「ASD(自閉症スペクトラム)」について知りたいことや今話題の「ASD(自閉症スペクトラム)」についての記事をチェック! (1/16)
転勤が決定!怒涛の1ヶ月がスタートマイワールド全開の長男けんとは現在、小学4年生。特別支援学級の情緒クラスに在籍しています。3歳の時にASD(自閉スペクトラム症)と診断を受けました。構音障害があり、集団行動が苦手で不注意。数字に関することが大好きな男の子です。Upload By ゆきみわが家は夫の仕事の柄、転勤族です。今年の3月に入る頃、1ヶ月後の4月に転勤することが決定しました。予め引っ越しをする可能性があることを子どもたちに伝えてはいたのですが、決定後に改めてけんとに伝えると、すんなり受け入れている様子。数年かけて築きあげてきた、私たち家族を取り巻く全ての支援者の方たちのサポートに満足していた私は、また一から探してつくっていかないといけないという現実に、正直、落ち込みました。しかも今回の引っ越し先は初体験の雪国!引っ越しに向けて考えることは山積みです。慣れない雪道を歩いて通学するので、小学校と中学校が近くにある物件を探しました。ほかの条件も含めてピッタリのところを探すのは大変でしたが、無事決定!続いては転校に必要な手続きなどを聞くために、市役所と校区の小学校に電話をしました。学校内の見学を希望させていただくことに……けんとは引き続き特別支援学級を希望することにしました。その場合、新しい小学校で転校の手続きをする前に、市の施設で教育相談と知能検査をする必要があるとのこと。4年前にけんとは知能検査を受けたことがあったのですが、有効期限が過ぎているとのことで、改めて検査を受けることになりました(地域によって必要な手続きは違うようです)。小学校に電話をして話を伺いました。今まで通っていた小学校は、全校生徒の人数がとても少なくのんびりした学校だったのですが、新しい学校はマンモス校!学校ならではのルール、地域性も違うように感じました。Upload By ゆきみ手続きする日程を決める時、合わせてけんとの学校内の見学を希望させていただきました。けんとは、学校のつくりがどうなっているのか、階段や教室、どこに何があるのか……など、すごく気にする子どもです。見学をしないと、授業中でも一人で勝手に校内を見て回ってしまう可能性があります。学校の先生に相談をすると見学を了解してくださり、私が手続きをしている間に、特別支援学級の担任の先生が校内を案内してくださることになりました。通い出して判明!地域によっての制度の違い怒涛の1ヶ月が過ぎ、遂に4月!引っ越しをしました。教育相談と知能検査を終え、転校手続きに学校へ。その時に特別支援学級の先生と面談があったので、けんとの性格や特性をお伝えしました。そして始業式!けんとに感想を聞いてみると「思っていたよりも人が多かったです~」とのこと。人が多い集会や式に出席するのが苦手なのですが、最後まで参加したことに成長を感じました。Upload By ゆきみ実際に通ってみると同じ特別支援学級といっても、前の学校と新しい学校とでいろいろなところが違いました。前の学校では、知的クラスと情緒クラスは教室が分かれていました。知的クラスは1人ひとりの勉強ペースに合わせて進めていました。情緒クラスでは、国語と算数は特別支援学級の教室で通常学級の子どもたちと同じペース・内容を授業形式で行い、ほかの教科は交流学級へ行き、授業を受けていました(サポートで先生がついてきてくださっていました)。新しい学校の特別支援学級では、知的クラスと情緒クラスの教室が同じで、学年ごとに分かれて勉強します。生徒それぞれの勉強のペースがあるのでプリント学習がメインです。そして「トレーニング」という授業があります。ランニングや筋肉トレーニングを行います。けんとは体を動かすのが苦手なので、ついていけるのか心配しましたが、見学に行くと、嫌がらず頑張っている様子でした。図工の授業も多く、週明けには休日に何をして過ごしたのかを発表する授業があります。今までなかった授業内容やスタイルに、少しずつ慣れていっているようです(地域によって制度がさまざまなようです)。しばらくの間、サポートをしに学校へ……Upload By ゆきみけんとは、見た目が苦手な食べ物を見ると、嘔吐してしまったり、しそうになってしまいます。ほかの人が給食を食べている様子が見えてしまうのが怖いので、それを先生にお伝えしたところ、教室の一角にあるレールカーテンで仕切れる場所をけんとの給食スペースとして利用させてくださることになりました。けんとは構音障害があり、言葉が不明瞭なうえ、自分の思いを上手く伝えることが苦手です。けんとが学校に慣れるまで、そして先生がなんとなくけんとに慣れてくださるまで(4月いっぱいくらいまでの間)、朝、給食の時間、帰りの時間帯に私も学校へ行き、通訳が必要そうな時は先生に伝えるなどサポートをしました。5月中旬頃になって、私も子どもたちも生活が落ち着いてきたように感じます。けんとが新しい環境について何かを言ってきた訳ではありませんが、不安からなのか落ち着きのない様子が多かったり、自己刺激行動、チックが多くなっているように感じます。まだ始まったばかりの新地での生活。けんとが安心して過ごせる環境づくりができるよう、支えてくださる周りの方々と連携をとりながら、少しずつ関係を築いていけたらと思っています。執筆/ゆきみ(監修:新美先生より)転勤に伴う急な転居・転校のエピソードを聞かせていただきありがとうございます。転勤の辞令が直前に出るお仕事をされている方のご家族は、ただでさえ大変なのに、環境変化が苦手なタイプのお子さんにとっては試練です。また、これまで築いてきた支援の体制が途切れてしまう不安もありますよね。それでもやり遂げてこられたこと、すごいです。転勤が決まる前から、引っ越す可能性があることを「予告」しておくのは大事ですね。決まってしまったらどんどん動くしかないので、そういうことがありうることを事前に伝えて予定の範囲にしておくことで、受け入れがスムーズになりますね。学校の体制、特に特別支援の運用のしかたなどは、かなりの地域差があります。以前いた学校の生活とは全然違ってしまって戸惑うこともあります。どのように変わったかを具体的に説明することが大事なお子さんもいると思いますし、なんとなくなじんでしまうお子さんもいますね。お子さんによって、気にするポイント、こだわるポイントがまちまちなので、お子さんに合わせて必要な支援はお願いしましょう。けんと君の場合は、校内の場所を把握しておくことが重要とのことで、事前に校内見学をさせてもらったのはよかったですね。また、給食がネックになるお子さんもいます。慣れない環境だとより過敏になるお子さんもいるし、一度嫌な体験(嘔吐など)をしてしまうと、拒否になってしまうことも起こりうるので、そのような心配をしっかり初めから伝えて、初めから、食べる場所の工夫や、慣れるまでの付き添いなどをしたのはとても良かったのではないかと思います。学校によっては、以前の学校で起きたことがあっても、「とりあえずは普通にやって様子を見て必要なら考えましょう」などと言われてしまうこともありますが、嫌な体験を経験してしまってからでは取り返しがつかなくなることもあるので、心配な点はしっかり学校側に必要な合理的配慮を伝えて初めから対応してもらうことが重要だと思います。ゆきみさんはその点、転校の最初からしっかり支援体制を組んでいけるパワーが素晴らしいと思いました。新しい学校にも慣れつつあるとのこと、何よりです。大変だと思いますが、ゆきみさんのパワーで新天地でよい関係づくりができそうですね。前の記事はこちら(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2025年06月13日「遊ばないなら友だちを呼ぶのは禁止!」夫がミミにお友だちを家へ呼ぶのを禁止してから、数日が経ちました。もともとミミは週に3〜4回のペースで友だちを呼んでいたのですが、いざ呼んでもまずは1人で動画を見ることを優先します。動画を見終わる頃には、友だち同士がすでに遊び始めているためミミはその輪に入れず、結局1人でゲームをしていました。それを見ていた夫は、「1人で動画を見たり1人でゲームやってるならもう呼ぶな!」と禁止したのです。この友だちが呼べない間、ミミは……この禁止期間、ミミは学校から帰宅すると、弟のふーと家でゲームをしたり、1人で昆虫のおもちゃでバトルごっこなどをしていました。家にお友だちを呼べなくても、公園やお友だちの家に行かないのかな?と思いミミに聞くと「お友だちのウチもダメでしょ」とミミ。あれ?なにか思い違いをしている?そんなことはないのでは?と思って、私が夫に確認すると、「友だちの家に行くなとは言ってない」と夫。ミミは「友だちの家でも1人でゲームをするなら同じことだから、行くのもダメ」と思い込んでいたのです。この誤解は解消してあげないとと思った私は、夫からミミに直接話してもらいました。Upload By taeko友だちと一緒にいても「一緒に遊ぶ」がクリアできない翌日、ミミは一人だけ友だちを呼んできました。その子は、ほかにも友だちが来ると思っていたようですが、誰も来る気配がなかったため、持っているスマートフォンでほかの友だちと連絡を取り、電話の相手の子の家に行くことに。Upload By taekoミミはお友だちに「オレも行く!」と言って一緒に出かけていきました。見送りながら、(この子はミミと2人で遊ぶほどの仲ではないんだな……)と思った私。Upload By taekoミミが帰宅した後、何をして遊んでいたのか聞くと、そこでも1人用のゲームで遊んでいたようでした。以前、友だちの輪に入れなくても、同じ空間に居ると落ち着くといっていたミミ。お友だちと一緒にいるところまではできるようになったのですが、一緒に遊ぶのがなかなかクリアできないな……、これはまだまだ道のりは長いなと感じました。そんなある土曜日の午後、ミミを公園に誘いに2人のクラスメイトがやってきました。ミミの表情はパッと明るくなり、すぐに友だちと一緒に出かけていきました。そのクラスメイトは以前にも2回ほど公園に誘ってくれたことがありましたが、今回は久しぶり。ミミはとても嬉しそうでした。Upload By taeko3時間以上遊んで帰ってきたミミは、大満足の笑顔。そんな姿を見て、私も嬉しくなりました。お友だちとの遊びも、ゲームより外遊びのほうが参加しやすいのかも?楽しそうに遊べてよかったなと思っていたのですが、久しぶりにはしゃぎ過ぎたミミは体調を崩し、3日間学校を休むことになってしまったのです。ミミ、初めてのうれし涙休んで3日目、ほぼ完治したミミですが「明日も休みたいなー」とぶつぶつ。3日も学校を休むと、登校へのプレッシャーが大きくなっていたのだと思います。そんな時、弟のふーがミミの担任の先生から封筒を預かってきました。そこにはお知らせのプリントと一緒に、先生とクラスメイトからの励ましのメモ書きが貼ってありました。早く元気になってまたあそぼうね(笑顔のイラスト)体調だいじょうぶですか?はやく元気になって学校やおうち、公園でまた遊ぼうねこれを読んだミミは、生まれて初めて嬉し涙を……。Upload By taeko私の「みんな待ってるね」夫の「学校いかなきゃな」の言葉に「うん」と答えたミミ。メモをくれた子は、ミミの「お友だち」と言える子なのかもしれないな、と私は思いました。友だちと一緒に遊ぶというハードルの高さはまだまだ続くと思いますが、ミミの世界はどんどん広がっていって、お友だちとの関係もどんどん深くなっていくのだと思います。そんなミミの成長を側で見てハラハラしたり、嬉しくなったりするのも親の醍醐味なのかもしれません。これからも、ミミにはお友だちとの付き合い方を少しずつ学んでいってほしいと思っています。執筆/taeko(監修:鈴木先生より)ASDのミミさんは「一緒に遊ぶ」という抽象的な表現がわからなかったのかもしれません。何をして遊ぶか、例えば、ブロックでお家を作るとか、お人形を使ってままごとをする、学校だと校庭のブランコで遊ぶとか、教室で折り紙をするなど、具体的に提示しないと分からない場合が多いのです。今回のように、友だちと遊ぶことに関しても同じです。どこでどうやって何をして遊ぶかを明確にしないと通じない場面が多くみられます。また、不登校のお子さんが学校へ行くきっかけになった一つに、「友だちからのお誘い」があります。ASDのお子さんは、自分の気持ちや興味を優先しやすいため、周りから注目されたいと感じることがあり、放課後友だちと遊べたら「明日も学校で待っているよ」という言葉で背中を押されるのです。前の記事はこちら(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2025年06月06日◆自閉症の作家が綴る幼稚園時代の日常『自閉症の僕が跳びはねる理由』で知られる作家の東田直樹さんによる幼稚園時代のエッセイ。会話が難しい自閉症児だった著者の視点から幼稚園の世界を見ることができます。保育者のお悩みに答えるQ&Aも収録され、保護者も保育者・支援者もほっと一呼吸できる1冊です。今回は、自閉症児にとっての友だちの存在と、友だちとの思い出について、書籍『自閉症の僕の子ども時代 だから毎日、幼稚園に通えた』(世界文化社)から一部抜粋してお届けします。書籍『だから毎日、幼稚園に通えた』Q 東田さんにとって「友だち」ってなんですか?思い出とともに教えてください(E・Mさん/保育歴9年)周囲に興味を示さず、ひとりで遊ぶことが多い子がいます。無理に関わりを持たせようとは思いませんが、友だちをどう思っているのか気になります。実は興味を持っていたり、関わりたいと思ったりする場面もあるのでしょうか。東田さんの特に印象に残っている友だちとの思い出や、どのような場面で友だちに関心を抱いていたか、友だちを見てうらやましいと感じたことや、自分との違いを意識した場面があれば、それも教えていただけるとうれしいです。※画像はイメージです砂山のトンネルで、ぎゅっと友だちの手を握った思い出僕は、人よりものに興味がありました。友だちという存在に気づいたのは、幼稚園に通い始めてからだと思います。子どもがひとりで遊んでいるからといって、ひとりが好きなわけではないと思うのです。ただ、自閉症などの障害のため、コミュニケーションが苦手で、遊びのパターンのこだわりが強かったりすると、友だちがその子に声をかけても、その子の遊びに入れてもらえないかもしれません。また「ごっこ遊び」や「ルールのある遊び」の遊び方がわからないと、ほかの子の遊びにも興味を示さないと思います。それでも先生は時々声をかけて、ほかの子の遊びにその子を誘ってみてください。みんなと同じように遊べなければ、その子ができる役割を探します。その子にも、周りの子にも「一緒に遊ぶのは楽しい」と思ってもらえたなら大成功です。僕の友だちとのエピソードは、砂場での出来事です。その日は、みんなで大きな砂山を作りました。僕は見ているだけでした。砂山にトンネルが開くと、先生が僕に「ここに手を入れてみて」と言いました。「これでいいのかな?」と思いながら手を入れると、向こうから友だちが、次々に僕の手をぎゅっと握って握手してくれました。予想外のことで僕はびっくりしましたが、「おもしろい、またやりたい」と思ったことを覚えています。僕の心はほんわかしました。※画像はイメージです幼稚園に行けば、僕と同年代の子どもたちに会うことができます。パズルにたとえると、僕にとって幼稚園がパズルのフレームなら、子どもたちはパズルのピースのようでした。遊びの時間には、みんなばらばらに分かれて遊んでいるのに、先生の声かけや合図があると、素早く自分の位置に戻ることができます。僕はいつも最後のピースだったように思います。僕が何度やってもできないことを、みんなは軽々とできているのが不思議でした。自分だけできないのは悲しかったです。だけど、できないことがあっても、友だちや先生が僕の名前を呼んでくれたり、手をつないだりして教えてくれました。「僕もちゃんとできた」。みんなに助けてもらいながら、成功体験を積み重ねることで、自信もついていったのでしょう。当時の僕は友だちの名前も顔も、一人ひとり区別がついていなかったように思います。僕にとっては、みんなが憧れの存在でした。何でもできるみんながうらやましかったです。僕が自分のすべきことがわかればパズルは完成。僕が仲間外れにされることはなかったです。=====この続きは、是非書籍でご覧ください。自閉症の僕の子ども時代 だから毎日、幼稚園に通えた詳しくみる※本記事は、『自閉症の僕の子ども時代 だから毎日、幼稚園に通えた』著:東田 直樹/世界文化社より抜粋・再編集して作成しました。
2025年06月05日広汎性発達障害(ASD・自閉スペクトラム症)の娘と2人の弟の関係は……広汎性発達障害(ASD・自閉スペクトラム症)の娘は、中学3年生。弟が2人います。小学3年生の、おしゃべりでお調子者の長男と……Upload By SAKURA3歳の、気が強くて食いしん坊の次男です。Upload By SAKURA娘の発達の遅れが分かった時、私たちは2人目の子はいずれ欲しいとは、思っていましたが、具体的な時期は、まだ考えていませんでした。私たち夫婦は話し合い、今は2人目のことを考えるのはやめ、娘に集中しようという結論になりました。Upload By SAKURAその後、娘は療育に通い、3歳を過ぎた頃から少しずつ会話ができるようになり、4歳で診断を受けました。そして5歳の時、2人目である長男が生まれました。そこからは、思い通りにならず、意思の疎通が簡単にはいかない小さい子が、常にいる状態だった娘。Upload By SAKURA1人で静かに過ごしていた時に、よく泣く長男が生まれ、長男との関係がうまくいくようになり始めた頃、次男が生まれています。私はよく、読者さんから「発達障害のある子がいて、ほかのきょうだいもいて大変じゃないですか?」と聞かれることがあります。たしかに、過去を振り返ってみると、たくさんの「大変」がありました。長男が生まれた時、聴覚過敏だった娘が、赤ちゃんの泣き声に過剰に反応したり……姉弟間で会話ができるようになったら、今度は自分の言いたいことや指示をうまく弟に伝えられない娘が、ストレスを感じたり……その時、その時で私は頭を抱えて、悪戦苦闘していました。Upload By SAKURA娘もそうだったと思います。Upload By SAKURAきょうだいをつくったのは、きつい言葉で言ってしまえば「親のエゴ」。2人目の時は、娘が聞いてもまだ分からない状態だったため、「きょうだい欲しい?」とは聞かなかったのですが……娘はきょうだいが欲しくなかったかもしれないのに、こんなに泣き声に苦しませてよかったのだろうかと、悩んだことも何度もあります。Upload By SAKURAUpload By SAKURA悩んだことはたくさんありましたが、長男が産まれて、娘に初めてきょうだいができて、8年半経った今……大変だったことより、よかったことのほうが大きかったと感じています。人とのコミュニケーションが苦手な娘にとって、弟たちはたくさん失敗ができる相手です。弟たちとの関わりで、娘は多くのことを学び、コミュニケーション力は大きく成長しました。Upload By SAKURAUpload By SAKURAUpload By SAKURA特に次男との関係は、娘が小学校高学年~中学にかけての関わりだったため、表面上だけではなく、もっと深い説明や理解ができることで、影響は大きかったと思います。そして、息子たちもまた、娘のように特性を持つ人との関わり方を学びました。Upload By SAKURA感覚過敏で、パニックを起こした時の娘は小さい子どものように、泣きじゃくることがよくあります。長男は、それを見ても、姉を笑うことなく、静かに見守ってくれます。Upload By SAKURA言葉を組み立てるのが苦手な娘。うまく文章にできず、説明するのに時間がかかるのですが、長男は急かすことなく、娘がしゃべり終わるのを待ってくれます。Upload By SAKURA突然の事態や予定変更に弱い娘。慌てふためいている時、次男は落ち着くように、言葉と態度で伝えてくれます。Upload By SAKURA周りを気にかけることが苦手な娘は、外出時、みんなから遅れてしまうことが多いのですが、次男は常に、娘がどこにいるか気にしていて、少しでも私たちから遅れると、私たちに待つように注意してくれます。わが家の子どもたちは、不思議で……それぞれ個性は強いですが、なぜかバランスが取れています。娘は、マイペースで苦手なことも多いけど、最年長ともあって、私たちは一番信頼しています。そのため、長男と次男の前で、娘を特別扱いすることも多いのですが、娘は弟たちに威張ることはせず、弟たちの目線になって遊んだり、考えます。Upload By SAKURA長男は、よくしゃべるので、状況説明がとても上手。娘と一緒にいて、なにかトラブルが起きた時も、どうしてそうなったかをうまく説明できない娘の代わりに、誰がどうしてどうなったかということを鮮明に伝えてくれます。娘のことをよく理解している子です。Upload By SAKURA次男は、まだ小さくてわがままな部分もたくさんありますが、思った以上にしっかり者。私に叱られると、娘はパニックになって思考が止まってしまい、長男は、急激に凹んでしまうことがよくあります。そんな時、次男は3歳児なりに2人を引っ張ってくれます。パニックになって、凹んで、動きが遅くなる姉と兄を、誘導してくれ、状況をよく見て行動する子です。Upload By SAKURA自分でいうのもなんですが……こんなポンコツな私の子育てで、みんな素晴らしい子に育ったな~と感心してしまいます。それぞれ、苦手な部分、気になる部分はありますが、3人いるからこそ、過度に1人を気にせずに、「おいおい、頼むよ〜」というぐらいの気持ちでいられる部分もあります。Upload By SAKURA娘の発達上の特性で、頭を抱えてしまうことはいまだに起きていますが、典型的な小学生男子の長男がやるおバカな行動や、まだまだ赤ちゃん感が残る癒しの塊次男に癒されたり……その逆で、長男次男コンビの激しい男同士の喧嘩の仲裁に疲れた時は、ほのぼのした娘に愚痴を聞いてもらったりして、私も精神的なバランスを取れているように思います。子育て歴14年。振り返り感じることは……子育て歴14年……私は、こういう(コラムを書く)仕事をしているので、子どもたちの昔を振り返ることが頻繁にあるのですが、大変だったな~と思いはするものの、機会がない限りはもう細かくは思い出せません(笑)。長男の泣き声に、娘が苦しんでいたことも、娘は今となってはうっすらしか覚えていないようで、家族の中では笑い話。わが家の子どもたちは、自分が小さい時のこと、大変だった時のことを聞きたがるので、よく聞かせることがあるのですが、「ママ大変だったんだぞ~わっはっは~!」と武勇伝のように話しています。「昔の大変」が今笑い話なら、「今の大変」もいつか、笑って話せる時が来る。子どもの数の分だけ、大変だったけれど、学びと笑いがあると思っています。執筆/SAKURA(監修:森先生より)SAKURAさん、子育ての中でたくさんの困難を乗り越えてきた体験談をありがとうございます。聴覚過敏やコミュニケーションの難しさなどに向き合いながら、ご家族みんなが互いに学び、支え合ってこられたのですね。長男くんの状況説明のうまさや、次男くんの思いやり、そして娘さんのマイペースながらも信頼されるお姉さんぶりと、それぞれの個性が輝き、家族としてバランスが取れていてとっても素晴らしいですね。さて、発達障害の傾向がある方には、感覚過敏や言葉の組み立ての難しさ、予定変更への対応の困難などが特徴として表れることがあります。相手の意図や感情を読み取る「心の理論」や、表情やジェスチャーの理解が難しい場合があります。療育を通じて言語やコミュニケーション能力が向上するケースも多くあります。早期介入が鍵となり、言語療法や行動療法が有効です。同年代の子どもとの関わりも重要になってきます。学校にもよく相談して、連携して特性に応じた対応をしていけるといいでしょう。