知って驚いた、「社会的語用」という概念言語学の分野では、会話の辞書的な意味、字義どおりの意味について扱う分野を「意味論」、場面・文脈・相手との社会的な関係性の中でどのような会話をするかについて扱う分野を「社会的語用論」と言います。例えば、職場で、部長Aさんの部下のBさんがAさんに対してこう言ったとします。「私がお茶を入れました。部長も飲みたいですか?」この発言では、文法上の誤りもなく、語彙も十分です。意味論的には、「AさんがBさんの入れたお茶を飲みたいかどうか」を聞いており、まったく問題ありません。しかし、社会的語用論の観点から言うとこの発言は不適切で、文化的社会的にはナチュラルでないと言えます。―といった説明が、日本語教師用のテキストに書いてあり、私はとても驚いたのでした。社会的語用論の観点からは、・場面(公的で改まった場なのか、私的でフランクな場なのかなど)・文脈(それまでにどんな話をしていたかなど)・相手との関係(親しいのか親しくないのか、立場が上なのか下なのか、ウチなのかソトなのかなど)に配慮して話をすべきなのだそうです。社会的語用の範疇では、文化によるのですが・目上または親しくない相手に対して直接意向を聞いてはいけない・人に何かをしてあげたときに主語をあいまいにして押しつけがましくないようにする・断るとき、禁止するときなど、はっきり言うと相手や関係性にショックを与えそうなときにあいまいな言い方にしたり「言いさし」にしたりするなどといったルールがあるのだそうです。これ、私のようにASDのある人にとっては、とても苦手なものですよね。話し手になる場合にも聞き手になる場合にも、いわゆる、「空気を読む」「行間を読む」が必要になってくることですから。だからこそ、社会的語用の概念を知った私は驚いたのだと思います。これらを総合して、上記の例の場合、日本において社会的語用の観点から正しい(より正確に言うと、日本で最も感じが良いと受け取られて生存戦略上都合がよい)言い方はこんな感じになるでしょうか。「お茶が入りました。部長もいかがですか」「お茶が入りました」「お風呂が沸きました」ずっと理解できていなかった社会的語用私はそこで、自分が生きてくる中でなんとなく疑問に思っていた日本語の表現をざっと思い出してみました。すると、あれは社会的語用だったんだ!と気づくものがいくつもありました。例えば、上記の例にあった「お茶が入りました」。周囲がそういう言い方をするから私も自然にこういう表現を使ってはいたものの、「文法的に考えるとなんだかお茶が勝手に意志を持って入ったみたいな感じでおかしいなあ、どうしてだろう」と、言語化はできないまでもずっと引っかかっていたのです。日本人はこういった何気ない表現の中でも、相手との社会的関係を配慮した物言いをしているのですね。給湯器も、「お風呂が沸きました」って言いますよね。あれ、中身は日本人だなって思いました(笑)英語やフランス語でも「行間を読む」?でもね、同じような社会的語用、よく考えたら英語でもするんですよね。Dinner is ready!(夕飯ができました)Tea is ready!(お茶ができました)ここで I made tea (私がお茶を入れました)とかは言わないわけです。その他、私は大学時代アメリカに短期留学したとき、誰かを何かに誘うか何かしたときに maybe next time(またこんどね)って言われたんです。そうか、また今度誘えばいいのか、と思ってしばらくあけて再度誘ったら、すごく困惑した顔をされました。欧米はいわゆる空気を読まなくていい、なんでもオープンに意思表示しあう文化だと思っていたので、それから20年来謎だったのですが、先日、アメリカ帰国子女と日本人がやっているインターネット動画で、アメリカでも婉曲に断ることあるよ!と言っていて、「あれは断られてたんだ!」と初めて気づきました(笑)フランスでも「行間を読む」ことはあるようです。フランス人ASD女性のコミックエッセイの中に、会社の同僚に「あの資料持ってる?」と訊かれて「持ってるよ」と答えたら同僚は「ええっと、その資料を貸してくれる…まったくもう!」と怒ってしまったというシーンがあったので、これにも驚きました。空気・行間を読むことが多い、よりハイレベルな社会的語用が要求される文化を「高コンテクスト文化」といい、日本が代表です。その反対で、なんでもはっきり言葉にすることが多く、直接的なコミュニケーションをする文化が「低コンテクスト文化」で、ドイツが代表と言われています。ドイツのコミュニケーションに婉曲な表現があるかは見聞きしたことがないのでわかりませんが、欧米が日本よりも低コンテクストだからといって、日本のような高コンテクスト・婉曲な表現がないわけではないのですね。イギリスなんかは非常に婉曲な言い回しが多く、京都に似ていると言われることもありますね。言葉の学びの中でようやく興味を持てるようになった、日本の社会的語用ここまで考えて私が思ったのは、「世の中には、高コンテクスト文化と低コンテクスト文化と、元来ほぼ社会的語用をしないASD文化があるのではないか」ということでした。私がASDのない人と接触せず、生まれたままのASDとして生きていたら、たぶん本当に辞書通り字義どおりの、意味論的なコミュニケーションをしていたと思います。でも、日本の高コンテクスト文化の人たちと「異文化交流」をする中で、まるで低コンテクスト社会から来た人のように少しずつ「異文化適応」をして、(違和感や疑問を覚えながらも)徐々に社会的語用を学んできたのでしょう。私は日本のASDのない人たちが「普通」「正しい」とするコミュニケーションにずっと違和感や、ときには怒りを感じてきましたが、こうしたコミュニケーションの機微について研究する学問分野があったことにはある種の感激を覚えました。以来、人のコミュニケーションを、研究対象を見る感じで興味と好奇心を持って観察し、自分の不全感については「私は異文化に生まれた異邦人なのだから仕方ない」と余裕を持って受け止められるようになりました。ASDのある子どもの、高コンテクストなコミュニケーションに関するマイナス感情への対処ASDの子どもの中には、人とコミュニケーションする中で、戸惑いや怒り、不全感を感じる子どもたちも多くいると思います。私がそうだったように。物事への理解ができるようになってきた思春期以降であれば、単に「これが正解だ」と教え込むのではなく、異文化のひとつとして教えるなどすると、私のように興味を持って客観視できる助けになるかもしれません。文/宇樹義子(監修鈴木先生より)私の外来はASDの患者さんの割合が多いです。外来で患者さんに「KY:空気を読めますか」と尋ねると、「先生、空気は読むものでなく吸うものですよ」と返されることが多々あります。また、 “医師と患者さん”という関係性を踏まえた会話ではなく、あたかも以前から知っていた友人と話すような調子で話されるお子さんの何と多いことか。それは、親御さんも同様です。そうしたお子さんにはSST(ソーシャルスキルトレーニング)の受講を、親御さんにはペアトレの受講をお勧めしています。食事中にスマホをやっているお子さんに食事中はスマホはやめなさいというと、ASDの特性が強いお子さんは、食事をやめてスマホだけやるのです。確かに、「食事中はスマホはやめなさい」と言われたとき、その言葉通りとれば、食事をしていなければスマホをやっていいことにはなります。ASDの特性から、なぜそのように言われたのか、相手の立場になって考えることが苦手なのです。社会的語用はASDのグラデーションによって変化が見られます。コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如・多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。SLD(限局性学習症)LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。
2023年06月06日「授業中にフリーズ」自閉スペクトラム症のある太郎自閉スペクトラム症のある太郎は、小学校1年生時、国語、算数、図画工作の授業は特別支援学級で個別に受けていた。特別支援学級の先生の判断だけではなく交流学級の先生と情報交換しながら、「太郎にあった授業」というものを考えてくださっていた。Upload By まゆんUpload By まゆん交流学級での太郎の様子を先生はこう言っていた。・黒板の文字を写すことに時間がかかる・周りについていけずにフリーズする・そのことを引きずりそのあとの授業にまで影響がある・図画工作では手先の不器用さが目立つ・テーマにそって何かを創作するということが難しい・そしてフリーズする・そのことを引きずるその繰り返しだと。個別授業では、太郎のペースに合わせてノートを取れるように待ってくださったり分からない個所への助言をしてくださったので、通常学級の授業の進行ペースに間に合うように勉学を進められた。フリーズすることは変わらずあったそうだが、切り替えの時間を設けたり太郎が納得するまで問題を一緒に考えてくださったりした。最高の相談者先生の言葉で覚えていることがある。「太郎ちゃんはとにかくこだわりが強いので、納得がいくまでは固まって動きません」「適当ということがないので、そこがいいところでもあるのですが、もう少し柔軟性が出ると本人もきつさが和らぐのだと思うのですが」先生の言葉には共感がわいた。太郎に真剣に向き合っているからこそ分かる特性だったし、私が悩んでいることとまったく同じで喜びがわいてきたのだと思う。最高の相談者、味方ができたと心強くなった。特別支援学級の先生は、交流学級での太郎の授業の様子もみにきてくださっていた。先生が太郎にアドバイスをしやすいように、太郎の交流クラスでの席は決まって一番前の廊下側の席だった。太郎もきっと先生が来ると安心していたのではないかと思う。Upload By まゆん面談時に、先生が私に弱音を吐くこともあった。図画工作の時間でどうしても太郎がテーマにそって絵を描かなかったときのこと。先生が参考になる絵を用意したところ、太郎が真似して時間をかけて描いたと思ったらなんと勢い良く消し始めたとのことだった。「お母さんー、こんなことがあったんですよー、すっごくうまく、やっと描けたのにですねー、もうほんっとにもうー」とベソをかいていた。Upload By まゆん私も先生の苦労が身に染みて分かっていたのだが、なんて言っていいのか分からず、とにかく感謝の気持ちを伝えた。「先生ありがとうございます」すると先生は「大変ですけど、太郎ちゃんかわいいですし、楽しいです」ますます感謝の気持ちがこみあげてきた。Upload By まゆん先生に出会えたことを本当に幸せに思っていた。特別支援学級でどのような配慮をしてくださるのか。学校や先生によって対応も違うだろうし「どんなものなのだろう」と思っていました。太郎が入学した年に特別情緒障害支援学級が設立された学校だったため、事前情報が一つもないまま入学しました。不安な気持ちを持っていたのは保護者の私もですが、先生も模索しながらの日々だったことと想像しています。生徒の一人ひとりに違った個性がある特別支援学級。先生の太郎に対する対応には、何一つ不満はありませんでした。先生は太郎に試みたことを根拠から太郎の様子、評価までありのままを話してくださいました。小学校低学年のころは、まめに私の仕事が終わる時間に情報共有として電話連絡をいただいていました。そんな日々を振り返り、とても安心できる環境に置かれていたのだと実感しています。執筆/まゆん(監修:鈴木先生より)理解と知識のある先生に出会えたようですね。黒板の文字を写すのに時間がかかるのは、同時処理やワーキングメモリーの低さからくるものと思われます。WISCというIQテストでその程度は分かります。私の外来では板書が写せないお子さんには、タブレットなどで写真を撮ってそこに記入するようにすすめています。学校側の理解と配慮が必要となります。また、手先の不器用さは、発達性協調運動症のあるお子さんによく見られます。病院などで、リハビリを行う作業療法士(OT)さんによる感覚統合訓練を受けることができます。それには医師の診断が必要になります。症状だけで療育や教育を続けているお子さんが目立ちます。これは羅針盤を使わずに航海しているようなものです。しっかりと診断してそれに向けて将来の対策を講じることが大切だと思います。コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如・多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。SLD(限局性学習症)LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。
2023年05月24日3歳までこだわりや癇癪がほぼなかった息子。でもこだわりのタネは少しずつ芽を出し始めていて…赤ちゃんのころから反応が少なかった息子。癇癪・こだわりも例外ではなく、特に産まれてから3歳あたりまで「どうしてもこうしたい!!」という息子からの強い思いはほぼありませんでした。たとえば、おもちゃで遊んでいても目の前からなくなるとすぐにあきらめて違うおもちゃで遊びだすので、児童館でお友達と取り合いになるようなこともなく…というか全てのおもちゃ・遊びに対して興味が薄く、夢中になることがほとんどなかったように思います。親としては「もっと熱くなれよっ!!」と言いたくなるくらい、物事への執着を感じることがありませんでした。Upload By 海乃けだまうちの子はもしかしたらこのままこだわりや癇癪が少ないタイプなのかもしれない…そう思っていた矢先、4歳を過ぎたころから何気ない日常生活で積み重ねた「いつもの習慣」が突如地雷となって爆発する日がやってきたのです(恐怖)。ある日、何の前触れもなく突然現れたこだわり。まるで地雷!!日常生活がサバイバル!?それはある晩のこと…毎週土曜日の夕飯は祖父母の家(義実家)でつくっていただいているのですが(とてもありがたい)、わが家の玄関を出て左の階段が正門、右の階段が車庫に続いており、その日は車に置き忘れた物を取りに行ってから祖父母宅へ向かおうとしていました。息子に「ちょっと車に忘れ物したから取りたいねん」と一声かけてから手を引いて車庫の方へ歩きだすも…息子はピクリとも動きません。「どうしたの?」そう声をかけようとした途端、『ごっぢー(こっち)』ととんでもない声量で叫び出したのです(唖然)。それこそ知らないうちに積み重ねていた"いつもと同じ通路"が息子の中でこだわりとなっていたことを知った瞬間でした。Upload By 海乃けだまこの出来事があってから、今までの間に次々とこだわりという名の地雷が発掘されております(白目) 。誰得‼︎祖父母宅関連の息子のこだわり一覧・必ず玄関を出て左の正門から・祖父母宅へ行く専用の靴下・祖父母宅へ行く専用のサンダル・家の前の道路を横断する際の左右確認←妹・パパママたちもちゃんとしてるかチェックされます(笑)・息子専用のお皿・スプーン・フォーク・息子専用のコップ・ストロー、そしてティースプーン←(お茶を混ぜるため)一つひとつは取るに足らない小さなこだわりなんですが、数が多くなってくるとなかなか大変です…。一方で、こだわりがいい方向に働くことも…息子は今ミニカーに激ハマりしているのですが、そこから派生して道路標識にも興味を持ち始めています。交通ルールに関して教えると、必ずそのルールを守ってくれます。道を渡るときは車が来ないか左右確認、手を挙げて渡る、交差点の歩行者の止まれマークは必ず止まる。そして横断歩道があればその白線の上を必ず歩く。Upload By 海乃けだまパパやママ、そして妹もしっかりとルールを守っているかチェックされます。息子の「交通ルールを守る」こだわりは、スーパーの駐車場なども例外ではなく…たとえ目の前にスーパーの入り口があったとしても、横断歩道があるところまで遠回りしていく徹底ぶりです。Upload By 海乃けだまこだわりのタネになると困ることは避けているつもりでも…もともとの息子の性格上、何時間でも泣き続けるような強いこだわりというのはないのですが、どんな毎日の習慣がこだわりのタネになってしまうか分からないので、今日はAの日、別の日はBの日など変化を持つように意識しています。しかし、無意識で毎日同じ行動をしていることもあり、息子の「ママはいつも○○なのー?」や「〇〇に行くから右から出る!(車)」などの言葉で習慣化していることに気づかされます。ちょっとした脳トレと思いながら、日々過ごしております (※ただし、余裕のあるときのみ) 。執筆/海乃けだま(監修:藤井先生より)息子さんのこだわりの内容の詳細がよく分かるコラムをありがとうございます。ASDのあるお子さんで、言葉で自分の気持ちをうまく表現できない場合、どうして癇癪を起こすのか分からないままのこともあります。癇癪の理由が分からない場合もありますが、(小さな)こだわりの積み重なりによることもあると想像できますね。こだわりを強化しないように、変化を持つように意識しているとのこと、とても良いことだと思います。ルーティンは持ちつつ、緩められるところは緩めて、行動の幅を持たせられると良いですね。コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如・多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。SLD(限局性学習症)LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。
