先日母と電話で話していて、ひとつ気づいたことがありました。母は「身近な人には厳しく、そうでない人には優しいほうが良い」。僕は「身近な人には優しく、そうでない人には厳しくても良い」。まったく逆の考えですが、よくよく話すと実は同じ考えかたをしていることに気づきました。みなさんは身近な人には優しいですか?それとも厳しいですか?そう聞かれても自分のことなんてわからないですよね。僕も自分のことはわからなかったのですが、母がなんとなく「身近な人には厳しく。そうでない人には優しく」と話していて「僕とは違う」と返しました。「僕は身近な人には優しくしたいし、そうでない人には厳しくても構わないって思うけど」「そう? 関係ない人とは当たり障りないほうがいいじゃない。今後付き合わないんだから」「当たり障りあってもいいじゃない、そのあと付き合わないんだから」「身近な人はずっと付き合っていくから厳しく(優しく)、そうじゃない人はどうでもいいから優しいほうがいい(厳しくても構わない)」。真逆のように見えて、対応は違うけど実は考えかたは同じなのかもしれない。不思議だなーと思いながら、そのまま話していてひとつ大きな違いに気づきました。母は身近な人をライバルと捉えている。僕は身近な人を仲間だと捉えている。「これは世代もあるかもしれないね」母は団塊世代で四人姉弟の次女、おかずひとつでも厳しい競争を勝ち抜いて来ていますが、僕は子どもの頃はバブル。一人っ子だったので、誰かと競争した記憶があまりない。ゲームで言えば母は“対戦”モードを好み、僕は”協力”モードを好む。母はお互い衝突しながらも高め合っていくのが楽しい。僕はお互いフォローしながらクリアしていくのが楽しい。相反する性格なので喧嘩もよくしましたが、30代も半ばになってきて「母がそういうタイプだったから良かったのかも」とも思います。もし母が身近な僕をライバルと思ってくれなければ、のんびりしていて悪い人に騙されやすかったかもしれない。結局、「これはどっちが良い悪いはないね」と。実は別の話でも似たようなことがありました。僕はとても子どもが大好きなんですが、「自分は子どもが嫌いです」と話すかたがいたのでいろいろお話しを聞いてみました。結果、考えていたことは一緒。僕は子どもにも個性や考えがあるから対等に接する。嫌いですと仰っていたかたもまったく同じで「対等に接しているからこそ」と話してくれたものです。これも「どっちが良い悪いはないですね」と。実は考えていることは同じだけど捉えかたが違うのかもしれない。そして、意外と長い目で見れば良い結果に向かっているかもしれない。そう思ってもやっぱり、僕は自分と同じ「身近な人に優しい人がいいなぁ」と思ってしまいます。でも、いまの自分や以前ある記事にあったSM論を思い出すと「身近な人に厳しい人もいいなぁ」と思うトコロも。「Sの人は厳しく接する自分を受け入れてもらいたい。Mの人はそんな人を受け入れてあげたい」SがいるからMもいる。補い合えれば、自分とタイプが違う人もいいのかもしれません。経験上、タイプが違えば喧嘩になることも多くなりますが、お互い「身近な人」と考えているからこそ起きる「良い喧嘩」だと思います。ライター:山川 譲
2016年08月29日狂言師・野村萬斎や歌舞伎役者・市川猿之助らが出演する、生け花に焦点を当てた初の映画『花戦さ』が2017年に公開されることが6日、発表された。萬斎と猿之助が共演するのは今回が初となる。原作は、文禄3年(1594年)に池坊専好が豊臣秀吉に前田利家邸で披露したといわれる「大砂物」(全幅7.2メートル、高さ3.5メートルに及ぶ立花)から生まれた伝説に着想を得て、新たな物語とした鬼塚忠氏の小説『花いくさ』。初代・池坊専好という花の名手と千利休の友情や、京都の町衆である六角堂にいる花僧が、権力者・豊臣秀吉の乱心に、刃でなく花をもって相手をあだ討ちするストーリーに感銘を受けた製作側が、映画化を企画し実現に至った。