障害者総合支援法とは?出典 : 障害者総合支援法とは、「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」の通称で、障害がある方もない方も住み慣れた地域で生活するために、日常生活や社会生活の総合的な支援を目的とした法律です。障害がある子どもから大人を対象に、必要と認められた費用の給付や貸与などの支援を受けることができます。制度の実施主体は市区町村、都道府県などの行政機関となります。参考:障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律障害者総合支援法が定めるサービスには、大きく「自立支援給付」と「地域生活支援事業」の2つの種類があります。自立支援給付は、利用するサービス費用の一部を行政が障害のある方へ個別に給付するものです。具体的には障害に関する医療や福祉サービス、福祉用具(補装具)などの費用が給付されます。自立支援給付の基本的な運用ルールは、国(厚生労働省)が定めます。これに対し、地域生活支援事業は、国が一律に運用ルールを定めるのではなく、障害のある方がお住まいの各地域で運用ルールを定めて実施した方が実情に応じた対応を期待できる事業や、一般的な相談対応のように個別の給付には当たらない事業のことをまとめたものです。例えば1人では外出が困難な方への付き添いを提供する「移動支援」や、手話通訳者や要約筆談ができる人を派遣・設置する「コミュニケーション支援」といった事業が挙げられます。また、障害のある方の日中活動を支援する「地域活動支援センター」や、生活自立度が高い人へ住まいの場を提供する「福祉ホーム」などの運営も、地域生活支援事業の枠組みに含まれています。障害のある方の生活スタイルは地域によってさまざまですので、地域生活支援事業のサービス内容も都道府県・市区町村によって異なります。地域生活支援事業には、相談支援も含まれます。お住まいの地域で提供されているサービスにどんなものがあるのか?給付支援を受けたいけれど条件は満たしているのか?などといった福祉サービスの利用に関することから、一般的な生活上の相談まで、さまざまな相談に応えます。障害福祉サービスの 利用について|全国社会福祉協議会障害者総合支援法に基づくサービスの利用対象は以下のように定められています。障害者手帳がなくても、医師の診断書により障害や定められた疾患のあることが確認されれば、利用対象となるケースもあります。・身体障害者・・・身体に障害がある18歳以上の人で、都道府県知事から身体障害者手帳の交付を受けている人・知的障害者・・・障害者福祉法にいう知的障害者のうち18歳以上の人・精神障害者・・・統合失調症、精神作用物質による急性中毒、またはその依存症、知的障害、精神病室などの精神疾患を持つ人(知的障害は除く)・発達障害者・・・発達障害があるため、日常生活や社会生活に制限がある18歳以上の人・難病患者・・・難病等があり、症状の変化などにより身体障害者手帳を取得できないが、一定の障害がある18歳以上の人・障害児・・・身体障害、知的障害、発達障害を含んだ精神障害がある児童、または難病等があり、一定の障害がある児童参考文献:遠山真世,二本柳覚,鈴木裕介/著『これならわかるすっきり図解障害者総合支援法』2014年 日経印刷/刊障害者総合支援法の自立支援給付で受けられる3つの給付サービス出典 : 自立支援給付には大きく障害福祉サービス(介護給付・訓練等給付)、自立支援医療、補装具という3つの給付があります。障害福祉サービスはさらに「介護給付」と「訓練等給付」の2類型へ分類されます。介護給付とは、障害があることで必要となる介護・介助サービス費用の一部を給付するものです。訓練等給付とは、就労に向けた訓練や福祉的な就労、安定した就労を支援するサービス、あるいはグループホームなど費用の一部を給付するものです。■介護給付・居宅介護(ホームヘルパー):食事や入浴、トイレなどの介助を提供します。・重度訪問介護:重度の肢体不自由や重度の障害のために常時の介護や見守り、外出支援などを必要とする方に、長時間の総合的な支援を提供します。・同行援護:視覚障害により自力での移動が難しい方に対して外出時の支援を提供します。・行動援護:行動障害があることで外出時などの支援が必要な方に対して、危険を避ける、先の見通しを立てる、コミュニケーションを仲立ちするなどの支援を提供します。・重度障害者等包括支援:最重度の障害(原則として障害支援区分が最重度の「6」であること)があり、常時の介護を必要としている方に対して、居宅介護や短期入所、生活介護など複数の介護サービスを組み合わせて提供します。・短期入所(ショートステイ): 障害のある方を介護している家族などの病気や所要、一時的な休養などのため、短期間、施設に入所するサービスを提供します。・療養介護:医療的ケアと介護を常に必要とする方に対して、医療機関などで医療サービスや介護、介助などをトータルに提供します。・生活介護: 日常的な介護や見守り、生活支援などを必要としている方(原則として障害支援区分「3」以上であること)に対して、日中の介護、介助や見守り支援を行うほか、創作的活動や生産活動、地域との交流活動などを提供します。・施設入所支援:重度の障害のある方(原則として障害区分「4」以上であること)に対して、施設内での夜間の介護、介助や見守り支援などを提供します。■訓練等給付・自立訓練: 障害のある方が地域で自立した生活を送ることができるよう、身体機能と生活能力の向上を目指した訓練を提供します。自立訓練には機能訓練と生活訓練の2種類があります。・就労移行支援: 一般企業での就労や、自ら企業することを希望する方に対して、就労や企業に必要な知識・能力の向上を図る訓練を提供しています。・就労継続支援: 一般企業などで働くことが難しい方に対して、福祉的な支援を受けながら働く場所を提供し、就労に向けた知識・能力の向上を目指す支援を提供します。就労継続支援には、雇用契約を結び最低賃金の支払いを原則とする「A型」と、雇用契約は結ばずに軽作業などを中心とする「B型」の2種類があります。・共同生活援助(グループホーム):標準的には5名程度(最大でも10名)の共同生活を行う住居において、相談や日常生活上の援助、食事や入浴、トイレなどの介護サービスを提供します。グループホームから一般住宅の生活に移行を目指す人を対象とした「サテライト型」もあります。自立支援医療とは、心身の障害の状態に対応した医療に対して、医療費の自己負担額を軽減する医療費の公費負担制度です。障害者自立支援法の成立以前はそれぞれ身体障害者福祉法に基づく「更生医療」、児童福祉法に基づく「育成医療」、精神保健福祉法に基づく「精神通院医療費公費負担制度(32条)」と、各個別の法律で規定されていました。これらを一元化した新しい制度として自立支援医療制度が創設されました。よって根拠となる法律はそれぞれの法律におきながらも、障害者総合支援法のもとで給付が行われるようになりました。給付には市区町村等で自立支援医療費支給の認定(支給認定)を受ける必要があります。・育成医療:身体障害のある子どもを対象に、障害を改善、軽減することで生活の能力を得ることが期待される治療に対して医療費の自己負担を軽減するものです。・更生医療:身体障害者を対象に、障害を改善、軽減することで生活の改善が期待される治療に対して医療費の自己負担を軽減するものです。・精神通院医療:精神疾患(てんかんを含む)の人を対象に、精神科の通院医療にかかる医療費の自己負担を軽減するものです。日常生活を円滑に送るために、身体の欠損や障害を負った身体機能を補完・代替する車いすや装具、義肢や補聴器、白杖などの用具に対して、補装具費(原則として、購入・修理費用の1割)を支給するものです。障害者総合支援法の地域生活支援事業は地域の実情に応じた支援を提供出典 : 地域生活支援事業は都道府県や市区町村が地域の実情に応じてさまざまなサービスや事業を実施するものです。住民に身近な市区町村で実施する地域生活支援事業には、外出時の付き添いを行う「移動支援」や、福祉用具を給付、貸与する「日常生活用具」、手話通訳や要約筆記を派遣する「意思疎通支援」、判断力が十分ではない人が成年後見人制度を利用しやすくするための「成年後見人支援事業」などがあります。地域生活支援事業には市区町村が主体の事業と都道府県が主体の事業があり、都道府県は人材育成や都道府県内の広域な事業を担うことになっています。Upload By 発達障害のキホン■市区町村事業・障害に対する理解促進・啓発・障害のある方や家族が自発的に行う活動の支援・相談支援事業・補助を受けなければ成年後見制度の利用が困難である方への費用助成・手話通訳者、要約筆談者などの派遣・設置・日常生活具の給付または貸付・手話奉仕員養成研修・移動支援事業・地域活動支援センターの設置・運営・福祉ホームの設置・運営・その他の日常生活又は社会生活支援など■都道府県事業発達障害や重症心身障害、高次脳機能障害など、支援に際して高い専門性や広域性が必要とされる障害について、相談に応じ、必要な情報提供を行っています。また手話通訳士や要約筆記者などの意思疎通ができる人材の育成を行っています。障害者総合支援法の相談支援事業は、困った時の強い味方出典 : 障害者総合支援法の下では、さまざまなサービスを組み合わせて支援プランをつくることができます。しかし、実際に利用するとなると、どのようなサービスがあって、自分はどれを受けられるのか、分からない点や不安な点が出てくると思います。その場合は、市区町村の障害福祉担当窓口や市区町村から委託された基幹相談支援センター、市区町村から指定を受けた特定相談支援事業所で相談支援を受けることができます。■基本相談支援障害がある方の福祉に関するさまざまな問題について、障害のある方や家族からの相談に応じ、必要な情報の提供、障害福祉サービスの利用のアドバイスなどを行うほか、成年後見人制度の利用など権利擁護のために必要な援助も行います。窓口は市区町村や市区町村から委託された基幹相談支援センター、市区町村から指定を受けた特定相談支援事業所になります。■計画相談支援・サービス利用支援障害福祉サービスなど申請を行う際に、障害のある方や家族から生活上の困りごとや将来の希望などをうかがい、サービス等利用計画の作成を行います。また福祉サービスを利用する際には、サービス事業者などと連絡調整を行います。窓口は市区町村の障害福祉課または市区町村から指定された指定特定相談支援事業者になります。・継続サービス利用支援支給決定されたサービスの利用状況の検証や生活上の状況確認(モニタリング)を行うとともに、サービス事業者などとの連絡調整を行い、必要に応じてサービス等利用計画の見直しをします。窓口は市区町村の障害福祉課または市区町村から指定された特定相談支援事業者になります。■地域相談支援・地域移行支援障害者支援施設等に入所している障害がある方や精神科病院に入院している精神障害のある方(原則として1年以上入院している方で、市区町村が必要と認める方)を対象に、地域生活へ移行するための支援計画の作成、生活環境が変わることへの不安の解消、外出への同行支援、住居確保、関係機関との調整などを行います。相談窓口は都道府県から指定された一般相談支援事業者になります。・地域定着支援居宅において単身で生活している障害のある方など、地域における安定した暮らしの実現に支援を必要とする方を対象に、常時の連絡体制の確保と、緊急時の対応などの支援を行います。相談窓口は都道府県から指定された一般相談支援事業者になります。■障害児相談支援障害児相談支援は児童福祉法を根拠に障害者総合支援法で実施しているサービスです。・障害児支援利用援助障害のある子どもが利用する障害児通所支援の申請を行う際に、障害児支援利用計画の作成を行います。また福祉サービスを利用する際には、サービス事業者などと連絡調整を行います。窓口は市区町村の障害福祉課または市区町村から指定された障害児相談支援事業者になります。・継続障害児支援利用援助支援決定されたサービスの利用状況の検証や生活上の状況確認(モニタリング)を行い、サービス事業者などとの連絡調整などを行い、必要に応じて障害児支援利用計画の見直しをします。窓口は市区町村の障害福祉課または市区町村から指定された障害児相談支援事業者になります。以上のように障害者総合支援法では、さまざまな相談に応えることができるよう体制を整えています。しかし、指定一般相談支援事業者、指定特定相談支援事業者、指定障害児相談支援事業者と言われても、どこに行って相談すれば良いのか、少々分かりにくいかもしれません。お住まいの市区町村のホームページなどで情報を得たり、または市区町村の障害福祉担当窓口や発達障害者支援センターなどへ問い合わせたりするとよいでしょう。障害がある子ども向けサービスは、児童福祉法で提供されます出典 : 障害のある子ども向けの各種福祉サービスは、児童福祉法に基いて提供されています。これは、平成24年の児童福祉法改正にあわせ、障害があっても「子ども」である以上は児童福祉の枠組みで支援すべきである、という理念を取り入れ、障害児だけが対象の福祉サービスを児童福祉法へ一元化したことによるものです。そのため、障害のある子どもについては、児童期に限定した福祉サービスは児童福祉法、児童も成人も対象となる福祉サービスは総合支援法が適用法令となります。もちろん、利用申請をして支援決定を受ければ、同時に両方のサービスを受けることができます。児童福祉法は子どもの支援に関する法律です。この法律における障害児福祉サービスの対象は障害のある18歳未満の子どもと定義されており、サービスは障害児通所支援と障害児入所支援の2つに分けることができます。支給決定の主体は、障害児通所支援が市区町村、障害児入所支援が都道府県となります。また、児童福祉法における「障害児」の規定には特に障害者手帳の所持が条件となっていないため、サービスの利用に当たり、手帳の有無は問われません。ただし、医師の診断書により障害があることを確認するケースはあります。■障害児通所支援障害児通所支援とは施設や事業所に通所して、日常生活や集団生活を送るために必要な能力を身につける支援を提供するサービスです。児童発達支援、医療型児童発達支援、放課後等デイサービス、保育所等訪問支援の4種類があります。Upload By 発達障害のキホン詳しくは以下の記事、「障害児通所支援(児童発達支援・放課後等デイサービス)利用手順・施設選びのポイント・申し込み方法まとめ」を参考にしてみてください。■障害児入所支援障害児入所支援とは、療育などの必要性が認められた障害のある子どもを施設に入所させ、自立した生活を送ることができるよう支援するサービスです。障害のある子どもが入所できる施設は全国的にも限られているため、障害児入所支援については都道府県や大規模な政令指定都市などが所管する児童相談所が支給決定しています。障害児入所施設は医療機関を併設しているかどうかによって福祉型障害児入所施設と医療型障害児入所施設の2種類に分類されます。Upload By 発達障害のキホン障害児通所・入所支援を利用するには、通所受給者証または入所受給者証の交付を受ける必要があります。通所受給者証はお住まいの市区町村の福祉担当窓口・障害児相談支援事業所などに申請を行い、サービスの利用が認められ、支給決定を受けると取得できます。入所受給者証は各都道府県や政令指定都市などの児童相談所に申請し、サービスの利用が認められ、支給決定を受けると取得できます。それぞれ、受給者証が交付されたら、指定障害児通所事業所・入所施設などとサービスの利用契約を結ぶことができます。自治体ごとに申請方法が異なりますので、お住まいの地域に確認しましょう。詳しくは以下の記事、「【障害児通所・入所給付費】受給者証の取得方法、体験談まとめ」を参考にしてみてください。まとめ出典 : 障害者総合支援法では一人ひとりの障害特性や生活環境などを考慮しながら、本人に合ったサービスを提供しています。また平成30年に施行される法改正によって、よりきめ細やかなサービスの提供を図るため、障害福祉サービスを取り巻くさまざまな関係者との連携やサービスの質の向上、サービス内容の情報開示などの努力がなされます。以前と比べれば自分に合ったさまざまな支援を受けられるようになり、サービスが充実していけば家族の負担も少しずつ減ってくるでしょう。障害福祉サービスを取り巻く環境は着実に良い方向へと変化しているのではないでしょうか。また、障害のある子どもに関しては、障害者総合支援法だけでなく児童福祉法に基づくサービスなども並行して利用できます。さまざまな支援サービスを組み合わせるなど工夫し、上手に使うことで障害がある方とその家族の地域生活が充実していくことを期待したいところです。
2017年08月04日障害者総合支援法とは出典 : 障害者総合支援法とは、障害のある方もない方も住み慣れた地域で生活するために、日常生活や社会生活の総合的な支援を目的とした法律です。正式名称は「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」ですが、略して「障害者総合支援法」と呼ばれています。この法律に基づき、障害のある子どもから大人を対象に、必要と認められた福祉サービスや福祉用具の給付や支援を受けることができます。実施主体は主に市区町村、都道府県などの地方公共団体です。障害者総合支援法の概要|厚生労働省障害者総合支援法ができたわけ出典 : 障害者総合支援法が施行されるまでには、障害のある人が利用する福祉サービスの利用方法や負担額の決定方法を改正・改善してきた歴史があります。2003年3月まで、障害のある人が利用する福祉サービスの利用内容や利用できる量はすべて行政(都道府県や市区町村)が決定していました。これを措置制度といいます。しかし障害のある人の暮らしぶりを何から何まで行政が決定する仕組みには批判も多くありました。2000年には、高齢者が利用する福祉サービスについては原則として措置制度をやめて「介護保険制度」へ移行したことも受けて、支援費制度が導入されました。これは市区町村から福祉サービスの支給決定を受けた障害のある人が、サービスを提供する事業所を選択し、事業所との契約によって福祉サービスを利用する仕組み(利用契約制度)を取り入れており、大変に画期的なものでした。しかし、支援費制度の導入によりサービスの利用者が増加したこともあり、財源の確保が困難になったほか、地域ごとのサービス提供格差や障害種別(身体障害、知的障害、精神障害)間の格差が生じる問題が発生しました。(支援費制度は精神障害が対象外でした。)これらの問題を解決するために、、2005(平成17)年11月に「障害者自立支援法」が公布されました。しかし法律の理念がないことや、サービスの必要性を図る基準(障害程度区分)が障害特性を十分に反映していないなど、施行当初から問題が指摘されていました。特にそれまでは障害年金が収入の中心であれば自己負担なしだったところ、自立支援法では、サービス利用者に原則として1割の自己負担を設定しました。そのため、収入よりも自己負担額の方が多くなる人も出てしまい、サービスの利用を減らしたり控えたりするケースも発生しました。そこで2010年には自立支援法を改正し、1割の自己負担額を改め、以前のように利用者の収入に見合った自己負担(障害年金が収入の中心であれば自己負担なし)の設定となりました。さらにその後2013年には、「共生社会の実現」や「可能な限り身近な地域で必要な支援を受けられる」といった法の基本理念を定め、福祉サービスを利用できる障害者の範囲を見直して、難病がある方も対象にするなどの改正が行われ、現在の「障害者総合支援法」が成立したのです。なお、障害者総合支援法については、法の施行後3年が経過した時点で内容を見直すことになっており、2016年にさらなる法改正がなされています。改正された障害者総合支援法は平成30年(2018年)4月から施行されることになっています。 NET独立行政法人 福祉医療機構「障害者福祉制度解説」障害者自立支援法から障害者総合支援法改正への改善点4つのポイント出典 : 障害者自立支援法から障害者総合支援法への法改正が行われたことで、いくつかの改善点がありました。今回はその中でも主なポイントを4つご紹介しながら、障害者総合支援法の概要をご紹介します。法改正前の自立支援法では基本理念は設けられていませんでした。法改正によって、障害のある人を権利の主体と位置づける基本理念を定めました。基本理念の設定により、住み慣れた場所で可能な限り必要な支援が受けられることや、社会参加の機会の確保、どこで誰と暮らすかを選べるなど、障害のある人が保障されるべき権利がより明確に打ち出されたほか、障害の有無によって分け隔てられることのない「共生社会」を目指す方向性が示されました。障害者総合支援法の福祉サービスは、こうした理念に基づいて実施されることとなります。第一条の二 障害者及び障害児が日常生活又は社会生活を営むための支援は、全ての国民が、障害の有無にかかわらず、等しく基本的人権を享有するかけがえのない個人として尊重されるものであるとの理念にのっとり、全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会を実現するため、全ての障害者及び障害児が可能な限りその身近な場所において必要な日常生活又は社会生活を営むための支援を受けられることにより社会参加の機会が確保されること及びどこで誰と生活するかについての選択の機会が確保され、地域社会において他の人々と共生することを妨げられないこと並びに障害者及び障害児にとって日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のものの除去に資することを旨として、総合的かつ計画的に行わなければならない。支援費制度から自立支援法、そして障害者総合支援法という法制度の変遷は、支援対象となる人が見直されてきた歴史でもあります。かつて支援費制度下では、精神障害のある人は支援の対象ではありませんでした。それが自立支援法の成立によって支援の対象となりましたが、今度は発達障害のある人の位置付けが不明確であることが課題となり、2010年の自立支援法改正で発達障害も支援の対象であることが明確化されました。総合支援法ではこれまで支援が行き届かなった難病等の疾患のある人についても、支援対象者として新たに加わることとなり、サービスを受けられる方の範囲が広がりました。平成29年4月時点で、対象となる疾病は358疾病が対象になっています。詳しくは次の厚生労働省のサイトを参考にしてみてください。障害者総合支援法対象疾病(難病等)の見直しについて|厚生労働省自立支援法では、福祉サービスの利用に際し、障害の程度を測る指標を導入して、サービスの給付決定をしていました。これを「障害程度区分」と呼びます。ただ、主に日常生活行為が「できる」か「できない」かに着目して障害の程度を測っており、例えば食事が自分でできる/できないかだったり、排泄が自分でできる/できないかだったりで、できる項目が多ければ障害の程度は軽く、できない項目が多ければ障害の程度は重いという考え方が基本となっていました。しかし、一口に障害といっても、その実情は一人ひとりさまざまです。日常生活の中でも、自分でできるけれど時間がかかったり、自発的に行えなかったり、症状の調子が悪い時にはできなくなるなど、条件付きで「できる」という方もいます。どの程度生活に支障があるかは人によって異なりますし、「できる」「できない」で障害の程度を判断することは難しいのです。そこで障害者総合支援法では障害程度区分を改めて「障害支援区分」とし、障害のある人それぞれの生活環境を踏まえ、どのような支援をどの程度必要とするかといった度合いを測ることになりました。コンピュータによる一次判定とかかりつけ医の意見書、市区町村の審査会による二次判定によって、障害支援区分を認定することになっています。支援区分は7段階の区分に分かれ、もっとも支援の必要性が高い区分が「6」、以下「5・4・3・2・1」と続き、もっとも支援の必要性が低い場合は「非該当」となります。この支援の必要性の区分によって、支給されるサービスの時間に違いが出てきます。一部のサービスは支援区分が低いと利用できないことがあります。重度訪問介護とは、日常生活上で常に介護を必要とする方に対して、ヘルパーを長時間(最大で24時間)派遣し、訪問介護や身体的な介護や家事の援助、外出の付き添いや生活を送る上での相談や助言などを行う支援です。従来は身体障害者のなかでも重度の肢体不自由者のみが対象でしたが、その他の障害がある方でも提供されるようになりました。具体的には、重度の肢体不自由・知的障害・精神障害により重度の行動障害がある人(行動援護サービスに該当する程度の人)で、障害支援区分が「4」以上の人です。これにより、行動障害がある人も重度訪問介護を活用して一人暮らしするという選択肢が増えたといえます。障害者総合支援法の2本柱は、自立支援給付と地域生活支援事業障害者総合支援法のサービスは、大きく自立支援給付と地域生活支援事業の2種類があります。どちらも市区町村または都道府県が実施主体となっていますが、位置付けには違いがあります。自立支援給付は、国がサービスの類型や運用ルールを定めるもので、障害のある人が福祉サービスを利用した際に、行政が費用の一部を負担するものです。法律上は全体費用の「9割」を給付しますが、住民税が非課税の世帯であれば全額(10割)を給付します。一方、地域生活支援事業は、都道府県、市区町村が主体となって実施するもので、大まかな枠組みは国から示されていますが、サービスの類型や運用ルールは都道府県、市町村が定めています。障害のある方がお住まいの地域で自立した生活を送るために必要な支援のうち、地域の特性に応じて実施するサービスが位置付けられています。自立支援給付に位置付けられているサービスは、障害福祉サービス(介護給付・訓練等給付)、自立支援医療、相談支援事業、補装具の大きく4つです。たとえば障害福祉サービスでいえば、ヘルパーサービスや施設への通所・入所を利用するサービス、就労支援などが挙げられます。詳しくは以下の図をご覧ください。Upload By 発達障害のキホン地域生活支援事業として提供されるサービスには、障害のある人の外出に付き添う移動支援や、福祉用具である日常生活用具の給付または貸与、手話通訳や要約筆記を派遣する意思疎通支援、成年後見制度支援などが含まれます。地域生活支援事業の中には、市区町村が主体の事業と、都道府県が主体の事業があります。都道府県は手話通訳士などの人材育成や都道府県内の広域な事業を担い、市区町村は障害のある人に身近な自治体として、移動支援や日常生活用具の給付、貸与といった利用者にサービスを提供する役割を担っています。詳しい分類は以下の図をご覧ください。Upload By 発達障害のキホン障害者総合支援法は障害者手帳がなくても使える?利用対象は?出典 : 障害者総合支援法のサービスを使うためには、原則として障害者手帳が必要ですが、一部を除いて医師の診断書があれば手帳がなくても使うことができます。障害者総合支援法のサービス利用対象者は次のように定められています。・身体障害者・・・身体に障害がある18歳以上の人で、都道府県知事から身体障害者手帳の交付を受けている人・知的障害者・・・障害者福祉法にいう知的障害者のうち18歳以上の人・精神障害者・・・統合失調症、精神作用物質による急性中毒、またはその依存症、知的障害、精神病質などの精神疾患を持つ人(知的障害は除く)・発達障害者・・・発達障害があるため、日常生活や社会生活に制限がある18歳以上の人・難病患者・・・難病等があり、症状の変化などにより身体障害者手帳を取得できないが、一定の障害がある18歳以上の人・障害児・・・身体障害、知的障害、発達障害を含んだ精神障害がある児童、または難病等があり、一定の障害がある児童参考文献:遠山真世,二本柳覚,鈴木裕介/著『これならわかるすっきり図解障害者総合支援法』2014年 日経印刷/刊ここからも分かるとおり、サービスを受給するために障害者手帳が必要なのは身体障害がある方のみになります。身体障害以外の障害がある方は、本人や家族の希望と医師の診断書があればサービスの利用申請を行うことができます。ただし、医師の診断書については、障害や病名が対象となるかどうかを確認するため、国際的に使われている病名分類コードの記載が必須となります。詳しい情報やサービスの受給を希望する方はお住まいの市区町村の障害福祉課担当窓口へお問い合わせください。平成30年施行の法改正において創設されるサービスなどを紹介します!出典 : ここまでご説明してきた障害者総合支援法ですが、「生活」と「就労」に対する支援をより一層充実させることを目標とした新サービスの創設や、既存のサービスをより充実させるための法改正が行われました。正式名称を「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律及び児童福祉法の一部を改正する法律」といい、障害者総合支援法と児童福祉法の一部が平成28年(2016年)に改正され、平成30年(2018年)に施行されます。児童福祉法のなかには18歳未満の障害児を対象とする支援が定められています。障害児が障害者総合支援法に基づいている障害福祉サービスを利用する場合もありますが、児童発達支援や放課後等デイサービス、保育所等訪問支援などは児童福祉法に根拠を置いています。今回の法改正では障害児への支援の拡充が盛り込まれました。そのため、今回は総合支援法とあわせて児童福祉法の一部改正についても説明していきます。■自立生活援助の創設現在、障害者支援施設やグループホーム入所・入居している方の中には、賃貸住宅などで一人暮らしを希望する方もいます。しかし知的障害や精神障害によって、生活能力に不安定さがあることなどで一人暮らしを選択できない方がいます。自立生活援助では本人の意思を尊重した地域生活を支援するため、一定期間にわたり定期的な巡回訪問を行い、食事や掃除、公共料金の滞納はないか、地域住民との関係は良好かなどの確認を行います。また定期的な訪問だけではなく、電話やメールなどで随時相談が行うことができるようになります。■就労定着支援の創設就労移行支援などを利用し一般企業へ就労した方で、就労に伴う環境の変化によって生活面に課題が生じてしまう方がいます。たとえば遅刻や欠勤の増加、身だしなみの乱れや業務中の居眠りなどの課題が環境の変化によって新たに生じるなどです。就労定着支援は就労定着支援事業所の方が職場・家族・関係機関への連絡調整を行ったり、職場や自宅に訪問し、生活リズムや体調などの指導や助言などを行ったりすることで、環境の変化に適応できるようサポートします。■重度訪問介護の訪問先の拡大重度訪問介護を利用している人が入院した際、普段利用していたヘルパーに支援をお願いすることが制度上できませんでした。またその人の特性やニーズに合った支援が入院先へ引き継げない場合もあり、利用者が困ってしまうことがありました。この改正によって、重度訪問介護を利用している方が入院中の医療機関においても、利用者の状態を熟知しているヘルパーを引き続き利用したり、そのニーズを的確に医療従事者に伝達したりなどの支援が利用できるようになります。■高齢障害者の介護保険サービスの円滑な利用障害福祉サービスと同様のサービスが介護保険法にある場合は、介護保険サービスの利用が優先されるようになっています。さらに高齢障害者が介護保険サービスを利用する場合、障害福祉制度と介護保険制度の利用者負担上限が異なるため、利用者負担(1割)が新たに発生する場合があります。またこれまで利用していた障害福祉サービス事業所とは別の介護保険事業所を利用しなければならないことがあるなどの課題が指摘されています。この改正によって、たとえば65歳になるまでの長期間にわたり障害福祉サービスを受けていた障害のある方、障害福祉サービスに相当する介護保険サービスを利用する場合、一定程度以上の障害支援区分の方や低所得者に対して、介護保険サービスの利用者負担が軽減されるような仕組みが設けられます。