今年もあとわずかとなってきました。今年、あなたがもっとも楽しかった記憶、もっとも嫌だった記憶は何でしょうか。
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記憶は、脳の海馬というところで記憶に刻む作業を行いますが、1つの細胞だけがその仕事を担うのではなくいくつかの細胞が活動し、連動してその記憶を刻みこみます。それを記憶の
「エングラム(痕跡)」といいます。
苦しい記憶は楽しい記憶で塗り替えられる?!例えば楽しい思いをした部屋へ行くと、その楽しさを再体験することができますが、それはその当時と同じ脳内のエングラムが活動しているからです。反対に嫌な思いをした場所へ行くだけで、その時の身体反応や不快な感覚を味わうこともありますね。
その記憶を塗り替えることはできるのでしょうか?
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こんな興味深い研究があります。マウスをある部屋に入れて足に電気刺激を与えます。そうするとマウスはその部屋に入っただけで竦んだり、震えたりします。これはその部屋は怖いところだ、という連結が脳内で起こっているからです。
逆にその部屋にかわいいメスのマウスがいたとします。オスのマウスはIt’s a small worldを歌って楽しくてしかたありません(筆者の例えです。実際には歌っていませんが)。その部屋はオスのマウスにとっては楽しい部屋、というエングラムが組まれます。
そこで今度は、電気刺激により、怖い思いを体験したマウスの脳内の細胞群~エングラムに光をあてて活動をさせながら、メスのマウスを部屋に入れて遊ばせました。すると、恐怖で反応した同じエングラムでありながら、その部屋は楽しいという記憶が作られました。なんと、
苦しい記憶が楽しい記憶に塗り替えられる可能性があるではありませんか。
引用文献 Roger L Redondo, et al., Nature, 2014