感情をコントロールできない 暴力幼児が増えている!?
この10年間で、小学校1年生のクラス内での暴力は約14倍になったという調査結果が出ました。原因は感情のコントロールが苦手な子どもが増えていることではないかと言われています。
では、小さいうちから感情のコントロールを教えていくにはどんな関わり方をしていけばいいのでしょうか?小学校教諭として28年間勤務した経験のある、増田修治さんに聞きました。
◆お話を聞いたのは…増田修治さん(あんふぁんサポーター)
白梅学園大学子ども学部子ども学科教授。28年間小学校教諭として勤務した後、現職。子どもの荒れやいじめについて、新聞や雑誌などでアドバイスを多数行っている。あんふぁんWeb「小学生ママ」コーナーの「困ったら増田先生に聞いてみよう 放課後職員室」でも活躍中。
●10年間で小学生の暴力は急速に増えている!
急増の理由としては、昔は「じゃれ合い」とされていた乱暴な行為も「暴力」とみなされるようになったことが挙げられるものの、特に低学年の伸びが非常に高いことが分かります。
※平成28年度「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸問題に関する調査速報値」(文部科学省)
■子どもの暴力の特徴(1)…「なんとなくムカつく」だけで手が出てしまう
私が過去に担任を受け持った児童の中には、「どうして叩くの?」と聞くと「なんとなくムカつくから」と答えた子がいました。何をされたわけではないけれど、「相手が気に入らない」ことが暴力の理由になるのです。
■子どもの暴力の特徴(2)…自分の感情をうまく言葉にできない
自分の心の中の苛立ちやモヤモヤをうまく言語化できず、感情がいきなり行為になって表れてしまいます。「ムカつく」「ばかやろう」「死ね」などの暴言を吐くのも、自分の感情に整理がつけられないためです。
■子どもの暴力の特徴(3)…手や体の一部が触れることを嫌がる
友達の手や体が触れることが我慢できず、払いのけたり叩いたり。家庭内でのスキンシップが不足している子に多いパターンです。また、「誰が触ったか分からないよ」という言葉も、過剰に潔癖な子をつくってしまいがちです。
■子どもの暴力の特徴(4)…自分を棚に上げて人のことを責める
小学校の荒れているクラスの子どもには、「みんなルールを守らないんだから自分も守らなくていいだろう」と考える「他責タイプ」が多く見られます。
●先生に質問
Q:暴力とけんかの違いって?
A:お互いに言い分があるのが「けんか」。一方的な攻撃が「暴力」。
友達やきょうだいを叩いてしまったり、蹴ってしまったり。わが子の乱暴な行動にヒヤッとした経験を持つママは少なくないことでしょう。ただし、手や足が出たからといって一概に「暴力」とは言えません。
言い争ううちにエスカレートして、手や足が出てしまう。これは「けんか」です。
Q:親の育て方に問題があるの?
A:親に「〜しなさい」と命令されてばかりだと暴力的になる傾向に。
「なんとなくムカつく」「ウザい」。こうした感情には、自分とは違う価値観を持つ相手のことを受け入れられないという問題が隠れています。
「ムカつく」「ウザい」を連発する子どもたちには、親から「○○しなさい」と命令されて育った傾向があります。価値観を受け入れてもらった経験がないから、自分も誰かの価値観を受け入れることができないのです。
Q:感情のコントロールを子どもにどう教える?
A:どこが悪いのかどうすればいいのかを大人が丁寧に伝えて。
「暴力を振るう子どもの親」は、「子どもだから許されるでしょ」と考える傾向にあるようです。例えば、わが子が公共の場で走り回っても知らんぷり、よその人に乱暴な口を利いても注意しないなどですね。もちろん子どもですから、未熟さゆえに間違えてしまうことはあります。その度に、その行動のどこがいけないのか、どうすればいいのかを教えていくのが大人の役目。その姿を見て、自分の感情や行動をセーブできる子どもが育っていくのです。
●感情のコントロールができる子に!お子さんの「暴力の悩み」にお答えします
きょうだいやパパ・ママを叩いたり、電車の中で大声を上げたり…といったお悩みを、約半数の人が抱えているようです。でも、子どもがムカついているときこそ、感情をコントロールする術を教えるチャンス。
Q:お子さんは家族に対して暴力を振るったり暴言を吐くことはありますか?
