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仲道郁代は、高い技術と美しい音色、哲学的思考をもって楽曲に向かい、常に高みに向かって挑戦し続けるピアニストである。そんな彼女が自身の演奏活動40周年と、特に敬愛し情熱をもって取り組んできた作曲家であるベートーヴェンの没後200年が重なる2027年に向けて行っている「仲道郁代 The Road to 2027リサイタル・シリーズ」が6月2日(日)に開催される。「今回は、音の響きの中に“さめざめと泣き続けたくなるような夢”を聴いているようなプログラムです。タイトルにある“夢”というのは、理想かもしれませんし、どこか永遠の世界や焦がれてやまない故郷、あるいは永遠の世界かもしれません。“何処へ”とは、場所を指すかもしれませんし、探し求めるという行為とも言えます。二つの言葉を照らし合わせながら今回の楽曲をお聴きいただくことで、何か見えてくるものがあると思います」「The Road to 2027」には春と秋のシリーズがあり、春はベートーヴェンのピアノ・ソナタを核としたプログラム。今回は第27番に第13番「幻想曲風」、第14番「月光」を並べ、そこにシューベルトの第18番「幻想」を重ねることで、ベートーヴェンとシューベルトのソナタに込められた哲学的意味を探求していく。「ふたりの作曲家が生きた時代は重なっていますし、シューベルトはベートーヴェンを尊敬していました。しかし、彼らの夢の捉え方は異なるように思えます。ベートーヴェンは夢や理想に真っすぐに向かい、理想を追うこと自体が素晴らしいという考え方を持っていたと思います。対するシューベルトは、理想には到達しないとわかっていて、わかりつつもさすらい、巡ることが美しいと味わうという考え方のように思えます。今回の演奏曲を通して、ベートーヴェンがどのように夢や理想、遠く離れたものを描いたのか、シューベルトが見出したかったものは何だったのか、ということをぜひお聴き比べ頂きたいです」全てのプログラムが注目曲なのだが、特に今回は最有名曲「月光」の印象が大きく変わりそうである。発見されたベートーヴェン自身によるメモ書きから、彼が「月光」作曲に関連してエオリアンハープという古来の楽器に関心を持っていたことや、『エオリアンハープ』と題された書物に掲載されている詩に興味を抱いていたことがわかりました。その詩の一節には、こんな言葉が書かれています。『…甘い夢に抱かれて、人生からあまりに早く見放され、この世の目的を果たせなかった人々の魂…』第1楽章から第3楽章にかけて、ベートーヴェンがこの曲で何を見出したかったのか、ということを改めて考えながら演奏していきたいと思っています」取材・文:長井進之介The Road to 2027 仲道郁代 ピアノ・リサイタル 夢は何処へ■チケット情報()5月11日(土)14:00開演アクトシティ浜松中ホール5月19日(日)14:00開演兵庫県立芸術文化センターKOBELCO大ホール5月25日(土)14:00開演宗次ホール6月2日(日) 14:00開演サントリーホールベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第27番 Op. 90ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第13番 Op. 27-1ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第14番「⽉光 」Op. 27-2シューベルト:ピアノ・ソナタ第18番「幻想 」D894 Op. 78