障害福祉サービス事業所が介護保険事業所としても機能しやすくするなどの見直しを行い、介護保険サービスがより円滑に利用できるようになります。■重症心身障害児などに対して訪問型の児童発達支援が創設障害児支援に関しては、複数の児童が集まる通所による支援が子どもの成長に望ましいと考えられていたため、これまで通所支援の充実を図ってきました。しかし現状では、重度の障害のため外出が著しく困難な障害児が発達支援を受けられません。そこで重症心身障害児などの居宅を訪問して発達支援を行うサービスが新たに創設されることになりました。■保育所等訪問支援の支援対象に乳児院と児童養護施設が追加保育所等訪問支援では、これまで保育所・幼稚園、放課後児童クラブ、小学校などに相談支援員が訪問していました。しかし乳児院や児童養護施設の入所者に占める障害児の割合は3割程度となっており、職員による支援に加えて、専門的な支援が求められているため、保育所等訪問支援の対象者を乳児院や児童養護施設の子どもたちにも拡大することになりました。■医療的ケア児に対する支援NICU(新生児特定集中治療室)などに長期入院後、引き続き人工呼吸器や胃ろうなどを使用し、たんの吸引や経管栄養などの医療的ケアが必要な障害児(以下:医療的ケア児)が増加しています。医療的ケア児が地域において必要な支援を円滑に受けることができるよう、地方公共団体は児童発達支援センター、障害福祉サービス事業所、特別支援学校などの福祉機関と、訪問看護ステーション、小児科診療所、地域小児科センターなどの医療機関と連携を図るために連絡調整を行う仕組みをつくることになりました。また医療的ケア児に対する支援については、すでに平成28年6月に施行されています。■障害児サービス提供体制の計画的な構築これまで市町村および都道府県に対して、障害福祉計画および都道府県障害福祉計画の作成を義務付けていました。法改正によって、障害児を対象にした障害児福祉計画および都道府県障害児福祉計画の作成を義務付けることになりました。また障害児相談支援の提供体制を整備し、障害児通所支援などの円滑な実施を確保するための仕組みも導入しました。障害児福祉計画は障害児通所支援や障害児相談支援の必要なサービス量の見込みを示すなどして、提供体制を確保していく努力を行うための計画であり、整備の指針になります。■補装具の貸与制度の追加補装具費は身体障害者の身体機能を補完・代替する補装具の「購入」に対して補助金が支給されていました。したがって、これまでは補装具本体の「貸与」はありませんでした。この改正によって障害児など成長に伴って短期間で補装具の交換が必要となる場合は「購入」を基本とする原則は維持したうえで、「貸与」が適切と考えられる場合には補装具本体の貸与が行われることになります。詳細は今度、関係者の意見を踏まえた上で検討されます。■障害福祉サービスの情報公表制度の創設障害福祉サービスなどを提供する事業所数が大幅に増加するなかで、利用者が個々のニーズに応じて良質なサービスを選択できるようにするとともに、事業者によるサービスの質の向上が重要な課題となっています。施設・事業者に対して障害福祉サービスの内容などを都道府県知事へ報告し、都道府県知事が報告された内容を公表する仕組みがつくられます。この情報をもとに利用したいサービスを提供している事業所を選択することができるようになります。■自治体による調査事務・審査事務の効率化障害者自立支援法の施行から10年が経ちました。障害福祉サービスなどの事業所数や利用者数は大きく増加しており、自治体による調査事務や審査事務の業務量が大幅に増加しています。この改正に伴い事務の一部を委託可能にするために必要な規定を整備することになりました。 たとえば、利用を検討している方に向けて利用審査に必要な質問や、関連文書の作成などを、許される範囲内で行政から委託された民間法人が担うことができるようになります。参考:「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律及び 児童福祉法の一部を改正する法律」について(経過) |厚生労働省まとめ出典 : 障害者総合支援法は障害の有無に関わらず、共に住み慣れた地域で暮らすことができる社会(共生社会)を実現するためにつくられた法律です。障害がある子どもから大人まで利用できる、自立支援給付や地域生活支援などのサービスがあります。また具体的にどんなサービスがあるのか、サービスを受けられる対象者に当てはまるかなどの相談に応える相談支援もあります。ただ、サービスも各地域によって特色がありますので、総合支援法の利用を検討中の方はお住まいの市区町村の担当窓口にお問い合わせください。障害者総合支援法は自立支援法を改正して生まれた法律です。しかし自立支援法時代からの課題が全て改善されたわけではありません。障害のある人の支援に関する法律は、今後も議論や改正を重ねながら、その時代や地域、利用者のニーズに適したサービスを提供していくことでしょう。
2017年07月31日臨床発達心理士とは?出典 : 臨床発達心理士とは、人の発達・成長・加齢に寄り添い、発達心理学等の専門的な知識を生かして健やかな育ちを支援する専門家です。また、赤ちゃんからお年寄り、子育て中の保護者や障害のある人など、幅広い世代、状況の人たちを支援対象としていて、人の生涯発達に関する臨床に携わる幅広い専門家に開かれた民間資格です。人は年齢を重ねていくなかで、自分自身や家族関係、友人関係、学校生活や就職などさまざまな悩みや問題に直面します。それらの問題は環境や時間の経過、またその時々の支援の在り方によっても変化していきます。したがって、生涯発達の中で出会うさまざまな問題の解決にあたっては、まず問題を正しく理解し、それに基づいて適切な支援を行う専門家が求められます。そこで誕生したのが「臨床発達心理士」の資格です。現在、「~心理士」「~カウンセラー」などの名がついた心理士の関連資格は70以上にものぼると言われています。そのうち「臨床」という名称を持つ資格はいくつかありますが、「発達」という名前が付いているのは臨床発達心理士だけです。つまり、さまざまな心理職のうち発達を専門とする資格ともいえるでしょう。参考:一般社団法人臨床発達心理士認定運営機構[編] 臨床発達心理士わかりやすい資格案内[第3版](金子書房.2017)参考:本郷一夫「臨床発達心理士の専門性と果たすべき役割」臨床発達心理士になるには?出典 : 「臨床発達心理士」資格は、学会連合資格「臨床発達心理士」認定運営機構が認定している民間資格です。臨床発達心理士の資格を取得するには、受験資格を満たしたうえで年に1度、9~12月にかけて行われる資格審査に合格しなければいけません。資格取得までの流れとしては、申請書類の購入、申請手続き、一次審査(書類/筆記/業績等)、二次審査(口述審査)、資格認定といったステップがあります。1. 発達心理学を中心とした心理学諸分野の科学的・理論的な知識2. 人間が実際に発達する場に関する社会的・実践的な知識3. 人間の発達をアセスメントし支援する臨床的な知識・技能これらを習得するための基礎となる学問領域は「発達心理学」または「発達心理学隣接諸科学」です。具体的には発達心理学、その他心理学、教育学、保育学、福祉学、小児科学、医学、看護学、リハビリテーション学、発達障害学、保健体育学、体育心理学、スポーツ健康科学、人間社会学、人間学、児童学、応用人間科学、コミュニケーション学、児童教育学社会学などです。2017年度から資格申請制度が新しくなり、申請タイプが5つにまとめられました。1. 発達心理学隣接諸科学の大学院修士課程在学中または終了後3年未満2. 臨床経験が3年以上あり、かつ発達心理学隣接諸科学の大学院を修了している3. 臨床経験が3年以上あり、かつ発達心理学隣接諸科学の学部を卒業している4. 大学や研究機関で研究職をしている5. 公認心理師を取得している変更点としては以下の2つがあげられます。・国家資格である「公認心理師」資格取得者が申請できること。・「公認心理師」資格が心理学系大学卒業以上を前提としていることから、発達心理学諸科学の大学や、短期大学や専門学校を卒業した人が申請できるタイプを廃したこと。ただし、公認心理師資格は2018年度以降習得可能であるため、経過措置として2019年度までは旧制度での申請も受け付けています。資格申請をするにあたって、自分の受けた教育歴と臨床発達支援に関する実践の経験年数に合わせて、以下に示す申請タイプの中から最も自分にあったタイプを適切に選びましょう。また、資格を取得すると、「日本臨床発達心理士会」に入会するとともに全国に20ある支部のどこかに所属することが義務づけられます。さらに、資格の有効期間は5年で資格更新をすることも義務付けられています。資格更新は、試験ではなく資格取得後に十分な研修を積んだか、高い専門性を保持することに努めたかがポイントに換算され審査されます。出典:資格取得までの流れ|一般社団法人臨床発達心理士認定運営機構出典:資格申請新制度のご案内|一般社団法人臨床発達心理士認定運営機構出典:資格更新ガイドライン|一般社団法人臨床発達心理士認定運営機構参考:一般社団法人臨床発達心理士認定運営機構[編]わかりやすい資格案内(金子書房.2017)p18~41臨床発達心理士スーパーバイザーとは、臨床発達心理士になろうとしている人や臨床発達心理士になった人(スーパーバイジー)に対して、スーパービジョン(指導者から教育を受ける過程)を通して支援し、育成する役割を担う人のことです。申請要件は以下の3つになります。1. 臨床発達心理士の有資格者2. 臨床発達心理士資格取得後、5年以上関連する業務・活動を継続3. 臨床発達心理士資格を1回以上更新している出典:臨床発達心理士スーパーバイザーとは|一般社団法人臨床発達心理士認定運営機構臨床発達心理士はどのような人を支援するの?出典 : 臨床発達心理士は赤ちゃんから高齢者までの年代の人を対象として発達を支援する人の資格です。そのため、支援の対象はとても幅広いです。具体的に以下のようなケースが支援の対象となることが多いです。・新生児、乳幼児と保護者・自閉症スペクトラム、知的障害、LD(学習障害)、ADHD(注意欠陥・多動性障害)などの発達障害・知的障害の診断を受けた人・育児不安、虐待、不登校、引きこもりなどの現代的問題を抱える人・「気になる子」、障害の有無/グレーゾーンかの判断に対して悩みを持つ人・社会適応や成人期・老年期の悩みを持つ人臨床発達心理士の活躍の場と具体的な支援出典 : 「臨床発達心理士」資格のある人が特定の職場にいるわけではありません。赤ちゃんから高齢者を対象として発達を支援する人のための資格であることから、資格を持つ人の活躍する場は多岐にわたります。以下では、支援対象の年代別に具体的な職場やどのような仕事をしているのかを紹介していきます。・新生児医療の場:育児不安の解消、愛着形成への援助など・保育所/幼稚園:保育者、保育カウンセラー、特別支援教育コーディネーターとしての業務など・家庭支援センター:親子広場スタッフ、子育て講座の講師、家庭相談スタッフなど・保育巡回相談:主に行政からの委託で保育所、幼稚園を巡回・乳児院/児童養護施設:カウンセリング、セラピーの実施など・保健所/保健センター:妊娠中に両親学級の講師やグループワークのスタッフ、乳幼児健診および発達が気になる子どものフォローなど・小中学校/高校/大学:教師として特別支援教育コーディネーターの業務など・スクールカウンセラー:校内相談業務、保護者支援、校内研修会講師など・教育委員会:教育相談、就職相談等の相談業務、心理検査の実施など・発達支援センター:障害児童やグレーゾーンの子どものアセスメント、相談、療育など・放課後デイサービス:指導員へのコンサルテーション、保護者支援など・学童保育所:指導員へのコンサルテーション、保護者支援など・学童相談室:大学等での学生相談室でのアセスメント・児童相談所:心理判定、相談、指導業務など・特別支援学校:教育のアセスメント、指導評価の実施、保護者支援、教育機関への巡回相談など・特別支援学級/通級指導教室/言葉の教室:教育のアセスメント、教育支援計画作成、校内特別支援コーディネーター業務など・障害者施設/作業所:セラピー、カウンセリング、家族支援など・高齢者施設:カウンセリング、セラピー、心理検査の実施など・企業:企業内相談業務、心理調査など・病院・クリニック(小児科・精神科・診療内科等):患者・保護者へのカウンセリング、患者へのセラピー、心理検査の実施など上記の職種以外に、臨床発達心理士以外の資格を保持しているひとは、職種の幅にも広がりがあります。臨床発達心理士の中には、他の資格や免許も有しながら職務に就いている場合も多いので、純粋に心理職として働いているケースばかりではありません。例えば、家庭裁判所で調査官として仕事をする人、震災時に現場に赴いて支援をする人、研究者として働く人の中にも、臨床発達心理士の資格を生かして仕事をしている人が多くいます。臨床発達心理士の視点を持って、両者の領域で培われた専門性を活かして活動しているのです。しかし、医師免許を有している場合でない限り、臨床発達心理士は医療行為全般(薬を用いた治療や障害かどうかの確定診断をすること)はできません。また医師にかかる場合は、健康保険が適用されますが、臨床心理士に相談する場合は基本的には健康保険が適用されません。参考:一般社団法人臨床発達心理士認定運営機構[編]わかりやすい資格案内[第3版](金子書房.2017)p89.90臨床発達心理士による発達障害に対するアセスメント出典 : 有効な支援を行うためには、その問題を解決するために情報を集め、それをもとにその人にあった支援の方法を計画していく必要があります。これをアセスメントと言います。ここでは、一つの例として発達障害の支援計画を立てるための代表的なアセスメントについて具体的に説明していきます。◇対象の支援ニーズに関する情報収集聞き取りや観察によって生育歴や育児についての情報や、発達の経過、現在の行動や状況など日常生活に関する情報を集め、支援ニーズを知ることから始まります。これは、保護者や保育者、家族などと共同で行うことが望ましいです。◇対象を取り巻く環境に関する情報収集園や施設に通っている場合は、それらの環境に関する情報を収集する必要があります。また、家庭環境や地域環境についての情報の収集も、支援を考える際に重要になっていきます。これらの情報をもとに問題の暫定的な把握をしたうえで、発達状態の情報を収集します。◇知能検査知能検査ではおもにIQ(知能指数)の値を指標とすることが多いです。従来は、精神年齢と生活年齢をもとにもとめる比例IQを用いることが多かったですが、最近では、同年代の平均との隔たりをもとにもとめる偏差IQが中心になってきています。知能検査を行う目的は認知発達の水準を科学的・客観的に評価することで、その人の得意分野、不得意分野を分析することです。知能検査の結果からわかるその人の得意、不得意分野から療法の方向性を決定するために使われます。代表的な知能検査に以下のようなものがあります。・ウェクスラー式知能検査・田中ビネー知能検査◇発達検査発達検査では日常生活や対人関係などにおける子どもの発達基準を数値で表したDQ(発達指数)を算出します。子どもが成長していくには、発達段階に適したアプローチが必要になります。そのため、発達段階を客観的に知るための手段として発達検査は使われます。ただし、発達指数の値だけで子どもの発達状態を判断をすることはありません。あくまでものさしの一つであり、発達検査から分かる能力のバランスや日常生活の様子などを総合して子どもの発達状態を把握します。代表的な発達検査には以下のようなものがあります。・新版K式発達検査・乳幼児精神発達診断法◇スクリーニング検査発達障害に関するスクリーニング検査は、どの精密検査を行うべきかの判断や潜在的な発達遅れや発達障害の可能性を検査するために行われます。スクリーニング検査は、たくさんある発達障害のうち、その子どもに当てはまる可能性がある障害を絞り込むためのものです。スクリーニング検査には網羅性が重要視されるため、正確性はそれほど高くはありません。仮に検査で陽性が出たとしても精密検査するかどうかの判断基準になるだけで、発達障害であることが確定するわけではないということに注意が必要です。スクリーニング検査は乳児健康診査、1歳6ヶ月健康診査、3歳児健康診査などの場でも活用されています。代表的なスクリーニング検査には以下のようなものがあります。・STRAW・M-チャート・ADHD-RS・LDI-R・PARS◇行動観察臨床発達心理士は言葉をかけた時の子どもの反応や、話し方、質問を正しく理解しているのかなどのさまざまな反応をできるだけ詳細に観察して、子どもの特徴やくせを見つけようとします。日常場面における観察だけでなく、臨床発達心理士が状況設定した場面における観察も行うこともあります。上記の生活情報と発達状態の情報をふまえて、それぞれの特徴にあった支援計画を立てていきます。本人に対する支援や保護者への支援だけでなく、施設との連携体制を確立させたり、担当保育者などへの支援計画を立てたりすることもあります。参考:藤崎 真知代「育児・保育現場での発達とその支援 (シリーズ臨床発達心理学) 」(ミネルヴァ書房.2002)p66-70臨床発達心理士と臨床心理士との違いは?出典 : これまでの説明にあるとおり、「臨床発達心理士」とは、赤ちゃんからお年寄り、子育て中の保護者や障害のある人など、幅広い世代、状況の人たちの発達・成長・加齢に寄り添い、人の健やかな育ちを支援する専門家です。それに対して、「臨床心理士」とは、同じ心理系の民間資格ですが、不登校や二次障害、精神障害などのこころの問題をかかえた人に対する心理療法や、こころの問題を予防するための研究にもとづいて、人のこころにアプローチする専門家です。つまり、得意とする支援対象やケースに違いがあります。しかし、どちらの資格も、医療・教育・保健・福祉分野においては活躍の場が同じこともあり、両方の資格を取得することでより広い視点でより広い職域において活躍することができます。支援を受ける人は、一人ひとりの発達の特徴に寄り添った支援をしてくれる専門家を見つけることが大切になってきます。出典:臨床心理士とは|日本臨床心理士資格認定協会臨床発達心理士と公認心理師出典 : いままでは、心理学系の国家資格はありませんでした。そのため近年、心理学系の国家資格をつくろうとする動きがありました。その結果、公認心理師法という法律が平成27年9月9日に成立して、9月16日に公布されました。公認心理師法は、公認心理師という国家資格を定めるとともに、国民の心の健康を増進させていくことを目的にした法律です。公認心理師法の大部分は公布の日から2年以内に施行されることになっています。厚生労働省によれば、平成29年9月15日までに施行される予定になっています。また、第1回国家試験は、平成30年までに実施する予定と発表されています。公認心理師はさまざまな分野にまたがる領域横断的な汎用性のある資格です。それに対して、臨床発達心理士は、臨床発達心理学・発達臨床支援の専門性を有する資格です。公認心理師の資格取得には以下のいずれかに該当する必要があります。1. 「公認心理師になるために必要な科目」を心理学関係の大学と大学院を出て修了する2. 大学で公認心理師になるために必要な科目を修めて卒業し、文部科学省令・厚生労働省令で定める施設で、規定の期間以上心理関係の仕事に従事するまた、公認心理師の職域としては、保健医療、福祉、教育、司法・法務・警察、産業・労働の5領域があげられています。この資格は、医師免許や法曹資格同様に、国家試験に合格し一度取得してしまえば終身その身分が保障されるという考えも多く、臨床発達心理士をはじめとした心理系の取得と併せて資格を取得する人が多くなることが予想されています。参考:公認心理師について|厚生労働省参考:一般社団法人臨床発達心理士認定運営機構[編]わかりやすい資格案内[第3版](金子書房.2017)p10-15まとめ出典 : 臨床発達心理士とは、人の発達・成長・加齢に寄り添い、発達心理学などの専門的な知識を生かして幅広い年代、状況の人たちの健やかな育ちを支援する専門家です。発達支援を必要としている方の困りごとにあった相談先や、サポートを受けられる場の選択肢のひとつとして、臨床発達心理士があるということを知っていただき、よりよい支援を受けられるきっかけになれば幸いです。また、資格制度の変更があったり、新しく公認心理師という国家資格が認定されたりと、手続きや選択が複雑に感じられますが、だからこそ今後より一層発達領域の専門資格として、臨床発達心理士の技能がとても重要な役割を担います。発達支援の仕事をしたいと考えている方が、その専門性の高さを活かしてご活躍されることを願います。
2017年07月12日テーマは「家族支援」−第10回教育実践フォーラム開催!Upload By LITALICOニュース2017年7月23日(日)の13時より、東京・品川の立正大学にて、子どもの発達と家族支援をテーマとしたイベント、「教育実践フォーラム」が開催されます。登壇者は、家族支援研究の第一人者である立正大学心理学部の中田洋二郎教授、鳥取大学大学院の井上雅彦教授ほか、教育と家族支援に携わる研究者、実践者、保護者の方々。「障害のない社会をつくる」をビジョンに、児童発達支援事業や就労支援事業などを展開する株式会社LITALICOが主催し、教育を取り巻く課題と実践、未来の展望を考える「教育実践フォーラム」。2012年の初回企画から数えて、今年で10回目の開催となります。第10回のテーマは「家族支援」。子どもの発達が気になる家族に対する有効な支援方法として行われている「ペアレントトレーニング」の最新の実践・研究動向を取り上げながら、子どもと向き合う保護者たちがどんな困難や悩みを抱えているのか、保護者に対して学校の先生たちや専門家はどのような支援をすべきか、登壇者や来場者の皆さまと一緒に考えていきます。第10回教育実践フォーラム専門家と保護者、それぞれの立場から語る「ペアレントトレーニング」の意義フォーラムの基調講演は、家族支援の第一人者として、長らくペアレントトレーニングの研究と実践を積み重ねてこられた立正大学心理学部教授の中田洋二郎先生。子どもの「困った」行動を分析・修正し、より良い行動を促すペアレントトレーニングは、これまで子どもの養育に悩み苦しんできた保護者の方々にとって、具体的な問題への対応方法を習得し、自信を取り戻す手段として有効だと言われています。一方で、子どもの困難や障害に対する理解を深め、自分自身の行動を変化させていくことは、保護者の方々にとって新たな不安や負担にもつながる可能性があります。ペアレントトレーングが成功し、子どもも、保護者も過ごしやすい環境を作るためには、専門家が単なる技法の伝授にとどまるのではなく、子どもの障害への保護者の認識の変容過程を踏まえ、保護者が孤立しないための配慮や支援が必要になります。中田先生の講演では、保護者の障害認識のあり方などペアレントトレーニングを実施する上で支援者が理解しておくべきことについてお話いただき、家族支援とは何かを会場の皆さんと一緒に考えていきます。Upload By LITALICOニュース中田 洋二郎立正大学心理学部教授専門は発達臨床心理学、発達障害の家族支援。東京都立の知的障害児通園施設の心理判定員を務めた後、国立精神・神経センター精神保健研究所 思春期精神保健研究室長、福島大学大学院教育学研究科教授を経て現職。臨床心理士。基調講演のあとは、専門家・保護者それぞれの立場からペアレントトレーニングについて語るパネルディスカッションです。モデレーターは、鳥取大学大学院教授の井上雅彦先生です。Upload By LITALICOニュース井上雅彦鳥取大学大学院 教授/LITALICO研究所所長(アドバイザー)応用行動分析学を理論的基盤として障害や不適応状態について「環境」と「個人」両方向からの心理的支援や教育を研究。ペアレントトレーニングシステムなどの支援プログラムの開発をはじめ、著書も多数。パネリストは、東京・江戸川区の「まめの木クリニック」にてペアレントトレーニングを実践されている臨床心理士の庄司敦子先生、LITALICOジュニアでのペアレントトレーニングの作成・研修・実施を担当する井田美紗子の2名。それぞれの現場での取り組みが発表されます。中田洋二郎先生は基調講演に引き続きメインコメンテーターとして登壇。また、実際にペアレントトレーニングを受けたことのある保護者の方にもコメンテーターとしてご登壇いただき、ペアレントトレーニングを受けてよかったこと、フォローアップの要望なども含めたペアレントトレーニングのニーズをお話いただきます。7/23(日)教育実践フォーラム詳細開催日時: 7月23日(日) 13:00~17:50(12:30~受付)定員:500名参加費:無料(事前申込制)対象:小学校~高等学校、幼稚園、保育施設の職員、スクールカウンセラーなど、子どもの教育や医療・福祉・行政機関など子どもの支援に関わられている方その他、子どもの発達が気になる保護者の方、教育や発達支援について研究している方など、ご興味のある方はどなたでもお申し込み・ご参加いただけます。会場:立正大学 品川キャンパス 石橋湛山記念講堂(東京都品川区大崎4-2-16)アクセス:「大崎駅」より徒歩5分「五反田駅」より徒歩5分「大崎広小路駅」より徒歩1分お問い合わせ:03-5704-7361(地域教育相談室 岡野)※お申込みは下部ボタンのお申込みフォームよりお願いいたします。お申し込み締め切り:7月22日(土)13:00まで主催:株式会社LITALICO(LITALICOジュニア)12:30~受付開始13:00~開会挨拶&LITALICOの家族支援について(20分)13:20~ペアレントトレーニングの有効性に関する研究報告(20分)13:40~中田洋二郎先生による基調講演(120分)15:40~質疑応答&休憩(15分)15:55~パネルディスカッション(100分)17:35~質疑応答、閉会挨拶、インフォメーション(15分)17:50~教材・展示コーナー自由閲覧(20分)学校や幼稚園、保育園の先生やカウンセラーの方々、子どもの発達が気になり、ペアレントトレーニングに関心がある保護者の方々をはじめ、「家族支援」にご関心がある方はどなたでもご参加いただけます。たくさんの方のご来場をお待ちしております!※2017年6月13日追記:満席のためフォーラムの申し込みは締め切りました。たくさんのお申し込みありがとうございました。残念ながら今回ご参加いただけなかった方も、次回以降のイベント情報をお待ちいただければ幸いです。第10回教育実践フォーラムジュニアペアレントトレーニング
2017年06月09日こんにちは。子育て支援を専門にする臨床心理士の今井千鶴子です。みなさんは、お子さんの“誕生月”を気にされたことはありますか?今回は、“早生まれ”と“遅生まれ”に分けて、それぞれのお子さんを育てるときに気をつけたいポイントをご紹介します。●早生まれの場合ちょっと昔の話ですが、某有名私立の小学校が設立されたときから数年、入学試験のお手伝いをしたことがあります。当時は子どもがいなかったので(結婚もしていませんでした)、入試が誕生月ごとに行われていることにとても驚いた覚えがあります。誕生月ごとにグループ化された子どもたちをいろんな試験が行われている教室へ誘導する係でしたが、生まれ月によって子どもの発達に“差”を感じました。もちろん個々の子ども自身の差はありますが、一般的には、早生まれの子は遅生まれの子に比べて、体格や体力、学力などで引けを取る傾向にあります (ちなみに、小学校入試に関しては、早生まれが不利にならないように考慮されている学校も多いかと思います)。実は、私自身も早生まれですし、息子2人も早生まれです。これは、私自身の経験ですが……小学1年生の成績は惨憺たるものでした。もちろん、早生まれでも成績の良いお子さんはいますが、早生まれのお子さんは遅生まれのお子さんに比べて、私のように勉強の初期でつまずいてしまう傾向が多々あります。ですから、早生まれのお子さんがいるママには、これから紹介することを気にかけて、お子さんを健やかに成長させてほしいと思います。まず、多くのお子さんは「自分は早生まれだから成績が悪かった」とは考えません。それよりも、「成績が悪いのは自分の“能力”が低いから」と思いがちです。その結果、「自分はバカだから勉強してもできない」「自分は足が遅いから頑張っても仕方がない」などと考えてしまうこともあります。そんなときは、ママからお子さんに“早生まれ”のことをわかりやすく説明してみてもいいでしょう。また、早生まれに対するママの意識が乏しいと、早い時期から「この子は勉強(運動)ができない」と決めつけてしまうこともあります。ママはそういった決めつけを絶対にしない ようにしてください。さらに、早生まれのお子さんがいるママにオススメしたいのは、お子さんが“楽しく学ぶ“土台を作ることです。これは月齢による差を気にすることなく今から取り組めることです。例えば、読み聞かせを習慣にすることによって、「これはなんだろう?」「もっと調べてみたい!」といったお子さんの学ぶ意欲を育てることができます。この“楽しく学ぶ力”を育てておくことは、目先の成績(結果)だけにとらわれることなくお子さんが“意欲的に学ぶ”という原動力になります。心理学者として言えることは、意欲さえあれば、学びは必ず実る ということです。それは、多くの偉人たちがさまざまなハンデを抱えていても、家族の支えで自信を持ち続けていたエピソードからも知ることができます。また、先生の中には誕生月をあまり意識されていない方もいます。もし、お子さんの様子で気がかりなことを伝えるときには、「早生まれだから、少し○○が難しいかもしれません」といった早生まれであることを知らせる“枕詞”をつける のもオススメです。そうすることで、先生からお子さんの発達に寄り添ったサポートをしてもらえる可能性が高まります。ちなみに、小学校高学年ごろには月齢による差は見られにくくなることがわかっています。ですから、ママも気持ちを楽にして、発達の差が見られにくくなるまでのあいだ、いかに“お子さんの自信を失わせないか”を考えていきましょう!●遅生まれの場合先ほども述べたように、特に小さいうちは、1年で大きく成長します。早生まれの子が産まれたころにはすでに歩き出しているお子さんもいるほどです。このような運動面だけでなく、生活面などにおいても、遅生まれのお子さんは「自分はできる」と思える環境に置かれやすくなります。この点は遅生まれの強みだと思います。しかし、遅生まれのお子さんの場合は気をつけなければいけないこともあります。それは、“周囲からの過剰な期待 ”です。もちろん、期待はお子さんにとってプラスの面をもつのですが、お子さんが“負担を感じる”期待はNGです。例えば、「4月生まれなのに、そんなこともできないの」「3月生まれの○○くんはできるのに……」といった言葉かけです。このような月齢と絡めた言葉かけや、誰かとの比較による言葉かけはお子さんの自信を奪うことがあります。傷ついた自信を回復するために、自分ができることを過剰に自慢し、友だちを傷つけてしまう子もいます。また、特別な努力をしなくても、小さいころから優秀な成績をおさめてきた遅生まれのお子さんの場合、月齢による差が見られにくくなる時期に成績が落ち込んだときには、人一倍自信を失う こともあります。こうしたことを防ぐためには、遅生まれのお子さんにも小さいころから“努力すればできる”ことを根気よく伝えていくことが大切ではないでしょうか。----------いかがでしたか。今回は早生まれ・遅生まれのお子さんを育てるときに気をつけたいことを紹介しました。ここではあくまで一般論を述べてきましたが、発達には個人差があります。ですから、目の前のお子さんの発達に寄り添い、ゆったりとした気持ちで成長を見守ることが大切だと感じます。すべてのお子さんが幸せに、そして個性豊かな力を発揮できることを心から願っています。【参考リンク】・誕生日と学業成績・最終学歴川口大司・森啓明 | 日本労働研究雑誌(PDF)()●ライター/今井千鶴子(臨床心理士)●モデル/椎葉咲子(苺乃ちゃん、胡桃ちゃん)
