三菱航空機は1月29日、次世代リージョナルジェット機MRJ(Mitsubishi RegionalJet)に関するWEB情報発信ツール「MRJ Newsletter」第9号にて、2月上旬に初号機の飛行試験を再開するとともに、ローンチカスタマーであるANA向けのMRJ量産初号機に対して領収検査を開始したことを発表した。2015年11月11日に初フライトとなった飛行試験機初号機は、次のフィードバック改修作業を完了し、現在、機能試験を実施している。今後、走行試験を経て2月上旬に飛行試験を再開する予定となっている。飛行試験機初号機に関して、2015年5月に静強度試験に基づく解析予測を実施した結果、一部の部位(胴体中央部の主翼結合部品・胴体フレームの一部品)に通常の荷重を上回る終極荷重をかけると強度が不足することが予測された。航空機の型式証明を取得するためには、飛行中に実際に機体にかかる最大荷重の1.5倍に耐える強度を持つように定められている。そのため今回のフィードバック改修では、主翼と胴体の結合部に局部的に薄板が追加された。なおこの改修は、初期の飛行試験段階では問題視されることではなかったが、最終的に型式証明を取得するために改修を行ったとしている。飛行試験機初号機と2号機に対して、アビオニクスや操縦系統、エンジン系統等のソフトウェアの改修を施し、同3号機は機能試験実施中、客室内装が施される4号機と5号機は最終艤装(ぎそう)作業中で、内装品の組み付け調整作業等を行っている。また、全飛行試験機には主要な構造組み立てや脚の取り付けが完了しており、試験用の計測装置等を組み込まれている。ANAに対するMRJ量産初号機に関しては、1月13日に三菱重工飛島工場にて領収検査を実施。今回の検査対象は主翼骨格組み立てで、ANAの領収検査員が立ち会った。領収検査は製造工程の中で検査ポイントを設け、各胴体・主翼・尾翼等の構造組み立て状態や、各部位の結合状態・艤装状態等を顧客が立ち会って検査するというもの。最終的には機体完成後の地上検査や飛行検査を通じてMRJを受領することになる。ANAの領収検査員からは、「とてもキレイな機体で、ていねいに作られていることが分かりました」と検査合格を得た。また1月18日には、アイルランドのダブリンにてMRJファイナンス・カンファレンスを開催。同地では例年同時期に大規模なファイナンス関係の国際会議が開かれており、同会議についても各国より集まっている金融機関、リース会社、機体評価会社、エアライン等の業界関係者約110人が参加した。会ではMRJの特性や最新開発状況の説明を行うとともに、パートナー会社2社による主要装備品説明のほか、MRJの価値査定プロセス、欧州におけるリージョナルジェット市場や一般的なリージョナル機の資産価値について説明を行ったという。(c)2015 MITSUBISHI HEAVY INDUSTRIES, LTD. All Rights Reserved.
2016年01月29日ゼンリンは1月26日、無人航空機(ドローン)産業の発展を支援する日本UAS産業振興協議会(JUIDA)およびドローン・インテグレーターであるブルーイノベーションと共同開発したドローン専用飛行支援地図サービスの実証実験を開始したと発表した。同サービスは空港周辺や人工密集地などの飛行許可申請が必要な空域に加え、ゼンリンが収集した石油コンビナートなどの飛行危険空域を最新の地図情報に重ねて表示するというもの。また、ブルーイノベーションが開発したユーザーや機体情報の管理機能なども提供する。実験期間は3月中旬までで、実証実験中はモニター利用登録することでPC、スマートフォンのブラウザなどから無料で利用することが可能。同実証実験を通じてモニターからの要望や改善事項を収集し、4月以降のサービス開始を目指すとしている。
2016年01月26日これまで「航空機とIT」というテーマで連載を続けてきたが、ITという切り口だけでは取り上げられる範囲に限りが出てくる。ちょうど三菱MRJの初飛行などもあって航空分野への関心が高まっているように見受けられたので、技術面・全般に話を広げて新たな連載を始めることにした次第だ。○主翼は揺れるもうだいぶ昔の話になるが、職場で上司に「この間、飛行機に乗ったら、主翼がユサユサ揺れてるんだけど、あれって大丈夫なの?」と聞かれたことがある。筆者は「そういうもの」だと承知しているから驚かないが、事情を知らないと、ビックリして怖くなってしまうのも無理はないかもしれない。飛行機の主翼といっても、いろいろある。主翼の形状を示す指標の1つにアスペクト比というのがあって、要は主翼がどれぐらい細長いかを示すものだ。戦闘機だと、前後方向の幅(翼弦長)が大きい一方で横幅(翼幅)は短いから、アスペクト比は小さい。速度性能を重視した選択である。対する旅客機の場合、翼弦長は小さめで翼幅は長い、つまりアスペクト比が大きい。その極めつけはグライダーで、もっと細長い主翼を付けている。太くて短いものよりも、細くて長いもののほうが変形しやすそうに見える。そこで変形しないように頑丈に作ろうとすると、重くなってしまって、飛行機にとっては具合が悪い。飛行機にとって、過剰に重たいことはそれだけで罪である。また、頑丈な主翼を作ろうとすると構造が複雑かつ大掛かりになり、主翼が分厚くなってしまう。それでは空気抵抗が増えるなどのネガが発生する。そして、主翼が細長いのにガッチリして変形しないと、外部からかかる力を受け流すことができない。「柳に風」とでも言えばいいだろうか、適度な弾性を備えていて柔軟にたわむ主翼のほうが、外力を受け流すには具合がよい。こうした事情があり、大型のジェット機が出現した頃から、アスペクト比が高い主翼は弾性体として作るのが普通になった。だから、飛んでいる最中に反り返ったり、ユサユサ揺れることがあっても不思議はない。この設計思想を本格的に取り入れた機体というと、ボーイングB-47ストラトジェット爆撃機が挙げられる。その次に登場したB-52ストラトフォートレスはさらに顕著だ。どちらも、地上にいる時と空を飛んでいる時とでは、翼端の位置がメートル単位で変化する。もちろん、飛んでいる時のほうが翼端が持ち上がっている。B-52を目にする機会はあまりないが、民航機だと顕著にわかるのがボーイング787だ。経済性を重視する最近の民航機は、抵抗軽減のためにアスペクト比を以前よりも大きくとる傾向が強まってきており、その関係もあって、遠目にも「ああ、787だ」とわかるぐらいに主翼が反り返っている。もちろん、こういう変形が発生することは設計した時点で織り込み済みであり、飛行する度に主翼が反り返ったり元に戻ったりという繰り返し荷重を受けて、それでも壊れないことを疲労試験機による地上試験で確認している。○主翼に穴が開くといっても、爆発して穴が開くとかいう話ではなくて。旅客機に乗って主翼より後方の窓側席に座っていると、主翼の様子を見ることができる。巡航中は普通の翼に見えるが、離着陸時にはあれこれと動翼が開いたり、せり出したりする様子がわかる。よくよく見てみると、上面と下面が素通しになっていることがあるので、知らないとビックリするかもしれない。揚力を稼ぐため、離着陸時にはフラップ(下げ翼)というものを降ろす。それによって、主翼の面積を広げる効果とか、下向きの気流を発生させる効果とかを発揮させることで、低速時でも十分な揚力を得られるようにしている。こうしないと離着陸時の速度が高くなってしまい、操縦が難しくなるなどのネガが出る。ボーイング747はトリプル・スロッテッド・フラップといって、降ろした下げ翼が途中で分割された三分割構造になっている。こうやって隙間を作り、そこから気流が吹き出すようにしないと、かえってフラップから空気の流れが剥離してしまい、揚力を持てなくなってしまうのだ。それと比べると、最近の民航機はフラップの構造がシンプルになった。設計・製作・保守する立場からいうとシンプルなほうが好ましいのだが、メカマニア的見地からすると面白くない。と、この辺の話は回をあらためてきちんと書くことにして。ともあれ、「主翼の下面にはフラップを展開する」。一方、主翼の上面にはスポイラーが展開する。こちらは前ヒンジでシンプルに開くだけでそれによって空気抵抗を増やして空力ブレーキとする。飛行中に使用することもあれば、着陸後に使用することもある。さて。フラップもスポイラーも主翼の後側に付くものだが、下方にフラップ、上方にスポイラーが展開すれば、その間の空間は吹き抜けになり、上から下が素通しになる。もちろん、そこを空気が通り抜けることは承知の上で、それを前提とした設計になっているから、これによって強度が落ちるとか揚力が損なわれるとかいうことはない。安心して乗っていただきたい。今回は外から見て分かる話だけを書いたが、次回はその主翼の中がどういう構造になっているかを書いてみよう。
