2025年に開催予定の第97回アカデミー賞授賞式より、作品賞の選考対象作品に対し、劇場公開基準が拡大されることが分かった。主催の映画芸術科学アカデミーが発表した。現在は、作品賞の受賞選考対象となるには、全米6都市のうちいずれかの都市で7日間、劇場公開することが条件とされている。しかし、2024年に公開される映画からは現在のルールに加え、初公開から45日以内に全米上位50市場のうち10市場で連続・非連続を問わず7日間の追加上映を行う必要があるという。(アメリカ国外の地域での公開は10市場のうち2市場としてカウントすることができる)。「毎年行っているように、私たちはアカデミー賞の受賞資格要件を見直し、評価してきました」というアカデミーのCEOビル・クレイマーと会長のジャネット・ヤン。追加上映を行うことで、「映画の世界での認知度を高め、観客に劇場という場所で私たちの芸術表現を味わってもらえることを促せると期待しています」とコメントしており、「この進化は映画に携わるアーティストと映画ファンの双方に利益をもたらすと感じています」と自信を見せている。新しいルールは作品賞の選考対象作品にのみ適用される。(賀来比呂美)
2023年06月22日アカデミー賞の資格を得るためのルールが、一部変更になった。アカデミー賞は劇場で上映される映画のためのものだということがより強調された形だ。現状では、年内に最低7日間、アメリカ国内の6つの指定都市のうちひとつの街で劇場公開されれば、資格がもらえる。これは「資格を得るための上映」と呼ばれる。だが、2024年以後の公開作品は、「資格を得るための上映」の後、45日以内にアメリカの10都市で最低1週間上映しなければならなくなる。本格公開が年明けの場合、配給会社はアカデミーに公開計画を提出する必要がある。この変更の影響を受けるのは、主に配信作品と小規模のインディーズ映画。1週間だけ公開して資格を得れば、あとは配信という方法は、オスカーを狙う以上、来年からは通じなくなる。文=猿渡由紀
2023年06月22日ブレンダン・フレイザーがアカデミー賞主演男優賞を受賞した話題作『ザ・ホエール』のBlu-ray&DVDが10月4日(水)に発売されることが分かった。『ハムナプトラ』シリーズほか、アクションスターとして一世を風靡しハリウッドのトップスターに登り詰めながらも、心身のバランスを崩し表舞台から遠ざかっていたブレンダン・フレイザーが、奇跡のカムバックを果たしたと大きな話題となった本作。余命わずかな孤独な男が疎遠だった娘との関係修復を切望する最期の5日間を描く。フレイザーは体重272キロの主人公を演じるために全身特殊メイクを施し、喪失と絶望、数々の重荷を背負いながらも、切なる願いを秘めた名演を見せた。ヴェネチア国際映画祭では約6分間のスタンディング・オベーションが贈られ、本年度(第95回)アカデミー賞では主演男優賞受賞を獲得するという奇跡の復活劇を遂げた。監督は『レスラー』でヴェネチア国際映画祭の金獅子賞を獲得し、『ブラック・スワン』で第83回アカデミー賞監督賞にノミネートされた名匠ダーレン・アロノフスキー。戯曲原作でワンシュチュエーションの本作でも飽きさせることのない演出で観客を魅了する手腕を発揮。『ミッドサマー』『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』など常に注目される気鋭の製作会社A24とのタッグで創り上げた本作は、主演男優賞とメイクアップ&ヘアスタイリング賞を受賞、アカデミー2冠を達成した。この度発売されるBlu-rayは、アウタースリーブ仕様。さらに、メイキング&インタビュー映像や、来日イベントの映像など、本編をより楽しむことができる映像特典を多数収録している(DVDには未収録)。発売を記念して、ブレンダン・フレイザーのコメント入り予告映像も到着した。『ザ・ホエール』Blu-ray&DVDは10月4日(金)より発売。『ザ・ホエール』Blu-ray&DVD【発売日】2023年10月4日(水)【価格】Blu-ray:5,280円(税込)DVD:4,290円(税込)発売元:キノフィルムズ/木下グループ 販売元:ハピネット・メディアマーケティング©2022 Palouse Rights LLC. All Rights Reserved.(シネマカフェ編集部)■関連作品:ザ・ホエール 2023年が4月7日、 TOHO シネマズ シャンテほか全国公開© 2022 Palouse Rights LLC. All Rights Reserved.
2023年06月18日公益財団法人岡本太郎記念現代芸術振興財団 岡本太郎記念館・川崎市岡本太郎美術館は、第27回岡本太郎現代芸術賞への応募作品を2023年7月15日(土)から9月15日(金)まで募集いたします。第27回岡本太郎現代芸術賞1954年、岡本太郎43歳のときに出版された『今日の芸術』。この本には、「時代を創造する者は誰か」というサブタイトルがつけられていました。1996年、岡本太郎没、享年84歳。その直後、岡本太郎記念現代芸術大賞(2006年 岡本太郎現代芸術賞に改称)、通称「TARO賞」が創設されました。彼の遺志を継ぎ、まさに「時代を創造する者は誰か」を問うための賞。今年は第27回をむかえます。「時代を創造する者は誰か」――この半世紀前の太郎の真摯な問いかけを胸に刻んで、創作活動に邁進する方々の、幅広い応募を呼びかけたいと思います。応募規程に沿う作品であれば、その形状、技法等はまったく自由。美術のジャンル意識を超え、審査員を驚かす「ベラボーな」(太郎がよく使った言葉です)作品の応募を期待しています。◆賞及び賞金◆・岡本太郎賞 200万円 1名・岡本敏子賞 100万円 1名(上記受賞者2名には岡本太郎記念館にて作品展示の機会が与えられます)・特別賞 総額50万円 若干名今年度より入選作品が決定した時点で入選者全員に賞金10万円を授与します。岡本太郎賞、岡本敏子賞、特別賞の賞金はこれに上乗せして支給いたします。◆入選作品の公開◆入選並びに入賞作品は、様々な機会をとらえて公表するとともに、2024年2月中旬~4月中旬(予定)に川崎市岡本太郎美術館で開催予定の「第27回岡本太郎現代芸術賞展」に展示されます。なお会期中には、来館者による入選作品の人気投票も行います。上位の方には記念品を贈呈いたします。詳細は、川崎市岡本太郎美術館ホームページをご確認ください。 詳細はこちら プレスリリース提供元:@Press
2023年06月15日主演のアンドレア・ライズボローが圧巻の演技を見せ、本年度アカデミー賞主演女優賞にノミネートされた『To Leslieトゥ・レスリー』。その演技に、グウィネス・パルトロウやシャーリーズ・セロン、エイミー・アダムス、ジェーン・フォンダ、ローラ・ダーン、ケイト・ウィンスレット、ケイト・ブランシェットらが絶賛を贈ったアンドレアが撮影や製作の裏側などについて語った。アンドレアが本作で演じたのは、宝くじに高額当選(19万ドル・日本円で約2,500万円)したものの全てアルコールに使い果たし、行き場を失ったシングルマザー。息子にも友人にも見放されながらも、モーテルでの“出会い”をきっかけに人生の再起を図ろうとする女性だ。アンドレアは、「この映画は19日間で撮影しましたが、ご存知のように、今は現像に時間がかかるし、フィルムで撮って現像することさえ困難です」と35mmフィルムでの撮影をふり返り、「でもそれが私たちのこだわりでした」と話す。「私たちは時には1日10シーンを撮影しました。全てのショットが1~3テイクだけです。なぜなら残念ながらフィルムが多くはなかったから。でもそうしたやり方は、別の意味では幸運でした。そのおかげで臨場感や緊張感、文字通りの恐怖感、切迫感が生まれました。みんなにとって、制作過程に参加するすべてのクリエイティブにとってです」という。「2020年、パンデミックの真っ只中で、病院がいっぱいで、本当に恐ろしいほど殺伐とした時期で、誰も撮影なんかしていなかった頃でした。でもこの作品は非常に小さく、個性的な作品であるため、そのような時期でなければおそらく資金を得ることはできなかったと思います」とアンドレア。「そのため、すべての瞬間が重要で貴重であり、この映画を制作したすべてのクリエーターは、常に最高の状態で仕事に取り組んでいました」。また、出演するだけでなく、自らエクゼクティブ・プロデューサーとして舞台裏でも活躍した。「この脚本には、一人の人間と一緒に時間を過ごし、恥辱のサイクルに没入できる可能性があったからです」とアンドレアは言う。「マイケル・モリス監督がレスリーを捉えたいという気持ちが伝わってきて、とてもワクワクしました。だから絶対にやりたいと思った」と明かし、「私たちには、自分たちのビジョンや目指したものに忠実でいられるという大きな強みがありました。制約が少なく、みんながやっていることに対して300もの意見を挟まれたりしなかったから」と小規模作品だからこそ実現したクオリティがあったことに触れる。パンデミック中の撮影でもあり、「人の大勢いる部屋の中にいるのに、親しくできないというのは、とても孤独でした。だからこの映画は結局レスリーと観客の間の関係みたいなものを生むんです。それは本当にすごいことだと思います」と改めて語る。そして、レスリーというキャラクターや、自分の心身をあそこまで完成させるために、どのような準備をしたか?との問いに「長距離走みたいなものでした。撮影する前も2年くらい準備期間があったので」と話すアンドレア。「私たちの撮影では、感情的な面で要求されるものがとても大きかった」とふり返り、「私たちは1日に10シーンほど撮影していました。これが悪いことなのかいいことなのかわかりません。みんな酩酊状態みたいな感じだったと言えば、それは事実だと思います。でも私にとっては、彼女がどこにいるのか、その瞬間、瞬間ではっきりしていたので、もはや図式化したり、筋道を立てたりする必要がなかったというか…撮影が始まるまでに、(レスリーの役が)私の骨の髄まで染み込んでいたんです」と語っている。『To Leslie トゥ・レスリー』は6月23日(金)より全国にて公開。(text:cinemacafe.net)
2023年06月03日前田敦子が本年度アカデミー賞脚色賞受賞、作品賞ノミネートの『ウーマン・トーキング 私たちの選択』公開直前トークイベントに登壇、俳優であり映画監督、元アイドル、そして1児の母である自身と照らしながら本作について語った。原作のベストセラー小説を、フランシス・マクドーマンドがプロデューサーとして製作。『死ぬまでにしたい10のこと』などで俳優として活躍するサラ・ポーリーが監督を務め、ルーニー・マーラ、クレア・フォイ、ジェシー・バックリーなど、女性たちの力が集結した本作。映画上映前に登壇した前田さんはまず観客に、「話したいことがたくさんあるんですけど、本当にいろんな方に観て楽しんでいただきたい」とコメント。また、本イベントのオファーが来た時の心境を聞かれると、「観る前は自信がなかったので、先に試写が観たいとお願いしました」と裏話。鑑賞後は本作のインタビューなどを読み漁ったという。「(キャストが)なんでこんなにいきいきしているんだろう、観ていると自分も話している気分になるのはなぜだろうと思っていたけれど、すごく重いテーマだからこそ、現場は和気藹々と作られていたという裏話を聞いて納得しました」と話した。ほぼ会話のみで構成される本作に、もし俳優として参加することになったら?と聞かれると、「怖いですね。本当に生々しい感情が出ているので。でもそれって、本当にいい環境だったからこそ出てきたものだったんだろうなあと、いいなあと思います」とサラ監督の現場を称賛しつつ、「どの国でもこういう話はあるものだと思いますが、もしオファーがあったら、簡単な気持ちでは参加できないなと思いますね。撮影環境がものを言うテーマだと思います」と持論を述べた。「自由でいたいと思いながら『らしさ』を求めてがんじがらめになってしまう」2022年に『理解される体力』で監督デビューを果たした前田さん。サラ監督が本作撮影時に時間の使い方を工夫した、というエピソードに感銘を受けたようで、「(監督というのは、)サラ監督のようにすべてのことに意識が向かないと成立しない職業。作品をつくるとき、誰についていくかという話になると思うんですが、やっぱり監督についていきたいなと思いたいですよね。そういう意味ではできていなかったなと反省しました」と監督の視点からも称賛した。本作では、女性たちの結束が描かれる。女性アイドルグループで長年センターを務めてきた前田さんは自身の経験と照らし合わせて、「すごく納得しました」と言う。「もちろん(アイドルグループ時代)ぶつかったりもめたりしたこともあったけど、大きな事件になったことはなくて。それは根っこに絆があったからだと思うんですけど、それを映画を観ていて感じました。嘘だろって言われると思うんですけど(笑)、メンバーは本当に仲が良かったんです。なにかあったら話し合って、泣きながら感情をぶつけあったりして、仲直りもアツいんですよね」と思い出をふり返る。一番仲が良かったのは板野友美だと言い、「正面から『それってちがくない?』と言ってくれるから、それですごく仲良くなりました。喧嘩したあと、仲直りのときにおそろいのネックレスを買ってくれて、私もお返しのプレゼントを贈ったりして。おそろいでつけていました。今も大切に持っています!」と笑顔で語った。さらに、本作で描かれる母親としての選択についても語る。「母親らしさをどこかで求めている私もいますし、自由でいたいと思いながら『らしさ』を求めてがんじがらめになってしまうことはよくあります」と、本音をこぼす前田さん。そんな前田さんが自分らしくいるために必要なのは仕事だったという。「子どもが生まれた時に、自分のなにかを犠牲にしすぎてそれこそ“母親らしさ”に固まることが怖くなったんです。自分の想像の範囲でもあんまりいい未来が描けないってことは、よくないと思って。もちろん子どもの成長によって変えていきたいとも思うんですが、でも、シングルマザーになったときに、(母親らしさにがんじがらめになっていた部分が)すごく楽になったんです」と告白。「別れたあとのほうが、それぞれ親子で結束できていると思います。そうなったときに、私は趣味が仕事になっている部分もあるのかもしれないんですが、私が自分らしくいられるのはお仕事をしながら子育てすることかなと気づきました」と明かした。現場に子どもを連れていくこともあるという前田さんは、「子どもがいることでみんなが笑顔になるのはすごく、子どもの存在によって大人が救われているんじゃないかと思います。息子にとっても、大人っぽい子どもにはなっているけど、いざ社会人になって大人の世界に急に放り込まれるより、大人って、仕事って、こういう世界なんだと納得をして飛び込むことは、息子にとって力になるんじゃないかと思います」と語りつつ、「でも絶対にこれがいいと思う!とも言い切れないんですよね。それも何かにとらわれているからだなあと思います」と苦笑していた。「口に出すこと、言葉にすることから始めることがどれだけ大切か、改めて教えてくれた作品」続いて、サラ監督との共通点でもある監督業について今後の展望を尋ねると、「(監督という職業にこだわらず、)違うものを形にすることに携わってみたい」とのひとことが。「まだ見つかっていないんですけれど、そのなにかが見つかった時に動き出すんだろうなと思っていて。まわりのみんなを見ていると、形にしている人が多くて、それが楽しそうで。自分が必要とされているものがあったら挑戦してみたいなというのはずっとあるので、なにか意味のあることをしたいと思っています。全部自己満足で終わってしまったら人生後悔すると思うので」と決意の眼差しで語る前田さん。最後にこれから作品を鑑賞する観客に向け、「今話していることは、まだ観ていない方からしたら何を言っているのかわからないかもしれないですが(笑)、観終わったあとにほんとうにそういう気分になるんだなと納得してもらえると思います。口に出すこと、言葉にすることから始めることがどれだけ大切か、改めて教えてくれた作品です」とメッセージを送っていた。『ウーマン・トーキング 私たちの選択』は6月2日(金)よりTOHOシネマズ シャンテ、渋谷ホワイトシネクイントほか全国にて公開。(text:cinemacafe.net)■関連作品:ウーマン・トーキング 私たちの選択 6月2日TOHO シネマズ シャンテ、渋谷ホワイトシネクイントほか全国公開© 2022 Orion Releasing LLC. All rights reserved.