そんな専好を演じるのが、萬斎。劇中での専好が持つ天真らんまん、奇想天外というイメージからオファーを受けた。萬斎は演じるに当たり、クランクイン前に華道の指導も受け、細かい所作にもこだわる徹底ぶりを見せているという。専好と対立する天下人・秀吉役を務めるのが、猿之助。「温厚だった秀吉が後年、嫡男・鶴松を失って狂気に陥っていく様を演じられるのは猿之助しかいない」との理由から抜てきされた。萬斎は、専好を「戦乱の時代の中で、花で世に語りかけ、花と共に生きた人」と説明。その上で、「命あるものにさらなる命を吹き込む、純粋(ピュア)な存在として演じたい」と意気込みを話す。2度にわたったという生け花の所作の稽古から、多くを学んだようで、「特有の所作に、私なりの動きを生かせれば」と自身ならではの演技ももくろんでいる。また、専好は「伝統を受け継ぐだけではなく、常に時代の空気を感じながら、"その時々の花の美しさ"を追求する」とし、「その姿勢は世阿弥も言っていることであり、われわれの狂言の世界と相通ずるものがある」と共感も覚えている様子だ。さらに、専好と深い友情と信頼を築き共に美を追い求めた茶人・千利休役として佐藤浩市、織田信長役として中井貴一、前田利家役として佐々木蔵之介といった俳優らが出演。『山桜』(08年)や『小川の辺』(11年)などを手がけてきた篠原哲雄監督がメガホンを取り、脚本を『包帯クラブ』(07年)などの森下佳子氏が執筆。音楽は、スタジオジブリ作品などで知られる久石譲が担当する。なお本作は、時代劇の中心地として名高い京都・太秦の映画人たちの手によって製作。撮影も大覚寺、妙心寺、鹿王院、仁和寺、南禅寺、梅宮大社、随心院など京都を代表する場所でも敢行されており、4月10日クランクイン、5月下旬のクランクアップを予定している。
2016年04月06日4月2日福岡・博多座で「スーパー歌舞伎II(セカンド)『ワンピース』」の福岡公演が開幕。同公演で、主演の市川猿之助が宙乗り通算800回を達成した。【チケット情報はこちら】累計発行部数3億2000万部以上を誇る世界的な人気マンガ『ONE PIECE』と、日本固有の伝統芸能である歌舞伎がコラボレーション。猿之助は主人公のルフィを含む三役を演じ、演出も手がける。今回、公演が行われた博多座は歌舞伎、ミュージカル、宝塚歌劇など様々な種類の演劇上演を設計段階から想定して作られた、全国的にも珍しい演劇専用劇場。開館16年目にして、今年初めて館内リニューアルを実施。舞台照明、音響など舞台まわりも一新。リニューアル記念公演第1弾である『ワンピース』の見どころである“ななめ宙乗り”用の設備も整い、さらに迫力ある舞台演出が期待できる。初日前日には、高島宗一郎福岡市長、出演の市川猿之助、平岳大、博多座の芦塚社長が登壇し、テープカットイベントが開催された。「出演された役者さんにもお褒めの言葉をたくさん頂いてる博多座。今回、座席、音響、照明、舞台装置のリニューアルを行ない、さらに魅力が増したと思う。福岡は海外から含め、たくさんの観光客が増えている街。ぜひ様々な方に来場頂きたい」と高島市長が祝辞を述べれば、「『スーパー歌舞伎座』と私達は呼んでいるくらい、スーパー歌舞伎を上演するのに日本で一番適した劇場。それが更に魅力的になって、なかでも特に音響が素晴らしい。まるで映画館でみているような迫力が味わえると思います。『ワンピース』の最終形態をお観せするにはうってつけの劇場」と市川猿之助も笑顔で受ける。また、大阪公演から同公演に参加したという平岳大は「歌舞伎をする、ということが初めて。化粧や見得の切り方など手取り足取り猿之助さんに教えてもらいました。自分なりに役も練れてきた段階で、大好きな博多でしかもリニューアル初公演で出演させて頂けるのはこの上ない幸せ」と締めくくった。同公演は先に昨年10、11月に東京、今年3月に大阪で上演。東京・新橋演舞場公演は、10万人を超える観客が来場し、連日超満員。大阪・松竹座公演では演出を東京公演から改訂。バージョンアップした早替わり、宙乗り、本水、フライングなどの演出で観客を魅了した。福岡公演は4月26日(火)まで上演。チケット発売中。※高島宗一郎福岡市長の「高」ははしごだか。
