近年、「ギフテッド」という言葉を耳にする機会が増えてきました。ギフト=贈り物という意味から、特別な才能を授かった人という認識の方が多いかもしれません。しかし、ギフテッドの生きづらさや個性といった本質的な特徴を、きちんと理解している人は少ないのが現状ではないでしょうか。そこで、『ギフテッド応援ブック −生きづらさを「らしさ」に変える本−(小学館刊)』の著者で、 Webメディア「みんなの教育技術」 でギフテッドの担当をしているライターの楢戸ひかるさんに、ギフテッドを理解するうえで知っておきたいことについてわかりやすく解説していただきます。(全3回)今回の「マンガ編」では、著書に掲載されている“ギフテッドの生きづらさとは何か”がわかるマンガの一部を転載してご紹介します。第1話:「ふつう」がわたしを苦しめる主人公は小川結衣(おがわ・ゆい)。生まれつき知能指数が高く、突出した絵やデザインの才にも恵まれたギフテッドの少女。一人っ子。※マンガのストーリーは、北海道に実在する「ギフ寺」(ギフテッドの子どもたちのための居場所)への取材に基づいたフィクションです。登場人物・場所・設定は、実在のそれとは無関係です。↓ココから読む(左から右)ギフテッドである主人公・結衣が、どんな場面で生きづらさを感じているのか少しご理解していただけたのではないでしょうか。結衣はこの後、ギフの湯で自分の居場所を見つけ自分らしく毎日を過ごせるようになります。(マンガの続きは、『ギフテッド応援ブック −生きづらさを「らしさ」に変える本−(小学館刊)』に掲載されています。気になる方はぜひお手に取ってご覧ください)ギフテッドにとって、“自分のことを理解し、理解してくれる仲間を作って、自分のやりたいことができる安心・安全な環境をもつ”ということが、自分らしさを失わずに生きていくうえでとても重要になります。続く 【きほん編】 では、楢戸さんのインタビューを通じて「ギフテッドとは何か」について、イチからご紹介します。\ ご紹介した書籍 / 『ギフテッド応援ブック −生きづらさを「らしさ」に変える本−』(小学館刊) 2023年10月3日発売定価1,760円(税込)/192ページ著:楢戸ひかる監修:片桐正敏(北海道教育大学旭川校教授)取材協力:小泉雅彦/日高茂暢/ギフテッド応援隊マンガ:黒川清作 著者:楢戸ひかる プロフィールライター。息子の通級をきっかけに、「特別な教育ニーズのある子どもたち」を軸に教育記事を執筆。通級を経験した母親として、当事者目線の発達障害理解教育の講師活動も行っている。主事業の最適化を考えるサイト「主婦 er」運営中。ウーマンエキサイトでも執筆中。HP: 楢戸ひかる 記事一覧 >>
2024年02月05日非認知能力という言葉を聞いたことはありますか? 知能の水準を表す知的指数「IQ」に対し、心の知能指数「EQ」で表される能力のこと。幸せな人生を切り開くために必要な能力として、今注目を集めています。今回紹介するのは、非認知能力を培う保育に取り組んでいる「むく保育園」。独創的な園舎や食育、保育方針により、子どもたちは日々の楽しい園生活の中で自然と非認知能力を高められるそう。そんな「むく保育園」のこだわりについて、詳しくお聞きしました。 むく保育園ってどんなところ?●子どもには無限の可能性がある!好奇心を尊重し「主体性を養う保育」●丸く連なる「園舎」は部屋を移動するたびに陽の光や風など自然をありのまま感じられる●食べることの喜びや命への感謝の心を自家菜園から学ぶ「食育」●ケガや急な体調不良にも対応!専任看護師による「病後児保育施設」併設 「むく保育園」は、2018年4月に企業主導型保育園としてオープン。運営企業は、宅配用弁当や仕出し料理の製造・販売を手がける「ひかり株式会社」。同社では、およそ20年前から急な体調不良や、土・祝日の休園日などで保育園を利用できない従業員の子どもたちを会社で預かっていたそう。そんな中、2016年に新設された企業主導型保育事業を援助する制度を活用し、誕生したのがむく保育園です。子どもたちが秘めている無限の可能性を大切にし、さらに伸ばしていくための非認知能力を培う保育に力を入れています。 保育対象年齢は、0歳児から小学校就学前まで。2021年度の受け入れは0~3歳児に限定されていましたが、2022年度より4歳児を受け入れ、現在0~4歳児が在園しています(2022年9月時点)。なお、2023年度からは5歳児の受け入れが可能になる見込みです。 PICK UP!子どもの動きを制限しない!無限に駆け回ることができる「独創的な園舎」 子どもがのびのびと過ごせる環境にしたい、との思いで造られたむく保育園の園舎。大小9つの丸い建物が屋根部分でつながっており、室内の中心には柱を設けないユニークな造りが特徴です。子どもたちは保育室から園庭まで、木の香りや陽の光、風、芝生の感触などを感じ、五感をフル活用しながら縦横無尽に駆け回ります。 そんな子どもたちを保育する先生方の間には、「ダメ」というワードを使わないルールがあることにも注目。回遊性のある園舎、そして探求心や創造力を制限しない保育方針により、子どもたちの感性は自然と磨かれ、非認知能力アップにつながるそうです。 PICK UP!家でもマネしたい!種から育てて食べるまでを体験する自家菜園で食育 むく保育園は、食育にも力を入れています。その取り組みのひとつが、自家菜園の活用。種や苗を植えるところからスタートし、育てた野菜を収穫し、園内で食べるところまでを体験。採れた野菜はそのまま食べたり、子どもたちのリクエストに合わせて先生や調理員さんが調理して食べたりすることもあるそう。 中には、嫌いだった野菜が食べられるようになった子どももいるよう。命に感謝する心や食べることの喜びを知ることもまた、非認知能力を培うことの一環。子どもたちが自らの人生を切り開く大人になるには、生命の根源である「食」を充実させることも重要な要素だと言います。 PICK UP!国際基準のHACCP(ハサップ)対応!食のプロが手掛ける安心・安全な給食 むく保育園の給食は、「国際基準HACCP(ハサップ)」対応の自社工場で下処理され、園の調理室で最終工程をおこなうという流れで作られています。 HACCP対応とは、食材の温度管理や入荷、食べる人に届くまでの過程を世界基準で満たしていることの証。厳選食材を使用し、無添加にも配慮、さらに子どもの発育やアレルギーにも対応した給食を提供できることは、食品会社が運営するむく保育園ならでは。園での食事については「細かく配慮してもらえるので助かる!」と保護者からも好評です。 こんなところもステキ!看護師が側にいる安心感!回復期の子どもを預かる病後児保育施設を併設むく保育園は、看護師が常勤する病後児保育室を完備。病後児保育室とは、体調不良からの回復期で、熱や咳などの症状は見られないものの、まだ通常どおりに登園することは難しい……、こんな子どもたちを預かるための施設です。 常勤の看護師は、大病院の小児科病棟で勤務経験のあるベテラン。病後児保育室の利用者がいないときには、看護師も保育室で園児と一緒に過ごし、保育士のフォローをしたり、子どもたちの状態をチェックしたりしています。看護師が側にいる安心感は絶大でしょう。 幸せな人生を切り開くために必要とされる「非認知能力」。幼少期に培われた非認知能力は、生涯にわたり保持されるといいます。縦横無尽に回遊できる園内で毎日をワクワク楽しく過ごしているうちに、自然と子どもたちの人間力は高められていくものなのかもしれませんね。
2022年09月29日IQ(知能指数)に対して、EQ(心の知能指数)やSQ(社会性の知能指数)が近年話題になっていますが、もうひとつ、「AQ」があるのをご存じですか?AQ(Adversity Quotient)は「嫌だな」「つらいな」と感じるような、「日常に起こるさまざまな逆境やストレスに対する対応力を数値化したもの」で、「逆境指数」とも呼ばれます。ちなみにビジネスエリートには、このAQが高い人が多いのだとか。「すぐに諦めるクセがある」「一度失敗すると、怖くなってもう挑戦したいと思わない」という人は、AQが低いのかもしれません。子どもには、どんな逆境でも「ピンチがチャンス」と思えるような人間になってほしいですよね。今回は、子どものAQを高める方法を紹介します。人は1日に23回もの「逆境」に遭遇する!AQは、組織コミュニケーションを研究する、ハーバード・ビジネススクール客員教授のポール・G・ストルツ氏により考案されました。ストルツ氏によると、人は小さなことから大きなことまで、1日に23回もの「逆境」に遭遇するそう。次々に降りかかるピンチをどう乗りきるのか。ストルツ氏は、AQレベルを以下の5段階に分けています。【レベル1】試練を乗り越えられず、逃げ出してしまう【レベル2】逆境にあっても、なんとか生き残ることができる【レベル3】とりあえず逆境に対処できる【レベル4】試練を正面から受け止め、解決しようと努力できる【レベル5】逆境を「ピンチはチャンス」と受け止め、ポジティブに乗り越えられる あなたのお子さまはどのレベルにいると思いますか?「一緒に遊ぼう」とお友だちを誘ったら、「イヤ!」と断られてしまった。公園に行くはずだったのに急に雨が降ってきて、ママに「今日はおうちで遊ぼうね」と言われてしまった……など、子どもには子どもなりに多くの逆境があるでしょう。けれど、もし「ピンチをチャンス」ととらえることができたら?「ほかのお友だちを誘ってみよう!」「家のなかで何をして遊ぼうかな?」と考えられるはず。そんなふうに考えられる人――AQが高い人にはどんな特徴があるのでしょうか。AQが高い人は「失敗してもめげず、楽観的」ストルツ氏の著書『仕事の逆境指数』によると、AQが高い人の特徴は以下です。AQが高い人の特徴プラス思考でポジティブ何事にも粘り強く取り組み、諦めない失敗してもめげず、楽観的人に感謝できる笑顔が多く、ユーモアセンスがある好奇心が強く、チャレンジ精神が旺盛短気ではない(感情的に怒らない) また、子どもを「メシが食える大人にする」という教育理念を掲げる学習塾・はなまる学習会代表の高濱正伸氏は、逆境に強い人間について次のように述べています。逆境を楽しめる人は、人生を満喫しようとしている人です。何もかも安定して問題ありませんという人生ゲームは面白くないと分かっている。だから自分にとって適切な負荷のかかる状態、「どうだろうできるかな、いややるしかない」と思える程度に向かい風や壁や目標があったほうが、充実できると知っている人です。(引用元:花まるコラム|高濱コラム 『AQ』※太字による強調は編集部が施した)AQが高い人は、「逆境を楽しめる人」なのですね。しかし多くの親は、「向かい風」や「壁」から子どもを守ってしまいがちではないでしょうか。そんな過保護な親の行動について高濱氏は、「幼い頃に『しなやかな強さ』を育むことをしなければ、逆境に弱い人間になってしまう」と警鐘を鳴らしています。では、どうすれば子どものAQを高めることができるのでしょう。子どものAQを育む、親の行動2つAQは生まれつきの才能ではありません。社会心理学者・渋谷昌三氏も著書『AQ-人生を操る逆境指数』のなかで、「子どもの頃の体験」がAQに大きな影響を与えると述べています。親の行動次第で子どものAQはどんどん高めることができるのです。渋谷氏・高濱氏のアドバイスを参考に、子どものAQ向上のために保護者が実践すべき行動を紹介します。■口出しをせず、ひたすら見守る「子どものためのアドバイス」を、一度見直してみましょう。たとえば、子どもが積み木で遊ぶとき。「この積み木のほうが大きくていいんじゃない?」など、 “効率” を知っている大人はついアドバイスしたくなります。でも、ぐっと堪えてください。なぜなら、うまくできなくても、自分でやってみることが大切だからです。失敗を繰り返し、自分で解決法を見つける体験がAQ向上につながります。特に、子どもが集中して何かに取り組んでいるときは、口出しを控えて見守りましょう。■「ちょっと高い壁」に挑戦させる「かわいい子には旅をさせろ」「若いときの苦労は買ってでもせよ」――まさにAQアップのためのことわざですね。子どもには、あえてちょっと高い壁を用意してあげてください。初めてのおつかいのような、「まだ無理かな。でも頑張ればできるかな」くらいの、少しハードルの高いことに挑戦させるのです。そんな「乗り越え体験」を積み重ねることで、子どもは逆境を楽しめる強い人間になっていきます。「わが子や自分自身のAQレベルが知りたい!」という方は、『AQ 人生を操る逆境指数』のAQ判定をぜひやってみてください。「IQ(知能指数)とEQ(心の知能指数)が高ければ人生明るいと思うのは、ちょっと早い」だなんて、少しドキっとすることが書いてありますが、「誰でもいつからでもAQは高められる」そうなので、親子でAQ力を高めていきましょう。***高濱氏は「伸ばす親は、子どもに逆境を与えようとする」とも言っています。「たくましく生きてほしい」という親の願いは、いまも昔も変わりませんよね。子どものために……と、つい過保護になりそうなときは、ぜひAQを意識して行動しましょう。(参考)ポール・G.ストルツ 著, 渋谷昌三 訳(1999),『すべてが最悪の状況に思えるときの心理学―AQ逆境指数』, きこ書房.ポール・G.ストルツ 著, 菊池隆 訳(2004),『仕事の逆境指数』, バジリコ.渋谷昌三(2015),『AQ 人生を操る逆境指数』, 東海教育研究所.e-ヘルスネット|知能指数/IQWeport|AQ:逆境指数とは!?困難な状況に打ち勝つサバイバル力!!Forbes|いくつ当てはまる?EQ(心の知能指数)が高い人に共通する5つの特徴かもめの本棚online|幸せへのトビラは「AQ」で開く花まるコラム|高濱コラム 『AQ』STUDY HACKER|「いるだけでチームの雰囲気が良くなる人」はSQが高い。”10個の特徴“あなたはいくつ当てはまる?