2017年05月30日「ふるさと納税」と呼ばれる制度をご存じでしょうか?この制度は税制を通じてふるさとに貢献するための制度であり、この制度をより利用しやすくするために平成27年には「ワンストップ特例制度」が新設されました。今回は、ふるさと納税に関する概要とワンストップ特例制度について解説していきます。■ふるさと納税の仕組みは?ワンストップ特例制度って何だろう?ふるさと納税は自治体への寄付に関する制度です。自治体に寄付をした場合に、この制度が適用されると税金の一部(所得税と住民税)が控除されます。対象となる金額は、自己負担額である2,000円を除いた寄付金額の全額です。例えば、あなたが自治体に対して50,000円の寄付をしたとしましょう。自己負担額は一律2,000円なので、ふるさと納税の対象は「50,000円-2,000円=48,000円」となります。この48,000円分の税金が、所得税と住民税から控除される仕組みです。では、ふるさと納税はどのような目的で整えられた制度なのでしょうか?ふるさと納税ができた背景には、日本の現代社会が大きく関係しています。現代の日本では、若年層が地方から都会へと移り住むケースが少なくありません。そうなると、地方出身の方は育った自治体に対して恩返しをすることが難しいため、その問題を解決するためにふるさと納税は制度として整えられました。ふるさと納税では、自分が生まれた街以外への寄付も対象とされています。そのため、学生時代に数年暮らした自治体や配偶者の故郷など、様々な自治体を積極的に応援しやすくなりました。ふるさと納税を通して寄付をした資金は、自治体ごとに少し異なります。各自治体が寄付金の使い道や考え方などをホームページで公表しているので、興味を持った方は一度確認してみてはいかがでしょうか?そのような情報を調べることで、応援したくなる自治体が見つかるかもしれません。【税制改革でふるさと納税はどう変わった?】平成27年の税制改革によって、ふるさと納税は以下の2点が変更されました。・ふるさと納税枠が拡大された・ワンストップ特例制度が新設されたふるさと納税枠は従来の2倍ほどに拡大され、控除対象となる金額が拡大されました。これにより、以前に比べて選んだ自治体をさらに応援しやすくなったと言えます。ワンストップ特例制度についても、ふるさと納税を利用しやすくなるために新設された制度と言えます。控除を受けるためには確定申告が必要になるケースが多いですが、この制度の新設により一定の条件を満たすことで確定申告は不要となりました。つまり、控除を受けるために余計な手間を発生させないための制度です。では、具体的にどのような条件を満たせば、確定申告が不要になるのでしょうか?主な条件としては以下の3つが挙げられます。・寄付をする自治体が5つ以下・サラリーマンなど、確定申告をする必要がない方・申告特例申請書を寄付をした自治体に提出した方上記の中で間違えやすいポイントとしては、寄付をする自治体の数です。ワンストップ特例制度は1年間の寄付が対象となりますが、同じ自治体に何回か寄付をした場合でも、寄付をした自治体は1つとして数えられます。■従来は確定申告が必要だった?ワンストップ特例制度が導入される前は、ふるさと納税には確定申告が必要でした。サラリーマンのように確定申告が必要ない方であっても、ふるさと納税で控除を受けるには確定申告で所定の手続きをする必要がありました具体的には、以下のような手順で控除申請が行われていました。【STEP1】証明書類を用意するふるさと納税を行うと、寄付したことを証明する書類が発行されます。自治体ごとに具体的な必要書類は異なりますが、多くの自治体では確定申告時にこの証明書類が必要です。【STEP2】確定申告書を作成する確定申告については、寄付をした翌年の3月15日までに行う必要がありました。それまでに確定申告書を作成し、税務署や役所などに提出をすることで控除の申請となります。本来確定申告をする必要がない方にとって、上記の手続きは面倒なものです。中には、この手続きによって「ふるさと納税を諦めた…」という方もいることでしょう。元々確定申告の必要がある方にとっては大きな手間ではありませんが、必要がないサラリーマンなどにとっては大きな手間と負担です。そこで導入されたのが、前述でもご紹介したワンストップ特例制度です。この制度の導入により手続きが簡略化され、上記の手続きをしなくても控除を受けられるようになりました。「寄附金税額控除に係る申告特例申請書」を提出する必要はありますが、控除に必要なほかの書類や情報に関しては、この制度を利用することで自治体側がそろえてくれます。確定申告書を作成する場合と比べると、手間や負担を大きく抑えられる方法と言えるでしょう。では、このワンストップ特例制度が導入されたことで、ふるさと納税の実績はどのように変化したのでしょうか?平成27年度の実績を見ると、この制度が導入されたことで状況が変わったことが確認できます。・受入額は約1,653億円であり、前年の約4.3倍・受入件数は約726万件であり、前年の約3.8倍(総務省:ふるさと納税に関する現況調査結果)上記の結果を見ると、ふるさと納税の利用は今後ますます増加する可能性があると言えるでしょう。ワンストップ特例制度を活用することで、余計な手間を減らしつつ好きな自治体に貢献することができ、控除というメリットも得られます。興味を持った方は、一度好きな自治体への寄付を検討してみてはいかがでしょうか?■こんな場合には要注意!ワンストップ特例制度が適用されないケースがある?ワンストップ特例制度には条件が備わっているので、ふるさと納税をしたからと言って必ずしも利用できるわけではありません。では、実際にどのようなケースに該当すると、ワンストップ特例制度が適用されないのでしょうか?以下で詳しく見ていきましょう。【その1】確定申告が元々必要な方ふるさと納税をしなかったとしても、元々確定申告が必要な方は多く見られます。そのような方については、基本的にワンストップ特例制度が適用されることはありません。確定申告が元々必要な方としては、以下のケースなどが挙げられます。・年収が2,000万円を超えているサラリーマン・給与所得が一ヶ所ではなく、複数の企業などから給与が支払われている方・事業所得がある方・不動産所得がある方・副業や投資をしている方確定申告が必要な方は確定申告時に寄付の証明書類を用意しておき、ふるさと納税の控除申請をきちんと行うようにしましょう。【その2】寄付をした自治体の数が多い場合前述でご紹介しましたが、ワンストップ特例制度を利用するには寄付をする自治体を5つまでに抑えなくてはなりません。寄付をした自治体が6つを超えると、確定申告をしなければ寄付した金額は控除がされないので注意が必要です。【その3】その他の還付申告を伴う方ふるさと納税以外にも、還付申告が必要になる制度はいくつか見受けられます。そのような制度を利用する方は、確定申告をしなければふるさと納税の控除を受けることができません。還付申告が必要なほかの制度としては、医療費控除や住宅ローン控除などが挙げられるでしょう。なお、住宅ローン控除については2年目から確定申告が必要ないケースもあります。住宅ローン控除は複数年に及ぶケースが一般的ですが、2年目以降は年末調整で処理がされるので、サラリーマンの方などは確定申告をする必要がありません。ただし、1年目については確定申告が必ず必要になるので、ワンストップ特例制度は適用されないことを覚えておきましょう。■「寄附金税額控除に係る申告特例申請書」提出後の注意点申告特例申請書を提出した場合であっても、以下のケースに該当する場合は確定申告が必要になる可能性があります。以下でご紹介するケースを確認し、自分が該当していないかをきちんと確かめた上で行動をするようにしましょう。【ケースその1】その年の年収が2,000万円を超えた場合ひとつの勤務先に勤めているサラリーマンであっても、年収が2,000万円を超えると年末調整の対象ではなくなります。つまり、翌年の3月に確定申告をする必要性が生じてくるので、ワンストップ特例制度が利用できません。昇給などにより年収が変化しそうな方は、2,000万円を超えないかどうか事前に確認しておくことが望ましいでしょう。【ケースその2】その年の途中から収入源が増えた場合その年の途中から収入源が増えた場合も、確定申告が必要になるので注意が必要です。雇用形態が変更になった方や、不労収入がある方などは特に意識しておきましょう。【ケースその3】急な病気やけがで多くの医療費がかかった場合急な病気やけがで医療費がかかると、医療費控除の対象に含まれることがあります。ふるさと納税の控除に加えてこの医療費控除も受けたい場合には、確定申告できちんと控除申請をしなければなりません。このようなケースで確定申告を怠ると、「ワンストップ特例制度は利用できるものの医療費控除は適用されなかった」といった状況に陥る可能性があるので注意してください。■ワンストップ特例制度の申し込みは?提出期限はある?ここまでワンストップ特例制度の概要についてご紹介してきましたが、そもそもこの制度を利用するためにはどのような手順で申し込むのでしょうか?以下では、ワンストップ特例制度の申し込み方をステップに分けて解説していきます。【STEP1】申告特例申請書を郵送してもらう前述でもご紹介しましたが、ワンストップ特例制度の申し込みには申告特例申請書が必要になります。しかし、この申告特例申請書は必ずしも郵送されるものではありません。ふるさと納税を希望する場合は、各自治体の払込取扱票に記載をした上で寄付を行います。この払込取扱票に申告特例申請書の欄があるので、必ず「申請書送付を希望する」の欄にチェックを入れるようにしましょう。この欄にチェックを入れることで、自治体から申告特例申請書が郵送されてきます。もしチェックを入れ忘れた場合、待っていても自宅に申請書が届かなかった場合などは、各自治体のホームページから申請書をダウンロードすることが可能です。【STEP2】申告特例申請書を提出する申告特例申請書を手に入れたら、案内などに従いながら必要事項を記入していきます。必要事項をすべて記入し終わったら、ふるさと納税で寄付をした自治体に返送をしましょう。【STEP3】受領されれば完了返送した申告特例申請書が自治体に受領されれば、申し込みは完了となります。申請にはある程度の時間がかかり、記入漏れがあるとさらに手間が発生してしまうので、ワンストップ特例制度の申し込みは早めに行うことが大切です。【2016年以降はマイナンバーも必要!】2016年以降からは申請時にマイナンバーの記載が必要になりました。申請書にマイナンバーの記入欄があるので、自分のマイナンバーを確認した上できちんと記入するようにしましょう。また、マイナンバーに加えて本人確認書類が必要になる点も忘れてはいけません。本人確認書類については、以下のものを用意しておきましょう。・個人番号カードを持っている場合個人番号カードの表面と裏面をそれぞれコピーしたものが必要です。・通知カードしか持っていない場合通知カードのコピーに加えて、顔写真が貼られている本人確認書類のコピーが必要です。具体的なものとしては、運転免許証やパスポートなどが挙げられます。・通知カードを無くしてしまった場合マイナンバーが記載されている住民票の写しに加えて、運転免許証やパスポートなどのコピーが必要です。ワンストップ特例制度の申請は1年中受け付けていますが、提出の期限があります。税金の計算は毎年1月~12月までの期間に基づき行われるので、申請書類の提出はふるさと納税をした翌年の1月10日までであり、この期日までに自治体に到着することが必要となります。この期限を過ぎてしまうと、ふるさと納税ワンストップ特例制度の適用を受けることができなくなるため注意してください。■まとめ今回は、ふるさと納税とワンストップ特例制度についてご紹介してきました。ワンストップ特例制度の開始により、サラリーマンでも利用しやすくなったふるさと納税。この機会に地方創生への想いも込めて、ふるさとへの恩返しやお世話になった地域への貢献の方法として、ふるさと納税を利用してみてはいかがでしょうか?
2017年04月18日保育所不足、待機児童問題、少子化問題の解決をめざすために2015年4月からスタートしている『子ども・子育て支援新制度』ですが、この制度によって具体的には何がどう変わったのでしょうか? 保育料や認定区分、認定こども園などの施設、制度の問題点などについて、改めて詳しく解説します。そもそも『子ども・子育て支援新制度』って何? 『子ども・子育て支援新制度』とは、「『量』と『質』の両面から子育てを社会全体で支え」るためにつくられた制度です(内閣府『子ども・子育て支援新制度 なるほどBOOK』より引用)。2012年に成立した「子ども・子育て支援法」「認定こども園法の一部改正」「子ども・子育て支援法及び認定こども園法の一部改正法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」という子ども・子育て関連3法をベースとして、2015年4月から施行されました。基本的に、実施する主体は市町村です。国は財政面でそれをサポートしています。そのため、自治体によって支援や事業の内容はことなります。また、2016年度からは子育て支援をする企業へのサポート(企業内保育施設への補助金など)もプラスされました。2014年度から8%に引き上げられた消費税の増収分が、この制度の財源にあてられています。「社会全体で支える」というのはそういうわけです。新制度のポイント1:1号~3号認定とは? ここからは、より身近な視点から新制度のポイントを解説します。ママたちにとってどんな影響があり、何がどう変わったのでしょうか? まずは新制度でスタートした「認定区分」について。お子さんが通える施設や保育料・保育時間にも関わるので、しっかり理解しておきましょう。新制度では、幼稚園や保育所などを利用したい場合、お住まいの市町村から「利用認定」を受ける必要があります。認定は、お子さんの年齢と保護者の状況によって以下のように「1号・2号・3号」に分けられています。・1号(教育標準時間認定):保育を必要とする事由のない、3~5歳の子ども・2号(保育認定):保育を必要とする事由のある、3~5歳の子ども・3号(保育認定):保育を必要とする事由のある、0~2歳の子どもこのうち、「保育を必要とする事由」とは、保護者自身の就労・求職活動・就学・疾病、妊娠・出産(産前産後2ヶ月)、同居親族の介護などのことです。新制度のポイント2:保育時間について「保育認定」である2号と3号は、保護者の状況によって保育時間が2つに区分されます。基本的には、両親ともにフルタイム勤務の場合「保育標準時間」認定となり、1日最長11時間まで追加料金なしで利用できます。両親もしくはどちらかがパートタイム勤務の場合は「保育短時間」認定となり、1日最長8時間までの利用となります。ただし、たとえば11時間の範囲内であっても、利用する保育所が設定している「通常保育時間」(施設によりますが、7時30分~18時くらいが一般的)の範囲を超える場合は、別途「延長保育料」を支払う必要があるので注意してください。詳しくはそれぞれの施設や市町村に確認しましょう。新制度のポイント3:認定こども園と地域型保育お子さんを預ける施設については、新制度の目玉として「認定こども園制度の改善」と「地域型保育の新設」の2つが挙げられます。■認定こども園とは? 認定こども園とは、保育所と幼稚園を一体化した施設です。2006年からスタートしていましたが、幼稚園と保育所で管轄省庁や財源がバラバラであるなど制度面で問題が多く、当初期待されたほど普及しませんでした。そこで今回の新制度では、認可・指導を一本化するなど制度面を改善しました。保護者にとっても、たとえば「保育認定」を受けたお子さんについては園ごとの個別申し込みではなく、認可保育所と同じように市町村を通じ一括で申し込めるなど、仕組みがわかりやすくなっています。■地域型保育とは? 「地域型保育」とは、0~2歳のお子さんを対象とした、保育所よりも小規模(20人未満)の施設のことです。こうした施設はこれまで認可外扱いでしたが、新制度では認可施設となりました。具体的には、「保育ママ(家庭的保育)」「小規模保育」「事業所内保育」「居宅訪問型保育」の4タイプがあります。新制度のポイント4:認定区分と利用できる施設の関係は? 新制度では、ポイント1の認定区分によって、利用できる施設が決まっています。・1号認定:幼稚園または認定こども園(1日4時間程度)・2号認定:保育所または認定こども園(夕方までの保育のほか、園によっては延長保育も)・3号認定:保育所または認定こども園または地域型保育(夕方までの保育のほか、園によっては延長保育も)ただし、共働き世帯でも幼稚園に通わせたい場合は1号認定を受けることができます。また、新制度に移行しない私立幼稚園やプレスクールなどは認定を受ける必要がありません。新制度のポイント5:保育料はどう変わった? 新制度導入後耳にしたのが「保育料が上がった」という不満の声です。実際のところ、保育料は上がったのでしょうか?結論からいうと、ほとんどの場合、大きな値上がりにはなっていません。それではなぜ「上がった感」があったのかというと、これには保育料の計算方法が変わったことが関係しています。新制度では、世帯の所得額に応じて国が定めた上限金額の範囲内で、市町村が保育料を定めています。2014年度までは世帯の「前年の所得税額」を基準に算定していましたが、2015年度からは「住民税の所得割課税額」が基準になりました。住民税は前年の所得をベースとしてその年の6月に確定するので、新制度が導入された2015年度は9月に保育料の切り替えがありました。4月~8月までは2013年の所得を基準とし、9月以降は2014年度の所得を基準にした保育料となったわけです。そのため、新制度開始から8月までの間は「保育料が高い!」と感じた方が多かったのかもしれません。新制度では低所得(年収360万円未満相当)の世帯やひとり親世帯、多子世帯への負担軽減もあります。たとえば2号・3号認定なら、第1子が未就学児の場合は所得額に関係なく第2子の保育料が半額、第3子以降は無料になります。低所得のひとり親世帯は、第1子の保育料が半額、第2子以降は無料です。また、幼稚園については、これまでは園ごとに一律の保育料を支払ったあとで「就園奨励費」という所得に応じた給付がおこなわれる仕組みでした。これが新制度に移行した園では、保育料そのものが市町村ごとに定める所得に応じた負担額に変更されています。子ども・子育て支援新制度の問題点とは? 施行から2年が経った『子ども・子育て支援新制度』ですが、いくつか問題点もあります。最大の問題点は、新制度下でも待機児童問題がいまだに深刻なことでしょう。2016年には『新語・流行語大賞』の候補に「保育園落ちた日本死ね」がノミネートされ話題になりました。待機児童問題の原因としては、慢性的な保育所不足にくわえて、新制度での解決策として期待されていた認定こども園や地域型保育が、当初の想定ほど増えていないことなどが挙げられます。さらに前提として、保育士不足という問題があります。施設を増やしたところで、保育士が足りないのです。新制度でも「職員の賃金改善」として3~4%の上乗せが実施されましたが、まだまだ十分とはいえません。2017年4月からは政府がさらに2%の賃金上乗せを実施するなど、ようやく「保育士の待遇改善」に本腰が入れられるようになってきたのが現状です。東京都では、2017年4月からさらに月額21,000円の賃金の上乗せを実施するなど、対策を進めています。まずは子育て世代が新制度をしっかり理解して『子ども・子育て支援新制度』にはこのように課題があるものの、行政が子育て支援政策に力を入れつつあることは事実です。新制度は市町村が主導するため、地域差が出やすいという問題点がありますが、市町村は私たちの声を反映しやすい身近な存在でもあります。まずは私たち子育て世代がこうした制度や取り組みをしっかり理解して、意思表示をしていくことが大切でしょう。【参照サイト】 制度の概要|内閣府 子ども・子育て支援新制度 なるほどBOOK(平成28年4月改訂版)|内閣府 認定こども園に関するQ&A|内閣府
2017年04月14日「ふるさと納税」という言葉を耳にしたことはありませんか?このふるさと納税は、上手に利用すればサラリーマンでも節税対策をすることができる魅力的な制度と言えます。ただし、より効果的にふるさと納税を利用するためには、「ワンストップ特例制度」についても理解を深めておく必要があるでしょう。そこで今回は、ふるさと納税とワンストップ特例制度について解説していきます。■ふるさと納税はどんな制度?「ふるさと納税」と聞くと故郷に税金を納めるように聞こえますが、正しくは「ふるさと納税=自治体への寄付金」のことです。では、そんなふるさと納税はどのような目的があって整えられた制度なのでしょうか?現代では地方で生まれ育った子どもが、進学や就職を機に都会へ引っ越すケースが多く見られます。そのまま都会での生活に慣れて、都会で結婚をして長期間住み続けることも珍しくはありません。そうなると、その人は都会に対して地方税などを納めることになります。サービスに関しても都会のものを利用することになるでしょう。そのような方でも子どもの頃は、生まれ育った故郷のサービスを受けていたはずです。しかし、大人になってから都会へ移り住むことになると、故郷に対して税金を納めたりサービスの対価を支払ったりすることができません。これは自治体にとってはマイナス要因であり、本人にとっても「地元に貢献できない」といったデメリットが発生します。そこで整えられた制度がふるさと納税です。ふるさと納税では自分が選んだ地方自治体へ寄付をすることで、寄付をした金額の一部が税金控除の対象となります。所得税と住民税が安くなるので、この制度が整えられたことで積極的に寄付をしやすくなりました。寄付の対象となる自治体は自由に選べるので、生まれ育った自治体以外にも学生時代に過ごした街、自分の子どもが住んでいる街などに寄付をしても控除を受けることは可能です。ふるさと納税はこのような制度なので、「地方創生」という大きな役割も担っています。控除の対象となるのは自己負担額(2,000円)を除く寄付金の全額なので、人によっては節税対策としても活用できるでしょう。その上、自治体によってはふるさと納税をすることで、趣向を凝らした返礼品を受け取ることもできます。【寄付先は情報収集をしてから選んでみよう!】日本全国の自治体は、ふるさと納税に関する目的や寄付金の使い道などをホームページ上で公表しています。そのため、「寄付金が何に使われるか分からないから…」と悩む必要はありません。また、中にはふるさと納税を行う本人が、寄付金の使い道を選択できる自治体も見られます。そのような自治体を選べば、納得できる形で寄付をすることができるでしょう。ふるさと納税の寄付先は、情報収集をしてから選んでも遅くはありません。きちんと情報収集をしてから自治体を選べば、不本意な形で寄付をしてしまうことは防げるでしょう。■寄付金額の上限は?全額控除になるふるさと納税額の目安上記ではふるさと納税の概要をご紹介しましたが、必ずしも全額控除を受けられるわけではありません。例えば年間で50,000円の税金を納めている場合、それ以上の控除を受けることは難しいでしょう。納めた税額以上の控除を受けることは基本的にできないので、その点には注意が必要です。では、全額控除になる寄付金額は具体的にどれぐらいなのでしょうか?納税者の年収や家族構成により目安は異なりますが、以下ではいくつかのモデルケースをご紹介いたします。【その1】ふるさと納税を行うサラリーマンの給与収入が300万円の場合・独身または共働き夫婦では28,000円・共働きで高校生の子供が1人では19,000円・共働きで大学生の子供が1人では15,000円・共働きで大学生と高校生の子供2人では7,000円・配偶者に収入がなく高校生の子供が1人では19,000円・配偶者に収入がなく大学生の子供が1人では11,000円【その2】ふるさと納税を行うサラリーマンの給与収入が500万円の場合・独身または共働き夫婦では61,000円・共働きで高校生の子供が1人では49,000円・共働きで大学生の子供が1人では44,000円・共働きで大学生と高校生の子供2人では36,000円・配偶者に収入がなく高校生の子供が1人では49,000円・配偶者に収入がなく大学生の子供が1人では40,000円・配偶者に収入がなく大学生と高校生の子供2人では28,000円【その3】ふるさと納税を行うサラリーマンの給与収入が700万円の場合・独身または共働き夫婦では108,000円・共働きで高校生の子供が1人では86,000円・共働きで大学生の子供が1人では83,000円・共働きで大学生と高校生の子供2人では75,000円・配偶者に収入がなく高校生の子供が1人では86,000円・配偶者に収入がなく大学生の子供が1人では78,000円・配偶者に収入がなく大学生と高校生の子供2人では66,000円【その4】ふるさと納税を行うサラリーマンの給与収入が1,000万円の場合・独身または共働き夫婦では176,000円・共働きで高校生の子供が1人では166,000円・共働きで大学生の子供が1人では163,000円・共働きで大学生と高校生の子供2人では153,000円・配偶者に収入がなく高校生の子供が1人では166,000円・配偶者に収入がなく大学生の子供が1人では157,000円・配偶者に収入がなく大学生と高校生の子供2人では144,000円上記で紹介したモデルケースは、住宅ローン控除などほかの控除を受けていないサラリーマンの例です。年金収入だけの人や事業所得者、その他の控除を受けているサラリーマンの人などは上限額が異なる場合があるため注意してください。あくまでも目安としての年間上限額のため、実際の金額はお住まいの自治体に問い合わせることが大切です。■ふるさと納税の寄付金控除を受けるための手続きふるさと納税の寄付金控除は、原則として確定申告をしなければ受けられません。では、具体的にどのような手順で確定申告をすれば良いのでしょうか?以下で詳しく解説していきます。【STEP1】寄附金受領証明書を受け取るふるさと納税で寄付をすると、寄付先の自治体から「寄附金受領証明書」と呼ばれる書類が届きます。この書類は確定申告時に必要になるので、必ず無くさないように保管しておきましょう。自治体によっては、専用振込用紙の払込控が受領証になる場合もあります。【STEP2】受領証明書を添付して確定申告をする受領証明書を受け取ったら、確定申告書の指定された箇所にその証明書を貼り付けましょう。その後、確定申告書に必要事項を記入して提出をすれば手続きは完了です。この手続きにおいて注意するべきポイントは、確定申告の「期日」です。控除を受けたい場合には、寄付をした翌年の3月15日までに確定申告を行う必要があるので必ず忘れないようにしましょう。上記の手続きが完了すると、所得税と住民税が以下のように控除されます。・所得税…寄付をした年の所得税から還付される・住民税…寄付をした翌年6月以降分の税額が減額されるなお、国税庁が提供している「確定申告書等作成コーナー」を利用すれば、画面の案内に従って各項目を入力していくだけで簡単に確定申告書を作成できます。「確定申告書の作り方が分からない…」と悩んでいる方は、このようなサービスを積極的に活用してみましょう。確定申告書の提出については、お住まいの地域を管轄する税務署に郵送または持参するか、e-Tax(電子申告)を利用して申告する方法があります。ただし、e-Taxでの申告には事前の手続きが必要になるので注意してください。■ワンストップ特例制度によりサラリーマンは確定申告が不要になる場合も!上記ではふるさと納税による控除を受けるために、確定申告が必要になるとご紹介しました。しかし、実は一定の条件を満たすことで確定申告が不要になるケースがあります。それが「ワンストップ特例制度」と呼ばれる制度です。この制度が平成27年に新設されたことにより、多くの方がふるさと納税を利用しやすくなりました。平成27年から納税枠が約2倍に拡大されて、控除の範囲が広がった点も私たちにとっては嬉しいポイントです。例えば、元々確定申告をする必要がない方にとっては、確定申告の手間が増えることは負担です。「控除が少額なら行っても仕方ない…」と感じていた方も、中にはいるかもしれません。しかし、以下の条件を満たすサラリーマンの方であれば、ふるさと納税により寄付をしても確定申告なしで控除を受けられるようになりました。・ふるさと納税をした自治体が1年間に5つ以内の方・年収が2,000万円未満、副収入を得ていないなど、元々確定申告をする必要がない方上記の条件を満たしている方は、所定の手続きを済ませることでワンストップ特例制度が適用され、確定申告をしなくても控除対象になります。では、この制度の適用を受けるにはどのような手続きが必要になるのでしょうか?【ワンストップ特例制度で必要な手続き】ワンストップ特例制度の手続きでは、以下の書類が必要になります。・ワンストップ特例申請書(寄附金税額控除に係る申告特例申請書)・本人確認書類のコピーなど寄付をした自治体に対して、上記2つの書類を郵送することで手続きができます。なお、2017年3月現在ではマイナンバーの記載も必要になったので、マイナンバーが分かる書類もきちんと用意しておきましょう。この手続きを済ませると、自治体同士で納税者の情報が共有されて自動的に税金が減額されることになります。確定申告の手間を一気に省けるので、ふるさと納税を検討している方はワンストップ特例制度の利用も考えてみましょう。ただし、上記の申請を行った後に住所などが変更になった場合は、さらに手続きが必要になるので注意しておきましょう。このようなケースでは、寄付をした翌年の1月10日までに「申告特例申請事項変更届出書」を寄付先の自治体に提出をする必要があります。■ワンストップ特例制度の申し込み期限ふるさと納税のワンストップ特例制度は、1月~12月までいつでも申し込むことが可能です。ただし、所得税などの控除は1年単位で適用されるので、年をまたぐと前年分の申請ができなくなる可能性があります。寄付をする場合には、早めにワンストップ特例制度も申請しておきましょう。なお、年末に申請をする場合には特に注意が必要となります。申請から受領まではある程度の日数がかかりますし、自治体によっては12月の早い段階で受付を締め切ることもあります。各自治体で締め切りは異なるので、必ず寄付先の自治体に関する情報は事前に調べておきましょう。また、ふるさと納税の期限に関しても注意が必要です。受領証明書に記載されている受領日が12月31日を過ぎると、その年の控除申請ができなくなる恐れがあります。その場合は翌年分として扱われますが、節税対策としてふるさと納税の利用を検討している方は注意するべきポイントでしょう。なお、受領日の扱いは以下のように送金方法によって異なります。・クレジットカードの場合…決済が完了した日・銀行振り込みや払込取扱票による支払い…指定口座に支払いした日・現金書留…自治体が受領した日上記の送金方法による違いも意識しながら、ふるさと納税やワンストップ特例制度を上手に使いこなすようにしましょう。これらの制度を上手に活用すれば、節税対策をしながら社会貢献もできるはずです。■まとめ今回は確定申告不要でサラリーマンでも簡単に利用できる、ふるさと納税のワンストップ特例制度についてご紹介してきました。いかがでしたでしょうか?ふるさと納税のワンストップ特例制度を上手に利用すれば、サラリーマンでも節税対策をすることができます。また、ふるさと納税を通して故郷やお世話になった地域に貢献することもできます。今回ご紹介した内容を参考にして、みなさんもふるさと納税を利用してみてはいかがでしょうか?