2023年05月25日シャーロット・ウェルズ監督が初長編作品にして英国アカデミー賞英国新人賞を受賞、世界のメディアが本年度ベストムービーに選出した注目作『aftersun/アフターサン』。この度、ウェルズ監督が「クイーン」&デヴィッド・ボウイ、「ブラー」、「R.E.M.」など、登場人物の心情とシンクロする名曲の数々について起用秘話を明かした。11歳のソフィが父親とふたりきりで過ごした夏休みを、その20年後、父親と同じ年齢になった彼女の視点で綴る本作。多くを語らず、ミニマリスティックな演出で観る者に深い余韻をもたらす本作は、誰しもの心の片隅に存在する大切なひととの大切な記憶を揺り起こす。陽光注ぐ海辺、アフターサン(日焼け後)クリームの香り、大きな波音、そしていまも残る父・カラムの手の感覚…。脚本を書いていた数年間、イメージした音楽のプレイリストを作り、曲を聴いてはその場所や瞬間にふさわしいと感じてどんどん楽曲が増えていったというウェルズ監督。そのうちの何曲かは実際に劇中で使用されている。シャーロット・ウェルズ監督「私が初めてカセットやCDを買ったのは1997年か1998年頃だったから、サウンドトラックに使う曲はその年代で区切りました。『R.E.M.』や『ブラー』は父の影響です。ジャンルをミックスし、80年代かそれより古い曲も取り入れて、もう少し“クール”でインディっぽいものにしようとも考えましたが、場所とキャラクターに忠実でありたかったし、その直感のおかげで、ジャンルは様々でもまとまったサウンドトラックに仕上がったと思っています」と、自身の自叙伝的な本作ならではの選曲であったことを明かす。最も印象的な楽曲の1つは「クイーン」&デヴィッド・ボウイの「アンダー・プレッシャー」だ。「あの選曲は本当に予想外でした。編集時にひらめいたんです」と当初は使用予定がなかったという。「フレディ・マーキュリーとデヴィッド・ボウイの歌声が素晴らしく、これまでもインスピレーションが欲しい時に聴いていました。だから今回も編集のときに聴いていたんですが、効果はてき面でした」と当時をふり返る。しかし、はじめは、「これだけ静かな作品なので、どうしても曲の歌詞に意識が向いてしまうのでないかと懸念していました」というが、仮で音源を入れて編集を進めているうちに徐々に“この楽曲しかない”という思いが強くなっていったのだという。結果的に、登場人物の語られない心の内と歌詞が共鳴することになり、最も重要な役割を果たす1曲に。監督自身が“あの曲でなければ成立しなかった”と思える納得の選曲となったという。『aftersun/アフターサン』は5月26日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿ピカデリーほか全国にて公開。(text:cinemacafe.net)■関連作品:aftersun/アフターサン 2023年5月26日よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿ピカデリーほか全国にて公開© Turkish Riviera Run Club Limited, British Broadcasting Corporation, The British Film Institute & Tango 2022
2023年05月24日先ごろ開催されたアカデミー賞でポール・メスカルが主演男優賞の候補になったのをはじめ、英国アカデミー賞、カンヌ映画祭など多くの映画祭・映画賞で絶賛を集めた映画『aftersun/アフターサン』がいよいよ26日(金)から公開になる。本作は主人公の女性が、20年前の夏に父と訪れたリゾート旅行を振り返る様を描いた作品で、大きな事件が起こるわけでも、劇的な展開があるわけでもないが、観る者の心と記憶を刺激する描写がふんだんに盛り込まれ、映画的な魅力が細部にまでつまっている。本作はなぜ、ここまで観客を魅了するのか? 監督と脚本を手がけたシャーロット・ウェルズに話を聞いた。ウェルズ監督はスコットランド出身で、ニューヨークを拠点に活動する映画監督。大学院で映画制作を学び、いくつかの短編を手がけた後、初の長編作品にこのプロジェクトを選んだ。主人公の女性ソフィは、ホームビデオの映像を観ている。あの夏、11歳だったソフィは父に連れられてトルコのリゾート地に出かけた。いつもは離れて暮らしている父との日々。ビデオに記録された空はどこまでも青く、ふたりは朝から晩まで遊んで、穏やかに時間が過ぎていく。しかし、ソフィはビデオ映像にうつる父の知らなかった一面を見つけ出していく。本作では劇中で父の知られざる一面が劇的に描かれることはない。しかし、観客は11歳のソフィの目を通して父との日々を眺めているうちに、父の抱えているものに少しずつ気づいていく。「多くの映画監督は“ストーリーを伝えるための劇の構造”を選びがちですよね。でも私は、観る人ともっと深いつながりが持てる作品をつくりたいと思っています。ですからこれまでも余計なものは可能な限り排除して、本当に必要なものだけを残すというやり方で映画をつくってきました。本作でもすべてを説明するのではなく、作品の中に余白を残すことで観客にメッセージを読み取ってもらいたいと思いました」監督が語る通り、本作では過剰な説明やセリフは登場しない。カメラの動き、俳優の表情や気配、父と娘の空気感の変化……“映画の言語”を駆使して物語が綴られる。「大学院で映画を学んだのですが、最初にやるレッスンは“映画の音を消してもストーリーがちゃんと伝わるか?”でした。そのことはいつも意識しています。脚本を書く上ではストーリーを前に進めたり、新しい情報を伝えるようなセリフもありますが、私の書くセリフは日常の中にある”とりとめのない言葉”が多いですし、創作する過程ではフォーム(構造)を通じてストーリーを伝えることを大切にしています。それに無駄なセリフを排除して、静寂な時間をつくることで、別の要素を映画の中に入れることができるんです。カメラワークや、音がスクリーンの画とシンクロしていたり、ズレていたり……しっかりとビジュアルで語ることで、そういった別の要素が強まる可能性もつねに意識しています」そこで重要になったのが、フィルムでの撮影だ。本作は“かつて父と娘が旅行中に撮影したハンディビデオの映像を、成長した娘が見る”という設定だが、撮影は全編35ミリフィルムで行われた。「撮影監督のグレゴリー・オークのこだわりでもあったのですが、35ミリフィルムで撮影することは本作を語る上では欠かすことのできない要素でした。デジタル撮影にはない質感が35ミリにはあり、本作が描く記憶のぼんやりとした感じ、ソフトな質感を表現するためにはフィルムが必要だったのです。デジタル撮影だとあまりにもクッキリとし過ぎてしまうのです。フィルムで撮影することで、古い写真や使い捨てカメラで撮った写真の感覚を表現できると思いましたし、フィルムのルックを用いることで観客が“あの時代”を意識せずにさかのぼれると思いました」なぜ、『aftersun/アフターサン』は多くの観客を魅了し続けるのか?さらに本作では編集と構成(どの順番でシーンを語っていくか?)に長い時間が費やされたという。この物語では父と娘はひとつのリゾート地で何日も過ごしている。脚本上では「時間の経過を表現するために、1日のはじまりは必ず同じシーンからはじまるようにしていた」そうだが、完成した映画では時間の経過が曖昧に感じられるようにシーンが構成され、時おり成長した現在のソフィの場面が挟み込まれる。時間が単純に一直線に進んでいくのではなく、過去を振り返る時に誰もが体験する“おそらくこの順番で出来事が起こったはずだけど、一部だけ記憶の順番が曖昧”という感覚を本作は編集によって実現しているのだ。「撮影監督のグレゴリーと、編集を担当したブレア・マックレンドンとは同じ大学院で、短編も一緒につくってきました。私たちは創作のテイストも似ているし、目指している部分が同じなんです。ですから、撮影を終えて、編集前に自分とブレアのために“編集用の脚本”を用意したのですが、結果的には一度も開くことはありませんでした。ブレアは物語が時系列的に一直線に進んでいくことを好まないので、時間が経過して次の日がやってくる“境界線”をうまくボカすような編集をしてくれました。基本的には朝が来て、夜になり……と進んでいくのですが、時折、ソフィが同年代の子どもたちとプールに入るシーンや、彼女が男の子と遊ぶ場面を違う流れの中に上手に盛り込んでいくことで、記憶のもつ“順番が曖昧な感じ”を表現することができたと思います。これはブレアのおかげですね」さらに本作ではシーンの並びを精緻に検討して構成することで、観客が少しずつ父の知らなかった一面に気づいていくことに成功している。人は映画を観ている時、その映画がまだ上映中であっても、数分前に観ていたシーンの印象が変わることがある。映画の前半で楽しそうな人として登場したキャラクターが、あるシーンで得られる情報によって“さっき観たあのシーンの彼は楽しそうにしていたわけではないのだ”と気づくことがある。記憶は人の中で固定されるものではない。記憶はたえず変化し、更新されていく。「そのことはすごく意識しましたし、本作はそのような構造の作品だと思います。この映画を観てくださる方は、最初は父と娘の楽しいバケーションを観ていると思っています。しかし、それがどんどん変化していく、それらが積み重なることで、結末には観客がある感覚を抱くことになる。でも、それは人生そのものがそうだと言えますし、“振り返る”という行為もそうですよね。過去を振り返る時、当時はとても楽しい思い出だったのに、何年か経ってから振り返ると、別の感情が湧き上がってくる。あの時の楽しさを思い出したいけれど、今の感情とぶつかり合ってしまう。そういうことが誰にでもあると思いますし、そのこともこの映画では表現したかったのです」この映画が世界中の多くの観客を魅了しているのは、父と娘の関係を上手に描いたからでも、親子の普遍的なドラマを描いたからでもない。曖昧な記憶が変化/更新される中で、新たな一面を発見し、当時の記憶と現在の感情がぶつかり合う……誰もが一度は経験する感覚を見事に描き出したことが本作の最大の魅力だろう。監督が目指した通り、本作は単に物語やキャラクターを提示するだけでなく、観客と“深いつながり”をもつことに成功したのだ。「公開される前は、私と同じような体験をした方や、似たような体験をした観客だけにこの映画を理解してもらえると思っていました。父と娘の関係だったり、父の抱えている問題が観客に響くだろうと予想していたのです。しかし、映画が公開され、そうではないことが証明されました。この映画はそれ以上の広がりをもって受け入れられました。それは本当にうれしいことですし、今後も自分の信念を貫いて創作を続けていきたいと思っています」誰もが過去を振り返る。楽しかった思い出、つらい記憶、あの日のあの人の印象……しかし、それらは自分が時を経て、経験を重ねることで変化していく。人は何度も過去を振り返り、そのたびに新しい過去に出会う。あの時はわからなかった父の気持ちがわかるようになる。新たに父と出会うことができるのだ。これから多くの人がふとしたきっかけで、映画『aftersun/アフターサン』を振り返ることになるだろう。そのたびに、観客の記憶の中に、あの日のリゾート地の父と娘が、思ってもみなかった新しい姿で出現するはずだ。『aftersun/アフターサン』5月26日(金) ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿ピカデリーほか全国公開(C)Turkish Riviera Run Club Limited, British Broadcasting Corporation, The British Film Institute & Tango 2022
2023年05月24日映画業界で働く人たちに仕事の裏側やその魅力についてじっくりと話を伺う【映画お仕事図鑑】。今回、ご登場いただくのは、日本アカデミー賞最優秀作品賞を受賞した『新聞記者』、興行収入30億円の大ヒットを記録した『余命10年』など近年、次々と話題作を世に送り出している藤井道人監督。最新作『最後まで行く』(5月19日公開)では、岡田准一と綾野剛をメインキャストに迎え、同名の韓国映画のリメイクに挑戦している。スマートフォンひとつで「映画を撮る」こと自体、誰にでも可能になったいま、藤井監督が考える“プロ”の映画監督の仕事、映画づくりの醍醐味とは――?映画監督への道のりは「消去法で選んだ進路」から――子どもの頃、どんなふうに映画と関わり、どういった経緯で映画監督を志したんでしょうか?地元の映画館は近くにあったんですけど、そんなに足しげく映画館に通ったという感じでもなく、映画を教えてくれたのはTSUTAYAでしたね。ビデオやDVDをレンタルして観るのが僕にとっての映画体験で、お金もそんなになかったので、映画館に行くのは特別な時だけでした。学生時代はずっと剣道しかやってこなかったので、高校3年生の進路選択の時、紆余曲折あって、英語と国語だけで受験できる「映画学科」というのがあるらしいと聞いて、日本大学芸術学部の映画学科の脚本コースを受けました。脚本家を目指す脚本コースに在籍はしていたんですけど、大学でみんなで自主映画をつくる中で、自分が監督をするターンが回ってきて、実際に監督をやってみるといろんなことが見えて楽しくなって、20歳の頃には監督に魅力を感じていましたね。――高校の進路選択の時点で「将来は映画に関わる仕事がしたい」という思いはあったんですか?当時、マイケル・ムーアの映画(『ボーリング・フォー・コロンバイン』、『華氏911』など)が流行っていたこともあって、どちらかというとドキュメンタリーが好きでした。もともと、推薦で受けた大学もメディア系の学科だったし、そこまで「映画」とか「監督」というものを意識していたわけでもなかったですね。大学に行ったらまた剣道をやって、普通に就職するのかな…くらいの感じのことしか考えてなくて、自分の将来について楽観的でしたね。ところが推薦に落ちちゃって「ヤバい! どうしよう?」となって(苦笑)、それまで英語と国語しか勉強してなかったので、それで入れる大学という、消去法で選んだ進路でした。――大学の脚本コースの講義というのはいかがでしたか? 