2021年10月21日昨今、EQ(心の知能指数)やSQ(社会的指数)など、さまざまな能力について取りざたされていますよね。しかし、「やっぱり “頭の良さ” として馴染み深い、IQ(知能指数)が気になる」「子どもの将来のためにIQを高めてあげたい」と考えている親御さんも多いことでしょう。そこで今回は、「IQが高い子どもの特徴」や、「子どもの社会的な成功とIQとの関係」についてご紹介します。そもそもIQって何?そもそもIQとは、「人間が知能を使って物事を処理する能力を表す数値」のこと。知能検査によって測定された精神年齢を実年齢で割り、100倍にした数値です。85~115が平均といわれています。日本でトップクラスの学力を誇る東大生のIQは、平均120ともいわれていますが、IQが高いからといって、必ずしも学力が高いとは限りません。また、IQの高さは遺伝や環境の影響も大きいといわれています。慶應義塾大学(行動遺伝学)の安藤寿康教授いわく、IQはおよそ5割が遺伝の影響を受け、残りの5割のうち3割は家庭環境が影響するのだそう。安藤教授は、親からどんな遺伝子を受け継いだとしても、学習をすれば必ず能力は伸びるといいます。IQが高い子どもの特徴IQが高い子どもには、どのような特徴があるのでしょうか?詳しくみていきましょう。・頭が良くて賢いIQの高い子どもは、頭が良くて賢いといわれています。勉強ができるという学習能力としての賢さだけでなく、大人びた物言いや考え方をするなど、精神的に賢い場合もあるのが特徴です。IQの高さについて、医学博士の青木聡氏は次のように述べています。IQテストにおける「正答率の低い問題」とは、共通ルール(共通点)を見つけるのが難しい問題のことです。つまり、テストの結果がいい人(IQが高い人)は、「共通点を見つける能力」に優れていることになります。(中略)「共通点を見つける能力」とは、簡単に言うとパターン認識能力のことです。たとえば、友だちの妹とすれ違ったときに、「あ、似ている」と、友だちの顔が脳裏に浮かぶことがあるかと思います。どこか似ていると感じるのは、共通する特徴(共通点)を無意識に読みとっているからです。(引用元:ダイヤモンド・オンライン|「考える」「悩む」「時間がかかる」問題に対して、IQの高い天才はなぜ迷わず瞬時に答えを出せるのか?)IQが高い子どもの賢さには、パターン認識能力によって物事の共通点を読み取っていることが影響しているといえるでしょう。・言葉を覚えるのが早いIQの高い子どもは、会話や字の読み書きができるようになるのが、ほかの子どもに比べて早いといわれています。小児精神科医のクラウディア・ヤンケッチ氏いわく、IQの高い子どもは、脳の柔軟性が高く、ふたつの脳半球(中脳と大脳半球)を結ぶ間脳が発達しているのだそう。そのため、脳を最大限に利用することができるのだといいます。IQの高さには脳の発達も関係しているようです。・困難を乗り越える力が弱いIQの高い子どもは、賢さが目立つ反面、苦手な分野に対して向き合う力が弱い場合があります。前出のクラウディア氏いわく、IQの高い子どもは、完璧主義であるせいで、間違えることよりも諦めることを選択してしまうのだそう。そのため、困難に直面したらすぐに諦めてしまう傾向にあると言います。IQの高い子どもには、失敗は成功の源だということをしっかりと伝えてあげるべきですね。IQが高いと社会的に成功する?IQの高い子どもは学習能力が高いケースもよくみられるため、「IQが高ければ社会的に成功できるのでは?」と考える人も少なくありません。しかし、それは間違いです。東京大学名誉教授で白梅学園大学学長、日本保育学会会長の汐見稔幸氏は、次のように述べています。私たちは「文字が読める、うまくブロックを積み上げられる、三角形と四角形と五角形を区別できる」といった、目に見えて知的に賢くなったと感じる認知的な能力を重視しがちです。しかし、幼児期に認知的な能力を高めることが、その後の人生の成功や安定につながっているのか、いろいろ調べた結果、あまり関係がないことがわかってきました。大事なことは、うまくいかないときに諦めず「どうしてかな」「こうやってみよう」「これがだめなら、ああやってみよう」など、あくまで目標の達成まで頑張る姿勢を身につけることです。我慢できること、感情をコントロールする力なども大事です。(引用元:すくコム NHKエデュケーショナル|世界で注目される非認知的能力って?)IQなどで測ることのできる能力は、「認知的能力」と呼ぶのだそう。一方で、引用内で述べられているような「目標に向かって頑張る」「我慢する」「感情をコントロールする」などの能力は「非認知的能力」と呼ばれています。AI技術が発達し、グローバル化が進みゆく昨今。先の見えない社会を生き抜いていかなければならない子どもたちが伸ばすべきなのは、「やり抜く力」や「自制心」といった「非認知的能力」ではないでしょうか。***子どものIQが高いと、つい「頭が良いなら、将来レベルの高い大学にいけるかも?」「エリートになれるかも?」と期待してしまうこともあるかもしれません。しかし、育児や教育においては、IQや学校の成績といった目に見えるものばかりを気にするのではなく、「この先、子どもが生きていくために必要な力は何なのか」という目線を持つことが重要ですね。文/田口 るい(参考)こどもまなび☆ラボ|感情を書き出すとEQが伸びる!IQよりも大切な「心の知能指数」を高めようこどもまなび☆ラボ|「SQ」って知ってる?今を生きる子どもたちに「社会的指数」が重要なワケ進路のミカタ|ずば抜けたIQの天才児!?クラスにもいるかもしれない「ギフテッド」ってどんな人?All About|マシュマロ実験で判明!学力に重要なのはIQより○○All About|世界中が注目する「非認知能力・自制心」を育む方法All About|世界トップが実践!子供の「非認知能力」を育むヒントNEWSポストセブン|子供の学力、遺伝とともに母からの愛情で大きく変わるものすくコム NHKエデュケーショナル|世界で注目される非認知的能力って?ダイヤモンドオンライン|「考える」「悩む」「時間がかかる」問題に対して、IQの高い天才はなぜ迷わず瞬時に答えを出せるのか?Swiss info.ch|周囲と同化し、識別しにくいギフテッド・チャイルド
2019年07月16日自己肯定感、忍耐力、協調性、やり抜く力、自制心、共感力、リーダーシップ、誠実さ、創造性、コミュニケーション能力など、さまざまな「心の力」は、「心の知能指数」として「EQ」と呼ばれます。このEQの重要性を提唱するEQWELチャイルドアカデミーの主席研究員・浦谷裕樹先生には、過去2回のインタビューでEQが子どもにもたらす多くのメリットを語ってもらいました(インタビュー第1回、第2回参照)。今回は、子どものEQの伸ばし方を教えてもらいましょう。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/榎本壮三(インタビューカットのみ)親のかかわり方が子どものEQを左右するまず親御さんにお伝えしておきたいのは、子どものEQが高まるかどうかは親のかかわり方にかかっているということ。とくに幼児期までの子どもにとっては、親のかかわり方そのものが教育といえます。なぜなら、幼稚園でもある程度の学びはありますが、子どもが過ごす時間が絶対的に多い場所が親と接する家庭だからです。子どもがなにかの問題にぶつかったとき、真っ先に頼るのは親に他なりません。そこで親がどんな解決法、対処法を教え示すのか――。そういう実地の経験の一つひとつが、子どものEQを伸ばしていきます。見方を変えれば、子どもというのは親を見本にするということ。EQが親子間で遺伝するかどうかについては詳しい研究がまだなされていませんが、EQの傾向が親子間で似るということは明確です。親が「心の力」を示してくれなければ、子どもが「心の力」を学ぶ場を持てないからです。子どもがわがままをいって、感情を爆発させ泣き叫んでいたとしましょう。そのとき、親まで感情的になって怒ってしまえば、子どもが感情をコントロールできるようになるはずもありません。でも、親に共感力や自制心があれば、子どもに共感して寄り添い、「そういう気持ちもわかるよ」「でもこういうときはこうすればいいんじゃない?」と、対処法を教えられるのです。乳児期の母親の愛情がEQのベースをつくるそして、子どもへの親のかかわり方には、父親と母親それぞれに役割があるということも忘れてはなりません。母親は「第1の養育者」とも呼ばれます。子どもが小さいとき、とくに生まれてから1~2歳頃までのあいだに、いちばん子どもの近くにいる母親がどれだけ心穏やかに愛情をたっぷりと注ぐことができるか。それが、子どもの心の豊かさに大きなちがいを生みます。というのも、生まれてから1~2歳頃までの子どもは、「感受性期」という脳が情緒に関してもっとも学びやすい時期にあるからです。ここで、その後に伸びていくEQのベースがつくられるというわけです。そのベースとは、自己肯定感。母親に愛情を注がれることで、「自分はこの世に存在していていいんだ」と子どもは感じられる。自分の存在を肯定し、豊かな心を育んでいくようになるのです。逆に、この時期に親からほったらかしにされた、いわゆるネグレクトの状態に置かれた子どもは、情緒不安定だったり社会への適応性がなかったりといった好ましくない特徴を示すことがわかっています。子どものEQを伸ばすための父親の役割母親だけでなく、父親のかかわり方も子どもに大いに影響を与えます。それについては、国内外を問わず、いくつもの研究結果が示されています。たとえば、スウェーデンでの研究では、「父親との関係が良好な子どもは、学力が高く、良い友人関係を築け、問題行動や犯罪行為が少ない」という結果が出ています。また、カナダの研究では、「父親が子どもに多く関与すると、子どもの認知機能と学業成績が向上し、問題解決力、忍耐力、感情コントロール、責任感、社会的発達、人間関係力に好影響を与える」という結果が示されました。面白いのが、桜美林大学の山口創先生の研究です。先生の研究では、「『高い高い』『おんぶ』『肩ぐるま』を経験することで、子どもの空間認識能力、危機対処能力、身体能力への自信が高まる」ことがわかりました。注目は「空間認識能力」です。「肩ぐるま」などで普段とはちがう視点から周囲を見渡すことで空間認識能力が高まり、さらには物体に限らずものごとを多角的に見る力も高まったというのです。もちろん、「肩ぐるま」などは母親でもできるものです。でも、どちらかといえば父親がやることが多いものですよね。しかも、母親より力が強い父親がやれば、これらの遊びはよりダイナミックになり、もたらす効果も高まると考えられます。2種類の愛情を意識して使いわける父親と母親それぞれに役割があるということには、愛情にも2種類あるということが関係しています。簡単にいえば、「優しさ」と「厳しさ」です。母親の愛情というのは、子どものすべてを受け入れる、どんなときも子どもの味方になるといった「優しさ」、「応援する」というものです。一方、父親の愛情は、子どもが困難にぶつかったとき、失敗したときに、「もっとできるはずだぞ!」と挑戦へ導く「厳しさ」、「期待する」というもの。これらが愛情の両輪であり、どちらも子どもの成長にとって非常に大切なものです。もちろん、不幸にしてお父さんがいない、あるいはお母さんがいないという家庭もあるでしょう。でも、たとえひとり親であっても、ふたつの愛情をバランス良く使いわけることができれば、なんの問題ありません。あるいは、おじいちゃんやおばあちゃんが父親や母親の代わりになることもできるはずです。いずれにせよ、ふたつの愛情の存在、重要性を意識して子どもに接することが大切です。『子どもの未来が輝く「EQ力」』浦谷裕樹 著/プレジデント社(2018)■ EQWELチャイルドアカデミー・浦谷裕樹先生 インタビュー一覧第1回:幼児教育ブームのなかで今注目の「EQ、非認知能力」って何のこと?第2回:「頭の力」には「心の力」こそ必要。EQが高いと優秀な子に育つ納得の理由第3回:父親流の「厳しい愛情」が子どものEQを伸ばす。人間性と学力を高める親のかかわり方第4回:お説教は「○分以内」で。子どものEQを高める“叱り方の正解”とは(※近日公開)【プロフィール】浦谷裕樹(うらたに・ひろき)1972年7月31日生まれ、東京都出身。EQWELチャイルドアカデミー・新未来教育科学研究所主席研究員。工学博士、理学博士。京都大学理学部卒業、京都大学大学院理学研究科修士課程修了。高校時代に「人間の可能性はどこまで伸ばせるのか」との問いを抱き、学生時代より古今東西の能力アップ法を研究開始。現在は「楽しく、わかりやすく、ためになる」をモットーに全国で講演活動中。とくに参加型のトレーニングやワークを盛り込んだセミナーを得意とする。著書に『メンタルウェルネストレーニングのすすめ』(エコー出版)がある。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2019年04月05日「EQ」とは、知能指数と呼ばれる「IQ」に対して、「心の知能指数」と呼ばれる概念のこと。このEQの重要性を提唱し、『子どもの未来が輝く「EQ力」』(プレジデント社)を上梓したのが、EQWELチャイルドアカデミーの主席研究員・浦谷裕樹先生です。EQが高いと、なぜ「子どもの未来が輝く」のでしょうか。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/榎本壮三(インタビューカットのみ)「頭の力」をうまく使うにも「心の力」が必要そもそもわたしがなぜ、「EQ」に注目することになったのか――。今回はそんな話からはじめてみます。わたしは学生時代から能力開発に興味を持っていました。