2017年04月13日支援級って、実際どうなの?出典 : 「支援級って、実際どうなの?」「どんな雰囲気で、何をやってるところなの?」…と、特別支援学級という「未知の世界」が気になっているお母さんも多いかと思います。うちの長男は、発達障害に気づかずに通常学級で入学し、4年生まで過ごしました。そして、5年生になった時、自分の意思で支援級に転籍。さらに今年の4月からは、また通常級に戻る予定でいます。今まで繰り返しお伝えして来た通り、本当に支援級を巡る状況は千差万別です。これは「あくまで一例」ではありますが、長男と私が経験した「うちの」支援級ルポを、楽々かあさんこと、大場美鈴がお伝えします。うちの支援級の1日の流れ出典 : まず、朝の風景から。うちの支援級の登下校は、お母さんが付き添って歩いたり、車で送り迎えをしていたりする場合が多いです。我が家では、行けるときは登校班で歩いてゆき、不安定な時期や、行事などで心身の負担が大きな時期は、車で送って行きます。うちの学校の支援級は2クラス。身体・知的障害のあるお子さんのクラス(以下、A組)と、長男が在籍していた、主に発達障害の傾向のあるお子さんが中心となる、情緒クラス(以下、B組)に分かれています。通常級の出席番号とは違い、支援級のそれぞれの子には「専用カラー」が決められています。下駄箱やロッカーには、名前と共に、その子カラーのテープが貼られて目印になっているのです。そこに靴を入れて、クラスに向かいます。うちの支援級は、一階の保健室近くに配置されていて、普通級とはやや離れています。逆に、職員室、1年生のクラスとは同じフロアです。登校すると、子ども達はその日の予定を確認します。スケジュールボードに、それぞれの子の時間割がマグネットで並べられています。時間割はそれぞれの子で違うものになっています。教科によって支援級で過ごしたり、交流級に行ったり、運動場や音楽室に行ったりと、けっこう移動が多いです。交流級というのは、通常級のクラスでの授業・活動に参加することです。「協力学級」「親学級」などとも呼ばれています。B組在籍の子どもは、全部で6人程ですが、B組の教室に常時いるのは2〜3人。なかには1日中交流級で過ごす子もいます。A組、B組の子達が揃うのは給食の時間。机を全部くっつけて、2クラス合同で先生方も一緒に食べています。その様子は、カオスと言っても過言ではないくらい賑やかです。両クラスの最上級生である、A組の6年生の男の子は人気者。下の学年のお子さん達が慕って、おんぶをせがんだり、給食を配ってあげていたりと、微笑ましい様子も見られます。下校時刻は、それぞれの学年に準じたものになっています。上級生になるほど、6時間目の授業も増え、クラブ活動などもあります。低学年の子達が下校する6時間目には長男と先生のマンツーマンになることも多く、学習が捗るようです。チームで子ども達を見守る、先生達出典 : 支援級の担任は、A組はしっかりした女性の先生、B組はベテランの男性の先生です。そして、それぞれのクラスに副担任の先生がつきます。介助員さんも、両クラス合わせて常時2~3名が学校にいる感じで、主に身体介助の必要なお子さんのお世話や、交流級に行っている子の付き添いなどをして下さっています。子ども1人当たりの大人の数が多く、チームで手厚く見守って頂けます。とはいえ、クラスに不安定になっているお子さんがいる時には、複数の先生がその子にかかりきりになる状況などもありました。そして、支援級の担任の先生は、前回の記事でもお伝えしましたが、必ずしも、支援に詳しいとは限りません。長男のクラスの担任の先生は定年間近の大ベテランの先生でしたが、4月の時点では支援について、ほとんど何もご存知ではありませんでした。ですが、「お母さん達のほうがお詳しいでしょうから…」と、親の話を一人ひとり、謙虚に丁寧に聴いて下さり、私は本当に頭の下がる思いでした。その姿を見て、私は「あ、大丈夫だな」と思いました。先生は多少のことには動じないタイプで、個性の強い子ども達に忍耐強くつき合って下さり、長男も信頼している様子で、私は安心して見ていることができました。知識・経験以前に、先生自身が安定していること、子どもと基本的な信頼関係が築けることが、私はまず必要なように思います。そして、その子に合わせたり、親の話に耳を傾けてくれる姿勢があれば、例え支援に対する知識・経験が十分ではなくとも、次第に「プロ」になって下さるように思えます。気になる学習内容は…?出典 : うちの支援級の学習内容は、その子の進度に合わせたプリント学習です。プリントは本当にオーソドックスな問題を、教科書の順に添ってひたすら取り組むような形です。私は支援の本にあるような手作り教具やICT機器などをジャンジャン使って、体感的な授業がそれぞれの子に行われる様子を夢見ていたので、正直、やや肩すかしでした。それでも、通常級の一斉授業のスピードについていけず、ノートも取らずにぼーっと過ごしていた時に比べれば、私にはずっと有意義な時間のように感じられました。算数は、長男がつまづいている九九や、筆算の手順など、何学年も前のところから戻ってスタートし、少人数の環境の中、自分のペースでじっくり取り組んでいました。国語は、学習内容はほぼ理解できるものの、漢字がどうしても出て来ないので、学習補助用のiPadを持ち込んで辞書アプリで調べながら進めました。ただ慣れて来ると、プリント中心の学習はつまらなくなったのか、苦手科目以外のプリントに落書きが増えてきました。その時は先生に相談して、もう少し学習内容を調整して頂けるようお願いをしました。課題のレベルは「大体できるけど、定着してないこと」から「やや難しいけれど、なんとかできそうなこと」くらいが、その子にちょうど良い学習レベルだと思います。長男は「やさし過ぎる」「難し過ぎる」ものは、どちらも集中できないようです。長男の場合は、パソコンなど興味の強い科目から交流級で参加し始め、体育や図工などの実技教科、2学期には理科・社会も…というように、長男の様子をみながらこまめに連携し、徐々に交流級を増やして頂きました。そして算数もマイペースにコツコツとプリントに取り組み続けた結果、学年相応まで進めることができ、3学期には、全科目交流級での授業になりました。通常級でできてしまった大きな段差を、支援級で長男自身のステップで徐々に上がっていったことにより、学習への自信がついたのです。異年齢・多種多様!支援級の子ども同士の様子は…?Upload By 楽々かあさん休み時間、B組(発達障害の傾向のあるお子さんが中心となるクラス)の男の子達は、手作りカードゲームなどをして楽しく遊んでいました。時折、通常級の次男も、支援級に顔を出して、一緒に遊んでいたようです。次男曰く「エアコン、効いてるんだよね~」とのこと。体温調節が身体の機能的に苦手なお子さんもいるため、うちの両支援級はエアコンが完備されています。転籍前、精神面の凸凹差の大きな長男は、通常級の同年齢のお子さん達と、やや話が合わないようでもありました。でも、異年齢で多種多様なお子さんの集まる支援級では、年下のお子さんと気が合ったり、年配の先生方とたくさん雑談できるので気が楽だったようです。とはいえ、B組の子同士の関係は、仲のいいときはすごく良いけど、ちょっとしたきっかけで大げんかするという、ジェットコースター式。気持ちを言葉で伝えたり、妥協することが苦手な子が多いため、実際の所、衝突事故も多かったです。でも、その中で長男は、「ゆずってあげる」「合わせてあげる」ことの大切さに少しずつ気づけたようにも思います。また、B組では長男は一番年長。クラスのお子さん達をまとめたり、お手本になる役割も与えられました。それよって学校での「居場所」ができたようです。支援級で過ごしたことは、長男の心の成長にも大きなプラスになったように思います。支援級に移ったことを、通常級の子たちはどう受け止める…?出典 : 交流級に行くことで、支援級と普通級を行き来していた長男は、通常級の先生の目から見てもさほど違和感なく溶け込んでいたようです。また、支援級にいても、運動会などの行事では今までクラスメイトだった通常級の子達と一緒でした。運動会の組み体操も林間学校での野外活動も、支援級の先生方に見守られながら、不安に思うことをひとつひとつクリアしながら参加しました。少しだけハードルを下げたり、大人が見守ってあげたりすることで、皆と一緒にできることはたくさんあると思います。長男が支援級に移った時は、それまでと態度が変わった子もいました。長男に対して以前より距離を置く子もいれば、かえって優しくなった子もいるし、何も変わらない子もいました。でもさまざまな機会を通して、一緒に過ごすことで、普通級の子達も支援級の子たちに慣れていきます。多感な年頃の子達の間には、お互いに取り扱いが難しい面も少なくありません。さらに、空気を読めなかったり、集団の中で目立つ行動を取ってしまう長男にとって、コミュニケーションのハードルが高いであろうと思う部分は今でもあります。それでも長男は、6年生に進級したら、居心地良さそうにしていた支援級を卒業して、皆と同じクラスに戻ると言います。私は、支援級に転籍したときのように、長男に通常級の良い点、そうでない点の両方を伝えましたが、今回も長男の決意は変わりませんでした。そこには、好奇心の強い彼にとって今の成長に必要な刺激があるのかもしれません。また、合理的に物事を判断する長男にとって、考えられるデメリットを上回る何かを、今は感じているのかもしれません。子どもの成長と学び方は、一律一様ではないのだから…。ここまで3回に渡り、私達親子の実際の体験から、支援級と通常級の間にある選択肢、支援級を検討する際の判断のポイント、そして、うちの支援級の実際の様子をお伝えして来ました。支援級は本当に千差万別で、私には「うちの」支援級が標準的かどうかも分かりません。でも、具体的な情報が開かれてゆくことで、もっと支援級が身近で気軽に感じられる場所になってほしい、と私は願っています。また、支援級と通常級、それぞれにメリット・デメリットがあり、私にはどちらがいいとも言えません。でも、通常級にいる子達にとっても、長男が5年生を過ごした支援級を「別世界」と感じてるわけではないと感じています。そして、一つだけ確かなことは、日々成長する子どもたちによって、その個性の発達のスピードやその子に合った学び方は、一律一様ではない、ということです。これは長男の今までの育ち方と、興味関心のあり方を見守って来た私が、実感として思うことです。柔軟に、臨機応変に、その子に合った学び方が、どんなお子さんにも安定して提供される日が、なるべく早く来ることを、同時代を生きる子を持つ一母親として、私は願ってやみません。Upload By 楽々かあさん大場美鈴(著), 汐見稔幸(監修), 『発達障害&グレーゾーンの3兄妹を育てる母のどんな子もぐんぐん伸びる120の子育て法』ポプラ社, 2017年
2017年04月10日*画像はイメージです:など性的少数者のカップルを公的に認める「同性パートナーシップ制度」が6月から札幌市でも導入されることになりました。4月に導入される予定を2カ月延期しての導入となります。延期の理由は市民への周知期間を設けるためだそうですが、たしかに当事者ではない人にとっては、この制度がどのようなものなのか、イメージしづらいかもしれません。制度が持つ法的効力など、桜丘法律事務所の大窪和久弁護士に伺いました。 ■法的効力はない!?結婚とは別物札幌市の同性パートナーシップ制度と同様の制度は、2015年に東京都渋谷区が全国で初めて導入したのを皮切りに、世田谷区、三重県伊賀市、兵庫県宝塚市、沖縄県那覇市で実施されています。このように導入自治体が増えつつある同性パートナーシップ制度ですが、これは結婚とはどのように違うのでしょうか?「結婚をすることにより、民法に基づき夫婦間において様々な効力が生じます。夫婦間において親族関係が生じますし、同居の義務および扶養の義務も負うことになります。他方、同性パートナーシップは自治体の条例に基づいて同性のパートナーについてその関係を認める書面を自治体が発行するというものですが、民法上の効力が生じるものではありません」(大窪弁護士)憲法や民法によってその条件や権利などが定められている結婚とは違い、同性パートナーシップ制度には、法的な効力はないのです。結婚と同じ制度だと勘違いする方も多そうですが、法的には別物の制度と考えてよいでしょう。 ■制度による民間企業への影響それでは、法的効力がない同性パートナーシップ制度には何の意味もないのでしょうか?税制、保険、医療現場、相続などの面で夫婦が持つ権利と同じような権利を持つことは許されないのでしょうか?「前述の通り、婚姻と異なり民法上の効力が生じるものではありませんので、夫婦と同等の権利があるわけではありません。親族関係も生じず財産の相続をするということにもなりません。また税制上控除が認められるということもありません。もっとも、同性のパートナーであるという証明はなされるので、これを受けて民間の事業者がパートナー向けのサービスを行うということはありうると思います」(大窪弁護士)現段階では、同性パートナーとして認められても法的な保障は期待できません。しかし、制度施行をきっかけに民間や自治体のサービスが拡大する事例はすでにいくつもあります。例えば、ドコモでは渋谷区での制度施行をきっかけに、家族割サービスを同性パートナーにも認めるようになりました。また、同性パートナーを保険金の受取人として認める生命保険会社も増えてきました。 ■導入自治体は今後も増える?なぜこのような制度が必要とされ、導入自治体が増えているのでしょうか?「同性の法律婚は現在認められておりませんが、現実には同性でパートナーとなっている人は沢山いらっしゃいます。しかし、パートナーであることについて社会的に認められてきていないことから、住宅で同居することを断られてしまうであるとか、病院の面会を断られてしまうという弊害があります。法律婚という形は現在とることはできなくても、パートナーとして行政が認めることでそうした弊害を解消するということは必要です。現在導入自治体は一部ですが、同性パートナーシップ制度があるからその自治体に転入するという人も増えておりますので、今後導入自治体は増えていくのではないかと思います」(大窪弁護士)千葉市では、結婚や事実婚をしている職員に認めている休暇制度を同性パートナーを持つ職員にも認めるよう就業規則が改正されました。同様の制度を持つ企業も増えています。自治体による同性パートナーシップ制度導入に加え、民間企業のサービス範囲の拡大、雇用者の権利拡大など、性的少数者を取り巻く環境は少しずつ不便や実質的な不平等を減らす向かう方向に変化しているのです。 *取材対応弁護士:大窪和久(桜丘法律事務所所属。2003年に弁護士登録を行い、桜丘法律事務所で研鑽をした後、11年間、いわゆる弁護士過疎地域とよばれる場所で仕事を継続。地方では特に離婚、婚約破棄、不倫等の案件を多く取り扱ってきた。これまでの経験を活かし、スムーズで有利な解決を目指す。)*取材・文:フリーライター 岡本まーこ(大学卒業後、様々なアルバイトを経てフリーライターに。裁判傍聴にハマり裁判所に通っていた経験がある。「法廷ライターまーこと裁判所へ行こう!」(エンターブレイン)、「法廷ライターまーこは見た!漫画裁判傍聴記」(かもがわ出版)。)【画像】イメージです*Syda Productions / Shutterstock
2017年03月31日特別支援教室とは?出典 : 特別支援教室は、発達障害のある子どもたちをはじめとした個別のニーズに対応し、より適切で効果的な教育を行うために、小・中学校への導入が予定されている設備・制度です。文部科学省は、特別支援教室構想を掲げ、それに伴い全国各地でモデル事業が行なわれてきました。とりわけ、2016年4月からは、東京都内の小学校で本格的な導入が始まりました。具体的な導入計画については、後に詳しく説明します。2005年以降、文部科学省は「インクルーシブ教育」の推進に力を入れてきました。インクルーシブ教育(または単にインクルージョン)とは、障害の有無にかかわりなく子どもたちに教育をするという理念・制度・実践をいいます。インクルーシブ教育では、障害のある子どもたちが、単に障害のない子どもたちと同じ学校に通うだけでなく、本当の意味で他の子どもたちと同じ教育を受けるということが目指されています。こうした教育を実現するためには、障害のある子どもだけが「特別なニーズ」を持っているという考えを見直し、「すべての子どもに等しく教育をし、その中でニーズのある子どもには適切に対応する」ことが重要です。たとえ障害のある子どもたちが通常校に通っているとしても、障害のない子どもたちから区別され、普段から別の教室で勉強しているなら、それは同じ教育を受けているとは言えない、これがインクルーシブ教育の基本的な考え方です。文部科学省の特別支援教室構想も、その一環として位置づけられています。文部科学省は、発達障害の診断を受けていない子どもたちの中にも、実際には「特別なニーズ」とされてきた個別のニーズを持つ子どもたちが少なくないのではないかと考えています。そして、そうしたニーズに気づき適切な教育をするために、また、その他の子どもたちが発達障害をよりよく理解できる環境を作るために、特別支援教室の導入を進めています。参考: 中央教育審議会「特別支援教育を推進するための制度の在り方について(答申)」(2005年12月)特別支援教室という制度では、「障害のある子ども」と「障害のない子ども」を分けて支援するのではなく、必要に応じて誰にでも支援やサポートを提供します。これは、「障害のある子どもが障害に応じて支援を受ける」という、特別支援学級や「通級による指導」のスタンスとは大きく違うものです。参考:Frank Bowe, Making Inclusion Work (Upper Saddle River, NJ: Pearson, 2005).参考:Gary Thomas and Andrew Loxley, Deconstructing Special Education and Constructing Inclusion, 2nd ed. (Open University Press, 2007).参考:高橋純一、松﨑博文「障害児教育におけるインクルーシブ教育への変遷と課題」『人間発達文化学類論集』19号(2014年)13–26ページ特別支援教室って、どんな制度?出典 : 全国に先駆けて東京都の小学校で特別支援教室が2016年4月から順次導入されています。ここでは東京都の小学校におけるモデル事業をもとに、特別支援教室が実際にはどのような制度なのかを説明します。特別支援教室とは、情緒障害や発達障害のある子どもたちを中心に、教育の場でサポートを必要とする子どもたちにサポートを提供しようとする制度です。基本的には、現在の「情緒障害等通級指導学級」(以下「通級」とする)を置き換えるものだとされています。ただし、「通級」には、情緒障害や発達障害以外の障害(吃音や難聴など)に関連したサポートを行うものもあります。ここで紹介する特別支援教室は、主に情緒障害や発達障害に関連した制度ですので、それ以外の「通級」までまとめて特別支援教室に置き換わるわけではないことに注意が必要です。特別支援教室の最大の特徴は、子どもたちが普段通っている学校でそのまま支援を受けられるということです。これまでは、障害のある子どもたちが特別な支援・サポートを受ける際に、普段通っている学校とは別の学校の「通級」に通ったり、特別支援学級や特別支援学校に籍を置く必要がある場合も少なくありませんでした。しかし、特別支援教室は各小学校にそれぞれ導入されます。2つの学校に通う必要がなくなることで、特別支援教育を受ける子どもたちの負担が軽くなることが期待されています。また、特別支援学級や特別支援学校でのサポートまでは必要としない通常学級に在籍する子どもが、個別のニーズに合わせて弾力的な支援が受けやすくなると考えられます。特別支援教室で教える内容は、基本的には情緒障害等通級指導学級(通級)と同じです。つまり、子どもの障害に応じて、障害の状態に応じて「自立活動」や「教科の補充指導」などが、それぞれに合った方法で指導されます。特別支援教室で指導を受けられるのは、情緒障害や発達障害のあるお子さんです。東京都は、対象として通常学級での学習におおむね参加できる「高機能自閉症・アスペルガー症候群」「ADHD(注意欠陥・多動性障害)」「学習障害(LD)」を挙げています。例えば高機能自閉症・アスペルガー症候群の子どもがコミュニケーションを取るのが苦手な場合、ロールプレイなどで適切な会話を学んだり、相手の気持ちを考えるなどの指導が行われます。また、学習障害がある場合、自分に合った学習方法を習得するための指導なども行われます。現在のところ、それ以外の障害(吃音や難聴など)に関連して「通級」に通っているお子さんについては、特別支援教室での指導は想定されていません。出典 : 特別支援教室に携わる人として、「巡回指導教員」「特別支援教室専門員」「臨床発達心理士等」という役割が新たに定められました。「通級」の担当教員は、役割の名前が「巡回指導教員」に変わります。巡回指導教員は、「通級」と同じように特別支援教室で子どもに指導をするほか、在籍する通常教室の担任と密に連携し、特別支援教育を受ける子どもだけでなく子どもが在籍するクラスでも連携して支援を行い、担任に助言をします。「特別支援教室専門員」は、特別支援教室の導入によって新しく配置されます。非常勤の職員で、特別支援教育で必要になる教材を作ったり、対象となる子どもの行動を記録したりします。新たに「臨床発達心理士等」も巡回することになります。「臨床発達心理士」「特別支援教育士」「学校心理士」の資格を持っている人が子どもの行動観察を行い、障害の状態を把握し、巡回指導教員や担任教員に専門的な指導を行います。東京都教育委員会「東京都公立学校特別支援教室専門員について」特別支援教室のメリットとデメリットは?「通級」と比べると?出典 : 保護者にとって最も気になるのが、既存の「通級」から何が変わるのか、また何が変わらないのかということではないでしょうか。ここでは、メリット・デメリットとともに説明します。「通級」が地域の拠点校にのみ設置されたのに対し、特別支援教室は各学校にそれぞれ設置されることが予定されています。つまり、これまでであれば、通級による指導を受けるために定期的に別の学校に出向く必要があったのに対し、これからは普段通っている学校で同じような指導を受けることができるようになります。Upload By 発達障害のキホンUpload By 発達障害のキホン2つの制度の違いは、基本的にはこの点に尽きます。たったこれだけの違いですが、「通級」から特別支援教室に変わることのメリットやデメリットは、必ずしも小さなものではありません。以下ではそれをいくつか紹介します。特別支援教室は、そもそもインクルーシブ教育を推進するための構想です。そのため、特別支援教室のメリットは、何といっても日本の教育をインクルーシブなものに変えるという点にあります。つまり、障害のある子どもたちと障害のない子どもたちが、それぞれに必要なサポートを受けつつ、基本的に分け隔てなく教育を受けることができる、そのような社会の実現に向けた第一歩が、この特別支援教室なのです。しかし、障害のある子どもたちや、その親御さんにも、直接的なメリットがあります。それは、これまでの「通級」とは違い、普段通っている学校でそのままサポートを受けられるということです。子どもにとっては別の学校に通う負担が減り、また障害に関連したサポートをする先生と、クラスの担任の先生との連携が、「通級」の場合よりも一層密になることが期待されます。しかし、特別支援教室にはデメリットや課題も指摘されています。まず、これまでの「通級指導学級」と同じ水準のサポートが特別支援教室で提供されるのかどうか、必ずしも明らかではありません。というのも、各学校に特別支援教室を導入するためには、これまでよりも明らかに多くのスタッフが必要です。加えて、特別支援教室では、将来的には「障害」の有無にかかわらず子どもたちの支援・サポートを行うことを目標としています。裏を返せば、これまでと同様に限られた資源の中で、これまでよりも多くの子どもたちにサポートをしようとしています。つまり、もしスタッフが十分に増えないまま特別支援教室を導入すれば、少ないスタッフでより多くの子どもを支援することになり、サポートの質が低下するおそれがあります。このことから「障害のある子ども」としてこれまで特別に支援を受けてきた子どもたちに対して、従来の特別支援教育が提供してきたサポートの質が保たれなくなるのではないか、と懸念する声もあります。もう一つ、重要な点があります。特に変化が苦手な自閉傾向がある子どもたちにとって、サポート環境が変わるということそのものが重大な出来事となりえます。この観点から見ると、特別支援教室という制度の良し悪しとは別に、制度の移行にスムーズに適応できるような仕組みについて考えていくことが求められます。特別支援教室とその他の制度との違いは?出典 : 障害のある子どもの学びの場は、今までご紹介してきた特別支援教室や「通級」だけではありません。日本の制度では、代表的なものに「特別支援学校」や「特別支援学級」があります。これらの制度は、それぞれどのように違うのでしょうか?特別支援学校とは、かつて「盲学校」「聾学校」「養護学校」と呼ばれていた学校で、現在でも学校名にこうした言葉がついている場合があります。一部の例外を除いて、基本的には障害のある子どもたちだけが学ぶ学校です(一部に、障害のない子どもたちが学ぶ学級を併置した「併置校」も存在します)。また、学校数自体が少ないので、寄宿舎がある特別支援学校もあります。特別支援学校では、特別支援学校学習指導要領に従い、その他の学校で教えられる教科に加えて、それとは異なる特有の教科が教えられます。こうした教科の多くは、学校を卒業した後に就く職業に関連した、職業訓練的な性格の強いものです。また、教える先生の資格という面から見ても、特別支援学校で教える先生は「特別支援学校教諭」という、一般の学校の先生とは異なる免許を持っています。特別支援教室と特別支援学校の最大の違いは、そもそも通う学校が違うという点です。これは比較的わかりやすい違いでしょう。ところで、自閉症・発達障害・学習障害などがある子どもたちを対象とする特別支援学校はあるのでしょうか。基本的には、現在のところありません。ただし、お子さんに別の障害がある場合には、その障害に応じて特別支援学校に通うことができるでしょう。たとえば、視覚障害と発達障害があるお子さんや、知的障害が合併した発達障害のあるお子さんのような場合です。特別支援学級は、かつては「特殊学級」と呼ばれていました。現在でも、関連条文から「81条学級」と呼ばれることがあります。(以下では「特別支援学級」に統一します。)特別支援学級は、一般の小中学校に置かれます(制度上は高校にも設置できますが、実例は多くありません)。多くの場合、障害の種類ごとに分かれ、学校ごとに「あすなろ学級」「なかよし学級」など様々な名前がついています。お子さんが特別支援学級で教育を受ける場合、その学校の通常学級ではなく特別支援学級に在籍することになります。そして、特別活動などを除き、通常学級の子どもたちとは違う教室で授業を受けることになります。制度上は、特別支援学級での教育は一般の小中学校と同じ学習指導要領に則った教育ですが、子どもの実態に応じて特別支援学校を参考にしたカリキュラムが組まれることもあります。先生の資格という面から見ると、特別支援学級で教える先生に求められる資格は、「特別支援学校教諭」ではなく「小学校教諭」や「中学校教諭」です。特別支援教室と特別支援学級の最大の違いは、お子さんがどの教室に所属するかです。特別支援教室の場合は、お子さんは通常学級に在籍し普段は他の子どもたちと同じ授業を受けつつ、必要に応じて別の教室で別の教育を受けることになります。これに対して特別支援学級の場合は、お子さんは特別支援学級に在籍し、別の教室で別の授業を受けることが基本となります。出典 : 最も違いがわかりにくいのが、特別支援教室と「情緒障害等通級指導教室」の違いではないでしょうか。情緒障害等通級指導教室は、「通級指導教室(情緒障害等)」「通級教室」「通級学級」などと書かれる場合が見られますが、どれも制度上は同じものです。以下ではまとめて「通級」と呼ぶことにします。先に説明したように、「通級」には、吃音や難聴のある子どもたちへのサポートを行うものもあります。通級と特別支援教室は、どちらの制度も、お子さんが障害のない子どもたちと同じ学校の同じ教室で学びつつ、必要に応じて別の教育を受けるという点で共通しています。どちらの制度も、特別支援学校(障害のない子どもたちとは別の学校に通う)とも、特別支援学級(障害のない子どもたちと同じ学校に通うけれども、普段から別教室で学ぶ)とも、大きく違う制度です。その上で、「通級」と特別支援教室の最大の違いは、その「別の教育を受ける」教室がどこにあるかです。「通級」の場合には、お子さんは別の教育を受けるために普段とは違う学校に出向く必要がありました。これに対し、特別支援教室は各学校に設置されますので、「通級」とは異なり別の学校に行く必要がありません。現在、特別支援教室は導入に向けたモデル事業が行われている段階で、その形態や指導内容についてはまだ研究や検討が行われています。そのため、自治体や学校によって、今回ご紹介した東京都の特別支援教室とは違う方法で導入されていたり、今後導入される可能性もあります。また、横浜市は、2004年に「横浜市障害児教育プラン」を定め、独自に先駆的な特別支援教育を進めてきました。その中で「特別支援教室」という言葉を使っています。しかし、この「特別支援教室」は、名称は同じでも文部科学省が推進する「特別支援教室」(この記事で説明しているもの)と必ずしも同じではありません。具体的な説明は省きますが、横浜市の「特別支援教室」は文部科学省の「特別支援教室」よりも少し狭い概念だと考えていただければよいでしょう。どのように特別支援教室が導入されているか、また今後導入されるかはそれぞれお住まいの地域によって異なるので注意が必要です。横浜市特別支援教育推進会議「「特別支援教室」の展開方策などについて 」(2006年8月)特別支援教室を利用するために必要なことは?出典 : 一例として、東京都中央区の事例を紹介します。ただし、実際に必要な手続きは自治体ごとに異なりますので、詳しくは学校や各自治体の担当者にお問い合わせください。まず、すでに「通級」を利用されていて新年度も継続して指導を受けたい場合です。この場合は、原則そのまま移行しますので、特別な手続きは必要ありません。新年度も継続して指導を受けたいという旨を、在籍校の担任教員や通級指導教員にご相談ください。次に、まだ「通級」を利用されていない場合についてです。新年度に新たに入学する子どもについては、就学相談でご相談ください。それ以外の子ども(すでに学校に通っており、新たに特別支援教育を受けようと考えの場合)については、在籍校の担任教員にご相談ください。このように、特別支援教室で指導を受けるためにまずすべきことは、新入生の場合は就学相談、それ以外の場合は担任教員への相談だといえます。繰り返しになりますが、具体的な手続きにつきましては学校や各自治体にお問い合わせください。特別支援教室|東京都中央区特別支援教室の今後は?出典 : 最後に、特別支援教室構想の展望について簡単にご紹介します。東京都の小学校では、モデル事業として特別支援教室の導入が既に始まっています。都の計画では、平成28年度以降、準備の整った市区町村から順次導入され、平成30年度までには全ての市区町村に特別支援教室が設置されることとなっています。これに対して、中学校への特別支援教室の導入は、まだ始まっていません。都の計画では、平成30年度以降、準備の整った市区町村から順次導入され、平成33年度までには全ての市区町村に特別支援教室が設置されることとなっています。東京都以外に目を向けると、いくつかの自治体では特別支援教室の導入に向けた動きが見られます。しかし、それらの動きは、基本的にはまだ本格化していません。東京都のモデル事業にならった特別支援教室が全国的な制度となるかどうかは、まだ未知数だといえます。東京都教育委員会「東京都特別支援教育推進計画(第二期)・第一次実施計画――共生社会の実現に向けた特別支援教育の推進」(2017年2月)まとめ出典 : 特別支援教室は、インクルーシブ教育を実現するための制度として、長年の構想を経てようやく実現に向かいつつある制度です。今後の展望にはまだ不確定な面が多くありますが、これから少しずつ、障害のある子どもたちが少ない負担で適切な教育を受けられる制度として確立していくことでしょう。既に「通級」で指導を受けられている場合はもちろん、そうでない場合でも、また「障害」という診断の有無にかかわらず、少しでもお子さんにとってメリットがあるとお考えであれば、一度担任の先生や各自治体に相談されることをおすすめします。