実際の“映画のつくり方”や“脚本の書き方”といった実務的なことを学ばれたのでしょうか?どちらかというと理論的なことの方が多かったです。モノクロ時代からどんな変遷を経て、いまの映画技術が生まれたのか? みたいなことだったり、昔の名画を観たり、ギリシャ悲劇から脚本について学んだり。脚本コースに関しては、あまり実践的なことは教わらなかったですね。自主制作映画で実際の映画のつくり方を学んでいったという部分が大きかったです。――仕事として“映画監督”というのを意識されたのは?当然ですが、大学の先輩で映像系の仕事に就いている方も多いので、あちこちの現場にお手伝いに行ったり、その先輩のツテでお仕事をいただいたりという感じで、大学2年生くらいから、学校に通うよりも、現場で仕事する比率のほうが多かったんですね。大学卒業を迎えて、みんなそのままフリーターをしながら映像の仕事をするのかな? と思っていたら、みんな普通に就職していて、フリーターになったのは僕だけで…、「え? みんな就活してたんだ!?」という感じでした(苦笑)。――そこで「この世界で生きていこう」と?その頃は「俺、いけるな」と勘違いしてた時期だったんですね(苦笑)。「俺はこの仕事で飯が食っていける」と。全然、そんなことなくて、社会人1年目は全く仕事がなかったです。それまでは学生という立場だからこそ、いただけていた仕事があったけど、学生ではなく“プロ”となると、同じ土俵にもっとすごい人たちがたくさんいるんですね。そうなると、自分のところに来る仕事の依頼というのがなかなかなくて…。そこからは営業の日々でした。「BABEL LABEL」という屋号を名乗って、あたかも映像集団に所属しているように見せつつ(笑)、あちこちに営業して仕事をいただいていました。――現在も所属されている映像制作会社「BABEL LABEL」の設立にはそんな経緯があったんですね。もともとは“フリーター”と名乗るのがイヤで、勝手に屋号をつけたんです(笑)。そこで細々と自主映画などをつくったりもしてたんですが、社会人になって3年くらい経つと、普通に働いていた同級生たちが次々と会社を辞めて、「BABEL LABEL」に集まるようになったんです。そこで「俺たちで面白いことをしようぜ!」という感じになりまして。最初は会社組織ではなかったんですが、数が増えていくにつれて「会社にしてもらわないと制作費の振り込みができません」といったこともありまして。「1円で会社が作れる」という情報を耳にして「じゃあ会社にしよう」と。実際には35万円くらいかかって、当時は36万円しかなかったんですけど(苦笑)、なけなしの貯金をはたいて作ったのがいまの会社です。――ご自身の中で、職業として「映画監督になれた」と思えた瞬間は?形式上のことで言えば、(商業映画デビューの)『オー!ファーザー』(2014年公開)になるんでしょうけど、映画だけでご飯が食べて行けるようになったのは『新聞記者』(2019年公開)以降ですね。以前は自分のことを“映像作家”と名乗っていたんですけど、最近はMVやCMのディレクターをやることもほとんどなくなりましたし、自分で“映画監督”と言うようになったのは三十を越えてからですね。――お話に出た『オー!ファーザー』で初めて商業映画の監督を務めたのは、監督にとってどういった経験でしたか?自分の実力のなさを実感したというのがすごく大きかったですね。それまでは同世代の仲間たちと自主映画を作っていただけでしたが、『オー!ファーザー』の現場では僕は年齢的に下から3番目くらいでした。40代や50代のベテランのスタッフさんと一緒に映画をつくる中で、彼らを導く“言語”を持っていないことを痛感しました。『オー!ファーザー』以降、僕は再び自主映画に戻るんですけど、あの人たちと渡り合って、一緒にお仕事ができるような実力をつけないと、この先、通用しない、職業としての映画監督にはなれないなと思いました。河村光庸プロデューサーとの出会い――その後、『青の帰り道』や山田孝之さんのプロデュースによる『デイアンドナイト』を監督され、2019年公開の『新聞記者』は日本アカデミー賞最優秀作品賞に輝きました。同作で製作・配給会社スターサンズの河村光庸プロデューサーと出会い、その後も河村プロデューサーと共に『ヤクザと家族 The Family』、『ヴィレッジ』などを作ってこられました。そもそも、どういった経緯で河村さんとお仕事をされることになったんでしょうか?いろんな理由が複合的に絡まっているんですが『新聞記者』という映画はもともと、僕が監督する予定ではなかったんですね。クランクインの直前に、監督をされるはずだった方が降板となってしまい、「どうする?」となって、河村さんは周りの人たちに「誰かいないか?」と声をかけていたんです。ちょうど僕は『デイアンドナイト』を撮った後で、そのラッシュを見た河村さんから突如、電話がかかってきまして「明日、会えませんか?」と言われて「会えます!」と。「スターサンズからのオファーだ!」と思って待ち合わせの宮益坂のパン屋に行ったら、なんかいかがわしい感じのおじいちゃんがいて(笑)、「おーっす! これ一緒にやろうよ」ってタイトル『新聞記者』と書いてある企画書を自信満々に見せられたんです。帰りにマネージャーさんに「ちょっとこれはやりたくないです」って言いました(笑)。そんな出会いです。――河村さんは2022年に亡くなられましたが、藤井監督にとって河村さんとの出会いはどういうもので、作品をご一緒されて、どんなことを教わりましたか?本当に僕の人生における、一番大きなターニングポイントだったと思います。人間、大人になると大人なりの“距離感”というものができるじゃないですか? 人のパーソナルスペースにまで踏み込んできて、映画を作ってくれる人なんて滅多にいないんですけど、河村さんは自分のパーソナルスペースを周りのみんなのパーソナルスペースだと思っているというか、良く言うとすごくフレンドリーな方なんですね。毎日電話がかかってきたし、毎日一緒に過ごしてました。親子ほど歳が離れているけど、この人は何かを俺に伝えようとしてくれている――70年もの人生で培ってきたものを自分に伝えようとしてくれているのをひしひしと感じました。その中で企画の作り方から宣伝の取り組み方まで、本当に全てを教わった気がします。映画監督としての作品選び、向き合い方――藤井監督の作品を語る上で、“ジャンルレス”という言い方をされることが多いかと思います。『青の帰り道』のような青春群像劇から『余命10年』のような恋愛映画、そして『新聞記者』のような社会派に『ヴィレッジ』のようなサスペンスまで、ジャンルを飛び越えて、様々な作品を監督されていますが、ご自身にとって“ジャンル”というのはどういうものですか?やっぱり、気にしないというか、ジャンルにとらわれずにいたいとは思っています。別格というか、神様みたいな存在ですけど、スピルバーグだってジャンルレスですよね。僕は、いちコックと言いますか、映画制作の中での技術者のひとりという側面で見た時、「人間を描く」ということさえ通底していれば、ジャンルというものは、まず誰よりも僕らが壊していかなくてはいけないと思っています。恋愛を描いても人間、人生を描くし、もし僕がホラーを撮るとしても、そこに登場する人たちがどういう時代にどんな思いで生きているのか? という部分をきちんと描くことができればと思っています。社会派ではなく、いつも 映画の中に社会が入っているだけです。もちろん、ひとつのものを人生をかけて磨き続ける人もいますし、ひとつのジャンルでつくり続ける方も素晴らしいと思いますが、自分はジャンルというものよりも、プロデューサーとのセッションを楽しんで、映画をつくるという側面を大事にしています。――藤井監督にとって、プロの「映画監督」というのはどういう仕事ですか?映画づくりにおける、いち部署ですね。決定権のあるいち部署だと思っています。責任という点で考えると、もちろん組織における重要なポジションであると思いますが、「監督だからえらい」とか、「監督の言うことは絶対である」といった思いで映画をつくったことはないですね。――ここ数年、次々と監督作品が公開されていますが、オファーが届いた際にその企画を「やりたい」と思う判断基準や企画選びで大切にしていることはありますか?どんな企画と出会うかは「運」と「縁」と「恩」の部分が大きいと思います。たとえば、今回の『最後まで行く』のリメイクも、10年前であれば僕には来なかったと思うし、10年後だったら僕はやってないかもしれない。『新聞記者』、『ヤクザと家族』、『余命10年』という作品をやった上で、自分が好きなアクション、そして喜劇に挑戦してみたいなと思っていた時期にこの企画をいただけたので、まさに縁ですね。「脚本は映画づくりの精密な設計図」――今回も含め、ご自身で脚本の執筆もされますが、脚本を書く上で大切にされていることはどんなことですか?(脚本は映画づくりの)精密な設計図であるべきということですね。小説ではないので、具体性を大事にして、読み物として全スタッフがその内容を認識し、この船がどこに向かうのかを明確に書いたコードであるべきだと思っています。――藤井監督は毎作品、必ず登場人物たちの経歴や嗜好、どんな人生を送ってきたかなどを記したキャラクターシートを作成されるそうですね? その意図やどのように活用されるのかを教えてください。さきほど脚本を「設計図」と言いましたが、作品という船のエンジンがあったとして、そのエンジンがどんな部品でつくられているのか? 知りたい人は知っておいた方が良いと思っています。キャラクターシートはまさにそのための存在で、細かく映画に登場する人物のことを理解し、描いていくために活用するものですね。どうしても、現場で撮影に費やせる時間は限られています。俳優さんたちに迷わずに「こういう思いでこのキャラクターは存在していて、それをあなたに委ねています」ということを伝えなくてはいけない。「はじめまして」とお会いして、現場で芝居をしてもらった時に、その芝居がこちらのイメージと「全然違う!」という状況になった時、キャラクターシートがあることによって、共通認識を持って「もっとこうしてみるのはどうですか?」「これは必要ないんじゃないですか?」と話すことができるのかなと思います。「絶対に読んでください」ということではなく、(より深くキャラクターについて)知りたい人は見てくださいという感じですね。――このキャラクターシートはどの段階で作成されるんですか?基本的には脚本を書き進めながらつくっていく感じですね。初稿を書き終えた段階でできていることもあるし、改稿を重ねて脚本が完成してつくる場合もあります。どういう家庭環境で育って、どんなスポーツをやってきたか? 家族構成、年収、好きな言葉など…今回、岡田准一さんが演じた工藤で言うと「なぜ彼は自堕落な生活を送るようになったのか?」といったことも書いてあります。パーソナルカラーや好きな音楽などもあるので、部屋の美術や衣装でも活用できます。韓国映画を新たにリメイク、日本版ならではの面白さとは?――ここから、映画『最後まで行く』の制作について、より掘り下げて話を伺ってまいります。大ヒットした韓国映画を新たにリメイクするという作業はいかがでしたか?今回の企画は、本当にプロデューサー陣に恵まれていたと思います。「リメイクだからといって、塗り絵をしてほしいわけではない」「日本映画として、藤井さんらしい『最後まで行く』にしましょう」と言ってくださったので、脚本を大胆に解釈し、アレンジを加えることができました。韓国版のオリジナルの美しいプロットラインがあったので、それをベースに自分たちで新しい映画に作り直すという思いで臨みました。なので、オリジナル版を何度も見直すといったこともなかったですね。――リメイクに際してルールや制約などはあったんでしょうか?特になかったです。韓国のオリジナル版の最大の魅力は、開始5分で物語に引き込まれるプロットラインの面白さだと思っていて、そこはしっかりと拝借しつつ、でも、その後の展開を全く同じにするのであれば、韓国版を観ればいい。そうじゃなく、自分たちなりの新しいストーリーとして、工藤と矢崎という2人の男がどこまで行くのか? というのを純粋に楽しみながら脚本づくりができたと思います。――誤って人をひき殺してしまった刑事・工藤がそれを隠蔽しようとするも、窮地に陥っていくさまを描く本作ですが、韓国版に比べて、綾野剛さんが演じる県警本部の監察官・矢崎の存在が、もうひとりの主人公とも言えるくらい、より深く描かれています。韓国版では(矢崎に当たる男の)バックボーンが描かれるのは1分くらいでしたよね。その割り切り方も面白いと思いますが、やはり自分が映画をつくるときは、何よりも「人間をちゃんと描きたい」という思いが強くあります。“A面とB面”といいますか、人間の愚かさみたいな部分を(表に見える部分との)対比で見せたいなと思いました。『最後まで行く』という物語が、主人公の工藤ひとりで最後まで行くのではなく、2人の運命が絡まり合いながら、最後まで行くという構成になったら面白いんじゃないかと。――今回、平田研也さんと共同で脚本を執筆されていますが、共同脚本ならではの魅力や面白さはどんなところにあると感じていますか?やはり複眼的な視点で構成していけるというのは共同脚本の面白さですよね。監督として「これをやりたい」ということは伝えますが、逆に脚本家の方からしか出てこない構成の妙みたいな部分は確実にあります。30年そこそこしか生きていない自分から出るアイディアだけでなく、平田さんのような円熟した脚本家さんのアイディアが加わることで、本に広がりが生まれるんですよね。僕はできることなら常に共同脚本という形で映画づくりを進めていきたいなと思っています。――改めて日本版『最後まで行く』ならではの魅力、面白さというのはどこにあると思いますか?そうですねぇ…、オリジナル版をリスペクトをしつつも、そこまで意識しなかったので、オリジナルとの“区別化”みたいなこともあまり考えてなかったんですよね。自分の中では、喜劇や転落劇というものが、いまの日本映画にはあまりないと感じていて、笑いながらハラハラして楽しめる映画に、いまの日本映画の現在地で、僕らがどれくらいトライできるか? という部分が挑戦だったので、そこに関しては満足のいく作品になったと思っています。――激しいアクションがあり、痛みを描きつつ、思わず笑ってしまうシーンがたくさんありました。