きょうだいとの日常的な関わりも、社会的スキルの向上につながります。ただ、どうしても親としては発達の偏りのある子どもの対応を中心に考えてしまうことがあります。きょうだいは多かれ少なかれそのことを感じ取って、時に自分の感情を後回しにしてしまうことがあるかもしれません。家族全員で楽しめる活動、たとえばボードゲームや散歩、簡単な工作などをする時間を設けるのがおすすめです。また、時には、きょうだいの一人ひとりとの時間をとったり、短時間でも1人ずつ抱きしめたり対話したり、といったことを意識するといいですね。発達障害の有無に関わらず、複数の子どものニーズに応えるのは大きな負担です。子育ての忙しさの中でも、SAKURAさん自身のリフレッシュを忘れないようにしてください。10分程度でもお茶のタイムをもつ、好きなドラマを1話観るなど、小さな楽しみを意識的に取り入れてみてくださいね。発達の偏りがあるケースでは、適切な支援と環境調整で大きく成長が促されます。家族みんなが自分らしく輝けるよう、これからも小さな一歩を積み重ねてください。SAKURAさん家族の笑顔と学びがさらに増えていくことを心から応援しています。前の記事はこちら(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2025年06月04日◆自閉症の作家が綴る幼稚園時代の日常『自閉症の僕が跳びはねる理由』で知られる作家の東田直樹さんによる幼稚園時代のエッセイ。会話が難しい自閉症児だった著者の視点から幼稚園の世界を見ることができます。保育者のお悩みに答えるQ&Aも収録され、保護者も保育者・支援者もほっと一呼吸できる1冊です。今回は、子どもがパニック状態のときの対応について、書籍『自閉症の僕の子ども時代 だから毎日、幼稚園に通えた』(世界文化社)から一部抜粋してお届けします。書籍『だから毎日、幼稚園に通えた』Q 子どもがパニック状態の時、どう対応すればよいのでしょう?(C・Tさん/保育歴8年)子どもに「こうしたい」という欲求があり、かんしゃくを起こして泣いたり、人に危害を加えそうになったりした時などは、どのように対応したらよいでしょうか。欲求が叶えられない気持ちや、パニックになってしまった状態には、どのように寄り添ってほしいのでしょう。※画像はイメージです落ち着くのを待って、気持ちに寄り添った声かけをパニックなどの不適切な行動は、そうなる前に防ぐのが理想的です。特に自閉症児の場合は、くり返すことで、不適切な行動そのものが、こだわりにつながってしまうことがあるので、注意しなければなりません。自分に注目してほしいから、やってしまう子どももいるかもしれませんが、僕の場合は、注目してほしかったわけではなく、壊れたロボットの中にいるみたいに、自分の感情や言動をコントロールできませんでした。自分の意思だけではどうにもならなかったのです。自閉症児に対して、わざと怖い顔をして怒る人がいますが、あまり効果はないような気がします。行動の善し悪しより、相手の表情だけが記憶に残ってしまい、その表情をもう一度見ようと、注意されたことをまたやってしまうことがあるからです。子どもがかんしゃくを起こした時には、ひとまず受け止めてあげたほうがよいと思います。「○○したかったよね」「うまくいかなくてつらいね」など、その子の気持ちに寄り添った声かけをしてあげてください。移動できるのであれば、誰もいない安全を確保できる静かな場所に連れていってあげたほうが早く落ち着くと思います。落ち着いたら、次に同じようなことがあった時どうしたらよいのか、一緒に考えてあげてほしいのです。※画像はイメージです=====この続きは、是非書籍でご覧ください。自閉症の僕の子ども時代 だから毎日、幼稚園に通えた詳しくみる※本記事は、『自閉症の僕の子ども時代 だから毎日、幼稚園に通えた』著:東田 直樹/世界文化社より抜粋・再編集して作成しました。
2025年06月02日1歳半から始まった家族への他害。どうして叩くのか分からない。赤ちゃんの頃から人見知りや感覚過敏など、気になるところがあったたーちゃん。1歳半になっても発語はワンワンのみ。市の1歳半健診では要観察と言われていました。その頃悩んでいたことの一つに、私や夫への他害行為があります。・叩く、蹴る・首元に強く抱きつく・物を投げる・私や夫の物を壊そうとするなど……。Upload By みかみかん機嫌良くニコニコしていたと思いきや急に叩いたり蹴ったりするのが、わが子ながら怖いと思ってしまいました。1歳半といえど、力一杯叩かれたり物を投げつけられるのは痛かったです。そして、心の余裕もどんどん擦り減っていきました。市の心理士さんに相談した時には、「構ってほしかったり、注目してほしかったりして他害行為をしているのではないか。コミュニケーションの一部になっているのかもしれない」と言われました。夫と話し合い、「普段からもっとたーちゃんと遊んだり話しかけたりして構ってあげよう」と決めました。言葉が出てくれば他害行為は収まるだろうと、二人とも期待していたと思います。言葉の理解が深まってきた2歳。他害は落ち着くと思いきや……。2歳半頃。たーちゃんは3語文をたまに話すようになり、言われたことへの理解はかなりできている様子でした。しかし、私と夫への他害はなくなりませんでした。むしろ、頻度や力の加減がさらにひどくなっていきました。「やめて」の意味は分かっているはずなのに、言われても笑顔のまま他害行為を続ける。「痛いからやめようね」「やめてって言われたら一回でやめようね」と冷静に伝えても何度もしつこく繰り返す。そんなことがずっと続きました。さらに、言われていることは理解できていても、叱られているという雰囲気は分かっていないように感じました。怒っている・困っている・痛がっているということを、表情や口調から読み取れていないように思えました。Upload By みかみかん幼稚園ではお友だちへの他害はないようでしたが、先生から「注意する時にどう伝えたらたーちゃんに響くか分からない」と言われたことがあります。注意する時には、なるべく端的にはっきり伝えるようにしていましたが、それでも叱られたことを何度も繰り返していました。5歳半の現在。他害行為はほぼなくなる。いつになったら私や夫への他害行為はなくなるのだろうと悩み続けていましたが、5歳半の現在、他害行為はかなり落ち着きました。現在でも「ダメだよ」と言ってもやめてほしいことを繰り返したり、コミュニケーションがやや一方的に感じることはありますが、蹴ったり叩いたりすることはほとんどありません。他害行為が減った理由は、言葉の理解が深まったことと精神的な成長が大きいかな、と思います。しかし、実際のところ何が要因だったのかは分かりません。4歳頃から、徐々に落ち着いてきたと感じます。Upload By みかみかん家族への他害行為に悩んでいた時は、体が痛いのはもちろんのこと、「いつになったら落ち着くのだろう」「もっとひどくなるかも」「お友だちにも他害をし始めたらどうしよう」と心も疲弊していました。お子さんの他害はすぐに落ち着くのは難しいかもしれませんが、ゆっくり改善していく場合もあります。他害に悩んでいる保護者の方の希望になれれば良いな、と思います。過去の私のように、今困っている人たちに「一人じゃないよ」と伝えたい他害行為だけでなく、たーちゃんの困りごとが目立って、「発達障害かも?」と気になり出したあの頃。「一年後、この子はどうなっているのだろう?」「将来どうなるのだろう?」「困りごとはずっとなくならないのかな?」と、先が見えないことに不安を感じ、インターネットで検索ばかりしていました。そして、期待していたような記事は見つからず、希望を見出せないままどん底にいるような気持ちでした。しかし、療育やさまざまなサポート、発達障害に理解のある方々と出会い、今では家族3人で毎日前向きに暮らしています。もちろん大変なことや心配事もありますが、それは「子育てをしていれば当たり前のことだ」と思えるようにまで私の心は回復しました。Upload By みかみかんさらに、たーちゃんが幼稚園や療育で頑張っている間、精神的に余裕が出てきた私は、こんな記事があの頃あったら良かったのに、と思えるくらいになりました。「大丈夫だよ、なんとかなっているよ」と、過去の私と同じように悩みを抱えている保護者の方の気持ちを少しでも楽にしたい。そう考え、「一人じゃないんだ」と思えるような、保護者の方に寄り添う記事を書きたいと思い立ちました。今回で発達ナビでのコラムの掲載は最後になりますが、約一年半、楽しく書くことができたのは皆さんの暖かい応援のおかげです。書き残しておきたかったことや皆さんに伝えたかったことをたくさん記事にできて、うれしく思います。これからも私たちの生活は続きます。またどこかでお会いできれば幸いです!執筆/みかみかん(監修:森先生より)みかみかんさん、他害行為への向き合い方と落ち着いてきた今までの道のりを教えてくださってありがとうございます。みかみかんさんが今回の体験談を教えてくださったことで、同じようなお悩みを抱えた方は希望を持てるのではないでしょうか。さて、発達の偏りがあるお子さんの場合、感情の読み取りや行動のコントロールに課題を抱えることがあります。叩く、蹴る、物を投げるなどの他害行為が見られることも少なくありません。これという原因が特定しにくいため、対応に悩まれる親御さんは多いのではないでしょうか。他害行為は、以下のような要因が複雑にからみながら関与している可能性があります。コミュニケーションの困難:言葉や非言語的な手段で自分の気持ちや欲求を伝えるのが難しい場合、他害行為が「表現手段」となることがあります。心理士さんが指摘したように「構ってほしい」「注目してほしい」という意図が背景にある可能性があります。感情の理解や共感の難しさ:表情や口調から感情(怒り、痛み、悲しみなど)を読み取ることが難しい場合があります。「やめて」と言われても笑顔で繰り返す様子や、叱られている雰囲気を理解しにくい様子は、こうした特性によるものと考えられます。感覚処理の問題:感覚過敏や感覚鈍麻が見られ、ストレスや不快感を身体的な行動で発散することがあります。他害行為が急に始まる場合、環境や感覚的な刺激がトリガーになっている可能性も考えられます。衝動性の高さ:衝動を抑えるのが難しい場合があり、感情や欲求を即座に行動に移してしまうことがあります。これらの要因が、その時その時で複雑に絡み合って他害行為となっている可能性があります。みかみかんさんが書いてくださったように、他害行為が落ち着く要因としては、以下のようなことが考えられます。言語発達の進展:言葉の理解や表現力が高まることで、欲求や感情を他害以外の方法で伝えられるようになる。社会的・情緒的成長:成長とともに他者の反応を理解したり、行動を調整する力が育つ。環境調整や療育の効果:ご家庭や療育や幼稚園でのサポートによって、コミュニケーションや自己調整のスキルが育つ。家族の関わり:「もっと構ってあげよう」と意識的に関わることで、安心感や信頼感が育ち、他害行動の必要性が減る。いずれにしても、すぐに解決することはなかなか難しく、根気強く向き合っていく必要があります。対策としては次のようなものが考えられます。伝え方を変えてみる:視覚情報に強いお子さんの場合、「やめて」「痛いよ」と言葉だけで伝えるよりも、絵カードやジェスチャーを組み合わせると理解しやすくなります。たとえば、「やめる」サインとして手を振る動作を教えるなど。代替行動を教える:他害行為の代わりに、クッションを叩く、ボールを転がすなどの行動を具体的に教える。褒めて強化することで、徐々に代替行動が増えます。「構ってほしい」ために他害をしている場合、言葉やサインで「遊んで」と伝える方法を練習します。感覚ニーズに応える:感覚過敏や感覚を求める行動が背景にある場合、感覚遊び(スライム、砂遊び、跳躍器具など)を取り入れる。感覚を満たすことで他害行動が減ることがあります。環境を整える:感覚過敏がある場合、騒音や光を抑えた環境を整える。イヤーマフの使用、落ち着くスペースの設置など。ポジティブな関わりを増やす:普段から遊びや会話を通じて子どもとの信頼関係を築く。安心感があると行動が落ち着くこともあります。良い行動(叩かない、優しく触れるなど)を具体的に褒める:「叩かずに手をつないでくれてうれしいよ!」と伝えると、子どもは望ましい行動を繰り返しやすくなります。トリガーの特定:他害行為が起きる状況(時間、場所、出来事)を記録して、どんな刺激や状況が引き起こしているかを特定します。例えば、ルーチンが崩されることや、騒音や疲れなどがトリガーになることがあります。安全な環境づくり:物を投げる場合は柔らかい素材のおもちゃを提供する、危険な物を手の届かない場所にしまうなど、環境を整えることでケガやストレスを軽減できます。保護者のメンタルヘルスケア:他害行為は保護者の心身に大きな負担をかけるため、保護者自身のメンタルヘルスケアも重要です。地域の保護者支援グループやカウンセリングを利用して、ストレスを溜め込まないようにしましょう。休息やリフレッシュの時間を意識的に確保することも大切です。地域の親の会やオンラインのコミュニティで悩みを共有すると、「一人じゃない」と感じられます。他害行為は成長や適切なサポートで改善する可能性があります。医療機関や支援機関を頼りながら、保護者自身の心のケアも忘れないようにしてくださいね。前の記事はこちら(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2025年06月02日2歳で発達障害の診断。3歳ごろから療育へ発達障害の診断を受けて3歳ごろから療育に通っていたマユユ。希望通りの児童発達支援に通えており、そこは数時間の預かりタイプで生活的にも助かっていたのですが……成長していくにつれて「保育園にも通わせたい」と思うようになりました。それは家庭の事情もさまざまありますが、成長してきて少しずつ人との関わりを受け入れることが増えたマユユにいろんな体験をしてほしい、という親としての願望も大きかったです。はじめは年少入園を目指したのですが、それは叶わず年中になるときにようやく入園のお知らせを受け取ることができました。集団での活動が難しかったマユユははじめて診断を受けた時から、5歳の現在も引き続き「社会性や人との関わり」に大きな難しさがあります。”成長してきて少しずつ人との関わりを受け入れることが増えた”と前述しましたが、それは主に身近な保育者に対しての部分的なものでした。周りのお友だちの様子を見て一緒に動いたり、先生の出す一斉指示に注目したりすることは今でもまだ難しいことが多いです。入園前から通っていた児童発達支援は10名ほどの小集団でした。何度もモニタリング面談に伺いましたが、そのたびに、補助のない集団行動が困難な様子が伺えました。Upload By サチコ加配制度については聞いたことがあったので、「間違いなくこの子には必要だろう」と思いながら保育園探しをしました。入園後に顔合わせの面談があった保活の際、園への問い合わせでは真っ先に「加配がなければ難しいと思っている」ことを伝えました。(加配を付ける判断は自治体によって違うと思いますが、それでも園からはどういったお話や反応があるか気になりました)そうやって何件も問い合わせる中、特に「ここに入れたらいいな」と思える園が見つかり……マユユは幸運にもそこに入園することができました。入園が決まるとまず、担任になる先生と詳しくお話しする時間を設けてくださいました。マユユの自然な様子を見てもらいながら、特性や難しい部分・好きなことや喜ぶことなどについてできるだけ詳しく、包み隠さず伝えました。この時も、やはり待つことが難しく自由にウロウロしはじめたマユユ。大きな声が出たりもしていて、私はいつものように焦りだし不安な気持ちになっていたのですが……園長先生や周囲にいらした先生が自然とマユユを、強くとがめたりすることなく観察しながら見守ってくださっていたのが印象的でした。加配が必要だという気持ちに変わりはありませんが、この時の先生方の対応や空気が心地よく、心強く感じたのを覚えています。通園開始後しばらくして市の面談も無事に通園がはじまると、しばらくして「加配についての市の面談」もありました。市の職員・園の先生・マユユと私とで、園での様子について話したり、マユユの様子を見てもらったり簡単な発達検査のようなやり取りも行いました。家庭と園ではまた様子がちがうため、私が見ることができない園での様子(難しいこと)などは先生が伝えてくださいました。(実はこの時もマユユは、やはり状況が理解できていないため、途中で「帰る」と癇癪を起こして大変でした……。しかしそれも含め困難さを知ってもらう場だったと思います。)Upload By サチコ地域によって手続きは違うと思いますが、これは”加配が必要かどうかの判定”をするための面談だったのかと思います。これは年度ごとに行われるようです。「加配が必要だと思っている」と伝えていたためか、入園してすぐからついてくださっている先生がいたのですが、この市の面談後、正式に判定がおり加配の先生として配置されたと説明を受けました。加配保育中の様子加配の先生は保育中、基本的にずっとマユユについていてくださいます。市の面談での判定によるのかもしれませんが、マユユの場合は一人に対して一人の先生がつきました。クラスの子たちと一斉に移動することができなくてもマユユのペースに合わせてくださるのですが、”無理強いはしないけど、できる時はいっしょに”という完全に別行動ではない点もうれしかったです。加配つきで預けるにあたって、マユユの場合は誤学習しやすい点や注目行動が起こりやすい点について、療育の先生と相談した内容や対処法を特にしっかりお伝えしました。これは私自身が家庭でも難しさを感じている点であり、先生との生活でも重要になってくると思ったからです。それからコミュニケーションのきっかけになる“その時マユユがハマっているもの“についての共有もしっかりするようにしています。Upload By サチコ私自身もマユユとの生活には試行錯誤をたくさんしてきて、「対処法が分からない・この対応で合ってる?」ということがいつも不安でした。なのでマユユにはもちろん、先生にも少しでも楽しく過ごしてほしい気持ちがありました。それで結果的にマユユの心地よい居場所になるといいなと思っていました。活動への参加はむずかしいことが多いけれど園でイベントが行われた日のお迎えでは(参加は難しかっただろうか)と落ち込んでしまうのですが、「イベントのお部屋に一緒に入るところまではできましたよ!」「今日は最後までいられました!」など報告を受け、先生も諦めず、でもマユユや周囲のお友だちにも負担のないような形で臨機応変に動いていただけていることが伝わりました。Upload By サチコマユユが拒否した場合も、先生がスモールステップで向き合ってくださっているようです。マユユも成長や経験にともない提案に応じることが少しずつ増えてきました。また、加配や担任ではない先生方からも「今日マユユちゃん〇〇できていたんですよ!もう聞かれましたか?」とうれしそうに声をかけていただけることが何度もありました。ほかの先生も、他人事でなく見守ってくださっていることには胸が熱くなりました。加配保育に不安もあった約一年がたちマユユは年長さんになりました。加配保育について、ほかの子たちとは違うんだと改めて感じてしまったり、不安にもなりましたが、今は「加配つきで保育してもらえて本当に良かった」と思えています。また、お友だちとの関係が築きにくくなることを心配していましたが……お迎えに行くと、すれ違ったクラスのお友だちが「今日マユユちゃんはね」と本日のマユユの連絡をしてくれたりします。やりとりして遊ぶことは難しくても、イベントにいないことが多くても、当たり前に”クラスのお友だち”として接してくれます。最後の一年、イベントも多く不安な気持ちも大きいですが、園や療育と連携してマユユが楽しく過ごせる環境をつくれたらと思います。前の記事はこちら執筆/サチコ(監修:新美先生より)加配保育士がついての保育園生活について詳しく聞かせていただきありがとうございます。加配保育士は、園の集団生活の中で特別な支援が必要な場合に、追加される保育士で、明確な設置基準のようなものは定められていないため、自治体や保育園(幼稚園)により、基準や運用はさまざまのようです。このため、お住まいの自治体や通っている園によって、様子が異なる可能性があることはご承知おきください。園の集団生活で、お子さんが困る場面があったり安全が確保しにくかったりする場合に、加配保育士をつけてもらえることがあります。個別に担当の加配保育士がつく場合もあれば、複数の対象児に一人の加配保育士がつく場合や、クラス全体としてつく場合などさまざまです。また午前中だけなど、時間が決まっている場合もあります。集団の活動に乗りにくかったり、全体に対する言語指示のみでは伝わりにくかったり、衝動的な行動が目立って安全が確保できない場合など、加配保育士がついてくれることで、ご本人も無理なく、安全に過ごしやすくなります。集団の活動に興味が向かない時は加配保育士と別の活動をして過ごしたり、集団の中で不安な時にそばにいてもらったり、他児との仲介をしてもらうことでお互いに安全に遊べたりということがあります。マユユちゃんも、集団活動に入る時間が多くはなくても、同じ園に通うことでお友だちとの交流ができたり、徐々に慣れたりしていくことにつながっていますね。本人が楽しく安全に通うために、加配の先生がいることは心強いですね。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2025年06月01日◆自閉症の作家が綴る幼稚園時代の日常『自閉症の僕が跳びはねる理由』で知られる作家の東田直樹さんによる幼稚園時代のエッセイ。会話が難しい自閉症児だった著者の視点から幼稚園の世界を見ることができます。保育者のお悩みに答えるQ&Aも収録され、保護者も保育者・支援者もほっと一呼吸できる1冊です。今回は、「みなさんお片づけ」の1編を書籍『自閉症の僕の子ども時代 だから毎日、幼稚園に通えた』(世界文化社)から一部抜粋してお届けします。書籍『だから毎日、幼稚園に通えた』みなさんお片づけ園庭に、手まりみたいなまん丸い紫色のアジサイの花が咲きました。しとしと雨が降り続いても、子どもたちは元気いっぱい。積み木やパズル、絵本を広げ、ワイワイ、ガヤガヤ、保育室で遊びます。あちらこちらで楽しそうな笑い声。「朝の会」が始まる時間になると、先生がピアノを弾いてくれます。ファファファソラー♪ファファソラー♪ソファソララドシララソソファ♪この音楽が流れてきたら、おもちゃや絵本を元の場所に戻さなければいけません。「お片づけ~お片づけ~さあさみなさんお片づけ~♪」。先生の歌声が、保育室に響き渡ります。みんなは、机の上や床にある絵本やおもちゃを、次々に棚に戻します。だけど僕は、ひとりだけ時間が止まったように動きません。なぜなら、聞こえてくる音に聴き入ってしまうからです。音楽が流れてきたら、体全部が耳になるのです。音楽を聴きながら何かをすることが苦手です。※画像はイメージです僕のお片づけは、先生の歌が終わってからが本番。じっとしている僕のそばに先生が来てくれます。「これは、どこに片づければいいかな?」。それでも僕は動きません。今度は、先生の言葉に耳を傾けているからです。先生の声は、いつも明るく元気です。保育室のどこにいても聞こえます。僕に直接話しかけてくれる時の先生の声は、お母さんみたい。「ここだよ」と先生に言われて、そこにおもちゃを置きます。「よくできました」。先生が、僕の頭をなでてくれました。灰色の雲のすき間から光が差しています。「雨やんでいるよ」「ほんとだ」。みんながいっせいに空を見上げます。僕だけは下を向いて、ポタポタと屋根から落ちるしずくに見とれていました。=====この続きは、是非書籍でご覧ください。自閉症の僕の子ども時代 だから毎日、幼稚園に通えた詳しくみる※本記事は、『自閉症の僕の子ども時代 だから毎日、幼稚園に通えた』著:東田 直樹/世界文化社より抜粋・再編集して作成しました。