2023年05月19日私はカサンドラ症候群?自閉スペクトラム症のあるパートナーとの不和、子育ての難しさパートナーや子どもなどの身近な人に自閉スペクトラム症(ASD)などがあり、コミュニケーションをとることが難しく、ストレスを抱える日々が続いてしまい、それが次第に心身の不調となってあらわれてしまうことがあります。これを「カサンドラ症候群」と呼ぶことがあります。「カサンドラ症候群」は医学的な病名ではなく、明確な診断基準は定められていませんが、メディアなどでも取り上げられることもあり、カサンドラ症候群の症状を訴える人も増えているようです。発達ナビのQ&Aコーナーにもこれまでさまざまな質問が寄せられています。「カサンドラ症候群という病気があるの?」「自閉症育児。夫に頼ることができず、心療内科を受診したり、帯状疱疹になったりボロボロです。こういうのをカサンドラ症候群というのでしょうか」「自閉症のあるパートナーを持つ方、子育てにおいて心ない言葉を投げられたこと、話が通じなくてつらいなどと言われたことはありますか?わたしが悪いのでしょうか?」「ADHDと自閉症のある長男が奇声を発すると、下の子がヒステリックに怒ったり、最近では精神的にまいっているようです。これはカサンドラ症候群でしょうか?」このコラムでは、カサンドラ症候群にまつわるギモンから、家族など身近な人に発達障害がある場合のお悩みや困りごと、体験談や、専門家の先生のアドバイスを交えてご紹介します。カサンドラ症候群とは、パートナーや子どもなどの身近な人に自閉スペクトラム症(ASD)などがあるためにコミュニケーションをとることが難しく、それにより心身の不調があらわれたり、対人関係に問題が生じている状態を言います。カサンドラ症候群は、医学的な病名ではなく、明確な診断基準は定められていません。特に妻や夫といったパートナーに起こる場合が多いと言われていますが、自閉スペクトラム症(ASD)のある子どもを育てる保護者がカサンドラ症候群になる場合もあります。夫の無理解、ワンオペ自閉症児子育てがつらい。これはカサンドラ症候群?発達ナビのQ&Aコーナーに寄せられたカサンドラ症候群に関する質問と発達ナビ会員の実体験にもとづく回答をご紹介します。Q. 自閉症スペクトラムの夫を持つ方にお伺いしたいです。子育てに関して心無い言葉を投げられたこと、お前はズルい(悪い)人間だと言われたこと、お前と話すと話が通じなくて辛いと言われたことはありますか?どちらも未診断ですが、夫が自閉症スペクトラム、ADHD、幅広い障害の傾向があると自分で言っています。私は心療内科のスクリーニング検査でADHDの傾向が高いとなりました。二人とも、多動、不注意、学習障害などはありません。略私や実母に対して気に入らない事があると、人を傷付ける表現の言葉で攻撃をしてきます。その他、何人かの友人や上司にもそういった攻撃をしているようです。付き合い始めは全くいい人で、結婚、出産を機に気に入らない事があると無視、言葉での攻撃がでてきました。自分の中の「正しい事」に執着し、それを外れた言動があると激怒します。(略)こちらの質問には以下のような回答が寄せられました。A.私のパートナーも、診断こそありませんがASD傾向が強めです。ご質問に書いてらっしゃるご主人の言動と、とても似ている行動を取ります。社会・職場では、ステキなこだわりを持った面白い人家庭内では暴力こそ無いものの、困ったこだわりの多過ぎる、時々暴君となる人です。子育てに手出しは全然してくれませんでした。ですが口出しはされてきました。事あるごとに「お前の考え方では、やり方では…」とダメ出しです。特に教育・学習の面では、子どもの現実を見ず、日常こちらに任せきりなのに、何かあると「お前の考えは甘過ぎる」と散々でした。なので、共感します。とっても‼️そして共感してくれる仲間も、ここにはたくさん居ると思います。(略)小学2年生の息子は、思い通りにならないと暴言や癇癪を起こします。お薬を飲み始め、癇癪の時間は短く、軽くなりました。(中略)しかし、夫はいつまで経っても、息子を炎上させるだけの人。少しでも夫婦で連携して、家庭内で息子の気持ちが安定出来るようにして行きたい私は、どうしても夫に対して、イライラしてしまいます。また、息子の主治医に夫の言動や、実際会ってもらい話した感じから、息子の発達障害は夫からの遺伝の可能性が高いと言われました、私も今までの夫との生活からの違和感を、その言葉で納得出来ました。夫に頼れない、育児に心療内科を受診したり、帯状疱疹になったりボロボロです。こういうのをカサンドラ症候群と言うのでしょうか?同じような環境の方、どのように自分を保ち、育児してますか?こちらの質問には以下のような回答が寄せられました。A.いつまでたってもわかってくれず、イライラしても、学校での出来事や日頃の様子、さほどきにかけていないんじゃないかなー。そのとき腹がたったら怒る、っていうことだと思います。こういう場合は、仕方がない。父親がいいとこを持ってく形にし、父親と子供を対立させない事だと思います。できれば、父親から、誉めてもらうようにすることができればよいのですが。自分と同じような考え方をしてもらいたいと思っても無理です。子供の悪い点より、よいところをなるべくご主人には見せてあげて。 お気持ちわかります。私も「夫と二人で子供の成長を喜びながら、相談しながら共感しながら子育てしたい」と考えていましたが、それは叶わぬ夢でした。旦那様には聴覚過敏があって、お子さんのグズグズが辛いのかもしれません。夫と子供の接点を減らして、旦那様とご自分のイライラを減らしていきましょう。一人ぼっちの子育て、心細く、空しく、寂しいですよね。でも、考えようによっては、余計な口出しをされず、自分の思う通りに子育てができるということでもありますから。ただ、子育てに集中しすぎると、「子供に妻を取られた」と、夫が子供を敵視し、攻撃することがあります。夫に出来そうな仕事を振り、大袈裟に感謝するなどして、適度に配慮しておく工夫が必要です。夫に気持ちの共感を求めるのは難しいです。必要なことはあまり感情的にならずに損得の話に置き換えて話すと良いようです。感情的に夫に話しても「妻に攻撃された」という記憶が残るだけで、伝わりにくいでしょう。旦那様が視覚優位なタイプの方なら、ラインやメールなどで、視覚的に気持ちを伝えるのも良いかもしれません。一人ぼっちのむなしさは、お近くのカサンドラの会で、仲間に共感をもって聞いてもらうとスッキリしますよ。カサンドラ症候群に関するギモンと体験談をもとにした回答をご紹介いたしました。発達ナビQ&Aコーナーカサンドラ症候群の原因には、身近な人の自閉スペクトラム症(ASD)の特性によるトラブルがあると言えます。ここでは、カサンドラ症候群の発端となりうる自閉スペクトラム症(ASD)の特性について解説します。自閉スペクトラム症(ASD)には「対人関係や社会的コミュニケーションの困難」と「特定のものや行動における反復性やこだわり、感覚の過敏さまたは鈍麻さ」といった特徴があると言われています。◆対人関係や社会的コミュニケーションの困難表面上は問題なく会話できるのですが、その会話の裏側や行間を読むことが苦手です。曖昧な表現が苦手だったり、不適切な表現を使ってしまうことなどがあります。場の空気を読むことに困難さがあり、相手の気持ちを理解したり、それに寄り添った言動が苦手な傾向にあります。本人が意図していなくてもその場の雰囲気を無視をしたような言動をとることもあり、対人関係を上手に築くのが難しい場合があります。気持ちの理解が困難なために相手を傷つけたり、自己中心的と思われる言動や行動をしてしまうことなどがあります。◆特定のものや行動における反復性やこだわり興味を持ったことに対して過剰といえるほど熱中する傾向があります。また法則や規則が崩れることを極端に嫌うということもあり、自分のルールがあったり、興味のあることに対して話し続けてしまうことなどがあります。しかし、困ったことばかりではなく、この特性は強みとして活かすこともできます。◆自閉スペクトラム症(ASD)の特性だと頭では分かっていても…身近な人に自閉スペクトラム症(ASD)があると分かったとき、多くの方は理解をしようとするでしょう。しかし、日々の中で困惑してしまうこともあるかもしれません。特性だと分かっていても、自閉スペクトラム症(ASD)のある人と接していくうちに、思うようにコミュニケーションがとれないことに自信をなくしてしまったり、周囲に相談しても理解をしてもらえず、孤独を感じてしまう場合があります。その結果、体調不良や抑うつ状態に陥ってしまうことがあるのです。【精神科医に聞く】カサンドラ症候群かもと思ったら?自閉スペクトラム症(ASD)のある家族とのコミュニケーションのコツここまで発達ナビのQ&Aコーナーに寄せられたギモンを中心にご紹介しました。ここでは、精神科医の染村先生にカサンドラ症候群のような症状があらわれたときの対処法と、自閉スペクトラム症(ASD)のある家族とのコミュニケーションのコツについてお答えいただきます。(質問)自閉スペクトラム症(ASD)のある夫との毎日でストレスが溜まり、夜眠れない日々が続いています。カサンドラ症候群は病気ではないと聞きましたが、病院を受診してもよいのでしょうか。(回答)A.夜眠れない日々が続いている場合は、精神科(メンタルクリニック)や心療内科へ受診することをおすすめします。不眠の状態が続くと、疲労の回復が得られず、また心配や不安感を抱えやすくなり情緒不安定になります。安定した日常生活を送り、ご主人と向き合うためにも、まずは自身の健康状態を改善させることが最優先です。Upload By 発達障害のキホン(質問)夫に自閉スペクトラム症があると分かりました。家族より自分のことを優先します。5歳の子どもがいますが、子育てもほとんど私1人でしています。顔を合わせれば言い争いになってしまい、精神的に参っています。どのように対応したらいいでしょうか。離婚したほうがよいのだろうかと悩んでいます。(回答)A.結婚当初の夫婦2人のときは争いごとが少なかったのに、お子さんが生まれ、育児の負担が妻の側に大きくかかることで、夫婦の関係性が悪くなることは多いものです。このような場合は、話し合いをして、夫の家庭での役割を決めていくのもよいでしょう。夫に子育てを任せるのは不安だと感じる場合は、掃除や洗濯など夫ができそうな家事の一部を分担してもらうのが現実的です。また自閉スペクトラム症の特性として、予定や役割の急な変更、想定外の事態を苦手としているため、夫の家事の分担も具体的に取り決めておくとよいでしょう。例えば、朝のゴミ出し、週2回の掃除機かけ、毎週土曜日のお風呂掃除など、やる項目や頻度を決めておくことです。夫の家庭での協力や役割が決まると、妻自身も安心する部分もあると思います。離婚となると子どもへの影響も大きいことから、大きな決断をする前に、まずは夫婦で話し合い、協力して歩みよれる部分を探っていくことをおすすめします。Upload By 発達障害のキホン(質問)家族に自閉スペクトラム症があることが分かり、自分がカサンドラ症候群になってしまうのではないかと不安です。カサンドラ症候群にならないためのコツはありますか?(回答)A.カサンドラ症候群は、自閉スペクトラム症などのため共感性や情緒的な反応が乏しいパートナーと暮らしている人に起きるものです。典型的なものとして、夫は気持ちの共有が苦手であるが、本人は自覚もなく改善しようとしない。よって妻の方が、自分は被害者で、夫のみが反省して治療すべき問題として捉えやすいものです。しかし、自閉スペクトラム症のような特性を抱えているケースで、夫だけの問題とみなし、夫が反省して100%変えることを求めた場合に、解決に到達することは不可能となってしまいます。妻は、夫の特性を理解して、ある程度受け入れることも大切です。一緒に生活して共有する時間が増えることで関係性が悪化することも多いものです。夫婦といえども、それぞれの時間や空間を尊重して干渉しすぎないことで、関係が好転することもあります。しかし育児や親の介護など当人以外の課題が絡んでくるときに、問題が出てきます。都度2人で話し合いの場を設けて、具体的にやるべきことを取り決めていくとよいでしょう。最初から2人で話し合うことが難しい場合は、カウンセラーなどの専門家を第三者として交えて話し合いをしていくことをおすすめします。Upload By 発達障害のキホンカサンドラ症候群にまつわるコラム発達ナビに掲載されているカサンドラ症候群にまつわるコラムをご紹介します。心身に影響が出ている場合は、迷わず医療機関に相談をカサンドラ症候群とは、パートナーや子どもなどの身近な人に自閉スペクトラム症(ASD)などがあるためにコミュニケーションをとることが難しく、それにより心身の不調があらわれたり、対人関係に問題が生じている状態を言います。カサンドラ症候群は、医学的な病名ではなく、明確な診断基準は定められていません。しかし、夜眠れない、動悸がするなど心身に影響が現れている場合は、精神科(メンタルクリニック)や心療内科などを受診することがおすすめです。また「カサンドラ症候群かも」と感じるとき、自閉スペクトラム症などのある人の問題だと捉えられがちですが、相手のすべてを変えることで解決することはできません。家族が特性を理解し、互いに歩み寄ることも大切になってきます。夫婦などの場合、育児や親の介護など当人以外の課題が絡んでくるときに問題が出てくることは多くあります。特性を理解し、話し合いながらやるべきことを決めていけるとよいでしょう。難しい場合は、カウンセラーなどの専門家を第三者として交えて話し合いをしていくことがおすすめです。コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如・多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。SLD(限局性学習症)LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。
2023年05月09日自閉スペクトラム症(ASD)とは?自閉スペクトラム症(ASD)は発達障害の1つで、これまで自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー症候群などの名称で呼ばれていましたが、2013年にアメリカ精神医学会による、精神疾患の診断基準・診断分類「DSM-5」が出版されて以降、自閉スペクトラム症(ASD)/自閉症スペクトラム障害と呼ばれるようになりました。※この記事内では以下「自閉スペクトラム症」と記述します。自閉スペクトラム症(ASD)は、「対人関係や社会的コミュニケーションの困難」と「特定のものや行動における反復性やこだわり、感覚の過敏さまたは鈍麻さ」などの特性が幼少期から見られ、日常生活に困難を生じる発達障害の1つです。知的発達症(知的障害)を伴うこともあります。幼少期に気づかれることが多いと言われていますが、症状のあらわれ方には個人差があるため就学期以降や成人期になってから社会生活において困難さを感じ、診断を受ける場合もあります。参考:(7)自閉症・情緒障害|文部科学省自閉スペクトラム症は生まれつきの脳機能障害です。乳幼児期の育て方によって発症するものではありません。自閉スペクトラム症の根本的な原因を治療することはまだ不可能と言われています。また、ひとことで「自閉スペクトラム症」と言ってもその症状は人によってさまざまなので、それぞれの特性や発達のペースに合った療育や支援、教育的な対応、合理的配慮、環境調整や本人の工夫などが必要になってきます。癇癪、衝動性、こだわりなど個別の症状に対しては、まずは環境の調整を行います。自閉スペクトラム症そのものを治す薬はありませんが、ある一定年齢以上であれば特定の症状に対して薬が処方される場合もあります。自閉スペクトラム症(ASD)と広汎性発達障害、アスペルガー症候群、高機能自閉症との違いは?広汎性発達障害とは、アスペルガー症候群や自閉症などを含む障害の概念として使われていました。 DSM-5で広汎性発達障害の名称は「自閉スペクトラム症」の診断名に統合されました。アスペルガー症候群は広汎性発達障害の1つとして定義されてきました。知的発達の遅れを伴わず、かつ、自閉症の特徴のうち言葉の発達の遅れを伴わないものがアスペルガー症候群に分類されていました。DSM-5でアスペルガー症候群の名称も「自閉スペクトラム症」の診断名に統合されました。参考:参考3定義と判断基準(試案)等|文部科学省高機能自閉症は自閉症の中で「知的発達の遅れを伴わないもの」を指す概念として使われていました。高機能自閉症と アスペルガー症候群の違いは、発達の初期の言葉の遅れの有無であり、遅れが見られたものを「高機能自閉症」と分類していましたが、明確な違いはないという指摘もありました。DSM-5で高機能自閉症の名称も「自閉スペクトラム症」の診断名に統合されました。参考:参考3定義と判断基準(試案)等|文部科学省Upload By 発達障害のキホン自閉スペクトラム症(ASD)と併存しやすい症状自閉スペクトラム症はさまざまな併存症があると言われています。約70%以上の人に1つの精神疾患が、40%以上の人に2つ以上の精神疾患があると言われています。知的発達症(知的障害)、ADHD(注意欠如・多動症)、発達性協調運動症(DCD)、不安症、抑うつ障害、限局性学習症(学習障害、LD)、場面緘黙症(選択性緘黙)などが併存することがあります。参考:ASD(自閉スペクトラム症、アスペルガー症候群)について|e-ヘルスネットADHDとは、不注意(集中力がない)、多動性(じっとしていられない)、衝動性(考えずに行動してしまう)の3つの症状が見られる発達障害のことです。限局性学習症(学習障害)は知的発達に遅れがないものの「読む」「書く」「計算する」などの能力に著しい困難を示す発達障害のことです。医学的な定義では限局性学習症は上記3点の困難を指しますが、文部科学省での定義は「聞く」「話す」「読む」「書く」「計算・推論する」の5点を指し、定義に若干の違いがあります。参考:学習障害(限局性学習症)|e-ヘルスネット参考:学習障害(LD)、注意欠陥/多動性障害(ADHD)及び高機能自閉症について|文部科学省発達性協調運動症とは、日常生活における協調運動が、本人の年齢や知能に応じて期待されるものよりも不正確であったり、困難であるという障害です。別名、不器用症候群とも呼ばれていました。知的発達症(知的障害)とは、発達期までに生じた知的機能障害により、認知能力の発達が全般的に遅れた水準にとどまっている状態を指します(発達期とはおおむね18歳までを指し、それ以降に事故や病気などで知的機能が低下しても、知的発達症とは言いません)。場面緘黙症(選択性緘黙)とは、たとえば家庭では問題なくおしゃべりができるのに、幼稚園や学校、公共の場など特定の場面で「話せない」状態をいいます。自閉スペクトラム症のある子どもとの生活の様子は?特選連載コラム自閉スペクトラム症のあるお子さんをもつ発達ナビの連載ライターさんの厳選コラムをご紹介。「あるある」と共感したり、今の悩みを解決するヒントが見つかるかも…?大人の自閉スペクトラム症の仕事での困りごとなど、関連コラム自閉スペクトラム症のある人が大人になると、仕事面で困ることが多くなってきます。自閉スペクトラム症のある人は得意、不得意がハッキリしていることが多いので、自身の得意分野をきちんと理解して自分に合った職や対処法を探すことが重要になってきます。コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如・多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。SLD(限局性学習症)LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。
