いよいよ夏本番!しかし、海外に出かけられる見通しも立たない現在、せめて海外旅行気分だけでも味わいたい…そんなときにピッタリの“映画館で海外旅行気分”に浸れる、この夏の注目作をご紹介。それぞれの作品から見えてくる“旅”が持つ魅力を、大きなスクリーンで堪能してみては?『ポルトガル、夏の終わり』イザベル・ユペールと世界遺産へイギリスの詩人バイロン卿に“この世のエデン”と称されたポルトガルの世界遺産の町シントラ。深い森と美しい海に囲まれ、歴史ある城跡が点在し町全体が世界遺産として認定されている神秘的な町だ。自らの余命があまり長くないと悟ったヨーロッパを代表する女優フランキー(イザベル・ユペール)は、バケーションと称してシントラに家族や親友を呼び寄せる。それは自分の亡き後、愛する者たちのこれからの人生を少しだけ演出しようと目論んでのこと。しかし、家族たちはそれぞれに問題を抱えており、フランキーの思い描いていた筋書き通りにはいかない。早朝から日が沈む夕景が映し出されるまでという、ごく短い時間で繰り広げられる物語を通じて、フランキーとその家族や大切な人の、決して止まることのない彼らの人生の姿がありありと浮かび上がってくる。ユペールのラブコールを受け、この物語を書きおろしたアイラ・サックス監督は、旅先での思いがけないトラブルや出会いなども交えながら、フランキーと彼女の身近な人たちが繰り広げる人間模様とこの町が持つ構造を見事に融合させていく。ユペールは、「アイラ・サックス監督にとって、シントラでの撮影が重要であることは明らかだった。一方で、シントラを絵葉書のようには描かず、むしろ重要な登場人物のひとりに見立てて撮影した」と振り返る。美しく、感動に満ち、劇的でもあるシントラは、霧やその特異な気候も手伝い、観る者に、神秘と驚異と暴力の要素をたっぷりと感じさせてくれる。登場人物全員が初めて一堂に会し、ユーラシア大陸の西の果ての広大な海を全員で眺めるクライマックスシーンは、圧巻でありながら観る者に忘れがたい感動を与えてくれるシーン。8月14日(金)よりBunkamuraル・シネマ、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国にて順次公開。『ぶあいそうな手紙』ブラジルの“陽気な港町”へブラジル南部、ポルトアレグレの街を舞台に繰り広げられる心温まる物語。独居老人のエルネストのもとに1通の手紙が届く。差出人はかつて住んでいたウルグアイ時代の友人の妻だったが、老境を迎えほとんど目が見えなくなっていたエルネストは、偶然知り合った女性ビアに手紙を読んでもらい、返事を代筆してくれるように頼む。こうしてビアがエルネストの部屋に出入りするようになるが、それは、エルネストの人生を変える始まりだった――。ポルトアレグレはブラジルを代表する港町で、“陽気な港”という意味を持つ。そこに慎ましく暮らす人々の営みや街の日常の風景を丁寧に描き出し、観光地を訪ねる“パッケージツアー”とは一味違った街歩きの旅気分を味わえるはず。映画史に残るキューバ映画の傑作『苺とチョコレート』の原作小説で知られる作家セネル・パスが脚本に協力し、ブラジル音楽のレジェンド、カエターノ・ヴェローゾの名曲「ドレス一枚と愛ひとつ」が物語を彩っていることにも注目。シネスイッチ銀座にて公開中、7月31日(金)よりシネ・リーブル梅田ほか全国にて順次公開。『グランド・ジャーニー』ノルウェー~フランス、大空を飛ぶ冒険ヨーロッパの大空が舞台となる本作は、ノルウェーからフランスへと国境を越えて大空を野鳥たちと翔け、“人間がともに空を飛び、渡り鳥に“渡り”を教える”という実話に基づき描かれた父子の冒険を、ほかに類をみない映像美で映し出す感動巨編。気象学者クリスチャンは、超軽量飛行機を使って渡り鳥に安全なルートを教える、という誰もが無茶だと呆れるプロジェクトに夢中。思春期の息子トマは、変わり者の父親と大自然の中で過ごすバカンスなど悪夢だと感じていたが、ある出来事をきっかけにそのプロジェクトに協力することに。父子と渡り鳥たちの驚くべき冒険が始まる――。まるで空を飛んでいるかのような浮遊感を観客にもたらす鳥たちと大空を飛翔するシーンは、劇中にも登場する超軽量飛行機(ULM)を用い撮影。人生で一度はこんな経験をしてみたいと誰もが夢見るであろうその唯一無二の空の旅は、環境問題に熱心なフランスの国民にも熱を持って受け入れられ、2019年のフランス映画興行収入TOP10入りを記録した。新宿バルト9ほか全国にて公開中。