2025年05月30日ASD(自閉スペクトラム症)の姉弟を育てていますわが家にはASD(自閉スペクトラム症)の姉弟がいます。長女が5歳、次男が4歳のときに診断を受けました。二人ともマイペースで、食べることが大好き。そして、ちょっぴり負けず嫌いな性格です。現在は長女が小学4年生、次男が小学2年生になりました。今回は、そんなわが家の「放課後の過ごし方」をご紹介します。わが家の放課後スケジュールはこのような感じです。・週2回:放課後等デイサービス(放デイ)・週4回:自宅で過ごす・不定期で利用:放課後教室(本人の希望により)Upload By ユーザー体験談私は仕事やPTAの役員仕事などがあるため、毎日決まった時間に帰ることはなかなかできません。そんなときは、同居している義母にお願いすることもあります。義母が不在の曜日(週2日)は、放デイを利用。放デイは曜日を固定して通所しています。不定期で利用している放課後教室は、学童とは違い、地域ボランティアによる無料の預かり事業です。夏は16時半、冬は16時まで開室していて、工作や遊具遊びなど、楽しく過ごせる場です。なお、2歳違いの姉弟はそれぞれ別の放デイを利用しています。姉の場合:癇癪と不安感から放デイ利用をスタート長女が小1のときは、家に祖母がいて、コロナ禍の中だったため私の仕事も子どもの下校より早く終わる状況が多く、放デイの利用は考えていませんでした。そもそも、当時は放デイの存在自体を知らなかったのですが……。でも、弟の診断・療育開始をきっかけに私の外出が増え、長女が「家に一人でいるのが不安そう」「癇癪が増えた」と感じるようになりました。そんな中、学校に定期的に見回りに来るソーシャルワーカーの方から、放デイの存在を教えていただきました。今利用している放デイは、・同じ小学校の子も通っている・土曜日にイベントもあり楽しそう・場所見知りが激しい娘が「また行きたい」と言ったという理由から決めました。ただ、娘は近所のお友だちが大好きで「一緒に遊ぶ時間が足りないから放デイ行きたくない!」となる日もあるようです。でも、行ったら行ったで楽しんでいるようなので、無理のない範囲で利用しています。弟の場合:きょうだい別の放デイに。本人の「楽しい!」が決め手弟が小1になる際には、「姉と同じ放デイだと家にいるときと同じになってしまうのでは?」と考え、別の放デイを選びました。年長さんの年度末から探しはじめたため、ほとんどの施設はすでに定員いっぱい……。そんな中でも体を動かすのが好きな息子に合いそうな「運動療育」を取り入れている施設を見学しましたが、本人が怖がってしまって断念しました。結局小2から通いだしたのですが、今通っている放デイに決めたのは、・見学で「楽しい!」と笑顔を見せた・所長さんが息子に優しく接してくれたというポイントが大きかったです。息子も放デイで大好きなサッカーを楽しんでいて、今のところ「行きたくない」と言われたことはありません。放デイと相談して始めた一番助かっている支援は……娘が放デイに通い出した頃、娘との関係で一番悩んでいたのは、宿題をめぐって言い合いになってしまうことでした。帰宅してから「宿題やったの?」「まだ!」というやり取りや、宿題をしなければいけないけれどしたくない娘が、だんだんとイライラ……。そうなると家庭内の雰囲気も悪くなる一方でした。このことを放デイのスタッフさんに相談したところ、家庭の雰囲気が良くなるようにと、支援の内容を検討してくださいました。それ以降、スタッフさんが、自然に自分で宿題に取り組めるような気持ちを作ってくれるように声をかけるなどしてくださいました。娘もやる気になるのか、そのまま宿題に取りかかることも。娘は家で宿題をするとすぐ「分からない!」と怒るのですが、放デイでは不思議とそんなことがないと聞いています。この支援のおかげで家での「宿題やった?」というやりとりが激減し、家庭の雰囲気がぐっと穏やかになりました。弟の放デイでも同様のお願いをしています。また、それ以外にもさまざまな支援をしてくださったおかげで家庭での癇癪も減り、落ち着いて過ごせる時間が増えました。娘は場所見知りも激しいのですが、休日に行われる放デイでのイベントなどはとても楽しみにしているようです。Upload By ユーザー体験談支援次第で本人の生きやすさが変わる……この言葉が忘れられないわが家では今の放課後スタイルにとても満足しています。特にルーティンができあがっているので、高学年になっても今のまま利用を続けられたらと考えています。娘は将来、部活動にも興味があるようなので、中学生になったらまたスケジュールを見直すかもしれません。弟については、まだまだ未知数ですが……。娘は、友だちや小さい子にとても優しくて、そのままの優しさを持って育ってほしいです。苦手な勉強も少しずつ自信をつけていけたらと思っています。息子には、まずは「自分のことは自分でできるように」なってほしいというのが今の目標です。診断をしてくださった先生が「障害を障害と思わず“個性”として見てあげてください。支援次第で本人の生きやすさが変わります」とおっしゃっていたことが、今でも心に残っています。これからも、子どもたちが自分らしく、そして少しでも生きやすくなるような環境を、親として整えていけたらと思っています。イラスト/プクティエピソード参考/muscat(監修:森先生より)仕事やPTAと多忙な中、お子さんの個性に寄り添い、それぞれに合った放課後の過ごし方を模索された体験談をありがとうございます。周囲の方のサポートを上手に活用しながら、お子さんたちの「楽しい!」という気持ちや「安心」を大切にされてきたのですね。宿題をめぐるストレスを軽減するために放デイのスタッフさんと連携し、家庭の雰囲気を穏やかに保つ工夫を重ねされたことも素晴らしいと思います。「支援次第で本人の生きやすさが変わる」という言葉は本当にその通りで、子育てには絶対的な正解パターンがあるわけではないので子ども一人ひとりに向き合いながら手探りでサポートの仕方を探していくしかありません。さて、発達の偏りのあるお子さんは、マイペースで特定のことに興味を強く惹かれたり、負けず嫌いな一面を持ったりすることがあります。「場所見知り」や「癇癪」、「運動への興味」などがみられることがありますが、一人ひとり特性が異なるため、支援は個別にカスタマイズする必要があります。早期診断により、適切な療育や支援を早期に開始できるため、子どもの社会的スキルや生活適応力を向上させる可能性が高まります。放課後等デイサービスは、構造化された環境での学びや社会性の向上、ストレス軽減に役立つ重要な支援をすることができます。「場所見知り」や「運動好き」は、感覚ニーズに関連している可能性があります。感覚過敏がある場合、環境の変化に不安を感じることがあります。事前に環境を説明したり、慣れる時間を設けたりすることが有効です。逆に、運動で感覚刺激を求める場合、定期的な運動プログラムが感情の安定に役立ちます。施設によって得意なプログラムも違いますし、雰囲気も違いますので、実際に見学に行ったり通ってみないと分からない部分も多いかもしれません。癇癪や不安は、感情を調整する難しさから生じることが多いですね。放課後等デイサービスでの宿題支援のように、スタッフが自然にモチベーションを高める声かけを行うのは、感情調整を促す良い例です。家庭でも、「落ち着く場所」や「好きな活動」を用意し、感情が高ぶったときに自分でリセットできる方法を少しずつ教えると良いでしょう。宿題をめぐる言い合いを減らすためには、放課後等デイサービスを頼ることも手ですが、ご家庭でやらなければならない場面も避けては通れないかと思います。そんな場合は、以下のことを試してみましょう。・短時間集中:宿題を10~15分の短いセッションに分け、間に休憩を入れる。・選択肢の提供:たとえば「国語からやる?算数からやる?」と選ばせることで、主体性を持たせる。・報酬システム:宿題が終わったら好きなこと(ゲーム、テレビ、おやつなど)を設ける。・感覚調整のための道具や環境・気が散らないように、勉強道具だけしか見えない勉強用のスペースを設ける。・感覚過敏がある場合、ノイズキャンセリングイヤホンや重いブランケット(加重ブランケット)で落ち着ける環境を整える。これからも、お子さんたちの優しさや強みを大切にしながら、ご自身も無理なく楽しみながら子育てを続けてくださいね。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2025年05月29日◆自閉症の作家が綴る幼稚園時代の日常『自閉症の僕が跳びはねる理由』で知られる作家の東田直樹さんによる幼稚園時代のエッセイ。会話が難しい自閉症児だった著者の視点から幼稚園の世界を見ることができます。保育者のお悩みに答えるQ&Aも収録され、保護者も保育者・支援者もほっと一呼吸できる1冊です。今回は、「だから毎日、幼稚園に通えた」と「小さな虹」の2編を、書籍『自閉症の僕の子ども時代 だから毎日、幼稚園に通えた』(世界文化社)から一部抜粋してお届けします。書籍『だから毎日、幼稚園に通えた』だから毎日、幼稚園に通えた登園したら上靴に履き替え、先生に挨拶をして出席ノートにシールを貼る。それから自分の棚にかばんをしまい、上着を脱いでたたみます。毎日やっているにも関わらず、僕はみんなのようにできませんでした。昨日も同じことをしたのにと思われるかもしれませんが、僕にとっては毎回初めて経験するような感覚だったのです。手取り足取り教えてもらいながら僕はいつも笑っていました。「これから何をするのだろう」と胸がわくわくしていたからです。先生たちは、少しでも僕ができればほめてくれました。だから毎日幼稚園に通えていたのだと思います。梅雨の時期に降り続く雨音と保育室に響き渡る友だちの笑い声。ケケケケ、ポタポタ、ジャージャー、グワッ。人差し指で両耳を塞ぎながら、じっと聞き入る自閉症の僕。「かえるの合唱」みたいなこの雨と声のコーラスは、うるさすぎたけどいやではなかったです。小さな虹晴れ渡った夏空の下、園庭で水遊びをしました。先生が空に向けてホースで水をまき、子どもたちはその下を裸足で走り回るのです。ワーワーキャーキャー、右に左に大騒ぎ。ホースから出る水は、たくさんの水滴となって、子どもたちに降り注ぎます。いつもの体操の時間には、一列に並んだり、大きな円をつくったり、自分の場所が決まっているのに、水遊びの時にはどこにいても叱られません。僕も腕をぐるぐる回しながら、大きな声を出して走ります。水滴が体にかかっても気にしません。夏草の香りをふくんだ風が、すぐに吹き飛ばしてくれるからです。ほら、こんなに青空に近づけたよ。思い切り跳びはねる僕。ホースの先を僕のほうに向けてくれる先生の後ろから、夏の光が照りつけます。笑顔いっぱいの僕の瞳には、七色に光る小さな虹が映っていました。=====この続きは、是非書籍でご覧ください。自閉症の僕の子ども時代 だから毎日、幼稚園に通えた詳しくみる※本記事は、『自閉症の僕の子ども時代 だから毎日、幼稚園に通えた』著:東田 直樹/世界文化社より抜粋・再編集して作成しました。
2025年05月27日閉ざされた訪問看護への道息子が児童精神科に通い始めたのは、小学校3年生の頃でした。不登校をきっかけに受診したのが始まりです。最初の頃は一緒に受診できていたのですが、本人の調子がどんどん悪くなるにつれ、外出自体が困難になりました。そんな状況を心配してくださった特別支援学校の先生が「訪問看護を検討されてはどうですか?」と提案してくださいました。先生ご自身も障害のあるお子さんを育てていらっしゃるので、息子の様子を特に気にしてくださっていました。しかし当時、子どもが利用できる精神科の訪問看護は圧倒的に少なく、いくつか問い合わせをしてみましたが、子どもは難しいということでほとんどの事業所に断られてしまいました。唯一受け入れてくれると仰ってくださった訪問看護ステーションの方は、ご自分のお子さんがうちの息子と同じ年だということで、かなり親身になって話を聞いてくださいました。そして、児童精神科の担当医に「訪問看護を利用したい」と相談をしました。先生は「私の方針として、精神科の訪問看護は、お子さんにはお勧めできません。また、息子くんは学校の先生との関わりによる心の傷が深いので、もし訪問看護で新しい人との関わりが生まれ、再び大人への信頼を失うようなことになったら……という危惧もあります」とのことでした。Upload By 花森はな※訪問看護は認知症以外の精神疾患も対象になります。精神科訪問看護を受けるためには、医師の精神科訪問看護指示書が必要です厚生労働省|訪問看護コロナ禍で増えた?子どもの訪問看護次に訪問看護を検討することになったのは、それから3年後のことです。息子の状況が大きく変化しました。過度の緊張をすると発作が起きるようになり、心因性非てんかん発作と診断されました。学校どころか、いつ発作が起こるか分からないので日常生活もままならず、私も勤務途中に息子から連絡を受け、大きな発作が起きる度に職場と自宅を何度も往復する日々でした。そして精神科を受診した際、改めて訪問看護の利用について相談してみると、快諾されました。その旨を相談支援の方にお伝えすると、すぐにたくさん資料を持ってきてくださり、すでにいくつかの訪問看護ステーションに問い合わせをしてくれていました。資料を見て驚いたのは、この3年で子どもが利用できる精神科を専門とする訪問看護ステーションが増え、そして不登校支援も行っているところがかなり多かったことでした。コロナ禍で不登校の子どもが増えたことも原因かもしれません。私たちにとっては渡りに船の状況でした。相談支援の方から「この訪問看護ステーションは男性の看護師さんがほとんどなので息子くんに合うかもしれません。とても良い事業所ですよ!」と勧められた2つの事業所に問い合わせました。家の近くの事業所は既に利用枠が埋まっていたのですが、最後の事業所は奇跡的に空いていました。すぐに面談と体験利用が決まりました。Upload By 花森はな障害のある人が自立した日常生活又は社会生活を営むことができるよう身近な市町村を中心として以下のような相談支援事業を実施しています。(厚生労働省|障害のある人に対する相談支援について)もっと早く出合いたかった……短時間ケアと温かな寄り添い担当の看護師さんとはすぐに打ち解け、訪問看護がスタートしました。訪問看護の内容は、病院との連携による心身状態の観察や服薬管理、日常生活への助言やサポートなどがあるそうです。息子の場合は服薬は夕食後なのでお願いせず、毎回の検温と血圧測定、そして体調の変化の共有をお願いし、残りの時間は話し相手になっていただきました。以前から利用している週2回のホームヘルパーに加え、週2回の訪問看護を利用することで、息子の日常的な見守りの体制が整いました。ホームヘルパーの利用は1回1時間で、訪問看護の利用は1回30分と短いのですが、長時間他人と接するのがしんどい息子にはその短さがちょうどよかったようです。その短いようで長い時間を、主にゲームの話をして過ごします。「ゲームが好き」と相談支援の方があらかじめお伝えしてくださったので、ゲームの話ができる看護師さんを派遣してくださったようで、訪問時には「うちで担当している子どもたちはゲーム好きな子が多いので、練習用に事務所にゲーム機を置いてもらえないかなぁ」と話してくださいました。なかなか学校に行けない子どもたちに寄り添ってくれているのが、その言葉からも滲み出ていました。また、入院した際は退院時のカンファレンスなど一人で悩んでいたことや退院後の生活調整のアドバイスをいただいたことは本当にありがたかったです。こんなことならもっと早く訪問看護を利用したかったなぁ……と思ったりもしました。Upload By 花森はな親子の強い味方に!発達特性のある子どもは、病院が苦手な子も少なくありません。特に外出が困難な子は「病院で受診する」ということの前に「定期的に病院へ行くこと自体の負担」が勝ってしまい、保護者も連れて行くことの困難さや子どもの心身を思うと、軽微な症状であれば受診をためらってしまうことがあります。そんな時、訪問看護を通じて主治医と連携がとれた看護師さんに気軽に相談できるのは本当に心強いです。先日も息子の体調が思わしくなく、病院へ行くほどではないかもしれないと悩んだ際、的確なアドバイスをいただきました。訪問看護の利用を始めて、もうすぐ半年になりますが、わが家は利用できてよかったと心から思っています。Upload By 花森はなもっと頼ってもいい!さまざまな選択肢不登校のお子さんの保護者の方と話していた際、発達障害や精神疾患がある子どもの不登校へのサポートをしてくれる訪問看護ステーションがあることをほとんどの方が知りませんでした。私自身も、息子の調子が再び悪くならなければ、知らなかったことだと思います。訪問看護は「家族への支援・相談」も行ってくださいます。特性があり、学校生活に困難を感じた子どものサポートは、家族だけでは不可能です。カウンセリングに行くまででもないけれど子どものことで悩んでいる、あまりに環境が違いすぎて周囲の人に相談できない、相談しても否定されてしまうような状況のことでも、医療者として話を聞いてくれる訪問看護はとてもありがたい存在です。障害のある不登校育児はどうしても抱え込んでしまいがちですが、なるべくこういったサービスを積極的に利用して、親子共々心の負担をできるだけ軽く、子どもの長い人生に寄り添っていきたいと思っています。執筆/花森はな(監修:新美先生より)訪問看護利用についてのエピソードを聞かせてくださりありがとうございます。訪問看護は、訪問看護師などがご自宅などに訪問して、療養生活を送っている方の看護を行うサービスです。看護師以外に、リハビリスタッフが行う訪問リハビリもあります。医師が治療上必要と判断して、訪問看護ステーションに指示書を出すと、医療保険が適用されるため、負担は病院での診療と同様になります。以前は、小児では医療的ケアが必要な方を中心に利用されてきましたが、近年発達障害や精神疾患があって、在宅で過ごすことの多い不登校、ひきこもり傾向のあるお子さんにも、訪問看護や訪問リハビリを利用すると、お子さんにとってメリットが大きいことが注目されてきて、小児や発達障害の方を対象とする訪問看護ステーションも広まりつつあるようです。とはいえ、このような利用のされ方が広まってまだ日が浅いので、こうした利用の仕方になじみのない地域、発達障害のあるお子さんを対象としていない看護ステーションも多いです。指示を出す医師の方も、経験がなくて戸惑うケースも少なくないかもしれません。お子さんにとっても、安心安全の拠点であるべき自宅に、慣れない人が来ることで、領域侵犯されたと感じる方もいます。花森さんの場合、担当医の先生が初めは「お勧めしない」とおっしゃったのには、そのように判断されたのかもしれません。自宅ということや、頻度も比較的多く利用できることから、かえって負担にならないように、利用に際して、担当医や訪問看護ステーションのスタッフと利用の仕方についてはよく話し合い、ご本人の意思をしっかり確認して、また実際に利用してみてからの本人の感触をしっかり聞き取って、よりよいやり方で継続できるといいですね。訪問看護や訪問リハビリは、不登校・ひきこもり傾向の発達障害のある方にも、相性のよい利用の仕方が見つかると、利用の幅が広くとても使いやすい制度だと思います。どのような利用の仕方があるかのアイデアを、どんどんシェアしていけたらいいなと思います。前の記事はこちら(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2025年05月19日心配だったASD(自閉スペクトラム症)息子の電車通学Upload By まゆんASD(自閉スペクトラム症)の太郎は通信制高校へ進学した。通信制といえど週に5日間通学する。太郎が通う通信制高校は入学前の1月から2月の間で新入生の交流の意味を含めた通学日が数日間設けられていた。強制参加ではなく自由参加で、学校での学習だけでなく校外学習の日もあった。太郎は3回目の通学日のみ参加すると私に伝えてきた。太郎が毎回通っていいことを知らないのではないかと思い全て参加していいことを伝えたが、3回目の参加のみを選んだ。本人の意思が固いためその通りにさせようと決めていた。通信制の高校の先生からも1、2回目と不参加の太郎を心配しての電話が入った。「太郎さん大丈夫ですか?面接で電車通学が心配とも言われていたので……」と電車通学が心配なことも覚えてくださっていた。すごいフォロー力だとこの時もこの高校の良さを感じた。太郎が3回目しか参加の意思がないことを伝えると先生は安心されて「お待ちしております」と言ってくださった。太郎は公共交通機関も苦手としていて吐き気を催すことが多かった。だから電車に乗る練習を一緒にしようと私の方から誘ったが、放課後等デイサービスのスタッフとの電車体験(※)があるから大丈夫だとソフトに断られた。私は自主練習もした方が良いのではと伝えたがそこも「大丈夫」と一言返ってくるのみであった。一人で外出もしたことがないし、お店のスタッフの前では話もできずに固まるし、周りの会話には入らないし、アナログ時計を読むことができないし……。私は不安ばっかりであった。(※)対応は放課後等デイサービスによって異なりますUpload By まゆん電車に乗るにあたって電車の時刻表のアプリの使い方、読み方を太郎に教えた。スマートフォンについては私よりも詳しいためすぐに使用することができた。もちろん抜き打ちで「明日何時何分に何駅に着くには何時何分の電車に乗ればいい?」と質問して時刻を調べてもらうこともしていた。この抜き打ちテストには難なくクリアできていた。これで行きも帰りも電車の時刻を調べることには困らないなと私の心配が一つ減った(全ては私の安心のためにしている笑)。あとは分からないことがあったら駅員さんになんでも聞くように伝えた。質問することは恥ずかしいことではないからと何回も言った。放課後等デイサービスのスタッフの方との電車体験は、「特に問題なかった、これで一人でも行ける」と自信をつけて帰ってきた。その一週間後が体験通学の日であった。私は太郎が心配で学校近くの駅で隠れて待ち伏せしていた。以前も同じような光景があったなと自分で思い出したりもした。待ち伏せしている状態で太郎に電車に乗れたか確認のメッセージを送ると「乗れた」と返ってきた。太郎のメッセージはいつも単語で素っ気ない(太郎らしい)。乗れたならあとは無事目的の駅で降りてくるのを待つだけだと思いながらも「吐き気は大丈夫かな」「ドキドキしていないかな」など考えて多分私のほうがドキドキしていたのかもしれない。そして太郎が駅から現れた。周りも見ることなく目的地に向かって真っ直ぐ、ひょこひょこスンスンと歩いていた。その姿を見て心の中で「太郎ー!頑張れー!」「頑張ったねー!やったねー!」と大きな声を出していた。心の中だけでは物足りなくなってついに声に出してしまった。「太郎ちゃーん!おーい!」そう言って私は手を大きく振った。太郎は私に気づくとチラッと見て少しずつ近づいてきた。「やったね!行ってらっしゃい!」そう声をかけると太郎はこくんとうなずいて学校の方へ向かった。Upload By まゆんその後ろ姿を見て太郎の成長を目の当たりにしたような気がした。なんだか大きな第一歩を私は見られたのかもと思った。まとめ4月以降、ほぼ毎日電車に乗って通学をしています。公共交通機関が苦手、一人で外出をしたことがない。それがすべて嘘だったかのようです。何か明確な目的があればきっとどこにでも行けるのだろうなと感じた出来事でした。そこにはもちろん放課後等デイサービスの先生方や通信制高校の先生からの声かけなど周りの人たちの支えと本人の意思が重なってのことであると感じています。執筆/まゆん(監修:初川先生より)太郎くんの電車通学にまつわるエピソードをありがとうございます。高校入学にあたって電車に乗る、しかも一人で乗るという子も結構いらっしゃると思います。これまでのコラムの中でも、太郎くんは各種練習について自分でどうするのか決めて、それをやり遂げることができるお子さんでしたね。