岡田さんと綾野さんの2人が素晴らしかったというのが大前提にありますが、ベースにあるのが“愚かさ”なんですよね。2人とも愚かしい(笑)。でも、奇をてらったりはしてないし、「笑わせてやろう!」という意識もない。「あぁ、この人たちは、這いつくばってでも生きようとしてるんだな」というのが伝わってくるし、2人のお芝居によって脚本を大きく超えた物語になったなと思います。――ひき逃げの被害者・尾田(磯村勇斗)の携帯にかかってきた電話に工藤が出るシーンが面白かったです。韓国版でも同様のシーンがありましたが、緊迫したやりとりになっているのに対し、日本版のほうはちょっとしたやりとりでくすりと笑ってしまうシーンになっていました。コミカルなシーンの演出で大切にされたのはどんなことですか?もともと、コメディは大好きなんですけど、自分が映画をつくる上では、一発ギャグではない笑い――人間の愚かさや、どうしようもない人間らしさが感じられるものがコメディだと思っています。そのためにも、2人にも“状況”をきちんと与えないといけないなと思っていました。様々な受難が振りかかり、そこで慌てたり、怒ったりしていろんな表情を見せてくれて、それが喜劇としての面白さを生んでくれたなと思います。今後の目標は「映画を取り巻く環境の変化、それを日本の映画界にどう取り込んでいけるか」――映画監督としての目標、今後、実現したいことなどはありますか?いま、配信プラットフォームが増えたり、映画を取り巻く環境が加速度的に変わっているので、海外などの環境を勉強して、それを日本の映画界にどう取り込んでいけるか?というのが、この数年の目標ですね。凝り固まった概念をたたき壊していかないと、永久にこのままじゃダメなので、システムを含めて、変えるべきところは変えていかないといけないと思っています。――最後に映画業界を志す人たちに向けて、アドバイスやメッセージをお願いします。僕から言えるのは3つくらいですね。まず「横のつながり」の大切さ。一緒に仕事をする仲間たちや出会いの縁を大事にして、その人たちがどうしたら楽しんで仕事をしてくれるかを考えてほしいということ。それから、仕事がない時期に「オファーは絶対に断らない」ということ。「こういう仕事はしない」と言ってる人は永久にやらないので「自分が適任だと思われてるんだな」と受け入れてやりましょう。最後に、自分の人生なので「自分が納得できることを仕事にする」ということ。そこに関しては、僕自身、昔から変わらないですね。(photo / text:Naoki Kurozu)■関連作品:新聞記者 2019年6月28日より全国にて公開©2019『新聞記者』フィルムパートナーズi-新聞記者ドキュメント- 2019年11月15日より新宿ピカデリーほか全国にて順次公開©2019『i –新聞記者ドキュメント-』最後まで行く(2023) 2023年5月19日より全国にて公開©2023映画「最後まで行く」製作委員会
2023年05月22日映画『PERFECT DAYS(パーフェクト・デイズ)』が2023年12月22日(金)より公開される。本作は第96回アカデミー賞国際長編映画賞にノミネートされており、監督はヴィム・ヴェンダース、主演は本作で第76回カンヌ国際映画祭最優秀男優賞に輝いた役所広司が務める。ヴィム・ヴェンダースが渋谷の“公共トイレ”を題材に『PERFECT DAYS』は、東京・渋谷の公共トイレ清掃員の日々を描いた長編映画。清掃員の平山という男を主人公に、日々の小さな揺らぎを丁寧に追った作品だ。監督を務めるヴィム・ヴェンダースは、『パリ、テキサス』『ベルリン・天使の詩』『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』『Pina/ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち』など、数々の傑作映画を手掛けてきたドイツの名匠。日本の公共トイレのなかに“平穏と高貴さをあわせもった、ささやかで神聖な場所(small sanctuaries of peace and dignity)”を見出したというヴィム・ヴェンダースが、『PERFECT DAYS』ではフィクションの存在をドキュメントのように映し出した。その瞬間、その瞬間にしかないものたちの美しさに注目だ。主演は役所広司、トイレ清掃員に主演を務めたのは、ヴィム・ヴェンダースが長年リスペクトしてやまないと話す役所広司。静かに淡々とした日々を過ごしていたある日、思いがけない出来事がおきるトイレ清掃員・平山を演じる。主人公・平山…役所広司渋谷の公共トイレ清掃員。いくつもの風変わりなトイレを清掃してまわる。平山の姪…中野有紗平山のもとに突然訪れる姪。平山の妹…麻生祐未ホームレス…田中泯平山と奇妙なつながりをもつホームレス。平山の同僚清掃員…柄本時生平山の同僚清掃員のガールフレンド…アオイヤマダ居酒屋のママ…石川さゆり平山が休日に訪れる居酒屋のママ。居酒屋のママの元夫…三浦友和カンヌ映画祭で役所広司が最優秀男優賞なお、映画『PERFECT DAYS』は、2023年に開催された第76回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に正式出品された。主演の役所広司は最優秀男優賞に輝き、監督・是枝裕和の『誰も知らない』で男優賞を受賞した柳楽優弥以来の快挙を達成した。役所広司はカンヌ国際映画祭・男優賞の受賞に際して次のようにスピーチしている。「僕は賞が大好きです。でも、こうやって華々しいカンヌ映画祭でスピーチするのは、あまり好きではない。でもカンヌ映画祭と審査員の皆様、本当にありがとうございました。パーフェクト・デイズを見てくださったお客様もここにいらっしゃると思いますが、本当にありがとうございました。この映画を製作した柳井康治さんに心から感謝したいと思います。彼がいなければ、映画は世に出ることはなかったと思います」また、第36回東京国際映画祭では、審査委員長としてヴィム・ヴェンダースが来日することを記念し、『PERFECT DAYS』を特別先行上映。第96回⽶国アカデミー賞国際⻑編映画賞の⽇本代表にも選出されている。映画『PERFECT DAYS』あらすじ東京・渋谷でトイレの清掃員として働く平山。彼は淡々と過ぎていく日々に満足している。毎日を同じように繰り返しているように見えるが、彼にとってはそうではなかった。毎日はつねに新鮮な小さな歓びに満ちていた。まるで風に揺れる木のような人生である。昔から聴き続けている音楽と、休日のたびに買う古本の文庫を読み耽るのが、歓びである。いつも持ち歩く小さなフィルムのカメラで木々を撮る。彼は木が好きだった。自分を重ねているのかもしれない。あるとき彼は、思いがけない再会をする。それが彼の過去にすこしづつ光をあてていく。【作品詳細】映画『PERFECT DAYS』公開日:2023年12月22日(金)~TOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー※10月24日(火)~30日(月) TOHOシネマズ日比谷にて特別先行上映監督:ヴィム・ヴェンダース脚本 :ヴィム・ヴェンダース、高崎卓馬出演:役所広司、柄本時生、中野有紗、アオイヤマダ、麻生祐未、石川さゆり、田中泯、三浦友和製作:柳井康治エグゼクティブ・プロデューサー :役所広司プロデュース:ヴィム・ヴェンダース、高崎卓馬、國枝礼子、矢花宏太、ケイコ・オリビア・トミナガ、大桑仁、小林祐介製作:MASTER MIND配給:ビターズ・エンド
2023年05月19日2022年アカデミー賞で作品賞を始め3部門を受賞した映画『コーダ あいのうた』が、日本テレビ系・金曜ロードショーにて地上波初放送が決定した。海の町で暮らし、歌の大好きな高校生のルビーは、両親と兄の4人家族の中で一人だけ耳が聴こえる。新学期、合唱クラブを選択するルビー。すると、音楽のヴィラロボス先生がルビーの歌の才能に気づき、音楽大学の受験を強く勧める。だが、両親は娘の才能を信じられず、家業の方が大事だと大反対。悩んだルビーは夢を諦め、家族の助けを続けることを選ぶ…。“コーダ”(CODA/Children of Deaf Adults)は、耳が聞こえない、または聞こえにくい親のもとで育つ子どものことで、本作は、家族の中でただ1人の健聴者である少女が、家族や様々な問題を力に変え、自らの夢を実現していく姿を描いたヒューマンドラマとなっている。本作は、2022年のアカデミー賞で3部門を受賞したほか、ゴールデン・グローブ賞で「ドラマ映画賞」「映画助演男優賞」を獲得。ハリウッドの映画俳優たちが選ぶ全米映画俳優組合賞でも、最高賞にあたる「キャスト賞」を受賞するなど、2021年~2022年の各映画賞を総なめした話題作だ。監督・脚本は、「オレンジ・イズ・ニュー・ブラック」の脚本を担当、カンヌ国際映画祭出品の短編映画『Mother』を監督したシアン・ヘダー。少女・ルビーを「ロック&キー」で人気を博したエミリア・ジョーンズが演じ、手話トレーニングと共に9か月間ボイストレーニングを行い、感動的な歌声を披露。主人公の家族でろう者の父・母・兄は、実際に耳の聞こえない俳優が演じている。金曜ロードショー『コーダ あいのうた』は6月16日(金)21時~日本テレビ系にて放送。(cinemacafe.net)■関連作品:コーダ あいのうた 2022年1月21日より全国にて公開© 2020 VENDOME PICTURES LLC, PATHE FILMS
2023年05月19日英国アカデミー賞(BAFTA)テレビ部門で作品賞、主演女優賞受賞二冠を達成した「I AM ルース」(スターチャンネルEXで配信中)。主演のケイト・ウィンスレットは受賞スピーチで世界中の親子や若者へ、力強いメッセージを発信している。現代イギリスを代表する実力派女優たちが1話ずつ主役を務め、人生の様々な苦境におかれた現代女性の心情を率直に描いた、ドミニク・サヴェージ監督によるアンソロジー・ドラマ「I AM 私の分岐点」の第3シーズン第1話に当たる本作。セリフの書かれた台本がなく、シチュエーションや大筋だけを決め、本番はその場で役者の即興演技をもとにキャクターを表現するという全員即興演技である点も見どころである。ウィンスレットも今回その手法にチャレンジする形で、問題を抱える娘を救おうと奮闘する母親役として、圧巻の演技を披露した。その確かな演技力で見事、BAFTA(英国アカデミー賞)主演女優賞にノミネート。ほかにも本作は単品ドラマ部門作品賞、撮影&照明賞(レイチェル・クラーク)の計3部門のノミネートを果たす。また、主演女優自らが物語を作り上げている点も本シリーズの特徴で、今回もテーマを決める段階からウィンスレット自身が参加。10代のソーシャルメディア依存やメンタルヘルスについて真正面から描いた本作は、彼女自身が世の中に伝えたい熱い想いが詰まった作品となった。ウィンスレットにとっては初となる英国アカデミー賞(BAFTA)テレビ部門での受賞を受け、スピーチでは世界中の親子や若者へ「ソーシャルメディアとその暗黒な一面に取りつかれてしまった若者へ、それらはあなたたちの人生には必要のないものです」と力強いメッセージを送った。本作で初の本格共演が実現した実の娘であるミア・スレアプレトンについて「もしこのトロフィーを2つにカットできるなら、半分を私の娘ミアに渡します。私たちは一緒に成し遂げた」と賞賛の言葉を贈った。また、「『I AM ルース』は、オンライン社会の危険に晒されていると感じる親やその子どもたち、家族、そして、ティーンの子どもと会話したいと願いながらもはやそれが出来なくなってしまった親のために作られました」と製作に込めた想いを披露。さらに、「権力を持つ人たち、そして変化を起こせる人達へ、有害なコンテンツを犯罪として取り締まってください。有害なコンテンツを根絶してください」「不健康な世界に閉じ込められていると感じている、このスピーチを聞いているかもしれない若者たちは、助けを求めてください」と、いままさに葛藤の中にある若者たちや親たち、そして社会に向けて、熱く訴えかけた。「I AM ルース」<字幕・吹替版>はBS10スターチャンネルで独占放送中、スターチャンネルEXにて独占配信中。(text:cinemacafe.net)
2023年05月18日本年度アカデミー賞で脚色賞受賞、作品賞ノミネートを果たした話題作『ウーマン・トーキング 私たちの選択』からルーニー・マーラ、クレア・フォイ、ジェシー・バックリーのインタビュー映像が到着。本作が女性だけに向けられた物語ではない理由などをそれぞれの言葉で語っている。解禁されたのは、本作で主演を務めたルーニー・マーラ、オスカー前哨戦で数々の賞にノミネート・受賞し、本作での演技が高く評価されたクレア・フォイ、そして『MEN 同じ顔の男たち』などに出演してきたジェシー・バックリーという3人のインタビュー映像。映像では、実話に基づいた作品であることについてどう思うか、世界から注目を集めた納屋での話し合いシーンについて話す3人の姿が映し出される。さらに、「なぜこの映画が女性だけに向けられた映画ではないと言えるのか」という質問に対して、クレアは本作を「抑圧されてきた人々の話」と評し、映画の中で描かれる感情や思考について「抑圧されてきた人々、あるいは抑圧を経験したことがない、自覚さえない人であっても、共感できるところがあると思います」と語っている。そんな本作に共感を示す著名人から、応援コメントが到着。「当事者じゃない人は1人もいない、そんな作品だった」と本作を評するのは、arca CEO/Creative Directorの辻愛沙子。また、宇垣美里は「あまりの無力感に震えが止まらなかったけど、負の連鎖を断ち切らんと立ち上がる姿に、描かれる希望と連帯に、背中を押され、未来を信じたいと思えた」と、本作の女性たちの姿と選択に希望を見出したと語っている。『ウーマン・トーキング 私たちの選択』は6月2日(金)よりTOHO シネマズ シャンテ、渋谷ホワイトシネクイントほか全国にて公開。(text:cinemacafe.net)■関連作品:ウーマン・トーキング 私たちの選択 6月2日TOHO シネマズ シャンテ、渋谷ホワイトシネクイントほか全国公開© 2022 Orion Releasing LLC. All rights reserved.