つまり、「人間はどこまで伸びるのか」ということを突き詰めてみたかったのです。日本の教育は、どちらかというと「どうやって底辺にいる子たちの力を伸ばして全体の底上げをするか」という発想に基づいたものです。そうではなくて、トップ層にいる人間の能力はどこまで伸びるのかということに興味があった。そんな経緯もあり、そういう研究を国内でも大きな規模でおこなっているEQWELチャイルドアカデミーに入社することになったわけです。そして、幼児や小学生、中高生の能力開発トレーニングに携わるうち、学力をはじめとしたさまざまな能力向上のベースにあるものこそEQだということに気づきました。学力を向上させる「頭の力」には思考力や記憶力などがありますが、それらをうまく使うにも「心の力」であるEQこそが必要なのです。EQの高低によって人生はまったくの別物になるEQには、自己肯定感、忍耐力、協調性、やり抜く力、自制心、共感力、リーダーシップ、誠実さ、創造性、コミュニケーション能力……など、さまざまな要素があります。これらの力に優れているかどうかで子どもの人生はまったく別のものになるということは、容易に想像できるものでしょう。EQが低ければ、まず自分の感情をうまくコントロールすることができません。そうすると、学校でも家でも問題を起こすことになる。友だちとはしょっちゅう喧嘩をするし、親のいうこともまともに聞かない。あらゆることに対するやる気も持てなくて、やるべきこともやれない。自己肯定感が低ければ、なにをやろうにも「自分はどうせ駄目だから」とマイナス思考に陥って、せっかく持っている才能を活用することもできないでしょう。一方、EQが高い子どもはどうなるか。人間関係が穏やかで、やるべきことをしっかりやれるので、まずは学校生活にすんなり順応できます。そうなると、当然、学力も向上していくことになる。興味を示して「やりたい」と思った趣味やスポーツも、すいすい身につけられる。結果的に、「優秀な子」といわれる子どもに育ちやすいということになります。そういう子どもが大人になったとき、社会に出たときのいちばんのメリットは、なにかをしようと思ったときにそれらをスムーズに実現できるということです。しかも、EQのさまざまな力を生かして、自分とまわりの人間の能力を最大限に引き出し、いいかたちで早く実現することもできる。自分の思いをかたちにできる、「自己実現」できる人間になれるのです。「自己実現」がこれからの時代のキーワードこれからの時代は、高いEQによる「自己実現」が重要なキーワードになると感じています。というのも、あらゆる状況がそう指し示しているからです。まずひとつが、「人生100年時代」に入ってきたということ。平均寿命が延び、60年も70年も仕事を続けなければならない人が増えていく。その間、技術革新はどんどん進み、つねに新しいことを学び続ける必要があります。そこで心が豊かでなければ、働き続けるモチベーションを保てないということになってしまうでしょう。もうひとつが「グローバル化社会」です。日本でも外国人労働者が急激に増えているように、これからは多種多様な人たち、異文化を持つ人たちと一緒に仕事をしていかなければなりません。さまざまな人たちとうまく協働していくには、コミュニケーション能力をはじめとしたEQの高さが求められます。加えて、とくに日本では「少子高齢化」が急激に進みます。人口が減り一人ひとりの重要性が増していくなかで並行して進むのは、「AI時代」。ちょっと考えればできるような仕事、マニュアル化できる仕事はAIが担うことになります。わたしたち人間がやるべきことは、それこそAIにはできないことしかありません。EQを生かして粘り強く考え、創意工夫し、問題解決をして、本当に自分がやりたいことを実現していくことなのです。そうできれば、新しいことを学び続け、働き続けるモチベーションも保てますし、そうするために、多種多様な人ともうまく協働しようとするでしょう。幸せとは、社会とかかわらなければ得られないそして、「自己実現」は人間としての幸せにもつながるものです。いま、「ウェルビーイング」と呼ばれる「幸福感」の研究が進んでいます。その研究によると、人が幸せを感じるためには3つの要素が大切だとされています。まずは、「体の健康」。病気がちであるより、体が元気であるほうが幸せというのは当然のことですね。ふたつ目は「心の健康」。毎日、うつうつと過ごすより、機嫌良くいきいきとしているほうがいい。これもあたりまえのことです。3つ目が大きなポイントで、これは「社会的な健康」といわれます。人間はただ心身が健康であっても、本当の意味での幸せは得られません。一人ひとり異なる自分の能力を生かして世のなかとかかわる、もしくは社会貢献をする。それができてはじめて本当に幸せだと感じることができるのです。「自己実現」とは、ただ身勝手に自分がやりたいことをやるというものではありません。幸せを得るためには、自分の能力を見定め、それを最大限に生かし、どうすればまわりの人たちによろこんでもらえるのかと考えなければならない。本当の意味での「自己実現」とは、自分が幸せになると同時に、周囲も幸せにするものなのです。『子どもの未来が輝く「EQ力」』浦谷裕樹 著/プレジデント社(2018)■ EQWELチャイルドアカデミー・浦谷裕樹先生 インタビュー一覧第1回:幼児教育ブームのなかで今注目の「EQ、非認知能力」って何のこと?第2回:「頭の力」には「心の力」こそ必要。EQが高いと優秀な子に育つ納得の理由第3回:父親流の「厳しい愛情」が子どものEQを伸ばす。人間性と学力を高める親のかかわり方(※近日公開)第4回:お説教は「○分以内」で。子どものEQを高める“叱り方の正解”とは(※近日公開)【プロフィール】浦谷裕樹(うらたに・ひろき)1972年7月31日生まれ、東京都出身。EQWELチャイルドアカデミー・新未来教育科学研究所主席研究員。工学博士、理学博士。京都大学理学部卒業、京都大学大学院理学研究科修士課程修了。高校時代に「人間の可能性はどこまで伸ばせるのか」との問いを抱き、学生時代より古今東西の能力アップ法を研究開始。現在は「楽しく、わかりやすく、ためになる」をモットーに全国で講演活動中。とくに参加型のトレーニングやワークを盛り込んだセミナーを得意とする。著書に『メンタルウェルネストレーニングのすすめ』(エコー出版)がある。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2019年04月04日いわゆる知能指数と呼ばれる「IQ」という言葉は誰でも知っていますが、それに対して、「EQ」というものがあります。これは「Emotional Intelligence Quotient」の略で、日本語では「心の知能指数」と訳される概念のこと。このEQの重要性を提唱し、『子どもの未来が輝く「EQ力」』(プレジデント社)を上梓したEQWELチャイルドアカデミーの主席研究員・浦谷裕樹先生に、あらためてEQとはどんなものかを教えてもらいました。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/榎本壮三(インタビューカットのみ)幼児教育の有無でその後の人生に現れた大きなちがいかつては社会で活躍して幸せであるためには、IQが大切だとされていました。でも、どんなにIQが高くて高学歴を手にしていても社会で活躍していない人、ハッピーではない人も少なくなかった。本当に重要なものはIQではないのではないか?――。そんな疑問を持つ人たちが現れたわけです。2000年にノーベル経済学賞を受賞した、シカゴ大学のジェームズ・ヘックマンという経済学博士もその疑問を持ったひとり。博士は、米国ミシガン州の貧困地域で、2年間の幼児教育を受ける60名のグループと、そうではない60名のグループを追跡調査しました。その幼児教育とは、幼稚園に通いながら、先生が週に1回の家庭訪問をするというもの。家庭訪問では、子どもへの接し方などについて親御さんに事こまかくアドバイスをしました。すると、幼児教育を受けたグループは、そうではないグループに比べて、将来的に学力、学歴、年収、持ち家率が高くて、生活保護受給率、犯罪率が低いという結果が出た。ほんの2年間の幼児教育によってその後の人生に大きな差が現れたことで、幼児教育の重要性に注目が集まることとなったのです。幼児教育によってもたらされたちがいこそ「EQ」そこで、みなさんも関心が高まると思います。幼児教育によって、子どもたちにどんな変化が起きたのか、と。ジェームズ・ヘックマン博士の研究では、幼児教育によってたしかにIQも上がったこともわかりました。ただ、それは一時的なものに過ぎなかった。幼児教育が終わったそのあと、両グループとも同じ教育を受けはじめると、8歳の時点ではIQにはほとんど差がなくなったのです。そして、両グループに大きなちがいが出たものこそ、EQだったのです。EQとは、一般的になりつつある言葉だと「非認知能力」と呼ばれるものにあたります。知能テストで測定できるIQに対して、これといった測定法がない「心の力」です。具体的には、自己肯定感、忍耐力、協調性、やり抜く力、自制心、共感力、リーダーシップ、誠実さ、創造性、コミュニケーション能力など、さまざまな要素があります。ひっくるめていえば、「人間力」といっていいでしょう。そして、これらの力が高いほど学力が高くなることもわかりました。ある研究によって、IQが高いからといってEQが高くなるとは限らないが、EQが高ければIQはさらに高くなるということがわかったのです。ただ、そんなことは研究するまでもなく想像できますよね。自己肯定感が高くて、忍耐力ややり抜く力、自制心があれば、勉強だってできるようになる。学力をはじめ、人間としてのさまざまな力を伸ばしていく「土台」にあたるのがEQなのです。「EQ」への注目度が高まっている背景いま、このEQ、非認知能力が日本でも大きな注目を集めるようになってきました。書店の教育関連書籍のコーナーに行くと、「非認知能力」という言葉はいくらでも見つけることができます。それには、幼児教育ブームも大きな要因となっているでしょう。いまや、幼児教育は「する・しない」ではなく、「するのがあたりまえ」「どんな幼児教育をするか」というところに移ってきています。そこで、EQ、非認知能力を伸ばす教育というものが注目されているわけです。また、2020年からはじまる教育改革もEQが注目を集めることとなった要因のひとつでしょう。新たな学習指導要領では、学力の3要素として、幼児の場合は「知識・技能」「思考力・判断力・表現力」、そして「学びに向かう力・人間性」を掲げています。3つ目の要素である「学びに向かう力・人間性」は、新たな大学入学共通テストの出題指針としては「主体性・多様性・協働性」という表現になっています。これら3つ目の要素は、結局のところ、EQといっていいものでしょう。さらにEQの注目度が高まっている背景としては、時代の潮流というものも大きいように感じます。かつての大学入試は「富士山型」といえました。日本なら東大、世界ならオックスフォード大やハーバード大というひとつの「頂点」に向かうことが最良とされてきたのです。でも、現在は、「頂点」がいくつもある「八ヶ岳型」に変わりつつあるといえるでしょう。大学側は「うちの大学ではこういうことを教えるから、こういう学生がほしい」とそれぞれ異なる特徴を打ち出す。受験生も「こういうことを学びたいからこの大学に行きたい」と考える。価値観が多様化し、大学側、受験生側の双方が「マッチング」を重視するようになってきたのです。そこで、「自分はなにをしたいのか」「どんな能力を伸ばしていくべきなのか」といったことがわからなければ自分に合った大学を見つけることができず、その先の人生を充実させることも難しくなるでしょう。そして、そういった自分を見つめる力、自分を客観視する力もEQに含まれるものなのです。『子どもの未来が輝く「EQ力」』浦谷裕樹 著/プレジデント社(2018)■ EQWELチャイルドアカデミー・浦谷裕樹先生 インタビュー一覧第1回:幼児教育ブームのなかで今注目の「EQ、非認知能力」って何のこと?第2回:「頭の力」には「心の力」こそ必要。EQが高いと優秀な子に育つ納得の理由(※近日公開)第3回:父親流の「厳しい愛情」が子どものEQを伸ばす。人間性と学力を高める親のかかわり方(※近日公開)第4回:お説教は「○分以内」で。子どものEQを高める“叱り方の正解”とは(※近日公開)【プロフィール】浦谷裕樹(うらたに・ひろき)1972年7月31日生まれ、東京都出身。EQWELチャイルドアカデミー・新未来教育科学研究所主席研究員。工学博士、理学博士。京都大学理学部卒業、京都大学大学院理学研究科修士課程修了。高校時代に「人間の可能性はどこまで伸ばせるのか」との問いを抱き、学生時代より古今東西の能力アップ法を研究開始。現在は「楽しく、わかりやすく、ためになる」をモットーに全国で講演活動中。とくに参加型のトレーニングやワークを盛り込んだセミナーを得意とする。著書に『メンタルウェルネストレーニングのすすめ』(エコー出版)がある。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2019年04月03日頭の知能指数を表す「IQ」とは別に、心の知能指数を表す「EQ」という言葉があることをご存知でしょうか?昨今、子どものEQを伸ばすことはIQをアップさせること以上に重要だとされており、そのためのツールのひとつとして日記が挙げられています。今回は、EQの意味やEQを伸ばすことで得られる能力について、そしてなぜ日記をつけることでEQが伸びるのかについて解説していきます。心の知能指数 EQとは?EQは心の知能指数、すなわち「生きる力」をどれくらい持っているかを表しています。