2016年7月25日 14:00
[第3回]「聞こえたフリはもう出来ない」1人暮らしを始めて難聴と向き合えた
って言ったら、何を言われたのかわかっていなくても、とりあえず私も「はい!」と返事をする。後で「あれ、何注意されたんやっけ」と困ることもしょっちゅうありました。
それは舞台の稽古でも同じで、監督に言われたことが聞こえてないのに質問できずに後で困る。
小さい頃から、「わかったフリはしないで、ちゃんともう1回聞けばいいんだよ」と親には言われてきたけれど中々できず、社会に出てその大切さを痛感しました。
編集部:そうなんですね。
津田:「わかったフリ」が私の癖になっていたので、最初の頃は「もう1度教えて下さい」と聞き直すのはとても勇気が必要でした。
でも、聞かないと自分が困るし周りにも迷惑かける。だからちょっと勇気を出して聞いておこう。
そう思えるようになったのは、1人暮らしのおかげですね。
聞こえないことを恥ずかしいと思ってた。変えてくれたのは友人の「手話ってかっこいいね」
出典 : http://amanaimages.com/info/infoRF.aspx?SearchKey=10186006777
編集部:「自分は聞こえにくいんだな」と気づいたタイミングなど聞いてもいいですか?
津田:幼稚園くらいの時は、大人が話しているのが「喋っているんだろうけど、何言ってるのかわからない」という状況でした。でもそれを「聞こえないな」とは思っていなくて、「まだ子どもだから」だと考えていたんです。
編集部:あ、なるほど。
津田:はい、「大人になるとあんな感じで話すんかな」と思っていました。聞こえる人とのコミュニケーションが家だけだったので、自分が周囲と違うという事に気づいていませんでした。
小学校に入り、聞こえる学校とろう学校を行き来する中で「自分は聞こえづらいんだ」と知り、中学に入ってからは「聞こえないことは恥ずかしい」に変わりました。
補聴器も、人前で手話をするのも恥ずかしい。
編集部:恥ずかしい、ですか。
津田:そうですね、そう感じていました。人より聞こえないから補聴器をつける、人より出来ないから手話を使う。
でも、少しずつ変わっていきました。学校を卒業して、コンビニや焼き鳥屋さんの店員など接客のアルバイトをしていた頃です。
お店に聞こえない友達が来てくれて、自然と手話で接客をしていたら、バイト仲間が「手話ってかっこいいね」と言ってくれたんです。