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全国で2,200カ所を超え(
「こども食堂安心・安全向上委員会」の調査による)、大きなムーブメントとなっている
「子ども食堂」。もともとはごはんをちゃんと食べられず困っている子どものために、食事を提供したいという思いで始められたものですが、今では地域交流など、さまざまな役割をもつスペースになっています。
しかし、ボランティア活動であるがゆえに
課題もたくさん。政府が発表した
最新のアンケート結果からその課題を読み解きます。
■「子ども食堂」が抱える“6つの問題点”
急増する「子ども食堂」ですが、実際に運営するのはやっぱりたいへん? 農林水産省が3月にまとめた「子ども食堂」運営者へのアンケート結果(
農林水産省「子供食堂と地域が連携して進める食育活動事例集~地域との連携で食育の環が広がっています~」)には、主要課題として6つのポイントが挙げられています。
1)来てほしい人や家庭の参加
2)資金の確保
3)スタッフの負担、スタッフの確保
4)地域との連携
5)リスク管理
6)会場の確保
「1)来てほしい人や家庭の参加」は、お金で解決できるわけではないだけに難しい問題です。「子ども食堂」は親子で訪れる人も多いように誰でも利用できるオープンな場ですが、そもそも運営者は
「生活困窮家庭の子どもの居場所作り」を活動目的にしている人が多く、その割合は90%にもなります。
それなのに実態としては
「来てほしい家庭の子どもや親に来てもらうことが難しい」と感じている人が40%も! つまり、ちゃんとしたごはんを食べられない生活をしている子どもに食事をさせてあげたいという気持ちで食堂を始めたのに、実際にはそういった子どもは来てくれないという
ジレンマを抱えています。
これを少しでも解消するためには、学校や行政、民生委員との連携が欠かせないようです。
大阪府の子ども食堂(朝ごはんを提供)
「個別児童の朝食欠食状況について、運営者が把握し対象の児童を絞って事業を実施することは難しいため、小学校を通じて全校児童に呼びかけをする」
滋賀県の子ども食堂
「民生委員や学校の先生が気がかりな家庭の子どもたちにそっと声をかけて誘ってくれたり、連れてきてくれたりすることもあります」
また、非営利の「子ども食堂」とはいえ、運営するには普通のレストランと同じように場所と食材・調理器具などが必要です。先立つものはまず
お金。
「2)資金の確保」では、約70%の「子ども食堂」が社会福祉法人や市区町村などの助成制度を活用しているという結果が出ました。
また、お金としては受け取らなくとも、
食材を無償で提供してもらう場合も多いようです。農家やJAから農産物、肉、魚などを直接もらったり、食品メーカーからパッケージ商品を寄付してもらったり、スーパーの余剰在庫を提供してもらったり、「フードバンク」というNPO活動から集めた食品を提供してもらったりと、さまざまに工夫しているようです。
「3)スタッフの負担、スタッフの確保」は、「子ども食堂」が基本的にボランティア活動であるがゆえに、賃金として支払えず、難しい課題になっているようです。経費面では人件費がかからないのはプラスですが、アンペイドワークゆえに
人を集めにくい。「運営スタッフの負担が大きい」と考えている割合は30%にもなります。
新潟県の「子ども食堂」
「食事の準備、配膳、片付け等は、主催者3名とボランティア(地域住民および市内の大学に所属する学生等)により行われています。ボランティアは事前登録制ですが、ボランティア活動への参加日や時間は自由で、事前連絡も求めていません」
「4)地域との連携」では、「学校・教育委員会の協力が得られない」と答えた人が最も多く約17%、続いて「行政の協力が得られない」と答えた人が13%。
「住民の協力が得られない」と答えた人も3%いました。「町内会で子ども食堂を立ち上げようとしたら
『貧困家庭はこの地域にいない』と言われてしまった」(「広がれ、こども食堂の輪!」全国ツアー参加者より)など、“見えない貧困”について理解が広がっていないこともうかがえます。
「5)リスク管理」で最も心配されているのは、やはり食中毒を出してしまうこと。それぞれの「子ども食堂」では火を通したものしか提供しないなど、注意を払っているようですが、利用者からすると、知らない人が調理したものを子どもに食べさせることに不安を抱く場合もあるでしょう。
福岡県の子ども食堂
「初回の時、おにぎりの提供風景が新聞記事に載り、保健所から衛生管理について問い合わせを受けました」
千葉県の子ども食堂
「ボランティアを含めた調理スタッフ全員が毎年、検便検査を受けることにしています」
81%以上の「子ども食堂」が事前に保健所に相談し、スタッフに衛生管理の知識がある人を加え、万が一の事態に備えて保険に加入しています。
「6)会場の確保」についても周囲の協力が不可欠でしょう。最も多い例となっている「公共施設(公民館、児童館等)」を借りるのもお金がかかりますし、飲食店の定休日にそこを使わせてもらったり、お寺や教会などの宗教法人に場所を提供してもらったりという場合でも、
光熱費などを支払う必要が出てきます。