2016年10月27日 13:00
「困りごとの解決」だけが、発達障害者への支援とは限らない―アスペルガー当事者の高校教師が伝えたい思い
アスペルガーだと公表してから、「困っていること」ばかり聞かれるようになった
出典 : http://amanaimages.com/info/infoRF.aspx?SearchKey=10610000717
みなさんこんにちは、高校教師のゴトウサンパチです。36歳でアスペルガー症候群と診断を受けてから10年が経ちました。
社会全体としても、発達障害に対する認知や関心が高まり、その間、ボクも著書を出したり、発達障害関連の学会での発表をやらせていただいたり、講演依頼もいただくようになりました。
そうした場でお願いされることのほとんどは、発達障害への支援を充実させるために、ボクが何に困っているのかを話してほしい、というものでした。
ボクが当事者の1人として話すことで、発達障害への研究や支援が進み、それでたくさんの方が救えるならありがたいことだと思い、ボクは一生懸命お話してきました。他にも大勢いる発達障害当事者たちの代弁者のつもりで、自分が何に困っているのかを発信してきたのです。
でも、話しているうちに、何かが違うのではないかという感覚になってきました。当事者の代弁者になんてなれるのか。
ボクの困り感をみんなに伝えることが、いったい何になるのか。今日は、そんな逡巡から始まった、ボク自身の内面の変化についてお話します。
どれだけ話しても、自分の感覚を他人と分かち合うことはできない
出典 : http://amanaimages.com/info/infoRF.aspx?SearchKey=10161016089
多くの人からの相談に答え、講演などで話し続けるなか、ある時ボクは気づいてしまったんです。ボクには、「発達障害当事者」の代弁や代表なんてできないということに。
そんな風に思ったのは、どれだけ話しても、当事者の代弁はおろか、ボク自身の気持ちを理解してもらえることは決して来ないのだということを知ったからです。
ボクの感覚は、ボクだけの感覚なのでいくら説明しようと試みても伝わりませんでした。ボクが絵を描いて説明しても、こうして文章を書いても、それを見る人読む人のその時の感覚や知識に任せざるを得ないのです。つまり、全く同じ気持ちを、2人の異なる人間が分かち合うことはできないのです。
それを言っちゃあおしまいよ、支援者の方々はそう思われるかもしれませんが、どうしようない事実です。