45歳で白髪染めをやめた。そして、自分の心が喜ぶ生き方を見つけた
という呪縛にとらわれていたようだ。
とはいえ、実際に白髪染めを止めてからの批判は相当だった。今ほど「グレイヘア」という言葉が浸透していなかった、3年前のことである。河童のお皿のように白い部分が広がっていく様子に、「みっともないから染めなよ」と、何度も言われた。ジロジロと無遠慮な視線を投げかけられたこともある。
今でこそ、私はグレイヘアブームの立役者のひとりとして、メディアに取材していただくことも増えた。しかし顔を出して取材を受けるたびに、ネットには「女を捨てている」や「気持ち悪い」「汚らしい」といったコメントが並ぶ。
年上に見える問題に関しても、蓋を開けてみたら50代どころの話ではなかった。
「60代のおばあちゃんに見える」「いや、70代だろ」などという言葉さえ投げつけられる。乙女心もびっくりの想定外だ。
白髪というものは、人間が本能として持っている老いや死への恐怖を想起させるものなのかもしれない。だから、まだ若そうな顔立ちなのにそれを隠さずにいる人を見ると、気持ちの処理が追い付かなくて攻撃したくなるのだろうなと思う。
だからといって、批判の言葉をマルっと受け止められるほど、私はできた人間ではないのだけれど。