「私がいないと回らない…って本当にそうですか?」91歳の心療内科医が教えてくれた“ほどよく忘れる”という生き方
■「逃げるは恥」を忘れる
<心とからだが限界を超える前に、スッとその場所から離れられる「隠し球」を持ちましょう。「逃げ道」をもっと前向きにとらえていいと思います>
「逃げ道」を用意しておくということが大切だと感じることがあります。
日本人の美学として、「困難を乗り越えることこそ素晴らしい」という考え方があるように思いますが、それは、あくまでも、よい環境で、自分の心身が健康的に機能しているという前提があっての話です。
「この会社を辞めたら他に行くところなんかありませんから」「私がいないと回らないんです」「逃げてはいけないですよね」「責任があるので辞められなくて」――診察室でそうおっしゃる方には、「本当にそうですか?」と問います。
自分の心身が壊れてしまう前に、自分を安心できる環境に連れていくことは人生の大切な選択です。
目の前の過酷な環境や自分のつらさを見て見ぬふりをするのは、仕事やその環境からは逃げていなくても、自分自身からは逃げているということだと思うのです。
「これがダメでもこっちがある」と、逃げ道を持っておくことは、「人生の大切な隠し球」を持つことであり、軽やかに生きる技術でもあります。