リピーターが多い「ザ・ヤングアメリカンズ」ハイテンションに子どもの自信と自発性を啓発
「ザ・ヤングアメリカンズThe Young Americans」とは“若いアメリカ人”という意味。18歳から21歳までの若者が所属するNPOで、世界各地で音楽講演と子どもたちへの教育というふたつの活動を行っています。彼らの起こすミラクルがすごい!と聞いて、さっそく日本でも開催されるワークショップに参加してみました。
2017年夏ツアーの最後のアウトリーチは横浜。大きな会場ゆえ参加者300人という大規模で行われ、大きな盛り上がりを見せる。※写真はリハーサル風景。※事務局より許可をいただいて撮影をしています
「ザ・ヤングアメリカンズ」は1962年にアメリカは南カリフォルニアでミルトン・アンダーソンさんによって結成された音楽グループで、最初はごくふつうのコーラスグループだったのだそう。それが、1990年代にアメリカの公立学校の音楽カリキュラムが削減されることとなったとき、学校側から請われて、わずか3日間ですばらしい音楽ショーを生徒たちとともに作り上げ、その評判が大変よかったことから、彼らの名が全米に知られるようになりました。
読んで字のごとくヤングなアメリカンたちで形成される非営利活動団体。しかし国籍はさまざまで、日本人のメンバーもいる
毎年世界を巡り、学校訪問などによる音楽活動を通して主に小中学生に向けアウトリーチを行っているYA。日本での開催は2006年からで、個人での申し込みができ、何度でも参加できるのは日本だけなのだそう。今回(2017年8月22日~24日、横浜会場セッション)では参加者の実に半数以上がリピーター。総勢296人が参加のうち、圧倒的に小学生が多いですが、高学年になると毎年参加しているという子も多く、だいぶ慣れた様子。保護者から離れ大勢の初対面の子たちの中に入った下級生の子たちも、だんだん周りのウキウキした雰囲気につられて緊張した面持ちが和らいでいくのがわかります。スタッフもYAメンバーもかなりのハイテンションですが、演出のオカムラ・チャーリーさんによると、実はあえてそうしているのだそう。
入場したとたんいきなり大音量のポップス、そしてステージで踊りまくるメンバーたちが目に飛び込んでくる。ものすごいテンション!ここで一気に引き込まれる子も多いはず
リピーターで、メンバーや前回一緒だった友達との再会を喜び合う子、初対面の外国人にとまどいもじもじしちゃう子。メンバーたちも少しずつ日本語を覚え、子どもたちに寄り添おうとするので、英語ができなくても問題なさそう
舞台でYAメンバーによるパフォーマンスを見たのち、実際にそれをやってみます。下級生、上級生、中高生と3つのグループに分けて練習をするのですが、2日後の最終日にはひとつの舞台として完成させるので、すぐにレッスンが始まります。リピーターの子たちはすでに上手。おそらくダンススクールや劇団などに所属しているであろう子たちも多く、前面に出てはりきって見事なダンスを披露しています。こうなると初参加の子が怖気づいてしまうのでは、と親としては少し心配になりますが、逆にそういう姿を見て「自分も」という気持ちになるようメンバーたちがサポートしていくのが、このYAの大きな特長。
演出のオカムラ・チャーリーさん。彼自身もYA出身で、今回はゲストディレクターとしてかかわっている。長きにわたってかかわることができるのも、この活動のいいところ
午後から始まった初日だけでも舞台の半分のパフォーマンスを習いますが、メンバーたちも一緒に踊るので、子どもたちはなんとかついていっているようです。よく見ると、特別なサポートが必要な子の姿も見られ、スタッフやメンバーに助けられながら楽しそうに踊っています。
「お互いにサポートする、ということを学ぶ場でもある」とオカムラさんが言うように、そういう雰囲気をYAメンバーたちが作り上げ、リピーターの子たちも手伝って全員で舞台を完成させる体験をする。ただのステージパフォーマンススキルを磨くだけでなく、ショーを完成させること自体が自信となり「自身の成長と学び」につながるのが、YAの大きな魅力なのかもしれません。
2日目は終日、最終日は2時間の練習のあとにリハーサル、そして夕方からはいよいよ本番です。完成度はいかに…?