EQが高いほど、自分の気持ちをコントロールする力や、相手の気持ちを理解する力を持っているといえるでしょう。人間は、自分が置かれている状況や精神的な影響によって、考えや発言が変わることがありますが、EQが高ければ感情をコントロールしたり、相手の気持ちを考えたりするのをスムーズにこなせます。そのため、EQが高い人はコミュニケーション能力が高く、またポジティブな環境を作り出せるのです。逆にEQが低いと、自己中心的な振る舞いをしてしまったり、他人のミスを許せなくなったりします。自分の気持ちが抑えられず、友達の気持ちも理解できないので、ケンカやトラブルを引き起こしたり、集団生活になじめなかったりすることもあるでしょう。一方、頭の知能指数であるIQは、平均値を100として115~130程度であれば高いとされ、85以下ですと低いとされます。また、70以下の場合は日常生活に支障が出てくる可能性も。ただし、テストで100点を取るなど一般的に成績が良いとされている場合でもIQが高いとは限らず、あくまでもひとつの目安となります。かつてはIQが高い=優秀であるという認識が強かったものの、IQが高い人は特定の分野では優れていてもコミュニケーション能力や協調性に欠けている、自分が興味のあること以外には積極的に取り組めないという指摘も出てきました。さらに、人々の生き方が多様化している現代では、他者への共感性や理解力が求められる傾向が高まっているため、EQはIQ以上に生きていく上で欠かせないものとして重視されるようになったのです。とはいえ、EQが示している「感情のコントロール能力や人の気持ちを考える力」は、本来誰にでも備わっている力です。そのため、EQが高いということは「自分の中のEQをしっかりと発揮できている」ということ。逆にEQが低いということは「まだ自分の中のEQをうまく発揮できていないだけ」という見方もできます。EQは工夫次第で伸ばしていくことが可能なのです。EQをはぐくむための効果的な日記のつけ方子どものEQをはぐくむための方法としては以下の方法があります。■落ち着ける空間で、絵本の読み聞かせや音楽鑑賞をする■勉強や読書などは、まず親がお手本となって行う■普段の生活の中で、より愛情を持って接することを意識する■日々の出来事を日記として綴るこの中でもおすすめなのが、日記をつけることです。EQを高めるためには、自分の中にある喜びや楽しさといったポジティブな感情だけでなく、怒りや悲しみといったネガティブな感情とも冷静に向き合う必要があります。ネガティブな感情をうまく発散できなかったり、心に溜め込む癖がついてしまったりすると、ある日突然感情が爆発する可能性もあり、精神面に悪影響を及ぼしてしまうためです。日記にできる限り素直な感情を書き出し、その内容について客観的に向き合うことは感情をコントロールする訓練になるので、EQの向上に非常に効果的ですよ。また、日記には「今日は○○をして、△△だと思った」などと漠然とした内容を綴るのではなく「なぜそう思ったのか」という理由も忘れずに加えることが大切。より具体的な内容にすることで、自分の感情と冷静に向き合うことができるようになります。親子で作る、EQを高めるための日記やり方をご紹介しましょう。まず親が子どもの感情を引き出すための質問をし、その答えを日記にしていきます。質問内容は以下の通りです。まだ日記が書けない年齢の子どもや、文章を書くのが苦手な子どもの場合は、まずは親がサポートしてあげましょう。①その日の出来事回答例「友達の○○ちゃんとお店屋さんごっこをした」②それをしてどう思ったか回答例「楽しかった、明日も遊びたいと思った」最初は①②の内容のみ、2行程度でいいので日記として書く習慣を作りましょう。②に答えることに慣れたら、少し踏み込んだ質問をしていきます。③そんな自分をどう思うか回答例「また遊べるように、○○ちゃんを誘いたい」④これからどんな自分になりたいか回答例「○○ちゃんと仲良しな自分でいたい」ある程度、日記を書き溜めることができたら、親子で「こんなことがあったね」「この時はこう言ってたけど、いまはどう思う?」と、ぜひ振り返ってみてください。こうした振り返りもまた、自分を客観視することや自分が置かれている環境を冷静に分析することにつながります。***子どもがさまざまな経験をして成長していく過程では、精神面に大きく左右されることもあります。しかし、EQをはぐくむことで感情との付き合い方がうまくなり、子ども自身が生きやすくなることにもつながります。毎日の隙間時間を利用して親子で日記をつけ、子どものEQを伸ばしましょう。文/田口るい(参考)Study Hacker こどもまなび☆ラボ|時代はIQからEQへ……。心の知能指数「EQ」って何?ダニエル・ゴールマン著,土屋京子訳(1998),『EQ こころの知能指数』,講談社.みんなのお金ドットコム|EQとは?心の知能指数?EQが高い人・低い人の特徴や高める方法!
2019年01月21日IQが頭の良さを表す知能指数であるのに対し、EQは「生きる力」をどれくらい持っているかを表す指数です。時代の移り変わりの中で、周りの要求に応えられる「感性」が必要とされるようになり、IQの高さよりもEQの高さが求められ始めています。そして、幼少期の親との関わりは、EQ教育の第一歩なのです。■参照コラム記事はこちら↓観劇に出かける親子は驚異的に少ない。メリットだらけの演劇鑑賞、しないなんてもったいない!
2018年11月25日IQが頭の良さを表す知能指数であるのに対し、EQは「生きる力」をどれくらい持っているかを表す指数です。時代の移り変わりの中で、周りの要求に応えられる「感性」が必要とされるようになり、IQの高さよりもEQの高さが求められ始めています。そして、幼少期の親との関わりは、EQ教育の第一歩なのです。■参照コラム記事はこちら↓時代はIQからEQへ……。心の知能指数「EQ」って何?
2018年11月11日「心の知能指数」という言葉を聞いたことがありますが?仕事や毎日の生活をよくするために必要な能力なのです。この「知能指数」を高めることで、毎日の振舞い方を上手にする事ができ、毎日を”気分良く”過ごせるようになるのです。そのヒントを見てみましょう。「心の知能指数」って何?Emotional intelligence「心の知能指数」という言葉を今までに聞いたことがありますか?これが何を指すのか、またはこの指数がとても大切なことだと言うことを知っていますか?「心の知能指数」は、様々な研究で発表されているもので精神科医Daniel Goleman医師によって世界に広く知れ渡るようになりました。彼はこの心の知能指数をテーマにした書籍をたくさん執筆しました。1995年に書かれたテーマの中では社会的知能指数、リーダーシップ性、心の知能指数についてまとめています。では、一体これらがどうして私たちを幸せにしてくれるのでしょうか。「心の知能指数」が大切な訳は?この「心の知能指数」が大切なことで、どのように影響を与えかを知るためには、まず、感情一つ一つが私たちの生活に大きな影響を与えていることを知っておかないといけません。幸せに思う気持ちから悲しく思う気持ちまで、感情の一つ一つが私たちの気分を変え、1日の方向を決めます。例えば、不安心や恐怖心は、危機から自分自身を守るために起こる感情です。また、苛立ちは、あなたにとって良くない状況や正しくないことに反抗し、立ち向かうエネルギーとなります。心の知能指数は、自分の感情を知ることから生まれます。Goleman氏は、私たちの脳の深い部分がこれらの感情を作っていると発表しました。例えば、速度の速い車が急接近してきたときは、自分の意思とは関係なく条件反射的に逃げようとしたり、身を守ろうとします。Goleman氏はこのように記しています。「私たちは、いろいろな見解から来る”2つの脳”を持っていて、”2つの考え方”、”2つの違った知能”からできています。日々の行動や振る舞いは、この”2つの働き”によって行われています。この心の知能指数がないと、毎日の生活の質が良くなりません。」心の知能指数とは「今ある状態から同時に生まれる感情に対しての認識、自分での気づきのレベル」を指しています。つまり、自分の感情に対して気づき認識をすることで自分を知り、日々の中でどのように振る舞うべきなのかがわかるようになり、生活の質を上げることができ、成功へと導くということなのです。「心の知能指数」を高めるためには?心の知能指数は、毎日を過ごしている中で仕事の出来事や人間関係などにおいて毎回起こる出来事についてとても必要なものとなっています。仕事で成功するには、ただ能力があり賢いだけではいけません。この心の知能指数の高さで、仕事の質や結果を変えることができるのです。例えば、自分の振る舞い方をコントロールしたり、フラストレーションを感じながらもその理由を明確にし、そのフラストレーションをエネルギーとして問題解決に充てるように自分で計画を立てることが必要ですよね。これらが心の知能指数が左右しているのです。心の知能指数を高めるには、まず初めに自分の感情をしっかりと表に出し、表現すること。その次に自分の感情のその一瞬一瞬に気づくようにすること。この2つを試してみましょう。このように努力をすることで、毎日を軽くし、周りの人との付き合い方まで変わってきて、不安なども解消しやすくなります。仕事においては、この心の知能指数が一緒に仕事をする仲間にとっても良い環境や関係を作り出し、リーダーシップにつながることもあります。毎日を”気分良く”過ごすには?良い気分は、辛い時にしっかりと改善できる方法を思いつく能力がある人が得やすく、問題解決に向けて目の前にあることをシンプルにすることができる能力から生まれます。客観的に物事を見ることが出来る人は、この知能指数を上げることができ、落ち込んだ気分や無気力感を吹き飛ばす能力があります。毎日を気分良く過ごすには、この心の知能指数を高めることが必要です。ではいくつかの今日からできることを見てみましょう。自分の感情に気づこう。自分の感情や気持ちに気づく事は、簡単なことではありません。その時、毎日を過ごしながら感じる気持ちに敏感になってみましょう。これを続けていると、自分の感情の変化を瞬時にいつでも感じ取れるようになってきます。まず初めに、ダイアリーを作り、心の中にある気持ちを書き出し、自分で分析してみると良いでしょう。自分の気持ちをはっきり言えるようにしよう。一度、自分の気持ちしっかり自分で理解しておくと、言葉で表現する時にも伝えやすくなります。共感できる心を持とう。自分の周りの人の気持ちや立場になり、共感し、分かろうとする姿勢は大切です。尊敬する気を持って接してみましょう。社会的な能力を高めよう。毎日を上手に過ごしている人は、社会の中で振る舞い方が上手な人が多いです。これは、自分の気持ちや周りの人の気持ちを読み取ることが出来、そのシチュエーションに合わせた行動や言動が取れるため、良い関係を保つことができるからです。心の知能指数は、自分の感じる感情に素直に聞き取り、その気持ちがどこから生まれたのかを知ることを目的とします。そのことが、周りの人の心の変化にも気づけるようになり、人の立場になって気持ちを共感しあうこともできるようになります。こうすることで周りとの調和をとることができ、ストレスの根源を改善することにもつながるのです。
2017年05月17日発達指数とは出典 : 発達指数とは、日常生活や対人関係などにおける子どもの発達の規準を数値として表したしたものであり、DQ(Developmental Quotient)とも言います。子どもの成長には個人差があり、一人ひとり異なる特性を持っています。しかし個人差がある一方で、発達の道筋や順序には共通して見られる特徴があります。子どもは成長するにつれて、視野を広げ、認識力を高め、まわりの人との関わりを深めていきますが、その経験が次の成長のステップにつながります。子どもが成長していくには、それぞれの発達段階に合った生活を送ることが大切です。そのため、発達を客観的に知るものさしの一つとして発達指数が使われています。発達指数は発達検査と呼ばれる検査によって知ることができます。発達検査で分かる「発達年齢(発達の状態がどのくらいの年齢に相当するか)」を「生活年齢(実年齢)」で割り、100を掛けて算出します。発達年齢と実際の年齢が同じ場合、発達指数の値は100と計算できます。そのため平均は100前後とされていますが、発達指数の値だけで子どもの発達状態を判断をすることはありません。あくまでものさしの一つであり、発達検査から分かる能力のバランスや日常生活の様子などを総合して子どもの発達状態を把握します。参考:子どもの発達段階ごとの特徴と重視すべき課題|文部科学省参考:発達検査とは?|てんかん情報センター発達指数を知ることができる年齢は?出典 : 発達指数を計ることができる検査としては、主に「新版K式発達検査」と「遠城寺式乳幼児発達検査」の2つが挙げられます。新版K式発達検査であれば生後100日後から成人まで、遠城寺式乳幼児発達検査であれば0歳0ヶ月から4歳8ヶ月まで、発達指数を計ることができます。適用年齢は幅広いですが、主に就学前の子どもが発達検査を受けることが多いです。小学生以上であれば、発達状態を計るよりも、知能検査によって知能を計るほうが一般的だからです。ただし知的障害がある場合など、知能検査だけでは発達の状態や障害の度合いを把握することが難しいケースでは、成人でも発達検査を受けることがあります。参考:発達障害児支援とアセスメントに関するガイドライン|厚生労働省発達指数を調べる目的出典 : 発達指数を調べる主な目的は、1. 子ども一人ひとりの発達状況を理解すること2. 発達段階に合った適切な学習指導や支援を受ける際のヒントを知ることの2つです。