妻が稼いで僕が家事。思い描いた人生とは違うけど…ゆるくてヒリつく主夫エッセイ『今日も妻のくつ下は、片方ない』
■手探りで始めた家事…戸惑いと喜びが交錯する僕の日常
不器用ながらも、なんとか家事をこなしていく劔さんの暮らしは、
“主夫としての成長”だとか、
“賢い生活の知恵”なんてものとは趣の異なる、まるでコントのような独特でゆるりとした日常。
なじみのない女性ものの服を洗濯するときには、妙な緊張感におそわれてみたり…
『今日も妻のくつ下が片方ない』「未知なる素材の恐怖。」より
輪ゴムを妻のアクセサリースタンドにかけてみたり…
『今日も妻のくつ下が片方ない』「何処へ。」より
一見ふざけているようでいて、いたって真面目な劔さんの姿がやけにツボだったりするのです。
主夫としての生活を始めたばかりのころは、多忙だった過去の日々を思い出して、
“自分にはそういう方が向いているんじゃないか”なんて、想いを巡らせたり、葛藤が皆無なわけでもなかった劔さん。
しかし、ちょっとした小さな発見に喜びを感じたり、正解のわからないまま家事をやり過ごしたりしながら、終始、淡々と日常を暮らしていきます。
寝室で無造作にくつ下を脱ぎ捨てる妻の癖に困惑しながらも、ばらけた片方のくつ下を見つけて喜んでみたり、硬いデニムを「履いて伸ばして」と妻にお願いされて、困りつつも妻の依頼を受け入れたり、
ちょっぴり独特だけど幸せそうな“夫婦のかたち”と地味だけど味のある“僕の日常”。
そんな劔さんのゆるーい日々を描いた漫画のなかでは、「幸せ」とか「喜び」とか「苦悩」とか、そんなありきたりな表現など使わず、少々言葉足らずの漫画の余白に、そっと想いが添えられているよう…。
さらに、愛する誰かに対して、不恰好に甘えたり、甘えられたり…、
何気ない日常が実はパートナーへの信頼や安心感に満ちていること、そんな愛が行間からしみじみにじみ出ているのです。