2024年04月26日スターツおおたかの森ホール主催『仲道祐子の音楽物語〈ガリバー旅行記〉』が2023年7月8日(土)にスターツおおたかの森ホール(千葉県流山市)にて上演されます。チケットはカンフェティ(運営:ロングランプランニング株式会社、東京都新宿区、代表取締役:榑松 大剛)にて4月25日(火)より発売です。カンフェティにて4月25日(火)10:00よりチケット発売 公式ホームページ 冒険好きのガリバーが海を渡り、たどり着いたのは小人の国や巨人の国。さらに日本も訪れてしまった、ワクワクでいっぱいの旅行記。カラフルなイラストを映しながら、仲道祐子のピアノ演奏と、楽しいお話で物語りが進んでゆく、目と耳で楽しむ親子のためのコンサートです。自由に、思いきり想像をふくらませて、お楽しみください。公演概要『仲道祐子の音楽物語〈ガリバー旅行記〉』日時:2023年7月8日(土)15:00開演(14:30開場)会場:スターツおおたかの森ホール(千葉県流山市おおたかの森北1-2-1)【第一部】童話「ガリバー旅行記」仲道祐子(ピアノ)&桂幾子(語り)作曲 新田祥子イラスト オノマリコ【第二部】ピアノミニ・コンサート仲道祐子◆メンデルスゾーン: ロンド・カプリチオーソ◆田中カレン:「愛は風にのって」よりラム酒の樽・淋しい料理人・黒いタートルネック・笛吹きと縄文土器・愛は風にのって◆アーロン・コープランド:ユーモリスティック・スケルツォ - 猫とねずみ◆ショパン: スケルツォ 第2番 作品31(※曲目は変更になる場合があります)■出演童話「ガリバー旅行記」仲道祐子(ピアノ)桂幾子(語り)■主催スターツおおたかの森ホール指定管理者MORIHIBIKU共同企業体代表団体アクティオ株式会社■チケットカンフェティHP・TEL 4月25日(火)10:00発売開始前売・当日とも 一般2,800円3歳~小学生1,500円(全席指定、税込)※2歳以下の入場はできません。※お一人様6枚まで。※別途、各種手数料(発券手数料など)がかかります。※車いす席については、スターツおおたかの森ホールにお問合せください。■備考・新型コロナウイルス感染症対策の状況により、販売方法等を変更する場合があります。・お客様都合によるチケットの変更・返金はお受けできません。・最新情報は随時HPにてお知らせいたします。■ご来場のお客様へ・ご来場前に体調を確認し、発熱等のある方はご遠慮ください。■お問合せスターツおおたかの森ホールチケットセンター04-7186-7638(8:30~22:00)※受付時間は変更になる場合があります。 詳細はこちら プレスリリース提供元:NEWSCAST
2023年04月21日仲道郁代のライフワークであるベートーヴェン。その解釈と演奏はますます独自の深みを増している。作曲家没後200年の2027年に向けての横浜みなとみらいホールでの「ピアノ・ソナタ全曲演奏会」は、全32曲を4期(8回)に分けて弾き切るシリーズ。第II期の第3回[12月3日(土)]と第4回[2023年4月8日(土)]について聞いた。番号順に、つまりおおむね成立年代順に弾いていくのではなく、今回の全曲シリーズでは各回ごとにテーマを設け、さまざまな切り口でプログラムを組んだ。「ベートーヴェンの思考のかけらが、時を経て、さまざまな作品に現れる。その共通点をみなさまとともに感じることができればと思っています」全体のラインナップを見て気づくのは、何度か同じ曲を演奏すること。第II期で言えば、12月の第17番《テンペスト》や第23番《熱情》、4月の第8番《悲愴》は、他の回でも演奏する。「32曲のソナタの中にある、ベートーヴェンのいくつもの顔を浮き彫りにするためです。同じ曲でも切り取り方によって私の捉え方も変わると思いますし、お聴きになった印象も変わるのではないかと思います。ベートーヴェンの音楽はそれぐらい豊かな表情を内包している。一面だけの音楽ではないのですね」第3回は「テンペスト~飛翔する幻想」をテーマに、第6番、第17番《テンペスト》、第23番《熱情》、第22番、第28番を弾く。「第28番は、ロマン派の幻想曲の大もとになっている形式です。それだけではなくて、同時期の連作歌曲集《遥かなる恋人に》に込めた思い、ものすごくロマンティックな想念がこの中にもあるんですね。《テンペスト》のストーリー性、《熱情》の幻想的な情熱、第6番の演劇的なコメディのようなやりとりの気配。