2016年01月18日クルマ全体のエレクトロニクスをまるで眺望するかのように設計できるツールが現れた。クルマや航空機、宇宙船のように巨大なシステムを設計する場合に、全体を眺望できれば個々のサブシステムの設計はよりしやすくなる。同時に、サブシステムの設計者全員がシステム全体を鳥瞰でき、自分はシステム全体のどこを設計しているのか、一目で理解できるようになる。こういった巨大システムの設計に便利なツールCapital System製品を2種類、米Mentor Graphics(日本法人はメンター・グラフィックス・ジャパン)がリリースした。最近では、巨大なシステムの中で動く個別のシステムはサブシステムとは言わず、やはりシステムと呼ぶ。System of Systemsという言葉で表現している。クルマでは、エアコンやインテリア照明、エンジン点火装置、排気装置、エンジン冷却装置、ギアボックス、トランスミッション、パワーウィンドウ、パワーステアリング、ブレーキ、ABS(横滑り防止)、アクティブセイフティ、エアバッグ、航行コントロール、適応型の航行コントロール、電源、バッテリ管理などさまざまなシステムをECU(電子制御ユニット)が担う。クルマ全体で数十~数百モノECUをどのように配置し、それをワイヤハーネスでどうつなげるか。Mentorの新製品はこれを一目で見られるツールである。クルマでは、個々のシステムがプリント回路基板(PCB)ハードウェア、ソフトウェア、ネットワーク情報、電気配線システムからできている(図1)。個々のシステムの機能や特長を記述するのに、パワーポイントやエクセル、あるいはワードなどさまざまなアプリケーションソフトを使っているため、ハードウェアの記述とソフトウェアやネットワーク情報の記述データの交換程度しかできない。そこで、今回の新製品(図2)は、データ駆動型のソフトウェアともいうべきもので、全体に適用できるだけではなく、ハード、ソフトなど個々のテクノロジーにも使え、さまざまなECUシステムをエレガントに接続する。新製品の1つ「Capital System Capture」は図2の左上の図のように、全体の機能や特長を記述し、大まかな接続情報も加える。このツールを使って製品を記述すると、いろいろなソースから集められた機能設計の抽象化を作り出し見える化できる。信号を通して機能や配線を捉え、このあと機能レベルを実行するためのガイダンスを提供する。これらの機能はハードウェアとソフトウェア、ネットワーク情報(IOマルチプレクサ)、電気の量を表わしている。このソフトのメリットは何か。ハードとソフト、ネットワーク、電気配線など各専門の設計者のコラボレーションを育成できる。コンセプトの段階から、これらのチームとのやり取りをスピーディにできる。システム設計者のために設計を再利用できる。もう1つの新製品「Capital System Architect」は図3のように、記述された機能や特長をクルマの上にマッピングする。クルマのどこにパワートレインやシャーシ、ボディ、ADASシステムなどを配置し、それらをつなぐか、を一目で見えるように鳥瞰図を書く。Capital System Architectは、いろいろな機能のモデルを集め、それらをロジックのプラットフォームに落としていく。その結果、ロジックと物理的な中身を構築するごとに修正しながら出力するような形に合成する。そして、ユーザーが定義したルールと制約条件を使って制御していく。設計の狙いが正しく行われているか、作りつけのDRC(デザインルールチェック)を使って検証する。その出力は、個々の工程での設計プロセスとツール(ハードウェア、ソフトウェア、ネットワーク情報、配電用ロジック)を実現するための提案形式になっている。このようにして鳥瞰してそれぞれのシステム設計者にまるで落とし込むように仕様を手渡す。このプロセスのメリットは何か。各ECU特有の最適化をするとコストがかかるが、全体を鳥瞰するため、そのコスト上昇を避けることができる。目標を達成するために各設計者とコラボレーションしてやり取りし、全体最適を図ることができる。この手法は開発から生産設計へとシームレスに流すこともできる。こういったツールが出てきた背景には、ADAS(先進ドライバー支援システム)や自動運転のようにIT系と車体の制御系の2つを利用するシステムが大規模化してきたためである。図4のように、例えば前方のクルマや障害物に衝突しそうになる時に自動的にブレーキがかかるようなシステムは、レーダーシステム、障害物との距離を計算するシステム、クルマのスピードを測定するシステム、ブレーキ制御システム、計算した結果危険を知らせる警報システム、警報をLCDに表示するシステム、警報をLEDに点滅させて知らせるシステム、などECUだけでも数が増えてしまう。それらをつなぐワイヤハーネスの情報も必要だ。それぞれのECUだけを手掛けていてはADASシステム全体としての最適状態を把握できなくなってしまう恐れがある。このCapital Systemsは、各ECU内部を詳細に表現しない。むしろ、全体のECUやネットワーク、配線のハーネスなどを把握し、鳥瞰できることであり、詳細を表現することではない。しかし、各ECUの設計段階に入り、それぞれの詳細設計に取り組んでいる時にハードウェアやソフトウェアで変更があれば、すぐさま設計者全員に変更点をフィードバックして再評価・検証することができる(図5)。こうしておけば全体から自分が設計するECUへの影響を把握でき、全体最適に近づくことができるようになる。この新製品ツールは、各ECU設計者同士のやり取りを初期の段階からでき、変更点などの確認評価もできることが最大のメリットだ。だからこそ、クルマ全体の最適化するための時間が短縮でき、しかも間違いのないクルマを作ることができるようになる。
2016年01月15日ボーイングとエアバスはこのほど、2015年(1~12月)の業績を発表。ボーイングは民間航空機部門において762機、エアバスは635機(10社の新規顧客を含む85社)となり、ともに過去最高の引き渡し機数となった。内訳は、ボーイングでは737が495機、747が18機、767が16機、 777が98機、787が135機で前年比39機増の762機となり、エアバスはA320ファミリーが491機、A330が103機、A380が27機、A350 XWBが14機で、前年比7機増の635機となった。一方、純受注数(総受注からキャンセルを引いた機数)を見てみると、ボーイングは768機となったが、エアバスは53社から1,036機の純受注数を獲得している。なお、2015年12月時点での受注残は、ボーイングは同社最大の5,795機、エアバスは航空史上最大の6,787機となっている。
2016年01月13日エアバスは現地時間の1月12日、航空機リスト価格を平均1.1%引き上げたことを発表。1月1日から全てのエアバス航空機に適用されている。単通路機を見てみると、ピーチをはじめ国内のLCC(低コスト航空会社)が運航しているA320は9,800万ドル、2016年にローンチが予定されているA320neoは1億730万ドルに設定。双通路機では、2014年にローンチされJALも購入するA350 XWBは、A350-900が3億810万ドル、A350-1000が3億5,570万ドル、A350-800が2億7,240万ドルとなる。エアバスの旅客機では最大となる総2階建てのA380-800は、4億3,260万ドルに定められている。2016年リスト価格(ドル)A318: 7,510万A319: 8,960万A320: 9,800万A321: 1億1,490万A319neo: 9,850万A320neo: 1億730万A321neo: 1億2,570万A330-200: 2億3,150万A330-800neo: 2億5,230万A330-200F: 2億3,470万A330-300: 2億5,640万A330-900neo: 2億8,770万A350-800: 2億7,240万A350-900: 3億810万A350-1000: 3億5,570万A380-800: 4億3,260万
2016年01月13日今回のお題は、日本国内でも就航している旅客機「エアバスA320」の一族である。A320に加えて、短胴型のA319や長胴型のA321があるから、それらを総称すると一族という表記になるわけだ。なぜか筆者は日本国内では乗ったことがなく、アメリカでだけ乗ったことがある。それも、ワシントンDCのダレス空港からラスベガスのマッカラン空港までという長距離路線で。と、そんな話はともかくとして。○売り物はハイテクエアバスA320は、流れとしてはA300シリーズに続いて登場した第2作であり、機体規模は先行するボーイング737に近い。初飛行は1987年、就航は1988年のことである。外見は旅客機として一般的なもので、特に変わったところは見受けられない。乗客として機内にいる分には、これも他の旅客機と比べて大きく違いがあるわけではない。一般的な単通路機である。ところが、コックピットに入ると一変する。第71回で取り上げたボーイング757/767より後から登場した機体だから、グラスコックピット化されているのは当然と言えるし、ディスプレイ装置の画面はこちらのほうが大きい。それより何より、正副操縦士席の前にニョキッと立っているはずの操縦輪がないのが最大の特徴である。これは、F-16と同様にフライ・バイ・ワイヤ(FBW)を導入するとともに、操縦輪を止めてサイド・スティックにしてしまったせいだ。ただし、F-16は右手でサイド・スティック、左手でスロットル・レバーと決まっているが、A320は正副操縦士席で配置が逆になる。つまり、右席の副操縦士は右手でサイド・スティック、左手でスロットル・レバーを操作するが、左席の機長は左手でサイド・スティック、右手でスロットル・レバーを操作する。最も使う重要な操縦装置が左右逆転して混乱しないのかと思うが、もともとスロットル・レバーは正副操縦士席が並列配置なら右手操作だったり左手操作だったりするものだし、案外とすんなり慣れることができるのかもしれない。