ディラックは4日、台湾SilverStone製のPCケースとして、フロントパネルがメッシュ構造のゲーミング向けATXミドルタワーケース「SST-PM01」シリーズを発表した。ブラックとホワイトの2色を用意。4月9日から発売する。店頭予想価格(税別)はブラックが16,500円前後、ホワイトが17,500円前後。ケース前面に3基のLEDファンを搭載するゲーミングPC向けのATXミドルタワーケース。LEDファンはブラックモデルにレッド、ホワイトモデルにブルーを採用。明るさの調整、点滅・消灯が可能だ。サイドパネルはアクリルウィンドウで、フロント部は自動車の空冷構造にならった大型メッシュ設計。空気循環の効率性を向上させた。標準搭載ファン数は、前面に140mm(LED)×3基、背面に140mm×1基、最大搭載ファン数は、前面に140mm×3基または120mm×3基、背面に140mm×1基または120mm×1基、上面に140mm×2基または120mm×3基。3ピンファン用のハブユニットを標準で搭載し、最大10基のファンへ電力の供給が可能となっている。ただしPWMには非対応。前面と背面に最大360mm、上面に最大140mmのラジエターを装着できるなど、水冷への対応度も高い。ケース内部は、電源およびHDD搭載エリアと、マザーボード搭載エリアを分けたチャンバー構造。HDDはケース下部に設置でき、搭載ベイ数は内部3.5インチベイ×4基(2.5インチストレージと共用)、内部2.5インチベイ×5基だ。着脱可能なフィルタを装備し、正圧設計による防塵効果も得られる。そのほか主な仕様は、拡張スロット数が7基、拡張カードスペースが最大419mmまで、搭載CPUクーラーの高さが最大180mmまで、搭載電源の奥行きが最大240mmまで。外部インタフェース類はUSB 3.0×2基、USB 2.0×2基、オーディオ×1、マイク×1。本体サイズはW220×D560×H560mm、重量は約9kg。対応フォームファクタはATX、マイクロATX。
2016年04月05日実際の構造物(対象物)を3次元で表示する需要が高まっていることを受け、それを実現する多くの技術が登場してきています。特にマシンビジョンやロボティクスは、正確な3次元キャプチャ機能を実現します。また、3Dスキャナ技術は、バイオメトリクス(生体認証)やセキュリティ、産業用検査装置、品質管理、医療、歯型構築、プロトタイピングなど幅広い分野に応用されるようになっています。こうした3Dスキャナ技術は、対象物の表面を抽出し、物理計測をデジタルで表現します。データは対象物の外側表面を表すXYZ座標からなるポイント・クラウドとして捉えられます。3Dスキャン解析は、対象物の表面積と体積、トポロジー、形状、特長的な寸法を決めます。3Dスキャナには、対象物の表面の各点への距離を測るための「プローブ」が必要です。原理的には、プローブは物理的に接触する必要がありますが、多くのアプリケーションでは非接触測定を必要としています。光を使って対象物をプローブする光学技術は、この問題を解決するソリューションの1つとして考えられています。実際の方法としては、多くの場合、2台のカメラを用いてる方法や、構造化照明パターンを使う方法が考えられます。後者の方法では、光のパターンを作るためのプロジェクタ1台と、カメラ1台、適度な演算力が求められるアルゴリズムだけで済みます。○構造化光「構造化光」は、数学的に構成された光のパターン・セットを投影する3Dスキャンの光学的手法です。これは測定対象物を連続的に投影する方法です。プロジェクタから既知の位置にカメラを置き、照射された対象物の一連の画像を同期しながらキャプチャしていきます。キャリブレーションのために使われるフラットな基準面に対して、カメラで撮られたパターンは、スキャンされた対象物の形状によって歪められます。幾何学的な三角測量の原理を使って、スキャンされた対象物表面上の各点のXYZ座標を計算することができます(図1)。この結果、ポイント・クラウド・データは、スキャンされた対象物表面の詳細な3Dモデルを計算するために使われます。○プログラマブルな構造化光プログラマブルなパターンスキャナは、レーザあるいはデジタル空間光変調器(SLM)を備えたLED照明を使い、対象物体表面に一連のパターンを投影します。プログラマブルな構造化光スキャナは、周囲光の状態と対象物の表面および対象物の光反射特性に応じてパターンを適応させるだけでなく複数のパターンを使うことにより精度を上げることができます。プログラマブルな構造化光は、複数のパターン表示を必要とするため、空間光変調器はスキャナの重要なコンポーネントです。すでに市場に出ている空間光変調技術の例として、Texas Instruments(TI)のDLPテクノロジを用いた「DLP6000」と「DLP9000チップセット」があります。異なる構造化光スキャニング・アルゴリズムでは、バイナリおよびグレースケールパターンの一方または両方を生成するSLM機能を必要とします。高コントラストはさまざまな対象物の反射率と周囲光の状態を扱う際、精度やロバスト性の最大化に役立ちます。システム設計では、サイズや冷却方式、電池への需要によって、光学的なスループットとエネルギー効率を優先します。3D構造化光を最適化するための技術は多数あります。特に有効な方法は、適応型パターン・セットです。アルゴリズムによってパターンと波長の最良の組み合わせが決まり、それによってスキャンされた対象物の解像度は改善します。色(光の波長)の変更も、対象物の色によって選択できます。適応型パターンは、複雑な表面の形状や不連続な部分がある対象物をスキャンする精度を向上させます。○設計上の配慮プログラマブルな構造化光ソリューションで、設計上考慮しなければならない重要な点がいくつかあります。測定対象物のサイズと距離、さらに3D測定の所望の空間精度によって、SLMとイメージ・キャプチャ・カメラに要求される性能特性が決まります。加えて、SLM解像度(画素数)とスキャン・フィールドのサイズ(画素数/mm)が達成可能な精度を決定します。カメラはサンプリング理論から十分な解像度、通常少なくともSLMの4倍の画素密度を備えている必要があります。スキャン中、対象物が少しでも動くとデータがぼやけ、測定精度が低下します。対象物が予想よりも速く動くものなら、適切な3D精度のレベルを達成するために、より速くスキャンを終了させなければなりません。スキャン速度が早いほど、空間光変調器の高速化や高いキャプチャ・フレーム・レートのカメラが必要となり、より明るいパターン照明が得られるようになります。毎秒数枚~数百枚のパターン速度が様々な3D測定システムに必要となります。○結論マシン/ロボット・ビジョンやその他の3Dアプリケーションを使うことで、インテリジェント・マシンはさらに高度な性能を備えることができます。3Dスキャナ技術は、新技術とアルゴリズムの発展と共に進化してきました。コストを抑えながらプロセッシングとセンサの性能が向上することで、これらの新技術は、エンドユーザに複数の選択肢を与えます。構造化光を利用する、アクティブで非接触の3Dスキャナ・システムは、素晴らしいメリットをユーザにもたらしますが、特定のアプリケーションのニーズに基づいて評価される必要があります。参考文献・Geng, Jason: Structured-light 3D surface imaging: a tutorial・Koninckx, Thomas P. and Gool, Luc Van: Real-Time Range Acquisition by Adaptive Structured Light著者紹介ペドロ・へラベルト(Pedro Gelabert)Texas InstrumentsDSPアルゴリズムの実装と開発、並列処理、超低消費電力DSP、ミクスド ・シグナル、アーキテクチャ、DLP アプリケーションおよびオプティカル・プロセシングにおいて20年来の経験を有する。システムとアーキテクチャの功績は、インターネット・オーディオ(MP3プレーヤ)、ホーム・オーディオ、デジタル・スチル・カメラ、パーソナル医療機器(補聴器、心臓/グルコースおよび心電図モニタ)、ポータブル機器さらに分光器や3Dマシンビジョンなどの従来のディスプレイ技術を超えたDLPの新分野など、多岐にわたる。ジョージア工科大学で電気工学の学士号と博士号学位を取得。5つの特許を保持し、50以上の論文、ユーザガイドおよびアプリケーションノートを執筆。生活の質を向上させるためにDSPプロセシングおよびDLPの技術的進化を新たな市場へもたらすべく尽力。V.パスカル・ネルソン(V.Pascal Nelson)Texas Instruments35年にわたり半導体、光学、RF分野に従事。物理学を専攻し、超低位相ノイズ・クロックからオプティカル・システムまで幅広いプロジェクトに関わる。カスタマー・エデュケーションやサポートだけでなく、数多くのアプリケーションノート、論文、セミナーに尽力。この7年間、DLP技術の将来性に注目し、改善された生活空間のさらなる発展のために貢献している。