2023年04月28日「床の色が変わると歩けない」息子のこだわりが生んだ独自ルールUpload By べっこうあめアマミみなさんは、何らかの施設内を歩いているとき、床の色の切り替わりに注目することはあるでしょうか?おそらく、ほとんどの人はないと思います。しかし、息子はそういった床の色の切り替わりに敏感で、歩く場所の色が変わると急に足を止めて踏み出せなくなってしまうことがよくありました。子どものころ、遊びの延長的に、「同じ色の場所を踏んで歩く」というルールを自分に課して学校などから帰った経験がある人はいませんか?もしかしたら、それを極端に強固にしてしまったものが、息子の床へのこだわりなのかもしれません。息子の床の色に対するこだわりは強く、「この床は踏みたくない」と思ったら全く動けなくなってしまいます。無理に動かそうとすると癇癪につながることもありますが、動けなくなった場所が人の迷惑になる場所だったり危険な場所だったりすると、非常に困ります。息子のこだわりは一貫性があるものではなく、あるときはダメだった床があるときは大丈夫になっていたりと、その日のコンディションにも左右されるものでした。息子は言葉が話せないので、こだわる理由の真相を聞き出すことはできません。しかし、おそらく息子は体のほかの部分に比べて足裏の感覚が敏感で、たとえ靴や靴下を履いていたとしても、足裏と近いところにある床が気になってしまうのではないか?と思っています。療育のお部屋が床の張り替え!「一歩」を踏み出せなくなった息子Upload By べっこうあめアマミ息子が未就学児のころ、療育で通っていた発達支援施設で、一部の床の張り替えをしたことがありました。息子がいつも使っていた教室の床も張り替えられ、きれいな教室で過ごせてうれしいな…と思っていない人が一人。息子です。いつもの教室の一部の床の色や素材が変わったことに、息子はすぐに違和感を感じたようでした。変わった場所に踏み入るのをためらい続け、どうにか療育は受けられたものの、療育中もソワソワして、その日はなんとなく落ち着かない様子だったようです。そして、帰りの時間。息子の「できる限り床を踏みたくない」気持ちが限界を迎え、部屋の隅から一向に動かなくなりました。どんな声がけも通じず、迎えに来た私は困り果てました。歩く場所は作ってあげればいい、先生が出した魔法のアイテムそんなとき、救世主が現れました。一人の先生が、息子の両足が乗るくらいの大きさの色のついた丸い紙を、何枚か持ってきてくれたのです。そして、その紙を息子の前に置き、ここに乗るようにと息子を促しました。Upload By べっこうあめアマミ目の前に現れた、別の色の床(紙)。息子はそこで気持ちが切り替えられたのか、先生がおいた紙に興味を持ち、その上に乗りました。そして、先生がさらにもう一歩前に紙を置くと、息子は新たに置かれた紙の上に進みました。息子が新たな紙の上に乗ると、後ろには戻らないように、さりげなく先生が後ろの紙を取っていきます。その後は先生の華麗な誘導と紙さばきで、どんどん前に進んでいった息子。床が気に入らなくて歩きたくないのなら、歩く場所として簡易的な「別の床」を作ってあげよう。この先生のアイデアのおかげで、無事息子は教室を出て、帰路につきました。Upload By べっこうあめアマミこだわりと上手につきあっていくために障害の有無にかかわらず、私たちは誰しも、何かしらのこだわりを持っているのではないでしょうか。そのこだわりを無理になくそうとしたり、本人の意思に反した動きを無理やりさせようとしても、お互いにイライラがたまってうまくいかないことは多いと思います。療育で、先生の見事な誘導により、息子がストレスなく自然と苦手な床の上を移動できたのを見て、私はこだわりを「なくす」のではなく「上手につきあっていく」大切さを感じました。そうはいっても現実は、同じ方法を使ってもうまくいかないこともありますし、どうにもならずに無理やり動かすしかないシーンは多々あります。それでも、できるだけ息子の気持ちを尊重し、親として息子のこだわりとつきあっていきたいと思います。執筆/べっこうあめアマミ(監修:藤井先生より)療育の先生のアイディアに至るには、べっこうあめアマミさんが、息子さんのこだわりに気づいていたことが大事だと思いました。急に道端で立ち止まったり、療育に参加しなかったりという状態だけを見ると、床の色にこだわっているという点にはすぐに気がつかない可能性もあります。息子さんの行動と、その状況を観察されたことで、こだわりの詳細な内容に気づかれたのだと思いました。その観察力が素晴らしいと思いました。こだわりを「上手につきあっていく」という視点で考えると、できる工夫が浮かんでくることがありますね。コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如・多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。SLD(限局性学習症)LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。
2023年04月24日親ばかりが焦る!自閉症息子の高校受験発達障害の専門家が出会った子どもや大人、その保護者の抱えていたリアルな「困った!」をもとに、対応策などをドキュメントタッチで解説します。今回は、自閉スペクトラム症(ASD)のある中学3年生と、その保護者のエピソードです。なかなか、わが子の志望校が決まらないとき、保護者にできることは…。Upload By 専門家体験談Upload By 専門家体験談Upload By 専門家体験談マンガ/NEGI解説:保護者が選択肢を持ち、子ども自身に決めさせることが大切今回は、自閉スペクトラム症(ASD)の中学3年生の「進路」を心配する保護者のエピソードをもとにマンガ化してお届けしました。「志望校が決まらない」という悩みは、高校受験においてよく聞かれます。保護者のみなさんは、次のポイントを押さえて、中学校の先生にも相談してみてください。1.選択肢を知る普通科高校(公立・私立)、専門学校(実業高校)、単位制高校、定時制高校、通信制高校、チャレンジスクール(4年制)、高等専修学校など、中学校に比べて多くの選択肢があり、教育システムもさまざまです。保護者が理解し、子どもと話し合えるようにしましょう。2.子ども自身に決めさせる複数の選択肢を与えるのは良いですが、最終的な決定は子どもに任せることが大切です。高校入学後にうまくいかないことがあると、「親が決めたからだ!」「本当は行きたくなかったのに!」と親に対して反発するケースもあります。また、子どもの希望した進路を否定してしまうと、「信用されていない」とショックを受けてしまう子どももいます。3.子どもと通う・学ぶイメージを持つ通学ルートをチェックする、オープンスクールで先生に話を聞いたり在校生や授業の様子を見たりすることで、実際に通うイメージを持つことができれば、ミスマッチを防ぎやすくなります。4.入学前後の合理的配慮の必要性について担任の先生と相談をする入試のときの面接や、みんなと同じ教室で試験を受けられないということが心配であれば、合理的配慮について中学校の担任の先生と相談しておきましょう。また、入学後の困難(口頭で言われただけでは課題の締め切りを守れない、感覚過敏があるなど)が想定される場合、高校生活を送る上での合理的配慮が必要かどうかについても話し合っていきましょう。5.入学後の転校も視野に入れる中学校で行き渋りがあった場合などは特に、入学した学校に通えなくなったときに備えて別の選択肢を保護者が用意しておくことが大切です。例えば入学した年の5月時点で数日しか通学できていない場合などは、通信制高校への転校なども視野に入れると良いでしょう。コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如・多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。SLD(限局性学習症)LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。
2023年04月18日小学3年生ごろから勉強についていけなくなったゆいは小さいころからおとなしい性格で、親や先生の指示も理解して行動できる子どもだったので、特に発達について心配だと感じたことはありませんでした。イヤイヤ期なども多分、一般的なものだったと思います。その証拠に、当時の私は母子手帳に『育児の不安:なし』と記入しています。ただ、人見知りが強い子どもだな、程度にしか感じていませんでした。低学年当時はまだ勉強が簡単なので周りについていくことができていたのですが、小学3年生あたりから、だんだんと成績が落ち始めていきました。ゆいが持ち帰ったテストを見ると、苦手な問題は考えた形跡がなく、白紙になっていました。この点は先生からも指摘を受けましたが、ゆいはどうやら最初からまったく取り組んでいないのです。それを見て、私は怠けていると感じ、腹立たしく思いました。Upload By 吉田いらこやる気がなさそうな娘に、母はイライラ…『やる気がない』というのは、ゆいが宿題をしているときに横で見ていても感じました。ゆいは分からない問題にさしかかるとフリーズしてしまうのです。無言で鉛筆が止まり、そのまま時間がながれていきます。私が「どこが分からないの?」と聞いても、ゆいは固まったままです。多分、どこが分からないのか説明することもできないくらい分からなかったのだと思います。そんなゆいに勉強を教えていると、私はどうしてこんな簡単なことが分からないのだとイライラしてきてしまいました。そして自分でも分かるくらいに教えている口調がだんだん冷たくなっていってしまい、最終的にゆいがポロポロ涙を流してしまいました。Upload By 吉田いらこ今振り返ると、ゆいにとって問題が難しすぎたということもありますが、私もどうやって教えればゆいが理解できるのかが分からず、教えながらイライラしていました。そうしているうちに勉強の時間がつらくなってしまったことも、ゆいの勉強に対する意欲がなくなってしまった原因ではと思います。小4のとき、ついに成績表で1が…。そして、軽度知的障害があることが判明そしてとうとう小学4年生の2学期終わりに、3段階の成績表で1がつきました。このままではゆいも私もつらいと感じ、プロに任せることにしました。個別指導塾に申し込みをしたのです。塾では1学年下の問題をじっくり教えていただいています。その後、小学5年生のときに軽度知的障害の診断がおりて特別支援学級のお世話になるようになり、学校でもゆいに合った簡単な内容で指導してもらえるようになりました。成績評価も通常学級の進度に合わせるのではなく、特別支援学級で学んでいることの成績として採点していただいています。Upload By 吉田いらこ特別支援学級で学ぶ現在は…現在のゆいは当時を振り返って「3段階の成績表で1がつくのは職員会議ものらしいよ。私ってヤバかったよね」と自嘲しますが、これくらい軽く言えるようになってよかったなと思います。あのまま通常学級でついていくのが難しいままだと、もっとつらい思いをさせてしまっていたかもしれません。小学5年生のときに障害の診断が下りてから、小学校での目標は『楽しく学校に通う』に決めました。特別支援学級の力を借りて、なんとか勉強のつらさを減らすことができたのではと感じます。中学校ではどのようなことが起こるか分かりませんが、本人の負担を減らしつつも周囲とうまくやっていく方法を親子で見つけていけたらなと思っています。執筆/吉田いらこ(監修:新美先生より)知的な面での困難さがあると、学校での一斉学習では大変さがでてくるかもしれません。初めのうちは、勉強を嫌がる態度で現れてくることも多いので、一見すると「なまけている」「さぼっている」「やる気がない」といったようにとらえられてしまうことも多いです。子どもは、学校という場で、怠ける・さぼるということはほぼめったにないので、学業に手がついていない様子が見られたら、分からないのか、やり方がお子さんに合っていないのか、心のゆとりがなくなっているのか…なにか理由があるかもしれないと探してみるといいですね。吉田さんの娘さんのエピソードを聞かせていただきありがとうございます。知的障害があると分かるまでは、親子ともども困惑したり、大変な日々だったかと思います。でもその後お子さんに合った学習をされていることで、お子さんも自分の大変だった時期を冷静に振り返ってコメントができるぐらいになっているのはとても素敵です。コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如・多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。SLD(限局性学習症)LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。
2023年04月07日「生活費がなくなったから貸して」「保険証がない」一人暮らしをしている発達障害息子発達障害の専門家が出会った子どもや大人、その保護者の抱えていたリアルな「困った!」をもとに、対応策などをドキュメントタッチで解説します。今回は、自閉スペクトラム症(ASD)と軽度知的障害のある社会人のケースです。会社に勤めて一人暮らしをしているのですが、保護者の悩みは尽きなくて…。Upload By 専門家体験談Upload By 専門家体験談Upload By 専門家体験談マンガ/カタバミ解説:支援制度の特徴を理解し利用を検討、外部との接点を増やすことも大切今回は、自閉スペクトラム症(ASD)と軽度知的障害があり一人暮らしをしているわが子を心配する保護者のエピソードをもとにマンガ化してお届けしました。このケースのように、就労し一人暮らしをしている場合、「自立してくれてうれしいけれど、何かあるたびに親を頼るのでこれからのことを考えると心配」という保護者の方もいらっしゃるかもしれません。特に、お金の管理や手続き関係、重要物の紛失などはサポートが必要な場面もあるでしょう。ここでは3つの支援を簡単にご紹介します。1.社会福祉協議会の日常生活自立支援事業今回のマンガでご紹介した制度です。社会福祉協議会に連絡し、相談・打ち合わせ、支援計画の作成などを行い、契約・サービス開始となります。日常的なお金の出し入れ、契約手続き、通帳やハンコの預かりなどの支援を受けられます。2.自立生活援助自立生活援助は、2018年4月より新たに創設されました。障害のある人が一人暮らしを始めたときに、定期的な巡回訪問などを受けながら生活や健康、必要な手続きなどについて助言や支援を受けられるサービスです。まずは市町村の福祉窓口に相談します。標準利用期間は1年間ですが、さらにサービスが必要な場合は、市町村審査会の個別審査を経て、複数回の更新が認められます。3.成年後見制度障害者や高齢者など判断能力の乏しい人の法律行為や契約をサポートする制度です。すでに判断能力が不十分な場合の法定後見と、判断能力が不十分な状態になったときに備える任意後見があります。どのような制度があるのかあらかじめ知っておくことが大切です。また、地域とのつながりを増やすために、余暇活動に参加する、民生委員に早めに相談する、など外部との接点を増やしておくことをおすすめします。厚生労働省|日常生活自立支援事業コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如・多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。SLD(限局性学習症)LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。