注意点として、乳幼児においては、検査を受ける際の子どもの状態や環境に左右されるため、発達指数の値は変動しやすいといったことが挙げられます。そのため1歳6ヶ月健診などにおいて、発達指数の値が低く出てしまったために、軽度の知的障害の可能性を指摘される場合もあるようです。しかし知的障害があるかどうかの判断は、発達検査や知能検査の結果を長期的に把握しながら行う必要があります。発達指数はあくまで発達状態を知るものさしの一つです。発達指数だけでなく、発達検査から分かる発達の特徴、検査を受けている時の様子、日常生活の様子を総合して発達状態を判断することが大切です。発達指数の値だけにこだわるのではなく、定期的な検査結果から分かるお子さんの発達のペースや発達の特徴に注目するようにしましょう。発達指数と知能指数の違い出典 : 発達指数が子どもの発達の基準を数値化したものであるのに対し、知能指数とは人の知的能力(認知機能)の基準を数値化したものです。ここではそれぞれがどのように使われているのか、適用年齢に差はあるのか、検査内容の違いについてご紹介します。・目的発達指数は一人ひとりの子どもの発達状態を知る、知能指数は知的能力の発達に遅れがあるかどうかを知るために使われるものです。適切な学習指導や支援を受ける際のヒントを知るという目的はどちら検査にも共通していると言えます。知能指数と発達指数のどちらを用いるかは、年齢や障害の程度、疾患の種類などによって変わってくるため、専門家の判断によります。また知能検査と発達検査の両方を受ける場合もあります。・適用年齢発達指数は0歳から成人まで計ることができます。就学前の子どもが発達検査を受けることが多いですが、成人でも発達や障害の程度を知るために発達検査を受けることがあります。一方、知能指数は2歳から成人まで計ることができます。子どもに発達障害がある場合、乳幼児期からその兆候が表出することも少なくありません。しかし発達初期の乳幼児の発達状態を、通常の知能検査によってとらえることは困難だとされています。乳幼児は心理的、身体・運動的、社会的側面の発達が十分でないため、知能のみを検査によって測定することは難しいからです。・検査内容発達指数は発達検査によって知ることができ、知能指数は知能検査によって知ることができます。発達検査はガラガラや積木、ミニカーといった乳幼児にとってなじみのある材料を用いた検査です。それに対して知能検査は主に小学生以上を対象としているため、言語や書字などを用いて回答する問題が多くあります。知能指数も発達指数もその数値だけで、障害や疾患の確定診断をすることはありません。発達検査や知能検査を受けたとしても、診断を受けるかどうかは、本人や保護者の希望によります。乳幼児健診などにおいて、発達の遅れの可能性を指摘された場合も一度の検査だけでなく、定期的な発達検査の結果によって疾患や障害を見分けたり、診断していく場合が多いようです。さらに2歳からは知能検査を受けることができるため、だんだんと知能検査を中心に受けることになります。障害や疾患によっては、年齢が上がらないと見分けられない場合もあるため、長期的にお子さんの成長を把握していくことが大切です。発達検査を受けることで広がるメリット出典 : 発達指数と発達検査から分かることを組み合わせてどのようなメリットがあるかご紹介します。・相談機関で子どもの成長に対するアドバイスをもらえる児童相談所などの相談機関では、「検査報告書」をもとに今後のお子さんの成長に対してアドバイスをもらえます。「検査報告書」は発達検査を受けたあとにもらえるもので、検査結果や今後日常生活において注意すべきことが記載されています。発達指数の値は「数値結果」欄にあります。相談機関によるアドバイスによって、例えばお子さんの苦手な部分に対し、「なぜ苦手なのか」を知ることができます。また苦手なことだけでなく、お子さんの検査に取り組む姿勢やプロセスなども教えてもらえるため、「総合的にどう成長しているか」を把握することができます。・小学校就学のヒントを得ることができる発達検査から分かることを小学校就学の際に活かすことができます。家庭では特に気になることがない子どもでも、幼稚園などで集団生活に参加することで困りごとが現れる場合もあります。そのような場合、小学校就学を前にして不安になる保護者の方も少なくないようです。お子さんの発達に気になる点があれば発達検査を受け、早めにお子さんの得意・不得意を把握しておくことで、小学校就学後にもどのような支援をしていけば良いか、検討しやすくなるでしょう。さらに発達検査の結果や発達指数の値によっては、療育手帳をもらえる場合があります。療育手帳があることで、特別支援学級といった就学の選択肢を広げることができます。療育手帳については、記事の後半で詳しくご説明します。発達指数を知りたい時は?出典 : 小さいお子さんの場合は、乳幼児健診の際に相談してみましょう。乳幼児健診では、お子さんの身長・体重測定や診察のほかに、日頃の疑問点や悩みごとについて質問できます。特に保健センターで受ける場合は、医師、保健師、心理士などの専門のスタッフに相談することができます。また乳幼児健診では、発達の遅れの可能性を見極める精密検査が必要かどうかを判断するスクリーニングが行われます。スクリーニングにおいて気になる兆候が見られた場合は、保健機関での相談、発達検査の受検、医療機関での2次スクリーニングなどをすすめられることがあります。そのほかで発達検査の受診を検討する際は、まずはお住まいの地域にある身近な相談窓口に行くと良いでしょう。子どもか大人かによって、行くべき相談機関が違うので、以下を参考にしてみてください。【子どもの場合】・保健センター・子育て支援センター・児童相談所・発達障害者支援センターなど【大人の場合】・発達障害者支援センター・障害者就業・生活支援センター・相談支援事業所など自宅の近くに相談機関がない場合には、電話での相談をすることができる場合もあります。発達検査は、公的病院や民間病院で受けることができます。精神科や臨床心理士による検査が受けられる病院を受診すると良いでしょう。「児童発達支援センター」などで受けることもできます。発達検査の受け方、費用は、検査内容や病院によって異なります。検査は基本的に誰でも受けることができますが、特に発達に関して気になる点がないと医師が判断した場合は自費となります。検査を受ける際は、まず病院に問い合わせてみましょう。さらに発達検査の結果を受けて、専門機関で確定診断を受けたい場合は発達検査を受けた機関に問い合わせるか、もしくは改めて相談機関(保健センター、子育て支援センターなど)に問い合わせてみてください。発達指数を知ることができる発達検査の内容出典 : 発達検査にはさまざまな種類がありますが、この章では主に発達指数を知ることができる2つの検査について紹介します。これらの検査は、任意で受検することも可能ですが、基本的には相談機関や病院ですすめられて受検することが多いです。適応年齢:生後100日後~成人検査項目:328項目(「姿勢・運動領域」、「認知・適応領域」「言語・社会領域」の3領域で構成)それぞれの年齢において、一般的と考えられる行動や反応と、対象となる方の行動や反応が合致するかどうかを評価する検査です。検査は、「姿勢・運動」(P-M)、「認知・適応」(C-A)、「言語・社会」(L-S)の3領域について評価されます。なお、3歳以上では「認知・適応」面、「言語・社会」面の検査に重点が置かれます。検査結果としては、この3領域の「発達指数」と「発達年齢」が分かります。適応年齢:0歳0ヶ月~4歳8ヶ月検査項目:151項目(移動運動、手の運動、基本習慣、対人関係、発語、言語領域)「運動」「社会性」「理解・言語」の3領域6の質問項目から構成されています。上記の発達検査は発達指数や発達の全体像を知る検査です。これらの検査結果をふまえたうえで、特定機能の発達を計る検査と組み合わせることもあります。なぜなら発達指数の値が正常だった場合でも、異なる検査によって発達における課題を見つけることができるからです。例えばIPTA言語学習能力診断検査であれば、学習障害や言語発達の遅れを見つけることができます。発達検査を受けてもお子さんの発達に心配な点がある場合は、他の検査を検討してみても良いでしょう。発達指数の値によって療育手帳をもらえることも出典 : 発達指数の値だけで受けられる支援はありませんが、発達指数の値は療育手帳の取得判定の際に参考とされます。療育手帳は、児童相談所または知的障害者更生相談所において知的障害であると判定された場合や、知能指数が75以下(自治体によっては70以下)の場合にもらうことができるとされています。乳幼児の場合は、知能指数の代わりに発達指数を指標とすることができます。療育手帳を貰う流れとしては、まず発達検査を受けて発達指数を知り、指定された医師による診断書を用意する必要があります。注意点として、知的障害の程度は年齢とともに改善が見られることがあるため、療育手帳の更新ごとに障害の等級が変わるということが挙げられます。特に乳幼児においては、発達指数の値は変化しやすいので、更新期限までに必ず再判定を受け、適切な支援を受けられるようにしましょう。障害の判定は発達指数に加えて、日常生活における能力を総合して行われます。療育手帳の基準は地域によって異なりますが、参考までにここでは東京都が交付している「愛の手帳」の例をご紹介します。◇判定基準知能測定値、運動、社会性、意思疎通、身体的健康、基本的生活の6項目を0歳~6歳の子どもの判定基準としています。知能測定値として、知能指数や発達指数を用います。◇区分知能指数や発達指数の値と日常生活における能力を総合し、最重度~軽度の4区分に判定されます。参考:愛の手帳|東京都福祉保健局療育手帳を貰うことで以下のようなメリットがあります。・保育園入園時など保育・教育面での援助・公共交通機関などの割引・レジャー・スポーツ施設などの割引・給付・税の減免や控除に役立つ・就労に向けての支援さらに療育手帳を持っていることで特別支援教育を受けたい際に役立ったり、特別児童扶養手当を貰えたりする場合もあります。自治体によって異なるため、地域の相談機関に相談してみることをおすすめします。まとめ出典 : 発達指数はあくまで発達の度合いを計るものさしの一つです。発達指数の値が低いからといって障害があると決めつけることはできませんし、年齢によって改善されることもあります。そのため発達指数の値だけを見て思い込みをせず、発達検査から分かるお子さんの得意・不得意にも注目し、サポートにつなげることが大切です。客観的、総合的に成長を捉えることで、お子さんに合った学習指導や支援を見つけることができるでしょう。お子さんの発達が気になる場合は、児童相談所などの相談機関に相談し、長期的にお子さんの成長を把握していくようにしましょう。岩﨑 清隆・岸本光夫/著『発達障害の作業療法実践編』2015年三輪書店小山正/著『乳幼児臨床発達学の基礎』2006年培風館/刊
2017年01月09日知能指数とは出典 : 知能指数とは、人の知能の基準を数値化したものであり、IQ(intelligence quotientの略)と言うこともあります。知能指数は、知能検査と呼ばれる検査によって計ることができます。小学校入学後のお子さんが受検する場合が多いですが、知能検査の種類によっては2歳から受検することができます。また検査結果は、一人ひとりに合った支援や学習指導の方向性を検討するヒントとして使われます。知能指数の値として、現在は偏差IQというものが使われています。偏差IQは「同年齢の集団においてどの程度の発達レベルなのか」を把握するために、年齢別の平均値を基準として知能指数を算出したものです。以前は精神年齢(知的発達を示す年齢)/ 生活年齢(実年齢)×100という数式が使われていました。しかし年齢が高くなるにつれて値が低く算出されるという問題が発見されたため、単純な計算式で知能指数を算出することはなくなりました。参考:櫻井茂男/著『たのしく学べる発達心理学』2010年 有斐閣/刊知能指数を調べる目的は?出典 : 知能指数を調べる目的は、以下の3点です。1. 適切な学習指導や支援を受ける際のヒントを知る2. 疾患や障害の有無を鑑別をするヒントを得る3. 知能の遅れがあるかどうかを知る知能指数の結果は、療育手帳を取得する際や、特別支援学校での教育を受ける際の判断材料の一つとして使われています。※また自閉症スペクトラム障害やADHDを見分ける際や知的障害の指標にも、知能指数を用います。※しかし、知能指数だけ疾患や障害の有無を判断することはありません。医師の診断を受ける際には、知能検査の結果だけでなく、直接の問診や行動観察、その他の検査結果などが参考にされます。そうして見えてきた個人の特性や困難状況を総合的に判断して、疾患・障害の診断が下されたり、支援、治療の判断がなされるのです。参考:願興寺礼子・吉住隆弘/著『心理検査の実施の初歩』 2011 年ナカニシヤ出版/刊知能指数の値は、どのように評価されるの?出典 : 知能指数(IQ)は、知能を計るものさしの一つとして広く使用され、一般的な言葉としても受け入れられています。一方で、一口に「知能指数」と言っても、その数値に対する評価基準はさまざまです。ここでは『発達障害事典』が定める知能指数の分類、WHOが定める知的障害の基準、厚生労働省が定める障害の程度・判定基準をご紹介します。『発達障害事典』(2011年・明石書店刊)によると、IQの値による知能評価の分類は以下のような基準になっています。・130以上きわめて優秀・120~129優秀・110~119平均の上・90~109平均・80~89平均の下・70~79境界線級/ ボーダーライン・70未満知的障害世界保健機関(WHO)の『ICD-10』(『国際疾病分類』第10版)では、知的障害の程度基準を、以下のように定義しています。