単に見た目がスッキリするとかハイテクっぽいとかいうだけでなく、サイド・スティックにすると身体の前の空間に余裕ができるし、テーブルを設置して書類などを広げる余地もできる。A320機が「ハイテク化された旅客機」と呼ばれる場合、それを構成する主な要素はFBWとサイド・スティックの組み合わせ、それとグラスコックピットであると言える。○旅客機をFBW化する利点ただし旅客機の場合、F-117Aみたいに「ステルス性を重視したために、飛行制御コンピュータがないとまともに飛べない」なんていうことはない。運航の安全を考えればレーダーで監視してもらうほうがありがたいのに、レーダーに映りにくくしてどうする。無論、戦闘機みたいに「わざと空力的に不安定な機体を作っておいて機敏に飛ばす」なんていうニーズも存在しない。安全に、安定して、滑らかに飛ぶことが第一である。とはいえ、操縦操作次第では危険な領域に入ってしまい、例えば機首上げの度が過ぎて失速するような場面はあり得るかもしれない。そこでFBW化して飛行制御コンピュータを介することで、危険領域に入るような操縦操作をした時に飛行制御コンピュータが介入して、危ない操縦操作を抑制するような使い方が可能になる。その代わり、飛行制御コンピュータがどういう場面でどういう介入の仕方をするのか、あるいはどういう機体の動かし方をするのか、といったことをパイロットがきちんと承知していないと、操縦操作と飛行制御コンピュータの喧嘩になり、かえって事故が起きる可能性につながってしまう。という話は以前にも書いた。そこのところをきちんと対処していれば、何も問題はないわけだ。ただ、ソフトウェア制御の部分が増える分だけ、ソフトウェアのテストや熟成は重要になる。A320の話ではないが、FBWのソフトウェアに起因する問題によって墜落事故につながった事例、皆無ではない。○ハイテク化に走った理由では、エアバスがどうしてこのような路線を歩むことになったのか。これは個人的な推測だが、民間旅客機の市場で先行するアメリカ勢に追いつき、追い越す際の武器として、経済性とか信頼性だけでなく、さらに何かしらの「武器」が必要だったのではないか、ということだ。そこで前述したようなわかりやすい「ハイテク要素」を取り入れて、先進性をアピールする手に出たのではないかということである。もちろん、コンシューマー商品とは違うから、単に「ハイテクっぽい」というイメージだけで販売につながるわけではない。しかし、ハイテク化という切り口から独自のメリットを訴求できれば、それは販売を後押しする効果につながると期待できる。「飛行制御コンピュータが、危険領域に入らないように対処する」なんていうのは、その一例である。グラスコックピット化にしても、他のエアバス機との共通性を維持して、機種移行を容易にしたり操縦資格を共通化したり、といった利点があるから、ちゃんとしたメリットを訴求できるハイテク化である。メリットがあるのかないのかよくわからなかった、乗用車のデジタルメーター(1980~1990年代にかけてだいぶ流行した)とは事情が違う。
2016年01月04日所沢航空発祥記念館(埼玉県所沢市)は2月7日13時~14時20分、1階研修室に公開講座「Honda航空機エンジン開発 挑戦の軌跡」を開催する。公開講座では、ホンダジェットのエンジンである「HF120」の開発について、本田技術研究所の野田悦生上席研究員を講師に迎え、開発当初から完成に至るまでの軌跡を様々な体験談を交えて紹介する。定員は60人で参加費は無料。参加希望者は、所沢航空発祥記念館のオフィシャルサイトまたは往復ハガキで申し込みとなる。応募はひとり1回のみで、応募締め切りはオフィシャルサイトからの場合は1月28日17時まで、往復ハガキの場合は当日必着となっている。定員を超えた場合は抽選となり、荒天等の理由により催事を中止することもある。そのほか詳細はオフィシャルサイトを参照。
2016年01月04日三菱航空機は12月28日、次世代リージョナルジェット機MRJ(Mitsubishi RegionalJet)に関するWEB情報発信ツール「MRJ Newsletter」第8号にて、12月2日にパートナーズカンファレンス開催、また、12月10日にボーイングとでカスタマーサポートに関してセレモニーを実施したことを発表した。12月2日には9度目となるパートナーズカンファレンスを名古屋で実施。パートナー各社を中心に国内外25社の幹部および関係者が一堂に集まり、飛行試験や開発・量産を中心とした広範な協議や意見交換を行った。同会議では、MRJプログラムへの支援に感謝の意を表し、パートナー表彰としてAIDC (Aerospace Industrial Development Corporation、台湾)とエアバスヘリコプターズ(ドイツ)、ナブテスコ(日本)を表彰した。また、12月10日にはシアトルのミュージアム・オブ・フライトにて、ボーイングおよび三菱航空機関係者でカスタマーサポートでの取り組みに対してセレモニーを実施した。同セレモニーは、顧客がいつでもどこでも素早く、最新のMRJのカスタマーサービスにアクセスできるウェブポータル「MMF(My MRJ Fleet.com)」の構築が大きなマイルストーンに到達したことを祝したもの。三菱航空機は2011年6月にボーイングとカスタマーサポートに関する支援契約を締結しており、同セレモニーでは「両社協力のもと、最良のカスタマーサポート体制を構築していく」とコメントしている。(c)2015 MITSUBISHI HEAVY INDUSTRIES, LTD. All Rights Reserved.
2015年12月28日三菱航空機と三菱重工業は12月24日、リージョナルジェット機「MRJ(Mitsubishi Regional Jet)」の量産初号機の納入時期を2017年第2四半期から約1年延期すると発表した。同社によれば、初飛行およびその後の試験飛行で機体の基本特性が良好であることを確認しているが、より完成度の高い機体にするため、試験項目の追加・見直しを行い、納入までのスケジュールを変更したという。同社今後、開発マイルストン管理を行い、進捗に合わせてスケジュール精度を高めていくほか、北米での飛行試験の早期実現、三菱航空機本社・シアトルエンジニアリングセンター・モーゼスレイクテストセンターの役割・体制を明確化し、各種作業の加速など施策を講じて、開発作業を推進していくとしている。
2015年12月25日ホンダの航空機事業子会社のホンダ エアクラフト カンパニーは12月24日、独自開発した「HondaJet」の引き渡しを開始したと発表した。同社は12月8日に米国連邦航空局(Federal Aviation Administration、以下FAA)からHondaJetの型式証明を取得し、本社でHondaJetを引き渡したという。HondaJetは、主翼上面のエンジン配置や自然層流翼型、一体成型複合材胴体といった独自技術の採用により、同社によると、クラス最高水準の最高速度、最大運用高度、上昇性能、燃費性能および室内サイズを実現した小型ビジネスジェット機。北米、欧州およびブラジルなど、合計11の拠点を通じて販売されている。同社は約54万平方メートルの敷地を有し、その生産工場でHondaJetの量産が行われている。
2015年12月24日三菱航空機と三菱重工業は12月24日、次世代リージョナルジェット機 MRJ(Mitsubishi RegionalJet)の量産初号機の納入時期に関して、2017年第2四半期から1年程度先延ばしすることを発表した。今回の発表で納入延期は4回目となる。MRJに関しては11月11日に実施された試験初号機の初飛行、また、11月19日と27日に実施された飛行試験も踏まえた試験を行っており、機体の基本特性が良好であることを確認している。しかし、同社は開発を加速する中でいくつかの課題を認識し、これらの対策のために全体スケジュールのレビューを行い、スケジュールを変更した。具体的には、これまでにエンジニアリング作業を米国知見者と共同で進めていく中で、より完成度の高い機体にするため、試験項目の追加・見直しを行う。なお、パートナーとも全体レビューを行い、開発スケジュールに反映していく。今後、開発マイルストン管理を行い、進捗に合わせてスケジュール精度を高めていくとしている。また、北米での飛行試験の早期実現、3拠点(三菱航空機本社・シアトルエンジニアリングセンター・モーゼスレイクテストセンター)の役割・体制を明確化し、各種作業の加速など施策を講じて、開発作業を推進していく。同社は今回の発表に関して、「これらにより、安全・安心で完成度の高い機体と高品質なサービスをお客様に提供することを目指します」とコメントしている。ローンチカスタマーであるANAは、2008年3月に25機(確定15機、オプション10機)を発注。飛行試験機5号機はANAの塗装仕様にて、国内での飛行試験を実施する見通しとなっている。また、JALも2015年1月に32機を確定発注しており、JALへの納入は2021年開始を目指している。なお、MRJ開発に関して愛知県も大村秀章愛知県知事等が12月16日に石井啓一国土交通大臣に対し、型式証明の取得に向け審査能力の充実を図ること、今後、米国を中心に実施するMRJ飛行試験の技術審査に係る経費など必要な予算を確保に向け、要望活動を行っている。(c)2015 MITSUBISHI HEAVY INDUSTRIES, LTD. All Rights Reserved.
