愛あるセレクトをしたいママのみかた

幼稚園での遊びは全て学びです!

あんふぁん
入園・進級おめでとうございます!幼稚園の醍醐味(だいごみ)は何といっても「遊び」。そこには成長のための「学び」が秘められています。ママたちから寄せられた、遊びに関する心配事にお答えしながら、子どもたちがどんな学びをしているのか見ていきましょう。

年少ママの心配事


Q:お迎えに行くといつも一人で遊んでいます。友達ができないのかと心配です。
A:不安解消のための大切な過程。一人遊びも大事な時間です。
ママたちには、「せっかく幼稚園に入ったんだから、早くお友達と遊んでほしい」という思いがあるかもしれません。
でも、入園したての年少児は、ワクワクの一方で不安がいっぱい。自分の好きな遊びに打ち込むことで安心感を得ようとしています。一人でとことん没頭して遊ぶこと、遊びに夢中になることはとても大切です。自分の思いや好奇心が満たされる経験は、子どもたちの興味をいろいろな方向へと広げていくからです。
園での生活に慣れてくると、興味を持った子から声を掛けられたり、「みんなで遊ぶのも楽しいかも」と気が付いていきますから、もう少し待ってみてください。一人で寂しそうにしていたり、他の子と遊びたいのにうまくいかなかったりしていたら、保育者がタイミングをよく見て援助していきます。

Q:お絵描きなど、室内で遊ぶことが多いみたい。外でも遊んでほしいのですが…。

A:自分が「やりたい」と思ったことに熱中する時間が学びのチャンスです。
他にしたいことがなくてお絵描きばかりしているのは問題ですが、子どもが自分から進んでお絵描きに打ち込んでいるなら、それは素晴らしいことです。ママたちからすると「絵ばっかり描かずに他のこともしてほしい」と思うかもしれませんが、子どもは一つの遊びに継続して打ち込むことで、「次はこんな色を使ってみよう」と発想を膨らませたり、「お店屋さんごっこの看板の絵を描こう」と他の遊びにつなげたり、たくさん学びのチャンスを得ています。これらは、自分から「やりたい」と思っているからこその学びです。
保育者は、他にしたいことが見つからないなら遊びの提案をしたり、得意なものに没頭しているなら、さらに深められるように環境をつくったり、その子に合わせた援助をしていきます。

Q:お友達とけんかしたりおもちゃの取り合いをしたりしないか心配です。
A:けんかは人間関係を学ぶ機会。親は「お互いさま」の気持ちを持ちましょう。

子どもたちは時にぶつかり合うことで、自分と違う意見があることを知り、折り合いの付け方を学んでいきます。その中で、たたく・たたかれるの問題が出てくることもありますが、ママたちには、これも一つの学びの機会なんだと捉えて、「お互いさま」の気持ちを持ってください、とお願いしたいですね。
もし、お子さんが「◯◯ちゃんにたたかれた」と言って帰ってきても、相手の親に問いただすのはトラブルの元になるので避けましょう。お子さんの気持ちはしっかりと受け止めて、詳しい事情は担任の先生から聞くようにしてくださいね。

子どもたちの遊びには正解もゴールもない


幼稚園での遊びは全て学びです!

雨どいを使って遊び始めた子どもたち。水を運ぼうとしてこぼしたり、穴を掘る道具として使ったり、水を流したり…。子どもたちにとっては、その一つ一つが遊びであり、場面ごとに楽しさを見出しています。子どもたちの遊びには、正解もゴールもありません。
保育者は、遊びが広がらず堂々巡りになっていると判断したときだけ助言しています。

「見ているだけ」の子も学んでいる


幼稚園での遊びは全て学びです!

遊びの周りにいる子たちを見て、ママは「うちの子も遊びたそうなのに、先生は声を掛けてくれないのかしら?」と思ってしまいがちですが、実は見ている子どもたちは学びの最中。お友達の姿から遊び方を学んだり、楽しい雰囲気を感じたりしています。

互いに意見を出し合い遊びを発展させていく


幼稚園での遊びは全て学びです!

複数の子どもたちが関わり合って、一つの作品を作り上げる経験もします。同じ作品に継続して取り組むことで、さまざまな意見が出て、「迷路を大きくしよう」「僕がガムテープ切るよ」というように、協同的に発展していきます。

遊びの中には失敗や挫折の経験も


幼稚園での遊びは全て学びです!

園庭で「かき氷屋さん」を開いているところ。しかしなぜか1人もお客さんが来ず、結局閉店することに…。遊びには楽しい経験だけでなく、こうしたうまくいかない場面もたくさんあります。
しかし彼らの遊びは、やがて色水遊びへと変化。かき氷のシロップで色水を使った経験を元に、遊びを発展させたのです。色を混ぜるとどう変わるか、夢中になって調べていました。

年中ママの心配事


Q:女の子のグループができていて違うお友達を仲間に入れません。
A:悪気はなく、仲良しのお友達を独占したい気持ちの表れです。
年中の秋ごろから、特に女の子はグループができてくることがあります。ママたちに分かってもらいたいのは、これは「いじめ」ではないということ。自分中心だった年少に比べ、お友達への興味や、大好きなお友達を取られたくないという独占欲が出てきているんです。
これ自体は悪いことではなく、成長の表れです。
一方、相手の気持ちを想像する力はこれから伸びてくるものです。保育者は「◯◯ちゃんは仲間に入れてもらえなくて悲しかったんじゃないかな?」と相手の気持ちを伝えたり、「2人だけでおままごとするより、大勢の方がいろんな役がいて楽しいんじゃない?」と声掛けしたりしていきますが、みんなで遊ぶ楽しさを家庭でも伝えていってほしいです。