2016年03月25日理化学研究所(理研)は3月23日、形に揺らぎのある糖鎖を特定のタンパク質「レクチン」と結合させて固定することにより、折れ曲がった状態の糖鎖構造を原子レベルで可視化することに成功したと発表した。同成果は、理研 グローバル研究クラスタ糖鎖構造生物学研究チーム 山口芳樹チームリーダー、長江雅倫研究員らの研究グループによるもので、3月14日付けの英科学誌「Scientific Reports」に掲載された。糖鎖は主に細胞の表面に存在している生体分子で、その多くは細胞膜に埋め込まれたタンパク質や脂質に結合し、細胞同士や細胞の外から内への情報伝達、タンパク質の品質管理・機能調節など、生体内における重要な役割を果たしている。また、一般に柔軟な構造をしており、ひとつの糖鎖がいくつもの形をとるという"揺らぎ"があることが知られている。しかし糖鎖の形は非常に速い速度で相互に変換しており、糖鎖の個々の形を実験的に正確に捉えることはこれまで困難だった。そこで同研究グループは今回、揺らぎのある糖鎖を特定のレクチンと結合させることにより、揺らぎを止めた状態の糖鎖構造の可視化を試みた。糖鎖のモデルとしては、これまで折れ曲がった構造をとると予想されていた「バイセクト型糖鎖」を採用。レクチンは、バイセクト型糖鎖に結合する互いに無関係な2種類、「Calsepaレクチン」と「E4-PHAレクチン」を使用した。まずバイセクト型糖鎖と各レクチンとの複合体を作製して、X線結晶構造解析を行った結果、どちらのレクチン-糖鎖複合体においても、糖鎖の2本の枝のうちの1本の「1-6アーム」と「1-3アーム」が反対の向きを向いた折れ曲がり構造をしていることがわかった。また、糖鎖の折れ曲がり構造が水溶液中でも存在することを確認するために、溶液NMR法を適用しその立体構造を調べたところ、水溶液中においてもバイセクト型糖鎖はCalsepaレクチンとの結合時に折れ曲がり構造をとることが確認された。同研究グループは今回の成果について、糖鎖とタンパク質の相互作用原理や、糖鎖がタンパク質を調節するメカニズムの理解につながることが期待できるとしている。
2016年03月23日理化学研究所(理研)と東京大学(東大)、日本医療研究開発機構は2月23日、白質消失病発症の原因タンパク質「eIF2B」の立体構造を結晶構造解析により解明したと発表した。同成果は、理研 横山構造生物学研究室 横山茂之 上席研究員と、理研ライフサイエンス技術基盤研究センター 翻訳因子構造解析研究ユニット 伊藤拓宏 ユニットリーダー、柏木一宏 特別研究員らの研究グループによるもので、2月22日付けの英科学誌「Nature」オンライン版に掲載された。白質消失病は、幼児期に発症し、ウイルス感染や頭部外傷などのストレスを契機に急速に悪化し、大脳の白質が消失して運動機能の失調をきたす遺伝性の神経変性疾患で、罹患者の多くが死に至るとされている。この疾患の原因となる翻訳開始因子eIF2Bは、本来、細胞がタンパク質を合成する際にほかの翻訳開始因子eIF2を活性化するタンパク質だが、細胞がストレスを受けると、eIF2がリン酸化してeIF2Bの活性が低下し、一般的なタンパク質合成がいったん抑制される。しかし、このストレス応答機構や、白質消失病の発症との関連性は解明されておらず、現在のところ白質消失病に特化した有効な治療法は見つかっていない。今回研究グループは、大型放射光施設「SPring-8」を用いたX線結晶構造解析で、10個のサブユニットから構成される巨大なeIF2Bの3次元構造を解明。その結果、eIF2Bの変異の大半は、eIF2に働く領域(活性部位)や、サブユニット間の相互作用面に集中していることがわかった。これは、変異によって活性部位や全体構造が損なわれ、eIF2Bの機能が低下することが、白質消失病の発症原因であることを意味している。ストレスを受けて一般的なタンパク質合成が抑制された後、抑制が解除されてストレス状態から通常状態へと回復する際に、eIF2Bの機能が低下しているために回復に必要なタンパク質を十分に合成できず、神経細胞が変性し白質消失に至ると考えられる。さらに、独自開発した技術を活用し、eIF2BとeIF2に非天然型アミノ酸を導入して解析したところ、eIF2Bの3次元構造の上でリン酸化されたeIF2と結合する領域は、通常のeIF2を活性化する際に結合する領域とは異なることを発見。この結合様式によりリン酸化されたeIF2は、自身の活性化を起こさないだけでなく、ほかのeIF2の活性化も妨げることが明らかになった。同研究グループは今回の成果について、白質消失病などの病態の理解、eIF2Bを標的としたストレス応答を制御する治療法の開発へ向けて、有用な基礎的情報となると説明している。
2016年02月23日これまで5回にわたり、航空機の機体構造がどうなっているかについて解説してきた。締めくくりとして、そこで使われている素材の話もしておかなければならないだろう。○アルミ合金系素材かつては「全金属製機」などといって、わざわざ区別していたが、それは木材を使用する機体が多かった時代の話。今では金属材を使用するのが当たり前になっている。航空機は軽くかつ丈夫に作らなければならないので、金属なら何でも良いというわけにはいかない。そこで主流となったのがアルミ合金である。純アルミニウムではなく、さまざまな金属を添加した合金素材を使っているが、そのほうが性質が優れているためである。特に広く知られているのがジュラルミンだろう。最初に登場したのは、アルミニウムに銅を添加した素材で、ジュラルミンといえばこれである。その名称の由来は、ドイツのデュレンという街で開発されたから、あるいはラテン語でhardを意味するdurusとaluminiumを合成してできたという説がある。日本工業規格(JIS)では、アルミ合金には4桁の数字あるいはアルファベットを組み合わせた名前がつけられている。ジュラルミンは2017で、銅を3.5~4.5%、珪素を0.5~1.2%、そのほか鉄、マンガン、マグネシウム、亜鉛、クロム、チタン、ジルコニウムといったものもいくらか混ざる。主な部分を占める元素の名前から、Al-Cu系ということになる。その後に登場したのが「超ジュラルミン」こと2024。銅を3.8~4.9%、マグネシウムを1.2~1.8%、そのほか鉄、マンガン、珪素、亜鉛、クロム、チタン、ジルコニウムといったものもいくらか混ざる。主な部分を占める元素の名前から、Al-Mg系ということになる。そして「超々ジュラルミン」こと7075がある。最近ではスマートフォンのドンガラでも使われているらしいが、元々は航空機用の素材だ。いわゆるAl-Mg-Zn系で、銅を1.2~2.0%、マグネシウムを2.1~2.9%、亜鉛を5.1~6.1%、そのほか鉄、マンガン、珪素、クロム、チタンといったものもいくらか混ざる。航空機用ではこの3種類がメジャーだが、もしも興味があったらJISの規格書を見てみていただきたい。あきれるぐらいたくさんのアルミ合金素材が規格化されている様子がわかる。航空機と並んでなじみ深いアルミ製品というと鉄道車両(特に新幹線)があるが、こちらは6N01や7N01など、溶接性と押出加工性に優れた素材が使われる。航空機はリベット止めが普通だから、鉄道車両ほど溶接性は重視されないようだ。○アルミ合金素材の使い分け後から出てきた素材ほど軽くて丈夫ということであれば、何でも7075で造ればよいかというと、そういうわけでもないところが面白い。例えばボーイング747の場合、胴体のうち与圧する部分の外板、それと主翼の下面には、疲労と亀裂に強い2024を使う。胴体でも縦通材やフレーム、非与圧部分の外板、あるいは主翼の桁・リブ・上面外板、それと尾翼は7075だ。7075の方が圧縮・引張・曲げに強いが、疲労においては2024のほうが有利だといわれる。主翼で発生させた揚力で機体全体を支えているわけだから、基本的に、主翼の上面には圧縮荷重がかかり、下面には引っ張り荷重がかかる。そのことが、「上面外板は7075、下面外板は2024」という使い分けにつながっているわけだ。ちなみに、主翼の外板は局所的に10mmを超える厚みになることもあるが、胴体の外板は一番薄いところで1.6mm厚だそうだ。繰り返すが、1.6cmではなく1.6mmである。これで機内の与圧による圧力差に耐えているのだからすごい。○炭素繊維複合材複合材料というと真っ先に思い浮かぶのはカーボンファイバー、つまり炭素繊維複合材だろう。厳密にいうと、炭素繊維とはその名の通りに繊維であって、それを樹脂で固めたものが炭素繊維強化樹脂である(CFRP : Carbon Fiber Reinforced Plastic)。繊維と樹脂を組み合わせているから複合材だ。組み合わせる樹脂素材はエポキシ樹脂が多い。エポキシ樹脂以外では、ポリアミド樹脂やナイロン樹脂を使うこともあるという。複合材の組み合わせはこの2種類に限らない。風呂でおなじみのガラス繊維強化プラスチック(GFRP : Glass Fiber Reinforced Plastic)も、極端なことをいえば鉄筋コンクリートだって複合材料である。まあ、鉄筋コンクリートで飛行機を作ることはないだろうから、それはおいておくとして。強度が求められる部分では、炭素繊維の糸を織り合わせて造った「織物」にエポキシ樹脂を含侵させた、「プリプレグ」と呼ばれるものを使う。プリプレグ自体は柔らかいが、これを型に敷き込んでからオートクレーブと呼ばれる「釜」に入れて焼き固めると、軽くて丈夫な構造材ができる。いわゆるドライカーボンというやつである。「織物」を使うから、繊維の向きによって強度が違ってくる。裏を返せば、どの方向に強度を持たせたいかという希望に合わせて繊維の配列を工夫することで、「ある方向に対しては強いが、別の方向に対しては変形しやすい」なんていうものも造ることが可能だ。ただ、この方法は製作に手間がかかる上に、電気代もかさむ。もちろん、コストや手間よりも強度が優先されるところではドライカーボンを使うが、要求仕様によっては量産性と経済性を重視して、別の方法を使うことがある。例えば、樹脂含侵成型法(RTM : Resin Transfer Molding)がある。これはオス型とメス型の間に炭素繊維の織物を敷き込み、そこに樹脂を注入して含侵・成型するものだ。樹脂が固まったら型から外せばよい。樹脂を注入する際に、反対側で気圧を下げることで樹脂の回りを良くするのが、真空樹脂含侵成型法(VaRTM : Vacuum Assisted Resin Transfer Molding)である。いくらCFRPが軽くて高強度だといっても、プラモデルみたいに一枚物の板で所要の強度を持たせるわけにはいかず、ちゃんと骨組と外板を組み合わせている。JAXAの施設一般公開で展示されていた、CFRP製機体構造材のサンプルを御覧いただこう。航空機以外だと、1980年代半ばからレーシングカーの車体をドライカーボンで造るのが普通になった。鉄道車両でも、JR東日本のE4系新幹線電車の一部が先頭部をCFRPで造ったことがあるし、CFRPの弾性を生かした台車「efWING」の導入事例が増えつつある。どちらも川崎重工の仕事だ。スキー板をCFRPで造った事例もあるが、これを手掛けたフィッシャーにしろ川崎重工にしろ、航空分野でCFRP製品を手掛けているメーカーでもある。