2015年12月24日最近はそうでもなくなったが、1990年代の前半には「ステルス機」といえばこれだった。そう、ロッキードF-117Aナイトホークである。この機体もF-16ファイティングファルコンと同様にフライ・バイ・ワイヤ(FBW)で飛ぶが、今回の本題はそちらではない。○こんなモノが飛ぶわけがないだろうF-117Aの特徴は、大きな後退角を持った主翼平面型と、曲面がなくて角張った機体形状にある。どう見ても空気がスムーズに流れてくれるとは思えない形状であり、実際、「空飛ぶボルテックス・ジェネレータ」というあだなまである。ボルテックス・ジェネレータとは、意図的に渦流を引き起こす目的で機体表面に設ける小さな出っ張り(板材という方が実体に近いか)のこと。実際、F-117Aの形状は見るからに、盛大な渦流を引き起こしそうである。空力的見地からみれば(たぶん)最低である。実際、F-117Aの前に技術実証機「ハブ・ブルー」を製作したときには、機体の外形が固まったところで、ひと騒動あった。「ハブ・ブルー」やF-117Aの開発を担当したのはロッキード社(当時)の先進開発部門「スカンクワークス」で、そこのボスは2代目のベン・リッチという人だった。そのベン・リッチのところに初代ボスのケリー・ジョンソンが飛び込んできて、いきなり尻を蹴飛ばした上に「ベン、おまえは大ばか者だ。こんなものが飛ぶわけがないだろう」と一喝したそうである。では、その「こんなものが飛ぶわけがない」と思わせた形はどうやって決められたのか。それは、レーダー電波の反射を抑制することを唯一最大の目的にしたことによる。もうちょっと細かく説明すると、ステルス、つまりレーダーに映らないということは、「敵のレーダーが発信した電波が機体に当たった時に、それを発信源に返さない」ということだ。発信した電波の反射波が戻ってきて、それを受信することで初めてレーダー探知が成立するのだから、反射波が発信源の方に返って行かないようにすればよい。その方法は大きく分けると3つある。「反射の方向を限定する」「発信源とは違う、明後日の方向に反射する」「電波そのものを吸収して反射波を弱める」。鋭い後退角を持たせた主翼は「明後日の方向に反射する」のが目的だし、主翼や尾翼の前縁などについて角度をそろえる工夫をしたのは「反射の方向を限定する」のが目的だ。そして黒いレーダー電波吸収材塗装は「電波の吸収」が目的である。このほか、エンジンが大きな電波反射源になることから、F-117Aでは空気取り入れ口にメッシュ状の蓋をかぶせる、なんていうことまでやった。もちろんエンジンの動作には悪影響があるが、レーダー電波を反射しないことのほうが優先である。ちなみに、これが氷結して詰まるとエンジンが動かなくなってしまうので、メッシュの前面に「異物をどけるためのワイパー」が付いていたそうである。○エコー1しかし、「こういう形にすればステルス化できるだろう」と考えても、それを立証できなければ話にならない。風洞試験みたいに、いちいち模型を作って電波暗室に持ち込んでテストしていたら、時間も費用もかかりすぎる。そこで、レーダー反射断面積を計算するソフトウェアを開発することになった。その名を「エコー1」という。そのきっかけになったのは、同社の技術者、デニス・オーバーホルザーが、ロシアのレーダー専門家、ピョートル・ユフィムツェフが書いた論文「回折理論による鋭角面の電波の解析」の英訳版を見つけ出したことで、時期は1976年4月頃だという。この論文のポイントは、コンピュータによってレーダー反射断面積を計算するための道をつけた点にある。具体的に言うと、与えられた機体の形状を基に、それを多数の三角形に分解して、個別にレーダー反射の計算を行う。その結果を合成すれば、機体全体のレーダー反射断面積を計算できるというわけだ。構造計算に用いられる有限要素法と同様に、できるだけ細かい三角形の集合体に分解して計算するほうが良いし、曲面構成の機体を作ろうとすれば、そうする必要がある。ところが当時のコンピュータでは、細かい三角形に分解して個別にレーダー反射断面積を計算しようとすると、能力が足りなかったのだ。なにしろ1970年代後半の話である。そこで、コンピュータの能力を基にして「どこまで細かい三角形に分解するか」を検討した結果、「ハブ・ブルー」やF-117Aの外形が決まってしまったというわけ。あれ以上に細かくは分解できなかったのだ。もちろん、空力的安定性も何もあったものではない。とにかく「レーダーに映らないこと」だけを優先した形状である。そこで、冒頭でも触れたようにFBWを導入して、飛行制御コンピュータを使うことで初めてまともに飛べることになった。ベン・リッチいわく「飛行制御コンピュータがあれば、自由の女神に曲芸飛行をさせることもできる」。○コンピュータ三題噺つまり、F-117Aとは「コンピュータによる計算で形が決まり」「その際にコンピュータの能力が制約要因になり」「まともに飛ばすにはコンピュータが不可欠」というコンピュータ三題噺(?)で出来上がった飛行機だったわけだ。このプロセスは「優れた飛行機は美しい」という業界の前提を完全に無視しているが、ステルスという機能を突き詰めたことによる異形の美しさがあるといったら褒めすぎだろうか。ちなみに、ロッキード社にはケリー・ジョンソンよりも口の悪い設計者がいて、「ハブ・ブルー」のことを「リッチの道楽」と呼んでいたそうである(「リッチ」はベン・リッチの名前と「金持ち」のダジャレ)。そういえば、イギリスのデハビランド社では第2次世界大戦中に「DH98モスキート」という木製爆撃機を開発・製作したが、これも開発に取りかかった当初は、空軍でただ1人、味方に回って計画を後押しした人物の名前をとって「フリーマン大将のお道楽(Freeman’s Folly)」と呼ばれていた。ところが、どちらの「道楽」も実戦で大活躍したのだから面白いものである。
2015年12月21日愛知県は12月11日、次世代のリージョナルジェット機であるMRJ(Mitsubishi RegionalJet)の型式証明取得に向けた国土交通省航空機技術審査センター(県営名古屋空港に設置)に関する要望活動として、12月16日に石井啓一国土交通大臣を訪問することを発表した。訪問には大村秀章愛知県知事のほか、細谷孝利名古屋商工会議所専務理事と三浦司之中部経済連合会常務理事が同行し、16日16:30~16:45に中央合同庁舎3号館4階国土交通大臣室にて要望活動を行う。要望内容としては、MRJの量産初号機の納入時期(2017年4月~6月)に間に合わせるため、型式証明の取得に向け審査能力の充実を図ること、また今後、米国を中心に行われるMRJの飛行試験の技術審査に係る経費など必要な予算を確保することを予定している。(c)2015 MITSUBISHI HEAVY INDUSTRIES, LTD. All Rights Reserved.