日本各地を巡るなら…『もったいないキッチン』加えて、日本各地を巡るユニークなテーマの作品もご紹介。『もったいないキッチン』は日本が大切にしてきた“もったいない”に魅せられてオーストリアからやって来たフードアクティビストである監督が、キッチンカーで4週間かけて福島から鹿児島まで1,600kmを旅する様子を捉えたドキュメンタリー。もったいない精神を大切にして来たはずの日本だが、食品ロス(廃棄率)は実は世界トップクラスという現実がある。監督は旅のパートナーとともにコンビニや一般家庭に突撃し、道中で出会った日本人シェフや生産者とともに、捨てられてしまう食材を次々救う“もったいないキッチン”を各地でオープンさせていく。彼らが日本を旅して発見した、持続可能な未来のヒントは目からウロコとなるはず。8月8日(土)よりシネスイッチ銀座、アップリンク吉祥寺ほか全国にて順次公開。(text:cinemacafe.net)■関連作品:もったいないキッチン 2020年8月8日よりシネスイッチ銀座、アップリンク吉祥寺ほか全国にて順次公開©UNITED PEOPLE©Macky Kawanaグランド・ジャーニー 2020年7月23日より全国にて公開©2019 SND, tous droits réservés.ポルトガル、夏の終わり 2020年8月14日よりBunkamuraル・シネマ、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国にて公開© 2018 SBS PRODUCTIONS / O SOM E A FÚRIA© 2018 Photo Guy Ferrandis / SBS Productionsぶあいそうな手紙 2020年7月18日よりシネスイッチ銀座ほか全国にて公開
2020年07月26日おとな向け映画ガイド今週は、ド迫力!アクションと、ハートウォーミングな2本をオススメ。ぴあ編集部 坂口英明20/7/12(日)イラストレーション:高松啓二今週末に公開の新作は21本(ライブビューイング、映画祭企画を除く)。うち全国100スクリーン以上で拡大公開される作品が『今日から俺は!! 劇場版』の1本、ミニシアター系の作品が20本です。その中から、おとながグッとくる3本をご紹介します。『悪人伝』マ・ドンソク! 今、世界の映画界で、いちばん華のある悪漢スターではないでしょうか。ぶ厚い胸板、豪腕からくり出す強烈パンチ、ワルだけどちょっぴり愛嬌もあるマスク。彼の登場シーンは、まるでゴジラのような地響きがします。『新感染 ファイナル・エクスプレス』で人気をさらい、その後毎年4、5本の映画に出演してきましたが、これが決定打です。ヤクザのボスが何者かに襲われ、刃物でめった刺しにされるのですが、奇跡的に、というか人並外れた身体能力でなんとか助かります。当初は敵対する組の仕業と疑いますが、実は、襲ったのは世の中を騒がしている無差別殺人犯で、ボスは運悪く遭遇した被害者、貴重な目撃者だったのです。なめた真似をしやがって! とヤクザのプライドをかけ、組織を挙げての猛烈な犯人探しをはじめます。このボス役がマ・ドンソク。もうぴったりです。決して好人物ではありません。全身タトゥーの超コワモテ。冒頭から肉弾戦の連続です。蛇の道は蛇、といいます。ヤクザのノウハウを活かした独自の「捜査」を繰り広げ、犯人を追うあらくれ刑事(キム・ムヨル)とだってタッグを組みます。ヤクザ=警察の、化かし合いだらけの共同作戦はどこかユーモラスでもあります。韓国本国では観客動員300万人の大ヒット作。すでに、あのシルヴェスター・スタローンがハリウッドでリメイクを決定しています。マ・ドンソク、カメオ出演してくれないかな。『ブリット=マリーの幸せなひとりだち』主人公のブリット=マリーは専業主婦。女性の就業率が80%を越えるというスウェーデンでは少数派です。63歳。結婚して40年、子供はいません。炊事、洗濯、掃除の日々。キッチンのカトラリーの中が整然としていないと気持ち悪い、毎日の家事をTO DOリストにしてそのチェックが楽しみ、という、どちらかというと仏頂面の堅物キャラクターです。そんな彼女に訪れた転機。実直だと信じていたビジネスマンの夫に、あろうことか、長年の愛人がいたのです。彼女は傷つきます。自分のこれまで生きてきた誇りや証し、それは何だったのか?そして、ひとりで生きようと思い立ちます。さて、ここからが、本番。ブリット=マリーの強みは、空気を読めないこと、忖度をしないことです。