2016年02月22日マッドキャッツは15日、超軽量フレーム構造を採用した、本体重量50gのゲーミングマウス「RAT1 マウス ブラック」(MC-R1-BK)を発表した。2月19日に販売開始する。価格は税別3,500円。対応OSはWindows 7 / 8 / 8.1 / 10。骨組みのような意匠が特徴的な、フレーム構造モジュールデザインを採用したゲーミングマウス。パームレスト部は前後5mm範囲で可動するデュアルポジションパームレスト機構を採用し、手の大きさに応じてサイズ調節できるほか、3Dプリンタによるカスタマイズも可能。3Dデータは、米MADCATZのWebサイトからダウンロードできる。黄緑色のフレーム部や本体後方のパームレスト部は取り外すことができ、センサー搭載の本体のみで、33gの小型モバイルマウスとしても使用可能。インタフェースはUSB(有線)。本体サイズはW68×D108×H38mm、重量は約33~50g。センサー方式は光学式。解像度は250~3,500dpiの間で、250dpi間隔で設定できる。ポーリングレートは125 / 250 / 500 / 1000。ボタン数は5ボタン。
2016年02月15日主翼の内部構造についてはすでに書いたが、今回は、その主翼と胴体が取り付く部分にまつわる話を取り上げよう。案外と考えなければならない話が多い分野である。○高翼・中翼・低翼飛行機は主翼の枚数に応じて、「単葉(主翼が1枚)」「複葉(主翼が2枚)」「三葉(主翼が3枚)」といった分類がなされる。昔は複葉機が普通で、時には三葉機もあったが、今では単葉機が普通だ(たまに例外があるが)。その主翼が胴体に取り付く位置の違いにより、複数の区分ができる。この場合の位置とは前後方向の位置ではなくて、断面形状に対する上下方向の位置だ。具体的にいうと、胴体の下の方に取り付く「低翼」、胴体の真ん中辺に取り付く「中翼」、胴体の上の方に取り付く「高翼」、胴体から離れた上方に主翼を配置して支柱で支える「パラソル翼」に分類できる。飛行中は、揚力を発生する主翼が胴体を含めた機体全体を支えるのだから、主翼の強度部材である桁(翼桁)と、胴体の強度部材である縦通材やフレームを強固に結合しておかなければ、飛行機は空中分解してしまう。低翼機の場合、以前に取り上げたセンターウイングボックスの両側に主翼を取り付けて、その上に胴体が載る格好になる。分割はされているが、左右通しの主翼の上に胴体が載っていると考えて差し支えない。ところが、中翼や高翼だと話がややこしくなる。主翼を構成する桁を左右通しにすると、それが胴体のド真ん中、あるいは上方を突き抜けて横切る形になり(これをキャリースルーという)、機内のスペースに食い込んでしまうからだ。だから、中翼や高翼配置の機体だと、桁の構造に工夫をしたり、機内配置に工夫をしたりといった例がいろいろ出てくる。○ケーススタディ(1)B-29とランカスター例えば、ボーイングB-29スーパーフォートレス爆撃機は中翼配置である。ところがこの機体は爆撃機だから、機内に爆弾を積み込むためのスペース(爆弾倉)を確保する必要がある。さらに厄介なことに、爆弾を投下する前と後で重心位置が大きく変動しないようにする必要があるので、爆弾倉の位置をやたらと前方あるいは後方に寄せるわけにはいかない。しかも、空力的安定性を確保するには、重心位置を主翼の揚力中心位置より前方に持っていかなければならない。とかなんとか、さまざまな要因を考慮した結果、主翼と胴体の結合部ではキャリースルーが胴体を左右にぶち抜いて、その前後に爆弾倉を分割配置することになった。こうすれば主翼に邪魔されずに十分な高さを確保できるが、長さには制約ができる。そこで問題になったのが、中央部のスペースを占拠している主翼と爆弾倉によって、機内が前後に分断されてしまうこと。これでは前後の往来ができない。そこで、爆弾倉の上部に人がはって通れるぐらいのトンネルを設けて、前後の往来を可能にした。同じ第2次世界大戦中の爆撃機でも、アブロ・ランカスターは主翼の位置が比較的上に寄っている。そのため、爆弾倉もB-29のような前後分割ではなく、単一の長い爆弾倉になっている。そして、その爆弾倉の上をキャリースルーが左右に貫通している。総面積が同じでも、複数の狭い部屋に分かれた状態よりも広い1つの部屋にまとまっているほうが、なにかと柔軟性がある。これは爆撃機の爆弾倉も同じで、単一の広い爆弾倉に小型爆弾をたくさん積むことも、大型爆弾を少数積むこともできた。その代わり、爆弾倉の高さはB-29ほど大きくない。そして、胴体を横切るキャリースルーに人が通れるぐらいの穴を空けて、前後の往来を可能にしている。○ケーススタディ(2)C-130ハーキュリーズ今の軍用輸送機の「公式」を作ったのはロッキードC-130ハーキュリーズだといって差し支えはないだろう。その「公式」とは、高翼配置にするとともに降着装置を短くまとめて、機体を地面に近づけるとともに後部ランプを設けるというものだ。こうすることで、人や貨物の積み降ろしに際してタラップや昇降台を用意する必要がなくなるし、車両は後部ランプから自走で積み降ろしできる。というだけでは、話が終わらない。貨物を積み込むスペースは凸凹していない、シンプルな四角い箱になっているほうがありがたい。先のランカスターの爆弾倉の話、あるいはクルマのトランクルームのことを考えてみれば容易に理解できる話だ。ところが前述したように、飛行機として軽く、強く造ることを考えると、左右の主翼を構成する翼桁を左右通しにして、胴体とガッチリ結合する必要もある。また、降着装置を収容するスペースも必要になる。低翼配置の民航機なら、機内を2層構造にしてキャビンの床下に翼胴結合部や降着装置収容スペースを設けるところだが、軍用輸送機では胴体をまるごと単一の空間として使いたい。ということで、主翼は高翼配置にして、機内への食い込みを最低限に抑えている。降着装置も、胴体の両脇に張り出しを設けて、そこに収容することにした。これが、C-130で確立した「軍用輸送機の公式」である。ただし、機内への翼胴結合部の張り出しを完全になくすまでには至らず、たいていの機種では程度の差はあれ、張り出しが残っている。その部分は前後の部分よりも天井高が低く、そこの天井高によって、積み込むことができる貨物の最大高が決まる。機種によっては、胴体の上部に張り出しを設けて主翼を取り付けることもある。その方が機内上部の張り出しを少なくできて、空間確保の面で有利だが、空力や構造の面では面倒かもしれない。航空自衛隊向けに開発中の川崎XC-2が、そんな傾向の強いデザインだ。ちなみに、なにかと話題のV-22オスプレイも同様に、主翼は胴体の上に設けた張り出しに取り付いている。機内空間の確保という理由もあるだろうが、もっと大事な理由もある。オスプレイは海兵隊の人員輸送機として使用する関係上、艦上運用も考えなければならない。そして艦上では場所をとらないように、主翼とその両端に取り付いたエンジンを一緒に、グルッと回転させて前後向きにしてしまう。それをやるには、主翼が胴体内部に食い込んでいては具合が悪く、胴体の上部に飛び出している必要がある。つまり、オスプレイの翼胴結合部は他の軍用輸送機と違い、回転させるためのメカが組み込まれているわけだ。その模様は、米国海軍のニュースサイトの記事「First Production V-22 Joins Flight Test Program」に載っている写真で確認できる。
2016年02月15日CORSAIRから、高密度遮音素材の二層構造で静音性を高めたE-ATX対応PCケース「CORSAIR Carbide Series Quiet 600Q」がリリースされる。代理店のアスクやリンクスインターナショナルを通じて、2月13日の発売予定。店頭予想価格は22,600円(税別)前後。E-ATX対応の倒立フルタワーPCケース。フロント、トップ、左右サイドパネルの内側に、高密度遮音素材による二層構造を採用。内部から発生するノイズを遮断し、静音性を高めている。ケース内部はマザーボード倒立設計となっており、効率的なエアフローを構築可能。最大で360mmサイズのラジエターを内蔵できるスペースも用意する。フロントパネル内側とボトム裏面には、取り外し可能なマグネットフィルタも装備。標準搭載ファンは前面に140mm×2基、背面に140mm×1基。オプションで前面に120mm×2基 / 140mm×2着、背面に120mm×1基 / 140mm×1基、底面に120mm×3基 / 140mm×2基を内蔵可能。3段階で回転数を制御できるファンコントロールスイッチも搭載する。搭載ベイ数は外部5.25インチベイ×2基、内部3.5インチ / 2.5インチベイ×2基、内部2.5インチベイ×3基。3.5インチサイズのドライブはツールレスで増設でき、内部3.5インチベイはドライブケージごと取り外せる構造。ドライブレールの内側には、HDDなどの動作振動を吸収する制振用シリコンゴムが装着されている。5.25インチベイ部分は、マグネット仕様のベイドアを装備。内側には吸音材が張り付けられているので遮音性も高い。主な仕様は、拡張スロット数が8基、拡張カードスペースが最大368mmまで、搭載できるCPUクーラーの高さは最大200mmまで、搭載できる電源の奥行きは210mmまで。外部インタフェース類はUSB 3.0×2基、USB 2.0×2基、ファンコントロールスイッチ、オーディオ入出力。本体サイズはW350×D600×H535mm、重量は約3.6kg。対応フォームファクタはE-ATX(12×10.6インチ) / ATX / マイクロATX / Mini-ITX。また、サイドパネルに大型のアクリルウィンドウを採用した「CORSAIR Carbide Series Quiet 600C」も同時に発売される。静穏仕様ではないが、ワンタッチでサイドパネルを開閉でき、内部にアクセスしやすい仕様だ。その他のスペックは共通。