〝幻想〟がさまざまな形で飛翔しているというのがこのプログラムです」第4回「悲愴~はるかなる憧れ」は第3番、第18番、第8番《悲愴》、《エリーゼのために》、第31番。「悲愴と憧れという、相反する言葉ですが、《悲愴》の持つ、辛さ、悲しみの先に、前へと進もうとするエネルギーを捉えることができるプログラムです」第4回の公演前には、仲道が所有するベートーヴェン時代のピアノを弾きながらのプレトーク&コンサートも。(レプリカでなく)1816年製のオリジナルのブロードウッド。これは2公演セット券購入者限定の特典だ。見逃せない。(宮本明)
2022年08月21日ピアニストの仲道郁代が、5月29日(日)サントリーホールでのリサイタル「知の泉」に向けた記者懇親会を開き、自身の思いや意図を語った(4月7日)。リサイタルは彼女の企画である「The Road to 2027」の一環。ベートーヴェン没後200年と自身の演奏活動40周年が重なる2027年を見据えて、デビュー31年目の2018年から10年をかけて完遂する壮大なシリーズだ。毎年春と秋の2回、10年分・全20回のプログラムを最初に決めてスタートした深謀遠慮。「今回のテーマは『人間の“業”と再生への祈り』です。これらを弾いて、光の世界を見い出したい。そんなプログラムです」演奏するのはベートーヴェンのピアノ・ソナタ第17番《テンペスト》、ショパンのバラード第1番、リストの《ダンテを読んで》、そして取り組むのは初めてというムソルグスキーの《展覧会の絵》。4曲とも、文学あるいは絵画作品に触発された、つまり「知の泉」から生まれた作品群だ。仲道は実演を交えながら、その源泉をひもといていく。ベートーヴェンの“赦し”。祖国を失ったショパンの悲しみと再生。リストが描いた神の愛の光の世界。ムソルグスキーが埋め込んだ苦しめられた者たちの暗喩。「叡智と示唆に溢れる文学や絵画から作曲家たちが何を読み取り、何に共鳴して音にしたのか。いま生きている私はそこに何を感じるのか。これはけっして昔の話でなく、生きたリアルな言葉です」いま私たちは、「音楽に何ができるのか」という問いにあらためて向き合っている。── 音楽に戦争をやめさせることができるか?たぶん無理ですね。でも聴く人に「戦争をやめさせなくちゃ」という気持を起こさせることは、きっと音楽にもできるはずです。──これは村上春樹の最近の言葉。仲道はそれを引いたあと、次のように言った。「人が心から共感するのは悲しみなのだと思います。人間の業、悲しみはすべての人が背負っている。そして正義は怒りや悲しみから生まれる。それを描いている作品は私たちの心を動かす。音楽はそれをちゃんと伝えることができる。演奏家にはそれを伝える責務があります」一人の記者が「共感しかない」と感想を口にした。まさに。ベテランのファンなら、少女時代の可憐な印象で彼女をイメージする人も少なくないかもしれない。しかし近年の彼女の表現の深さにはすごみすら感じる。いま最も聴くべきピアニストだと思う。(宮本明)
2022年04月19日ピアニスト仲道祐子が、デビュー25周年の記念リサイタルを開く[3月25日(金)Hakuju Hall]。桐朋高校音楽科卒業後ミュンヘン音大に留学。大学院修了後ドイツでの活動を経て、1996年に国内デビュー公演を行なった。25年の節目に掲げたテーマは「原点回帰」だ。「デビューよりも前、桐朋高校やドイツで学んだ頃、音楽をより深く勉強したいと考えるきっかけとなった頃が原点だと思っています。そこを見つめ直し、今後も頑張るエネルギーの素にするための〝原点回帰〟です」ベートーヴェン《ワルトシュタイン》をメインに、メンデルスゾーン、シューマン、リストというドイツ音楽を軸にしたプログラム。巨匠にして名教師でもあった恩師クラウス・シルデの思い出が特に濃厚に詰まっているのがメンデルスゾーンの《厳格な変奏曲》だという。「細かい指づかいなどはあまりおっしゃらない先生が、とても詳しくレッスンしてくださいました。