2015年12月14日本連載を御覧いただいている皆さんの中に、映画『ドローン・オブ・ウォー』を御覧になった方はいらっしゃるだろうか。あの映画に登場して陰の主役を務めた無人機(UAV)はMQ-9リーパーだが、そのベースとなった機体がMQ-1プレデターである。○キモは機首上部の膨らみMQ-9リーパーやMQ-1プレデターを手掛けているメーカーは、ゼネラル・アトミックス社傘下のゼネラル・アトミックス・エアロノーティカル・システムズ(GA-ASI : General Atomics Aeronautical Systems Inc.)という会社だ。いきなりいろいろな機種名が出てきて混乱しそうだが、この「プレデター一族」の系譜を簡単に整理すると、こうなる。ナット750(リーディング・システムズ社製) : これが始まり↓RQ-1プレデター(GA-ASI社製) : 衛星通信に対応↓MQ-1プレデター(GA-ASI社製) : 武装化↓MQ-9リーパー(GA-ASI社製) : 大型化と搭載量増加発端となったナット750は、リーディング・システムズという会社が開発・製作した。ところが同社は経営難に陥ってしまい、ゼネラル・アトミックス社が買収して製品や知的所有権を手に入れた。そして発足したのがGA-ASIで、以後は同社の製品として発展してきたわけだ。ナット750は、米中央情報局 (CIA : Central Intelligence Agency ) がバルカン半島における戦乱の状況を空から把握する手段として目をつけて、導入した。UAVを使って上空から偵察することの有用性は立証できたが、1つ、重大な問題があった。動画の撮影とリアルタイム送信が可能なUAVができても、動画を送信するにはそれなりに高い伝送能力を持つ無線通信が求められる。すると必然的に周波数帯が高くなり、周波数が高い電波は見通し線圏外の地上には届かない(直進性が強いので、頭上を飛び去ってしまう)。そこでCIAがナット750を飛ばした時は、別途、通信中継機を用意する羽目になった。それでは必要な機体が2倍になるし、2機のUAVの位置関係を適切に調整しながら飛ばすという手間も加わってしまう。○切り札は衛星通信そこで、機首に衛星通信用のパラボラ・アンテナを搭載した改良型が作られた。それが米軍で採用された時に、RQ-1プレデターという名前が付いた。最近は、民航機に衛星通信用のアンテナと端末機を搭載して、機内からインターネット接続を行えるようにする事例が増えている。これは「衛星通信があると便利になる事例」と言える。なくても「圏外」になるだけで、致命的な影響が生じるとまでは言えない。とこが、ナット750をはじめとする偵察用のUAVは、見通し線圏外の遠距離進出を行おうとすると、衛星通信がなければ仕事にならない。飛行機にはいろいろな種類があるが、衛星通信の有無が本来用途の可否を左右するとまで言える事例は、案外と少ないのではないだろうか。そして、そのレアな事例の1つがRQ-1プレデターだったというわけ。ちなみに、RQ-1とMQ-1の違いは武装の有無にある。RQ-1は非武装型(Rは偵察型を示す接頭辞)、MQ-1は武装型(Mは多用途または特殊作戦用を示す接頭辞)。偵察に加えて武装が可能になったというだけでなく、その武装の操作をアメリカ本土から衛星通信経由で行う様子は、冒頭で触れた映画『ドローン・オブ・ウォー』でリアルに描かれている。○センサー・ターレットを巡るあれこれ大抵のUAVは偵察用として、旋回・俯仰が可能な電子光学センサーを搭載している。昼光用のカメラと夜間用の赤外線カメラ、さらにレーザー測遠機やレーザー目標指示器をひとまとめにして、旋回・俯仰を可能にした製品が多い。こうすると、機体の姿勢や進行方向と関係なく、監視や目標指示ができる。MQ-1プレデターはMTS-A(Multi-spectral Targeting System-A)、MQ-9リーパーはMTS-B(Multi-spectral Targeting System-B)というセンサー・ターレットを積んでいて、いずれもレイセオン社製。どういうわけか輸出規制が厳しい製品で、アメリカと緊密な関係にある友好国にしか輸出が認められていない。ここから先はMQ-1の話というより一般的な話になるのだが、実はレイセオン社はUAV用のセンサー・ターレットのメーカーとしては、あまり大手ではない。というか、少なくとも多くの機種に多くの製品を載せているメーカーではない。むしろ、アメリカならFLIRシステムズやL-3ウェスカム、イスラエルならIAI(Israel Aerospace Industries Ltd.)社や、エルビット・システムズ社傘下のEl-Op社といった辺りがメジャーだ。さまざまなサイズや構成を持つセンサー・ターレットを単体で開発して、UAVや有人機のメーカーに売り込みをかけている。センサーで撮影した動画を地上に送信するためのデータリンク機器についても、事情は同じだ。そして、同じ「動画のストリーミング配信だから」ということなのか、おなじみのH.264規格を使っている製品も見受けられる。確かに、誰がどんな被写体に対して使うかというところは違うものの、動画を撮影してリアルタイムで無線送信するところは同じだ。そして、できるだけ効率良く伝送するために画質と圧縮の両立が求められるところに軍民の違いはない。それなら、軍用だからといってゼロから開発するよりも、都合のいい民生用の規格があれば、それをそのまま使ってしまうほうが安上がりだし、早く製品化できる。それで良い結果が得られれば、まさに「安い・早い・うまい」ということになる。
2015年12月14日米オートデスクとエアバスはこのほど、ジェネレーティブデザインと3Dプリンティングで製造した航空機のキャビン用パーテーションを公開した。ジェネレーティブデザインとはコンピューターに設計仕様を入力すると、コンピューターがその条件を満たした設計案を作成するという手法。人間が思いもつかないような複雑な設計案が生まれるため、造形には積層造形技術が用いられる。両社が開発したのは「バイオニック パーテーション」という名称の部品で、生物の細胞構造や骨の成長過程を模したデザインを生成する独自アルゴリズムを用いて設計され、3Dプリンティングで製造された。このパーテーションは乗客の座席と乗務員のキッチンを隔てる壁で、キャビンアテンダント用のシートも支えることになる。ほかの航空機の部品と同様に特殊な肉抜き加工や重量制限などの構造上の要件が存在するため、ジェネレーティブデザインに適した部品だという。「バイオニック パーテーション」は従来設計と比較して45%軽量で、今後製造する予定のA320型機の全キャビンに同手法を適用した場合、毎年46万5000トンのCO2を削減できると試算されている。素材は3Dプリントを前提に開発されたAPWorksのアルミニウム・マグネシウム・スカンジウム合金「Scalmalloy」が採用されている。同部品の実用試験は第1段階が完了しており、2016年からは飛行試験などのテストが実施される予定だ。
2015年12月04日三菱航空機は11月27日、次世代リージョナルジェット機MRJ(Mitsubishi RegionalJet)に関するWEB情報発信ツール「MRJ Newsletter」第7号にて、11月2日にMRJの主翼を生産する新工場の建設、また、11月11日に初フライトを実施したことを発表した。主翼の新工場は三菱重工 神戸造船所(兵庫県神戸市兵庫区)に位置し、着工した新工場(敷地面積5,600平方メートル)と隣接する既存工場(敷地面積2万5,400平方メートル)を活用し、MRJの主翼部品(外板、骨組み)や主翼と胴体を結ぶ中央翼の一貫製造を行う。同日、新工場の着工に伴い起工式を実施し、三菱重工 交通・輸送ドメイン 石川副ドメイン長等が出席した。また、11月11日に実施した、YS-11以来53年ぶりとなる国産旅客機の初飛行の様子も発表。MRJ飛行試験機初号機は9時35分離陸速度に達して県営名古屋空港を飛び立ち、富士山を遠くに見ながら太平洋側の訓練空域へと進出、その後、上昇・下降・左右への旋回といった基本特性の確認を行った。最高高度は1万5,000ft(約4,500m)、最大速度は150Kt(約280Km/h)となり、11時2分に同空港に着陸し、1時間27分にわたる初飛行は成功裏に完了した。初飛行後に行われた記者発表で同機を操縦した機長は、「離陸の際、離陸速度に達したら飛行機が『飛びたい』と言っている感じで、ふわっと浮き上がった。機体が安定しているか、意図どおり動けるかという点については離陸時から非常に良好で、操縦してきた機体の中でもトップクラスの高いポテンシャルを持っている。素晴らしい飛行機をお届けできる確信を得た」とコメントしている。(c)2015 MITSUBISHI HEAVY INDUSTRIES, LTD. All Rights Reserved.
