連載記事:大変だけど、不幸じゃない。発達障害の豊かな世界

発達障害の子どもが、充実した人生を送るために必要なこと【大変だけど、不幸じゃない。発達障害の豊かな世界 第2回】

大変だけど、不幸じゃない。発達障害の豊かな世界

大変だけど、不幸じゃない。発達障害の豊かな世界

アマゾンの福祉カテゴリでベストセラーとなった『療育なんかいらない!』。著者の佐藤典雅さんはユーモアたっぷりの毒舌トークで、発達障害の子育ての常識や固定観念を次々とブチ壊し、読者に発達障害への考え方が…

【第1回】発達障害の子育てに「療育」よりも大切なこと
のつづきです。

発達障害の子どもが、充実した人生を送るために必要なこと【大変だけど、不幸じゃない。発達障害の豊かな世界 第2回】

© tatsushi - Fotolia.com


わが子の発達が気になり、「もしかしてうちの子は発達障害なのでは?」と不安に思ったことがあるかもしれない。

発達障害をもっと理解するために必要なことを、『療育なんかいらない!』の著者であり、独自の理論で放課後デイサービスを展開する「アイム」の佐藤典雅さんにインタビュー。

今回も引き続き、「療育よりも大切なもの」についてお話を伺った。


発達障害の子どもが、充実した人生を送るために必要なこと【大変だけど、不幸じゃない。発達障害の豊かな世界 第2回】
佐藤典雅(さとう・のりまさ)さん
川崎市で発達障害の子どもをサポートする放課後デイサービス「アインシュタイン放課後」「エジソン放課後」を運営している、(株)アイムの代表。自身の自閉症の息子さんの療育のために、息子さんが4歳の時に渡米して、ロサンゼルスで9年間過ごす。前職は、ヤフー・ジャパンのマーケティング、東京ガールズコレクションとキットソンのプロデューサーという異色の経歴の持ち主。福祉という範囲を超えた目線で、自身の息子さんの成長を見守りながら、発達障害児が社会で幸せに生きるための道を広げる挑戦をしている。著書:『療育なんかいらない!』(佐藤典雅・著/小学館 ¥1,296 税込)

※放課後デイサービス(= 放課後デイ):6~18歳までの障害のある子どもが放課後や学校休業日に利用できる、就学時向けの福祉サービスのこと。



■いろいろなものに肌で感じる接点を持たせること

―― 引き続き、佐藤さんが発達障害の子育てにおいて、療育よりも大切だと感じていることについて伺いたいと思います。

佐藤典雅さん(以下、佐藤さん):いろいろなものに接点を持たせることだと思っています。「こんな場所があるんだ」「こういう大人もいるんだ」と、肌で感じさせること。
それ自体がその子の人生を変えるわけではありませんが、肌で感じることの重要性はあると思っています。だから、うちは遠足でアップルストアとかに連れて行ったりしています。

―― それは楽しそうですね! でも、子どもたちの高価な電子機器の扱いに不安はありませんでしたか?

佐藤さん: それが、スタッフの心配をよそに、みんなちゃんとテーブルについて、iPadが配られると指示に従って操作していたんですよ! 普段教室ではみんな全然人の指示を聞かないのに(笑)。これには本当に驚きました。アップルストアも発達障害の子を受け入れるのは初めてだったらしいけど、「普通の子たちとまったく変わらないペースで体験プログラムができましたよ」って喜んでいました。

―― 発達障害があってもなくても、子どもはみんなiPadやスマホをいじるのが大好きですよね。

佐藤さん: 僕は、障害者だろうが健常者だろうが、子どもの頃から電子機器にどんどん触わらせるべきだと思っています。これからの世の中、仕事をするときにPCスキルがないことは致命的。
だから、うちは電子機器がすごく充実しています。パソコンが8台にiPadも数台、それに最新のVRも。子どもたちがVRのゴーグルとつけると、みんな大興奮して遊んでいますよ。

発達障害の子どもが、充実した人生を送るために必要なこと【大変だけど、不幸じゃない。発達障害の豊かな世界 第2回】

「子どもの頃から積極的に電子機器を触らせたい」という佐藤さんの思いから、HTCのVive(VR用ヘッドセット)とグラフィックボーGTX1080を積んだパソコンまでそろっている。


―― でも、子どもが電子機器やゲームに夢中になることに、否定的なお母さんも少なくないように思いますが?

佐藤さん: うちに通っている親にも、子どもにパソコンやiPadをやらせることを嫌がるお母さんはいますよ。でも、そういうお母さんには、いつも「ビルゲイツが1日30分しかパソコンさわっていなかったら、マイクロソフトを作っていませんよ」と言っています。昔、「漫画を読むとバカになる」とか「ビートルズを聴くと不良になる」などということも言われていたけど、それと同じで、どの時代にも常に新しいものに対するアレルギーはあるものなんです。


発達障害の子どもが、充実した人生を送るために必要なこと【大変だけど、不幸じゃない。発達障害の豊かな世界 第2回】

―― 私も息子を見ていて、電子機器との相性の良さを感じています。「いつどうやって覚えたの?」とビックリするほどiPadやスマホをスラスラと操っていたり、勝手に新しい知識を仕入れてきたり。でも、一人でiPadに没頭している姿を見ていると、ちょっと不安を覚えてしまうことも。やはり、子ども同士で交流を持って遊んでほしいという願望が湧いてしまうのですが(苦笑)。

佐藤さん: うちに通う親からも、よく「同じ年頃の子どもと交流させたい」って言われるんだけど、うちの子たちにWiiを与えると、同世代の子たちが集まって遊びますよ。しかも、誰にも言われなくても、ちゃんと順番とルールも守って(笑)。

それに、NHKスペシャルで東田直樹君(※)も言ってたじゃない?「大人は友達作れって言うけど、僕、いなくても幸せです」って。うちに通っている子どもたちも、一緒に遊んだりしなくても友達の名前は憶えているし、だいたい一緒にいるのが嫌だったら違う部屋に逃げるから。


遊んでいないから交流してないというわけではない。それは、全部大人の既成概念の押しつけなんですよ。


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