2016年04月06日秋元松代の脚本と蜷川幸雄の演出により、36年前の初演から多くの観客に愛され、上演が重ねられてきた名作舞台『元禄港歌―千年の恋の森―』が、市川猿之助、宮沢りえ、高橋一生、鈴木杏、段田安則ら新たな出演者をえて、1月7日より東京・シアターコクーンにて開幕。前日の6日には報道陣に向けて公開舞台稽古が行われた。【チケット情報はこちら】物語は、活気あふれる元禄時代、播州の大店・筑前屋を舞台に、結ばれない男女や、哀しい秘密を背負った親子の姿が描かれる。筑前屋の次男・万次郎(高橋)の起こした揉みあいを、5年ぶりに江戸の出店から戻った長男・信助(段田)が居合わせ、それをいさめる。母親である筑前屋の女将・お浜(新橋耐子)は信助を出迎えるが、その態度はどこかよそよそしい。そこに現れたのが、手引きの歌春(鈴木)を先頭に、座元の糸栄(猿之助)、そして初音(宮沢)ら、年に一度この港町を訪れる瞽女の一行だ。公開舞台稽古で披露されたのは、その晩、筑前屋にて瞽女たちが三味線で「葛の葉子別れ」を弾き語る場面。千年の昔から森の奥に棲む女が白狐となって恋人に逢いに来るが、人里の男に恋をした罰として、生まれたばかりの我が子を残して森に帰らなければならないという悲しい歌だ。涙ながらに弾き語る糸栄の姿に胸に迫るものを感じ、自身の出生に疑いを持っていた信助は初音に、糸栄は子を産んだことがあるのではないかと問いただす…。今回の上演にあたり、蜷川は「秋元松代さんの作品に登場する女たちは、いつも激しく、ストイック。それはどこかで破滅や不幸とつながってゆき、近代が何を犠牲にし、何を捨ててきたのかを証明している。(今回)猿之助さんが、美空ひばりさんの歌で『元禄港歌』をやりたいと言ってくれた。猿之助さんの糸栄なら見てみたい。久々にあらたな気持ちでこの作品をやってみたいと思った」とコメント。また、猿之助は開幕にあたり「蜷川さんは客席との一体感を大切にされる演出ですから、初日が開いてみないとわからない。稽古場で7割、あとの3割はお客様と共に創る感覚。でもその7割はキッチリ100%と自信があります!糸栄という役は、白い狐が化けたような、どこか非現実的な、幻想的な存在。だから女形なのだと、女形という特異性が役の特異性に呼応しているように感じています。初春、お芝居を楽しんで頂ければ」と意気込む。宮沢も自身の役について「ひとりの女の運命だったり、思いだったり、未来だったりが、とても刺激的です。生まれながらの罪をしっかり受けとめて、それでも愛することを止まない女。自分の存在を蔑み、原罪を受け止め、でも溢れ出る想いに揺れる。その姿にものすごく色気を感じますね。今回は“惜しまない表現”を目指します!」と語った。公演は1月7日より東京・シアターコクーンにて。2日6日(土)から14日(日)まで大阪・シアターBRAVA!でも上演。ほぼ完売状態の東京公演は、チケットぴあにて立見券を発売中。
2016年01月07日キャリアデザインセンターは、厳しい上司についてのインターネット調査を実施した。調査は1月15日~18日に行い、289件の回答を集めた。仕事に厳しい上司と一緒に仕事をしたことがあるか尋ねたところ、51.6%が「ある」、48.4%が「ない」と回答した。「ある」と回答した人に、その上司と一緒に仕事をしたことを振り返りどのように思うか聞くと、半数以上が「成長できたのでよかった」と回答した。具体的には「自分が上に立った時、当時の上司もあえて嫌われ役をかってくれたのだとわかった」「自分には到底無理だと思うノルマを達成できた」と厳しさに隠れた思いやりに気づいたという意見のほか、「おかげで忍耐強くなった」「部下に同じことをしないですんだ」など、反面教師としてとらえたというコメントも見られた。また、「成長もできたが、精神的ダメージの方が大きい」などの理由で、31.4%が「二度と関わりたくない」と思っていることもわかった。