2015年11月28日Hondaの航空機事業子会社であるホンダ エアクラフト カンパニー(Honda Aircraft Company、以下HACI)は、米・ネバダ州ラスベガスで11月17日から19日まで開催されている世界最大のビジネス航空ショー「ナショナル ビジネス アビエーション アソシエーション(NBAA)2015」において、小型ビジネスジェット機「HondaJet」の最新情報を発表した。HondaJetは、米国連邦航空局(Federal Aviation Administration、以下FAA)からの型式証明取得に向け、現在、FAAによる機体および搭載装置の「機能・信頼性飛行試験」が最終段階となっている。これまでに、新型航空機の機体や各種搭載システムなどの機能や信頼性を確認するため、様々な運航条件下での離陸・巡航・着陸の各試験、飛行中のシステムの故障シミュレーションや各種環境下(高温、低温、高湿度)での飛行試験、計器着陸試験などが実施してきた。これらの試験は現在まで全米31州の計54空港で行われ、その他の試験も含めた飛行試験全体では米国内の70カ所で計3,000時間を超えている。HondaJetの開発責任者であり、開発・製造・販売を担当するHACIの藤野道格社長は、「FAAによるHondaJetの機能・信頼性試験は今週完了する予定です。その後、最終的な型式証明が間もなく発行される見通しです」とコメントしている。
2015年11月19日本田技研工業の航空機事業子会社であるホンダ エアクラフト カンパニー(Honda Aircraft Company : HACI)は、米国ネバダ州ラスベガスで11月17日~19日の期間に開催される世界最大のビジネス航空ショー「ナショナル ビジネス アビエーション アソシエーション(NBAA)2015」において、小型ビジネスジェット機「ホンダジェット(HondaJet)」の最新の活動状況について発表した。ホンダジェットは、米国連邦航空局(Federal Aviation Administration、以下FAA)からの型式証明取得に向け、現在はFAAによる機体および搭載装置の「機能・信頼性飛行試験」が最終段階にある。これまでに、新型航空機の機体や各種搭載システムなどの機能や信頼性を確認するため、さまざまな運航条件下での離陸・巡航・着陸の各試験、飛行中のシステムの故障シミュレーションや各種環境下(高温、低温、高湿度)での飛行試験、計器着陸試験などが実施されてきた。これらの試験は現在まで全米31州の計54空港で行われ、その他の試験も含めた飛行試験全体では米国内の70カ所で計3,000時間を超えている。ホンダジェットの開発責任者であり、開発・製造・販売を担当するHACI社長の藤野 道格氏によると、FAAによるHondaJetの機能・信頼性試験は今週完了する予定であり、その後に最終的な型式証明が間もなく発行される見通しとのこと。
2015年11月18日本田技研工業(ホンダ)の航空機事業子会社であるホンダ エアクラフト カンパニー(Honda Aircraft Company)は、米国ネバダ州ラスベガスで11月17日から19日まで開催される世界最大のビジネス航空ショー「ナショナル ビジネス アビエーション アソシエーション(NBAA)2015」で、小型ビジネスジェット機「HondaJet」の最新の活動状況を発表した。HondaJetは、米国連邦航空局(Federal Aviation Administration:FAA)からの型式証明取得に向け、現在、FAAによる機体および搭載装置の「機能・信頼性飛行試験」が最終段階にある。これまで、新型航空機の機体や各種搭載システムなどの機能や信頼性を確認するため、さまざまな運航条件下での離陸・巡航・着陸の各試験、飛行中のシステムの故障シミュレーションや各種環境下(高温、低温、高湿度)での飛行試験、計器着陸試験などが実施されてきた。これらの試験は現在まで全米31州の計54空港で行われ、その他の試験も含めた飛行試験全体では米国内の70カ所で計3000時間を超えているという。HondaJetの開発責任者であり、開発・製造・販売を担当するHACI社長の藤野道格氏は「FAAによるHondaJetの機能・信頼性試験は今週完了する予定。その後、最終的な型式証明が間もなく発行される見通し」と語っている。
2015年11月18日©TRIPPING!少し前の情報だが、米航空機・防衛大手ボーイングが2013年に発表した推計によると、中国や東南アジアを中心に旅客需要が急速に拡大し、向こう20年間でアジア・太平洋地域で新たに商用機のパイロット約19万人が必要になるという。このうち、東南アジアではパイロット約4万8000人が新たに必要になる。最大は中国で、パイロット約7万7000人が必要になる。フルサービス航空会社から格安航空会社(LCC)への航空機の払い下げ数増加も、パイロット需要増の要因という。東南アジア旅行という視点で見ると、この数字からLCCの路線が増え、旅行がしやすくなることが予想できる。実際、東南アジアのLCCは去年、今年と顧客獲得のために新規の路線就航を増やしており、東南アジア旅行がこれまでより手軽になってきている。最近の例でいうと、マレーシアのLCCエアアジアの系列会社で長距離国際線を運航するエアアジアXが、クアラルンプールと札幌の新千歳を結ぶ路線の運航を開始したばかりだ。日本での就航先は、東京、大阪に続く3カ所目。さらにシンガポール航空が100%出資するLCC、スクートは今年7月からシンガポール-大阪便を就航した。大阪はユニバーサル・スタジオ・ジャパンなどの観光スポットが多いだけでなく、京都へのアクセスもよいことから注目されていた。©Scoot™ Pte Ltd スクートビザ緩和やプロモーションの影響で、東南アジアにおける日本旅行需要が高まっていることが、東南アジアLCCの日本就航の背景にあると思われる。日本政府観光局が発表した7月の訪日外国人客数(推計値)では、インドネシア、ベトナム、マレーシアなど東南アジア諸国からが前年同月比21~52%増と7月として過去最高を記録するなど、東南アジアからの旅行需要を顕著に反映している。こうした東南アジアLCCの日本への新規就航で、日本から東南アジアへ手軽に旅行する機会も増えてくるだろう。東南アジア域内の路線も拡充され、移動しやすく©TRIPPING! エアアジア東南アジアLCCは域内の路線拡充にも注力しており、今後さらに域内の旅行がしやすくなる見込みだ。エアアジアの直近の新規就航先を見ると、ペナン-ホーチミン路線、クアラルンプール-タイ・ウタパオ路線、ジョホールバル-バンコク路線、クアラルンプール-パタヤ路線など、マレーシアから人気都市への路線を拡充している。ジェットスターは、ベトナム国内でハノイ-ダラット路線、ハノイ-フーコック路線、またホーチミン-バンコク路線などを就航している。©Jetstar ジェットスター筆者の住むシンガポールでも、ちょっとした連休にタイやベトナムに出かけるひとは多い。特に人気なのは、タイのサムイ島やクラビなどビーチリゾートへの旅行だ。シンガポールからだと、LCCを使えば1万~2万円の範囲で移動できるのがうれしい。©Tourism Authority of Thailand クラビ(タイ)東南アジアではASEANオープンスカイという航空市場自由化が実施される予定だ。課題が多いとされる取り組みだが、市場競争を促す政策であることには間違いなく、今後LCCの新規参入、新規路線就航、増便など、サービスの向上と低価格化が見込める。そうなると、少し前までは日本から東南アジアに旅行するには、フルサービス・フライトを利用するしかなかったが、今後は日本と東南アジア間のLCC路線が増える可能性があり、より手軽に東南アジア旅行を楽しめるようになる。また、東南アジア域内のLCC路線が増えており、域内1カ国だけではなく、2カ国以上への旅行がより一層手軽になるだろう。活発な動きを見せる東南アジア域内の航空市場、特にLCCの動きに引き続き注目していきたい。(text : 細谷 元)ビジネスコラム「アジBiz ~1分で読める東南アジアのビジネス情報」>その他の記事はこちら
2015年11月17日「コンベアF-102デルタダガー」は米空軍の戦闘機だが、日本では比較的なじみが薄い機体だ。なぜなら、本来任務がアメリカ本土の防空で、海外配備の事例が多くないためである(皆無ではない)。今回、そんな機体を取り上げたのは「システムとして戦う戦闘機の嚆矢」だったからだ。(詳細は、米空軍博物館Webサイトの解説記事をご覧いただきたい)。○防空のシステム化第二次世界大戦では、爆撃機が昼間だけでなく夜間にも飛来するようになった。すると、爆撃機にとっては夜間に精確な航法を実現するという課題が生じる。一方で、それを迎え撃つ側にとっては、夜間に飛来する爆撃機を見つけ出して交戦するという課題が生じる。そもそも、どうして夜間爆撃をするようになったかと言えば、「暗くて目視できないから、敵の戦闘機などに見つかりにくい」というからである。ということは、目視以外の手段で捜索すれば交戦できる可能性が出てくる。そこで、地上に対空監視レーダー網を構築して爆撃機の飛来を知り、そこに味方の戦闘機を差し向けて接敵・交戦させるという流れができた。戦後、ジェット化と核兵器の登場という二大ブレークスルーがあり、従来より速く、しかも昼夜・天候に関係なく爆撃機が飛来する可能性が高まった。しかも、核兵器を積んでいたら一発で大被害が出るから、確実に要撃できないといけない。そこで、アメリカにしろ旧ソ連にしろ、対空監視レーダー網を全国的に展開することになった。アメリカの国土は広いが、旧ソ連の国土はもっと広いから、これが結構な経済的負担になったのは確かだ。