今でも楽譜にそれが残っていて、懐かしく思い出します。先生は普段、書き込みはさせないんです。次に弾く時にそれを違う意味でとらえてしまうかもしれないから。でもこの曲だけは珍しくご自身の楽譜にも書き込みがいっぱいありました。何度も弾き込んだ、お好きな曲だったのだと思います」ドイツもの以外に、田中カレン作曲《愛は風にのって》も聴き逃せない。桐朋出身の作曲者が師の故三善晃の思い出を綴った子供のための曲集。仲道が弾いたCDが2020年にリリースされ、専門誌でも絶賛されている。今回は21曲中6曲を抜粋して演奏する。「私が高校生、カレンさんが大学生だった1980年代、桐朋の学長が三善先生でした。その頃の思い出やノスタルジーが色濃く反映されている曲集です。子供のための作品なので音の数がとても少ないのに、表現している内容はものすごく大人なんです」そのCDを聴いてみると、どこか懐かしい記憶を、彼女たちと違う時間を生きたはずの私たち聴き手も共有できるような気がする不思議な感覚。「作品が生まれ演奏される時、人と人の歴史が擦れ合う」ということを、かつて三善晃その人が書いていたのを思い出した。プログラム全体にはもうひとつメッセージを込めた。「明るく前向きな気持ちになれる曲を選びました。閉塞感が漂う毎日、とても素敵なHakuju Hallの空間で非日常を堪能して、また日常に戻って元気に明日に向かっていただきたいと思います」(取材・文:宮本明)
2022年01月24日テノールの西村悟が新境地、ドイツ歌曲の世界に臨む。自身初のリート・リサイタル[3月31日(水)Hakuju Hall]でベートーヴェンの歌曲集とシューマン《詩人の恋》を歌う。コロナ禍による活動停止中、自宅でひたすら自分の声と向き合ううち、テクニックの進化に気づいたと語る。「声のコントロールです。若い頃はオケに負けない声の“圧”を出すことが前提でしたが、声を繊細に操るテクニックが身につき始めていることに気づいた。そんな自分の声だけで表現することに魅力を感じて、だったら歌曲を歌ってみようと」学生時代からイタリア・オペラひとすじだった西村。数年前から、宿命が彼をリートの世界に導いていたようだ。まずは2017年にびわ湖ホールの《ラインの黄金》でローゲを歌ったこと。「沼尻竜典さんのご指名。初のドイツ語オペラでした。ローゲはすべて語り口調のような、流暢なドイツ語が必要です。しかもドイツの大御所ミヒャエル・ハンペの演出。1年かけて徹底的に仕込まれ、最終的にはとても好評をいただきました」その翌年には、クラウス・フロリアン・フォークトのリート・リサイタルで衝撃を受けた。「彼はヒロイックな声でわーっと持っていくようなワーグナー歌いではなく、一本のラインの上で声を操るような感覚の現代的な歌い手。オペラ歌手のリートはいいなと、その時に思いました」そして、ドイツ語体験と自らの声の変化が徐々にリンクしてリート挑戦を思い描き始めた頃、ピアニストの仲道郁代から、彼女のリサイタルで《詩人の恋》を歌ってみないかと誘われた。「二つ返事でやらせていただきました。仲道さんの音から、僕が感じていたのと同じ景色が見えて、漠然としていた感覚が確信に変わりました」「僕の表現力はオペラで培ってきたものです。大劇場で歌うオペラは、表現を拡大する世界。一方、歌曲の繊細な世界でも、その表現を凝縮して届けることで、より幅が広がるんじゃないかと思っています」もうひとつ、物語性へのこだわりもオペラと繋がる。「特に《詩人の恋》。物語性がオペラと似ているように感じています。詩の言葉だけでなく、歌の旋律やピアノ伴奏からも物語の背景が見えてくる。僕の感じた背景を知っていただき、同じ目線で物語を見ることで、より面白く感じていただけると思います」いわばオリジナルの「標題」だ。そんな丁寧な姿勢からも、彼の「リート愛」がひしひしと伝わってくるではないか。西村悟の新たな顔、新鮮な《詩人の恋》を目の当たりにできそうだ。(宮本明)