2017年11月8日~12月5日、有効回答数1134
■お悩み1位:きょうだいを叩く……25.7%
兄弟げんかをすると必ず叩き合いに。「お互いさまだからお互いに謝ろうね」と言って仲直りさせますが、いいのでしょうか?(北海道・年長ママ)
A. 「はい仲直り」はNG! 価値観を伝えるチャンスです
「どちらか一方に肩入れしてはいけない」と思うあまり、言い分を聞かずに解決させていませんか?トラブルになった時こそ、何が正しくて何が正しくないかという価値観を子どもに伝えるチャンスです。「今回は、ママはお兄ちゃんが正しいと思う」「でも、お兄ちゃんもここは悪かったから謝ろうね」という伝え方をしていきましょう。
■お悩み2位:思い通りにならないと大声を上げる……22.9%
ファミレスで大人同士が話をしていると、気に入らないのか大声を上げます。周りの人に迷惑が掛かるので、ついスマホを与えてしまいます。(東京都・年中ママ)
A. スマホでは感情をコントロールできるようになりません
スマホを渡せば静かにはなるでしょうが、大声を上げると迷惑になることは伝わりません。親が一緒に外に出て、「みんなが静かに食べられないよね」となぜダメなのか理由を話し、「落ち着くまで中には入れないんだよ」と毅然とした態度を取ってください。
■お悩み3位:パパ・ママを叩く……20.6%
悪いことをして怒られたとき、私を叩いたり蹴ったり。優しく言い聞かせていますが、つい怒鳴りたくなってしまいます。(神奈川県・年長ママ)
A. 親だってたまには本気で怒っていいんです
親だって人間ですから、叩かれたら腹が立つのは当然。どうしても我慢できないときは、「大事なあなたに叩かれたり蹴られたりして、ママの心がいちばん痛いのよ!」と正直に伝えて良いのです。しかしあまりに頻繁に親を叩くのは、愛情を欲していたり、親のことを下に見ている場合があります。普段の関わりを見直してみましょう。
■お悩み4位:物を壊す、物に当たる……11.1%
思い通りにいかないことがあると、すぐおもちゃを投げつけます。
A. 感情を落ち着かせる「隠れ家」を作ってみましょう
段ボールなどで子どもがちょうど入れるくらいのスペースを作り、気持ちが落ち着くまでそこにいる、自分の意思で出てきたところで話を聞く…という方法です。これは多くの幼稚園や保育園も導入している方法ですが、子どもたちは「隠れ家」がお気に入り。体が壁に密着することで「守られている」という気持ちになり、心が落ち着くようです。
■お悩み5位:暴言を吐く……5.7%
「うるせぇ! 」「ばかやろう」などの乱暴な言葉を使うようになりました。園の友達の影響かなと思うのですが…。(千葉県・年中ママ)
A. 友達を責めずに「その言葉は嫌いだな」と伝えましょう
友達のまねをするのは社会が広がった証拠でもあり、ある意味仕方のないこと。「そういう言葉はママは嫌いだな」と伝えていくことで、成長と共に直っていきます。くれぐれも「そんな乱暴な言葉を教えるなんて○○くんはひどい子ね」と友達を責めるのはやめてくださいね。良くないことがあったとき、他人を責めるクセがついてしまいます。
●ムカつきやイライラの翻訳者になることが大人の役目です
「ムカつく」と言ったり、叩いたり蹴ったりするといった暴力には、「自分の感情をうまく言葉にできない」という問題が隠れています。いったん言葉を通して説明することで、イライラやムカつきは整理されていくものですから、そこを手伝ってあげるのが大人の役目。「どういう意味でムカつくって言ってるの?」「こういう理由で叩いちゃったのね」と、大人が良き翻訳者になることで、自分の感情をコントロールできる子が育っていきます。
巻頭特集監修/西東桂子さん(あんふぁんサポーター)illustrationYAMAMOTO Mamoru
では、小さいうちから感情のコントロールを教えていくにはどんな関わり方をしていけばいいのでしょうか?小学校教諭として28年間勤務した経験のある、増田修治さんに聞きました。
◆お話を聞いたのは…増田修治さん(あんふぁんサポーター)
白梅学園大学子ども学部子ども学科教授。28年間小学校教諭として勤務した後、現職。子どもの荒れやいじめについて、新聞や雑誌などでアドバイスを多数行っている。あんふぁんWeb「小学生ママ」コーナーの「困ったら増田先生に聞いてみよう 放課後職員室」でも活躍中。
●10年間で小学生の暴力は急速に増えている!