2023年04月03日「あるような、ないような…?」小さかったころのコウのこだわりUpload By 丸山さとこ自閉スペクトラム症(ASD)の特性として主にあげられるものに、『対人関係や社会的なやりとりの困難さ』と『こだわり』があります。ですが、ASDがある息子コウについて改めて振り返ってみると、特定の大きなこだわりはパッと思いつきません。夫に聞いてみると、「こだわりは何かあった気がするんだけど、コレっていうのは思い出せないな…?」と首を傾げていたので、やはり印象に残るほどの大きなこだわりはなかったのかもしれません。にもかかわらず、なぜか私も夫も「こだわりはなかった」「こだわりに関して手を焼いたことはない」とは言えませんでした。『こだわりに関して何かあったはず』という感覚ははっきりしていたからです。具体的なエピソードは思い出せないのに『何かあった感』だけが心に残りモヤモヤしていると、うっすらと記憶がよみがえってきました。コウのこだわりで手を焼かないために、私と夫は可能な範囲で「ルーティーンになったら困ること」を避けていたのです。コウは、小学校低学年のころまでは特に『コウの中でルールとして定まったこと』へのこだわりが強くありました。それは大体において地味でささやかなものだったため、私と夫の記憶から抜け落ちやすかったのかもしれません。けれど、「当時の私と夫を振り回すには十分な『こだわり』だったな~!」と思います。ルールへのこだわりが強かったコウでした例えば、コウが保育園児のときのことです。水遊びのために靴をサンダルに履き替えさせようとしたら、靴を脱がせる段階で「くつをはかなきゃいけないんだよ~!」と泣いて抵抗され、暴れるコウを相手に汗だくになったことがありました。Upload By 丸山さとこそんな彼を取り押さえながら「サンダルに履き替える途中だから!水遊び用の靴にしよう!!」と言ったところで「『水遊びのときは必ず水遊び用の靴に履き替えないとパニックになるヤバイ前例』をつくってしまったのでは?」と気づいて、私はゾ~ッとしました。その程度には「コウの中でこだわりやルーティーンが新しく決まってしまうこと」に慎重になっていたのだな…と、今思い返して改めて気がつきました。改めて思い返さないと『慎重になっていたこと』に気づかないくらい、当時の私と夫にとって『コウのこだわりが強化されないように気をつけて過ごすこと』は当たり前だったのだと思います。『些細だけれど生活の中で困るこだわり』を避けるために気をつけていたことの一つに、『同じ道を通らない』というものがありました。同じ道を通っていると、それがルーティーンとして定着することがあります。例えば、いつも保育園への最短ルートを通っていたのですが、工事やコウが苦手なクモの巣を避けるためなどルートを変更しようとすると、コウは「保育園に行くのはこっちだよ」と言い中々動きませんでした。工事中の道に対しては看板を読み上げてコウに伝えたところ、ルートの変更を受け入れてくれました。『看板の指示に従うルール』がルーティンより優先されたのかもしれません。また、ルーティーンの変更を余儀なくさせるほど強かったクモの巣への恐怖心に対しては、コウが自ら『図鑑で知識を得る』という方法で解決してくれました。Upload By 丸山さとこある日、クモの巣をじーっと見つめていたコウは、「クモの巣はたて糸とよこ糸で性質が違う。よこ糸はくっつくけどたて糸はくっつかない。クモはたて糸の上だけを歩くので、自分の巣にくっつくことなく動くことができる」と言ってクモの巣の横を通過しました。看板や図鑑などの文字や絵図による知識は、コウにとって信頼できるものなのだな…と感じた出来事でした。こだわりで生活上困らないために心がけていたことそうして「いつものルートへのこだわりが出ると困ることもあるのだな」と気づいてからは、ときどき別の道を通って登園するようにしました。いろいろなルートを通ることにより、コウが「ほかの道でも大丈夫」と知ってくれたらいいなと思ったからです。また、コウにとって心地よいことや安心できることを探しつつ、その種類を増やすべく新しい物や行動を取り入れたり提案したりするようにしていました。こだわりの対象以外に『心地よいことや安心できること』が増えると、コウも楽なのではないか?と考えたからです。そうして選択肢や変化を取り入れようとしていた私でしたが、同時に『選択肢を絞ることや変化が少ないこと』はコウにとって安心につながるのだということは覚えておくようにしていました。Upload By 丸山さとこそれを特に強く意識させられた出来事がありました。コウが小学4年生のころ塾の説明会に親子で参加したときのことです。講師の方から「勉強をすると選択肢がたくさんになるね。勉強をしないと少なくなる。どちらがいいと思う?」と聞かれたコウは、「勉強をしない方がいいです」と答えました。「選択肢が多いのは不安だから、『これしかない』って方が安心できます」と言うのです。その理由を聞いて、私は「なるほど…コウらしいな」と納得しました。「選択肢を広げることは、コウの負担を減らすこともあれば増やしてしまうこともあるのだな」と改めて思った出来事でした。また、こだわりに関しては「大きく困らないこだわりはそのままにしておく」という方針も持っていました。例えば、前述の『クモの巣を見ると始まるコウの解説』はクモの巣を怖がらなくなってからもしばらく続きましたが、「解説を聞くだけでOKならいいか」と思い、毎日「そうだね」と相槌を打っていました。コウがクモの巣という存在を受け入れるのに必要な時間だったのか、単に飽きるまでの時間だったのか…3ヶ月ほど続いたころ、そのクモの巣解説の儀式はスーッと消えていきました。Upload By 丸山さとこ「大きく困らないこだわりであれば安心のもとになるからいいのかな?」と考えて長い間続けたルーティンには、『お弁当の中身を変えない』というものもありました。コウのお弁当は、長い間「特定のメーカーの特定の1商品のミートボール・たまごやき・ブロッコリー・菜飯のおむすび」からほとんど変わっていません。自宅で食べられるものが少し増えてからは違うおかずを入れたこともありましたが、食べたり食べられなかったりしているうちに自宅でも食べられなくなることがありました。Upload By 丸山さとこコウにとって、園や学校行事でお弁当を食べるときは、遠足や運動会など『日常ではない特別なイベント』が行われているときです。そんな日は『いつも通りのお弁当』があることが何かしら安心につながるのかもしれません。当時のコウが何を考え何を感じていたのかは分かりませんが、「多分、残さず食べられるお弁当がコウにとってはよいお弁当なんだろうな」と思い、変化のないお弁当をつくるようにしました。中学生になった現在はウインナーもハンバーグも唐揚げも野菜炒めもムシャムシャ食べるコウですが、今でも定番のおかずは飽きないと言います。そんな風にこれまであれこれと対応を考えたり試行錯誤をしたりしてきた私ですが、大体の『コウの困りごと』に対しては、伝家の宝刀『成長を待とう』で見守ることにしています。「いやいや、これは見守ってる場合じゃなくない!?」ということも多々ありますが、できる限りの対応をしたあとは、もう見守るしかないことがほとんどだなと感じます。Upload By 丸山さとこ医師やスクールカウンセラーに相談をしても「本人の成長を待つしかないですね…」「前頭葉の発達待ちですね…」と返ってくることは多く、実際にそうなのだろうなと思いつつ薄目でコウを見守ることはしばしばです。これからも環境を整えたり周囲に相談したりしつつ、『こだわり』などのコウの凸凹と付き合っていけたらいいなと思っています。執筆/丸山さとこ(監修:藤井先生より)丸山さとこさんが、コウさんのこだわりと強化しないように、試行錯誤された様子がとてもよく伝わってきました。薄目で見守るという表現、とても良いですね。お子さんのペースを大切に、そのときを待つしかないといことはよくあります。こだわりを緩められるように対応できるところはしながら、あとは待つのみです。両目を大きく見開いて見ることでいろいろ気にして、焦りからお子さんのペースよりも先回りの、声かけ、手をかけることより、ときを待つのはもどかしいと感じる部分もあるかもしれません。遠回りに思えるかもしれませんが、お子さんの育ちを信じて待つ、とても大切ですね。コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如・多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。SLD(限局性学習症)LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。
2023年04月01日「世界自閉症啓発デー」とはUpload By 発達ナビニュース2007年の国連総会で、毎年4月2日を「世界自閉症啓発デー」とすることが定められました。国連加盟国では、自閉症(自閉スペクトラム症/ASD)についての理解が進むように意識啓発の取り組みを行うよう求められています。日本では、4月2日から4月8日は発達障害啓発週間となっています。自閉症(自閉スペクトラム症)についての認知は、日本でもここ最近高まってきています。しかし、今もなお偏ったイメージを持っていたり、正確ではない情報が存在しています。自閉症(自閉スペクトラム症)の研究は現在も続いていますが、はっきりとした原因はまだ特定されていません。何らかの脳機能の障害であると考えられており、しつけや愛情不足など育て方が直接の原因ではないといわれています。自閉症(自閉スペクトラム症)のある子どもは、さまざまなこだわりを持っていることが多いです。また、感覚過敏や感覚鈍麻などの特性がある場合も多くあります。そのため、育てにくさを感じたり、適切な接し方が難しいと感じる保護者も少なくありません。しかし周囲の自閉症(自閉スペクトラム症)についての理解や支援が十分であれば、自閉症(自閉スペクトラム症)があっても住みやすい環境で、その人らしく充実した生活をすることができます。「世界自閉症啓発デー」は、この社会で、多くの人が自閉症(自閉スペクトラム症)への理解を深めることで、自閉症(自閉スペクトラム症)のある人を含めたすべての人が過ごしやすい世界を実現していくための日です。「世界自閉症啓発デー」には、シンボルカラーがあります。「癒やし」や「希望」などを表すブルーが、その色です。毎年4月2日は、ナイアガラの滝やピラミッドなど、世界中のさまざまなランドマークが青に染められ、また青い服を身に着けるなどの青をテーマにした啓発イベントが各国で行われます。日本でも、東京タワーやスカイツリーをはじめ、各地のシンボルとなっている建物などが、例年、青く染め上げられています。SNSを「ブルー」にそめよう!Warm Blue2023キャンペーンUpload By 発達ナビニュース4月2日には、シンボルカラーである「青い」ものを身に着けたり、ブルーにデコレーションした施設などの写真をSNSに投稿してみませんか?以下のハッシュタグをつけてぜひ投稿してください。#自閉症啓発デー #WB_2023 #2023TT #LIUB #発達ナビ投稿したブルーの写真やメッセージは、下記のSNSアカウントなどでシェアされる予定です。東京都自閉症協会twitter東京都自閉症協会facebook Blueギャラリー | 東京都自閉症協会発達ナビ連載陣にも「青」をテーマにイラストを描きおろしてもらい、SNSで発信中です。青いイラストとともに、みなさんのメッセージを添えて、ぜひシェアをしてください。多くの人たちにメッセージを伝えてみてほしいと思います!4月2日、さまざまなイベントが開催!2023年4月2日は、オンラインで、さまざまなブルーアクションを紹介する生配信が企画されています。日本各地の当事者団体や賛同する企業などの取り組みに注目です!日時:2023年4月2日17:30配信スタート(予定)司会:不破ふわお、東海林杏朱ゲスト:東ちづる、天道清貴ほか2023も企業や自治体、当事者団体、自閉症のある仲間たちなど、さまざまな参加を予定しております。また今年はウクライナ・ヘルソンの自閉症のあるご家族の団体が、世界自閉症啓発デーに向けて動画を寄せてくださったそうです。ぜひご覧ください。参考:ウクライナから届いた動画| 東京都自閉症協会参考:東京都自閉症協会コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如・多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。SLD(限局性学習症)LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。
2023年03月29日もうすぐ年長なのに…自閉スペクトラム症(ASD)と知的発達症のある子ども発達障害の専門家が出会った子どもたちや、その保護者の抱えていたリアルな「困った!」をもとに、対応策などをドキュメントタッチで解説します。みなさんは音楽療法やホースセラピーをご存じでしょうか。今回は、自閉スペクトラム症(ASD)と知的障害のある子どものエピソードをお届けします。Upload By 専門家体験談Upload By 専門家体験談Upload By 専門家体験談解説:医療と連携した療育の重要性、音楽療法とホースセラピー(乗馬療法)今回は、自閉スペクトラム症(ASD)と知的発達症のある子どもの癇癪やパニック、人に向かって物を投げるなどの他害、発語や身辺自立に悩む保護者の視点でお届けしました。知的発達症のある子どもは、赤ちゃんのころから筋肉の緊張が弱い「低緊張」が多く見られます。神経発達症(発達障がい)や知的発達症がある子どもを、療育に通わせている保護者の方も多くいらっしゃることと思います。大切なのは、医療と連携した療育を行い、定期的な診察を行って療育の効果を確認することです。同時に、私たち医師や療育に携わる人たちは、お互いに連携し合い、最新の知識を取り入れることが大切です。今回ご紹介した音楽療法やホースセラピーの期待される主な効果は次のとおりです。音楽療法・情緒の安定や自己コントロールを促す・コミュニケーションやソーシャルスキルトレーニングになる・「音楽が終わったらやめようね」という声がけで「時間の感覚」や「切り替え」を身につけることにより、癇癪や人に向かって物を投げるなどの他害行動を抑える・片足立ちや平均台を歩くことで小脳を鍛えてバランスのいい姿勢がとれるようになる・小脳を鍛えることでADHD(注意欠如・多動症)の症状改善にアプローチできるホースセラピー(乗馬療法)・人と馬が一体となって、馬の気持ちも考えて乗馬することで相手の気持ちを考えられるようになる・脳性麻痺やフロッピーインファント(※)の子どもも両側で支えながら乗馬することで、骨盤や体幹のバランスを鍛え良い姿勢がとれるようになる(※)筋緊張低下により、抱いたときにグニャグニャする乳児の総称
2023年03月21日自閉症のたつきくんは、家ではモリモリ食べるのに、発達支援センターの給食はまったく食べません。お母さんのNEGIさんはなんとか食べさせたくて、給食の時間だけ毎日通ってサポートしますが、たつきくんに変化はありませんでした。支援センターの先生とのやりとりで絶望的になることもありましたが、NEGIさんは諦めませんでした。ある日、じいじからもらった巨峰が家にあったので、NEGIさんは、たつきくんに差し出しました。けれども見たことのない食べ物を見たたつきくんは、拒否。たつきくんは見た目で判断して食べないこともあることを思い出し、NEGIさんは巨峰の皮をむいてみました。しかし、たつきくんはやっぱり食べません。 ところが、巨峰の汁が口元にくっつくと……!? 初めて拒絶していたものを… ※乳幼児にミニトマトやぶどうなどの球状のつるつるした食品を丸ごと食べさせると、窒息するリスクがあります。4等分にカットするなどして、よくかんで食べさせることが大切です。 ぶどうジュースは大好きだけれど、見た目の問題で家ですら巨峰が食べられなかったたつきくん。しかし、NEGIさんが口元に当てた巨峰の汁をなめたたつきくんは、味はぶどうだということがわかり、その流れで舌でぺろぺろと味を確かめ始めます。 そしてこの日、拒絶していた巨峰を初めて食べることに成功。 NEGIさんはそこで、 「給食を食べたくないわけではなく、本当は食べたいんだ」「このやり方で進めていけば給食も、もしかしたら……!」 自宅でできることも、場所が違うとできなくなるというのがたつきくんの特性でもありましたが、NEGIさんは一抹の期待を寄せました。 そんな中、ついに給食にぶどうが出る日がやってきたのです。 「食べることができたという経験によって、ぶどうだけは他の食べ物とは違う存在になっているんじゃないか……?」 と仮説を立てたNEGIさんは給食の時間、たつきくんと1時間向き合います。 しかしたつきくんは変わらず食べません。それどころかその場にいなければ、「ぶどうだよー」という先生の話も聞いていません。 「でも今日は! 今日だけは!! 諦めるわけにはいかない!!」と決心しているNEGIさん。 以前家で巨峰を食べられたとき、自ら“舐める”という小さな行動に移せたことで、結果たつきくんがぶどうのおいしさを覚えたはずだと考えました。 そして、そんなぶどうは家庭で食べても給食で食べても同じ味。だから、たまねぎ園で食べられるようになるには、ぶどうは近道なはずだと、すがる思いでねばります。 たつきくんの口元にNEGIさんがぶどうを近づけたとき、ぶどうはするんっと口をすり抜けて入っていきました。そして、たつきくんはすぐに飲み込んでしまいました。 ぶどうを口に入れた、舐めた、飲んだ(食べた)という経験を通して、たつきくんの「給食を食べない」というこだわりは崩れていきました。こうして、この日を境に、「給食を食べたい」という気持ちが芽生え、少しずつ給食を食べるようになっていったのでした。 長い間、「給食を食べない」というこだわりを持っていたたつきくん。NEGIさんがいろいろな角度から物事を考えて行動に移し、それを通してたつきくん自身が体験・経験していくことによって、たつきくん「給食を食べない」というこだわりから解かれることができました。どうにか打開策を見つけたいという一心で、辛抱強く見守ったNEGIさんの努力に脱帽です。子どもごとに特性や性格は違い、解決までの道のりもそれぞれ違うと思います。NEGIさんのように、周囲にも相談して力を借りること、そしてよく子どもを観察して見守る姿勢というのが大事なのかもしれませんね。 著者:マンガ家・イラストレーター NEGI知的障害を伴う自閉症長男との日常漫画を投稿中。Instagramやブログを中心に、過去と現在の話や日々のおもしろ話を描いてます!