練習はグループごとに別れて。ソロを演じる子はまた別の場所でメンバーの特訓を受けるなど、ホールのあちこちで練習風景が見られる
練習も最後のほうになると完成度がぐっと上がる。同じパートでも笑顔でのびのびと踊る子もいれば真剣な表情でひとつひとつ丁寧に踊る子もいて、個性がそれぞれ違うが、どういう子が”いい子”などというジャッジがないのもYAの特長
当日は2幕に分けてパフォーマンスが行われます。第1幕はYAメンバーによる迫力の舞台、そして第2幕で、子どもたちが2日間にわたり(実際には1日半?)練習してきたその成果を見ることができます。
リピーターが多いということは、保護者もリピーターなわけで、会場内には熱気が立ち込めていました。子どもたちのパフォーマンスもさることながら、YAの舞台を楽しみにしていることが伝わってきます。世界中でワークショップを行うYAのメンバーは、外国での滞在先はホテルではなく一般家庭にホームステイという形をとっていて、そのホストファミリーも熱烈なサポーターとなって会場に足を運んでいるのです。
ソロパートを堂々と歌い切った小学校上級生の男の子たち。観客からの大きな拍手を受けて、すっきりした表情。子どもの雄姿に思わず涙ぐむ保護者の姿も(舞台写真はYA事務局提供©株式会社道々楽者)
YAメンバーのほとんどは英語のネイティブですが、日本人メンバーも複数いることもあり、レッスンは日本語の通訳がつきます。
終演後、“ハグタイム”というメンバーたちとのお別れの時間が設けられますが、ここはメンバーだけでなく3日間を共にした新しい友達とのお別れの時間でもあり、あちこちで「また来年ね!」「わたしのこと忘れないでね!」という声が聞かれました。
ある参加者に何が一番楽しかったかを尋ねると、「友達ができたこと!」と即答。
ハグタイムではお互いに「来年またここで会おうな!」と言い合いながら仲良くなった子にもTシャツにサインしてもらう。友情が最大の収穫
来年も会えるかな
ザ・ヤングアメリカンズ2017年秋ツアー詳細
※すでに申込みを締め切っている地域もあります。
※地域枠は一般枠よりも早めに申込みが開始されます。
<文・写真(特記以外):フリーランス記者岩佐 史絵>
2017年夏ツアーの最後のアウトリーチは横浜。大きな会場ゆえ参加者300人という大規模で行われ、大きな盛り上がりを見せる。※写真はリハーサル風景。※事務局より許可をいただいて撮影をしています
わずか3日で学生によるショーを完成!
「ザ・ヤングアメリカンズ」は1962年にアメリカは南カリフォルニアでミルトン・アンダーソンさんによって結成された音楽グループで、最初はごくふつうのコーラスグループだったのだそう。それが、1990年代にアメリカの公立学校の音楽カリキュラムが削減されることとなったとき、学校側から請われて、わずか3日間ですばらしい音楽ショーを生徒たちとともに作り上げ、その評判が大変よかったことから、彼らの名が全米に知られるようになりました。
それをきっかけにあちこちの学校からの要請で「アウトリーチ」と呼ばれるワークショップを開催したのが「ザ・ヤングアメリカンズ(YA)」の始まりです。
読んで字のごとくヤングなアメリカンたちで形成される非営利活動団体。しかし国籍はさまざまで、日本人のメンバーもいる
リピーター率の高さからその人気を推して知るべし
毎年世界を巡り、学校訪問などによる音楽活動を通して主に小中学生に向けアウトリーチを行っているYA。日本での開催は2006年からで、個人での申し込みができ、何度でも参加できるのは日本だけなのだそう。今回(2017年8月22日~24日、横浜会場セッション)では参加者の実に半数以上がリピーター。総勢296人が参加のうち、圧倒的に小学生が多いですが、高学年になると毎年参加しているという子も多く、だいぶ慣れた様子。保護者から離れ大勢の初対面の子たちの中に入った下級生の子たちも、だんだん周りのウキウキした雰囲気につられて緊張した面持ちが和らいでいくのがわかります。スタッフもYAメンバーもかなりのハイテンションですが、演出のオカムラ・チャーリーさんによると、実はあえてそうしているのだそう。
そうすることで子どもたちの緊張をほぐす目的があります。
入場したとたんいきなり大音量のポップス、そしてステージで踊りまくるメンバーたちが目に飛び込んでくる。ものすごいテンション!ここで一気に引き込まれる子も多いはず
リピーターで、メンバーや前回一緒だった友達との再会を喜び合う子、初対面の外国人にとまどいもじもじしちゃう子。メンバーたちも少しずつ日本語を覚え、子どもたちに寄り添おうとするので、英語ができなくても問題なさそう
“うまくできる子”でなくても主役のチャンス
舞台でYAメンバーによるパフォーマンスを見たのち、実際にそれをやってみます。下級生、上級生、中高生と3つのグループに分けて練習をするのですが、2日後の最終日にはひとつの舞台として完成させるので、すぐにレッスンが始まります。リピーターの子たちはすでに上手。おそらくダンススクールや劇団などに所属しているであろう子たちも多く、前面に出てはりきって見事なダンスを披露しています。こうなると初参加の子が怖気づいてしまうのでは、と親としては少し心配になりますが、逆にそういう姿を見て「自分も」という気持ちになるようメンバーたちがサポートしていくのが、このYAの大きな特長。
パフォーマンスの中ではセンターやソロで演技を披露する場面がありますが、必ずしも“うまくできる子”が選ばれるわけではなく、誰にでも選ばれるチャンスがあるのです。YAメンバーたちが子どもの様子からそれぞれの子のキャラクターを見て決めるのだそうで、毎回「どんな舞台になるかわからない」とオカムラさんは言います。「何かが突然起こる。それがYAです」。
演出のオカムラ・チャーリーさん。彼自身もYA出身で、今回はゲストディレクターとしてかかわっている。長きにわたってかかわることができるのも、この活動のいいところ
お互いにサポートすることを学ぶ場でもある
午後から始まった初日だけでも舞台の半分のパフォーマンスを習いますが、メンバーたちも一緒に踊るので、子どもたちはなんとかついていっているようです。よく見ると、特別なサポートが必要な子の姿も見られ、スタッフやメンバーに助けられながら楽しそうに踊っています。
引っ込み思案な子やじっとしていられない子など、スタッフやメンバーが気づけばそこに配慮するよう心がけてくれるのだそうで、誰でも楽しめる舞台となるよう一丸となって向かっていくベクトルがすでに出来上がりつつあるようです。
「お互いにサポートする、ということを学ぶ場でもある」とオカムラさんが言うように、そういう雰囲気をYAメンバーたちが作り上げ、リピーターの子たちも手伝って全員で舞台を完成させる体験をする。ただのステージパフォーマンススキルを磨くだけでなく、ショーを完成させること自体が自信となり「自身の成長と学び」につながるのが、YAの大きな魅力なのかもしれません。
2日目は終日、最終日は2時間の練習のあとにリハーサル、そして夕方からはいよいよ本番です。完成度はいかに…?