急増の理由としては、昔は「じゃれ合い」とされていた乱暴な行為も「暴力」とみなされるようになったことが挙げられるものの、特に低学年の伸びが非常に高いことが分かります。
※平成28年度「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸問題に関する調査速報値」(文部科学省)
■子どもの暴力の特徴(1)…「なんとなくムカつく」だけで手が出てしまう
私が過去に担任を受け持った児童の中には、「どうして叩くの?」と聞くと「なんとなくムカつくから」と答えた子がいました。何をされたわけではないけれど、「相手が気に入らない」ことが暴力の理由になるのです。
■子どもの暴力の特徴(2)…自分の感情をうまく言葉にできない
自分の心の中の苛立ちやモヤモヤをうまく言語化できず、感情がいきなり行為になって表れてしまいます。「ムカつく」「ばかやろう」「死ね」などの暴言を吐くのも、自分の感情に整理がつけられないためです。
■子どもの暴力の特徴(3)…手や体の一部が触れることを嫌がる
友達の手や体が触れることが我慢できず、払いのけたり叩いたり。家庭内でのスキンシップが不足している子に多いパターンです。また、「誰が触ったか分からないよ」という言葉も、過剰に潔癖な子をつくってしまいがちです。
■子どもの暴力の特徴(4)…自分を棚に上げて人のことを責める
小学校の荒れているクラスの子どもには、「みんなルールを守らないんだから自分も守らなくていいだろう」と考える「他責タイプ」が多く見られます。
親が「○○くんって悪い子ね」とすぐ人のせいにすると、子どももまねしてしまいます。
●先生に質問
Q:暴力とけんかの違いって?
A:お互いに言い分があるのが「けんか」。一方的な攻撃が「暴力」。
友達やきょうだいを叩いてしまったり、蹴ってしまったり。わが子の乱暴な行動にヒヤッとした経験を持つママは少なくないことでしょう。ただし、手や足が出たからといって一概に「暴力」とは言えません。
言い争ううちにエスカレートして、手や足が出てしまう。これは「けんか」です。
けんかにはお互いに原因があり、言い分があります。一方「暴力」の場合、手や足が出ることに理由はありません。「なんとなくムカつく」という自分の感情で、一方的に相手を攻撃してしまうのです。
Q:親の育て方に問題があるの?
A:親に「〜しなさい」と命令されてばかりだと暴力的になる傾向に。
「なんとなくムカつく」「ウザい」。こうした感情には、自分とは違う価値観を持つ相手のことを受け入れられないという問題が隠れています。
「ムカつく」「ウザい」を連発する子どもたちには、親から「○○しなさい」と命令されて育った傾向があります。価値観を受け入れてもらった経験がないから、自分も誰かの価値観を受け入れることができないのです。
Q:感情のコントロールを子どもにどう教える?
A:どこが悪いのかどうすればいいのかを大人が丁寧に伝えて。
「暴力を振るう子どもの親」は、「子どもだから許されるでしょ」と考える傾向にあるようです。例えば、わが子が公共の場で走り回っても知らんぷり、よその人に乱暴な口を利いても注意しないなどですね。もちろん子どもですから、未熟さゆえに間違えてしまうことはあります。その度に、その行動のどこがいけないのか、どうすればいいのかを教えていくのが大人の役目。その姿を見て、自分の感情や行動をセーブできる子どもが育っていくのです。
●感情のコントロールができる子に!お子さんの「暴力の悩み」にお答えします
きょうだいやパパ・ママを叩いたり、電車の中で大声を上げたり…といったお悩みを、約半数の人が抱えているようです。でも、子どもがムカついているときこそ、感情をコントロールする術を教えるチャンス。
増田さんにアドバイスを聞きました。
Q:お子さんは家族に対して暴力を振るったり暴言を吐くことはありますか?
