妊娠に気づかずに、自然流産をしていることがあるってご存じですか? 全妊娠数に対する流産率は約15%もあり、なんと6人にひとりは流産を経験しているというのです。自然流産にはどんな兆候があるのでしょうか? また、自然流産後、妊娠はすぐにできるのでしょうか? 自然流産について解説します。【監修】イシハラクリニック副院長 石原新菜 先生小学校は2年生までスイスで過ごし、その後、高校卒業まで静岡県伊東市で育つ。2000年4月帝京大学医学部に入学。2006年3月卒業、同大学病院で2年間の研修医を経て、現在父、石原結實のクリニックで主に漢方医学、自然療法、食事療法により、種々の病気の治療にあたっている。クリニックでの診察の他、わかりやすい医学解説と、親しみやすい人柄で、講演、テレビ、ラジオ、執筆活動と幅広く活躍中。著書に、13万部を超えるベストセラーとなった『病気にならない蒸し生姜健康法』(アスコム健康BOOKS)をはじめ、『「体を温める」と子どもは病気にならない』(PHP研究所)等30冊を数える。■自然流産とは妊娠22週未満までに何らかの原因で妊娠が中止されることを自然流産といいます。妊娠22週前後は、だいたい妊娠5カ月。ママのおなかが突き出てくるころです。赤ちゃんが生きるためには、妊娠22週までママのおなかの中で育つ必要があるということで、このように定義づけられました。自然流産の原因自然流産は、妊娠初期に多く発生するトラブルのひとつです。自然流産の原因の多くは、母胎側ではなく胎児側に因子があることが多く、初期流産にいたっては胚の染色体異常で妊娠が中断されるケースが約60~70%にも及びます。流産の原因となる染色体の異常は、受精時に発症していることがほとんどです。参考サイト:日本産婦人科学会 「流産・切迫流産」 時期によって異なる呼び方妊娠12週未満の自然流産を「早期流産」、12週~22週未満の自然流産を「後期流産」といいます。流産が起こる確率は早期が13~14%、後期が1~2%と、圧倒的に妊娠12週までに発症する早期流産が多くなっています。切迫流産とは切迫流産は、流産が迫っている状態のことをいいます。まだ、自然流産はしていない状態です。症状としては、おなかの張りや痛み、出血などがあります。妊娠初期におこるトラブルのひとつで、妊婦全体の約20%に症状がみられるというデータもあります。稽留流産と進行流産稽留(けいりゅう)流産は、赤ちゃんは死亡しているにも関わらず、出血や腹痛などの症状が起きていない状態をいいます。自覚症状がないため、健診まで気づかないケースがほとんどです。進行流産は、腹痛や出血が起こり、子宮から胎のうなどが出始めている状態。しかし、この段階では流産を食い止めることは難しい状態です。流産の状態自然流産の状態は完全流産と不全流産に分けられます。完全流産は出血や腹痛もなく、子宮内の残留物がすべて子宮から出てしまっている状態です。不全流産は、出血も腹痛もあり、子宮から残留物が出始めている状態で、まだ一部が子宮内に残っています。出血が止まらないケースもあり、原因となる子宮内の残留物を取り除く手術が必要になります。流産と死産の違い妊娠週数の違いで、流産と死産に分けられます。流産は妊娠22週未満におなかの中で赤ちゃんが亡くなることを、死産は妊娠22週以降におなかの中で赤ちゃんが亡くなることを指します。流産であっても死産であっても。妊娠12週を過ぎると、市区町村への死亡届の提出が必要になります。■自然流産の兆候となる症状流産が差し迫っている状態を切迫流産といいますが、主な症状としては、腹痛や腹部の張り、出血などがあります。中には心配がないケースもありますが、自己判断をせずに、すぐに受診しましょう。出血自然流産の兆候のひとつに出血があります。受精卵が着床するときに、着床した位置や状態に問題があり出血が止まらなくなる場合があります。また、卵膜の一部である絨毛膜(じゅうもうまく)の外側に血の塊がたまり、出血することもあります。血の色は茶色に近いものは注意します。