今回も高校入学前の体験通学日の参加の仕方や、電車通学の練習について、自分で決めて、その通りにやり遂げていて何よりだなと感じます。今は電車の時刻表アプリがあったり、そもそもスマートフォンを持っているから連絡が取りやすかったりととても便利な世の中になりました。そうしたツールも使いながら、できる範囲での予行練習(電車の乗り方の抜き打ちテスト、いいですね)をして、ハラハラしながら見守るまゆんさんの思いも、とても伝わってきました。体験通学の日、まゆんさんは待ち伏せしながら待たれていたのですね。後ろからバレないように尾行する方も多いだろう中で、待ち伏せするのは太郎くんを信用しているんだなという感じもしました。太郎くん、順調に電車通学できているとのこと、何よりです。明確な目的や頑張りたいという思いなどがあると、子どもはぐんと成長することがありますね。今回の高校進学もその1つだったのだろうと思います。前の記事はこちら(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2025年05月16日「多動・衝動性」と「親への愛着のなさ」に悩まされるわが家の一人息子おとは、軽度の知的障害(知的発達症)を伴うASD(自閉スペクトラム症)で、特別支援学級(知的固定級)に通う小学4年生です。おとが歩き出した時期は比較的遅く、1歳3か月のことでした。外出する際に私が手を繋ごうとしても、おとは嫌がって何度も私の手を振りほどき、手を繋いでくれませんでした。「危ないから手をつなぐよ」と何度声掛けしても、私の声はおとには届きません。仕方なく私はおとの手首を掴みます。しかし、気になる対象物を発見すると、おとは自分の手首を掴む私の手さえも勢いよく振りほどいて、対象物に猛ダッシュ、脱走しようとします。この「脱走」は、おとの気になる物が走行中の車である場合や、車道の向こう側にある物の場合もあり、本当に危険でした。Upload By ほかかほ先ほど「脱走」と書きましたが、この脱走の様子は、小さい子どもがテクテクかわいらしく走っていくような感じではありません。おとは自分の手をドリルのように回転させて私の手を器用にふりほどき、その後は何かにとりつかれたかのようなものすごい勢いと速さで、前のめりに、しかも左右に曲がりながらドリフトのような独特な走り方をするため、大変捕まえにくいことが特徴でした。なぜ手を繋がないのか?母の考察と4つの対策私は、おとが私と手を繋がない理由を3つ推測しました。1つ目は感覚過敏で、敏感な手のひらに私の手が触れる感覚が嫌だから。2つ目は、おとは人よりも物に対して凄まじい興味があったので、家の外にあるさまざまな対象物に惹かれてそれに夢中になっていたから。3つ目は、親への愛着が薄かったから。多くの定型発達児が抱く「親が近くにいないと怖い・不安」という感情は、当時のおとからは一切感じられませんでした。それを踏まえ、私は思いました。「このままでは、おとはいつか事故に遭ってしまう。命が危険だ」と。そこで私はおとと家の外を歩く時の対策を4つ考えました。Upload By ほかかほ対策その1バギーまずはおとに道を歩かせないようにしようと考え、家にあるバギーを使いました。おとはバギーにすんなり乗りこみますが、大人しく座っているわけではありません。バギーの上で左右に大きく揺れて感覚刺激を求めるため、私も支えきれず、何度も転倒していました。また私がバギーを押して移動して動いている時は良いのですが、止まると刺激がなくなるため、バギーのベルトを自力で外して脱走していました。そうこうしているうちにバギーは壊れました。対策その2抱っこ紐抱っこ紐はバギーに比べて目線が高くなるため、視覚優位のおとにとっては楽しそうでした。しかし飽きてくるとおとは身体を大きく反らせて抱っこ紐を出ようとし、そのまま頭から地面に落ちそうになることが何度かあり危険でした。また公園などで一度抱っこ紐から出してしまうとなかなか再度入ってはくれません。さらにおとは体重が重かったため、抱っこ紐の中でおとが無茶な動きをすると私の身体への負担は大きく、長時間の使用で私の肩や腰がきつくなるというデメリットもありました。そのため抱っこ紐は短時間の使用やおとが疲れて静かな時の移動に向いているアイテムでした。このような出来事が続いたあたりで、私は「おとは身体への強い刺激を求めている」ということになんとなく気づきました。対策その3子ども乗せ電動自転車子ども乗せ電動自転車はおとの特性に悩んで購入したわけではなく、当時住んでいた場所が街中だったため、車よりも小回りの利く自転車があると便利だなと思い購入しました。想定外でしたが、この電動自転車による刺激がおとにはとても合っていたらしく、うれしそうに静かに乗っていました。しかし自転車から降りたあとが問題でした。私がおとを乗せたまま自転車から降り、カギをかけたり荷物を降ろそうとすると、おとは刺激を求めて左右に揺れたりジャンプして自転車が倒れそうになります。そのためおとを先に自転車から降ろすのですが、そうすると脱走します。なので当時、自転車に載せられるコンパクトな簡易バギーを購入し、自転車を止めたらサッとバギーを広げ、そこにおとを乗せていました。簡易的なのでグラグラ揺れるバギーでしたが、感覚刺激を求めているおとにとっては揺れたほうが良いので、このバギーは重宝して、壊れるまで大活躍しました。対策その4迷子紐(子ども用ハーネス)上記に登場したバギー・抱っこ紐・自転車は「道を歩かせない」という点においては重宝するのですが、好奇心旺盛なおとからは「道を歩きたい」という意思を感じる時がしばしばありました。しかし道を歩かせるとやはり私の手を振りほどいて脱走してしまう。どうしたものかと考え、迷子紐(子ども用ハーネス)の購入を検討するようになりましたが、ここで私は悩みました。なぜ迷子紐の購入を迷ったか当時あるテレビ番組を見ていたところ、その番組内で迷子紐が討論の対象になり「賛成派」「反対派」が意見を繰り広げていました。反対派の人たちは「ペットじゃないんだから」「かわいそう」「あり得ない」「迷子紐じゃなくて、手を繋いであげようよ!」といった意見を主張していました。そして討論はうやむやに終わり、次のコーナーに移っていきました。これを見て私は「反対派」の主張の背景には、「発達特性や障害のある子に対する無知」とともに「子どもの尊厳に対する意識の高さからくる正義感」があるのではないかと感じました。それは仕方ないことなのですが、私が迷子紐をおとに使うことで、無知で正義感を持った人が何か言ってきたり、嫌な目で見てくるのではないか……と怖くなったのです。Upload By ほかかほ「迷子紐に文句を言ってくる人がおとの命を守ってくれるわけではない」そう思い、私は迷子紐を購入しました。街中で嫌な目で見られたり不思議そうにされることはありましたが、迷子紐は本当に使って良かったと思うアイテムです。手を繋ぐのは嫌がっていた当時のおとも、何種類か試したあとに気に入った迷子紐は、その後も嫌がらずに使用してくれました。おとと交通量の多い道を歩く時、お会計などでどうしてもおとの手を離さなけばならない時など、迷子紐によっておとは遠くへ走っていけなくなり、安全になりました。そして私も心に余裕が生まれました。特性の推移と現在Upload By ほかかほおとの場合、1歳半~2歳頃をピークに多動や衝動的な行動は徐々に減っていき、3~5歳頃には私と手を繋いで歩けるようになりました。しかしまだたまに私の手を振りほどいて脱走していたため、状況に応じて迷子紐を使用していました。迷子紐はコンパクトなので携帯しやすい点も良かったです。年長の夏頃になると、おとは私の手を振りほどいてどこかに行ってしまうことはなくなっていました。そしてその頃から、親への愛着や保育園や学校の先生に対する信頼感が、徐々におとから感じられるようになってきました。私の姿が見えないと不安を口にするようになり、少しずつ私に甘えるようになりました。保育園では分からないことがあると先生を頼り、不安な時は先生のそばにいたがるようになりました。小学校入学後は勝手に教室から出ていくことは一度もなく、先生を信頼している様子でした。おとが小学校2年生の時、私はおとから初めて「ママが大好き」と言われ、それ以降おとは私にたくさん甘えるようになりました。これまで私がいくら愛情表現をしてもおとからの反応は乏しかったのですが、自分の愛情はちゃんとおとに伝わっていたんだな……と、報われた思いがしました。障害や発達特性は十人十色ですが、子どもの命を守り、楽しく毎日を送るために、また親の気持ちのためにも、困りごとに対してさまざまなアプローチをしてみることは大切なことだと感じた一連の出来事でした。また子どもの反応が乏しくても、「親の愛情は子どもには伝わっているんだ」ということも感じた体験でした。執筆/かほ(監修:鈴木先生より)かほ様の愛情と努力が実って良かったですね。ただ、当時は必死だったと思います。迷子紐やバギーの対症療法以外に、身体への強い刺激を弱める方法としては、リハビリのOT(作業療法)で行う感覚統合訓練や外来での投薬という方法があります。これらは小児科医やかかりつけ医のセンス(知識と経験)の違いで保護者へのアドバイスが異なってきます。発達が専門の医者にとっては常識なのですが、学会でこのような症例が報告されると、必ずと言っていいほど感覚統合訓練や投薬の質問が出てきます。エビデンスがあるからです。ほかには、当クリニックでやっているようなMT(音楽療法)も情緒の安定や自己コントロールへの効果が期待されます。もし病院へ行く時間がない場合は、近所の公園の遊具やアスレチックで遊ばせることで多少なりとも「多動・衝動性」を抑えることが可能かと思われます。前の記事はこちら(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2025年05月08日赤ちゃんの頃から感覚過敏や激しい人見知りなど、気になるところはあった。でも目が合うし、よく笑っている。だから発達障害ではないと思っていたけれど……!?たーちゃんが赤ちゃんの頃は、・何かを身に着けることが苦手・人見知りや場所見知りが激しい・落ち着きがないなどが気になって、よくインターネットで検索をしていました。「以上のような行動をとる赤ちゃんは発達障害かも?」という記事も見つけ、心配になったこともありました。さらに、インターネットの記事でASD(自閉スペクトラム症)の赤ちゃんの特徴として・目線が合わない・笑わないという点も見かけました。しかし、1歳頃のたーちゃんには、この二点は当てはまらなかったのです。まだ診断を受けたり児童発達支援に通ったりすることが難しい年齢ということもあり、「ASD(自閉スペクトラム症)の特徴全てに当てはまらないなら、思い過ごしだ」と考えるようにしていました。Upload By みかみかん目が合うといっても、ほかの子とは違う?少しずつ増えていく違和感。ほかの子の目が合うは、じっと見つめて、表情豊かだった発達に気になるところはあるけれど、決定打らしいものはなく支援に繋がったり受診をしたりすることもなく、支援センターや児童館に通いながら自宅保育を続けていました。しかし、そこである日、あることに気がつきます。たーちゃんは目が合う。……けれど、ほかのお子さんのように興味深そうにじっと大人の顔を覗き込んだり表情を窺ったりすることはない、ということに。たーちゃんの目が合うは、ぼうっとこちらを見ている、たまたま顔があったからなんとなく見ている。そのように感じられました。大人の顔を見ていても、何かを考えたり表情を読み取ったりはしていないような表情だな、とほかのお子さんと比べて思ってしまいました。言葉で説明するのも難しいような、ちょっとした違和感です。Upload By みかみかん発達障害なの?違うの?揺れ動く気持ち……目が合うという点も怪しく感じてきたのと時を同じくして、発達で気になるところが徐々に目立ってきました。しかし、たーちゃんのことを知っている友人や知人に話しても、「え?たーちゃんが発達障害?気にしすぎじゃない?」とばかり言われていました。「私が気にし過ぎなのかな……?」「いや、保護者の私が気にしないと。自分の勘も大切にしよう」「でも、私の杞憂だといいな……」と、私の気持ちは波のように揺れ動いていました。バイバイしない、クレーン現象、意味のある単語が出ない……。わが子がASD(自閉スペクトラム症)かもしれない。でも、受容できない。発達を気にしながらも日々を過ごしていた1歳頃のある日。ショックなことが起こります。エレベーターでたまたま乗り合わせたご年配の方が、抱っこ紐の中の息子に笑いかけ、手を振っていました。しかし、その頃の息子はまだバイバイができませんでした。すると……「これくらいの子なら、バイバイくらいできなきゃ」と会って1分もしないその方から言われてしまったのです。うすうす勘づいていた、「発達障害かもしれない」という事実をドンと突きつけられた気持ちでした。失礼な人だとも思いましたが、怒るよりまずショックが勝ってしまいました。Upload By みかみかんさらに、たーちゃんは意味のある単語がなかなか出てきませんでした。1歳半で発語はワンワンのみ。いよいよ焦ってきた私は、たくさん本を読んだり、二人きりでもなるべく話しかけたり、たーちゃんの言葉を引き出そうとしていました。例えば、お菓子がほしいのだろうな、ということは表情や身振りで分かっていても、「何がほしいの?」と聞いてみたりもして。何も答えられないたーちゃんに、「お菓子ちょうだい、だね」などと根気強く教えていました。しかし、ある日。同じような状況で初めて、たーちゃんが私の手を取ってお菓子のほうへ持っていったのです。クレーン現象。発達関係の記事で何度も見かけていた言葉が、すぐ私の頭をよぎりました。それが発達障害に関係なく幼児にはよくある行動だと分かっていても、「あぁ、やっぱり発達障害なんだ」とまたもやショックを受けてしまいました。Upload By みかみかんその後、2歳半で診断を受けて……。インターネットの記事を鵜呑みにするのではなく、保護者目線で気になるところを大事にしてほしい。結局、たーちゃんは2歳半で発達外来を受診し、知的障害(知的発達症)のないASD(自閉スペクトラム症)と診断されました。その頃はすでに私の心構えができていたので、「やっぱり発達障害だったんだ。間違ってなかった」と安堵に近い気持ちでした。赤ちゃんの頃はまだ私の心の準備ができていなくて、「目が合うし、よく笑うからASD(自閉スペクトラム症)じゃない」と自分に言い聞かせていたのかもしれません。1年かけて、ゆっくりとたーちゃんの特性を受容していったのだと思います。「発達障害の赤ちゃんによく見られる特徴」などが、よくインターネットの記事にあります。しかし、全てはあてはまらない=発達障害ではないと決められるものではなく、逆に、全てあてはまっても発達障害ではないお子さんもいらっしゃるかと思います。また、保護者目線で気になるなと思ったところは大事にしてほしいなと思います。一番近くでお子さんを見ているからこそ気がつく、些細なことが大切だったりするかもしれません。そして、やはり心配なところがあるならば専門の方に診てもらうのがよいとは思いますが、保護者の方の心の準備が整ってからでもいいと、私は思います。執筆/みかみかん(監修:初川先生より)たーちゃん乳幼児期における発達障害かどうかで揺れ動く思い、そして診断を受けての思いのシェアをありがとうございます。今はさまざまな情報がネットで目に入りやすい時代なので、項目を見てあてはまる・あてはまらないと一喜一憂する方もいらっしゃることと思います。最後にみかみかんさんが書かれていたように、保護者目線で(つまり日々お子さんと接している保護者としての勘どころとして)ちょっとした違和感がある場合、それを大事にしていただきたいなと感じます。発達障害かどうかそのものが大事というよりも、お子さんの育ちはそれぞれ個人差がありますが、それにしても何かがゆっくりであったり、できないことがある場合、感覚的な過敏や鈍麻がある場合、子育てにおいて保護者が悩んだり、お子さんが集団生活に入るにあたってつらさを感じたりするかもしれません。発達障害という診断が出たり、あるいはそうかもしれないと感じて支援機関につながったりする中で、そうした特性を持つお子さんにとって、成長促進的な関わりや環境調整を知ることができたり、そうしたお子さんとコミュニケーションを取るコツを体得しやすくなったりすることと思います。受診や診断に至ることには心のハードルを感じる場合も多いと思います。違和感を持ちながら、あるいは不安を感じながらも、日々の子育ては続いていくもの。子育てにおいて、そうした保護者の方の違和感や不安をきっかけに、そうしたものを一緒に抱えてくださる機関や支援者とつながれる機会になるといいなと思います。前の記事はこちら(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2025年05月01日保育園生活は順調!?保健センターからの経過観察の電話、言葉が増えない息子を知育教室に通わせ始め……私が「自閉症(ASD/自閉スペクトラム症)」という言葉を知った日発達ナビユーザーから寄せられた体験談を元にしたマンガ「発達障害の子どもと私たち」。アキラ編第2話です。現在5歳のアキラくんは最近ASD(自閉スペクトラム症)の診断を受けました。1歳半健診のときに「経過観察」となったアキラくん。M子さんは「様子を見ておけばいいのか」と言葉通りに受け取ってしまいました。保育園入園後も言葉が増えないので知育教室に通わせることに決めましたが……。Upload By ユーザー体験談1歳半健診のときに経過観察となり、保健センターの人から「2歳くらいになったら電話します」と言われたアキラくん。その後、電話がかかってきましたが……Upload By ユーザー体験談Upload By ユーザー体験談Upload By ユーザー体験談発語の遅れが気になって知育教室へ。私が成長だと思っていたわが子との意思の疎通は「クレーン現象」だったの?発達ナビユーザーからの体験談を元にしたストーリーマンガ「発達障害の子どもと私たち」第3章アキラ編の第2話目はいかがだったでしょうか。アキラくんは5歳でASD(自閉スペクトラム症)の診断を受けています。1歳半健診で「経過観察」となったアキラくん。保健センターからの電話で受診を勧められましたが、診察の予約はなんと半年後!その間に少しでも言葉を増やそうと民間の知育教室(習い事)に通うことを決めました。体験の時は楽しそうに過ごしていたアキラくんですが、いざ通い始めるとギャン泣きで大パニックに……。見かねた先生と面談をし、普段の生活の様子を伝えると「クレーン現象ですね」と言われます。帰宅後、クレーン現象をスマートフォンで調べてみると、発達障害、ASD(自閉スペクトラム症)の記事がたくさん出てきて……「もしかして息子はASD(自閉スペクトラム症)なの?」と気づかされます。晴天の霹靂からの次回第3話「受給者証って何?申請と療育のはじまり」。続きもぜひご覧ください。イラスト/星あかりエピソード参考/M子(井上先生コメント)保育園に入ってお子さんの発達の遅れが分かるようになり、保健センターからも受診を勧められるが予約は半年後になると知らされ、親御さんもどうして良いかわからない不安な時期を過ごされたと思います。自治体によっても気づきから診断や支援の開始までの時間は異なりますが、この不安な時期をどのように埋めるかが行政的な課題となっています。親御さんに対する子育ての悩みを相談できる場所や専門家はおられると思いますが、その情報が直接伝わりにくいということも課題です。最近では一部の地域ではありますがペアレントプログラムやペアレントトレーニングなどのプログラムが受けられるところが広がってきています。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2025年04月27日当たり前になっていた“外出のための万全の荷物・人員の確保・心の準備”わが家の長女マユユは2歳の時に発達障害の診断を受けています(ASD/自閉スペクトラム症・軽度知的障害/知的発達症)。5歳での療育手帳の更新では、中度判定となりました。私はマユユが小さい頃「一緒に外出する難しさ」を感じていました。そのため、マユユとお出かけするときは、万全の荷物・人員の確保・心の準備が必要でした。でも、5歳になってしばらく経った頃から、それらの準備すべてが必須ではなくなってきたのを少しずつ感じていました。ある日、マユユとのお出かけで一緒に一万歩、歩くことができました。うれしさはもちろんありましたが、改めて“どうしてこんなふうにお出かけできるようになったんだっけ……”と不思議な感覚になりました。今回の外出で困らなかったのは偶然ではないだろうか……という不安もよぎりました。しかし、その後も何度か二人で出かけてみて、偶然ではなく成長の結果なのだと実感でき、また“難しい”とあまり感じなくなった理由も見えてきました。外出の難しさを感じ始めた頃から今までを振り返ってみたいと思います。わが道を行く?育てにくい?外出のことで悩みはじめたのは、マユユが歩き出した1歳頃からでした。マユユは睡眠の難しさも抱えていたので、夜眠れるように……と日中は毎日公園に連れ出していました。しかし、マユユは母である私を気にかけることなく、気になったものに一目散に走っていってしまうような様子でした。Upload By サチコ手を繋げない、引き止めると癇癪が起こる……逆に抱っこばかりで全く歩きたがらなくなった時期もあり、周囲に迷惑をかけないようにとお出かけのとき、私はいつも必死でした。マユユを楽しませたいという気持ちと、またトラブルが起こるかもしれない……という不安の間で常に揺れていました。2〜3歳頃もこだわりや癇癪が日常的に起きており大変でしたが、さらに体が大きくなってきた4歳頃になると、外で強い癇癪が起きたり大きな声が出てしまうと“とても目立っているのではないか”と緊張し、その度に私の頭の中は真っ白になりました。“もう大きいのに……”と冷たい視線を向けられているような気がして勝手に追い詰められていました(実際にそう思われていたこともあったでしょう)。Upload By サチコ帰宅してドアを閉めたとたんに、いろんな感情が込み上げて玄関で泣いてしまうことが度々ありました。同じく4歳の頃、通っていた療育施設での外出イベントをお断りされたこともありました。イベントの案内の用紙が連絡帳に入っていたので尋ねると「マユユちゃんは今回は難しいかもしれません」と告げられました。安全面を踏まえての先生の判断もあるので、落ち込んではいけない……そう思い、その場ではなるべく明るく返しましたが、療育施設という場所でも「マユユはお出かけすることが難しい」と判断されたという現実にとても悲しくなりました。「マユユとただ、ごく当たり前にお出かけしたい」それは、今は叶わないのだとその時思いました。夫にもマユユとの外出に関してとてもつらく感じていることや私自身の精神状態も伝え、しばらくは“あまり出かけないようにする”ことしかできませんでした。家で過ごす様子に変化の兆しただ同時に、家にいる時は以前よりマユユが母の私にも興味を持っているのでは?と思えることが出てきた時期でもありました。マユユがふれあいを嫌がらなくなり、笑顔も増え、声かけが伝わりやすくなってきていたのです。家の外ではやはりその声かけも届きにくくなってしまうのですが……。この時期は、外出は近所の公園程度にして、家の中やお庭でできる遊びを試して過ごしました。Upload By サチコ遊びの一環でちょっとした家事のお手伝いを教えてみると、思いのほか気に入ったマユユ。料理道具の使い方や洗濯物のたたみ方などをやってみせると、うれしそうに真似をしてくれました。一緒には遊ばずほとんど見守るだけの公園とは違い、家で長く過ごしてみるといくつか発見もありました。マユユの「一人の世界」だった遊びに、少しだけ大人の介入を受け入れてくれるようになってきたのです。例えば、これまでは拒否されてきていた、遊び方を伝えたいときの「こうしてみて」といった声かけにも耳を傾けてくれることが増えました。