2015年05月29日歌舞伎俳優の市川猿之助と市川中車(=香川照之)が3月20日に会見を開き、「松竹大歌舞伎」巡業公演の製作発表を行った。「松竹大歌舞伎」チケット情報2012年に四代目を襲名した猿之助と、同じく九代目を襲名した中車の襲名披露として行われる今回の巡業公演。5月末から6月にかけて行われる中央コースでは『一本刀土俵入』のふたりの共演が話題に。猿之助は「お蔦は(中村)芝翫さんから最後に教わった人生の中で一番大切にしている役。猿之助になっても女方を大切にしますと報告したい」と胸中を明かした。中車も「亡くなった勘三郎さんからも(茂兵衛役は)ぜひやるべきだよと聞いておりました。父(市川猿翁)が芝翫さんと共演した時のDVDを参考に、父に教えてもらいながらやっていこうと思っております」と意気込みを語った。8月末から9月にかけて行われる西コースで、新橋演舞場での襲名披露の際演じた『小栗栖の長兵衛』に再び挑戦する中車。「2年前にやらせていただきましたが、少しでも前進していると自分でも実感できるような作品にしたい」と話す。同じく西コースで「義経千本桜」『四の切』の狐忠信を演じる猿之助は「『義経~』については語る言葉はないです。猿之助イコールこれだと思ってもらっても過言ではない」と自信たっぷりに語った。襲名してから2年が経つが、感想を聞かれた猿之助は「ずいぶんまえから猿之助だったかのよう」と話し、気持ちは次のステップに向かっているようだ。「先輩からあずかった荷物を次へ渡す古典の継承とスーパー歌舞伎の次回作を考えなければ。ますます忙しくなりますが充実していて役者としてありがたい」。歌舞伎の世界に飛び込んだ中車にとっては全てが初めての経験だ。「この2年間で歌舞伎に対する思いが変わってきました。やっぱりもっと早くやりたかった。歌舞伎にひと月出させていただいてから映像の世界に戻ると実感するのですが、ひとつの動き、ひとつの音、ひとつの間、すべてが繋がっていたんだと。長い時間をかけて完璧に構築されてきた“完全体”をみせられると、理屈だけは理解してもそれが出来ない自分のもどかしさの中で、ある日1ミリだけ前進したような錯覚をうける。その錯覚を楽しみに今は前に進んでいます。(歌舞伎は)生きる実感をいただいているありがたい仕事です」。「松竹大歌舞伎」中央コースは5月31日(土)から6月27日(金)まで、西コースは8月31日(日)から9月26日(金)まで各地を巡演。チケットは一部を除き発売中。
2014年03月25日市川猿之助と片岡愛之助が初日を迎えた1月2日、東京・浅草公会堂で『新春浅草歌舞伎』鏡開きを行った。「新春浅草歌舞伎」チケット情報毎年若手花形が出演することで人気の興行。猿之助は亀治郎時代に12回出演、猿之助襲名後初めて浅草に登場する。猿之助は「浅草歌舞伎へご恩がえしの意味も込めて、今回出演させていただきます」と挨拶。ずらり居並ぶ若手俳優を指して、「彼らがこれからの浅草歌舞伎を背負って立っていきます。どうか、今まで以上に熱い声援を彼らに贈っていただけますよう」と呼びかけたあと、後ろ手にしていたものを眼前に広げると、観衆は大爆笑。広げて見せたのは若手人気俳優・中村隼人のカレンダーだ。「劇場で売っております。2600円です。これを僕は売りにやってまいりました」と会心の笑顔だった。一方の愛之助は「毎年卒業と言いながら、去年も今年も出演させていただいてます」と挨拶。ドラマ『半沢直樹』でオネエ言葉の国税局検査官役で大ブレイクした昨年を「紅白歌合戦の審査員にも出させていただくなど、すごくうれしい年になりました」と振り返りながら、「今年はオネエも卒業して片岡愛之助へ立ち返って頑張りたいと思います」と笑顔で新年の抱負を話した。今年の新春浅草歌舞伎は猿之助が『上州土産百両首』『博奕十王』、愛之助が『義賢最期』『新口村』に出演する。公演は1月26日(日)まで東京・浅草公会堂にて。