2021年03月26日仲道郁代が、2027年の演奏活動40周年とベートーヴェン没後200年に向けて、2018年から10年間にわたり行っている「Road to 2027」。春にはベートーヴェンのピアノソナタを軸としたリサイタルシリーズを継続しており、来たる5月の公演では「ワルトシュタイン」中心に組み立てたプログラムを届ける。【チケット情報はこちら】テーマは「音楽における十字架」。聴くことで何を受け取ることになるのか、考えずにはいられない題目だ。「ワルトシュタインの1楽章では、同音連打による横線と、上下する音階の縦線が重要な役割を果たし、この二つの線を重ねると十字架が浮かび上がります。粛々と同じ営みを続けるような同音連打と、それを貫く剣のような上下動で、運命的な出来事とそれに抗う様が表されているとも受け取れます。ベートーヴェンは作品を通じ、芸術家として背負わねばならぬものについて考えたのではないでしょうか」併せて演奏するのは、ショパンとシューマン。「ショパンの、祖国に戻れず、それでも生きていかねばならない運命への忸怩たる想い。シューマンが、のちに妻となるクララとの結婚を反対される中抱いた、溢れる想いと苦しみ。各作曲家が背負った人生を、どう音楽に昇華させたのか。苦しみ抜いたのか、または時に夢を見たのか。心模様に思いを馳せてお聴きいただけたらと思います」すでに幾度もベートーヴェンのソナタ全曲演奏に取り組む仲道だが、「共感だけでは弾けない。構造的なものを踏まえないと説得力のある演奏ができない」作曲家だけに、昔は苦手意識があった。「でも、一度全曲演奏会をした後、音楽評論家の故・諸井誠先生とのレクチャー付きの全曲演奏会を行ったことで、ピアニストとして私は大きく変わりました。ある音をなぜそう弾くのか考える基礎を、徹底的に刷り込んでいただいたのです」ベートーヴェンは32曲のソナタの中で、生きることとは何かを追求した。「彼が背負った十字架が何だったのか、正しい答えはありません。聴く人それぞれが経験に応じて別のことを作品から共感できるのが、クラシック音楽のすばらしさです」そして最後となる2027年の公演には、ベートーヴェン「ハンマークラヴィーア」とショパン「葬送ソナタ」が置かれている。「実は葬送ソナタは、亡き母の出棺の時に弾いた曲。以来、私は舞台で弾けませんでした。でも、音楽家としてこれを乗り越えなくてはならないとプログラムに入れました。シリーズを終え、その先に見える景色がどんなものなのか、まだわかりません。皆様には、同時代を生きる演奏家がどう変容していくのか、また音楽から何を思うのか、共に感じていただけたら幸せです」取材・文:高坂はる香
2020年02月28日仲道郁代が芸術監督として主宰する、その名も「仲道郁代ピアノ・フェスティヴァル」(7月14日(日)・東京芸術劇場)は昨年に続く2回目の開催。今年も、仲道郁代、横山幸雄、菊池洋子、實川風、松田華音、藤田真央と、若手からベテランまで、6人の実力派ピアニストたちが、2台&5台ピアノで超絶技巧の妙技を繰り広げる。このメンバーが一堂に会して5台のピアノを鳴らす、その壮観な様子を想像するだけでもわくわくするではないか。「全員がぴたりと揃うキレと、それぞれが絡み合う時の凄みは、ピアニストでもめったに体験できない新しい感覚のサウンド。去年最初に5台で合わせた時は、鳥肌が立ちました」【チケットの詳細はこちら】普段お目にかかる機会がない5台ピアノの合奏。第一線で活躍するピアニストたちにとっても難物なのだそう。演奏するのは《美しく青きドナウ》や《トルコ行進曲》などおなじみの名曲ばかり。しかし、「せっかくこれだけのメンバーが集まるのだから、みんなが本気を出さないと弾けないような編曲を選びました。だから大変で、去年の出演者のひとりは、これは“参加”じゃなくて“参戦”だと言っていました(笑)。ピアニストが技を掛け合わせたとき、これほどまでにエキサイティングなサウンドが生まれるのか! と私たちも驚いています。この面白さをぜひ“体験”していただきたいです」コンサート前半は2台ピアノ。