2016年02月05日前回は主翼の構造を取り上げたので、今回は胴体の構造を取り上げてみよう。ただし、機体の用途によってかなりの違いがあるので、まずは身近な輸送機の話から始めることにする。○輸送機の胴体は茶筒であるここでいう輸送機には、軍用輸送機と、いわゆる民航機(旅客機・貨物機の両方)を含む。要は、「大きな筒状の胴体内に人やモノを積む飛行機」である。登山をする方なら御存じの通り、高度が上がると気圧や気温が下がる。そのままでは人が過ごすには具合が悪いので、機内は温度と圧力を高めて、特別の装備がなくても普通に過ごせる程度の環境を維持している。機内の気圧を高める操作あるいは仕組みのことを与圧という。ところが、与圧をかけると機体の内外で圧力差が生じて、それに起因する負荷が胴体の構造部にかかってくることになる。そこで、輸送機の動体は円筒形、あるいはそれに近い断面形状にするのが一般的だ。四角い断面形状にすると、角の部分に負荷が集中してしまうから、円筒形にする方が軽さと強度の両立という点から見て有利だ。胴体の断面形状がどうなっているかは、旅客機に乗ってみれば容易に理解できる。外から見れば胴体断面が円筒形になっているのは一目瞭然だし、機内でも窓側の席に座っていると、側壁が湾曲している様子が分かる。その胴体の内部構造はどうなっているか。まず、前後方向に走る骨組み(縦通材)と円周方向に走る骨組み(フレーム)を組み合わせており、その外側に外板をリベット止めした構造である。ただし、リベットが外に突出していると凸凹になって空気抵抗を増やすので、外板の中にリベットの頭を埋め込んだ、いわゆる沈頭鋲を使用するのが普通だ。つまり、輸送機の胴体は「内側に縦横の骨組みを入れて強度を持たせた、巨大な茶筒」である。鶏卵だと殻だけで強度を維持しており、内側に骨組みはついていないが、飛行機の胴体だと卵の殻のようにはいかないので、骨組みを加えて強度を持たせている。ただし、茶筒といっても前端部と後端部はそれぞれ絞り込んだ形にしないと空力屋から文句が出るし、そもそも強度を維持していない。そこで、半球ないしはそれに近い形状にして強度を持たせている。ちなみに、1985年の日航ジャンボ機墜落事故で問題になった圧力隔壁とは、この半球形の後端部のことである。実際にはその後ろまで胴体構造は続いているが、圧力隔壁より後ろは与圧の対象になっていない。旅客機だと内装材が取り付けられているので、胴体の内部構造を見ることはできない。そこで現物を見る機会としてお薦めしたいのが、自衛隊や在日米軍の基地公開。たいてい、何かしらの輸送機が来て一般公開されるが、そのときには機内も見せてくれることが多い。そして、軍用輸送機の機内は実用本位で、内装パネルはなく断熱材だけだ。だから、胴体を構成する縦通材やフレームがそのまま見える部分がある。余談だが、この辺の考え方は潜水艦も似ている。前後を半球ないしはそれに近い形にした筒で構成するところは、まるで同じだ。ただし潜水艦の場合、圧力は中からではなく外からかかる。○胴体の断面形状いろいろ強度を持たせることを考えると、胴体の断面形状は真円にするのが一番いい。そして、大きくなるほど強度面の要求が厳しくなるから、必要なスペースを確保しつつも、最小限の直径で済ませたい。しかし、輸送機として使うことを考えると機内スペースの確保という課題もついて回る。少なくとも、機内で人が立って歩ける程度の高さはないと困るから、これで高さの最小値は決まってしまう。これが問題になるのは、どちらかというと小型の機体ではないかと思われる。大型機なら必然的に直径が大きくなるから、機内で人が立てるぐらいの高さは確保できる。例えば、ボーイング747の胴体外径は6.49メートル、エアバスA330/340の胴体外径は5.64メートルもある。しかし、機体を小型にまとめるために直径を小さくして、かつ真円にすると、幅もさることながら、高さが足りなくなってくる。だから、縦長の楕円形胴体断面にする機体も結構ある。三菱MRJがこれだ。小型の単通路機になると、この手の胴体断面が増えてくる。また、ボーイング707みたいに上半分と下半分で異なるサイズの円筒形にして、両者をつなぐこともある。境界部分に角ができるので強度の面では不利だが、過度に大きくしないで、かつ所要のスペースは確保する、という観点から導き出された手法。ボーイング747の前半部やエアバスA380みたいに客室を2層構造にすると、真円では大きくなりすぎるので、こちらも楕円形あるいは2つの円筒を組み合わせた構造になる。この場合にはもちろん、上のほうが小さい断面になる。ちなみに、規模が異なる複数の機種をラインアップしているメーカーでは、胴体の断面を共通化することがある。例えば、ボーイングの707/727/737、エアバスのA300/A330/A340が、そういう関係に当たる。○機体構造の寿命とサイクル数前述した与圧の関係で、機体が上昇して周囲の気圧が下がると、胴体には内側から外側に向かう圧力がかかるので、いくらか膨張する。機体が下降すると逆になる。つまり、1回のフライトごとに「延び」と「縮み」の変化が1回ずつかかることになる。だから、フライトを多く繰り返した機体は、それだけ胴体の構造材が傷んでいることになる。そこで注意しないといけないのは、製造から経過した年数とフライトの回数が必ずしも一致しないことだ。例えば、長距離国際線の機材では、胴体の伸縮は1日1~2回程度で済む。しかし、短距離国内線やLCCの機材は1日に何フライトもするから、胴体の伸縮は1日に何回も発生する。もちろん後者のほうが、胴体の構造材にかかる負荷は増えるし、金属疲労が起きやすい。針金を手でポキポキと曲げたり伸ばしたりしていると、そのうちポキンと折れてしまうが、それと似ている。だから、ボーイング747には「-100SR」という日本国内線専用モデルがあった。通常の「-100」よりも機体構造や降着装置を強化して、頻繁な離着陸に起因する負荷繰り返しの増大に耐えられるようにしたモデルである。
2016年02月01日東芝は12月21日、ライフスタイル事業グループの構造改革について発表した。映像事業では国内市場向けに自社開発・販売を継続していく。○映像事業映像事業においては、かねてから海外テレビ事業について東芝ブランド供与型ビジネスへ移行するとしていたが、国内市場についても明らかにした。国内人員削減などによって固定費削減・収益力強化を図り、自社開発・販売を継続していく。海外テレビ事業では、北米と欧州において台湾コンパル社へすでに東芝ブランドを供与している。中国を除くアジア地域と中近東アフリカ地域、ブラジルにおいてもブランド供与型ビジネスへ移行することを明らかにした。今後は、経営資源を国内市場に集中させることによって、2016年度(2017年3月期)でテレビの年間販売台数を高付加価値製品を中心に約60万台まで絞り込む。製品の大半を海外から調達する方針だが、ホテル需要向けにカスタマイズ化された製品のBtoB需要を見込んで、一部の高画質小型製品は東芝メディア機器で製造する。東芝メディア機器での組み立ては2016年度で約16万台を想定している。また、映像事業に関わる国内外人員の約8割弱に相当する約3,700人の人員対策を実施。国内人員については、2015年度末までに再配置および再就職支援を含む早期退職優遇制度を実施することを決定した。○家庭電器事業家庭電器事業においては、国内外人員を削減するとともに、国内首都圏の拠点を現在の6拠点から3拠点に集約。オペレーションの効率化などによって、固定費削減を図る。家庭電器事業では約1,800人の人員対策を実施。効率化のための施策のほか、「他社との事業再編も視野に入れます」としている。インドネシアのテレビ工場売却にともない、同じ敷地内にある洗濯機工場も閉鎖。国内外での二槽式洗濯機の自社製造・販売を終了し、今後はドラム式洗濯機や全自動洗濯機に特化する。○青梅事業所ライフスタイル事業グループの資産効率化のため、開発拠点である青梅事業所を閉鎖および売却する方針だ。売却先など開示すべき事項があれば速やかに公表するとしている。
2015年12月21日国立天文台は12月4日、天の川銀河中心に潜む超巨大ブラックホール周囲の磁場構造を解明したと発表した。同成果は、国立天文台水沢VLBI観測所 秋山和徳 博士と本間希樹 教授を含む国際研究チームによるもので、12月3日付けの米科学誌「Science」に掲載された。同研究グループは今回、天の川銀河中心に存在する超巨大ブラックホール「いて座A*」を観測。いて座A*は、地球からおよそ2万5000光年の距離にある地球に最も近い超巨大ブラックホールで、太陽のおよそ430万倍もの質量をもつ。しかし、その直径はおよそ2600万kmと、太陽の約20個分の幅となっており、地球から見たときの見かけの大きさはわずか10マイクロ秒角。ブラックホールの強い重力によって空間がゆがむため、ブラックホールの姿も5倍程度に拡大されて見えると考えられてるが、それを考慮しても周囲の様子を明らかにするためには非常に高い解像度の望遠鏡が必要であった。そこで今回、米カリフォルニア州にある「CARMA」、アリゾナ州にある「SMT」、ハワイ州にある「SMA」と「JCMT」という3カ所4台の電波望遠鏡を「超長基線電波干渉法(VLBI)」という技術を用いて結合させ、直径4000kmに相当する巨大な電波望遠鏡を構成し、波長1.3ミリメートルの電波の観測を実行。約50マイクロ秒角の解像度を実現した。観測の結果、いて座A*のブラックホール半径の6倍程度の領域から出る放射が、直線的に偏光している様子が初めて計測された。また今回計測された偏光の度合いから、いて座A*のまわりの磁力線は一部が渦を巻いていたり複雑に絡み合ったりしていることが明らかになった。これについて同研究チームは「絡まったスパゲッティのようだ」とコメントしている。国立天文台は今回の成果について、今後ブラックホールそのものを直接撮像する「Event Horizon Telescope」計画にとって重要な一歩となったとしている。