2023年03月08日自閉症のたつきくんは、家ではモリモリ食べるのに、発達支援センターの給食はまったく食べません。お母さんのNEGIさんはなんとか食べさせたくて、給食の時間だけ毎日通うことに。けれどもまったく食べないたつきくん。NEGIさんは不安に襲われてしまって――?先生方がいろいろな工夫をしてくれましたが、たつきくんは食べないまま時が過ぎました。そして1カ月ほどたったある日、大好物のスイカが! けれどもたつきくんは手で払いのけてしまいます。その姿に、漠然とした不安に駆られてしまうNEGIさん。そこへ追い打ちをかけるように先生がNEGIさんに声をかけてきました。 先生が放った言葉とは……? お母さん、これからどうしますか? たつきくんは感覚的な問題で食べられないのであって偏食ではないと考えているNEGIさん。 「ほかで食べられるのであればそれでいい」「健康に問題があるわけじゃないし」 第三者にそう言われるなら、そうなのかもしれないと思っています。 けれど、NEGIさんは、スイカが大好きなたつきくんを知っていました。だからこそ、好きな物を食べられなくする自閉症のこだわりが、ただ、にくらしかったのです。 どうにかいつも通り食べられるようにしてあげたいNEGIさんは、たつきくんにとっての不安要素を取り除こうと考えます。 しかし「給食を食べない」ということがたつきくんの中でこだわりとなってしまっているたつきくん。 NEGIさんは、 「このままおなかが空いても通園の3年間食べないままだったら」「小・中学生になっても続いたら」「このこだわりはいつまで続くの……?」 などとわからないことが多すぎて、漠然とした不安に駆られてしまいます。 食べられるようになんとかしたいけれど、どうしたらいいかわからなかったNEGIさんは、母親として情けないと思いつつ先生に相談することに。すると、そう思った矢先に先生から声をかけられました。 「お母さん、(これから)どうしますか?」 未来を絶たれたような気持ちになってしまったNEGIさん。どうしたらいいのか私が聞きたい、と絶望的になったのでした……。 補足を読むと、実際にはこの先生の声掛けには続きがあったようですね。そしてやさしい先生のようです。きっと、このときNEGIさんは不安に駆られていたあまり、先生から質問をされて、突き放されたような感覚になってしまったのでしょうね。声をかける側は、相手の状況や気持ちを察して、声のかけ方やタイミングなどの工夫が必要なのだと、考えさせられますね。 著者:マンガ家・イラストレーター NEGI知的障害を伴う自閉症長男との日常漫画を投稿中。Instagramやブログを中心に、過去と現在の話や日々のおもしろ話を描いてます!
2023年03月06日「クレーンではなく言葉で伝えてくれたら…」自閉スペクトラム症のある子どもの保護者発達障害の専門家が出会った子どもたちや、その保護者の抱えていたリアルな「困った!」をもとに、対応策などをドキュメントタッチで解説します。今回は、ほぼ発語がない自閉スペクトラム症(ASD)のある子どもとのコミュニケーションの悩みにまつわるエピソードです。Upload By 専門家体験談Upload By 専門家体験談Upload By 専門家体験談マンガ/taeko解説:クレーンも言葉も、コミュニケーション手段の一つーー言語聴覚士今回は、自閉スペクトラム症(ASD)のある子どもとのコミュニケーションに悩む保護者のエピソードをもとにマンガ化してお届けしました。発達障害のある子どもの保護者の方から「クレーンではなく、言葉で伝えられるようになってほしい」というご相談をよくいただきます。マンガでも描いていますが、大切なのは「クレーンも指さしも言葉も、コミュニケーション手段の一つである」という考え方です。ポイント1.今、子どもが手段としているコミュニケーションを受け入れるポイント2.子どものコミュニケーションについて、場面と手段を整理して、伝えたい意図を確認する例えば、場面:お腹が空いている手段:保護者の手を取って冷蔵庫の前に誘導するなど。ポイント3.指さしや発語といったコミュニケーションにつなげるために、同じ物を見て、ことばで伝えることや顔(表情や口形)への注目の機会を増やす同じ物を見て言葉を伝えたり、物を指さしながら名前をはっきり言って口の動きを見せるようにしましょう。ポイント4.絵カード等を活用することで、要求やコミュニケーションにつなげていくマンガのように、物が近くにない場合にも伝える手段として有効です。コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如・多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。SLD(限局性学習症)LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。
2023年03月06日自閉症のたつきくんは家ではモリモリ食べるのに、療育に通う発達支援センターではまったく食べません。食べてもらいたいと試行錯誤するお母さんのNEGIさん。どうにかして食べられるようにしたいNEGIさんは、漠然とした不安に駆られてしまい……。家では食べることが大好きなのに、発達支援センターでは給食を食べないというたつきくん。自分の目で見るまでは信じられないとの思いをもって、支援センターへ様子を見に行ったNEGIさんが目にした光景は……。 大好物のスイカなら…!? 給食を拒否し続けるたつきくんの様子を見にたまねぎ園へ通ったNEGIさん。家では食べることが大好きなたつきくんが、給食を拒否するなんて信じられなかったNEGIさんでしたが、実際に目の当たりにすることに。 たつきくんは、給食を食べるどころか、席にもついていない状態でした。 自閉症は、不安を抱いたり自信をなくすと、自分の中で落ち着くためのルーティンやこだわりが強くなったりするということを、以前医師から聞いていました。そんな状況をなんとか打開しようとNEGIさんは毎日たまねぎ園へ通うことに。 たまねぎ園は療育中、親も出入り自由で他の子どもたちも保護者が来ることには慣れている様子。そして、食事についての悩みがあるのはNEGIさん親子だけではないことがわかりました。NEGIさんが目の前にいる状態だと、席に座ったたつきくん。 これは食べてくれるんじゃないかと思うNEGIさんでしたが、30分以上ねばってもたつきくんが給食を食べることはありませんでした。先生は、たつきくんがいつも通り食べられるようにいろいろ工夫してくれました。しかし、食べない日が1カ月続き……。 夏を迎え、デザートにたつきくんの大好物スイカが出る日が訪れます。スイカさえ食べられたら、給食を食べる流れに持っていけるんじゃないかと希望を抱くNEGIさんでしたが、あえなく撃沈。たつきんはスイカを手で払い落としてしまったのでした……。 食事の時間はおいしく食べて、楽しく過ごしてほしいと、親としては思いますよね。NEGIさんとだったら家にいるような感覚に近くなって食べるのではないかと、NEGIさんは毎日支援センターへ通いました。しかし、たつきくんはどの食べ物も拒否。NEGIさんはチャンスと思った好物のスイカまではらいのけられてしまい、ショックだったのではないでしょうか。著者:マンガ家・イラストレーター NEGI知的障害を伴う自閉症長男との日常漫画を投稿中。Instagramやブログを中心に、過去と現在の話や日々のおもしろ話を描いてます!
2023年03月05日ADHDと自閉スペクトラム症(ASD)傾向のある娘わが家には、ADHDと自閉スペクトラム症(ASD)の傾向がある長女(現在は成人しています)と、重度知的障害がある次女がいます。今回は、長女の小学校での出来事をお話しします。長女は、発達障害の正式な診断は受けていませんが、小さいころからコミュニケーションが苦手で、「空気が読めない」ことがたびたびありました。次女と一緒に発達支援施設に通いながら、先生方に成長をサポートしていただき、地元の公立小学校の通常学級に入りました。行き渋りなどもなく元気に通っていたのですが…。小学5年生に進級したばかりのころ。担任の先生が授業の終わりに、「今日の授業がつまらなかった人は手を挙げてください」と問いかけたそうです。もちろん先生が冗談で言っていることを理解して同級生は誰も手を挙げなかったのですが、長女だけが素直に手を挙げてしまいました。それをきっかけに、担任の先生から無視をされるようになり、クラスの中でもいじめられるようになってしまったのです。Upload By ユーザー体験談中学校進学への不安、発達支援施設の先生に相談をするとなぜ、先生はそんな問いかけをしたのでしょう。小学校生活は残り2年あります。そして、このまま同級生たちと同じ公立中学校に進学したらどうなってしまうのだろうか…。不安で仕方がありませんでした。そこで、次女がお世話になっていた発達支援施設の先生に相談をしました。すると、「私立の中学校のなかには、発達障害などの特性がある子どもを受け入れていて、対応にも慣れている学校があるのではないか」とアドバイスをいただきました。「私立中学校という選択肢があるのか!」私たち夫婦は目からうろこでした。当時住んでいた地域には私立中学校がほとんどなく、中学校受験をすることなど考えたこともありませんでした。Upload By ユーザー体験談ただ夫婦で相談し、「このままではいけない」という思いに突き動かされて、急いで情報を集めました。今はインターネットで発達障害などがある子どもへの支援体制、保護者からの評判なども容易に調べられる時代ですが、当時は頼れるものといえば本のみ。塾も比較したりはできず、家から一番近いところに通うことにしました。あとから知ることになるのですが、中学校受験の準備を小5から始めるのは、かなりギリギリでした。それでも、長女がその気になってくれたのが救いでした。一緒に学校見学にも行って、「楽しそう!ここに通いたい!」と思えたことが、さらなるやる気を引き出してくれたように思います。Upload By ユーザー体験談中高一貫校に進学し、家族で引っ越しもそうして、なんとか中高一貫校の女子校に合格することができました。夫婦で心からホッとしたのを覚えています。それを機に、家族で引っ越しもして、まさに心機一転。つらい思いをした長女の環境を大きく変えることができました。進学した中学校の面談では、先生が「大丈夫ですよ」「同じようなお子さんもいらっしゃいますよ」と言ってくださったので、特性も含めて娘のことを受け止めてもらえているという安心感がありました。好きなことを見つけて大学にも進むことができ、6年間、長女を支えてくれた先生方や友達に感謝しています。Upload By ユーザー体験談もちろん、小学校のときも長女の特性を理解し、対応してくれた先生もいたのだろうと思います。ただ、本当に一つの出来事をきっかけに、学校生活が一変してしまいました。受験準備や引っ越しなど大変なこともありましたが、娘の話を聞いて早めの決断ができて本当に良かったです。その後は高校、大学受験をし、社会人となりました。現在も空気が読めないなどの特性はあるものの、支援を使いながらも家を出て生活をしています。これからも自立した生活ができるように、何かあるときには影ながらサポートなどをしていければと思っています。イラスト/taekoエピソード参考/booskaコラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如・多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。SLD(限局性学習症)LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。
2023年03月04日イギリスに住む夫婦に、2人目の赤ちゃんが誕生しました。赤ちゃんは女の子で、夫婦の息子さんにとっては妹ができたことになります。この日、息子さんが生まれたばかりの妹と初対面をすることになりました。息子さんは自閉症をもっているのだそう。両親は息子さんが初めて会う妹に対してどんな反応を示すのか、まったく予想ができなかったといいます。両親はその記念すべき瞬間を残そうと、動画を撮影することにしました。母親が待つ病室に入って来る息子さん。母親に会えたのが嬉しいのか、笑顔ではしゃいでいます。そこで母親が赤ちゃんを見せると、息子さんは…こちらをご覧ください。初めて会う妹の顔に優しくキスをした息子さん。愛情あふれる行動に、両親は驚き、涙ぐんでいます。母親が「あなたは妹のことが好きなのね」というと、息子さんは「そうだよ」というように、もう一度妹にキスをしました。親子の喜びは、動画を見た人たちにも伝わったようです。・お父さんが泣いているのが愛おしい。・なんて美しい瞬間。心温まる動画だ。・この子は赤ちゃんが自分の妹だと分かっているんだろうね。はしゃいでいた息子さんは、妹を見た瞬間に静かになり、ためらうことなくキスをしました。言葉で説明しなくても、赤ちゃんが自分の妹だと理解していたのかもしれませんね。こんなに優しいお兄さんがそばにいてくれたら、妹さんは幸せに成長していくことでしょう。[文・構成/grape編集部]
2023年02月24日発達障害の専門家が出会った子どもたちや、その保護者の抱えていたリアルな「困った!」をもとに、対応策などをドキュメントタッチで解説します。今回は、特別支援学校高等部に通う自閉スペクトラム症のある子どもの保護者が抱く、将来への不安にまつわるエピソードです。「卒業後が心配…」特別支援学校に通う自閉スペクトラム症(ASD)のある子どもの保護者Upload By 専門家体験談Upload By 専門家体験談Upload By 専門家体験談マンガ/カタバミ解説:特別支援学校卒業後の進路を検討する上で、「障害者手帳」「障害基礎年金」「家族会」がポイントに今回は、自閉スペクトラム症(ASD)のある子どもの特別支援学校高等部卒業後の就労や親なきあとを心配する保護者のエピソードをもとにマンガ化してお届けしました。このケースのように、特別支援学校卒業後の進路として就職を考えている場合は、一般就労(一般雇用または障害者雇用)や福祉的就労(就労継続支援A型または就労継続支援B型)について、事前に確認しておくことが大切です。そのほか、手帳の取得や障害基礎年金の受給についても調べておくと良いでしょう。ポイント1.知的障害がなく療育手帳を取得していない場合精神障害者保健福祉手帳を取得できる可能性があります。一般雇用だけでなく、障害者雇用枠に応募ができるなど可能性が広がりますので、一度かかりつけ医に相談してみることをおすすめします。ポイント2.障害基礎年金の受給について障害の状態などの受給要件が定められているため、「初診日や障害の状態を証明できる診断書」「障害者手帳」などを持って、年金事務所や市区町村の担当窓口で相談できます。なお、障害基礎年金における障害要件(障害等級)とは、障害の状態を分けたもので重いものから1級・2級・3級となり、1級・2級に該当すると障害基礎年金の受給が認められます。なお、この場合の障害等級とは、労災保険の障害年金のものとは違うものです。ポイント3.「家族会」に参加し情報交換をする「家族会」では、同じような悩みを持つ保護者のみなさんと交流し、情報交換をすることができます。一度探してみてはいかがでしょうか。コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如・多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。SLD(限局性学習症)LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。