2017年03月30日こんにちは。子育て支援を専門にしている臨床心理士の今井千鶴子です。もうすぐ新年度です!大人にとっても子どもにとっても、新年度は新たな出会いが多い時期です。社会心理学の理論の中には、『最初の印象が後の印象までを支配してしまう』と述べられているものがあります。その最初の印象に影響する代表的なものが“挨拶”ではないでしょうか。挨拶は簡単そうに思われがちですが、「子どもが上手に挨拶できない」というママからの悩みは意外と多いものです。今回は、お子さんが楽しく挨拶するための4つのコツをご紹介します。●(1)挨拶の“大切さ”を話しあってみる挨拶が苦手なお子さんの中には、“なぜ挨拶をするのか”ということについて納得しておらず、その必要性を感じていない子がいます。挨拶をする理由(意味)が理解できたり、納得できたりすると、エンジンがかかる子もいます。世界共通で行われている挨拶ですが、実は挨拶をする“本当”の理由は明確ではありません。しかし、挨拶の“大切さ”を伝えることはできます。たとえば、「(小さな声で)おはよう」と言う挨拶と、「(大きな声で)おはよう」と言う挨拶をお子さんに見せ、「どっちが元気だった?」や「どっちが好き?」などと質問してみましょう。そして、お子さんの答えから、「挨拶って何ですると思う?」と話題を広げてみるといいと思います。お子さんたちが考える理由はさまざまですが、本当の理由などないのですから、親子が納得できる理由を考えて実践できればいい と思います。●(2)焦らず少しずつ成功体験を重ねる挨拶と一言でいっても、行動科学からすると、実はさまざまな段階(行動)に分けられます。たとえば、“目(顔)を相手に向ける”、“会釈する”、“笑顔を作る”、”小さい声を出す”、“大きな声を出す”などいくつかの段階に分けることができます。心理学的には、“少し頑張ったらできる”くらいの目標がちょうどよい とされています。なぜなら、初めから完璧な挨拶を求めすぎると、途中で挫折しやすくなるからです。もし、声を出して挨拶をするのが苦手なお子さんだったら、まずは「目(顔)を相手に向けて軽く会釈をしよう」など、過度の負担がかかりすぎない段階からスタートしてみましょう(お子さんと相談し、チャレンジできそうな内容かどうかを確認しましょう)。焦らず少しずつ成功体験を重ねることがポイントです。そして、チャレンジしたときにはお子さんの頑張りをしっかりと認めましょう。もしかしたら、お子さんが一番喜ぶのは、挨拶した相手から「上手に挨拶できるね」などと褒められることかもしれません。ただ、残念ながらそういう機会は少ないと思います。そんなときはママから「(挨拶の相手が)笑顔になっていたね」「○○ちゃんが挨拶するのを(挨拶した相手が)すごいなっていう顔で見ていたよ」「○○ちゃんが元気に挨拶するのを見て、ママまで元気が出たよ」など、挨拶した結果を子どもに伝えてみる のもいいですね!そのようなママからの言葉がお子さんの挨拶へのモチベーションや自信へとつながっていくと思います。●(3)挨拶のレパートリーを増やす挨拶が大切なことはわかっていても、“いつ”“どんなこと”を言ったらいいのかわからないお子さんもいます。そんなお子さんとは、場面ごとにどんな挨拶をしたらよいのか話し合ってみましょう。たとえば、「朝(昼・夜)はどんな挨拶をする?」「友達の家に遊びに行くときにはどんな挨拶をする?」「職員室に入るときにはどんな挨拶をする?」など、お子さんが経験しやすい場面をクイズ形式で考えてみましょう。特に不安が強いお子さんや恥ずかしがり屋のお子さんの場合には、ママやパパと事前に作戦会議をしたり、実際に練習したり することで、自信を持って挨拶できると思います。●(4)ママやパパが挨拶のモデルとなるいくらママがお子さんに「挨拶しようね」と言っても、ママ自身が挨拶をしていなければ、お子さんの挨拶行動は身につきません。挨拶ができる子になってほしいなら、まずはママが率先して明るい挨拶を心がけましょう。また、意外な盲点としては“パパ”の存在があります。たとえママが明るい挨拶を心がけていても、パパが挨拶をしなかったり、適当にしたりしていては挨拶の大切さは伝わりません。子どもは何より“矛盾”を嫌う存在 ですので、一貫して素晴らしい挨拶を心がけましょう。家族みんなで気持ちのいい挨拶をしていれば、「挨拶っていいな」と自然に思えるはずです。さらに、ママやパパ以外にも、お友達や絵本、アニメなどのキャラクターをお手本のモデルとして紹介するのもおすすめです。----------いかがでしたか?今回はお子さんが楽しく挨拶するための4つのコツをご紹介しました。明るく挨拶をして、楽しい新年度をスタートさせましょう!●ライター/今井千鶴子(臨床心理士)●モデル/前田彩(桃花ちゃん)
2017年03月28日うちの学校の支援級、わが子に合ってる…?出典 : 「支援級か、通常級か…迷ってるけど、どうやって判断すればいいの?」「うちの子が通う学校の支援級、どんな環境だろう?どういうところを気にしたらいいの?」現在、希望者急増で過渡期にある、特別支援学級(以下、支援級)をめぐる状況は様々です。情報を探すと、「うちの子も是非お願いしたい!」と思える素晴らしい支援級もあれば、残念ながら、現場の事情が追いつかずに、十分な理解や子どもに合った対応が得られない支援級もあるようです。支援級をご検討の際には、実際に、お子さんが通う「その」支援級がどうなのか、自分の目で確かめてみることが必要です。長男が自ら通常級から支援級への転籍を希望した際、私はまず、特別支援コーディネーターの先生の案内で、実際にクラスを見学させて頂き、事前に疑問な点、不安な点の詳しいご説明をお願いし、長男本人も見学・体験させて頂きました。それでも、後から「もっと早く確認しておけば良かった」と思ったことも少なからずありました。そこで、支援級を選択する前に「確認してよかったこと」「確認しておけばよかったこと」の、判断のポイントを、あくまで「うちの経験上」ではありますが、楽々かあさんこと、大場美鈴がお伝えします。支援級見学の際にぜひ確認しておきたい!4つのポイント出典 : 長男が通っている支援級は、身体・知的に障害のあるお子さんのクラスと、長男のように、大きな知的・言葉の遅れの心配はないものの、発達障害の傾向のある子が中心となる、情緒級に分かれています。学校によっては、どの障害の状態のお子さんも一緒のクラスになる場合もあります。その場合でも、個別に学習内容を調節して頂ける場合はいいのですが、そうでない場合、お子さんに学習面での理解力がある程度あっても、学習内容や課題が簡単過ぎるケースがあります。そうなると本人の理解度とのミスマッチが起こり、その支援級がその子の力を伸ばせる環境とは言いがたくなる可能性があります。逆に情緒級がある場合も、その子の学習の進度に合わせた課題でない場合もあります。本人の能力や理解度に合わせた学習ができるかどうかは、よく確認しておきたいポイントの一つです。万が一合わない場合でも、先生と学習内容を調整して頂けるか、相談の余地があるかどうか、見極めておいたほうがいいでしょう。また、基本的に支援級の成績表は、「国語は漢字ドリルをがんばり、丁寧に漢字を書けるようになりました」というような、言葉による表現がされることが多いようです。特に将来的に、中学受験の可能性がある場合には、念のため希望した際には通常級と同じ評価で対応可能かどうか、確認しておいたほうがいいでしょう。(中学受験の際、全ての学校で成績表の提出が必須という訳ではないようですが、一部の入試日程や推薦、A.O.入試の場合などには、成績表のコピーの提出が必要になる場合があります。)出典 : 次に気をつけたいのは、今のところ、すべての支援級の担任の先生が、特別支援教育の知識・経験が豊富であるとは限らない、ということです。支援級の担任には、特別な資格などは必須ではなく、今まで通常級で担任してきた先生が、急に支援級を受け持つ場合も多いようです。長男の今年の担任も、長年通常級を受け持ったベテランの先生ですが、支援級の担任は人生初でした。ただし私は、支援に詳しくない先生=子どもにとって良くない先生、とは限らないと思っています。確かに、凸凹のある子に伝わりやすい方法を多く知っている先生なら心強いと思います。しかし、詳しい先生1人に負担がかかり過ぎてしまったり、クラスの他のお子さんの状況などによって、少人数であっても十分に子ども一人ひとりを見ることができない…など、先生お一人の力では解決できない現場の事情がある場合もあります。そのため支援に対する知識・経験の有無で、一概には判断できないと思います。もし、先生が支援に詳しくないからと、あからさまに保護者が落胆してしまうと、それが子どもや先生にも伝わって、その後の信頼関係に影響が出てしまうかもしれません。私は、知識・経験の有無よりも、・先生が子どもを肯定的に見ようとしてくれるか・子どもに合わせた指導をしてくれるか・親の話に耳を傾ける余力があるかのほうが大事だと思っています。しかし、見学の時点で気持ちよく応対してくれた先生に会えたとしても、翌年に我が子を担任してくれるとは限らないというのは注意したい点です。通常級に比べれば、支援級の先生は比較的長く同じクラスを担当することが多いようですが、異動がないわけではありません。また、大変残念なことながら、今まで毎年のように支援級の補助教員や介助員の先生が、年の途中で1人、2人とお辞めになってしまうことも、私は学校のお便りで度々知らされてきました。厳しい現場の現実があるように感じます。出典 : 人事異動がある先生方と違い、子どもたちは比較的同じメンバーでともに支援級で過ごすことが多いです。もちろん、入学や卒業、転籍などによる入れ替わりはありますが、クラス替えもなく、ほぼ同じメンバーで何年間も過ごすことになります。支援級は、学年を越えて、多種多様な子ども達の集まりとなるため、それが合う子、合わない子がいると思います。支援級の低学年のお子さんは、かなり自由気ままな印象がしたりで、見慣れてないと「これで大丈夫かしら…」と少々不安に感じられるかもしれません。そういう時は、何年もその環境で過ごしてきた、高学年のお子さんの様子が参考になると思います。その子なりに落ち着いていたり、交流級に意欲的に参加している様子が見られれば、その支援級の環境がプラスに働いていると受け取ってもいいのではないかと私は思っています。また、掲示物が破れっぱなしになっていないか、といった備品の様子、ロッカーに分かりやすいマークなどの工夫があるか、といった教室環境も、その支援級が安定しているかの参考になると思います。(ちなみに私は、教室の備品の乱れが放置されている場合、先生に余裕がなく、かなりお疲れ気味…というシグナルだと受け取っています。)出典 : 私が見学した時、1クラス6~7名と聞いていた支援級の情緒クラスには、いつも低学年の2~3人のお子さんしかいませんでした。他のお子さんは「交流級」に行っているのだそうです。長男の学校の場合、大抵は学年が上がるほど交流級で過ごす時間が増えていき、最終的に通常級に移籍する子も多いそうです。ご家庭で「いずれは、できれば通常級へ」と希望している場合には、交流級の活用状況は要チェックです(また、そもそも支援級から通常級への転籍が可能かどうか、よく確認しておく必要がある学校もあるようです)。交流級の活用状況は学校によって様々です。長男の小学校はかなり積極的なほうだと思います。後に担任の先生からその理由を伺うと、「年々、支援級への希望者が増えているので、◯太郎くんのように、交流級の授業に意欲がでてきたお子さんは、どんどん”卒業”して、通常級に戻って頂けると助かります」…とのこと。なかなか厳しい内情もうかがえます。とはいえ交流級を充分に活用できている学校は、通常級の子達も支援級の子に日頃から馴染んでおり、支援級”卒業”後も、比較的クラスに溶け込みやすいのではないかと思います。交流級の活用については、見学時、私はあまり気にしていませんでした。でも今思うと、重要なポイントだったと思います。どんな状況の支援級も、本人が体験してみるのがイチバン!出典 : 見学をする際には、参観日のようなよそ行きの状態ではなく、支援級のありのままの状態を子ども本人が、できるだけ何回も見られるほうがベターです。長男が普通級から支援級へ転籍する前に、私は長男本人が何度も支援級を見学・体験できるよう、お願いしました。でも見学を予定していたある日、突然見学がキャンセルになったことがありました。先生によると、「今日は、落ち着けてないお子さんがいたので、見学は中止させて頂きました。また日を改めて、予定を調整させて下さい」とのこと。それを聞いて、私はこう言いました。「是非、そういう時も本人に見せてください。ご迷惑になるようでしたら、廊下からでも構いませんので。支援級は、皆が落ち着いている時もあれば、そうでない時もあることを、本人が十分知って、納得したうえで転籍したいです。」支援級は、長男と同じように、あるいはそれ以上に、特別な配慮・支援を必要とするお子さんの集まりです。当然のことながら、少人数とはいえ、いつもクラス全体が落ち着いているとは限りません。そんな支援級で過ごすイメージを本人が持てると、入級後の環境の変化にもついていき易いと思います。長男の場合は実際に何度も授業を見学させて頂き、給食の時間を支援級の子達と一緒に過ごしたり、といった機会を作って頂きました。すると、「今日はすんごい泣いてる子もいたよ」「一年の子が途中で教室出てっちゃった」なんて言うときもありました。私は「支援級はそういう時もあるよ。それでもいい?」と聞きましたが、長男は「それでもいい。支援級に行く」と決心は変わりませんでした。「うちの」支援級には良いところも、そうでないところもあることを、十分納得の上で転籍をした私達。結果的にこの一年は、長男の成長のプラスになりました。実際に自分の目で確かめて、後悔のない選択を出典 : 長男の先生からの話にもありましたが、近年、支援級を希望する子どもが急増している傾向があります。なかなか現場がそれに追いつけないという裏事情もあり、全てが保護者の希望どおり、理想どおりという訳にはいかない場合も、多いかと思います。それでも、事前にメリット・デメリットを良く比較検討し、納得のゆくまで説明をして頂き、実際に自分の目で確かめて、体験して、自分たちの意思で決められれば、後悔するリスクを減らすことができます。学校生活でお子さんが自信をつけてゆける、プラスの選択ができるよう、祈っています。Upload By 楽々かあさん大場美鈴(著), 汐見稔幸(監修), 『発達障害&グレーゾーンの3兄妹を育てる母のどんな子もぐんぐん伸びる120の子育て法』ポプラ社, 2017年
2017年03月13日エムティーアイ運営の健康情報サービス「ルナルナ」はこのほど、シンクパールと共同で実施した「職場での婦人科検診制度について」の調査結果を発表した。同調査は2月18・19日、20~50代以上の女性1万1,676名を対象にインターネットで実施したもの。初めて婦人科検診を受けたきっかけについて聞くと、「自治体からのお知らせ・クーポン」(34.7%)が最も多く、次いで「自分の職場の健康診断」(24.1%)となった。最近では著名人の乳がんや子宮頸がんなどの婦人科疾患発症が話題になっているが、そういった報道によって自身の意識や行動に変化はあったか尋ねたところ、41.2%が「自分の健康について考えるようになった」と回答した。33.5%は「実際に検診に行った」と答えている。次に、20~50代以上の働く女性を対象に、自身の職場に婦人科検診を受けられる制度はあるか聞くと、「ない」が45.4%で、「自分の職場にある」(39.7%)を上回った。職業別でみると、「自分の職場にある」が半数を超えたのは正社員(51.4%)のみで、その他は検診制度がない人が多いことがわかった。「自分の職場」もしくは「家族の職場」に婦人科検診を受診できる制度があると回答した人に、実際に受けている検診の種類について尋ねたところ、乳がん検診は自己負担あり・なしに関わらず約30%が受けていることがわかった。子宮頸がん検診も、自己負担なし35.8%・自己負担あり30.2%で受診率は3割を超えている。職場に婦人科検診を受けられる制度がないと回答した人に、もし職場に受けられる制度があった場合に活用したいか尋ねると、58.2%が「自己負担がないなら受けたい」、33.1%が「自己負担があっても受けたい」と答えた。合わせると、9割以上の人が受診したいと回答している。
2017年03月02日新築・中古住宅の購入やリフォームで利用できる減税制度では、所得税、登録免許税、不動産取得税、固定資産税などが減税できます。所得税の減税制度には、ローンを組んだ場合に利用できるローン型と、自己資金で購入・リフォームを行った場合に利用できる投資型がある点がポイントです。補助金と違い併用できる制度が多いため、もれなく申請しておきましょう。■新築住宅購入で利用できる減税制度新築受託を購入した際に利用できる減税制度には、以下の種類があります。【所得税の減税】住宅ローンを利用して新築住宅を購入した場合は、「住宅借入金等特別控除」、通称住宅ローン減税が利用できます。おもな要件としては、以下が挙げられます。■10年以上のローンを組んだ場合■その年の合計所得金額が30,000,000円以下■新築または新築住宅取得の日から6カ月以内に入居したこと控除額は、入居した年が平成26年4月1日~平成31年6月30日までの場合、「各年末のローン残高×1%」の計算式で算出します。控除期間は10年で、上限は400,000円です。さらに低炭素住宅、長期優良住宅の場合は、上限が500,000円になります。手続き方法は、1年目と2年目以降で異なります。■1年目確定定申告書に「(特定増改築等)住宅借入金等特別控除額の計算明細書」などの書類を添付して、納税地の所轄税務署長に提出します。■2年目以降提出書類が減るほか、給与取得者(自営業以外)は年末調整による適用が可能です。住宅ローンではなく自己資金で新築住宅を購入した場合は、「認定住宅新築等特別税額控除」を受けられます。対象は低炭素住宅および長期優良住宅(以下、認定住宅)です。おもな要件としては、以下が挙げられます。■住宅の床面積が50平方メートル以上であり、床面積の2分の1以上が居住用に使われていること■その年の合計所得金額が30,000,000円以下■新築または新築住宅取得の日から6カ月以内に入居したこと控除額は、認定住宅の認定基準に適合するために必要となる標準的なかかり増し費用の10%です。「認定住宅の標準的なかかり増し費用」とは、1平方メートル当たり43,800円に、その認定住宅の床面積をかけて計算します。標準的なかかり増し費用の限度額は6,500,000円で、控除期間は最初の1年間のみです。手続き方法は、確定申告書に「認定住宅新築等特別税額控除額の計算明細書」などを添付して所轄の税務署に提出します。【登録免許税の減税】正式には「住宅に係る登録免許税の軽減措置」といい、新築住宅を購入した場合は以下それぞれの登録免許税が軽減されます。■所有権の保存登記にかかる税率本則の0.4%から0.15%に軽減されます。要件は住宅の床面積50平方メートル以上であることです。■所有権の移転登記にかかる税率本則の2.0%から0.3%に軽減されます。要件は、個人が居住に使っている部分の床面積が50平方メートル以上であることです。■抵当権の設定登記にかかる税率本則の0.4%から0.1%に軽減されます。新築住宅であれば床面積などの条件はありません。なお長期優良住宅および認定低炭素住宅の新築にかかる登録免許税の税率は、平成30年3月31日までは一律0.1%(戸建ての長期優良住宅の移転登記については0.2%)に軽減されます。手続きは特に必要ありません。【不動産取得税の減税】不動産取得税とは、住宅を建築するなどして不動産を取得した際に課税される制度です。都道府県に納税します。新築住宅を購入した場合は、この不動産取得税も軽減されます。新築住宅を取得した場合における不動産取得税軽減のおもな要件は、床面積が50平方メートル~240平方メートルであることです。控除額は、上限12,000,000円(価格が12,000,000円未満である場合はその額)で、認定長期優良住宅の新築の場合については、さらに上限が13,000,000円まで引き上げられます。また、住宅を新築したときの土地についても不動産取得税が軽減されます。要件としては、住宅について上記の床面積条件を満たしているとともに、土地を取得したタイミングによってそれぞれ条件を満たしている必要があります。住宅の新築より先に土地を取得した場合は、以下の条件を満たしていることが必要です。■土地を取得後3年以内にその土地の上に住宅が新築されていること住宅の新築よりあとに土地を取得した場合は、以下の条件を満たす必要があります。■住宅を新築した人が、新築後1年以内にその敷地を取得していること■新築未使用の住宅とその敷地を、新築後1年以内に同じ人が取得していること控除額は、以下のいずれか高い方の金額となります。■45,000円(税額が45,000円未満である場合はその額)■土地1平方メートル当たりの価格×住宅の床面積の2倍(一戸当たり200平方メートルが限度)×税率(3%)手続き方法は、住宅や住宅用土地を取得した日から60日以内に、不動産取得税申告書に売買契約書や登記事項証明書などの書類を添えて、所管する都税事務所に申告します。新築住宅を購入した場合は、市町村に支払う住宅用家屋の固定資産税が軽減されます。おもな要件としては、以下が挙げられます。■居住部分の床面積が1戸当たり50平方メートル~280平方メートル■平成29年3月31日までのあいだに新築された住宅控除額以下のとおりです。■床面積が120平方メートル以下の場合…2分の1■120平方メートルを超え280平方メートル以下の場合…120平方メートル分について2分の1控除期間は一般の住宅は3年間、長期優良住宅は5年間です。さらに二世帯住宅を新築した場合は、「各世帯が壁やドアによって遮断され、他方の世帯と構造上独立していること」などの条件を満たしていれば、2戸それぞれに固定資産税の減額措置を受けられます。また、住宅を新築した場合の土地(住宅用地)の固定資産税も、課税標準額の減額という形で減税されます。要件は特にありません。減額後の課税標準額は以下の通りです。■200平方メートル以下の小規模住宅用地その土地の価格の6分の1(200平方メートルを超える場合は住宅一戸当たり200平方メートルまでの部分)■上記以外の一般住宅用地その土地の価格の3分の1手続きは市町村によって異なるため、お住まいの市町村で確認をするようにしましょう。■中古住宅購入で利用できる減税制度中古住宅の購入で利用できる減税制度には、以下のものがあります。【所得税の減税】中古住宅を購入した場合も住宅ローン減税が利用可能です。おもな要件としては、以下のものが挙げられます。■家屋が建築された日から購入した日までの期間が20年以下■一定の耐震基準を満たしていること■耐震改修が必要な住宅の場合は、改修の結果耐震基準を満たすと証明されていること■その年の合計所得額が30,000,000円以下■住宅の床面積が50平方メートル以上■10年以上のローンを組んでいること計算方法や控除期間は新築住宅の場合と同様です。なお低炭素住宅、長期優良住宅の適用はありません。【登録免許税の減税】中古住宅を購入した際も、登録免許税が軽減されます。おもな要件は以下となります。■床面積50平方メートル以上■耐震性の基準を満たしていること■購入時において、新築された日から10年以上経っていること■リフォーム工事が行われ、建物価格に占めるリフォーム工事の総額の割合が20%以上税率に関しては、本則2%から0.1%に軽減されます。手続き方法は、登記申請のタイミングで、登記事項証明書に住宅用家屋証明申請書を添えて市町村に提出します。【不動産取得税の減税】中古住宅の購入についても不動産取得税の減税措置があります。おもな要件は、耐震基準を満たしている点などです。控除額はその中古住宅の新築した日によって決定され、1,000,000円~12,000,000円となります。また、耐震基準に満たない中古住宅に対しても、取得後6カ月以内に耐震工事が行われるなどすれば、不動産取得税が減税されます。その場合の控除額は、その中古住宅が新築された日によって決まり、30,000円~126,000円です。さらに、耐震基準を満たしている中古住宅であれば、土地の取得についても不動産取得税が軽減されます。ただし、以下の要件を満たす必要があるので注意しておきましょう。■住宅より先に土地を取得した場合土地を取得して1年以内にその土地の上に建っている住宅を取得していること■住宅よりあとに土地を取得した場合住宅の取得後1年以内にその敷地を取得していること控除額や手続き方法は、新築住宅購入で土地を取得した場合と同様です。■住宅リフォームで利用できる減税制度住宅のリフォームを行った際に利用できる減税制度としては、以下のものが挙げられます。【所得税】所得税の減税制度には、耐震改修をした場合、バリアフリー改修を行った場合、省エネ改修を行った場合、同居対応を行った場合それぞれについて減税制度があります。このうち、耐震改修をした場合の所得税減税は、自己資金でリフォームを行った場合の投資型減税制度のみが利用できる点に注意しましょう。その他の改修については、投資型と住宅ローンを組んだ場合のローン型から減税制度を選択できます。〇耐震改修をした場合耐震改修をした場合の所得税減税における要件としては、以下が挙げられます。■昭和56年5月31日以前に着工されたものであること■現行の耐震基準に適合しないものであること控除額は、平成26年4月1日以降に耐震改修を行った場合、標準的な工事費用相当額の10%となります。標準的な工事費用相当額の上限は2,500,000円です。〇バリアフリー改修をした場合バリアフリー改修をした場合には、以下の4つのうちいずれかに該当する必要があります。■50歳以上■要介護または要支援の認定を受けている■障害者■要介護または要支援の認定を受けている家族、障害者、65歳以上の家族のいずれかと同居している対象となる工事のおもな条件は、バリアフリー改修工事費用から補助金などを控除した額が500,000円超であることなどです。控除額に関しては投資型の場合、平成26年4月1日以降に入居したケースでは、工事にかかる標準的な工事費用相当額の10%となります。標準的な工事費用相当額の上限は2,000,000円です。また、ローン型の控除額は以下の計算式で算出します。(対象となるバリアフリー改修工事費用-補助金など)×2%+該当部分の年末ローン残高×1%」このうち、「対象となるバリアフリー改修工事費用-補助金など」部分の上限は2,500,000円で、控除額全体の限度額は10,000,000円です。控除期間は5年となっています。〇省エネ改修をした場合省エネ改修をした場合には、以下の要件を満たす必要があります。■住宅の引き渡しまたは工事完了から6カ月以内に入居■床面積が50平方メートル以上対象となる工事のおもな条件は、すべての居室における窓全部の断熱工事を含む省エネ改修工事であることです。投資型の控除額は、平成26年4月1日以降に耐震改修を行った場合、標準的な工事費用相当額の10%となります。標準的な工事費用相当額の上限は2,500,000円です。また、ローン型の控除額以下の計算式で算出します。(対象となる省エネ改修工事費用-補助金など)×2%+該当部分の年末ローン残高×1%このうち、「対象となる省エネ改修工事費用-補助金など」部分の上限は2,500,000円で、控除額全体の限度額は10,000,000円です。控除期間は5年とされています。〇同居対応改修をした場合同居対応改修をした場合における所得税減税のおもな要件には、以下の項目があります。■住宅の引き渡しまたは工事完了から6カ月以内に入居■床面積が50平方メートル以上対象となる工事のおもな条件は、「調理室や浴室、便所、玄関いずれかの増設」などです。投資型の控除額は、工事にかかる標準的な工事費用相当額(上限:2,500,000円)の10%です。なお、耐震改修工事や省エネ改修工事、およびバリアフリー改修工事を併せて行った場合、標準的な工事費相当額の上限は9,500,000円となります。ローン型の控除額は、以下の計算式で算出します。(対象となる同居対応改修工事費用-補助金など)×2%+該当部分の年末ローン残高×1%このうち、「対象となる同居対応改修工事費用-補助金など」部分の上限は2,500,000円で、控除額全体の限度額は10,000,000円です。控除期間は5年となっています。これらの所得税減税の手続きをする際は、確定申告の際、増改築等工事証明書などの書類を所轄の税務署に提出しましょう。また、住宅ローンを利用してリフォームを行った場合は、住宅ローン減税制度を利用することも可能です。模様替え、耐震改修、バリアフリー改修、省エネ改修など、さまざまな工事が対象となります。ただし建築士、指定確認検査機関、登録住宅性能評価機関、住宅瑕疵担保責任保険法人により「増改築等工事証明書」が発行されていることが条件です。控除額は「リフォームローンの年末残高-補助金など×1%」の計算式で算出します。上限は、入居した日が平成26年4月~平成31年6月の場合、4,000,000円です。控除期間は居住を開始した日から10年です。手続きについては、新築住宅購入を行った場合の住宅ローン減税申請方法と同様です。【固定資産税】固定資産税についても、耐震改修、バリアフリー改修、省エネ改修をした場合に減額されます。〇耐震改修をした場合耐震改修の場合の要件としては、昭和57年1月1日以前から存在する住宅であることが必要です。工事の対象は以下の通りです。■現行の耐震基準に適合させるための耐震改修であること■改修工事費用から補助金などを控除した額が500,000円超であること控除額は、居住する家屋にかかる固定資産税額の2分の1です。ただし、1戸当たり家屋面積120平方メートル相当分が上限となります。控除期間は1年間です。〇バリアフリー改修をした場合バリアフリー改修のおもな要件としては、以下が挙げられます。■要介護もしくは要支援の認定を受けている者、障害者、65歳以上の者のいずれかが居住する住居であることまた、工事の対象は以下となります。■指定のバリアフリー改修工事であること■改修工事費用から補助金などを控除した額が500,000円超であること控除額は居住する家屋にかかる固定資産税額の3分の1です。ただし1戸当たり家屋面積100平方メートル相当分が上限となります。控除期間は1年間です。〇省エネ改修をした場合省エネ改修の場合の要件は以下のとおりです。■平成20年1月1日前から存在する住宅であること■床面積50平方メートル以上対象となる工事のおもな条件としては、「窓の断熱工事を含む省エネ改修工事であること」などがあります。控除額は居住する家屋にかかる固定資産税額の3分の1です。ただし1戸当たり家屋面積120平方メートル相当分が上限となります。控除期間は1年間です。手続き方法は、改修工事完了後3カ月以内に「固定資産税減額申告書」および必要書類を市区町村に提出します。■まとめいかがでしたか?購入する住宅の条件やリフォームの内容によって、さまざまな減税制度が適用されることがわかったのではないでしょうか。減税制度は補助金制度と違い、併用できる点がポイントです。今回ご紹介した内容を参考に、もれなく申請しておくようにしましょう。