2014年01月07日舞台「助太刀屋助六 外伝」の初日を前に12月14日(金)、主演の市川猿之助を始め、共演の朝海光、吉沢悠、忍成修吾、石橋直也、鶴見辰吾が報道陣の取材に応じ、舞台稽古の模様を公開した。岡本喜八監督が原案となる漫画讀本「助太刀屋助六」を発表し、その後「仇討ち・助太刀屋助六」としてテレビドラマ化。2002年には真田広之、鈴木京香らが出演して映画化もされ、岡本監督の遺作となった。この原案を演劇界の奇才・G2の手で舞台化したのが本作。底抜けに明るく憎めない助太刀屋の助六が、ある武士の敵討ちを手伝いながら裏にある藩の陰謀を暴いていく。今年6月に四代目・猿之助を襲名して以来、初めての歌舞伎や舞踊以外の外部の舞台への出演となるが「こういう機会でないと鶴見さんや朝海さんとご一緒できないので」と歌舞伎以外の世界から受ける刺激を明かす。元々、石橋さんが立案し公演が決まったという本作。猿之助さんが石橋さんに言ったという「いつか一緒にやろう」という言葉が10年越しで実現したそうだが、猿之助さんは「『瓢箪から駒』ですね。社交辞令でそう言ったんだけど、得てしてそういうところから名作が生まれるもの」とうなづく。先日、亡くなった中村勘三郎さんもこの舞台を見に来るのを楽しみにしていたという。石橋さんは「帰ってきた浅草パラダイス」で勘三郎さんと共演し、その後、勘三郎さんの誘いを受けて、歌舞伎役者でないにもかかわらず20代にして「コクーン歌舞伎」や歌舞伎座さよなら公演で上演された宮藤官九郎作の「大江戸りびんぐでっど」にも出演した。石橋さんは「『浅草パラダイス』で目をかけていただき、コクーン歌舞伎でもかわいがっていただきまして…。1月にご挨拶に伺い『助太刀屋助六』が実現しますとご報告したら、『おめでとう。必ず見に行くからね』と仰って下さいました」と俳優としての“恩人”に晴れの舞台を見せることができずに残念そう。猿之助さんは改めて勘三郎さんの急逝について「悲しいけど事実だからね」と受け止めつつ、「輪廻転生があると思うから、孫の七緒八(なおや)くんの子供くらいで生まれ変わってくるときに歌舞伎がなくなっていたら大変。我々が受け継いでいかないと」と伝統を継承していく覚悟を口にした。吉沢さんは「個性的な人たちが持ち寄った演技がぶつかることなく、『高めよう』という空気感を持った仲間が集まった」と歌舞伎に宝塚、現代劇と様々なジャンルの俳優が集まっての化学反応を楽しんでいるようだ。鶴見さんは映画『助太刀屋助六』にも出演しているが、今回の舞台版について「かなり洗練されていて音楽とのマッチングもいい。ニューヨークに持っていきたい」と語る。奇しくも勘三郎さんが歌舞伎のニューヨーク公演で大成功を収めており、猿之助さんは「じゃあ、こっちはフランスあたりにしとこうか?」と海外進出に向けても意欲満々。「毎日違うことをやります。結末も変わるかも(笑)」と舞台の幕開けを待ちわびていた。「助太刀屋助六 外伝」はル テアトル銀座にて12月15日(土)より上演。公式サイト:
2012年12月14日歌舞伎俳優の市川猿之助と市川中車が12月4日、都内で会見を開き、来年1月の大阪・松竹座「壽初春大歌舞伎」への意気込みを語った。大阪・松竹座「壽初春大歌舞伎」チケット情報今年6月、7月に東京・新橋演舞場で襲名披露興行が行われたが、来年からいよいよ大阪を皮切りに全国を回るツアーがスタートする。大阪・道頓堀で元旦から歌舞伎の幕が開くのは実に50年ぶり。四代目を襲名した猿之助は「襲名と正月のおめでたさを味わっていただきたい」とコメント。俳優・香川照之として活動しながら九代目を襲名した中車は「無事に初舞台を勤めることができましたのも四代目(猿之助)のおかげ。引き続き、精進していくことに変わりはございません」と歌舞伎俳優としての決意を語った。昼の部の『吉野山』、夜の部の『義経千本桜』(「四の切」)で狐忠信を演じる猿之助は「三代目(猿之助)の『四の切』は神業に近いと思っているので、それをやらせていただくことは非常にありがたいです。ただ、考えてみたら襲名で人間の役をひとつもやっていない。鬼か狐か鳥か」と笑わせ、「どこまでこの役を深めていけるか挑戦したいです」と意欲を見せた。中車は昼の部『楼門五三桐』で石川五右衛門役に挑戦する。同演目は7月の新橋演舞場で市川猿翁の真柴久吉、市川海老蔵の五右衛門で上演されたばかり。そのときは、父・猿翁の後ろで黒子として付いていた中車だが「海老蔵さんのハリのある声を後ろで聞いていたわけですが、まさか自分があそこに立つとは。いま、稽古をしながら古典の壁の高さを感じています。本当に未熟ではございますが、なんとか頑張っていま勉強している最中です」と心境を明かした。また猿翁との初共演については「いざそうなってみるとそういうことかという感覚ですね。大本にある役者としての感情は、6・7月の舞台や稽古を通して父と確認しあいました」と話していた。襲名興行だけにチケットの売れ行きを気にする猿之助は、中車が演じる五右衛門のセリフ“絶景かな”にひっかけ、「空席があると“絶景かな”とはなかなか言いにくいのですから、宣伝をよろしくお願いします」とマスコミに依頼する場面も。一方で、多くの観客に歌舞伎を見て欲しいという気持ちから「若者向けの芝居も必要。いろんな公演の形態があってもいい」と話す猿之助。映像の仕事が多かった中車は「(歌舞伎の舞台に立って)初めて舞台が面白いと思いました。猿之助の美しさとこの細いからだで背負っているものの大きさ。そういったものを見ると理屈でなく感動します」と歌舞伎の面白さをアピールしていた。公演は1月1日(火・祝) から1月26日(土)まで。チケットは発売中。
2012年12月07日歌舞伎俳優・市川猿之助が四代目を襲名後、東京・明治座に初登場する舞台『十一月花形歌舞伎』が11月3日に開幕した。明治座『十一月花形歌舞伎』チケット情報明治座は、1993年に再開場した際、当時の三代目猿之助(現市川猿翁)の宙乗り用に天井にレールが取り付けられた、猿之助縁の劇場。その劇場に襲名後、初めて立つ猿之助は「三代目の伯父(猿翁)は、明治座でたくさんの復活通し狂言を初演してきました。その様子をずっと見て来ましたから、明治座は私にとっても非常に思い出深い劇場です。今回は明治座の特別な宙乗り機構も駆使して、大仕掛けあり、早替りありの澤瀉屋(おもだかや=猿之助の屋号)らしいスケール感あふれる演目で臨みます。伯父が創り上げた“四十八撰”があるからこそ、それを受け継ぎ練り直すことができる。これは非常に有り難いことだと思っています。新たな“猿之助歌舞伎”の始まりとして、まずはこの1か月、お客様に喜んでいただける舞台になるよう精一杯つとめさせていただきます」とコメントを寄せた。猿之助は、昼の部の変化舞踊『蜘蛛絲梓弦(くものいとあずさのゆみはり)』で、童や薬売りなどさまざまな役に六変化する。めまぐるしく変わる役を早替わりでみせるのが最初のみどころ。その後、女郎蜘蛛の精が本性を現す場面では、対峙する源頼光たちとの立廻り、そして蜘蛛の糸が舞台いっぱいに放たれる圧巻のクライマックスと観客を楽しませる工夫が随所にある。また夜の部では、通し狂言『天竺徳兵衛新噺(てんじくとくべえいまようばなし)』で日本転覆を目論む異国帰りの天竺徳兵衛を演じる。奇抜な発想と斬新な仕掛けでみせる本作は、蝦蟇(がま)の妖術を駆使して徳兵衛が活躍する物語に、歌舞伎の怪談話でおなじみの小幡小平次の幽霊譚を織り交ぜた大胆な展開で、早替りや葛籠抜けの宙乗りがみどころ。澤瀉屋が得意とするケレン味あふれる演出が堪能できる。公演は11月27日(火)まで、明治座にて上演。チケットは一部を除き発売中。