2023年02月20日話すのは好きですが、言葉に詰まってしまうことも多いコウですUpload By 丸山さとこASDがあるコウは、オープンクエスチョンに答えたり言いたいことをまとめたりするのが苦手です。自分の思ったことやその背景を説明しようとすると「あの、えっと…それでさ?えーと…」と言葉に詰まることは珍しくありません。そんな彼ですが、小学校高学年あたりになると『発言の意図や背景を読むのが苦手なコウ』に慣れてきた同級生も現れ始め、会話の中でつまずくことがあっても周囲のサポートを受けられることも増えてきました。そのため、普段の生活の中であれば大きな困りごとは目立ちません。ですが、先生への連絡や相談など『言いたいことを明確にして相手に伝えなければならない状況』ではコミュニケーションがスムーズにいかず困ることもしばしばです。そんなコウですが、人に対して緊張することは特にないと言います。言う言葉が決まっていれば「言いたかったことを言えなくて悩む」などの困りごともないそうです。「単純に何て言ったらいいか分からなくて困る」とのことで、コウとしても『何とかできたらいいな』と思ってはいるものの中々難しいようでした。会話が苦手なコウに少し変化が…?そんな風に会話が苦手なコウでしたが、最近は診察や面談など苦手な状況でもスムーズに話せることが急に増えてきました。理由はいろいろあると思いますが、その一つはオンライン英会話だったのではないかと思います。コウは3ヶ月ほど前からオンライン英会話を始めたのですが、最初のころは「英語は得意なはずなのに、なぜ…?」と首を傾げたくなるほど散々な状態でした。Upload By 丸山さとこ何回か聞いていると、決まった型を練習したり読み上げたりするときはスムーズにできるものの、フリートークや予定にない質問に対して固まってしまっているようでした。「先生の言葉の意味は分かったが、何と答えればよいか分からない」という状況に固まってしまったコウは、先生にヒントを求めることもできません。その様子は『日常生活で会話に詰まっているときのコウ』そのままの姿で、「会話する能力っていろいろなところで必要になるのだな」と改めて感じました。そんなコウを見ていた夫が「これは英語力というよりも会話力だね…」と言うのを聞いて、私も「そうなんだろうな」と思いました。Upload By 丸山さとこそんなコウと会話しながら、先生の方も「言っていることは通じているっぽいのに黙ってしまうコウ」に対してどうすればよいか少し戸惑っているようでした。そんな状態のレッスンを数回続けたコウは、「英語勉強したのに、全然話せない…」と落ち込んでしまいました。すっかり自信をなくしてしまったコウを見て「無理をする必要はないけれど、このまま英会話に苦手意識を持って終わるだけではもったいないかな?」と思った私は、以下のような返答のパターンをコウに提案してみました。・言われたことが分からないときは、「もう一度お願いします」「どういう意味ですか?」と聞いてみるのはどう?・すぐに答えられないときは、「少し待ってください」って言ってから考えると、先生も安心できるしコウも落ち着いて考えられるかも。・それでも分からなかったときは、「分かりません」ってそのまま言ってみよう。これらの提案を聞いた、コウは「それいいね!」と喜んで採用しました。そして、自分からも「〇〇って言い方はどうかな?」といくつか返答のパターンを考えて紙にメモしていきました。Upload By 丸山さとこその後、実際にそれらの返答パターンを使って会話を進められるようになったコウは、何と答えていいか分からないときも軽く「分かりません」と流せるようになりました。そんなコウの様子を見て、先生も「OK、じゃぁこれはどう?」と違う聞き方や話題に移りやすくなったようでした。傍目から見ても会話が弾むようになり、コウは「今日もいろいろ話せたよ!楽しかった!」とレッスンを終えることが増えてきました。今では「次のフリートークでは先生にこれを聞いてみたい!」とオンライン英会話を楽しみにするようになったコウは、多少会話に詰まることがあっても「次はこうやって話そうかな?」と凹まずに対策を考えるようになってきました。「無理強いすることにならないように、ほどほどのところで『しばらくお休み』も提案した方がいいかな?」と内心ソワソワしながら様子を見ていた私だったので、英会話を楽しんでいるコウの様子を見てホッと胸をなでおろしました。好きなことは力をくれるし、きっかけになる(こともある)今回コウがオンライン英会話によって会話へ前向きに取り組めるようになったのは、まず彼にとって英語がそもそも『好きで得意なもの』だからなのだろうなと思います。よく言われることですが、『好きなこと』は力になるのだなぁと改めて実感しました。Upload By 丸山さとこまた、それと同時に「好きなことをエネルギーやきっかけにして頑張らせようと思ったら、頑張って疲れきった上に好きなことまで失くしてしまった」というパターンも起こりえるのだろうなと思いました。今回はたまたま上手くいきましたが、頑張ったけど上手くいかなかった経験により、英語が『好きなもの』から一転『苦痛なもの』になってしまう可能性も十分にあっただろうと思います。コウは、得意なことでも少しつまずいただけで「やらなきゃよかった…」と絶望して投げ出しやすい傾向があります。今回もオンライン英会話を始めるにあたって「思ったより難航したら英語嫌いになるかもしれないな~」と思いながら機会を提供したところはありました。Upload By 丸山さとこ英語に対してある程度の自信と向上心(上達したいという意欲)があったからこそ自発的に取り組めたのだろうと考えると、これを安易な『成功エピソード』として捉えた私や夫が2匹目のどじょうを狙ったところで、上手くはいかないだろうなと思います。これからも、新しいことに挑戦したコウが「好きな気持ち」と「上手くいかなくてつらい気持ち」の板挟みになることはたくさんあるのだろうと思います。そんなときは『もう少し頑張ったら何とかなりそうなのにな』という私の欲でコウの板挟みをギュウギュウと強めてしまわないよう、少し遠くから応援しつつ彼の凹みや葛藤を見守っていけるといいのかもしれません。その中で『上手くいかないコウの絶望モード』に巻き込まれそうになったら、そのときはちょっと離れたところから「好きなことに挑戦するのはいいことだと思うよ」「それができたコウは凄いと私は思っているよ」と伝えていきたいです。Upload By 丸山さとこ執筆/丸山さとこ(監修:鈴木先生より)自閉スペクトラム症の患者さんには具体的に話すことが必要です。「最近の調子はどう?」よりも「最近の学校の調子はどう?」、さらに「最近の学校の英語の授業はどう?」と言う方が分かりやすいのです。「それ取って」よりも「テーブルの上の赤いペンを取って」の方が伝わりやすいのです。聞く方も気をつけなければなりません。従って、最近はやりの「自学の宿題」も苦手になります。「英語ドリルの1ページの5番から10番までやりましょう」と言ってあげた方ができるのです。コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如・多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。SLD(限局性学習症)LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。
2023年02月20日多動だった太郎Upload By まゆん太郎が3歳のころの保育参加。太郎は教室内での催しの際、いきなり教室を1人飛び出して大好きなお兄ちゃんがいる年長クラスへ駆け出した。その行動は注意したからといっておさまるものではないとすぐに分かった。根本的に周りの状況を理解していないのが分かった。私は一応太郎のあとを追いかけたが、私にとめられるような多動ではなかった。その後、なんとか教室へ戻って来た太郎。だが。固まる太郎Upload By まゆん次は保護者と子どもがペアになりスキンシップをとりながら運動をするという時間があった。私のところに太郎が来ないので私はポツンと座っていた。太郎はというと長机の下に隠れて黙って教室のみんなを見ていた。呼んでも、手招きしても出てこない。私とも目を合わさない。ずっと教室にいるたくさんの人をみていた。そしてそのまま固まって動かなかった。そんなとき、私の膝に保護者が保育参加に来ていない園児が座りに来た。それでも太郎は私のことを見向きもしない。Upload By まゆんつらかった。なぜつらかったのだろうか。明らかに周りと違う太郎をまだ受け入れられていなかったのかもしれない。周りとの違いを目の当たりにし衝撃を受けたのは事実であった。そして「ひとり」を感じる私がいるのに、私の存在がないかのような様子の太郎を見るのもきつかった。あまりにもつらく、当時夫に「保育参加に一緒に参加してほしい」と言ったが、夫は1度も参加することはなかった。さらに「ひとり」を感じた。Upload By まゆん感情があふれた瞬間保育参加は4ヶ月に1回ほど行なわれていた。別の保育参加の日も、太郎は変わらず自分のペースで動いていた。もうつらくて私も呆然としていた。そのとき。「太郎ちゃんママ、大丈夫?」声を掛けてくれたのはママ友だった。誰にもこのつらさを伝えられてなかったのにママ友は気づいてくれた。自分の子どもが可愛いくて、夢中で見ていたいはずなのに私のことを気にかけてくれた。Upload By まゆんそんな声かけに一気に涙があふれた。「大丈夫じゃない」「だよね、つらいよね」Upload By まゆん太郎は4歳のときに、自閉スペクトラム症の診断がおりました。3歳のころは「発達障害ではないか」という不安を感じていたものの診断前だったので周りの人にも伝えられておらず、というかまだママ友らしき人もほぼいない状態だったので相談する相手もいませんでした。みんな働いている保護者だったこと、交流の場が少なかったことも要因だったと思います。今回の「大丈夫!?」の声かけは忘れられない言葉の一つです。この一言は私をいっきに癒すものとなりました。「ひとり」を感じて、自分でもわけが分からなくなっている感情を表に出させてくれたものとなりました。その後、保護者との交流も自然と増えていき太郎について理解をしてもらうきっかけが多くなりました。そうなることで私の気持ちも楽になり、保育参加へのつらさも次第に軽減されていきました。保育参加へのつらさの原因はなんだったのか…今振り返ってみると、ほかの園児と違う行動をする太郎をどんな風にみたらいいのか分かからなかったからだと思います。どんな風に対応したらいいのか悩みました。保護者として「おちついて」と注意しなければという問題でもないし、でも周りは「なんであのお母さん自分の子どもなのに注意しないの?」なんて思われてないだろうかとか。太郎を見る目、周りの目、いろいろと悩む時期でした。(執筆/まゆん)(監修:藤井先生より)ママ友からの問いかけに「大丈夫じゃない」と言ったまゆんさんの言葉は、悩んでいるまゆんさんのSOSだったのかもしれませんね。そこから、少しずつほかの保護者さんとの交流も増え、保育参加のつらさも軽減されてよかったですね。保育参加、運動会見学、お遊戯会を見るのがつらいという相談は発達外来でもよく聞かれます。周りからどう見られているかという不安、パートナーが一緒に育児をしてくれない寂しさ、子どもの特性を受け入れいれられない自己嫌悪など、さまざまな感情が混ざっていて、親御さん自身でもどうしたら良いのか分からないということもあると思います。今回はママ友と話すことをきっかけに、感情を表に出すことができ、ご自身の気持ちの整理が少しついたのかもしれませんね。パートナー、友人、園の先生、療育先のスタッフ、主治医などに、お子さんを見ていてつらいことを話すことで、親御さん自身の気持ちが整理できて、一歩前に進むことができることがあります。コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如・多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。SLD(限局性学習症)LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。
2023年02月20日初めての場所が苦手な自閉症と知的障害のある長男。実父の他界で葬儀へ…わが家の中2の長男は3歳のときに、自閉スペクトラム症(ASD)と知的障害の診断がおりました。長男は社会性の部分が特に低く、未就学児時代は同居する家族以外の人に興味がなく、「他人は空気」のような様子でした。また、初めての場所に入ることがとても苦手で、知らない人が多い場所ではパニックを起こすことがほとんどでした。長男が6歳のころに私の実父が他界しました。私は次男(当時3歳)を連れて、夫たちより一足早く向かい、葬儀場で身内として準備や来客対応などに追われていました。夫は長男を連れて義実家へ向かい、義両親と義妹をピックアップして、車で1時間かけて葬儀場まで来てくれました。しかし、長男は葬儀場に着くやいなや、いつもと違う場所・いつもと違う雰囲気を察して葬儀場へ入れず、駐車場にひっくり返って暴れて大泣き…。今、落ち着いて考えてみれば、初めての場所、たくさんの知らない人、長男がパニックを起こしてしまうのは当たり前です。Upload By ユーザー体験談葬儀場という場もあり、周りの人の目も気になります。泣き暴れる長男をそのままにもしておけないと、夫と義父は無理矢理にでも葬儀場に入れてしまえば何とかなると考えたようで、長男を抱き上げて力づくで連れて行こうとしました。そのときです、長男たちの様子を見ていた私の母が「やめて!」と悲痛な声で叫びました。泣いている孫を無理矢理葬儀場へ連れていくのが見るに耐えなかったのでしょう。母は「私はこの子の気持ちが大事。このままお葬式に参列してもきっと慣れない環境でまたパニックを起こしてしまいます。そこまでして葬儀に参列させなくていいから…。せっかく来ていただいたのに本当に申し訳ないけれど、この子のためにも、この子を連れて今日は帰ってもらってもよいでしょうか」と夫の両親に伝えました。Upload By ユーザー体験談実母は昔からよくわが家に遊びに来てくれていたこともあり、息子の様子もよく分かっていました。障害について理解し受容しており、孫として普段から普通に接してくれています。息子は実母にも、ときどきペットボトルの飲み物を床にわざと撒くなどのいたずらをしていました。そんなときも実母は、一方的に怒ることはせず、淡々と「やりません」とだけ言って片づけてくれていました。そんな実母です。孫の切実な声を聞いたときの実母の思いを推し量り、私はなんとも言い難い胸が痛いような、実母の思いが心の奥底まで沁みてくるような気持ちになりました。そしてまた、実母の心からの声を聞いた気がしました。実母としてもせっかく来てくれた夫の両親への申し訳なさなどももちろんあったと思います。ですがそんな中でも長男のことを1番に考えてくれたことを私はありがたく思いました。長男は帰れると分かったらすっと泣き止みケロりとした表情で車に乗り込んでいました。義両親、夫、一緒に来てくれた義妹も「こんなに人数がいるのに、何の役にも立てなくてすみません」と母の思いを受け入れてくれて、高速道路を使って1時間かけて葬儀場に来てくれましたが、私と次男を残し、長男を連れてとんぼ帰りとなりました。Upload By ユーザー体験談実父の、孫を思う気持ちを感じて亡くなった実父は初孫ということもあり、長男のことをとても可愛がってくれていました。長男は小さいころから癇癪をよく起こしていましたが、父はそれを見て「じいちゃんに勝てると思うなよー」と言いながら長男をよく抱えてくれました。亡くなる1週間前、電動の車椅子で長男が好きなあめを買うために外出をし、それが父にとって人生最期の外出となりました。最期まで孫のことを思ってくれたんだなぁとジーンとしました。Upload By ユーザー体験談正直、長男にも実父とお別れの挨拶をさせてあげたかったという思いもあります。ですが、実父も生きていたらおそらく「もういいよ、帰れ」と言うと思ったので、無理矢理お別れさせなくてよかった、と今は感じています。あのまま泣いて暴れる長男を葬儀場に連れていったら、ほかの参列者の方々の迷惑になっていたかもしれません。なにより、息子の負担にならずホッとしたというのがこのときの正直な感想です。このときのことを思い返すと、実父を亡くした喪失感や、葬儀の準備やいろいろな対応に追われてしまっていて、長男のことまでちゃんと考えることができていませんでした。前もって特性のことなどを考慮して「息子はきっとこうなるだろう」ともっと夫と予想と対策について話し合っていればよかったと感じます。後悔するとしたらこの点だけです。そして、実父の葬儀というのは、肉親はとても忙しく慌ただしく時間が過ぎていくので、親の葬儀はそういうものだと前もって知っておけたらまた結果は違っていたのかなと思いました。イラスト/keikoエピソード参考/あかし(監修:鈴木先生より)自閉スペクトラム症の子さんは初めて行く場所は怖いため入り口で止まることが多いです。以前にもコメントしましたが、冠婚葬祭や入学式など初めていく場所で行事がある時には前もってどういう雰囲気でどういうことをやるかビデオを見せて予習しておくとよいでしょう。我々が初めての場所に旅行へ行くときに写真だけでも見れれば安心するのと同じです。お葬式に出られなくてもあとで仏壇やお墓参りをすることで実父とのお別れはできると思います。パニックになったら場所を変えるのが得策だと思います。恐らくみんなが黒い服装だったので怖かったのでしょう。また、入学式や卒業式などで座っていなければいけない場所に行く場合にはポケットの中に安心できるグッズを入れておくのも一つの手です。コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如・多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。SLD(限局性学習症)LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。