2015年12月04日理化学研究所(理研)は11月30日、X線自由電子レーザー施設「SACLA」のX線レーザーを用いた連続フェムト秒結晶構造解析により、タンパク質が持つ硫黄原子を利用した「S-SAD法」でリゾチームタンパク質の結晶構造を決定することに成功したと発表した。同成果は、理研 放射光科学総合研究センター SACLA利用技術開拓グループ 菅原道泰 特別研究員、岩田想 グループディレクター、XFEL研究開発部門 ビームライン研究開発グループ 矢橋牧名 グループディレクターと東京大学大学院理学系研究科 中根崇智 研究員、大阪大学 蛋白質研究所 蛋白質解析先端研究センター 鈴木守 准教授、高輝度光科学研究センター XFEL利用研究推進室 登野健介 チームリーダーらの研究グループによるもので、英科学誌「Acta Crystallographica Section D: Biological Crystallography」に掲載されるのに先立ち11月30日付けのオンライン版に掲載される。大型放射光施設「SPring-8」の放射光を用いたタンパク質のX線結晶構造解析では、一般に約30μm以上のタンパク質結晶が必要だが、特に創薬などの研究用途で重要なヒトを含む動物由来のタンパク質は、結晶化に使用できる十分な量を得るのが難しく、析出する結晶も回折実験に適した十分なサイズに成長しない。また、回折実験ではタンパク質結晶が放射線損傷を受けることも大きな問題だった。SACLAのX線レーザーを用いた連続フェムト秒結晶構造解析では、試料の放射線損傷が起こることなく、μmサイズかそれ以下のタンパク質微小結晶でも立体構造が決定できる。また、一般にX線結晶構造解析では、タンパク質立体構造を決定する際に類似構造のタンパク質モデルを利用するが、類似構造がないタンパク質の場合は、水銀、白金などの重原子を結合させたタンパク質の結晶を用い、その重原子からの「異常分散効果」を利用して構造を決定する。最近では、タンパク質重原子化の手間を除くため、重原子の代わりにタンパク質の持つアミノ酸の硫黄原子を利用した単波長異常分散法「S-SAD法」が用いられている。今回の研究では、同研究グループがこれまでに開発した、少量の試料でさまざまなタンパク質の回折実験が行える手法「グリースマトリックス法」を用い、SACLAのX線レーザーを利用した連続フェムト秒結晶構造解析で、S-SAD法によるリゾチームタンパク質の構造決定に成功。測定波長1.77Åで、サイズ約7~10μmのリゾチーム結晶から、回折分解能2.1Åの回折データを収集した。今後は、結晶サイズ、放射線損傷の問題からこれまで構造決定が困難であったタンパク質でも、SACLAを利用したS-SAD法により構造決定が可能となる。また、創薬ターゲットとなるさまざまなタンパク質の構造解析への適用が期待できるという。
2015年12月01日日立製作所と日立コンサルティングは11月30日、日立グループの構造改革「Hitachi Smart Transformation Project」で培ったノウハウを活用し、グローバルにビジネス展開する日本企業の抜本的な構造改革を支援する「Transformation支援サービス」を12月1日より販売開始すると発表した。同サービスは、構造改革を実行する製造企業に対し、プロジェクト体制や改革の進め方に関する上流コンサルティングから、SCM(Supply Chain Management)ソリューション、グローバル調達ロジスティクスサービスなどのバリューチェーンに関わる各種ソリューション・サービスを提供する。発表会では初めに、日立製作所 Smart Transformation Project強化本部 プロジェクト・マネジメント推進室 室長の村山昌史氏が、「Hitachi Smart Transformation Project」について説明した。同社はリーマンショック後、過去最大の赤字を計上したことから、事業構造の改革を着手。改善活動を進めてきたが、もっと革新的な変革が必要だとして、同プロジェクトに着手したという。同プロジェクトの基本コンセプトは「グループ全体での最適化を実現する」「しごとのやり方を見直し、コスト構造などを変革することで、『最適な品質を低コストで実現する』を体現できる体質に作り変える」だ。村山氏は、同プロジェクトの位置づけについて、「社会イノベーションの事業強化に向けた成長投資の資金を創出するため、コスト構造を抜本的に見直し、キャッシュの創出力を強化するもの」と説明した。実際、同プロジェクトはコスト削減の目標額である4200億円を達成する見込みだという。また、Cash Conversation Cycleに新たなKPIを設定し、キャッシュフローの改善を推進している。同サービスについては、日立製作所 社会イノベーション事業推進本部 ソリューション・ビジネス推進本部 インダストリープロジェクト本部 本部長の権守直彦氏が説明を行った。権守氏は、「Transformation支援サービスでは、当社がHitachi Smart Transformation Projectにおいて試行錯誤を続ける中で培ったノウハウや効果を創出したソリューションを提供する。すでに実績を出している試作は80種類以上に及ぶ」と、同サービスの特徴を語った。同サービスを利用すれば、Hitachi Smart Transformation Projectで活用した各種テンプレートやアプローチを活用できるので、プロジェクトを短期間で推進できるという。同サービスは、「全体改革計画策定フェーズ」「改革構想具体化フェーズ」「改革実行フェーズ」の3つのフェーズに基づいて具体的なサービスが提供される。「全体改革計画策定フェーズ」は日立コンサルが中心になって進め、「改革構想具体化フェーズ」はテーマによって2社で分担し、「改革実行フェーズ」は日立のカンパニーまで広げて連携して進めていく。全体改革計画策定フェーズで提供される「全体改革計画策定支援コンサルティングサービス」については、日立コンサルティング 取締役の久保年弘氏が説明を行った。久保氏は、「全体改革計画策定支援コンサルティングサービス」のポイントについて、「製造業のお客さまは他社のことを尋ねることが多く、日立を例に紹介することも多い。そうしたことから、効果が実証された80以上の施策群を提供できる点は有意義」とした。これまでのコンサルティングサービスとの違いについては、「ノウハウの活用により、インプットとリファレンスが増えるため、プロジェクトのスピードが上がること」と述べた。改革実行フェーズでは、ソリューション・サービスとして、「Hitachi Total Supply Chain Management Solution/IoT」「グローバル調達ロジスティクスサービス」「グローバル会計ソリューション」などが提供される。Hitachi Smart Transformation Projectでは、グループ全体で物流を最適化する輸送サービスが構築されたが、このサービスにより、製品の量がまとまることで輸送の頻度が上がり、在庫を減らすことができたという。Transformation支援サービスでは、このサービスもノウハウとして、も提供することができる。計画策定に関するサービスは大規模企業が想定されているが、テーマを絞った形で日立が提供するソリューションやプラットフォームを活用することで、中規模企業でも効果を得ることが可能だという。同社としては、売上1000億円を目安としているとのことだ。
2015年12月01日セイコーエプソンは11月19日、折りたたみ式新型アーム構造を採用した小型6軸(垂直多関節型)産業用ロボット「Nシリーズ」を開発したと発表した。同シリーズは、従来機種比で約40%減となる600mm×600mmの設置面積を実現したほか、重量も同2/3と軽量化が図られている。また、6軸ながら、ショートカットモーションで多面方向へのアクセスが可能で、繰り返し精度は±20μmを実現している。さらに、第3軸アーム肘が張り出していないため干渉物に当たらず、従来必要であった回避動作が減り、教示を含めた装置立ち上げ時間ならびにタクトタイムの短縮を図ることが可能だという。なお価格はオープンで、2016年5月からの出荷を予定している。
