連載記事:つぶさない子育て

攻撃的な子どもが増えている!? トラブル回避を最優先にした先に起こることとは【つぶさない子育て Vol.1】

つぶさない子育て

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子どもを危険から守ってあげたい。子どもには夢を叶えて欲しい。そのためには子どもの人生の選択肢を増やしてあげたい。そんな深い親の愛がじつは子どもをつぶしてしまっていることもあると話すのは、花まる学習会…

攻撃的な子どもが増えている!? トラブル回避を最優先にした先に起こることとは【つぶさない子育て Vol.1】

イラスト:koyome


世の中がすごいスピードで変化している今、「何を道標にして、子育てをすればいいのかな?」と、悩むことはありませんか?

「子育ての最終的な目的は、たったひとつ。経済的、社会的、精神的に自立した『自分でメシを食っていける大人』にすること」と、30年言い続けている花まる学習会の高濱正伸さんにお話を伺いました。
高濱 正伸(たかはま まさのぶ)さん
攻撃的な子どもが増えている!? トラブル回避を最優先にした先に起こることとは【つぶさない子育て Vol.1】

花まる学習会 高濱正伸さん


花まる学習会代表・NPO法人子育て応援隊むぎぐみ理事長・算数オリンピック委員会理事。1993年、「この国は自立できない大人を量産している」という問題意識から、「メシが食える大人に育てる」という理念のもと、「作文」「読書」「思考力」「野外体験」を主軸にすえた学習塾「花まる学習会」を設立。


■攻撃的な子どもが増えている⁉


攻撃的な子どもが増えている!? トラブル回避を最優先にした先に起こることとは【つぶさない子育て Vol.1】

イラスト:koyome


――高濱先生のご著書『つぶさない子育て』というタイトル、衝撃的でした。高濱先生は、最近は、どんなことに関心をお持ちですか?

先日、『傷つきやすいアメリカの大学生たち  大学と若者をダメにする「善意」と「誤った信念」の正体』(グレッグ・ルキアノフ著 ジョナサン・ハイト著/西川由紀子 訳)という本を読みました。本の内容は、ざっくりとこんな感じです。
■『傷つきやすいアメリカの大学生たち: 大学と若者をダメにする「善意」と「誤った信念」の正体』とは
アメリカの20代で、自殺、うつ病、精神疾患が増えている。一方で、大学教授のちょっとした発言に対して、言葉狩りのような吊るし上げをした挙句に辞職に追い込んだりする、攻撃的で他罰的な子が量産されてる……。このような 状況が、なぜ起こっているのか? それを学術的に調べた本

――一体、子育ての現場で何が起きているのでしょう?

一言で言えば、「トラブル回避に重きを置く子育ては危険だ」ということです。母親は、「心配する生き物」です。母親一人「だけ」が子育てのすべてを担うと、トラブル回避の子育てになってしまうのは当たり前のことです。

――「心配する生き物」である母親は何が危険なのですか?

私は30年間ずっとこの話を講演でし続けています。「怪我をしないように」「傷つかないように」「喧嘩をして欲しくない」というような子育てをしていると、本当に危険です。


――トラブル回避は、そこまで危険なことなのですか?

はい。保育園、幼稚園、小学校では、さまざまな人間関係を築きます。もちろん、仲良しの友だちとの楽しい時間も大切です。けれども、「嫌な目にあった」とか「ちょっと価値観が合わない人がいる」といった時にどうするのか?

この本の言葉を借りれば、「心の免疫」をつけるために保育園、幼稚園、小学校に通っているという時期は非常に重要です。トラブルを回避することで、大切な時代に心の免疫がつかないまま大人になってしまう子がいるのです。

――心の免疫がつかないとはどういうことですか?

要するに、無菌主義、除菌主義、喧嘩をさせない、いじめは絶対にあってはいけない…そのように考え始めることが、危ないんです。

たとえば、雪合戦で投げられた雪玉の中に石が入っていて、子どもが怪我をしたとします。その子の親御さんが学校に申し立てをすると、校長は保護者を一同に集めて、「今後、子どもたちには雪を一切触らせないと会議で決めました」と報告をするということが起こります。


たしかに、そうすれば「雪合戦での怪我」はなくなります。けれども重要なことは「雪合戦で怪我をしないこと」なのでしょうか?

私が危惧しているのは、「怪我をしないように」とトラブル回避をすることで、「雪合戦をすることで得るさまざまな経験」がすべて除去されてしまうことです。
攻撃的な子どもが増えている!? トラブル回避を最優先にした先に起こることとは【つぶさない子育て Vol.1】

©Hanako ITO - stock.adobe.com


――確かに今の日本の教育現場では、そういう話が起こりえそうですね

こうして話すと、あたかも笑い話のように聞こえますが、日本でもずっと前からこのような状態なんです。私は、「教育の目的はそこなんですか?」と、講演会で訴えているのです。


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