2023年02月11日いろいろ習い事へ連れて行っても長続きしないまだゆいに障害があるとは気づいていなかった幼児期から小学校低学年にかけて、私はゆいをいろいろな習い事に連れて行っていました。水泳、クラシックバレエ、体操、合唱、硬筆…。本人が興味を持ったものから親のエゴで通わせてみたものまで、いろいろな習い事に挑戦したのですがすべて続きませんでした。私のエゴで通わせたものは続かなくても当然なのですが(本当に申し訳ないことをしました)、本人が行きたいと言って習い始めたものも、1ヶ月ほど経つと嫌がるようになり辞めてしまいました。もちろんどの習い事教室のメンバーも明るく迎えてくれたのですが、本人はなかなかなじめなかったようです。今思えば、すでにできあがっているコミュニティに入っていくということが、ゆいにとってはハードルが高く、緊張してつらかったのかなと思います。しかし本人も「やってみたい」と言ってしまった手前、1ヶ月ほどは辞めたいと言い出せずに堪えていたようなので、つらかっただろうなと感じます。Upload By 吉田いらこ小学2年生で習い始めた「バイオリン」そんな中、ゆいが「バイオリンをやりたい」と言ったのは小学2年生のころでした。それまで楽器系の習い事の経験がなかったのですが、テレビで演奏する人を見て興味を持ったようでした。私自身が吹奏楽部だったこともあり、音楽の習い事に興味を持ってくれたことがとてもうれしく、近所のバイオリン教室を探して見学の申し込みをしました。バイオリン教室は先生の自宅がレッスン場所で、完全個別指導でした。今思うとこの個別指導がゆいの特性に合っていたのでは、と思います。もしかしたら今まで続けられなかったほかの習い事も、個人指導タイプだと続けることができていたのかもしれません。Upload By 吉田いらこ障害のある子どもに理解のある先生との出会い初めて先生と対面したゆいは受け答えができず、YesかNoで首を振ることしかできませんでした。当時の私はゆいのことを人見知りが強い子どもだとしか思っていなかったので「この習い事も続かないのかな…」と心配をしていたのですが、実は先生は障害のあるお子さんを何人も受け持っており、子どもの特性に理解がある方で、ゆいに合った進度で指導をしてくださいました。時間はかかりましたがゆいも先生の問いかけに単語で返せるようになり、楽しくレッスンに通うことができるようになりました。この習い事はなにより個人指導ということがゆいにとって安心できる材料だったのかなと思います。ほかに生徒がいるグループレッスンだと緊張が強く通い続けることが難しかったかもしれません。ゆいの楽器練習の進度は一般に比べるとかなりゆっくりとしたペースです。けれど、少しずつできることは増えていて、とても楽しそうです。やはり「好き」に勝るものはないなと感じました。Upload By 吉田いらこ習い事を通して娘が手に入れたものこの習い事を始めて私が一番良かったと思うのは、ゆいが自信を持てたことでした。学校の勉強は難しいし、友達をつくることも苦手なゆいが学校以外の場所でイキイキと楽しめることを見つけられたのは、親の私にとってもうれしいことでした。今、ゆいには居場所が3つあります。自宅、学校、そして習い事教室。どこかで上手くいかなくなることがあっても、ほかの居場所があれば救われることもあるのではと思います。バイオリンを習い始めたことで、音楽がゆいと私の共通の趣味になりました。ゆいは今、私と二人で合奏することをとても楽しんでくれています。これからも音楽を通じて世界を広げ、人生をより豊かにしていってくれたらと願っています。執筆/吉田いらこ(監修:井上先生より)習い事がうまくいくかどうかは、子どもの興味関心だけでなく教室の環境的な要因、例えば、人数が多い、騒がしい、先生が厳しい…なども影響します。先生と1対1で学ぶ環境というのは、ゆいさんのお母さんがおっしゃる通り、非常に安心できると思いますが、厳しく叱責したりする先生は向いていません。ゆいさんが出会われた先生のように、本人のペースを尊重したり上手にほめたりすることで、まずは楽器の演奏を楽しくして、周りの子どもができないことを自分ができるという意味で、本人が自信をつけることができるのはとても良いと思います。みんなの前でお話がしにくい子どもでも、言葉の代わりに音楽で表現できるという点も、良いのではないでしょうか。先生や家族の前で演奏ができるようになったとしても、先に述べた環境的な要因から、大きなコンサートホールや初めての場所だと一気に不安や緊張が増してしまう場合もあります。無理せずスモールステップで、演奏する喜びを感じながら進められると良いと思います。コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的能力障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如・多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。SLD(限局性学習症)LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。
2023年02月09日自閉スペクトラム症(ASD)のある息子はゲームが大好き!自閉スペクトラム症(ASD)のある小3のミミ。最近は学校から帰ってきたらパパに見てもらいながらゲームをやるのにハマっています。パパにアドバイスを聞きながら楽しんでやっているけれど、パパは真剣故にミミに厳しくアドバイスすることもしばしば…。ある日、厳しすぎるパパの態度に泣いてしまったミミ。以前も同じようなことがあったので、私はそこまで気にせずに見守っていましたが、パパはその後ミミが飼っている虫にエサを与えていないことに気づき…さらに注意はヒートアップ!するとミミは泣きながら台所から果物ナイフを取り出し、自分の左手へ…今にも左手を傷つけてしまいそうな状況に私は慌ててナイフを取り上げ、「こんなことしちゃだめだよ」と言いミミを抱きしめました。ミミの代わりにエサやりをしているパパを見ながら「パパはミミに命を大切にできる子になってほしいんだよ」と伝えました。ですが、ゲームとエサやりの件でショックが重なり、ミミは涙が止まりません。Upload By taeko学校での不満を訴える姿に…とにかくミミを落ち着かせようとパパから離れた場所で抱きしめたまま話を聞くことに。するとミミからは「学校なんて役にたたない、行ってもしょうがない、なくなればいいのに」「勉強なんて嫌い」「生きててもしょうがない。生まれなければよかった」などと衝撃的な発言が次々と…。また、授業で発言をしているときにクラスメートに「は?何言ってるの?」と言われたことが悲しかったことも教えてくれました。(ミミは思ったことを周りの状況を見ずにどんどん話すので、その様子をクラスメートが指摘したのかな…?)しばらくなだめていたのですが、ミミのマイナス思考は止まらず…「もうみんなが話しかけてきてもあっちいけ!って言うんだ。友達なんていらない!」「生きていても仕方ない、ママとパパは結婚しなければ良かった」と言い出しました。流石にひどすぎると思って、私はミミを「そんなこと言っちゃだめだよ」と叱りました。私が怒ったことを察したミミは布団をかぶって静かにしていました。1時間ほど過ぎて、弟のふーが帰宅するといつものご機嫌なミミに戻っていたので安心しましたが…このままでは良くないと翌日私はこんなことがあったんです、と一連の事件を担任の先生に相談しに行きました。Upload By taeko担任の先生から話を聞くと担任の先生から話を聞くと、学校でのミミの様子を教えてくれました。体育の授業でドッジボールをやっていたときに突然動かなくなってしまったミミを見て先生は「みんなでやっているんだからやめたらダメだよ」と声をかけたそうです。しかしミミは味方が減って標的は自分だけ、ボールを自分から取りに行くのも怖いし、もう諦めたいという気持ちを抱いてしまい、早くボールに当たってゲームを終わりにしたかったようです。また、物事を悪くとらえて人やモノのせいにしたり、声が大きかったりするので女子から苦情が多発していました。そのこともあり女子が苦手なミミ。体育着に着替えるときに女子と目が合っただけで「おれのこと見てた!女子なんて嫌いだ!」と思ってしまったようで、体育の時間だけでもかなりのストレスがあるようでした。ミミに我慢はしてほしくない…。先生にお話しを聞いて、ミミも学校でいろいろな経験をしていろいろな気持ちを感じていて、また我慢していることもたくさんあることが分かりました。今回はパパとのゲームでのやりとりがきっかけで、ミミの普段から感じていることや我慢している気持ちがあふれたことで本音を聞くことができたけれど、悩んでいることや嫌なことがあったらもっと早く気づいてあげたいし、話してくれるような親子関係でありたいと思いました。とはいえ、今ミミが一番楽しんでいるのはゲームなので、またパパとトラブルになりそうだったら早めに間に入ってあげようと思いました。少しでもミミが家にいる間は安心して過ごせるような環境にしてあげたいです。Upload By taeko執筆/taeko(監修:初川先生より)ミミくん、家庭や学校で苦戦する場面が募っていたのですね。ナイフを手にしたとの展開にヒヤッとしましたが、それほどまでにつらいという気持ちをどうすることもできず、その気持ちの強さがそうした行動につながったのでしょう。ゲームのような楽しいとき、またクラスの女子たちとの関係など、おだやかな心持ちというよりも、良くも悪くもちょっと興奮度が高いようなとき、そんなときに、「ダメ」や否定するようなメッセージが入ると、まるで自分全てがダメのように被害的に受け取ってしまったということだと思います。そして、そうした強いネガティブな気持ちになった記憶というものはつながっているので、1つつらいことがあると、「あのときのあれも、このときのこれも…」と頭の中では芋づる式に思い出されてしまいます。パニック状態ともいえますが、そのように一旦思い出されてしまった嫌な記憶は、なかなか自分で収めることができなかったり、嫌な記憶を平然と思い出すことは困難で、嫌な記憶はそのときの気持ちを伴って思い出されるので、まるで今体験しているかのようなつらさを感じることになっていたと考えられます。応急処置的に、クールダウンとして、布団にくるまって過ごすなど、ほっとするようなことをできたのは何よりです。学校の先生にもお話され、学校での様子(苦戦する様子)が聞けたのは何よりです。調子が良くないときは、学校でも家でもうまくいっていないことが往々にしてよくあります。先生とコミュニケーションをとり、一緒に見守る体制が取れると良いですね。そして、嫌な気持ちに全くならずに生きていくことは残念ながら難しいです。いいこともあれば悪いこともあるのが日常です。我慢している気持ち、つらい気持ちをお子さんが話すことができるのは大切なことですね。その際に大事なことは、励ましたり、否定したりしないということです。嫌な気持ちを語ると、「そんなこと言うもんじゃない」「あなたにも問題がある」「大丈夫よ、そんなこと気にするんじゃないよ」と、大人が良かれと思って強めのメッセージを伝えてしまうことがあります。しかし、大事なのはそこではなく、まずは、嫌な気持ち、つらい気持ちを聞いて受けとめるということです。「そうか、それはつらかったね」「そんな嫌なことがあったら悲しくなっちゃうね」「話してくれてありがとう」。つらい気持ちをつらい気持ちのまま受けとめる。あなた(子)がそう思うのは自然なことで、その気持ちのままで大丈夫(怒っているなら怒っているで、悲しいなら悲しいで大丈夫)という心構えで受け止める。そうすることで、お子さんがつらかった話をまたしても大丈夫、お母さん・お父さんと話すと安心するという関係になっていきます。最後に、お父さんとゲームで真剣になるのは調子の良いときは良いかなと思いますが、うまくできないとき(心がちょっと弱くなっているとき)に真剣にダメ出しされるとつらくなりますね。親と子は対等な関係ではなく、大人は子どもよりも経験値が高い分、器用にできてしまうことがたくさんあります。そうしたそもそもの設定として、子どもはみじめな気持ちになりやすいので、そのあたり加味して、一緒にゲームで楽しめると良いですね。
2023年02月05日寝寝(@kelumaru_123)さんは、Twitterに自閉症の友人に描いてもらったという『似顔絵』を投稿しました。公開された作品には、18万件以上もの『いいね』が付き、こんな声が上がっています。「こういう人を、天才っていうんだよね」見る人を驚かせた、寝寝さんの『似顔絵』を、ご覧ください。自閉症の友人に似顔絵描いてもらったらこうなった。 pic.twitter.com/5G38g6v24J — 寝寝 (@kelumaru_123) January 24, 2023 異次元に迷い込んだかのよう…!一見すると、模様のようにも見えますが、クローズアップしていくと、たくさんの小さな顔が緻密に描き込まれています。一般的な『似顔絵』とは異なりますが、いろいろな表情や感情を描いた結果、この絵になったのかもしれませんね。作品を見た人たちからは、さまざまな感想が寄せられていました。・似顔絵の認識が違いはするが、細かくて面白い。見ていて飽きません。・ただただ、すごい!一つひとつの顔がそれぞれに空虚ながらも、どこか表情があるように見える。・鳥肌が立ちました。間違いなく天才ですね。感じられたことすべてを描いて表現できるって素敵。・全体をみると怖い雰囲気なのに、近付くと一つひとつの顔がかわいく見える。不思議な絵だな~。独特な世界観の『似顔絵』に、多くの人が圧倒されました![文・構成/grape編集部]
2023年01月30日義母を叩いてしまう自閉症長男に困ってしまい3歳のときに、自閉スペクトラム症(ASD)と知的障害の診断がおりた、わが家の中2長男。もちろん、義理の両親にもそのことはすぐに伝えました。義母は長男の診断を聞いて、最初は「障害はいつか治る」と思っていたようでしたが、今では孫の障害について、治るものではないと理解して受け入れてくれています。長男は人を見て態度を変えることがよくあり、特に悪いことをしても許されそうな人・怒らなそうな人に対しては叩いたり暴れたりなど、自分の思いを間違った方法で伝えてしまう一面があります。それは義母に対しても…優しい義母に長男も甘えていたようで、長男は義実家へ行くと常に義母に手を出していました。自分が手を挙げたときに、おばあちゃんが反応してくれるのが面白かったのか、叩きながらうれしそうにするのです。Upload By ユーザー体験談義母は「この子は困ったね」という感じで長男のことを警戒していたようですが、義母からは「うちに連れて来ないで」という言葉はありませんでした。長男が手を出したら「叩いたらダメ」ということは、諭してくれていたようでした。(義実家に行くときは夫と一緒だったので私は直接見たことはありません)長男が叩いた弾みで義母が転倒!そんなことが続いた長男12歳のある日、とうとう義母が長男が叩いたその弾みで倒れてしまったのです。幸いにも怪我などはなかったのですが、長男も12歳になり相当力が強くなっています。それ以来、夫は「(長男を)連れて行くと(義母が)危ないから」と言って長男を義実家には連れて行かなくなりました。Upload By ユーザー体験談義母は70代で若くないし、体も小さいので義母の身を案じてのことです。孫の顔を見せたいという気持ちより、長男は義母に必ず手を出すのでやめておいたほうがいいという夫の考えには、長男の気持ちを思うと残念な気持ちもありましたが、私も同感でした。しかし当の本人は義両親が好きなので、ときどき義実家に行きたがります。学校が休みの日に、「じいちゃん、ばあちゃん行く!」と泣きながら口にすることもありました。義両親に会わせてあげたいけれど、義母をまた叩いてケガをさせてもいけない…長男には我慢をしてもらうしかありませんでした。Upload By ユーザー体験談数年ぶりの義両親宅への訪問。長男の様子は…?そのままコロナ禍に入ってしまったということもあり、しばらく義実家に行くこともなかったのですが、今年のお正月、数年ぶりに夫が長男と次男を連れて義実家に行きました。夫と次男は、長男が義母に手を出さないよう予め言い聞かせたり、気をつけて見ていてくれたようで…そのこともあり長男が義母に手を出すことはなかったそうです!以前は長男を連れて行くことに反対していた夫も、今回の成長を見て、たまになら連れて行ってもいいかなと思ってくれたようです。そして義母も、先日電話で話をしたときに「孫はやっぱりかわいい。会いたい」と言ってくれていたので、コロナ禍などの様子を見ながらこれからも義両親に会いに行けたらいいなと感じました。Upload By ユーザー体験談そのためにも私たちは「事前にしっかり『おばあちゃんを叩かない』と言い聞かせる」「義実家では必ずそばで見守る」「義母に対してふざけそうな様子を感じ取ったら、義母との距離を離す、または家に帰る」などを心がけ、義母と長男が少しでも楽しい時間を過ごせるようにこれからもサポートをしていきたいと思っています。イラスト/SAKURA※エピソード参考者のお名前はご希望により非公開とさせて頂きます。(コメント:鈴木先生より)ダメなものはダメときっぱりと言い切ることが大事です。そして、我慢できたら褒めてあげることも重要です。こういう場面でもトークン法の「がんばりカード」などを有効活用してもいいでしょう。逆に「叩きたくなったら肩を叩いてあげようね」でもいいかもしれません。人を蹴る子どもにはサッカーを、棒で叩く子どもには野球や剣道をすすめるのと同じです。今回のお義母さんは叩かれて反応してしまいましたが、嫌なことをされた場合は、いい意味で無視することも一つの手です。周りの反応を見て楽しんでいる子どももいるので、なるべく反応しないようにすればいずれ飽きてやらなくなるはずです。
