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筆者は、ライターとして教育記事を手掛けることが多いのですが、とりわけ特別支援教育に関心があります。なぜなら、私には広汎性発達障害の診断を受けた息子がいるからです。
彼は、小学校の低学年の時に支援学級(通級)に通い、適切な特別支援を受けることができました。そのおかげで、今は通常学級のみの在籍で楽しそうに学校に通ってます。
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「「うちの子、発達障害かも!?」と思ったら」
発達障害の子、LGBTQの子、外国にルーツのある子など、
教室のなかには多様な子どもたちがいます。それぞれの子のニーズに合った支援の必要性が、ようやく認知されるようになってきました。そういう意味で、最近の教育現場では、
「多様性」がキーワードのひとつになっています。
【LGBTQとは】
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L(レズビアン)、G(ゲイ)、B(バイセクシュアル)、T(トランスジェンダー)。そして「Q」はQuestioning(自分の性別がわからない、もしくは意図的に決めていない人)、Queer(セクシュアルマイノリティの総称、枠組みに囚われない人)として使われています。
■クラスの中にLGBTQの子どもたちはいる
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筆者は、ある教育雑誌の記事に「
13人に1人がLGBT。この数字は日本の左利きの人口とほぼ一緒です」というフレーズを書きました。
割合から推測すれば、
LGBTQの子どもたちはクラスに2~3人はいるのかもしれません。そんな子どもたちが安心して過ごすために、大人ができることは? パナソニックセンター東京で行われた、教育関係者を中心とした『LGBTQ』のワークショップに参加してきました。
私が参加したワークショップグループのメンバーは、「養護教諭」、「ユニバーサルデザインに関心がある建築家」、「企業のダイバーシティ推進室所属の会社員」、「当事者の発信者」、そして教育ライターの私の5人です。さまざまな立場の人が、それぞれの立脚点から、このトピックに関心を寄せていることがわかります。
質問に対して、グループのみんなで話し合い、その後、登壇者の方たちも、同じ質問に回答をするという形式で進められました。
■LGBTQの子どもたちの苦しみとは
最初の質問は、「映画を見た感想を語り合いましょう」。
オーストラリアの映像作品でトランスジェンダーの少女(出生時男性→女性)が主人公の映画『新入生』(原題:First Day)を見たあと、グループに分かれてワークショップを行いました。
【映画『新入生』とは…】
トランスジェンダーの少女ハナーは小学生の時、男の子として過ごしていました。進学は本当の自分になるチャンスです。ところが、入学初日が近づくにつれて、ハナーは不安になっていきます。トランスジェンダーだということが他の生徒に知られてしまったらどうしよう?
登壇したそれぞれの方の「背景」が垣間見えたので、それを含めてご紹介します。
小林 りょう子(こばやし りょうこ)さん子どもからカミングアウトを受け、性的マイノリティの子の親として、LGBT当事者や家族の支援活動を行っている。
小林さんの38歳になる息子さんは、出生時の性は女性でした。小林さんが映画の中で最もグッときたのは、ハナーちゃんが制服を着た時の表情だったそうです。息子さんに、
「男性の制服を着せてあげたかった」と、涙ぐんでいらっしゃったのが印象に残りました。
浅沼 智也(あさぬま ともや)さんトランス男性(出生時女性→男性)。看護師。LGBTQであり、精神疾患や発達障害、依存症などの複合的な問題を抱える当事者のぴあサポートをしている団体カラフル@はーと代表。
浅沼さんは、「
自分は何も悪いことをしていないのに、トランスジェンダーということは隠し通さなければいけないと感じてしまう、その苦しさを思い出した」と。
浦田 幸奈(うらた ゆきな)さんトランス女性(出生時男性→女性)。 愛知県の中学校教諭。2017年、学級・学年・職員に性同一性障害をカミングアウト。2018年度より女性名・女性の装いで教壇に立つ。特定非営利活動法人ASTA所属。
浦田さんは、映画の中での、いわゆる「誰でもトイレ」の話に言及。「『男子トイレ(たくさん)』『誰でもトイレ(ひとつ)』『「女子トイレ(たくさん)』。 この『たくさん・ひとつ・たくさん』とあった時の、『ひとつ』を使うということは、
隅に追いやられている感じがして、思った以上に孤独感を味わう」と。