レーダーで探知した爆撃機に戦闘機を確実に差し向けて交戦するには、戦闘機に「上がれ」と指示を出すだけでは不足で、無線を使って行くべき場所を指示する必要がある。そして戦闘機自身も捜索や射撃管制のためのレーダーを持ち、全天候下で接敵・交戦できないといけない。ということで、「対空監視レーダー」「無線機」「飛行機」「レーダー射撃管制システム」「ミサイル」で構成される1つのシステムとして造られた防空戦闘機がF-102だったというわけだ。○データリンクの導入後に1960年台半ばになって、もう1つの要素が加わった。それがSAGE(Semi Automatic Ground Environment)システムとのデータリンクである。SAGEとは、レーダー網とコンピュータをつないだ全国規模のネットワークを構築して、「飛行物体の探知」「脅威度の判断」「要撃の指令」を自動的に行おうというシステムだが、それと戦闘機をデータリンクでつなぐことには、飛来する爆撃機に向けて戦闘機を確実に誘導しようという狙いがある。つまり、口頭で針路の指示を受ける代わりに、地上でSAGEシステムが要撃のためのコースを算定して、それをデータリンクでF-102に送る。それを受けたF-102の自動操縦装置が、会敵点まで機体を自動的に連れて行く。最後は機上レーダーで敵機を確認して交戦するという流れになる。これがアメリカに限らず一般的なやり方となった。F-102は暫定版の迎撃戦闘機だったが、後に完成品としてF-106デルタダートに発展する。日本でも、BADGE(Base Air Defense Ground Environment)やJADGE(Japan Aerospace Defense Ground Environment)といった防空指揮管制システムを導入しているが、基本的な考え方は共通する。もちろん、妨害や干渉を受ける可能性があるから、地上と機上を結ぶデータリンクにはできるだけ高い信頼性が求められる。地上や機上で使用するコンピュータは言わずもがなだ。ところが、SAGEシステムで使用するAN/FSQ-7というIBM製のコンピュータは真空管のオバケで、真空管の予防交換を毎日のようにやっていたという。そんな調子だから、機上で使用するコンピュータも、信頼性や耐久性の確保に難渋したであろうことは想像に難くない。○ネットワーク化、システム化の嚆矢ともあれ、こうなると戦闘機はそれ単体で交戦するというものではなく、防空指揮管制システムに組み込まれた持ち駒の1つという位置付けになってくる。つまり「飛行機としてのスペック」「それを操るパイロットの腕前」だけでなく、「他の構成要素も含めたシステムとしてどうか」という視点が求められるようになったわけだ。現代では、軍用機はいうに及ばず民航機でも、本連載で以前に取り上げたことがあるADS-B(Automatic Dependent Surveillance - Broadcast)、あるいはACARS(Aircraft Communications Addressing and Reporting System)などといったシステムを通じて地上とつながっている。そうした、「飛行機が単体ではなく、他の飛行機や地上のシステムと連携動作しながら目的を果たす」という考え方のルーツと言えるのが、F-102であったのかもしれない。ちなみに、旧ソ連にはツポレフTu-128フィドラーという大型の全天候迎撃戦闘機があったが、これもやはり、地上のレーダーや防空指揮管制システムとのデータリンクを持ち、地上からの指令を受けて接敵する方法をとっていたという。
2015年11月16日三菱航空機および三菱重工業は11月11日、次世代のリージョナルジェット機であるMRJ(Mitsubishi RegionalJet)の飛行試験機初号機による初飛行を県営名古屋空港で実施した。約1時間半の飛行の模様を動画で公開している。同機は11日09:40頃、県営名古屋空港を離陸し、太平洋側の空域を利用して上昇、下降、旋回などの基本特性の確認を行い、11:05頃県営名古屋空港に着陸した。公開された動画は、離陸・着陸をメインに1分40秒にまとめている。今後も国内での飛行試験を継続し、2016年第2四半期から米国モーゼスレイク市(ワシントン州)のグラント・カウンティ国際空港を拠点とした飛行試験を行う。量産初号機納入は2017年第2四半期を目指しており、ローンチカスタマーはANAとなる。(c)2015 MITSUBISHI HEAVY INDUSTRIES, LTD. All Rights Reserved.
2015年11月12日三菱重工の子会社 三菱航空機が開発するリージョナルジェット機「MRJ(Mitsubishi Regional Jet)」の飛行試験機初号機が11月11日午前9時35分ごろ、愛知県・県営名古屋空港を無事に離陸した。初飛行では、上昇や下降、左右への旋回といった基本的な性能を確認後、午前中のうちに同空港へ戻る予定となっている。
2015年11月11日三菱航空機は10月29日、次世代リージョナルジェット機MRJ(Mitsubishi RegionalJet)に関するWEB情報発信ツール「MRJ Newsletter」第6号で、MRJ量産初号機の鋲打ち式を10月15日に三菱重工飛島工場にて実施したことを発表した。MRJ量産初号機の組立開始にともまって実施された鋲打ち式では、量産初号機の左主翼にある構造部品で鋲打ちを行った。 式典にはローンチカスタマーであるANAからも参加し、「品質を作りこんで、より良いMRJを製作してもらいたい」エールを送った。飛島工場での部分組立後は、小牧南の最終組立工場での作業となる。また、MRJ初飛行に向けて同社はシンボルデザインを作成した。同社は「One for All, All for One」の精神で全社一丸となって取り組んでいくとしている。
2015年10月30日国土交通省は10月27日、9月11日に公布されたドローンやラジコン等を含む無人航空機に関して航空法の一部を改正する法律(平成27年法律第67号)について、12月10日より施行することを発表した。今回の法改正により対象となる無人航空機は、「飛行機、回転翼航空機、滑空機、飛行船であって構造上人が乗ることができないもののうち、遠隔操作または自動操縦により飛行させることができるもの」であり、具体的な重量については今後、国土交通省令で定めることになるが、超軽量の機体については対象外となる。今回の法律改正では、無人航空機の飛行の禁止空域、飛行の方法、救助等のための特例を定めた。ルールに違反した場合には、50万円以下の罰金が科せられる。無人航空機の飛行により航空機の航行の安全に影響を及ぼすおそれがあるものとして国土交通省令で定める空域においては、国土交通大臣の許可を受けた場合を除き飛行を禁止する、また、上記の空域以外でも、国土交通省令で定める人または家屋の密集している地域上空での飛行を禁止する。国土交通大臣の承認を受けた場合を除き、日中に飛行させること、目視範囲内で無人航空機とその周囲を常時監視して飛行させること、人・建物・自動車などの物件との間に距離を保って飛行させること、祭礼・縁日など多数の人が集まる催しの上空で飛行させないこと、爆発物など危険物を輸送しないこと、無人航空機から物を投下しないこととしている。なお、救助等のための特例として、都道府県警察その他の国土交通省令で定める者が航空機の事故その他の事故に際し捜索、救助その他の緊急性があるものとして国土交通省令で定める目的のために行う無人航空機の飛行については、適用しないとしている。具体的な空域については今後、国土交通省令で定めることとなるが、空港周辺の空域、一定高度以上の空域、人または家屋の密集している地域の上空を許可が必要な空域として定める見通しとなっている。なお、人または家屋の密集している地域としては、国勢調査の結果を元に設定されている人口集中地区(DID)を基本とする方向で検討されている。
2015年10月28日第60回で「表示デバイス」と題して、陰極線管(CRT : Cathode Ray Tube)と液晶ディスプレイ(LCD : Liquid Crystal Display)を取り上げた。しかし、この時に取り上げていなかった表示デバイスがあるので、今回はその話をしよう。○頭を下げずに済むHUDもともと戦闘機に導入が多かったのだが、その後、軍用輸送機や民航機でも導入が増えているデバイスに「HUD(Head Up Display)」がある。その名のとおり、視線を計器盤に落とさなくても済むようにするためのディスプレイ装置である。計器盤の上方、パイロットが機の正面を向いた状態で視線に入る位置に、情報表示用のハーフミラーを取り付ける。ハーフミラーに投影する映像はCRTなどを使って表示しており、そこからレンズを使ってハーフミラーに映像を導いて投影する。HUD自体は目の前・数十cmぐらいのところにあるが、表示する映像の焦点は無限遠になっているので、焦点を合わせ直す必要はない。外を見ていると、そこにシンボル表示が一緒に現れるというイメージだ。HUDの利点は、情報を得るのに、いちいち計器盤に視線を落とさなくても済む点にある。特に戦闘機の場合、このメリットは大きい。レーダーをはじめとするセンサーの情報、速度・姿勢・針路・高度といった情報を、外の様子を見ながら同時に得られるから、状況認識を妨げない。また、射撃・爆撃の際に使用する照準器の機能も兼ねている。例えば、映画「トップガン」など、戦闘機の操縦席から見た照準器の映像を見られる場面はいろいろある。HUDが空中戦でどんな働きをするのかを手っ取り早く理解するには、その手の映画やテレビ番組を見るのが早道だ。もちろん、HUDに表示する内容は、当節ならコンピュータによるグラフィック表示である。