それまでマユユは“人”に注目することがあまりなかったので、大きな変化でした。念願の成長長いことこのように過ごしていたある時、公園に行き、マユユを見守っているとふと「あれ?」と思いました。以前より家の外でもマユユが「ちょっと待って」の声かけに反応し、実際に待ってくれることが増えたのです。気づけばほかにも、名前を呼ぶと反応してくれたり、「こっちにおいで」と伝えるとそばに寄ってきたり……明らかに“家の外でも母(私)を認識している様子”が増えました。Upload By サチコ「待って」と言って初めてマユユが待ってくれたとき、私の声かけを理解して待ってるのか、たまたま止まったのか分からず「本当に待っているんだ」となかなか信じられませんでした。マユユが歩き始めてから数年、興味のあることに一目散のマユユに向かって、私はまるで独り言のように「待って」と言い続けてきましたが、このときもう独り言ではなくなったのです。その後、保育園に入園できたけれど……その後、年中になり加配つきで保育園に入園することができたマユユ。実は、入園してすぐの外出イベントでも一度は「安全を確保できないかもしれない」との理由で園から参加をお断りされました。もちろんショックは大きかったですが、療育施設で断られた時よりも私自身がしっかり受け入れられた気がします。以前にはあまりなかった視点として、「マユユが誰かと一緒に外出できるかどうかは、一緒に外出する相手にもよる」と思えていたからです。マユユについて今まで、その普段の様子から“人見知りもしないし、誰かに特別親しみを感じたりすることもあまりないのかも”と思っていました。しかし、最近のマユユの様子をみていて「安心してるから誰かと一緒に行動できるようになった」のだと気づきました。だから、関係性を築く前の新しい先生の場合はまだ落ち着いてそばに居られないのだろうな、と具体的に納得できましたし、先生の不安や判断にも共感できました。参加を断られたその時はショックでしたが、加配の先生はマユユとじっくり向き合いとても仲良しになってくださり、その後の外出イベントは「参加して大丈夫ですよ!」と言っていただけるようになり、今ではマユユも楽しく参加しています。そして、5歳の現在もう外出の問題はなし!なんてことは全然ないのですが、最初に書いたように、一緒にお出かけできることが増えました。手を繋いでくれて声かけに耳を貸してくれる。私の存在を意識し、そばにいようとしてくれる。私にとってはまだ当たり前ではなく少し不安はありますが、ようやく、だいぶお出かけしやすくなったと感じています。Upload By サチコ外出の苦労が少しずつ和らいでいった1番の理由は、マユユが時間とともに変化し、成長してくれたことだと思います。興味が圧倒的に「人より物」だったマユユが、関わりの中で少しずつ愛着や安心感を抱いてくれるようになり、周りの人が介入する間口を広げてくれたこと、その成長に伴いこだわりからの切り替えや気持ちの持ち直しも上手になってきたこと、改めて振り返ってもやはり時間が必要だったのだと思いました。とても悩んでいた当時は、とにかく外出を繰り返したり、訓練することが必要なのかと思っていたので、家で過ごすのが多いことで成長のチャンスを逃してしまっている感じがしていました。しかし、結果的にはマユユとの関わりを増やし成長に繋げられた時間でもあったのかもしれないと今は思います。執筆/サチコ(監修:室伏先生より)マユユさんとのお出かけの困難さと成長のご様子を、サチコさんのお気持ちもまじえて共有くださり、ありがとうございました。今、外出先でもサチコさんの声に耳を傾けたり、そばにいてくれるようになってきたこと、その背景には、サチコさんがこれまで日々の中で丁寧に関わってこられたことや、お家の中で安心できる時間を一緒に重ねてこられたこと、その中でマユユさんが他者との関わりの楽しさを学び、サチコさんとの関係性を深めていくことができたこと、が大きいのだと思います。ASD(自閉スペクトラム症)の一つの特徴として、他者との関わりよりも、おもちゃなどのものに意識が向きやすいということがあります。お子さんの発達段階や性格などにより個人差はありますが、ASD(自閉スペクトラム症)のお子さんの幼児期には、名前を呼んでも反応に乏しかったり、遊んでいる最中に声かけをしてもリアクションが返ってこなかったり、指示が入りにくかったり、といったご相談をしばしばいただきます。言葉をたくさん聞かせてあげよう、コミュニケーションをたくさんとろう、と一生懸命関わられている親御さんにとって、このようなお子さんの状況は、とても寂しく悲しく感じられることもあるでしょうし、どのようにして一緒に遊んであげたらいいのだろう、と戸惑いを感じられることもあるかもしれません。「たかいたかい」やくすぐり遊びなどのふれあい遊びや、追いかけっこやキャッチボールなどの相手を意識する遊び、興味のあるおもちゃを介したやりとりなどは、自然な形で「人との関わりって楽しいな」と感じられるきっかけになりやすいです。おもちゃで遊んでいる時には、お子さんの横からではなく、お子さんの視界に入る正面からそっと入っていって、実況中継のように声をかけてみるのもおすすめです。例えば、「◯◯くん、あかい電車を走らせてるね〜、ガタンゴトン」といったように、お子さんの世界に“寄り添う”かたちで言葉を届けてみてください。これまで積み重ねてこられたご努力は、もしかするとすぐに目に見える形では表れないかもしれません。でも、お子さんにはきっと、親御さんの想いや声が少しずつ、ちゃんと届いています。どうか焦らず、あきらめず、お子さんの力と時間の流れを信じて、そっと寄り添ってあげてくださいね。その優しい関わりが、必ずお子さんの中で力になっていくと信じています。サチコさんとマユユさんの関係が、これからもあたたかく育まれていくことを心より応援しています。前の記事はこちら(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2025年04月12日お友だちを家に呼ぶようになったASD(自閉スペクトラム症)の長男4月から小学6年生になった長男のミミ(ASD/自閉スペクトラム症)が家にお友だちを連れてくるようになって1年が経ちました。数人のお友だちがやってくるとそこは溜まり場のようになり、みんなわいわい遊んでいます。わが家は私は在宅勤務で、パパは自営業。そばでミミと友だちたちの様子を見られるので、1年間観察してきました。ミミに親友といえるようなお友だちが1人でもできればいいなと思っていますが、「親友」と言えるような特定の子はおらず、遊ぶことはありません。「友だち呼ぶ意味ないじゃないか」という夫に長男は意外な返事をUpload By taekoお友だちを呼んだ日はこんな流れです。最初の30分くらい、ミミは自分が好きな動画を見ます。お友だちが「ゲームやろうよ」と誘っても、動画に夢中でゲームをやりません。なので、お友だちは1人でゲームをしたり、あとから来た子とゲームをしています。ミミが動画を見て気が済んだ頃には、お友だち同士が遊んでいて、ミミは輪に入れず1人でゲームをしていることが多いです。ミミが自分から声を掛けて輪に入れることもありますが、「時々」です。そんな様子をいつも見ていた私とパパ。ある日、お友だちが帰ったあとパパは「1人で遊んでいるなら、友だちを呼ぶ意味ないじゃないか」と強めの口調でミミに言いました。私も気になっていたので、「ミミ1人でゲームして、1人でゲームに文句を言ってて、楽しそうに見えなかったよ。きっとパパもそう思ったんだよ」と伝えました。するとミミは、「みんなといると落ち着くんだよ」とポツリ。輪に入れなくても、同じ空間に居ることでミミの中では「友だち」であることになり、学校での立ち位置や、自信になっているのかもしれない……と気づき、思い出したことがありました。ミミがまだ小学2年生くらいの頃、公園で鬼ごっこで遊んでいたことがありました。ミミは鬼にタッチされても鬼役にならないので、お友だちから相手にされなくなりました。でも、鬼ごっこには不参加なのに、ふわふわとお友だちの周りに居続けたのです。だんだん公園にも行かなくなっていったのですが、その時と重なって見えました。一緒に遊んでいなくても、ただ側にいることで安心するんだなと、私はミミが友だちを呼ぶのに納得したのでした。ですがパパは納得できなかったようで……。パパ我慢の限界⁉「もう友だちを呼ぶな!」に「パパなんか居なくなればいい......!」その後、週に3、4日のペースでお友だちが遊びにくる週も増えてきました。そして回数を重ねていくうちに、お友だちと過ごすのは17時30分までと決まりを作りました。ですがある日、遊びに夢中になり10分以上過ぎてしまったことがありました。お友だちが帰宅した後、パパは激怒!「呼ぶのは週に3日まで!」とルールが少し厳しくなりました。ミミには「帰るのが遅くなると、お友だちのお家の人が心配するからだよ」と理由を伝え、納得してもらいました。パパもミミがお友だちを呼びたいならと頑張ってくれていたとは思うのですが、週の半分以上も呼ばれること、また呼んでもミミが友だちを遊んでいるわけではないことにストレスを感じていたんだと思います。そしてついに爆発する日が来てしまいました。その日はまたミミがお友だちの輪に入れず1人でゲームをやり、思い通りに行かずゲームをしながら暴言をずっと言っていた……という一日でした。お友だちが帰ったあと、パパは真っ赤な顔で「1人で動画を見たり1人でゲームやってるならもう呼ぶな!」とミミに怒ったのです。Upload By taekoミミは別室でシクシク涙を流して「パパなんか居なくなればいい......!」と声を小さくしてパパに対するひどい暴言をたくさん言いました。私は「パパは、ミミがひとりぼっちで遊んでいて仲間はずれにされてるんじゃないかって心配してるんだよ。私もそう見えるよ。ミミがゲームをしながら怒っていたのも、友だちと遊べない気持ちをぶつけていたんじゃない?」と聞きました。でも怒っているミミは「パパなんて……!」と繰り返すばかりで、話を聞いてくれる状態ではありませんでした。再びお友だちを呼べるようにするためにこのようにして、うちにお友だちを呼ぶことは禁止になってしまいました。それでも、遊びたいお友だちがいるなら、外やお友だちのおうちに行くと思います。でも、自分の家以外で、いままでと同じペースで遊ぶのかと思うと、分かりません。Upload By taekoミミは今もパパに対して「禁止にするなんてひどい!」と、かなり強い怒りの感情を持っています。きっと学校で「パパのせいで呼べなくなった!」と文句ばかり言っているのだろうと想像してしまいます。私は友だちの側にいることをミミが望んでいるのだから、パパと相談してまたいつか家にお友だちを呼べるようにできないかなと思っていました。ですが、実はミミとパパの間に誤解があったことが分かったのです。それはまた次回にお話しさせていただきます。執筆/taeko(監修:鈴木先生より)実はパパはミミさんの友だちの声がうるさかったのかもしれません。そして、友だちが来たら一緒に遊ぶものだという一種の規則(こだわり)がパパの心の中にあったのでしょう。ミミさんが楽しければお友だちを呼ぶことを禁止しなくてもよかったのです。周りに人がいると安心できるのは実は私たちも経験しています。図書館自習室での勉強です。家で一人だけでやっていてもはかどらないが、図書館へ行くと不思議にはかどるという経験は誰にでもあると思います。皆で一緒になって勉強するわけでもなく、同じ教科をやるわけでもなく、集団の中の一人として存在していることで安心感が生まれるのです。前の記事はこちら(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2025年04月04日発達障害のある娘の思春期に入って増えてきた悩み。専門家に対応方法を聞いてみましたわが家にはASD(自閉スペクトラム症)の中学2年生の娘がいます。今まで、娘が苦手なことは、親として声かけやフォローをしながら、サポートをしてきました。しかし、小学4年生ごろから娘は思春期に入り、なかなか親の言うことを聞いてくれないようになりました。中学生になってからは、私に対して反抗的な態度が目立つようになりました。それでも私は、「これも娘にとって必要な成長」だと思い、できる限りのサポートを続けてきました。しかし、ASD(自閉スペクトラム症)の娘の思春期は、特殊で……。今回は発達障害のある娘の思春期に入って増えてきた悩みについて、鳥取大学大学院教授で発達障害を専門とする井上雅彦先生に対応方法などアドバイスをいただきました!Q1.親のフォローを嫌がるけど、自分ではやらない思春期に入ってから娘は、私の声かけやフォロー、そして療育グッズの使用を嫌がるようになりました。「親に指図されたくない」という気持ちは、私にも覚えがあるため、とても理解できました。Upload By SAKURA親にあれこれ言われるのを嫌がるのは、親離れの始まり。ここを通るから、自立できるのだと思っていたのですが、娘の場合、フォローを嫌がるので控えると……Upload By SAKURAパニックを起こし、怒って最後には私を頼ります。娘のパニックが起きると、手も止まってしまうし、落ち着かせるのも大変。私は、パニックを起こさないようにしたくて、その前に避けられることを避けようと、声をかけるのですが、Upload By SAKURAフォローを嫌がる→パニック(怒る)→私を頼るという負の連鎖が続きました。親を頼りたくないといい、親の手助けを嫌がるのに自分でなんとかしようという気持ちはない……。娘とのやり取りでイライラすることに疲れた私は、主治医の先生に助けを求め、自立心と自立力のバランスについて教えてもらい、娘に決定権を持たせ、自己責任でやってもらうことにしました。小学校高学年から中学校は、この『自己責任』があーさんとの関わりのテーマでした。最初はこの方法で、自分で動くようになり、うまくいっていたのですが……Upload By SAKURA中学生になって、娘はいろんなことを忘れることが多くなりました。持ち物、提出物、言われたこと、約束したこと……中学生になり、部活も始めたため、覚えておくことが増えたので仕方ないとは思いました。忘れないようにメモをとるほうがいいと何度も提案しました。しかし……Upload By SAKURA娘は「メモをとらなくても大丈夫」と言い、頑なにメモを取ろうとしません。その後、一時的にメモをとるようになったのですが……Upload By SAKURAすぐにメモすることを辞めてしまいました。なぜメモをとらないのか聞いてみると……「私は覚えられるから、メモは必要ない」と、譲りません。先生から注意され、私からもフォローされても、「大丈夫」だと言い切る娘。Upload By SAKURAこのやり取りが何年も続いています。私は自分の苦手部分を、自分の工夫で乗り越えるすべを教えたいのに……。親のフォローを嫌がるのに、すぐ頼ってくる、自分の苦手を見ない、娘のようなタイプは、どう対応していけばいいのでしょうか?できないから提案すると拒否するなどは思春期特有の自立心のめばえと言えますが、それで失敗してしまうのを見るのもつらいし、しかしいつまでも親がやってあげるのも不安、またそれを受け入れてくれないという難しい状況ですね。分かってなくてできないこと、分かっているしできるけどやろうとしないことについては区別していく必要があるでしょう。前者は改めて教える必要がありますが、後者のほうがより難しい問題かもしれません。基本的には失敗の中で学んでいくことが望ましいですが、立ち直りが困難になるような大きな失敗は避けたいものです。失敗の中で学ぶレベルについては時間はかかりますが学んだことは定着していくと思います。親からの提案としては「〇〇すべき」ではなくて「実験的にやってみよう」くらいのほうが良いかもしれません。立ち直りが難しそうな場合は理屈ではなく「あなたにもいろいろ理由や考えはあるだろうけど……ここだけは……!」という親からのお願いという作戦のほうが有効かもしれません。Q2.子どもと適切な距離をとるのが、思春期・反抗期にはいいと言うが……娘の特殊な思春期・反抗期に、ついイライラし、いろいろ言いすぎてしまうことが多い私。思春期・反抗期って、こういう状態が普通なのかと調べてみると……Upload By SAKURA「思春期・反抗期は親離れ、自立への第一歩。子どもとは適切な距離を保ち、助けを求められた時だけ、対応しましょう」と言ったことが書かれてありました。適切な距離……。たしかに、自分が中学生の時のことを思い出してみると、親との関わりは、小学生時代に比べて劇的に減っていました。自分でなんとかしようという力も、この時代で培われたように思います。しかし、娘の場合、まだまだ私のフォローが必要なことが多いため、距離をとることができません。パニックになった時も、放置ができないため、難しいです。発達障害のある子どもでも、親はある程度距離を保つことが必要ですか?障害の有無にかかわらず思春期でかかわりや関係性が難しくなってしまったときに「できるだけ刺激しないようにするということでよいでしょうか」という質問があります。距離感を離すというのは、関わらなくするのではなくむしろ関わり方を変えるという意識が大切だと思います。親にとって気になる点を注意する事ばかりが増えると子どもにとってはそれが「自分を分かってくれない」「否定された」という気持ちになってしまうかもしれません。そうなると否定的、反抗的な行動もより強まってくるでしょう。努力しているところや良いところを認めることに加えて、子どもが興味を持っている事について耳を傾け共有していくことが適切な距離感をはぐくむことに繋がります。その中で困ったことを子どもから相談してくることができるようになると良いですね。相談されたときにはすぐに大人からの模範解答を示すのではなく、共感しつつ「あなたはどう考えるの?」という問いを出したり、AとBとどっちがいいと思う?と選択案を提示したりして一緒に考えていく姿勢が大切だと思います。執筆/SAKURA前の記事はこちら(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2025年04月02日「世界自閉症啓発デー」とは2007年の国連総会で、毎年4月2日を「世界自閉症啓発デー」とすることが定められました。国連加盟国では、自閉症(※以下、ASD(自閉スペクトラム症))についての理解促進と意識啓発が求められています。また、日本では4月2日から4月8日が発達障害啓発週間と定められ、毎年全国各地でイベントやブルーライトアップなど多様な啓発活動が開催されています。ASD(自閉スペクトラム症)は、「対人関係や社会的コミュニケーションの困難」と「特定のものや行動における反復性やこだわり、感覚の過敏さまたは鈍麻さ」などの特性が幼少期から見られ、日常生活に困難を生じる発達障害のひとつです。日常生活にさまざまな困難を伴うこともありますが、その特性は一人ひとり異なります。原因については、まだ明確には特定されていませんが、遺伝的要因や脳の発達メカニズムが関係していると考えられており、育て方や愛情が直接の原因ではないことが研究により明らかになっています。この10年で、ASD(自閉スペクトラム症)に対する社会の理解は確実に変化してきました。学校や職場では、一人ひとりの特性に寄り添い、個性を尊重する環境づくりや支援の輪が少しずつ広がっています。まだ十分とは言えませんが、着実に前進していることは間違いありません。Upload By 発達ナビニュース「世界自閉症啓発デー」のシンボルカラーは「癒し」や「希望」を象徴するブルー。4月2日は 世界155カ国以上で、ランドマークがブルーにライトアップされます。日本では、東京タワー、都庁、東京ゲートブリッジ、各地のお城など、人気スポットや歴史的な建造物が青く輝きます。「Happy with Autism」自閉症のまま幸せになれる世の中に!Upload By 発達ナビニュース東京都自閉症協会では、“「Happy with Autism」自閉症のまま幸せになれる世の中に!”をコンセプトにさまざまな取り組みを行っています。Upload By 発達ナビニュース4月2日に東京都内の区役所や市役所、駅ビルやカフェなどでもブルーライトアップ、ブルーデコレーションが実施されます。皆さんもぜひご参加ください!青いものを身をつけるブルーコーディネートもおすすめです。SNSでは「#2025blueart」「#世界自閉症啓発デー」「#自閉症」「#自閉症啓発デー」のハッシュタグをつけてご投稿ください!Upload By 発達ナビニュース発達ナビでは、「青」をテーマにした連載ライター陣のメッセージと共に描きおろしイラストをSNSで発信中です。多くの方に届くようぜひ、リポストをお願いします!世界自閉症啓発デー当日の4月2日夕方からオンラインイベントが予定されています。東京都自閉症協会のYouTube公式アカウントにて各地のブルーアクションを紹介するほか、ブルーアートコンテストの受賞作の発表や「Happy with Autism」をテーマにした生ライブも!司会は、発達障害当事者のふわふわおさんと、2025準ミス日本の長尾巴菜子さんが務めます。Upload By 発達ナビニュース日時:2025年4月2日17:30配信スタート予定司会:ふわふわお(発達障害当事者)、長尾巴菜子(2025準ミス日本)※クリックすると発達ナビのWebサイトから動画サイトYouTubeに遷移します東京都自閉症協会では「Happy with Autism プロジェクト」としてASD(自閉スペクトラム症)当事者や家族のニーズ調査の準備をすすめています。調査結果を啓発活動に活用するためASD(自閉スペクトラム症)の当事者やその家族が感じていること、困っていることなどを声を集め、ショートムービーを作成する予定です。プロジェクトの第一歩として、12人のASD(自閉スペクトラム症)当事者が自信の特性や困りごとについて語ったショートムービーを公開中。4月2日のオンラインイベントでの公開も予定されています。Happy with Autismの取り組みについては、東京都自閉症協会のSNSにて随時公開されています。ぜひチェックしてみてください!東京都自閉症協会X※クリックすると発達ナビのWebサイトから東京都自閉症協会のXアカウントに遷移します互いを理解し、支え合う社会の実現に向けて「世界自閉症啓発デー」は、誰もが過ごしやすい世界を目指し、一人ひとりが理解を深め、共に歩んでいくための大切な日です。お互いを思いやり、支え合える社会について、一緒に考えてみませんか。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2025年03月31日学童へ行かなくなった太郎ASD(自閉スペクトラム症)の太郎は、小学1年生から放課後等デイサービス(以降、放デイ)と学童に通い始めた。小学校2年生の途中から、太郎が学童へ行かず帰宅することが増えていった。学童では、太郎が一人浮いている感じがあった。太郎に対して一人のスタッフが付いている状態であると、学童の先生から困り顔で報告があった。困り顔をされると私も心苦しくなるので、きっと太郎も居心地が良くない状況だったのではと今となっては思う。Upload By まゆん困り顔で「特に周りの子どもたちに何かするわけでもなく、どこに座ろうかと長いことクルクルと動き回っている」と報告を受けた時は、回らせておいてくれれば良いのでは……と正直思った。プールの催しの時は、「サポートで来ていたスタッフから離れませんでした。独占欲が強いですね」と嫌な感じで言われた。それは太郎が水が怖いからなのに……事前に伝えたことを覚えてくれていないのか。太郎は独占欲が弱いし、私への執着も薄くて寂しいくらいなのに……と私は思った。そうして、「子どもを見る視点がどうも違うな」という気持ちが大きくなっていった。Upload By まゆん放デイでの先生たちとの出会い放デイでは、困り顔で太郎の行動について報告されることはなかった。