2023年05月18日映画配給会社ギャガが、過去の受賞作品を一挙上映するプロジェクト「ギャガ・アカデミー賞受賞作品特集上映」が、6月30日(金)より行われることが決定した。1986年の創立以来、102作品のアカデミー賞関連作品を配給してきたギャガ。作品賞ほか最多7部門を受賞した『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』をはじめ、昨年の『コーダ あいのうた』、2019年の『グリーンブック』など、近年も数々の作品賞受賞作品を配給しており、これまでの総ノミネート数は297、そのうち全部門での総受賞数は79、最高賞である作品賞は8作品で受賞と、圧倒的な受賞数を誇る。今回の特集上映では、受賞作の中から厳選された<今なお愛されつづける15作品>に加え、ノミネート作品も含む多数の候補作から投票で選ばれる<上映リクエスト1作品>の計16作品を一挙上映。上映リクエストの投票は、公式サイトで行われる。合わせて予告編も公開されており、『スラムドッグ$ミリオネア』『英国王のスピーチ』『ルーム』『ラ・ラ・ランド』『グリーンブック』『ミナリ』『コーダ あいのうた』『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』といった、上映作品15作品を紹介。また、投票で決まる上映リクエストの候補作品名、『ゼロ・ダーク・サーティ』『LION/ライオン 25年目のただいま』『エル ELLE』『逆転のトライアングル』なども映し出され、どの作品が選ばれるのかも楽しみになる映像となっている。「ギャガ・アカデミー賞受賞作品特集上映」は6月30日(金)よりTOHOシネマズ シャンテ、大阪ステーションシティシネマほか全国にて順次上映。(cinemacafe.net)
2023年05月16日ケイト・ブランシェット主演『TAR/ター』の監督は、スタンリー・キューブリック監督の『アイズ ワイド シャット』(99)などに出演する俳優としてキャリアを持ち、これまで手掛けた監督作品はわずか3作というトッド・フィールド。超寡作な彼だが、いずれもアカデミー賞にノミネートされるという類稀なる手腕の持ち主。『TAR/ター』公開前に、改めてそのキャリアをふり返った。トッド・フィールド監督サンダンス映画祭から初のアカデミー作品賞候補に『イン・ザ・ベッドルーム』(01)アンドレ・デュバスの短編小説「Killing」を基にした、長編映画監督デビュー作。夏休みを利用して帰郷した21歳の息子が、近所に住む年上の女性ナタリーと恋に落ちる。しかし、彼女にはDVが原因で別居中の暴力的な夫がおり、あるきっかけで息子はナタリーの夫に銃殺されてしまう。愛する息子を理不尽に殺された両親の深い喪失感、激しい怒りと復讐を描き、世界的な賞賛を獲得。サンダンス映画祭に出品された映画では初となるアカデミー作品賞候補になった上、自身の脚色賞を含む5部門にノミネートされた。ケイト・ウィンスレットもアカデミー賞主演女優賞にノミネート★『リトル・チルドレン』(07)監督2作目も、アカデミー賞で自身の脚色賞を含む3部門にノミネートされた。ビジネスに成功した夫と娘とともに郊外に引っ越してきたサラ(ケイト・ウィンスレット)は、娘とともに公園デビューに挑むも周囲に馴染めずにいた。そんな中、同じ公園に現れた学園の典型的な人気者タイプである“プロム・キング”ことブラッド(パトリック・ウィルソン)と軽い遊びのつもりでキスをするが――。平凡な大人たちが持ち合わせる現状への不満、美しい未来を夢見る気持ちをひと筋縄ではいかない人間ドラマに作り上げた。主演ケイト・ウィンスレットの官能的なラブシーンも話題に。ケイト・ブランシェットの映画史に残る怪演が話題!★『TAR/ター』(23)待ちに待った16年ぶりの新作は、第79回ヴェネチア国際映画祭にて上映後6分間のスタンディングオベーションを受け、ケイト・ブランシェットが女優賞を受賞。本年度アカデミー賞に作品賞、監督賞、オリジナル脚本賞、主演女優賞など6部門にノミネートされた。世界最高峰のオーケストラの一つであるドイツのベルリン・フィルで、女性として初めて首席指揮者に任命されたリディア・ター。彼女は天才的な能力とそれを上回る努力、類稀なるプロデュース力で、自身を輝けるブランドとして作り上げることに成功。作曲家としても圧倒的な地位を手にしたターだったが、マーラーの交響曲第5番の演奏と録音のプレッシャー、新曲の創作に苦しんでいた。そんなとき、かつてターが指導した若手指揮者の訃報が入り、ある疑惑をかけられたターは追いつめられていく――。「唯一無二のアーティスト、ケイト・ブランシェットに向けて書いた」と監督が断言する脚本を演じ切ったブランシェットは、“怪演”と呼ばれるほど圧巻の<ター>を披露。ブランシェットは、ターの人物像について、「ターには権威のある地位に就いている人特有の不可解さがある。それを、どう表現するかがカギとなった。観客がターの体験に共感できるような場面を作ることも重要だった」と語り、「彼女は、自分のことをあまり分かっていない人だから。女性指揮者は往々にして、室内楽曲をあてがわれて、大作は任されない。それで彼女はがっかりしてしまう。彼女はこの世界に浸透した慣習に疲弊した結果、賢明とは言えない決断を下してしまう」と説明。さらに、トッド・フィールド監督は「本作は人間について、権力について、そしてヒエラルキーについてであり、皆さんにきっと真価を認めてもらえることでしょう」と語っている。『TAR/ター』は5月12日(金)よりTOHOシネマズ 日比谷ほか全国にて公開。(text:cinemacafe.net)■関連作品:リトル・チルドレン 2007年7月28日よりBunkamuraル・シネマ、シャンテ シネほか全国にて公開©MMVI NEW LINE PRODUCTIONS, INC. ALL RIGHTS RESERVED.TAR/ター 2023年5月12日よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国にて公開© 2022 FOCUS FEATURES LLC.
2023年05月05日米アカデミー賞作品賞含む7冠を獲得した『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』が5月3日(水・祝)よりU-NEXTにて独占配信されることが決定した。映画ファンから絶大な支持を集めるA24が贈る本作は、家族の問題に悩み赤字コインランドリーの経営に頭を抱える主婦が、マルチバースと繋がりカンフーを駆使して巨悪と戦うことになるアクションコメディ。全世界興行収入は1億ドルを突破し、インディペンデントスタジオとしては、異例中の異例のメジャースタジオ級大ヒットを記録。542ノミネート、308受賞と賞レースをばく進し、本年度アカデミー賞では、作品賞ほか、監督賞(ダニエルズ)、脚本賞(ダニエルズ)、主演女優賞(ミシェル・ヨー)、助演男優賞(キー・ホイ・クァン)、助演女優賞(ジェイミー・リー・カーティス)、編集賞の計7部門の最多受賞を果たす偉業を達成。3月3日に封切られた日本でも、公開初週の洋画興行収入ランキング第1位を獲得した。「マルチバース」と「カンフー」が融合した、かつてないほどカオスな世界観で繰り広げられる壮大な物語。異色作でありながら、まさかの超感動作として映画界に“カオス旋風”を巻き起こした本作が早くも配信にて楽しめる。またU-NEXTでは、第46回日本アカデミー賞最優秀作品賞『ある男』、サバイバルスリラー『FALL/フォール』、青春恋愛映画『少女は卒業しない』ほかGW中に楽しめる新作映画を続々配信中だ。『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』は5月3日(水・祝)12時~(予定)U-NEXTにて配信開始。(text:cinemacafe.net)■関連作品:エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス 2023年3月3日よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国にて公開© 2022 A24 Distribution, LLC. All Rights Reserved.
2023年05月01日2024年のアカデミー賞授賞式が3月10日に開催されることが決まった。主催者の映画芸術科学アカデミーが公式HPなどで発表した。今年と同じく、会場はドルビー・シアターで、米ABC局が生中継を行い200以上の国・地域で放送される。例年、2月の終わりから3月初めに開催されていたアカデミーの授賞式。新型コロナウイルスの影響を受け、2021年は4月25日、2022年は3月27日と大幅に開催時期を変え、今年は3月12日に行われた。来年も3月の第2日曜日に設定されている。一般部門へのエントリーの締め切りは11月15日、ガバナーズ・アワードは11月18日、ショートリストの発表は12月21日、ノミネーションの発表は2024年1月23日、候補者たちのランチ会は2月12日とのスケジュールも発表された。今年の授賞式では『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』が最多7部門受賞。ミシェル・ヨーが主演女優賞、キー・ホイ・クァンが助演男優賞、ジェイミー・リー・カーティスが助演女優賞を獲得し、演技部門をほぼ独占した。来年の受賞候補に挙がりそうな作品としてメディアが期待を寄せているものには、マーティン・スコセッシ監督の『Killers of the Flower Moon(原題)』、クリストファー・ノーラン監督の『Oppenheimer(原題)』、ブラッドリー・クーパー監督&主演の『Maestro(原題)』などがある。(賀来比呂美)
2023年04月25日おすすめの歴史・時代小説、若手作家の作品について、書評や著者インタビューを通し作家と作品のきらめきを伝えている、ライターの三浦天紗子さんと吉田大助さんに語っていただきました。本格派だけど親しみやすい。一級の歴史・時代小説は必読!三浦天紗子(以下、三浦):最近、時代小説がまたきていますね。コアなファン以外も手に取りやすい作品が増えて、じわじわすそ野が広がっています。たとえば永井紗耶子さんの『木挽町のあだ討ち』。吉田大助(以下、吉田):これは面白かったですね~。芝居街で起きたある仇討ちについて5人の話者がそれぞれに語り、少しずつ真相が見えていく「回想の殺人」ミステリーですが、江戸に生きる人々の生活や感情の描写が秀逸でぐんぐん引き込まれました。次期直木賞、大本命だと思います。三浦:永井さんは去年直木賞の候補作になった『女人入眼』も素晴らしかった。本当に筆達者な方ですよね。吉田:江戸を舞台にした作品を長く書かれているから、史実も文化も庶民の暮らしも隅々まで知り尽くしている。いってみれば在野の研究者ですよね。土台があるからここまで書けるわけで、それでいうと蝉谷めぐ実さんも同じです。彼女はもともと大学で文化文政時代の歌舞伎を研究されていた人。その知識を存分に生かした『おんなの女房』は抜群でした。三浦:蝉谷さんの作品は私もとても好き。『おんなの女房』のテーマは芸道のすごみ。フェミニズムに通じることだし、『木挽町のあだ討ち』は家族的なつながりに光を当てています。豊富な知識と現代的な感性を持ってエンタメ化できているところがおふたりの強み。時代ものを読まない人にこそ体験してほしいです。吉田:蝉谷さんも新人ですが、ほかにも才能あふれる若い作家が続々出てきています。安堂ホセさん、日比野コレコさん、宇佐見りんさん、遠野遥さんと、近年の文藝賞受賞者だけでもイケイケです。三浦:最近の若手はみんな、デビュー作から完成度が高くてびっくりしますね。私はいま吉田さんがおっしゃったなかでは日比野さんが気になります。彼女は昨年、『ビューティフルからビューティフルへ』で文藝賞を獲りましたが、言語センスなど、もっと話題になっていい逸材だと思います。吉田:文体というか、いろんな文脈を持った言葉の並列のさせ方が面白いですよね。松本人志さんの言葉に影響されてきた、というananのインタビューがネットでバズってましたし(笑)。三浦:ラップ好きということもあって、言語センスが独特ですよね。小説のなかに詩や短歌を意図的に越境させてちりばめてもいる。どこかミュージカルに通じるような無二の文体が魅力です。吉田:Z世代の作家のなかでの僕のイチオシは、高野知宙(ちひろ)さん。デビュー作の『ちとせ』は御一新直後の京都を舞台に、失明する運命にある三味線弾きの少女を描いた作品ですが、五感に訴える情景描写のみならず、書きすぎないセンスが抜群なんですよ。ちとせの運命はどうなったかという事実関係をギリギリまで明かさず、クライマックスへと至る重要な場面でサラッと記す。たった1~2行にとてつもない爆発力を込められる書き手なんです。しかも高野さん、これ書いたときまだ高校生だったんです!三浦:人生3周目くらいなのかも(笑)。すごい新人が出てきましたね。