「当事者」って、なんだろう…?発達障害の療育センターが舞台の演劇「わたしの、領分」が問いかけたいこと
それで、すぐ再演を決めたんですが、再演を決めた後もすぐに批判されたんですよ。「あなたが芝居して何が変わるんですか?」「お金儲けしたいだけでしょ」と言われて。
そこに当事者意識の違いを感じました。
被害者じゃなければ語れないのであれば、何も変わらないと思うんですよ。結局見て見ぬ振りを続けていく、ひどい事件が起きたね、終わり、にするわけにはいかない。
何よりああいう犯人を出さないようにするためにも、あまり議論が尽くされない中での匿名報道などにも待ったをかけるように働きかけていかないといけないんじゃないかと思ったんですよね。
そこで再演に関してですが、まず相模原事件が起きたあとに設定を変えたんです。
現実に起きた事件をないがしろにできないので、名前は出してないのですがその事件の後だとわかるようにしています。
なので時系列は2016年にしました。
あとは、ラストシーンを変えました。初演を見た人はびっくりするくらいの全く別物になると思います。まったく見え方が変わるはずです。
タイトルも変えたんです。「わたしの、領分。」だったのを「。」をとったり。この違いからこの作品の意味がわかってもらえたらと思います。
初演は、立ち止まることが大事、というイメージでしたが、再演は、少しずつでいいから歩き続けよう、というイメージにしています。
これは初演から2年たって変わった心境と思ってもらえるといいかもしれません。
編:これまでお話を聞いていて、松澤さんが手掛けるお芝居は、非日常の娯楽というよりは、むしろ日常の延長の中にある芝居というような印象を受けます…
松:芝居のラストシーンがお客さんの日常につながっていってほしいんですね。家に帰った時にじわじわ効いてきてほしい。
演劇は新しい視点をお客さんにあたえることができると思ってます。
芝居をみて、「心理士っていう仕事があるんだ」くらいの感想でもいい。あるいは、街中で発達障害かもしれないなという人を見かけたら、見て見ぬふりではなく「あ、昨日のお芝居で…」と思い出してもらえるなら嬉しい、ほんの一歩でもいいので、今まで自分の中になかったものを受け入れるキャパシティが広がれば、と願います。
日常忙しい親御さんにも、肩の力を抜いて楽しんでもらいたい
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