「面白いことがあったんです」「かわいいです」などポジティブな報告が多かった。保護者のメンタル援助を考えているのかと想像したが、それでも先生たちの子どもを見る視点がやはり違うと感じた。Upload By まゆん時には、太郎の特性によるこれからの課題について真剣な報告もあったが、決して困り顔ではなく、太郎や私の将来を考えてくださっているのを感じとることができた。専門的知識を持ったスタッフの方の存在、個性を認めてれる環境が、私と太郎にとって居心地がとても良かった。その後、学童に通うのはやめた。放デイは、通わない時期もあったが、小4から再び通い始めて今に至る。放デイが、いつしか太郎の心の拠り所に太郎と放デイのスタッフの方々の関係性は、日を重ねるにつれて深まっている。自分の特性を理解し、サポートしてくれる先生方の前では素の自分を出している様子だ。放デイに「毎日でも行きたい」という気持ちがあるようで、中学生になっても、ほぼ休むことなく、週に4~5日通っている。同級生には秘密にしている「コマが好き」ということも、放デイの先生たちには伝えているし、放デイ内でコマの大会まで開催してもらっているようだ。その日、帰宅した太郎は「全然勝てんかった。先生は強かった」と悔しそうに、そしてどこか楽しそうに感想を聞かせてくれた。「高校生になってからは、放デイどうする?」数ヶ月前に太郎に聞いてみた。すると太郎は「うん」と、すぐに返事をした。もちろん今と同じ放デイに。まとめUpload By まゆんここまで太郎が放デイに通い続けている理由は、やはりデイサービスの先生たちとの信頼関係にあると思います。先生たちは自分を受け入れてくれる安心できる人たちであり、放デイという場所もまた居心地がいいものとなっているようです。高校に進学後も、今と変わることなく、週に4日~5日通う予定です。家族のようなつながりができているため、私も頼りにしている場所になっています。あと3年間、きっとあっという間ですが大切に通所をしていきたいと思います。太郎自身は、あと3年という期間をどう思っているのか……気になるところです。執筆/まゆん(監修:新美先生より)放課後等デイサービスの利用について聞かせていただきありがとうございます。放課後等デイサービスの利用年齢は制度上は原則6才~18歳となっています。事業所によってまちまちではありますが、ほかに高校生の姿があまり見えなくても、継続利用は受け入れているという事業所は多いので希望があれば聞いてみるとよいかもしれません。慣れた人間関係があり、信頼できる職員のいる放デイに、思春期以降も通いたいとご本人が思えている場合、小学生の時はただ楽しく遊ぶだけだったのが、ちょっとした日常のことや進路のことなどを話したり相談したりといったことがしやすい場になるかもしれません。家庭でも学校でもない第三の居場所(サードプレイス)として、ホッと一息できる場所はかけがえのないものです。多くの場合は中学、高校と年長するにつれて、放デイはもういいよと言われることが多いかもしれませんが、お子さんご本人が行きたいと思える場に放課後等デイサービスがなっているのだとしたら、よい関係が築けていてラッキーといえるかもしれません。前の記事はこちら(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2025年03月26日スーパー不器用BOYスバルは幼稚園での生活の中で、明らかに飛び抜けて不器用なことが発覚しました。特に道具を使うことが苦手で、筆、はさみ、縄跳び、楽器はもちろん、日常生活の中でも服のボタンやファスナー、お弁当包みなど、あらゆることにサポートが必要でした。小学校入学までにはボタン、ファスナー、お弁当包みなどの身の回りのことはどうにかマスターしましたが、常に年相応とは言えない不器用さで、図工や体育、算数など授業で使う新しい道具が出てくるたびに苦戦していました。学年が上がるたびに定規、コンパス、リコーダー、彫刻刀、裁縫道具、ミシン……次々と扱う道具が増えていきます。もちろん日々練習を繰り返すうちに一人でも使えるようになった道具もあるのですが、とても初見で扱うことは難しく特別支援学級でも交流学級でも先生のサポートが必要なのでした。高学年になり始まった「委員会活動」でトラブル発生?高学年になると委員会活動が始まりました。スバルは美化委員会に入りました。活動内容は校内の掃除の促進とリサイクルなど環境意識を高めるエコ活動です。特に器用さを求められる委員会ではないと安心していました。ところがどっこい活動が始まって早々にスバルは「ぼく入る委員会間違えちゃったかも」と肩を落として帰宅しました。話を聞いてみると、美化委員会のメインの活動の中に溜まったダンボールや古紙を紐で十字に縛ってリボン結びにする作業があると言うのです。スバルはまずリボン結びができません。それからダンボールのような大きなものを緩まないように十字に縛るのも難しいです。思わず私も「それは入る委員会間違えたな」と言ってしまいました。リボン結びの練習を始めてみたけれど……とりあえずリボン結びの練習を始めました。とはいえ、数年前から「マジックテープの靴は卒業して紐靴にしたい」という本人の希望をもとに、靴の買い替えのタイミングでリボン結びの練習をしていたので練習ははじめてではありません。しかしなかなかマジックテープの靴を卒業できずにいました。せっかくの機会なので今回は本格的に練習に取り組むことにしました。まず靴紐より太く結びやすそうな紐を2色用意し、左右違う色の紐を結ぶ練習からスタートしました。これは幼稚園の時にハンカチでお弁当箱を包む練習をした時にもそうだったのですが、色が違うほうが穴にくぐらせるべき相手が目に見えて分かりやすいのです。2、3日に1回くらいのペースで練習して、左右色の違う紐でのリボン結びをマスターするのに1か月。左右同じ色の紐でのリボン結びをマスターするのに半月。次は現場でも使うビニール紐での練習です。この素材がスバルにはとても難しく、なかなかマスターできません。もちろんこの練習期間にも学校では委員会が行われ、ダンボールを結ばなければならない日がたくさんありました。スバルの同学年のメンバーは交流学級などで関わりがあるので、スバルが不器用なことを知っている子が多いのですが、6年生の委員長からは「ふざけてないで真面目に結んでください」と毎回注意されていました。Upload By 星あかりお年頃のスバルの気持ちスバルは特別支援学級の中では先生に「ぼくはこれが苦手なのでこの便利グッズを使っていいですか」と聞いたり、クラスメイトに「一人だとできないから手伝って」と言い、工夫したり人や道具を頼りながらゴールを目指すことができます。しかし交流学級など特別支援学級の外に出ると「みんなと同じでいないといけない」という気持ちが強く出てしまい、人を頼ることができません。さらに高学年になると、お年頃なのか「スバルくんは不器用だから、これが苦手だからできない」と人に思われるより、たとえ注意されたとしても「真面目に取り組んでないからできない」と思われるほうが良いと言う思いが出てきました。以前、交流学級でのダンス練習でスバルに対して「真面目に踊ってよ」と怒っていた子が、スバルの意志ではどうにもできないほどの不器用さを察し優しく教えてくれるようになったことがありました。私や先生は「よかった」と思ったのですが、スバルは「特別に優しくしてあげないといけない子になったみたいでつらい。みんなと同じように怒られているほうが良かった」と言いました。親としては「優しくしてくれたほうがいいじゃん!」と思うのですが、10歳の頃の私なら……と考えるとスバルの気持ちも少し分かるのです。先生から委員長にこっそり事情を伝えてもらうこともできますが、スバルがそれを望んでいないので、それは最終手段にして急ピッチでリボン結びのマスターを目指すことにしました。リボン結びの練習からさらに数か月後……練習を重ね、ビニール紐でノートサイズのものを十字に縛ってからのリボン結びは、少し緩いものの8割成功するようになりました。しかしダンボールサイズになるとなかなか成功しません。一部私が手伝うとできるようになりましたが、全部一人で完成させるのは難しそうでした。私は「諦めたわけじゃないよ?諦めたわけじゃないけど、友だちに『手伝って』って言ったほうが早くない?」とスバルに言いましたが、スバルは渋い顔をして「だってみんな1人でできるから……」と言いました。何か月も練習してきて思ったのですが、複数枚のダンボールを十字に縛ってリボン結びしてリサイクルボックスまで運んでも崩れないように仕上げることって一般的に難易度が高いです。もちろん1人でできる子もいると思いますが、発達性協調運動症(DCD)の有無は関係なくスバル以外の全員が1人で完成させているとは思えない難しさだと思いました。それを説明し「一度周りの人たちを観察してみて。『ちょっとここ押さえて』とか『運ぶの手伝って』とか協力しながらやってないかな」と伝えました。スバルは半信半疑でしたが「見てみる」と言ってくれました。私も実際の現場は見たことがないので想像にすぎませんが「そうであってくれ」と祈りました。次の委員会があった日、帰宅したスバルの報告は次の委員会があった日、帰宅したスバルが玄関を開けて一番最初に「協力しながらダンボールを結んでいる人たくさんいた」と報告してくれました。どうやら今までは教室の隅でみんなに背を向けて、できない自分を隠すのにいっぱいいっぱいだったので周りが見えていなかったようです。そのまましばらくキョロキョロしていると隣にいた子に「ちょっとこっち引っ張るの手伝って」と声をかけられました。それから2人で話し合って2人分のダンボールを一緒にまとめて、一緒に結んで、一緒に運びました。そんな話を私に報告しながらスバルは「ダンボールをまとめるのは、ぼくじゃなくても難しいんだな……」とひとりごとのように呟いていました。Upload By 星あかり発達性協調運動症(DCD)があるスバルは人よりもかなり不器用で、1人でできないことがたくさんあります。特別支援学級の外での活動の中で「自分だけができない」というのは、今のスバルにとってつらく恥ずかしいことです。「手伝って」と声をかけることはスバルにとっては「ぼくはこれができません」と告白しているような気持ちになるのだと思います。今回「手伝って」と言われるほうを経験したスバルは「頼られるのもうれしいな」「ぼくにも手伝えることあるもんな」「友だちに手伝ってもらうのは恥ずかしいことじゃないな」と反芻するように思い出していました。スバルの気持ちを全て塗り替えることは無理だと思いますが、教室の隅で一人ぼっちでいっぱいいっぱいになった時にはこの事を思い出して、少しだけカジュアルな気持ちで「手伝って」と言えたら良いなと思います。執筆/星あかり(監修:室伏先生より)スバルさんの運動面でのお困りごとや、お友達と協力し合うことを学ばれた素敵な体験を共有くださりありがとうございます。発達性協調運動症(DCD)は、年齢相応の運動の調整が難しく、日常生活に支障をきたす状態を指します。協調運動とは、異なる身体の部位を連携させて動かす運動のことです。例えば、はさみを使う時には、目ではさみの動きを追いながら、手ではさみを動かして切り、逆手の手で紙を保持することが必要です。キャッチボールでは、ボールを目で追いながら、適切なタイミングで手や腕、体幹、脚を動かしてキャッチする必要があります。このように、複数の動きを同時に調整することが求められる運動を協調運動と呼びます。具体的には、キャッチボールや縄跳びの苦手さ、はさみや箸を思い通りに使えない、字を書くのが難しい、など全身を使う粗大運動や手先を使う巧緻運動における困難さ、日常生活に影響を与える場合に診断されます。身体のバランスをとることにおいても苦手さを抱える方が多いです。支援としては、療育で理学療法や作業療法を行ったり、あかりさんがご紹介くださったように、段階的にレベルアップしていく練習(まずは紐の色を変えたり、結びやすい素材でリボン結びを練習する)、支援グッズ・便利グッズの活用(姿勢が崩れやすい場合には椅子の滑り止めを使う、鉛筆持ちのサポーターを使うなど)などがあります。日々の経験や練習によって、少しずつできることは増えていきますし、上達していきますが、同学年のお子さんと比較してしまうとできないこと・苦手さがあるため、学年があがってくると自己肯定感の低下に繋がることもありますので、練習をがむしゃらに頑張らせるのではなく、適切なサポートやグッズの活用、精神的な支援も重要となります。前の記事はこちら(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2025年03月20日読めるけれど書けない漢字。問いから外れた答えを書く文章読解。ASD(自閉スペクトラム症)の息子は国語に困難さがありました6歳でASD(自閉スペクトラム症)の診断を受けた現在14歳の息子は、漢字を読むのは得意でしたが、書くことや文章の読解に困りがありました。幼児期からルビ付きの図鑑を一人で読んでいましたし、小学校入学後もテストはいつも満点。「漢字が苦手」と感じることは全くありませんでした。ところが、小学校2年生頃から、宿題の漢字ノートを1ページ書くのに1時間以上かかるようになりました。様子を見ていると、何度も手が止まり、書けなくなってフリーズする場面が。理由を聞いても「疲れた」と一言だけ。たくさん練習しても翌日には全部忘れてしまい、「思い出そうとしてもはっきり思い出せない!書けない!」と大泣きしたこともありました。Upload By ユーザー体験談また、文章読解でも、問いとまったく違う答えを書くことが増えました。どうやら、長文の前半は理解できているものの、後半になると頭が情報でいっぱいになり、話の要点がつかめなくなっているようでした。このような漢字と文章読解への困難さですが、小学校高学年になった頃にはずいぶん改善されました。この記事では、息子の漢字、文章読解への取り組みの工夫と、学校に求めた合理的配慮についてお話しします。国語に苦手さを感じている方にとって少しでも参考になるとうれしいです。覚えられない理由は「認知の偏り」?学び方の変更と板書対策、学校へ求めた「折り紙とお絵描き」という合理的配慮最初はLD・SLD(限局性学習症)を疑いましたが、かかりつけ医からは「認知の偏りの影響が大きい」との指摘がありました。「苦手な分野は繰り返し学習することで定着させていくのがいい」とアドバイスを受け、息子に合う学び方を模索しました。いろいろ調べていると、漢字の覚え方には「音と組み合わせる」「全体の形でとらえる」「部分的な形の組み合わせで覚える」などがあると知りました。息子の場合、音よりも視覚的に部分ごと形を覚え、それを組み合わせる方法が向いていたので、書き順ではなく、ブロックごとに分けて漢字を覚えることを意識しました。無料ダウンロードできる認知傾向に応じた漢字プリントを見つけ、それに取り組むようになりました。すると、50問テストで5問正解できたら大喜びするほどの状況から、45問以上取れるようになりました。また、漢字が苦手なこととつながっていると思うのですが、息子は板書がまったくできませんでした。また、当時は授業中の多動も多くあることも課題でした。息子に板書ができない理由、多動になる時の気持ちを確認したところ、はっきり教えてくれました。「何を書いて良いのか分かんなくなって、途中で書けなくなるんだよ」「じっと座っているとだんだん不安になるんだよ。息苦しくなるから、動き回ることで気持ちを落ち着かせようとしているんだ」私はさっそく医師に相談をし、板書については「絶対に覚えるべき単語のみをノートへ書き込み、ほかに写す必要のあった内容は、学校から帰宅後、家で記憶を手繰り寄せてノートに書きこむ」と方針を決め、学校の許可を頂きました。また、多動は不安からくる行動であることから、授業中、本人が望んだら折り紙やお絵描きといった座ってできる行動をすることで、不安を解消をさせてほしいと配慮を求めました。学校は始めこそ渋ったものの、医師の診断書を用意したことで何とか受け入れてくださりました。結果的に、折り紙やお絵描きをしながら学ぶことで、先生方が思う以上に勉強に集中し、積極的に挙手をして発言もするようになったという息子。先生方は苦笑いしていました。Upload By ユーザー体験談宿題は、漢字ドリルと漢字ノートへの書き込み2回が毎日の宿題でしたが、苦手が分かってからは漢字ドリルの書き込みと無料ダウンロードできる認知傾向に応じた漢字プリントに取り組み、それを宿題として提出しました。それからは、日々の勉強にも余裕が生まれ、息子も楽になったようでした。やがて3年生から理科や社会が始まると、特に社会で「漢字で答える問題」が書けず苦労していました。ですが、解答が漢字指定がない場合はひらがなで書いていいんだよ伝えると、いくぶん心の負担は軽減したようです。文章読解は、サクッと終わる負担の少ないドリルでコツコツ積み上げ文章読解については、小学3年生から市販の一般的なドリルを使って学習しました。特別支援の教材も試しましたが、問題量が多く、息子が「見るだけでつらい」と言うため、見た目の負担が少なくサクッと終わるドリルを選びました。2年生の頃からすでに長文読解が苦手だったので、2年生向けのドリルからスタート。毎日1枚ずつ解くことで、少しずつ正しく答えられるようになり、長文の最後までしっかり読めるようになりました。そして、中学生になってからは通信教材を活用して予習をするようにしました。そのおかげで学校の授業もしっかり聞けるようになり、小学校の頃のようなつまずきはなくなりました。また、今は読解のコツが書かれた高校受験向けドリルも活用中です。数学の公式のように「答えがどこにあるか見つけるコツ」が書かれているので、息子には分かりやすかったようです。ただ、例題だけは私も一緒にやっています。一緒に取り組みながら気を付ける点をさらにアドバイスすることで、息子は「一人でやるより、内容が印象に残る」と言っています。中学校では予習主義に。塾での取り組み方には成長が見えて感動!中学生から始めた「予習型」ですが、家で一度確認していることから心の余裕が生まれるようで、学校ではしっかり先生の話を聞き取り学べるようになりました。「予習型」は息子にあっているようです。Upload By ユーザー体験談また、通っている中学校では5教科すべてに先生方が作成した専用プリントがあり、生徒はそのプリントに黒板の内容や先生の話を書くようになっています。どこに何を書けば良いのかが一目瞭然でもあることから集中して学習できるようです。また、塾選びでは、高校受験を見据えて応用力をつけられるところを選択。先生の話が楽しいという理由で最終的に決めました。塾では自主的に問題に取り組むようになり、授業時間外に先生へ採点をお願いすることもありました。その姿に感動していたのですが、実はテキストを終わらせると先生から「検印」がもらえるそうで、その検印付きのテキストに憧れていたという単純な理由。それでも勉強する姿勢がついたことは大きな成長でした。Upload By ユーザー体験談息子は「勉強には終わりがないね」と嘆きつつも、目標の大学を目指しあきらめることなく毎日勉強を頑張っています。また、自分の特性も受け止められるようになり、今のうちに得意をさらに伸ばそうと英語に力をいれ、昨年無事英検3級も合格し、大喜びしておりました。目に見えにくい特性や学習の困難さにおいては、今も苦労が多くあり、その度に悔しいと落ち込むこともありますが、どうかこれまでの自身の積み重ねを否定することなく、これからも日々精進してほしいなと願っています。イラスト/志士ノまるエピソード提供/なの(監修:森先生より)勉強のつまずきについての体験談をありがとうございます。 お子さんに寄り添いながら、試行錯誤をして工夫を重ねられてきたのですね。 今ではしっかりとお子さんに合った勉強習慣が身について、英検合格まで達成されたとのこと、本当に頑張られましたね。さて、ASD(自閉スペクトラム症)の特性のひとつとして「認知の偏り」があります。 視覚的・聴覚的情報や記憶の定着に独自のパターンを持つことがあるのです。 そのため、漢字の「書き取り」が苦手でも「読む」ことは得意、といったケースがあり、勉強の方法に悩まれることも多いでしょう。 視覚的に全体を認識する能力が高い一方で、細部の記憶や短期記憶が難しいといったことが考えられます。「ブロックごとに分けて漢字を覚える」という方法は、この認知特性に合わせた素晴らしいアプローチですね。 全体像を分解して理解するのが得意なお子さんにはとっても効果的なのではないでしょうか。また、お子さんが「じっと座っていられない」という場合、感覚調整の難しさや不安が身体的なストレスとしてあらわれていると考えられます。そんな時には、今回のケースのように、折り紙やお絵描きなど、座ったままできる方法で気持ちを落ち着かせることが効果的です。 えんぴつ回しやハンドスピナーのような手遊び、感覚遊びで落ち着くこともありますね。 どのような方法が合っているか、試しながら探していくのがいいでしょう。発達障害は目に見えにくい特性ですので、時に周囲から誤解されてしまうこともあります。 医療機関などの専門家のサポートを受けながら、学校とよく相談して環境を整えることが大切です。 これからもお子さんが自分のペースで進んでいけるよう、応援しています。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。SLD(限局性学習症)LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。