2023年01月28日「高校、別に行きたくないし」自閉スペクトラム症(ASD)のある子ども発達障害の専門家が出会った子どもたちの抱えていたリアルな「困った!」をもとに、子どもたちの状況を変えた対応策などをドキュメントタッチで解説します。今回は、フィギュアに夢中で、勉強に身が入らない自閉スペクトラム症(ASD)のある子どものエピソードです。Upload By 専門家体験談Upload By 専門家体験談Upload By 専門家体験談マンガ/NEGI今回は、自閉スペクトラム症(ASD)のある中学生のお子さんに関する「勉強の悩み」エピソードをもとにマンガ化してお届けしました。フィギュアやゲーム、アニメなどに夢中で、なかなか勉強に身が入らないお子さんは多く見られます。特に受験が近かったり、テストの結果が芳しくなかったりすると、保護者の方のご心配も大きいことと思います。今回のようなフィギュアなどの収集癖があるお子さんの場合、次のようなステップで関わることをおすすめします。1.子どもの興味・関心を否定せず、話を聞いて理解しようとする2.興味・関心を起点として関心の幅(視野)を広げられるようにきっかけを与え、進学についても目的を与えるようにする3.進学先については選択肢を提示し、子どもが選びやすい状態をつくる
2023年01月25日ASD息子とお笑いライブへ!?Upload By taekoASDのある小3ミミ。最近は動画サイトで関西弁を少し覚えて家や学校でも使っていました。ミミは関西弁に興味がある?それなら…!と本物の関西弁を体感させたいと思い、お笑いライブに連れて行こうと計画!早速1ヶ月後にあるお笑いのチケットを取りました。ライブ当日。ミミがきっかけでライブに行こう!と思い立ったので、「ミミのおかげだよ、ありがとうね」と伝えました。そして2人でいざ出発。会場までは電車で40分ほど。乗り物があまり好きではないミミは途中から靴を脱いで座席に足をのせていました。エレベーターに乗るときも、混んでいるのが好きではないので「嫌だなぁ」と言っていて不安だったのですが、ライブが始まると大きな声で笑うミミ。「めっちゃ面白いね!」と話しかけてくることもあり、楽しめているようで良かった!と思いました。ライブは前半1時間、休憩が入り後半1時間ほどあり、ミミは途中でちょっとお疲れ気味に…途中で帰ろうかとも思ったのですが、ところどころで笑っていたので最後までいることにしました。Upload By taekoライブが終わり、息子の言葉は…ライブが終わり今の時間を知ったミミは開口一番「もうそんな時間!?」と驚き、「え~終わった。休みが終わった~」と不満そうでした。あんなにもライブを楽しんでいたのに?ミミに話を聞くと「ゲームをやる時間がなくなっちゃった!」とのこと。そういえばミミに始まる時間は伝えていたけど終わる時間は教えていませんでした。ミミは大好きなゲームをする時間がなくなったと思い機嫌が悪くなってしまい…。「あーあ、ゲームの時間がなくなる」「お笑いなんてなければいいのに」と怒りの矛先をライブの方へ…。私は「お笑い芸人さんは頑張っているんだから悪くないよ、私が帰りの時間を伝えずにミミを連れてきたのが良くなかったね。ゲームできなくなっちゃってごめんね」と伝えると「全然楽しくなかった。休みが終わっちゃったよ」と何度も言いました。さすがに悲しくなってきた私は「ごめんね。でもあんまり何度もそういわれると悲しいな」と伝えると「なんで悲しいの?」と全然分かっていない様子。帰り道もぶつぶつと不満を口にするミミに「ミミも笑っていたのに」というと「ウソ笑いだよ」と。ミミは特性から、空気を読んだりするのが苦手です。そして長い時間の移動も頑張ってくれて疲れていることも分かっているのですが、ミミとの距離をとても遠く感じてしまいました。親子だけど私は私でミミはミミ。別の人間なんだな…とすこし物悲しい気持ちになりました。Upload By taeko帰宅後、早速ゲームで遊ぶミミ。仕方なく普段より長い時間OKにしたら機嫌も直ったようです。そして数日たったある日…雑談の中でお笑いライブ中のネタをミミが言ってきました!それ、ライブのネタだよね?と聞くと「うん、ちょっと楽しいところもあったよ」と。私はホッとしました。少しでも楽しかった記憶が残っていて良かった…。でも次に何かに誘うときには事前準備をしっかりして、ミミの気持ちと時間を大事にしようと思った出来事でした。Upload By taeko執筆/taeko(監修:初川先生より)お笑いライブに親子で行ったエピソードをありがとうございます。楽しい時間を過ごしていたはずなのに、ちょっとしたこと(本人にとっては重大なことですが)で、一気に「楽しくなかった」と語られる出来事、多くの保護者の方には思い当たる節があるのではないでしょうか。ミミくんはASDがあるので、taekoさんのほうで、移動中やライブ中もミミくんの「体力ゲージ」、つまりコンディションを細やかに観察されていますね。これはとても大事なことです。楽しいイベント(お笑いライブ)だからこそ、移動の多少の困難もライブ中の疲れも我慢できる…大人だからこそできる芸当で、子どもの場合、特に発達的な特性の強いお子さんの場合は特に、コンディションによって「楽しさ」が左右されます。楽しいこともつらいことになってしまう可能性もあるので、様子の変化は気を配っておきたいですね。さて、ミミくんは休日のルーティン的なお楽しみのゲームができないことで一気に悲しくなってしまいました。今まで楽しく過ごしていたとしても、注意が「ゲームができない」に向くと、オセロで一気に白黒反転するかの如く、「全部楽しくなかった」と捉えてしまいます。これは実際の楽しさがどうであったかというよりも、現在の「ゲームできない」という出来事についての悲しさの度合いだと理解しましょう。楽しみにしていたライブ、ライブ中も笑っていたなどの実際のミミくんの様子や事実がどうであるかは本人には今は重要事項として捉えられず、今の今は「ゲームできない」で頭がいっぱいで、そこそこ楽しめたライブとゲームのできなさを総じて、“だいたいこのくらい楽しかった”のようにくるっとまとめて理解することが苦手なのだと思います。なので、そこについて話し合いをしてもなかなかお互いが納得できるところへ行くのは難しいです。それよりも、「そうね、いつもの休日のようにゲームできなくて悲しいね」に焦点を絞って話をしたほうがイライラや悲しみは早く収まるだろうと感じます。こうしたイレギュラーなイベントで、ルーティンの楽しい時間を取れないかもしれないときは、例えば前もってスケジュール提示をしておくことがよさそうです。「このイベント(お笑いライブなど)は、このくらいの時間がかかって、いつものゲームは同じ時間帯にはできないけれど、どうしようか」を紙に整理しながら事前に話しておきたいですね。別日に少しだけ長くゲームをする、あるいは、その日はちょっと夜更かしを許して「今日はスペシャルだよ」と例外であることをしっかりと伝えたうえで、同じ時間を取る。イベントも、ルーティンのゲームも、どちらも楽しめることで、ようやくイベントの楽しさが(ゲームを邪魔したものと上書きされることなく)純粋な楽しさとして感じられるように思います。
2023年01月15日私の毎朝のルーティーン私の毎朝のルーティーンはここ1年ぐらいずっと以下のような感じです。1.朝7時ごろ起きてトイレ。だいたい朝のお通じがある2.緑内障治療のための目薬をさす3.パジャマを脱いで体重をはかる4.部屋着に着替える5.歯磨きをする6.洗顔・スキンケアをする(ここまでで起きてから45分)7.猫のトイレの掃除、ゴミ捨て、昨晩洗った食器の片付けをする8.朝食(だいたいここで8時ぐらい)9.洗濯(終わるとだいたい9時過ぎ)きっちり決まりすぎていて自分で窮屈に感じることもありますが、結局はこのとおりに動かないと落ち着かないし、効率を欠くのでいつもこのとおりにしています。数年間変わらない、私の朝ごはんメニュー私の朝の食事メニューはいつも以下のとおりに決まっています。・カフェインレスのインスタント粉で作った、ミルクたっぷりのコーヒー(ミルクは必ず低脂肪乳)・小麦胚芽フレークのシリアルに無脂肪ヨーグルトをかけたもの(シリアルは必ず60g)シリアルは毎度必ず秤できっちり60g量ります。1g程度の前後は許しますが、2g以上違うとシリアルを1枚2枚つまんで調整します。メニューは栄養バランス的に理想的になるように考えて決めています。タンパク質、食物繊維、ビタミン、乳酸菌がとれて、なるべく低カロリーであるように。いつも同じメニューにしているのは、そのほうが安心して落ち着くし、健康管理もしやすくなるからです。準備の手間やコスト、味も含め、朝食として便利で身体によい最適解を今のところ他に見つけられないという理由もあります。毎朝とる栄養成分もカロリーも同じにしておけば、体調や体重の変化があったときに、変化がほかの理由(日中の食事や運動、ストレスなど)から来ていることが分かるので、これが最大のメリットだと思っています。このほか、水分補給も兼ねて好きなミルクティーを午前に1杯、午後に1杯飲むことに決めています。これもやっぱり飲まないと落ち着きません。たまには変えたほうがいいかなと思うけれど…夫も含め、周囲の人が「変わった人だなあ」という目で見るし、こんな私もたまにはトーストやらスムージーやら和食やら食べてみたいなと思うこともあるので、ときどき奮起してメニューを変えようかなと思うことがあります。でも、やっぱり落ち着かないし、手間はかかるし、材料の保存期間に気は遣わないといけないし、おなかの調子が変わって「朝食を変えたせいかな?」と思ったりするので、結局はすぐに元の習慣に戻ってしまいます。たまたま旅行などで朝食を外食にしたり、違う時間に食べたりするのもやはり落ち着きませんし、調子もイマイチな感じです。柔軟にいろいろ食べたい夫との折り合いのつけ方夫は「毎日同じものじゃつまらないじゃん」「毎回シリアルをきっちり秤で量るなんて面倒くさくないの?」と言います。うーん、つまらないはつまらないし、面倒くさいは面倒くさいんです。だけど、そういうデメリットを、「落ち着く」「便利で確実」「管理しやすい」というメリットが上回るんですよね。そこを何度説明してもなかなか分かってもらえないのでちょっと困っています。私は人より体力に余裕がないので、こういう小さなところで生活タスクの負担を減らしているのです。夫は私より早く起きて仕事に行き、昼間は家にいないのですが、夕食の準備は料理好きな夫が担当です。夫は私にいろいろなおいしいものを食べさせたいと思ってくれているようで、本当にいろいろなものを食べさせてくれます。私は朝と昼にいつも同じようなものを食べているし、食べること自体は実は好きなので「夜ぐらいは変化をつけてもいいかな、夫が愛情込めて準備してくれるし、おいしいし」という感じで喜んで食べさせてもらっています。夫がいなくて一人で夕食を食べる日はやはりいつも、納豆卵かけご飯みたいな「栄養バランスには優れているし準備も簡単なメニュー」になります笑夫が適度に食事に熱心で、昼間にいないからうまく回っていますが、たとえばこれが昼間もいてじゃんじゃんおいしくて変わったものを作ってくれるとなると私は疲れてきます。コロナ禍で夫が在宅勤務だったときがそうでした。おいしいし、作ってくれた夫に悪い気持ちがあってたくさん食べてしまうので、カロリーコントロールもしづらくて太ってしまって、実はかなり困りました。喧嘩になりかけたこともあって、あの状況がもう少し続いていれば、昼はお互い好きなものを食べるシステムにしていたかもしれません。「気持ちはありがたいんだけど健康・体重管理的には作らないでほしい」と言うと夫が寂しそうな顔をするのがつらかったです…。本人に負担がなくて栄養的にあまり問題なければ気にしなくてOK今はシリアルでもレトルト食品でも栄養補助食品でも惣菜でも、味や栄養に優れたものがたくさんあります。バラエティに富んだ家庭料理で育つのも素晴らしいことではあるのですが、私をはじめ、ASDのある人が決まったメニュー以外を拒否するのにはその人なりの筋の通った理由があるはずです。そこを理解してもらえるとうれしいです。食文化の豊かさは、本人が直接食べずとも見聞きすることで十分に身に入ってくるものだと思いますし、毎日の食事を必死に手作りしたりバラエティを出そうとしたりしなくても、愛情はきちんと伝わるものだと思っています。ASDのある子どもが偏食があったり決まったものしか食べなかったりしても、本人がそれで満足していて、栄養的に大きな問題がなければある程度安心して見守っておくのもよいことではないでしょうか。文/宇樹義子(監修 鈴木先生より)ルーティーンは悪くありません。例外的なことがなければ忘れることがないからです。ただ、健康的にいいルーティーンにすべきです。夜更かしやゲーム三昧の運動不足ではいけません。野球のICHIRO選手も打席で必ずバットを前に出します。ラグビーの選手のキックする前の指の動作も一時流行りました。スポーツ選手はそうすることでリズムをとっています。おまじないみたいなものもありますが、他人が迷惑でなければ構わないのです。定期的な健康診断で異常がなければ大丈夫です。朝食もご飯派やパン派があるのでシリアル派があってもいいかと。ただ、昼や夜は野菜や果物なども取り入れて季節の変化に応じてうまくローテーションしながらのルーティーンを考えてみてはいかがでしょうか?
2023年01月10日病院は助けてくれるところ!わが家の凸凹兄妹の兄、タケルは、小さなころからしばしば泣きすぎては呼吸困難を起こし、夜中の病院に駆け込んでいました。3歳ごろからは喘息の発作も起こすようになり、定期的に通院して呼吸器も使っていたので、病院に行けば苦しいのが治ると学習したようです。予防接種などのほかの用事で病院に行くときも、特に嫌がるそぶりを見せることはありませんでした。Upload By 寺島ヒロ小さいころからしょっちゅう病院に行っていたということは、良いことなのかは分かりませんが、注射や白衣の人を怖がったりすることもなく、むしろ「ハカセかっこいい!」と、憧れていました。大学に入って購買部で最初に買ったのも白衣だったぐらいです。病院大好き!な大きな理由タケルが病院を好きな理由はもう一つありました。それは、病院の先生や看護師さんは、タケルの「変わったところ」を受け入れてくれたということ。小さなころから「ハカセキャラ」だったタケル。幼稚園では、自分の興味のあることばかりをまくし立てるので、クラスのお友達とはほとんど対話できていませんでした。幼稚園は私立で、「良いことは見つけては大いに褒め、好ましくない行動は無視」が基本的な教育方針だったため、先生方に話を聞いてもらうこともほとんどありません。タケルのマシンガントークは「好ましくない行動」だったのです。「自分も変わった子だった」先生の寄り添い当時通っていた病院の先生は、発達障害の専門ではありませんでしたが、「こういう子どもってたまにいる。自分もそうだった」と言ってくださって、タケルの話をよく受け止めてくれました。多くの時間を割いてくれるわけではないのですが、タケルが言いたいことを短い言葉でまとめてくれて、的確に答えを返してくれていました。看護師さんや、ほかのスタッフさんも同様で、病院の機器を見たタケルが「それは何ですか?」「どういうものですか?」といちいち尋ねても嫌な顔一つせず、丁寧に教えてくれていました。Upload By 寺島ヒロ家か!?と突っ込みたくなる状態にそこまではまあ良いのですが…ちょっと困ったこともありました。タケルには何かに熱中すると、なかなかやめられないという特性もあります。病院の待合室で、ブロックやパズルなどを始めてしまうとそっちに熱中してしまい、診察室に呼ばれても行かなかったり、診察が終わっていても帰らなくなってしまうのです。Upload By 寺島ヒロ診察室に行かないときは、しばらくすると大好きな白衣の先生が待合室まで呼びに来てくれるので、手持ちの遊びから気がそれ、診察に進むことができましたが、問題は帰らないときです。正直、こちらは打つ手がなく、「お母さんお腹すいたからごはん食べよう!」などと、理由をつくっては引きずるようにして帰っていました。ごはんを理由に帰ったときは、ごはんを食べ終えると「お腹いっぱい?じゃ帰ろうか!」と言われることもしばしばあり、どっちが家なんじゃ!と、おかしかったです。自分の「陣地」じゃなくなった?プレイスペースからの卒業今に病院に住むと言い出すんじゃないか?と思うほど病院が好きだったタケルですが、10歳の誕生日を境に喘息の発作を起こすことが減り、病院に行く頻度も下がりました。そうすると、たまに病院に行っても帰りしぶるような様子も見られなくなりました。しばらく行かなかったことで、自分の「陣地」ではなくなったのかもしれませんね。優しかった先生方のことと共に、今では良い思い出です。執筆/寺島ヒロ(監修:藤井先生より)病院の先生や看護師さんとのやりとりを通じて、タケルさんの居場所になっていたのですね。喘息発作が落ち着くと共に、少しずつ病院からも卒業された様子で、タケルさんの居場所が病院以外にも広がって、世界が広がったのかもしれませんね。マシンガントークは、好きなことを人に伝えるという点では良いところで、状況に応じず話しすぎるという点では好ましくない点なのかもしれません。好きなことを人に伝えられたという、良い点に注目されたことで、病院がタケルさんの好きな場所になったのですね。
2022年12月26日