練習はグループごとに別れて。ソロを演じる子はまた別の場所でメンバーの特訓を受けるなど、ホールのあちこちで練習風景が見られる
練習も最後のほうになると完成度がぐっと上がる。同じパートでも笑顔でのびのびと踊る子もいれば真剣な表情でひとつひとつ丁寧に踊る子もいて、個性がそれぞれ違うが、どういう子が”いい子”などというジャッジがないのもYAの特長
子どものステージ上での位置を事前確認
当日は2幕に分けてパフォーマンスが行われます。第1幕はYAメンバーによる迫力の舞台、そして第2幕で、子どもたちが2日間にわたり(実際には1日半?)練習してきたその成果を見ることができます。
なにしろYAメンバーと合わせると300数十人が一気にステージの上に登るのですから、わが子を見つけるのがちょっと大変。練習の様子を見ていればだいたいどのあたり、とわかりますが、そうでなければ子どもにあらかじめどのあたりにいるか聞いておくといいでしょう。
リピーターが多いということは、保護者もリピーターなわけで、会場内には熱気が立ち込めていました。子どもたちのパフォーマンスもさることながら、YAの舞台を楽しみにしていることが伝わってきます。世界中でワークショップを行うYAのメンバーは、外国での滞在先はホテルではなく一般家庭にホームステイという形をとっていて、そのホストファミリーも熱烈なサポーターとなって会場に足を運んでいるのです。
ソロパートを堂々と歌い切った小学校上級生の男の子たち。観客からの大きな拍手を受けて、すっきりした表情。子どもの雄姿に思わず涙ぐむ保護者の姿も(舞台写真はYA事務局提供©株式会社道々楽者)
2017年夏ツアー終了、秋ツアーは募集開始
YAメンバーのほとんどは英語のネイティブですが、日本人メンバーも複数いることもあり、レッスンは日本語の通訳がつきます。
楽しむことが目的であって、英語の勉強ではありませんが、メンバーたちも極力日本語を学んで子どもたちに寄り添ってくれるので、言葉の心配はいりません。確かに英語ができる子のほうがメンバーたちと早く仲良くなることができそうですが、来日してから時間が経つにつれメンバーたちも少しずつ日本語での意思の疎通が可能になってくるので、英語がまったく話せない!という子でもメンバーたちと仲良くなれそうです。彼らはこの横浜でのセッションを最後に帰国し、2017年の夏ツアーは終わりとなります。秋からはまた新しいメンバーが来日し、新しいパフォーマンスをみんなで作り上げていくのです。「同じメンバー、同じ参加者でも毎回違う結果になる」というオカムラさんの言葉を思い出し、次はどんなふうになるのだろう?という期待がむくむく。リピーターになる人の気持ちがよくわかります。
終演後、“ハグタイム”というメンバーたちとのお別れの時間が設けられますが、ここはメンバーだけでなく3日間を共にした新しい友達とのお別れの時間でもあり、あちこちで「また来年ね!」「わたしのこと忘れないでね!」という声が聞かれました。
ある参加者に何が一番楽しかったかを尋ねると、「友達ができたこと!」と即答。
人前で自分を表現したり、いつもと違うトライをしてみたり。短期間で学びと成長を得られる、といった利点を大人はつい考えてしまいますが、子どもたちが「楽しかった~!また来年も来たいな」と言ってくれることが何よりも大きな利点ではないでしょうか。
ハグタイムではお互いに「来年またここで会おうな!」と言い合いながら仲良くなった子にもTシャツにサインしてもらう。友情が最大の収穫
来年も会えるかな
ザ・ヤングアメリカンズ2017年秋ツアー詳細
※すでに申込みを締め切っている地域もあります。
※地域枠は一般枠よりも早めに申込みが開始されます。
<文・写真(特記以外):フリーランス記者岩佐 史絵>