モーツァルトの《2台ピアノのためのソナタ》を、1楽章ずつふたり×3組が交代で弾いたり、《白鳥》(サン=サーンス)や《だったん人の踊り》などの名曲が並ぶが、こちらもまた、よく知った名曲でピアニストによる個性の違いを楽しめる、というだけではない。「2台ピアノならではの複雑な音の妙技。ピアノの音の華麗さ、色気、色彩を堪能してほしい」ピアノという楽器のポテンシャルは、洗練されたピアニズムを持ち寄って2台、5台で奏でると、いったいどこまで広がるのか。その極みに挑戦するのがこのピアノ・フェスティヴァルの意図だという。ピアニストたちの意地とプライドをかけた本気のエンターテインメントだ。開演前には「ピアニスト・クロストーク」があり、6人全員が舞台に出て、あらかじめ募集した同じ質問に答える。「来ていただいて、つまらなかったとは絶対に言わせない」と自信に満ちた意気込みを語る仲道。間違いなくスペシャルなコンサートになりそうだ。取材・文:宮本明
2019年06月21日仲道郁代が昨年から10年計画で進行中の壮大なプロジェクト「Road to 2027 ベートーヴェンと極めるピアノ道」。その第2回が5月26日(日)に東京・サントリーホールで開催される。【チケット情報はこちら】「ベートーヴェンが音楽で問うたものを、これから10年間の自分の進む道として、私自身にも問い直していきたい」。これまで幾度かベートーヴェンのソナタ全曲演奏に取り組んできた彼女。今回は各回ごとにテーマを定め、ベートーヴェンのソナタを軸に、他の作曲家との関連の中で、ベートーヴェンの音楽、そこに描かれた哲学を見つめ直す。「Road to 2027」を冠としたプロジェクトは、並行して毎秋に開く、ピアニズムを極めることを目的とするリサイタル・シリーズとの2本を柱としている。「2027年」はベートーヴェン没後200年であり、仲道の活動40周年でもある。5月はピアノ・ソナタ第8番《悲愴》を軸に、ブラームスの8つの小品Op.76とシューベルトのソナタ第19番を弾く。テーマは「悲哀の力」。「悲哀」だけなく、「力」と入れたのには理由がある。「悲哀は、作曲家から生み出される時、ただ“悲しい”では終わらないんです。彼らの作品が、私たちにとっては次なる生きる力になる。強い意志や、シューベルトのように悲哀の先にある透明な美しさを感じさせてくれる。それらを受け入れることで、悲哀が力に変わるのです」ベートーヴェンは彼女のライフワーク。きっかけは2002~2006年、彩の国芸術劇場で行なったソナタ全曲リサイタルだった。作曲家の故・諸井誠とのレクチャー・コンサートという形式の中で、彼女自身、諸井から計り知れないほど多くのことを学んだ。「音符を読むということの本当の意味、それをどう生きた音にしていくのかを教えていただきました。あの経験がなかったら、今頃、私というピアニストがいたかどうか」「ピアノ道を極める」といっても、ストイックな修行ではない。「ストイックというと、ピアノを弾くこと以外を振り払うようなイメージ。私の人生はそれと逆で、諸井先生に学び、ピリオド楽器に興味を持ち、演劇の表現芸術からも刺激を受けてきた。自分の音につながると思うあらゆることを好奇心旺盛に吸収してきました。それらの蓄積の上で、音楽家としてこれからはどうありたいのか。それを見据えながら演奏活動をしていきたいというのが、この10年です」7月14日(日)には、やはり昨年から始めた「仲道郁代ピアノ・フェスティヴァル」の第2弾も(東京芸術劇場)。仲道と、横山幸雄、菊池洋子、實川風、松田華音、藤田真央という日本のトップ・ピアニスト6人が勢揃い。超絶技巧編曲による名曲の数々を、前半は2台ピアノ、後半は5台ピアノ(!)で弾きまくる。「昨年の第1回は、出演したピアニスト全員、もう、戦いのようでしたよ。参戦、という感じです。かっこいいコンサートですよ。すごく楽しいと思います!」というピアノの夏祭り。こちらも見逃せない!取材・文:宮本明
