#33 「法律上も父になりたい裁判」とスッポンのような女
このドラマティックな裁判は、意外なところに飛び火しました。そうです、裁判、裁判と思い出したように時折つぶやいていた麻ちゃんの、裁判トリガーをガッツリ引いてしまったのです。
時期尚早という言葉の意味
最高裁の決定が出た後の祝勝会には、私たちも参加し、大いに盛り上がりました。FTMのお父さんのご一家に加えて、この裁判を戦った弁護士の先生方も来られていたのですが、麻ちゃんは弁護士の先生を完全にロックオン。「同性カップルだって結婚がしたいのだ、と訴える裁判はしないのか」と、にじり寄っているではありませんか!
弁護士の先生の返事は、「時期尚早」というものでした。2013年当時は、まだまだ今のようなLGBTブームもなく、“LGBT”というと「何それ、サンドイッチ?(それはBLTだ!)」なんて言われていた頃。「もう少し世の中での認知が広がらないと……」という判断だったのです。
「よかった、これで諦めてくれるだろう」と、私は思ったのですが甘かった。
実は麻ちゃん、この時「イケる!」と思ったそうです。相変わらず意思の疎通がからっきし出来ていない私たち。麻ちゃんは、「“時期尚早” ということは、逆に “時機がくれば、やれる” ということだな!」と思ったのです。さすが、麻ちゃん。一度食いついたら離れないスッポンのような女!
それから6年。色々なタイミングが重なったとはいえ、まさか自分たちが本当に裁判に関わることになるとは。人生、何が起こるかわかりません。
Composition:Yoshiyuki Shimazu