2015年11月20日岡山大学は11月19日、低温の水は均質ではなく、多様で豊かな内部構造を持っていることを明らかにしたと発表した。同成果は同大学大学院自然科学研究科(理)理論化学研究室の松本正和 准教授、矢ヶ崎琢磨 特任助教、田中秀樹 教授の研究チームによるもので、11月10日に米国物理学会の国際科学雑誌「Physical Review Letters」オンライン版に掲載された。水を4℃以下に冷やすと膨張しはじめることが知られている。低温での液体の膨張は、水以外の物質には見られない特異な性質あり、比熱が大きい、固体の密度が液体より低いなど、水の特異な性質と深く関わっているとされる。水を0℃以下に過冷却した場合にも膨張は続き、実際、水を急冷してできるアモルファス氷(非晶質の氷)の密度は、結晶の氷と常温の水の中間になる。このことから、過冷却された水やアモルファス氷は結晶氷に似た秩序構造を持つと考えられていたが、流動性のある過冷却水が結晶氷と同じ構造であるとは考えにくく、水が過冷却されるにつれてどのような構造になっていくのかは謎とされてきた。今回、同研究グループは計算機シミュレーションにより、過冷却された水の微細構造を解明。水は液体状態では、一般に分子の配置が結晶のような周期性をもたず、どこも均質に乱れていると考えられてたが、同研究により水を過冷却すると、「拡張多胞体」と呼ばれる、1nm程度の秩序あるクラスタが徐々に増え、不均一な構造となることがわかった。さらに、計算機シミュレーションに加えてグラフマッチングという手法を用いることで、液体のなかの乱れた構造を網羅的に分類して、拡張多胞体が過冷却水やアモルファス氷で最も主要な秩序構造であることを明らかにした。今回発見した拡張多胞体構造には、右手型と左手型の、互いに鏡映対称で重ねあわせられない2種類の構造(キラル構造)があり、過冷却水やアモルファス氷では、この2つの微細構造が混在していると考えられるという。同研究グループは、水を冷やすと徐々に顕著になる、さまざまな特異な性質が、この構造に由来すると考えると、従来よりも明確で一貫した説明を与えられると見込んでいるほか、同研究で用いた網羅的な構造分類手法により、細胞内などの狭い空間にある水や、電解質水溶液など、通常の水とは異なる性質の水の構造の違いを見つけ出し、その役割を詳しく解析できるようになるとしている。
2015年11月20日KODAWARIは、素材にポリカーボネートとTPUを採用した二重構造のiPhone 6/6s、iPhone 6 Plus/6s Plus用ケース「ITG Level PRO case」の販売を開始した。価格はともに3,100円(税抜)。同製品は、素材にポリカーボネートとTPUを採用した二重構造のiPhone 6/6s、iPhone 6 Plus/6s Plus用ケースである。本体背面に一般的なサイズのICカードを1枚収納可能なスロットを装備。付属の読み取りエラー防止シートも一緒に入れておくことで、Suicaなどを出し入れすることなく、そのままタッチして利用できる。また、背面にはICカードを差し込むスリットが切られており、スロットに収納したカードを差し込むことで、縦横どちらでも固定可能なスタンドとして使うことが可能となっている。ITG製の強化ガラスフィルムの保護を考慮して、装着したフィルムからの段差を1mm高く設計。iPhoneだけでなく、装着したガラスフィルムも保護する。本体を装着した状態でiPhoneの各種操作が可能。イヤホンジャックとLightning端子の開口部は広めにとってあり、接合部が大きいサードパーティのイヤホンやLightningケーブルでも余裕をもって対応する。さらに本体下部の左右にはストラップホールが穿たれており、各種アクセサリを装着できる。カラーは、ブラック、ホワイト、サンド、レッド、ピンクの5色。なお、ピンクは直販限定モデルとなっている。
2015年11月19日構造計画研究所は10月26日、屋内3Dデジタル化技術を提供するスタートアップ企業である独NavVisのインドア・マッピング及びナビゲーション・プラットフォーム「NavVis(ナビビズ)」の日本市場における販売及びソリューション展開について、業務提携契約を締結した。同製品は、「M3 Trolley」「IndoorViewer」「Navigation App」の3つのソフトウェアにより構成する。M3 Trolleyは、建物や地下街などの屋内空間を、1,600万画素の画像と点群でデジタル化する3Dマッピング・システム。マッピングした3D屋内空間データは統合したソフトウェアによりワンクリックで自動処理し、IndoorViewerによりブラウザで閲覧・共有可能になる。IndoorViewerは、M3 Trolleyでマッピングした3D屋内空間データをブラウザで閲覧・共有可能にするWebアプリ。閲覧に加えて、3D空間の任意の場所に設備や展示物の詳細や履歴・ストーリー・SNS連携などのコンテンツを付加でき、対話アプリケーションの構築を容易にするという。Navigation Appは、屋内位置情報サービス向けに開発したNavVisのビジョン・ベース測位エンジンであり、屋内でも歩行者・来場者への「turn-by-turnナビゲーション」が可能になるとのこと。同社は同製品の適用例として、設備管理、リテール、建設現場監理の3つを挙げている。設備管理では、巨大で入り組んだ建物や図面が無い建物でも1日で完全にモデル化し、迷路のようなフロアも完璧にナビゲーションするという。さらに、保有資産の情報を屋内の位置情報と紐付けることで、現場での作業管理とワークフローを最適化するとしている。また、リアルな3Dマップを利用した保守保全業務のオリエンテーションやノウハウ伝承も可能になるとのことだ。リテールでは、オンラインとオフラインそれぞれの良い点を組み合わせた、顧客にとって最良のショッピング環境を手頃な費用で簡単に実現し提供するとしている。また、リアルな仮想環境で商品を提示し活き活きとしたオンライン・ショッピングを体験できるという。建設現場監理では、計測した3Dモデルを元に、ブラウザ上でサイズや距離を算出したり、位置を測定したりできるとのこと。また、建設現場の状況と品質を記録し、各工程の進捗をオンラインで追跡可能にするという。工事関係者間での円滑で確実なコラボレーションを可能にし、効率的な建設管理を実現するとしている。構造計画研究所は今回の提携により、日本語での同製品の販売・サポートの他、実証実験的な取り組みから大規模なシステム構築までサポートすべく、同社の所員・機材によるマッピング・サービスの提供や活用ソリューションの提案からカスタマイズ構築まで、NavVisとのパートナーシップのもとで事業を展開していくという。
2015年10月27日サイコムは16日、Skylakeこと第6世代Intel Coreを搭載し、水冷静音構造を備えたファイナルファンタジーXIV推奨PC「G-Master Hydro Z170-FFXIV」を発売した。BTOに対応し、税込価格は185,540円から。独自の水冷静音システムでは、CPUとグラフィックスカードを水冷化。また、筐体内部にLED発光システムを備えるなど、ゲーミング仕様となっている。構成例として、Intel Core i5-6400(2.70GHz)搭載モデルの価格は185,540円(税込)。CPU以外の主な仕様は、チップセットがIntel Z170 Express、メモリがDDR4-17000 8GB(4GB×2)、ストレージが1TB SATA HDD、グラフィックスがNVIDIA GeForce GTX 970 4GB、電源が750W 80PLUS GOLD認証。OSはWindows 7 Home Premium SP1 64bit。本体サイズはW232×D531×H451mm。CPUを変更した構成例として、Intel Core i5-6500(3.20GHz)搭載モデルが187,980円、Intel Core i5-6600(3.30GHz)搭載モデルが191,460円、Intel Core i5-6600K(3.50GHz)搭載モデルが195,930円、Intel Core i7-6700(3.40GHz)搭載モデルが205,890円、Intel Core i7-6700K(4.00GHz)搭載モデルが213,340円(いずれも税込)。
2015年09月16日信州大学は9月14日、独自の人工タンパク質を用いた「タンパク質ナノブロック(PN-Block)」を開発し、複数種類の超分子ナノ構造複合体を創り出すことに成功したと発表した。同成果は同大学大学院総合工学系研究科博士課程3年の小林直也氏、同大学学術研究院繊維学系の新井亮一 助教、横浜市立大学大学院生命医科学研究科の雲財悟 助教らの共同研究グループによるもので、米国化学会誌「Journal of the American Chemical Society」の9月9日発行号に掲載された。同研究グループは、独自の二量体人工タンパク質と三量体ファージタンパク質を融合することで「PN-Block」を開発し、樽型(ラグビーボール型)や正四面体(テトラポッド型)などの超分子ナノ構造複合体を自己組織化により同時に創出することに成功した。同技術は将来的に次世代半導体のための有機無機ハイブリッドナノ材料開発、次世代医薬品のためのドラッグデリバリーシステムや人工ワクチン開発などへの応用が期待されるという。
2015年09月14日東京大学は9月8日、折紙の数理を用いることで展開時に従来の100倍の固さを持つ折り畳み構造を開発したと発表した。同成果は同大学大学院総合文化研究科広域科学専攻の舘知宏 助教、イリノイ大学アーバナシャンペーン校工学部エフゲニ・フィリポフ大学院生、ジョージア工科大学工学部グラウシオ・ポーリーノ教授の研究グループによるもの。折紙を応用すると、シート材料を折り畳んで収納し、必要に応じて三次元的に展開して用いる展開構造物として利用することができる。しかし、従来の折紙構造物はシート材料自体が曲がることで、意図しない変形が容易におき、展開時に構造的な固さが得られないという制限があった。今回、研究グループは折紙に基づく変形可能な立体構造を組み合わせることで、従来の100倍の固さを持つ折り畳み構造を開発。この構造は、部分的な展開が起きず、全体形状が一様に変形するため、端部を駆動すると変形が全体にすみやかに波及して展開することが可能となる。この性質は形状によって決まり、さまざまな大きさでの応用でき、可動式の屋根や折りたためる建築、航空宇宙分野の展開構造物、ロボットのアクチュエーターなどへの応用に適しているほか、マイクロスケールで実現すれば収縮・膨張し、固さがコントロール可能な材料などの開発につながることが期待される。