・50~69軽度知的障害・35~49中度知的障害・20~34重度知的障害・20未満最重度知的障害厚生労働省は、知的障害の程度や判定基準について、以下のように定義しています。ただし、厚生労働省の基準では、知能指数だけでなく日常生活能力の水準も加味して、知的障害の程度を判断するとしています。◇知的障害の程度の判定に、基準となる知能指数の範囲・51~70軽度知的障害・36~50中度知的障害・21~35重度知的障害・20以下最重度知的障害◇障害の程度及び判定基準: 重度(A)とそれ以外(B)に区分重度(A)の基準① 知能指数が概ね35以下であって、次のいずれかに該当する者・食事、着脱衣、排便及び洗面等日常生活の介助を必要とする。・異食、興奮などの問題行動を有する。② 知能指数が概ね50以下であって、盲、ろうあ、肢体不自由等を有する者それ以外(B)の基準重度(A)のもの以外◇療育手帳取得の際に、基準となる知能指数の値標準化された知的検査によって測定された知能指数(IQ)が75以下であること。(70以下に規定している自治体もある)知能指数が高い=頭が良い?―心理学からみる「知能」の広がり出典 : 一般的に、「IQが高い・低い」というような言葉はよく使われますが、それでは知能指数(IQ)が高い=知能が高い・頭が良いということになるのでしょうか。心理学の視点から「知能」というものを見てみると、一概にそうとは言いきれない広がりを持っています。ここでは、知能の様々な定義のうち、いくつか例をご紹介します。・「目的別に行動し、合理的に思考し、効率的に環境を処理する個人の総体的能力」(アメリカの心理学者・デイヴィッド・ウェクスラーによる定義)・「言語、数、空間、記憶、推論、語の流暢さ、知覚」(アメリカの心理学者・サーストンによる定義)・「言語的知能、論理的数学的知能、空間的知能、音楽的知能、身体運動的知能、対人低知能、博物的知能、内省的知能」(アメリカの心理学者・ガードナーによる定義)既存の知能検査で測定できるのは、主に言語的機能や論理数学的機能と定義される能力です。しかし、上記で示した心理学的アプローチから「知能」を捉えると、知能検査で計ることができる能力は知能の一部でしかないとも考えられます。つまり知能指数が高いと「頭が良い」とは単純に言い切ることはできず、「言語的・論理数学的機能において優れている」ということなのです。逆に知能指数の値が低いからといって、知能指数で測定できる能力以外の領域で、高い能力を発揮する子どももいます。知能指数の値だけに振り回されることなく、知能指数を参考に、一人ひとり得意分野・不得意分野を上手に把握していくことが大切です。参考:櫻井茂男/著『たのしく学べる発達心理学』2010年 有斐閣/刊知能指数における「境界領域」とは出典 : 「境界領域」とは知能指数が70~79の領域のことを言います。前述した判定基準の通り、知能指数が70以上である場合は知的障害とは判定されにくいため、「境界領域」の方は療育手帳が取りづらいといった現状があります。また、知能指数では「境界領域」にあたり知的障害とは判定されない子どもでも、発達障害の特性がある場合もあります。例えば学習障害や注意欠陥・多動性障害、広汎性発達障害が挙げられます。発達障害があるかどうかは、知能検査や心理検査の結果、普段の様子を長期的に見て判断する必要があります。藤永保・森永良子/著『子育ての発達心理学』において、以下のような例が挙げられています。ADHDの子どもの中にはWISC-III検査で低学年からの高い評価をされる者も少なくないが、就学前は境界領域の知能レベルを示すものは多い。これらのADHDの多くはADHDがコントロールされるにしたがって境界領域知能から平均範囲、あるいは高機能に入っていく例もある。したがってADHDを伴う知的境界領域児は経過観察が必要である。ADHDは刺激に過反応する傾向があり、適切な刺激をインプットすることが困難である。このタイプのADHDではADHDへのコントロールの発達が認知の発達、社会的適応に影響を与える。(藤永保・森永良子/著『子育ての発達心理学』2005年大修館書店/刊p.178より引用)しかし、知能指数が「境界領域」と測定されたり、発達障害の傾向がある子どもであっても、家族や社会の支援により社会的自立に向けた力をつけていくことが可能です。成長が遅れがちな部分だけに焦点を当てるのではなく、持っている能力を評価し、伸ばしていく支援が大切です。知能指数を調べることは、障害の有無を見極める上でどのように扱われるのか出典 : 知能指数だけでは疾患・障害の確定診断をすることはできません。ですが知能検査の結果は、疾患・障害の識別や、治療の効果測定、障害のリスクの予想などの指標の一つとして活用されます。◇自閉症スペクトラム障害自閉症スペクトラム障害とは対人コミュニケーションに困難さがあり、限定された行動、興味、反復行動がある障害です。知的障害を伴わない自閉症スペクトラム障害では、知能検査の言語性IQが正常範囲であるにもかかわらず、日常生活では適切なコミュニケーション行動が難しいといった場合が多いです。このような子どもはITPA(言語学習能力診断検査)において、「ことばの類推」「ことばの表現」「文の構成」といった項目の点数が低くなる傾向があります。◇注意欠陥・多動性障害(ADHD)ADHDは不注意(集中力がない)、多動性(じっとしていられない)、衝動性(考えずに行動してしまう)の3つの症状がみられる発達障害のことであり、自閉症スペクトラム障害と併存する場合もあります。WISC-Ⅳ(ウェクスラー式知能検査。詳細は後述)では、ADHDのある人は、注意集中の維持の困難さから、「数唱」「迷路」といった検査項目において点数が低くなる傾向があります。子どもに早期から療育を行う場合、その効果を見極める指標として、知能検査の結果の変化が参考とされる場合があります。早期療育とは、発達の遅れが見られる子供を対象に専門的な教育プログラムやトレーニングを実施することです。◇ダウン症たとえば、ダウン症のある子どものほとんどは、生後1ヶ月以内に診断されるため、早期療育の対象となることが多いです。早期療育によって、ダウン症の子どもの能力がどの程度発達したかは、例えばウェクスラー式知能検査の幼児版であるWPPSIの言語性IQによって測定されます。◇学習障害(LD)学習障害は、全般的な知的発達に遅れがないものの、「聞く」「話す」「読む」「書く」「計算・推論する」能力のうちいずれかまたは複数のものの習得・使用に著しい困難を示す発達障害のことで、知的障害とは区別されます。児童期において、WISCの全検査IQが正常範囲であるものの、言語性IQと動作性IQの得点の差が15点以上ある場合に学習障害のリスクが高いとされています。学習障害は知能の部分的な偏りが学習の遅れに結びついています。測定したIQに対して、実際の学習到達度にギャップが大きい場合、学習障害の可能性が疑われます。学校での子どもの学習の様子と対応させて、困難が大きい部分に対して適切な支援をしていくことが大切です。参考:日本児童研究所/著『児童心理学の進歩』2014年 金子書房/刊知能指数の値に応じて受けられる支援は?出典 : 知能指数の値は、療育手帳の取得判定の際に参考とされます。児童相談所または知的障害者更生相談所において知的障害であると判定された場合や、知能指数が75以下(自治体によっては70以下)の場合、療育手帳をもらうことができます。また、特別支援学校に入学する際、療育手帳が必要な場合があります。療育手帳とは知的障害のある方に発行される障害者手帳です。知的障害のある方が一貫した療育・援護を受けられるよう、さまざまな制度やサービスの利用をしやすくすることを目的にしています。◇取得対象者・IQ値が75以下の方。(70以下に規定している自治体もある)・おおむね18歳以前に知的機能障害が認められ、それが持続している。・日常生活に支障が生じているため、医療・福祉・教育など援助を必要とする。◇区分重度~軽度で分けられます。自治体や年齢によって2区分や4区分に分類されます。◇メリット・保育園入園時など保育・教育面での援助・就労に向けての支援・公共交通機関などの割引・レジャー、スポーツ施設などの割引・給付、税の減免や控除特別支援学校とは心身に障害のある児童・生徒が通う学校で、幼稚部・小学部・中学部・高等部があります。特別支援学校への入学を希望する場合、出願の際に障害の程度を証明するものとして、療育手帳の写しの提出が必要になる場合があります。知能指数を知りたい時は?出典 : 知能指数は知能検査によって計ることができますが、どこで受検できるのでしょうか。最近ではインターネット上で知能指数の診断サイトをよく目にします。しかしむやみにインターネットで測定をした結果を信じ込んではいけません。なぜなら知能指数は医療機関で測定した値であっても、知能指数単体で使うことがないほど慎重に扱われるものだからです。知能指数を知りたいと思った時は、まず保健センター、子育て支援センター、児童相談所、発達障害者支援センターといった相談窓口に相談すると良いでしょう。自宅のまわりにない場合は、電話で相談することもできます。相談機関では知能検査を受けられる公的病院や民間病院を紹介してくれる場合があります。精神科や臨床心理士による検査が受けられる病院での受検をおすすめします。また児童発達支援センターなどで受けることもできます。知能検査の種類によっても受け方が異なるため、あらかじめ病院に問い合わせると良いでしょう。注意点として、医療機関など信頼できる検査を利用する場合でも知能検査について正しい理解をし、その結果を適切に利用するようにしましょう。知能検査の内容出典 : 知能検査では、知識、語彙、概念形成に関するさまざまな課題や、非言語的な課題が提示されます。検査の課題は、子どもが興味を持って受けられるような工夫がなされており、例えばなぞなぞのような言葉で回答する問題やパズルなどが挙げられます。また現在、日本でよく使われる知能検査としては、ビネー式知能検査、ウェクスラー式知能検査、K-ABC知能検査などが挙げられます。他にも検査方法がありますが、ここでは代表的なこれら3つの知能検査について紹介していきます。対象年齢:2歳~成人ビネー式知能検査はよく用いられる代表的な個別式知能検査です。ビネー式知能検査では、精神年齢と生活年齢の比によって知能指数が算出されます。ビネー式知能検査の一つである田中ビネー知能検査は、日本人の文化やパーソナリティ特性、生活様式に添った問題内容になっています。対象年齢:WISC-Ⅳ5歳~16歳11ヶ月、WAIS-Ⅲ16歳 ~89歳、WPPSI 3歳10ヶ月~7歳1ヶ月ウェクスラー式知能検査は言語性IQと動作性IQという測定概念を用いて、個人内差(個人の得意不得意)の測定をします。年齢に応じて児童版のWISC、成人用のWAIS、幼児用のWPPSIの3種類があります。個人の能力の特徴をより分析的に捉えることができ、知的障害や発達障害のある人の場合、検査結果に一定の傾向が見られやすくなっています。そのため、知的障害や発達障害の確定診断の際に、参考情報の一つとして用いられることがあります。対象年齢:2歳6ヶ月~12歳11ヶ月子どもの認知処理に注目した検査です。子どもの知的活動を認知処理過程と知識・技能の習得度から総合的に評価します。教育・指導に直結し、一人ひとりに合った学習スタイルを見つけることができます。同時処理(情報を全体的に捉える認知特性)と継次処理(情報を順番に理解する認知特性)の個人内の差を明らかにできることから、特異な認知パターンを持つ学習障害のような場合に適用されます。児童一人ひとりを大切にする教育的支援に関する研究|山口市立宮野小学校 教諭 中野 正映さん心理・教育アセスメントバッテリー K-ABCⅡ|丸善出版HP知能検査について受けられる場所や検査内容を紹介しました。知能検査についてさらに詳しく知りたい方は、知能検査の受け方や費用、検査形態などについてまとめている以下の関連記事をぜひ参考にしてみてください。まとめ出典 : 知能指数は知能のレベルを計る手段の一つではありますが、知能指数だけでは人間の知能の全てを測ることはできません。知能検査は、単に知能指数を測ることではなく、検査結果を基にして、受検者が適切な教育・支援を受けられるようにすることを目的としています。知能指数の値だけで受検した子どもの能力を即断するのではなく、日常生活におけるお子さんの行動・様子を把握し、その子本人に合った教育・支援の方法を探していきましょう。