2017年03月01日*画像はイメージです:■世界の裁判制度はいろいろ中国に限らず、日本と外国の国内法が全く同じ内容ということはあり得ませんから、法律の内容は世界の国の数だけ異なります。また、裁判制度も、国が違えば、大きく事情が異なります。日本で当たり前のことでも、外国では違って当然です。本稿では中国の裁判制度について触れてみます。 ■審級制度があるのは同じ日本では、地裁、高裁、最高裁の三審制が原則ですが、中国における裁判所である「法院」も、最高人民法院、高級人民法院、中級人民法院、基層人民法院の4階層あり、審級制度があります。この他、中国では軍事事項を扱う軍事法院がありますが、日本では戦前にあった軍法会議のような特別裁判所は憲法で設置が禁止されていますので、当然ありません。日本では、いったん確定した判決は強力な効力があり、確定判決を覆すための再審事由は極めて限定されており、再審が認められることは滅多にありませんが、中国では比較的再審が利用されているようです。 ■裁判官の質日本では、裁判官への任官は、司法試験に合格した上、司法修習中に起案で抜群の成績をとることが必要であり、事務書類能力や事実認定の証拠評価能力が優秀な人しかなれません。他方、中国では少し前まで、司法試験に合格しない人でも、軍人や役人などが裁判官として任官されており、法的素養がない裁判官も多くいました。コネによる判決や、地元優先の不当な判断を示す裁判官も多く、公平性についての信頼もありませんでしたので、裁判を回避して仲裁を利用することも多いです。 ■刑事事件の特徴刑事事件では、政治犯、社会秩序に対する罪、違法薬物に対する罪の法定刑が重く、死刑判決が下されることが日本よりも相当多いです。また、日本では、3年以下の懲役を言い渡す場合などにしか執行猶予を付すことができず、言渡し刑が無期懲役や死刑などの場合は、執行猶予はありませんが、中国では、死刑判決であっても執行猶予付きにすることができます。死刑執行になるかもしれない執行猶予は、大変恐ろしいです。 旅行も含めて外国滞在中は、当然、滞在国の国内刑法が適用されますから、日本の常識は通用しません。少し前には軍事施設であると知らずに写真を撮影して身柄拘束される事案が続発したこともありました。東南アジア各国でも、薬物事件や売春が死刑などの重い刑罰で禁止されていることがあります。外国では外国の国内法令が適用されますから、渡航前に禁止事項をよく確認の上、旅行中にも羽目をはずしすぎないように注意しましょう。 *著者:弁護士 星野宏明(星野法律事務所。不貞による慰謝料請求、外国人の離婚事件、国際案件、中国法務、中小企業の法律相談、ペット訴訟等が専門。)【画像】イメージです*Zerbor / Shutterstock
2017年02月13日企業の中には独自の社内制度を設けているところがたくさんあります。たとえば女性特有の不調を理由にした休暇取得、ランダムに選んだ社内メンバーとの飲み会代金を負担、生産性を高めるための30分のお昼寝タイムなどなど…。働く社員のことを考えたユニークな制度も多く、子育て支援を目的にしたものも増えてきています。でも子育て以上に大切なのが、良好な夫婦関係…! そこで今回は夫婦にうれしい制度を設けている企業を紹介していきましょう。■夫婦ゲンカの早期解決を会社が手助け!徳島で育児雑誌を発行する出版社、全国ワイヤーママグループは「夫婦ゲンカ特別休暇」を導入しています。読んで字のごとく、夫婦ゲンカが起こったときの仲直りのための休暇です。なんと年5日まで取得可能ということで、ケンカっ早い(笑)ご夫婦も安心。こんな休暇制度があれば「制度のお世話になってばかりじゃあ…」と、ケンカの抑制につながるかも…?こちらの会社は生後2年の間、社員の赤ちゃん用おむつが無料提供される制度もあります。夫婦にも子どもにもうれしい会社ですね。参考サイト ワイヤーオレンジ ■パートナーの誕生日は仕事をしなくてOK!婚活支援サービスを展開する株式会社パートナーエージェントが導入しているのは、恋人や配偶者の誕生月に休暇を申請できる「パートナーバースデー休暇」。福利厚生の一環ということですが、制度があっても「誰も取得していない」状態ではないも同然。こちらの会社は驚くなかれ、約6割の社員が取得しているといいます!夫婦で休みが異なる場合も「誕生日は一緒に過ごせる」という安心感を得ることができそうですね。大切な人と大切な日を過ごせるよう、会社が後押ししてくれるなんてステキです。参考サイト・ 社員の約6割が取得するパートナーバースデー休暇制度 ・ パートナーエージェント ■お小遣い支給で記念日を豪華に過ごそう!人材総合サービスを提供するエン・ジャパンが導入しているのは「結婚記念日お祝金制度」。これは既婚社員の結婚記念日に20,000円のお祝金が支給されるものです。社員やその家族をねぎらい充実した記念日を過ごしてもらうことで、仕事へのモチベーションアップを狙っているそう。何に使うかは個人にゆだねられますが、ディナーやギフト、旅行資金の一部にする人も多いようです。お金という現実的なものだからこそ、普段お祝いをしない人も「記念日費用」として楽しめるのかもしれませんね。参考サイト エン・ジャパン 社内制度の充実は、働く側にとってはうれしいことですよね。仕事に子育てに夫婦関係…。どれにも大切なのは誰かを思う、思いやりの気持ち。今回ご紹介した社内制度はそんな思いやりのひとつなのかもしれませんね。
2017年02月12日シングルマザーの6割が貧困という推計もあるように、経済的に厳しい状況になりがちな母子家庭。公的な支援制度はあるものの、管轄の省庁や窓口がバラバラだったりして、信頼できる情報をまとめてチェックしにくいのが現状です。そこで、シングルマザーへの手当や支援について「これを読めば全部わかる!」という総まとめを作成しました。シングルマザーの方も、これからなる予定の方も、ご自身とお子さんのためにぜひチェックしてください!日本のシングルマザーは6割が貧困シングルマザーの生活実態として、最初に知っておくべきことがあります。それは「日本の母子家庭は6割が貧困状態」という事実です。『子どもの貧困――日本の不公平を考える』という本で、著者の阿部彩さんは2004年の調査をもとに母子世帯の貧困率を「66%」と推計し、次のように述べています。国際的にみても、日本の母子世帯の貧困率は突出して高く、OECDの24か国の中ではトルコに次いで上から2番目の高さである出典:『子どもの貧困――日本の不公平を考える』阿部彩(2008年岩波新書)最新の調査も同じような結果になっています。収入で比較すると、子どものいる世帯の平均年収が600万円以上なのに対して、母子世帯は200万円程度。シングルマザー世帯の95%以上が、日本の全世帯の平均所得以下で生活しています。 ・各種世帯の所得等の状況|厚生労働省 ・平成23年度全国母子世帯等調査結果報告 ■仕事や生活状況シングルマザーの8割以上は仕事をしていますが、その半数近くがパートやアルバイト。3割程度が親と同居しています。同居の場合、両親が元気なうちは育児や家事をサポートしてもらえますが、高齢になると子どもの養育と親の介護の板挟みになるケースも多いようです。このように、シングルマザーの生活、とくに経済状況はかなり厳しいのが現状です。ご自身やお子さまのためにも、これからご紹介する支援制度や手当について、しっかり把握しておきましょう。シングルマザーがもらえる手当その1:児童扶養手当と児童育成手当まずは、ひとり親家庭だけがもらえる手当についてご紹介しましょう。なお、ここでいう”児童”とは、18歳未満(正確には18歳になってから最初の3月31日まで)をさします。■児童扶養手当とは国が定めた制度で、離婚、未婚、死別などでひとり親になった家庭に支給される手当です。住民票のある自治体の窓口で申請します。支給額はお子さんが1人の場合、最大で42,330円。2人目はさらに1万円加算され、3人目以降は1人につき6,000円が加算されます。たとえばお子さんが3人いて満額が支給される場合は、42,330円+10,000円+6,000円=58,330円となります。ただし、児童扶養手当には所得制限があります。扶養家族の人数によって限度額は変わってきますが、たとえば扶養家族が1人のシングルマザー家庭(お子さん1人とママ1人)の場合、所得が57万円(収入なら130万円)までは最大の“全部支給”となります。所得がそれ以上の場合は”一部支給2”となり、以下の計算で金額が決まります。手当額=42,330円―(受給資格者の所得額―所得制限限度額)×0.0186879+10円■児童育成手当とはおもに東京都が実施している制度で、ひとり親家庭を対象に手当が支給されます。東京都の制度では支給額は児童1人あたり月額13,500円で、所得制限があります。申請先は各自治体の福祉担当窓口や子ども担当窓口ですが、市区町村によってことなります。シングルマザーがもらえる手当その2:児童手当児童手当は、シングルマザーに限らず支給されます。中学校卒業まで(15歳の誕生日後最初の3月31日まで)の児童を養育している方に支給される手当で、1人あたりの月額支給額は、以下のようになっています。・3歳未満の児童:一律15,000円・3歳~小学生:10,000円(第3子以降は15,000円)・中学生:一律10,000円ただし制限額以上の所得がある場合は【特例給付】となり、お子さんの年齢や人数にかかわらず1人あたり月額5,000円となります。とはいえ、かなり高所得でないと制限にひっかかることはないでしょう。申請先は住民票のある自治体の窓口です。支給のタイミングは毎年6月、10月、2月で、それぞれ前月分までの手当が振り込まれます。また、離婚して支給対象が元夫になっている(振込口座が夫名義)場合は、早めに変更の手続きをしてくださいね。シングルマザーがもらえる手当その3:生活保護生活保護は、「健康で文化的な最低限度の生活」を保障するため国がおこなっているセーフティーネットの1つです。生活困窮者に対して、世帯や住んでいる地域の状況などを考慮して一定の【保護費】が支払われます。ただし、支給には次のような条件があります。・活用できる資産(土地や持ち家など)がない・病気やケガなどで働けない・親族などから援助が得られない・収入はあるが、厚生労働省がさだめる”最低生活費”に満たない申請や相談は、住民票のある自治体の福祉事務所が受け付けています。本当に困っている方は、1人で悩まず、福祉事務所で相談してみてください。資格取得をサポートしてもらえるって【就労支援】シングルマザーの就職や資格取得を支援する制度もあります。3つご紹介しましょう。■マザーズハローワークシングルマザーに限らず、育児をしながら働きたいママの就職をサポートしてくれる施設です。広いキッズスペースや授乳室がある、託児施設のある求人を集めているなど、育児中のママ向けに特化しているのが特徴。マザーズハローワークは東京をはじめ全国に21カ所あるほか、一般のハローワーク内にも子連れで相談できる【マザーズコーナー】が全国163カ所で設置されています(2016年現在)。■自立支援教育訓練給付金ひとり親を対象にした教育訓練の補助制度です。各自治体が指定する【教育訓練講座】を受講すると、修了後に経費の6割相当(1万2,000円~上限20万円)を給付してもらえます。講座の内容は自治体にもよりますが、情報処理、医療事務、ホームヘルパーなど、就職に結びつきやすいものが中心です。ただし、対象となるためには「児童扶養手当の給付を受けている、もしくは同等の所得水準」「他に有利な資格がない」といった条件を満たしている必要があります。■高等職業訓練促進給付金ひとり親の経済的自立を助けるような資格を取るための補助金制度です。看護師、調理師、保育士、介護福祉士、作業療法士などの資格取得のため1年以上養成機関(学校など)に通う場合、生活費の補助として月額3万円(住民税課税世帯は月額7万500円)を、最大3年間給付してもらえます。こちらも、給付には「児童扶養手当の給付を受けている、もしくは同等の所得水準」といった条件があります。シングルマザーは、生活のために労働条件があまりよくないパートやアルバイトを掛け持ちして、体調を崩してしまうことも少なくありません。長い目で見れば、こうした制度を利用して資格をとり、条件がよく長く続けられる仕事を選ぶというのも賢い選択です。住むところや医療費のサポートも!シングルマザーにとって、医療費や住宅費用は大きな負担です。これらについても、各自治体にサポート制度があります。■ひとり親家庭等医療費助成制度ひとり親家庭の児童(一般に18歳まで)と保護者の医療費自己負担分を、一定額負担してもらえる制度です。子どもの医療費は無料となる自治体も増えていますが、保護者も対象となるのはありがたいですよね。所得が限度額以上の家庭や生活保護を受けている家庭は対象にならず、入院時の食事などが対象外となることも多いので、詳しい条件は各自治体に確認しましょう。■母子生活支援施設シングルマザーやそれに準ずる母子(DVからの保護が必要なケースなど)が入居でき、自立と生活をサポートしてもらえる施設です。ママとお子さんの個室のほか、学習室や集会室などがあり、生活や仕事の相談を受けてくれる相談員も常駐しているので安心です。費用は所得税・住民税などによって個別に決まります。申し込みや相談は、自治体の福祉事務所で受け付けています。■公営住宅への優先入居一般の賃貸より家賃が安いことが魅力の公営住宅。運営する自治体や地域の状況にもよりますが、高齢者世帯や障害者世帯と同じく、シングルマザー世帯も優先入居の対象です。さまざまな支援団体や窓口も。迷ったらまずは相談してみて!シングルマザーにはこのようにさまざまな支援制度や手当があり、サポートしてくれる窓口や団体もたくさんあります。各自治体の福祉関係窓口、家庭生活支援センターなどのほか、NPO法人しんぐるまざあず・ふぉーらむ、ハンド・イン・ハンドの会などのコミュニティが各地で活動しています。困ったことや不安なことは1人で悩まずに、気軽に相談してみてくださいね。 ・しんぐるまざあず・ふぉーらむ ・ハンド・イン・ハンドの会 <参考>・『子どもの貧困――日本の不公平を考える』阿部彩(岩波新書) ・ひとり親家庭等の現状について(平成27年)|厚生労働省 ・平成23年度全国母子世帯等調査結果報告|厚生労働省 ・児童手当制度の概要|内閣府 ・母子家庭等関係|厚生労働省 ・児童育成手当(育成手当)(東京都制度)|とうきょう福祉ナビゲーション ・ひとり親家庭等医療費助成制度(マル親)|東京都福祉保健局 ・生活保護制度|厚生労働省 ・公営住宅に係る優先入居の取扱いについて|総務省
2017年02月10日総務省による、発達障害者の支援に関する実態調査。その結果は?出典 : 年1月20日、総務省は、文部科学省と厚生労働省に対し、発達障害者支援に関する行政評価と監視の結果に基づく勧告を行いました。この調査は、保育所・学校現場を含む、都道府県・市町村における発達障害者支援の実態を初めて調査したものとなります。前回の記事では、早期発見に関する実態の調査報告と総務省の勧告内容についてお伝えしました。今回の記事では、発達障害がある子どもへの支援状況と情報の引継ぎに関する調査・勧告内容についてご紹介します。発達障害児に対する支援「個別の教育支援計画」「個別の指導計画」とは出典 : 発達障害を含む障害のある児童生徒の指導について、学校等では、児童生徒それぞれに「個別の教育支援計画」(以下「支援計画」)と「個別の指導計画」(以下「指導計画」)を「必要に応じ」作成し、指導と支援を行っていくこととされています。(4) 関係機関との連携を図った「個別の教育支援計画」の策定と活用特別支援学校においては、長期的な視点に立ち、乳幼児期から学校卒業後まで一貫した教育的支援を行うため、医療、福祉、労働等の様々な側面からの取組を含めた「個別の教育支援計画」を活用した効果的な支援を進めること。また、小・中学校等においても、必要に応じて、「個別の教育支援計画」を策定するなど、関係機関と連携を図った効果的な支援を進めること。(5) 「個別の指導計画」の作成特別支援学校においては、幼児児童生徒の障害の重度・重複化、多様化等に対応した教育を一層進めるため、「個別の指導計画」を活用した一層の指導の充実を進めること。また、小・中学校等においても、必要に応じて、「個別の指導計画」を作成するなど、一人一人に応じた教育を進めること。特別支援教育の推進について(通知)なお、2016年の改正発達障害者支援法においても、発達障害児が年齢及び能力に応じ、かつその特性を踏まえた十分な教育を受けられるようにするために必要な措置として、これらの支援計画及び指導計画の作成を推進することが具体的に明示されています。法律第六十四号(平二八・六・三) ◎発達障害者支援法の一部を改正する法律支援計画や指導計画、実際にどれくらい作成されているの?その効果は?出典 : しかし支援計画に関していうと、必ずしも発達障害のある児童全員に作成されていないのが現状のようです。この度の総務省の調査で調査対象となった111の保育園および幼小中高校において、発達障害児(発達障害が疑われる児童生徒を含む)は計2,431人でした。そのうち支援計画作成が「必要」と判断された児童生徒は829人であり、さらにそのうち支援計画を作成済みの児童生徒は690人でした。支援計画作成が「必要」と判断されたものの、未作成の生徒が139人いることが明らかになりました。未作成の理由としては、教員の業務が多忙で作成する時間の確保が困難であるため、保護者の同意が得られないため、などとされています。また、支援計画作成が「必要」と判断する範囲に関して、111の調査対象のうち19の保育園および幼小中高校では、医師の診断がある児童生徒のみなど、計画の作成対象をかなり限定した範囲にとどめている例がみられました。そしてこうした計画作成対象が限定されていたことの結果として、支援計画や指導計画が作成されていなかった生徒の中には、不登校等の二次障害が生じている例がみられたとのことです。問題行動の度合いが高くない生徒には支援計画及び指導計画を作成することとしていないため、発達障害の診断を受けているにもかかわらず、両計画とも作成されず、結果として、学習障害等で授業についていけずに、平成22年度から26年度までの間に、不登校4人、休学1人、退学1人が発生した。一方、調査した保育所及び学校において、支援計画又は指導計画を作成したことにより、特別支援学校など関係機関による助言や保護者との連携等が図られ状態が改善するなど効果的な支援が行われている例が30事例みられました。総務省は文部科学省と厚生労働省に対し、保育所及び学校において、一律の基準によって支援計画及び指導計画の作成対象を限定するのではなく、個々の児童生徒の特性や状態を踏まえ、支援が必要な児童生徒に対して着実に作成されるよう、作成対象とすべき児童生徒についての考え方を示すことを勧告しました。継続的な支援のために欠かせない、進学先等への情報の引き継ぎ。しかし現状は…出典 : 支援計画や指導計画の作成だけでなく、支援の前提となる子どもに関する情報の引き継ぎ共有も重要です。こうした情報共有の実態についても調査がなされました。具体的には、・乳幼児健診の結果として発達障害の疑いがあるとする情報を保育所へ渡す取り組み・保育所や幼稚園で作成された支援計画等に適宜資料の追加等を行った上で、障害のある児童生徒等に関する情報を一元化し、支援計画や相談支援ファイル等として小・中学校等に引き継ぐ取り組みなど、関係機関同士の情報の引き継ぎ・共有が十分ではないという勧告がなされています。しかし、情報共有が十分に進まない背景には、個人情報保護の観点からの障壁もあるようです。そのことが明らかになったのは、調査対象となった31市町村が実施した乳幼児健診結果の引き継ぎ状況の調査からです。平成26年度に実施した乳幼児健診の結果の、進学先(保育所、幼稚園等)への引き継ぎ状況をみると、30市町村で「引継ぎを行うこと」という方針を立てているものの、個人情報保護の観点から、保護者の同意が得られた場合であって、保育所等から情報提供の依頼があった児童のみ引き継ぐとしている自治体が14市町村にのぼりました。つまり、半数近くの市町村では、保育所等からの働きかけがなければ引継ぎが行われない状況であるということです。調査した市町村の中には、乳幼児健診の結果の進学先への引継ぎ時における保護者の同意取得については、次のような取組を行っている例がみられたとのことです。乳幼児健診の問診票の中に、健診結果等について、保育所等の関係機関と連絡を取り合う場合がある旨をあらかじめ記載し、これに同意するか同意しないかを選択させることとしている。児童が幼稚園に入園する前に、心配事のある保護者に「保護者との連携シート」の記載を依頼しており、同シートにより、幼稚園が保健師等の関係機関等から情報を入手する旨の同意を得ている。また、乳幼児健診の結果が引き継がれなかったことにより、対応が困難になった例もみられたとのことです。市外からの転入により入所した児童について、転出元の市町村での乳幼児健診結果(発達障害の疑いあり)を把握できなかったため、支援計画の作成、個別の配慮、小学校への引継ぎ等を行わなかったところ、小学校で集団行動になじめない状況となり、急遽支援が必要となった歳児健診及び3歳児健診で紹介された親子教室において、軽度な知的障害を伴う発達障害の疑いを指摘されたが、それらの結果が、入園先の幼稚園に伝わらず、児童の知的障害の把握が遅れた。その結果、児童は、特別支援学級へ入級したが、知的学級ではなく、自閉・情緒学級へ入級することとなり、児童に対する教育的配慮や課題設定を行うのに数箇月要した同様に、進学の際や転校の際における引き継ぎの不備も指摘されており、総務省は厚生労働省に対して、市町村に乳幼児健診の結果等の進学先への引継ぎの重要性を周知し、積極的な引継ぎを促進することを勧告しました。他にも総務省は、厚生労働省と文部科学省に対して、保育所・幼稚園から大学・就労先までの各段階において、発達障害児に対する必要な支援内容等が文書により適切に引き継がれるような呼びかけを行なっています。都道府県、市町村、都道府県教育委員会及び市町村教育委員会に対しては、・具体例を挙げて支援内容の引き継ぎを周知すること・支援計画及び指導計画については、引継ぎまでの適切な保存・管理を求めるとともに、具体的な引継方法を提示し、確実に引き継がれるよう徹底を図ることを勧告しました。「切れ目のない支援」を実現するための課題は出典 : 情報の引き継ぎは、切れ目のない支援を推進する上で不可欠だと言われています。そして文部科学省でも障害のある子どもに対して小学校から高校まで一貫した支援ができるよう、進学先の学校へも引き継げる「個別カルテ(仮称)」の作成を学校に義務付ける方針を固め、推進しています。また逆に保育所から専門機関に相談するようすすめられる場合もあるようです。現在、4歳の男の子を持っていますが、引越しして、2ヶ月前ほどから、転園した先の、保育園の先生から、落ち着きがなく、みんなと一緒のことができない、話す単語が少ない、との指摘を受けて、療育センターに問い合わせをするように、言われました。保育園で発達障害を疑われました。3歳1ヶ月の男児です。保育センターの心理相談の結果、問題はなさそうでした。しかしモヤモヤと心配が晴れず、何か息子のためにできることはないかなと焦っています。親や支援者が発達障害をどう理解するか、そして個人情報保護や当事者、家族の不安に配慮する仕組みの構築が、実際に切れ目のない支援を実現するためには必要なのではないでしょうか。
2017年01月30日働かなくても毎月国からお金がもらえたら…?そんな一見夢のような制度、「ベーシックインカム」が西ヨーロッパで注目されている。
2017年01月10日国や自治体には、たくさんの子育ての支援制度があります。ここで紹介するすべての制度は、自分で申請をしないとお金はもらえません&戻ってきません。だからこそ、内容をしっかり把握して、適切なタイミングで申請をしましょう。■すべてのママがもらえるお金・ 出産育児一時金 (健康保険からの出産費用の助成金)・ 乳幼児医療助成 (乳幼児期の医療費をサポート)・ 児童手当 (3歳の誕生月まではひと月1万5000円)・ 医療費控除 (支払った所得税の一部が戻ってくる制度) ■働き続けるママがもらえるお金・ 傷病手当金 (つわりや切迫早産の時にも利用可能)・ 出産手当金 (産休中のママのお給料がわり)・ 育児休業給付金 (育休中の生活をサポート)■退職したママのための制度・ 失業給付の受給延長 (産後、再就職をめざすママのための制度)■条件にあえばもらえるお金・ 高額療養費 (医療費が一定額以上の場合、健康保険が負担してくれる)・ 未熟児療育医療制度 (入院・治療費の全額、または一部を支援)・ 児童扶養手当 (ひとり親家庭をサポートする)・ 小児慢性特定疾患の医療費助成 (国が指定した疾病の子どもをサポート)
2017年01月10日■児童手当とは?子育てをする費用を支援するために、中学3年生までの子どもがいる世帯に、国がお金を支給する制度。■児童手当でもらえる金額は、いくら?もらえる金額は、子どもの年齢、人数、親の所得によって違ってくる。親の所得制限を超えない場合は、下記の表の通り。所得制限を超えた場合は、子どもの年齢に関係なく、月額5千円となる。※所得制限のラインについては、厚生労働省 「児童手当制度の概要」 を参照のこと。●児童手当金額一覧表(厚生労働省WEBサイトをもとにエキサイト編集部で作成)■児童手当がもらえる人は、どんな人?中学3年生までの子どもがいる世帯の世帯主。申請手続きをした翌月からが支給の対象となり、遡っての支給がされないので、できるだけ早く手続きを! ■コラム:「15日特例」について知っておこう児童手当の支給対象となるのは、申請の手続きをした翌月から。ただし、月末の出産や引越、災害など、やむを得ない理由で手続きができなかった場合、出産翌日から15日以内に申請し、認定されれば手続きした月も支給対象になる特例がある。「里帰り出産」は、「やむを得ない理由」の対象外なので、注意! ■児童手当の手続きの概要出生届の提出した足で、児童手当の申請を。赤ちゃんが生まれたら、名前を決め、出生届を出す。その足で児童手当の手続きをするのがスムーズ。ただし、里帰り出産の場合は、いくつか注意ポイントがある。1)出生届は里帰り先の役所でも提出ができるが、児童届けは、現住所の市区町村の役所に申請する必要がある。2)里帰り先で出生届を出す場合、住んでいる地域の役所が出生届けを受理するまで、児童手当の申請は認定されない。ゆえに「里帰り先で出生届を出してから住所地で受理されるまでのタイムラグ」や「住所地での手続きは誰がするか?」など、出産までに児童手当の加入手続きの段取りをチェックしておくと安心。■児童手当 DATA※この記事は2016年11月末現在の法令・情報に基づいて書いています。(監修:ファイナンシャルプランナー 畠中雅子/文:楢戸ひかる)
2017年01月10日■未熟児養育医療制度とは?生まれてきた赤ちゃんが「未熟児」や「低出生体重児」だった場合など、医師が入院療養が必要だと認めた赤ちゃんが、全国の「指定養育医療機関」で治療を受けた場合、その医療費を助成する制度。■未熟児養育医療制度でもらえる金額は、いくら?費用の全部、または一部(地域によっては保護者の所得に応じて一部自己負担金がかかる場合もある)を負担してもらえる。■未熟児養育医療制度でもらえる人は、どんな人?この制度が適用される赤ちゃんは、「出生時の体重が2000g以下の場合」または、または下記のような場合などだ。●未熟児養育医療制度で助成の対象となる乳児 (例)1) 運動不安・けいれんがあるものなど2) 体温が34度以下3) 呼吸器・循環器系(強度のチアノーゼがあるなど)4) 黄疸(おうだん)(生後数時間以内に現れるか、異常に強い黄疸のあるもの) など■未熟児養育医療制度の手続きの概要医師に養育医療意見書をもらい、書類審査を受ける出生届を出した後、医師に養育医療意見書をもらうケースによっては、出生届を出す前に、手続きが開始することもある。未熟児養育医療給付申請書、世帯調査書は自分で書き、自治体によっては扶養者の所得を証明する書類(源泉徴収票のコピーや確定申告書)と一緒に未熟児養育医療の申請をし、書類審査に通ると利用できる。■コラム:未熟児養育医療制度を利用した私の実感「生まれた子が、未熟児だった」というのは、ママにとっては結構ショックな出来事。じつは、私にも経験がある。次男・三男が双子なため、二人とも早産で極小未熟児だったのだ。「ちゃんと産んであげられなくてごめん!」と、出産直後は相当自分を責め、大きな挫折感だった。 退院は一緒にできず、双子が入院している病院に搾乳を届ける日々。未熟児は文字通り「未成熟な状態で生まれた児」なので、当初はトラブルも多かった(生後半年で入院6回)。「障害が残る可能性は通常の10倍」と言われ、生後1年半、生まれた病院で生育の経過をチェックしてもらう「経過観察」にも通った。…と、いろいろあったが、あれから12年。極小未熟児で生まれた双子は、何の遜色もない普通の小学校6年生となった(現在、やや肥満気味ですらある)。「出産当初はショックだったけれど、過ぎてみればそれも懐かしい思い出」という現在の私の実感を伝えておきたい。■未熟児養育医療制度 DATA※この記事は2016年11月末現在の法令・情報に基づいて書いています。(監修:ファイナンシャルプランナー 畠中雅子/文:楢戸ひかる)
2017年01月10日■小児慢性特定疾患の医療費助成とは?子どもの病気の中で、国が指定した疾病の治療にかかる費用などを自治体が支援する制度。■小児慢性特定疾患の医療費助成でもらえる金額は、いくら?国の制度だが、運営は自治体に任されているので、自治体によって助成内容は異なる。■小児慢性特定疾患の医療費助成でもらえる人は、どんな人?国が指定した疾病(小児慢性特定疾患)にかかっている18歳未満の子ども。何らかの健康保険に加入していることが条件。18歳をすぎても治療が必要なときは20歳まで延長できる。■小児慢性特定疾患の医療費助成の手続きの概要①小児慢性特定疾病指定医にて受診指定医療機関にて受診を受け、医師より小児慢性疾病の医療意見書を出してもらう。②医療費助成の申請に医療意見書を添付し、各自治体に提出小児慢性特定疾病審査会で審査後、認定された場合は「小児慢性特定疾病の医療受給者証」が届く。指定機関で「小児慢性特定疾病の医療受給者証」を見せると助成が受けられる。■コラム:小児慢性特定疾病情報センターのWEBサイトをチェック!小児慢性特定疾病情報センター 小児慢性特定疾病情報センターは、小児慢性特定疾病の情報を一元化し、情報提供する目的で、構築されたポータルサイト。国立研究開発法人 国立成育医療研究センター(厚生労働省「小児慢性特定疾病登録管理データ運用事業」の補助事業)が運営している。■小児慢性特定疾患の医療費助成 DATA※この記事は2016年11月末現在の法令・情報に基づいて書いています。(監修:ファイナンシャルプランナー 畠中雅子/文:楢戸ひかる)
