しくて勉強するヒマもない!そんなときにおすすめなのが、金融や法律について描いてあるマンガ。そこで、20代男性237名に、金融や法律に詳しくなれそうなお役立ちマンガを聞いてみました。>>女性編も見るQ.金融や法律に詳しくなれそうなお役立ちマンガは?(複数回答)1位『ナニワ金融道』34.2%2位『クロサギ』16.5%3位『課長 島耕作』14.8%4位『カバチタレ!』13.9%4位『ミナミの帝王』13.9%5位『闇金ウシジマくん』13.1%■『ナニワ金融道』は役に立つ!!・「このマンガを読んでいたら、金融のことが少し分かるようになった」(28歳/小売店/販売職・サービス系)・「実際に経済学部の授業でも使われていました」(24歳/小売店/販売職・サービス系)・「あまり知らないお金関係の法律がよく出てくるから」(28歳/食品・飲料/営業職)・「裏の仕組みに強くなれそうだから」(24歳/学校・教育関連/事務系専門職)・「借金は怖いと痛感できるから」(29歳/マスコミ・広告/事務系専門職)■『クロサギ』は役に立つ!!・「法律の裏を描いているようだから」(26歳/医療・福祉/専門職)・「お金に関する法律の抜け穴や裏技が描かれているから」(27歳/情報・IT/技術職)・「読んでいて面白いし、自然に勉強になりそうだから」(22歳/商社・卸/事務系専門職)・「いろいろと役に立つことが描かれている」(23歳/自動車関連/技術職)■『課長 島耕作』は役に立つ!!・「ビジネス全般に役立ちそうな感じなので」(27歳/ソフトウェア/技術職)・「島先生の話は、一から十まですべてためになります」(25歳/情報・IT/営業職)・「実践的な金融の知識は社会では必要だし、自分もやってみたいから」(25歳/医療・福祉/事務系専門職)■『カバチタレ!』は役に立つ!!・「日常に役立つ法律の知識が得られるから」(28歳/学校・教育関連/専門職)・「きっちり説明してくれるから」(23歳/医薬品・化粧品/営業職)・「取り組みづらい法律という分野の入口としてはいいと思う」(24歳/情報・IT/事務系専門職)■『ミナミの帝王』は役に立つ!!・「実際に目からうろこの知識が満載だから」(27歳/商社・卸/事務系専門職)・「民法や契約関係に強くなれる」(22歳/不動産/営業職)・「内容が生々しいので」(24歳/マスコミ・広告/営業職)■『闇金ウシジマくん』は役に立つ!!・「闇金に詳しくなりそうだから」(24歳/情報・IT/営業職)・「法律というより、債務者の末路に詳しくなりそう」(27歳/ソフトウェア/技術職)■番外編:このマンガは役に立つ!!・『逆転裁判』:「ゲーム感覚で覚えやすいので」(26歳/情報・IT/技術職)・『弁護士のくず』:「人間ドラマ+法律の知識も関係してくるから」(24歳/電機/営業職)・『ドーラク弁護士』:「法律の抜け穴などに詳しくなりそう」(27歳/警備・メンテナンス/事務系専門職)総評1位は34.2%の支持を得た『ナニワ金融道』。大阪の消費者金融を舞台に、借金にまつわる人間関係を描いた作品です。中居正広さんが演じた実写ドラマを見た人も多いのでは?実際に大学の授業で使われたほど役立つ知識が満載で、「金融について詳しくなった」という意見も寄せられました。山下智久さん主演でドラマ化された『クロサギ』は2位。詐欺によって家族を失った主人公が、詐欺師をだます詐欺師"クロサギ”として暗躍するという物語です。「法律の抜け穴や裏技が描かれている」、「読むと勉強になる」と人気を集めました。社会人に役に立ちそうな知識が満載なのは3位の『課長 島耕作』。主人公の島耕作は課長からトントン拍子に出世を重ね、現在連載中の『社長 島耕作』で社長のポストを獲得しました。「日常に役立つ法律知識が得られる」と人気だったのは、4位の『カバチタレ!』。法律を駆使して弱者を助ける行政書士の話です。2001年には常盤貴子さんと深津絵里さんが出演するドラマ『カバチタレ!』が放映されました。2010年にも櫻井翔さんと堀北真希さんが出演した続編ドラマ『特上カバチ!!』が放送されたので、見た人も多いかもしれません。同率4位には、高利貸が登場する『ミナミの帝王』が選ばれました。「民法や契約関係に強くなれる」という意見も。『ミナミの帝王』に負けず、借金にまつわるドロドロの人間模様を描き出した『闇金ウシジマくん』は5位。債務者の哀れな末路を見てしまうと、「決して借金はしない!」と心に誓いたくなります。金融や法律に関する知識は、知っていれば得、知らなければ損。借金に関する知識はできれば必要としたくないところですが、いざというときのために知っておくことは大切です。まずは、ここで紹介したマンガを読んで、さまざまな知識を学んでくださいね。(文・飯塚雪/C-side)調査時期:2011年7月13日~7月31日調査対象:COBS ONLINE会員調査数:男性237名調査方法:インターネットログイン式アンケート■関連リンク【ランキング男性編】「自分の先生になってほしい」と思う先生キャラ【ランキング男性編】野球のよさを知らない人にぜひ読んでほしい野球マンガランキング【ランキング男性編】アニメ・マンガの言ってみたい決めゼリフランキング完全版(画像などあり)を見る
2011年09月20日