「映画の中では、ハナーの事情を知らない同級生が、『今度私もそこに行きたい!』言うのですが、その発言に歩み寄るというか寄り添う感じがした」とも。
知花 梨花(ちばな りか)さんトランス女性(出生時男性→女性)。ジェンダークリニックで看護師をしながら女優として活動。
ジェンダークリニックで性に違和感を抱える方のケアをされている実感として、「性別を移行するということは、世間体、家族、会社などとの関係性もあり、長い時間を要します。現実として、『女性ホルモン(男性ホルモン)を打てれば幸せなんです』と、外見の見た目は変わらないという人も多いです」と。
■「無知」が多様な性を阻害している
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次の質問は、
「多様な性を阻害しているものは、何だと思いますか?」。
私たちのグループから出た意見は、
「無知」「世間体」「旧態依然とした制度」の3つでした。登壇者の方からの意見も大別すれば、この3つのどれかに含まるのでは? と、感じました。
小林さんからは、「無知である」ということを象徴する具体的なエピソードとして、「文部科学省から2016年4月1日に教員向けの手引書が出されているのに、
現場の先生に浸透していない」という問題が指摘されました。
手引書は、ネットで誰でも見ることができるので、ぜひご覧ください。
教育現場のLGBTQの子どもたちへの対応については、情報インフラがまったく整っていないと感じます。私が取材を通じて遭遇した教育現場の現実をいくつかご紹介しましょう。
■共生社会をつくるには
「多様性を目指す教員の会」の勉強会に参加したときのこと。多様な性に関する教育現場などでの発信をされている中島潤(なかじまじゅん)さんのお名刺に、
「生まれた命が、生き抜ける社会を」と印刷されていました。
中島さんは、「今年から、この文言を印刷しました」とおっしゃっていました。どんな現実があるのか、ぜひ今後、ウーマンエキサイトでもご紹介していきたいと考えています。
▼性を揶揄する言葉が教室内で使われている
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当事者の子どもたちは、性を揶揄(やゆ)する言葉で傷つくことが多々あるそうです。そうした言動を、
先生方が見て見ぬふりをしているというのは、LGBTQの子どもたちや保護者の集まりで必ず話題になる事柄だそうです。
▼性に対しての配慮と合理的配慮の混同
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LGBTQの子への配慮が合理的配慮と混同され、診断書の提出を求められることが多いことも教育現場の混乱のひとつでしょう。
合理的配慮を受ける場合は、たしかに診断書が必要です。ただ、性に対しての配慮は、合理的配慮とは別物です。たとえば、「名前シールで、赤・青といった性別二元論ではない対応をして欲しい」というのは、けっしして「わがまま」という範疇の話ではないのです。
■すべての子がありのままの自分でいられるために
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こうした教育現場の現実を踏まえ、最後の質問に突入します。
「すべての子どもがありのままの自分でいられる社会を実現するために必要なことは?」
私たちのグループから出た意見は
「まずは、知ることなのでは?」ということでした。私は今年に入ってから多様な性に関する記事を書くようになりましたが、正直なところ、いまだ「手探りで書いている」という状態です。2019年現在、
多様な性を知るための情報が、圧倒的に少なすぎる…。
浦田さんは、「知ることで、できることが見えてくる。多様性を知ることを楽しみつつ、その人たちが笑顔になるために自分ができることを考える人が増えたらうれしい」と、おっしゃっていました。
ワークショップのチラシには、「目に見える違い、見えない違い、それぞれの人が
『人と人との違い』にさまざまな思いを持ちながら過ごしています」と、書いてありました。
「知らないこと」に対しては、誰だって身構えてしまいます。そんな自分を、「だから悪いんだ」と思うのではなく、「何に対して自分は身構えているのだろう?」 そういったことから、ゆっくりと自分と対話を始めてみようと思いました。
知花さんが、「今日感じたことを、まずは、みなさんの言葉で伝えて、広げていって欲しい」と、おっしゃっていました。私が感じたことの何かひとつでも、皆さんの心に届くとうれしいです。
DIVERSITY&INCLUSIONイベント第6弾
『LGBTQ』~すべての子どもがありのままの自分でいられる社会を目指して~
「紙教材こそ正しい」と思っていた私が、タブレット学習に驚いた理由