2012年11月06日歌舞伎俳優の市川猿之助が9月22日、都内で会見を行い、出演する『明治座十一月花形歌舞伎』への意気込みを語った。『明治座十一月花形歌舞伎』チケット情報今年6月と7月に東京・新橋演舞場で襲名披露興行を行なった猿之助は襲名後、初めて東京・明治座に登場する。昼公演では6役を早替わりで演じる『蜘蛛絲梓弦(くものいとあずさのゆみはり)』に、夜公演では宙乗りを勤める『天竺徳兵衛新噺(てんじくとくべいまようばなし)』に出演する。会見で猿之助は「明治座は子どものころ、一番楽屋で遊んでいた劇場なので個人的な思い入れはすごくあります」と語り「(3代目の)猿之助さんから(歌舞伎で使う)蜘蛛の糸をもらった覚えがあります」と想い出話を披露。また襲名後、初の東京公演で『天竺徳兵衛新噺』を選んだ理由として「明治座は、今はあまり歌舞伎が浸透していないので、定着させるためにもコンパクトな演目が良いと思い選びました」と説明しつつ、「劇場の中では一番お弁当が美味しいので、お芝居を観てご飯を食べて楽しんで欲しい」と気軽さをアピールしていた。『蜘蛛絲梓弦』については、「セリ(舞台の一部が上下に動く機構)に飛び込むなど色々工夫をしてやりつくした結果、工夫しすぎない方がいいと思ったので、今回はシンプルにやります」と構想を明かす。明治座の設備の中にあるワイヤーについては「宙乗りのワイヤーが見えないようになっているんです。(3代目)猿之助の宙乗りのために造ってくれたようなものだったんですけど、(1993年に建て替えて)新装になってから猿之助は出演していないんです」と語った。さらに、明治座の歌舞伎公演にはこんな工夫も。「ほかの歌舞伎公演に比べると値段を安くしていただきました。2幕構成になっているので、若い方でも見やすくなっていると思います」。舞台のみならず映像でも幅広く活躍する猿之助だが「テレビなどで僕を知っていただいた人が、『歌舞伎をやっている人なんだ』と思って見に来ていただけたら嬉しいです」と話していた。公演は11月3日(土・祝)から11月27日(火)まで明治座にて上演。チケットは9月28日(金)より一般発売開始。
2012年09月25日歌舞伎俳優の市川亀治郎が四代目市川猿之助を、俳優の香川照之が九代目市川中車を襲名する『六月大歌舞伎』が6月5日、東京・新橋演舞場で開幕した。新橋演舞場のチケット情報本興行では、同時に当代猿之助が二代目市川猿翁に、香川の長男政明君も五代目市川團子(だんこ)を襲名。昼の部の『口上』では、猿翁、猿之助、中車、團子と幹部俳優が揃って襲名披露の挨拶を行った。満員の客席から大きな拍手が沸き起こる中、まずは猿之助が挨拶。関係者をはじめ、先祖にも感謝したいと気持ちを述べたあと「亀治郎という名にまだまだ愛着がございます」と前置きし、『ヤマトタケル』の作者でもある梅原猛から「フリードリヒ・ニーチェという大哲学者が『運命愛』ということは外に起こった運命、外側から降りかかった運命をさも自分が欲したかのように愛すること。君はその『運命愛』に従ってこれから生きなくちゃいかん」という言葉をもらったと明かした。「今までは色々なインタビューなどでまだまださみしさ6分、嬉しさ4分と申しましたが、今日、猿之助を襲名致しまして、嬉しさ100%でございます」と挨拶。続いて中車が「この(中車の)名跡は、戦前に大活躍なさいました七代目、私の曽祖父の初代猿翁の弟、私の大叔父にあたる八代目が幅広い役柄を演じてきました由緒ある名前です。