「私がいないと回らない…って本当にそうですか?」91歳の心療内科医が教えてくれた“ほどよく忘れる”という生き方
と聞かれることがあります。精神科医として人の心やからだの悩みを診ていると、そのどれもが、自分の人生をあきらめていないからこそ生まれてくる、尊い思いなのだということがわかります。
その思いと人生に尊敬の念を抱きながら、自分ができる診療のため、目の前の方に接する日々です。
人はそれぞれが自分の人生を生きています。自分は自分であって、他の誰かになり代わることはできない――そんなことを、患者さんたちは教えてくれます。
思わず胸にこみ上げてくるような、おつらい環境の話を聞くことがあっても、患者さんの気持ちがわかるとか、自分が代わってそのつらさを解決してあげよう、なんて思うとしたら、それはおこがましい話だと思うのです。私にできるのは、漢方薬を使いながらその問題に向き合える心身を取り戻すお手伝いをすることです。
これは診療の場面だけではありません。
相手の人生の課題を勝手に取り上げないこと、相手にその問題を解決する力があると信じて、立ち向かおうとするその姿勢を尊重したいな、と思います。
人と自分の間にきちんと境界線を引き、相手の人生を尊重することは、どんな人間関係においても大切なことだと思います。