2017年01月10日ことばの教室ってどんなところ?出典 : 小学校や中学校には、子どものさまざまな障害や困難に合わせた支援を行う、通級指導教室や特別支援学級が設置されています。「ことばの教室」とは、そのなかでも言語に障害のある子ども向けに設置された、通級指導教室と特別支援学級の通称です。また、ことばの教室は、「言語障害通級指導教室」、「言語障害特別支援学級」と呼称されたり、地域によっては「ことばときこえの教室」と呼ばれ、言語障害の支援と聴覚障害の支援が両方受けられる場所もあります。それは、言語を獲得し、言葉を発するのに聴覚(きこえ)が重要な役割をはたすためです。どちらか片方に障害があると、もう片方にも問題が生じる場合も多く、言葉を発することと聴覚に対する困りごとを同時に支援していく必要があります。通級指導教室や特別支援学級として設置されていることばの教室では、言語障害のある子どもへの支援を行っています。例えば言葉のおくれ、吃音(きつおん)などの話し言葉におけるリズムや声を出すための器官に障害がある構音障害に対して支援が行われます。また、障害の改善以外にも言葉に関する教科(例えば、国語、英語、音楽、算数、数学)の指導も行っています。通級指導教室とは、おおむね通常の学級の授業についていけるが、通常の学級の中で一部、特別な支援を必要とする子どもを対象に設置されている少人数教室です。通級指導教室に通う子どもは通常の学級に籍を置き、学習したり、給食を食べたりと通常学級でほとんどの時間を過ごします。そして、週に数時間、障害に合わせた個別の支援を受けるために通級指導教室へ通います。Upload By 発達障害のキホン一方、特別支援学級とは心身に障害があったり、発達に遅れがあったり、より手厚い指導・支援をより多くの時間必要とする子どもを対象に設置されている少人数学級です。特別支援学級へ通学する場合は、籍は特別支援学級に置きます。そして、体育や生活、道徳、課外活動をはじめ、一部の授業を通常学級の子どもと一緒に受けることが通例です。Upload By 発達障害のキホンどんな子どもがことばの教室に通うの?出典 : 言語障害のある子どもがことばの教室へ通います。言語障害と一口にいってもさまざまな種類があります。ここでは医学的言語障害ではなく、ことばの教室が対象としている言語障害について説明していきます。言語障害とは、話すため・言葉の発声のために必要な一連の動きに障害があることを言います。例えば、人は話す時にまず、頭の中で話す内容を考え、文章にします。次に音を出すための筋肉に脳から信号が出され肺による空気量の調節や声帯筋が運動し音がでます。次に音を声として発する鼻や口、舌の動きが調節され声となります。声は耳の聴覚によって感じられ、そして脳で言葉を言葉として理解します。言葉を話し、人とコミュニケーションをとるためには上記のような発声に関わる機能だけでなく、思考や社会性の発達、心理的問題や自己観の形成も深く関わってきます。そのため、言語障害は話すことに必要な器官の障害というだけでなく、話すことまた聞くことに問題がある障害を指します。ことばの教室は、言語障害のある子どもを対象にしていますが、通級指導教室と特別支援学級で、その対象が少し違います。ではどのように違うのでしょう。参考書籍:ピーター・B.デニシュ (著), エリオット・N.ピンソン (著)『話しことばの科学―その物理学と生物学』東京大学出版会/刊通級指導教室のことばの教室も、特別支援学級のことばの教室も以下のような子どもが対象となります。1. 唇の断裂(口蓋裂)や、音を発声させる器官(構音器官)のまひなどによる機能的障害のある子ども例) 声が鼻にかかったり、鼻に抜けてしまう。”さかな”の発音が”たかな”になってしまうようにサ行やカ行がうまく発音できないなど。2.b吃音などの話し言葉におけるリズム障害のある子ども例) ”きんぎょ”を”き、ききんぎょ”と言葉を繰り返してしまったり、”き...んぎょ”など言葉が詰まってしまうなど。3. 話す、聞くなど言語機能の基礎的事項に発達の遅れがあり、言葉の順序や表現に偏りのある子ども4. その他に上記のような障害に当てはまる子ども5. 言語障害の原因が上記でなく、他に原因がある子ども■「通級指導教室」のことばの教室に通う場合通級指導教室へ通う子どもは、多くの時間を通常の学級で過ごします。つまり、通常級に籍をおきながら、支援が必要な課題(ある特定の困りごとや、その困りごとから来る学習上の問題)だけを改善するために通級指導教室へ通い、そのほかの授業や活動は通常の学級で行います。そのため、通常の学級での集団行動や教員からの指示の聞き取りがある程度できる子どもに向いているでしょう。■「特別支援教室」のことばの教室に通う場合特別支援学級へ通う子どもは、逆に大半の時間を少人数の特別支援学級で過ごします。通級指導教室に通う子どもは一部の困りごとに対して支援を受けますが、特別支援学級に通う子どもは、困りごとへの支援に加え、国語や算数、社会などさまざまな教科の授業をうけます。特別支援学級に通うのは、通級指導教室に通う子どもに比べて、個別の支援の必要性が比較的大きい子どもです。また、通常の学級が1クラス35~40人に対し、特別支援学級は8人と少人数の編成です。ですので、落ち着いた環境で心理的な安定を保ちながら指導を受けたい子どもに向いているでしょう。ことばの教室で受けられる支援は?出典 : ことばの教室ではさまざまな支援や教育を受けることができます。通級指導教室と特別支援学級で共通した支援もあれば、異なる支援もあります。それらの点について詳しく説明していきます。通級指導教室や特別支援学級では、個別指導計画と個別の教育支援計画を作成してもらうことができます。個別指導計画とは、子ども一人ひとりの困りごとや障害に合わせ、各教科の学習や、集団行動・生活の指導目標や指導内容・方法を示した計画です。この指導計画に基づき、さまざまな教員・関係者が共有し連絡を取り合いながら指導・支援が行われます。具体的には、担任の教員を中心に保護者や、特別支援教育コーディネーター、専門家といったさまざまな人が、子どもの障害の状態や課題、優先事項などを話し合い作成します。一方、個別の教育支援計画は、個別指導計画より長期的な視点に立ち、学校のみならず、家庭や余暇活動も含めて、具体的な支援の計画を示した計画書です。医療、教育、または福祉、就職などさまざまな機関に引き継がれ、一貫した支援が受けられるようになります。通級指導教室では、子ども一人ひとりの言語に関する困りごとを改善するための支援が受けられます。一方、特別支援教室では、言語に関する困りごとの改善とともに、言語障害を考慮しながら各教科の授業を手厚く行います。具体的にどんな支援かご説明していきます。■通級指導教室では?通級指導教室では、学習の遅れや補充をするのではなく、子ども一人ひとりの困りごとに合わせた教育や指導が行われています。言語障害があるために学習が進まない場合には、学習指導も行われます。例えば次のような指導が行われます。・発音に誤りのある子ども正しい発音を身につける練習、音を聞き分ける練習、唇や舌の動きをよくする練習、コミュニケーションの力を育てる指導などが行われます。・吃音のある子ども吃音について正しく理解する学習、吃音の友達と出会ったり、気持ちを話し合ったりする学習(グループ指導)、発達・認知面の力を育てる指導、コミュニケーションの力を育てる指導などが行われます。・言語発達遅滞のある子ども子どもの実態に合った教材を使って言語理解・表出する力を育てる指導、発達の評価、コミュニケーションの力を育てる指導などが行われます。国立特別支援教育総合研究所■特別支援学級では?特別支援学級では、通常学級で過ごす交流学級という時間もありますが、特別支援学級に通う子どもは多くの時間を特別支援学級で学びます。子ども一人ひとりの困りごとに合わせた指導・支援はもちろんのこと、各教科の学習についても指導や支援が行われます。たとえば、国語や算数ではどのような支援が受けられるのでしょうか。・国語読むことに対する支援として、言葉の意味や概念の理解を深めるために絵や写真を使いながら話したり、動作を実際にやってみて説明したりします。また、辞書を活用し、意味を調べ自分でまとめた辞書を作ったりすることもあります。聞くことに対する支援では、話す内容についてそのポイントや重要な部分をあらかじめ説明し、子どもが聞き取るべき部分がわかるようにします。書くことや話すことに対しての支援は、教員との会話のなかで実際に子どもが体験したことを口頭で文章化したり、作った文章をさらに書き起こしてみたりするなどの練習が行われます。・算数文章題などを解くとき、文章の内容や意図を理解することが難しい場合があります。そのような場合は、単語の意味を確かめたり、図や絵を通して理解を促していきます。また、類似の問題に繰り返し取り組んだり、逆に類似の問題を作ってみることで理解をより深めていきます。ことばの教室のクラス編成はどうなっているの?出典 : ■通級指導教室通級指導教室ではほとんどの場合一対一で指導が行われます。ですが集団の中での困りごとやコミュニケーションでの困りごとがある場合は集団で行われることがあります。■特別支援学級特別支援学級ではクラス定員は8人までと決まっています。ですので少人数学級で授業を受けられます。ことばの教室にはいろいろな人が関わっています出典 : ことばの教室では、通級指導教室や特別支援学級の教員だけでなく、保護者、医療スタッフなどさまざまな人が子どもの教育、指導、支援に関わっています。通級指導教室でも特別支援学級でも、必要に応じて、口腔外科医、言語聴覚士、歯科衛生士などの専門家から正しい発音の基礎となる口腔の状態について助言を受けることができます。一方で、保護者や教員は、通級指導教室と特別支援学級では子どもとの関わり方が少し違います。保護者通級指導教室の場合、多くは保護者が付き添いをし、時には一緒に授業に参加することもあります。一方、特別支援学級の場合は、保護者が希望しない限り一緒に授業を受けたりすることはありません。しかし、通級指導学級も特別支援学級もお住まいの学区以外の学校へ行く場合は保護者の送り迎えが必要となります。教員通級指導教室の場合、担任の教員と指導の教員が異なるため、連絡ノート交換、指導報告等を通して、子どもへの共通理解を図ってゆきます。一方、特別支援学級では担任の教員が指導を行う場合が多いので一貫した支援が受けられます。ことばの教室にはどうやって入るの?出典 : 未就学児で来年度からことばの教室を検討している場合未就学児で来年度からことばの教室を検討している場合、就学相談に行く必要があります。就学相談とは、通級指導教室や特別支援学級を含めた特別支援教育を受けるためにお住まいの教育委員会と話し合いの場をもうけ、子どもにとって最適の学びの場を考える機会です。一般的に就学相談は早い地域で幼稚園・保育園の年長の春から、遅くとも秋ごろには始まります。就学相談については、お住まいの教育委員会の窓口まで問い合わせてみましょう。就学していて言語障害が気になり、ことばの教室を検討している場合まずは担任の教員に相談してみましょう。そこから教育相談をすすめられたり、特別支援教育コーディネーターを紹介してもらったりします。そして、一般的にはことばの教室の指導員の方などと面談をし通学の必要性が検討されます。まとめ出典 : ことばの教室では言語障害のある子どものサポートをしています。言語障害といってもさまざまな困りごとや課題を抱える子どもがいます。通級指導教室と特別支援学級の特徴をとらえながら、子ども一人ひとりにあった学びの場を考えてみましょう。
2016年12月15日多忙な学校現場に投じられた「個別の支援」というミッション出典 : 年以上も前のことですが、日本にも発達障害の概念が広まり、学校で個別の支援についての研修がさかんに行われだした頃、大学教員である私も、研修会の講師として各地へ頻繁に出かけていました。子どもの状態を正しく評価し、その子に応じた支援計画を立て、学内外と連携し、たとえ障害があっても活き活きと生きられるように支援するのだと、学校の先生に向けて話して回っていたのです。そんな中、受講した教師の言葉が風の便りに聞こえてきました。「大学教員は新しいことをやれやれと言うが、実際に行うのは自分たち教師だ。日常業務で多忙な中、評価だ、個別の支援計画だと次々に言われたらパンクする。無責任にあれやれこれやれと言わないで欲しい」表立って口には出す人は少ないけれど、多くの現場の教員は心の中で叫んでいたことだと思います。今思えば、発達障害についてよく理解していない上に誰も助けてくれない中で、個の特性に応じた教育をと言われても、ただただ難題を突きつけられただけだったのかもしれません。現場の教員への負担の軽減や、育成体制の充実などは、今も残る課題の一つです。しかし、子どもたちのための新たな教育を開発するためには、やはり多少のストレッチというか、現場の先生たちの自己変革がなければ前進しないと思います。そして実際に、心ある教師はこの10年間にその知識とスキルを目覚ましく発展させてきています。先生たちがフランクに話せる場所が生まれると…出典 : 今回の記事では、私が関係した心ある教師たちの進化と実践を紹介したいと思います。地方の中高一貫校の教育相談担当教員に事例検討会の助言を頼まれた時のことです。2週間に1回の割合で夕方2時間くらい教育相談室に行き、学校教員と子どもたちの事例について話し合うという内容でした。参加は自由、途中参加、途中退席可で始めましたが、最初はだれも来ず教育相談担当教員とよもやま話で時が過ぎてしまったこともありました。そのうち、だんだんと若い教員が顔を出すようになりました。「クラス運営がうまくいかない」、「保護者からきつい言葉をいただいた」などと、初めはほとんど、グチをこぼすために集まっていうるようなものでした。ですが、そうした弱音も含めてフランクに吐き出せる場を続けていくと、いつしか真剣な生徒指導上の議論も飛び交うようになりました。先生同士で話せる場があれば、問題解決の根拠を見い出しやすくなる出典 : 事例検討会が軌道に乗ってきたそんなある日、赴任して間もない若い男性中学教員が会に顔を出しました。そしてクラスの女子生徒のことについて話し始めました。大柄なその女子生徒が教室の中で口論になりカッとなって木製の椅子を持ち上げ床にたたきつけて粉々にしたというのです。「もしその椅子が他の生徒に当たったらと思うとぞっとする、どうしたらよいだろうか」という相談を持ちかけたのでした。その教員は生徒との面談の内容も話してくれました。「幼稚園児の頃から体が大きく力が強かった。カッとなりやすい性格で、一度カッとなったらすぐ相手を殴ってしまうので、みんなから乱暴者と言われていた。小学校もずっとそんな調子だった。」生徒はこのようなことを話してくれたそうです。その学校は私立でした。地元では評判が良くなく受け入れられていないと感じる子が、地元の公立ではなく遠く離れた知り合いのいない私立の学校に進学するケースがよくありますが、この生徒もそのような子でした。ですが、相談してくれた担任教師自身が彼女に対して抱いている印象は、「乱暴者には見えない、自分のことをきちんと言える生徒」ということでした。普段の姿と暴力的な姿とのギャップに戸惑いを感じて、対応に悩んでしまったのです。「カッとなりやすい生徒」を多角的な視点で見てみると…出典 : みんなで良い知恵を出そうと話し合いましたがなかなか妙案が出てきません。その生徒のイメージがつかめないのです。私は教員と話し合い助言する立場ですので、直接生徒や保護者と会うことはまれでした。しかしこのケースではもう少し生徒の状態を知りたいと思ったので、私も直接面談させてもらうことにしました。一番気になったのは、カッとなったら頭が真っ白になり、自分がしたことを覚えていないということでした。もしかしたらてんかんなどの意識障害があるのではないかと疑ったのです。担任が面談を設定してくれてその生徒から話を聞きました。しっかりと話のできる生徒でした。内容はほぼ担任から聞いたことと同じでした。「カッとなってからのことは覚えていない。気がついたら目の前にばらばらになった椅子がある。でも、カッとなって自分が何かをしでかしそうになるところまでは覚えている」と、話してくれました。議論の場があったからこそ発想できた、生徒のストレスを発散させる妙案出典 : 生徒から聞き出したことをヒントにして考え、再び事例検討会に臨みました。この生徒には、・カッとなった自分を内省する力はある・しかし、ひとたびカッとなると感情を自分で抑えることは難しいという特徴が見られます。そこで、「カッとなったと思ったときは、その場を離れてストレスを発散させられるようにすれば良い」のだと話しました。すると担任教師は、「教室を出たところの階段を昇れば広い場所がある。そこに教材が置いてある。今は紙粘土がたくさんある。それを板に投げつけさせるのはどうか」と提案しました。皆もいい案だと言い、早速担任が中心となり実行させることになりました。次の事例検討会で、その後の経過を聞きました。担任が生徒に、「カッとなったら教室を出て教材置き場に行き、そこで紙粘土を気が済むまで板壁に投げつけるように」と言うと生徒は了解し、実行したとのことでした。これを行うことによって教室での暴力沙汰は無くなりました。生徒を見守るチーム体制ができ、保護者と学校の関係性にも変化が出典 : 私はこの生徒がカッとなった後に意識が無くなることをまだ気にしていました。親が正しく子どもの状態を学校に伝えないことが多いからです。そこで担任に親から直接精神的、身体的なことを聞きたいと言い、親と会う設定をお願いしました。母親が来て私と担任が会いました。母親は看護師でした。幼児の頃から乱暴だと言われていたところから話していただけました。肝心の記憶がない、意識がないということについては、脳波検査を受けたが異常はなく、てんかん等の神経学的異常は認められなかったとのことです。その話を聞いたので、「お呼びだてしてすみません。娘さんの指導が間違っていないかどうかを確かめたくて来ていただきました。お忙しいのにすみません。」と丁重にお礼を述べようとしたのですが、まだ私が話し終わらないうちに、母親がすっと立ち深々とお辞儀をし、「これまでの学校の中で一番子どもをよく見てもらっています。ありがとうございます。今後ともよろしくお願いいたします。」とおっしゃいました。問題を起こす子どもの親が学校に呼び出されると、苦情を言われていると思って嫌な気持ちになることを知っていたので、その言葉には驚きとともに安堵し幸せな気持ちになりました。「すばらしい担任ですからご安心ください。」と伝え、私は面談を終えました。担任の先生の果たした大きな役割出典 : それからひと月ほど経った事例検討会の時、担任にまだ紙粘土投げは続いているかと尋ねました。担任は、「実はもうそれをやっていない、紙粘土も乾いてしまっているし…。」と歯切れ悪く答えました。よくよく聞くと紙粘土投げを何度か行った後、カッとなって階段を上って教材置き場に向かう途中、気持ちがスーと落ち着いて教室に戻ると生徒が言うというのです。もはや紙粘土を投げる必要はないのではないか、すると、乾いた紙粘土の代わりにほかのストレス発散の手段を考える必要はないのではないかとその担任は思い悩んでいたのでした。私が「それは自分の気持ちをコントロールできるようになったという証拠。もうストレス発散は止めても良いと思います」と伝え、この対応を終わりにしました。なぜその生徒が、こんなにも早く気持ちのコントロールができるようになったのか、理由は定かではありませんが、こう推測できます。一つには中学2年生になり気持ちをコントロールする機能が成熟したことが考えられます。もう一つは担任が親身になり、対応策を考え生徒に実行させたこと自体が、生徒の自信や安心につながったことが考えられます。あるいはこの二つの相乗作用として、成熟しつつあったコントロール機能が、担任の親身な寄り添いと手段によって加速されたということかもしれません。また、子どもが落ち着いてきたことによって親子関係が良くなったり、クラスメートのからかいが減少したことも影響しているのかもしれません。いずれにしても事例研究会での相談事からはじまり、知識とスキルを発展させ、生徒の問題解決に収斂させていった担任の果たした役割は大きかったと思います。まとめ出典 : 発達障害児の概念が生まれ個別の支援が叫ばれるようになってから、教育現場では上記のような取り組みをはじめ様々な取り組みを試みています。個の教育的ニーズ(必要性)に合った教育というスローガンが空々しくならないように、教育する側も努力する必要があると思います。そのためには教師や学校に根拠に基づいて助言できる人材を増やさなければならないように思います。現在は特別支援学校に在籍する教員が各学校を回って助言する巡回コーディネータを務めていますが、さらに発達障害児童のための専門的な教員を増やすよう文部科学省も動いているようです。障害を正しく理解し正しく支援できる人が増えてみんなの知恵と力で一人一人が大切に教育される社会が作り上げられることを願っています。
2016年12月07日昨日12月6日、年金制度の新ルール化を盛り込んだ「年金制度改革関連法案」が参議院厚生労働委員会で審議入りしました。11月末、衆議院の本会議で賛成多数によって可決となっており、いよいよ大詰め段階に入っています。この法案は「現役世代の負担減・年金制度そのものの安定化に繋がる」という声もある一方、「現在もしくはこれから年金を受給する高齢者の年金減額に繋がる『年金カット法案』だ」という批判の声もあります。とはいえ、そもそも年金の金額というのはどのような仕組みで決まっているのでしょうか?また、どうしてこの法案は「年金カット法案」だとして批判を浴びているのでしょうか?Q.「年金カット法案」と言われている理由は?*画像はイメージです:.物価が上昇しても、賃金が下落すれば年金額が下がってしまうため現在の制度でも年金額は「賃金・物価」の影響を受けるため、実はこれらの増減によって年金額は毎年微妙に変動しています。ただ、今の制度では「特例措置」として、物価が上昇していても賃金が下がっている場合は、年金額は「減らさない」というものが採用されています。しかし、今回の改革法案ではこの特例措置を無くすようになっているため、物価上昇時に賃金が下がる場合、年金額も下がることになってしまうのです。その場合、当然年金生活者にとっては生活が厳しくなることが想定され、この部分が「年金カット法案だ」と言われる理由なのですね。一方、賃金の情勢はいわば年金制度の「財源(収入)」にあたるため、この部分を優先させることは、年金制度の継続性を重視した改正案だと見ることもできるのです。 *取材・文:ライター松永大輝(個人事務所Ad Libitum代表。早稲田大学教育学部卒。在学中に社労士試験に合格し、大手社労士法人に新卒入社。上場企業からベンチャー企業まで約10社ほどの顧問先を担当。その後、IT系のベンチャー企業にて、採用・労務など人事業務全般を担当。並行して、大手通信教育学校の社労士講座講師として講義サポートやテキスト執筆・校正などにも従事。現在は保有資格(社会保険労務士、AFP、産業カウンセラー)を活かしフリーランスの人事として複数の企業様のサポートをする傍ら、講師、Webライターなど幅広く活動中。【画像】イメージです*和尚 / PIXTA(ピクスタ)
2016年12月07日成年後見制度とは?出典 : 成年後見制度とは2000年4月より開始した制度で、知的障害や精神障害、認知症などにより判断能力が十分でない人の法律行為を支援する制度のことをいいます。例えば、銀行の手続きや遺産分割、不動産の売却などが挙げられます。成年後見制度には、家庭裁判所が成年後見人等を選任し既に判断能力が低下している人に対して支援する法定後見制度と、あらかじめ本人が任意後見人を選び近い将来に備え支援者と支援内容を決めておく任意後見制度の2つがあります。申立てには一般的に1~2ヶ月かかるといわれています。児島 明日美、村山 澄江/著 『今日から成年後見人になりました』2013年 自由国社/刊成年後見制度の活用例をご紹介します。精神障害のあるご家族をお持ちの方のケースです。精神障がいの場合~法定後見~Q 私の妹(21歳)は精神障がいで、日常会話は何とか分かりますが、時間の経過がわからず、また、お金を使って買い物をしたりすることもできません。最近、携帯電話を勝手に契約してきましたが、通話料が必要であることは理解できません。今後、勝手にクレジットカードを作って他人に使われたりしないか心配です。良いアドバイスをお願いします。A 精神上の障がいにより判断能力が不十分である方のために、家庭裁判所が適切な保護者を選び、本人を保護するための制度が成年後見(法定後見)制度です。本人の判断能力に応じて、家庭裁判所が適切な保護者(成年後見人・保佐人・補助人)を選びます。選ばれた保護者(成年後見人・保佐人・補助人)は、本人の希望を尊重しながら、財産管理や身の回りのお手伝いをします。妹さんの場合も、成年後見(法定後見)制度を利用することで、妹さんが勝手にしてしまった契約を取り消したり、契約の無効を主張することができるなど、妹さんを法的に保護することができるようになります。(成年後見Q&A | 公益財団法人成年後見センター・リーガルサポート大阪支部)本人の判断能力は人によりさまざまですので、成年後見制度では、一人ひとりにあったサポートを利用することができます。成年後見制度の目的出典 : 成年後見制度は判断能力が不十分な方々の権利を守り、法的に保護・支援することを目的とした制度です。近年は精神疾患のある人や1人暮らしの高齢者といった判断能力の乏しい方が、悪質な訪問販売員に騙されるような悪徳商法が後を絶ちません。 このような場合は成年後見制度を利用することによって契約を取り消し、被害を未然に防ぐことができます。認知症、知的障害、精神障害などの理由で判断能力の不十分な方々は,不動産や預貯金などの財産を管理したり,身のまわりの世話のために介護などのサービスや施設への入所に関する契約を結んだり,遺産分割の協議をしたりする必要があっても,自分でこれらのことをするのが難しい場合があります。また,自分に不利益な契約であってもよく判断ができずに契約を結んでしまい,悪徳商法の被害にあうおそれもあります。このような判断能力の不十分な方々を保護し,支援するのが成年後見制度です。(「成年後見制度~成年後見登記制度~」 | 内務省)成年後見制度の背景出典 : 成年後見制度の成立には、「ノーマライゼーション」の考えと、「自己決定権の尊重・残存能力の活用」という考えが背景にあります。一体どのような考え方なのか、それぞれ見ていきましょう。■ノーマライゼーションノーマライゼーションとは、日常生活に必要な範囲の行為は本人が自由にするという考え方です。障害のある人も家庭や地域で通常の生活をすることができるような社会を作るという考えが広がりを見せています。■自己決定権の尊重・残存能力の活用自己決定権の尊重・残存能力の活用とは、判断能力が乏しいとはいえ本人の意思を尊重し、その能力を最大限生かして生活を送ることができるよう支援する考え方のことをいいます。どのようなときに成年後見制度を使えるの?出典 : どういった場合に成年後見制度を利用することができるのでしょうか。成年後見制度を利用することに決めた、きっかけの上位5位をご紹介します。【きっかけベスト5】第1位預貯金等の管理・解約第2位施設入所等のための介護保険契約第3位身上監護第4位不動産の処分第5位相続手続き圧倒的に多いのが、本人の預貯金等の管理のためです。この他にも、保険金の受取や訴訟手続等のために成年後見制度を利用するケースが増えています。(成年後見関係事件の概況 -平成26年1月~12月- | 最高裁判所事務総局家庭局)成年後見制度は、金銭的なやりとりや契約の取り決めをきっかけに利用を検討する方が多いようです。成年後見制度には家庭裁判所が成年後見人などを選任し、すでに判断能力が低下している人に対して支援する法定後見制度と、あらかじめ本人が任意後見人を選び近い将来に備え支援者と支援内容を決めておく任意後見制度の2種類があります。違いとしては、後見人の選出方法、サポート内容、報酬、サポートの内容があります。両者には具体的にどのような違いがあるのか、どのような方を対象にしているのか、なにができるのかを詳しくご説明していきます。法定後見制度とは?出典 : 法定後見制度とは、現時点ですでに判断能力が低下している方を支援する制度です。認知症や精神疾患のある方といった現時点で判断能力が低下している方は生活を送る上で、色々な困難さがあります。お金を自分で管理することが難しい場合や悪徳商法に巻き込まれてしまうことが少なくありません。そういった支援を必要とする人を本人(それぞれを成年被後見人・被保佐人・被補助人という)、支援する人をそれぞれ成年後見人・保佐人・補助人と呼びます。本人の判断能力の度合いに応じて、後見、保佐、補助の3類型に分かれています。■後見: 自分ではほとんど物事を判断できない場合・家庭裁判所は本人のために成年後見人を選任します・成年後見人は本人の財産に関するすべての法律行為を本人に代わって行うことができます・成年後見人または本人は、自ら行った法律行為に関しては日常行為に関するものを除いて取り消すことができます■保佐: 判断力が著しく不十分な場合(簡単なことは自分でできますが、法律行為は全く判断できません)・家庭裁判所は本人のために保佐人を選任します・保佐人に対して当事者が申し立てた特定の法律行為について代理権を与えることができます・保佐人または本人は本人が自ら行った重要な法律行為に関しては取り消すことがができます■補助: 判断力が不十分な場合(大体のことは自分で判断できますが、難しい事項については手伝いが必要です)・家庭裁判所は本人のために補助人を選任します・補助人には当事者が申し立てた特定の法律行為について代理権または同意権(取消権)を与えることができます支援を必要とする人(本人)を、それぞれ成年被後見人・被保佐人・被補助人といい、支援する人を成年後見人・保佐人・補助人と呼びます。成年後見人、保佐人、補助人とは家庭裁判所に選ばれ、本人に代わって法律行為など定められた行為を行う人をいいます。成年後見人は本人にどのような保護・支援が必要かといった事情に基づき、家庭裁判所が最も適任と判断する人物を選任します。ただし、希望通りになるとは限りません。そのような場合でも、申請を取り下げることはできないので、注意が必要です。成年後見人には、本人の子どもをはじめとする親族や、法律・社会福祉士の専門家、福祉関係の公益法人が選ばれる可能性があります。また、成年後見人は1人だけ選ばれるとは限りません。専門職の後見人を置きつつ、身の回りの法律行為については親族と役割分担する場合もあります。成年後見人、保佐人、補助人のすべてに共通する役割には、大きく分けて財産管理、身上監護、報告の3つがあります。■財産管理財産管理とは、証明書・契約書などの保管や法務手続きを行い、生活費を管理することです。一般的には多額の現金や預貯金は成年後見人が管理し、必要な分のみ本人が持つという形をとります。定期的に家庭裁判所にお金の動きを表す収支予定表を提出し、指示指導を受ける必要があります。これを後見監督といいます。このために領収書を常時管理し、金銭出納帳に記録することが求められます。■身上監護(しんじょうかんご)身上監護とは、本人の体調や環境を考慮の上で、適切な医療・看護を受けられるよう手配を行うことです。例えば住居・生活環境の確保や整備、介護や入院の手続きなどが挙げられます。ただし、成年後見人自身が本人を介護することは意味しません。専門職の方が後見人に選ばれた場合は親族が協力することがあります。■報告報告とは家庭裁判所から要請がある場合に、後見事務に関する報告書を家庭裁判所に提出することをいいます。これは義務付けられており、一般的に1年に1度行います。法定後見制度を利用するにはどのような手続きをしたらよいのか、ご説明します。1. 申し立ての予約をしましょう家庭裁判所に対して申し立ての予約をします。電話もしくは郵送で行うところがありますので、事前に確認しましょう。2. 申し立てをしましょうお住まいの地域の家庭裁判所にて申し立てを行います。申し立ては本人のほかに配偶者、四親等内の親族などができます。3. 面接を受けましょう家庭裁判所が関係者に事情を聴きます。面接に必要な書類は事前用意しておきましょう。また面接には本人、申し立て人、後見人候補などが出席する必要があります。医師による精神鑑定などの鑑定をする場合があります。その場合は別途、鑑定料がかかります。4. 家庭裁判所による審判が行われます主に後見人が必要かどうか、誰を後見人にするのかの2点を中心に協議されます。