2016年12月08日知的障害とは?どんな症状?出典 : 知的障害とは、発達期までに生じた知的機能障害により、認知能力の発達が全般的に遅れた水準にとどまっている状態を指します。発達期とはおおむね18歳までを指し、それ以降に事故や病気などで知的機能が低下しても、知的障害とは言いません。厚生労働省は知的障害を以下のように定義しています。知的障害は精神遅滞とも表される、知的発達の障害です。知的機能や適応機能に基づいて判断され、知能指数により分類されます。様々な中枢神経系疾患が原因となるため、正しい診断を受けて、早期に治療・療育・教育を行う必要があります。本人のみならず、家族への支援もかかせない発達障害のひとつです。知的障害(ID: Intellectual Disability)は、医学領域の精神遅滞(MR: Mental Retardation)と同じものを指し、「知的発達の障害」を表します。すなわち「1. 全般的な知的機能が同年齢の子どもと比べて明らかに遅滞し」「2. 適応機能の明らかな制限が」「3. 18歳未満に生じる」と定義されるものです。中枢神経系の機能に影響を与える様々な病態で生じうるので「疾患群」とも言えます。知的障害は、染色体異常を原因とするダウン症のように出生後にすぐ診断できる疾病に合併する場合もあれば、自閉症のように、生後すぐには診断できない障害に合併することもあります。知的障害は「知的機能(IQ)」の検査のみによって診断がくだされるのではありません。「適応機能」という日常生活能力、社会生活能力、社会適応性などの能力を測る指数と併せて診断が下されます。知的障害の診断は医療機関や地域によって異なりますが、一般的に知的障害は「知的機能」と「適応機能」の評価で「軽度」「中度」「重度」「最重度」の4つの等級に分類されます。出典 : この図では、横軸に日常生活能力水準をaからdで取り、縦軸にIQのレベルをIからIVに取っています。日常生活能力水準はaに近づくほど自立した生活が難しいということになり、dに近づくほど自立した生活ができるということを表します。また同様にIQが低いほどIに近づき、IQが高いほどIVに近づきます。横軸と縦軸が合わさったところから、知的障害の程度を診断します。以上の図では、知的機能が低かったとしても適応機能が高ければ、ひとつ上の等級で診断されることがわかります。知的障害は知的機能検査だけで診断されると思われがちですが、このように知的機能と適応機能の2つが評価された上で診断が下されます。小林朋佳稲垣真澄 「精神遅滞」 2011年知的障害はいつ分かる?診断の年齢は?出典 : ダウン症の場合、出生時に知的障害が合併する可能性を示唆できます。しかし、保育園や幼稚園、小学校などで周りの子と比べた発達の遅さから疑いを持ち、医療機関での検査を受け、知的障害だと判明するケースが多いのです。知的障害は発達期の間に発症するとされ、診断は18歳以下が一般的ですが、子どもの頃に症状に気づかず大人になってから知的障害だと診断された方も少なくありません。検査できる年齢等は定められていませんが、症状がわかりやすい幼児以降の診断が多いです。幼い子どもや障害が重度の場合は保護者が代わりに質問に答えたり、記入してもらう方法が適用されます。出典元:内閣府「平成25年版障害者白書(概要)」>第1章障害者の状況(基本的統計より)知的障害の診断基準出典 : 医療機関では問診と簡単なテストを行います。知的障害の診断基準にはアメリカ精神医学会の『DSM-5』(『精神障害のための診断と統計のマニュアル』第5版テキスト改訂版)や世界保健機関(WHO)の『ICD-10』(『国際疾病分類』第10版)といった基準が使われており、検査結果から総合的に判断します。以下はDSM-5にある知的障害の診断基準です。以下を全て満たすと、知的障害だと診断されます。A 臨床的評価および個別化、標準化された知能検査によって確かめられる、論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、学校での学習、および経験からの学習など,知的機能の欠陥。B 個人の自立や社会的責任において発達的および社会文化的な水準を満たすことができなくなるという適応機能の欠陥。継続的な支援がなければ、適応上の欠陥は、家庭、学校、職場、および地域社会といった多岐にわたる環境において、コミュニケーション、社会参加、および自立した生活といった複数の日常生活活動における機能を限定する。C 知的および適応の欠陥は、発達期の間に発症する。(日本精神神経学会/監修『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』2014年 医学書院/刊より引用)ほかにも使われる診断方法があります。知的障害は、知能検査と適応能力検査の2つによって総合的に診断が下されます。「田中ビネー知能検査 V(ファイブ)」、「新版K式発達検査」、「ウェクスラー式知能検査」が検査で使われることが多いです。年齢によって受ける検査が異なるものもあります。■田中ビネー知能検査 V(ファイブ)2歳から成人まで受けることができます。就学する5~6歳の年齢にフォーカスをあて、特別な配慮が必要かどうかを判断するための「就学児版田中ビネー知能検査V(ファイブ)」という検査もあります。子どもが興味を持てるように、検査に使われる道具が工夫されています。日常生活において必要な知能・学習する上において必要な知能の2つを測定します。■新版K式発達検査生後100日頃から14歳くらいまでの人が受けることができます。「姿勢・運動」(P-M)、「認知・適応」(C-A)、「言語・社会」(L-S)の3領域について評価されます。3歳以上では「認知・適応」面、「言語・社会」面に、重点を置かれ検査します。楽しみながら検査を受けることができるので、緊張していない自然な行動から判断することができます。試験者は子どもの検査結果だけでなく、言語反応、感情、動作、情緒などの反応も記録し、総合的に判断します。■ウェクスラー式知能検査ウェクスラー式知能検査は、年齢ごとに3つのテストに分類されます。・幼児(3歳10ヶ月〜7歳1ヶ月)→WPPSI・児童(5歳から16歳11カ月)→WISC・成人(16歳〜)→WAISIQが求められるだけでなく、脳の発達具合を下位検査を用いて導出し、総合的に判断することができます。ウェクスラーにはA式検査とB式検査の2種類があり、A式が言語性検査、B式が動作性検査です。教育相談情報提供システム 「発達検査」 国立特別支援教育総合研究所田研出版 「田中ビネー知能検査V」適応能力を評価する検査は大きくわけて3つあります。■適応能力検査の種類・vineland-II(全年齢)・ASA旭出式社会適応スキル(幼児〜高)・S-M社会生活能力検査(乳幼児〜中学生)これらの検査を年齢や状況に応じて使い分け、総合的に知的障害の診断が下されます。日本文化科学社 「心理検査カタログ」 2016年専門機関での診断は受けるべき?どこへ行けばいいの?出典 : 言葉を習得するのが著しく遅いなどの言語能力の遅れや、運動能力の遅れ、社会性の発達の遅れなどで気になることがあるなど、子どもの知的障害を疑ったら、一度は専門機関へ相談されることをおすすめします。医療機関で診断を受けるかどうか、決めるのは本人やご両親の判断となります。ですが、適切なサポートを受けられないまま、生活する上で最も困難さを感じるのは本人です。少しでも早く症状に気づいてあげられれば、フォローして困難の乗り越え方を手助けすることも可能になりますし、できるだけ生活しやすい環境を整えてあげることもできるかもしれません。親や家族で抱え込まず、専門家や周りの人たちの協力を得ながら、その子にあったやり方で接することが大切です。いきなり専門医に行くことは難しいので、まずは無料で相談できる身近な専門機関の相談窓口を利用するのがおすすめです。子どもか大人かによって、行くべき機関が違うので、以下を参考にしてみてください。【子どもの場合】・保健センター・子育て支援センター・児童発達支援事業所など【大人の場合】・発達障害者支援センター・障害者就業・生活支援センター・相談支援事業所などその後、すすめられた場合は、医療機関に行き医師からの診断を受けましょう。診断を受けて知的障害だった場合は今後どのように対応していけばいいか聞くことができますし、仮に知的障害でなくとも普段の行動を見直すきっかけになると思います。児童相談所などは電話やファックスでの相談にも対応してくれるため、事前に気になることを聞いてもいいですし、診断に抵抗がある方はまずは相談するだけでも大丈夫です。身近な相談センターに行って相談し、知的障害の疑いがあり、診断を希望すればそこから専門医を紹介してもらえます。自宅の近くに相談センターがない場合には、電話での相談に乗ってくれることもあります。知的障害を含め、発達障害の専門機関は他の病気に比べると少ないですが、発達障害者支援法などの法が整備されたことの影響もあり、年々増加はしています。診断を受けられれる医療機関としては、子どもの場合は小児科、大人の場合は精神科が一般的です。その他、神経科や心療内科なども挙げられます。また、保健センターなどでは知能検査や適応能力を診断する検査を受けられる可能性もあります。以下のリンクは発達障害の診療を行える医師の一覧です。日本小児神経学会 「発達障害診療医師名簿」診断の流れ、必要な持ち物は?出典 : 使用する検査は病院などによって異なりますが、「WISC」・「WAIS」や「田中ビネー」など標準化された知能検査や社会適応能力検査を用いて、知的障害の診断を行います。幼児期の子どもは知能検査や発達検査を受けたり、保護者が質問の回答や記入を行ったりします。検査機関によっても異なりますが、知能検査は正確な結果を得るため、通常1年に1回など期間をあけて測定します。また、知的障害は他の障害や疾患を合併していることもあるため、様々な検査が行われることもあります。てんかんがないか脳波を調べたり、脳の器質的な異常がないか調べるためにMRIをしたりといった、生理学的な検査を行うこともあります。なお、検査のみで把握できないことも多いため、行動観察や問診などで総合的に考慮されて、知的障害と診断されます。また、一度の受診で診断されることはあまりなく、何度か経過観察を経て正式に診断を下されることが多いようです。診断に持っていかなければならない持ち物としては基本的に健康保険証とお金、小さな子どもの場合は乳幼児医療証が挙げられます。診察料は病院によってさまざまで検査によっても異なりますが、2万円以内に収まるケースがほとんどです。地域や年齢によっては診察代が無料の場合もあります。しかしながら、保険適用外の検査もあるため、事前に電話などで病院に確認しておくと安心です。知能検査や発達検査の他に問診でこれまでの生活状況について尋ねられることがあります。母子手帳や事前に子どもの行動や1日のスケジュールなどをメモしたものを持参すると質問された時に答えやすいでしょう。まとめ出典 : 軽度の知的障害の場合、本人や周囲の方が気づかないまま大人になることも少なくありません。一方、知的障害の診断を受けると、療育手帳を取得することが可能になり、社会からのサポートが受けやすくなるというメリットもあります。お子さんに知的障害の疑いがある場合、専門機関への相談も検討してみてください。専門家や支援センターの担当者、同じ悩みを抱えるご家族と相談することで、お子さんがより過ごしやすい環境やサポートを考えていくことができるでしょう。参考書籍:日本精神神経学会/監修『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』医学書院/刊参考書籍:栗田広・渡辺勧持/訳『知的障害定義、分類および支援体系』2004年,日本知的障害福祉連盟/刊参考書籍:有馬正高/監修『知的障害のことがよくわかる本』講談社/刊
2016年08月03日知能検査とは出典 : 知能検査とは、知能を測定するための心理検査の一つです。知能検査は、単に受検者の知能を測るだけでなく、検査結果を基に、その人に合った支援や学習指導の方向性のヒントを得ることを目的としています。知能検査においてはIQ(知能指数)の値を指標とすることが多くあります。IQはInteligence quotientの略で、知能のレベルを評価するための標準化された尺度です。検査は、精神年齢、IQ(知能指数)、知能偏差値などによって測定されます。IQの値の範囲は測定の手段によって異なりますが、一般的に平均値を100として比較可能な分類がされます。『発達障害事典』(2011年・明石書店刊)によると、IQの値による分類は以下のようになります。・130以上:極めて優秀・120-129:優秀・110-119:平均の上・90-109:平均・80-89:平均の下・70-79:境界線級/ボーダーライン・70未満:知的障害一方で、知能検査の是非には議論もあります。IQをはじめとする検査指標は、検査作成者が考える知能の定義に基づいて作られたものであり、一つの指標のみで人間の知能のすべてを測ることはできないからです。そのため、それぞれの知能検査が、何を目的としてどのような指標で知能を測定しているのかを理解したうえで、検査結果を参考にすることが大切です。参考:国立特別支援教育総合研究所教育相談情報提供システム知能検査の目的と適用知能検査の歴史出典 : 年代、初等教育が始まった日本やヨーロッパでは、すべての子どもたちが同じような方法で教育を受けていました。しかし、現在と異なり知的障害や発達障害に対する配慮が不十分であったため、学習に困難が生じる子どもも多く見られるようになりました。その後、一人ひとりの子どもの個性に合った学習法で教育を提供するべきだという指摘がなされたのがきっかけで、子ども一人ひとりの特性を把握するための手段として、知能検査が考案・開発されるようになりました。知能検査は、1905年にアルフレッド・ビネーとテオドール・シモンによって開発された「知能測定尺度(ビネー‐シモン法)」が始まりです。ビネー‐シモン法は、子どもの能力を測る画期的なテストとして注目され、諸外国で翻訳・普及していきましたが、その過程で各々の国に合う形への再標準化も試みられました。中でも大規模なものが、1916年にアメリカのターマンらによって開発された「スタンフォード改訂増補版ビネー‐シモン知能測定尺度(通称スタンフォード・ビネー法)」です。スタンフォード・ビネー法における特徴は、1912年にウィリアム・シュテルンが提唱した、「知能指数(IQ)」と「知能年齢」という新たな指標を取り入れたことです。これによって、精神年齢と生活年齢との比で求める知能指数(IQ)の概念が普及します。ビネー‐シモン法に端を発する知能検査は、はじめ、知的障害のある子どもを見極めることを主な目的として開発されました。