この大きな名前を曽祖父、祖父の50回忌追善で襲名させていただきますことは誠にありがたく感無量の思いが致します。同時に歌舞伎の舞台に初めて御目見えいたす私は、生涯をかけ精進し、九代目中車を名乗らせていただきます責任を果たしてまいりたい」と終始頭を深々と下げて挨拶。感極まった表情で、目には涙を浮かべていた。團子は、緊張した面持ちながら「猿翁のおじい様よりずっと立派な俳優になる事が私の夢でございます」と大きな声で挨拶すると、客席から笑いと拍手も。そこへ台座に座り登場した猿翁が口上を述べると、客席の中には目頭を押さえる人の姿も見られた。また、夜の部の『ヤマトタケル』でもスーパー歌舞伎では初めてとなる劇中での口上が行われ、猿之助と中車が登場。猿之助が「前例がなければ作ればいいというのがモットーで、不可能を可能にするのが『澤瀉屋』(猿之助の屋号)」と一門を立て、スーパー歌舞伎の創始者である三代目猿之助は「偉大な存在」と語った。中車は1986年の初演を学生時に見た記憶を話し、「まさか『ヤマトタケル』で初めて歌舞伎の舞台に御目見得させて頂くことになるとは、本当に有難く夢のようです」と、熱のこもった口上を述べた。『ヤマトタケル』の舞台では、きらびやかな衣裳を纏った中車が威厳のある帝を演じ、続いて小碓命役の猿之助が颯爽と登場。同じ舞台での共演を果たした。團子はワカタケル役を堂々と演じていた。クライマックスのヤマトタケルの宙乗りでは、観客も大興奮。劇場は感動のるつぼと化していた。最後のカーテンコールには、作者の梅原と猿翁も登場し、会場はスタンディングオベーションとなり熱気と興奮に包まれた。公演は6月29日(金)まで同劇場にて上演。
2012年06月06日新橋演舞場10月公演『芸術祭十月花形歌舞伎』夜の部にて、市川亀治郎が伯父・市川猿之助の当り狂言に挑むこととなった。演目は、猿之助四十八撰の内『當世流小栗判官』。猿之助スピリットあふれるこの舞台に、亀治郎が小栗判官、浪七、お駒の3役に初挑戦する。上演に先駆け、亀治郎が小栗伝説にゆかり深い遊行寺(神奈川県藤沢市)を初めて訪れ、舞台の成功祈願を行った。『芸術祭十月花形歌舞伎』チケット情報小栗判官の物語は中世の説経節の代表的な作品で、近世以降は浄瑠璃や歌舞伎に取り上げられてきた。今回上演する『當世流小栗判官』は、様々な〈小栗物〉の集大成として、昭和58年に当代猿之助により初演されたもの。時宗の総本山である遊行寺(清浄光寺)の法主は“遊行上人”ともいわれ、伝説や劇中においても、この藤沢の遊行上人が登場し、亀治郎扮する病みついた小栗を熊野で湯治し復活させる。現在も、遊行寺の山内には、小栗の死後、照手姫が小栗を弔うために仏門に入り建立したといわれる長生院(小栗堂)があり、長生院には、小栗の墓、照手姫の墓、そして小栗が乗りこなした荒馬の鬼鹿毛の墓と伝えられる遺跡も残っている。亀治郎は、補綴・演出を担当する石川耕士氏と共に遊行寺の山内にある長生院を訪れ、自身が演じる小栗判官、そして照手姫、鬼鹿毛の墓へ墓参りをした。続いて、遊行寺の本堂で成功祈願を行った。亀治郎は「『當世流小栗判官』は、いつかやるだろうと思っていました。この演目は『加賀見山再岩藤』、『伊達の十役』と合わせて猿之助四十八撰の中で3強と言われている作品で、小栗判官、浪七、お駒を3役早替りでやるのは、東京では初演以来です。脚本も演出も見直して、単なる再演ではなく、進化した再演にしたいと思っています。お芝居としてはお駒、役者ぶりとしては小栗判官、浪七は立廻りと、歌舞伎の面白さがそれぞれ具現化されているのが、この3役ですので、やりがいもありますし、頑張ってやっていきます。ここ藤沢も含め、遠いところからも観にいらしていただければと思います」と公演への思いと意気込みを語った。公演は東京・新橋演舞場にて10月2日(日)から10月26日(水)まで上演される。チケットは発売中。
2011年09月21日