2025年03月12日当時1歳、おとの障害に気づくUpload By ほかかほ1歳頃のおとは、目が合わず、模倣せず、一緒に遊びたがらず、こだわりが強く、指差しせず、クレーン現象で要求を伝え、親への愛着が見られないなど、ASD(自閉スペクトラム症)によく見られる特徴を網羅していました。1歳3か月で歩き出すようになると、多動と衝動性も目立つようになってきました。道で手を繋いでいても、私の手を振りほどいて気になる物のほうへ突っ走って行くので、当時外を歩くのは命がけ。家の中でも家具や家電に登ったり倒したり、破壊行動や危険行動が止まりませんでした。私は当時、転勤帯同で周りに頼れる人もいなかったことから、おとを連れて近所の児童館や子育て支援センターによく行っていました。そこでもおとはドアを開閉し続けたり、フラフラになりながら階段昇降をし続けたりと、不思議なこだわり行動を繰り返していました。また読み聞かせ・体操・リトミック・キャラクターショーなど、参加したあらゆるイベントでその場から脱走。まともに参加できたことが一度もありませんでした。当時のおとは、とにかくその場に短時間でも留まっていることができなかった思い出です。このようなおとの特性が強く表れた行動に、転勤帯同の孤独も重なり、私は心身ともに追い詰められていきました。転機となった1歳半健診Upload By ほかかほ私の父はアスペルガー症候群(※)の診断を受けており、また私は大学生の時に心理学を専攻していたことから、元々発達障害について何も知らないという状態ではありませんでした。そのためおとが1歳前半の頃は、日ごろの様子から「おとは発達障害だろう」と認識しており、1歳半健診で発達の相談をしようと心に決めていました。当日1歳半健診の会場で暴れ、泣きわめき、嘔吐したおとを保健師さんが心配し、自宅での健診を提案して下さいましたが、私は「発達相談を受けたい」と強く希望しました。すると保健師さんがすぐに発達相談会場に通してくださり、その相談会場にいた医師から「息子さんは早く医療につながったほうがいいと思います」と言われました。この1歳半健診を契機に、発達外来のある病院への受診に繋がります。※以前は、言葉や知的の発達に遅れがない場合「アスペルガー症候群」という名称が用いられていましたが、アメリカ精神医学会発刊の『DSM-5』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第5版)において自閉的特徴を持つ疾患が統合され、2022年(日本版は2023年)発刊の『DSM-5-TR』では「自閉スペクトラム症」という診断名になりました。適切な支援につながるUpload By ほかかほ1歳半健診で紹介された病院での診察と発達検査を経て、療育やOT(作業療法)、発達障害者支援センターなど各機関にスムーズに繋げていただき、適切な支援を受けられるようになりました。後にさらに転勤帯同して気づくのですが、当時これほどスムーズに適切な支援につながったことはとてもラッキーな出来事だったと思っています。その後も夫の転勤帯同の度に、各地で福祉・医療現場の皆さまに支援をしていただきました。小学校に入学してからは学校の先生方にも支えていただき、今に至ります。適切な支援を受けたおかげでおとはとても成長し、私も相談先や休息の時間を確保でき、追い詰められていた気持ちは消失していきました。おとの現在の様子Upload By ほかかほ現在のおとは小学3年生。昨年の秋に転勤に伴う転校をし、転校前と同様、公立小学校の特別支援学級に通っています。おとは未就学児時代と比べて格段に成長しました。長年私を悩ませた多動はほぼなくなり、破壊行動は一切せず、親への愛着が生まれ、愛情表現を毎日してくれるようになりました。おとは学校の先生を信頼しており、授業を楽しみにし、苦手なことも素直に頑張っています。そして、いつもニコニコ楽しそうにしています。しかしおとは知的障害(知的発達症)を伴うASD(自閉スペクトラム症)。脳の機能障害であり、治ることはありません。現在おとが抱える問題は「言語」と「他者との関わり」の2点が主だと思っています。「言語」は知的障害(知的発達症)もあるため、複雑な会話、自分の心情・出来事・状況を詳細に語ること、また複雑なストーリーを理解・表現することが難しいです。本人もうまく伝えることができず、もどかしく、しくしく泣く時があります。「他者との関わり」は、おとは大人にはよく話しかけるのですが、同年代の子どもに対する関心がほとんどなく、自分からはほぼ話しかけません。お友だちから話しかけられても無視してしまうことが多く、転校前はそれが原因でお友だちとのトラブルに発展したことも何度かありました。この主な2つの問題以外にもおとは、完璧主義・こだわりの強さ・偏食などさまざまな問題を抱えています。しかしおとは毎日ニコニコして課題に素直に挑戦し、頑張っています。今私にできることは、毎日おとと向き合い、おとが適切な支援を受けられるようにし、自立に向けてスモールステップで一緒にコツコツ課題に取り組んでいくことだと思っています。そしておとを見習い、毎日笑顔で素直な気持ちでいること。そんな私たちのこれまでの、これからの経験がもしも誰かのお役に立てたならとてもうれしいです。今後もコラムをお読みいただけましたら幸いです。執筆/かほ(監修:室伏先生より)かほさん、おとさんのお困りに気づかれてから、医療に繋がり、支援を受けられるようになるまでの経緯を、かほさんのお気持ちを交えながら詳しくお伝えいただき、ありがとうございました。医療や福祉に繋がって、さまざまな情報や支援を得ることはとても大切なことですよね。地域にもよりますが、医療機関の受診がなくても療育を受けられる場合もあり、療育を受けていらっしゃるお子さんの中でも、医療に繋がっている方、発達の相談については医療機関を受診をしたことがない方がいらっしゃると思います。療育手帳の取得にも必ずしも医療機関の受診は必要はなく(療育手帳の発行でも児童相談所での検査や面談等は必要。精神障害者保健福祉手帳の発行には受診が必要です)、発達検査については発達支援施設でも受けられる場合があります。医療機関を受診された場合のメリットの一つとして、診断を受けることがあります。発達支援施設では、そのお子さんの得意なことや苦手なこと、特性についてお伝えすることはできても、診断することができるのは医師のみです。診断を受けることで、お子さんの困りごとや気になる行動について、親御さんの理解が進み関わりやすくなることもありますし、園・学校の先生、発達支援施設の支援者などとお子さんの特性や支援の仕方を共有しやすくなります。ほかには、睡眠や癇癪、多動などのお困りについて、薬物治療を受けることで、お子さんが過ごしやすくなり、発達、生活能力が伸びることもあります。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2025年03月10日新年度はいつも調子を崩す…私立の中高一貫の女子校に通っていた私。公立の小学校に通っていた頃に比べ、おっとりとしたクラスメートに囲まれて、学校での人間関係ではずっと楽に過ごせていました。しかしいま思えば、決まってなんだか心身がザワザワして調子が悪くなるな、という時期がありました。それが新年度の時期です。登校時間が早くなる私の通っていた学校では夏時間と冬時間がありました。夏時間は冬時間に比べ、タイムテーブルが前倒しになります。新年度になったら夏時間が適用され、冬時間の時期よりも少し早く起きて早く登校しなければならなくなる仕組みでした。2時間かけて登校していた私は、冬至前後の時期は起きるとまだ真っ暗。それが年度末に向かって徐々に夜明けが早くなり、起きるのが楽になっていく。でも4月になって夏時間が適用されると、せっかく楽になったぶんが登校時間の前倒しで相殺されてしまうのです。そうして、また真っ暗な時間に起きなければならなくなるのでした。まだ自分に発達障害があり、人よりも疲れやすい傾向があることを自覚していなかった私。睡眠不足で疲れ切り、過緊張で睡眠の質も悪い状態で、まだ真っ暗なうちに起きて支度しなければならないのは、身体にも心にもとてもしんどいことでした。4月の電車は混んでいる登校時間帯は通勤ラッシュの時間帯でもありました。新年度の時期は新入生だけでなく、新社会人や転職した人などが新しく入ってくるので、「いつもの時間のいつもの車両」でも、違う環境になってしまうわけです。新しく入ってきた人たちはなんとなく電車の中での身のこなしに慣れていなかったりして、ただでさえぎゅうぎゅうの電車がさらに混んでいるように感じられます。「ここの車両のここの椅子の前の、端から何番目のつり革」とだいたい立ち位置を決めていたり、毎日顔を合わせるうちになんとなく互いに気を遣い合って無言の中で立ち位置を融通しあっていたような人との関係性も変わってしまったりします。私は小柄でつり革に手が届きづらいですし、DCD(発達性協調運動症)の影響かバランスをとるのが苦手で、電車が揺れるとすぐにフラついてしまうので、この時期はとりわけ、電車を降りた時点でぐったりしてしまったのでした。学年が上がると「暗黙のルール」が変わるのが気持ち悪い新年度になると1つ学年が上がり、私は生徒たちの中で1年先輩になります。そして、「学年が1つ上がるごとにスカートの丈を3センチずつ短くしてもいい」「3年になったら第1ボタンを外してリボンを少し緩めていい、高校になったらリボンなしでいい」みたいなルールが適用されていきます。しかも、それらのことははっきりと「今日からこれをしていいよ」と明言されるのではなく、そのルールに違反したときに上級生からシメられる、同級生から白い目で見られる、ということから徐々に明らかになるのです。こういう、「歳が1つ上というだけで扱いが1つ緩くなる」「私は私なのに3月31日を境に社会的な扱われ方が変わる」みたいなことが、暗黙のルールとか社会的な相対的関係性の感覚が発達していなかった私には気持ち悪くてしかたありませんでした。こうした気持ち悪さはストレスの量としてはそれほど大きなものではありませんでしたが、すでにいろいろなストレスの累積している私にとっては「コップの水を溢れさせる最後の1滴」のようなものでした。当時言語化はできなかったのですが、胸がモヤモヤザワザワしてつらかったのを覚えています。中高当時恵まれていたこと私の通っていた学校は保守的なお嬢様校だったため、校則はとても厳しかったです。また、大学以降の生活と違い、学校側がギチギチにタイムテーブルを組んでいました。これは息苦しくもありましたが、学校側の用意するルールやルーティンに従順に従っていれば日々が回っていくということでもありました。その点は、変化の苦手な私にとっては楽だったかもしれないと思います。今はぼちぼち新年度を乗りこなせている今はフリーランスとして働いている私。取引させていただいている企業や行政手続きの関係で、やはり年末年始や年度の変わり目といった節目には私も間接的な影響を受けます。それでも、そもそも無理のない範囲の仕事しかしないようにしていますし、変化が苦手な自分の特性もよく理解しています。調子を崩しそうな兆候に早めに気づいて対処でき、ぼちぼちの状態で乗り切れるようになりました。自分の特性の理解と、特性に合わせた環境の調整は本当に大事だなと、つくづく実感しています。宇樹義子/文(監修:鈴木先生より)誰でも環境が変わる時には不安がつきものです。ASDの特性の一つとして環境の変化に弱いことがあります。同じ環境が続けば楽なのです。私立の学校の場合は公立と違い、教師の異動がないのでその分、多少環境の変化は少ない状況にあったと思われます。ただ、4月はクラス替えもあり、周りの環境は多少なりとも変化する時期です。卒業後も大学や会社の異動などで今後も環境の変化は避けられないことがあります。できるだけ早く仲間をつくって緊張を和らげる工夫をしてみてください。暗黙のルールも行間の汲み取りが苦手なASDの方にとっては苦痛です。ただ、郷に入っては郷に従えで、社会人になってからも仲間づくりが解決の一歩になりえます。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2025年03月09日ASD(自閉スペクトラム症)娘、学校では基本的に1人行動で……広汎性発達障害(ASD/自閉スペクトラム症)の娘は、現在中学2年生。マイペースで、静かに過ごすことが好きなので、1人でいることを好みます。学校では、基本的に1人行動で……Upload By SAKURAUpload By SAKURA中学生女子ともなれば、友達同士グループで過ごす子が多くなります。自分の時代を思い出してみても、もし自分がグループに入っていなかったら……、想像するだけで登校したくなくなるぐらいの大問題でした。娘のクラスも、女子はすっかりグループができていて、常に同じメンバーで行動しているそうなのですが、娘は望んで1人になり、そしてすごく楽しんでいました。これが娘のスタイルなのだと分かっていても、どうしても心配な私。Upload By SAKURAやはり娘はまったく寂しくなく、1人を満喫していました。Upload By SAKURA娘の1人行動は、クラスの子から見たら当たり前のようで、話すときは話すけど、それ以外は距離をとってくれているようでした。優しい友だちに恵まれ、ありがたいことで、私も嬉しくなりました。Upload By SAKURA意地悪なクラスメイトがいる!?娘の話を聞くと……クラスの子への感謝を言うとしたら、娘が何か言いたげな顔をしました。まさか意地悪してくる子がいる!?と聞いてみると……Upload By SAKURAUpload By SAKURA私の中学時代の記憶、うちの長男の男子すぎる行動との一致、そして旦那への確認をしてみても、私にはその男子に悪意があるように思いませんでした。しかし、娘は本当に嫌なようで……Upload By SAKURA先生との面談で事実確認をしてみると娘が、先生に相談を考えるほど、嫌なことであれば、私たちが頭ごなしに「仕方ないから我慢して」と言うわけにはいかない。タイミングよく翌週に面談があったので、私はまず先生に事実確認をしてみることにしました。Upload By SAKURAUpload By SAKURA先生は娘のことを気にかけてくれ、見えないところで助けてくれていました。しかし、先生ができるのはここまででしょう。それ以上はできないということは、私は理解できました。しかし、娘は「言ってもらえないのか……」という感情が残ったようでした。帰ってから、私は娘と話をしました。Upload By SAKURA1人で静かな状況を好む娘にとって、それを邪魔する人、テンションが高い人、関わってくる人は苦手という認識になるでしょう。気持ちは分かります。しかし、そのすべてから、私たちが守ってあげることはできません。大人になるにつれ、自分で気持ちをコントロールしていかなければなりません。今、私ができるのは、自分ならどうするかを話すことでした。Upload By SAKURAUpload By SAKURA小学校に入学してから、男子とのもめごとが、多かった娘。そのときの年齢に合わせて、いろんな対応や話をしてきました。そのうちに、娘も少しずつ成長していきました。今まではそれでよかったのですが、中学生になると、これから先のことも踏まえて、社会での常識的なふるまいを教えつつ、話していく必要があります。しかし、親としては1人が好きなら、1人で楽しく過ごしてほしい、苦痛で仕方ないという我慢はしてほしくないという気持ちです。まだよく分からない子どもでいてほしいような……たくましい大人になってほしいような……複雑な心境です。親として、常識は教えていかなければなりませんが、ずっと常識の範囲内で動かせていては、娘が疲れてしまいます。時には愚痴を言ったり、息抜きをしたり、ということを教えながら、娘が成長していけるようサポートしていきたいと思います。執筆/SAKURA(監修:新美先生より)中2の娘さんの学校での人付き合いについて詳しく教えていただきありがとうございます。中学生時期は、同質性を好む同世代の付き合いの難易度がとても難しくなる時期とも言えます。ASD(自閉症スペクトラム症/広汎性発達障害)の方の対人面のタイプとして分かりやすく整理すると次の3つのタイプがあります。1.他人への興味が薄いタイプ2.他人の気持ちや考えに疎く自分ペースで付き合うタイプ3.他人とどうかかわったらいいのか分からず合わせすぎてしまうタイプこの3タイプは固定的なものでなく、時期や場面で変化します。エピソードを聞かせていただくと、あーさんはとりあえず1のタイプのようです。他人に興味が薄いというと心配されることもありますが、実はマイペースを貫いて他者の言動にそれほど左右されないのである意味、心の健康度は下がりにくいという面もあります。中学生時期の特に女子同士の付き合いはとても複雑で面倒くさいもので、1タイプの方にとっては、かかわりを最小限にしておいたほうがむしろ楽かもしれません。周囲に大きな迷惑をかけておらず、必要時にはふつうに話せるようなクラスメイトもいるなら、過度な友だち付き合いを強要しなくてもいいのかと思います。最低限の関わり方のポイントについては、記事で紹介していただいたように、具体的に整理して説明してもらうのはとてもいいですね。こういう時はこう言おうというセリフを作ってマニュアルにするなどのSST的なレクチャーも有効です。前の記事はこちら(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2025年03月05日親子で楽しく通えていたはずの支援センター。しかし1歳頃から足が遠のくように……たーちゃんが赤ちゃんの頃は自宅保育をしており、地域の支援センターによく通っていました。同じくらいの月齢のお友だちと遊んで刺激を受けたり、人見知りや場所見知りがよくなったりしたら良いなと思ったからです。また、私にとってもほかの保護者の方と話すことで、情報交換や気分転換ができました。Upload By みかみかんたーちゃんは、人見知りや場所見知りで泣くことはありましたが、歩き始めるまでは問題なく通えていたと思います。しかし、1歳頃から徐々に支援センターへ行きづらくなりました。たーちゃんの困った行動が目立つようになり、周りからの視線が気になってきたからです。支援センターでの困った行動。まだ小さいからしょうがない?でも周りからの目が気になって……まず気になったのは、ほかのお子さんが遊んでいるオモチャを取ってしまうことでした。「ほかの子が遊んでいるから、違うオモチャで遊ぼう」と誘導しても、一度気になると執着心が強く、なかなか気持ちを切り替えられませんでした。今考えると、ASD(自閉スペクトラム症)の特性で、人への興味より、物への興味が強かったのかもしれません。Upload By みかみかんそれに関連して、オモチャや絵本を次々出してしまうことも気になっていました。その頃のたーちゃんは、支援センターでも自宅でも、ひとつのオモチャでじっくり遊ぶことはほとんどありませんでした。ほんの少し遊んだあと、別のオモチャを出して遊んでいました。「遊ぶ」というより、「出す」ことのほうを楽しんでいるようにも見えました。飽きっぽいのか、集中力がないのか……。私はたーちゃんがひっきりなしに出すオモチャや絵本を片づけ続けなくてはなりませんでした。Upload By みかみかんほかには、落ち着きがないことも気になりました。職員さんが絵本の読み聞かせをしてくれてもウロウロしたり、前に出て絵本をめくろうとしたりしていました。もっと月齢の低いほかのお子さんでもじっとしているのに……。どうしてたーちゃんはできないのだろう、と疑問に思っていました。そして一番困っていたことは、あまりにも周りを見ずに部屋の中を走り回ってしまうことでした。私や職員さんが何度注意しても、やめられなかったです。歩けない赤ちゃんもいる中で、けがや事故につながったらと不安になり、だんだんと足が遠のいてしまいました。Upload By みかみかん支援センターや児童館に行かなくなり、次は公園に。しかし、そこでも問題が。赤ちゃんの頃から、エネルギーがいっぱいあるたーちゃん。支援センターで動き回っているのを見て、たくさん体を動かせるように外で遊ぼうと思い付きました。まず、一番家から近い公園に行ってみました。しかし、ここでも問題が……。たーちゃんは公園でも遊びに集中することなく、すぐに公園の外に出ていってしまうのです。あまり広くない公園で、すぐそばに交通量の多い道路もあり、飛び出してしまわないかいつもヒヤヒヤしていました。Upload By みかみかんまた、感覚過敏もあり手を繋ぐことも難しく、自宅から公園への行き帰りも大変でした。大人の足なら3分かからない距離なのに、片道30分近くかかることもありました。さらに、公園から帰りたくなくて癇癪を起こすことも何度もあり、たーちゃんと外に出るのがどんどん億劫になっていきました。迷惑をかけない、のびのび遊べる大きい公園に。夫の協力にも感謝。どこにも居場所がないような気がして、たーちゃんと家で過ごすことが増えていった1歳半頃。塞ぎこんでいた私を気遣ってか、夫が平日休みや午前休を取り、夫とたーちゃんだけでよく車で出かけてくれました。少し遠いところにある広い公園をいろいろ探して、2~3時間ほど遊んでくれたのです。その間は私のリフレッシュの時間にしてくれたことを、今でも感謝しています。午前中は夫とたくさん遊んで、午後は自宅で過ごす。そんな日が増えました。私も気力がある時にはたーちゃんと近所の公園に行ったり、自転車を購入して広い公園に行ってみたりしました。Upload By みかみかん徐々に、危な気なく公園で遊べるように。大変なこともあるけど、成長を感じる。そんな生活を続けていると、2歳あたりから公園から抜け出すことが減ってきました。言葉が通じるようになったことが、理由のひとつかなと思います。近所の公園で平行遊びをする友だちもでき、たーちゃんの成長を感じました。しかし、お友だちとのコミュニケーションはまだまだ難しく、私はいつもたーちゃんとつきっきりで遊んでいました。そのため、ママ友とのおしゃべりに花を咲かせることはあまりなく……。よく子どもたちのお世話係になりがちでした。でも、それも今となっては良い思い出です。その頃に仲良くなった近所のお友だちやママ友のおかげで、今通っている幼稚園も楽しく過ごせています。トラブルを避けることも大事ですが、居場所がないと諦めずに家族全員で頑張ってこれて良かったです。執筆/みかみかん(監修:室伏先生より)みかみかんさん、たーちゃんが安心して遊べる場所が少なかった頃のたーちゃんの様子や過ごし方、その時のお気持ちなどについて詳しく共有してくださりありがとうございます。共感されるご家族は少なくないのではないかと思います。お子さん・ご家族が安心して過ごせたり、ご家族が安心して預けられる場所というのはとても重要ですよね。療育はそういった場所の一つと思いますが、療育が必要なお子さんでも、1歳頃ですとまだ受け入れが難しい場合も多いですし、施設には限りがあるので十分な時間過ごせるとも限りませんよね。お父様が広い公園に連れて行ってくださったとのこと、移動手段や生活環境などによって難しいご家庭もあるかと思いますが、たーちゃんにとっては安全に思い切り遊べる場所になり、みかみかんさんにとっては一息つく時間になって、とてもよかったですね。このようなお子さんが安心して過ごせる場所が増えること、療育をもっと低年齢から幅広く利用できるようになることを願います。前の記事はこちら(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2025年03月02日心休まらなかったイベントも、徐々に楽しめるようになってきた小学校入学前幼稚園の頃のあーは、慣れない環境、知らない場所、特別な場面などで過度に緊張し、興奮することが多くありました。しくしく泣いたり、じっと固まって動けなくなったりするのではなく、大きな声で歌ったり叫んだり走り回ったりと「動」に表出するタイプだったために、親は気が休まることがありませんでした。それが、幼稚園の発表会や運動会を数多くこなすうちに、本人も先生方も親である私たちも段々慣れてきて、練習を積み重ねれば諸々イベントごとを楽しめるようになってきたんです!そしていよいよ迎えた卒園式では本当に立派な姿を見せてくれて……!今思い出しても目頭が熱くなるほどに、あーは幼稚園の3年間で見違えるほど成長してくれたのです。入学式まで入念に重ねた準備。しかし本番前日、息子の言葉に大反省だから安心……というか油断していたんですよね。小学校でもきっとそつなくやってくれるだろう、と。あーの通うことになる小学校は、特別支援学級に進学する子どもを入学式の予行演習に参加させてくれたんです。入学式の前日に、それはありました。あーは、幼稚園のイベントにも大張り切りで参加するようになっていたので、きっと予行練習も喜び勇んで参加してくれると思ったら……。行く前から超不穏……。道路で砂いじり(もっと小さな頃、機嫌が悪いと無心でやってた行動)、着いてからも体育館に寝そべる、先生に話しかけられても「あーあー」と意味不明な奇声……。え、なんなの?どうしたの?がその時の母の本音。この間(卒園式)はできてたじゃん。みんな君のために心を砕いてくれてるんだけど。特別支援学級に通う予定のほかの子たちはみんな「ちゃんと」してるよ?普段私の中には天使母と悪魔母が同居していて、「普通の子なんかいない!私はこの子の個性を大事にしたい!」の天使モードと、「なんでちゃんとできないの、恥ずかしい……みんな頑張ってるのに!」の悪魔モードが常に拮抗しながらもバランスを保っているんですが、この時ばかりは悪魔母モードに転落しましたね……。あるがままの姿を受け止めようという気持ちになることができませんでした。どうしても。Upload By よいこそれでも明日は来る。最後まで手は抜いちゃダメだ、これは親としての責務!とお風呂で入学式の練習(名前を呼んだら答える、など)をしていたら、急にあーが 「もう嫌だ」 とそっぽをむいてしまったんです。聞けば、「お母さん、お母さんなのに先生みたい。おうちなのに」って……。これには大反省しました。苦手なことを克服して、小学校生活を少しでも楽しく過ごさせてあげたい一心で、いろいろ準備していたけれど、あーの負担になってたなんて……!Upload By よいこわが子だけどうして……準備が報われなかった入学式そんなこんなで迎えた入学式は……散々でした。教室に入っても最初から椅子に座ることすらできず、床に寝転がるあー。