しかし、のちに知能検査の対象は知的障害のある子どもだけではなくなり、さまざまな集団・年齢の人々の知能を測る上での手段として発展していきます。そのため、知能指数も、偏差IQという、比較可能な集団の能力と比較した達成度を基準とした指標が使われるようになりました。その後も、さまざまな研究者が知能検査を開発し、時代の変化とともに改訂を重ねながら現在に至ります。今回の記事では、現在日本で主に使われている知能検査の種類や特徴を中心に紹介していきます。参考:文部科学省高等教育機関入学者の選抜参考:立命館大学田中ビネー知能検査開発の歴史知能検査の検査形態出典 : 知能検査の検査形態は次のように分けられます。なお、個別式と集団式どちらも扱っている検査もあるようです。被検者と検査員の一対一で行う検査です。現在使われている検査の多くがこの個別式知能検査です。「団体式知能検査」とも言います。学校などでたくさんの人を検査するための筆記式検査です。集団式知能検査を受けた後、知能や発達に問題が見つかった場合は、続けて個別式検査を受けることでよりきめ細やかに調べることができます。おもに小学校就学時に就学時健康診断で行われる集団式知能検査に、「就学時知能検査」があります(「就学時検査」とも言います)。就学時知能検査は子どもが就学する際に健康診断ととも一斉に行われる知能検査なので、年齢を基準としての発達の遅れや偏りを把握する手段の一つとしても使われます。文部科学省による学校保健法では、就学時知能検査の技術的基準について、以下のように定められています。知能については、標準化された知能検査法以外の方法によることも可能であることから、検査法を限定せずに、適切な方法であればよい。なお適切な方法としては医師等の専門家による面接や行動観察があげられる。参考:文部科学省ホームページ学校保健法施行の一部改正等について知能検査の種類出典 : 知能検査には、言語を用いる検査「A式」と、言語ではなく数字や図形などを用いる検査「B式」があります。「A式」と「B式」どちらも取り入れた検査「AB式」もあり、さらに知能発達を測るものや、精神状態を測るものなどさまざまな種類の検査があります。最近では、「ウェクスラー式知能検査」、「田中ビネー知能検査Ⅴ(ファイブ)」、「K-ABC知能検査」が比較的よく使われています。どの知能検査を扱うかは、専門家(医師、臨床心理士など)が判断することが多いです。ここでは、個別式知能検査の種類をいくつか紹介しますので、参考にしてみてください。内閣府青少年育成ユースアドバイザー育成プログラム支援計画作成のための評価ウェクスラー式知能検査は児童期や成人期においてもっともよく使われる知能検査です。被験者の年齢に応じて、・児童版のWISC(Wechsler Intelligence Scale for Children、通称ウィスク)・成人用のWAIS(Wechsler Adult Intelligence Scale、通称ウェイス)・幼児用のWPPSI(Wechsler Preschool and Primary Scale of Intelligence)の3つに検査の種類が分けられています。幼児用の検査としてWPPSIも存在しますが、幼少期は知的発達の変動や個人差の大きいため、あまり実施されません。・適用年齢の範囲: WISC、WAIS、WPPSIそれぞれで異なる・実施時間: WISC、WAIS、WPPSIそれぞれで異なる田中ビネー知能検査V(ファイブ)は、日常生活において必要な知能と、学習する上において必要な知能の2つを測定します。子どもが興味を持てるように、検査に使われる道具が工夫されています。難易度別に問題が分かれ、1歳級から13歳級までの各年齢の問題、成人の問題があることが特徴です。1歳級以下を対象にした検査では、「発達チェック」項目も設けられています。小学校に就学する5~6歳の年齢にフォーカスをあて、特別な配慮が必要かどうかを判断するための「就学児版田中ビネー知能検査V(ファイブ)」という検査もあります。・適用年齢の範囲: 2歳~成人・実施時間: 60分~90分発達障害児支援とアセスメントに関するガイドライン山口県特別支援教育研修テキスト・マニュアル発達検査の活用K-ABC知能検査は、子どもの知的能力を認知処理過程と知識・技能の習得度の両面から評価することが特徴の検査です。検査結果からその子どもが得意な認知処理様式を見つけ、それを実際の指導・教育に活かすことを目的としています。最近では、2013年に「日本版K-ABCⅡ」が刊行され、検査内容が大幅に変更されました。K-ABCⅡでは、適応年齢が12歳から18歳に変更され、認知処理の焦点が広がりました。・適用年齢の範囲: 2歳6ヶ月~12歳11ヶ月・実施時間: 30分~60分発達障害児支援とアセスメントに関するガイドラインサクセス・ベル株式会社K-ABC 心理・教育アセスメントバッテリー新版K式発達検査では、子どもの発達の状態を、精神発達の全面的な進みや遅れ、バランスの崩れなどさまざまな諸側面においてとらえることができます。検査は、「姿勢・運動」(P-M)、「認知・適応」(C-A)、「言語・社会」(L-S)の3領域について評価されます。なお、3歳以上では「認知・適応」面、「言語・社会」面に、重点を置いて検査されます。子どもにとって遊びと感じられるような検査用具を使うので、子どもの自然な行動が観察しやすい検査となっています。試験者は子どもの検査結果だけでなく、言語反応、感情、動作、情緒などの反応も記録し、総合的に判断します。2001年に「新版K式発達検査2001」が刊行されています。適用年齢の範囲: 生後100日から14歳、15歳くらいまで実施時間: 30分程度発達障害児支援とアセスメントに関するガイドライン国立特別支援教育総合研究所発達検査DN-CAS認知評価システムは、「プランニング」、「注意」、「同時処理」、「継次処理」の4つからなる、神経心理学における「PASS理論」を基礎としている心理検査です。LD(学習障害)やADHD(発達障害)、自閉症スペクトラム等の子どもたちに見られる認知的偏りの傾向を捉えることができ、その援助の手掛かりを得るために有効です。・適用年齢の範囲: 5歳~17歳11ヶ月・実施時間: 40分~60分発達障害児支援とアセスメントに関するガイドライン日本文化科学社個別式検査DN-CAS認知評価システムMMSE-J精神状態短時間検査は、認知障害の重症度を見出す上での世界的にスタンダードな検査です。短時間かつ簡単に検査することができるので、国際比較が必要な認知症、認知症障害の研究にも役立ちます。日本版は、作成者の杉本守弘氏による再分析により一時期販売が中止されていましたが、2016年3月より再販売されています。・適用年齢の範囲: 18歳~85歳・実施時間: 10分~15分日本文化科学社MMSE-J精神状態短時間検査参考書籍:パスカル J アカルド ,バーバラ Y ホイットマン,シャーリー K ベール/編著『発達障害事典』(赤石書店,2011年)レーヴン色彩マトリックス検査は、おもに失語症や認知症の検査に使われます。言語を介さずに、短時間かつ簡単に検査ができます。問題が36問あり、図案の欠如部分に合致するものを6つの選択図案から1つだけ選ぶ検査です。・適用年齢の範囲: 45歳以上・実施時間: 10分~15分サクセス・ベル株式会社RCPM レーヴン色彩マトリックス検査日本文化科学社個別式検査心理検査カタログ2016年4月版千葉テストセンター心理検査専門所RCPMレーヴン色彩マトリックス検査知能検査の受け方、費用は?出典 : 知能検査は、公的病院や民間病院で受けることができます。精神科や臨床心理士による検査が受けられる病院を受診するといいでしょう。「児童発達支援センター」などで受けることもできます。知能検査の受け方、費用は、検査内容や病院によって異なりますので、受診する病院に問い合わせてみてください。例えばWAIS・WISCの場合、総合病院など公的病院で検査を受ける場合は、保険内診療となります。その際は、診療報酬点数の規定に基づき、負担費用は1350円となります。 診断書もしくは報告書を書いてもらう場合には、別途料金がかかります。こちらの料金は病院ごとに異なりますので、近くの病院に問い合わせてみてください。一方、個人のクリニックなど民間病院で検査を受ける場合には、自費での診療となります。こちらの料金設定は各病院ごとに設定されていますが、検査費用および報告書費用を含めて1万~2万円が目安となっているようです。ジュニア発達障害とは発達障害かも?と思ったら 診断 WISC-III知能検査知能検査を受ける前にまずは相談機関へ出典 : お子さんやご自身の知能検査の受診を検討する際は、まずはお住まいの地域にある身近な相談窓口に行くといいでしょう。子どもか大人かによって、行くべき相談機関が違うので、以下を参考にしてみてください。【子どもの場合】・保健センター・子育て支援センター・児童相談所・発達障害者支援センター【大人の場合】・発達障害者支援センター・障害者就業・生活支援センター・相談支援事業所自宅の近くに相談機関がない場合には、電話での相談をすることができる場合もあります。知能検査改訂の背景出典 : 知能検査は、一定の期間を過ぎると改訂されるのが常ですが、改訂の間隔は年々短くなってきています。それは、技術革新などの時代的変化の激しさが背景にあります。なぜ改訂しなければならないのかというと、心理検査の項目を構成する素材は、その時代の文化を反映し、使用される言語や知識を前提として作成されるからです。日経サイエンス知能は伸び続けるかまとめ出典 : 知能検査は子どもだけでなく、大人も受けることができます。検査の種類もたくさんあり、知的障害、発達障害、学習障害、認知症など、さまざまな診断の判断材料の一つとして使われています。比較的時間がかからず簡単に受けられるので、受検を検討される方は、相談機関に相談してみてください。
2016年07月30日頭がいい人が多い国って、いったいどこなのでしょう。頭のよさにもいろいろありますが、IQ(知能指数)はひとつの目安になるかもしれません。『INSIDER MONKEY』でIQテストの国民平均値が高い国をランキングしたところ、なかなかおもしろい結果が判明しました。■15:中国(平均IQ:100)文明が生まれた国といわれる中国の15歳の子どもたちは、PISA(学習到達度調査)の数学、科学、国語の3つの分野のテストでナンバーワンの点数を取っているそうです。■14:ベルギー(平均IQ:100)西ヨーロッパのベルギーも、平均IQ100という結果。国の教育水準は非常に高く、識字率は99%。有名な科学者も多数輩出しています。■13:イギリス(平均IQ:100)イギリスは平均IQが高いだけではありません。14歳の子どもたちの国際的なテストでは、数学が10位、科学が9位だったそうです。■12:ニュージーランド(平均IQ:100)太平洋の南西に位置するニュージーランドも、識字率は99%を誇ります。PISAの読解、数学、科学の3つの分野で、ニュージーランドの学生は7位にランクイン。■11:スイス(平均IQ:101)スイスはメートル法が生まれた国として有名ですが、国民全体の平均IQも高いんです。生徒の習熟度や能力に合わせたプログラムを行う教育システムも有名。■10:スウェーデン(平均IQ:101)スウェーデンは、政策や資金面でも教育に力を入れている国。教育が行き届いている国のベスト10にランクインしているのもうなずけます。■9:ドイツ(平均IQ:102)ドイツは著名な科学者や芸術家が少ない国ですが、教育には熱心。職業訓練や、生徒の力を総合的に伸ばす教育を行っているのです。■8:イタリア(平均IQ:102)イタリアは、ルネッサンスの時代から科学やテクノロジーの中心だった歴史ある国。音楽などの芸術分野でもその名を知られています。科学、宇宙科学、数学、コンピューター、医療の分野でも世界の平均以上の成果が出されています。■7:オーストリア(平均IQ:102)オーストリアは、規律正しい教育システムのある国です。学習に対する意欲が高いため、平均IQは102という高さになっています。■6:オランダ(平均IQ:102)オランダの義務教育は、5歳から16歳の11年間。世界有数の人口密度の高い国ですが、教育はひとりひとりに行き届いているようです。■5:シンガポール(平均IQ:103)テクノロジーの進歩が目ざましいシンガポールは、世界の商業の中心地としての役割も担っています。学習意欲も高く、PISAの数学のテストではいつも5位以上にランクイン。■4:台湾(平均IQ:104)ハイテク産業でも知られる台湾ですが、公立学校での教育の質の高さ、そして人材育成にも目を見張るものがあります。台湾の学生は、国際的なテストでもいつも上位です。■3:日本(平均IQ:105)日本はなんと3位にランクイン。PISAのテストでは日本は世界6位にランクインしています。科学的な研究の分野でも世界をリードしていますが、そこには真面目な国民性も影響していそうです。■2:韓国(平均IQ:106)世界でもっとも革新的な国ともいわれている韓国は、研究の分野でも成果を上げています。真面目で勤勉な国民性でも有名です。■1:香港(平均IQ:107)平均IQで1位に輝いたのは香港。PISAのテストでは2位にランクインしており、世界でいちばん頭のいい人が多い国といえそうです。✳︎上位はアジアの国が多数という結果になりました。厳しい受験戦争も、意外に効果があるのかもしれません。学校での大変な勉強は、ちゃんと役に立っているのですね。(文/スケルトンワークス)【参考】※15 Countries with Highest Average IQ In the World-INSIDER MONKEY
2015年08月21日