おりものの量が増えたり、いつもと違うにおいがする場合も注意が必要です。腹痛・腹部のハリ自然流産の兆候に腹痛や腹部の張りもあります。症状は人によってさまざまで、動けなくなるほど激しい痛みが出る人もいれば、軽い痛みで終わる人もいます。中には痛みが出ない人もいます。体を横にして少し休むことで、痛みや張りが治まる場合もありますが、強いほど流産の可能性は高まる傾向にあるという専門家もいます。いつもと違う痛みがある場合はすぐに受診しましょう。■自然流産後の経過や生理・妊娠について自然流産後、腹痛はいつまで続くのでしょうか? また、自然流産後、生理はいつぐらいから再開するのでしょうか?進行流産の場合の経過進行流産の場合、流産の手術をするか自然排出を待つか、いずれかを選択できる病院もありますが、多くは手術をすすめられます。手術することで残留物からの感染症、腹痛や出血を止めるためです。腹痛や出血は、胎のうを子宮から取り除くことで改善します。また、胎盤から出るhCGホルモンの分泌を止めることでも症状がおさまります。残留物がすべて出た後、子宮がリセットされるからです。稽留流産の場合の経過稽留流産の場合も、流産の手術か自然排出を待つか、いずれかを選択できる病院もありますが、多くは手術で子宮の残留物を取り除きます。摘出手術後は、病室で数時間休んだ後、帰宅が可能です。また、病院によってはシャワーや入浴も通常通りできる場合もあります。手術後はいつまで安静にしたらいい?流産手術から約1週間後の診察まで、家でゆっくり過ごすことがすすめられます。日常生活で特に制限されることはありませんが、栄養バランスのとれた食事を心がけ、体を休め、なるべくストレスの少ない生活を送ることで、回復を促しましょう。自然流産後はいつから生理がくる?流産手術から1カ月後にはたいてい生理がきますが、状態によっては遅れる人もいます。次の妊娠の準備をするためにも、焦らず、ゆったりした気持ちで生活することが大切です。自然に生理が来るのを待ちましょう。自然流産後、いつから妊娠していい?流産が確認された場合は、流産の手術後、医師のアドバイスに基づき通常の生活が始まります。次の生理が来るまでは、性行為は控えます。通常は生理が2~3回来て、子宮に問題がなければ、妊娠の許可が出ます。長期間に渡って避妊をする必要はありません。■まとめ自然流産をすると、ママが責任を背負ってしまい、気持ちがふさぎがちになります。しかし、解説したとおり、前期の自然流産の原因の多くは胎児側の問題です。ママの体や行動に問題があったわけではないことがほとんどです。ですから、前向きな気持ちで次の妊娠の機会を待ちましょう。また、自然流産を3回以上繰り返した場合、治療が必要なケースもあります。きちんと病院で検査をして治療をすることで、自然妊娠も可能あり得ます。参考資料:・ 日本産婦人科学会 ・『はじめての妊娠・出産 最新版』(ベネッセコーポレーション)
2019年11月20日『コウノドリ』(TBS系)第5話が11月10日に放送された。描かれたのは、切迫早産により長期入院となった妊婦。子宮内胎児死亡というあまりに悲しい結末に、最後の最後まで涙があふれて止まらなかった。私たちの心にダイレクトに届いた“妊娠・出産は奇跡”というメッセージ。命がいかにはかなく、尊いものであるか、1組の夫婦とベビーが教えてくれた。■産声なき悲しい出産の現実サクラ(綾野剛)のもとを訪れた妊娠27週の西山瑞希(篠原ゆき子)は、切迫早産の診断を受け急きょ入院することになる。同室の七村ひかる(矢沢心)と励ましあいながら明るく入院生活を送るが、32週のエコーで事態が急変。胎児の心拍停止が発覚するのだ。四宮(星野源)の診察も受けるが、結果は同じ。そして、ベビーが亡くなった理由はサクラにもわからなかった。途方に暮れ、「ごめんね、ごめん…」と涙する瑞希を夫・寛太(深水元基)はやさしく抱き寄せる。おなかにいる赤ちゃんの名前は“あかり”に決まっていた。それは「(母・瑞希のように)女は明るい方がいいから」と寛太が名付けたものだった。翌日、陣痛促進剤を投与し瑞希の出産が始まる。