2019年03月25日東京・南青山の花屋ル・ベスベ(Le Vesuve)の店主である高橋郁代の眼差しを追った写真展「Regard Intense」が、11月10日から29日まで東京・港区のGallery 916 smallにて行われている。1955年に静岡で生まれた高橋郁代は、“毎日の暮らしに花を”という平凡な言葉を、非凡な感性で実行していたフラワーデザイナー。1998年に東京・南青山に、現・代表の松岡龍守と花屋ル・ベスベをオープン後、フラワーデザイナーとして独立。その飾らない人柄と独自のフラワースタイルで多くの人々を魅了していた。写真家たちとの18年に渡るダイアリープロジェクトを行っていたが、最後のダイアリーとなった『Regard intense- Le Vesuve Diary 2015』を残し、14年秋に急逝した。同展では、20点の写真作品とともに、ムービー作品『Variations I,II,III,IV,V& Aria』を出展。花とともに生きた高橋の特別な日常を体感出来る写真展となっている。また、11月28日、29日には、写真や動画で人々の心を捉えるために必要な思考や準備、そのプロセスなどを学ぶことが出来るワークショップを開催。1日目は、レクチャーと個別ポートフォリオの鑑賞、評価プロセスの共有を行い、2日目で、参加者が実際に撮影した作品を全員で鑑賞し、評価する。実際に花を撮影しながら、日常の時間を撮ることの意味が考えられる機会となっている。なお、定員は20名、参加費用は1万円となる。【イベント情報】「Regard Intense」会場:Gallery 916 small住所:東京都港区海岸1-14-24会期:11月10日~29日時間:11:00~20:00(土曜、日曜、祝日は18:00まで)料金:一般800円、学生・シニア500円、高校生300円休館日:月曜日
2015年11月10日モーツァルトの音楽の愛好家団体である日本モーツァルト協会が、創立60周年を記念して「モーツァルト交響曲全45曲演奏会」を3月7日(土)・8(日)にサントリーホールで開催する。日本モーツァルト協会創立60周年記念「モーツァルト交響曲全45曲演奏会」「モーツァルト ピアノ・ソナタ全曲演奏会」の公演情報この記念演奏会では、モーツァルトの交響曲全曲を作曲年代順に連続して演奏。天才モーツァルトの音楽の変遷と円熟、その一生を辿るというもの。モーツァルトの交響曲の総数については様々な説があるが、今回はモーツァルト研究の第一人者、ニール・ザスローの最新研究などを参考とし、モーツァルトの真作として確実な39曲、真偽不明の作品から偽作の疑いが強いものを除外した6曲、合計45曲を取り上げる。演奏は、シアターオーケストラトーキョー(1日目)と東京フィルハーモニー交響楽団(2日目)。指揮は、曽我大介、金聖響、湯浅卓雄(以上1日目)、三ツ橋敬子、井上道義、大植英次(以上2日目)の6人が担当する。モーツァルト協会の理事長であり、作曲家の三枝成彰は「歴史上、交響曲とオペラの両ジャンルで、今日でも愛されるほどの傑作を多数残した作曲家は、モーツァルトだけではないでしょうか。きっと右脳・左脳ともに秀でた作曲家だったのだと思います。今回はその偉業の一端にたった2日間でふれるという、世界的に見ても極めて稀なイベントになります」と述べた。演奏会の初回の指揮を担当する曽我大介は「非常に瑞々しい初期の作品から、芸術性が高まっていく後期まで、モーツァルトの交響曲の時代の変遷を一緒に体験しましょう。あと、偉大な先輩である井上さん、湯浅さん、大植さん。僕を挟んで、才能溢れる後輩の金さん、三ツ橋さん。世代の異なる6人の指揮者のバリエーションも見どころです」と抱負を語った。また、同協会の創立60周年記念公演として「モーツァルト ピアノ・ソナタ全曲演奏会」7月4日(土)・5日(日)軽井沢大賀ホールで開催。ピアノ・ソナタ全19曲と幻想曲の計20曲を、日本を代表するピアニストのふたり、仲道郁代、横山幸雄の演奏が披露される。最新の研究を参考にした真作(K547a)披露や、両者の演奏による聴き比べ(イ短調K310)など、モーツァルトの作品を多彩に楽しめる演奏会となる。
2015年02月06日