特に技能もないのですが、"ハローワーク”の係の女性にずんずん近づき、田舎町の「ユースセンター管理人」兼「少年少女サッカー・チームのコーチ」という仕事を手にします。サッカーなんて興味のかけらもなかった彼女。相手は移民の子どもたちがほとんど、町の人たちも最初は冷淡。そんなアウェー環境のなかで、堅物なキャラのまま、いかにして、独り立ちし、ハッピーなリスタートができるか。原作は大人気作家フレドリック・バックマンの『ブリット=マリーはここにいた』。ラストでこの原作タイトルの深さが生きてきます。面倒なおばさんが、だんだん愛らしくみえてくる、ハートウォーミングな映画です。ブリット=マリーを演じたのは、スウェーデンの名優、ペルニラ・アウグストです。どこかで見た顔だと思ったら、あの『スター・ウォーズ ファントム・メナス』のアナキンの母親ではないですか。『ぶあいそうな手紙』こちらはブラジルが舞台。78歳の、ちょっと気難しいおじいさんと自由気ままな23歳の女の子の、風変わりな関係と、手紙をめぐるお話です。エルネストは年金暮らしの独居老人。サンパウロに住む息子は、家を売って一緒に住もうといいますが、彼はこの思い出がつまった住まいで本やレコードに囲まれて残りの人生を過ごすつもりです。悩みの種は視力がおち、ほとんど字も読めないこと。そんなある日、故国ウルグアイに住む親友の妻ルシアから、友の死を伝える手紙が届きます。ちょっとしたトラブルが元で知り合った若い娘ビアに手紙を読んでもらい、ルシアとの文通が始まります。返事の書き出しは「拝啓」なんてぶあいそうな文言でなく「親愛なるルシア」がいいとか、ビアのアドバイスで、エルネストの手紙は次第に恋する男のものに変わっていきます。頑固親父ですが、文学の教養もあり、音楽の趣味もよく、詩を諳んずるエルネスト。若いビアと付き合いだしてからどんどん若やいでいき、ちょっと不良の彼女も素直さを取り戻していきます。そして……。ブラジル音楽のレジェンド、カエターノ・ヴェローゾの『ドレス一枚と愛ひとつ』を挿入曲に、古い港町を舞台に展開する、ジジイmeetsガールのロマンチック・ストーリーです。首都圏は、7/18(土)からシネスイッチ銀座で公開。中部は、7/31(金)から伏見ミリオン座で公開。関西は、7/31(金)からシネ・リーブル梅田他で公開。
2020年07月12日サンパウロ国際映画祭で批評家賞、プンタデルエステ国際映画祭では観客賞と最優秀男優賞を受賞したブラジル映画『ぶあいそうな手紙』(原題:Aos Olhos de Ernesto)がこの夏、日本でも公開予定。この度、ユーモラスな本作の物語が少し覗ける予告編と場面写真がいち早くシネマカフェに到着した。ラテンアメリカ映画史に残るキューバの名作『苺とチョコレート』の原作者が協力した脚本、東京国際映画祭グランプリのウルグアイ映画の主演俳優、ブラジル音楽のレジェンドの名曲が揃った本作。今回到着した映像では、視力を失いつつある独居老人エルネストが、隣人ハビエルとグルコース値を自慢しあいながらチェスをするユーモラスなシーンからスタート。また、茶風林の温かくてどこかユーモラスなナレーションと共に、舞台となるブラジル南部・ポルトアレグレの街並みや、ラテンアメリカらしい音楽が魅力的に登場する。そして物語はエルネストのもとに一通の手紙が届き、23歳のブラジル娘ビアに“手紙の代読と代筆”を頼むことから、その後の展開が気になる仕上がりとなっている。また予告編には使用されていないが、ブラジル音楽のレジェンド、カエターノ・ヴェローゾがアルバム「粋な男」に収録した名曲「ドレス一枚と愛ひとつ」にも注目だ。『ぶあいそうな手紙』は7月、シネスイッチ銀座ほか全国にて順次公開予定。(cinemacafe.net)
2020年05月21日映画監督ウォン・カーウァイの特集上映が、2018年3月16日(金)まで東京・渋谷のBunkamura ル・シネマで開催される。1988年に監督デビュー、94年の『恋する惑星』が世界中で絶賛されて大ヒットを記録したことで一躍スターダムにのし上がったウォン・カーウァイ。ラテン・アメリカ文学への憧憬がもたらす独特の浮遊感とロマンティックなセリフ、一貫した美意識が感じられる撮影・美術・衣裳、そして意表を突く選曲センス。観る者を虜にする名作の数々で、今もなお新たなファンを生み出している名匠だ。2017年6月にも同所でカーウァイの特集上映が開催されたが、今回は映画『欲望の翼 デジタルリマスター版』の上映を記念して、英BBCが2016年に発表した「21世紀の名作映画トップ100」リストで第2位に輝いた名作『花様年華』、フランク・ザッパらの偉大なミュージシャンが物語を彩る『ブエノスアイレス』の2作品を再び上映する。