入学式が始まると、逃げ出すことはしなかったものの、静寂の中で時たま聞こえる歌や声……。私はもう、下を向いて脂汗を流しながらひたすらに耐えるしかありませんでした……。もうほんとごめんなさい周りの全ての人……!!先生は「よく頑張ってくれましたよ!」と笑顔でしたが、笑顔すらつくれない私の頭の中に浮かぶのは「絶望」の二文字でしかなかった……。入学式の翌日、通常の登校が始まると意外にも……!そして入学式の翌日。「きっと小学校生活にも適応できないだろう……」という私のネガティブな予想に反し、あーはテキパキ……というわけでもないけれど、しれーっと学校に行きました。明くる日も、その次の日も、特にぐずることなく日々を淡々とこなしている……。そして私は思い出したのです。冒頭のことを。そうだ、あーは元々そういう子だった。特別な場面や新しい環境は実はすごく苦手で、騒いだり不機嫌になるのはあーの不安や緊張の表れで、確かに幼稚園の後半戦はそんな姿は見せなくなっていたけれど、それは本人と先生方の努力の賜物だったんだ。今またあーは静かに自分を新しい環境に適応させようと頑張っているんだ……!と。そんなあーの心理に気づけず、寄り添うこともできなかった情けない私……。母歴何年なのか……。落ち込むと共に大きな後悔が押し寄せましたが、ここは切り替えてあーのサポートを頑張ろう!と気持ちを新たにした小学校生活の幕開けとなりましたとさ!ちなみに……。月日は流れ、6年後。中学校の入学式は問題なかったです。バッチリこなせてました!人は成長する!Upload By よいこ執筆/よいこ(監修:藤井先生より)入園、入学の季節になると、新しい環境や場面で情緒が不安定になったお子さんの様子に心配になったという相談が増えます。ほかの子はできているのに、なぜわが子はできないのだろうと、悲しくなりましたと涙ながらに話される方もいます。でも、大丈夫です。よいこさんの息子さんのあーさんが、中学生になる頃には入学式は問題なく過ごせるようになったように、時間は要するかもしれませんが、特別な場面や環境の変化があっても、落ち着いて過ごせるようになっていきます。そのためには、不安や緊張がありながらも、さまざまな環境に身を置いて、できたね、という経験の積み重ねが大切になります。前の記事はこちら(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2025年03月01日こんなに違う!ASD(自閉スペクトラム症)きょうだいの幼少期幼い頃の娘は、私にとって「子どもらしい子ども」のようでした。たとえば息子は道端で癇癪を起こしている小さな子どもを見ると「嫌だな、恥ずかしいな」と感じるタイプで、同年代と比べてもかなりおとなしい子どもでした。しかし、障害の特性が少しずつ目立ってくるにつれて、息子自身も同じように癇癪を起こすようになり、そのことをとても嫌がり、かと言ってしんどい気持ちは止めることはできずに、さらにパニック状態に陥るようになりました。一方、娘はスーパーで「お菓子買って!」と床にひっくり返ったり、公園にいくと「帰りたくない!まだ遊びたい!」と泣いたりしました。私から離れるのを極端に嫌がったり、節分の鬼が怖いからとその日だけ登園拒否をしたりする繊細さはありましたが、集団行動にも適応できていたし、すぐに仲のいい友だちもでき、楽しく幼稚園生活を送っていました。息子がパニックを起こした際は、冷たい飲み物を飲むと落ち着くことがあったので、対応している私の代わりにお茶を取りに走ってくれたりなどしっかりとした一面もあり、娘の成長は私にとって大きな慰めでもありました。Upload By 花森はな結果はグレーゾーン、特別支援学級へそんな娘の様子が少しずつ変わってきたのは、小学3年生の頃でした。かつての息子と同じように、漢字ノートに書いた字を「汚い。これじゃダメだ」と何度も消しては書き直すようになりました。連絡帳も書けていないことが多くなり、クラスメイトのお母さんに内容を聞いたりと、学校生活の困りごとがどんどん増えてきました。私はすぐに息子の通う児童精神科に予約を取りました。心理検査の結果、娘は「グレーゾーン」と診断されました。担任の先生も娘の異変に気づいていたようで、書く負担が少ない指導に切り替えてくださり、3学期から特別支援学級へと転籍することにしました。その躊躇も迷いもない決断に、学校の先生方は「もう少し様子を見てもいいのでは……?」と驚いていましたが、私が迅速に決断できたのは息子の時の経験があったからです。Q:発達障害グレーゾーンとはなんでしょうか?A:発達障害のいくつかの症状はあるけれども診断基準に満たないものをグレーゾーンといっています。母集団的には、発達障害に診断がある人よりも発達障害未診断の人のほうが多いと言われています。診断基準には満たないものの、困難な部分のいくつかは発達障害のある子どもと共通の原因で起こっている可能性があるため、環境的な工夫や、問題行動を解決するスキルの学習など、発達障害の特性に合わせた同様の支援が有効です。息子のように常時支援が必要な状態ではありませんでしたが、それでも私たち親子は困り果てることになりました。学童保育も集団がつらいということで行けなくなり、預け先も相談先も何もないのです。時短勤務で入った職場も残業が多く、特別支援学級在籍が決まった際には辞めざるを得ませんでした。できるだけ近所で理解のある職場を探しました。習い事先にも事情をお伝えしました。本来は4〜5人での授業をする学習塾だったのですが、先生がたまたま特別支援学校教諭の資格をお持ちだったため、空いている時間に個別授業という形を取ってくださることになりました。感謝しかありませんでした。息子の時には受けられなかった支援を、娘にはできる限り受けてもらいたいと、私は必死でした。Upload By 花森はな揺れる気持ちと体調と…学校がどんどんキライな場所にこうして特別支援学級在籍となった娘ですが、「学校に行けば文字を無理やり書かされる」とのことで、学校への足はだんだん重くなっていきました。門に入った途端、「もうイヤだ!やっぱり行かない!」となることもしばしば。そうした時、助け舟を出してくださったのは保健室にいる養護の先生でした。校門から近いところにある保健室から、娘の声を聞いて出てきてくださり、保健室で一旦気持ちを落ち着かせてくれました。この養護の先生には、息子の時も大変お世話になった方で、私も信頼できる先生でした。また、気持ちの揺れが体調にも現れるようになってきました。「お腹が痛い」「先生の声が聞こえない」「黒板の字が見えづらい時がある」などの症状が現れるたびに病院で検査を受けましたが、いずれも心理面からくるものでした。娘があまりに気が進まないようなら学校を休むようにしました。以前は、体調不良以外の理由で学校を休ませることに抵抗を感じていた学校側も、コロナ禍で状況が変わり、心の問題で学校を休む児童が増えたこともあり、娘の状況を理解してくれました。そうやってなんとか綱渡りの学校生活を送っていたのですが、変化の時が訪れました。次年度から通級指導学級が設置されることなり、特別支援学級には精神障害者保健福祉手帳もしくは療育手帳を所持している児童しか在籍できなくなってしまった(※)のです。(※)自治体によって条件・状況は異なりますUpload By 花森はなASD(自閉スペクトラム症)と診断、精神障害者保健福祉手帳を取得当時、娘は障害者手帳を持っていませんでした。教頭先生から「適応障害だとしても理由が弱すぎます。障害者手帳がない以上は通常学級に戻ってもらうしかないんです」と言われたため、私はもう一度児童精神科の受診を決意し、すぐに病院を探し始めました。息子の通う児童精神科は大きな病院でしたがかなり遠い上に予約が取りづらく、娘を定期的に連れていくのは厳しそうでした。そこで「自転車で通える」「思春期を迎えるし、女性の医師のほうが気持ちを話しやすいのでは」という条件で病院を探し続け、なんとか児童精神科の予約を取りました。以前よりも障害特性が強くなっていたためか、今度は「ASD(自閉スペクトラム症)」と診断されました。精神障害者保健福祉手帳を取得するため、その病院に通院を続けることに決め、学校にも報告しました。そして、障害等級2級と判断され、娘は次年度も特別支援学級に無事に残れることになりました。こうして現在は、特別支援学級で適切な支援を受け、先生方に見守られながら、特別支援学級のお友だちと自分のペースで過ごしています。Upload By 花森はな厚生労働省|障害者手帳精神障害者保健福祉手帳は、一定程度の精神障害の状態にあることを認定するものです。精神障害者の自立と社会参加の促進を図るため、手帳を持っている方々には、様々な支援策が講じられています。精神障害者保健福祉手帳の等級は、精神疾患の状態と能力障害の状態の両面から総合的に判断され、1級から3級まであります。申請は、市町村の担当窓口を経由して、都道府県知事又は指定都市市長に行います。変わりゆく特別支援教室と、子どもたちの今息子と娘は、4歳の年齢差があります。この4年の間に、二人の在籍する特別支援学級の環境は大きく変わりました。息子が在籍していた頃は、たった一人で特別支援学級に残されることが多かったり、特別支援に詳しくない先生に適切ではない対応をされることもあり、学校に行けなくなってしまいました。しかし、娘が在籍する頃には当時の先生方は誰もおらず、代わりに特別支援学校教諭の資格を持った先生が来てくださり、特別支援学級の教員の数も増え、乱雑だった教室も綺麗に整頓されて、まるで違う学校に生まれ変わったようでした。娘が現在学校で受けている支援は、あの頃の息子にあればよかったなというものばかりです。そのことに歯痒さや悔しさを感じることもありますが、今の娘が少しでも心穏やかに学校で過ごしてくれることで、救われている気がします。特別支援学級の先生も、時折娘のお迎えに同行してくれる息子に対して「息子くんもいつでも来てくれていいよ。ここは息子くんの場所でもあるんやで」と言ってくれます。娘の支援を通して、また私たち家族もサポートしていただいていると感じています。執筆/花森はな(監修:初川先生より)娘さんの小学校生活やその中での困難、支援につながっていく経緯などについてのシェアをありがとうございます。息子くんに比べると“子どもらしい子”だった娘さんが小学校生活の中でこだわりやパニックを呈するようになったり、学校が苦手になったりという経緯を経て、特別支援学級へと移られたのですね。そして、特別支援学級の条件が途中で変わり、手帳取得を急がれたとのこと。このあたりはお住まいの自治体によってさまざまなので、気になる方はお住まいの自治体にご確認ください。お子さんが学校を苦手に感じ、そのつらさが身体症状にも表れるほどであると、保護者としてはとてもご心配されたことと思います。また、ご自身のお仕事のことや生活のことなど気がかりなことがたくさんあられたのだろうと想像します。特別支援学級が娘さんにとって居場所となっていること、よかったと感じます。また、受診によって診断を受けたことも、支援やサポートを受けるにあたってはよかったですね。診断を受けたことで衝撃を感じたり、悲しまれたりする方もいらっしゃいますが、そのお気持ちはその通りだと思いますが、しかし、お子さんへのサポートを充実させたり福祉的なサービスを活用するという意味ではメリットがあります。お子さんにとって、困っている状況・つらい状態がある場合には受診するのは1つの手立てです。特別支援学級に行けば絶対にうまくいく、というほどシンプルな話ではなく、お子さんにとってその環境が成長促進的であるかどうかはさまざまな要素の掛け合わせでもたらされるものだと感じます。花森さんや保護者の方がお子さんのためにさまざま奔走されたときに、よき支援者とつながっていけたこと、また、環境が整っていくことが適ったことは何よりだと感じます。前の記事はこちら(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2025年02月28日行事がある時期は、不安定になりやすい長男特別支援学級の情緒クラスに在籍している長男けんとは、現在小学3年生。ASD(自閉スペクトラム症)と3歳の時に診断を受けました。構音障害があり、言葉が不明瞭。上手に説明することが難しいので、年長の頃は家族以外は何を言っているのか分からないことが多い状況でした。Upload By ゆきみ年少の頃は、市の発達支援施設に通っていました。年中から対象外となったので、少人数でアットホームな、地域のこども園に通い始めました。マイペースで、興味がないことは全くやらないけんとは、不安が強く、感覚過敏があり、見通しがつきにくい活動が苦手です。なので、運動会、発表会などのイベントや、それに向けた練習の時期はとても不安定になります。今回は、こども園での卒園式に向けたエピソードを振り返ってみたいと思います。練習中、友だちを引っ張る行動をとるように…けんとの通っていた園は、年長が1クラス。担任の先生が1名、副担任の先生が1名(合計2名)でした。普段は担任の先生がクラスを率いて、副担任の先生がけんとをはじめ、ほかのお子さんのサポート。加配という形ではありません。行事などでは、副担任の先生や、ほかのクラスの先生がけんとの隣でサポートしてくださいました。Upload By ゆきみ卒園式の練習が始まってしばらく経った頃、先生から連絡がありました。式の練習中、けんとがお友だちを引っ張るというのです。家でけんとから話しを聞くと「イスを戻したかった」とのこと。なぜ、イスを戻したかったのか、理由はうまく説明できません。予想ではありますが、「教室から講堂に運んだイスを、もとに戻して卒園式の練習を終わりにしたい」という気持ちから、イスを運ぶためにお友だちを引っ張ってしまったのかなと思いました。どういう活動をするのか見通しを立て、練習の順番を視覚で示してもらったり、終了予定時間を、視覚で示してもらったりすることなどが、視覚優位なけんとには有効です。当時も先生が見通しを立ててくださる時がありましたが、うまくいかなかったことも多かったようです。「できたカード」で頑張った練習行事の練習が続く時期は特に不安定になりやすいので、先生に許可をいただき「できたカード」というのを作って持っていきました。その日の目標を掲げて、できたら先生からシールをもらって帰ってくると、あらかじめ私と一緒に決めたご褒美をゲットするというもの(その日に食べるお菓子がワンランクアップすることが多かったです)。「お友だちを引っ張らない」ということを目標にした次の日は、お友だちを「押して」しまったり、卒園式の自分の番の練習が終わったら1人で教室へ帰る、という方法で切り抜けようとしたり……、けんとなりに考えて行動したようです。しかし、その都度、できたカードの目標やご褒美を相談し、変更していくことで、お友だちに手を出すことなく、最初から最後まで練習に参加できるようになりました。卒園式の練習を繰り返していく度に、「こういう練習をするんだな」という見通しがけんとの中でも少しずつ立ち、自分の中で折り合いをつけられるようになっていった気がします。卒園式で母が長男の隣の席に座る!?Upload By ゆきみ子どもたちの卒園式の練習が進んだ3月の頭、先生から個別でお話がありました。卒園式で私がけんとの隣に座り(子どもたちの一番端っこの席にけんとが座るので、その隣の席)、けんとのサポートをしてもらっても大丈夫ですか?とのこと。私も先生方には、ほかのお子さんの卒園する姿を、しっかりと見ていただきたいと思ったので、快諾。子どもたちと一緒に並ぶのは恥ずかしいかも?とも思いましたが、逆に「なかなか自分の子どもの横に座って卒園式で過ごせる機会なんてないな」という気持ちでのぞみました。そして先生からのご提案で、卒園式の1週間前に行われた練習に私も1度だけ参加し、座る位置の確認や当日の流れを練習しました。イスをガタガタ…するも、感動した卒園式Upload By ゆきみついに、卒園式の当日。先生と手をつないで入場してきたけんとをバトンタッチする形で私が引き継ぎ、隣に座り、厳かに卒園式が進んでいきました。式の最中、1番大変だったのは、イスをガタガタ揺らしたり、私に大きな声で話しかけてきたり、大きなあくびをしながら体を伸ばしたりするけんとが発する「音」を静かにすること。私がイスを手で抑え、物理的に音が出ないようにしながら、やはり隣に座ってよかったなと思いました。声を出して話しかけてくることを予想しておき、「声は出さないイラストカード」のような物を準備して見せるなど、視覚的なサポートもすればよかったと、今となっては思ったりもします。しかし、私が想像していたよりもはるかに頑張っていたけんと。自分の席から1人で舞台まで歩き、壇上で卒園証書を受け取る姿は、とても凛々しく感動しました。予想外の行動をするシーンもほんの少しありましたが、式が苦手なけんとが最後まで出席できただけで、花丸のがんばった賞です!小学3年生になった現在も、行事やその練習は苦手なけんとですが、マイペースではあるけれど確実にできることは増えていると感じます。これからも、けんとなりの成長を見守っていけたらと思います。執筆/ゆきみ(監修:新美先生より)けんとくんの卒園式についてのエピソードを聞かせてくださりありがとうございます。未就学の年齢ではお子さんによってはまだ卒園式の意義などはピンと来なくて、じっと座っている時間も長くて、本番は人も多くて、本人にとっては苦痛なだけの行事になることもあります。そうはいっても、一生に1度、園生活のいろいろな思いの詰まった卒園式です。お子さんらしく参加できるといいですよね。記事にも書いていただいたように、まずは見通しをしっかりお子さんに伝わるように説明することが肝心です。スケジュールを示したり、待っている間の工夫をしたり、頑張ったらご褒美があるなど、問題行動を抑え込もうとするよりも、不安を減らしたり、頑張れるモチベーションを用意したりすることが大事です。ちょっとぐらい完璧じゃなかったとしても、お子さんも親御さんも、園生活頑張った充実感のあるよい卒園式になるといいなと思います。けんとくんもゆきみさんにとっても、とっても素敵な卒園式になりましたね。前の記事はこちら(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2025年02月26日どこに連絡が来ているか分からない問題ASD(自閉スペクトラム症)のタケルが大学生になって1番困った問題は、「大事な連絡を見落としてしまう」ことでした。メールやLINE、大学の電子掲示板など、現代の大学生活ではさまざまな連絡手段で連絡が入って来ます。時には先輩からの伝言という形で知らないアドレスから届いたりもするので、警戒心の強いタケルには、すべての連絡を受け取ることはなかなか難しかったです。Upload By 寺島ヒロおかしいな?と思いつつも知らない授業を受けるある日、先生から「今日の授業は〇〇キャンパスであります」といったお知らせが電子掲示板に出ていたのですが、タケルはそれに気づかず、いつも通りのキャンパスに向かいました。そして教室に入ると、そこには誰もいません。「おかしいな?」と思いながらもしばし待っていると、人がいっぱい入って来たので「今日は公開授業だったのかも?」と、思いながら普通に授業を受けて帰って来ました。それが自分の受けるべき授業ではなかったことに、タケルが気がついたのは、翌週の授業の発表の時でした。Upload By 寺島ヒロ新人なのに掃除をサボるまた4年生になって研究室に所属するようになってから、先輩からのLINEを見落としてしまったこともありました。「明日は何もない日だから」と夜通し自分の研究をまとめたりゲームをしたりして過ごし、朝になって寝たタケル。ですが、寝た直後ぐらいに「研究室の掃除をします。夕方授業が終わったら研究室に集合」と連絡が入っていたのです。タケルはそのメッセージに気づかず、いつも通りのんびり夕方からの授業に出て、夜は家でご飯を食べていました。すると、突然スマートフォンが鳴り、「まだ来られないの?」と先輩からのメッセージが……!その頃にはすでに掃除は終わりかけ。研究室では1番下っ端であるタケル、絶対に行かなければならない掃除だったのです。「最初からやらかしてしまった……!」と、見て分かるぐらいショックを受けていました。即レスが苦手大学に入ってしばらくは、タケルも連絡を見逃すのが怖くて、ずっと通知をつけっぱなしにしていたのです。しかし、そうすると緊急性の低いメーリングリストなどの通知音が鳴り続け、勉強や睡眠を妨げられてしまいます。聴覚にも過敏さのあるタケルは「うるさいんだが!」と切ってしまいました。とはいえ、本当に連絡を受けないわけには行かないので、朝の9時頃と夜の9時頃にリマインダを入れてメールや掲示板を確認することに決めました。また、周りの人にも、この時に見て対応できないような緊急の連絡は電話でもらえるように(できる限り)お願いしました。先生や先輩は自分が1番使いやすい連絡手段を常に使いたいですから、必ず常にこちらの都合に合わせてくれるというわけではないのですが、タケルが特性もあって、そういうことに対応することが大変苦手であると伝えたことで、連絡を返さなくても怒られるようなことはなくなり精神的に落ち着くことができました。欠席してしまった授業は…支援課へ!連絡を受け損ねて、授業を欠席してしまった場合は、支援課に連絡して救済措置をお願いしたこともあります。タケルは毎年、年度の初めに大学の支援課を通じて学生支援センターに障害学生の申請をしています。そのため、支援課を通じて個別の事例での支援を受けられるようになっているのです。さすがに受けていない授業を受けたことにはならないのですが、支援課のスタッフに間に入ってもらって交渉した結果、全部の科目ではないですが、欠席した授業の資料をもらってレポートを書くことが許され、単位を取ることができました。支援課に相談してみてよかったです。Upload By 寺島ヒロ連絡系統が1つだと助かるそんなタケルも大学院生になり、以前より連絡ミスが確実に減っていきました。しかし、実のところそれはタケルが成長したとか、工夫したからとかではありません。院生になると指導教官が付いたので、すべての授業と研究に関する連絡がその指導教官を通してメールと電話のみで来ることになったからなのです!連絡の絶対数が減ったわけではないのですが、見なければならないアプリが減ったので、タケルが連絡を見落とすことはほとんどなくなりました。執筆/寺島ヒロ(監修:新美先生より)大学生の連絡管理について、具体的に教えていただきありがとうございます。連絡事項、提出物の管理やスケジュール管理などが致命的に苦手な人がいます。保護者がサポートできるうちはなんとかなっていても、大学などで保護者のサポートが届かなくなり、非常に苦労するということはよくあります。特に大学の最初の1、2年生は、科目ごとに教官が異なるので指示される内容も多岐にわたり、授業場所も1コマごとに違い、提出物の管理なども分かりにくく、混乱してしまいやすいです。記事にもあったように、連絡が来る手段のチェック方法をルーティン化する、アラームやリマインダーを活用するなどのやり方は、初めにしっかり身につけておきたいですね。多くの大学は、発達特性のある学生のサポートする部門があるので、こういったことがとても苦手な場合、しっかり相談してみましょう。本人ができる管理の仕方をいっしょに考えてくれたり、単位に関わる連絡を確認してくれたりなどといった、学生支援が受けられることも多いです。また、学年が上がっていくと、授業も専門化して関わる教官が減ったり、また就職するときは職場によっては、伝達体型がシンプルな職場もあるので、意外となんとかなっていくということもあります。学生時代は必要なサポートを受けながら卒業まではどうにかこうにか頑張っていき、こうしたことで混乱しやすいと実感された場合は、職場選びの重要ポイントの一つとしてとらえて、自分に合った進路選択をしていくとよいと思います。前の記事はこちら(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2025年02月25日