5. 審判の告知と通知裁判所から審判書が送られます。申立書に記載した成年後見人候補者がそのまま選任されることが多くあります。しかし家庭裁判所の判断により弁護士・司法書士などが選任される場合もあります。不服の場合は2週間以内に不服申し立てを行います。ご本人、配偶者、四親等内の親族のみが可能です。承認の場合は後見開始の審判が確定し、正式に後見人となります。手続きは自治体により異なる場合があります。詳しくは自治体のホームページをご確認ください。成年後見制度~成年後見登記制度~ | 法務省成年後見制度完全マニュアル | いなげ司法書士事務所法定後見制度の手続きには、いくつかの資料を準備する必要があります。東京家庭裁判所を一例にご紹介します。・申立書類・戸籍謄本・住民票(世帯全部、省略のないもの)・登記されていないことの証明書・診断書(成年後見用)、診断書付票・知的障害の場合、療育手帳(愛の手帳・みどりの手帳・愛護手帳)のコピー・総合判定の記載のあるページのコピーも必ず添付してください。上記の資料を提出する際には個人番号(マイナンバー)の記載がない書類を提出することが求められます。法定後見制度の申請には費用がかかります。なお,手続費用については,申立人が負担することが原則ですが,この手続を 行うことが本人の保護となりその利益になると考えられることから,東京家庭裁 判所では,申立手数料,後見登記手数料,送達・送付費用及び鑑定費用について, 本人負担とする裁判をする運用です。審判確定後,選任された後見人等に対し, 本人の財産の中から本人負担とされた手続費用の償還を求めることができます。【手続費用】・ 申立手数料(後見・保佐・補助共通) 800円 (代理権又は同意権の付与) 各800円・ 登記手数料 2,600円・ 送達・送付費用 3,200円又は4,100円・ 鑑定費用 実費(通常は裁判所に予納した金額(平成28年7月(電子版)成年後見申立ての手引 ~東京家庭裁判所に申立てをする方のために東京家庭裁判所東京家庭裁判所立川支部)鑑定を要する場合は別途、鑑定費用が5~10万円かかります。また申立てを弁護士や司法書士に依頼する場合、費用は自己負担となり別途お金がかかります。依頼する専門家により報酬は異なるので確認しましょう。成年後見制度の手続きの流れ | 成年後見制度完全マニュアル本人の財産や事情などに基づき、適当な額を家庭裁判所が決定し、本人の財産の中から報酬を受け取ることができます。申し立てがある場合は審判で決定されます。任意後見制度とは?出典 : 任意後見制度とは、本人十分な判断能力があるうちに、判断能力が不十分な状態になったときに備えて、あらかじめ自らが選んだ代理人、公証人または任意後見人に代理権を譲渡し、契約を定める制度をいいます。これにより本人の意思に基づいて財産管理や支援を行うことができます。公証人の作成する公正証書によって契約を結びます。本人の判断能力が低下したら家庭裁判所に申し立てを行い、家庭裁判所が任意後見監督人を選任することで初めて効力が発生します。任意後見監督人のもと、任意後見人は本人を代理して契約などを行います。任意後見人とは、本人に判断能力があるうちに、契約内容をあらかじめ取り決めてお願いする人物をいいます。近い将来に判断能力が低下した時のことが不安な方におすすめです。任意後見監督人とは、任意後見人を監督する人物をいいます。任意後見人は大きな権限を与えられるため、成年後見制を悪用してしまう可能性が少なからずあります。そのため、任意後見人をチェックするという意味で任意後見監督人がいます。任意後見人には特に法律的な資格は要求されず、誰でもなることができます。家族、友人、弁護士、司法書士等の専門家など信頼できる人を選びましょう。ただし、任意後見人には大きな権限が与えられるので慎重に選びましょう。それに対し、任意後見監督人は家庭裁判所が選任します。一般的に、第3者である弁護士や司法書士、社会福祉士、税理士や法律、福祉に関わる法人などが選ばれることが多くなっています。任意後見制度の利用は本人の判断能力の状況により、3つのかたちにわけることができます。判断能力の増減に応じて支援内容を変更することができます。■将来型現在は元気で判断能力があることから、将来判断能力が不十分になったときに効力を発生させます■即効型現在、体力・判断能力ともに衰えがあることから、任意後見契約の直後に契約の効力を発生させます■移行型現在は体力の衰えがあるが判断能力はあることから、できる範囲は自分で管理を行います。しかし自己の判断能力の低下後は、任意後見監督人の監督の下で任意後見人に事務処理を行ってもらいます。任意後見制度の手続きをご紹介します。お住まいの自治体により手続きが異なることがあります。詳しくは自治体のホームページをご確認ください。1. 公正証書での任意後見契約の締結をします本人の判断能力が十分にあるうちに任意後見人と具体的な支援内容を話し合い、公正証書という文書の形で契約を締結します。2. 任意後見契約内容の登記契約内容は法務局で登記されます。その内容は法務局にて後見登記記事証明書で確認できます。3. 家庭裁判所への任意後見監督の選任申し立て本人の判断能力が低下したら、本人は家庭裁判所に申し立てを行います。申し立ては本人(任意後見契約の本人)もしくは配偶者、四親等内の親族、任意後見受任者ができます。これにより、家庭裁判所が任意後見監督人の選任を行います。そして任意後見制度の効力が発生し、あらかじめ決められた契約内容に基づき任意後見監督人の監督のもと支援が開始されます。任意後見制度の手続きには、いくつかの資料を準備する必要があります。東京家庭裁判所を一例にご紹介します。・申立書類・戸籍謄本・住民票(世帯全部,省略のないもの)・後見登記事項証明書(任意後見)・後見登記されていないことの証明書・任意後見契約公正証書の写し・診断書(成年後見用)■任意後見制度の申請任意後見制度の申請には主に次のような費用がかかります。・公証役場の手数料・法務局に収める印紙代・法務局への登記委託料・郵送費・正本、謄本の作成手数料など■効力が発生するとき及び効力が発生したあと効力が発生したとき及び効力が発生したあとには主に次のような費用がかかります。・任意後見監督人の選任申立て費用・任意後見契約で定めた、任意後見人に対する報酬・任意後見監督人の報酬任意後見制度は必ず公証人役場で公正証書を作成する必要があります。公正証書を作成する費用は以下のとおりです。(1)公正証書作成の基本手数料⇒1万1,000円(2)登記嘱託手数料⇒1,400円(3)登記所に納付する印紙代⇒2,600円この他にも当事者に交付する正本等の証書代や登記嘱託書郵送代がかかりますが、詳しくは公証人役場に聞いてみるのがよいでしょう。(成年後見制度の手続きの流れ | 成年後見制度完全マニュアル)任意後見人に対する報酬は本人との話し合いで自由に報酬を決められます。請求があった場合、家庭裁判所の判断に基づき本人の財産から支払われます。任意後見監督人に対する報酬は家庭裁判所が決定します。弁護士もしくは司法書士などに依頼することができます出典 : 成年後見制度は大変複雑で、必要な書類を集めるだけでも一苦労です。そこで弁護士もしくは司法書士に成年後見制度の手続きを依頼することにより、提出書類の作成にかかる時間と手間を大幅に節約することができます。また専門家に相談することができ、本人の状況にあった支援内容を決めることができます。弁護士は本人に代わって申請を進めることができます。他方、司法書士は制度や申立手続きの相談などをおこなうことができます。目的に応じてどちらにお願いするか判断するとよいでしょう。依頼先により報酬は異なりますので、事前によく確認することが求められます。成年後見制度のメリット・デメリット出典 : これまで成年後見制度を法定後見制度と任意後見制度の2つにわけ、それぞれの制度の内容や手続きの流れをご紹介しました。では、成年後見制度を使うと、本人には具体的にどんなメリットやデメリットがあるのかご紹介します。■悪徳商法の被害を防止判断力不足により結んでしまった不利・不当な契約を、一方的に取り消すことができます。これにより悪質商法などの被害を防ぐことができます。■財産管理家庭裁判所が財産管理に関与する、親族や第三者などが本人の意思に反して本人の財産を使っている場合、それらを防ぐことができます。■財産管理の自由度の限定後見人が本人の代わりに財産管理をするため、本人が管理する自由度が減ります。■資格・役職の制限成年後見制度を利用すると判断能力がないと判断されることから、本人は会社の社長・役員や弁護士、医者など一部の資格を必要とする仕事に就くことができません(法定後見人の補助を除く)。また選挙権・被選挙権、会社の役員などに就くことができず、また印鑑登録ができなくなります。■財産の移転や相続に関わる行為の制限成年後見制度を利用すると、生前贈与や生命保険契約、養子縁組といった行為に制限がかかります。・生前贈与成年後見制度を利用すると、財産の移転は本人の財産を減らすことを意味するため、認められていません。財産の移動は家庭裁判所に定期的に報告し、そこで家庭裁判所の監督を受けます。・生命保険契約遺産相続が発生すると、場合によっては多額の相続税を納める必要があります。しかし、いきなり多額のお金を準備するのはたやすいことではありません。そうしたとき、亡くなった直後すぐに死亡保険金を現金で受け取ることのできる権利が生じる生命保険契約を活用することでスムーズに対応することができます。ただ成年後見制度を利用すると、生前贈与と同様に財産の移転は本人の財産を減らすことに当たり、生命保険契約は認められない可能性が高いです。・養子縁組養子縁組により相続税の基礎控除額の基礎控除枠を増やすことができます。しかし成年後見制度を利用すると、本人の意思を尊重することや家庭裁判所の監督がある点から、養子縁組での相続税対策はすることができません。■投資・貸し付けの禁止投資や親族に貸し付けるのは禁止されます。援助や冠婚葬祭費の利用を行う場合は家庭裁判所に相談しましょう。また住宅用不動産を処分する場合も同様です。後見人になったら気をつけたいポイント出典 : 成年後見人になるとき、いくつか気をつけたいことがあります。「財産の不正利用」と「成年後見制度が続く期間」、「成年後見人の解除方法」の3点をご説明します。■財産の不正利用万が一不正に財産を利用した場合は、民事上の責任として解任されます。さらに刑事上の責任として損害賠償請求・業務上の横領の罪に問われます。■成年後見制度が続く期間成年後見制度は原則的に判断能力が回復するもしくは、亡くなるまで続きます。なので後見人の業務が場合により長期間に及ぶことがあるので、後見人の仕事を長い間続けることができるか確認することが必要です。■成年後見人の解除方法不正な行為がある場合や後見人としての品位に欠けると判断される場合などは、本人の親族、検察官の申立てまたは職権により後見人を解除することができます。しかし後見人が気に入らないからといって簡単に解除できるわけではありません。解任後は家庭裁判所が新たな後見人を選任することになります。■後見人が遺産の相続をする場合後見人自身も遺産相続人である場合は、家庭裁判所で特別代理人を選定する必要があります。成年後見制度がよく分かる、おすすめ書籍出典 : これまで成年後見制度の目的や支援内容などを紹介してきましたが、さらに詳しい情報が必要な方は次のような書籍をおすすめします。出典 : 児島 明日美・ 村山 澄江/編著『今日から成年後見人になりました 』自由国民社 (2013)出典 : のん/編著『マンガでわかる 私は父の成年後見人です』(自由国民社, 2014年)まとめ出典 : 障害者や高齢者といった判断能力の乏しい人の法律行為や契約をサポートするのが成年後見制度です。悪質商法から本人を守ったり、不利益になる契約を締結してしまうリスクがなくなります。その一方サポートが長期間に及ぶことや定期的に家庭裁判所に報告することを考えると、後見人への負担は少なくありません。本人と相談し、必要性の有無を話し合いのうえ申請しましょう。”何かあったとき”のために、成年後見制度の利用を考えてはいかがでしょうか。児島 明日美、村山 澄江/著 『今日から成年後見人になりました』2013年 自由国社/刊成年後見制度~成年後見登記制度~ | 法務省成年後見制度詳しく知っていただくために | 家庭裁判所成年後見申立ての手引 ~東京家庭裁判所に申立てをする方のために~ | 東京家庭裁判 所東京家庭裁判所立川支部成年後見制度の手続きの流れ | 成年後見制度完全マニュアル成年後見制度の問題点&できないこと&解任方法 2016年度版 | 遺産相続 弁護士相談Cafeここが知りたい日常生活自立支援事業なるほど質問箱 | 社会福祉法人全国社会福祉協議会福祉サービス利用援助事業について | 厚生労働省社会・援護局 地域福祉課社会福祉リカレント講座「自立支援における権利擁護と成年後見制度」講演録 | 明治大学 法学部教授 星野 茂いざという時のために知って安心成年後見制度成年後見登記 | 法務省民事局
2016年09月18日障害年金とは?出典 : 「障害年金」とは、障害によって生活の安定が損なわれないように、働く上で、あるいは日常生活を送る上で困難がある人に支払われる公的年金の総称です。業務時や通勤時による障害を補償する労災保険の障害年金もありますが、今回は、国民年金法、厚生年金保険法等に基づき日本年金機構が運営業務を行っている障害年金について紹介します。障害年金の種類出典 : 日本年金機構の障害年金には2つの種類があります。1.障害基礎年金障害基礎年金とは、障害の原因となった病気やけがについて、初めて医師または歯科医師の診療を受けた日(初診日)に、すでに国民年金に加入していた人が受給することができる障害年金です。また、国民年金に加入前、20歳未満で障害を受け、その状態が続いている人にも給付されます。2.障害厚生年金障害厚生年金とは、初診日にすでに厚生年金に加入していた人に支給され、障害基礎年金に上乗せするものとして給付される報酬比例の年金です。障害年金を受けるための条件出典 : 障害年金を受給するためには、以下の要件をすべて満たしている必要があります。初診日とは、障害の原因となった病気やけがについて初めて医師または歯科医師の診療を受けた日のことをいいます。病気やけがにおいての初診日であり、その病院での初診日ということではないので注意してください。障害年金の受給希望となったきっかけである病気やけがの初診日が、いつ、どこの病院だったかを特定する必要があります。その際、診断書などの裏付けができるものも必要です。ただし、知的障害に関しては先天的な障害とされているので、初診日の証明は必要はありません。アスペルガー症候群や自閉症にもこの例外は広がりつつありますが、まだ発達障害全般には保障されていません。初診日に国民年金や厚生年金保険などの年金制度に加入している必要があります。しかし、初診日に住所が日本国内にあったならば、初診日に20歳未満、あるいは60歳以上65歳未満でも国民年金に加入していたのと同じ扱いになります。20歳未満は国民年金に加入できないことから、20歳に達した時に障害等級に該当していれば加入要件は必要ありません。つまり、20歳未満で障害を受け、その状態が続いている人にも年金制度の対象となります。以下の2つのどちらかに当てはまっている必要があります。1.初診日の前々月までの年金加入月数の3分の2以上が保険料納付済みか免除されている月であるとき2.初診日の前々月までの年金加入月数の12カ月すべて保険料納付済みか免除を受けた月であるとき障害等級に該当している必要があります。障害等級とは、障害の状態を分けたもので、重いものから1級、2級、3級とされています。1~2級は国民年金法施行令で、3級および3級より軽度の障害状態は厚生年金保険法施行令で定められています。この場合の障害等級は労災保険の障害年金のものとは違うものです。厚生年金に加入している場合は1級~3級のいずれかに該当しているならば障害厚生年金を受給することができます。また、障害等級が3級に達していなくても条件に該当しているならば、障害手当金という一時金が支払われます。国民年金に加入している場合は、1級と2級に該当しているならば障害基礎年金を受給することができます。しかし、障害基礎年金には障害手当金はありません。障害年金を受けるための障害認定基準出典 : 障害年金に関わる(年金額の)等級も、身体障害者手帳や精神障害者保健福祉手帳などの障害者手帳も「1級、2級」と、等級の表し方は同じのため混同しやすいのですが、障害年金の障害認定基準は障害者手帳の障害認定基準と異なります。そのため障害者手帳で1級でも、障害年金では異なる場合があります。精神障害における障害認定基準は、「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準」に基づいて認定されていました。しかし、精神障害と知的障害の認定において、地域でその基準に違いがあるという状況が明らかになってきました。こうした、認定における地域差を改善するため、厚生労働省は新しいガイドライン(『国民年金・厚生年金保険 精神の障害に係る等級判定ガイドライン』)を作成し、2016年9月1日より実施しています。精神障害と知的障害においての等級は、「日常生活能力の程度」と「日常生活能力の判定」の評価の平均をもとに認定されるようになりました。等級目安などの詳細は下記のリンク先にあります。ただし、てんかんにおいては、発作の重症度や頻度などを踏まえて等級判定を行うことを障害認定基準で規定しています。そのため、「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準」に基づいて、等級認定を行います。『精神の障害に係る等級判定ガイドライン』|日本年金機構身体障害の障害認定基準についても下記のリンク先でも紹介しています。平成28年6月1日に、障害基礎年金、障害厚生年金の障害認定基準の一部が改正されているので確認してみてください。国民年金・厚生年金保険|日本年金機構障害認定基準|横浜障害年金申請サポート不安なことやわからないことがあったら、お近くの年金事務所に問い合わせてみましょう。全国の相談・手続き窓口|日本年金機構障害年金はいくら支給されるの?出典 : 日本年金機構によると、障害年金は以下のように計算され毎月支給されますが、支給額はその年度の経済状況で変動があります。また、子どもの数による加算額は児童手当との兼ね合いで支給額が調整されます。下記は2016年度の金額です。現段階でいくら支給されるのか、目安として参考にしてください。1級の場合の年額:780,100円(老齢年金の満額)×1.25+子の加算2級の場合の年額:780,100円(老齢年金の満額)+子の加算※子の加算…第1子・2子は一人につき224,500円。第3子以降は一人につき74,800円。この時の子どもは下記の要件を満たしている必要があります。・18歳到達年度の末日(3月31日)を経過していない子・20歳未満で障害者1級または2級の障害がある子Upload By 発達障害のキホン障害基礎年金の受給要件・支給開始時期・計算方法|日本年金機構1級の場合:(自分の老齢年金) × 1.25 + 〔配偶者の加給年金額(224,500円)〕2級の場合:(自分の老齢年金) + 〔配偶者の加給年金額(224,500円)〕3級の場合:自分の老齢年金額または最低保障額 585,100円※1級・2級の場合障害基礎年金も加わるUpload By 発達障害のキホン障害厚生年金の受給要件・支給開始時期・計算方法|日本年金機構障害基礎年金と障害厚生年金を比較した図が以下のものになります。Upload By 発達障害のキホン障害年金の支給が停止する場合出典 : 障害年金は支給が停止する場合があります。たとえば、1年ごとや3年ごとなどに提出する診断書をもとに障害の状態が要件に当てはまらないとされたときなどがあります。一方、複数回診断を受けても障害の状態変化があまりなく、固定状態が証明されている身体障害においては、診断書の提出の必要がない場合もあります。障害厚生年金においては、業務上の病気やけがでも障害年金を請求することはできますが、労働基準法の規定による障害給付を受け取る権利があるときは、6年間障害厚生年金を受け取ることができません。また、労働者災害補償保険法の規定による障害給付を受け取るときは、労働者災害補償保険法の給付の一部が減額されます。1世帯(扶養親族なし)の所得額が360万4千円を超える場合には年金支給額の2分の1が支給停止となり、462万1千円を超えると年金支給額の全額が支給停止になることがあります。障害年金の申し込み方法出典 : 障害年金請求方法として主に以下の2つがあります。障害認定日とは障害の程度を認定する日で、初診日から1年6カ月経過した日、あるいはその病気やけがが治った場合は病状が固定し、治療の効果が期待できない状態に至った日を指します。何らかの理由で請求が遅れてしまっても、障害認定日の時点から3カ月以内の診断書の添付ができます。その際に症状が障害等級に該当するものだとしたら、さかのぼって過去の分の年金を請求することもできます。基本的に、障害年金受給の権利は条件を満たしてればいつでも得ることができますが、実際にさかのぼって請求できるのは過去5年分のみです。障害認定日時点の診断書の取得や当時の症状を証明できるものが必要なため、複雑に感じる人もいます。しかし、申請が受理されると、障害認定日の翌月分から障害年金を受給することができることは大きな利点であると言えます。Upload By 発達障害のキホン事後重症請求は、障害認定日の障害の程度が障害等級に該当していなくても、その後症状が悪化し、その症状が1級~3級に該当した場合に適用します。しかし、65歳までに障害認定基準に該当している必要があり、請求書は65歳前に提出しなければなりません。請求が受理されると、認定日の翌月分から受給できますが、障害認定日請求とは違い、さかのぼって過去の分を請求することはできないものになっています。Upload By 発達障害のキホン一人の人に複数の障害があった場合ですが、日本年金機構によると、特別、複数の障害があった場合の請求方法はないそうです。ただし、請求する際にはすべての障害に関する診断書が必要なため、手続き過程において複数の障害があることは確認されます。その人の障害の状態や重なりによって、その後の対応は変わるため、まずは窓口で相談するか、診断書を提出して審査をしてもらいましょう。障害年金の申請に必要な書類出典 : まずは、初診日や障害の状態を証明できる診断書や障害者手帳を持って年金事務所や市役所の国民年金窓口へ行くことをおすすめします。そこで必要な書類などの相談ができます。下記は参考として見てみてください。・年金請求書(居住地の市区町村役場、または近くの年金事務所または街角の年金総合センター窓口に備え付けられています)・年金手帳・戸籍抄本・医師の診断書・受診状況等診断書・病歴・就労状況等申立書・受取先の金融機関の通帳等・印鑑※18歳到達年度末までの子ども(20歳未満で障害のある子どもを含む)がいる場合・戸籍謄本・世帯全員の住民票・子の収入が確認できる書類・医師、または歯科医師の診断書障害基礎年金を受けられるとき|日本年金機構・年金請求書・年金手帳・戸籍抄本・医師の診断書・受診状況等診断書・病歴、就労状況等申立書・受取先金融機関の通帳等・印鑑※18歳到達年度末までの子ども(20歳未満で障害のある子どもを含む)がいる場合・戸籍謄本・世帯全員の住民票・配偶者の収入が確認できる書類(これは障害厚生年金のみです)・子の収入が確認できる書類・医師、または歯科医師の診断書障害厚生年金を受けられるとき|日本年金機構困ったら社労士に相談を出典 : 障害年金を利用したくても、申請などの手続きが大変なことから申請を諦めてしまう人もいます。その複雑さを軽減してくれる人が、社会保険労務士(通称、社労士)です。社労士とは、労働・社会保険に関する法律や人事・労務管理の専門家として、私たちの採用から退職までの労働・社会保険に関する諸問題、さらに年金の相談に応じる人のことです。障害年金についての無料相談や申請書作成の代行も行っています。まずは各地域の社労士会に無料相談をしてみましょう。社労士会リスト|全国社会保険労務士会連合会まとめ出典 : 以上、障害年金について制度の概要を解説しました。障害年金を受け取るためには、年金を納めていることが必要である点に注意してください。また、納めていても申請が複雑で面倒ということから申請を諦めてしまう方もいます。もし手続きに不安を抱えていたら社労士に早めに相談し、申請のサポートを受けることをおすすめします。
2016年09月08日私は、子どもの支援ツールを作って、情報発信をしています私は子育てのかたわら、アイデア支援ツールを多数発明し「楽々かあさん」として、凸凹子育てや支援に役立つ情報の発信を続けています。最近、「どうしたらそんなにアイデアが出るんですか?」という質問を、取材等で頂く機会が増えました。子どもに合わせた支援ツールを作るコツは、・子どもの話を否定せずによく聴く・行動をよく観察し、困りや作業性に注目する・使用感を確かめながら調節する…ということになりますが、本当の理由は「体質的にアイデアが出やすい」から。そう、実は私「大人の凸凹さん」なんです。うちの子達と同じような凸凹傾向があり、得意なことがある反面、できないことや苦手なこともたくさんあるんです。楽々かあさんの活動「発達障害アイデア支援ツールと楽々工夫note」(Facebookページ)わが家は、片付けが得意な人が1人もいない!出典 : 我が家には、片付けの得意な人が1人もいません。家族5人+犬1匹、全て出しっぱなし、散らかしっぱなしです。最低限の工夫、ゴミだけは拾い、無くすと困るものには専用BOXやヒモをつけて管理する、という事だけはしています。そんな私は以前ネットで見た「天才は机が汚い?」といったまとめ記事を、とても励みにしています。スティーブ・ジョブズやアインシュタインなど、革新的なアイデアと創造性を持った著名人の多くは机の上が散らかっている、というのです。「片付けられない」のは必ずしもマイナス面ばかりではない、と、ものの見方を変えるきっかけになりました。実際の所、クリエイティブで革新的なアイデアのひらめきを得るには、モノが散らかっている状態は、理にかなっています。ハリウッドの脚本チームなどが用いる「ブレインストーミング」というアイデアを生み出す手法も、キーワードの書かれたカードをランダムに並べて、一見無関係な情報同士を結びつけ、斬新な発想を得ようとする試みです。「片付けられない」人たちは自分の頭の中だけで、いつでも実行できてしまうのだと思います。部屋の散らかりは、単にその特徴の表れに過ぎないのです。私は「片付けられない」のは、クリエイティブで発想力豊かな証拠だと思っています。Upload By 楽々かあさんまとめ「歴代の天才たちも…デキる人ほど机が散らかっていた」「情報が捨てられない」苦しさはあるけれど…出典 : そして、私自身の頭の中も、情報の選別が苦手です。視覚と聴覚両方に過敏性があり、長期記憶が得意なのであれこれと見聞きしたことは、大事なことも些細なことも、大量の情報を受け取ったまま、分別せずにストックし続けてしまいます。つまり、記憶の整理整頓も苦手なんです。これは、ちょっぴりしんどいことでもあります。何十年も前のイヤなこと、腹の立つこと、悲しいこと、あるいは自分の失敗体験なども忘れることができず、ちょっとしたきっかけで、芋づる式に次々と頭の中で再生されて、その度に、何度も同じ気持ちを味わうからです。そして、文字情報もまるごと受け取ってしまうので、大量の文字と一緒にそれを書いた人の苦しさなどの感情にも共鳴しやすく、文字の羅列に目が回ったり、一緒に胸が苦しくなってしまったりもします。大量の「ちょっとほろ苦い情報」も、冷蔵庫の奥のパック寿司のオマケのショウガやわさびの小袋と同様、なかなか捨てられないのです。でも、こういった膨大な情報のストックがあるからこそ、できることもあるんです。そして、いつも頭の中は臨月の妊婦のごとくパンパンで苦しいので、「なんとかそれを形にして産み出して早く楽になりたい!」という気持ちも強いのです。良い言い方だと、これは、「創作意欲」と呼ばれます。Upload By 楽々かあさん誰しも、凸と凹はセット。苦手克服だけに頑張らないつまり、私の「アイデアが出やすい」「創作意欲が強い」という長所は、「片付けができない」「モノが捨てられない」といった短所と、表裏一体なんです。凸と凹は、セットです。我が家の育児でも、苦手な凹の克服を頑張り過ぎてしまうと、せっかくの素敵な凸も消えてしまいます。ですので、最低限、本人や周りの人が日常生活に大きく困らない程度の工夫をして、自分と上手につき合う方法を身につければいい、と考えています。うちの子達が何かに困ったりつまずいたり、学校で何かやらかしたりすると、それをきっかけにアイデアを生み出すための「スイッチ」が入ります。トラブルがあるから、アイデアが出るんですね。ピンチはチャンス、とはよく言ったものです。そして、「どうしたら」ハードルが下がるのか、伝わり易いのか、自信になるのか、と具体的に考えます。そんな時に例えば、洗濯たたみなどの単純な動きの手作業をしながらぼんやり考えていると、過去の膨大な雑情報が次々と結びつき、ジグソーパズルのようにピタピタとアイデアのピースがはまっていきます。そして、「いいこと思いついた!」という瞬間がやってきます。でも短期記憶が弱く、すぐに大事なことを忘れてしまいがちな私は、その場でふせんにメモを書いて、A4の大きなスケジュール帳に、その都度貼っておくのです。そんなことを家事の合間にしていると、いつも「ついうっかり」こんなことになります。Upload By 楽々かあさん…同時処理の苦手な私は、うっかり者の長男のことを偉そうに注意できる立場ではないのです。苦手なことが多いから、できない人の気持ちが分かる。出典 : でも、そんな苦手なことや、短所・欠点・失敗も多い私だからこそ、子どもの凹の部分の「できない目線」に合わせることができます。うちの子が何につまずいているのかが手に取るように分かり、どんな子にも分かりやすい工夫のアイデアが次々と浮かびます。そして、アイデアが出やすいことを活かして「楽々かあさん」として、日々の発信や執筆活動を通し、多くのお子さん・お母さんの役に立つことができるのです。反面、対人関係の苦手さや集中力の偏りもあり、環境に左右されやすく、メンタルも決して強くはありません。だからこそ、「育児・療育を頑張り過ぎて疲れてしまう」「我が子が可愛いと思えない時がある」なんてお母さんのお悩みにも共感できるし、できない気持ちに寄り添うことができるのです。「お母さんはいつも笑顔で!」「イライラしてはダメ!」ではなく、育児を毎日頑張っていればつい怒ってしまうのも、イライラするのも当たり前。子ども同様、親にだって「頑張ってもできないこと」があるのを大前提にしながら、「どうしたら」怒らなくても子どもに伝わり易いだろうか、と日々考えています。その考えが「声かけ変換表」を作ったり絵や図で説明したり、道具を工夫し、子どもやお母さんたちのハードルを下げることにつながっています。育児を頑張りすぎて疲れてイライラしてしまう時、「どうしたら」コンディションを持ち直すことができるのか?他の人の力をどう借りていけばいいのか?という具体的な対処法も伝えることができます。言葉の選び方へのこだわりも強いので、デリケートな育児をしているお母さんたちに、思いやりのある表現で文章を書くことができます。このように、私は自分の凸の部分と同じくらい、凹の部分を財産のように思っています。凸も凹も、どっちも大事。両方あるからこそ、私の「アイデア支援ツール」が、次々と生まれて来るんです。関連ブログ「『今が100点』からスタートする。療育を頑張り過ぎて疲れているお母さんへ。」参考書籍・著書「発達障害&グレーゾーンの3兄妹を育てる母の毎日ラクラク笑顔になる108の子育て法」
2016年07月25日