Q:勝ち負けにこだわる気持ちが強くかるたやトランプをやりたがりません。
A:ルールのある遊びを通じて「負けても次がある」ことを学んでいきます。
「負けて悔しい」という気持ちが芽生えたのは、心が成長している証拠です。無理強いして遊び自体が嫌いになってしまってはつまらないので、今は無理にやらせなくていいと思います。
年中から年長にかけて、例えば鬼ごっこでも、ドロケイや色鬼などルールのある遊びを楽しむ中で、子どもは「負けても次がある」「みんなで同じルールを守って遊ぶって楽しい」ということを学んでいきます。
その経験を積み重ねて、「他の遊びも同じかな?」と思えるようになれば、かるたやトランプにも、自分から「やりたい!」と気持ちが向かっていくはずです。

年長児の姿から大きくなることへの憧れを感じる


幼稚園での遊びは全て学びです!

園庭でドッジボール。最初は保育者が教えながら、徐々に自分たちだけで楽しめるようになります。たまに年少児が交じり、ルールは分からなくとも楽しい雰囲気を感じています。(写真右)リリアン編み。いろいろな場面でとてもうまい年長組を見て、「年長さんになったらやりたい!」と思えるのも大事な気持ちです。

外からの刺激を受けて遊びが生まれる


幼稚園での遊びは全て学びです!

クリスマス会で保育者が披露したチアダンスに刺激を受け、「私たちも!」と、子どもたち自ら結成したダンスグループ。自分たちで音楽をかけて踊っています。これも楽しい遊び。

年長ママの心配事


Q:外で遊ぶ所がなく家で電子ゲームをする時間が長くなります。
A:電子ゲームはコミュニケーションのない遊び。最長でも1日30分に。
幼児期に大事なことの一つに、コミュニケーションを取り合い、工夫しながら遊ぶという経験があります。電子ゲームでは、そうした対話や工夫が生まれないので、できればやってほしくないというのが私の考えです。それが無理ならば、最長で1日30分とルールを決めましょう。お友達を家に呼んだときには、お友達にもそのルールを守らせます。そして、親自身もルールを守りましょう。どうしてもという場合は、子どもが寝てからに。
できることなら、同じ室内遊びでも、トランプやボードゲームなど、リアルにコミュニケーションを取れる遊びを増やせるといいですね。

Q:戦いごっこが本気モードに。力が強くなっているので心配です。
A:戦いごっこで終わるのではなく発展性のある遊びへ広げていきましょう。
いくら遊びが大事といっても、ただ遊んでいればいいというわけではありません。私は、遊びには「質の高い遊び」と「質の低い遊び」があると考えています。「質の高い遊び」とは、一つの遊びがいろいろな方向へ発展し、膨らんでいく遊びのこと。一方、「質の低い遊び」とは、子どもたち自身が遊び方をどう工夫すればいいか分からず、堂々巡りになってしまっている場合です。
おそらく、たたき合う以外に遊びを膨らませられないから、けがを心配するほど過激になるのではないでしょうか。園ではそうなる前に保育者が、「武器を作ってみよう」「秘密基地はどこにする?」などとヒントを与え、遊びの質を高めていきます。ご家庭で声を掛けるときの参考にしてみてくださいね。

得意を伸ばした子は互いを認められるようになる


幼稚園での遊びは全て学びです!

木登りが得意な子、工作が得意な子…、いろいろいます。遊びの中で得意なことを伸ばして仲間に認められるうれしさを実感した子は、自信が付くだけではありません。「◯◯ちゃんはお絵描きが得意だよね」というふうに、他の子のことも認められるようになっていきます。

田澤先生から「遊びの大切さ」について
「面白い」「楽しい」「うれしい」遊ぶことで育まれる感情は生きる上での根っこです
遊びの中には、その子にとっての「学び」があります。「これって何だろう?」と面白がる気持ち、遊びを工夫して楽しむ気持ち、試行錯誤の末にうまくいったときのうれしさなどのたくさんの感情を感じ取ることが学びなのです。そしてそれが、その子の一生を支える根っこになります。
こうした感情は、大人から「これをやりなさい」と遊びを押し付けられたり、「こうすればうまくいくのよ」と正解を教えられていては生まれないものです。失敗して、うまくいって、また失敗をして…という経験を繰り返す中で、子どもたちはそれぞれが考え、意見を出し合い、いろいろなことを感じながら成長していきます。園はまさに試行錯誤の機会を子どもたちに提供していく場だと私は考えています。
ですからどの園でも、保育者は子どもたちが遊びに打ち込める環境はしっかり整えますが、遊び方にまでは細かく口を出さないようにしているはずです。ただし、遊ぶことがなくて困っているなど、サポートが必要な場合には援助しますし、遊びが広がり、さらに学びが深まるような環境の工夫もします。おうちの方には、プロとしての保育者の目を信じて、園での学びを見守ってほしいと思います。園での成長を楽しみにしていてください!

お話を聞いたのは:田澤里喜先生 たざわ・さとき
東一の江幼稚園(東京都江戸川区)園長。玉川大学教育学部准教授。副園長を経て2015年に園長に就任してからは、遊びの時間をいっそう増やすなど、園児たちが自分の好きな遊びに集中できる環境づくりを行っている。
監修/西東桂子(あんふぁんサポーター) 写真協力/東一の江幼稚園

提供元の記事

提供:

あんふぁん

この記事のキーワード