連載記事:樹木希林からの命のバトン

「学校に行くのがあたり前」の空気に苦しむ親子へ【樹木希林からの命のバトン 第2回】



■樹木希林流「親がつらいときの対処法」

最後に、樹木希林流のしんどい時の対処法について、考えてみたいと思います。樹木さんは、「しんどいときにどうやり過ごすか」という質問に対して、「笑う」と答えています。

私にもしんどいときはもちろんあります。
(中略)
しんどいんだけど、そのときにしんどいって顔をしないで、こうやって笑うの。笑うのよ。ね? あんた頑張ったわよって、頭をなでて、笑う。
ほかの人がいるときにそうやってたら馬鹿みたいだけど(笑)、そうやって笑って、「いいなあ、いいなあ」って言ってるうちに忘れちゃうの。
内田さんも樹木さんから生前にこのアドバイスを教わり、実際にやってみたそうです。
「本当に無気力になって、もうこれは笑えないないと思った時にそれをやってみたら、心なしか気持ちが軽くなっていって、バカバカしいことをしている自分に対してクスッと笑えた」と書籍で打ち明けています。

“しんどいときに笑う”。なかなか難しいとは思えますが、不登校の子どもに対しても、親はできれば笑顔でいてほしいと石井さんも話します。

「子どもが不登校になると、どうしても思いつめてしまうとは思いますが、できれば悲しむ様子や涙は外で出して、子どもの前では見せないであげてほしい。親の楽しそうな様子や笑顔は、理屈ではなく子どもを勇気づけますよ」(石井さん)
「学校に行くのがあたり前」の空気に苦しむ親子へ【樹木希林からの命のバトン 第2回】

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ここまで樹木さんの言葉をもとに、石井さんと学校に行きづらいと悩んでいる子ども、そして親との関わりについて考えてきました。

いま学校に行くことがつらい人、「学校に行けない」ということを言えない人、“みんな”と同じようにできなくて苦しんでいる人がいるかもしれません。そして子どもの想いと将来を思いやって、どうすることが正解なのか苦悩している親御さんもいるでしょう。

樹木さんの人生を通じて語られた言葉は、大きな学びとなったように思います。
樹木さんと内田さん母娘の思いに触れて、あらためて自分自身は親として子どもに何ができるのか、考えるきっかけにしてはいかがでしょうか?

樹木さんは、次のようなメッセージを贈っています。
この子の苦しみに寄り添うしかないのよね。だから、ああしろ、こうしろとは、もちろん言わない。言って治るようならとっくに治ってるでしょう?
「9月1日」子どもたちみんなに居場所がありますように。
「学校に行くのがあたり前」の空気に苦しむ親子へ【樹木希林からの命のバトン 第2回】

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■樹木 希林さん、内田 也哉子さんの著書
『9月1日 母からのバトン』

(ポプラ社 ¥1,620(税込み))
「学校に行くのがあたり前」の空気に苦しむ親子へ【樹木希林からの命のバトン 第2回】
女優・樹木希林さんが生前、不登校の子どもたちへの思いを語った言葉などをもとに、娘の内田也哉子さんがさまざまな立場の人たちと対談しながら、その考えをたどる様子を記録した書籍。今回取材した不登校新聞の石井編集長が樹木さんを取材した記録や内田さんと対談した様子も収録されています。

●不登校新聞とは
1998年に創刊された不登校に関する専門誌。当事者の視点を大切に、不登校についての情報を発信し続けている。
●石井志昂(いしい・しこう)さんプロフィール
「学校に行くのがあたり前」の空気に苦しむ親子へ【樹木希林からの命のバトン 第2回】

不登校新聞 石井志昂編集長


1982年東京都生まれ。中学校受験を機に学校生活が徐々にあわなくなり、教員、校則、いじめなどにより、中学2年生から不登校。同年、フリースクール「東京シューレ」へ入会。19歳からは創刊号から関わってきた『不登校新聞』のスタッフ。
2006年から『不登校新聞』編集長。これまで、不登校の子どもや若者、親など300名以上に取材を行ってきた。

<参考サイト>
※文部科学省:「不登校に関する実態調査」

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