赤ちゃんが亡くなっていても、痛みは通常のお産と変わらない。「あかりーっ」そうわが子の名前を叫びながら力を振り絞って出産するが、そこに産声は響かなかった…。子宮内で亡くなったベビーは戸籍に残すことができない。小松(吉田羊)が、あかりのためにしてあげたいことがあれば協力すると西山夫婦に寄り添うと、寛太が「ふたりでお風呂入れてやってもいいですか?」と希望する。小松はそれを快諾。ペルソナチームが見守るなか行われた沐浴は、悲しみと反比例するかのように、息をのむほど美しい時間が流れていた。退院の日、寛太はあかりと瑞希に特大のケーキを用意していた。プレートには「あかり おめでとう ママ ありがとう パパより」の文字。瑞希はあかりを抱いて、正面玄関から病院を後にする。向かったのは、夫婦で営む洋菓子店。そして、「あかり、ここがパパとママのお店だよ」と優しくほほ笑むのだった。■死産のとき自分を責めてしまう母親毎回、胸に迫るものがある『コウノドリ』だが、第5話の切なさは圧倒的だった。ベビーがおなかに宿れば、不安もあるが、これ以上ないと言っていいほどの幸福感で満たされる。これから始まる新生活に思いをはせ、長期入院だって「赤ちゃんのために」と我慢できる。この時点で、女性はすでに母親になっているのだ。そんな中、突如告げられた子宮内胎児死亡。四宮が「死産の4分の1は原因不明」と話していたが、原因がわからないからこそ恐ろしく、瑞希が自分を責めてしまうのは当然だろう。「私のせいですか? 私が切迫早産だったからですか? もっと安静にして、シャワーの回数を減らしていればよかったですか?」と、涙ながらにサクラに訴える瑞希の姿には、胸が張り裂けそうだった。妊娠すれば、元気な赤ちゃんが産まれるものだと考えている人も少なくないだろうが、けっしてそんなことはない。どんなに安静にしていても、悲しいお産を迎えることもある。確実に元気な赤ちゃんを産む方法なんてない…本当に、出産は奇跡なのだ。■残酷な現実と向き合うていねいな時間の温かさ印象的な場面ばかりだった物語の中で、筆者がもっとも感銘を受けたのは、西山夫婦が過ごしたあかりとの大切な時間。愛するベビーとの別れに必要なのは“次を見据えること”ではなく、“今と向き合うこと”ではないかと思うからだ。私は後期流産を経験したのだが、当時、言われて一番つらかったのは「次があるよ」という言葉だった。もちろん、本人たちは励ましのつもりで悪気はないのだが、その言葉は本当に悲しかった。だって、同じ赤ちゃんにはもう二度と出会うことはできないのだから…。西山夫婦は残酷な現実から目をそらさず、限りあるあかりとの時間をとてもていねいに過ごしていた。3人で過ごした温かな時間は、夫婦にとってかけがえのない思い出となったに違いない。そして、互いに痛みを分かちあい、懸命にいまを生きる西山夫婦だったからこそ、視聴者のだれもが無念に思い、心から涙したように思うのだ。この物語を機に、育児させてもらえることのありがたみを再認識。忙しさに追われ、わが子に対してイライラしてばかりの日々。でも、「子どもが元気でいてくれることはあたり前ではないんだ」と身に染みて感じたママは、私以外にもきっと大勢いるはずだ。■“子どもの死”という繊細なテーマの演技力それにしても、瑞希役の篠原ゆき子の名演技には度肝を抜かれてしまった。もちろん、軸にあるストーリーも素晴らしいのだが、篠原の好演により、そのメッセージ性は格段に強まったのではないだろうか。友人のひかるに「元気な赤ちゃん産んでね」と告げるシーンなど、瑞希に渦巻くさまざまな心情を感じ取り、胸が苦しくてたまらなかったママも多いことだろう。“子どもの死”という繊細なテーマながら、迫真の演技で素晴らしい作品を届けてくれたことに、感謝の気持ちと拍手を贈りたい。11月17日に放送される第6話で描かれるのは、緊急搬送されてきた心肺停止の妊婦。それは、下屋(松岡茉優)がヘルプで訪れた別病院で、意気投合した妊婦だった…。TBSテレビ 金曜ドラマ『コウノドリ』金曜よる10時から
2017年11月16日