話を聞いているだけで読みたくなりました。私は一昨年にホラー作品の『虚魚(そらざかな)』でデビューした新名智さんにも注目しています。この作品は2人の女の子が「人が死ぬ怪談」を探っていく物語。ホラーということでどうしても光が当たりにくいけど、青春小説としても読めるし何より文章がうまい。新名さんはまだ2冊しか出していないのですが、もっともっと読みたい作家さんです。知識に裏打ちされた歴史・時代小説が熱い。人と人とのつながりを巧みに紡いでいく。『木挽町のあだ討ち』永井紗耶子雪の降る夜に、芝居小屋の裏通りで、若衆・菊之助があだ討ちを成し遂げる。その2年後に、あだ討ちの顛末を聞きたいと菊之助の縁者を名乗る者が現れて…。あだ討ちを目撃した者たちに話を聞いていくと驚くべき真相が見えてくる。1870円(新潮社)女形の夫婦を通して、共に生きることを問う。『おんなの女房』蝉谷めぐ実武家の娘・志乃は芝居について何も知らないまま、歌舞伎役者で人気の女形・燕弥の元に嫁ぐ。家でも女としてふるまい、芸事にまい進する夫に対し、戸惑いながらも尽くそうとする志乃。そこに他の役者の妻たちとの交流も生まれ…。1815円(KADOKAWA)小さなブームが数年おきに訪れるという歴史・時代小説が、再燃してきている。「10数年前に『ネオ時代小説』ブームがありましたが、史実と違う、ポップすぎるという否定派も当時はいて。一方、永井紗耶子さんと蝉谷めぐ実さんはわりとガチで江戸時代を研究しているうえ、エンターテインメントの体幹がしっかりしている。歴史・時代小説のトップランナーとして長く活躍するはず」(吉田さん)「おふたりに先駆けて芸道・時代小説を手がけた大島真寿美さんの『渦』もぜひ。浄瑠璃作者・近松半二の生涯を描いた作品で、人形浄瑠璃の世界を知る一冊としても」(三浦さん)デビュー作の完成度がすごい!大型新人の台頭。生の息吹の混沌と鮮烈。これが現代高校生の声。『ビューティフルからビューティフルへ』日比野コレコ死にたくなる気持ちに抗う高3の静とネグレクト家庭育ちのナナ。ナナは駅前で声をかけてきた若い男・ビルEを〈ことばぁ〉という老女の家に連れていく。静、ナナ、ビルEの3人はことばぁから出される宿題を通して自分を見つめ直す。1540円(河出書房新社)少女の葛藤と成長を描く青春譚。『ちとせ』高野知宙舞台は明治5年の京。天然痘で失明の不安を抱えた少女・ちとせは俥屋の跡取りと出会い、京で見聞を広げていく。景色や人々を目に焼き付けながら、やがて三味線の名手となったちとせは大きな舞台に立ち…。京都文学賞中高生部門最優秀賞受賞作。1760円(祥伝社)各文学賞への応募が軒並み増加し、新人らしからぬ高水準の作品が続々誕生している。「某新人賞の選考委員いわく、ステイホーム期間のおかげで時間をかけて推敲した結果か、最終候補の全体的なレベルが上がってきている、と。Twitter発の『タワマン文学』で注目を集めて作家デビューした麻布競馬場さんも、暇になったから書き始めたと言っていました(笑)。コロナ禍が文学に与えた影響は、これからわかってくると思います」(吉田さん)「長編に日比野コレコさんや安堂ホセさんがトライしたとき、今の言葉の強度のまま書き切れたらすごいし、また違う新たな作風を見せてくれるのかもしれない。楽しみです」(三浦さん)三浦天紗子さんライター、ブックカウンセラー。女性誌や文芸誌、Webメディアで書評やインタビュー、メディカル記事を担当。著書に『そろそろ産まなきゃ』(CCCメディアハウス)など。吉田大助さんライター。雑誌を中心に、書評や作家インタビューなどを手がける。編者を務めたアンソロジー『僕たちの月曜日』(角川文庫)が発売中。ツイッターは@readabookreview※『anan』2023年4月19日号より。写真・中島慶子取材、文・熊坂麻美(by anan編集部)
2023年04月15日「第94回アカデミー賞」国際長編映画賞にノミネートされた映画『EO イーオー』より、主人公のEOを写した場面写真が公開された。イエジー・スコリモフスキ監督の7年ぶりとなる最新作は、ロベール・ブレッソンの『バルタザールどこへ行く』に着想を得た物語。主人公は、EO(イーオー)という名のロバ。サーカス団から連れ出され、ポーランドからイタリアへと予期せぬ放浪の旅に出ることに。プレミア上映となった第75回カンヌ国際映画祭では、審査員賞・作曲賞の2部門を受賞。全米映画批評家協会賞でも、外国語映画賞/撮影賞の2部門を受賞し、New York Timesでは2022年のNo.1ムービーに選出された。いち早く鑑賞した、スコリモフスキ監督と親交のある映画監督・濱口竜介は「もう彼だけになってしまった。その人自身を映画と思える人は。崇高と俗悪がかつてなく接近する最新作はまた一つ映画の領野を広げ、相変わらず陳腐な問いを与える。映画とは何か。つまりスコリモフスキとは何者か」とコメント。俳優・渡辺真起子も「ロバのEOの旅。それだけなのだけれど、誰からも忘れられてしまいそうなロバが人間の暮らしの断片を繋いでいく。流転していく中で、思い出す温もりは『EO』にとってなんだったんだろう。『EO』が出会う人間達もまた旅の途中なのだと思う。人間達の暮らしはどこへ向かっていくのだろうか。まずは『EO』が辿り着く先はどこなのか、劇場で見届けていただくしかない」と感想を述べている。『EO イーオー』は5月5日(金・祝)よりヒューマントラストシネマ渋谷、新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ有楽町ほかにて公開。(cinemacafe.net)■関連作品:EO イーオー 2023年5月5日よりヒューマントラストシネマ渋谷、新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国にて公開© 2022 Skopia Film, Alien Films, Warmia-Masuria Film Fund/Centre for Education and Cultural Initiatives in Olsztyn, Podkarpackie Regional Film Fund, Strefa Kultury Wrocław, Polwell, Moderator Inwestycje, Veilo ALL RIGHTS RESERVED
2023年04月14日カンヌ国際映画祭パルム・ドール賞、米アカデミー賞作品賞を受賞するなど、世界的に高い評価を受けた映画『パラサイト 半地下の家族』が舞台化される。裕福な家庭に寄生してゆく親子を演じる古田新太さんと宮沢氷魚さんが、作品への期待を語る。――世界中で大ヒットした映画の舞台化となりますね。古田新太:映画は面白かったですけど、なんてせせこましい話なんだ、と(笑)。じつはその時から、狭い世界で展開される話だから舞台に向いてるなって思ってたんです。そしたら鄭(義信)さん演出で舞台化の話があって、「古田さん、ソン・ガンホの役やらないかな」と言ってると。鄭さんの舞台『焼肉ドラゴン』が大好きで、以前から一緒にやりたいと思いながらタイミングが合わずにいたんで、今回こそは何としても合わせようと。宮沢氷魚:映画が公開された当時、僕が世間的に盛り上がっているものに乗っかりたくないっていう時期で…(笑)。あえて観なかったんですよ、映画館で。でもちょっと時間が経ってから観たら面白かったです。衝撃的だし韓国の話ではあるけれど、なんかすごく近いものを感じて共感したんです。それはなぜなんだろうって考えたら、僕が生まれたアメリカ西海岸が似たような環境だったんですよね。サンフランシスコはシリコンバレーで儲けた裕福な方々が住んでいる地域なのに、そこから橋を渡ってすぐのオークランドは貧しい地域だったんです。たぶん映画が世界的にヒットしたのは、国は違えど、誰もが見てきた世界が、作品の中に描かれていたからだと思うんですよね。古田:韓国ではそれが半地下という場所に象徴されているんだけど、今回、物語の舞台を関西に移すにあたって、日本でこの半地下をどう表現するんだろうと思ったら、鄭さんがいい作戦を考えていて…。宮沢:あれは面白いですよね。古田:あと悲惨な話ではあるんだけど、ユーモアもある。鄭さんが笑いを大事にする演出家だし、キャストも、よくぞ集めたってくらい“オモシロ小劇場”が集まってるんで期待してる。宮沢:僕も楽しみで仕方がないです。僕はこれまで稽古前にしっかり準備して稽古初日に臨んでいたんですが、それが若干苦しくなってきていたところで…。今回のキャストのみなさんは、たぶんすごく自由に演じられるだろうから、そこに僕もうまくのっかって自由にやれたらと思っているんです。古田:今回、鄭さんが演出だし、(山内)圭哉とかみのすけみたいな意地の悪い(笑)先輩たちがいっぱいいるから面白いと思うよ。宮沢:(笑)。楽しみです。周りから「古田さんとの共演は楽しい」っていう話を聞いてましたから。古田:みんなオイラをピッチャータイプだと思ってるけど、じつはポジション的にはキャッチャーなんだよ。どんな球も全部拾うし、その作業が好き。だから安心して投げてください、と。宮沢:すごく心強いです。みなさん、どんな球でも応えてくださる方だろうから、僕はその時の感情に則った言葉を伝えられればと思うし、その逆もあるだろうから、そこを純粋に楽しみたいです。――演出の鄭さんは、映画化もされた『焼肉ドラゴン』を筆頭に、在日コリアン3世という出自をルーツにした作品を多く手がけています。おふたりは鄭作品の魅力をどこに感じていますか?古田:人間くさいんですよね。偏った人間のどうしようもなさをちゃんと見せてくれるっていうか。そこの作り方がうまいし、かっこいいなと思っています。宮沢:作品の中に、貧困問題のような社会的なテーマを織り交ぜながらも、鄭さんは重たくせずに、それすら笑いに変えていく。敢えて真逆な演出で見せることで、その問題なりテーマと真正面から向き合えるし、観劇後、「悲しい」じゃなく「面白かった」って、前向きに考えられる。今回の『パラサイト』もそうなると思います。古田:あと、鄭さんって“オモシロ”に対してしつこい演出家だって聞いていて。自分が信用している演出家たちは、幕が開いてからもつねにもっと面白くすることを考えていて、毎日のようにダメ出ししてくるような人たちばっかりだから、そこは信用できるな、と。宮沢:本番をやっていくうちにわかってくるものもありますしね。千秋楽に向けて、どんどん面白くしていけるのも楽しみです。――おふたりは堤防の下にある集落に住む貧困家庭の父親と長男という役柄。裕福な家族の娘の家庭教師になった長男が、家人の信頼を巧みに利用して、自分の家族をその家の使用人に送り込み、徐々に寄生してゆく物語です。ご自身の役はどう思われていますか?古田:うちの家族は、お兄ちゃんにしろ妹くん(伊藤沙莉)にしろお母さん(江口のりこ)にしろ、全員が我が強いというか、前に前にってタイプ。お父さん的には、みんなに振り回されて、ついていったらとんでもないことになっちゃったみたいな感じ。基本的にオイラは、周りの芝居に合わせるし、演出家の言うことにも素直に従うタイプなんで、そのスタンスでやります。周りに振り回されて流されて、悲惨な目に遭えば面白いんじゃないかと。宮沢:僕が演じる役は、とにかく戦略的で頭が良くて先が読めてる青年です。ただ、そこを意識しすぎると、僕自身も真面目に考えすぎてしまう可能性もあるんで、稽古場ではフラットでいたいです。THEATER MIRANO-Zaオープニングシリーズ COCOON PRODUCTION 2023『パラサイト』さまざまな映画賞を受賞し、世界を席巻した映画『パラサイト 半地下の家族』を、’90年代の関西に置き換えて舞台化。裕福な一家に入り込み、いつしか寄生していく家族の物語。6月5日(月)~7月2日(日)新宿・THEATER MILANO-Za(東急歌舞伎町タワー6F)原作/映画『パラサイト 半地下の家族』台本・演出/鄭義信出演/古田新太、宮沢氷魚、伊藤沙莉、江口のりこ、キムラ緑子、みのすけ、山内圭哉、恒松祐里、真木よう子ほかS席1万2000円A席9500円Bunkamuraチケットセンター TEL:03・3477・9999(10:00~17:00)大阪公演あり。ふるた・あらた1965年12月3日生まれ、兵庫県出身。所属する劇団新感線のほか、野田秀樹などさまざまな演出家の舞台や映像作品で活躍。ドラマ『ケイジとケンジ、時々ハンジ。』(テレビ朝日系)に出演。シャツ¥16,280(VANSON LEATHERS)キャップ¥5,170(BETTY BOOP) 共にネバーマインド TEL:03・3829・2130Tシャツ¥4,400(ハードコアチョコレート TEL:03・3360・2020)その他はスタイリスト私物みやざわ・ひお1994年4月24日生まれ、アメリカ出身。モデルとして活動をスタートし2017年俳優デビュー。ドラマ『ドラフトキング』(WOWOW)に出演中。主演映画『はざまに生きる、春』は5月26日公開。シャツ¥35,200(ウィーウィル TEL:03・6264・4445)Tシャツ(2枚入り)¥19,800(A.P.C./A.P.C. CUSTOMER SERVICE TEL:0120・500・990)パンツはスタイリスト私物台本、演出・鄭 義信さんチョン・ウィシン兵庫県出身。舞台『ザ・寺山』の脚本で岸田國士戯曲賞、映画『愛を乞うひと』で日本アカデミー賞最優秀脚本賞を受賞。近作に舞台『てなもんや三文オペラ』などがある。※『anan』2023年4月19日号より。写真・森山将人(TRIVAL)スタイリスト・渡邉圭祐(古田さん)庄 将司(宮沢さん)ヘア&メイク・NATSUKI TANAKA(古田さん)Taro Yoshida(W/宮沢さん)インタビュー、文・望月リサ(by anan編集部)