2017年11月8日~12月5日、有効回答数1134
■お悩み1位:きょうだいを叩く……25.7%
兄弟げんかをすると必ず叩き合いに。「お互いさまだからお互いに謝ろうね」と言って仲直りさせますが、いいのでしょうか?(北海道・年長ママ)
A. 「はい仲直り」はNG! 価値観を伝えるチャンスです
「どちらか一方に肩入れしてはいけない」と思うあまり、言い分を聞かずに解決させていませんか?トラブルになった時こそ、何が正しくて何が正しくないかという価値観を子どもに伝えるチャンスです。「今回は、ママはお兄ちゃんが正しいと思う」「でも、お兄ちゃんもここは悪かったから謝ろうね」という伝え方をしていきましょう。
■お悩み2位:思い通りにならないと大声を上げる……22.9%
ファミレスで大人同士が話をしていると、気に入らないのか大声を上げます。周りの人に迷惑が掛かるので、ついスマホを与えてしまいます。(東京都・年中ママ)
A. スマホでは感情をコントロールできるようになりません
スマホを渡せば静かにはなるでしょうが、大声を上げると迷惑になることは伝わりません。親が一緒に外に出て、「みんなが静かに食べられないよね」となぜダメなのか理由を話し、「落ち着くまで中には入れないんだよ」と毅然とした態度を取ってください。
ルールを守れないと損をするという経験も、感情のコントロールにとって大切です。
■お悩み3位:パパ・ママを叩く……20.6%
悪いことをして怒られたとき、私を叩いたり蹴ったり。優しく言い聞かせていますが、つい怒鳴りたくなってしまいます。(神奈川県・年長ママ)
A. 親だってたまには本気で怒っていいんです
親だって人間ですから、叩かれたら腹が立つのは当然。どうしても我慢できないときは、「大事なあなたに叩かれたり蹴られたりして、ママの心がいちばん痛いのよ!」と正直に伝えて良いのです。しかしあまりに頻繁に親を叩くのは、愛情を欲していたり、親のことを下に見ている場合があります。普段の関わりを見直してみましょう。
■お悩み4位:物を壊す、物に当たる……11.1%
思い通りにいかないことがあると、すぐおもちゃを投げつけます。
「落ち着きなさい!」と言いますが効き目がありません。(神奈川県・年少ママ)
A. 感情を落ち着かせる「隠れ家」を作ってみましょう
段ボールなどで子どもがちょうど入れるくらいのスペースを作り、気持ちが落ち着くまでそこにいる、自分の意思で出てきたところで話を聞く…という方法です。これは多くの幼稚園や保育園も導入している方法ですが、子どもたちは「隠れ家」がお気に入り。体が壁に密着することで「守られている」という気持ちになり、心が落ち着くようです。
■お悩み5位:暴言を吐く……5.7%
「うるせぇ! 」「ばかやろう」などの乱暴な言葉を使うようになりました。園の友達の影響かなと思うのですが…。(千葉県・年中ママ)
A. 友達を責めずに「その言葉は嫌いだな」と伝えましょう
友達のまねをするのは社会が広がった証拠でもあり、ある意味仕方のないこと。「そういう言葉はママは嫌いだな」と伝えていくことで、成長と共に直っていきます。くれぐれも「そんな乱暴な言葉を教えるなんて○○くんはひどい子ね」と友達を責めるのはやめてくださいね。良くないことがあったとき、他人を責めるクセがついてしまいます。
●ムカつきやイライラの翻訳者になることが大人の役目です
「ムカつく」と言ったり、叩いたり蹴ったりするといった暴力には、「自分の感情をうまく言葉にできない」という問題が隠れています。いったん言葉を通して説明することで、イライラやムカつきは整理されていくものですから、そこを手伝ってあげるのが大人の役目。「どういう意味でムカつくって言ってるの?」「こういう理由で叩いちゃったのね」と、大人が良き翻訳者になることで、自分の感情をコントロールできる子が育っていきます。
巻頭特集監修/西東桂子さん(あんふぁんサポーター)illustrationYAMAMOTO Mamoru