ということは、表示する内容に応じて、コンピュータに適切な情報を入れてやらなければならないという話である。例えば、機体の姿勢や針路に関する情報を表示したければ、AHRS(Attitude and Heading Reference System)みたいな機器から情報を受け取ることになるだろうから、AHRSと情報をやり取りするための電気的インタフェース、プロトコル、データ・フォーマットをどうするか、という話が出てくる。これが軍用機なら、武器に関する情報あるいはセンサーに関する情報を表示する場面が出てくる。すると、そちらでもやはり、情報源となるしかるべき機器との間で、電気的インタフェースやプロトコル、データ・フォーマットの整合をとる作業が必要になる。この辺が、いわゆる「アビオニクスのシステム・インテグレーション」と呼ばれる作業の一環となるわけだ。ただ機器を買ってきてポン付けして電源をつないで、それで動いてくれれば話は簡単だが、アナログ時代でも当然のこと、デジタル時代ならなおのこと、そんなに簡単な話では済まない。○HUDの難しさところで、機の姿勢や射撃・爆撃照準の機能を持たせるということは、外を見ている時の映像とHUDに表示するシンボルの整合性をとらなければならないということになる。例えばの話、真正面にいる敵機に対して機関砲の狙いをつけて撃ったつもりが、照準用のレチクルを表示する位置がズレていたので狙いが外れました、なんてことになったらシャレにならない。もっとも、そういう話になると、前回に触れた「HMD(Helmet Mounted Display)」のほうが面倒くさい。搭乗員が被っているヘルメットの向きを検出しなければならないのは前回に述べたとおりだが、ひょっとすると、個人差がある体格やヘルメットの被り方に合わせた微妙な較正が必要になるかもしれないからだ。その点、HUDは計器盤の上に、あるいは計器盤の頭上からつり上げる形で固定しているから、固定設置する際に位置合わせをきちんとやっておけば済む。搭乗員の体格の違いは、HUDの位置や角度を調整して対応しようとすると面倒だから、座席の位置や高さを調整して対応するほうが楽だし、間違いがない。と思ったが、もう1つ作業があった。前面の風防が平面あるいは単純な円筒形を構成するシングル・カーブなら問題ないが、縦断面も横断面も曲線になっている、いわゆるダブル・カーブだと話が違う。キャノピーを通して外を見た時の映像がゆがんでしまうから、それに合わせた補正が必要になるのだ。だから、HUDの表示内容もそれに合わせて調整しなければならない。特に戦闘機だとよくある話で、F-16みたいにキャノピーの形状が機体ごとに微妙に異なるケースまである。だから、F-16ではキャノピーを付け替えたらHUDの調整もやり直しである。ちなみに、F-16は一体型キャノピーのダブル・カーブ型だが、そのF-16から派生した航空自衛隊のF-2は前部を独立した風防にしており、それはシングル・カーブ型である。以下の写真で見比べてみよう。といったところで、突発的に思いついたことがある。F-16のような機体の場合、キャノピーごとに異なるゆがみの情報をRFIDに書き込んでキャノピー・フレームにでも取り付けておいて、HUDの表示を制御するコンピュータが、その情報を読み取って表示位置を微調整するようにしたらどうだろう。まあ、筆者が思いつくぐらいのことだから、業界で誰かがすでに考えて試していても不思議はないし、試してうまくいったのであれば、そういう話が伝えられていてもおかしくはなさそうだ。これは、あくまで突発的な思いつきということで笑い飛ばしていただければと思う。
2015年10月26日三菱航空機は10月24日、開発中の次世代リージョナルジェット機MRJ(Mitsubishi RegionalJet)の飛行試験機初号機による初飛行に関して、予定していた10月26日~30日の実施を11月9日~13日に延期することを発表した。今回の延期の理由は、操舵用ペダルの改修が必要になったためとしている。初飛行の日程については、実施の前日に発表される。なお、当初初飛行を予定していた週(10月26日~30日)の前半には、飛行許可取得に向け国土交通省の飛行前審査を受審する予定となっている。許可取得後は高速走行試験及びその評価等を実施し、初飛行に備える。飛行試験機の初号機は、県営名古屋空港(愛知県豊山町)および周辺空域で約1時間の飛行を予定。飛行試験は安全を全てに優先させて実施し、今後の機体状況及び天候状況等によっては、予定が変更となる場合もある。(c)2015 MITSUBISHI HEAVY INDUSTRIES, LTD. All Rights Reserved.
2015年10月24日いつの時代にも稼げる職業は存在し、競争率も激しいもの。現在の稼げる職業としては、航空機操縦士、医師、大学教授、弁護士がベスト4といわれています。では、いまNHKの朝ドラ『あさが来た』でも取り上げられている江戸時代だったら、一体どうなのでしょうか。そこを明らかにすべく、作家で歴史エッセイストの堀江宏樹さんに「江戸時代の職業の収入ランキング」をお聞きしてみました。すると、収入でいえば、「江戸時代でも前期と後期では一両あたりの価値に変動があり、同じ職業でも給料の上下はあった」とのこと。また貨幣価値も、江戸時代と現代ではかなり異なるそうです。しかし今回は、あえて一般的な「高給取り」といわれる江戸時代の職業を、(天皇を除いて)教えていただきました。※米1石=金1両、1両=10万円と計算しています。■10位:有名医師杉田玄白などの医師は、400~600両以上稼いでいたそうです。当時は医師がみずから薬をつくって処方したので、診療代よりも薬礼(薬の代価)で儲けられたのです。そして有名医師の処方した薬は、ものすごく高額だったといいます。江戸時代は薬代が一般的に高く、保険も効かなかったのです。■9位:売れっ子遊女500両(か、それ以上も可能)。小規模な藩での家老クラスの年収に相当します。ただし、ほとんどを衣装代などに費やしてしまうので、ほぼ赤字だったようです。■8位:人気歌舞伎役者年収500両~1,000両を超える人も。■7位:奥女中大奥の最高クラスの女中が「上臈御年寄」で、各方面に顔が効く彼女たちには賄賂が渡されることも。これを含めて1,200両以上稼ぐことも可能だったそうです。■6位:芸者屋など風俗産業経営者幕末ごろの江戸吉原にあった「大黒屋」の帳簿が奇跡的に保存されており、それによると3,500両。その何倍以上もの収入があったと思われるのが、吉原の遊女たちをたばねている遊女屋の収入だといいます。しかしそれについては、帳簿などが一切残されていないので不明です。■5位:関白(現代の総理大臣に相当)数千石~1万石程度。朝廷の公家たちのトップに立つ、関白としての仕事に支給される給料のほかに、御血筋のよさでボーナスももらえました。たとえば関白の娘が大名家に嫁いだら、その大名家から娘一人につき1,000石ほどの献金が毎年もらえたようです。■4位:上流武士(各藩の重役など)収入は数百石程度から、大規模な藩の重役の場合には数万石におよぶ例もあります。たとえば、あの篤姫の父は薩摩藩の重役でしたが、彼の年収は1万石もありました。■3位:豪商江戸の大商人・三井家は一日に150両売れたといいます。換算すると、年間で54,750両。現在の価値で、5,475,000,000円(54億7,500万円)ほど。ここから仕入れの代金や使用人の給料が差し引かれますが、相当な収入があったのは間違いありません。■2位:大名とくに加賀藩の前田家などの「大大名」。「加賀百万石」といわれる加賀藩ですが、実質的には120万石以上の収入があったといわれています。藩主は給料制ではないため、詳細は不明ですが、莫大な収入があったはずです。■1位:征夷大将軍いわゆる徳川の将軍様。給料制ではないので定かではありませんが、江戸時代の徳川家康が自由に出来たとされる収入が100万石ほど。要するに1,000億円です。徳川宗家で800万石所有。日本の3分の1が将軍家の領地扱いでした。しかし、将軍の仕事は意外にも勤務時間が長く、仕事が終わるまで拘束されたようです。*江戸時代は近代のような学歴社会でもないため、収入ランキングにはさまざまな職業が混在しているようです。出身の家柄に左右されると思いきや、経営者や遊女がランクインしているのも興味深いですね。堀江さんは「他にも探せば稼げる職業は出てくるかもしれません」とおっしゃっていましたが、江戸時代の情景を思い浮かべながら見れば、一層楽しめるランキングかもしれません。(文/齊藤カオリ)【取材協力】※堀江宏樹・・・作家・歴史エッセイスト。著書多数。性別を超えた独特の論調で、幅広いファン層をもつ。2015年10月に『乙女の真田丸』(主婦と生活社)、9月に『三大遊郭 江戸吉原・京都島原・大坂新町』(幻冬舎)、7月に角川文庫版『乙女の日本史文学編』(主婦と生活社)、1月に『乙女の松下村塾読本』(主婦と生活社)を出版。また、監修協力のクラシックバトル漫画『第九のマギア』第一巻(メディアファクトリー)なども好評発売中。
2015年10月15日三菱航空機は10月1日、機構改革として航空機安全統括室に型式証明統括部を新設したことを発表した。今後は、航空機安全統括室の室長である犬飼賢一執行役員が型式証明統括部の部長を兼務する。なお、開発中の次世代リージョナルジェット機MRJ(Mitsubishi RegionalJet)の飛行試験機初号機による初飛行は、10月26日から10月30日までの期間に予定されており、明確は初飛行実施日は前日に発表となる。(c)2015 MITSUBISHI HEAVY INDUSTRIES, LTD. All Rights Reserved.
2015年10月01日