2023年04月13日古田新太、宮沢氷魚、伊藤沙莉らが出演する舞台「パラサイト」よりスポット映像が解禁された。本作は、アカデミー賞作品賞を受賞した『パラサイト 半地下の家族』を90年代の関西を舞台に描く日本版「パラサイト」。物語の中心となる一家の父親を古田新太。身分を偽り、高台の豪邸で家庭教師としてアルバイトを始める息子を宮沢氷魚、その妹を伊藤沙莉、家政婦として雇われる妻を、江口のりこが務める。今回解禁されたスポット映像では、ビジュアル撮影時の様子もとらえ、メインキャストそれぞれのソロカットにクローズアップ。どこかノワール感も漂う雰囲気たっぷりの映像に仕上がっている。本スポット映像はBunkamura、レプロエンタテインメント公式Youtubeチャンネルなどで展開される予定だ。COCOON PRODUCTION 2023「パラサイト」は6月5日(月)~7月2日(日)THEATER MILANO-Za、7月7日(金)~17日(月・祝)大阪・新歌舞伎座にて上演。(text:cinemacafe.net)
2023年04月11日韓国のTVドラマ、映画などの優秀作品を表彰する、栄誉ある総合芸術の祭典「第59回百想芸術大賞」のノミネート作品が発表。TV部門作品賞や演技賞には、Netflixで配信され日本でも話題となった女性主人公のヒットシリーズが多数ノミネートされた。また、映画部門作品賞にはパク・チャヌク監督による『別れる決心』、イ・ジョンジェ初監督作品である『ハント』(原題)、ペ・ドゥナ主演の『次のソヒ』(原題)などが選出。是枝裕和監督の『ベイビー・ブローカー』からは演技賞にソン・ガンホ、ペ・ドゥナ、IUがノミネートされた。TVドラマ部門主なノミネート作品賞「私の解放日誌」「ザ・グローリー~輝かしき復讐~」「私たちのブルース」「ウ・ヨンウ弁護士は天才肌」「シスターズ」「ウ・ヨンウ弁護士は天才肌」男性最優秀演技賞ソン・ソック「私の解放日誌」イ・ビョンホン「私たちのブルース」イ・ソンミン「財閥家の末息子~Reborn Rich~」チョン・ギョンホ「イルタ・スキャンダル ~恋は特訓コースで~」チェ・ミンシク「カジノ」チョン・ギョンホ「イルタ・スキャンダル ~恋は特訓コースで~」女性最優秀演技賞キム・ジウォン「私の解放日誌」キム・ヘス「シュルプ」パク・ウンビン「ウ・ヨンウ弁護士は天才肌」ソン・ヘギョ「ザ・グローリー~輝かしき復讐~」スジ「アンナ」キム・ヘス「シュルプ」男性助演賞カン・ギヨン「ウ・ヨンウ弁護士は天才肌」キム・ドヒョン「財閥家の末息子~Reborn Rich~」キム・ジュンハン「アンナ」パク・ソンフン「ザ・グローリー~輝かしき復讐~」チョ・ウジン「ナルコの神」カン・ギヨン「ウ・ヨンウ弁護士は天才肌」女性助演賞キム・シンロク「財閥家の末息子~Reborn Rich~」ヨム・ヘラン「ザ・グローリー~輝かしき復讐~」イ・エル「私の解放日誌」イム・ジヨン「ザ・グローリー~輝かしき復讐~」チョン・ウンチェ「アンナ」イム・ジヨン「ザ・グローリー~輝かしき復讐~」男性新人演技賞キム・ゴンウ「ザ・グローリー~輝かしき復讐~」キム・ミノ「新兵」(原題)ムン・サンミン「シュルプ」チュ・ジョンヒョク「ウ・ヨンウ弁護士は天才肌」ホン・ギョン「弱いヒーローClass1」(原題)ムン・サンミンのInstagramより女性新人演技賞キム・ヒアラ「ザ・グローリー~輝かしき復讐~」ノ・ユンソ「イルタ・スキャンダル ~恋は特訓コースで~」イ・ギョンソン「私の解放日誌」チュ・ヒョニョン「ウ・ヨンウ弁護士は天才肌」ハ・ユンギョン「ウ・ヨンウ弁護士は天才肌」ノ・ユンソのInstagramより映画部門主なノミネート作品賞『次のソヒ』(原題)『フクロウ』(原題)『ハンサン―龍の出現―』『ハント』(原題)『別れる決心』『ハンサン―龍の出現―』男性最優秀演技賞リュ・ジュンヨル『フクロウ』(原題)マ・ドンソク『犯罪都市 THE ROUNDUP』パク・ヘイル『別れる決心』ソン・ガンホ『ベイビー・ブローカー』チョン・ウソン『ハント』(原題)マ・ドンソク『犯罪都市 THE ROUNDUP』女性最優秀演技賞ペ・ドゥナ『次のソヒ』(原題)ヤン・マルボク『同じ下着を着るふたりの女』ヨム・ジョンア『人生は美しい』(原題)チョン・ドヨン『キル・ボクスン』タン・ウェイ『別れる決心』チョン・ドヨン『キル・ボクスン』男性助演賞カン・ギヨン『交渉』(原題)キム・ソンチョル『フクロウ』(原題)パク・ジファン『犯罪都市 THE ROUNDUP』ピョン・ヨハン『ハンサン―龍の出現―』イム・シワン『非常宣言』イム・シワン『非常宣言』女性助演賞パク・セワン『6/45』(原題)ペ・ドゥナ『ベイビー・ブローカー』アン・ウンジン『フクロウ』(原題)ヨム・ジョンア『宇宙+人』(原題)イ・ヨン『キル・ボクスン』ペ・ドゥナ『ベイビー・ブローカー』男性新人演技賞ノ・ジェウォン『ユン・シナが消えた』(原題)パク・ジニョン『聖なる復讐者』ピョン・ウソク『20世紀のキミ』ソ・イングク『オオカミ狩り』オン・ソンウ『人生は美しい』(原題)ソ・イングク『オオカミ狩り』女性新人演技賞コ・ユンジョン『ハント』(原題)キム・シウン『次のソヒ』(原題)キム・ヘユン『ブルドーザー少女』IU『ベイビー・ブローカー』ハ・ユンギョン『キョンアの娘』(原題)IU『ベイビー・ブローカー』「第59回百想芸術大賞」は4月28日(金)に開催される予定。(text:cinemacafe.net)■関連作品:【Netflix映画】ブライト 2017年12月22日よりNetflixにて全世界同時オンラインストリーミング【Netflix映画】マッドバウンド 哀しき友情 2017年11月17日よりNetflixにて全世界同時配信【Netflixオリジナルドラマ】オルタード・カーボン 2018年2月2日より全世界同時オンラインストリーミング2月2日(金)より全世界同時オンラインストリーミング【Netflix映画】レボリューション -米国議会に挑んだ女性たち-ベイビー・ブローカー 2022年6月24日よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国にて公開ⓒ 2022 ZIP CINEMA & CJ ENM Co., Ltd., ALL RIGHTS RESERVED犯罪都市 THE ROUNDUP 2022年11月3日よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国にて公開©ABO Entertainment Co.,Ltd. & BIGPUNCH PICTURES & HONG FILM & B.A.ENTERTAINMENT CORPORATION非常宣言 2023年1月6日より全国にて公開© 2022 showbox and MAGNUM9 ALL RIGHTS RESERVED.別れる決心 2023年2月17日よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国にて公開© 2022 CJ ENM Co., Ltd., MOHO FILM. ALL RIGHTS RESERVEDハンサン―龍の出現― 2023年3月17日よりシネマート新宿ほか全国にて公開©2022 LOTTE ENTERTAINMENT & BIGSTONE PICTURES CO.,LTD.ALL RIGHTS RESERVED.
2023年04月08日A24製作のヒューマンドラマ『ザ・ホエール』で第95回アカデミー賞主演男優賞を初受賞したブレンダン・フレイザーが4月6日、都内で来日記者会見を行い、受賞の喜びや本作に込めた思い、主演女優賞に輝いたミシェル・ヨーとの“再会”秘話などを語った。フレイザーが演じたのは、恋人を亡くしたショックから逃れるため、過食を繰り返してきた結果、体重が272キロになってしまったチャーリー。病状の悪化で自身の死期が近いと悟った彼は、離婚して以来音信不通だった娘との絆を取り戻そうとする。巨体のチャーリーを演じるにあたり、フレイザーは自身の体重増量に加え、特殊メイクとファットスーツを着用し、人気アクションスターだったかつての面影も一変。プライベートでの不幸が重なり、ハリウッドの表舞台から長らく遠ざかっていたフレイザーが、“生涯最高の演技”と称される熱演で、初ノミネートにして、オスカーを手にした。苦難の末、オスカーを手にし「今も驚いているし、興奮した気持ちを抑えられない」と語るフレイザーは、「まさか自分が、偉大な功績を収めた人々が集うアカデミー賞という場に招かれるとは想像していなかったし、とても光栄なこと」と感無量の面持ち。「すばらしい演技をした俳優ばかり。皆さんとオスカー像を分かち合ったような気持ちだった」とノミネートされた俳優陣への敬意を示した。役どころについては「彼にとっては手に入れるのが困難な愛と希望、共感を求めて、暗い場所から、光へと向かって進む人物。娘との関係を修復することが、唯一の贖罪なんだ。勇気がある人物だと思ってもらえば」とコメント。「僕にも3人の息子がいるから、気持ちはよく分かる。それにサミュエル・D・ハンターによる脚本は、実体験がもとになっていて、そこに真実があるから、脚本以上に何かを深堀りする必要もなかった。僕自身、チャーリーは大好きだから、彼に見合った演技ができればと思っていた」と共感に基づく役作りをふり返った。「ここまで自分のもろさを露わにした経験は初めて。『ザ・ホエール』のような正直に、誠実に、リアルな人間関係を見つめる思慮深い作品は非常に重要だと思うし、いまふり返ると、コロナ禍で製作された映画とは、どれも特別なものだと言える。大胆でリスクもある題材だから、不安もあったが、だからこそ成長できるし、それこそがアートなんだと思う」フレイザーの来日は、『ハムナプトラ3 呪われた皇帝の秘宝』のプロモーション以来15年ぶりで、当時一緒に来日したのが共演者のミシェル・ヨーだった。ご存知の通り、ミシェル・ヨーは第95回アカデミー賞において、『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』で主演女優賞を受賞している。「意義深い形で久しぶりに再会できて、うれしかった。『女性だから』とカテゴライズしたがる業界に対し、立ち向かい、甘んじるべきではないと宣言できる勇気の持ち主だ。努力と才能で、道を切り開くことが、いかに偉大なことか。僕も独創的でクリエイティブな“エブエブ”が大好きだよ。キー・ホイ・クァンとも30年ぶりの再会だ。『僕ら、まだここにいるね』って称え合ったよ」。フレイザーとキー・ホイ・クァンは、1992年に製作された『原始のマン』で共演している。『ザ・ホエール』は4月7日(金)よりTOHOシネマズシャンテほか全国にて公開。(text:cinemacafe.net)■関連作品:ザ・ホエール 2023年が4月7日、 TOHO シネマズ シャンテほか全国公開© 2022 Palouse Rights LLC. All Rights Reserved.
2023年04月06日心身のバランスを崩してしばらくハリウッドから遠ざかっていたブレンダン・フレイザーが、『ザ・ホエール』で本年度米アカデミー主演男優賞を受賞し、見事に復活した。本作は「メイクアップ&ヘアスタイリング」部門も受賞。『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』が最多7部門を独占という“エブエブ旋風”が吹き荒れた今年のオスカーレースの、もうひとつの話題作だ。映画は4月7日から日本公開される。『ザ・ホエール』この映画の主人公チャーリーは、オンラインで授業をする40代の大学教員。現実逃避のように引きこもりの生活を送っている。体重272キロ、重度の肥満症だ。暴食の果てにこの姿になった。血圧は238/134、うっ血性心不全で、いつ命をおとしてもおかしくない状況。その彼が、いよいよ死を予感し、過ごした最期の5日間を描く。『ハムナプトラ』シリーズなどで颯爽としたアクション俳優のイメージがあるブレンダン・フレイザーが、まるで“ジャバ・ザ・ハット”のような存在に扮してどんな演技をみせてくれるか、そこが大きな見どころ。彼の姿を作り上げた特殊メイク・チームの努力と技もすさまじい。伊藤さとりさんの水先案内をもっと見る()(C)2022 Palouse Rights LLC. All Rights Reserved.