2015年09月08日広島大学は8月27日、理論的に予言されていた液体ビスマス中の原子が等間隔に整列した構造(パイエルス歪)の実証に成功したと発表した。同成果は、同大の乾雅祝 教授、梶原行夫 助教、宗尻修治 准教授、熊本大学の細川伸也 教授、慶應義塾大学の千葉文野 専任講師、高輝度光科学研究センター(JASRI)の尾原幸治 研究員、筒井智嗣 主幹研究員、理化学研究所(理研)のアルフレッド・バロン准主任研究員らによるもの。詳細は米国科学誌「Physical Review B」(オンライン版)に掲載された。ビスマスは安定な元素の中で最も原子番号が大きく、各原子が3本の短い結合と3本の長い結合で結ばれた歪んだ立方構造をとる半金属として知られており、その構造はパイエルス歪が形成されることで実現されている。融点が271℃、沸点が1551℃と約1300℃の温度範囲にわたり液体状態を示すことでも知られており、近年の科学演算の性能向上により、液体中の原子や分子が、協調的に集団運動することによって生まれる縦波音波(粗密波)や横波音波である「音響モード」が10nm-1以上の運動量の大きい領域まで残存し、励起エネルギーが運動量に依存しない一定値になる特異な領域が現れることが予言されるようになっていた。今回、研究グループは、SPring-8を用い、運動量の小さな領域で広い範囲の励起エネルギーを測定したところ、液体ビスマスの音響モードを表す非弾性散乱ピークの振る舞いが理論による予言と一致することが証明されたとするほか、ナノオーダーの領域で見た場合、パイエルス歪を伴う結晶の原子配列が形成されていることが示唆されたとする。この結果について研究グループは、液体中には、原子間にはたらく力を忠実に反映した規律のある構造がナノメートル程度の範囲にわたって形成されていることが示されたことから、原子間に働く力を制御することでナノ構造をデザインできることが実験的に明らかとなったと説明しており、今後、液体母合金からの新物質創成やナノテクノロジーなどの分野に、大きなインパクトを与えることが期待されるとしている。
2015年08月28日IDC Japanが8月25日に発表した「国内非構造化データ向けストレージシステムのユーザー利用実態調査結果」によると、非構造化データ向けストレージ・システムの法人ユーザーは、半数近くが2年後に総容量が増えると見ているという。近年、非構造化データの大容量化や種類の多様化、個数の増加などにより、非構造化データ向けのストレージ容量が急激に増加している。特に、同社が提唱する「第3のプラットフォーム」に含まれるクラウドやモビリティ、ビッグデータ/アナリティクス、ソーシャル技術の台頭によって急増しているデータやコンテンツは非構造化データが主体となっており、今後の非構造化データの増加を牽引する大きな要因になるとのことだ。同社の調査結果によると、回答者が所属する組織において保有・管理している非構造化データ向けストレージの総容量の2年後の増減見込みは、「変わらない」が32.0%で最多だったが、「10~30%増」が17.7%と2番目に多かった。また、31%以上の増加を見込む回答が合わせて17.0%に上り、従業員規模が大きいとその割合はさらに高くなっているという。同社ストレージシステムズ マーケットアナリストの宝出幸久氏は、「非構造化データ向けストレージにおいて、既存の投資パターンを踏襲した投資を継続することは投資や運用管理コストの増加に繋がるであろう。効率的かつ戦略的な非構造化データ向けストレージ投資の実現のためには、スケールアウト・アーキテクチャ、Software-Defined Storage、オブジェクト・ストレージ、ハイブリッド・クラウドといった新しいアーキテクチャを積極的に採用すると共に、横断的な分析ニーズにも対応可能なデータの一元管理プラットフォームを実現し、ビジネス価値の創出に直結するストレージ・インフラを構築することが重要である」と分析している。
2015年08月26日メリタジャパンは8月18日、保温性のあるステンレス製真空二重構造のポットを採用したコーヒーメーカー「NOAR(ノア)」を発表した。発売は8月下旬で、希望小売価格は税別12,000円だ。NOARは、コーヒーサーバー部に保温性のあるステンレス製真空二重構造のポットを採用。ヒーターなどを使わないため、長時間コーヒーを保温しても煮詰まらず、コーヒーの香りや味が長持ちしやすい。氷を入れれば保冷もできる。また、ポットは持ち運び可能だ。また、コーヒーの抽出には、同社独自の1つ穴フィルターを採用。内側に刻まれたミゾで熱湯の流れをコントロールし、最適な状態でコーヒーを抽出する。フィルター底面にはしずく漏れ防止機能が搭載されており、ポットを外してもプレート部が汚れにくい。ポットは容量が700mlで、口径が約70mmと大きく内部まで洗いやすい。フタはレバー式を採用。本体にはコーヒー抽出時と終了時に音で知らせる「お知らせアラーム」機能を持つほか、抽出終了の約1分後に自動で電源を落とす「オートオフ」機能も備える。カラーはブラックとホワイト、グレーの3色。サイズはW269×D152×H311mmで、重量は1.7kg。
2015年08月18日米Googleは8月10日(現地時間)、新たに「Alphabet」というホールディングカンパニーを設立し、Googleなどを傘下に置く大胆な構造改革を発表した。Google共同創業者であるLarry Page氏がAlphabetのCEO(最高経営責任者)に、もう1人の創業者であるSergey Brin氏が社長に就任。最大の傘下企業となるGoogleは、プロダクト担当シニアバイスプレジデントだったSundar Pichai氏を新CEOとして再出発する。Web検索から始まったGoogleは、YouTubeを買収して成長させ、ブラウザを開発し、そしてモバイルに進出、インキュベータプロジェクトでは自動運転カーや医療・バイオなども手掛けている。革新的なアイディアを実現するのがGoogleの企業精神だが、変化を生み出し、新たな分野へとアイディアを広げるにつれて、Web企業の枠を超えて事業が拡大し、事業同士の関連性は薄れていた。そこで関連性のある事業同士をまとめ、それぞれが強いリーダーシップを持ったCEOの下で成長できるように複合形態を採用した。アルファベットは人類の最も重要なイノベーションである言葉を表す文字であり、また「Alpha(金融用語のアルファ値)-bet」と読むことでGoogleから培ってきた企業精神が伝わるため、Alphabetという社名を選んだという。Page氏とBrin氏の他は、Eric Schmidt氏がAlphabetのエグゼクティブチェアマンに、David Drummond氏がCLO(最高法務責任者)に就任、Ruth Porat氏がAlphabetとGoogleのCFO(最高財務責任者)を兼務する。8-K文書によると、最大の傘下企業であるGoogleは検索、広告、マップ、アプリ、YouTube、Adnroidと関連する技術インフラを手掛ける。Calico(バイオテック)、Nest(家電)、Fiber(光回線)、Gogole Venture(ベンチャーキャピタル)、Google Capital(同)、Google X(インキュベータプロジェクト)などはGoogleビジネスから分離される。Alphabet Inc.は、株式公開企業としてGoogle Inc.に置き換わる。すべてのGoogle株式は、同じ発行数、同等の権利のままAlphabet株式に切り替わるが、Nasdaq市場において引き続きGOOGLとGOOGとして取り引きされる。
2015年08月11日カシオ計算機は23日、耐衝撃ウオッチ「G-SHOCK」の新製品として、過酷な陸上環境で役立つ耐振動構造や、新開発の防塵・防泥構造を採用した「MUDMASTER」(マッドマスター、型番:GWG-1000)を発表した。バンドカラーとして、カーキ、イエロー、ブラックの3種類を用意。8月7日から発売し、税別価格は各カラーとも80,000円。MUDMASTER(GWG-1000)は、陸・海・空をテーマにした人気シリーズ「Master of G」の新モデルだ。2015年3月にスイスのバーゼルで開催されたウオッチ&ジュエリーの祭典「BASELWORLD 2015」において、カシオのブースで発表、初披露。このたび日本でも正式に発表となった。製品がイメージしているのは、土砂や瓦礫が積もる厳しい「陸」環境でミッションを行うレスキュー隊。新たな防塵・防泥構造では、ボタン周りをパイプでガードしつつ、ガスケットを封入。りゅうずにもガスケットを装着し、りゅうずをねじ込んだ時の密封性を高めた。また、ドリルや重機などの振動に耐えるよう、耐振動構造も装備した。機能面では、方位・気圧、高度、温度を計測する「Triple Sensor Ver.3」を搭載。目印のない場所で役立つ方位計測、天候の悪化などを予測できる気圧計測機能によって、自然環境をいち早く察知し、ミッションの遂行をサポートする。フェイスデザインには、注意喚起に使われる矢羽形の矢印をモチーフにした極太の時分針や、大型のインデックスを採用。バンドには滑り止めをイメージしたテクスチャーを施すなど、随所にミリタリーテイストを盛り込み、力強く仕上げた。
