連載記事:毒親連鎖を防ぐ「後悔しない子育て」

子どもが泣くと怒りが沸く…その負の感情が世代間連鎖を生む!?【毒親連鎖を防ぐ「後悔しない子育て」 第3回】

毒親連鎖を防ぐ「後悔しない子育て」

毒親連鎖を防ぐ「後悔しない子育て」

親から受けたしつけ、虐待に近い経験を自分の子どもに繰り返したくないと考えるママはとても多いと『母が重くてたまらない』の信田さよ子先生はいいます。この世代間連鎖を断ち切るためにはどうすればいいのでしょ…

子どもが泣くと怒りが沸く…その負の感情が世代間連鎖を生む!?【毒親連鎖を防ぐ「後悔しない子育て」 第3回】

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自分が親になってみると、乗り越えたはずの「幼少期の辛い記憶」がよみがえる…。そんな人は、案外多いようです。

親にされたようなことを、自分の子どもにはしたくない! 虐待の世代間連鎖を防ぐために、私たちができることは?

母子論の第一人者であるカウンセラーの信田さよ子先生が、豊富なカウンセリング経験から導き出した初の子育て論を出版されたので、お話しを伺いました。

この記事は、「『親にされたことを、わが子にしたくない』そんなママに限界がきたら…」
「子どもが泣くと怒りが沸く…その負の感情が世代間連鎖を生む!?」
の続きです。

■虐待の世代間連鎖を防ぐ二つのキーワード


子どもが泣くと怒りが沸く…その負の感情が世代間連鎖を生む!?【毒親連鎖を防ぐ「後悔しない子育て」 第3回】

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―「親にされたようなことを、自分の子どもにはしたくない!」と思う人は多いようです。

信田:日本には、虐待にかかわる広範な職種の人たちにより構成された「日本子ども虐待防止学会」という学会があり、そこでは世代間連鎖に関する研究がいくつも発表されています。それらの研究から浮かびあがる重要なキーワードは、2つあります。ひとつは、「アタッチメント」、もうひとつは「感覚否定」です。

―「アタッチメント」とは、何ですか?

信田:アタッチメントは、子どもが不安を感じたときに、養育者にくっつくことで安心感を回復するシステムです。ここで注意したいのは、アタッチメントは「愛情」を表しているのではなく、むしろ危機的場面を切り抜けるために必要な「安心感」を表しているという点です。

つまり、アタッチメントは「親から子どもに与えるもの」(愛情)ではなく、「子どもの側が親に求めるもの」(安心感)なんです。

■子どもが親に求めているものとは?

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―なるほど。


信田:アタッチメントのシステムが子どもの成長とともに安定的に発達すると、満2歳ごろから、自分と他者との関係性について、心の中のイメージが構成されるようになります。これを「内的作業モデル(Internal Working Model)」と呼びます。

アタッチメントのシステムが子どもの成長とともに安定的に発達すれば、「自分の感覚は世界から受容されるはずだ」「他者は自分に安心感を与えてくれる」という信頼感が育ち、子どもの心の中には、世界とは、他者とはそのようなものである、というイメージが形成されていきます。

―そのイメージ、とても大切ですね。

信田:けれども、全員が全員、アタッチメントのシステムがうまく形成されるとは限りません。安心できる定点のようなものがどこにもなかったとしても、子どもたちは成長せざるをえませんから。そうなると、親子関係、対人関係におけるさまざまな特徴が生まれることになるんです。

―どんな特徴があるのでしょうか?

信田:たとえば、ほんとうはケアを求めているのに、わざと求めなかったり、ケアなんか必要ないという態度をとったりします。
危険な行動を起こしたり、相手を攻撃したりすることで、ケアを求めていることをわかってもらおうとすることもあります。時には、反対に相手をケアする側に回ったりします。

それらは、たいてい周囲の大人から「本人の個性」「性格」「遺伝」とされがちですし、本人たちもそう思い、成長し、結婚し、やがて親となる時を迎えます。アタッチメントがどのように形成されているかを、多くの人は自覚することはありません。目にはみえませんし、自分はそういう人間だと思っているからです。

■子どもの「不快」を受け止められない親

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―「アタッチメント」という概念、とても重要性ですね。では「感覚否定」とは、何ですか?

信田:子育てで最初に直面するのが、「子どもの泣き声」です。 育児に対して困難な気持ちを抱える女性たちのカウンセリングにかかわった経験がありますが、深刻な虐待をくりかえす女性も少なくありませんでした。


「子どもが泣くと不安や憎しみが沸く」「いらいらしたり、何ともいえない気持ちになったりする」「心臓がどきどきしたり、呼吸が荒くなったりする」……。これらは育児ノイローゼとかたづけられがちですが、彼女たちの反応をもっと深くとらえる必要があります。

これらの反応は、「子どもが泣く」という負の情動に対して、母親も負の反応を生じてしまうことを表しているんです。

「どうしたの、よしよし」と抱っこする以前に、負の情動を示す子どもに対して母親の身体レベルでの拒絶が起き、結果的に子どもの負の情動を拒否してしまう。この拒否が、感覚否定です。

―母親として、「子どもの負の情動を受け止めることができない」ということですか?

信田:自分自身が負の情動を受け止められたという経験がない、負の情動を生み出す感覚が否定されてきたことが、泣く子どもへの身体レベルでの拒否感を生み出していると考えられます。子育てという事態に直面したとき、アタッチメントの課題が「感覚否定」という問題となって再浮上するのです。

―「アタッチメント」と「感覚否定」、そんな因果関係があるのですね。


信田:子どもの泣き声は、不快だったり、苦痛だったりするので生じる声です。それらが親から否定されたり、親から攻撃されたらどうなるでしょう?

アタッチメントという言葉を用いれば、親の感覚否定こそが、アタッチメントが形成されることの最大の妨げとなっているとも言えます。不快で泣くしかできない子どもが、それを拒絶されるということは、感情・情緒を受け止めてもらえないというより、もっと身体感覚に近いものがあるでしょう。


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