2023年04月03日第46回日本アカデミー賞にて作品賞ほか最多8部門で最優秀賞を受賞した『ある男』のBlu-ray&DVD・デジタル配信のリリースが6月7日(水)に決定した。本作は、芥川賞作家・平野啓一郎(『日蝕』『マチネの終わりに』)の最高傑作との誉れ高い同名小説を原作に、映画『愚行録』『蜜蜂と遠雷』で世界が注目する石川慶監督がメガホンをとった。主演に妻夫木聡、助演に安藤サクラ、窪田正孝という、それぞれ映画単独主演級の名優ほか、豪華共演陣も集結し、日本映画界屈指のオールスターキャストによる心揺さぶる演技の応酬が「愛」と「過去」をめぐる衝撃のヒューマンミステリーであり感動作に結実した。Blu-ray特別版は、格調高いスリーブケースに包まれた数量限定生産の2枚組。未公開シーン入りメイキング、イベント映像集など映像特典が満載、キャスト陣、石川監督ほかスタッフ陣の撮影の裏側での真摯な姿と共に、映画の芳醇かつ深遠な世界をより細部まで収めた充実の内容。この度、リリースに合わせて妻夫木さん、安藤さん、窪田さんからの告知コメント映像も到着している。『ある男』は6月7日(水)よりBlu-ray&DVD発売、デジタル配信開始。(text:cinemacafe.net)■関連作品:ある男 2022年11月18日より全国にて公開©2022「ある男」製作委員会
2023年03月24日父親役を演じたポール・メスカルがアカデミー賞主演男優賞ノミネートを果たした『aftersun/アフターサン』。この度、監督・脚本を務め、英国アカデミー賞英国新人賞受賞に選ばれたシャーロット・ウェルズの初来日が決定、メイキング写真も解禁となった。11歳のソフィが父親とふたりきりで過ごした夏休みを、その20年後、父親と同じ年齢になった彼女の視点で綴る本作。2022年カンヌ国際映画祭・批評家週間での上映を皮切りに評判を呼び、話題作を次々と手掛けるスタジオ「A24」が北米配給権を獲得。昨年末には複数の海外メディアが<ベストムービー>に挙げ、オバマ元大統領のお気に入り映画にも選出された。若き父親と娘のひと夏の記憶を辿る本作の物語は、よく兄妹に間違えられたというシャーロット・ウェルズ監督と父が昔、トルコで2週間ほどともに過ごした実際の夏休みの思い出がベースとなっている。初めてのダイビング、古代遺跡との遭遇、泥風呂、大空いっぱいに広がったパラグライダーといった、そのときに感じた楽しさや驚きをフィルムの中に焼きつけている。監督は、はじめは単に父と娘が休暇を一緒に過ごす分かりやすい物語を思い描いていたが、アイディアを構想しながら古いアルバムをパラパラとめくり、自身の思春期や両親、特に父との思い出をふり返っていくプロセスを経ることで脚本に回顧的な視点を与え、次第にパーソナルなものへと変化していったそう。そんな彼女の脚本に、第89回アカデミー賞作品賞など3冠に輝いた『ムーンライト』のバリー・ジェンキンスが惚れ込み、自らプロデューサーに。テルライド映画祭での本作上映後Q&Aでは「もう6回も観ているのに、毎回号泣しすぎて壊れそうなくらいだ」と語るほど。また、本年度第95回アカデミー賞で作品賞・監督賞・脚本賞・主演女優賞ほか最多7冠を獲得し話題の『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』の“ダニエルズ”監督は「ビデオカメラで撮影された人生の断片。僕は長い時間、あの最後の瞬間について考えることになるだろう。ブラボー!」と絶賛。A24作品『フェアウェル』監督・脚本のルル・ワンも「なぜ映画が好きなのかを思い出させてくれるような作品」とTwitterに寄せている。さらに、解禁されたメイキング写真はウェルズ監督とポール・メスカル、フランキー・コリオがそれぞれ写るもので、ロケ地であるトルコのイギリス人観光客向けリゾート地・オルデニズでの撮影現場の様子を捉えている。錚々たる顔ぶれが並ぶ中、本作でアカデミー賞主演男優賞に堂々初ノミネートを果たしたメスカルが、「彼女は自分の脚本とまわりの人たちの仕事を全面的に信用して、一からサポートしてくれるんです。俳優へのアプローチもすごく丁寧でした」と語るように、監督が自然体で俳優と向き合う和やかな現場だったことが伝わってくる。4月の監督来日時には、都内で観客とのQ&A付き上映イベントの実施が予定されている。『aftersun/アフターサン』は5月26日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿ピカデリーほか全国にて公開。(text:cinemacafe.net)■関連作品:aftersun/アフターサン 2023年5月26日よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿ピカデリーほか全国にて公開© Turkish Riviera Run Club Limited, British Broadcasting Corporation, The British Film Institute & Tango 2022
2023年03月22日ロシア政府の暗部に切り込む緊迫のドキュメンタリーとして、第95回アカデミー賞長編ドキュメンタリー映画賞を受賞した『ナワリヌイ』が、Bunkamura ル・シネマなどにて凱旋上映が決定した。ロシアの弁護士で政治活動家のアレクセイ・ナワリヌイが、自身の暗殺未遂事件の影に潜む勢力を自ら暴いていく本作。アカデミー賞の授賞式では、舞台上にダニエル・ロアー監督をはじめ、ナワリヌイ氏と共に暗殺未遂事件の実行犯を暴いた調査チームの主要メンバーであるクリスト・グロゼフ氏やマリア・ぺヴチク氏、そして映画でもナワリヌイ氏を支えていた妻のユリヤ氏と娘のダーシャさん・息子のザハールさんも登壇。受賞の喜びを分かち合うとともに、スピーチでは現在収監されているナワリヌイ氏の解放を力強く訴えた。ロアー監督は「ロシア反体制派のリーダー、アレクセイ・ナワリヌイ氏は今も独房にいます。プーチン大統領による不当なウクライナ戦争の犠牲になっています。アレクセイ、あなたの私たち皆に向けたメッセージを世界は忘れていません。独裁者や権威主義がどこで頭をもたげようとも、反対することを恐れてはいけません」とスピーチ。続いて妻ユリヤ氏が「私の夫は真実を語っただけで、民主主義を守っただけで刑務所にいます。アレクセイ、私はあなたが自由の身になる日を夢見ています。そして私たちの国が自由になることを。愛しています。どうか強くあってください」と語った。この授賞式での様子も相まって、SNS上では劇場公開時に見逃した映画ファンからの再上映を望む声が続出。現在、3月17日(金)から京都シネマでの再上映が1週間限定で行われているのに続き、東京でも3月24日(金)より急きょBunkamuraル・シネマでの凱旋上映が決定。そのほかの地域でも、配給会社と劇場の間で上映の調整が進んでおり、今後もドキュメンタリー作品としては異例の再上映が多くの都市で行われることになりそうだ。ロシアによるウクライナ侵攻から先月で1年が過ぎ、未だ終戦の兆しもないまま犠牲者は日々増え続けている。ナワリヌイ氏もロシアで最も厳重といわれる刑務所に移送され、独房に収容されたまま700日以上が経つが、なおもSNSを通してプーチン大統領とロシア政府を批判し、ウクライナ侵攻の不当さを訴え続けている。本作はアカデミー賞ほか、英国アカデミー賞の最優秀ドキュメンタリー賞、全米プロデューサー協会賞の最優秀ドキュメンタリー賞、シネマ・アイ・オナーズの観客賞と製作者賞も受賞している。『ナワリヌイ』は3月24日(金)よりBunkamura ル・シネマほかにて公開。(text:cinemacafe.net)■関連作品:ナワリヌイ 2022年6月17日より新宿ピカデリー、渋谷シネクイント、シネ・リーブル池袋ほか全国にて公開© 2022 Cable News Network, Inc. A WarnerMedia Company All Rights Reserved. Country of first publication United States of America.
2023年03月21日本年度アカデミー賞脚色賞を受賞、作品賞にノミネートも果たした『ウーマン・トーキング 私たちの選択』から日本版予告編が解禁となった。本作は、2005年から2009年にボリビアで起きた実際の事件を基にした同名ベストセラー小説の映画化。サラ・ポーリー監督が自ら脚色を手掛け、本年度のアカデミー賞で作品賞、脚色賞の2部門にノミネート。見事、脚色賞で初のオスカーを獲得した。予告編映像は、「目が覚めたら アザや傷が出来ていた」という声とともに、起きあがるオーナ(ルーニー・マーラ)の姿から始まる。小さな村の女性たちに起こっていた悪夢の朝だ。次に映し出されるのは、緑豊かな村で笑顔を浮かべて駆け回る子どもたち。そして、それとは対照的に、納屋で自らの未来と尊厳、そして子どもたちのために語り合う女性たち。赦すか、闘うか、それとも去るか。男たちが村にいない2日間がタイムリミットとなる。スカーフェイス・ヤンツ(フランシス・マクドーマンド)は「“赦し”は信仰」だと主張するが、男たちへ激しい怒りを抱くサロメ(クレア・フォイ)は「私は赦せない 決して赦さない」と真っ向から対立する。それぞれの女性たちが抱える、怒り、悲しみ、悔しさ、そして愛が交わされる話し合い。「未来へ希望を抱きたい」「子どもたちを守らないと」という決意と、「こんなことして赦されるの?」という葛藤にも触れられている。なお、本映像には、『ミッション:インポッシブル3』『スター・ウォーズ』シリーズなどの監督を務めたハリウッド稀代のヒットメイカー、J・J・エイブラムスからの「非常に力強く、心揺さぶる、感動的な映画」というコメントも寄せられている。『ウーマン・トーキング 私たちの選択』は6月2日(金)よりTOHOシネマズ シャンテ、渋谷ホワイトシネクイントほか全国にて公開。(text:cinemacafe.net)■関連作品:ウーマン・トーキング 私たちの選択 6月2日TOHO シネマズ シャンテ、渋谷ホワイトシネクイントほか全国公開© 2022 Orion Releasing LLC. All rights reserved.
2023年03月21日俳優の妻夫木聡が20日、第46回日本アカデミー賞8冠を記念して都内で行われた映画『ある男』(公開中)の舞台挨拶に出席した。累計30万部を超える平野啓一郎氏のベストセラー小説『ある男』を映画化した同作。妻夫木が主演を務めたほか、安藤サクラ、窪田正孝、清野菜名、柄本明ら日本を代表する俳優陣が集結した、「愛」と「過去」をめぐる感動のヒューマンミステリーだ。10日に行われた第46回日本アカデミー賞では、妻夫木の最優秀主演男優賞をはじめ、最優秀作品賞、最優秀監督賞、最優秀脚本賞、最優秀助演男優賞、最優秀助演女優賞、最優秀録音賞、最優秀編集賞で8冠に輝いた。妻夫木は、日本アカデミー賞の受賞者に贈られるブロンズを手に登場。集まったファンから盛大な拍手と共に祝福の声が上がると、「信じられなかった。頭が真っ白になっちゃって、今でも壇上で何を話したかはっきり覚えていない」と受賞の瞬間を振り返る。また、自身の受賞より石川慶監督の受賞に感極まってしまったそうで「自分のときは一切泣かなかったのに、監督賞のときは号泣しちゃって……。あまりにも泣いているから、サクラちゃんが一切僕の方を見ようとしてなかったですね(笑)」と授賞式の裏話を話し、笑いを誘った。石川監督の手掛けたショートフィルムを観て、その才能に惚れ込み、映画『愚行録』、ドラマW『イノセント・デイズ』とともに作品を作り上げてきた妻夫木。「ずっと石川監督の才能を近くで見てきたという思いがあったので、皆さんにはっきりと認められた瞬間に立ち会えたということがすごく嬉しかった」と涙に込められた思いを明かした。■石川慶監督コメント全文凱旋上映にお越しのみなさま、今日はお越しいただきましてありがとうございます! 公開時に、細くても、長く愛される映画になってくれればと言ったのを覚えていますが、まさにその望みが叶った気がしています。今日は直接みなさんとお会いできないのが残念で仕方ないですが、秋田さん、会場の写真送ってください! そして妻夫木さんお忙しい中ありがとうございます。授賞式の後の打ち上げも楽しかったですね。今、タイのバンコクですが、こちらの人たちからもたくさんのおめでとうをいただいてます。『ある男』、世界中もっと多くの人たちに届きますように。そして、この熱気の冷めないうちにぜひ、次の企画を!
2023年03月20日本年度第95回アカデミー賞、作品賞を含む“最多”7部門受賞の偉業を達成した『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』から、抱腹絶倒のNGシーン集が到着した。公開初週の洋画興収第1位を獲得、「マルチバース」と「カンフー」が融合した、かつてない異色SFアクション大作であり、まさかの超感動作として先日のアカデミー賞授賞式でもその圧倒的な無双ぶりを見せつけた本作。SNSでも「年間ベストどころか映画史に残る超絶ミラクル面白大傑作」「最高の最高の最高の最高の最高でした」という絶賛評から「開始5分からエンドロールまで涙」「奇天烈な映画なのにびっくりするくらい涙出てた」など、笑いと涙に溢れたカオスな感想が溢れかえり、空前の“エブエブ旋風”を巻き起こしている。コインランドリー店を営むフツーの主婦ながら、突如全宇宙を救う宿命を背負った主人公・エヴリンを演じ、約40年のキャリア史上初となるアカデミー賞主演女優賞に輝いたミシェル・ヨー。解禁された映像では、謎のダンスを踊り狂ったり、真面目なシーンで大ゲップをかます往年の名優ジェームズ・ホンに「最悪!笑」と叫んだかと思えば、自身も衝撃の変顔を披露するなど、最高にカオスなキャラを楽しむ彼女の様子が映し出されている。実は撮影当初、そんなミシェルの姿を見たアシスタントから、こっぴどく叱られていたというダニエルズ監督。「撮影が始まってからの数日間、アシスタントはすごく怒っていたんだ。“ミシェルをそんな風に見せたらダメ。そんなことしないで!あのカツラはやめて!ミシェルには白髪なんてない!”なんてまくし立てていたよ…(笑)」と裏話を告白しつつ、誰よりも撮影を楽しむ彼らの情熱に、ミシェルはもちろん全てのキャスト・スタッフが引き込まれていたことが伺える。また、エヴリンを支える夫・ウェイモンドを演じて助演男優賞を受賞したキー・ホイ・クァンが、うっかり役名を忘れ、撮影中に「ミシェル!」と本名を呼んでしまうお茶目なNGシーンも。脚本段階ではミシェルの役名はエヴリンではなく、本名のミシェルが使われていたそうで、脚本を読み込んでいた真面目なキーは撮影中に何度もNGを出してしまったようだ。そのほか、助演女優賞を獲得したジェイミー・リー・カーティスらとの注目のアクションシーンの舞台裏や、ファンの間で話題となっている“ソーセージの世界”や“石の世界”、そして日本でも「glee/グリー」で人気のラカクーニ(アライグマ)を頭に乗せたハリー・シャム・Jr.のシュールすぎる撮影シーンまで見どころ盛りだくさん。カオス極まりない現場の中で、まるで家族のように本作を創り上げたスタッフ&キャストの絆が感じられる映像となっている。『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』は全国にて公開中。(text:cinemacafe.net)■関連作品:エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス 2023年3月3日よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国にて公開© 2022 A24 Distribution, LLC. All Rights Reserved.
2023年03月17日