2015年07月23日富士フイルムは6月18日、ツヤのある肌は肌内部の細胞構造の乱れが少ないことを確認したと発表した。今回の研究では、ヒトを若々しく見せる要素である「視覚的ハリ感」に注目。20~50代の女性被験者の肌内部の状態を解析し、肌がどのような構造になっていればツヤがあるように見えるのかを調査した。その結果、ツヤの目視評価が高い被験者ほど、肌内部における細胞構造の乱れが少ないことがわかった。また、肌表面について、マイクロスコープを用いて肌画像を取得し、皮溝の幅や肌の密度などキメ形態の定量解析を実施。従来から知られている通り、肌表面の凹凸形状であるキメが荒くなると肌のツヤが減少することを確認した。さらに、肌のツヤを再現できる独自開発の光学画像シミュレーションシステムを用いて、細胞構造の乱れの程度やキメ形態をそれぞれ変化させた複数の肌モデルを作成し、ツヤの状態を可視化したところ、微細な細胞構造の乱れを抑制することでしっかりとしたツヤになることを実証することができたという。同社は「今回の光学画像シミュレーションおよび解析結果により、肌表面だけでなく肌内部の細胞構造の乱れを整えることでツヤがある肌になり、『視覚的ハリ感』が向上することが示唆されました。今回の研究結果で導き出した条件を満たすことで肌のツヤを向上させ、視覚的ハリ感を生むスキンケア化粧品の開発に応用していきます。」とコメントしている。
2015年06月18日東京大学(東大)と国立天文台は6月9日、アルマ望遠鏡と重量レンズのかけ合わせで、117億光年の距離にある銀河の内部構造を解明したと発表した。同成果は東京大学理学系研究科の田村陽一 助教と大栗真宗 助教および国立天文台の研究グループによるもので、6月9日付けの「日本天文学会欧文研究報告」に掲載された。重力レンズとは、質量が時空の歪みを介して光を曲げる減少で、非常に重い天体の周囲で生じ、その向こう側の天体の見かけの姿を拡大・増光する性質がある。今回の研究では、今年2月にアルマ望遠鏡がとらえた117億光年の距離にあり、爆発的に星を生み出しているモンスター銀河「SDP.81」の画像を、同研究グループが提案した重量レンズ効果モデルを用いて解析した。その結果、「SDP.81」では差し渡し200~500光年の塵の雲が、およそ長さ5000光年の楕円状の領域に複数分布していることがわかった。この塵の雲は、巨大分子雲と呼ばれる、恒星や惑星が生まれる母体だと考えられるという。また、重力レンズ効果を引き起こしている手前の銀河に質量が太陽の3億倍以上におよぶ超巨大ブラックホールが存在することも判明した。今後、アルマ望遠鏡と重力レンズの組み合わせで、なぜモンスター銀河が形成されるのか、どのように超巨大ブラックホールが成長するかの解明につながることが期待される。
2015年06月09日KODAWARIは、素材にポリカーボネートとTPUを採用した二重構造のiPhone 6/6 Plus用ケース「ITG Level 1 Case for iPhone6 & 6 Plus」の先行予約を開始した。価格は2,500円(税抜)。同製品は、素材にポリカーボネートとTPUを採用した二重構造のiPhone 6/6 Plus用ケースである。本体は指紋や油分の付着を防止するためのマット加工が施されている。ハイブリッドな構造にしたことで衝撃に強い仕様となっているが、一般的なタフケースと比較して薄型軽量化に成功しているという。また、ITG製の強化ガラスフィルムの保護を考慮して、装着したフィルムからの段差を1mm高く設計している。本体を装着した状態でiPhoneの各種操作が可能。イヤホンジャックとLightning端子の開口部は広めにとってあり、接合部が大きいサードパーティのイヤホンやLightningケーブルでも余裕をもって対応する。発売は2015年7月6日を予定しているが、SHOWCASE OnlineとSHOWCASE Online 楽天市場、SHOWCASE Online Yahoo!ショッピング、SHOWCASE Online Amazonにて先行予約が始まっている。なお、SHOWCASE実店舗でも予約可能だ。期間は7月5日23時59分まで。
2015年06月09日岡山大学は5月29日、光化学系Iというタンパク質複合体の構造を解明したと発表した。同成果は同大大学院自然科学研究科(理)の沈建仁 教授(同大光合成研究センター長)、菅倫寛 助教と中国科学院植物学研究所の共同研究グループによるもので、5月29日付け(現地時間)の米科学誌「Science」に掲載される。光化学系Iタンパク質複合体は、酸素発生型光合成において、太陽光を生物が利用可能な化学エネルギーに変換する役割を担い、水からの電子と光エネルギーを利用して、二酸化炭素を糖に変換するために必要な還元力を作り出している。高等植物の光化学系I複合体は14個のタンパク質と90個以上のクロロフィル(葉緑素)、22個のカロテノイドなどで構成されており、外側に光エネルギーを集める集光性アンテナタンパク質が4つ結合し光化学系I-集光性アンテナタンパク質複合体が形成されている。光化学系I-集光性アンテナタンパク質複合体における光エネルギーの高効率吸収・伝達の機構を明らかにするためには、同複合体の立体構造を解明する必要がある。同研究グループは、エンドウ豆の葉から精製・結晶化した光化学系I複合体を、大型放射光施設SPring-8を利用することで2.8 Å分解能で立体構造を解析。その結果、155個のクロロフィル分子を同定し、これまで分かっていなかった多くのカロテノイド、脂質分子などの配置を解明した。さらに、詳細な構造が分かっていなかった多くのタンパク質サブユニットの構造を明らかにし、光エネルギーを吸収し、反応中心へ伝達する経路を同定することに成功した。同研究グループは今回の研究成果について、光合成の機構解明や人工光合成での光エネルギー利用効率の向上だけでなく、他の巨大膜タンパク質の結晶構造解析にも重要な知見を提供することになるとしている。
2015年05月29日連載『住まいと安全とお金』では、一級建築士とファイナンシャルプランナーの資格を持つ佐藤章子氏が、これまでの豊富な経験を生かして、住宅とお金や、住宅と災害対策などをテーマに、さまざまな解説・アドバイスを行なっていきます。○支援制度活用のポイント - 耐震診断は信頼できるところに!高齢者世帯などの被害が多い悪徳リフォームの事例として、補強金具の類が意味のない位置に、意味のない形で取り付けられているケースがよく報道されていました。耐震補強金具は取り付ければよいというわけではなく、有効に働くように建物全体のバランスを見て、正しい位置に、正しい方法で取り付けなければ意味がありません。取り付け位置や方法によっては、意味がないどころか、全体のバランスが悪ければ、建物にいびつな力が働き、地震への対応力を弱めて結果になりかねません。無駄なお金を使わないためにも、いきなり耐震工事をするのではなく、しっかりとした耐震診断を依頼してください。できれば工事会社と診断会社は別の方が公平を期待でき、安心です。耐震リフォームの支援制度は、情報・補助金・融資・税制などがあります。どうすれば安心できる耐震改修リフォームとなるのか、先ずは情報収集から利用しましょう。大半の都道府県は耐震診断・改修設計・改修工事すべてに支援制度を設けていますが、改修設計や改修工事については支援を行っていない都道府県もあります。詳細は管轄の地方自治体へ問い合わせください。また、住まいが幹線道路等に面している場合は、耐震診断が義務付けられている場合があり、支援も別途設定されています。○耐震改修補助金制度 - 耐震改修事例を多く入手しよう管轄の市区町村で、耐震診断や工事の依頼先がリストアップされています。診断方法や耐震設計、耐震改修工事の実績などを担当者に相談してください。建物の設計図などを持参すると相談しやすいと思います。最初の診断の相談の時に設計や工事までの流れと仕組み等を一気に把握することをお薦めします。どのような診断をして、どのような工事を行うのか。おおよその費用はどの程度かなどを把握し、補助金制度の有無と併せて、支出しなければならない費用を算出します。補助金の割合は下記の表となっています。詳細は地方自治体にお問合せください。○融資の支援制度 - リフォーム融資の制度は耐震リフォームが要住宅金融支援機構の業務は、一般の住宅ローンについては「フラット35」のように民間住宅ローンを証券化する役割となっていて、支援機構自体は直接の融資を行っていません。しかしリフォーム等については独自の融資制度があります。一般的な改修工事も融資の対象とはなりますが、必ず耐震改修工事を併せて行う必要があります。(※参考:その他に、返済が利子相当分だけで済む高齢者向け返済特例制度もあります。詳しくは住宅金融支援機構にお問い合わせください。『住宅ローンとの賢い付き合い方(3) - リフォームローンにもある減税制度』でも解説していますので参照ください)○税制上の優遇制度 - リフォーム減税制度のメインは耐震改修政府が設けている制度は、当然ながらその目的や狙いがあります。住宅の分野の政策は、住まいが衣食住のひとつで生活上必要なものであること、金額が大きく関連産業の裾野も広いことなどから、経済の活性化の目玉として位置づけられてきています。それに加えて耐震リフォームは、生命と財産を守るという役割の大切さや、一旦地震が発生したならば、二次災害を含めて被害は膨大になり、国の支出も膨大に膨らむことから一般のリフォームやバリアフリー、省エネリフォームよりも重要な位置付けにあり、優遇制度の要となっています。(※参考:リフォームに関する減税制度については、『住宅ローンとの賢い付き合い方(3) - リフォームローンにもある減税制度』を参照ください)<著者プロフィール>佐藤 章子一級建築士・ファイナンシャルプランナー(CFP(R)・一級FP技能士)。建設会社や住宅メーカーで設計・商品開発・不動産活用などに従事。2001年に住まいと暮らしのコンサルタント事務所を開業。技術面・経済面双方から住まいづくりをアドバイス。
2015年04月16日