また、『欲望の翼 デジタルリマスター版』と特集上映がともに好評を博していることを受けて、追加上映が決定。トニー・レオン主演のラブストーリー『恋する惑星』と切ない恋物語の『天使の涙』も上映される。その類まれなビジュアルセンスからカーウァイ監督はファッション界へも大きな影響を与えており、ドキュメンタリー映画『メットガラ ドレスをまとった美術館』では、本編中にウォン・カーウァイ本人が登場するほか、ファッション・デザイナーのジャン=ポール・ゴルチエが、今回上映される『花様年華』から受けた影響を語るシーンも収められている。再びスクリーンで出会う人はもちろん、はじめて作品に触れる人も、この機会に劇場の大スクリーンでその世界観を堪能してみてはいかがだろう。【開催概要】『欲望の翼 デジタルリマスター版』公開記念 <ウォン・カーウァイ特集>会場:Bunkamura ル・シネマ住所:東京都渋谷区道玄坂 2-24-1 Bunkamura 6F料金:1,200円均一 (学生は1,000円)※価格は全て税込。上映作品:■『ブエノスアイレス』2月17日(土)〜2月23日(金)19:40〜、2月24日(土)〜3月2日(金) 10:30〜■『花様年華』2月24日(土)~3月2日(金) 19:00~、3月10日(土)~3月16日(金) 10:10~■『天使の涙』3月3日(土)~3月9日(金) 17:10~■『恋する惑星』3月10日(土)~3月16日(金) 17:10~<上映作品/あらすじ>■『ブエノスアイレス』激しく愛し合いながら、荒野のハイウェイで突然の別離を迎える恋人たち。その痛みを振り切るように仕事に熱中する男の元に、傷付いた恋人が帰ってくる。閉ざされていた心が通い合う瞬間、柔らかな光が至福の時を包む。しかしやがて二人を襲う癒しがたい渇き。愛するほどに傷つき、傷つくほどに求め合う魂の彷徨の中で、男はひとりの青年に出会い、再生への道を歩き始める。本作はカンヌ国際映画祭の最優秀監督賞を受賞。2017年のアカデミー賞作品賞に輝いた『ムーンライト』の監督も本作からの影響を語る傑作。フランク・ザッパ、アストル・ピアソラ、カエターノ・ヴェローゾら天才たちの音楽も映画を彩る。■『花様年華』1962年、香港。新聞社の編集者であるチャウと、商社で秘書として働くチャン。二人は同じアパートに同じ日に引越してきて、隣人になる。やがて二人は、互いの伴侶が不倫関係にあることに気づき、次第に時間を共有するように。誰にも気づかれないよう、慎重に会っていた二人。家庭を持つ貞淑な男と女は戸惑いつつも、強く惹かれ合っていくのだった。誰にも言えない秘密を包み込む紫煙、ナット・キング・コールのバラッド、そしてなんといってもチャイナドレスの美しさ──今作でトニー・レオンがカンヌ国際映画祭最優秀男優賞を、そして撮影と美術/衣裳が評価され高等技術院賞を受賞。英BBCが2016年に発表した「21世紀の名作映画トップ100」リストで、あらゆる名作を差し置いて第2位に輝いた、永遠の愛の物語。■『天使の涙』殺し屋とパートナーのエージェントは、仕事以外では顔を合わせない。エージェントは殺し屋に対して密かな恋心を抱いていたが、ある日、殺し屋は突然姿を消してしまう。その後、殺し屋はかつて行きずりの関係にあった金髪の女と出会うが、彼女の気持ちに応えることなく、彼は再び彼女の元から去っていく…。一方、エージェントが住むマンションの管理人の息子モウは、夜な夜な他人の店に入り込んで勝手な商売を楽しむ日々を送っている。そんなある日、未だ失恋の傷が癒えない女に恋をするが…。『恋する惑星』で予定していたエピソードをもとに作り上げたもうひとつの恋物語。■『恋する惑星』彼女にふられた警官223番は、彼女のことが忘れられず、自分の誕生日に賞味期限を迎えるパイナップルの缶詰を買い続けている。金髪の女性に恋をしてみるが、麻薬の運び屋として取引に失敗した彼女もまた疲れ果て、そっけない。どん底にいる2人は、行きずりの一夜を過ごす。同じころ、ハンバーガー・ショップの新入り店員フェイは、夜食を買いに来た警官633番と出会う。淡い恋心を抱いた彼女は、ある日偶然手に入れた彼のルーム・キーを利用して勝手に部屋の模様替えを始めて…。クランベリーズの「ドリームス」のカバー曲のメロディとともに、ウォン・カーウァイの名を知らしめた出世作。
2017年05月14日